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米中経済戦争(その16)(アプライドがKOKUSAIの買収を断念 背景に中国当局の思惑、中国の習国家主席、米国と同盟国を痛切に批判 名指しは避けてもどの国を指すのか一目瞭然、イエレン財務長官が前政権の対中貿易合意に疑念 対中関税賦課という方法は思慮深いとはいない、中国政府は金融デカップリングに自信?国際収支に「3つの変化」) [世界情勢]

米中経済戦争については、3月31日に取上げた。今日は、(その16)(アプライドがKOKUSAIの買収を断念 背景に中国当局の思惑、中国の習国家主席、米国と同盟国を痛切に批判 名指しは避けてもどの国を指すのか一目瞭然、イエレン財務長官が前政権の対中貿易合意に疑念 対中関税賦課という方法は思慮深いとはいない、中国政府は金融デカップリングに自信?国際収支に「3つの変化」)である。

先ずは、4月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「アプライドがKOKUSAIの買収を断念 背景に中国当局の思惑」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267575
・『3月29日、米国の半導体大手のアプライド・マテリアルズは、旧・日立製作所系のKOKUSAI ELECTRIC(以下、KOKUSAI)の買収を断念すると発表した。 中国当局の承認を、買収完了の期限までに得られなかったことがその背景にある。 アプライド・マテリアルズがKOKUSAIを買収すれば、米国当局の規制によって、中国企業の半導体製造装置などの入手が困難になる可能性がある。そのことを中国当局が懸念したとみられる。 中国当局としては、ITなど先端分野での中国企業の優位性を、なんとしてでも維持したいと考えているのだろう。 こうした中国当局の判断は、過去にも似たケースがあった。 2018年、米国の半導体の大手のクアルコムは、オランダのNXPセミコンダクターズを買収しようとした。しかし、今回同様に中国当局は審査を長引かせ、クアルコムは時間切れを迎えて買収を断念した。その時期は、米中の通商摩擦が激化し始めたタイミングと重なる。 中国は、米国の制裁発動などへの対応手段として、独占禁止法の運用を重視し始めたようだ。今回、アプライド・マテリアルズによるKOKUSAI買収の承認が下りなかったことは、そうした中国の考えが一段と強まり、IT先端分野での米中対立がさらなる先鋭化に向かっていることを示唆する』、「中国は、米国の制裁発動などへの対応手段として、独占禁止法の運用を重視し始めたようだ」、困ったことだ。
・『アプライドによるKOKUSAI買収を中国が承認しなかった背景  中国がアプライド・マテリアルズによるKOKUSAI買収を承認しなかった理由は、買収によって、KOKUSAIの製品が、米国政府が実施している対中規制・制裁の対象になる可能性が高まるからだろう。 KOKUSAIは「成膜技術」に強みを持つ半導体製造装置メーカーだ。半導体の製造プロセスでは、シリコンウエハー(基板)の表面に、アルミニウムなどの層を形成して回路のもとをつくる。この工程を「成膜工程」と呼ぶ。KOKUSAIは世界トップレベルの成膜装置を生産し、世界の大手企業に納入してきた。中国の半導体受託製造(ファウンドリー)大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)などにとっても、その技術は欠かせない。 中国は世界最大の半導体製造装置需要国である。半導体自給率向上を目指す中国半導体関連企業とKOKUSAIとの取引は増えているため、米国政府の規制が入ることは避けなければならないのだろう。 先端分野の産業政策である「中国製造2025」を推進する中国にとって打撃だったのは、2020年12月にトランプ前政権がSMICを事実上の禁輸対象に指定したことだ。 微細化技術で世界の先頭をひた走る台湾積体電路製造(TSMC)と比べ、中国SMICの製造技術は3世代ほど遅れているといわれる。中国の半導体企業は製造能力の向上を急ぎ、米国の制裁の対象外である日本製の(日本独自の技術や知的財産を用いた)製造装置などを買い求めている。中国勢のこうした「製造装置かき集め攻勢」によって、中古の旧式半導体装置の価格は上昇中だ。 もし、アプライド・マテリアルズによる買収が成立すると、KOKUSAIは米国企業の一部になる。その結果、KOKUSAIの成膜技術が米国政府の対中規制の対象に含められ、中国の企業はKOKUSAIの製品を活用できなくなる恐れがあるのだ。そうした展開を避けるために、中国政府(独禁法当局)は買収審査を遅らせ、時間切れを狙ったのだろう。それは、早い段階で買収を承認した日・米・欧当局の姿勢と大きく異なる』、「買収審査」にかこつけて、競争政策以外の全く政治的観点が持ち込まれても、文句は言えないのだろうか。もっとも、国際司法裁判所に訴えたところで審査に時間がかかれば、合併の効果も薄らいでしまう。
・『米国はインテル、中国はSMIC 激化する米中の覇権争い  中国は、IT先端分野における米国との対立が激化する展開を想定して、独禁法などを運用しているようにみえる。中国企業と取引のある半導体の製造装置、ソフトウエア、さらには、関連する素材や部材分野での買収が今後、難航する可能性は高まっている。また、製造装置は分解できる。中国は外資企業からの技術の強制移転や産業補助金など、あらゆる方策を用いて半導体の微細化技術の開発を強化するだろう。その力は軽視できない。 トランプ政権以降の米国は、中国企業の成長力を抑えるために、企業の競争よりも、産業政策に注力し始めた。 その象徴が、米インテルだ。2020年の半導体の売り上げ規模で、インテルは世界トップだが、微細化に関しては、台湾TSMCと韓国サムスン電子の後塵を拝してきた。 インテルはアリゾナ州に工場を建設し、2024年の稼働を目指す。米国は労働コストや地代の高さを負担してでも、世界最大の半導体メーカーであるインテルの地位をより盤石のものとし、デジタル技術面での影響力を高めたい。 そのために、米バイデン政権は、半導体だけでなく人工知能(AI)の開発や活用に関しても、対中制裁などを重視する可能性がある。 中国は、そうした米国の圧力に対抗する。中国SMICは広東省深セン市に旧世代の半導体工場を建設し、2022年の生産開始を目指している。 ポイントは、稼働時期の早さだ。その狙いは、半導体の需給がひっ迫する中で、最先端の製造ラインを必要としない半導体の供給力を高め、チップの自給自足体制と、より多くの世界シェアを獲得することだ。 また、長めの目線で考えると、中国の半導体産業が米国への技術依存から脱却するために、独自の設計・製造技術を生み出し、より低価格でのチップ供給を目指す展開もあるだろう。 半導体分野における米中対立は、より熱を帯びつつあるように感じる』、「深セン市に旧世代の半導体工場を建設し、2022年の生産開始を目指している」、「最先端の製造ラインを必要としない半導体の供給力を高め、チップの自給自足体制と、より多くの世界シェアを獲得する」、狙いは確かだ。
・『米中対立の先鋭化は日本企業にとって実はチャンス  米国企業であるアプライド・マテリアルズがKOKUSAI買収を目指し、それを中国が承認しなかったことは、わが国の半導体関連技術が米中から必要とされていることを確認する機会となった。 米国は、自国を軸とする世界の半導体供給体制を確立し、中国の覇権強化を阻止したい。そのために、米国は日本と台湾との連携を強化している。それだけ、米国は、わが国のフォトレジストやシリコンウエハーなどの半導体関連部材や製造装置などに関する技術を、より重要視しているということだ。 その状況下、アプライド・マテリアルズはKOKUSAIを買収することによってその技術を取り込み、メモリ半導体向けの製造装置市場でのシェアを伸ばそうとしたのである。 他方、中国企業にとってもKOKUSAIの技術は手放せない。中国政府は米国企業による買収承認に時間をかけ、結果的に期限内に承認しなかった。それは、中国企業が用いてきた日本企業の技術が、米国の対中規制・制裁の対象に含められることは避けなければならないという危機感の表れといえる。 米中という大国の衝突が激しさを増す中で、KOKUSAIは米国からも中国からも必要とされる立場を確立した。つまり、米中対立の先鋭化は、わが国企業が成長を目指すチャンスと考えられる。 そのために必要な戦略は、国内の知的財産と技術を用いて、米中双方から必要とされる競争ポジションを確立することだ。 足元、車載半導体分野では、那珂工場(茨城県ひたちなか市)火災の発生によってルネサス エレクトロニクスの供給力は低下。世界の自動車生産への影響は追加的に深刻化している。 米中対立から、わが国企業がベネフィットを得るために、事業運営に関するリスク管理体制を強化し、世界各国の企業から信頼され、より必要とされる立場を目指すことの重要性は、かつてないほど高まっているのである』、「米中対立から、わが国企業がベネフィットを得るために、事業運営に関するリスク管理体制を強化し、世界各国の企業から信頼され、より必要とされる立場を目指すことの重要性は、かつてないほど高まっている」、同感である。

次に、4月21日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「中国の習国家主席、米国と同盟国を痛切に批判 名指しは避けてもどの国を指すのか一目瞭然」を紹介しよう。
・『中国の習近平国家主席は20日、世界的な経済統合の推進を呼び掛け、デカップリング(切り離し)に警鐘を鳴らすとともに、「傲慢な指図」は不要だと述べ、米国とその同盟国をけん制した。 習主席は海南省で開かれている「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」でのビデオ形式の基調演説で、米国を名指しせずに「国際関係は交渉や協議で進めるべきであり、世界の将来的命運は全ての国によって決められるべきだ」と主張。「1カ国または数カ国が他国にルールを押し付けるべきではなく、世界は数カ国による単独主義によって翻弄されるべきではない」と述べた。 習主席はまた「障壁を築こうとしたり、デカップリングを進めようとしたりする試みは経済・市場原則に反しており、他国を傷付けるだけで自らにも利益はない」と指摘。中国のサプライチェーンへの依存度を下げ、先端半導体など製品輸出を差し控える米国の取り組みを暗に批判した。 習主席は「現在の世界でわれわれが必要としているのは正義であり、覇権ではない」とし、中国が軍拡競争に関わることは決してないと表明。「他国への傲慢な指図や他国の内政への干渉はいかなる支持も得られない」とも語った』、敢えて名指しを避けたのは、余裕を示すためだろうか。
・『カーボンニュートラル実現に関して新たな提案はなし  気候変動問題に関して習氏は「グリーンな発展という理念を堅持し、気候変動対策で国際協力を進め、パリ協定の履行に向け一層の取り組みが必要だ」と指摘。「グリーン」や「持続可能性」に言及する場面が幾つかあったが、カーボンニュートラル実現に向けた道筋を巡り新たな公約や提案はなかった。 バイデン米大統領は22、23両日に気候変動問題に関するオンラインの首脳会合を開く。ダウ・ジョーンズ通信によると、習主席も参加する見通しとなっている』、なお、産経新聞によれば、英紙ガーディアンは4月23日、習政権が5年以内に予定される数百の石炭火力発電所の建設計画を認可しているとし「公約は(温暖化問題を解決する)突破口にはならない」とした』、「政権が5年以内に予定される数百の石炭火力発電所の建設計画を認可」、とは驚かされた。

第三に、5月20日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「イエレン財務長官が前政権の対中貿易合意に疑念 対中関税賦課という方法は思慮深いとはいない」を紹介しよう。
・『トランプ前米政権が中国との間で昨年1月に締結した第1段階の貿易合意の成果について、イエレン米財務長官はニューヨーク・タイムズ紙との先週のインタビューで疑念を示した。米中合意の将来に関し、バイデン政権として詳細な考えを表明するのは初めて。 イエレン長官はその中で、「私自身の個人的見解としては、対中関税賦課の方法はあまり思慮深いものではなかった」と指摘。「関税は消費者に対する課税であり、一部のケースでは、米国の措置は自国の消費者に害を及ぼしたと見受けられる。そして、前政権が交渉したような合意では多くの点で中国について米国が抱える根本的な問題に対処できなかった」と述べた』、確かに「関税」政策には慎重な検討が必要で、喧嘩腰でやるべきものではない。
・『新たな貿易合意が年内に決着するかどうかは不明  バイデン政権は合意を継続させるか破棄するか、何か新しいものに置き換えるか判断を下す必要がある。米中双方が多くの輸入品目に関税を課す状況にあって、第1段階合意はせいぜい「停戦」にすぎない一方、香港や台湾、人権問題、新型コロナウイルス感染症(COVID19)の発生源などを巡る緊張の高まりで両国関係が悪化し続ける中で一定の安定をもたらす領域にもなっている。 米国が対中政策の見直しをいつ終えるのかについての兆しは見られず、貿易合意の将来が年内に決着するかどうかは不明だ。ただ、シャーマン米国務副長官が訪中するかどうか両国が合意できずにいる様子を見る限り、近いうちに対話が行われる期待は持てそうにない』、7月26日付けブルームバーグによれば、「中国、対米関係は行き詰まりと主張-シャーマン米国務副長官訪中」、「会談は率直で、専門的だったと記者団に説明。謝氏らとの会談は4時間に及び、米国側はハッキングや香港と新疆ウイグル自治区に対する中国政府の政策を巡り懸念を表明」、「会談は4時間に及び」、かなり突っ込んだ会談になったようだ。

第四に、8月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「中国政府は金融デカップリングに自信?国際収支に「3つの変化」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/278403
・『「米中金融デカップリング」では中国に打撃が大きいとみられるが、最近、中国への資金流入が増加していることを考えれば、そうではないという見方もできる。 中国への直接投資や証券投資は増えており、中国政府が人民元高を容認していることで、中国国債への投資も増えている。 このような状況では、中国政府の規制強化で中国IT企業の外国市場上場が減っても、影響は少ないかもしれない。中国共産党は自信を深めて規制をさらに強化するかもしれない』、「中国共産党は自信を深めて規制をさらに強化するかもしれない」、やれやれだ。
・『中国への資金流入は増加 外国市場での上場減っても影響ない?  前回コラム(2021年7月29日付)「『米中金融デカップリング』で中国は自らの喉を絞めることになる」では、ディディなどニューヨーク市場でIPOする企業に対して中国当局が規制を強めているのは、米中間の金融的なつながりを切断する経済的に非合理な行動で、中国の今後の発展に重大な悪影響を及ぼすだろうと指摘した。 しかし、この問題については別の見方をすることも可能だ。 それは、中国がコロナ克服に成功したことからさまざまなチャネルを通じて中国への資金流入が増加しており、そのため外国市場上場という形での資金調達が減っても、もはや中国は困らない、という見方だ。 だから中国のIT企業が得た顧客データなどの情報流出の危険を冒してまで、あるいは中国のプライドを犠牲にしてまで外国市場に上場する必要はないということになる。 このような見方の背景には、中国の国際収支(金融収支)で、次のような3つの変化が最近起きていることがある(注1)。 (1)中国対外直接投資の減少 (2)対中直接投資の増加 (3)対中証券投資の増加  国際収支に関する資金の流れでは、次の関係が恒常的に成り立つ。 経常収支+資本移転等収支-金融収支+誤差脱漏=0 (注1)金融収支は、「直接投資」「証券投資」「金融派生商品」「その他投資」および「外貨準備」からなる。現在のIMFのルールでは、対外資産が増える場合にプラスと表示することになっている。図表1、2もこのルールにしたがって表示されている。ただし、中国の公式統計では、対外資産が増える場合にマイナスと表示しているので、注意が必要だ』、「中国がコロナ克服に成功したことからさまざまなチャネルを通じて中国への資金流入が増加しており、そのため外国市場上場という形での資金調達が減っても、もはや中国は困らない」、あり得る見方だ。「中国のIT企業が得た顧客データなどの情報流出の危険を冒してまで、あるいは中国のプライドを犠牲にしてまで外国市場に上場する必要はない」、強すぎる自信も困ったものだ。
・『国際収支に「3つの変化」 中国の対外直接投資が急減  国際収支の変化の第1は、中国の対外直接投資の動向だ。 企業の海外進出を奨励する「走出去」政策の後押しによって、中国の対外直接投資はこれまで拡大してきた。2000年代半ばには、経常収支黒字の拡大と海外からの直接投資の増大によって資金流入が増加し、国内に過剰流動性をもたらすおそれが起きたため、対外投資が奨励されるようになった。 その結果、対外直接投資は1990年の9億ドルから2007年の248億ドルまで拡大した。その後も2016年まで拡大傾向で推移し、中国の対外直接投資額は世界第2位となり、世界の対外直接投資に占める割合が12.7%にまで上がった。 日本でも、中国資本による不動産の買い占めなどが話題になった。 しかし、2017年以降、中国企業の対外直接投資は欧米向けを中心に急減した。19年の中国の対外直接投資は対前年比18.1%減の1171億ドルになった。 その背景には次のことがある。) 第一に不動産業や娯楽・観光業への直接投資に対して中国当局の管理が強化されたことと、第二に欧米諸国で外国企業に対する投資規制が強化されたことだ。アメリカでは18年8月に「外国投資リスク審査現代化法」が成立した。 ただし、アジアへの投資は、「一帯一路」戦略に関連したインフラ建設投資などを中心として増えている』、「「一帯一路」の失敗例で有名なのは、「スリランカで中国からの融資を受け完成させたインフラに赤字が続き、中国への11億2000万ドルの借金帳消しの条件で、株式の70%を引き渡して、南部のハンバントタ港に99年間の港湾運営権を中国企業に譲渡する事態に追い込まれた」(Wikipedia)。
・『中国への直接投資が増加 米国抜いて最大投資先国に  変化の第二は、中国への直接投資が増えたことだ。 国連貿易開発会議(UNCTAD)の年次報告によると、2020年の世界の海外直接投資(FDI)で、中国がアメリカを抜いて最大の投資先国になった。対中投資が1630億ドルで、対米投資が1340億ドルだった。 19年には、対米2510億ドル、対中が1400億ドルだったが、対米新規投資はほぼ半減し、世界トップの座から陥落した。一方、対中投資は前年比4%増だった。 このように、中国の対外直接投資が減って、投資受け入れが増えているので、ネットの対外直接投資は減少している。これは図表1に示されている。 ネット投資額は、16年にはプラス(中国対外純資産の増加)だったが、17年にはマイナス(中国対外純債務の増加)となり、20年にいたるまでその額が増え続けている』、「2020年の世界の海外直接投資(FDI)で、中国がアメリカを抜いて最大の投資先国になった」、どの国が対中投資を増やしているのだろう。日本は減らしている可能性もある。
・『対中証券投資も増加 欧米の金融緩和で中国国債購入  第三は、対中証券投資も増加していることだ。 とくに中国国債への投資が増えている。 香港経由で中国の債券を売買できる「債券通(ボンドコネクト)」などを利用した外国人の元建て債券の保有残高は、過去1年間で約6割増え3月末には3兆5581億元になった。 外国人の中国国債の保有額は、2016年初めには2500億元程度だったが、18年夏には1兆元を越えた。そして21年5月には前年同月比46%増の約2.1兆元になった。 これにもいくつかの要因がある。 新型コロナウイルスショックに対応して、米欧などの主要国は金融緩和を強化した。このため、国債利回りが顕著に低下した。他方で、中国は早期にコロナを克服して経済の正常化を進めたため、10年債の利回りは3%程度を維持している。 これに着目した機関投資家や中央銀行が中国国債を購入していると思われる。 また、人民元高が続いており、これによる為替差益の期待も国債購入を増やしている一因と思われる。 以上の状況も図表1に示されている。 証券投資は、15、16年はプラス(対外資産の増加:中国からの外国への証券投資)だったが、17年からはマイナスになり20年にはその額が拡大している』、主要国の「国債利回り」がほぼゼロになるなかで、「中国」の「10年債の利回りは3%程度を維持」、「これに着目した機関投資家や中央銀行が中国国債を購入している」、なるほど。
・『“元高容認”が意味すること  中国の経常黒字は、図表2に示すように2018年に縮小した。しかし、20年にはコロナ制圧に成功して中国経済が回復したため増加した。 通常の国なら、経常収支が黒字であれば、直接投資あるいは証券投資によって対外資産を増加させる。そして金融収支はプラスになる。その結果、経常収支と金融収支がバランスする。 ところが中国は、経常収支の黒字によって人民元高の圧力が強まることを防ぐため、商業銀行が企業から、そして中央銀行が商業銀行から外貨を買い取り、外貨準備を増やしてきた。 図表2、図表3に見られるように、13年頃には外貨準備を増やしている。 これまでの中国はこの点で特殊な国だった。 しかし、図表2に見られるように18年以降は、このようなことはなくなった。アメリカから19年8月に為替操作国と認定されたからかもしれない(なお、認定は20年1月に解除)。 人民元レートは20年5月から一貫して増価している。 昨年5月にはレートは1ドル=7.1元だったが、21年6月1日には1ドル=6.38元台に達した。7月22日では1ドル=6.47元だ。 前述したように、元高の期待が対中証券投資を増加させ、中国への資金流入をさらに増やしているのだ』、「元高の期待が対中証券投資を増加させ、中国への資金流入をさらに増やしている」、なるほど。
・『IPO規制、さらに強化の可能性も 統計の不透明、見えにくい実態  中国政府がIT企業に対する規制を強めていることは間違いない。これが「第3次天安門事件」と呼べるほど大きな方向転換であることも間違いない。 問題は、それが中国経済に与える影響の評価だ。 前回コラムでは「深刻な影響があるだろう」と書いたのだが、こうした資金流入の状況を考えると、「ニューヨーク市場でのIPOが減っても問題は大きくない」と判断することも可能だ。 1989年の第2次天安門事件の際には、外国からの投資は90年代初めまで停滞した。しかし、92年に〓小平氏が中国南部の都市を巡って大胆な外資導入などの開放政策推進を説いた南巡講話をきっかけに回復した。 今回はすでに資金流入が増加しているのだから、影響はさらに少ないかもしれない。 もしそうであれば、中国共産党は自信をさらに強め、規制を今後さらに強めるかもしれない。 ただし、「米中金融デカップリング」の影響について、どちらの見方が正しいのかは、中国の統計には不透明な部分が多いこともあって、最終的な判断はまだ下しにくい状況だ。 第一に、図表2で「誤差脱漏」が巨額だ。多くの年で金融収支より額が多い。 第二に、図表1で「その他投資」とされているものが巨額だ。多くの年で直接投資や証券投資の収支より額が多い。 これらが具体的にどのような内容のものであるかはまったく分からない。 したがって、IPO規制の影響を見極めるには、今後の事態の推移を見守る必要がある。 統計の重要な部分が内容不明になっているのは誠に遺憾なことだが、やむを得ない。ただしさまざまなチャネルを通じての中国への資金流入が、とくに2020年に増加しているという傾向には変わりはない』、「図表」は付いてないが、「統計の重要な部分が内容不明になっているのは誠に遺憾なことだが、やむを得ない」、信頼できる「統計」がないのは、いかにも社会主義国らしく、あきらめる他ないのだろう。
タグ:米中経済戦争 (その16)(アプライドがKOKUSAIの買収を断念 背景に中国当局の思惑、中国の習国家主席、米国と同盟国を痛切に批判 名指しは避けてもどの国を指すのか一目瞭然、イエレン財務長官が前政権の対中貿易合意に疑念 対中関税賦課という方法は思慮深いとはいない、中国政府は金融デカップリングに自信?国際収支に「3つの変化」) ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「アプライドがKOKUSAIの買収を断念 背景に中国当局の思惑」 「中国は、米国の制裁発動などへの対応手段として、独占禁止法の運用を重視し始めたようだ」、困ったことだ。 「買収審査」にかこつけて、競争政策以外の全く政治的観点が持ち込まれても、文句は言えないのだろうか。もっとも、国際司法裁判所に訴えたところで審査に時間がかかれば、合併の効果も薄らいでしまう。 「深セン市に旧世代の半導体工場を建設し、2022年の生産開始を目指している」、「最先端の製造ラインを必要としない半導体の供給力を高め、チップの自給自足体制と、より多くの世界シェアを獲得する」、狙いは確かだ。 「米中対立から、わが国企業がベネフィットを得るために、事業運営に関するリスク管理体制を強化し、世界各国の企業から信頼され、より必要とされる立場を目指すことの重要性は、かつてないほど高まっている」、同感である。 東洋経済オンライン ブルームバーグ 「中国の習国家主席、米国と同盟国を痛切に批判 名指しは避けてもどの国を指すのか一目瞭然」 敢えて名指しを避けたのは、余裕を示すためだろうか。 「政権が5年以内に予定される数百の石炭火力発電所の建設計画を認可」、とは驚かされた。 「イエレン財務長官が前政権の対中貿易合意に疑念 対中関税賦課という方法は思慮深いとはいない」 7月26日付けブルームバーグによれば、「中国、対米関係は行き詰まりと主張-シャーマン米国務副長官訪中」、「会談は率直で、専門的だったと記者団に説明。謝氏らとの会談は4時間に及び、米国側はハッキングや香港と新疆ウイグル自治区に対する中国政府の政策を巡り懸念を表明」、「会談は4時間に及び」、かなり突っ込んだ会談になったようだ。 野口悠紀雄 「中国政府は金融デカップリングに自信?国際収支に「3つの変化」」 「中国共産党は自信を深めて規制をさらに強化するかもしれない」、やれやれだ。 「中国がコロナ克服に成功したことからさまざまなチャネルを通じて中国への資金流入が増加しており、そのため外国市場上場という形での資金調達が減っても、もはや中国は困らない」、あり得る見方だ。「中国のIT企業が得た顧客データなどの情報流出の危険を冒してまで、あるいは中国のプライドを犠牲にしてまで外国市場に上場する必要はない」、強すぎる自信も困ったものだ。 「「一帯一路」の失敗例で有名なのは、「スリランカで中国からの融資を受け完成させたインフラに赤字が続き、中国への11億2000万ドルの借金帳消しの条件で、株式の70%を引き渡して、南部のハンバントタ港に99年間の港湾運営権を中国企業に譲渡する事態に追い込まれた」(Wikipedia)。 「2020年の世界の海外直接投資(FDI)で、中国がアメリカを抜いて最大の投資先国になった」、どの国が対中投資を増やしているのだろう。日本は減らしている可能性もある。 主要国の「国債利回り」がほぼゼロになるなかで、「中国」の「10年債の利回りは3%程度を維持」、「これに着目した機関投資家や中央銀行が中国国債を購入している」、なるほど。 「元高の期待が対中証券投資を増加させ、中国への資金流入をさらに増やしている」、なるほど。 「図表」は付いてないが、「統計の重要な部分が内容不明になっているのは誠に遺憾なことだが、やむを得ない」、信頼できる「統計」がないのは、いかにも社会主義国らしく、あきらめる他ないのだろう。
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