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企業不祥事(その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか) [企業経営]

企業不祥事については、1月7日に取上げた。今日は、(その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか)である。

先ずは、4月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事」を紹介しよう。なお、ここで取上げているのは、厳密には企業ではなく、官公庁だが、ここでは広く捉えることにした。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00124/
・『厚生労働省で耳を疑うような“事件”が続発している。 1つ目は、「怒りを買った組織の末路」だ。 新型コロナウイルス対策で最前線に立つ厚労省の職員23人が、銀座で送別会をしていた問題で、宴会に参加していた3人と同じ部署(老健局)の3人、計6人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された』、今日の新聞報道によると、大阪市や大阪府の職員が多数で飲食店を利用していたことも判明している。いくら歓送迎会のシーズンとはいえ、自粛を呼びかける主体がこのザマでは、示しがつかない。
・『パワハラ相談員がパワハラ  SNSでは、「これでやっぱり大人数の宴会の感染リスクが高いってことが分かったじゃん」だの、「厚労省が自ら少人数・時短営業の効果を証明した」だのと皮肉交じりのコメントが相次いだが、ったく何をやっているのか。 逼迫している医療現場のリアルや様々なシミュレーションを基にした感染源の特定などを、感染拡大を危惧する専門家たちと共同作業をしている“はず”なのに、「自分たちは別」とでも思っていたのだろうか。 そして、2つ目は、「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」という、看過できない事実だ。 報道によれば、2017年に元室長補佐の部下だった男性が、暴言などのパワハラに該当する行為を受けたとして昨年(20年)、公務災害を申請し、今年(21年)3月2日付で認定された。男性の上司は、職場でパワハラ対策をする相談員だったにもかかわらず、部下の男性に対し、「潰してもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」などと、他の職員たちがいる前で罵倒を繰り返したという。 男性はうつ病を発症し、昨年、退職。「複数の部署や窓口などに相談したが、どこも機能しなかった」そうだ。一方、厚労省は「パワハラ防止を所管する省として誠に遺憾で反省している。職員への研修を再徹底したい」とコメントし、元室長補佐の給与を1カ月間1割減額する懲戒処分にした。 続く3つ目の問題も、同じくパワハラである。 スクープを連発している『週刊文春』が、上司にパワハラを受けていた男性が、事前に準備していたハンマーで厚労省が入る合同庁舎の窓ガラス1枚を派手にたたき割り、そこから飛び降り自殺を図ろうとしたという、かなりショッキングな“事件”を報じた。 男性は19年春ごろに異動してきた上司から、「簡単な仕事にいつまでかかってるんだ!」「バカか、お前は!」などと、同僚たちの目の前で罵倒され、同年秋頃に体調不良で休職。その後、職場復帰を果たすも、部署全員が受信する業務メールから外されるなどの“いじめ”を受けた。 部署異動の内示を受けていた男性は、“事件”の起きた当日、同僚たちに挨拶メールを送信。そこには、「上司からのパワハラに苦しめられたことを示唆」する文面がつづられていたという。 ……ったく。いったい厚労省は何をやってるのか。 10年以上も、専門家たちとともに、パワハラ対策に取り組んできたのは何だったのか。 パワハラに悩み、傷つき、生きる力を失った人たちに関わってきた専門家たちの「パワハラをなくしたい」という強い思いを、件の厚労省の職員たちは踏みにじったに等しい』、「「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」、まるで笑い話だ。しかし、(対象となった人は)「うつ病を発症し、昨年、退職、悲惨だ。
・『倫理観ではなく組織風土の問題  まさか「俺たちは“国民”のために、昼夜問わず働いてるんだからさ、そりゃ飲みにも行きたくなるし、怒号を飛ばすことだってある。だって、“国民”のために粉骨砕身働いているんだもん!」とでも思っているのだろうか。 厚労省の職員の不祥事はこれまでも、あきれるほど繰り返されてきた。どれもこれも一般の企業なら、一発で“吹き飛びそう”なものばかりだ。 04年には「年金個人情報漏えい」が発覚し、長官ら約500人が訓告などの処分 05年には「書籍の監修料受領問題」で、55人が戒告などの処分 15年には「年金個人情報流出」で、事務次官ら14人が戒告などの処分 17年には「戦没者遺骨収集事業での不正経理」で、課長補佐ら3人が停職などの懲戒処分 18年には「不適切な労働時間調査」で、事務次官ら5人が戒告などの処分 さらに、 19年4月には、介護保険料が約200億円も不足する恐れがある計算ミスが発覚した。同年7月には、シベリア抑留者の遺骨の一部が日本人ではない可能性があると把握しながら放置していたことが明らかになった。いずれも厚労省が自ら公表したものではない。また同年12月には再び介護保険料に絡む計算ミスが発覚している。 ……これはもはや職員の倫理観の問題ではなく、組織風土の問題である。 ミス、不正、パワハラ、不祥事が起きると、個人や職員の資質が問題にされがちだが、働く人たちの倫理観はおおむね、組織風土に左右される。 組織風土とは、「その組織に所属する多くの人に共通したものの見方や考え方、行動特性」で、長い年月をかけて培われ、組織に深く根ざし、組織を包んでいる目に見えない“空気”のようなものだ。トップが「(不祥事を)二度と起こさないように」「深く反省し」などと頭を下げて、変わるものではない。 腐った組織風土は、人間の良心と魂をむしばんでいく。組織への帰属意識が高ければ高いほど、その傷は深く、痛手を負い、違法すれすれでも「まだ黒じゃない」と当人は思い込むようになるし、「慣習的に先輩たちがやってきたことだから」と何の疑問も持たなくなる。 最初は抵抗があった人でも、次第に慣れて、無意識下で悪事に手を染めてしまう。ある調査では、従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた(イェール大学センター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスとファース財団の共同調査、全米1万4500人以上が対象)』、厚労省といえば、前身は戦前のエリート官庁の内務省である。それがこんな体たらくとは情けない。米国でも「従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた」、組織につきものの病理のようだ。
・『おかしいと感じない「傍観者」を量産  組織を包む“空気”圧は……とんでもなく手ごわい代物なのだ。 仮に、「それはおかしい」などと声を上げようものなら、「アイツは組織の論理が分かっていない」だの、「めんどくさいヤツ」呼ばわりされ、「やっかい者は追い出せ!」と排除される。 結果的に、「おかしい」を「おかしい」と言わない傍観者が量産され、「おかしい」が日常になる。これは実に恐ろしいことだ。 くしくも、厚労省は、「パワハラ防止法」に、「平均的な労働者の感じ方」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で総合的に考慮する」「労働者が受ける身体的又精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して」などという、至極曖昧な言葉を入れ込み、「時代を巻き戻した」わけだが(参考コラム「時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然」)、「潰してもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」「簡単な仕事にいつまでかかってるんだ!」「バカか、お前は!」といった明らかなパワハラは、厚労省内では総合的・平均的に、飛び交ってるということなのだろう。 とはいえ、開いた口がふさがらないような“事件”は、厚労省に限ったことではない。文書書き換え、高額接待など、枚挙にいとまがない。つまり、「官僚の倫理観」が昨今問われているけれど、問題の根本は官公庁全体の組織風土にある。そう思えてならないのだ。 そもそも組織風土は、競争が激しく、出世へのキャリパスが明確で、手に入る権力が大きければ大きいほど強固になることが分かっている。 自治官僚として地方財政制度の基盤を築き、内閣官房副長官として7人の内閣総理大臣に仕えた石原信雄氏は、著書『官かくあるべし――七人の首相に仕えて――』の中で、バブル崩壊以降の、官僚の不祥事やスキャンダル、大蔵官僚(当時)の「ノーパンシャブシャブ事件」などに触れ、官僚のスーパーエリート教育の末路を嘆き、それらを引き起こす要因に言及している。 その中で、官僚たちのマインド&役割の変遷を述べているのだが、これがかなり興味深い』、「石原信雄氏」の指摘とは興味深そうだ。
・『大きすぎる「政」と「官」の重なり  石原氏は、「昭和20年代に入省した官僚たちには強い意欲と使命感があり、戦後復興と経済再建し、高度成長につなげるなど、明確な目的意識と戦略目標があった」と評価。さらに、「それは官僚たちにとって緊張感と高揚感に満ちた時代であり、行政や政策形成の仕事に確かな手応えが感じられた時代であった」とした。 一方、昭和30年代半ばから昭和40年代以降に入省した高級官僚については、「急成長の軌道を全力で疾走してきた国が“限界のカベ”に突き当たって停滞ないし下降に転じたとき、……露呈した矛盾をつくろい、問題点を処理し、国家的な大目標が見失われた時代環境のなかで、限られたパイをめぐっての族議員と利益団体、それに省益拡大をねらう官僚が絡んだ『利益調整型』政治に取り込まれていった」と酷評している。 また、石原氏は日本の官僚制度が、欧米諸国と大きく異なる点として、「政治家との距離感の近さ」を指摘している。 「政」と「官」の役割の重なり合う部分が欧米諸国ではありえないほど大きいのだ、と。その上で、「批判されてきた官僚の行動やあり方の本質的な原因は政治側にある」と指摘する。 ――有能なエリートによる行政には、エリートだからこそ発揮できるプラス面がある。的確な分析と判断、状況に即応した政策立案・策定、効率的な行政運営など、いくらもあげることができよう。が、エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである(前掲書、P94より)――) そのエリート意識の末路が、大蔵省(当時)の「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」であり、大和銀行不正取引事件であり、住専問題処理、一連の金融機関破綻だとした。 これらの問題が起きてから20年以上がたったわけだが、その間、“高級官僚の暴走”を食い止める制度がいくつもできた。しかし、いかなる制度も階層・組織上階のトップたちが、問題を直視し、受け止め、組織を変えようという強い意志を持たない限り、変わるものではない。組織風土が長い年月で培われるものなら、それを変えるにはそれ以上の長い年月がかかる』、「エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである」、その通りだ。
・『ウミだらけの組織に  「政治家への忖度(そんたく)が生まれるのは、官僚の人事制度に問題があるからだ」という意見があるけれど、いかなる制度も常に不完全であるので、問題を生むのはそれを運営するトップの問題である。 そもそも「腐った倫理観」は、上から下に伝播(でんぱ)するものだ。 海外の研究になるが、米カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのキャメロン・アンダーソン教授らが行った調査では、集団の中で高い地位に就くと帰属意識が高まり、集団の非倫理的行為に対する分別を失わせることが分かっている。 また、同教授が米国の22の政府機関の職員1万1000人以上を対象に実施した調査でも、役職が上がるごとに声を上げる見込みが低下し、上級管理職は地位が最も低い職員に比べて、その(声を上げる)割合が64%も低かった。 本来、階層組織の上位者はたくさんのリソースを手に入れた組織の逸材……のはずなのに。 組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく。無意識に。そう、無意識に。そして、そのあきらめが、今、「私」たちにも広がっているような気がするのは、決して気のせいではないように思う。自戒も込めて』、「組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく」、組織が腐敗していくメカニズムには、納得できる部分が多い。

次に、4月11日付け東洋経済Plus「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26723
・『トヨタのおひざ元である愛知県で起きた販売店の不正車検。前代未聞の不正はなぜ起きたのか。その背景を探った。 「今回のような不正が本当にありえるのかと思った。どんなに作業が忙しくても絶対に越えてはならない一線だ」ーー。トヨタ自動車の販売店で発覚した不正車検について、他メーカーの販売会社の社長はそう口にした。 国土交通省中部運輸局は3月30日、ネッツトヨタ愛知の販売店(プラザ豊橋)の不正車検に対する行政処分を発表した。法令違反の対象台数は5158台。この店で2018年12月22日~2021年1月13日に車検を行ったすべてに当たる。ネッツトヨタ愛知を含めて4つのトヨタ系販社を持つATグループ(名証2部上場)は、愛知県内で最大手のディーラーだ(詳細は「愛知県に12社『トヨタ販社』の序列)。 今回の不正は2020年12月、中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚した。 プラザ豊橋では、排ガスの一酸化炭素濃度やスピードメーターの誤差、サイドブレーキの制動力などに関する点検・検査を省いて保安基準適合証を交付したり、実際に検査したかのような虚偽の整備記録を作成したりしていた。 不正に関与した整備士は中部運輸局の監査に対し、「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという 自動車販売店における車検は、国が行うべき業務を代行するもので、販売店には「指定工場」、整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられている。 中部運輸局はプラザ豊橋店での自動車整備事業の指定を取り消し、整備士8人のうち不正に関与した整備士7人について自動車検査員の解任命令を出した。この行政処分により、プラザ豊橋は自動車整備事業の申請が2年間できず、7人の整備士も2年間は車検業務ができない』、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が「2年間」も続いていたとは、心底から驚いた。
・『「店長は指示していない」  法令違反の対象となった5158台について、ATグループのほかの販社(愛知トヨタ自動車、トヨタカローラ愛豊、ネッツトヨタ東海)にも協力を仰ぎ、車両の再点検・再整備を行う。作業完了には8カ月かかる見通しだ。 県内に約30店を展開するネッツトヨタ愛知は今回の問題を受けて、ほかの店舗の整備士全員に聞き取りを行い、「同種の不正はなかったことを確認した」としている。 だが、不正が公になってから、他店舗で車検を受けた顧客から、「自分の車は大丈夫か」といった問い合わせが相次いでいるという。過去2年間にネッツトヨタ愛知の別の店舗で行った車検についても、すべての車両を対象に再点検・再検査を実施する方向で準備を進めている。 違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ。 ネッツトヨタ愛知は今回の不正について、「(プラザ豊橋の)店長は指示していない」とし、あくまでも整備士が不正の認識がありながら、自主的な判断で行ったとしている。そのうえで、「1台当たりにかかる車検の時間の認識が適当ではなかった」「(車検の予約を受け付ける)営業部門と整備部門の意思疎通が不十分だった」と釈明する』、「違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ」、自ら蒔いた種だから、自分で責任を持って対処するのは当然だ。
・『サイトから消えた「45分車検」  首都圏のトヨタ系販社幹部は今回の不正について、「数が多いからといって検査を適切にやらないなんてことは考えられない。現場の状況を考えて(車検の受け入れ数を)コントロールするのが会社の役割だ」と批判する。 今のところ、不正車検の対象車両に不具合が出たという報告はないが、手抜きの検査は人命に関わる。トヨタ幹部は「(車検は)国から任せてもらっていることなので、こうした問題は絶対に避けなければならない。われわれとしても深刻に受け止めている」と話す。 実は、ネッツトヨタ愛知は「ネッツ45 車検」と銘打って、45分でのスピード車検を10年以上前から展開していた。不正発覚後は同サービスを停止し、同社のホームページからもその表示が削除されている。 ATグループによれば、45分と作業時間を明確にしたスピード車検を展開していたのは、傘下4つの販社の中でネッツトヨタ愛知だけ。早さを「売り」に集客したものの、処理しきれないほどの数を受注してしまった可能性が高い。 現在、ネッツトヨタ愛知のホームページから削除されているが「ネッツ45 車検」とうたっていた(画像はネッツトヨタ愛知のサイト) 東海地方のホンダ系販社の店長は、「整備点検や検査も含めて考えるとどうやっても車検は45分では終わらない。うちの店は(12カ月の)法定点検ですら1時間半かけている。時間がかかることは丁寧に説明してお客さんに理解してもらっている。ただ、最近はガソリンスタンドなどでも『1時間車検』などとうたっていて、短時間で終わるからお客様に喜ばれる。そういうものが世の中に浸透しすぎている」と警鐘を鳴らす。 今回、不正が見つかったプラザ豊橋での法令違反の対象台数は5158台だから、1年で約2500台の車検を行っていたことになる。 愛知県の別のトヨタ系販社の店長はこれについて、「自分たちの店では整備士が4人で年間にできる車検は1000件程度。整備士7人で1年間に2500件以上はさすがに多い」と指摘する。この販社では45分車検のサービスは公式にうたっていない。ただ、新車購入から3年目の初回車検に限り、見積もり段階で車を見た上で、「45分のスピード車検が可能だと判断することもある」という』、「45分車検」をサイトに出していたということは、現場の判断だけでなく、会社も承認していたことになるのではなかろうか。「店長は指示していない」、というのもウソだろう。
・『トヨタも「45分」を売りに  スピード車検は愛知県内の販社だけの売りではない。トヨタのホームページには「トヨタだからジャスト・イン・タイム、プロの技術で45分で車検完了」と紹介している。トヨタ系販社の中には「30分車検」(ハイブリッド車は40分)をうたうところもある。 西日本のトヨタ系販社の幹部は、「新車購入後3年の初回車検と2回目の車検の一部では、部品交換なしで45分車検は可能だが、車齢が長くなると部品交換なども増えて2時間以上かかるのはざら」と話す。近年比率が高まっているハイブリッド車はエンジン車に比べて車検の時間がかかることも多く、車検にかかる時間は慎重に見積もっているという。 つまり、「45分車検」そのものが諸悪の根源というわけではなく、プラザ豊橋で起きた大量の不正車検は、車検業務に当たる整備士の数と受注数(車検車両の受け入れ)のバランスが崩れていたにもかかわらず、放置されていたことが問題の本質だろう。前出の愛知県の販社の店長は「ネッツトヨタ愛知は(1935年に創業した)名門のATグループ傘下で、いわゆる“お堅い会社”。過去にも問題を起こすようなことはなかった。なぜこんな不正が起きたのか」と首をかしげる。 ネッツトヨタ愛知の担当者は、「車検の台数目標は存在していたが、整備士の人員規模が適切だったかは改めて検証する必要がある」と説明する』、「整備士の人員規模」からみて無理な「車検の台数目標」が今回の「不正」の背景の1つにありそうだ。
・『不正車検の始まりは特定できず  今回の件でネッツトヨタ愛知が聞き取りを行ったところ、検査員は「2年よりも前から不正を行っていた」ことを認めたものの、いつから行われていたかは特定できなかったという。 販売店が車検を行った場合、指定整備記録簿と呼ばれる書類を2年間保管する義務がある。そのため、中部運輸局は過去2年間分の車検を法令違反とした。仮に2年よりも前に不正があっても、書類での確認ができないため不問にせざるをえないのだ。ATグループでは、ネッツトヨタ愛知の問題を受けて、傘下のほかの3社でも不正車検がなかったのかを点検している。 ネッツトヨタ愛知は半年に一度、販売店を対象に社内監査を行っていたが、主に書類をベースとした監査でプラザ豊橋の不正車検を見抜けなかった。再発防止策として、監査の強化や全社員へのコンプライアンス教育の徹底、サービスオペレーションの見直しを軸とする再発防止策を策定し中部運輸局に提出している。 中部運輸局が行政処分を発表した3月30日、トヨタ系販売会社の組織である「トヨタ自動車販売店協会」の役員会が行われた。トヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は販売店での不祥事が増えていることに触れ、人材育成の重要性を強調したという。販社関係者によると、トヨタは全国の販売会社に対してネッツトヨタ愛知と同様の事案がないか、ヒアリングをしているという。 トヨタ系ディーラーで起きた前代未聞の不正車検。全国の販社に対するヒアリングを経て、トヨタはどんな指示を出すのか(記者撮影) 国内の新車販売はコロナ禍が響き2020年度は5年ぶりに500万台を下回った。コロナの影響が軽微だった2019年度でも最盛期の3分の2にまで縮小している。一方で、国内の自動車保有台数(乗用車・商用車)は8000万台弱と緩やかな増加が続く。保有台数が増えていれば、法律で定められている車検の需要も見込める。 乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ(詳細は「販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」)。アフターサービスとして安定した収益が得られる車検は顧客からの信頼があってこそ。東北地方のトヨタ系販社の社長は「車の販売会社として、正しいメンテナンスは責務。襟を正して真摯に取り組んでいかないといけない」と話す。 今回の問題が発覚した後、他のメーカーでも「ウチは大丈夫か」となり、車検の抜き打ち監査に動くところもある。前出のホンダ系販社の店長はこう述べた。「(店舗ごとに)高い数値を求められて、現場の整備士に余裕がなかったのだろうか。ましてトヨタ、しかも愛知県で」。トヨタ系に限らず全国の販売会社に衝撃が走った不正であることは間違いない。 【情報提供のお願い】東洋経済では、自動車ディーラーの経営や車検の課題を継続的に取り上げていきます。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております』、「乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ」、これも今回の「不正」の背景の1つのようだ。

第三に、この続きを、4月11日付け東洋経済Plus「新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26725/?utm_campaign=EDtkprem_2104&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=210417&_ga=2.253158665.1680389212.1618707326-1011151403.1569803743
・『ネッツトヨタ愛知で発覚した不正車検では、中部運輸局の監査に対して、整備士が「過剰な入庫が常態化していた」と話したという。販売店が身の丈を超えた数の検査を受け入れたのは、車検が「儲かるサービス」であることと無縁ではないだろう。 自動車の安全確保という趣旨の下、自動車検査(車検)は道路運送車両法で義務づけられている。普通車や軽自動車は新車で購入した場合、初回が購入後3年、2回目以降は2年ごとに受ける必要がある。車検を受けていない車で公道を走っていた場合、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)もある。 本来、車検は国が行うべきものだが、新車の販売店が車検を代行しており、それが収益源になっている』、なるほど。
・『車検には3つの方法  車検の主な検査項目は、車両に割り当てられている車台番号などが自動車検査証(車検証)と同じかの確認、ライトやタイヤなどの正常性の確認(外観検査)、ブレーキやヘッドライトの性能確認、排気量検査がある。 検査方法は、①ユーザー自身が運輸支局などに持ち込んで行う、②点検・整備と完成検査まで一括して代行する「指定整備工場」へ持ち込む、③点検・整備のみを行う「認証整備工場」に持ち込み検査を運輸支局などで行う、の3つがある。 新車の販売店は指定整備工場の資格を取得していることがほとんどだ。馴染みの販社から車検の案内が記載されたダイレクトメールを受け取り、車を持っていく人は少なくないだろう。 車検とは別に法令で義務づけられているのが12カ月点検と24カ月点検だが、この点検を受けていなくても罰金や罰則はない。24カ月点検は通常、車検に合わせて実施する一方、12カ月点検はそうした機会もなく、半ばユーザーの自主性に委ねられている。 国土交通省によると、普通車と軽乗用車の12カ月点検実施率は最新集計で約6割(2017年)。それでも、日本のように1年や2年で点検、車検を実施する国は海外でも珍しい。そもそも点検整備が法律で義務づけられている国はニュージーランドやアメリカ(州によって異なる)など先進国でも少なく、「過剰すぎる」と批判されることもある。 一方、車検制度は自動車業界にとってアフターサービス市場を形成する重要な“事業”だ。車検や点検に結びついた整備や修理、部品交換といった整備事業の市場は大きく、日本自動車整備振興会連合会によると、2020年度(2019年7月~2020年6月)の総整備売上高は約5兆6000億円もある』、「整備」の市場規模もかなりあるが、そのうち「車検」の規模はどれくらいあるのだろう。
・『新車販売減り、整備に活路  特に近年、車検や点検の入庫獲得に躍起なのが新車の販売店だ。理由は主に2つある。 1点目は重要な収益源になっているという点だ。販売店の主な事業は新車販売以外に、整備(サービス)や中古車販売、自動車保険などがある。 その中で、安定収益とされるのが整備事業だ。仕入れ費用で利幅が薄い新車販売と異なり、整備事業はそうした費用もかからない。ホンダ系販売店の店長は「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」と話す。 さらに自動車の平均車齢はここ30年で2倍の9年近くにまで伸び、新車を売る機会は減っている。今や国内の新車販売はピークだった1990年の777万台に比べ3分の2の規模だ。一方で自動車の保有台数は8000万台弱と緩やかな増加が続く。車検や点検は法律で定められているため、需要は底堅い。 もう1つは顧客との接点を持てること。首都圏の日産系販社の社長は「購入してもらった新車で車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」と話す。来店してもらえれば営業スタッフがお客さんと話す機会も作れる。その結果、次の新車への乗換えや保険の提案が可能になる。 西日本のトヨタ系販社の幹部は「うちの場合、新車を購入したお客さんのうち7割が初回車検に来てくれる。車検は利益率が高いので、(利益率が低い)新車販売が減ってきても、当面は車検需要で食っていける」と本音を漏らす。「車検や点検で車を入れてくれるのは『ディーラーだから』という信頼感が大きい。お客さんと信頼関係を築いて、新たな商機につなげていくのが基本」(ホンダ系販社) つまり、販社は新車を販売して終わりではない。販売してから、いかにお客さんと関係を維持し、メンテナンスなどで店に来てもらえるかが重要なのだ』、「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」、確かにディーラーにとっては「車検」は重要なビジネスだ。
・『「メンテパック」で顧客囲い込み  こうした背景から新車の販売店では車検や点検、消耗品補充がセットになったメンテナンス(メンテ)パックの販売を積極的に推進している。新車発売後の1カ月点検や6カ月点検をパックに盛り込む会社も少なくない。手厚いサービスにみえるが、それだけ収益に結びつけようとしているとも言える。前出の日産系販社では「初回の車検は(同社で新車を買った人のうち)8割、2回目で7割を獲得している」という。 車検の争奪戦には、車検チェーンなどの整備業者やカー用品店、ガソリンスタンドなども参戦しており、競争が激化。事業性の側面が強まっていることは否めない。 しかし、車検や点検は法令に基づいた義務であり、安心・安全のためという大前提でユーザーがお金を払っている。前出の日産販社社長こう強調する。「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」』、確かに「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、それなのに、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が行われていたとは、まさに不祥事中の不祥事だ。
タグ:企業不祥事 (その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか) 日経ビジネスオンライン 河合 薫 「「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事」 今日の新聞報道によると、大阪市や大阪府の職員が多数で飲食店を利用していたことも判明している。いくら歓送迎会のシーズンとはいえ、自粛を呼びかける主体がこのザマでは、示しがつかない。 「「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」、まるで笑い話だ。しかし、(対象となった人は)「うつ病を発症し、昨年、退職、悲惨だ 厚労省といえば、前身は戦前のエリート官庁の内務省である。それがこんな体たらくとは情けない。米国でも「従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた」、組織につきものの病理のようだ。 「石原信雄氏」の指摘とは興味深そうだ 「エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである」、その通りだ。 「組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく」、組織が腐敗していくメカニズムには、納得できる部分が多い。 東洋経済Plus 「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」 「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が「2年間」も続いていたとは、心底から驚いた。 「違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ」、自ら蒔いた種だから、自分で責任を持って対処するのは当然だ。 「45分車検」をサイトに出していたということは、現場の判断だけでなく、会社も承認していたことになるのではなかろうか。「店長は指示していない」、というのもウソだろう。 「整備士の人員規模」からみて無理な「車検の台数目標」が今回の「不正」の背景の1つにありそうだ。 「乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ」、これも今回の「不正」の背景の1つのようだ 「新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」 「整備」の市場規模もかなりあるが、そのうち「車検」の規模はどれくらいあるのだろう。 「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」、確かにディーラーにとっては「車検」は重要なビジネスだ。 確かに「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、それなのに、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が行われていたとは、まさに不祥事中の不祥事だ。
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