防衛問題(その18)(中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?、陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない、数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ) [国内政治]
防衛問題については、6月5日に取上げた。今日は、(その18)(中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?、陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない、数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ)である。
先ずは、5月28日付け日経ビジネスオンライン「中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/052500056/
・『台湾有事が話題になる機会が増えている。これは日本にとって他人事ではない。中国は沖縄をはじめとする南西諸島を勢力圏に取り込む意図を持つとされる。抑止力強化のため、敵基地攻撃能力を持つことが選択肢として挙がる。果たして、これは得策か。台湾有事に詳しい尾上定正・元空将に聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:台湾有事が話題になる機会が増えています。菅義偉首相とジョー・バイデン米大統領が4月16日に行った日米首脳会談後の共同声明にも、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と盛り込まれ、注目されました。 台湾有事は、いつ、どのような条件が整ったときに起こると考えられますか。 尾上定正・元空将(以下、尾上):時期については、習近平(シー・ジンピン)国家主席すら分からないでしょう。私は当初、2024年までが危ないと考えていました。新型コロナウイルスの感染症が最初、中国・武漢で広まったのを受けて、中国経済が数年にわたって打撃を受けると推測したからです。経済成長は、中国共産党政権の統治の正当性を支える土台。これが揺らげば、台湾統一など別の要素で補強する必要が生じます。 しかし、中国はこのときの予想をはるかに上回る勢いで経済を回復させました。よって今は、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が3月に示したのと同様、6年後の2027年までが1つの区切りになるとみています。 それでも、経済の状況が習近平政権の「意志」を刺激し、台湾有事の引き金になり得る構図は変わりません。 注目するのは人口です。中国の人口は2030年ごろにピークを迎えると予想されています。中国はGDP(国内総生産)で、2028年にも米国を抜くとの予想があります。しかし、人口がマイナスに転じれば経済の成長も鈍化する。いったん米国を抜いても、再び抜き返されることが想定されます。ならば、中国にとって「機会の窓」が開いている期間はそれほど長くない。その短いチャンスをものにして事を成就する――ことへの誘惑が働くのではないでしょうか。 また中国は軍事力の増強を続けており、「能力」面でも「今ならできる」との自信も深めているとみられます。脅威は「意志」と「能力」から成ります。能力において、短期的な優位が長期的には不利に移行していく状況が最も危ないのです。1930年代の日本と同じですね。 軍事力は、1996年の台湾海峡危機*では、米空母を前に沈黙せざるを得なかった。この悔しさをバネに毎年2けた%増で防衛費を増やしてきました。デービッドソン司令官が上院軍事委員会の公聴会で示した資料をみると、西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります。 *:1996年の台湾総統選に独立派の李登輝が立候補した。中国はこれに反発し台湾近海にミサイルを撃って圧力をかけた。米国はこれに対抗すべく、空母2隻を派遣した 中国は今年の4月23日には強襲揚陸艦とミサイル艇、原子力潜水艦の3隻を同時に就役させ国際社会の耳目を集めました。記念の式典には習近平国家主席のほか、2人の中央軍事委員会副主席が出席し、能力の増強を誇示しました。 Q:中国海軍は4月6日、台湾周辺の海域に空母「遼寧」を派遣しての軍事訓練も実施しています。 尾上:そうですね』、「西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります」、なるほど。
・『台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激 ここまで中国の意志と能力についてお話ししました。これに加えて台湾と米国の事情も、中国の意志を刺激する可能性があります。 台湾で2024年、次の台湾総統選が予定されています。このときに、与党・民進党の頼清徳・副総統が立候補する可能性があります。同氏は台湾独立を強く訴えてきた人物。総統選で独立を打ち出すことが考えられます。そうなれば、中国の逆鱗(げきりん)に触れるでしょう。 もちろん、民進党はそんなばかなことはしないでしょうし、米国も抑えようとするにちがいありません。しかし、李登輝の例もあることです。 同じく2024年に米国でも大統領選が実施されます。これが混乱することが予想される。トランプ前大統領を支持する勢力が今でも力を持っており、米国内を分断しています。仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません。Q:中国と台湾との経済関係が抑止力として働く可能性はありませんか。中国は、輸入の約8%が台湾からです(2019年実績。以下同じ)。半導体をはじめとする主要な電子部品が含まれている。これが途絶えれば、中国経済に大きな打撃を与えることになります。米国が介入する事態になれば、受ける打撃がさらに大きくなる。米国との取引は輸入で約12%、輸出で約17%を占めています。中国国民はこれらを失うことに耐えられるでしょうか。共産党政権が一党独裁を敷いているとはいえ、中国国民の世論を無視することは難しくなっています。 尾上:経済が抑止力として働く要素は間違いなくあります。ブッシュ政権でコンドリーザ・ライス国務長官(当時)の顧問を務めた安全保障の専門家であるフィリップ・ゼリコー氏とロバート・D・ブラックウィル氏は米外交問題評議会で発表したリポート「The United States, China, and Taiwan : A Strategy to Prevent War」の中で、核抑止でいうMAD(相互確証破壊)*と同様の役割を経済が果たすと指摘しています。 *:敵の第1撃を受けた後も、残った戦力で相手国の人口の20~25%に致命傷を与え、工業力の2分の1から3分の2を破壊する力を維持できていれば、相手国は先制攻撃を仕掛けられない、というもの。米国のロバート・マクナマラ国防長官(当時)が1960年代に核戦争を抑止する戦略として提唱した しかし、中国共産党にとって台湾統一は統治の正当性を担保する「1丁目1番地」です。習近平国家主席は2019年1月の演説で、「中華民族の偉大な復興へのプロセスにおいて台湾同胞を欠くことはあり得ない」と強調しました。その習近平政権は、統治の正当性と経済のどちらを優先するでしょう。抑止が働くかどうかには疑問符を付けざるを得ません。 よって、われわれは習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります』、「台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激」、「民進党」の候補が中国を過度に刺激しないよう発言を抑制してほしいものだ。「仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません」、確かに中国には侵攻のチャンスなのかも知れない。「習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります」、その通りだ。
・『中国空軍が日本領空を通過して台湾東岸を攻撃 Q:抑止力を高めるために何が必要でしょう。 尾上:こちらも意志と能力に分けてお話ししましょう。 日本は米国とともに既に意図を示しています。冒頭で言及された、日米共同声明において「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記したことです。日米のこの意図が習近平国家主席やその政策を立案するスタッフに浸透するよう、今後も繰り返し伝える必要があると考えます。 能力面では、南西諸島から台湾に至る第1列島線の防衛力を日米で高めていく必要があります。習近平政権が台湾の軍事統一を試みた場合に負担しなければならないコスト、もしくは被るリスクを高める。 Q:日本の南西諸島の防衛力を高めることが、台湾有事の抑止につながるのですか。 尾上:つながります。例えば、中国空軍が日本の南西諸島上空を経由して台湾東岸を攻撃する可能性があるからです。台湾の地形は、西は平地、東は山地になっています。中国は西の平地は短距離弾道ミサイルで容易に攻撃することができる。しかし、東の山地を攻撃するのは難しい。台湾軍はこの地の利を生かして、東部の花蓮県や台東県に地下シェルターを装備する基地を設け、戦闘機などの装備を隠す作戦を立てています。 中国空軍はこの台湾東部の基地を攻撃するのに、より東の太平洋側から回り込む必要がある。既に中国は、爆撃機H-6を使って宮古海峡*を抜けて太平洋側に進出する訓練を実施しています。3月29日には多数の中国軍機が台湾周辺と同時に、宮古・沖縄本島間を飛行する「2正面訓練」も実施しています。こうした中国空軍の攻撃への備えを宮古島などに配備することで、中国がこの作戦を実行する際のリスクを高めることができます。 *:宮古島と沖縄本島との間の海峡 Q:陸上自衛隊は鹿児島県・奄美大島や沖縄県・宮古島、石垣島に、12式地対艦誘導弾(SSM)や対空ミサイル「03式中距離地対空誘導弾改善型(=03式中SAM改)」を備えた陸上自衛隊の部隊を配備しています。 尾上:この取り組みは評価しますが、まだ十分とはいえません。 Q:政府は2020年12月、自衛隊の12式地対艦誘導弾の射程を延長する作業に着手すると閣議決定しました。現行の200kmから900km、1500kmへ伸ばすとされています。 尾上:これは抑止力の向上に寄与するでしょう。より遠くまで攻撃することができれば、それだけ中国艦船が近づきづらくなりますから。中国の爆撃機H-6に搭載できる対地巡航ミサイルCJ-10の射程は1500kmあります。南西諸島防衛はこれにも対抗できるようにすべきです。巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要があります』、「巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要」、その通りだ。
・『中国を狙う敵基地攻撃能力の取得は得策か? Q:米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約が2019年8月に失効したのを受けて、米国は地上発射型中距離ミサイル(射程500~5500km)を保有できるようになりました。中距離弾道ミサイルの開発に着手したとされます。これを中国への抑止力として第1列島線上に配備することが取り沙汰されています。米国から要請があった場合、日本はどうすべきだと考えますか。 尾上:地上に目に見える形で中距離ミサイルを配備することは、抑止力の向上を図る上で大きなインパクトを持ちます。置く場所を考えると日本しかありません。フィリピンはドゥテルテ政権の姿勢が安定しません。オーストラリアは距離的に遠すぎます。 しかし、現実にはかなりの困難を伴います。国民の合意を得るのが難しい。配備地の地元住民のみなさんは、懸念されることが多々あるでしょう。イージス・アショアの配備でも地元の合意を得る作業が不調に終わりました(関連記事「ブースターは一部、陸上イージスが無理筋なこれだけの理由(上)」)。 Q:日本が独自に中長距離ミサイルを配備し、中国を対象にしたいわゆる敵基地攻撃能力を備えるという選択肢もありますか。 尾上:こちらも国民の合意を得るのは容易ではありません。私は、北朝鮮の核ミサイル脅威に対して日本は独自の攻撃能力を持つべきであり、その有力な選択肢が弾道ミサイルだと考えます。けれども中国に対しては、軍事的にみても必ずしも得策とはいえません。中国が配備する中距離ミサイルの量に比べて、日本が備えることができる装備は圧倒的に少ないからです。まして、2027年までと期限を切って考えるならば、その難易度はさらに高まります。 中国は、空母キラーと呼ばれる中距離弾道ミサイルDF-21D(射程2150km)を50基以上、グアム・キラーと呼ばれるDF-26(射程5000km)を100基以上保有しているとの報道があります。DF-26は日本列島全体を射程に収めるものです。 米太平洋軍のハリー・ハリス司令官(当時)が2017年4月、「中国は2000発以上の弾道ミサイル・巡航ミサイルを保有している。そのうち95%は、INF条約加盟国であれば違反に相当する」と議会で発言し、注目されました。 尾上:中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい、と考えます。(P5有料なので、紹介省略)』、「中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい」、その通りなのだろう。
次に、9月3日付け東洋経済オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの清谷 信一氏による「陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/450823
・『陸自の普通科(歩兵)の7.62ミリ62式機銃は廃止され、89式小銃と同じ弾薬を使う5.56ミリMINIMIで置き換えられた。世界を見渡してこのような決定をした「陸軍」は陸自ぐらいである。普通の軍隊では5.56ミリ機銃は分隊支援火器として使用されており、それとは別に7.62ミリ機銃を運用している。 7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明している。であれば装甲車輌の同軸機銃も7.62ミリでなく5.56ミリ機銃でいいわけだが、そうはなっていない。 射程が長く、貫通力の強い7.62ミリ機銃を持った敵と撃ち合えば射程においても、威力においても圧倒的に不利である。敵は陸自普通科の射程外から攻撃できるし、同じ距離で撃ち合うにしても陸自の5.56ミリ弾では相手のバリケードは抜けなくても、相手の7.62ミリ弾ならば同じようなバリケードを貫通できる』、「7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明」、撃ち合いになれば、日本側が不利になることが明らかなのに、不可思議な決定だ。
・『5.56ミリMINIMI置き換えの理由は人員削減? 本当の理由は人員削減だろうと筆者は推測している。7.62ミリ機銃だと最低でも射手と補弾手の2人が必要だ。しかも小銃小隊と別にである。ところが5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう。実戦をしない前提ならば合理的な考え方である。 そのMINIMIだが30年かけても調達が完了せずに、現在は不足分の約800丁分のトライアルを行っている。そのトライアルから住友重機械工業が撤退し、将来の機銃生産事業からも撤退する。これは筆者が「スクープ!住友重機械が機関銃生産から撤退へ」(2021年4月15日配信)で報じた通りだ。 陸自の装甲車輌は主砲の同軸機銃に7.62ミリの74式機銃を使っているが、弾薬は旧式の64式小銃と同じで7.62ミリNATO弾の減装薬弾を採用している。これは64式機銃採用時に日本人の体型では反動が強すぎるということで採用されたが、その分、NATO弾に比べて威力が低く、射程距離も短い。 64式がほぼ退役した現在、64式との弾薬の共用性を重視し、同軸機銃に減装薬弾を使う必要はないが、そのままに使用されている。 だがこれだとアメリカ軍との弾薬の相互互換性はない。NATO弾をそのまま使用すると暴発や作動不良が起こる可能性が高い。NATO弾を使用できるように調節しても射程も弾道も違うので命中が期待できない。 陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい』、「5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう」、なんたる逆立ちした発想なのだろう。「陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい」、「兵站の負担」が小さくなるような体系にしておきべきだ。
・『機械化部隊の利点を自ら捨てている 事実上、普通科の主力APC(装甲歩兵輸送車)である軽装甲機動車は非武装であり、96式装甲車のような12.7ミリ機銃を積んでいるわけでもない。そして運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう。このためAPCからの火力支援も受けられない。機械化部隊の利点を自ら捨てていると解釈できる。 96式装甲車に搭載されている豊和工業が開発した40ミリ96式自動擲弾銃にも問題がある。作動不良がひどくて実質上調達が中止になっているが、部隊ではいまだに使用されている。しかも弾薬の口径は40ミリと他国のグレネードランチャーと同じながら、NATO規格の40x53mm弾ではなく、独自の40×56mm弾である。 このためアメリカ軍との相互互換性はない。水陸機動団で導入された水陸両用装甲車AAV7にはFMS(有償軍事供与)で、アメリカ軍と同じMk19ランチャーが装備されているが、これは96式の性能、信頼性が低かったためだろう。国産の40ミリ弾も使用できない。わざわざ世界の標準と異なる弾薬を採用したのに軍事的な整合性はない。 「非関税障壁」とし て国内弾薬メーカーの仕事を確保するためだろうか。) 12.7ミリM2機銃は住友重機械工業がライセンス生産しているがオリジナルと同等の信頼性があるかについては疑問がある。陸自では12.7ミリ機銃をヘリコプターのドアガンとして使っているが、M2は俯角を掛けて撃つと作動不良が起こりやすい。また航空用としては初速も低い。筆者の知る限りM2をドアガンとして使用しているのは世界で陸自ぐらいだ。アメリカ軍では航空用のM3を採用している。陸自が導入したオスプレイには付属品として7.62ミリのM240と併せて、M3がFMS(有償軍事援助)で調達されている。 自衛隊の機銃は住友重機械工業が生産してきた。2014年、同社が40年以上にわたって機銃の性能や品質を偽造してきたことが明らかになった。筆者は長年現場の多くの隊員から同じ機銃でもアメリカ軍の機銃のほうが、信頼性が高いと多々聞いてきた。 また機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる。 機銃の範疇ではないが、84ミリ無反動砲も問題がある。陸幕は、84ミリカール・グスタフ84ミリM2無反動砲を使用してきたが、2012年度からM3に更新を始めた。だが、配備はほぼ水陸機動団だけだ』、「軽装甲機動車は非武装であり・・・運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう・・・機械化部隊の利点を自ら捨てている」、何か理由があるのだろうが、ここに書かれたことからみる限り、信じ難いお粗末な決定だ。「機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる」、お粗末の極みだ。
・『陸自はM4を採用しなかった 問題は陸自がM3を採用した頃、より軽量で高性能な新型のM4がすでに開発され、生産が決まっていたことだ。M4の重量は7㎏未満。およそ10㎏のM3より3.4㎏ほど軽い(現用のM2の重量は16.1㎏)。これを採用すれば隊員の負担は大きく低減されていたはずだ。 近年、諸外国ではM4を採用する国が増えている。M4はM3に比べて軽量であるだけではなく、火器管制装置を装備できる。取材する限り、M4のほうが調達単価はより高いが、射撃数をカウントする装置もあり、寿命管理が厳格にできるのでライフサイクルコストはM3とさほど差がないようだ。またカール・グスタフは弾薬の種類が多いのがセールスポイントだが、陸自はそれらをほとんど使用していない。 問題は性能だけではない。M3の生産は近く終了する見込みだ。そうしたら陸幕はどうするのか。M3とM4を混在して使うのか。そうなれば兵站も教育は2重になる。M3を採用するならば必要数を一気呵成に調達したほうがよかった。陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた』、「陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた」、ここまでくると呆れ果てて、腹も立たなくなった。
・『メーカーを弱体化させた要因 それはメーカーの能力や体質を弱め、国際価格の数倍から10倍の値段で、実用性にも疑問符が付くような装備を調達して税金を無駄使いすることになってしまった。その結果がコマツの装甲車生産からの撤退、住友重機械工業の機関銃からの撤退など企業が防衛部門から次々と手を引く事態である。ミネベアミツミや豊和工業の撤退も時間の問題と筆者は読んでいる。防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない。 筆者は岸信夫防衛相や吉田圭秀陸上自衛隊幕僚長、湯浅悟郎前幕僚長らに会見でこうした件について質してきたが、どこに問題があるか認識していないようだった。無論、大臣や幕僚長が個々の装備に微に入り細に入り口を出す必要はないが、仮想敵はもちろん、世界の潮流から何周も遅れている、そして兵站上も大きな問題点を抱えて、税金を無駄使いしている事実すら認識していないのは大きな問題だ。 政府も防衛省も陸幕も今の組織文化を本気で変えない限り、有事になればそのつけを隊員と国民の血で贖うことになりかねない』、「防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない」、防衛産業のやる気まで奪っているとは、「防衛省」の罪は深い。
第三に、10月8日付けPRESIDENT Onlineが掲載したライターの松田 小牧氏による「数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ」を紹介しよう。
・『「防衛大学校」は自衛隊の幹部候補生の教育機関だ。その卒業生であるライターの松田小牧さんは「忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、だれしもが着校したその日から『これが防衛大か……』と息を呑むことになる。例年、わずか数日で入学者の1割が辞めてしまうほどだ」という——。(第1回) ※本稿は、松田小牧『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『二千人の学生が生活する防衛大学校 2007年4月1日。私は京浜急行馬堀海岸駅からタクシーに乗り、防大にたどり着いた。 正門からは、白く綺麗な建物が見える。受験はすべて居住地にある施設で行われたので、防大を見るのは着校日が初めてだった。 持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度。そこまで大きいわけでもないカバンに収まってしまう程度の分量だ。とてもこれから大学生活を始める女子の荷物の量とは思えない。胸には新たな生活への期待と、厳しい環境でやっていけるだろうかという一抹の不安があった。 午前8時半から11時の間に着くよう事前に指示があったため、余裕を持って8時半過ぎに着くと、すでに多くの同期たちが到着していた。私の心情も手伝ってか、みなやや緊張した面持ちに見えた。 当時は大体が本人だけで来ていたが、今は保護者の付き添いも目立つという。防大は大隊制を敷いており、二千人弱の学生が四つの大隊に分かれ、校内の「学生舎」と呼ばれる寮で生活している』、「持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度」、「持ち物」の少なさには驚かされた。
・『入校してすぐに叩き込まれる「連帯責任」 私の所属は第1大隊だとの指示を受け、校内を移動する。校門から学生舎までの道のりは桜が立ち並び、思わず見惚れてしまうような光景だった。防大のみならず、自衛隊の駐屯地には桜が咲き誇っている場所が多い。 一見美しく整備された防大を見て、「ここならやっていけそうだ」と何の根拠もない感慨が湧いたことを強く覚えている。そして1大隊に到着すると、学生舎の前で待っていた上級生に名を告げ、またしばらく待つ。 そのうちに、上級生の女子学生がやってきた。「よろしくね! 早く来てくれてよかった」。威圧感を感じさせない、明るい人だった。この上級生が、防大で導入している「対番制度」の相手、私から見た「上対番うえたいばん」だ。 対番というのは企業でいうメンターのようなもので、新入生にいろんなことを教えてくれる、なくてはならない存在だ。入校してしばらくは、ミスをするたびに上級生に呼び出されて叱責されるが、最初のうちは自分が怒られる代わりに「きちんとした指導ができなかった」と上対番が怒られることもままある。 自分のせいでなんの落ち度もない上対番が怒鳴られる姿を見るのは極めて心苦しい。「上対番のためにも早く成長しなければ」。こうして、入校ほどなくして「連帯責任」「誰かのために頑張る」ことを学ぶ。 基本的には2学年が1学年の上対番となるため、校内には四人の「対番系列」が存在することになる』、「対番」による「連帯責任」は秩序維持にはいい仕組みのようだ。
・『「おぉ、軍隊だ……!」 「対番会」といって最上級生が下級生を街へ連れ出す独特の風習もある。対番系列は脈々と続いているものなので、自分の下対番が防大を去ることになると、「自分の代で対番系列を途切れさせてしまった」と悲しむことになる。 話を戻すと、「早く来てくれてよかった」と言われたのには理由がある。防大の生活はとにかく初日から忙しいのだ。まずは特にお世話になる指導官、上級生への挨拶を行う。そして制服の採寸から作業服への着替えに校内の案内、学生舎のルールの説明など、あっという間に時間が過ぎる。 身体検査も行われるが、この際併せて薬物検査も実施される。ちなみに、1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる。移動中、他学年とすれ違えば敬礼を交わし、頻繁に「1300ひとさんまるまる舎前に集合せよ」といった専門用語を交えたアナウンスが流れる。 最初のころはそんな一つ一つに「おぉ、軍隊だ……!」と心の中で感動していた。私の住む寮は、学生隊で最も古い「旧号舎」と呼ばれる建物だった。「旧号舎」という字面だけでもいかめしいが、とにかく住環境としては全く褒められたものではない建物だった』、「1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる」、ずいぶん厳しいルールだ。
・『「大奥」と呼ばれていた女子フロア クーラーなんてものはなく、あるのは大きな音を出すヒーターのみ。夏は暑く、冬は寒い。ベッドには真夏でも毛布しかない。時々、暑すぎて床に伏して涼を取る者もいたくらいだ。雨が降ると雨水が室内に浸入してくるのを防ぐため、窓の桟に新聞紙を折り曲げて挟む。 強風が吹けば、窓が割れないようにガムテープをバッテン印に貼る。「このガムテープになんの意味が?」と長らく思っていたところ、ガムテープを貼りそびれた窓は確かに割れた。ちなみに紙のガムテープだと剝がすのに苦労するので、布テープのほうがいい。どんなに昔の話かと思われるかもしれないが、恐ろしいことに、これは2010年代の話である。 今は全員が新号舎に移っており、さすがにこういったことはない。羨ましい限りだ。 建物の構造としては、1〜3階が男子フロア、四階が女子フロアになっており、女子フロアは心理的にも男子が極めて足を踏み入れにくいことから、「大奥」とも呼ばれていた』、「大奥」に忍び込むような「男子」はいないのだろうか。
・『テレビもない殺風景な8人部屋で生活 部屋員は1~4学年混成の4~6人で構成されていた。防大の部屋割は時代によって変化し、同期二人部屋という時期もあったが、「同期二人では堕落がすぎる」というのですぐに廃止となり、現在の学生舎では8人部屋が基本となっている。 部屋は居室と寝室に分かれ、居室にはそれぞれの机が置かれている。テレビやゲームはおろか不必要なものが全く見当たらない、いたって殺風景な部屋だ。漫画は持っていてもいいが、見えない場所に隠さなければならない。 高校まではかなりのテレビっ子だったので、テレビがない生活に戸惑うかと思いきや、とてもそこまで思いを致す余裕などないことをすぐに知ることになる。机の上の書籍は、綺麗に背の順に並んでいる。これを「身幹順しんかんじゅん」といい、何事もこの順序が自衛隊の基本となる。 パレードなどでも「身幹順に整列!」と指示される。ただこのパレードでの身幹順というのは、背が高い者から前に並んでいくため、女子は基本的に一番後ろに並ぶことになる。結果、女子の視界には男子の背中しか入らない。 忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、誰しもが着校したその日から「これが防衛大か……」と息を呑むことになる』、「8人部屋」は、「2人部屋」に比べ相互牽制が利き易いので、秩序維持にはよさそうだ。
・『「やばいところに来ちゃったと思った」 防大では着校日、上級生による「歓迎の腕立て伏せ」が行われることが多い。 入校した1学年の期別の数だけ(私の場合は55期=55回)上級生が腕立て伏せをする姿を見て、「なんだこれはと衝撃を受けた」「やばいところに来ちゃったと思った」「見ている分には面白かった」などという声が取材の中でちらほら聞こえた。 防大について「なんの予備知識もなく来た」という者の中には、「あまりにびっくりしてしまってその夜は寝られなかった」という声もあった。 防大生には毛髪の長さの指定がある。染髪は当然禁止だ。女子は1学年のみショートカットにせねばならず、その長さも耳や襟足が完全に隠れればアウトと決められている。春高バレーでよく見かける髪型、と言えば想起しやすいだろうか。ショートの中でもベリーショートの部類だ。 うら若き十代の乙女がこの髪型にするのはなかなかの決意がいる。私は高校時代、いわゆる「お姉系」を軽く自称していた。休日には髪をコテでグルグルに巻き、大人っぽい服装を好んで着用していた私にとって、この「髪を切ること」が防大入校への第一の関門となった』、「やばいところに来ちゃったと思った」、偽らざる感想だろう。
・『同じ髪型になるからこそ個性が浮き彫りになる 女子の中にもこの髪型を「あまり気にしていない」というツワモノもいるにはいたが、「好ましい」と思っている者は聞いたことがない。2学年の5月以降は伸ばしてもよくなるため、みなその時期を心待ちにしていた。 しばらくは鏡で自分の姿を見るたびに落ち込んでいたが、同時に1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った。 ちなみに、男子の髪型は「帽子からはみ出さない」が基準となる。そのためトップには多少ボリュームを残し、サイドが短いといった男子が量産される。この髪型は1学年であろうが4学年であろうが、はたまた部隊に行こうが大して変わらない。 駐屯地や基地のある地域でこういう髪型をした屈強な男がいたら、それは大体自衛官だと思って間違いない。ただ、最初のうちは「みんな似たような髪型で同じ制服を着て、見分けがつかない」と思っていたのが、みな同じ服装だからこそ、その人の持つ本質的な個性がより浮き彫りになることを実感したのは面白い発見だった』、「1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った」、なるほど。
・『次々と中退していく新入生 防衛大学校に到着したのは4月1日。入校式は4月5日。この期間は通称「お客様期間」と呼ばれ、まだ防大生として正式に認められない期間となる。 最初は歓迎ムードで迎え入れてくれ、優しかった上級生も、入校式を終えて正式に「1学年」として認められると一転、厳しい態度になる。この数日間は、「すぐに防大をやめられる期間」でもある。 入校までに退校の意思を伝えると即日受理され、家に帰ることができるが、入校式を過ぎてからの退校手続きは完了までにかなりの時間がかかるようになる。上級生も、やめるなら早い方が本人のためになると信じているので、この「お客様期間」にあえて厳しい態度を見せつける。 ただし、まだお客様の1学年に、ではなく、2学年にこれでもかというほどの指導をし、1学年を震え上がらせるのだ。とはいえ、私は「仮にも幹部自衛官になると決意して入校してきたやつが、数日やそこらでやめるわけがないだろう」と思っていた。 仮にも軍隊組織であり、入校案内にも、「熟考し、しっかりとした自覚と、やり抜く覚悟を持って入校することを期待する」と書いてあるくらいだから、厳しい場所であることくらいは分かっていただろう、と。しかし学生の数は目に見えて減っていった』、「お客様期間」とは面白い仕組みだ。
・『わずか数日で1割が退校 私の隣に座っていた北海道から来た女子学生も、2日目までは「とりあえず最初の給料日までは頑張ろう」と言い合っていたのに、3日目には「ごめん、無理だわ、やめる」と去って行った。 毎日入校式のための練習があり、最後に学生代表が「総員○名!」と言う場面があるのだが、うろ覚えだが当初520名ほどいた学生が、入校式当日には470名超になっていた。わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている。私の3期上にあたる52期では、入校561名、卒業424名、退校106名、留年31名だった。また女子に限って言うとやめる割合はさらに高く、これまでの女子全体では入校したうちの3分の1は卒業前にいなくなる(直近5年間では6分の1)。 ただし一つ補足しておくと、やめていく人間というのは別に弱い人間でも、頑張れない人間でもない。単に自衛隊という組織に合わなかっただけだ。 自衛隊には「国を守る」という崇高な大義があるだけに、「みんな頑張っているのに、これを乗り越えられない自分はダメなんじゃないか」と思い悩んでしまう真面目な人間が必ずいる。でもそれは違う。組織がその人に合わなかっただけなのだ。 国の守り方、志の実現の方法など、ほかにもいくらでもある。やめることは逃げではない。自衛隊的に言うと、長い目で見て勝利を得るために必要な「戦略的撤退」だ。この点は声を大にして言いたいところである』、「わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている」、初めの「数日」を乗り切れば、その後は辞める人は大幅に減るようだ。なお、5頁目の下の略歴によれば、「2007年防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。 陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、時事通信社に入社、社会部、神戸総局を経て政治部に配属。2018年、第一子出産を機に退職。その後はITベンチャーの人事を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う」、やはり「中途退校」したようだ。でも、その後も、人生をエンジョイしているようだ。
先ずは、5月28日付け日経ビジネスオンライン「中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/052500056/
・『台湾有事が話題になる機会が増えている。これは日本にとって他人事ではない。中国は沖縄をはじめとする南西諸島を勢力圏に取り込む意図を持つとされる。抑止力強化のため、敵基地攻撃能力を持つことが選択肢として挙がる。果たして、これは得策か。台湾有事に詳しい尾上定正・元空将に聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:台湾有事が話題になる機会が増えています。菅義偉首相とジョー・バイデン米大統領が4月16日に行った日米首脳会談後の共同声明にも、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と盛り込まれ、注目されました。 台湾有事は、いつ、どのような条件が整ったときに起こると考えられますか。 尾上定正・元空将(以下、尾上):時期については、習近平(シー・ジンピン)国家主席すら分からないでしょう。私は当初、2024年までが危ないと考えていました。新型コロナウイルスの感染症が最初、中国・武漢で広まったのを受けて、中国経済が数年にわたって打撃を受けると推測したからです。経済成長は、中国共産党政権の統治の正当性を支える土台。これが揺らげば、台湾統一など別の要素で補強する必要が生じます。 しかし、中国はこのときの予想をはるかに上回る勢いで経済を回復させました。よって今は、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が3月に示したのと同様、6年後の2027年までが1つの区切りになるとみています。 それでも、経済の状況が習近平政権の「意志」を刺激し、台湾有事の引き金になり得る構図は変わりません。 注目するのは人口です。中国の人口は2030年ごろにピークを迎えると予想されています。中国はGDP(国内総生産)で、2028年にも米国を抜くとの予想があります。しかし、人口がマイナスに転じれば経済の成長も鈍化する。いったん米国を抜いても、再び抜き返されることが想定されます。ならば、中国にとって「機会の窓」が開いている期間はそれほど長くない。その短いチャンスをものにして事を成就する――ことへの誘惑が働くのではないでしょうか。 また中国は軍事力の増強を続けており、「能力」面でも「今ならできる」との自信も深めているとみられます。脅威は「意志」と「能力」から成ります。能力において、短期的な優位が長期的には不利に移行していく状況が最も危ないのです。1930年代の日本と同じですね。 軍事力は、1996年の台湾海峡危機*では、米空母を前に沈黙せざるを得なかった。この悔しさをバネに毎年2けた%増で防衛費を増やしてきました。デービッドソン司令官が上院軍事委員会の公聴会で示した資料をみると、西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります。 *:1996年の台湾総統選に独立派の李登輝が立候補した。中国はこれに反発し台湾近海にミサイルを撃って圧力をかけた。米国はこれに対抗すべく、空母2隻を派遣した 中国は今年の4月23日には強襲揚陸艦とミサイル艇、原子力潜水艦の3隻を同時に就役させ国際社会の耳目を集めました。記念の式典には習近平国家主席のほか、2人の中央軍事委員会副主席が出席し、能力の増強を誇示しました。 Q:中国海軍は4月6日、台湾周辺の海域に空母「遼寧」を派遣しての軍事訓練も実施しています。 尾上:そうですね』、「西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります」、なるほど。
・『台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激 ここまで中国の意志と能力についてお話ししました。これに加えて台湾と米国の事情も、中国の意志を刺激する可能性があります。 台湾で2024年、次の台湾総統選が予定されています。このときに、与党・民進党の頼清徳・副総統が立候補する可能性があります。同氏は台湾独立を強く訴えてきた人物。総統選で独立を打ち出すことが考えられます。そうなれば、中国の逆鱗(げきりん)に触れるでしょう。 もちろん、民進党はそんなばかなことはしないでしょうし、米国も抑えようとするにちがいありません。しかし、李登輝の例もあることです。 同じく2024年に米国でも大統領選が実施されます。これが混乱することが予想される。トランプ前大統領を支持する勢力が今でも力を持っており、米国内を分断しています。仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません。Q:中国と台湾との経済関係が抑止力として働く可能性はありませんか。中国は、輸入の約8%が台湾からです(2019年実績。以下同じ)。半導体をはじめとする主要な電子部品が含まれている。これが途絶えれば、中国経済に大きな打撃を与えることになります。米国が介入する事態になれば、受ける打撃がさらに大きくなる。米国との取引は輸入で約12%、輸出で約17%を占めています。中国国民はこれらを失うことに耐えられるでしょうか。共産党政権が一党独裁を敷いているとはいえ、中国国民の世論を無視することは難しくなっています。 尾上:経済が抑止力として働く要素は間違いなくあります。ブッシュ政権でコンドリーザ・ライス国務長官(当時)の顧問を務めた安全保障の専門家であるフィリップ・ゼリコー氏とロバート・D・ブラックウィル氏は米外交問題評議会で発表したリポート「The United States, China, and Taiwan : A Strategy to Prevent War」の中で、核抑止でいうMAD(相互確証破壊)*と同様の役割を経済が果たすと指摘しています。 *:敵の第1撃を受けた後も、残った戦力で相手国の人口の20~25%に致命傷を与え、工業力の2分の1から3分の2を破壊する力を維持できていれば、相手国は先制攻撃を仕掛けられない、というもの。米国のロバート・マクナマラ国防長官(当時)が1960年代に核戦争を抑止する戦略として提唱した しかし、中国共産党にとって台湾統一は統治の正当性を担保する「1丁目1番地」です。習近平国家主席は2019年1月の演説で、「中華民族の偉大な復興へのプロセスにおいて台湾同胞を欠くことはあり得ない」と強調しました。その習近平政権は、統治の正当性と経済のどちらを優先するでしょう。抑止が働くかどうかには疑問符を付けざるを得ません。 よって、われわれは習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります』、「台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激」、「民進党」の候補が中国を過度に刺激しないよう発言を抑制してほしいものだ。「仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません」、確かに中国には侵攻のチャンスなのかも知れない。「習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります」、その通りだ。
・『中国空軍が日本領空を通過して台湾東岸を攻撃 Q:抑止力を高めるために何が必要でしょう。 尾上:こちらも意志と能力に分けてお話ししましょう。 日本は米国とともに既に意図を示しています。冒頭で言及された、日米共同声明において「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記したことです。日米のこの意図が習近平国家主席やその政策を立案するスタッフに浸透するよう、今後も繰り返し伝える必要があると考えます。 能力面では、南西諸島から台湾に至る第1列島線の防衛力を日米で高めていく必要があります。習近平政権が台湾の軍事統一を試みた場合に負担しなければならないコスト、もしくは被るリスクを高める。 Q:日本の南西諸島の防衛力を高めることが、台湾有事の抑止につながるのですか。 尾上:つながります。例えば、中国空軍が日本の南西諸島上空を経由して台湾東岸を攻撃する可能性があるからです。台湾の地形は、西は平地、東は山地になっています。中国は西の平地は短距離弾道ミサイルで容易に攻撃することができる。しかし、東の山地を攻撃するのは難しい。台湾軍はこの地の利を生かして、東部の花蓮県や台東県に地下シェルターを装備する基地を設け、戦闘機などの装備を隠す作戦を立てています。 中国空軍はこの台湾東部の基地を攻撃するのに、より東の太平洋側から回り込む必要がある。既に中国は、爆撃機H-6を使って宮古海峡*を抜けて太平洋側に進出する訓練を実施しています。3月29日には多数の中国軍機が台湾周辺と同時に、宮古・沖縄本島間を飛行する「2正面訓練」も実施しています。こうした中国空軍の攻撃への備えを宮古島などに配備することで、中国がこの作戦を実行する際のリスクを高めることができます。 *:宮古島と沖縄本島との間の海峡 Q:陸上自衛隊は鹿児島県・奄美大島や沖縄県・宮古島、石垣島に、12式地対艦誘導弾(SSM)や対空ミサイル「03式中距離地対空誘導弾改善型(=03式中SAM改)」を備えた陸上自衛隊の部隊を配備しています。 尾上:この取り組みは評価しますが、まだ十分とはいえません。 Q:政府は2020年12月、自衛隊の12式地対艦誘導弾の射程を延長する作業に着手すると閣議決定しました。現行の200kmから900km、1500kmへ伸ばすとされています。 尾上:これは抑止力の向上に寄与するでしょう。より遠くまで攻撃することができれば、それだけ中国艦船が近づきづらくなりますから。中国の爆撃機H-6に搭載できる対地巡航ミサイルCJ-10の射程は1500kmあります。南西諸島防衛はこれにも対抗できるようにすべきです。巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要があります』、「巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要」、その通りだ。
・『中国を狙う敵基地攻撃能力の取得は得策か? Q:米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約が2019年8月に失効したのを受けて、米国は地上発射型中距離ミサイル(射程500~5500km)を保有できるようになりました。中距離弾道ミサイルの開発に着手したとされます。これを中国への抑止力として第1列島線上に配備することが取り沙汰されています。米国から要請があった場合、日本はどうすべきだと考えますか。 尾上:地上に目に見える形で中距離ミサイルを配備することは、抑止力の向上を図る上で大きなインパクトを持ちます。置く場所を考えると日本しかありません。フィリピンはドゥテルテ政権の姿勢が安定しません。オーストラリアは距離的に遠すぎます。 しかし、現実にはかなりの困難を伴います。国民の合意を得るのが難しい。配備地の地元住民のみなさんは、懸念されることが多々あるでしょう。イージス・アショアの配備でも地元の合意を得る作業が不調に終わりました(関連記事「ブースターは一部、陸上イージスが無理筋なこれだけの理由(上)」)。 Q:日本が独自に中長距離ミサイルを配備し、中国を対象にしたいわゆる敵基地攻撃能力を備えるという選択肢もありますか。 尾上:こちらも国民の合意を得るのは容易ではありません。私は、北朝鮮の核ミサイル脅威に対して日本は独自の攻撃能力を持つべきであり、その有力な選択肢が弾道ミサイルだと考えます。けれども中国に対しては、軍事的にみても必ずしも得策とはいえません。中国が配備する中距離ミサイルの量に比べて、日本が備えることができる装備は圧倒的に少ないからです。まして、2027年までと期限を切って考えるならば、その難易度はさらに高まります。 中国は、空母キラーと呼ばれる中距離弾道ミサイルDF-21D(射程2150km)を50基以上、グアム・キラーと呼ばれるDF-26(射程5000km)を100基以上保有しているとの報道があります。DF-26は日本列島全体を射程に収めるものです。 米太平洋軍のハリー・ハリス司令官(当時)が2017年4月、「中国は2000発以上の弾道ミサイル・巡航ミサイルを保有している。そのうち95%は、INF条約加盟国であれば違反に相当する」と議会で発言し、注目されました。 尾上:中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい、と考えます。(P5有料なので、紹介省略)』、「中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい」、その通りなのだろう。
次に、9月3日付け東洋経済オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの清谷 信一氏による「陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/450823
・『陸自の普通科(歩兵)の7.62ミリ62式機銃は廃止され、89式小銃と同じ弾薬を使う5.56ミリMINIMIで置き換えられた。世界を見渡してこのような決定をした「陸軍」は陸自ぐらいである。普通の軍隊では5.56ミリ機銃は分隊支援火器として使用されており、それとは別に7.62ミリ機銃を運用している。 7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明している。であれば装甲車輌の同軸機銃も7.62ミリでなく5.56ミリ機銃でいいわけだが、そうはなっていない。 射程が長く、貫通力の強い7.62ミリ機銃を持った敵と撃ち合えば射程においても、威力においても圧倒的に不利である。敵は陸自普通科の射程外から攻撃できるし、同じ距離で撃ち合うにしても陸自の5.56ミリ弾では相手のバリケードは抜けなくても、相手の7.62ミリ弾ならば同じようなバリケードを貫通できる』、「7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明」、撃ち合いになれば、日本側が不利になることが明らかなのに、不可思議な決定だ。
・『5.56ミリMINIMI置き換えの理由は人員削減? 本当の理由は人員削減だろうと筆者は推測している。7.62ミリ機銃だと最低でも射手と補弾手の2人が必要だ。しかも小銃小隊と別にである。ところが5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう。実戦をしない前提ならば合理的な考え方である。 そのMINIMIだが30年かけても調達が完了せずに、現在は不足分の約800丁分のトライアルを行っている。そのトライアルから住友重機械工業が撤退し、将来の機銃生産事業からも撤退する。これは筆者が「スクープ!住友重機械が機関銃生産から撤退へ」(2021年4月15日配信)で報じた通りだ。 陸自の装甲車輌は主砲の同軸機銃に7.62ミリの74式機銃を使っているが、弾薬は旧式の64式小銃と同じで7.62ミリNATO弾の減装薬弾を採用している。これは64式機銃採用時に日本人の体型では反動が強すぎるということで採用されたが、その分、NATO弾に比べて威力が低く、射程距離も短い。 64式がほぼ退役した現在、64式との弾薬の共用性を重視し、同軸機銃に減装薬弾を使う必要はないが、そのままに使用されている。 だがこれだとアメリカ軍との弾薬の相互互換性はない。NATO弾をそのまま使用すると暴発や作動不良が起こる可能性が高い。NATO弾を使用できるように調節しても射程も弾道も違うので命中が期待できない。 陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい』、「5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう」、なんたる逆立ちした発想なのだろう。「陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7.62ミリ弾は本来NATO弾に統一するのが望ましい」、「兵站の負担」が小さくなるような体系にしておきべきだ。
・『機械化部隊の利点を自ら捨てている 事実上、普通科の主力APC(装甲歩兵輸送車)である軽装甲機動車は非武装であり、96式装甲車のような12.7ミリ機銃を積んでいるわけでもない。そして運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう。このためAPCからの火力支援も受けられない。機械化部隊の利点を自ら捨てていると解釈できる。 96式装甲車に搭載されている豊和工業が開発した40ミリ96式自動擲弾銃にも問題がある。作動不良がひどくて実質上調達が中止になっているが、部隊ではいまだに使用されている。しかも弾薬の口径は40ミリと他国のグレネードランチャーと同じながら、NATO規格の40x53mm弾ではなく、独自の40×56mm弾である。 このためアメリカ軍との相互互換性はない。水陸機動団で導入された水陸両用装甲車AAV7にはFMS(有償軍事供与)で、アメリカ軍と同じMk19ランチャーが装備されているが、これは96式の性能、信頼性が低かったためだろう。国産の40ミリ弾も使用できない。わざわざ世界の標準と異なる弾薬を採用したのに軍事的な整合性はない。 「非関税障壁」とし て国内弾薬メーカーの仕事を確保するためだろうか。) 12.7ミリM2機銃は住友重機械工業がライセンス生産しているがオリジナルと同等の信頼性があるかについては疑問がある。陸自では12.7ミリ機銃をヘリコプターのドアガンとして使っているが、M2は俯角を掛けて撃つと作動不良が起こりやすい。また航空用としては初速も低い。筆者の知る限りM2をドアガンとして使用しているのは世界で陸自ぐらいだ。アメリカ軍では航空用のM3を採用している。陸自が導入したオスプレイには付属品として7.62ミリのM240と併せて、M3がFMS(有償軍事援助)で調達されている。 自衛隊の機銃は住友重機械工業が生産してきた。2014年、同社が40年以上にわたって機銃の性能や品質を偽造してきたことが明らかになった。筆者は長年現場の多くの隊員から同じ機銃でもアメリカ軍の機銃のほうが、信頼性が高いと多々聞いてきた。 また機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる。 機銃の範疇ではないが、84ミリ無反動砲も問題がある。陸幕は、84ミリカール・グスタフ84ミリM2無反動砲を使用してきたが、2012年度からM3に更新を始めた。だが、配備はほぼ水陸機動団だけだ』、「軽装甲機動車は非武装であり・・・運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう・・・機械化部隊の利点を自ら捨てている」、何か理由があるのだろうが、ここに書かれたことからみる限り、信じ難いお粗末な決定だ。「機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる」、お粗末の極みだ。
・『陸自はM4を採用しなかった 問題は陸自がM3を採用した頃、より軽量で高性能な新型のM4がすでに開発され、生産が決まっていたことだ。M4の重量は7㎏未満。およそ10㎏のM3より3.4㎏ほど軽い(現用のM2の重量は16.1㎏)。これを採用すれば隊員の負担は大きく低減されていたはずだ。 近年、諸外国ではM4を採用する国が増えている。M4はM3に比べて軽量であるだけではなく、火器管制装置を装備できる。取材する限り、M4のほうが調達単価はより高いが、射撃数をカウントする装置もあり、寿命管理が厳格にできるのでライフサイクルコストはM3とさほど差がないようだ。またカール・グスタフは弾薬の種類が多いのがセールスポイントだが、陸自はそれらをほとんど使用していない。 問題は性能だけではない。M3の生産は近く終了する見込みだ。そうしたら陸幕はどうするのか。M3とM4を混在して使うのか。そうなれば兵站も教育は2重になる。M3を採用するならば必要数を一気呵成に調達したほうがよかった。陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた』、「陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた」、ここまでくると呆れ果てて、腹も立たなくなった。
・『メーカーを弱体化させた要因 それはメーカーの能力や体質を弱め、国際価格の数倍から10倍の値段で、実用性にも疑問符が付くような装備を調達して税金を無駄使いすることになってしまった。その結果がコマツの装甲車生産からの撤退、住友重機械工業の機関銃からの撤退など企業が防衛部門から次々と手を引く事態である。ミネベアミツミや豊和工業の撤退も時間の問題と筆者は読んでいる。防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない。 筆者は岸信夫防衛相や吉田圭秀陸上自衛隊幕僚長、湯浅悟郎前幕僚長らに会見でこうした件について質してきたが、どこに問題があるか認識していないようだった。無論、大臣や幕僚長が個々の装備に微に入り細に入り口を出す必要はないが、仮想敵はもちろん、世界の潮流から何周も遅れている、そして兵站上も大きな問題点を抱えて、税金を無駄使いしている事実すら認識していないのは大きな問題だ。 政府も防衛省も陸幕も今の組織文化を本気で変えない限り、有事になればそのつけを隊員と国民の血で贖うことになりかねない』、「防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない」、防衛産業のやる気まで奪っているとは、「防衛省」の罪は深い。
第三に、10月8日付けPRESIDENT Onlineが掲載したライターの松田 小牧氏による「数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ」を紹介しよう。
・『「防衛大学校」は自衛隊の幹部候補生の教育機関だ。その卒業生であるライターの松田小牧さんは「忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、だれしもが着校したその日から『これが防衛大か……』と息を呑むことになる。例年、わずか数日で入学者の1割が辞めてしまうほどだ」という——。(第1回) ※本稿は、松田小牧『防大女子 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち』(ワニブックスPLUS新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『二千人の学生が生活する防衛大学校 2007年4月1日。私は京浜急行馬堀海岸駅からタクシーに乗り、防大にたどり着いた。 正門からは、白く綺麗な建物が見える。受験はすべて居住地にある施設で行われたので、防大を見るのは着校日が初めてだった。 持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度。そこまで大きいわけでもないカバンに収まってしまう程度の分量だ。とてもこれから大学生活を始める女子の荷物の量とは思えない。胸には新たな生活への期待と、厳しい環境でやっていけるだろうかという一抹の不安があった。 午前8時半から11時の間に着くよう事前に指示があったため、余裕を持って8時半過ぎに着くと、すでに多くの同期たちが到着していた。私の心情も手伝ってか、みなやや緊張した面持ちに見えた。 当時は大体が本人だけで来ていたが、今は保護者の付き添いも目立つという。防大は大隊制を敷いており、二千人弱の学生が四つの大隊に分かれ、校内の「学生舎」と呼ばれる寮で生活している』、「持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度」、「持ち物」の少なさには驚かされた。
・『入校してすぐに叩き込まれる「連帯責任」 私の所属は第1大隊だとの指示を受け、校内を移動する。校門から学生舎までの道のりは桜が立ち並び、思わず見惚れてしまうような光景だった。防大のみならず、自衛隊の駐屯地には桜が咲き誇っている場所が多い。 一見美しく整備された防大を見て、「ここならやっていけそうだ」と何の根拠もない感慨が湧いたことを強く覚えている。そして1大隊に到着すると、学生舎の前で待っていた上級生に名を告げ、またしばらく待つ。 そのうちに、上級生の女子学生がやってきた。「よろしくね! 早く来てくれてよかった」。威圧感を感じさせない、明るい人だった。この上級生が、防大で導入している「対番制度」の相手、私から見た「上対番うえたいばん」だ。 対番というのは企業でいうメンターのようなもので、新入生にいろんなことを教えてくれる、なくてはならない存在だ。入校してしばらくは、ミスをするたびに上級生に呼び出されて叱責されるが、最初のうちは自分が怒られる代わりに「きちんとした指導ができなかった」と上対番が怒られることもままある。 自分のせいでなんの落ち度もない上対番が怒鳴られる姿を見るのは極めて心苦しい。「上対番のためにも早く成長しなければ」。こうして、入校ほどなくして「連帯責任」「誰かのために頑張る」ことを学ぶ。 基本的には2学年が1学年の上対番となるため、校内には四人の「対番系列」が存在することになる』、「対番」による「連帯責任」は秩序維持にはいい仕組みのようだ。
・『「おぉ、軍隊だ……!」 「対番会」といって最上級生が下級生を街へ連れ出す独特の風習もある。対番系列は脈々と続いているものなので、自分の下対番が防大を去ることになると、「自分の代で対番系列を途切れさせてしまった」と悲しむことになる。 話を戻すと、「早く来てくれてよかった」と言われたのには理由がある。防大の生活はとにかく初日から忙しいのだ。まずは特にお世話になる指導官、上級生への挨拶を行う。そして制服の採寸から作業服への着替えに校内の案内、学生舎のルールの説明など、あっという間に時間が過ぎる。 身体検査も行われるが、この際併せて薬物検査も実施される。ちなみに、1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる。移動中、他学年とすれ違えば敬礼を交わし、頻繁に「1300ひとさんまるまる舎前に集合せよ」といった専門用語を交えたアナウンスが流れる。 最初のころはそんな一つ一つに「おぉ、軍隊だ……!」と心の中で感動していた。私の住む寮は、学生隊で最も古い「旧号舎」と呼ばれる建物だった。「旧号舎」という字面だけでもいかめしいが、とにかく住環境としては全く褒められたものではない建物だった』、「1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる」、ずいぶん厳しいルールだ。
・『「大奥」と呼ばれていた女子フロア クーラーなんてものはなく、あるのは大きな音を出すヒーターのみ。夏は暑く、冬は寒い。ベッドには真夏でも毛布しかない。時々、暑すぎて床に伏して涼を取る者もいたくらいだ。雨が降ると雨水が室内に浸入してくるのを防ぐため、窓の桟に新聞紙を折り曲げて挟む。 強風が吹けば、窓が割れないようにガムテープをバッテン印に貼る。「このガムテープになんの意味が?」と長らく思っていたところ、ガムテープを貼りそびれた窓は確かに割れた。ちなみに紙のガムテープだと剝がすのに苦労するので、布テープのほうがいい。どんなに昔の話かと思われるかもしれないが、恐ろしいことに、これは2010年代の話である。 今は全員が新号舎に移っており、さすがにこういったことはない。羨ましい限りだ。 建物の構造としては、1〜3階が男子フロア、四階が女子フロアになっており、女子フロアは心理的にも男子が極めて足を踏み入れにくいことから、「大奥」とも呼ばれていた』、「大奥」に忍び込むような「男子」はいないのだろうか。
・『テレビもない殺風景な8人部屋で生活 部屋員は1~4学年混成の4~6人で構成されていた。防大の部屋割は時代によって変化し、同期二人部屋という時期もあったが、「同期二人では堕落がすぎる」というのですぐに廃止となり、現在の学生舎では8人部屋が基本となっている。 部屋は居室と寝室に分かれ、居室にはそれぞれの机が置かれている。テレビやゲームはおろか不必要なものが全く見当たらない、いたって殺風景な部屋だ。漫画は持っていてもいいが、見えない場所に隠さなければならない。 高校まではかなりのテレビっ子だったので、テレビがない生活に戸惑うかと思いきや、とてもそこまで思いを致す余裕などないことをすぐに知ることになる。机の上の書籍は、綺麗に背の順に並んでいる。これを「身幹順しんかんじゅん」といい、何事もこの順序が自衛隊の基本となる。 パレードなどでも「身幹順に整列!」と指示される。ただこのパレードでの身幹順というのは、背が高い者から前に並んでいくため、女子は基本的に一番後ろに並ぶことになる。結果、女子の視界には男子の背中しか入らない。 忙しなく動く上級生の姿、清掃や点呼の厳しさを見て、誰しもが着校したその日から「これが防衛大か……」と息を呑むことになる』、「8人部屋」は、「2人部屋」に比べ相互牽制が利き易いので、秩序維持にはよさそうだ。
・『「やばいところに来ちゃったと思った」 防大では着校日、上級生による「歓迎の腕立て伏せ」が行われることが多い。 入校した1学年の期別の数だけ(私の場合は55期=55回)上級生が腕立て伏せをする姿を見て、「なんだこれはと衝撃を受けた」「やばいところに来ちゃったと思った」「見ている分には面白かった」などという声が取材の中でちらほら聞こえた。 防大について「なんの予備知識もなく来た」という者の中には、「あまりにびっくりしてしまってその夜は寝られなかった」という声もあった。 防大生には毛髪の長さの指定がある。染髪は当然禁止だ。女子は1学年のみショートカットにせねばならず、その長さも耳や襟足が完全に隠れればアウトと決められている。春高バレーでよく見かける髪型、と言えば想起しやすいだろうか。ショートの中でもベリーショートの部類だ。 うら若き十代の乙女がこの髪型にするのはなかなかの決意がいる。私は高校時代、いわゆる「お姉系」を軽く自称していた。休日には髪をコテでグルグルに巻き、大人っぽい服装を好んで着用していた私にとって、この「髪を切ること」が防大入校への第一の関門となった』、「やばいところに来ちゃったと思った」、偽らざる感想だろう。
・『同じ髪型になるからこそ個性が浮き彫りになる 女子の中にもこの髪型を「あまり気にしていない」というツワモノもいるにはいたが、「好ましい」と思っている者は聞いたことがない。2学年の5月以降は伸ばしてもよくなるため、みなその時期を心待ちにしていた。 しばらくは鏡で自分の姿を見るたびに落ち込んでいたが、同時に1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った。 ちなみに、男子の髪型は「帽子からはみ出さない」が基準となる。そのためトップには多少ボリュームを残し、サイドが短いといった男子が量産される。この髪型は1学年であろうが4学年であろうが、はたまた部隊に行こうが大して変わらない。 駐屯地や基地のある地域でこういう髪型をした屈強な男がいたら、それは大体自衛官だと思って間違いない。ただ、最初のうちは「みんな似たような髪型で同じ制服を着て、見分けがつかない」と思っていたのが、みな同じ服装だからこそ、その人の持つ本質的な個性がより浮き彫りになることを実感したのは面白い発見だった』、「1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った」、なるほど。
・『次々と中退していく新入生 防衛大学校に到着したのは4月1日。入校式は4月5日。この期間は通称「お客様期間」と呼ばれ、まだ防大生として正式に認められない期間となる。 最初は歓迎ムードで迎え入れてくれ、優しかった上級生も、入校式を終えて正式に「1学年」として認められると一転、厳しい態度になる。この数日間は、「すぐに防大をやめられる期間」でもある。 入校までに退校の意思を伝えると即日受理され、家に帰ることができるが、入校式を過ぎてからの退校手続きは完了までにかなりの時間がかかるようになる。上級生も、やめるなら早い方が本人のためになると信じているので、この「お客様期間」にあえて厳しい態度を見せつける。 ただし、まだお客様の1学年に、ではなく、2学年にこれでもかというほどの指導をし、1学年を震え上がらせるのだ。とはいえ、私は「仮にも幹部自衛官になると決意して入校してきたやつが、数日やそこらでやめるわけがないだろう」と思っていた。 仮にも軍隊組織であり、入校案内にも、「熟考し、しっかりとした自覚と、やり抜く覚悟を持って入校することを期待する」と書いてあるくらいだから、厳しい場所であることくらいは分かっていただろう、と。しかし学生の数は目に見えて減っていった』、「お客様期間」とは面白い仕組みだ。
・『わずか数日で1割が退校 私の隣に座っていた北海道から来た女子学生も、2日目までは「とりあえず最初の給料日までは頑張ろう」と言い合っていたのに、3日目には「ごめん、無理だわ、やめる」と去って行った。 毎日入校式のための練習があり、最後に学生代表が「総員○名!」と言う場面があるのだが、うろ覚えだが当初520名ほどいた学生が、入校式当日には470名超になっていた。わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている。私の3期上にあたる52期では、入校561名、卒業424名、退校106名、留年31名だった。また女子に限って言うとやめる割合はさらに高く、これまでの女子全体では入校したうちの3分の1は卒業前にいなくなる(直近5年間では6分の1)。 ただし一つ補足しておくと、やめていく人間というのは別に弱い人間でも、頑張れない人間でもない。単に自衛隊という組織に合わなかっただけだ。 自衛隊には「国を守る」という崇高な大義があるだけに、「みんな頑張っているのに、これを乗り越えられない自分はダメなんじゃないか」と思い悩んでしまう真面目な人間が必ずいる。でもそれは違う。組織がその人に合わなかっただけなのだ。 国の守り方、志の実現の方法など、ほかにもいくらでもある。やめることは逃げではない。自衛隊的に言うと、長い目で見て勝利を得るために必要な「戦略的撤退」だ。この点は声を大にして言いたいところである』、「わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている」、初めの「数日」を乗り切れば、その後は辞める人は大幅に減るようだ。なお、5頁目の下の略歴によれば、「2007年防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。 陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、時事通信社に入社、社会部、神戸総局を経て政治部に配属。2018年、第一子出産を機に退職。その後はITベンチャーの人事を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う」、やはり「中途退校」したようだ。でも、その後も、人生をエンジョイしているようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン 防衛問題(その18)(中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?、陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない、数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ) 「中国をターゲットとする「敵基地攻撃能力」は得策か?」 「西太平洋における軍事バランスは中国有利に傾きつつあります」、なるほど。 「台湾総統選と米大統領選が中国の意志を刺激」、「民進党」の候補が中国を過度に刺激しないよう発言を抑制してほしいものだ。「仮にトランプ氏が再選されることになれば、現政権と次期政権の引き継ぎ期間に政治的空白や混乱が生じ、中国に「今ならできる」との誤解を与えることもあながち否定できません」、確かに中国には侵攻のチャンスなのかも知れない。「習近平政権が台湾の武力統一にチャレンジする気を起こさないようあらゆる手段を尽くす必要があります」、その通りだ。 「巡航ミサイルにも対処できるミサイル防衛体制や射程の長い空対空ミサイルの装備を速やかに進める必要」、その通りだ。 「中国が擁するそれほど膨大な中距離ミサイルに対抗するのは米軍でも非常に難しい。従って、中国に対しては日米同盟による抑止力をいかに高めていくかという戦略的視点で日米のRMC(役割、任務、能力)を考える必要がある。日本はすでに保有している対艦誘導弾などの充実を図り、日本に向かってくるミサイルや航空機、艦船の迎撃、また基地防衛に力を入れた方がよい」、その通りなのだろう。 東洋経済オンライン 清谷 信一 「陸自の機関銃装備体制に穴がありすぎて不安な訳 必要な性能品質をリーズナブルに調達できてない」 「7.62ミリ機銃廃止の理由を陸上自衛隊幕僚監部(以下陸幕)は交戦距離が短いという「我が国固有の環境」に合わせた決定と説明」、撃ち合いになれば、日本側が不利になることが明らかなのに、不可思議な決定だ。 「5.56ミリMINIMIであれば1名で運用できて、分隊内の構成員ですむ。陸自は慢性的な人手不足と言われている。本来ならば普通科連隊の数を減らして連隊の定数や編成を充実させたほうがいいのだが、それをやると連隊長のポストが減ってしまうからだろう」、なんたる逆立ちした発想なのだろう。「陸自では狙撃銃や特殊作戦群が使うガトリングガン、オスプレイに搭載されるM240機銃を採用しているが、これらでは7.62ミリNATO弾を輸入して使っている。このため国内でも補給に混乱が起こる可能性があるし、兵站の負担も大きい。7. 「軽装甲機動車は非武装であり・・・運転手や車長含めて全員が下車して戦う。世界を見渡しても、このような運用をしているのは陸自ぐらいであろう・・・機械化部隊の利点を自ら捨てている」、何か理由があるのだろうが、ここに書かれたことからみる限り、信じ難いお粗末な決定だ。「機銃の調達価格は諸外国の概ね5~10倍である。これは防衛省の調達数が少なく、数年単位に及ぶ調達計画ではなく、単年度で予算を決定していることが要因とみられる」、お粗末の極みだ。 「陸自は採用までに時間をかけすぎて、調達する頃には陳腐化しており、装備が生産終了して調達ができないことが多い。これは当事者能力の欠如と言わざるをえない。 防衛省や陸自は「軍隊」として適正な装備を開発、調達する能力もなく、必要な情報収集すらしてこなかったように見える。そして必要な性能品質の装備をリーズナブルな価格で調達するよりも、国内メーカーに仕事を振ることを目的化してきたような調達を行ってきた」、ここまでくると呆れ果てて、腹も立たなくなった。 「防衛省の過保護と開発指導力の乏しさがメーカーを弱体化させたといっても過言ではない」、防衛産業のやる気まで奪っているとは、「防衛省」の罪は深い。 PRESIDENT ONLINE 松田 小牧 「数日で1割が辞める…「エリート自衛官の養成所」防大を卒業した女性ライターの現場ルポ だれもが息を呑むすさまじい厳しさ」 「持ち物は判子、文房具、洗面用具、下着、Tシャツと短パン、それにいくばくかのお金程度」、「持ち物」の少なさには驚かされた。 「対番」による「連帯責任」は秩序維持にはいい仕組みのようだ。 「1学年の間は外出時にも私服を着ることが許されないため、学校まで着てきた私服はその後実家に送り返すことになる」、ずいぶん厳しいルールだ。 「大奥」に忍び込むような「男子」はいないのだろうか。 「8人部屋」は、「2人部屋」に比べ相互牽制が利き易いので、秩序維持にはよさそうだ。 「やばいところに来ちゃったと思った」、偽らざる感想だろう。 「1学年時はドライヤーで髪を乾かす時間すら取れないため、あっという間にドライヤーいらずで髪が乾くこの髪型は、防大1学年の生活を送る上ではなるほど合理的だとも思うに至った」、なるほど。 「お客様期間」とは面白い仕組みだ。 「わずか数日で約1割が減った。 ちなみに卒業時にはもう1割ほど減っている」、初めの「数日」を乗り切れば、その後は辞める人は大幅に減るようだ。なお、5頁目の下の略歴によれば、「2007年防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。 陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、時事通信社に入社、社会部、神戸総局を経て政治部に配属。2018年、第一子出産を機に退職。その後はITベンチャーの人事を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う」、やはり「中途退校」したようだ。でも、その後も、人生をエンジ
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