SSブログ

ミャンマー(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) [外交]

ミャンマーについては、3月24日に取上げた。今日は、(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠)である。

先ずは、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した毎日新聞記者の永井浩氏による「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-95986_1.php
・『ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ> ミャンマーの国軍クーデターから2ヶ月。この政変が起きた2月1日の本サイトで、私は「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」と書いた。政府はこれまで、同国の民主化を支援するという空念仏を唱えるだけで、事実上軍政の延命に手を貸してきた事実を知っていたからである。だが、私の期待は裏切られたようだ。民主化運動への国軍の弾圧は残虐化するいっぽうなのに、「民主国家」日本の政権担当者は国軍「非難」の談話などを出すだけで、欧米諸国のような制裁には踏み切れない。なぜなのかを理解するために、私は古い取材メモなどをあらためて引っ張り出してみようと思った』、「日本政府は軍政の「共犯者」、とは手厳しいが、具体的なポイントをみてみよう。
・『スーチー氏「解放」の実態  私がミャンマーの民主化について取材をはじめたのは、民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏が6年間におよぶ自宅軟禁から解放された1995年7月から間もなくしてからだった。彼女の解放を喜ぶとともに、依然として軍政がつづく同国の現状と今後の見通しについていろいろ聞きたいジャーナリストが、世界各地から最大都市ヤンゴンのスーチー邸に殺到した。毎日新聞記者の私もその一人だった。 日本政府は彼女の解放を民主化への前進と評価し、欧米諸国にさきがけて、軟禁下で凍結されていた経済援助の再開を表明した。では「解放」の実態とはどのようなものだったのか。多くのジャーナリストの取材申し込みのウエイティングリストの後ろのほうに載っていた私が、やっとスーチー邸の門をくぐったのは9月2日だった。 まだ雨季なので、足元はぬかるんでいた。訪問客は、邸内に設けられた受付で姓名、所属団体、外国人ならパスポート番号を書くようにもとめられる。これは、軍事政権「国家法秩序回復評議会」(SLORC)がスーチー氏の「警護」のために取っている措置とされるが、彼女の側からの自発的要請にもとづくものではない。外国人には、公安当局がカメラのフラッシュを浴びせる。 解放直後は、祝福のお土産をかかえて国内各地から駆けつけた、彼女の率いる「国民民主連盟」(NLD)の支持者たちがひきもきらなかった邸内は、だいぶ落ち着きを取りもどした。軟禁中は手入れができず、「まるでジャングルみたいだった」と彼女が述懐する庭もこざっぱりした。 しかし、日常の活動はいまだに大きな制約を受けている。電話は通話可能になったものの、側近によれば「盗聴されている疑いが強い」。コピー機とファックスの設置には政府の許可が必要だが、申請してもいまだに許可が下りていない。共産主義政権が倒れるまでのソ連・東欧諸国のような言論統制だ。私信はまず届かないとみた方が確実だ。私もインタビュー掲載紙と書留を日本から送ったが、二通とも届いていないことがその後わかった。 スーチー氏以外の多くの党員や支持者は投獄されたままだ。5人以上の集会は事実上禁じられているために、彼女は自宅前に集まった市民に話しかける「対話フォーラム」をはじめた。軍事政権は記者会見を自由に開き、国営の新聞・テレビで自分たちの意見や宣伝を流すことができるが、NLDには自分たちの活動を伝える印刷物さえ許されない。 これが「解放」の実態なのだが、日本政府はそれを民主化進展のあかしととらえた。ヤンゴンの日本大使館関係者は、軍事政権による表現の自由の抑圧ではなく、スーチー氏がNLD書記長に復帰したことを「予想外の強硬な態度」と評した。彼らにとっては、日本のODA(政府開発援助)大綱に定められた基本的人権や自由の保障とは、この程度の意味しかもっていないようだった』、クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。
・『「経済発展に民主化は不可欠」  スーチー氏が私のインタビューで最も強調したのは、「経済発展には民主化が不可欠」という点だった。軍事政権が進める市場経済化政策に応じて日本など外国からの対ミャンマー投資が増えていることについて、「国民の政治に対する信頼がなければ長期的に安定した経済発展は望めません」として、民主化運動のために闘いつづける決意をあらたにした。それなしには、経済開発は軍人を頂点とする一握りの特権層のふところを富ませるだけで、貧富の格差をさらに広げることになってしまうからだ。 彼女はまた、日本人ジャーナリストの私に問いかけるように言った。「日本人は、戦後の繁栄と平和がどうして達成されたかを忘れないでほしい。それは、軍国主義から解放されて民主主義を手に入れたおかげではないでしょうか」。そのような歴史認識が日本の政府と国民に定着しているなら、私たちの民主化運動を正しく理解してくれるはずではないか、という意味であろう。 彼女はそれ以上言わなかったが、その日本軍国主義は第二次大戦中にビルマ(ミャンマー)を侵略し、この国の人びとの命と土地、財産、文化を踏みにじったことをミャンマー国民は忘れていない。彼女の父アウンサンは、英国からの独立をかちとるためにはじめは日本軍の支援を受けながら、日本の敗色が濃くなった戦争末期に抗日蜂起に立ち上がった「独立の英雄」である。 スーチー氏はさらに、「ビルマも1960年代に軍部が実権を握るまでは、民主政治の下で、アジアで最も発展の早い国でした」と指摘した。 私は日本のODA再開決定をどう思うかとたずねた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です。経済援助や投資を個人のためにではなく、国民全体の利益にむすびつくかたちで進めてほしい」 こう答えた彼女は、欧米とは異なる日本の対ミャンマー援助をやんわり批判した。欧米諸国は人権と経済援助をからめる「北風」路線をとっているのに対して、日本は経済援助を段階的に増やしながら軍政に民主化の促進をうながしていく「太陽」路線の優位を主張していたが、スーチー氏は「太陽は暑すぎて快適ではありません。これ以上太陽が暑くなると着ているものすべて脱がされてしまいます」というのだ。 日本のODA再開が彼女の軟禁からの解放に貢献したかのような見方にも、スーチー氏は反発した。「だれが私の解放をもっとも助けてくれたかは、歴史が明らかにすることです。その歴史を、本当の民主化を進めていくなかで、私たちはつくっていきたい」』、「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ。
・『なぜ『ビルマからの手紙』なのか  初対面の私がスーチー氏に対していだいた印象は、東南アジア各地の沼などでよく見かけるハスの花のイメージである。花は、凛として気品と優しさをたたえている。私はそのような美しい花を浮かべる水面の下がどうなっているのかを知りたくなった。 軍事政権や一部の日本人からは、欧米生活の長かった彼女には、自国の現実がよくわかっていないという批判が投げかけられていた。そのいっぽうで、欧米的な民主主義や人権の概念をあてはめ、彼女をミャンマー民主化の旗手にまつりあげる西側世論がある。だがそのような外部の一面的な見方だけでは、国民の圧倒的なアウンサンスーチー人気の秘密はわからない。でもかぎられたインタビューの時間では、その土壌がわからない。そこで私は、彼女に頼んでみた。 「ビルマの民主化を本当に理解するには、この国の歴史、文化、社会への多面的なアプローチが必要だと思う。それを毎日新聞にお書きいただけないだろうか」。彼女は「私もぜひ書いてみたい」と端正な顔をほころばせながら快諾してくれ、「ただ、いまはとても忙しいし、NLDの承認も受けなければなりませんので、正式の返事は2,3日待っていただけませんでしょうか」とのことだった。もちろん党のOKもでた。 こうして、スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』が11月末から週一回、毎日新聞の紙面を飾りはじめた。 私は、ミャンマー民主化運動の同時進行ドキュメントであるこの文章を日本の読者が読むことで、彼女たちの闘いを支援せよ、などと主張するつもりはなかった。また冷戦後の民主主義と人権の普遍性が強調される風潮のなかで、アウンサンスーチー=天使、軍事政権=悪魔といった安易な図式をあてはめて、アジアの隣人たちの闘いを論じることを避けたかった。「歴史の正しい証人」であることがジャーナリストの使命であるなら、まず言論の自由を奪われた国の人びとの声をできるだけ広く国際社会に伝えなければならない。民主主義の国の一員として享受している言論の自由を、その基本的権利を奪われた国の自由のために行使しなければならいだろう。その情報をどう判断するかは、読者にまかせればよいことである。 毎日新聞は日本語の新聞だが、スーチー氏の原文は英語なので、英語版のザ・デイリー・マイニチに掲載された"Letters From Burma"が目にとまれば、国際的な情報ネットワークをつうじてなんらかの形で世界にも流れる可能性があるだろう。連載開始後、まずAPなどの西側通信社が連載のなかからニュース性の高い情報をとりだして<東京発>で世界に配信しはじめた。ミャンマーの民主化運動を支援している日本の市民グループがザ・デイリー・マイニチの英文をインターネットで世界の市民ネットワークに流しはじめた。米国最大の独立系ニュース・シンジケート「ユニバーサル・プレス・シンジケート」がアジア、欧州、米国、中南米の新聞、雑誌に同時掲載する契約を申し出て、世界15か国で同時掲載されるようになった。 『手紙』のミャンマー国内への持ち込みは難しかったが、在日ミャンマー人の民主化支援グループがビルマ語に翻訳し、自分たちの発行する週刊紙に載せて、1988年のクーデター後に世界に逃れた同胞や、軍事政権に追われてタイ国境の難民キャンプで暮らすビルマ人やカレン人に送った。米国の「自由アジア放送」は、毎日1時間のビルマ語番組で『手紙』を流しはじめた。英国のBBCが『手紙』の一部を放送する計画との知らせも入った。タイの英字紙、タイ語週刊誌からの転載申し入れもつづいた』、「スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう。
・『日本政府は軍政の「共犯者」  ところが、『ビルマからの手紙』に対する日本政府の反応は驚くべきものだった。池田行彦外相は「スーチーさんは外国ばかりでなく自国民にももっと直接話しかけたらどうか」と、彼女の国の現実を無視した、民主主義国の外相としての見識を疑わせるような発言をした。この拙文の冒頭にあげた「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」ですでにあきらかにしたように、外務省は「日本・ミャンマー関係がこじれる。ひいては日中関係にも悪影響を及ぼす」と、再三にわたって毎日新聞に連載の中止を要請してきた。木戸湊編集局長は「『毎日』は民主主義を大切にする新聞である」と言って、彼らの要求を突っぱねた。駐日中国大使館員もパーティーなどで木戸と顔を合わせると、『手紙』に難癖をつけてきたという。ミャンマー大使館はザ・デイリー・マイニチに例年出していた広告の引き下げを通告してきた。軍事政権はしばらくして、「アウンサンスーチーは米国のCIAと日本の毎日新聞から資金提供をうけている」と発表した。 日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった。 軍政が国際社会からどのような批判を浴びる仕打ちを自国民に繰り返そうと、日本政府はつねに民主化運動を弾圧する側に寄りそいつづけた。1988年の民主化運動を今回のクーデター後とおなじように市民への無差別銃撃によって血の海に沈めたあと、90年の総選挙の結果を尊重する公約しながら、ふたを開けてみるとNLDの圧勝という結果になると、公約を反故にして権力の座に居座りつづけた非合法政権に対して、である。そして、2020年11月の総選挙でまたNLDが圧勝すると、国軍はクーデターで国民の圧倒的支持を得た合法政権を葬ろうとした。クーデターに反対する「市民不服従運動」が全国的な高まりを見せると、国軍はなりふり構わず子どもたちにまで発砲をつづける。 ミャンマーの悲劇に一刻も早く終止符を打たねばならないとする国際世論をうけて、米国、EUなどの政府は国軍への制裁措置をつぎつぎに打ち出している。日本政府は同盟国米国の顔色をうかがいつつ、国軍とのしがらみを断ち切れないまま、「われわれは民主化をもとめるミャンマー国民の側に立つ」との明確な意思を打ち出せず右往左往するだけである。 「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とは、マルクスの有名な言葉である。ミャンマーの国軍は、自国民を悲劇に陥れる蛮行を繰り返そうとして、「王様は裸である」と叫ぶ圧倒的多数の国民の声に耳をふさぐ喜劇の主人公を演じている。王様の親友であることで「民主主義国」という自らの看板を汚す悲喜劇を演じてきた日本政府は、いつまで国際社会の物笑いとなるような役回りをつづければ気がすむのだろうか。 *この記事は、日刊ベリタからの転載です』、「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。「日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。

次に、4月12日付けYahooニュースが掲載した弁護士で国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏による「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20210412-00232215/
・『エスカレートする国軍(ミャンマーのクーデター後、国軍の暴力がエスカレートしています。 国軍の虐殺で、すでに子どもや若者を含む700人以上が犠牲になっていると報じられています。 国軍はこれまで少数民族であるロヒンギャやカチンにも残虐行為の限りを尽くしてきましたが、今や抵抗するすべての者を標的にしています。 10日にはバゴーで、軍が80人を超える住民を虐殺したと報じられています。 (ミャンマーメディアの「ミャンマー・ナウ」は10日、中部の古都バゴーで9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという。現地では夜間の電力供給が遮断された。多数が行方不明との情報もある。死者数がさらに膨らむ恐れもある。日経)  そもそも軍のクーデターは合法性が認められず、権力行使はいかなる正当性もありません。 そして、あろうことか市民に対し、機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用するなど、「治安維持」によって正当化される範疇ではありません。 民間人に対する軍の攻撃は、国内の事態であっても「戦争犯罪」に該当するのであり、国軍の行為は国際法上いかなる観点からも擁護できるものではありません。 軍は、抗議活動を行う市民らを念頭に「木を育てるためには、殺虫剤をまいてでも雑草を根絶やしにしなければならない」と述べたとされ、さらに強権的な弾圧で人々を犠牲にする可能性が高いと言えるでしょう。事態は甚大です。 なぜそれでも戦うのか。 こうしたなかでも、驚くべきことに市民は屈することなく、抗議行動を続けています。殺されるかもしれないのに、なぜ、巨大な敵に挑むのか。 2016年の「民主化」まで、ミャンマーは軍事独裁政権下で、人々は自由のない暗黒の時代を耐え忍んでいました。ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています。 しかし、象とアリのようなミャンマーの市民の戦いで市民が勝利するには、国際的な支援が必要です』、「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる。
・『曖昧 問われ、失望される日本  特に、ミャンマーに影響力の強い日本の行動は問われています。 「日本政府は国軍と国民どちらの立場に立つのか?」 4月2日に議員会館で開催された院内集会で、在日ミャンマー人の若者は日本政府に強く迫りました。 外務省は、クーデター後、以下のような声明を公表して国軍を批判しています。 平和的に行われるデモ活動に対して実弾が用いられることは断じて許されません。日本政府は、ミャンマー国軍が、市民に対する暴力を直ちに停止し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者を速やかに解放し、民主的な政体を早期に回復することを改めて強く求めます。 しかし、日本の態度は、「口だけ」と批判されています。具体的には何をしているのか、しようとしているのか。 在日ビルマ人とヒューマンライツ・ナウは3月、連名で、日本政府に対し公開質問状を出し、4月2日にその回答が示されました。 しかし、その内容は極めてあいまいなもので、在日ミャンマー人を絶望させるものでした。 例えば、 質問4.日本政府は2020年総選挙によって国民に選ばれていた国会議員らによって構成される連邦議会代表委員会(CRPH)を、ミャンマー国の正式な国家機関として認めているか。認めないとするならその理由は何か。 回答: 〇我が国としては、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、②拘束された関係者の解放、③民主的な政治体制の早期回復、の3点を強く求めてきている。 〇ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきているが、その具体的内容については、現地の情勢が緊迫する中で、今後の対応や関係者の安全に影響を与え得るためお答えを差し控えたい。 この点は、質問に対する答えになっていません。ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきている、などとしていますが、違法なクーデターをしている軍を正式な交渉相手として認めることは一切あってはならないはずです。 アウンサンスーチー氏が率いる与党NLDの議員らは、クーデター後、「連邦議会代表委員会(CRPH)」を結成しました。市民の支持を得て活動しており、正当な政府としての承認を求めています。 日本はクーデターを認めない証として、CRPHを正式な代表と認め、交渉をすべきです。 では、今後具体的に何をするか、についても質問に答えません。 質問10.ミャンマー国内では市民の反中感情が高まっており、不買運動も展開されるなど、国軍が中国に頼れば更なる反発を受ける状況にあるとされる。日本政府が国軍に対して、非武装の市民への実力行使について、経済制裁を含む強く非難するメッセージを送ることで、国軍が中国を頼ることになるとの根拠は何か。国軍との「独自のパイプ」があり、一定の信頼関係があるのであればこそ、日本政府が、国軍の過ちを正し、民主主義の回復に向けた変化を促す強いメッセージを発信するべきではないか。 回答:〇我が国は事案発生当日から、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、➁拘束された関係者の解放及び③民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきている。3月28日にも、外務大臣談話においてミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難した。 〇その上で、制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。 すでにクーデターから2か月が経過し、700人も貴重な命が奪われたのに、いまだに「制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく」 つまりまだ検討中だというのは怠慢ではないでしょうか?口だけだと言われても仕方がないでしょう。 さらに、あまりに誠意がないのがこの回答です。 質問11.国際協力機構(JICA)が現在実施している対ミャンマー政府開発援助(ODA)事業や、国際協力銀行(JBIC)や海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマー関連で現在融資・出資している事業について、国軍の資金調達の支援に繋がっているとの指摘がある。このような指摘に対し、日本政府は、人道目的のものを除く全ての支援・事業をいったん停止した上で、国軍と関連する企業が事業に関与していないか、または、事業の実施が国軍に経済的利益をもたらしていないかという点について事実調査を実施しているか。実施しているとすればその調査結果を公表するか。実施・公表しないとすればその理由は何か。 回答:〇日本政府は、事業の円滑な実施のため、必要に応じ、各関係機関等と連携しつつ、御指摘の点について適切に確認をしている。 「適切に確認をしている」とはいったい何を意味するのでしょうか? 国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべきであり、漫然と資金供与を続けることは、共犯になることにほかなりません。 ところが、このように重要なことに対し、イエスともノーとも答えない、これではミャンマーの人たちが愕然とするのも当然です』、「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。
● 日本政府がいますべきこと  在日ミャンマー人の若者は、「国民が毎日殺され、放火されている。どうかミャンマー国民を助けてほしい」と切実に訴えました。 違法なクーデターに基づき権限行使する軍の行動はそもそも合法性がないうえ、住民虐殺という戦争犯罪に該当する行為を行っている軍の行為が明らかにレッドラインを超えていることは明らかです。CRPHが国軍を「テロ団体」とみなすことを国際社会に訴えており、これはうなづけます。こうしたなか、日本は「軍とのパイプ」を理由に軍と話し合って解決する宥和路線を取るべきではありません。 日本政府には、 1 CRPHを正式なミャンマーの代表と認め、軍による政権掌握を一切承認しないこと、2 軍に利益をもたらす経済援助を一切やめること  がいまこそ求められています。さらに、3 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業(米国の制裁対象はミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)と、ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)など)に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべきでしょう』、同感である。
● 企業も軍系企業との取引を断つべき  政府だけではありません。ミャンマーに進出し、ミャンマー国軍系企業と深い取引関係にある日本の著名企業が存在します。クーデター前から国軍がカチン、ロヒンギャなどの少数民族への人権侵害を尽くしていたため、その軍とつながりの深い日本企業は国際的にも問題視されてきました。 しかし、いまや軍の暴力が可視化され、犠牲が増え続けるなか、これ以上取引関係を続けることは人権侵害に資金提供しているようなものです。血塗られたビジネスをこれ以上続け、軍の資金源となり続けるかが問われます。 ヒューマンライツ・ナウは4月5日付で調査報告書を公表、特に深刻な影響のあるミャンマーでの事業とこれに関連している日本企業を公表しました。 関連している企業は、東芝、小松製作所、キリンホールディングス、TASAKI、KDDI、住友商事、Yコンプレックス事業(東京建物 、 オークラ、みずほ銀行 、三井住友銀行、 JOIN 、フジタ) です。 これら企業も、を貫くのでなく、説明責任を果たし、軍に資金を提供し、軍を利するような事業は一切手を引くべきです』、「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。
● 市民を応援するために  ミャンマーで起きていること、それは日本と無縁ではありません。もし、日本が欧米その他、ミャンマーの市民を応援する側に加わり共同歩調を取れば、クーデターを失敗に終わらせることができるかもしれません。 日本政府や日本企業の行動次第で事態は変わり得ます。 表面だけ軍を非難しても何ら行動しなければ、それは、命懸けで戦うミャンマー市民を見殺しにすることにほかなりません。 政府と企業には、言葉だけでない明確な態度、クーデターに抵抗する市民の側に立つ覚悟と明確な行動が求められます。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます。ミャンマーの人たちは私たちのそうした行動を切望し、注視しています。(了)』、同感である。

第三に、4月13日付けNewsweek日本版「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96059_1.php
・『<国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性> 国軍による弾圧が激しさを増すミャンマー(ビルマ)で抵抗手段を奪われた国民たちは今、少数民族の軍隊と国軍との全面戦争を求め始めている。かつては敵視すらしていた少数民族を救世主扱いするほど期待は高いが、どれくらい現実味がある戦略なのか。ミャンマーのエリート軍家系出身で民主活動家のモンザルニ、少数民族であるカチン民族機構(KNO)ロンドン本部のクントイラヤン事務局長、在日ビルマ・ロヒンギャ協会のゾーミントゥット副代表の3人に、本誌・前川祐補が聞いた。 Q:少数民族軍連合vs国軍という対立構図が浮上した経緯を教えてほしい。 モンザルニ:デモを行っていた市民らは当初、諸外国からの外圧を期待していた。軍事的圧力でなくとも、国軍が弾圧から手を引くような効果的な懲罰を求めていた。だが(アメリカなどが部分的に制裁を発動したものの)ミャンマー国民を満足させるような動きは起きていない。国軍への制裁を決議できなかった国連安全保障理事会も含めて国民は外圧に幻滅し、よりどころを少数民族の軍隊にシフトさせた。国民の中には少数民族軍を救世主と呼ぶ者もいる。 クントイラヤン:われわれカチン族は都市部でのデモ弾圧とは別に国軍から攻撃を受け、彼らを返り討ちにした「実績」もあった。 Q:少数民族軍の連合はどのように形成されるのか。 モンザルニ:1つは、「統一政府」の樹立を目指す民主派議員らで構成する連邦議会代表委員会(CRPH)が、少数民族の軍隊を「連邦軍」として取りまとめる方法だ。だが、少数民族側はCRPHの中心にアウンサンスーチーや彼女が率いる国民民主連盟(NLD)を据えることに対して非常に否定的だ。彼らはクーデターを防ぐこともできず、その後の対応でも失敗したからだ。CRPHは国民の支持を得ているが、将来的な政府組織においてスーチーとNLDの影響力をどれだけ排除できるかがカギになる。 クントイラヤン:少数民族の間では、CRPH憲章は現在の憲法から国軍の議会枠(国会議員定数の4分の1は軍人)を定めた条項を取り除いただけ(つまりNLDの影響力が色濃く残る)との批判が多い。私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い』、主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い。「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう。
・『Q:統一政府の将来像は時間のかかりそうな議論だ。CRPHと少数民族の交渉がまとまらなければ全面戦争のシナリオは消える? モンザルニ:そうでもない。既にCRPHを抜きにした少数民族による「連合軍」構想が持ち上がっている。実際、シャン州軍の創設者であるヨートスックが、ワ州連合軍などと共に独自の連合軍の立ち上げを呼び掛けている。 クントイラヤン:CRPHが少数民族の要求を断ったところで軍事的には空っぽの政府組織が生まれるだけだ。連邦軍は構想段階だが、カチン族だけでなくカレン族の居住地域を含めて局地的には既に戦いが始まっている。 ゾーミントゥット:国民は、これまでさげすんできたアラカン・ロヒンギャ救世軍ですら歓迎している。CRPHがどう判断するかは分からないが、何らかの形で内戦が始まるのは不可避だと思う。 Q:「連邦軍」であれ「連合軍」であれ、国軍と対峙する軍事力はあるのか? モンザルニ: 少数民族の武装勢力は最大で14ほどが参加し得るが、それでも「通常の戦闘」を想定するなら国軍を打ち破ることは難しいだろう。兵力の差は数字以上に大きい。 だが少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる。彼らは特定の日時に集まり、標的とする軍事施設に攻撃を加える準備ができている。連合軍の戦いは内戦と言うよりは革命抗争だ。革命軍はたいてい武器に乏しく兵士の数も少ない。キューバ革命の時、フィデル・カストロはわずか82人の同志を率いて革命抗争を始めた。数の比較で戦闘を考えると展望を見誤る。 クントイラヤン:ミャンマーの内戦にアメリカが軍隊を派遣することはないだろうが、資金提供やロジスティクスなどの側面支援は交渉可能なはずだ。それができれば、カチンやカレンの軍隊は地上戦で国軍をしのぐことができる。「統一政府」の議論がまとまらないにせよ、国軍による虐殺を止めるためにCRPHの国連大使に選ばれたササは早急に欧米諸国へ支援要請をするべきだ』、「少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ。
・『Q:少数民族はこれまで差別や迫害を受けてきた。少数民族の軍隊に期待する国民は今だけ軍事力にすがり、後で裏切るという懸念はないのか? ゾーミントゥット:今回のクーデターに対して抵抗を続ける中心はZ世代と呼ばれる若者世代だ。彼らは1988年のクーデターを戦った当時の若者世代とは違い、教育水準も高く多様性に対して寛容だ。実際、クーデターが勃発してからこんなことがあった。ある商業系と医科系の大学の学生自治会が、過去のロヒンギャ弾圧に対して公に謝罪声明を発表したのだ。虐殺を知りながら声を上げなかったことへの謝罪だ。自らも軍の弾圧の犠牲者となって初めてロヒンギャの置かれた状況を知ったからなのかどうか経緯は分からないが、彼らの謝罪は誠実なものと受け止めている。 (編集部注:CRPHで広報担当も務めるササはCRPHの国家構想でロヒンギャを国民として認めると4月9日の記者会見で断言した) クントイラヤン:同じ思いだ。繰り返すが、われわれ少数民族はこの状況下でも愛国主義的ビルマ人への警戒心は強い。それでもZ世代への期待は大きい。弾圧を受け行き場を失った若者世代は今、少数民族軍を支持するだけでなく自ら参加しようとしている。実際、カチン軍は彼らに対する軍事訓練を行っており、(カチン)軍幹部の話によれば訓練し切れないほどの若者たちが集まっている。 Q:周辺国は内戦に対してどう反応するだろうか? モンザルニ:中国、インド、タイがその中心だが、彼らは基本的にミャンマー国軍を支持しているので懸念するだろう。だが彼らはあくまで勝ち馬に乗るはずだ。今のところ国軍に賭けているが、「革命抗争」で少数民族軍連合やCRPHが優位な立場になれば、考えを変える可能性はある。周辺国とミャンマー国軍の関係に定まった「方程式」は存在せず、流動的だ。 クントイラヤン:カチン族の主な居住地域は中国と国境を接しているが、今回の騒乱はカチン族が引き起こしたのではない。中国がミャンマーで安定した経済活動を行いたいのなら、彼らが国軍を支援し続けるのは得策でないはずだ。 モンザルニ:CRPHは「連邦軍」構想を進めると同時に、国軍に影響を及ぼす中国に対して立場を表明するべきだ。つまり、CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ。中国が応じなければ、世論の圧倒的支持を受けるCRPHが実質的な政権を取ったときに、ミャンマーはアメリカや日米豪印らで構成するクアッドに強く傾倒し、中国がこれまでミャンマーで進めていた石油のパイプライン事業をはじめとする経済活動が思うようにいかなくなるという「警告」も忘れずにだ』、「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。
・『Q:内戦や革命抗争はミャンマーにとって本当に望ましいシナリオなのだろうか? モンザルニ:望ましいシナリオでもなければ、最も前向きな目標でもない。だが今のミャンマーには連邦軍(やその他の連合軍)構想以外にいいシナリオがない。国民はデモに参加しようが家でおとなしくしていようが殺されている。5400万人の国民が人質になっているというのが現実で、「向こう側」を殺すしかないという機運が高まっている。 クントイラヤン:今の状況を変えるためには、国民は国軍に対して強いメッセージを出す必要がある。軍幹部らに対して弾圧から手を引くことを促すような、強固な心理戦を展開する必要がある。少数民族連合軍による「宣戦布告」はその意味で強いメッセージになる。軍幹部が動じずとも、兵士らを可能な限り多く投降させることができれば弾圧を弱める効果は期待できる。 モンザルニ:投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ。 ゾーミントゥット:革命抗争は起きた後の状況が懸念されるが、不可避だと思う。そのなかで望むとすれば、CRPHはできるだけ構成民族に共通認識を持たせてほしい。 Q:非常に複雑な思いだ。 モンザルニ:それは私たちも同じだ。残念ながら、どんな道を選んでもミャンマーを待つのは血まみれの未来だ。 【関連記事】スー・チー拘束でも国際社会がミャンマー政変を「クーデター」と認めたくない理由  ジェノサイドで結ばれる中国とミャンマーの血塗られた同盟』、「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である。

第四に、4月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京外国語大学教授の篠田 英朗氏による「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45524
・『ミャンマー情勢が緊迫している。欧米諸国が経済制裁などに動く一方、日本政府の動きは鈍い。東京外国語大学の篠田英朗教授は「ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」と指摘する――』、「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ。
・『強調される「独自のパイプ」とは何なのか  緊迫するミャンマー情勢に直面し、歯切れの悪い日本外交の姿が露呈している。「日本はミャンマーに独自のパイプがある」といった、言語明瞭・意味不明の言説が頻繁に語られている。しかし2月1日のクーデター勃発から3カ月がたち、これらの言説に実行が伴っていないことは明らかになってきている。そもそもこれらの言説は、具体的にはいったい何を意味しているのか。 4月9日に、駐ミャンマーの15大使が共同声明の形で公表したミャンマー軍を非難する共同声明に、日本は加わらなかった。アメリカの同盟国で加わらなかったのは、日本と、エルドアン大統領のトルコやドゥテルテ大統領のフィリピンくらいであった。 「日本は軍の利益になる援助を止めろ」、といった国内外からの声に対して、日本の外交当局が「対応は検討中です」とだけ述べて、あとはじっと無言で耐え続ける、という図式が続いている。茂木外相が「北風がいいか、太陽がいいか」といったナゾナゾのようなことを国会答弁で述べたことは、日本の奇妙な外交スタイルとして国際的にも広く報じられた。 こうしたすっきりしないやり取りの中で頻繁に語られているのが、「パイプ」という謎の概念だ。日本の外交当局が「パイプ」なるものに異様なまでのこだわりを見せている。しかしそれが何なのかは、一切語ろうとはしない。 いったい「パイプ」とは何なのか。 ここでは「金」の面から、日本が持つ「パイプ」について考えてみたい』、「何なの」だろう。
・『「援助」と言いつつ実態は「投資」  日本のメディアは、同じ情報源から聞いてきたことをそのまま各社が引用しているかのように、「日本はミャンマーに巨額の援助をしているので影響力がある」、と伝え続けている。残念ながら、そのような報道は海外メディアでは見ることがない。日本の存在は、上述の「北風か太陽か」自問自答のように茶化されたりする文脈で報道されることはあっても、真面目にミャンマー軍に影響力を行使できるパワーとしては扱われない。 実際に、日本がミャンマー軍に影響力を行使しているような様子は全く見られない。それでは、どれだけ日本のメディアが日本において日本語で日本人向けに「日本は影響力がある」と主張してみたところで、海外では全く相手にされていないのは仕方がない。 (図表1 ミャンマー向け有償資金協力例はリンク先参照) なぜなのか。その理由は、援助の中身を見れば、推察できる。日本は毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けているが、そのほとんどは円借款である。これはつまり投資である。これは0.01%の40年償還という好待遇であるとはいえ、貸付金である。他の東南アジア諸国のように経済発展が進むと、円借款の金額は返還されてきて、むしろ日本は利息分の利潤すら得ることになる』、「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。
・『「アジア最後のフロンティア」の夢  日本はミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで、官民一体になったいわば旧来型の護送船団方式の経済進出を行ってきている。円借款を実施するプロジェクトを日本企業に受注させ、それを梃子にして日本が抱え込んでいる経済特区に集中的に日本企業を進出させる、といった具合である。それがミャンマーに対する戦略的計算だけでなく、他の東南アジア諸国における成功モデルの再現を期待する経済的願望による行動でもあることは当然だろう。 果たしてこの護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない。日本が集中的に進出した「ティラワ経済特区」を例に取れば、多数の企業の進出に耐えられるインフラの不足が解決されておらず、電力網の整備などを日本のODAを通じて実施している段階だ。当然ながら、数千億円にのぼる貸付金は、まだ全く返還されてきていない』、「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。
・『2013年には4000億円の債務を帳消しに  実は日本ほどではないとはいえ、他の諸国も、2011年の民主化プロセスの開始後、ミャンマーに対する援助額を増加させてはいた。他国と同様に、軍政期には援助額を停滞気味にさせていた日本は、他を圧倒するようなODAの増額を果たすために、それまで累積していたミャンマー向けの貸付金を一気に帳消しにするという作戦に出た。多額の未払金が残ったままでは、新規の援助の大幅増額が困難だったからだ。 そこで2013年に、約2000億円の債権放棄を行った。さらに手続き上の理由から債権放棄ができなかった約2000億円について、同額の融資を一気に行い、それを原資にして即座の名目的な返還を果たさせるという離れ技まで行った。 つまり日本政府は、ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した。それもこれも全て、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んだ経済的願望があればこそであった』、「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ。
・『軍部を擁護してきたかいはあったのか  その後もODAという名目でミャンマーに貸し付けた資金は回収されていない。むしろ今回の事件で回収が困難になってきたという印象は否めない。そもそも市民を殺戮してまで権力にしがみつくミャンマー軍幹部が、日本から借りたお金をコツコツと返却するために努力するような人物であるようには見えない。借金は返還できなければ、以前のように踏み倒すだけだろう。 国家と国家の間の貸し借りで、返還がなかったからといって、差し押さえなどの措置を取ることはできない。日本ができるのは、市民に銃を向けて殺戮している虐殺者たちに、ただただひたすら返金をお願いする陳情をすることだけだ。それどころか、以前にように、新たな融資でとりあえず名目的に補塡ほてんさせるしか手がないなどといったことになれば、再び日本の納税者を借金地獄に引き込むしか手がなくなるだろう。 現在、ミャンマー軍幹部に標的制裁をかけている欧米諸国に対して、日本では「欧米はミャンマーと付き合いが浅いから簡単にそういうことができる」といった言い方をする方が多い。しかしこれは見方を変えれば、ミャンマー軍が権力を握り続けた民主化プロセスに懐疑的だった欧米諸国に対して、事あるごとにミャンマーを擁護する立場をとり続けてきた日本のリスク管理の甘さが問われている事態だとも言えるわけである。 このような事情を持つ「金」で成立している「パイプ」を、いかに日本人が日本国内で日本語で日本人向けに誇示しようとも、国際的には同じようには認められないのは、致し方のないところもある』、日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。
・『在日ミャンマー人が「日本ミャンマー協会」前でデモをする意味  現在、日本にいるミャンマーの人たちを含む人々が、「日本ミャンマー協会」の前でデモを行ったりしている。市民を虐殺している軍を利する「パイプを断て」、と要請している(*1)。 「日本ミャンマー協会」とは何か。同協会の会長である渡邉秀央氏は、ミャンマー軍との間に特に「太いパイプ」を持ち、軍司令官であるミン・アウン・フライン氏とも過去に24回会っているという緊密な関係を続けている。渡邉氏がキーパーソンなのは、日本のODA業界にミャンマー向け巨額円借款の恒常化を実現した人物だからだ(*2)。 元郵政大臣である渡邊氏は、当然ながら日本のエスタブリシュメント層に「太いパイプ」を持ち、日本ミャンマー協会の役員には、政・財・官界の大物がずらっと並ぶ。「最高顧問」の麻生太郎副総理をはじめとする大物政治家のみならず、ODA契約企業リストにも登場する財閥系の企業名が目立つ(*3)。 仮にミャンマー向けの円借款が焦げ付いて日本の納税者が負担を強いられるとしても、契約企業が損失を受けるわけではない。これに対して、ミャンマー軍が市民を虐殺しているからといって実施中のODAまで止めてしまっては、これらの迷惑をかけてはいけないところに多大な迷惑がかかってしまう。日本の外交当局が「対応策を慎重に検討する」のも無理もないということは、こうしたリストを見るだけでも容易に推察できるだろう』、「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ。
・『「選挙は公正だった」となぜ言えないのか  なお在日のミャンマーの方々を含む人々は、日本財団ビルの前でもデモを行ったりする。「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書も持つ笹川陽平氏が、同財団の会長を務めているからだ。笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた。選挙直後こそ、選挙は公正に行われた、と発言していた。しかしミャンマー軍が「選挙には不正があった」と主張してクーデターを起こしてからは、沈黙を保っている。 デモをしている人々は、「せめて選挙は公正だったので、クーデターは認められないと発言してほしい」と懇願しているのだが、笹川氏は反応していない。言うまでもなく、笹川氏も、ミャンマーに深く関わる日本社会の大物だ』、「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。
・『「パイプ」の論理にだけ身を委ねていいのか  日本は、ミャンマー軍幹部らと「パイプ」を持つ。ただそれを、外交官が秘密の外交術で特殊技能を発揮して海外で作り出したパイプ、といったふうに勝手にロマン主義的に捉えるとすると、状況を見間違えるかもしれない。「パイプ」は、個々の外務省職員のような存在を超えて、日本国内各所に「金」とともに太く縦横無尽に伸びている。「パイプ」とは、個々の外交官が、個人的意見で論じていい政策論を超えたものなのである。 だが果たして、だからといって「パイプ」の論理にだけ身を委ねていれば、日本は絶対に安泰だろうか。日本の納税者が不当に損をする事態は絶対発生しない、と保証している人物がどこかにいるだろうか。 ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。旧来型の護送船団方式のODAの「パイプ」のあり方も、その問題の一つであろう。 (*1)東洋経済ONLINE「沈黙する『日本ミャンマー協会』が抗議浴びる訳」(尾崎孝史、2021年4月22日) (*2)ロイター「特別リポート:急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏」(2012年10月5日) (*3)「日本ミャンマー協会 役員名簿」』、いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
タグ:ミャンマー yahooニュース PRESIDENT ONLINE Newsweek日本版 伊藤和子 (その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) 永井浩 「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」 ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう 「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。 外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。 「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」 「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。 市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる 「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。 日本政府がいますべきこと 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業 に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべき 「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます 「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」 国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性 主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い 「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう 少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ 「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。 「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である 篠田 英朗 「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」 「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ 「何なの」だろう。 「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。 「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。 「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ 日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。 「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ 「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。 いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。