金融業界(その10)(これから「みずほ銀行」に起こる ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない、新生銀行対SBI3題:新生銀行<上>SBIによるTOB実施に徹底抗戦 買収防衛策を発動しホワイトナイト探し、新生銀行<下>SBIによるTOBの行方…金融庁の「議決権行使」が勝負を決める、「第4のメガバンクを目指す」SBI北尾社長が新生銀行の買収で狙う"幻のプラン" 「会長候補が元金融庁長官」の真意) [金融]
金融業界については、8月31日に取上げた。今日は、(その10)(これから「みずほ銀行」に起こる ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない、新生銀行対SBI3題:新生銀行<上>SBIによるTOB実施に徹底抗戦 買収防衛策を発動しホワイトナイト探し、新生銀行<下>SBIによるTOBの行方…金融庁の「議決権行使」が勝負を決める、「第4のメガバンクを目指す」SBI北尾社長が新生銀行の買収で狙う"幻のプラン" 「会長候補が元金融庁長官」の真意)である。
先ずは、9月17日付け現代ビジネス「これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87384?imp=0
・『今年8月に発生したみずほ銀行のシステムトラブル。実は19年前にもこれに似たケースが起こっていたことを【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』で報じた。多発する「システム障害」の爆弾を抱えた同行は今後どうなっていくのか…?』、昨日も外国為替でシステムトラブルが発生、これで8回目だ。
・『隠れていた「古の言語」 全体像の見えない「バベルの塔」と化したみずほのシステム。その成り立ちとは、どのようなものなのか。 過去に2度、みずほは大きなシステム障害を起こしている。1度目は前編でも触れた、'02年の3行統合に伴う混乱だ。 統合時、みずほは旧3行が使っていた複数の異なるシステムを生き残らせたまま、「ゲートウェイ・システム」と呼ばれる中継プログラムでそれらを繋ぎ合わせるという方針を打ち出した。 だが、この建て付けそのものに難があった。当時の事情を知るみずほ行員が言う。 「勧銀は富士通製のメインフレーム(大型コンピュータ)の『STEPS』を'88年に導入していました。また興銀は日立製のシステム『C-base』を、富士銀行は日本IBM製の『TOP』をそれぞれ持っていた。 普通、銀行が合併してシステムを統合する時は、顧客や預金などの情報をどれか一つのシステムに全て移行する『片寄せ』という方法を取ります。 しかし、みずほは合併後も『同じ担当の役員が3人いる』と揶揄されるくらい、よく言えば旧3行が対等、悪く言えばバラバラだった。そのため、各行のシステム、ひいてはベンダーとの取引を温存しようとしたのです」 統合直前、旧勧銀のSTEPSと、富士銀のTOPを並立させ、別のコンピュータでつなぐことが決まったが、あえなく失敗。それが統合時に発生した障害の原因だった。 このとき、事後処理にあたった情報系子会社の元社員は驚いたという。 「勧銀のシステムの一部に、'71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていたのです」 この部分は、'80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた。'00年代には使いこなすエンジニアが激減し、「化石」と呼ばれた言語である。 「当時ですら、わかるエンジニアが現場にいなかった。もちろん設計図や手引の類いも見当たりませんでした」 たとえるなら、古い時計を部品交換のため開けてみたら、交換したい部品が古すぎて替えが利かず、やむなく油を差して閉めた、というような話だ。だがこの時は、気に留める者もいなかった』、「各行のシステム、ひいてはベンダーとの取引を温存しようとした」、のはともかく、「「勧銀のシステムの一部に、'71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていたのです」 この部分は、'80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた」、これには心底驚かされた。
・『複雑怪奇な「キメラ」 2度目の大規模障害が起きたのは'11年3月15日、東日本大震災の直後だ。災害義捐金の振り込みがひとつの口座に殺到し、システムが一度に対応できるデータ量の上限を超えてしまった。 エラーに対応しているうちに、他の取引のデータも渋滞を起こし始め、遅れてゆく。際限なく積み上がる未送信データを処理するため、ATMの全面停止を繰り返し、行員たちは夜を徹して手作業で数字を入力した。未処理の金額は一時、8300億円分にも達した。 「当時のみずほのシステムは『バッチ処理』といって、夜間に取引データをまとめて自動処理し、朝に各支店へ送信する仕組みをとっていましたが、これが機能しなくなった。 バッチ処理自体、とっくの昔に時代遅れになった手法ですが、みずほは何らかの理由でこだわっていたのです(ITジャーナリストの佃均氏)。 データの手入力が終わったバッチ処理あとでシステムが予期せず再起動し、振り込みや引き落としが二重に発生するミスも多発。結局、鎮静化するまでに1週間もかかった。 これら2度の致命的な障害に懲りて、みずほは前述した新システム「MINORI」の開発に着手したというわけだ。いや、金融庁の叱責と業務改善命令に押される形で、着手せざるを得なかったというほうが正しいだろう。'11年6月のことだ。 MINORIは約4000億円の費用をかけて8年後の'19年7月に完成した。業界では、「史上初めて、銀行が自社の勘定系システムを全面再構築した」と話題になった。 だが、どうやら実態は異なる。一から作り直した「新築」ではなく、既存の「塔」をさらに建て増しした「改築」だったと考えなければ、説明がつかない謎があるのだ。 先に触れたCOBOLがいまだに使われているのである。 「ITベンダーの間では、かねて『なぜみずほは、わざわざ高齢のエンジニアを雇ってまでCOBOLを使い続けるのか』が疑問視されていました。MINORI導入時にCOBOLを使った部分をなくして、別のプログラム言語で書き換えてもよかったはずなのに、それもしなかった。 それはつまり、なくさなかったのではなく『なくせなかった』のではないか。勧銀時代から抱える古い重要プログラムやデータが、いまだにMINORIの内部で生きているからではないか—そうとしか考えられないのです」(前出・佃氏) 事実、全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている。 これが意味するのは、おそらく'11年に金融庁から業務改善命令を受けた時点で、みずほのシステムは根本的な再構築がもはやできない状態だった可能性だ。 古い部分と新しい部分が幾重にも折り重なり、さらに開発元も複数のベンダーにまたがっていた。しかも、この時すでにみずほは延べ3000億円近くをシステム改修に投入していた。20年以上も二人三脚を続けてきたベンダーを切り捨て、一から作り直すわけにはいかなかったのだ。 いまや、システムの全容をる者はみずほにも、ベンダーにもいない。 もう、誰にもわからない 前出と別のみずほ行員が言う。 「最初に勧銀にSTEPSを売り込んだのは、ソフトウェアエンジニア出身で'90年代に社長を務め、辣腕で鳴らした秋草直之氏でした。 彼は勘定系システムの開発とメンテナンスを請け負うことで、勧銀・みずほから安定的に巨額のカネを引き出す仕組みを作った。一方のみずほは、時が経つにつれて膨らむコストを損切りできず、両者は共依存関係になっていった。富士通に経産省の後押しがあったことも、みずほの意思決定を鈍らせました」 秋草氏をはじめ、'80年代に銀行のシステム開発に携わった技術者たちは、いわば日本のシステムエンジニアの「第一世代」の人々だ。だが、この5年ほどで、彼らは次々と鬼籍に入っている。 今回、勧銀・みずほのシステム開発に携わったと思しき複数の元エンジニアにコンタクトを試みたが、いずれも故人となっていた。判明した中で唯一健在の人物は、6月に脳梗塞を発症し、取材が難しい状態だった。 「2025年の崖」という言葉をご存知だろうか。この年までに、'80年代に開発された企業の古いシステムの根幹を知る人が業界を離れ、あるいは亡くなり、ブラックボックス化する。みずほのシステムは、その最大にして最悪の事例と言える。 【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』の冒頭で罵られていた富士通のエンジニアも、5年ほど前に業界を去った。彼はこう話す。 「みずほは障害が起こるたびに、人為的なミスが原因の『人災』だと言いますが、的外れもいいところです。もう何十年も前から、爆弾は作動していた。人災などではなくて構造的な問題だと気づいていないのは、みずほの人たちだけですよ」 バベルの塔の基礎がどうなっているのか、そしてどこがグラつきの原因なのかを知る人は、もはや語る術を持たない。「みずほは手探りで、いつ終わるとも知れぬ修繕を繰り返すほかない。崩壊の日に怯えながら』、「全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている」、「「2025年の崖」という言葉・・・この年までに、'80年代に開発された企業の古いシステムの根幹を知る人が業界を離れ、あるいは亡くなり、ブラックボックス化する」、「みずほは手探りで、いつ終わるとも知れぬ修繕を繰り返すほかない。崩壊の日に怯えながら」、金融庁もシステムを直接管理するようだが、実態がこんなに酷い有様では、さぞかし苦労することだろう。
次に、9月29日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「新生銀行<上>SBIによるTOB実施に徹底抗戦 買収防衛策を発動しホワイトナイト探し」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/295302
・『新生銀行は9月17日、取締役会を開き、ネット金融大手SBIホールディングス(HD)から提案されている株式公開買い付け(TOB)に対抗する目的で、買収防衛策の導入を決めた。 SBIはこれに強く反発。防衛策の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請する検討に入った。敵対的TOBに発展する。 これまでの経緯はこうなる。SBIは同9日、新生銀にTOBを開始すると発表した。出資比率を20.32%(グループ分を含む)から最大48%に引き上げ、連結子会社にする方針。9日の終値1440円よりも38.9%高い2000円で買い付ける。首脳陣を刷新し、元金融庁長官の五味広文氏を会長に据える人事案を明らかにした。五味氏の内諾を得たとしている。 買い付け総額は1164億円。SBIは「新生銀の収益力を高め、公的資金返済のめどをつけたい」と力説した。 SBIの北尾吉孝社長は「第4のメガバンク」構想を掲げ、地銀、第二地銀との連携を矢継ぎ早に進めてきた。島根銀行、福島銀行、仙台銀行など8つの地域金融機関と資本・業務提携してきたが、「弱小金融機関の集合体」(有力地銀の頭取)という辛口の評価が多かった。 そこで第4のメガバンク構想の真ん中に新生銀行を組み込もうというわけだ。新生銀をテコにSBIの金融サービスを利用する地銀を増やし、総合金融グループに脱皮するという戦略を描く。新生銀は“北尾ドクトリン”に欠かせない最重要なパーツとなる。 この買収劇には伏線があった。19年9月、「新生銀をSBIグループの中核的企業に位置付けるため」として今回のTOBと同水準で株式の取得を提案したが新生銀は賛同しなかった。 状況が劇的に変化したのは今年1月。新生銀がSBI証券のライバルであるマネックス証券と業務提携したことによる。実力行使あるのみだ。これ以降、2カ月間でSBIは新生銀株を約7%買い増して保有比率を高めた。) 新生銀の6月23日の定時株主総会で、会社側提案の取締役人事案にSBIは反対票を投じた。工藤英之社長の賛成率が76.643%だったのを筆頭に、全ての取締役の賛成率は70%台にとどまった。 新生銀は「TOBについて、事前に連絡を受けていない」として買収防衛策を決定した。SBIからみれば「マネックスとの提携を我々も知らされていない」となる。目には目をというわけだ。 新生銀の買収防衛策はポイズンピル(食べたら毒が回るという意味)。SBIを含めた既存の株主に事前に新たな株式の「予約権」を無償で配り、SBIには予約権の行使に制限をかける。TOBによってSBIが予定している株式数を手に入れたとしても、他の株主が予約権を行使することでSBIの保有割合が相対的に下がり、買収を阻止する仕組みだ』、「新生銀がSBI証券のライバルであるマネックス証券と業務提携」がきっかけに両社の関係は悪化したようだ。「新生銀の買収防衛策」を成立させる自信はあるのだろうか。それとも時間稼ぎなのだろうか。
・『■攻防戦のカギを握るのは金融庁 防衛策の発動には時間を稼ぐ意味がある。買収防衛策の導入には臨時株主総会での決議が必要になる。この間にホワイトナイト(白馬の騎士=新生銀に友好的なスポンサー)探しを本格化させる。ホワイトナイトの候補として、ソニーグループやセブン&アイ・ホールディングス、企業再生ファンドなどの名前が取り沙汰されている。ソニーは金融子会社ソニーフィナンシャルホールディングスを持っている。 セブン&アイはセブン銀行の初代社長や舟竹泰昭・現社長が、新生銀の前身の日本長期信用銀行出身者という人脈からの連想だ。企業再生ファンド「ジェイ・ウィル・パートナーズ」も代表は長銀出身者である。 新生銀と業務提携したマネックスグループを持ち分法適用会社にしている静岡銀行がホワイトナイトになるとの観測も流れるが、「2000円を上回る条件を出せる買い手は現れないのではないか」(TOBに詳しい証券関係者)というのが冷静な見方かもしれない。ソニーも高値買いはしない。 SBIと新生銀の攻防戦のカギを握るのは金融庁だ。SBIはTOBを発表する直前に金融庁の暗黙の了解を得たという情報もある。公的資金を返済できない新生銀の株価がSBI効果で上がれば金融庁にとっても悪くない話だ。金融庁はどう出るのか。=つづく』、金融庁元長官がTOB成立後の会長候補になっているのであれば、「金融庁の暗黙の了解を得た」のは当然だ。
第三に、この続き、9月30日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「新生銀行<下>SBIによるTOBの行方…金融庁の「議決権行使」が勝負を決める」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/295356
・『SBIホールディングス(HD)による新生銀行へのTOB(株式公開買い付け)で、金融庁は株主として判断を迫られる。新生銀行に公的資金を注入した国は、預金保険機構(発行済み株式の12.50%)、整理回収機構(同9.28%)を通じて21.78%の株式を持つ。SBI(同20.32%)を上回り、事実上の筆頭株主だ。 バブル崩壊後の旧日本長期信用銀行時代に注入した公的資金約3500億円がいまだに回収できていない。持ち株を売って回収するなら、株価が7450円にならないとダメである。TOB発表前に新生銀の株価は1400円。9月13日に2030円の年初来高値に急騰したが、それでも目標とする株価の3割にも満たない。 麻生太郎財務相は「公的資金の債権を保全する観点から、預金保険機構と整理回収機構が株主として適切に判断すべきだ」と慎重な姿勢を示した。) SBIはTOB成立後、「預金保険機構、整理回収機構と公的資金返済に向け協議する」としている。SBIが新生銀株の20%以上を保有する主要株主になるには国の認可が必要だが、金融庁は9月9日、SBIに、この認可を出した。 金融庁は「TOBの成否にかかわらず、企業価値が高まることが何より重要だ。株価が上がらなければ公的資金も回収できない」(幹部)との立場だ。 SBIは事を起こす前に、金融庁シフトというべき体制を敷いてきた。6月29日の株主総会で元財務省事務次官の福田淳一氏と元農林水産省事務次官の末松広行氏を社外取締役に迎えた。元金融担当相の竹中平蔵氏を含めると15人の取締役のうち3人が金融行政に詳しい“適材”ということになる。 元金融庁長官の五味廣文氏は17~19年にSBIの社外取締役を務め、今はアドバイザリーボードのメンバーだ。北尾吉孝社長は20年6月、五味氏を出資先の福島銀行の社外取締役に送り込んだ。21年6月、1年で退任したが、福島銀の再生に一役買ったことは間違いない。五味氏は新生銀のTOBが成功した暁には会長の椅子に座ることになっている。 地銀再編論者の菅義偉首相が“コロナ敗戦”の責任を問われ、わずか1年で退陣する。北尾社長が新生のTOBに打って出たのは、後ろ盾である菅首相の退陣が決まったことと無関係でないだろう。 言うまでもないことだが、金融庁は新生銀の監督官庁である。同時に実質的な筆頭株主でもあり、2つの顔を持つ。監督官庁の立場と、株主という立場の利害が衝突しかねないため、頭が痛いはずだ。 「当初は、議決権を行使しない棄権の可能性を探ってきた。新生銀が買収防衛策を決議したことで、棄権することが許されない状況になった。株主保護の観点からも旗幟を鮮明にしなければならない」(有力地銀の頭取) 新生銀の会長に金融庁元長官の五味氏が就任する人事案にも気を使う。大物OBと裏でつながっていたと勘繰られたら金融行政の正当性が揺らいでしまう。SBIと新生銀を等距離に置きつつ、一つ一つの課題を是々非々で判断するしかないだろう』、「SBI」の「15人の取締役のうち3人が金融行政に詳しい“適材”」、とはずいぶん手厚い体制だ。金融庁としても、「大物OBと裏でつながっていたと勘繰られたら金融行政の正当性が揺らいでしまう。SBIと新生銀を等距離に置きつつ、一つ一つの課題を是々非々で判断するしかないだろう」、難しい綱渡りが求められるようだ。
第四に、9月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの森岡 英樹氏による「「第4のメガバンクを目指す」SBI北尾社長が新生銀行の買収で狙う"幻のプラン" 「会長候補が元金融庁長官」の真意」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50420
・『新生銀の「事実上の買収」に乗り出した 北尾吉孝社長が率いるSBIホールディングス(HD)が新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)に乗り出した。SBIは新生銀行株の20.32%を保有する主要株主だが、9月10日から当初の期限を延長して12月8日までTOB(株式公開買い付け)を実施し、約1100億円を投じて出資比率を48%まで引き上げたい意向だ。買い付け価格は新生銀株の9月9日終値の1440円を39%上回る1株2000円に設定されている。 SBIはTOBによって新生銀株を連結子会社化する意向だ。仮にTOBへの株主の応募が上限の48%に達しない場合でも、残る株式を市場から買い上げるか、追加のTOBが想定されている。さらにSBIは株式を買い増し完全子会社化した後、非上場化する可能性もある。事実上の買収だ。 ただし、50%超の株式を取得する場合、SBIHDが新生銀行の持株会社になるためには銀行法第52条など法令上の許可が必要で、金融庁の認可が前提となる。最後には大株主で新生銀行株の20%程度を有する国(預金保険機構)との交渉が残ることになる』、この点に関しては、既に「金融庁」の内諾を得ている筈だ。
・『北尾氏を激怒させた新生銀の対応 SBIは昨年夏に地方創生を効率的に具現化するための統括会社「地方創生パートナーズ」(東京・港区)を設立し、「第4のメガバンク」を標榜した地銀連合構想を進めている。第二地銀を中心にこれまでに8行に資本出資しており、「当面、10行程度まで広げる」(北尾氏)との意向を表明している。その地銀連合の中核会社的な役割を新生銀行に求めており、北尾氏は以前から「新生銀行を(地方)銀行の銀行にしたい」と周囲に語っていた。TOBはその戦略の延長線にある。 SBIは2019年4月から新生銀株を買い増し、同年夏にはSBIの北尾氏から新生銀の工藤英之社長に資本提携の提案を行っている。しかし、「新生銀内にSBIの連結子会社になることへの反発が強く、資本提携は実現しなかった」(金融庁関係者)。その後、両社は連携に関する協議を継続したが、SBIが求める資本や証券業務分野での提携に新生銀側は首を縦に振らなかった。そればかりか同行は今年3月にSBIとライバル関係にあるマネックス証券と包括提携を行い、SBIを激怒させた。北尾氏は工藤氏を「信義にもとる男だな」と不満をぶちまけたとされる』、「新生銀行」の前身の長期信用銀行は金融債を発行、多くを地銀に引き受けてもらっていたので、地銀との関係は深かった。現在は、金融債は発行してないが、昔からのつながりは残っているようだ。しかし、わざわざ「SBIとライバル関係にあるマネックス証券と包括提携」した狙いは何なのだろう。
・『金融庁OBを次々と重要ポストに据えている 今年6月に開催された新生銀の株主総会で、SBIは工藤氏、アーネストM.比嘉氏、槇原純氏、村山利栄氏の4役員の再任決議に反対票を投じた。工藤氏ら役員は再任されたが、SBIは今回のTOBに際してもこの意向を変えておらず、TOB成立後、臨時株主総会の招集請求を行い、役員陣の全部または一部の交代を求める方針だ。「取締役メンバーの中には、ゴールドマン・サックス証券やマネックスグループなど、社外取締役の出身母体に特定の偏りがあるように見受けられる面もある」(SBI)とも指摘している。 そのSBIが新取締役会長候補に推薦しているのが元金融庁長官の五味廣文氏(プライスウォーターハウスクーパース総合研究所理事長)だ。メガバンク幹部によると、「SBIは第4のメガバンク構想と並行して金融庁の有力OBを次々とスカウトし、グループ企業の重要ポストに据えている。 16年に元審議官の乙部辰良氏(現SBIインシュアランスグループ会長兼社長)を招聘しょうへいしたのを皮切りに、17年に元長官の五味廣文氏を社外取締役に招き、18年に元総括審議官の小野尚氏(現SBI生命保険社長)をスカウトした」という。SBIの北尾氏はその五味氏を新生銀の会長に就けるというのだ』、「SBI」がこれだけ「金融庁」OBの受け皿になっていれば、当然、行政判断にも影響する可能性がある。
・『五味氏はいったいどんな人物なのか 五味氏は1998年6月に財金分離されたばかりの金融監督庁(金融庁の前身)の検査部長となり、同年12月に日本長期信用銀行(新生銀行の前身)を一時国有化した当事者の一人だ。 その後、五味氏は金融庁検査局長、監督局長を経て2004年に第4代金融庁長官に昇りつめ、小泉、第一次安倍内閣下で足利銀行やりそな銀行の国有化を行い、消費者金融のグレーゾーン金利を是正するなど剛腕を発揮した。一方、戦後初のペイオフ案件となった日本振興銀行や石原慎太郎氏(当時・東京都知事)が提唱した「新銀行東京」の設立にもかかわった。 敵対的ともいえるSBIのTOBに対して、新生銀はSBIに対抗できるホワイトナイト(白馬の騎士)を招聘できるかが焦点になる。 新生銀行は9月16日に、TOBの経緯をめぐりSBIと見解の相違があると発表。SBIによる資本提携の提案や、新生銀行とマネックス証券の包括提携の経緯について、SBIの認識が不正確だと指摘した。SBIに対して詳細な質問状を送付するとともにTOB期限の延長と買収防衛策を講じることを示唆した。 これに対してSBIは当初、TOBの延長要請は「単なる時間稼ぎで、株主の利益を著しく損なう」と反発したが、その後、株主総会の早期開催に加え3条件を前提に、一定期間のTOB延長を認める構えに転じた』、なるほど。
・『新生銀の防衛策はホワイトナイトの獲得だが… SBIは株主総会の早期開催のほか、①重要性の低い質問はせず、いたずらに検討期間を延長させないこと、②新生銀の株主総会で買収防衛策の発動を審議する場合、TOBが株主の利益を損ねる恐れがあるとする具体的な根拠を示すこと、③総会でのSBIの議決権行使を認めなかったり、新生銀が他社への新たな株式取得を働き掛けたりしないこと――を条件として挙げている。 一方、新生銀行はTOB期限をできる限り延長させる間に、ホワイトナイトを見つけることが最大の眼目で、ソニーグループやセブン&アイ・ホールディングス、企業再生ファンドなどと水面下の交渉を行っている。しかし、本命視されるソニーグループやセブン&アイ・ホールディングスは回答を控えている。 「SBIが提示したTOB価格が高く、仮に敵対的TOB合戦となった場合、価格がつり上がる可能性があり、コスト高が避けられないほか、ホワイトナイトが成功しても、買収後の新生銀行の企業価値を早期に引き上げるのは容易なことではない。明確で実現性の高い成長戦略が描けなければホワイトナイトに手を上げるところがすんなりと見つかるとは思えない」(メガバンク幹部)とみられるためだ』、やはり「ホワイトナイト」を見つけるのは相当難しそうだ。
・『破格の安値で買収された悪夢がよみがえる また、企業再生ファンドにホワイトナイトを要請した場合、かつて新生銀行の前身である日本長期信用銀行(長銀)が一時国有化後、米国の投資ファンド「リップルウッド」に買収された悪夢がよみがえる。「破格の安値で長銀を買収したリップルウッドは長銀の再上場と高配当で法外な利益を手に入れた」(メガバンク幹部)だけに、市場の評価は得られそうにない。そもそも企業再生ファンドは最終買収者への橋渡し役でしかない。いずれ出口戦略が待ち受けている。 また、SBIはTOB期間延長の条件として、「新生銀が他社への新たな株式取得を働き掛けたりしないこと」を挙げている。ホワイトナイトを捜すこと自体を牽制しているわけだ。これでは新生銀行が条件を受け入れることは難しいだろう。北尾氏は新生銀が買収防衛策を導入することに激怒したと周囲は語っている』、なるほど。
・『なぜこれほどまでに新生銀がほしいのか なぜ北尾氏はこれほどまでに新生銀がほしいのか。北尾氏は8地銀に出資する前から新生銀行を「第4のメガバンク」のプラットフォームとして手に入れる構想を持っていたと関係者は語る。そこには長く金融界に身を置き、銀行の再編をつぶさに見分してきた北尾氏の知見がある。 時計の針を長銀が一時国有化される直前の1990年代央に戻さなければならない。 バブル経済に踊った長銀は、系列ノンバンクや不動産業への貸し付けが不良債権化し、経営危機に瀕していた。日本興業銀行と並ぶ長信銀の雄として日本経済のメインフレーム企業に長期の資金を供給する長銀の経営危機は、日本の金融システムそのものを揺るがせかねなかった』、「長銀」は経営危機のまま放置されたため、優良取引先が逃げ出し、残った取引先は他行が引き受けるのをためらうような先ばかりとなったため、いまだに企業価値向上に苦労している。
・『北尾氏は“幻のプラン”を実現させる狙いか その打開策として構想されたのが、当時の日本輸出入銀行や日本開発銀行などの政府系金融機関との統合だった。だが、これは政府系金融機関の反対で頓挫した。次善の策として考案されたのが、金融債を通じ広範なネットワークを持つ地銀との連携であり、「地銀連合のセントラルバンクとして長銀を位置付けるものだった」(長銀OB)であった。 地銀にない高度な金融スキルとノウハウを持つ人材を有する長銀は、まさに地銀のセントラルバンクとしてうってつけの存在だった。旧大蔵省銀行局もこの案を推していた。 しかし、そこに米国の横やりが入り、国内の政治的な混乱もあり、長銀は一時国有化され、米投資ファンドへ売却された。こうした経緯を知る北尾氏は、まさに時計の針を1990年代央に戻そうとしているように見える。その帰結はまもなく出る。 金融庁が北尾氏の新生銀行買収にNOを突きつけず、長銀の一時国有化に関与した元金融庁長官が会長に就くことはその象徴と見ていい。SBIによる新生銀行へのTOBの背景には、北尾氏の深い歴史観がある』、「地銀連合のセントラルバンクとして長銀を位置付ける」案が流れたのは、「米国の横やり」もさることながら、それ以上に「長銀」の実態が悪かったためなのではなかろうか。いずれにしても、買収劇の背後に「北尾氏の深い歴史観がある」のは確かなようだ。
先ずは、9月17日付け現代ビジネス「これから「みずほ銀行」に起こる、ヤバすぎる現実…システムの「爆弾」を誰も処理できない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87384?imp=0
・『今年8月に発生したみずほ銀行のシステムトラブル。実は19年前にもこれに似たケースが起こっていたことを【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』で報じた。多発する「システム障害」の爆弾を抱えた同行は今後どうなっていくのか…?』、昨日も外国為替でシステムトラブルが発生、これで8回目だ。
・『隠れていた「古の言語」 全体像の見えない「バベルの塔」と化したみずほのシステム。その成り立ちとは、どのようなものなのか。 過去に2度、みずほは大きなシステム障害を起こしている。1度目は前編でも触れた、'02年の3行統合に伴う混乱だ。 統合時、みずほは旧3行が使っていた複数の異なるシステムを生き残らせたまま、「ゲートウェイ・システム」と呼ばれる中継プログラムでそれらを繋ぎ合わせるという方針を打ち出した。 だが、この建て付けそのものに難があった。当時の事情を知るみずほ行員が言う。 「勧銀は富士通製のメインフレーム(大型コンピュータ)の『STEPS』を'88年に導入していました。また興銀は日立製のシステム『C-base』を、富士銀行は日本IBM製の『TOP』をそれぞれ持っていた。 普通、銀行が合併してシステムを統合する時は、顧客や預金などの情報をどれか一つのシステムに全て移行する『片寄せ』という方法を取ります。 しかし、みずほは合併後も『同じ担当の役員が3人いる』と揶揄されるくらい、よく言えば旧3行が対等、悪く言えばバラバラだった。そのため、各行のシステム、ひいてはベンダーとの取引を温存しようとしたのです」 統合直前、旧勧銀のSTEPSと、富士銀のTOPを並立させ、別のコンピュータでつなぐことが決まったが、あえなく失敗。それが統合時に発生した障害の原因だった。 このとき、事後処理にあたった情報系子会社の元社員は驚いたという。 「勧銀のシステムの一部に、'71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていたのです」 この部分は、'80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた。'00年代には使いこなすエンジニアが激減し、「化石」と呼ばれた言語である。 「当時ですら、わかるエンジニアが現場にいなかった。もちろん設計図や手引の類いも見当たりませんでした」 たとえるなら、古い時計を部品交換のため開けてみたら、交換したい部品が古すぎて替えが利かず、やむなく油を差して閉めた、というような話だ。だがこの時は、気に留める者もいなかった』、「各行のシステム、ひいてはベンダーとの取引を温存しようとした」、のはともかく、「「勧銀のシステムの一部に、'71年に第一銀行と日本勧業銀行が合併した時に作られたとみられる部分が残っていたのです」 この部分は、'80年代まで盛んに使われていたプログラム言語「COBOL」で書かれていた」、これには心底驚かされた。
・『複雑怪奇な「キメラ」 2度目の大規模障害が起きたのは'11年3月15日、東日本大震災の直後だ。災害義捐金の振り込みがひとつの口座に殺到し、システムが一度に対応できるデータ量の上限を超えてしまった。 エラーに対応しているうちに、他の取引のデータも渋滞を起こし始め、遅れてゆく。際限なく積み上がる未送信データを処理するため、ATMの全面停止を繰り返し、行員たちは夜を徹して手作業で数字を入力した。未処理の金額は一時、8300億円分にも達した。 「当時のみずほのシステムは『バッチ処理』といって、夜間に取引データをまとめて自動処理し、朝に各支店へ送信する仕組みをとっていましたが、これが機能しなくなった。 バッチ処理自体、とっくの昔に時代遅れになった手法ですが、みずほは何らかの理由でこだわっていたのです(ITジャーナリストの佃均氏)。 データの手入力が終わったバッチ処理あとでシステムが予期せず再起動し、振り込みや引き落としが二重に発生するミスも多発。結局、鎮静化するまでに1週間もかかった。 これら2度の致命的な障害に懲りて、みずほは前述した新システム「MINORI」の開発に着手したというわけだ。いや、金融庁の叱責と業務改善命令に押される形で、着手せざるを得なかったというほうが正しいだろう。'11年6月のことだ。 MINORIは約4000億円の費用をかけて8年後の'19年7月に完成した。業界では、「史上初めて、銀行が自社の勘定系システムを全面再構築した」と話題になった。 だが、どうやら実態は異なる。一から作り直した「新築」ではなく、既存の「塔」をさらに建て増しした「改築」だったと考えなければ、説明がつかない謎があるのだ。 先に触れたCOBOLがいまだに使われているのである。 「ITベンダーの間では、かねて『なぜみずほは、わざわざ高齢のエンジニアを雇ってまでCOBOLを使い続けるのか』が疑問視されていました。MINORI導入時にCOBOLを使った部分をなくして、別のプログラム言語で書き換えてもよかったはずなのに、それもしなかった。 それはつまり、なくさなかったのではなく『なくせなかった』のではないか。勧銀時代から抱える古い重要プログラムやデータが、いまだにMINORIの内部で生きているからではないか—そうとしか考えられないのです」(前出・佃氏) 事実、全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている。 これが意味するのは、おそらく'11年に金融庁から業務改善命令を受けた時点で、みずほのシステムは根本的な再構築がもはやできない状態だった可能性だ。 古い部分と新しい部分が幾重にも折り重なり、さらに開発元も複数のベンダーにまたがっていた。しかも、この時すでにみずほは延べ3000億円近くをシステム改修に投入していた。20年以上も二人三脚を続けてきたベンダーを切り捨て、一から作り直すわけにはいかなかったのだ。 いまや、システムの全容をる者はみずほにも、ベンダーにもいない。 もう、誰にもわからない 前出と別のみずほ行員が言う。 「最初に勧銀にSTEPSを売り込んだのは、ソフトウェアエンジニア出身で'90年代に社長を務め、辣腕で鳴らした秋草直之氏でした。 彼は勘定系システムの開発とメンテナンスを請け負うことで、勧銀・みずほから安定的に巨額のカネを引き出す仕組みを作った。一方のみずほは、時が経つにつれて膨らむコストを損切りできず、両者は共依存関係になっていった。富士通に経産省の後押しがあったことも、みずほの意思決定を鈍らせました」 秋草氏をはじめ、'80年代に銀行のシステム開発に携わった技術者たちは、いわば日本のシステムエンジニアの「第一世代」の人々だ。だが、この5年ほどで、彼らは次々と鬼籍に入っている。 今回、勧銀・みずほのシステム開発に携わったと思しき複数の元エンジニアにコンタクトを試みたが、いずれも故人となっていた。判明した中で唯一健在の人物は、6月に脳梗塞を発症し、取材が難しい状態だった。 「2025年の崖」という言葉をご存知だろうか。この年までに、'80年代に開発された企業の古いシステムの根幹を知る人が業界を離れ、あるいは亡くなり、ブラックボックス化する。みずほのシステムは、その最大にして最悪の事例と言える。 【前編】『「みずほ銀行」のシステム障害はなぜ防げなかったのか…エンジニアを見下す「悪しき体質」』の冒頭で罵られていた富士通のエンジニアも、5年ほど前に業界を去った。彼はこう話す。 「みずほは障害が起こるたびに、人為的なミスが原因の『人災』だと言いますが、的外れもいいところです。もう何十年も前から、爆弾は作動していた。人災などではなくて構造的な問題だと気づいていないのは、みずほの人たちだけですよ」 バベルの塔の基礎がどうなっているのか、そしてどこがグラつきの原因なのかを知る人は、もはや語る術を持たない。「みずほは手探りで、いつ終わるとも知れぬ修繕を繰り返すほかない。崩壊の日に怯えながら』、「全面改修を経たはずのMINORIのシステム構成は、不自然なほど複雑怪奇だ。普通預金を司る機器は日本IBMが作るが、その上で走るソフトは富士通が作る。他行との接続を司るシステムは、機器を日立と富士通が作ってソフトをNTTデータが作る。各業務のシステムをベンダーが分割して作り、さながら怪物「キメラ」のようになっている」、「「2025年の崖」という言葉・・・この年までに、'80年代に開発された企業の古いシステムの根幹を知る人が業界を離れ、あるいは亡くなり、ブラックボックス化する」、「みずほは手探りで、いつ終わるとも知れぬ修繕を繰り返すほかない。崩壊の日に怯えながら」、金融庁もシステムを直接管理するようだが、実態がこんなに酷い有様では、さぞかし苦労することだろう。
次に、9月29日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「新生銀行<上>SBIによるTOB実施に徹底抗戦 買収防衛策を発動しホワイトナイト探し」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/295302
・『新生銀行は9月17日、取締役会を開き、ネット金融大手SBIホールディングス(HD)から提案されている株式公開買い付け(TOB)に対抗する目的で、買収防衛策の導入を決めた。 SBIはこれに強く反発。防衛策の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請する検討に入った。敵対的TOBに発展する。 これまでの経緯はこうなる。SBIは同9日、新生銀にTOBを開始すると発表した。出資比率を20.32%(グループ分を含む)から最大48%に引き上げ、連結子会社にする方針。9日の終値1440円よりも38.9%高い2000円で買い付ける。首脳陣を刷新し、元金融庁長官の五味広文氏を会長に据える人事案を明らかにした。五味氏の内諾を得たとしている。 買い付け総額は1164億円。SBIは「新生銀の収益力を高め、公的資金返済のめどをつけたい」と力説した。 SBIの北尾吉孝社長は「第4のメガバンク」構想を掲げ、地銀、第二地銀との連携を矢継ぎ早に進めてきた。島根銀行、福島銀行、仙台銀行など8つの地域金融機関と資本・業務提携してきたが、「弱小金融機関の集合体」(有力地銀の頭取)という辛口の評価が多かった。 そこで第4のメガバンク構想の真ん中に新生銀行を組み込もうというわけだ。新生銀をテコにSBIの金融サービスを利用する地銀を増やし、総合金融グループに脱皮するという戦略を描く。新生銀は“北尾ドクトリン”に欠かせない最重要なパーツとなる。 この買収劇には伏線があった。19年9月、「新生銀をSBIグループの中核的企業に位置付けるため」として今回のTOBと同水準で株式の取得を提案したが新生銀は賛同しなかった。 状況が劇的に変化したのは今年1月。新生銀がSBI証券のライバルであるマネックス証券と業務提携したことによる。実力行使あるのみだ。これ以降、2カ月間でSBIは新生銀株を約7%買い増して保有比率を高めた。) 新生銀の6月23日の定時株主総会で、会社側提案の取締役人事案にSBIは反対票を投じた。工藤英之社長の賛成率が76.643%だったのを筆頭に、全ての取締役の賛成率は70%台にとどまった。 新生銀は「TOBについて、事前に連絡を受けていない」として買収防衛策を決定した。SBIからみれば「マネックスとの提携を我々も知らされていない」となる。目には目をというわけだ。 新生銀の買収防衛策はポイズンピル(食べたら毒が回るという意味)。SBIを含めた既存の株主に事前に新たな株式の「予約権」を無償で配り、SBIには予約権の行使に制限をかける。TOBによってSBIが予定している株式数を手に入れたとしても、他の株主が予約権を行使することでSBIの保有割合が相対的に下がり、買収を阻止する仕組みだ』、「新生銀がSBI証券のライバルであるマネックス証券と業務提携」がきっかけに両社の関係は悪化したようだ。「新生銀の買収防衛策」を成立させる自信はあるのだろうか。それとも時間稼ぎなのだろうか。
・『■攻防戦のカギを握るのは金融庁 防衛策の発動には時間を稼ぐ意味がある。買収防衛策の導入には臨時株主総会での決議が必要になる。この間にホワイトナイト(白馬の騎士=新生銀に友好的なスポンサー)探しを本格化させる。ホワイトナイトの候補として、ソニーグループやセブン&アイ・ホールディングス、企業再生ファンドなどの名前が取り沙汰されている。ソニーは金融子会社ソニーフィナンシャルホールディングスを持っている。 セブン&アイはセブン銀行の初代社長や舟竹泰昭・現社長が、新生銀の前身の日本長期信用銀行出身者という人脈からの連想だ。企業再生ファンド「ジェイ・ウィル・パートナーズ」も代表は長銀出身者である。 新生銀と業務提携したマネックスグループを持ち分法適用会社にしている静岡銀行がホワイトナイトになるとの観測も流れるが、「2000円を上回る条件を出せる買い手は現れないのではないか」(TOBに詳しい証券関係者)というのが冷静な見方かもしれない。ソニーも高値買いはしない。 SBIと新生銀の攻防戦のカギを握るのは金融庁だ。SBIはTOBを発表する直前に金融庁の暗黙の了解を得たという情報もある。公的資金を返済できない新生銀の株価がSBI効果で上がれば金融庁にとっても悪くない話だ。金融庁はどう出るのか。=つづく』、金融庁元長官がTOB成立後の会長候補になっているのであれば、「金融庁の暗黙の了解を得た」のは当然だ。
第三に、この続き、9月30日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「新生銀行<下>SBIによるTOBの行方…金融庁の「議決権行使」が勝負を決める」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/295356
・『SBIホールディングス(HD)による新生銀行へのTOB(株式公開買い付け)で、金融庁は株主として判断を迫られる。新生銀行に公的資金を注入した国は、預金保険機構(発行済み株式の12.50%)、整理回収機構(同9.28%)を通じて21.78%の株式を持つ。SBI(同20.32%)を上回り、事実上の筆頭株主だ。 バブル崩壊後の旧日本長期信用銀行時代に注入した公的資金約3500億円がいまだに回収できていない。持ち株を売って回収するなら、株価が7450円にならないとダメである。TOB発表前に新生銀の株価は1400円。9月13日に2030円の年初来高値に急騰したが、それでも目標とする株価の3割にも満たない。 麻生太郎財務相は「公的資金の債権を保全する観点から、預金保険機構と整理回収機構が株主として適切に判断すべきだ」と慎重な姿勢を示した。) SBIはTOB成立後、「預金保険機構、整理回収機構と公的資金返済に向け協議する」としている。SBIが新生銀株の20%以上を保有する主要株主になるには国の認可が必要だが、金融庁は9月9日、SBIに、この認可を出した。 金融庁は「TOBの成否にかかわらず、企業価値が高まることが何より重要だ。株価が上がらなければ公的資金も回収できない」(幹部)との立場だ。 SBIは事を起こす前に、金融庁シフトというべき体制を敷いてきた。6月29日の株主総会で元財務省事務次官の福田淳一氏と元農林水産省事務次官の末松広行氏を社外取締役に迎えた。元金融担当相の竹中平蔵氏を含めると15人の取締役のうち3人が金融行政に詳しい“適材”ということになる。 元金融庁長官の五味廣文氏は17~19年にSBIの社外取締役を務め、今はアドバイザリーボードのメンバーだ。北尾吉孝社長は20年6月、五味氏を出資先の福島銀行の社外取締役に送り込んだ。21年6月、1年で退任したが、福島銀の再生に一役買ったことは間違いない。五味氏は新生銀のTOBが成功した暁には会長の椅子に座ることになっている。 地銀再編論者の菅義偉首相が“コロナ敗戦”の責任を問われ、わずか1年で退陣する。北尾社長が新生のTOBに打って出たのは、後ろ盾である菅首相の退陣が決まったことと無関係でないだろう。 言うまでもないことだが、金融庁は新生銀の監督官庁である。同時に実質的な筆頭株主でもあり、2つの顔を持つ。監督官庁の立場と、株主という立場の利害が衝突しかねないため、頭が痛いはずだ。 「当初は、議決権を行使しない棄権の可能性を探ってきた。新生銀が買収防衛策を決議したことで、棄権することが許されない状況になった。株主保護の観点からも旗幟を鮮明にしなければならない」(有力地銀の頭取) 新生銀の会長に金融庁元長官の五味氏が就任する人事案にも気を使う。大物OBと裏でつながっていたと勘繰られたら金融行政の正当性が揺らいでしまう。SBIと新生銀を等距離に置きつつ、一つ一つの課題を是々非々で判断するしかないだろう』、「SBI」の「15人の取締役のうち3人が金融行政に詳しい“適材”」、とはずいぶん手厚い体制だ。金融庁としても、「大物OBと裏でつながっていたと勘繰られたら金融行政の正当性が揺らいでしまう。SBIと新生銀を等距離に置きつつ、一つ一つの課題を是々非々で判断するしかないだろう」、難しい綱渡りが求められるようだ。
第四に、9月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの森岡 英樹氏による「「第4のメガバンクを目指す」SBI北尾社長が新生銀行の買収で狙う"幻のプラン" 「会長候補が元金融庁長官」の真意」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50420
・『新生銀の「事実上の買収」に乗り出した 北尾吉孝社長が率いるSBIホールディングス(HD)が新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)に乗り出した。SBIは新生銀行株の20.32%を保有する主要株主だが、9月10日から当初の期限を延長して12月8日までTOB(株式公開買い付け)を実施し、約1100億円を投じて出資比率を48%まで引き上げたい意向だ。買い付け価格は新生銀株の9月9日終値の1440円を39%上回る1株2000円に設定されている。 SBIはTOBによって新生銀株を連結子会社化する意向だ。仮にTOBへの株主の応募が上限の48%に達しない場合でも、残る株式を市場から買い上げるか、追加のTOBが想定されている。さらにSBIは株式を買い増し完全子会社化した後、非上場化する可能性もある。事実上の買収だ。 ただし、50%超の株式を取得する場合、SBIHDが新生銀行の持株会社になるためには銀行法第52条など法令上の許可が必要で、金融庁の認可が前提となる。最後には大株主で新生銀行株の20%程度を有する国(預金保険機構)との交渉が残ることになる』、この点に関しては、既に「金融庁」の内諾を得ている筈だ。
・『北尾氏を激怒させた新生銀の対応 SBIは昨年夏に地方創生を効率的に具現化するための統括会社「地方創生パートナーズ」(東京・港区)を設立し、「第4のメガバンク」を標榜した地銀連合構想を進めている。第二地銀を中心にこれまでに8行に資本出資しており、「当面、10行程度まで広げる」(北尾氏)との意向を表明している。その地銀連合の中核会社的な役割を新生銀行に求めており、北尾氏は以前から「新生銀行を(地方)銀行の銀行にしたい」と周囲に語っていた。TOBはその戦略の延長線にある。 SBIは2019年4月から新生銀株を買い増し、同年夏にはSBIの北尾氏から新生銀の工藤英之社長に資本提携の提案を行っている。しかし、「新生銀内にSBIの連結子会社になることへの反発が強く、資本提携は実現しなかった」(金融庁関係者)。その後、両社は連携に関する協議を継続したが、SBIが求める資本や証券業務分野での提携に新生銀側は首を縦に振らなかった。そればかりか同行は今年3月にSBIとライバル関係にあるマネックス証券と包括提携を行い、SBIを激怒させた。北尾氏は工藤氏を「信義にもとる男だな」と不満をぶちまけたとされる』、「新生銀行」の前身の長期信用銀行は金融債を発行、多くを地銀に引き受けてもらっていたので、地銀との関係は深かった。現在は、金融債は発行してないが、昔からのつながりは残っているようだ。しかし、わざわざ「SBIとライバル関係にあるマネックス証券と包括提携」した狙いは何なのだろう。
・『金融庁OBを次々と重要ポストに据えている 今年6月に開催された新生銀の株主総会で、SBIは工藤氏、アーネストM.比嘉氏、槇原純氏、村山利栄氏の4役員の再任決議に反対票を投じた。工藤氏ら役員は再任されたが、SBIは今回のTOBに際してもこの意向を変えておらず、TOB成立後、臨時株主総会の招集請求を行い、役員陣の全部または一部の交代を求める方針だ。「取締役メンバーの中には、ゴールドマン・サックス証券やマネックスグループなど、社外取締役の出身母体に特定の偏りがあるように見受けられる面もある」(SBI)とも指摘している。 そのSBIが新取締役会長候補に推薦しているのが元金融庁長官の五味廣文氏(プライスウォーターハウスクーパース総合研究所理事長)だ。メガバンク幹部によると、「SBIは第4のメガバンク構想と並行して金融庁の有力OBを次々とスカウトし、グループ企業の重要ポストに据えている。 16年に元審議官の乙部辰良氏(現SBIインシュアランスグループ会長兼社長)を招聘しょうへいしたのを皮切りに、17年に元長官の五味廣文氏を社外取締役に招き、18年に元総括審議官の小野尚氏(現SBI生命保険社長)をスカウトした」という。SBIの北尾氏はその五味氏を新生銀の会長に就けるというのだ』、「SBI」がこれだけ「金融庁」OBの受け皿になっていれば、当然、行政判断にも影響する可能性がある。
・『五味氏はいったいどんな人物なのか 五味氏は1998年6月に財金分離されたばかりの金融監督庁(金融庁の前身)の検査部長となり、同年12月に日本長期信用銀行(新生銀行の前身)を一時国有化した当事者の一人だ。 その後、五味氏は金融庁検査局長、監督局長を経て2004年に第4代金融庁長官に昇りつめ、小泉、第一次安倍内閣下で足利銀行やりそな銀行の国有化を行い、消費者金融のグレーゾーン金利を是正するなど剛腕を発揮した。一方、戦後初のペイオフ案件となった日本振興銀行や石原慎太郎氏(当時・東京都知事)が提唱した「新銀行東京」の設立にもかかわった。 敵対的ともいえるSBIのTOBに対して、新生銀はSBIに対抗できるホワイトナイト(白馬の騎士)を招聘できるかが焦点になる。 新生銀行は9月16日に、TOBの経緯をめぐりSBIと見解の相違があると発表。SBIによる資本提携の提案や、新生銀行とマネックス証券の包括提携の経緯について、SBIの認識が不正確だと指摘した。SBIに対して詳細な質問状を送付するとともにTOB期限の延長と買収防衛策を講じることを示唆した。 これに対してSBIは当初、TOBの延長要請は「単なる時間稼ぎで、株主の利益を著しく損なう」と反発したが、その後、株主総会の早期開催に加え3条件を前提に、一定期間のTOB延長を認める構えに転じた』、なるほど。
・『新生銀の防衛策はホワイトナイトの獲得だが… SBIは株主総会の早期開催のほか、①重要性の低い質問はせず、いたずらに検討期間を延長させないこと、②新生銀の株主総会で買収防衛策の発動を審議する場合、TOBが株主の利益を損ねる恐れがあるとする具体的な根拠を示すこと、③総会でのSBIの議決権行使を認めなかったり、新生銀が他社への新たな株式取得を働き掛けたりしないこと――を条件として挙げている。 一方、新生銀行はTOB期限をできる限り延長させる間に、ホワイトナイトを見つけることが最大の眼目で、ソニーグループやセブン&アイ・ホールディングス、企業再生ファンドなどと水面下の交渉を行っている。しかし、本命視されるソニーグループやセブン&アイ・ホールディングスは回答を控えている。 「SBIが提示したTOB価格が高く、仮に敵対的TOB合戦となった場合、価格がつり上がる可能性があり、コスト高が避けられないほか、ホワイトナイトが成功しても、買収後の新生銀行の企業価値を早期に引き上げるのは容易なことではない。明確で実現性の高い成長戦略が描けなければホワイトナイトに手を上げるところがすんなりと見つかるとは思えない」(メガバンク幹部)とみられるためだ』、やはり「ホワイトナイト」を見つけるのは相当難しそうだ。
・『破格の安値で買収された悪夢がよみがえる また、企業再生ファンドにホワイトナイトを要請した場合、かつて新生銀行の前身である日本長期信用銀行(長銀)が一時国有化後、米国の投資ファンド「リップルウッド」に買収された悪夢がよみがえる。「破格の安値で長銀を買収したリップルウッドは長銀の再上場と高配当で法外な利益を手に入れた」(メガバンク幹部)だけに、市場の評価は得られそうにない。そもそも企業再生ファンドは最終買収者への橋渡し役でしかない。いずれ出口戦略が待ち受けている。 また、SBIはTOB期間延長の条件として、「新生銀が他社への新たな株式取得を働き掛けたりしないこと」を挙げている。ホワイトナイトを捜すこと自体を牽制しているわけだ。これでは新生銀行が条件を受け入れることは難しいだろう。北尾氏は新生銀が買収防衛策を導入することに激怒したと周囲は語っている』、なるほど。
・『なぜこれほどまでに新生銀がほしいのか なぜ北尾氏はこれほどまでに新生銀がほしいのか。北尾氏は8地銀に出資する前から新生銀行を「第4のメガバンク」のプラットフォームとして手に入れる構想を持っていたと関係者は語る。そこには長く金融界に身を置き、銀行の再編をつぶさに見分してきた北尾氏の知見がある。 時計の針を長銀が一時国有化される直前の1990年代央に戻さなければならない。 バブル経済に踊った長銀は、系列ノンバンクや不動産業への貸し付けが不良債権化し、経営危機に瀕していた。日本興業銀行と並ぶ長信銀の雄として日本経済のメインフレーム企業に長期の資金を供給する長銀の経営危機は、日本の金融システムそのものを揺るがせかねなかった』、「長銀」は経営危機のまま放置されたため、優良取引先が逃げ出し、残った取引先は他行が引き受けるのをためらうような先ばかりとなったため、いまだに企業価値向上に苦労している。
・『北尾氏は“幻のプラン”を実現させる狙いか その打開策として構想されたのが、当時の日本輸出入銀行や日本開発銀行などの政府系金融機関との統合だった。だが、これは政府系金融機関の反対で頓挫した。次善の策として考案されたのが、金融債を通じ広範なネットワークを持つ地銀との連携であり、「地銀連合のセントラルバンクとして長銀を位置付けるものだった」(長銀OB)であった。 地銀にない高度な金融スキルとノウハウを持つ人材を有する長銀は、まさに地銀のセントラルバンクとしてうってつけの存在だった。旧大蔵省銀行局もこの案を推していた。 しかし、そこに米国の横やりが入り、国内の政治的な混乱もあり、長銀は一時国有化され、米投資ファンドへ売却された。こうした経緯を知る北尾氏は、まさに時計の針を1990年代央に戻そうとしているように見える。その帰結はまもなく出る。 金融庁が北尾氏の新生銀行買収にNOを突きつけず、長銀の一時国有化に関与した元金融庁長官が会長に就くことはその象徴と見ていい。SBIによる新生銀行へのTOBの背景には、北尾氏の深い歴史観がある』、「地銀連合のセントラルバンクとして長銀を位置付ける」案が流れたのは、「米国の横やり」もさることながら、それ以上に「長銀」の実態が悪かったためなのではなかろうか。いずれにしても、買収劇の背後に「北尾氏の深い歴史観がある」のは確かなようだ。
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