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電池(その1)(次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道、トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか、アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている)  [イノベーション]

今日は、電池(その1)(次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道、トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか、アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている)を取上げよう。なお、関連したテーマでは、電気自動車(EV)を8月18日に取上げた。

先ずは、4月22日付け東洋経済オンライン「次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/423933
・『カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量の実質ゼロ)実現のキーテクノロジーの1つが蓄電池だ。特に電気自動車(EV)の普及には現在主流のリチウムイオン電池を超えることが求められており、次世代電池の有力候補とされるのが全固体電池だ。電池は正極材、負極材と電解質で構成されるが、液体の電解質(電解液)を使うリチウムイオン電池に対し、全固体電池は文字通り、固体の電解質を使う。 全固体電池はリチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待されている。一方、そうした優位性を本当に実現できるのか疑問の声もある。全固体電池の材料研究で最前線に立つ東京工業大学・菅野了次教授に、全固体電池の開発の現状、課題などを聞いた(Qは聞き手の質問、Aは菅野氏の回答)』、「リチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待」、興味深そうだ。
・『リチウムイオン電池を超えるのに四苦八苦  Q:全固体電池になればEVは航続距離が飛躍的に延びる、充電時間が短縮されるなどと言われています。さらに全固体電池を搭載したEVを2022年にも市場投入すると発表したメーカーもあります。一方、全固体電池が現行のリチウムイオン電池を大きく上回る性能を実用できるか疑問の声もあります。全固体電池で飛躍的な性能向上は可能なのでしょうか。また研究室レベルではどこまで「見えている」のでしょうか。 A:明確に答えるのは難しい質問だが、材料の基礎研究の立場から説明したい。 まず、電池というのは正極と負極と電解質の組み合わせでできている。正極と負極でエネルギーが決まり、電解質が抵抗になる。電池は発明されてから長い期間、電解質には水溶液を使っていた。それが有機溶媒系に変わったのがリチウムイオン電池だ。これで使える電圧が一気に上がり、エネルギー密度(体積や重量あたりの容量)は格段に高まった。リチウムイオン電池は本当に革新的な電池だ。 次のステップとして、多くの人々がリチウムイオン電池を超える電池を作ろうと試みており、1つの可能性として固体電池がある。しかし、リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している。 Q:電解質を固体にすれば性能が大きく向上するのではないのですか。 A:エネルギー密度は基本的に正極と負極で決まるので、電解質が固体になったからといって、基本的にそんなに変わるわけではない。固体電池を研究してきたわれわれは固体電池にメリットがあると言ってきたが、なかなか示すことができていないのが実情だ。) Q:あまりメリットがないのですか……。 A:(電解質を)固体にするメリットとして期待されたのは、まず液漏れがしないことだ。有機溶媒は液漏れすると揮発性で着火して危険なので、それがなくれば電池がバッと燃えることもなくなるだろう、と考えられる。 さらに積層が可能になる。正極と負極の間の電解質が液体だと積層できない。固体にすると積み重ねることができるので、パッケージにした場合にエネルギー密度が上がるというメリットが考えられる。 電池に電流が流れる際には、電解質を介して正極と負極の間をリチウムイオンが移動する。液体の電解液ではマイナスイオンとプラスイオンの両方が動くのでリチウムイオンが実際に動いている量はそれほど大きくない。 なおかつ、電解質が液体の場合、リチウムイオンの電極と電解質の界面(境界面)での移動時の抵抗が大きい。リチウムイオンが分厚いコートを着ており、反応時にはこのコートを脱がないといけないといったことをイメージするといい。そのコートを脱ぐときの抵抗が非常に大きい。 電解質が固体になると、このコートがいらないのでリチウムイオンが速く動き、大きな電流を取れる、すなわちパワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった』、「リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している」、「パワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった』、研究者らしく正直だ。
・『研究室ではリチウムイオン電池を超える可性  ただ、リチウムイオン電池に使われている電解液と同等もしくはそれより低い抵抗の固体の電解質が見つかっている。そういう抵抗の低い物質を用いると、固体電池がリチウムイオン電池以上の特性を持つことができるかもしれないという状況まできた。それが現状だ。研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている。 Q:固体にしたからエネルギー密度が上がるわけではなく、固体によって液体の欠陥を回避できるのでエネルギー密度を上げることができる、と理解すればよいのですか。 A:電池が固体になるメリットとしてはまず大きな電流が取れる。ただし、それはプロセスがそれなりに進展した場合。パワーを上げることができ、充電時間が短くなる。 また、低温や高温に強くなる。リチウムイオン電池はマイナス30度で凍るが固体なら凍らない。リチウムイオン電池は基本的には60度以上の場合は冷却装置がいるが、固体電池なら冷却装置がいらなくなる。100度でも150度でも大丈夫だ。 さらに、電解質がもう少し改善されればエネルギー密度そのものも上げられるのではないかと考えている。リチウムイオン電池では電解液の抵抗が大きいために正極と負極を薄いシートにして電極内の抵抗を減らしている。固体電池であれば電極を厚くできる可能性がある。ただし、これはまだ可能性の話だ。 正極と負極と電解質の材料の組み合わせで電池の性能は決まる。リチウムイオン電池は基礎研究段階で、ほぼすべての組み合わせは出尽くした感がある。 一方、固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている。現在は液体の製造プロセスと似たプロセスで固体電池を作るのが主流だが、固体電池に最適化した製造プロセスを見つけることでもっと高い性能を目指せるかもしれない。そこは製造技術の開発の課題になってくる』、「研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている」、「固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている」、大いに頑張ってもらいたいものだ。
・『試験電池では約3倍のエネルギー密度も  Q:リチウムイオン電池は限界に近づいているが、固体電池にはまだ可能性がある、ということですね。今見えている範囲でエネルギー密度や充電時間(の短縮)がどこまで可能と感じていますか。 A:材料に関しては、2016年に正極材料当たりの重量で比較してリチウムイオン電池よりも2倍以上の出力が可能になることを実験で示した。試験電池ではエネルギー密度が約3倍、充電性能が約1.6倍といった性能が出ている。これらは車載用を想定したもので、車載用以外でもいろいろな研究成果が出ている。 Q:研究室レベルではリチウムイオン電池の性能を上回る結果が出ている、と。 A:国家プロジェクトではリチウムイオン電池よりはるかに高い目標を打ち出している。死に物狂いでやっており、多分数年後に達成できる。ただ、それを実用の電池に展開していくには別の課題がある。 Q:別の課題とは? A:まずプロセス、製造技術の問題がある。安全性の問題もある。いったん、電池ができても実用化までにはさまざまな課題をクリアする必要がある。 Q:電解質が固体になれば安全になるのではないのですか。 A:「安全だ」と言いたいところだが、電池はエネルギーの缶詰であり、気をつけて使わないといけない。固体電池でEV用に期待されているのは硫化物系の電解質だが、硫化水素の問題もあり安全性に気を配る必要がある。 ある程度の危険は当然ある中で、材料や電池の構成などで危険を最小化する技術開発が行われている。コストをかければ解決できる問題がほとんどだと考えるが、市場で許容されるコストで安全性をクリアできるかは実用化する企業の判断になる。 リチウムイオン電池にも安全性の規格があるが、固体電池でも安全性の規格作りが必要だ。固体電池なら温度特性など安全性の基準を少し緩くできるかな、とは思う。それは期待であり、実際に大きな電池を作って危険性を潰してみないとわからない。リチウムイオン電池も、今の安全性の規格ができあがるまでにさまざまな取り組みをしてきた。 つまり、電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない。電池は内部短絡(電池内部で正極と負極が接触すること)がいちばん恐ろしい。内部短絡が起こると破損や発火が起きやすい。固体電池では内部短絡の反応がマシになってほしい』、「試験電池では約3倍のエネルギー密度も」、「電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない」、なるほど。
・『エネルギーの缶詰。ある程度の危険はある  Q:「全固体ならば安全」と安易に取り扱ってはいけないということですね。 その通りだ。電池はエネルギーの缶詰である以上、乾電池でも鉛蓄電池でも使い方次第では危険になる。それでも電池を使うメリットは非常に大きい。全固体電池はリチウムイオン電池より性能が非常によくなる可能性がある。安全性もその1つだ。ただし、確立するには時間がかかる。 リチウムイオン電池が実用化されたのは1991年。最初はビデオカメラに入った。その後、いろいろな製品に使われて現在は自動車にも使われるようになった。ここまでに20年から30年かかった。この間にいろいろな経験をしてきた。リチウムイオン電池はすばらしい電池だがまだ課題がある。 材料の開発は1991年からもっと前にさかのぼる。ノーベル化学賞を受賞したスタンリー・ウィッティンガム氏の研究は1976年の成果。同じくノーベル化学賞受賞の吉野彰さんたちの研究は1980年代のものだ。材料研究の期間が20年から25年。世の中に出てからさらに20年から30年かけて自動車にまで使われるようになった。電池はそれくらい進化のスピードが遅い。使い続けながらいろんな危険性を潰して安心して使えるようにしていくデバイスだ。 固体電池も似たような道をたどるだろう。リチウムイオン電池は素晴らしい電池だがこの先50年、100年を支える電池なのか。そうは思わない。では、次は何になるかというとさしあたり全固体電池に期待がある。 Q:リチウムイオン電池の時間軸に当てはめると、全固体電池の材料開発はどのあたりにあるのでしょうか? A:リチウムイオン電池でいえば吉野さんたちのプロジェクトが成果が出た1985年くらいのレベルまでは来ているのかな、と。当時の時間軸よりも開発が速く進むとすれば5年以内には実用化できるだろう。 Q:中国のNIOは近いうちに固体電池を搭載し飛躍的に性能が向上したEVを出すと言っています。 A:航続距離を延ばすなら電池を多く積めばいい。発想の転換をすれば基準はいくらでも変わる。それに、固体といっても、液体から固体の間にいろんなレベルがあるので、その中間状態の電池を含めて固体と呼ぶこともできる。デバイス側、EVの性能要求を満たすならそういう電池もアリだろう。 Q:全固体電池の実用化に向けては、電極と電解質をどう接合するかが難問といわれます。 研究室レベルの電池の動作ではあまり問題になっていない。だが、実用化に当たっては大きな問題だと認識している。結局、電極と電解質の境界面、界面の問題だ。電池の電気化学反応は界面で起こるので、まず電極と電解質をきちんと接合させる必要がある。そのうえで、界面で高速に反応させなければならない、という2つ課題がある』、「リチウムイオン電池でいえば吉野さんたちのプロジェクトが成果が出た1985年くらいのレベルまでは来ているのかな、と。当時の時間軸よりも開発が速く進むとすれば5年以内には実用化できるだろう」、「5年以内には実用化できるだろう」とは嬉しい話だ。
・『20年代後半に市場の主流を目指す  われわれ基礎研究者が注目しているのは、接合した後、いかにそこを高速でイオンを動かすか。電極表面に別の物質をコートするなどして、電極と電解質の界面でリチウムイオンを高速で動かすことで「解決できるだろう」と主張している。 もう1つ、界面の接合をいかにうまくとるか、という工学的な課題がある。これはなかなか難しい。われわれ基礎研究者は「柔らかい材料を使って押さえつけたらいけるだろう」と考える。硫化物の場合、幸い柔らかいので少しの圧力でもうまく接合できる。ただ、工学の研究者は実際の製品を作る場合や、何十年も使い続ける際に課題が生じるので、「そんなにうまくいくわけがない。何とかしてくれ」と言う。 完全に問題を解決するのは難しいが、電極と電解質の材料の最適な組み合わせによって一定程度は解決していけると考えている。 Q:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の全固体電池のプロジェクトでは第1世代の全固体電池が2020年代後半から車載用蓄電池市場で主流となることを想定しています。開発の現状からすると、市場で主流になるにはまだまだ時間がかかるのではないでしょうか? それはNEDOに聞いていただきたいが、スケジュールどおり粛々と進んでいる。目標は変わっていない』、「「NEDO」が「第1世代の全固体電池が2020年代後半から車載用蓄電池市場で主流となることを想定」、しているのは、学者の見方というより政治的なメッセージのようだ。

次に、11月13日付け東洋経済Plus「トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28791
・『「次世代電池」の筆頭格、全固体電池。現在のリチウムイオン電池の性能を飛躍的に向上させることが期待されているが、現時点でどこまで実現できているのか。 EV(電気自動車)の競争力を飛躍的に高める、“夢の電池”――。 そう期待されてきた次世代電池の筆頭格が、全固体のリチウムイオン電池だ。 全固体電池とは、電池の正極と負極の間にあり、リチウムイオンが移動して電気を流す「電解質」に、現在使われている液体ではなく固体の材料を用いたものだ。 研究機関などの実験では、全固体電池は液系の電池と比べて複数のメリットがあることが分かっている。電解質が固体であることにより重量や体積あたりのエネルギー量(エネルギー密度)を高められるため航続距離を長くでき、燃えにくい。EVの充電時間が短くなり、寿命も長い。さらに、電池が高温になっても耐えられるため、車載電池の劣化を防ぐために必要な冷却機構も不要になる。 これが実用化されればEVの抱える課題の解決につながるとあって、開発競争はここ数年激しさを増してきた。電池メーカーや自動車メーカーに加え、素材メーカーやスタートアップも相次ぎ参入している。関連特許の出願数などで先頭集団を走っているのは、日本のトヨタ自動車』、「トヨタ」と提携した「パナソニック」はこれには参加しないようだ。
・『トヨタ「EVへの投入には課題」  が、そのトヨタから衝撃的な発表があった。 「現時点では、全固体電池をハイブリッド車(HV)に活用することが性能的には一番近道だ」 今年9月にトヨタ自動車が開催した電池戦略の説明会。登壇した開発トップの前田昌彦チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)は、トヨタが2020年代前半の実用化を目指す全固体電池を、EVではなくまずHV向けに投入する方針であることを明らかにした。全固体電池はイオンの動きが速く充電と放電を早くできることから、HV向けの電池として適している、というのがその理由だ。 一方で、全固体電池のEVへの投入については「技術課題がかなりある」(前田CTO)とし、早期の実用化には慎重な姿勢を示した。 課題は大きく2つ。EVに搭載するにはエネルギー密度がまだ十分でないこと。そしてもう1つが、電池の寿命に問題があることだ。 だがそもそも、全固体電池は長寿命なのがメリットとされていたはずだ。それにもかかわらず、寿命に問題があるとはどういうことなのか。 原因は、電池の充放電を繰り返すことで固体の電解質が収縮し、電極に用いられる材料との間にすき間が生じてしまう点にある。すると、イオンが正極と負極の間を通りにくくなってしまい、電池の劣化が進む。 この課題解決に向けて、トヨタはすき間の発生を抑える材料を開発中だ。前田CTOは「新材料を見つけられれば(実用化が)すごく早まる可能性があるし、見つからなければ時間がかかる。正直、楽観できる状況ではない」と話す。 全固体電池の開発でトップを走るトヨタですら難儀するところに、この技術の難しさが透けて見える。 全固体電池をHVから採用するというトヨタの判断について、車載電池に詳しい名古屋大学の佐藤登・客員教授は「HVでは搭載されている電池容量の40~60%の中央部分で小刻みに充放電を行うので、電池容量を広範囲で使うEV用と比べて電池の膨張収縮が緩和される。結果として電池の劣化が抑制されることになり、合理的な判断だ」と話す。 経営コンサルティング会社のアーサー・ディ・リトル(ADL)・ジャパンの粟生真行プリンシパルも「全固体電池の市場実績を積むという点で、HVから投入することは手堅い」と評価する。 走行中にもし全固体電池の機能に問題が生じても、HVであればエンジンで走り続けることができる。一方、EVに搭載してもしトラブルが起これば、ブランドの毀損も含めてダメージが大きいからだ』、「全固体電池」をまずは「HV」に利用するというのは、確かに合理的な選択だ。
・『高い実用化のハードル  実用化に向けた課題は、エネルギー密度や寿命の短さだ「けではない。 全固体電池の開発を支援する国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」によれば、全固体電池のメリットとして指摘される燃えにくさや出力性能の高さなども、実際の電池で実現できるかは検証中の段階だという。航続距離の長さにつながるエネルギー密度も、今のところは現行のリチウムイオン電池と変わらない。 現時点で実証が済んでいるのは、「高温で劣化しにくい」(NEDOの古川善規スマートコミュニティ・エネルギーシステム部部長)という点だけだという。 製造技術にも難しい課題がある。全固体電池に用いられている硫化物系の電解質は、水と結合すると有害な物質である硫化水素が発生する。そのため、製造設備では空気中の水分と反応しないよう厳密に湿度を管理する必要があり、コストがかさむ。 NEDOの古川氏は「全固体電池はゲームチェンジにつながる技術ではあるが、量産効果でコストを下げて、徐々に現在の電池を置き換えていくシナリオにならざるをえない」と語る。 NEDOでは、市場シェアにおいて2020年代半ば以降に現行の電池から全固体電池にシフトするというロードマップを掲げてきたが、「今のところ遅れ気味だ」(古川氏)。 100億円の予算をつけたNEDOのプロジェクトでは、リチウムイオン電池の研究を行うLIBTEC(リブテック)を中心に行われている開発に、トヨタのほか、2020年代後半に全固体電池の実用化を目指す日産自動車やホンダも参画している。 トヨタが目下直面する、電池の劣化を招くすき間の問題をはじめ、電池の基礎的な構造の開発はプロジェクトに参加する各社が協調して行う。一方、電池の最終性能に直結する部分は、各社が独自に進める競争領域だ。 プロジェクトの最終年度は2022年度で、足元では開発された第1世代の試作品の性能を評価中だという。 目指すのは、重量あたりのエネルギー密度が既存のリチウムイオン電池の2倍程度の全固体電池を開発することだ。実現すれば、EVに搭載する電池容量を半分にできる。たとえば、50kWh(キロワット時)の電池であればこれまで250kg搭載する必要があったところを、125kgに減らせる計算だ。 製造コストは2030年時点で1kWhあたり1万円を目指しており、現行のリチウムイオン電池とほぼ変わらない。ただ計画通り高いエネルギー密度を実現できれば車両の重さを軽くすることができ、電費面などでのメリットは大きい』、「NEDOのプロジェクト」の進捗は「今のところ遅れ気味だ」。「重量あたりのエネルギー密度が既存のリチウムイオン電池の2倍程度の全固体電池を開発することだ。実現すれば、EVに搭載する電池容量を半分にできる」、大きなメリットだ。
・『中国・NIOの全固体電池はホンモノか  海外でも、全固体電池の実用化に向けた動きは活発だ。 いち早く、2022年の10〜12月期にも全固体電池を搭載したEVを投入すると発表しているのが中国の上海蔚来汽車(NIO)だ。同社は、フラッグシップモデル「ET7」で150kWhの電池を搭載したモデルを発売する計画だ。航続距離は1000km超と、ガソリン車に負けない長距離を走れる。ただ、NIOが開発している全固体電池について日本の電池技術者たちは「全固体というよりは、電解質がゲル状の『半固体電池』なのではないか」と口をそろえる。 欧米の自動車メーカーも、勃興する全固体電池のスタートアップ企業へ出資し共同で実用化を狙っている。 ドイツのBMWやアメリカのフォード・モーターは、アメリカのスタートアップ企業で全固体電池を開発するソリッドパワーに出資し、供給を受ける計画だ。 独フォルクスワーゲン(VW)も、アメリカの新興勢・クアンタムスケープとともに2024年にも全固体電池の商用生産を始め、2025年以降に量産型のEVを発売する予定だ。 両社は年内にも全固体電池の試験生産ラインの建設場所を決定する方針で、ドイツ北部が有力候補だ。生産能力は当初は年間1GWhから始め、20GWhを追加する計画。EVに必要な台数に換算すると、数十万台分を賄える生産能力だ。 クアンタムスケープの開発する全固体電池の重量あたりのエネルギー密度は、1kgあたり300~400Wh超と、現行の電池の2倍程度を実現しているようだ。同社はEVの航続距離は最大8割延ばせると説明する。 また、38万km走行しても当初の電池容量の8割を維持できるという驚異的な性能を持つと自信を示す。VWによれば、自社のEVに搭載すれば、航続距離を3割延ばせ、450km分を充電するのに必要な時間は現在の半分以下の12分に減らせるという。 VWで電池開発を率いるフランク・ブローメ氏は「全固体電池はリチウムイオン電池開発の最終決戦だ」と言い切る』、「クアンタムスケープの開発する全固体電池の重量あたりのエネルギー密度は、1kgあたり300~400Wh超と、現行の電池の2倍程度を実現しているようだ。同社はEVの航続距離は最大8割延ばせると説明する。 また、38万km走行しても当初の電池容量の8割を維持できるという驚異的な性能を持つと自信を示す」、日本よりずいぶん進んでいるようだ。
・『焦点はコスト  焦点となるのが、全固体電池のコストを現行の電池と比べてどこまで引き下げられるかだ。 VWの場合は、液系リチウムイオン電池の低コスト化を進めており、2030年までに現行比で半減を目指している。EV販売世界首位のテスラもコストの半減を目指し、新型電池「4680」の開発を進めている。 前出のADLジャパンの粟生氏は「リチウムイオン電池も進化する中、全固体電池のEV向け投入は、コスト・性能等で大きな優位性がない限り市場の訴求力が弱く、現時点では難しい」と指摘する。 全固体電池が車載電池の真のゲームチェンジャーになるためには、現在のリチウムイオン電池を圧倒的に凌ぐ性能と価格競争力が求められそうだ』、世界的に激化している「全固体電池」開発競争が車載電池の真のゲームチェンジャーになるため」の「焦点はコスト」のようだ。

第三に、10月29日付け東洋経済Plus「アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28660#:~:text=%E3%80%8C%E4%B8%A1%E7%A4%BE%E3%81%A7%E7%B5%84%E3%82%80%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C,%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%8C%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%81%88%E9%9A%A0%E3%82%8C%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82&text=%E6%98%A8%E5%B9%B4%E3%80%81%E5%90%88%E5%BC%81%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E8%BB%8A%E8%BC%89%E9%9B%BB%E6%B1%A0,%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
・『「両社で組むことが最善の選択」として電池の合弁会社を立ち上げたが、方針のすれ違いが見え隠れする。 よそよそしい。昨年、合弁による車載電池の新会社を始動させたトヨタ自動車とパナソニックが、だ。 10月18日、トヨタはアメリカに電池工場を初めて建設すると発表した。9月には、2030年までに電池関連で設備に1兆円、開発に5000億円を投じる計画を発表しており、その一環でアメリカにおける車載電池生産に約3800億円を振り向ける。 新工場の運営を担う新会社にはトヨタが90%、豊田通商が10%出資し、トヨタグループが単独で運営する形を取る。2025年からの稼働を目指す(建設場所や生産能力は非公表)。 この計画には1つの疑問が残る。車載電池の開発・製造を行うトヨタとパナソニックの合弁企業、プライム プラネット エナジー&ソリューションズ(PPES)の名前がないからだ。同社は、トヨタが51%、パナソニックが49%を出資している。 当時、パナソニックはEV専業メーカーのテスラ向け事業での巨額投資を回収できておらず、単独で大規模な設備投資を続けることは難しいと判断。一方、トヨタは電動車の需要拡大を見据え、実質的な内製化で競争力を高める狙いがあり、PPESの設立に至った。 合弁会社にはパナソニックが持っていた国内3工場と中国・大連市の工場が移管されたが、アメリカに拠点はない。アメリカでの電池供給でも一定の役割を担うはずだったPPESが関与していないことについて、トヨタ幹部は「パナソニックにはいろんな企業と組んでいる事情もあり、51対49の資本関係で期待する投資の規模感やスピード感に賛同してもらえなかった」と話す』、「パナソニックにはいろんな企業と組んでいる事情もあり」、とはいえ、参加を見送ったのは解せない。
・『「アメリカはトヨタの戦略」  トヨタにとって北米は年間約280万台を販売する最重要市場。すでに約25%はハイブリッド車(HV)中心の電動車だが、30年には70%(15%が電気EVと燃料電池車、55%がHVとプラグインHV)に増えると想定している。 EVに搭載される電池の容量はHVの50~100倍となるため、EVの販売が本格化すると、莫大な量の電池が必要になる。加えて、電池は現状EVの製造コストの3~4割を占めるほか、安全性確保のために輸送コストもかさむ。現地でいかに安く安定的に電池を調達できるかが、他社との競争でカギを握る。 北米では米系自動車メーカーが韓国系電池メーカーと組み大型電池工場を建設する動きが加速している。ゼネラル・モーターズはLGエナジーソリューション、フォードモーターはSKイノベーションと提携。欧米系のステランティスはLG、サムスンSDIとそれぞれ組む。米中デカップリング(分断)で中国系電池メーカーのアメリカ進出が難しい中、韓国系電池メーカーが勢いづいている。 そうした動きをトヨタも警戒している。一般に電池工場の建設には2~3年を要する。補助金など優遇措置を得るうえでも、進出する州政府との調整が欠かせない。トヨタは2025年頃から電池の生産能力増強のペースを上げる計画だ。周回遅れとならないよう、PPES抜きで事実上“単独”でアメリカの工場建設に踏み切った形だ。 パナソニックで電池事業を担うエナジー社が10月25日に開いた事業説明会で、只信一生社長CEOにトヨタのアメリカの電池工場建設について聞くと、「トヨタの戦略なので、コメントする立場にない」と述べるにとどまった。 前出のトヨタ幹部が「パナソニックはいろんな企業と組んでいるから」と述べたその代表格がテスラだ。パナソニックはPPES設立後もテスラ向けの円筒形電池事業を自社に残し継続している。パナソニックは2021年にテスラと共同運営するネバダ州の電池工場の生産能力を100億円投じて1割引き上げた。 欧州でも電池工場の新設を検討中だ。テスラが年内の稼働を予定するドイツ工場向けの供給が念頭にある。テスラはアメリカのテキサス州にも新工場を建設中で、パナソニックにも協力を求めている。 もともとパナソニックはテスラに電池を独占供給するパートナーだったが、テスラが近年、車載電池世界首位の中国・CATL(寧徳時代新能源科技)や2位のLGエナジーソリューションとも提携したことで状況は一変。現状、CATLやLGは電池をテスラの中国・上海工場向けに供給するが、ほかの地域でも供給を始める可能性は十分ある。 パナソニックでテスラ事業を担当する佐藤基嗣副社長は「(投資の)優先順位は北米が1番で、次が欧州」とかねて話している。電池事業は、順調に販売台数を伸ばすテスラ向けを最優先するとなれば、PPESでの展開には慎重にならざるをえない。そうした事情が、投資を急ぎたいトヨタの不満を招いたのではないか。 新会社設立を発表した2019年、トヨタの好田博昭氏(現PPES社長)は「電池の性能を高めながら量を拡大するうえでは両社で組むことが最善の選択肢」と語っていた。が、すき間風が吹いたアメリカの電池工場投資の一件で、合弁会社の期待値は急速にしぼんでしまったようにみえる』、「EVに搭載される電池の容量はHVの50~100倍となるため、EVの販売が本格化すると、莫大な量の電池が必要になる。加えて、電池は現状EVの製造コストの3~4割を占めるほか、安全性確保のために輸送コストもかさむ。現地でいかに安く安定的に電池を調達できるかが、他社との競争でカギを握る」、「電池工場の建設には2~3年を要する。補助金など優遇措置を得るうえでも、進出する州政府との調整が欠かせない。トヨタは・・・周回遅れとならないよう。、PPES抜きで事実上“単独”でアメリカの工場建設に踏み切った形だ」、他方、「パナソニック」は「順調に販売台数を伸ばすテスラ向けを最優先するとなれば、PPESでの展開には慎重にならざるをえない」、なるほどスレ違いも生じるワケだ。
タグ:電池 (その1)(次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道、トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか、アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている) 東洋経済オンライン 「次世代電池の最有力候補「全固体電池」の現在地 研究室では一部成果も、実用化までは茨の道」 「リチウムイオン電池よりも高性能(大容量、高出力など)が可能で、安全性も高まると期待」、興味深そうだ。 「リチウムイオン電池があまりにもすばらしいので、なかなかそれを超えることができず、われわれも四苦八苦している」、「パワーを上げることができるのではないか、充電時間が短くできるのではないか、と考えられた。もっとも、これまで研究してきたものの、実際にはあまりメリットがなかった』、研究者らしく正直だ。 「研究室レベルでは大きな電流が取れることがわかった。それをどう実用化するかでいろいろなメーカーや国家のプロジェクトがトライしている」、「固体電池はまだリチウムイオン電池より性能が低いものの、材料の組み合わせ次第で性能をもっと上げられるのではないか、と考えている」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 「試験電池では約3倍のエネルギー密度も」、「電池である以上、全固体電池であろうが安全には気をつけないといけない」、なるほど。 「リチウムイオン電池でいえば吉野さんたちのプロジェクトが成果が出た1985年くらいのレベルまでは来ているのかな、と。当時の時間軸よりも開発が速く進むとすれば5年以内には実用化できるだろう」、「5年以内には実用化できるだろう」とは嬉しい話だ。 「「NEDO」が「第1世代の全固体電池が2020年代後半から車載用蓄電池市場で主流となることを想定」、しているのは、学者の見方というより政治的なメッセージのようだ。 東洋経済Plus 「トヨタが衝撃の発表「EV投入には課題がある」 大検証!夢の「全固体電池」は実際どこまでスゴいのか」 「トヨタ」と提携した「パナソニック」はこれには参加しないようだ。 「全固体電池」をまずは「HV」に利用するというのは、確かに合理的な選択だ。 「NEDOのプロジェクト」の進捗は「今のところ遅れ気味だ」。「重量あたりのエネルギー密度が既存のリチウムイオン電池の2倍程度の全固体電池を開発することだ。実現すれば、EVに搭載する電池容量を半分にできる」、大きなメリットだ。 「クアンタムスケープの開発する全固体電池の重量あたりのエネルギー密度は、1kgあたり300~400Wh超と、現行の電池の2倍程度を実現しているようだ。同社はEVの航続距離は最大8割延ばせると説明する。 また、38万km走行しても当初の電池容量の8割を維持できるという驚異的な性能を持つと自信を示す」、日本よりずいぶん進んでいるようだ。 、世界的に激化している「全固体電池」開発競争が車載電池の真のゲームチェンジャーになるため」の「焦点はコスト」のようだ。 「アメリカの電池工場投資ですれ違い トヨタとパナの間に「すき間風」が吹いている」 「パナソニックにはいろんな企業と組んでいる事情もあり」、とはいえ、参加を見送ったのは解せない。 「EVに搭載される電池の容量はHVの50~100倍となるため、EVの販売が本格化すると、莫大な量の電池が必要になる。加えて、電池は現状EVの製造コストの3~4割を占めるほか、安全性確保のために輸送コストもかさむ。現地でいかに安く安定的に電池を調達できるかが、他社との競争でカギを握る」、「電池工場の建設には2~3年を要する。補助金など優遇措置を得るうえでも、進出する州政府との調整が欠かせない。トヨタは・・・周回遅れとならないよう。、PPES抜きで事実上“単独”でアメリカの工場建設に踏み切った形だ」、他方、「
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