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インフラ輸出(その12)(失注が一転「中国製」欧州向け電車 突如登場の謎 実は「秘密裏」に進んでいた中・欧の共同開発、日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃、日立製英国車両「亀裂発生」 その後どうなった 「乗客への情報提供」当局は評価 肝心の原因は?) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、1月25日に取上げた。今日は、(その12)(失注が一転「中国製」欧州向け電車 突如登場の謎 実は「秘密裏」に進んでいた中・欧の共同開発、日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃、日立製英国車両「亀裂発生」 その後どうなった 「乗客への情報提供」当局は評価 肝心の原因は?)である。

先ずは、6月10日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「失注が一転「中国製」欧州向け電車、突如登場の謎 実は「秘密裏」に進んでいた中・欧の共同開発」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/433187
・『そのニュースは、まさに突然入ってきた。6月1日、中国メディアは世界最大の鉄道メーカー、中国中車(CRRC)の子会社である中車株州電力機車有限公司(CRRC ZELC)が、オーストリアの民間鉄道会社ウェストバーン向けの新型2階建て電車を完成させ、輸出すると報じたのだ。 ウェストバーンは現行車両の更新のため、新型車両の導入を計画していたが、CRRCと争っていたスイスのシュタドラーが、同社の2階建て電車「KISS 3」6両編成15本を、製造とメンテナンスを含む総額3億ユーロで契約を獲得、CRRCは失注していたはずだった(2020年1月25日付記事「中韓鉄道メーカー、『欧州本格展開』への高い壁」)。 だが、中国メディアのニュース映像には、すでに完成したと思われる車両が完成記念式典の会場で関係者の晴れやかな笑顔とともに映し出され、この車両が出荷目前であることをうかがわせた。記念式典はウェストバーンのゼネラルマネージャー、エーリッヒ・フォースター氏を筆頭に、駐オーストリア特命全権大使やオーストリア商工会議所の会長らもオンラインで出席するなど、大々的なものだった』、「「失注が一転「中国製」欧州向け電車、突如登場」、とは欧州鉄道関係者には衝撃のニュースだろう。
・『オーストリア側に事情を聞くと…  これには、さすがのヨーロッパ各国の鉄道系メディアも寝耳に水といった感じで驚きを隠せず、一時騒然となった。ヨーロッパ側では誰もが何も把握していなかったことから、中国側の勇み足じゃないのか、といった噂話まで飛び出した。 いったい、何が起きたのか。ウェストバーンの広報へ確認したところ、以下の回答を得た。 まずこの車両について、ウェストバーンとは2019年12月に契約を締結したとのことだ。つまり、1年半前に失注したと言われたその直後から、秘密裏にこの車両の設計・製造がスタートしていたわけで、一度は決別したかに見えた両社は、今も蜜月の関係にあることがうかがえる。 とはいえ、現時点ですでに車両が完成し出荷状態にあるというのは驚きで、CRRCはこのような顧客の意向に沿ったオーダーメイド車両であっても、18カ月以内で設計・製造することが可能だと述べている。 また、すでに契約を結んでいるシュタドラー製の6両編成15本はそのまま購入し、CRRC製車両はそれとは別に6両編成4本を追加投入という形で導入するという。 車両製造については、ウェストバーンとCRRCが共同で開発を進め、中枢となる部品をヨーロッパで調達するということに、特に細心の注意を払って設計・製造を進められたと説明している。ただ、ウェストバーンはドアと連結器に関してはヨーロッパ製であることを明言しているものの、その他のパーツ、例えば電装品や信号装置、空調設備などに関しては現時点では回答できないとの返答だった。 CRRC製2階建て電車は、両先頭車2両が動力車、中間車4両は動力のない客車となっている(2M4T)。相互運用性の技術仕様(TSI/A technical specification for interoperability)に準拠し、最高速度はウェストバーンでの営業運転速度に合わせ、時速200kmで設計されている。 興味深いのは、車体の一部にカーボンファイバー製のパーツが用いられている点で、通常の平屋構造の車体と比較して、重量は約10%の増加にとどまっている。以前、イノトランスのレポートでもご紹介した、オールカーボンファイバー製の試作車両「CETROVO」を覚えている方もいらっしゃるだろうが(2018年10月5日付記事「中国が躍進『鉄道見本市』、実車展示で存在感」)、ここで車体の一部にそのカーボンファイバー製を採用してきたことは注目に値する。ダークグレーの座席を含む内装は、既存車両に近いイメージだが、木目調となった壁面化粧板が温かみのある印象を受ける』、中国側としては、破格の条件を出して極秘に受注を獲得したのだろう。
・『スイスメーカーとの契約とは別物  DEMU2と称するこの新型車両は、本国オーストリアのほか、ドイツやハンガリー、その他5カ国での営業運転を予定している。搭載されている機器の電圧は、交流15kV 16 2/3Hzおよび交流25kV 50Hzの2種類のみであるため、ルーマニア、ブルガリアやセルビアの他、チェコ、スロヴァキアの一部地域といったあたりが考えられる。 今後は、2021年夏ごろをメドにヨーロッパへ向けて出荷され、夏の終わりからチェコのヴェリム試験センターでテスト走行を開始、2023年の夏~秋ごろに営業運転を開始する予定となっている。 今回の突然の発表には非常に驚かされたが、いくつか興味深い点がある。 まず、ウェストバーンはすでにシュタドラーから新車を購入する契約を結んでいたことで、今回のCRRCとの契約は、それとは別に存在するという点である。 もともと、同社は民間鉄道会社として旗揚げ後、同じシュタドラー製2階建て電車「KISS」を6両編成8本導入し、その後の増発時に増備された「KISS 2」4両編成9本を合わせ、計17本の「KISSシリーズ」を保有していた。) だが、この「KISS」と「KISS 2」はメンテナンス費用が少々高かったことに加え、当時は需給調整で列車本数の削減を検討していたことから、新型車へ置き換える形で売却を決断し、置き換えられた車両は順次ドイツ鉄道へ売却することも後に発表された。そこで、置き換え用の新車としてシュタドラーの進化型「KISS 3」とCRRCの車両が受注を争うことになった。 当時、ウェストバーンはCRRC製車両の導入にかなり傾いていたとされ、契約は時間の問題だとも噂されていたが、その結果は意外にもシュタドラーに軍配が上がった。2019年秋、ウェストバーンはシュタドラーと新型の「KISS 3」を導入する契約を結んだと発表したのだ。 確かに、すでに同社のKISSシリーズを使用しており、それに特段の不満がないのであれば、無理に別のメーカーへ鞍替えをする必要性は考えられない。乗務員の取り扱いを考えても、むしろ同じメーカー・車種で統一するほうが望ましい。 とはいえ、CRRCが提示した契約がかなりの好条件であったと仮定すれば、国の後ろ盾があるわけではない民間企業にとっては非常に魅力的なオファーとなるに違いない。いや、民間鉄道会社のみならず、交通インフラへ十分な投資ができない中・東欧地域の国々にとっても、魅力的なオファーがあれば飛びつきたいと考えるのが自然だ』、「CRRCが提示した契約がかなりの好条件であったと仮定すれば・・・民間企業にとっては非常に魅力的なオファーとなるに違いない」、やはり決め手は安値「オファー」だったようだ。
・『欧州では実績のない中国製  一方で、まったくの新規参入メーカーとの取引には、多少のリスクが伴うということも忘れてはならない。CRRCが鉄道メーカーにおける世界シェア1位ということは揺るぎない事実だが、売り上げの約90%は中国国内へのもので、ヨーロッパでの実績は皆無に等しい。 ヨーロッパ地域におけるCRRC製車両としては、マケドニアとセルビアに貨物用の機関車が数両ずつと、ハンガリー鉄道貨物部門向けの新型機関車「バイソン」、それにチェコ民間企業レオ・エクスプレス向けの5車体連接電車「シリウス」などがある。 ただ、前2者のうちセルビアは発電所への石炭輸送という非常に限られた使い方をされており、マケドニアは国内の限定された貨物運用に供されているだけだ。後2者については、チェコ国内にあるヴェリム試験センターから出てくる気配もない。 「シリウス」に関しては、年初めの段階で2021年前半には営業運転を開始すると高らかに宣言していたが、筆者が以前の記事で指摘した通り、テストは順調に進んでおらず、現時点では少なくとも2022年まで営業運転を開始できる見込みはない、と言われている。 このようにヨーロッパ地域内においては、まだ十分な実績を残していると言えるほど多くの車両が営業運転を行っているわけではなく、とくに認証テストの難易度が高い西・中欧地域においては、クリアするまで長期間にわたって営業開始できない可能性もある。 今回の新型2階建て電車は、2023年夏~秋ごろの営業開始を目指していると発表されたが、これは最速でという意味で、実際には進捗状況により、さらに数年先延ばしになる可能性も考えられる。わずか18カ月でどんどん車両を建造できても、走る許可が出ないのであれば意味のない話だ。 このように営業開始時期がまだ不透明な車両を導入した場合、計画が大幅に狂ってしまう可能性は否定できない。ウェストバーンの場合、従来車を他社へ譲渡する話まで決まっている以上、もし納入が遅れればその影響はほかへも波及することになる。そこで確実な方法として、現行車両の増備車を導入する、というのが一番手っ取り早い解決法となる。CRRCの新車が使い物になるかどうかを見極めるまで、しばらくは現行車両に頼らざるをえないだろう。 そしてもう一点、最も注目したい点は、このCRRC製の6両編成4本24両の車両は、ウェストバーンが購入したものではなく、CRRCが保有し、それをリースするということだ。シュタドラーと新たに契約した「KISS 3」はリースではなく、同社が購入した完全な自社保有車両なので、この違いは非常に興味深い』、「ウェストバーン」としては、CRRCからの「リース」の形を採ることで、リスクを回避しているのだろう。
・『欧州で高評価を得られるか?  おそらく、ウェストバーンは今すぐにもCRRCと手を組みたいと考えているだろうが、前述のとおり現状はリスクが非常に高い。そこで、まずはお試し期間としてCRRCとリース契約を取り付け、実際に営業で使ってみたうえで、もし気に入れば車両を買い取り、追加投入も検討する、という構図が見えてくる。 リース車両の買い取りは、このケースに限らずヨーロッパでは一般的で、リース契約満了後に鉄道会社が車両を引き続き使いたい場合、契約を継続するか、そのまま車両を買い取るかを選択できるオプションがある。不要と判断した場合、リース終了後に返却することもできる。自家用車のリースとまったく同じ方法である。 CRRC側にしても、ヨーロッパでの実績がないことは重々承知しており、とにかく今は自社製品を広く知ってもらうことに注力しなければならない。このウェストバーン向け車両だけではなく、ハンガリー鉄道貨物部門向けの機関車も同様にリース契約で、フルメンテナンスと将来的な買い取りオプションも含めている。 だが、CRRCにとってはこれからがいよいよ正念場となる。リース期間中に高評価を得て、追加発注を取り付けるができれば、徐々にヨーロッパ地域で受け入れられることになるし、逆に評価を落とせば、ヨーロッパ進出は夢に終わることになるだろう』、中国側がこんな目立たない形で、鉄道輸出に進出しようとしているのは、要注意だ。

次に、6月2日付けNewsweek日本版が掲載した木村正人氏による「日立製英高速列車の亀裂は800車両 応力腐食割れが原因か 日本の製造業に打撃」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2021/06/800_1.php
・『<「ドル箱」の高速列車の運休で運行会社は大幅な減収必至。「鉄道の日立」は信頼を損ねたが、問題はそれだけではない> [ロンドン発]イギリスで5月8日「鉄道の日立」のフラッグシップ、高速列車800系に亀裂が見つかった問題で、車両本体下のボルスタに亀裂の入った車両は800車両にのぼることが地元の鉄道記者の証言で分かった。応力腐食割れが疑われているが、根本的な原因は依然として分かっておらず、修理にどれだけの期間がかかるのか見通しは全く立っていない。 日立レールの説明では今年4~5月、ボルスタの安定増幅装置ヨーダンパー・ブラケット接続部と車両本体を持ち上げる時に使用するリフティングポイントで亀裂が見つかった。リフティングポイントの亀裂は全編成の約50%、ヨーダンパー・ブラケット接続部の亀裂は約10%で見つかった。近郊輸送用車両385系の亀裂ははるかに少なかったという。 筆者が関係者から入手したヨーダンパー・ブラケット接続部の写真を見ると、亀裂の深さは15ミリに達していたり、長さは28.5センチに及んでいたりする。 不眠不休で車両を点検している日立の車両基地を取材した地元の鉄道記者フィリップ・ヘイ氏は筆者に「800車両で亀裂が見つかったと聞かされた。亀裂の大きさはさまざまだが、小さくても列車を走行させているうちにどんどん大きくなる」と語る。 筆者が関係者から入手したヨーダンパー・ブラケット接続部に入った亀裂 亀裂は塗装や汚れに隠れて肉眼では見えにくいため、専用の検査装置を使って亀裂があるかないかを慎重に点検しなければならない。ヘイ氏が見た写真ではリフティングポイントに入った亀裂もかなり長かったという。ヨーダンパー・ブラケット接続部とリフティングポイントの亀裂はいずれも英鉄道安全標準化委員会に「国家インシデント」として報告されている。 亀裂の原因について日立レールは「われわれは応力腐食割れと考えている。まず材料、次に天候や空気、水などの環境、三番目に金属にかかるストレスが要因として関係しているとみている。疲労亀裂ではない」と説明する。営業運転開始からわずか約3年半でこれだけ多数の車両の同じ箇所(ボルスタ)に亀裂ができた原因とメカニズムはまだ解明されていない』、「原因とメカニズムはまだ解明されていない」とは深刻だ。
・『「ボルスタには車両の蛇行動を制御するヨーダンパーと、カーブを走行する際に生じる車両の傾きを抑えるアンチロールバーから異なる力がかかる。4月にヨーダンパー・ブラケット接続部から亀裂が見っかった時は疲労亀裂(部材内に発生する単位面積当たりの応力が小さくても繰り返し生じることによって亀裂が進展する現象)が疑われたが、普段は使用しないリフティングポイントからも亀裂が見つかったことが問題を複雑にしている」 筆者にこう解説するのは鉄道雑誌モダン・レールウェイズ産業技術編集者ロジャー・フォード氏だ。今年4月、英イングランド北部で列車運行会社ノーザンが運行するスペインの鉄道車両メーカーCAF製車両でもヨーダンパー・ブラケット接続部に亀裂が走り、ヨーダンパー・ブラケットが剥落した。調査の結果、86編成のうち22編成から亀裂が見つかった。 これに続いて日立製の800系でもヨーダンパー・ブラケット接続部に亀裂が見つかり、当初は疲労亀裂が疑われた。運行中にヨーダンパー・ブラケットが剥落すれば最悪の場合、列車が脱線する恐れもある。 フォード氏は「根本的な原因が分からない限り、修理は不可能だ」とみる。日本の鉄道関係者も同じ見方を示した。英メディアは全車両を修理するのに18カ月かかると報じたが、日立レールは「われわれは18カ月と言っていない。乗客の混乱を最小限に抑えるために、修理は通常のメンテナンスサイクルに合わせている」と述べるにとどめた。 ヘイ氏によると、問題のボルスタは車両本体下に溶接されており、簡単には取り外せないという。またフォード氏は「仮に溶接して修理するとなると、高圧電流が車両の電気・電子機器を損傷する恐れがあるため、すべて取り外さなければならない。複雑な工程で時間がかかる」と話す。 日立製作所は山口県の笠戸事業所で製造した高速列車395系をイギリスに輸出し、2012年のロンドン五輪では会場アクセス用列車「オリンピックジャベリン(投げやり)」としても活躍した。日立レールは「395系はイギリスで最も信頼されている列車の一つ」と胸を張る。 その技術力を買われて都市間高速鉄道計画(IEP)を受注し、800系や385系を英ニュートン・エイクリフ工場などで生産。日立が主導する特別目的会社アジリティ・トレインズが列車を保有する形で各運行会社にリースするとともに、保守事業も一括して受注した』、「運行中にヨーダンパー・ブラケットが剥落すれば最悪の場合、列車が脱線する恐れもある。 フォード氏は「根本的な原因が分からない限り、修理は不可能だ」とみる」、やはり極めて深刻だ。
・『日立レールは亀裂が見つかった車両の製造場所について「最初は日本で製造された。それからイタリアでも製造された。最終的にイギリスで完成された」と説明する。800系の車両に使われているアルミ合金のほとんどはデータ改ざん問題で揺れた神戸製鋼所から納入されている。 日立レールは亀裂の入ったボルスタが神戸製鋼所製かどうかについて回答を保留しているが、神戸製鋼所は筆者の問い合わせに「当社はアルミ押出材を日立のイギリス車両向けに納入している。日立の車両の問題が報道されていることは承知しているが、日立から当社への調査依頼などは現時点でない。調査要請などあれば真摯に対応する。品質事案の対象材については当時の納入先といずれも安全性を確認できている」と強調した。 日立レールによると、IEPでは日立側が列車運行会社にリースする列車に基づいて支払いを受け取る仕組み。列車が利用可能になった場合にのみ支払いが発生する。列車運行会社ではなく日立が亀裂問題のリスクを負うため、政府と納税者には負担は生じないという。 しかし「ドル箱」の高速列車が計画通り運行できなければ列車運行会社は大幅な減収となり、最終的に赤字になれば税金から補填されるのは避けられないのではないだろうか。 ロンドンとマンチェスター、リーズを最高時速360キロで結ぶ高速鉄道計画ハイスピード2(HS2)でも新幹線車両で実績を誇る日立もカナダのボンバルディアと組んで車両の大型受注を目指している。しかし今回の大量亀裂で「鉄道の日立」の信頼は大きく揺らぎ、HS2の受注だけでなく「モノづくり日本」の看板にも大きな亀裂が走ったのは言うまでもない』、「800系の車両に使われているアルミ合金のほとんどはデータ改ざん問題で揺れた神戸製鋼所から納入されている」、関連がありそうだ。「HS2の受注だけでなく「モノづくり日本」の看板にも大きな亀裂が走った」、挽回は容易ではなさそうだ。

第三に、7月8日付け東洋経済オンラインが掲載した 在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「日立製英国車両「亀裂発生」、その後どうなった 「乗客への情報提供」当局は評価、肝心の原因は?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/439213
・『今年5月、イギリスの主要鉄道路線で「都市間高速列車(IET)」として使われている日立製作所製車両に亀裂が見つかった。一時は当該車両を使った全列車が運休し、その衝撃は日英の鉄道関係者の間に大きく広がった。 亀裂は「運行には問題ない」とされ、車両は通常運用に戻っているが、英国の鉄道安全規制当局は6月、徹底的な原因調査を実施すると発表した。トラブル発生から2カ月近くを経た今、亀裂問題の究明はどの程度進んでいるのだろうか』、興味深そうだ。
・『車体を持ち上げるための部分に亀裂  金属部品の亀裂トラブルを起こしたのは、日立が英国工場などで生産した「クラス800シリーズ」だ。同シリーズは800・801・802と複数のタイプがあり、2017年から納入が始まった5両もしくは9両編成あわせて全182編成が走っている。 これらの車両を運行しているのは現在4社。主要幹線の運行を担うグレート・ウェスタン鉄道(GWR)が計93編成と最も多く、次いでロンドン・ノースイースタン鉄道(LNER)が計65編成を運行。イングランド北部の中小都市を結ぶトランスペナイン・エクスプレスは19編成、ロンドンとイングランド北東部を結ぶハル・トレインズも5編成使用している。 問題が明るみに出るきっかけとなったのは、GWRの編成で発見された亀裂だった。日立が運営を受け持つブリストル近郊ストーク・ギフォードにある車両基地で5月8日、出場前の点検をしていたさなかに「リフティングポイント」の前面に亀裂が発見された。車両の定期点検などの際に、車体を持ち上げて台車から切り離す時に用いる部分だ。 ところが、同車両をめぐっては4月の段階で「ヨーダンパー(台車と車体をつないで揺れを抑える装置)ブラケットの取り付け部」にも亀裂が起きていたことが判明していた。 こうした背景から、鉄道安全規制当局である鉄道・道路規制庁(ORR)は6月7日、日立をはじめとする関係者と共に、「列車のジャッキプレート(リフティングポイントに当たる)とヨーダンパーブラケットの取り付け部に発生した亀裂の根本的な原因を究明する」との方針を打ち出した。 最初の亀裂発見から現在に至るまでの経緯は以下の通りだ。 【クラス800シリーズ亀裂問題の経過】 4月11日:クラス800の定期検査でヨーダンパーの亀裂を発見 5月8日:クラス800のリフティングポイントの前面に亀裂発見、他編成にも亀裂の存在を確認 *GWRなど4社が運行のクラス800シリーズ全182編成を運用から外し検査実施 *ORRの支援を受け、列車が運行を再開しても安全であることを確認 *同日中に「ハル・トレインズ」運行車両が運用に戻る 5月10日:トランスペナイン・エクスプレス(TPE)運行車両が運用に戻る 5月13日:GWRとLNER、列車本数ほぼ正常に復帰 5月20日:日立レール、ロンドン西部にある車両基地でメディア向けに説明会実施 6月7日:ORR、亀裂トラブルのレビュー実施日程を発表 6月25日:利用者向け対応に関するレビュー結果を発表 9月中(予定):亀裂原因を含むレビューの暫定結果を発表予定 (英鉄道専門誌Rail Journal他から筆者まとめ)』、「亀裂の根本的な原因を究明する」との「ORR」の方針を一刻も早く達成する必要がある。
・『他車種でも亀裂発見、当局が経過を調査  亀裂は「クラス800シリーズ」だけでなく、2018年からスコットレール(スコットランド)で走り出し  日立製の近郊電車「クラス385」にも見つかった。 そこでORRは、今回のトラブル発生から関係する全車両の運用停止、運休に伴う利用客への案内、検査後の運用復帰といった一連の動きで得た「教訓」について検討を進めることとした。 ORRはこのレビューの主な目的について「鉄道業界全体に貴重な知見を提供する」と位置付ける一方、「運行の安全性と利用客への影響」についても対象として調べを進めるとの考えを示している。 レビューでは、設計、製造、メンテナンスなどの技術分野、関係するステークホルダーによる協力、検査、メンテナンス、修理、是正措置への責任といった多方面について徹底的に調査を行い、それぞれの分野をいかに改善できるかを検討するという。 ORRのジョン・ラーキンソンCEOは今回のレビューの実施について、一義的には「再発防止に向けての重要なステップ」としたうえで、「技術、プロセス、さらに契約の問題なども含む広範な内容について、安全確保ができているかどうかにフォーカスする」「利用客に対する適切な情報の公開、補償ができていたかどうかについても検証する」と述べている。 トラブルが明るみに出た当初、同型車両を最も多く保有しているGWRのメインターミナルであるロンドン・パディントン駅で、鉄道関係者は「こうした運休がいったいどのくらいの期間続くことになるのか見当がつかない」と途方に暮れていた。 しかし、駅に来たところで運休を知って路頭に迷うといった旅行者の姿がまったく見られなかったことは大きな驚きだった。ロンドンから西方向に向かう長距離列車のほぼすべてが発着する同駅は、コロナ禍といえども一定数の旅客需要がある』、「他車種でも亀裂発見」、とはやれやれだ。
・『利用者への情報提供は「合格」  ORRは、今回の亀裂トラブルに起因するさまざまなレビューを進めており、その一環として6月25日、利用客への影響に関する調査結果を発表した。その中で、亀裂により列車運行に影響を受けた鉄道4社による旅客への情報提供については「十分にできていた」との高い評価を与えている。 評価対象となった項目は大きく分けて次の4項目からなる。 +きっぷの払い戻しに関する情報の一貫性と明確さ +代替ルートの手配に関するアドバイスや代替経路の告知 +サードパーティの小売業者(アプリによる発券)の払い戻し +ウェブサイトでの「混乱への注意喚起」の告知 ORRは、今回のような「予期せぬ事態が発生し、問題が広範囲に及ぶ場合は、情報を最新の状態に保つことが非常に難しい」と指摘し、「運行オペレーター各社が適切に対応、予約済みの利用客と迅速に連絡を取るなどのサポートの実施」について評価している。) イギリスではアプリを使ったオンライン経由の事前購入が安いため、駅に来てからきっぷを買う人は相対的に減ってきている。今回のケースでは、関連各線の運行情報を顧客向けにメールや携帯メッセージなどで直接流せたことが、駅頭での混乱を最小限に抑えられた大きな要因となった。ダイヤが混乱している中、各社は「利用客が直面するトラブルの回避」を念頭に、明確で一貫した情報を提供できていたわけだ。 今回発表したレビューについて、 ORRのステファニー・トービン消費者担当副取締役は、利用客への情報提供については適切だったとしながらも、「今後このような障害が発生した際、利用客への影響をさらに軽減するための対策を講じたい」と述べ、鉄道業界と手を取りながらさらなる改善を検討するとしている』、「オンライン経由の事前購入が安いため、駅に来てからきっぷを買う人は相対的に減ってきている」のが、結果的に「利用者への情報提供は「合格」」つながったとはラッキーだ。
・『亀裂自体の原因は引き続き「調査中」  列車の運行は、亀裂トラブルの発覚5日後の5月13日までにほぼ復旧した。ところで、肝心の亀裂に関する原因究明に向けた調査の進展はどうなっているのだろうか。 6月25日の段階では、ORRはこれまで述べたように旅客サービスに関するポイントを発表するにとどまり、車両そのものの動静については一切触れていない。 ORRは今後の方針について6月7日に発表した文書で説明しており、車両導入の経緯、トラブル発覚後の運用停止、そして営業運転再開時の状況といった3つの項目について9月を目標に報告書をまとめるとしている。その後、長期的な「是正に向けたプログラム」が確立され次第、最終報告書を発表する流れとなっている。 日立や運行各社は「リフティングポイントの亀裂は、編成や各車両の構造には影響を与えない」と説明しているものの、原因が完全に究明されていない状態で時速200kmでの営業運転を行っているのは、利用者側から見れば心許ないのも事実だ。1日も早い具体的な状況の発表が待たれる』、「原因が完全に究明されていない状態で時速200kmでの営業運転を行っているのは、利用者側から見れば心許ない」、「1日も早い具体的な状況の発表が待たれる」、同感である。
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