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ミャンマー(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) [世界情勢]

ミャンマーについては、本年2月28日に取上げた。今日は、(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”)である。

先ずは、3月17日付け日経ビジネスオンライン「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/031700044/
・『2月1日の国軍によるクーデターはミャンマーを窮地に追いやった。多くの市民が国軍の支配に不服従を貫き、毎日休みなく全国各地で厳しい抗議デモが起きている。ゼネストも広がり、経済は立ち行かなくなりつつある。だが国軍による弾圧は苛烈になる一方だ。報道によれば、3月16日までに少なくとも180人を超える犠牲者が出ている。なぜ国軍はクーデターを起こしたのか。先行きが不透明な状況はいつまで続くのか。ミャンマー政府と少数民族武装勢力との和平に貢献し、ミャンマーの政治・軍関係者とのつながりも深い日本経済大学の井本勝幸・特命教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:国軍による弾圧がエスカレートしており、状況は悪化する一方です。 日本経済大学の井本勝幸・特命教授(以下、井本氏):わずか1カ月でミャンマーという国はボロボロになってしまいました。国軍は人々に銃口を向け、通信は断続的に遮断され、夜陰に紛れた誘拐まがいの拘束が横行している。刑務所でもひどい事態が起きていると聞いています。 治安部隊はデモで負傷した人を手当てする医療ボランティアにまで暴行を加えている。弾圧は厳しくなる一方で、もう尋常ではありません。私は国軍とも長い付き合いがありますが、ここまでバカな連中だとは思わなかったというのが正直な思いです。 このままではもっと悲惨なことになります。ですから私はCRPH(注:「連邦議会代表委員会」、国軍に対抗するためアウン・サン・スーチー氏率いる国民民主連盟のメンバーが中心となって設立した組織。事実上の臨時政府)のメンバーに「(国軍との)戦い方を変えたほうがいいのではないか」と伝えました。 人々の国軍を許さないという思いは十分に分かる。ただ路上に出てデモ活動をすれば命を失います。これ以上、犠牲者を増やさないためにも、今後はゼネストなどを中心に対抗していくべきだと考えています。CRPHのメンバーも危ない。今、国軍は関係者を血眼になって探しています。彼らは今、捕まったら最後という状況で活動しているのです。 クーデターの数週間後に元国軍関係者と話をしたところ、彼は「国軍はルーズ・オア・ウィン・タクティクスに入っている」と言いました。勝つか負けるか、どちらかしかないということですね。もちろん相手は民衆です。武装勢力ならまだしも、丸腰の民衆相手に、何が「ルーズ・オア・ウィン」だと個人的には思います。国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった。 Q:人々は治安当局の弾圧に屈することなく抗議を続けています。現状では着地点が見えません。 井本氏:民衆は今のところ国軍に一歩も引く気はありません。国軍側は国民民主連盟(NLD)が大勝した2020年11月の総選挙で大規模な不正があったとし、選挙をやり直す方針を示していますが、一方で多くの人々はクーデター以前の状況に戻せという。 国軍に対する反発は本当に根強いものがあります。ミャンマーの民政化はまだ途上で、これまで約半世紀にわたって軍事政権が続いてきました。ここでクーデターを認めてしまっては、また暗黒の時代に逆戻りする。ミャンマーの人々はこう考えています。彼らからすれば、今回は国軍との最後の戦いなのです。だからたとえ命を落としても、経済が立ち行かなくなり生活ができなくなったとしても、絶対に軍政を認めないという姿勢を示しています』、「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ。
・『難民が発生する恐れ  対立は深まるばかりです。国軍による弾圧が激化すれば、生活できなくなる人が大量に出て難民化します。1988年に起きた民主化運動でも多くの難民が発生し、タイに逃れました。国内外の難民を誰が救うのか。国際社会は軍政を動かしてでも彼らを守らなければなりません。 もっとも、抗議運動にしても、いつまでも続けられるわけではありません。後述するように国際社会からの介入がない限り、どこかに落としどころを見つける必要はあります。一方で、反軍政を貫こうとする人々は活動を先鋭化させていくでしょう。彼らが行き着く先は少数民族武装勢力です。これもまた88年の民主化運動で見られた動きです。 例えば当時の軍事政権に武力闘争を挑んだ全ビルマ学生民主戦線(ABSDF)は国軍に追い詰められ、少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)を頼りました。それしか道がなかったのです。そして今回もまた同じような動きが出ると思います。本当に残念なことですが、国軍は同じ歴史を繰り返そうとしているのです。 Q:なぜ国軍はそもそもクーデターに踏み切ったのか。またスー・チー氏やNLD側に防ぐ手立てはなかったのでしょうか。 井本氏:国軍は軍政時代の2003年に民主化へのロードマップを公表し、これに従って民政移管を進めてきました。国軍は「民主化の主役はあくまで自分たち」であると思っていましたし、これを主導することで国民から尊敬されたかったのです。 ただ現実は異なりました。「愛される国軍」になりたかったのに、国民からはそっぽを向かれてしまった。象徴的なのが2015年の総選挙です。この選挙で国軍出身のテイン・セイン大統領率いる軍系政党(連邦団結発展党、USDP)は、スー・チー氏率いるNLDに大敗を喫しました。 テイン・セイン氏は軍出身ながら民主化を積極的に推し進め、少数民族武装勢力との停戦も実現し、さらに経済的にも多くの改革に着手してきた。国軍内部で「テイン・セイン氏は(民主化に)前のめりになりすぎている。やりすぎだ」という声が出ていたほどです。それなのに、国民の支持はスー・チー氏に集中した。結局、民主化の主役は国軍ではなくスー・チー氏であることを、まざまざと見せつけられたのです。「スー・チー氏さえいなければ」という思いが、国軍にはくすぶり続けました。 さらに2020年の総選挙ではスー・チー氏率いるNLDは前回を上回る勝利を収め、USDPは前回よりもひどい大敗を喫しました。「スー・チー氏さえいなければ」という思いはより強くなり、自らの存在が脅かされるとの危機感が国軍をクーデターに駆り立ててしまった。 クーデターで全権を握ったのは国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官です。ただ関係者の間では、今回のクーデターを主導したのは彼だけではないという見方があります。たとえばCRPHの関係者は「日本が交渉に乗り出すとすれば、相手はタン・シュエ氏だ」と話しています(注:タン・シュエ氏は旧軍政トップとして独裁体制を敷いた人物。2011年、後継としてテイン・セイン氏を政治トップに、ミン・アウン・フライン氏を国軍トップに指名し一線から退いたといわれている)。ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多いと聞いています。 タン・シュエ氏はミン・アウン・フライン氏にその地位を譲る際、「必要とされる場合は再び軍が実権を握る」と予言していました。そのタイミングが今だったということでしょう。ただ国軍の一部関係者からは、現状について戸惑いの声が上がっているのも事実で、(民衆への弾圧について)やりすぎていると冷静に見る向きもあります。でも軍の命令には怖くて逆らえません。私はかつて国軍の兵舎を訪ねたことがありますが、そこではいじめが横行しており、上官はやりたい放題でした。あそこにいたら誰だって恐怖心でいっぱいになり、上官の命令には逆らえなくなります。知り合いの国軍関係者に対しては「このままでは国軍は国民からも国際社会からも相手にされなくなる。再革命が必要なんじゃないか」と話していますが、今のところ、その可能性はありません。 一方のスー・チー氏やNLD側も今回は国軍の動きを見誤りました。国軍は2020年11月の総選挙について検証するよう再三迫っていましたが、NLDは聞き入れなかった。しかもNLD側はぎりぎりまで、国軍によるクーデターの動きを把握できていなかった。最初から対応しておけば、ここまで国がボロボロになるような事態にはならなかったかもしれません』、「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど。
・『主要な少数民族武装勢力は反軍政に  今、課題になっているのはNLDやCRPHのリーダーの不在です(注:国軍はクーデター以来、スー・チー氏を拘束している)。国軍と対等に話ができる人がいないのです。CRPHの関係者とも話していますが、結局、これまで何もかもスー・チー氏頼みだったのは問題でした。NLD政権内ではスー・チー氏の顔色をうかがいながら仕事をするような雰囲気ができてしまい、彼女の耳に入る前に案件が握りつぶされてしまうこともありました。もっとも、スー・チー氏は75歳になっています。現実的に考えれば次の5年が(国のトップとして仕事をする)最後のタイミングだったでしょう。こんな事態になる前から、新しいリーダーを育てておく必要はあったと思います。 Q:ミャンマーの少数民族武装勢力は今回のクーデターにどう反応しているでしょうか。 井本氏:ミャンマー政府との停戦協定に署名していた10の少数民族武装勢力は国軍の弾圧を非難し、軍との和平交渉を打ち切りCRPH支持を表明しています。さらに、停戦に応じていなかったカチン独立軍(KIA)も 市民の抗議運動を保護する姿勢を示し、国軍と衝突しました。 当初、CRPHは一部の少数民族武装勢力としか接触していなかったため、それではだめだと私は伝えました。結果、CRPHは各民族との交渉に乗り出しました。高度な自治を約束し、さらに民主主義に基づいて国軍を解体し、武装勢力と統合して新たに連邦軍を作ると明言しています。これは画期的な動きだったと思います。少数民族武装勢力との和平を進めるという点では、国軍は一度解体されることが避けられないのです(注:一方で国軍はNLD政権がテロリスト団体に指定していた少数民族武装勢力アラカン軍のテロ団体指定を解除した)。 関係者によれば国軍は「ここで自分たちが倒れたら、ミャンマーはシリアのようになる」と本気で考えているそうです。ただ、現状ではCRPH・少数民族武装勢力と国軍とが内戦状態になることは考えにくいと思っています。CRPHは武器を持ちませんし、少数民族武装勢力は自分たちの支配が及ぶエリアを守ることが第一で、エリアを出て戦闘することは基本的にはないからです。また今回の問題について、あくまでビルマ族内の主導権争いだと冷めた目で見る向きもあります。Q国際社会は、日本はどう対応すべきでしょうか。 井本氏:国際社会がミャンマーの人々を「保護する責任(R2P、Responsibility to Protect )」はあると思います。国に人々を守る意思がないのですから。本来であれば、国際社会がPKO(国連平和維持活動)のような形を取って介入すべきでしょう。そうすれば少なくとも弾圧はなくなるでしょうし、対立する双方が対話する機会ができます。ただ国連などの介入は現状では望めません。国連安全保障理事会では中国やロシアが慎重な見方を崩さず、結局、議長声明しか出すことができませんでした。米国などは経済制裁を打ち出していますが、経済制裁で問題が解決した例を私は知りません。 ミャンマー国内では、「中国が国軍を支援している」との見方が強まっており、反中デモも行われています。ただ状況はもっと複雑だと思います。中国とべったりだったのは、むしろスー・チー政権でした。国軍は中国の影響力の増大には危機感を強めていたのです。中国は一部の少数民族武装勢力の後ろ盾にもなっていましたから。そこで国軍は近年、中国ではなくロシアから兵器を購入していました。しかもクーデターの数日前にはロシアの国防相がミン・アウン・フライン総司令官と会談しています。国軍は中国とロシア、そして中国の進出に神経をとがらせる隣国、インドとのバランスをうまく取りながら、難局を乗り越えていこうという腹ではないかと思います。 有効な手が打てない国際社会ですが、それでも手をこまぬいている場合ではないでしょう。国軍は前回の総選挙で大規模な不正があったと主張しています。ならば国際社会が調査団を入れて、改めて票の数え直しをするとか、選挙をするにしても軍政の都合のいいものにするのではなくて、国際社会が責任を持って11月と同じ顔ぶれで実施させるなど、やれることはあるはずです。 日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います。国際社会からは批判を受けるかもしれませんが、独自のカードを用意して交渉していくのです。例えば人道支援は止めないけれども、弾圧が続く限り大きなプロジェクトは支援しないといったように、是々非々でやっていくしかない。かつての軍政時代から日本はミャンマーへの支援を続けてきました。投資も多く、日本人もたくさん住んでいます。今ここで関係を断ち切ってしまっては、もう二度とミャンマーに入れないでしょう。今、国軍は日本の声に耳を貸そうとしませんが、粘り強く働きかけていくしかないと思います。 この記事はシリーズ「東南アジアの現場を歩く」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ。

次に、3月23日付けWedge「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」を紹介しよう。
・『我々日本人自ら「親日国」と形容することも多いミャンマ――。ミャンマーのクーデターから1カ月が経過するなか、俄かにその風向きに微かな異変が起きつつある』、「微かな異変」とは何なのだろう。
・『丸山大使の「外相」発言に猛反発  政府をはじめとした日本側の対応に不満を抱えているミャンマー国民の声が、ソーシャルメディア上を中心に急速に目立つようになってきている。事の発端は今月8日、国軍と太いパイプを持つと言われている丸山市郎・駐ミャンマー大使が、国軍が「外相」に指名したワナ・マウン・ルウィン氏と首都ネピドーで会談した際のこと。 丸山大使は、クーデター後の状況に対して「重大な懸念」を表明すると同時に、ミャンマー市民への一切の暴力停止、アウン・サン・スー・チー氏らの早期解放、民主的な体制の速やかなる回復といった3点を要求した。独自に築いてきた軍政とのパイプを生かしながらの外交が行われた形だが、その夜に在ミャンマー日本大使館がフェイスブック上で、ワナ・マウン・ルウィン氏について「外相」と表記した上で、上記事項を申し入れたとビルマ語、英語、日本語で投稿。 すると、瞬く間にミャンマー市民から非難の声が殺到。「日本政府の弱気な態度に失望しています」、「日本はミャンマー国民の声を聞かず、軍人を認めるつもりなのか?」、「ワナ・マウン・ルウィン氏は、外務大臣ではありません。誰も認めてはいけませんし、このような言葉使いをやめて頂きたい。ミャンマー国民としては強く非難します」など、痛烈なコメントが怒涛のような勢いで相次いでしまったのだ。 これを受けて、加藤勝信官房長官は10日に行われた記者会見で、ミャンマー国軍が任命したワナ・マウン・ルウィン氏を日本政府が「外相」と呼んだことについて、「〝外相〟と呼称はしているが、呼称によって国軍によるクーデターの正当性やデモ隊への暴力を認めることは一切ない」と強調。その上で、「ミャンマー側の具体的な行動を求めていくうえで、国軍と意思疎通を継続することは不可欠で、これまで培ってきたチャンネルをしっかり活用して働きかけを続けることが重要だ」と日本政府の姿勢を説明する対応に追われた。 茂木敏充外相も、丸山大使が会談した翌日9日の記者会見では、ワナ・マウン・ルウィン氏を「外相」と呼んでいたものの、10日の衆院外務委員会の途中から、ミャンマー市民の心情や国際世論への配慮からか「当局によって指名されている外相と言われる人」との表現を使い、軌道修正した。 2日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の非公式外相会議では、内政不干渉を原則として加盟国の国内政治事情などに対し介入を避けてきたなかで、各国から批判の声が相次ぐなど異例とも言える事態となり、インドネシアとシンガポールの外相がワナ・マウン・ルウィン氏に対して「外相」という呼称を使わなかったことが報じられた経緯もある。こうしたなかで、最大のODA支援国である日本が「外相」という言葉を堂々と使用したことにミャンマー市民は強く反応したというわけだ』、呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。
・『「治安部隊」の呼称を使い続ける日本メディアに非難  さらに、日本の各メディアへの非難も高まる事態となっている。主たる引き金は「治安部隊」という表現だ。今、スーチー氏の解放と民主化を掲げて声を上げているミャンマー市民らは、国軍を「テロリスト」と呼び始めている。事実、武器を持たずに「非暴力」で立ち向かおうとする市民に対して発砲して多くの犠牲者を出したり、不服従運動に参加する公務員やメディア関係者らを夜中に逮捕・拘束、さらには戒厳令下での死刑もちらつかせるなど、次第にその手口は過激化している。 国軍に対しては、国内外から急速に批判が高まっており、もはや「治安」を守る部隊ではなく暴力を煽り人を殺す「テロリスト」なのだ、というのがミャンマー市民の理屈だ。ソーシャルメディア上ではもはや、ミャンマー市民らによる「国軍テロリスト」という呼称は定着しているような状況だ。 「治安部隊」という表現に対して、ミャンマー市民からの反発に火がついた一つのきっかけが、第2の都市マンダレーでデモ隊への銃撃によって犠牲となった19歳のチェ・シンさんの死だ。歌と踊りが趣味で「エンゼル」(天使)という愛称で親しまれ、銃撃される前の姿を捉えた写真やイラストは抗議運動で掲げられるなど、象徴的な存在となったチェ・シンさん。 しかし、ミャンマーの国営テレビでは、警察がマンダレー郊外の墓から遺体を掘り起こして検視を行った結果、チェ・シンさんの頭から摘出された銃弾は警察のものではなく、さらに警察がいた方向からは撃たれていないなどと報じた。ソーシャルメディア上では「遺体を掘り起こすなどなんておぞましい行為だ」「こんな虚偽報告を信じるものなどいない」などの書き込みが相次ぐ事態となったわけだが、日本のメディアでは、ミャンマー国営テレビが「警察が裁判所の許可を得て遺体を掘り起こし検視を行なった」と伝えたことを報道。 すると、テレビのタイトル字幕を撮影した画面がソーシャルメディア上で一気に拡散されていき、「日本のメディアは捏造報道ばかりでフェイクを垂れ流している」「なぜ軍事独裁政権の嘘ばかりを配信するミャンマーの国営テレビを信じるの? 人殺しであるミャンマー軍事政権と同じだ」「テロリスト集団を応援するような報道しか出来ないのですか」などとあっという間に非難の声が広がってしまった。 きちんと放送全体を見れば決して国軍の肩を持つような内容にはなっておらず、あくまで国営テレビではこう報じられたものの市民からは反発が上がっている、として右上のサイドタイトルには「犠牲者の遺体掘り起こし ミャンマー当局に非難の声」とも書かれている。 さらに、ソーシャルメディア上での「誰がこのような(当局の)うその報告を信じるだろうか」という市民の言葉も併せて紹介されており、放送全体のニュアンスからすればむしろ市民による当局への非難を伝えている内容になっている。しかし、ミャンマーの国営テレビで伝えられた内容を引用で報じたことに対して「国軍の言うことを信じて肩を担ぐのか」とあたかも肩棒を担いでしまったかのように怒りを買う結果となった。 今や、日本メディアへのミャンマー市民の目線は非常に厳しいものとなり、あらゆるニュースについての文言が取り沙汰され、様々な非難が止まない状況だ。 このようにミャンマー市民の不信感が募る背景には、欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる。軍政時代からの「独自の国軍とのパイプ」を生かした外交が謳われ、これまで民主化を後押ししてきた経緯があるが、これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか――既に多数の犠牲者が出ている緊迫した情勢下、ミャンマー市民にとっては「及び腰」「口だけで行動が伴わない」などと捉えられる結果を招いている』、「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ。
・『日本政府が表明した「ロヒンギャ支援」にも反発  さらに、日本政府による人道支援も、非難の的となった。政府は9日、ミャンマー国内やバングラデシュに流入したイスラム教徒少数民族ロヒンギャ難民らへの医療用品や食糧支援などの名目で1900万ドル(約20億9000万円)の緊急無償資金協力を行うことを決定した。クーデターが起きた2月以降、日本政府が発表した初めてのミャンマー関連の支援で、赤十字国際委員会(ICRC)や国連世界食糧計画(WFP)などの国際機関を通じて、約60万人に対する食料支援やシェルターの改修、医療用品の提供などが実施されるとされた。 国軍との交換公文の署名などは行わず、茂木敏充外相は会見で「ミャンマーの国民が困るような事態については人道上の問題で支援を続けねばならない」と、あくまで経済支援は行わない構えだが、人道支援の継続を表明した形だ。 しかし、このロヒンギャへの支援が報じられると、再びミャンマー市民からの不満、非難が続出。ソーシャルメディア上では、「日本政府には呆れます」「この支援金が誰に手渡されるのかが気になります。軍に渡したところで、難民支援に使うと約束したとしても口約束で行かない。大半は軍の懐にいくでしょう」などの非難が相次いだ。なかには、「間違えないでください、国軍に支援金が渡るのではなく、赤十字などを通してロヒンギャに支援されるのです」と冷静に支援の意図を正す投稿も見られたが、それに対しても「国軍に渡る可能性がないと言い切れるのか」などと強い反発の声が散見される。 ソーシャルメディア上に溢れる、ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある。 独自の外交を貫いてきた日本政府は今、厳しい舵取りを迫られている』、「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ。

第三に、3月23日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/03230602/?all=1
・『2月1日にクーデターが起きたミャンマー情勢はますます混迷の度を深めている。 クーデターを起こした国軍が、デモ制圧を続ける姿勢を示し、全権掌握の既成事実づくりを頑なに進める一方、民主化勢力は「臨時政府」を立ち上げ、統治の正統性を主張する。 混乱状態が長期化しつつある中で、ミャンマーではこのところ「国軍を支援している」として中国に対する批判の声が高まりつつある。 中国側は否定しているが、3月11日、ヤンゴンで国軍のクーデターに抗議する数百人のデモ隊が中国大使館に対する抗議活動を行った。中国製品の不買運動を呼びかける声も上がっていたが、その矢先の14日、ヤンゴンにある複数の中国系の工場が何者かの襲撃を受け、多くの中国人従業員が怪我をするという事案も発生した。 ミャンマーにおける中国のプレゼンスは大きい。中国にとってミャンマーは手放すことが出来ない要衝の地である。中国はミャンマーが民主化プロセスを進める中、同国のインフラ整備などに巨額の資金を投じてきた(総額1000億ドル)。「一帯一路」の旗頭の下でミャンマーとの物流ルート「中国・ミャンマー経済回廊」の建設を進めており、完成すれば中国は内陸部からインド洋に抜ける大動脈と海洋進出の足がかりを得ることになる。原油・天然ガス輸送におけるマラッカ海峡の依存度を低下させるため、ミャンマーのチャウピュー港から中国雲南省につながる原油・天然ガスパイプラインも整備してきたが、クーデターによる政情不安が、中国の「虎の子」である資産にとって脅威になるとの懸念を強めている(3月10日付日本経済新聞)。 中国はアウンサンスーチー国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)政権との関係は良好だったが、国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた。このことが今回のクーデターの一因であるとされている。 中国は国軍に対しても軍事協力を提案してきたが、国軍は中国と協力しながらもその影響力拡大に対する警戒を怠ることはなかった。中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた経緯がある』、「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ。
・『インド・中国両国間の代理戦争の場に  その背景には根深い反中感情がある。1990年代の軍事独裁時代に中国資本がミャンマーに流入、これにより凶悪犯罪が多発したという苦い思いがある。「中国系少数民族の武装解除がうまくいっていないのは中国の支援があるからだ」との苛立ちもある。 「中国との関係を取り仕切るのが自分たちの役割だ」と考える国軍だが、2月下旬に中国との間で非公開で行った会議内容が外部に流出した(3月13日付産経新聞)。地元メデイアによれば、国軍との会議で中国側は、雲南省とミャンマー西部のチャウピューを結ぶ内陸部の天然ガス・原油パイプラインの戦略的重要性を強調し、警備の強化を求めてきた。デモ隊が中国に資源を送るパイプラインへの攻撃を主張していたからである。中国側はさらにミャンマーでの反中感情を抑えるため、国内メデイアに圧力をかけることも要求したという。中国側の要求に対する国軍の回答は明らかになっていないが、国軍の後ろ盾は中国だけではない。近年インドとの関係を強化している。2019年のミャンマーのインドからの武器購入額は1億ドルとなり、中国からの武器購入額(4700万ドル)を凌駕している。インドは昨年ミャンマー軍に潜水艦を贈与した。 インドにとってもミャンマー軍は欠かせない存在になりつつある。インドの北東部の国境地帯では中国の支援を受けているとされる少数民族武装勢力が活動しており、インドの要請でミャンマー軍は過去2年間、武装勢力を排除する作戦を行ってきた。 「中国問題」のウエイトが高まるミャンマーでは、「少数民族の取り込み」も大きな争点になりつつある。135の少数民族が住んでいるとされるミャンマーでは1948年の独立以来、人口の約7割を占めるビルマ族による支配に不満を抱く少数民族が活動を続けてきた。国軍は少数民族の平定を担う役割を有していることを根拠に連邦議会の議席の4分の1を無条件で割り振られる特権を正当化してきた。 クーデターで実権を握った国軍は少数民族の取り込みを進めている(2月8日付産経新聞)。新設された最高意志決定機関「行政評議会」メンバーの一人に西部ラカイン州の少数民族「アラカン族」出身者を起用した。背景にはNLDが実現できなかった和平を推進したい思惑があるが、NLDも3月に入り、南東部のカイン州で自治拡大を求めて国軍と衝突してきたカレン族の武装組織などに接近し始めた(3月12日付日本経済新聞)。 そのせいだろうか、南部のタニンダーリ地域の町ミッタでは8日、この地域に影響力がある少数民族武装勢力が銃を携え、約2000人のデモ隊の警護に当たった(3月9日付NHK)。当該地域の少数民族はカレン族と中国南部の貴州省や雲南省などの山岳地帯に住むミャオ族の支系とされるモン族である。 これを契機に中国系武装勢力と国軍が衝突する事態になれば、ミャンマー情勢を憂慮してきた中国が「自国民保護」を名目に実力行使に出る可能性が出てくるだろう。そうなれば中国と同様、ミャンマー情勢を静観していたインドも黙っていない。北東部のアルナチャルプラデシュ州を巡り中国との領土問題を抱えるインドにとって、北東部と国境を接するミャンマーが中国の勢力下に入ることはなんとしてでも阻止しなければならない。 国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である』、「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
タグ:ミャンマー 日経ビジネスオンライン WEDGE デイリー新潮 (その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) 「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」 日本経済大学の井本勝幸・特命教授 「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ 「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど 「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ 「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」 丸山大使の「外相」発言に猛反発 呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。 「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ 「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ 藤和彦 「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」 「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ インド・中国両国間の代理戦争の場に 「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
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