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資本市場(その5)アルケゴス問題2題(2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある、野村が2200億円の損失も 「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点) [金融]

資本市場については、2月12日に取上げた。今日は、(その5)アルケゴス問題2題(2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある、野村が2200億円の損失も 「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点)である。

先ずは、4月5日付けPRESIDENT Onlineが掲載した法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏による「2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある」を紹介しよう。
・『日本では野村、みずほFGで損失発生か  3月29日、わが国の野村ホールディングス(野村)と、スイスの金融大手クレディ・スイスは米国の顧客との取引に起因する巨額の損失計上の可能性があると発表した。その顧客とは、投資会社のアルケゴス・キャピタル・マネジメント(アルケゴス)であることが判明した。 報道によると、損失額は野村が約20億ドル(約2200億円)、クレディ・スイスが30億~40億ドル(約3300億~4400億円)とみられるものの、現在のところ損失額は確定していない。この2社以外にも、みずほフィナンシャルグループの米子会社が1億ドル(100億円)程度の損失を計上する可能性があると報じられており、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなどの金融機関でも損失が発生している模様だ。 “アルケゴス問題=アルケゴスに起因する大手金融機関の巨額損失発生”に関して、どのような取引が行われていたか、なぜそれが損失を発生させたかを確認することが重要だ』、「真壁」氏の見方はどんなものなのだろう。
・『行きすぎたリスクテイクが放置されている  重要なポイントは、同社が過剰なリスクテイクをしていたとみられることだ。アルケゴスは、ある意味では規制の甘さを突いて、積極的にレバレッジをかけてリスクテイクを重ねた。同社と取引を行った金融機関は、そのリスクを十分に評価できていなかったといえるかもしれない。同社が保有していた株価が想定外の方向に動いた結果、アルケゴスは巨額の損失を抱え、資金繰りに行き詰まったとみられる。 アルケゴス問題の影響は軽視できない。規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する。過去、資産価格が過熱した結果として、投資ファンドが損失を抱えて事業の運営に行き詰まり、結果として世界的な金融システムの不安定性が高まったことは多い。アルケゴス問題には、そうしたケースと重なる部分があるように見える』、「規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する」、確かに問題だ。
・『甘い規制と借り入れ…利得を重ねるフアン氏の手法  アルケゴスは、大手ヘッジファンド“タイガー・マネジメント”出身(運用業界で“虎の子=タイガー・カブ”と呼ばれる)のビル・フアン氏が設立した“ファミリーオフィス”だ。ファミリーオフィスとは、個人の金融資産を管理・運用する投資会社を指す。資金運用において、フアン氏は“レバレッジ”をかけた。つまり、金融機関から与信を受けることによって、自己資金以上の投資ポジション(持ち高)を構築して、大きな利得を目指した。 それが可能だったのは、ファミリーオフィスへの金融規制が甘かったからだ。リーマンショック後、米国では金融規制改革法(ドッド・フランク法)をはじめ金融規制が実施された。その結果、外部顧客の資金を運用するヘッジファンドは証券取引委員会(SEC)に登録を行い、株式などの持ち高(ポジション)や株主の構成、金融機関との取引、財務内容などを開示する義務を負った。 しかし、基本的に、個人の資金を管理・運用するファミリーオフィスは、規制の対象外に置かれた。そのため、リーマンショック後、多くのヘッジファンドが外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行い、規制から逃れようとした。それがファミリーオフィスを“影のヘッジファンド”と呼ぶゆえんだ。規制が甘いため、アルケゴスはリスクを取りやすかった』、「リーマンショック後、多くのヘッジファンドが外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行い、規制から逃れようとした。それがファミリーオフィスを“影のヘッジファンド”と呼ぶゆえんだ」、「ファミリーオフィス」が今後、「規制の対象」に含まれる可能性はあるのだろうか。
・『規制に苦しむ金融機関にとって重要な存在に  規制強化に直面した大手金融機関にとって、相対的に手数料の厚いデリバティブ取引や、資金繰り管理などのサービスを提供して収益を獲得するために、ファミリーオフィスの重要性は高まった。特に、フアン氏のようにリスクテイクに積極的なファンドマネージャーとの関係強化を目指す金融機関は増える傾向にあった。 フアン氏が金融機関と行った相対取引の一つが“差金決済(Contract For Difference、CFD)取引”だ。株式を対象とするCFD取引では、現物株を売買せず、取引の開始時と終了時の原資産の価格差によって決済を行う。 例えば、30ドルで推移していた米バイアコムCBSの株価が上がると思う投資家が、同社株を買い建てるCFD取引を注文するとする。株価が50ドルになった時点でCFD取引を決済(ポジションをクローズ)すると、差額の20ドルから手数料を支払った金額が投資家の利得になる』、「規制強化に直面した大手金融機関にとって」「ファミリーオフィスの重要性は高まった」。
・『株価が上がれば利得もかさ上げされるが…  フアン氏は金融機関に証拠金を差し入れて株式を原資産とするCFD取引を大規模かつ積極的に行った。想定通りに買い建てた(売り建てた)銘柄の株価が上昇(下落)すれば、レバレッジの効果によって利得はかさ上げされる。 逆に、参照する資産の価格が逆に動くと損失は増大する。損失が許容されたレベルを超えると、金融機関はリスクに見合った追加の証拠金差し入れ(追い証)を取引相手に求める(マージン・コール)。 相手が追い証に応じない場合、金融機関は取引相手とのポジションを解消してリスクを削減する。損失が自己資本を上回ると取引相手の資金繰りは行き詰まり、債務不履行=デフォルトが発生する。なお、どの程度の損失発生が追い証のトリガーになるかは、金融機関の体力や顧客のリスク属性によって異なる。 フアン氏は他のデリバティブ取引も活発に行い、特定銘柄のポジションを積み増していたようだ。その点に関して、法令が遵守されていたか、事態の解明が待たれる』、「CFD取引」は確かに「レバレッジの効果」が利きそうだ。
・『荒い値動きで損失に直面したか  以上の内容と米国の株価データなどをもとに、アルケゴス問題発生の経緯を考察しよう。2月半ば以降、金利上昇によって米国株の変動性は高まった。取引時間中の値動きはかなり荒く、乱高下する場面が増えた。その状況下、フアン氏は予想と異なる株価の動きによって買い建て(ロング)と売り建て(ショート)の両サイドで損失に直面し始めたのだろう。 決定打になったのが、3月22日にバイアコムCBSが増資を発表したことだ。同社株は売られ、“売るから下がる、下がるから売る”という動きが鮮明化した。それが損失を急拡大させ、アルケゴスは追い証を差し入れることができなかった。 3月26日、一部の金融機関はフアン氏にデフォルトを宣告し、200億ドル(約2.2兆円)の株式ポジションの解消を迫った。それほど、同氏のリスクテイクは膨大だった。フアン氏は金融機関に担保として差し入れていた資産の売却も余儀なくされた。それが、同氏が選好していたディスカバリーなどメディア関連銘柄の急落の原因とみられる。 想定外の損失拡大に直面した金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れようとした。その遅れやアルケゴスとの取引規模などによって、日欧の大手金融機関に巨額の損失が発生したと考えられる』、「金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れようとした」、もともとは「アルケゴス」が蒔いた種だ。
・『思い起こされるのはリーマンショックの“端緒”  アルケゴス問題が発生した後の日米の株価の推移をみると、多くの投資家が影響は一部の金融機関に限られると楽観しているようだ。4月上旬の時点で、カネ余り環境の継続期待、コロナ禍への慣れや経済の正常化期待を理由に、先行きに強気な投資家は多い。 しかし、アルケゴス問題は、特定の金融機関への影響だけでなく、世界の金融システムの不安定性を高める一因になりかねない。アルケゴス同様に、デリバティブ取引によってレバレッジをかけ、より大きな利得を目指す投資ファンドは多い。見方を変えれば、アルケゴス問題は、世界の大手金融機関が許容レベルを上回るリスクを蓄積していることを確認する機会だ。 資産価格の過熱感が高まると、一部金融機関などのリスクテイクの過大さが顕在化し、結果として世界の金融システムにストレスがかかることがある。思い起こされるのが、2007年8月上旬、仏大手金融機関BNPパリバ傘下の投資ファンドが証券化商品の価値下落によって運用に行き詰まったこと(パリバショック)だ。その後、証券化商品の価値は急落し、世界各国の金融機関が巨額の損失を計上した。それがリーマンショックにつながった』、確かに「パリバショック」に似ているが、規制強化で「金融機関」が取れるリスクに枠がはまったのも事実だ。
・『「金融機関同士の疑心暗鬼」が生まれている  今すぐ、そうした展開が起きるとは考えづらい。ただし、アルケゴス問題の影響は過小評価できない。特に、金融システムにおけるカウンターパーティー・リスク(取引相手が契約通りに義務を履行するかに関する不確実性)は高まりつつある。 野村は米ドル建普通社債の発行を中止した。低金利環境下、国債よりも利回りの高い社債の需要は強い。それでも発行が見送られたということは、アルケゴス問題の影響を警戒する投資家が少なくないことだ。在米のベテラントレーダーはその状況を「金融機関同士の疑心暗鬼」と評していた。 また、アルケゴス問題が他の金融機関の損失発生の直接的あるいは間接的な原因となる可能性もある。米国ではSECが情報収集に注力しており、投資ファンドへの規制強化に関する議論も進む。 それらは投資家にリスク削減を志向させる要因だ。アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、先行きの展開を注視する必要がある』、「「金融機関同士の疑心暗鬼」が生まれている」、嫌な兆候だ。「アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、先行きの展開を注視する必要がある」、同感である。

次に、4月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「野村が2200億円の損失も、「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点」を紹介しよう』。
https://diamond.jp/articles/-/267675
・『米投資会社の運用破綻に端を発した「アルケゴスショック」――。これに関連して、野村ホールディングス(HD)が約2200億円の損失を被る可能性を発表するなど、金融市場に衝撃を与えた。この一件を受けて投資家が考えるべき論点は大きく三つある。(1)危機は連鎖するか、(2)いかにも『バブル的』な資金の流れに対する視点、(3)野村HDの株価評価に対する「考え方」だ。それぞれ解説していこう』、興味深そうだ。
・『アルケゴスショックの論点(1)危機は連鎖するか?  先週初めの3月29日(月)、野村ホールディングス(野村HD)は米国子会社の取引に伴って20億ドル(約2200億円)程度の損失が発生する可能性を公表した。同日、野村HDの株価終値は前週末比117円70銭安の603円に下落した。 この損失は、元ヘッジファンドマネージャーが運営するアルゲゴス・キャピタル・マネジメントというファミリーオフィス(個人資産運用会社)の運用破綻によるもので、同社の取引に関連しては、スイス金融大手のクレディ・スイスも巨額の損失の可能性を発表した。 また、わが国では三菱UFJ証券HDが約3億ドル、みずほフィナンシャルグループが1億ドル規模の損失の可能性を公表した。不名誉な事態だが、野村HDは損失額が示唆する取引規模の大きさにおいて、わが国証券業界最大手の面目を保ったといえようか。 ファミリーオフィスはヘッジファンドよりもさらに情報の秘匿性が高いこともあり、損失経緯の詳細は分からない。ただ、アルケゴスは高いレバレッジを掛けた株式取引を行っていて、手法としてトータル・リターン・スワップ(TRS)を用いていたとみられる。TRSとは、手数料と引き換えに、株式などの原資産を直接持たずとも、そのリターンに基づく収入を得られる手法のことだ。 そして、取引で含み損が発生して追加担保を差し入れる必要が生じたときにこれができなかった。その結果、担保の処分とポジションの解消が行われて、保有資産が投げ売りされる形となって破綻したようだ。) レバレッジを掛けた株式投資を行うには、買い建ての場合なら、信用取引のように資金を借り入れて株式を買う形になるが、TRSでは金融機関が株式投資のリターン(損益両方)を受け渡してくれるのと引き換えに、投資家側は資金コストと手数料を支払う。投資家はこの形だと、自分が実質的に大量の株式を買っていることを市場に知られずに取引を行うことができる。 いささか不透明なポジションの作り方だが、金融機関側にとってもリスクにカウントされる融資を持たずに済むし、相手が破綻しなければ安定的に金利・手数料収入が入るので、好都合な面のある取引だ。 しかし今回のアルケゴスの場合は、肝心の投資が失敗したことと、複数の金融機関と広く取引をしていたことで、与信管理に失敗して損失を被る金融機関が多数発生することになった。 投資家として本件を知ったときに真っ先に考えるべきことは、これが2007年に本格化したサブプライムローン問題のときのように、他社に広く波及するようなものであるかどうかだ。 この問いに対する答えは半ば出ているように思われる。事件発生後の米国の株価全般は上昇しており、市場参加者が同様の件の連鎖を心配しているようには見えない。 ファミリーオフィスは他にもあるが、アルケゴスほどのレバレッジを掛けた運用はまれだろう。また、TRSは広く使われているが、市場で起きていることの実態はよくある「借り入れ+株式投資」であり、投資の成否は今のところ個別的に起こっている。そのため、他のケースに直ちに連鎖するようなものではなさそうだ。 本件をきっかけに、金融機関がTRSのクレジットライン(与信限度額)や担保管理を強化する可能性はある。しかし、金融マン個人はできれば自分のビジネスを縮小したくないし、金融機関の経営者としても、無事にやり過ごして当面の収益を稼いで自らのボーナスやストックオプションからの収入を高く保ちたいだろう。金融業は「リスクに目覚めた自浄作用」が働きにくいビジネスなのだ』、「TRS」は「いささか不透明なポジションの作り方だが、金融機関側にとってもリスクにカウントされる融資を持たずに済むし、相手が破綻しなければ安定的に金利・手数料収入が入るので、好都合な面のある取引だ」、その通りだ。「金融業は「リスクに目覚めた自浄作用」が働きにくいビジネスなのだ」、言い得て妙だ。
・『アルケゴスショックの論点(2)いかにも「バブル的」な資金の流れ  TRSの取引全体が危機に陥って問題が広く連鎖することがなさそうだから、投資家は安心していいのかというと、そうでもない。) バブルは「借り入れによって、投資が過剰に膨らむ」ことによって起こる資産価格の高騰現象だ。1980年代後半に発生した日本のバブルを振り返ると、例えば金融・運用業ではない事業会社の「財テク」運用では、信託銀行による「バックファイナンス付き」の「ファントラ」(「ファンドトラスト」の略称。信託勘定で資金を預かって信託銀行自身が運用する仕組み。多くの案件に「握り」と称する違法な利回り保証が付いていた)のような仕組みで、投資が過剰に膨らんでいた。不動産では、銀行同士が競いながら担保の条件を緩くして不動産開発融資を増やしていた。 「借り入れによる投資」は自己資金よりも大きな投資ができるのだが、投資が裏目に出たときに含み損をこらえることが難しい、「弱いポジション」だ。アルケゴスの場合も、追加担保を差し入れることができなくなると、ポジションを強制処分されてしまった。 バブルの時期にあっては多くの場合、「借り入れを伴う投資」を促す何らかの仕組みが開発されたり、脚光を浴びたりする。 現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある。 TRSは金融機関にとっても投資家にとっても大きなリスクを扱う上で都合のいい面のある仕組みだし、「SPAC」も運営者にとって有利な条件で資金調達ができるので歯止めが掛かりにくい。 もっとも、日本のバブル期のファントラにしても、後にサブプライム問題を引き起こす証券化商品にしても、多くの場合は借り入れを伴う資金を動員して過剰な投資に向かわせる仕組みであることは間違いないのだが、広く使われるようになって「直ちに」バブル崩壊を引き起こしたわけではない。 投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう』、「現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある」、「投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう」、その通りだ。
・『アルケゴスショックの論点(3)野村HDの株式評価に対する「考え方」  さて、本件では投資家にもう一つお伝えしておきたいことがある。それは、本件の野村HDのような場合に、株価について評価する際の「考え方」だ。 実は、筆者は証券会社の社員でもあるので、仰ぎ見る最大手とはいえ「同業」である野村HDの株式について、「買い」も「売り」も推奨することはできない(業界の不文律だ。もっとも、もともと個別株の推奨は筆者のスタイルから外れている)。 だが本件は、投資家にとって株式投資の材料判断の方法を説明する上で格好の題材なのであえて取り上げる。読者においては、筆者が、野村HDの株式を「買え」とも「売れ」とも言っていないのだ、という前提で以下の説明を理解してほしい。 さて、20億ドル、円貨にして2200億円の損失とは、野村HDの株価にとってどの程度のダメージだと評価されるべきなのだろうか。 野村HDにとって、(1)この金額が損失の上限であり、(2)この損失によって同社のビジネスが追加的な悪影響を一切受けないとする。また、野村HDの新しい株式時価総額は、(3)損失情報の発生以前の時価総額が適正なのだとすると、(4)その額から、2200億円が消えたとして引き算で見当を付けることができるはずだ。 野村HDの発行済み株式数は『会社四季報』(東洋経済新報社)によると、おおよそ32億3000万株だ。この株数で2200億円を割ってみると、この損失の1株当たりのインパクトは約68.1円だと計算できる。 問題は上記のいくつかの留保条件の吟味だ。 (1)2200億円が損失額の上限なのだろうか?正確なことは分からない。追加の損失が隠れている可能性は否定できない。他方、問題の性質として本件はアルケゴスに特有の問題で、他に波及しない性質のものでありそうだ。仮に最大損失額を3000億円と見積もると、1株当たりのインパクトは92.9円だ。 (2)野村HDが資金力・信用力の小さい会社であれば、2200億円の損失で資金繰りが苦しくなったり、資金調達のコストが上昇したりする可能性があり、損失は本業の利益を損なう可能性がある。また、損失の発生理由が企業のビジネス上の評判を損なうようなものであれば(例えば消費者の不買に発展しかねない食品メーカーの品質管理上の不正など)、追加的な悪影響を見積もる必要がある。野村HDにこれらの要素がなければ、損失問題の株価への影響評価は(1)の計算からそう遠くないはずだ。 (3)いつにあっても、どの銘柄でも「適正株価」の判断は難しい。それでもこの方法のいいところは、「前の株価が適正だとすれば」という前提で、「新しい情報とその情報のインパクトを勘案することによって」、情報発生後の株価の評価ができることだ。前の株価(3月26日の終値は720.7円)は特殊な状況によるものだったのだろうか?) (4)2200億円の純資産の減少による時価総額のマイナスが、これ以上のものになるべき理由があるか?例えば、資本が効率よく利用されていて将来高い利益が期待されているような会社の場合、2200億円の純損失は時価総額にもっと大きな影響をもたらしてもおかしくない。一つの参考として、株価純資産倍率(PBR)を見ると、野村HDの下落前の株価(720.7円)に対するPBRは、0.79倍と1倍を割っていた。この心配は小さいかもしれない。 野村HDの株価は、悪材料の発表から1週間たった先週末終値で572円20銭だった。前週末比148円50銭安だ。 上記の留保条件をいずれもクリアできると考える投資家にとっては、いくらか「下げ過ぎ」と見えるかもしれない。ただし、諸々の不確実性が大きいことを考慮すると、チャンスと考えるにはこの幅では不足だと考える投資家もいるだろう。 読者の判断はいかがだろうか? 同業他社の悪材料であり、「買い」とも「売り」とも言えないのにあえて株価の評価について書いた理由は二つ。投資家にとって、(1)悪材料のインパクトはしばしば数量的に評価しやすく、(2)再びしばしば悪材料に対しては市場の過剰反応が起こる場合があるからだ。 特に前者については、好評な新製品などの「好材料」が一体どれくらいのインパクトをもたらすのかが茫漠として評価しづらいのに対して、突発的損失や会計上の不正、工場などの被災などの「悪材料」は、金額的なスケールが評価しやすい場合があることについて注目したい。 株式投資家はニュースで上場企業の悪材料を見つけたら、発行株数をチェックして株価へのインパクトを考えてみる習慣を持つといい。ぜひ、持ち技の一つに加えてほしい』、「筆者は証券会社の社員でもあるので、仰ぎ見る最大手とはいえ「同業」である野村HDの株式について、「買い」も「売り」も推奨することはできない:、と予め立場を明確にするのは、公正さを重視する山崎氏らしい。「株式投資家はニュースで上場企業の悪材料を見つけたら、発行株数をチェックして株価へのインパクトを考えてみる習慣を持つといい。ぜひ、持ち技の一つに加えてほしい」、今後大いに活用してみたい。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE 資本市場 真壁 昭夫 山崎 元 (その5)アルケゴス問題2題(2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある、野村が2200億円の損失も 「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点) 「2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある」 日本では野村、みずほFGで損失発生か 行きすぎたリスクテイクが放置されている 「規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する」、確かに問題だ 甘い規制と借り入れ…利得を重ねるフアン氏の手法 「リーマンショック後、多くのヘッジファンドが外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行い、規制から逃れようとした。それがファミリーオフィスを“影のヘッジファンド”と呼ぶゆえんだ」、「ファミリーオフィス」が今後、「規制の対象」に含まれる可能性はあるのだろうか。 「規制強化に直面した大手金融機関にとって」「ファミリーオフィスの重要性は高まった」。 「CFD取引」は確かに「レバレッジの効果」が利きそうだ。 「金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れようとした」、もともとは「アルケゴス」が蒔いた種だ 確かに「パリバショック」に似ているが、規制強化で「金融機関」が取れるリスクに枠がはまったのも事実だ 「「金融機関同士の疑心暗鬼」が生まれている」、嫌な兆候だ 「アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、先行きの展開を注視する必要がある」、同感である 「野村が2200億円の損失も、「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点」 アルケゴスショックの論点(1)危機は連鎖するか? 「TRS」は「いささか不透明なポジションの作り方だが、金融機関側にとってもリスクにカウントされる融資を持たずに済むし、相手が破綻しなければ安定的に金利・手数料収入が入るので、好都合な面のある取引だ」、その通りだ。 「金融業は「リスクに目覚めた自浄作用」が働きにくいビジネスなのだ」、言い得て妙だ。 アルケゴスショックの論点(2)いかにも「バブル的」な資金の流れ 「現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある」 「投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう」、その通りだ アルケゴスショックの論点(3)野村HDの株式評価に対する「考え方」 「筆者は証券会社の社員でもあるので、仰ぎ見る最大手とはいえ「同業」である野村HDの株式について、「買い」も「売り」も推奨することはできない:、と予め立場を明確にするのは、公正さを重視する山崎氏らしい 「株式投資家はニュースで上場企業の悪材料を見つけたら、発行株数をチェックして株価へのインパクトを考えてみる習慣を持つといい。ぜひ、持ち技の一つに加えてほしい」、今後大いに活用してみたい。
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