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政府財政問題(その5)(財務次官の異例の「国家破綻・財政再建」寄稿 過去の「国債の暴落を引き金にした財政破綻を明確に否定した公式文書」との整合性は?、「国の借金はまだまだできる」「GDP比1000%でも大丈夫です」元内閣官房参与・浜田宏一が“バラマキ合戦”批判に反論、「プライマリーバランス黒字化」凍結すべき深い訳 財政出動の判断基準は「乗数効果、雇用、賃金」だ) [経済政策]

政府財政問題については、4月13日に取上げた。今日は、(その5)(財務次官の異例の「国家破綻・財政再建」寄稿 過去の「国債の暴落を引き金にした財政破綻を明確に否定した公式文書」との整合性は?、「国の借金はまだまだできる」「GDP比1000%でも大丈夫です」元内閣官房参与・浜田宏一が“バラマキ合戦”批判に反論、「プライマリーバランス黒字化」凍結すべき深い訳 財政出動の判断基準は「乗数効果、雇用、賃金」だ)である。

先ずは、10月14日付けデイリー新潮「財務次官の異例の「国家破綻・財政再建」寄稿 過去の「国債の暴落を引き金にした財政破綻を明確に否定した公式文書」との整合性は?」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/10140605/?all=1
・『コロナ禍で痛み、苦しむ人たちに  財務省の矢野康治事務次官による月刊誌「文藝春秋」(11月号)への寄稿が話題となっている。財政再建の必要性を訴え、新型コロナウイルスの経済対策を「バラマキ」と喝破し、国家財政破綻の可能性に言及する内容だ。財務省といえば霞が関の頂点に君臨する省庁で、その現役トップが自身の考えを表明するのは異例のことだ。しかし、財務省は過去に、国債の暴落を引き金にした財政破綻を明確に否定していた。それとの整合性はどうなのだろうか? 矢野氏は、与野党で10万円の定額給付金や消費税率引き下げなどが議論されている点について、「国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてきます」「(今の日本の財政状況は)タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです」と主張。 さらに、「(この状況を放置すれば)日本国債の格付けに影響が生じかねず、そうなれば、日本経済全体にも大きな影響が出ることになります」と訴える。 選挙直前のタイミングということもあり、コロナ禍で痛み、苦しむ国民に救いの手を差し伸べようとしている点では与野党共通しているといえるだろう。そうした政策に異議申し立てをしているのだ。本人によれば寄稿の動機は「やむにやまれぬ大和魂」だという』、「寄稿の動機は「やむにやまれぬ大和魂」」とは苦しい言い訳だ。
・『日本円による借金で財政が破綻することはない  「財務官僚にとって悔やんでも悔やみ切れないのが、今や1200兆円を超える借金の山にあるのは言うまでもないでしょう」 と話すのは、読売新聞経済部で大蔵省などを担当し、現在は経済ジャーナリストとして活躍する岸宣仁氏。日本を牛耳る財務官僚たちの立身出世の掟などについて論じた『財務省の「ワル」』の著者でもある。 日本が抱える借金を表す数字として「1200兆円」がよく使われる。これは、国と地方を合わせた長期債務残高(2020年度末)を意味し、日本が1年間に生み出す付加価値の総和である国内総生産(GDP)の約2倍の水準にある。 長期債務は、建設国債と赤字国債(正式には特例公債)からなる普通国債のほか、国際機関への拠出国債、特別会計の借入金、地方公共団体が発行する地方債などを合計したものだ。このうち、国の借金に当たる普通国債の発行残高は906兆円にのぼり、長期債務全体の76%を占める。 気の遠くなるような金額を見れば、日本は大丈夫かと不安になるかもしれない。しかし、実はそういう不安を否定する文書を財務省はかつて作成していた。 「日本円による借金で財政が破綻することはない、と財務省自身が認めた文書があります。2002年、外国の格付け会社が“日本の国債にはデフォルト(債務不履行)のリスクがある”と指摘したのに対し、反論の意見書を提出したものです」(岸氏)』、「外国の格付け会社」向け「意見書」も当然、財務省にファイルされている筈だが、都合の悪い文書はなかったことにする姿勢が常態化しているので、見ていないことにしたのかも知れない。
・『財務省の公式文書  「外国格付け会社宛意見書要旨」と題されたその中身は、大要以下の通りである。 《貴社(外国の格付け会社を指す)による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい》 《(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。 ・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国  ・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている  ・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高  (3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。 ・1人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。 ・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。》 ちなみにこれは黒田東彦日銀総裁が財務官だった当時に出されたもので、国債の暴落を引き金にした財政破綻を明確に否定した財務省の公式文書である。今から19年前の文書ではあるが、財務省はこの主張をその後も変えていない。矢野次官の今回の主張とは正反対ではないか』、「事務次官」が従来の主張とは「正反対」の主張を平然とするとは、「財務省」の権威も地に落ちたものだ。
・『オオカミ少年になる危険がある  岸氏はこう解説する。 「《日本、米国など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか》という箇所には、その行間に怒りの感情さえ感じますね。折に触れてマスコミなどへの説明に、“歯止めのない国債発行はいつの日か財政破綻を招きかねない”と決まり文句のようにしてきた財務省ですが、海外向けについつい本音を漏らしてしまった格好です」 財務省自らが財政破綻のリスクを否定してしまっている以上、国債の大量発行、ひいては彼らの永遠なるスローガンである「財政再建」も色褪せて見えてきてしまう。 「理財局で国債を担当したことがあり、現在は予算を編成する主計局に籍を置く現役幹部は以前に、『国債の暴落をブラフに使うのは、確かにオオカミ少年になる危険がある』と素直に認めていました。長州人の矢野次官が『やむにやまれぬ大和魂』で書き上げた原稿なのだと思いますが、デフォルトを否定した反論書を公表した事実がある以上、単に赤字国債からの脱却を軸にした『財政再建』の4文字を声高に叫ぶだけでは、不可避的に積み上がる借金の山を前に手をこまぬいて見ているとしか思えません」』、国会審議がまだ始まってないが、始まれば野党の追及にどう答えるのだろう。

次に、11月18日付け文春オンライン「「国の借金はまだまだできる」「GDP比1000%でも大丈夫です」元内閣官房参与・浜田宏一が“バラマキ合戦”批判に反論」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50066
・『財務省は、東大法学部出身者の多い役所らしく理屈をこねるのが上手な官庁です。私も内閣官房参与として官邸に行った際、彼らが政治家をうまく説得するようすを見てきました。矢野さんは一橋大学の経済学部ご卒業のようですが、あの論文には、法律家集団である財務省の性格がよく出ていると感じました。 「ショッピングや外食や旅行をしたくてうずうずしている消費者が多い」(だから国民は給付金など求めていない)と書くのは、自分の結論に都合のよい人間像を証拠もなく作りあげているだけです。こういったところにいかにも財務省らしいところが出ています』、リフレ派の大物の「浜田」氏らしいコメントだ。
・『日本は『世界最悪の財政赤字国』ではない  経済は、理屈で勝っても、現実に合っていなければしようがない世界です。いくら政治家を説得できても、現実の経済が違ってしまったのでは話にならない。経済は、実際の人やモノの動きを事実として見つめる必要があり、ときに理屈では説明がつかない局面もある。日本が瀕死の借金国で、タイタニック号の運命にある、というのは単なるたとえ話であって事実と認めることはできません。 もちろん、現役の財務事務次官である矢野さんが「このままでは国家財政は破綻する」という論文を発表したことは、立派だったと思います。決定が下れば命令に服することを前提に、「勇気をもって意見具申せよ」という後藤田正晴さんの遺訓通り、あるべき国家財政のありようについて堂々と思うところを述べられた。霞が関全体に、ことなかれ主義の風潮がある中で、行政官のトップが自らの立場を踏まえながら、官僚や国民にどう持論を発すべきか、を示したことは、議論のよい出発点になりえます。ただし、論じられた内容についていえば、ほぼ100%、私は賛成できません。 矢野さんは「わが国の財政赤字は過去最悪、どの先進国よりも劣悪」という現状認識に立って、「将来必ず財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかか」ると警告し、与野党によるバラマキ合戦を諫める。そして日本の財政を氷山に向かって突進するタイタニック号に喩え、近い将来、国家財政は破綻すると警告する。 ただ、この論文を貫く「暗黙の前提条件」と、「経済メカニズムの理解」の両面で、矢野論文には大きな問題があります。自民党政調会長の高市早苗氏が「馬鹿げた話」と批判したそうですが、もっともな指摘です。こうして話題になったことは、財務省に考えを改めてもらうよい機会ですから、私からは「3つの誤り」を指摘しておきたいと思います』、「霞が関全体に、ことなかれ主義の風潮がある中で、行政官のトップが自らの立場を踏まえながら、官僚や国民にどう持論を発すべきか、を示したことは、議論のよい出発点になりえます」、と投稿した姿勢を評価しつつも、「論じられた内容についていえば、ほぼ100%、私は賛成できません」、と自論を展開するのは当然だろう。「3つの誤り」とは何なのだろう。
・『日本政府は金持ちである  第1に、「日本は世界最悪の財政赤字国である」という認識は事実ではありません。 矢野論文は、財政赤字の指標として、一般政府債務残高をGDPで割った数字が256.2%と先進各国の中でも突出して悪い、と強調しています。そして、この借金まみれの状況では、支出を切り詰めるか、増税を行う必要がある、と財務省の伝統的な主張を繰り返します。 財務省は「年収(経済規模)に比べて借金がどれだけあるか」という数字をよく用います。しかし、年収との比較だけで借金の重さを捉えるのは適切ではない。なぜならば、金融資産や実物資産があるならば、借金があっても、そのぶん実質的な借金は減るからです。 国際通貨基金(IMF)が公表した2018年の財政モニター・レポートは、実物資産を考慮して各国政府がどれだけ金持ちなのか、を試算しています。これによれば日本政府は十分な資産を持っているため、わずかに純債務国ではあるが、大債務国のポルトガル、英国、オーストラリア、米国よりも相対的に債務は少ない。試算に誤差はありえますが、「どの先進国よりも劣悪」という矢野氏の主張とは印象がだいぶ違います。 政府の資産とは、例えば、東京・港区の1等地に立つ国際会議場「三田共用会議所」のような優良不動産。広大な国有林も、独立行政法人の保有になっている高速道路のようなインフラもある。道路は売却できる資産ではありませんが、将来にわたって通行料金が入ってくるので、この将来キャッシュフローを資産と捉えることができます。 「日本は瀕死の借金国」という宣伝には熱心な財務省ですが、主張と矛盾する分析には冷淡で、翻訳すらしない。IMFには、財務省の出向者もいるはずなのに、不都合な真実については目立たせない工夫をしているのでは、と勘ぐってしまいます』、「国際通貨基金(IMF)が公表した2018年の財政モニター・レポートは、実物資産を考慮して各国政府がどれだけ金持ちなのか、を試算しています。これによれば日本政府は十分な資産を持っているため、わずかに純債務国ではあるが、大債務国のポルトガル、英国、オーストラリア、米国よりも相対的に債務は少ない」、こんなIMFのレポートは初めて知った。
・『MMT理論の根幹は正しい  第2の誤りは、「国家財政も家計と同じだ」という考え方です。これは財務省お得意の喩えですが、実際にはフェイクニュースに近いものです。 浜田宏一氏「国の借金はまだまだできる」全文は、文藝春秋「2021年12月号」と「文藝春秋digital」にてお読みいただけます』、「「国家財政も家計と同じだ」という考え方」は、前者は苦しくなれば、増税も可能で、確かに手段がない「家計」とは異なる。中途半端な形で記事が終わってしまったことは、誠に残念だ。

第三に、10月21日付け東洋経済オンラインが掲載した元外資系証券会社のアナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏による「「プライマリーバランス黒字化」凍結すべき深い訳 財政出動の判断基準は「乗数効果、雇用、賃金」だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462504
・『オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。 退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。 今回は、プライマリーバランスの黒字化目標を当面、凍結すべき理由を解説してもらう。 今回の記事のポイントは、以下のとおりです。 (1) 社会保障費の増加によって、政府の先行投資が著しく不足している (2) 生産的政府支出の対GDP比は先進国平均24.4%に対し、日本は10%以下 (3) 生産的政府支出の不足によって、GDPの成長率が低迷している (4) 結果、財政が悪化している (5) この状況を正すには、生産的政府支出を大幅に増やすべき (6) 金額は、最終的に年間数十兆円の規模まで増やすべき (7) したがって、当面はプライマリーバランスの黒字化の目標は凍結すべき  (8) 新規財政出動はバラマキではなく、乗数が1以上の元が取れる支出に集中させるべき (9) 何に対してどれだけ財政出動をするかは、雇用の量と質を基準にして決定するべき』、興味深そうだ。
・『毎年「数十兆円規模」の財政出動をせよ  日本は、人口減少と「3大基礎投資」の不足が要因となり、賃金が上昇せず、経済が成長しない状態に陥っています。この状況から脱却するには、研究開発、設備投資、人材投資という「3大基礎投資」を喚起し、経済を成長させ、その成果で賃金を上昇させるための経済政策が求められます。 つまり、長期的な経済成長や賃金の引き上げは、あくまでも投資によってのみ実行できるという経済学の大原則を忘れてはいけないということです。 持続的な経済成長は、バラマキによって達成できるものでは断じてありません。国際決済銀行の「Consumption-led expansions」の分析によると、個人消費主導の景気回復は相対的に回復力も持続性も弱いと確認されています。 私は5年前から日本経済に関してさまざまな分析を行い、以下に挙げる政策を提言してきました。 (1) 労働分配率の引き上げ (2) 研究開発予算の増加 (3) 設備投資の喚起 (4) 人材投資の促進 (5) 格差縮小のための最低賃金引き上げ (6) 輸出の促進 (7) 中小企業の強化 (8) 黒字廃業の回避  これらの政策を実現するためには、毎年かなりの額の政府支出が必要になります。 こういった投資を「生産的政府支出(Productive Government Spending:PGS)」と言います。GDP560兆円、世界第11位の人口大国の日本を動かすには、毎年数十兆円単位の予算が不可欠です。 将来的に経済を大きく改善させるためにこのくらいの規模の先行投資をしながら、なおかつ社会保障の負担もあるので、間違いなく当面プライマリーバランスの黒字化はできません。日本はプライマリーバランス黒字化を公約として掲げてきましたが、残念ながらこの公約は、当分の間、凍結せざるをえません。 しかし、先に挙げた政策を、賢く、かつ着実に行えば、やがて財政は健全化します。要するに、元の取れる政府支出を増やしてGDPを高めることで、財政を健全化させるということです』、なるほど。
・『経済成長に寄与する財政支出が先進国中、最も低い  プライマーバランス黒字化が当面不可能なのは、政府支出の中身を見れば一目瞭然です。 GDPに対する日本の政府支出の割合は、他国と比較しても決して低いわけではないのですが、社会保障費以外の予算が異常に少ないのです。日本では生産年齢人口の減少と高齢化が同時に進んでいるため、政府支出のうち社会保障費の金額が大きく膨らんでいます。特に2000年あたりから社会保障費は大きく増えているのに、生産的政府支出(PGS)は抑制されて、ほとんど増えていません。 社会保障費などは「移転的政府支出」と呼ばれ、経済成長には貢献しないと分析されています。一方、インフラ投資、教育や基礎研究などの政府支出は、経済全体の質の改善・向上につながるので、「生産的政府支出(PGS)」と位置づけられ、経済成長率の改善に寄与することが確認されています。 日本のPGSは対GDP比で見ると10%にも満たず、先進国平均の24.4%を大きく下回っています。おそらく、高齢者比率が世界一高いので、PGS比率が先進国最低水準になってしまっているのだと思います。 今後、高齢者の数は減りませんから、社会保障費の負担は減りません。しかし、経済を維持・成長させるには、PGSの増加は不可欠です。よって、諸外国以上に対GDPの政府支出を高めなければなりません。プライマリーバランスの黒字化が当面困難になるほどの巨額の財政出動が必要であることは、「成長戦略会議」の委員として何度も指摘してきました。 先述したように、日本は1億人以上の人口を抱えた人口大国です。人口が1億人を超えている国は世界で14カ国しかありません。人口は世界第11位、GDPは560兆円で世界第3位の経済大国です。 このような巨大な国の経済を動かすには、相当規模の金額でなくては不可能です。だから、これまで政府がつけてきたような1兆~2兆円レベルの予算では経済政策は成功しないと訴えてきました。 自民党総裁選挙に立候補した高市早苗議員が主張していた、10年100兆円のインフラ投資でも(中身の議論は別として)、規模的には足りないくらいだと思います。当初は抑えめに始めても、徐々に増やし、最終的には数十兆円単位の年間予算とするのが理想でしょう。 諸外国と同じレベルまでPGSの対GDP比率を引き上げようとすると、社会保障費の負担増もあるので、プライマリーバランスの黒字化はさらに難しくなります。 とはいえ、高齢化の進展で社会保障費の負担が増える中でも、あえて政府支出を増やして投資を喚起し、財政の健全性を示す「借金/GDP」の分母であるGDPを大きくするのは、国益にかなっています。これは甘利明幹事長が主張しているとおりです。 逆に、今までのようにPGSを抑え続けていけば、GDPも減ってしまいます。分子が減るのを分母が追いかけて減ることになるので、財政の健全化目標はいつまで経っても達成できません。似たような現象は江戸時代にも起きていたので、その歴史を振り返るだけで、同じ轍を踏む結果になるのは明らかです』、「生産的政府支出」について、実際の数字を示してもらいたいものだ。公共投資もこの中に含まれる筈だが、現実には必ずしも「生産的」でないものも多い。公共投資は無駄との認識が広まったことも、諸外国に比べ少ない一因だ。
・『財政出動の基準は「雇用の質、雇用の量、乗数効果」  ただし、やみくもに財政支出を増やしても、狙っている成果にはつながりません。財政出動の判断基準を何に置くかは、真剣に議論するべきです。 岸田文雄新総理は経済対策に積極的なようですが、すでに巨額の借金があるうえ、大地震への備えも必要なので、何に対して予算をつけるべきかの評価基準、またどういう成果を求めて政策を実施するべきかの基準は、絶対に定めておかなくてはいけません。 この議論の本質からすると、基軸にするべきは「(1)雇用の質(賃金水準)」「(2)雇用の量」の2つです。 これから、日本では生産年齢人口が約3000万人も減少します。GDPを縮小させることなく、ますます貴重になる人材を、どの業種のどういった企業を中心に配分するかも重要なポイントになります。労働参加率を低下させることなく、賃金を引き上げる政策が求められます。あえて言うまでもなく、これは日本にとってとても重要な「経済政策」です。 要するに、生産性を高め、それに伴って賃金を上昇させることでGDPを増やすのです。岸田総理にはリーダーとして、財政出動で投資した以上の金額が将来的には戻ってくることを想定し、思い切った国家運営にあたっていただきたいと思います。 過去に何度も指摘したように、アベノミクスの結果、日本の労働参加率は史上最高になり、世界的に見ても非常に高い水準にまで上がりました。しかし、増えた雇用のほとんどは、賃金水準が低いという意味で「質が低い」仕事でした。それによって生産性は上がりましたが、労働生産性は上がっていません。 これ以上労働参加率を高める、つまり雇用の量を増やすのは限界に近づいているので、岸田総理は雇用の質を高める政策に舵を切るべきです。それこそが日本に求められている政策であり、そのためにこそPGSを増やすべきなのです。 となると、「賃金の動向」と「雇用の動向」を財政出動の判断材料にするべきだという結論となります。「賃金の動向」と「雇用の動向」のデータはすでに整備されているので、目標を設定するための直接的な材料にできます』、「雇用の質を高める政策」、具体的にはどんなことをするのだろう。まさか、高賃金を払った企業への補助金などの古典的手法ではあるまい。
・『「本当に政府は破綻しないか」実験より先にできること  一部には、インフレにならないかぎり、政府の借金をどんなに増やしても政府は破綻しないという見解もあります。しかし、すでにここまで政府の借金が増えている中で、無尽蔵にばらまいて「本当に政府は破綻しないのか」という実験に挑戦するメリットがあるとは思えません。 財政出動を増やすのであれば、PGSを中心に、「元が取れる」支出に限定するべきでしょう。となると、オーソドックスなケインズ経済学に基づいて、乗数が1以上の支出でないといけません。ここでいう「乗数」とは、政府支出に対してどれだけGDPが増えるかを測る指標で、1億円の支出の乗数が1.2だった場合、GDPは1億2000万円増えることになります。これなら「政府の借金/GDP」の分子以上に分母が増えることになるので、現在の低い金利を考えれば、政府の借金の対GDP比率は改善します。 この乗数効果が大きい政府支出には、基礎研究やインフラ投資が含まれます。 ただ、乗数効果に関しては、勘違いをしている人が多いと最近わかりました。政府が100兆円の支出をすれば、GDPは自動的に100兆円以上、例えば330兆円も純増すると妄想している人がいるようです。実際の乗数効果は、それよりもずっと小さいことがわかっています。政府支出に過剰に期待してはいけません。この点は、次回の記事で検証します。 私自身、財政出動は必要だと考えていますが、2%のインフレ目標を判断基準にするべきではないとも考えています。財政出動の是非はあくまでも、「雇用の量」と「雇用の質」、そして「乗数効果」をもとに判断するべきです。 次回から2回にわたって、なぜ財政出動の基準を2%のインフレ目標にするべきではないのかを説明します』、いつもの「デービッド・アトキンソン氏」の具体的な提言と異なり、今回は肝心の「生産的政府支出」についての説明が不足し、説得力を欠くようだ。次回の「インフレ目標」ぶ期待しよう。
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