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中国経済(その13)(中国から外国企業が「大脱出」する予兆が見え始めた 駐在員は歓迎されなくなった、三峡ダム2題:世界が騒いだ中国・三峡ダムが「決壊し得ない」理由、決壊のほかにある、中国・三峡ダムの知られざる危険性) [世界経済]

中国経済については、10月25日に取上げた。今日は、(その13)(中国から外国企業が「大脱出」する予兆が見え始めた 駐在員は歓迎されなくなった、三峡ダム2題:世界が騒いだ中国・三峡ダムが「決壊し得ない」理由、決壊のほかにある、中国・三峡ダムの知られざる危険性)である。

先ずは、10月26日付けPRESIDENT Onlineがニューズウィーク日本版を転載した「「ニューズウィーク日本版」現地取材:中国から外国企業が「大脱出」する予兆が見え始めた 駐在員は歓迎されなくなった」を照会しよう。
https://president.jp/articles/-/51153
・『<人質外交に新たな規制、そして「自給自足」体制の構築。中国に限界を感じる外資企業の幹部があげる悲鳴が聞こえ始めてきた:メリンダ・リウ> 中国の特色ある企業ミステリー——沈棟の著書はそんな本だ。沈と元妻の段偉紅は、かつては全てを手に入れた大金持ちだった。だが温家宝前首相の親族関連の資産をめぐり、段の名前がニュースの見出しになった。そして2017年9月、段は消息を絶った。 沈は外国に移住し、中国の富裕層と権力者の汚職を告発する回顧録を書いた。本の出版直前、段は出し抜けに元夫に電話して出版中止を懇願した。さもないと息子が危険だ、と。 その後『レッド・ルーレット——現代中国の富・権力・腐敗・報復についてのインサイダー物語』は出版され、評判を呼んだ。中国のVIPに焦点を当てた内容だったが、外国人の経営幹部も警告を読み取った。中国の「人質外交」である。 現地駐在の経営幹部は「中国での潜在的ビジネスパートナーが4年間も行方不明になりかねない」現実を認識しつつあると、米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのアジア安全保障イニシアチブ上級研究員のデクスター・ロバーツは言う』、「「中国での潜在的ビジネスパートナーが4年間も行方不明になりかねない」現実を認識しつつある」、のであれば、商売上がったりだ。
・『相次ぐ規制強化とスローガンの刷新  外国人経営者が不安と混乱を覚えるのも無理はない。中国では今年に入ってから、規制強化とスローガンの刷新が相次いでいる。テクノロジー業界の大物、暗号資産、過剰なスター崇拝、外国への依存度が高過ぎるサプライチェーンなど、締め付けのターゲットはさまざまだ。 8月には、左派ブロガーの李光満が「深遠なる変革」を予言した。「資本市場は成り金資本家の天国ではなくなる。文化市場は女々しい男性アイドルの天国ではなくなり、ニュースや評論は……欧米文化を崇拝することはなくなるだろう」 この予言が話題になると、一部の政府当局者は事態の沈静化に動いた。財政・通商担当の劉鶴副首相は、「民間企業、イノベーション、起業家の発展を支援する」と宣言し、中国の都市雇用の80%は民間企業が生み出していると指摘した。 こうした複雑なメッセージは、複雑な臆測を呼んだ。ある視点から見ると、目先の未来は明るく見える。ユニバーサル・スタジオは北京近郊に新しいテーマパークを開園。スターバックスは7~9月に162店舗をオープンし、コロナ禍以前の水準を回復した。上海の米国商工会議所が発表した21年の報告書によれば、調査回答企業の60%が対中投資を昨年から増やしたと答えた。 最も劇的だったのは9月25日、1028日間にわたり中国の対米・カナダ関係を緊張させてきた騒動が終結したことだ。カナダで拘束・保釈中だった通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が、米司法省との司法取引に合意して中国への帰国が認められたのだ。ほぼ同時に、スパイ容疑で中国に身柄を拘束されていた2人のカナダ人も釈放され、母国に送還された。 だが視点を変えると、この一件は「人質外交」の露骨な事例だ。中国当局は何年もの間、カナダ人2人の拘束と孟の逮捕は無関係だと主張していた。だが孟が自由の身になると、2人をすぐに釈放した。「中国の国力がこの結果をもたらしたのだ」と、人民日報系タブロイド紙・環球時報の論説は勝ち誇った。 中国駐在の外国企業幹部の中には、習近平国家主席が唱え始めた「共同富裕」という新しいスローガンに不安を感じている向きもある。中国の知識人の間でも論争が起こり、北京大学の張維迎教授(経済学)は、「(これでは政府の)市場介入がますます増え……中国を共同貧困へと導くだけだ」と批判している』、「(これでは政府の)市場介入がますます増え……中国を共同貧困へと導くだけだ」と批判」、その通りだ。
・『新しい「文革」の始まり?  このスローガンは「美しいフレーズだが、見ていて心配だ」と、上海の多国籍企業に所属する日本人幹部(匿名希望)は言った。「60年代の中国のように暴力的でも感情的でもないが、もっと洗練された形で『文化大革命』が始まるのではないか。今回は規制を使って外国企業を徐々に追い出そうとしている」 この幹部は3年前、中国当局が外資系企業内部に共産党の支部を作るよう党員に促す告知を目にしたという。「党は究極の権威だ。会社に何か要求してきたら? それは依頼であって既に依頼ではない」 そのため、現地駐在の外資幹部の間には不安と疑念が広がっている。「不安を抱えて息を潜めている会社もある」と、アトランティック・カウンシルのロバーツは言う。「駐在員は歓迎されなくなったと感じている。いずれ、もうここにいたくないと思うようになるだろう」 中国に残りたいと望む人々も、変化を痛感している。数十年かけて地方でいくつも企業を立ち上げた欧米人起業家は、規制の山や裏切り、官僚主義の壁に疲れ果てたという。撤退する気はないが、「私は中国を愛している。だが中国が私を愛してくれなければ何もできない」と語る。 半導体、金融、医療など、当面は大事にされる分野もあるだろうが、中国政府の最終目標は技術的な「自給自足」だ。さらにデータの使用や送信に関する規制が強化されていることもあり、外国企業は厳しい選択に直面している。 在中国EU商工会議所が9月初めに公表した年次報告書にはこうある。「国家安全保障の概念が中国経済の多くの分野に拡大され、自給自足の方針が強化されるなか、ますます多くの欧州企業が技術の現地化とサプライチェーンの国内完結か、市場からの退場かの選択を迫られている」 EU商工会議所が半年足らず前に出した報告書のトーンは今回とは全く異なる。前回はコロナ禍が収まり(デルタ株はまだ広がっていなかった)、中国経済は急回復しつつあるように見えたため楽観的なムードが支配的だった。だが今はどうか。EU商工会議所のイエルク・ブトケ会頭に悲観的な気分を1から10までで表すとどのくらいかと聞くと「8くらいだ」との答えが返ってきた。 こうした悲観論の根底には複雑に絡み合ったさまざまな事情があるが、中国のエネルギー危機もその1つだ。中国東北部の3省は「予想外で前例のない」大停電に見舞われ、電力使用の割当制を導入したと、環球時報は報じた。工場が操業停止に追い込まれたり、妊婦が高層マンションの20階まで歩いて上がる羽目になったりと、このところ停電の話題が中国メディアをにぎわせている。 電力不足の原因の1つは、中国経済、特に電力を大量に消費する建設・製造業がコロナ後の急回復を遂げている点にある。建設ブームの余波で、21年第1四半期に中国の二酸化炭素(CO2)排出量はこの10年間で最大級の増加率を記録したと中国の研究所は報告している』、「自給自足の方針が強化されるなか、ますます多くの欧州企業が技術の現地化とサプライチェーンの国内完結か、市場からの退場かの選択を迫られている」、「中国東北部の3省は「予想外で前例のない」大停電に見舞われ、電力使用の割当制を導入」、これでは。「市場からの退場」を選択するEU系企業も増えるだろう。
・『炭素排出ゼロを目指す中国政府  一方で、習は炭素排出量を30年までに減少に転じさせ、60年には実質的な排出ゼロを達成すると宣言。中国政府は主要地域の自治体に年末までGDP単位当たりの電力消費量を監視するよう命じた。 「グリーン化」に成功すれば、習の大きな功績となる。そのため地方の党官僚は習に忖度して過剰なまでに排出量減らしに努めているようだ。それでもピークアウト目標の30年までには炭素排出量が「制御不能なほど急増する」時期が多くあるだろうと、EU商工会議所はみている。 同会議所の加盟企業には、自国の法律などで排出削減を義務付けられた企業が少なくない。その場合、どこから電力を調達するかが問題になる。「中国で排出ゼロを達成できなければ、本国などで法令遵守義務を果たせなくなり、中国からの撤退を余儀なくされる場合もあり得る」と、報告書は指摘している。 今はまだ中国からの外国企業の大脱出は起きていないが、コロナ下での強権的な規制に嫌気が差したり、以前ほど歓迎されていないと感じて中国を去った外国人は少なくない。 外国人の流出が最も顕著なのは大都市だ。外国のパスポートを所持する上海在住者(16万3954人)と北京在住者(6万2812人)は、1年前に比べて28%超も減った。中国の税制が変わり、家賃や学費の税控除が受けられなくなったため、年末までにはさらに多くの外国人が中国から出て行くとみられる。 中国の大都市で働く外国人の減少は看過できない問題だとEU商工会議所の報告書は指摘している。「先進国出身のグローバルな人材の流出が止まらなければ、イノベーションに支障を来す」恐れがあるからだ。 「中国では多様な人材がイノベーションを支えてきた」と、ブトケは言う。「だが今では外国人の居住率は世界の最低レベルだ。ルクセンブルクのような小国でも外国人人口は上海と北京を合わせたよりも多い」) 一方で、中国経済は今年に入ってコロナ後の力強い回復基調を見せたものの、今は足踏み状態に陥っている。国内消費が期待されたほど伸びていないのは、家計所得、特に低賃金の出稼ぎ労働者の所得が伸び悩んでいるためだろう』、「外国のパスポートを所持する上海在住者・・・と北京在住者・・・は、1年前に比べて28%超も減った」、「「先進国出身のグローバルな人材の流出が止まらなければ、イノベーションに支障を来す」恐れがある」、その通りだ。
・『「ほとんど階級闘争」の言説  上海在住の日本企業の幹部は、問題の根源には極端に大きい貧富の格差があると話す。「上海では配達員が10元(約170円)で昼食を済ます横で、ビジネスマンが500元を惜しみなくはたいて豪勢な食事をしている。これは危険な状況だ」 この幹部が指摘するように、中国では所得格差の指標であるジニ係数がアジア諸国の平均の0.34よりはるかに高く、アメリカの0.41よりもさらに高い0.47前後で、「極めて不平等な状態」だ(1.0が最も不平等な状態)。 彼が恐れる最悪のシナリオは、経済が不安定になるかバブルがはじけて低所得層の不満が爆発することだ。当局は民衆の怒りをそらすため外国人を格好の標的に仕立てるだろう。 既に持てる者と持たざる者の対立をあおるような政治的レトリックが飛び交っている。最近ブルームバーグ主催のフォーラムで、PR会社アプコの中国法人会長、ジム・マクレガーは左派ブロガーの李の主張を問題にした。 李は、最近の中国政府の規制強化の動きを文化大革命を彷彿させる「社会主義の本質への回帰」だと賛美したのだ。「富豪は階級の敵だと言わんばかりの……ほとんど階級闘争のような」言説だと、マクレガーは危惧する。 もっとも、今の状況を毛沢東時代の文革に例えれば、重要な違いを見逃すことになる。「毛は(集団的な指導)体制を壊して権力を一手に握るため、混乱を引き起こそうとした」と、調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの共同創業者アーサー・クローバーは言う。それに対し「習は儒教的な国家の復興を目指している」というのだ。 文革のトラウマゆえ、中国の人々は混乱よりは極端な儒教的統治のほうがましだと思っているのかもしれない。どちらも、中国の持続的な成長を支える創造性とイノベーションを育むには役立ちそうにないが』、「中国では所得格差の指標であるジニ係数がアジア諸国の平均の0.34よりはるかに高く、アメリカの0.41よりもさらに高い0.47前後で、「極めて不平等な状態」だ」、「アメリカ」より「格差」が大きいとは危険な兆候だ。

次に、昨年10月24日付けNewsweek日本版が掲載したノンフィクション作家の譚璐美(たん・ろみ)氏による「世界が騒いだ中国・三峡ダムが「決壊し得ない」理由」を紹介しよう。見逃していたため、遅れたことをお詫びする。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/10/post-94797_1.php
・『<世界最大のダムが「決壊する!」と注目を浴びたが、今も決壊しないまま。そこで専門家に話を聞き、堤体の構造や今夏の洪水時に何が行われたかを検証した。三峡ダムは本当に大丈夫なのか。なぜ決壊しないのか> (本記事は2020年10月13日号「中国ダムは時限爆弾なのか」特集収録の記事の前編です) 中国では今年6月半ばの梅雨入り以来、62日間にわたって大雨と集中豪雨が続き、190以上の河川が氾濫し、四川省から江蘇省まで至る所で洪水が発生した。6300万人以上が被災し、5万棟以上の家屋が倒壊する被害が出た。 ネット上では、長江沿川の町や村が冠水する様子や、世界最大の三峡ダムの放流状況が刻一刻と伝えられ、今しもダムが決壊するのではと不安視する声があふれた。 YouTubeには「三峡ダムの決壊シミュレーション」まで登場し、もし決壊すれば、約30億立方メートルの濁流が下流を襲い、武漢、南京が水没し、上海付近の原子力発電所や軍事基地まで甚大な被害を受けるだろうと危機感をあおった。4億人が被災するとの試算もあった。 幸いにも三峡ダムは決壊しなかったが、たまたま決壊を免れただけで、いつかまた危機が訪れるのか。それともダムの構造は強固で、決壊は杞憂にすぎないのか。豪雨の季節が過ぎた9月上旬になっても、長江上流域ではまだ洪水が続いていた。 三峡ダムは70万キロワットの発電機32基を備え、総発電量は2250万キロワット。放流量を調節して下流の洪水被害を防ぐ機能も持つ、世界最大の多目的ダムだ。堤体(ダムの本体)の重さで水の力を支える構造の重力式コンクリートダムで、2009年に長江中流域の湖北省宜昌市に近い三峡地区に建設された。 いま振り返れば、三峡ダムの決壊説に沸いていたのは主として欧米や台湾の中国系メディアと日本メディア(私も記事を書いた)だけで、コメントしているのもごく限られた人物ばかりだった。あるいは科学的考察が不十分だったのではないか。日本や欧米の水利専門家はこの状況をどう捉えていたのだろうか。 そんな疑問に駆られ、改めて信頼できる専門家に話を聞き、中国ダム事情と三峡ダムについて検証した。 京都大学防災研究所水資源環境研究センターの角哲也教授は、日本の河川、特にダム工学研究の第一人者で、黄河の環境問題を扱った『生命体「黄河」の再生』の編著者の1人として中国の事情にも明るい。 角教授は「決壊説」を一蹴する。その説明に入る前に、やや遠回りになるが黄河の話から始めよう』、「ダム工学研究の第一人者で・・・中国の事情にも明るい」、とは信頼できそうだ。
・『ビルと違って半永久的に堅牢  黄河は長江に次ぐ中国第2の河川で、水源の青海省からチベット高原、黄土高原を横切り、西安や洛陽を経て、渤海湾へ注ぐ。 その中流域にあるのが三門峡ダムだ。1960年代に中国が社会主義の兄貴と慕うソ連(当時)の設計で建設されたダムだったが、竣工直後から貯水池(ダム湖)に黄砂がたまり、20年で約40%が埋まった。 私の記憶では、1980年代に「黄河は死んだ」と聞かされた。水量が減り、生活用水や工業用水を垂れ流した揚げ句、毒々しい赤色や紫色の溜水ができて大量の魚が死滅したからだ。 「黄河の最大の特徴は、シルトと呼ばれる細かい粒子の土砂が黄土高原から運ばれて高密度で河川に含まれていること。上流域の開発が断流と呼ばれる流れの変化をもたらし、下流に(流れ切れない)土砂が堆積して河床が上昇し、洪水を多発させました」と、角教授は口火を切った。 そこで三門峡ダムに土砂を通過させる改修工事が行われ、その後、下流に水と土砂の調節を目的として小浪底ダムが建設された。 日本ではダムに堆積する土砂を排出する方法を「通砂」「排砂」と呼ぶが、中国では「調水調砂」と呼び、下流の河床の調整と「通砂」を同時に行う考え方をするという。 「小浪底ダムは三門峡ダムと連携して調水調砂を行い、また密度流(ダム湖の底をはう高濃度の土砂の流れ。これを利用して通砂が行われる)の効果を高めるために、世界初の『人工密度流』という排砂方法も実施されました」 「人工密度流」とは、上流ダム群の放流に合わせて、下流ダムの貯水池内に堆積した土砂を高圧水ジェットで攪拌し、より高密度の流れを人工的につくり出してダムの底部にある排砂管から下流へ排出することだ。黄河は特にシルトが圧倒的に多く、その特徴を生かした方法と言える。 ここから分かるのは、中国の河川管理・洪水管理の技術が決して劣っているわけではないということだ。では、実際のところ、長江の三峡ダムはどうだったのか。 長江は中国最長の河川で全長約6300キロ。チベット高原を水源とし、四川盆地から東へ流れて、河口部の上海で東シナ海へ注ぐ。 上流域の成都や重慶、中流域の武漢は中国屈指の工業都市で、中下流域の安徽省、江蘇省は全中国の農産物の約40%を占める穀倉地帯だ。下流域の南京から上海までは商業都市がひしめき、長江はこれら19の省・市・自治区を結ぶ水運の大動脈である。 噂されている三峡ダム決壊説について質問すると、角教授は「コンクリートダムは決壊しません!」と、明快に言い切った。 コンクリートは砂と砂利と水とセメントを混ぜた自然素材で、アルカリ性である。空気に触れると中性に変化し、劣化する。例えばビルを建てた場合、コンクリートの中には鉄筋を入れるので、鉄筋が腐食するとコンクリートも劣化してもろくなるし外気に触れる部分は風化する。 一方、ダムには鉄筋がほとんど入っていないので、堤体の水につかっていない下流側の表面など劣化する部分はあっても、水につかった部分や堤体内部はアルカリ性のまま変化せず、半永久的に堅牢だと言ってもよい。 「コンクリートダムの決壊というのは、基礎岩盤が脆弱だったり、地震や水圧で河床部が変形したり、岩盤との接合部分がズレたりすることで起こります」) では、三峡ダムの岩盤は安全なのか。調べてみると、三峡ダムは先カンブリア紀の花崗岩中に造られたとされており、どうやら良好だ。先カンブリア紀は地質時代の年代区分の1つで約5億4100万年前(諸説ある)までのおよそ40億年間を指し、花崗岩は御影石とも呼ばれて堅牢な性質を持っている。 2019年にグーグルアースの航空写真で、「三峡ダムが歪(ゆが)んでいる」という噂が広まったこともある。あれは本当なのだろうか。 「笑い話でしょう」と、角教授はにべもない。「でも、ダムは本来、動くようにできています」 コンクリートは温度により膨張・収縮するため、堤体は建設時の温度対策として、15メートル幅のブロックをジョイントでつなぎ合わせて造られる。ジョイントにはゴム製の止水板を設けてある。その後も、水圧や気温の変化などの影響で、ダムは年間数ミリ単位で常に上下流方向に動いている。 ただし、これは「動いている」と体感できるほどのものではない。 既に多くの専門家が指摘しているが、グーグルアースの写真は航空カメラで撮影され、レンズの中心に光束が集まる中心投影になるため、レンズの中心から対象物までの距離の違いによって対象物の像にズレが生じる。 三峡ダムの「歪み」はこのズレだったようだ。現在は正しく修正されている』、「コンクリートダムは決壊しません!」、一安心だ。「ダムには鉄筋がほとんど入っていないので、堤体の水につかっていない下流側の表面など劣化する部分はあっても、水につかった部分や堤体内部はアルカリ性のまま変化せず、半永久的に堅牢」、初めて知った。
・『放流量を操作し洪水をならす  それよりもっと気になっていたことがある。中国中央電視台(CCTV)によると、8月17日、「第5号洪水」(洪水に番号が付けられていた)の発生が発表された後、三峡ダムの流入量は過去最大の毎秒7万5000立方メートルに達し、11門全ての放水ゲートから過去最大となる毎秒4万8000立方メートルを放流した。 それでも追い付かず、水位は夏期の実績最高の167メートルを記録。堤頂の標高は185メートルだから、間もなく越水するのではないかとの声が高まった。実態はどうだったのだろうか。 「いいえ、越水はしません。(定められた)最高水位の175メートルになれば、ゲートを全て開けて、洪水を通過させればよいのです。このグラフを見てください」と、差し出されたのは、中国側の公式記録を基に角教授の研究室で作成した、5月12日から9月12日までの日別の記録だった(下図参照)。 角教授は次のように分析した。 前提として、ダムの役割には(1)洪水調節、(2)水資源の確保、(3)発電、(4)河川の環境保全の4つがある。これらを担うのが管理者(この場合は長江水利委員会)の役目だ。 洪水調節において管理者は、平時から気象情報をチェックして今後の予測雨量や台風情報を収集し、気象の変化に合わせて、流入量に応じた放流量を調節する。ここで重要なのはダムの貯水容量である。) 先日、角教授らの属するダム工学会が公開した動画によれば、洪水時のダムの操作には3段階あり、第1段階の平常時(下流へ必要な水量だけ放流する)、第2段階の大雨時(あらかじめ確保したダムの洪水調節容量を用いて、流入量に応じて放流量を調節する)、第3段階の異常豪雨時(緊急放流とも呼ばれ、ダムの容量では処理し切れない際、上部のゲートを開けて洪水をそのまま通過させる)に分けられる。 三峡ダムのデータを見ると、平常時から大雨時、異常豪雨時へと段階を踏んで、操作方法を変化させていった様子がはっきり見て取れる。 まず6月上旬に、大雨が予想される梅雨期に備えて、あらかじめ貯水池の貯水量を減らす事前放流を行った。7月中旬に長江中下流で洪水が発生したことから、ダムでは洪水をため込んで増水を防いだ。 特に7月18日のピーク時には毎秒6万立方メートルの流入量を毎秒3万5000立方メートルまで減らす放流を行った。この際に水位は一時164メートルまで高まったが、その後流入量が低下した際に、再度事前放流を行って容量回復を行ったことにより、7月27日の次の洪水ピーク時にも放流量を低減させた。 それでも豪雨はやまず、最後のピークは8月19日に訪れた。ダム流入量で毎秒7万立方メートルを超えて記録的に増加し、11門の放水ゲートを全て開放して放流を行った。ただしその間も、流入量から毎秒2万立方メートルを差し引いた程度の放流を保ち続け、これにより貯水位は165メートルを超えたが、その後流入量が減少した。 「洪水ピーク時の複数回の事前放流がなければ、水位はもっと上昇していた危険性もあった。長江水利委員会は下流の洪水と上流の洪水を見ながら放流量を巧みに操作し、洪水をならしながら無事に通過させました」と、角教授は太鼓判を押した。 ※後編:「決壊のほかにある、中国・三峡ダムの知られざる危険性」に続く』、「長江水利委員会は下流の洪水と上流の洪水を見ながら放流量を巧みに操作し、洪水をならしながら無事に通過させました」、日本のお粗末なダムの「放流量」調節より遥かに上手そうだ。 

第三に、この続きを、昨年10月24日付けNewsweek日本版が掲載したノンフィクション作家の譚璐美(たん・ろみ)氏による「決壊のほかにある、中国・三峡ダムの知られざる危険性」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/10/post-94801_1.php
・『<「決壊説」が繰り返されてきたが、専門家によれば、中国の河川管理・洪水管理の技術は決して劣ってはいない。だが、問題は他にある。汚職と環境破壊、三峡ダムの相反する「致命的な欠陥」も明らかになった> (本記事は2020年10月13日号「中国ダムは時限爆弾なのか」特集収録の記事の後編です)※前編:「世界が騒いだ中国・三峡ダムが『決壊し得ない』理由」から続く』、相反する「致命的な欠陥」とは何なのだろう。
・『黄河と異なる「河床低下」問題  なるほど。三峡ダムは当面は決壊しそうにない。だが問題がないわけではない。 例えば、三峡ダムの周辺では地質のもろさが問題になっている。2005年の土木学会「第34回岩盤力学に関するシンポジウム講演論文集」には、三峡ダム周辺の地区は「砂岩、泥岩、砂泥互層、頁岩(石灰を含む)、ジュラ紀と三畳紀上統の地層が分布し......長江周辺の90%以上の地滑りは、ジュラ紀と三畳紀の地層に発生している」とする論文がある。 そして貯水池周辺で計283カ所の地滑りと斜面崩壊が起きていることが報告されている。岩盤は安全でも、周辺の地質が緩ければ、貯水池に土砂が流入するなど影響が及びそうだ。 また、角教授の話では、黄河の三門峡ダムなどでの経験を生かし、長江でも土砂管理に取り組んでいるものの、黄河とは違った堆砂(堆積する土砂)の問題があるという。 長江は土砂の粒径が粗く、ダム湖にとどまりやすいために、ダムからの放流水は土砂が少ない清水となります。黄河では調水調砂でダム下流の『河床上昇』がうまくコントロールされたが、長江ではむしろ土砂が不足するために『河床低下』、さらに河口部まで土砂が供給されずに『海岸浸食』が起きている。河床が低下することで、長江に接続する湖との水の交換が変化したり、上海の海岸線が年々減退したりしているのです」と、角先生は眉をひそめた。 これは重大な指摘だ。土砂の供給量が減少すると、河口デルタが縮小するだけでなく、川が運ぶ栄養豊富な土壌がもたらす河口や沿岸域の干潟が劣化し、さらには河床低下が海からの塩水遡上(そじょう)をもたらし、塩分濃度が高まって魚類が死滅したり、農作物が塩害を受けたりするなど、甚大な悪影響を及ぼすことになる。 これはメコン川などでも大きな課題となってきており、広域的な課題解決のための連携が必要だ。 一方、上智大学大学院地球環境学研究科の黄光偉教授は、三峡ダムの問題点について「重慶市にもっと着目すべき」と指摘する。 「重慶は人口3000万人の工業都市です。世界でどこのダムの上流にこんな重要都市がありますか? 中国だけです。その重慶で堆砂による河床上昇が起こり、洪水が頻発しているのです」 浮遊砂と掃流砂という、大粒で重い堆砂が貯水池に大量にたまるのは大きな問題だ。しかも、三峡ダムの上流には狭い峡谷が連なり、地質がもろく、崖崩れや地滑りが頻発して岩石や土砂が長江に流れ込む。 その結果、全長660キロにも及ぶ、ダム湖からバックウォーター(背水池)に掃流砂が大量にたまる。 重慶はそのバックウォーターの先端にある。堆砂がたまって河床が上がった重慶では、水位が上がり、水害が頻繁に起きているのだ。これは見過ごせない一大事である。 2020年現在、バックウォーターの堆砂は16億トンに上るという推量もあり、2030年には40億トンまで増えて、どうにも対処できなくなる。「そうなる前に三峡ダムを破壊すべきだ」と、一部の三峡ダム批判派が主張するゆえんでもある』、「長江は土砂の粒径が粗く、ダム湖にとどまりやすいために、ダムからの放流水は土砂が少ない清水となります。黄河では調水調砂でダム下流の『河床上昇』がうまくコントロールされたが、長江ではむしろ土砂が不足するために『河床低下』、さらに河口部まで土砂が供給されずに『海岸浸食』が起きている」、「長江」と「黄河」でずいぶん異なるようだ。「重慶はそのバックウォーターの先端にある。堆砂がたまって河床が上がった重慶では、水位が上がり、水害が頻繁に起きているのだ・・・2020年現在、バックウォーターの堆砂は16億トンに上るという推量もあり、2030年には40億トンまで増えて、どうにも対処できなくなる。「そうなる前に三峡ダムを破壊すべきだ」と、一部の三峡ダム批判派が主張するゆえんでもある」、大変だ。
・『建設への意見書は発禁処分に  ところで、日本のダムは「異常洪水時」の緊急放流に際して、事前警報でサイレンを鳴らし、沿川の自治体に事前通告して、住民が避難する時間をつくることが鉄則だという。では、中国はどうだったか。 中国のSNS上には、「ダムが警報なしに放流した」「堤防をブルドーザーで破壊したが、住民に予告しなかった」「深夜に急に浸水し、着の身着のまま逃げ出した」などという不満が相次いだ。 被災者は避難する十分な時間も与えられずに、家も田畑も財産も失って逃げ出したことが推察できる。これは行政の怠慢で、政治の問題ではないのか。 三峡ダムは1912年、孫文が国家建設のために「鉱山開発」「鉄道網の普及」「三峡ダムによる発電」を構想したことに始まるが、日中戦争で計画倒れに終わった。 1949年に中華人民共和国が誕生した後も、長引く政治運動で手を付けられず、文化大革命が終息した後の80年代にようやく現実味を帯びてきた。だが、発展途上の中国ではまだ「時期尚早」との声が高かった。 1989年1月、光明日報の記者の戴晴(タイ・チン)が編纂した『長江 長江』が出版された。三峡ダム建設計画について水利専門家や有識者、政治家に取材して編纂した意見書だ。「資金不足」「技術力不足」「生態系の破壊」「大量の移住者が出る」などの理由で、慎重論がほとんどだった。 その中で、戦前、米イリノイ大学で工学博士号を取得した著名な水利学者で、清華大学の黄万里(ホアン・ワンリー)教授は、堆砂の深刻さを問題視した。 「長江の三峡地区は堆積性河段(土砂が沈殿・堆積する河床部分)で、このような場所にダムを造ってはいけない。宜昌市の砂礫の年間流動量を推算すると、およそ1億トンに上る。上流域にも土砂が堆積し、ダム完成後10年以内に重慶港が土砂で塞がれる事態が発生する恐れがある」 同書をきっかけに、三峡ダムプロジェクト論争が熱を帯びた。李鵬(リー・ポン)首相を中心とする中国政府が強引に計画を推し進めるなか、同年6月4日、天安門事件が起きた。政府は民主化運動を武力で弾圧し、戴晴は「騒乱と暴乱の世論作りのために準備した」との罪で逮捕・拘禁され、今に至るまで中国では意思発表の場はない。 『長江 長江』も出版を禁止され、焼却処分になった。同書で取材を受けた有識者らも共産党から除名、降格、失業、亡命を余儀なくされた』、「「ダムが警報なしに放流した」「堤防をブルドーザーで破壊したが、住民に予告しなかった」・・・被災者は避難する十分な時間も与えられずに、家も田畑も財産も失って逃げ出したことが推察できる」、こんな荒っぽい行政を続けることは出来ない筈だ。「李鵬・・・首相を中心とする中国政府が強引に計画を推し進めるなか、同年6月4日、天安門事件が起きた。政府は民主化運動を武力で弾圧し、戴晴は「騒乱と暴乱の世論作りのために準備した」との罪で逮捕・拘禁され・・・『長江 長江』も出版を禁止され、焼却処分に」、「天安門事件」をはさんでいたとは初めて知った。
・『日本企業が知った「環境無視」  そして1992年4月、徹底した言論統制の下、全国人民代表大会で「三峡プロジェクト建設決議」が、強行採択された。 1994年12月、着工式が盛大に挙行された。当初予算の総工費約2000億元(約232億ドル)は、1年で2500億元に増え、インフレでさらに膨らみつつあった。大幅な不足資金は外資に頼り、建設技術と重要機材も外国製を購入、技術移転も強要するという「おんぶにだっこ」のスタイルだった。 国際入札が始まると、世界中の企業の注目が集まった。最初は870件で合計38億ドルの発注だった。ゼネラル・エレクトリック(GE)のカナダ子会社や米キャタピラー、ドイツのデマーグ、クルップなどが受注した。 1995年の建設機械、1997年の水力発電機の国際入札でも日本企業は敗退した。 1999年5月、総額2億ドルの水力発電所変電変圧施設の国際入札。満を持して応札した日本の三菱電機・住友商事連合は、計17グループがひしめくなかで最も技術的に優れ、最低価格で応札した。 ところが、中国は9月、日本より数千万ドル高いドイツのシーメンスとスイスのABBの連合が落札したと発表した。 衝撃を受けた日本は、各種ルートをたどって理由を問いただし、11月末、日中投資促進機構の訪中団が北京を訪れた際、個別に会談した中国の呉儀(ウー・イー)国務委員と対外貿易省の常暁村(チャン・シアオツン)機電局長から、こう告げられた。 「日本企業連合を排したのは、融資条件の中に環境保護規定の遵守が入っていたからだ」 この前年、アメリカは国内の環境保護機運の高まりを背景に、国際入札からの撤退を表明していた。それに動揺した日本は、入札前日に急きょ「環境保護規定」を盛り込んだのだ。 中国はその規定が邪魔だと判断して日本を退けた。当初から環境保護などまるで無視していたのである。 中国政府はダム建設予定地に住む120万人以上を強制移転させたが、2000年1月、移転費用の1割に当たる4億7300万元(5700万ドル)を地元政府や移転企業が不正流用した事実が発覚した。 だがこれは氷山の一角にすぎなかった。李鵬以下、中央から地方へ建設予算が振り分けられるたびに、各レベルの役人が着服し、果ては現場で工事を請け負う建設会社もコンクリートの品質をごまかしていた疑いが持たれたのだ。李の息子と娘は、長江三峡集団傘下の長江電力グループの企業トップに就任し、「電力ファミリー」の異名をとどろかせた。 2009年、三峡ダムが完成すると、竣工式はわずか8分で終了した。汚職の責任を押し付けられたくない政府高官がみな出席しなかったからだ。その様子を見て、地元の人々は「豆腐渣(トウフーチャー、おから)」ダムだと揶揄した』、「総額2億ドルの水力発電所変電変圧施設の国際入札。満を持して応札した日本の三菱電機・住友商事連合は、計17グループがひしめくなかで最も技術的に優れ、最低価格で応札した。 ところが、中国は9月、日本より数千万ドル高いドイツのシーメンスとスイスのABBの連合が落札」、「アメリカは国内の環境保護機運の高まりを背景に、国際入札からの撤退を表明していた。それに動揺した日本は、入札前日に急きょ「環境保護規定」を盛り込んだのだ。 中国はその規定が邪魔だと判断して日本を退けた」、「日本」の対米追随の足元を見られたようだ。
・『相反する課題をどう解決する  環境破壊と汚職にまみれた三峡ダムの「悲劇」は、取りも直さず、今夏の豪雨による被災者の悲劇に通じている。 今年7月下旬、香港メディアが豪雨の甚大な被害を報じる一方、管制メディアの新華社ネットは洪水を擬人化し、ちゃかしてみせた。人民網は、湖南省で水没した名所、鳳凰古城の惨状を「まるで桃源郷にいるようだ」と美化した。 無論、SNSには人々の怒りの声があふれ返ったが、それらは瞬時に中国政府によって削除された。戦前、魯迅が慈しんだ「声なき民の声」は今も昔と同じように記録に残ることはない。 現在、中国では長江上流の金沙江に巨大なダムを次々に建設している。最先端技術を誇る烏東徳ダムは一部稼働を始めた。渓洛渡ダムは発電量1万3860メガワットで世界第3位だ。これに向家覇ダムと白鶴灘ダムを加えたダム4基の発電量は、三峡ダムの発電量の2倍になる。 こうしたスーパーダム群が、三峡ダムの堆砂を少しでも減少させるために役立つのか。あるいは、中国のはるか奥地まで堆砂問題を拡大させようとしているのだろうか。 「これらのダムには、三峡ダムの堆砂を軽減する目的もありました」と、前出の黄光偉教授は言う。 「しかしダムをいくつ造っても、堆砂や洪水、水質汚染、水問題などをバラバラに研究していては問題解決にならない。問題を1つ解決しても、さらに出てくる問題のほうが多いのが現状です。研究者は『学融合』して協力し合い、統合的なアプローチをすることが大事。私自身は、今後は生態系の復元が最も大切なポイントだと考えています」 三峡ダムは、今後も決壊するかどうかに関心が集まるだろう。だが真の問題は、上流の河床上昇と下流の河床低下という、相反する課題をどう解決するかだ。海岸浸食と生態系の破壊という根深い問題も秘めていることが浮き彫りになった。 国民不在の政治体質はさらに根深い。容易ならざる事態はこれからも続く。 <2020年10月13日号「中国ダムは時限爆弾なのか」特集より>』、「ダム4基の発電量は、三峡ダムの発電量の2倍になる。 こうしたスーパーダム群が、三峡ダムの堆砂を少しでも減少させるために役立つのか。あるいは、中国のはるか奥地まで堆砂問題を拡大させようとしているのだろうか」、「真の問題は、上流の河床上昇と下流の河床低下という、相反する課題をどう解決するかだ。海岸浸食と生態系の破壊という根深い問題も秘めていることが浮き彫りになった。 国民不在の政治体質はさらに根深い。容易ならざる事態はこれからも続く」、習近平氏の強権政治のもとでは、問題解決は難しそうだ。
タグ:中国経済 (その13)(中国から外国企業が「大脱出」する予兆が見え始めた 駐在員は歓迎されなくなった、三峡ダム2題:世界が騒いだ中国・三峡ダムが「決壊し得ない」理由、決壊のほかにある、中国・三峡ダムの知られざる危険性) PRESIDENT ONLINE ニューズウィーク日本版 「ニューズウィーク日本版」現地取材:中国から外国企業が「大脱出」する予兆が見え始めた 駐在員は歓迎されなくなった 『レッド・ルーレット——現代中国の富・権力・腐敗・報復についてのインサイダー物語』 「「中国での潜在的ビジネスパートナーが4年間も行方不明になりかねない」現実を認識しつつある」、のであれば、商売上がったりだ。 「(これでは政府の)市場介入がますます増え……中国を共同貧困へと導くだけだ」と批判」、その通りだ。 「自給自足の方針が強化されるなか、ますます多くの欧州企業が技術の現地化とサプライチェーンの国内完結か、市場からの退場かの選択を迫られている」、「中国東北部の3省は「予想外で前例のない」大停電に見舞われ、電力使用の割当制を導入」、これでは。「市場からの退場」を選択するEU系企業も増えるだろう。 「外国のパスポートを所持する上海在住者・・・と北京在住者・・・は、1年前に比べて28%超も減った」、「「先進国出身のグローバルな人材の流出が止まらなければ、イノベーションに支障を来す」恐れがある」、その通りだ。 「中国では所得格差の指標であるジニ係数がアジア諸国の平均の0.34よりはるかに高く、アメリカの0.41よりもさらに高い0.47前後で、「極めて不平等な状態」だ」、「アメリカ」より「格差」が大きいとは危険な兆候だ。 Newsweek日本版 譚璐美 「世界が騒いだ中国・三峡ダムが「決壊し得ない」理由」 「ダム工学研究の第一人者で・・・中国の事情にも明るい」、とは信頼できそうだ。 「コンクリートダムは決壊しません!」、一安心だ。「ダムには鉄筋がほとんど入っていないので、堤体の水につかっていない下流側の表面など劣化する部分はあっても、水につかった部分や堤体内部はアルカリ性のまま変化せず、半永久的に堅牢」、初めて知った。 「長江水利委員会は下流の洪水と上流の洪水を見ながら放流量を巧みに操作し、洪水をならしながら無事に通過させました」、日本のお粗末なダムの「放流量」調節より遥かに上手そうだ。 「決壊のほかにある、中国・三峡ダムの知られざる危険性」 相反する「致命的な欠陥」とは何なのだろう。 「長江は土砂の粒径が粗く、ダム湖にとどまりやすいために、ダムからの放流水は土砂が少ない清水となります。黄河では調水調砂でダム下流の『河床上昇』がうまくコントロールされたが、長江ではむしろ土砂が不足するために『河床低下』、さらに河口部まで土砂が供給されずに『海岸浸食』が起きている」、 「長江」と「黄河」でずいぶん異なるようだ。「重慶はそのバックウォーターの先端にある。堆砂がたまって河床が上がった重慶では、水位が上がり、水害が頻繁に起きているのだ・・・2020年現在、バックウォーターの堆砂は16億トンに上るという推量もあり、2030年には40億トンまで増えて、どうにも対処できなくなる。「そうなる前に三峡ダムを破壊すべきだ」と、一部の三峡ダム批判派が主張するゆえんでもある」、大変だ。 「「ダムが警報なしに放流した」「堤防をブルドーザーで破壊したが、住民に予告しなかった」・・・被災者は避難する十分な時間も与えられずに、家も田畑も財産も失って逃げ出したことが推察できる」、こんな荒っぽい行政を続けることは出来ない筈だ。 「李鵬・・・首相を中心とする中国政府が強引に計画を推し進めるなか、同年6月4日、天安門事件が起きた。政府は民主化運動を武力で弾圧し、戴晴は「騒乱と暴乱の世論作りのために準備した」との罪で逮捕・拘禁され・・・『長江 長江』も出版を禁止され、焼却処分に」、「天安門事件」をはさんでいたとは初めて知った。 「総額2億ドルの水力発電所変電変圧施設の国際入札。満を持して応札した日本の三菱電機・住友商事連合は、計17グループがひしめくなかで最も技術的に優れ、最低価格で応札した。 ところが、中国は9月、日本より数千万ドル高いドイツのシーメンスとスイスのABBの連合が落札」、「アメリカは国内の環境保護機運の高まりを背景に、国際入札からの撤退を表明していた。それに動揺した日本は、入札前日に急きょ「環境保護規定」を盛り込んだのだ。 中国はその規定が邪魔だと判断して日本を退けた」、「日本」の対米追随の足元を見られたようだ。 「ダム4基の発電量は、三峡ダムの発電量の2倍になる。 こうしたスーパーダム群が、三峡ダムの堆砂を少しでも減少させるために役立つのか。あるいは、中国のはるか奥地まで堆砂問題を拡大させようとしているのだろうか」、「真の問題は、上流の河床上昇と下流の河床低下という、相反する課題をどう解決するかだ。海岸浸食と生態系の破壊という根深い問題も秘めていることが浮き彫りになった。 国民不在の政治体質はさらに根深い。容易ならざる事態はこれからも続く」、習近平氏の強権政治のもとでは、問題解決は難しそうだ。
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