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中国情勢(軍事・外交)(その11)(習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!、中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった、中国 8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その11)(習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!、中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった、中国 8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き)である。

先ずは、5月27日付け現代ビジネスが掲載した中国生まれで日本に帰化した 評論家の石平氏による「習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83441?imp=0
・『EUの拒絶の意味  欧州連合(EU)議会は5月20日、EUと中国が昨年12月に合意した投資協定をめぐり、その批准手続きを凍結する決議を圧倒的な賛成多数で採決した。 こうなったことの直接な理由は、EUに対する中国側の報復制裁にあった。 3月22日、EUがウイグル人への人権侵害を理由に中国に制裁措置を発動したことに対し、中国は報復の制裁をEUにかけた。上述のEU議会決議はそれに反発し、中国が制裁を解除するまでに投資協定の批准を審議しない姿勢を明確にしたものだ。 EUの対中国制裁措置と中国の報復措置の中身は後述するが、とにかく今の時点では、EUと中国の間の制裁の応酬は結果的に、EU議会における投資協定の審議・批准をストープさせることとなった。一旦合意された協定の成立はかなり危うくなっているのである。 しかしそれは中国にとって、実に重大な外交上の頓挫であって、多くの戦略上の展望が一気に崩れかけているという深刻な出来事である』、なるほど。
・『長年の交渉の結果  EUと中国との投資協定は習近平政権スタートの翌年の2014年から交渉が始まって、20年年末までには双方が7年間の歳月をかけて交渉を重ねてきた。EU側でそれを主導したのはドイツのメルケル首相であるのに対し、中国側で先頭に立ってそれを積極的な推進してきたのは、習近平国家主席その人である。 以前の江沢民政権が残した大いなる功績の1つは、中国のWTO加入を実現させることによって、先進国を中心とした世界の市場を中国企業のために開かせたことである。 これに対し、EUとの投資協定の締結をもって、欧州資本を中国に全面的に誘い込みたいのは習主席の思惑である。 欧州資本は中国に大量に入り込めば、それが企業の過大負債や金融のリスク拡大などの大問題を抱えて停滞気味の中国経済に成長の新しい原動力を注入することになるだろうと期待されている。投資協定の成立は、中国経済にとっては大きなメリットがあって、まさに意義重大である。 その一方、数年前に当時のトランプ政権が対中国貿易戦争を発動して以来、EUと中国の投資協定は、中国にとってはもう1つ重要性を持つようになってきている。 中国からすれば、投資協定の締結によって中国経済とEU圏経済の緊密化・一体化が進んでいれば、中国がアメリカ発動の貿易戦争には十分に対応できるし、アメリカが企んでいる中国経済とのデカップリング(切り離し)も全然怖くはない』、「7年間の歳月をかけて交渉を重ねてきた。EU側でそれを主導したのはドイツのメルケル首相であるのに対し、中国側で先頭に立ってそれを積極的な推進してきたのは、習近平国家主席その人である」、「中国経済にとっては大きなメリットがあって、まさに意義重大」、その承認が棚上げされるのは異常事態だ。
・『国策レベルの大戦略だが  そして、EU・中国投資協定の中国にとってのメリットは何も経済領域のそれに限ることではない。習政権がこの協定にかけているもう1つの大いなる期待がある。 今、アジア地域の安全保障の面では、クワッドと呼ばれる日米豪印の4ヵ国連携が出来上がっていて、インド・太平洋における中国の侵略的な拡張を封じ込めようとしている。 そして今年になると、イギリス・フランス・ドイツの「欧州3大国」が揃い揃って海軍をアジア地域に派遣してきて、海からの「中国包囲網」に加わろうとしている。 その一方、中国国内で行われているウイグル人などへの人権侵害に対し、アメリカ・カナダ・イギリスなど多くの国々の政府と議会はそれを「ジェノサイド」と認定して厳しく批判したり制裁を加えたりしている。 言ってもれば、安全保障と人権保護という2つの領域においては今、米英日を中心とした自由世界の国々は一致団結して対中国包囲網を構築している最中である。その中で孤立感を深めた習近平政権としはて、何としても包囲網の突破を図りたい。 そして中国からすれば、経済の緊密化・一体化を土台にしてEUとの政治関係をより緊密なものにすることは、西側先進国の中国包囲網を打破するのに大きな戦略的な効果があるのであろう。 少なくとも、ドイツやフランスを含めたEU諸国の資本を中国に全面的に誘いこむことができれば、これらの国々は米英日主導の中国包囲網と一線を画さざるをえない。それだけでも、中国にとっては大きいな戦略的メリットがあるのである。 経済と国際政治の両面においてこれほど多くのメリットがあるから、中国の習政権にとって、EUとの投資協定の締結は実に意味重大であって、まさに国策レベルの重要なる戦略の一環である』、「経済と国際政治の両面においてこれほど多くのメリットがあるから、中国の習政権にとって、EUとの投資協定の締結は実に意味重大であって、まさに国策レベルの重要なる戦略の一環である」、「国策レベルの重要なる戦略の一環」が頓挫したのは外交上の重大な失点だ。
・『習近平、一世一代の大仕事  だからこそ習主席自身はイニシアチブをとってそれを積極的に推進した。そして2020年12月、中国がEU側に大幅な譲歩を行ったことの結果、双方が交渉の完結と成功を宣言して、投資協定の締結に合意した。 12月30日、習近平主席はただ1人で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長、ドイツのメルケル首相らを相手にテレビ会議に臨み、EUの首脳と一緒に投資協定の合意を宣言した。 その時の習主席の高揚感と満足感は半端ではない。まさに一世一代の大仕事を成し遂げた後のご満悦の様子であった。 そしてその日からの数日間、中国国内のメディアや関係者らは大変な興奮状態となって、「外交上の大勝利」だと自賛したり「来る新年への最高のプレゼント」だと持ち上げたりして、歓喜のお祝いムードを大々的に盛り上げていた。 軍事的に包囲されていて、人権問題で西側諸国からの袋叩きにあって深い孤立感を味わった中国人にとって、協定の合意はまさに未来に希望を与えた重大なる勝利であって、そして新年への最高のプレゼントなのだ』、「軍事的に包囲されていて、人権問題で西側諸国からの袋叩きにあって深い孤立感を味わった中国人にとって、協定の合意はまさに未来に希望を与えた重大なる勝利であって、そして新年への最高のプレゼント」、そんな「重大なる勝利」が何で無になってしまったのだろう。
・『EUのアリバイ作りに大報復してしまう  しかし、中国国内の勝利ムードは時期的にちょっと早すぎた。「議会」が単なる政権の飾り物である中国の場合とは違って、EUの場合、首脳たちが中国との間で合意に達したとしても、投資協定は議会の審議・批准を通過しなければ成立できない。そして、EU議会がこの投資協定を審議している最中の2021年3月、EUと中国との間で問題が生じた。 まずは3月22日、EUは新疆自治区で行われているウイグル人への人権侵害に対抗して、それに関わっている自治区の共産党幹部・公安幹部4人と公安局に制裁措置を発動した。EU加盟国への入国禁止や資産凍結は制裁措置の中身である。 筆者の私からすれば、EUのこの制裁措置はアメリカなどと比べれば生ぬるいというしかない。 制裁の対象はまず中国共産党中央指導部や中央政府の幹部を避けて、新疆の地方幹部に限定されている。新疆の地方幹部の中でも、自治区党委員会書記の陳全国氏こそはジェノザイドなどの人権侵害の現地責任者であってアメリカの制裁の標的にもされているが、EUの制裁はこの人物さえ避けていて、陳の部下の幹部4人に絞った。 EUの制裁は十分に中国政府に配慮した、半ばアリバイ作りのようなものであることがよく分かるが、本来、中国政府はそれに対して過剰に反応する必要は全くない。地方幹部4人が制裁されたことは中国政府にとって本当は痒くもなければ痛くもない。 その際、EUからの配慮に配慮して、制裁を単に黙殺するのか、あるいは軽い程度の反撃に止まるのかは、中国にとってもっとも賢明な反応の仕方である。特に、EUとの大事な投資協定が審議されている最中だからなおさらこうすべきである。 しかし意外というか案の定というか、この生ぬるい程度のEUの制裁措置に対し、中国側は激しい反応を示した。EUの制裁発表の当日に、中国政府が間髪も入れずにしてEU議会の議員や加盟国の学者など個人10人と4団体に対してEUと同様の制裁措置を発動した。 EUが中国の地方幹部4人に制裁をかけたのに対し、中国はEU議会の議員を含めた10人に報復制裁を発動した。倍返しを超えたところの「倍以上返し」の報復措置である。しかしどう考えて見てもそれは必要以上の過剰反応であって、単なるやり過ぎではないのか』、「EUの制裁は十分に中国政府に配慮した、半ばアリバイ作りのようなものであることがよく分かる」、にも拘らず、「中国は」「倍返しを超えたところの「倍以上返し」の報復措置・・・どう考えて見てもそれは必要以上の過剰反応」、外国では報復は慎重にするのが一般的だ。
・『習近平政権の首を絞めるのは習近平政権だ  今や「戦狼外交」と呼ばれるようになった習近平政権の外交スタイルからすれば、中国がこのような脊髄反射的な報復制裁に打って出るのは必至のことであろうが、習政権にとっての最大の誤算は、このような無遠慮の報復措置は、EU域内の世論とEU議会を激怒させて敵に回したことである。 中国が報復措置をとった直後から、EU議会は例の投資協定の審議を中止した。しかしそれ以来、中国側は事態の収拾や関係の改善に努めた痕跡はほとんどないし、EUの中での反中感情が高まる一方である。 こうして5月20日、EU議会はとうとう、圧倒的な賛成多数で投資協定の批准を凍結するに至った。 その結果、習政権が戦略的に大きな期待をかけている投資協定の行方はかなり危うくなって、中国人が大いに興奮して自賛した「外交上の大勝利」が水の泡になりかけているのではないか。 そして一番皮肉なのは、EUとの投資協定をこうして潰しかけているのは、この協定を喉から手が出るほど欲しがっている習政権自身であることだ。 EUからの生ぬるい制裁に対し短絡的な過剰報復を行ったことで、習政権は結果的に、自分たちの首を絞めることになっているのである。 中国古典の論語には「小不忍即乱大謀(小忍ばざれば則ち大謀を乱る)」という言葉がある。「小さなことで我慢できないようでは、遠大な計画を実現できない」という意味合いであるが、習近平政権がEUに対してやったことは、まさにこの言葉の意味を絵に描いているようなものだ。 EUの軽い制裁に対する過剰反応の報復は結局、習主席自身が企んでいる「EU取り込み」の「大謀」を台無しにしているのでしないかからだ。 EU・中国投資協定は最終的にどうなるかはまた分からない。EU議会の凍結がいずれか解除されることもありうるが、今のところではその可能性は非常に低い。 EU議会は中国が報復制裁を撤回しない限り凍結を解除しない方針であるのに対し、強硬姿勢一辺倒の習政権の体質からすれば、中国は報復制裁を自ら撤回するようなことはほとんど考えられない。将来のかなり長い期間において、投資協定が宙に浮いたままの状況となる公算が高い』、「一番皮肉なのは、EUとの投資協定をこうして潰しかけているのは、この協定を喉から手が出るほど欲しがっている習政権自身であることだ。 EUからの生ぬるい制裁に対し短絡的な過剰報復を行ったことで、習政権は結果的に、自分たちの首を絞めることになっているのである」、中国外交は戦略的で懐が深いと信じていた私の予想を見事に裏切ってくれた。
・『大局観のかけらもなし、不動の原則「戦狼外交」  しかしこの1件からは、中国の習近平政権の外交とはどういうものかはよく分かってくるのであろう。 西側諸国に対して「戦狼」的な強硬姿勢を貫くことは今、習近平外交の不動の基本原則となっている。 そのためには諸国のあらゆる「反中国行為」に対して、外交上に必要な柔軟性と冷静さを失って脊髄反射的な過剰反応を示していくのが中国外交の流儀となっているが、これでは上手な外交ができるわけはない。 仲間を増やして敵を減らすという外交の常道に反して、彼らは今、仲間を減らして敵を増やすだけの外交をやっているのである。 このような外交には大局観や戦略性といったものはもはやない。というよりも投資協定の場合のように、習政権は今、自分たちの策定した外交戦略を、自分たちの短絡的な過剰反応によって潰すようなことをやっているのである。 昔から、「したたかな中国外交」というのは日本のマスコミが中国外交に捧げる定番の賛辞であるが、今になって見ると、習政権の外交には「したたかさ」というものはどこにも見あたらない。彼らがやっているのは単に向こう見ずの無鉄砲外交であって、その場その場の脊髄反射外交でしかない。 「したたかな中国外交」という言葉は今、もはや死語となっているのである』、「西側諸国に対して「戦狼」的な強硬姿勢を貫くことは今、習近平外交の不動の基本原則となっている。 そのためには諸国のあらゆる「反中国行為」に対して、外交上に必要な柔軟性と冷静さを失って脊髄反射的な過剰反応を示していくのが中国外交の流儀となっているが、これでは上手な外交ができるわけはない。 仲間を増やして敵を減らすという外交の常道に反して、彼らは今、仲間を減らして敵を増やすだけの外交をやっているのである」、「彼らがやっているのは単に向こう見ずの無鉄砲外交であって、その場その場の脊髄反射外交でしかない。 「したたかな中国外交」という言葉は今、もはや死語となっている」、全ては「習近平」の思い上がりが招いた問題のようだ。

次に、6月30日付け東洋経済オンラインが掲載した作家の譚 璐美氏による「中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462344
・『台湾海峡や南シナ海での挑発行動、新疆ウイグル自治区や香港での人権侵害。中国の強硬姿勢が報じられない日はない。なぜここまでやるのだろうか。じつは彼らの頭のなかには、「立ち返るべき本当の中国領土」があるのだ。それを示した特殊な地図を、「国恥地図」という。作家の譚?美さんによる新刊『中国「国恥地図」の謎を解く』から、貴重な実物を入手、検証した記録を紹介する』、「国恥地」とは大げさな印象もあるが、何事も大げさな「中国」ならではの表現なのだろう。
・『中国の「恥」を描いた地図  「国恥地図(こくちちず)」というものがあると耳にした。1997年、「香港返還」の半年後のことだった。香港在住の友人によると、それは中国の古い地図で、復刻版が発売されて話題になっているという。 「国の恥を描いた地図」とは、なんとおぞましい名称だろう。そこには深い恨みと憎悪の念がこめられているようで、聞くだけで恐ろしかったが、怖いもの見たさから興味も湧いた。 ネットで探してみると、国恥地図には5、6種類のパターンがあり、過去100年間の戦争によって外国に奪われた中国の国土範囲を表した地図のようだ。戦前の中華民国の時代に作られたものらしいということもわかった。 無論、現在の国際基準に従ったものではなく、「領土」として示す範囲は実際の中国のゆうに2倍以上はあろうかという荒唐無稽な代物だ。こんな怪しげな地図を、いったいだれが、なんの目的で作ったのか。私は呆然とするばかりだった。 地図と言えば、ここ数年、中国は地図の表記に強いこだわりを表している。 あまり注目されなかったが、中国国務院は2015年11月、「地図管理条例」を制定して、「社会に公開する地図は、関係行政部門で審査を受けなければならない」として、国家による厳格な地図の審査制度を開始した。 2017年8月には、中国国内にある世界地図を調査した後、「中国が認めていない国境線が描かれている」などとして、3万点あまりの地図を一斉に廃棄した。具体的な処分の理由は、「台湾を国扱いしている(『中国台湾』と表記していない)」ことや、インド北部のアクサイチン地方の「国境線が誤っている(中国領になっていない)」ことなどを挙げている。 これ以後、外国人でも業務や観光で中国へ行った際、町の書店などで買った古地図や地図帳を国外へ持ち出そうとすると、税関で厳しい審査を受けることになった。もし税関が「違法な地図」だと判断すれば、没収されるだけでなく、罰金や禁錮刑になる恐れもあるというから、由々しき問題だ。中国へ行く際には、くれぐれも心しておく必要がある。 それにしても、今、なぜ中国はそれほど地図にこだわるのだろうか。 中国が領土拡張を目論んでいるからか。それとも香港で復刻版が発売されたという「国恥地図」と何か関係があるのだろうかと考えてみるが、見当もつかない。 その頃、私は長編ノンフィクション作品を書いており、それ以外のことは何も手につかなかった。ただ偶然にも、読んでいた資料の中から、かつて中国で「国恥」教育が実施されたという記述を見つけていた。『蒋中正先生年譜長編』という台湾で出版された本で、蒋介石にまつわる記録文書をまとめたものである。どうやら「国恥地図」もそれと関係しているようだった。 2019年3月、5年越しで書いた『戦争前夜――魯迅、蒋介石の愛した日本』が出版に漕ぎつけたのを機に、私は改めて「国恥地図」について調べてみることにした。 ネットを探して、驚いた。中国はおろか、日本やアメリカのサイトでも、ネット販売や古書店のリストから「国恥地図」という名称の地図が、ひとつ残らず消え去っているではないか。ウェブ検索で画像は出てくるが、現物が見当たらない。 中国政府が「地図管理条例」を定めたことで、中国の書店から姿を消したのなら、まだ分かる。だが、海外のサイトや古書店まで一斉に取り扱わなくなったのは、なぜだろう。中国のネット監視による妨害工作だろうか、それとも海外のサイトや古書店が、中国に忖度して自主的に取り下げたのか。謎はいよいよ深まるばかりだった』、「海外のサイトや古書店まで一斉に取り扱わなくなったのは、なぜだろう。」、不思議なこともあるものだ。
・『小学生用の地理教科書に  ただ幸いなことに、中国が「地図管理条例」を実施して間もない頃、私はたいして重要だとも思わずに、戦前の中国で使われていた小学校用の地理の教科書を1冊、古書店から手に入れていた。 古い本を見ると、つい買いたくなってしまうのは物書きの習性かもしれない。すぐには役立たないとわかっていても、今を逃したらもう二度と手に入らないかもしれないという強迫観念にかられて、反射的に買ってしまうのが習い性になっている。 この地理の教科書には一般的な「中国地図」があり、その裏に「中華国恥図」という名称の地図がある。もちろん教科書の1ページだから、詳細な情報が詰まった地図ではないかもしれないが、とりあえず、この国恥地図を観察することから始めることにした。 後のことだが、この地理の教科書こそ、実は、国恥地図の謎を解明するうえで重大な手がかりを与えてくれる資料のひとつだったと、判明するのである。もっともこの時点では、そうした展開が待ち受けているとは、予想すらしていなかった。 私はテーブルに積み上げた本の山から、ようやく目当てのものを捜し出した。 A4サイズの半分ほどで、単行本のサイズに近い(正確には19cm×13cm)。古い教科書だからひどく傷み、ページを開くだけで剥がれ落ちそうだった。私はまず大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった。 表紙には、赤い大きな文字で『小学適用本國新地圖』とある(「圖」は「図」の意味)。1933年に上海の世界輿地学社から発行された小学校用の地理の教科書である。 最初のページを開くと目次があり、続く「第一図」は二つ折りの「中華民国全図」だった。東アジア大陸の真ん中に中国が示されている。日本列島も右端に見える。その裏に、「第二図」として、同じ大きさの「中華国恥図」がある。これこそがお目当ての国恥地図だ』、「国恥地図」を「大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった」、とは手回しがいい。
・『驚愕するほかない「国境線」  何よりも目を引いたのは、中国を中心とした広大な地域をぐるりと囲んだ黒の破線と、その上に引かれた太い赤線だった。 日本周辺から見ていこう。赤線は日本海の真ん中を通り、種子島・屋久島をかすめたところで東側に急カーブし、沖縄を含む「琉球群島」を範囲内に収めながら南下する。台湾、「東沙(群)島」の岩礁も囲って進み、フィリピンのパラワン島を抜けたところで、再び急にスールー諸島を取り囲むために東へ寄っている。 ここからボルネオ島北部のマレーシア、ブルネイ、マレーシアとシンガポールのあるマレー半島すべて、そしてインド領のアンダマン諸島まで囲いこんでから、ようやく北上するのだ。 北上した先の陸地では、ミャンマーの西側を通り、ネパールとインド国境を進み、タジキスタンとアフガニスタン、ウズベキスタンやカザフスタンまで含んだ赤線は、中露国境を通ってモンゴルへ向かう。そしてモンゴルもすべて領内としたうえ、樺太すべて、最後に朝鮮半島をまるごと収めて、ようやく環を閉じる。 いくら中国そのものが広大といっても、この赤線が取り囲む範囲は、中国の面積のゆうに2倍を超えているだろう。数えてみると中国に近隣18カ国を加え、さらに日本を含む3カ国の一部を範囲内としている。果たしてこの赤線は、何を意味するものなのか。いったい、小学生たちに何を教えようとしていたのだろうか。 さらに拡大鏡を近づけてみると、この赤線に沿って、2mm四方ほどの小さな赤い文字で、その領土がいつ、どのように失われたかという短い説明書きがある。地図全体で35カ所の説明書きが確認できた。例えばサハリンの右側にはこうある。 「俄?一七九〇年後喪失日?」(ロシアが占領、1790年以後喪失、日本が占領) 地図左隅には「図例」があり、色分けした区分の帰属説明がある。 現有地=黄色俄(ロシア)属地=薄緑色英(国)属地=薄桃色 日(本)属地=薄黄色法(フランス)属地=水色自主国=濃い緑色 両属地=濃い緑色と薄桃色の二色 目が釘づけになったのは、その次にある2つの表記、「現今国界(げんこんこっかい)」と「舊時(旧時)国界(こっかい)」だった。 「現今国界」は二点鎖線(―・・―)で示され、現在の中国の国境線を示している。 「舊時(旧時)国界」は破線(――)で示され、その上に前述の赤い太線を重ねたもの。「旧時」とは、古い時代を意味し、「旧時国界」は、「古い時代の国境線」を示しているという』、なかなかよく出来ているようだ。
・『表向きは近代国家でも  つまり、地図には「現在」と「古い時代」の2つの国境線が示されていることになる。驚くべきことに、「古い時代」には、赤線で囲んだ広大な範囲がすべて中国の領土だったと主張しているのだ。 そして赤線と「現今国界」に挟まれた〝領土〟の差、これらを失ったことが、中国の「国の恥」だと訴えるのがこの「中華国恥図」のメッセージなのだ。 前述したように、第一図の「中華民国全図」と第二図の「中華国恥図」が、裏表に印刷されているのは、実に象徴的と言えるだろう。 繰り返しになるが、この教科書が発行されたのは1933年だ。表向きは、第1図のように、近代国家を打ち出した中華民国政府(1912年樹立)が国際(公)法に基づき、外国との条約を遵守して領土を規定していた。だが、その裏では、第2図にあるように、「古い時代」の国土意識が厳然として存在し続けており、それを子どもたちに教えていたことを、如実に示しているのである。 「中華国恥図」の次ページには、「中国国恥誌略」がある。国恥地図についての解説文で、2ページにわたって細かい文字でぎっしり書かれている。 いったいどのような事柄や歴史的事実を「国恥」だと主張しているのだろうか』、「「古い時代」には、赤線で囲んだ広大な範囲がすべて中国の領土だったと主張しているのだ。 そして赤線と「現今国界」に挟まれた〝領土〟の差、これらを失ったことが、中国の「国の恥」だと訴えるのがこの「中華国恥図」のメッセージなのだ」、なるほど。「いったいどのような事柄や歴史的事実を「国恥」だと主張しているのだろうか」、答えはないが、知りたいところだ。

第三に、10月18日付けNewsweek日本版が転載したロイター「 中国、8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き:」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/10/8-57.php
・『中国が今年8月、核弾頭を搭載できる極超音速ミサイルの実験を行い、その技術に米情報機関が驚きを示した。16日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が、5人の関係者の話として伝えた。 報道によると、中国軍は極超音速で滑空する物体を積んだロケットを打ち上げ、この物体が地球上を低周回軌道で移動しながら標的に向かい、目標から約24マイルの地点に到達した。この実験について「中国が極超音速兵器開発で目を見張るほどの進歩を見せ、米当局の認識のはるか先にあった」と、米情報機関から説明を受けた関係者が語ったという。 中国国防省はロイターからのコメント要請には回答していない』、この「ロケット」は「極超音速」なので、イージス艦などの通常の迎撃手段は無効なようだ。これに対処可能なの兵器はまだないが、開発されれば導入論が出てくるだろう。 
タグ:中国情勢 (軍事・外交) (その11)(習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!、中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった、中国 8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き) 現代ビジネス 石平 「習近平の「一世一代の大仕事」が凍結に…中国「戦狼外交」が“裏目”に出てきた!」 「7年間の歳月をかけて交渉を重ねてきた。EU側でそれを主導したのはドイツのメルケル首相であるのに対し、中国側で先頭に立ってそれを積極的な推進してきたのは、習近平国家主席その人である」、「中国経済にとっては大きなメリットがあって、まさに意義重大」、その承認が棚上げされるのは異常事態だ。 「経済と国際政治の両面においてこれほど多くのメリットがあるから、中国の習政権にとって、EUとの投資協定の締結は実に意味重大であって、まさに国策レベルの重要なる戦略の一環である」、「国策レベルの重要なる戦略の一環」が頓挫したのは外交上の重大な失点だ。 「軍事的に包囲されていて、人権問題で西側諸国からの袋叩きにあって深い孤立感を味わった中国人にとって、協定の合意はまさに未来に希望を与えた重大なる勝利であって、そして新年への最高のプレゼント」、そんな「重大なる勝利」が何で無になってしまったのだろう。 「EUの制裁は十分に中国政府に配慮した、半ばアリバイ作りのようなものであることがよく分かる」、にも拘らず、「中国は」「倍返しを超えたところの「倍以上返し」の報復措置・・・どう考えて見てもそれは必要以上の過剰反応」、外国では報復は慎重にするのが一般的だ。 「一番皮肉なのは、EUとの投資協定をこうして潰しかけているのは、この協定を喉から手が出るほど欲しがっている習政権自身であることだ。 EUからの生ぬるい制裁に対し短絡的な過剰報復を行ったことで、習政権は結果的に、自分たちの首を絞めることになっているのである」、中国外交は戦略的で懐が深いと信じていた私の予想を見事に裏切ってくれた。 「西側諸国に対して「戦狼」的な強硬姿勢を貫くことは今、習近平外交の不動の基本原則となっている。 そのためには諸国のあらゆる「反中国行為」に対して、外交上に必要な柔軟性と冷静さを失って脊髄反射的な過剰反応を示していくのが中国外交の流儀となっているが、これでは上手な外交ができるわけはない。 仲間を増やして敵を減らすという外交の常道に反して、彼らは今、仲間を減らして敵を増やすだけの外交をやっているのである」、「彼らがやっているのは単に向こう見ずの無鉄砲外交であって、その場その場の脊髄反射外交でしかない。 「した 東洋経済オンライン 譚 璐美 「中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった」 「国恥地」とは大げさな印象もあるが、何事も大げさな「中国」ならではの表現なのだろう。 「海外のサイトや古書店まで一斉に取り扱わなくなったのは、なぜだろう。」、不思議なこともあるものだ。 「国恥地図」を「大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった」、とは手回しがいい。 なかなかよく出来ているようだ。 「「古い時代」には、赤線で囲んだ広大な範囲がすべて中国の領土だったと主張しているのだ。 そして赤線と「現今国界」に挟まれた〝領土〟の差、これらを失ったことが、中国の「国の恥」だと訴えるのがこの「中華国恥図」のメッセージなのだ」、なるほど。「いったいどのような事柄や歴史的事実を「国恥」だと主張しているのだろうか」、答えはないが、知りたいところだ。 Newsweek日本版 ロイター 「 中国、8月に極超音速ミサイル実験 米情報機関は技術力に驚き:」 この「ロケット」は「極超音速」なので、イージス艦などの通常の迎撃手段は無効なようだ。これに対処可能なの兵器はまだないが、開発されれば導入論が出てくるだろう。
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