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働き方改革(その35)(若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」、日本企業でブーム 「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている、東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる) [経済政策]

働き方改革については、10月23日に取上げた。今日は、(その35)(若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」、日本企業でブーム 「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている、東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる)である。

先ずは、12月1日付け東洋経済オンライン「若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470783
・『インターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグワーク」。柔軟で自由な働き方として若者には魅力的に映るが、その実態は「個人請負」であり、事実上の無権利状態に置かれているなど、問題点は山積している。同様の問題が発生している諸外国では、すでに対策も進められつつある。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」2日目の第2回は、ギグワークの法的な問題点について、日本の労働問題に加え海外事情にも詳しい東京法律事務所の菅俊治弁護士に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは菅俊治弁護士の回答)(1日目の記事はこちらからご覧ください)。 【2日目の記事】第1回:若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 第3回:「最低賃金も稼げない」米国ギグワークの衝撃実態 最大の問題は「あらゆる労働法規の脱法」』、興味深そうだ。
・『Q:台頭するデジタルプラットフォーム型ビジネスなどでサービスを提供する「個人請負」という働き方にはどんな問題があるのでしょうか。 A:最大の問題はあらゆる労働法規の脱法だ。委託された業務に対して報酬が支払われる形式のため、時間外、休日、深夜労働手当などはつかない。また最低賃金の保障や解雇規制もなく、職を失っても失業保険が使えない。 そのため、実態としては継続的な労務提供がなされているにもかかわらず、プラットフォーマー側の一存で、いつでも「アカウント停止」とされて仕事を失うリスクがある。報酬体系もブラックボックス化が進み、かつ一方的で著しい不利益変更がなされるケースもある。 さまざまなプラットフォーム型ビジネスが、コロナ禍で急拡大した。各プラットフォーマーとも立ち上げ期こそは、働き手の確保と囲い込みのために高い報酬を約束するなど好条件を提示するが、一定の寡占的なポジションを確保すると手のひらを返すように条件の切り下げへと転じている。 とりわけ最近問題となっているのが、収入維持のために相当無理して長時間労働を余儀なくされている人が増えている点だ。長時間労働による過労に伴う事故も発生している。労災保険も適用されず、また事故相手への補償も個人請負の自己責任が問われる場合すらある。 多くの場合で労働法が適用されるべきにもかかわらず、未解決、未整理のまま放置されているというのが日本の現状だ。) Q:労働法規以外にも問題は多いですね。 A:個人請負は年金や健康保険も全額自己負担で、国民健康保険、国民年金に加入することになる。会社側負担分がある労働者に比べて、負担が重い。また貨物運送や食品衛生などの各業法的な規制についても、誰が公的な責任を負うのかがあいまいにされている。 そんな個人請負が労働強化にまで直面しているというのは、相当危機的な状況だと思っている。こうした働き方が出始めたときから、上記のような問題が生じることはわかっていたはずなのに、厚生労働省も経済産業省もきちんとした手立てを取ろうとしなかった。また裁判所に救済を求める動きも進んでいない』、「立ち上げ期こそは、働き手の確保と囲い込みのために高い報酬を約束するなど好条件を提示するが、一定の寡占的なポジションを確保すると手のひらを返すように条件の切り下げへと転じている。 とりわけ最近問題となっているのが、収入維持のために相当無理して長時間労働を余儀なくされている人が増えている点だ」、「厚生労働省も経済産業省もきちんとした手立てを取ろうとしなかった」、由々しい問題だ。
・『「労働基準法上の労働者性」のハードルが高い  Q:日本ではまだプラットフォーマーを相手にした訴訟は多くないですね。なぜなのでしょうか。 A:日本では残業代や労災補償、失業給付などの対象となる「労働基準法上の労働者性」が裁判所で認められるためのハードルが高い。 (菅弁護士の略歴はリンク先参照) 自車を持ち込む形のトラック運転手の労働者性をめぐって、最高裁判所は運転手がその会社の運送業務に専属的にかかわり、運送係の指示を拒否する自由はなく、毎日の始業終業時間も事実上決められていたケースでも、労基法上の労働者性を否定した(横浜南労基署長事件、1996年11月判決)。 この最高裁判決に沿えば、始業・終業時間は自由で、サービス提供の拒否も可能なプラットフォーム型ビジネスの個人請負が労基法上の労働者性を認められるためのハードルはかなり高い。弁護士側にも容易ではないという認識が広がっているのは事実だ。 ただ、日本とは異なり諸外国では個人請負の救済に向けた議論や動きが急速に進んでいる。こうした海外からの波が、遅からず日本にも来るとみている。 Q:個人請負をめぐり、他の先進諸国ではどういった流れになっているのでしょうか。 A:まずわかりやすいのはフランスで、日本の最高裁に当たる破棄院はここ数年、従来の方針を転換して「ウーバーイーツ」のような料理配達人やウーバータクシーの運転手の労働者性を認めるようになった。GPSによる監視と指揮命令、アクセス停止などの制裁、報酬の一方的決定などが考慮されたとみられている。同時に立法的救済にも着手している。 イギリスは立法によって「被用者(employee)」を対象にしたものと、より広い概念の「労働者(worker)」を対象としたものに分かれているが、やはり最近の最高裁判決で、ウーバータクシーの運転手を「労働者」だと認定し、最低賃金の適用や有給休暇の付与などを認めた。 Q:アメリカは州レベルでも活発な動きがあるそうですね。 A:激しいせめぎ合いが起きているのが、カリフォルニア州だ。同州の最高裁はプラットフォーム型ビジネスの個人請負が独立した事業主であることの証明を、雇い主側に課す判決を出した。 これに対してウーバーなどプラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた』、「カリフォルニア州」で「プラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた」、リベラルな州なのに、ウーバーなどの抵抗が通ったとは意外だ。
・『最低賃金や安全衛生の規制の対象となるケースも  この点をめぐる争いは今でも議論や訴訟が続いているが、アメリカのほかの州でもさまざまな動きがある。労働者性が認められない独立事業主とされても、最低賃金の規制や安全衛生の規制の対象とされるケースも出始めている。 バイデン政権は、先のカリフォルニア州のような立証責任を雇い主側に課すモデルを連邦レベルで採用する法案を議会に提出し、下院では可決されている。 Q:改めて、日本の対応の遅れが目立ちます。 A:日本でも今春、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が定められたが、中身は労災補償の特別加入制度の一部拡大といった限定的なものにとどまる。 プラットフォーム型ビジネスは今後、さらに広い分野に浸透するだろうことは間違いない。アプリによる指示や事実上の拘束、ランキングや点数化などによるコントロールなどの従来とは異なる実態をしっかり踏まえたうえで、そこで働く個人請負の就業実態に即した労働者概念の見直しは喫緊の課題だろう』、日本の行政も、問題を放置することなく、実態調査やそれに「即した労働者概念の見直し」を積極的に取組むべきだろう。

次に、12月15日付け東洋経済Plus「日本企業でブーム、「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29052
・『日本で注目されているジョブ型雇用は、欧米で採用されている本来のジョブ型雇用とは大きくかけ離れている。ジョブ型雇用の専門家の話をもとに、その功罪を整理した。 フジテレビと博報堂、三菱ケミカル、それに味の素――。 大手企業の間でここ2年の間、共通した動きがあった。それは50歳以上を対象とする希望退職を募ったことだ。日本では今、こうした人員整理が目立っている。 欧米で採用されている「ジョブ型」と呼ばれる雇用形態のもとでは、このような形での退職募集は通常考えられない。大した仕事ができないまま歳を重ねても、日本のように年齢をもとに退職を請われることはない』、それはそうだろう。
・『日本型雇用は「甘くない」  雇用体系を整理し、欧米型の雇用を「ジョブ型」、日本型雇用を「メンバーシップ型」などと名付けたのは、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏だ。濱口氏は「日本のメンバーシップ型雇用がジョブ型雇用と比べて甘いと思うのはとんでもない。働かない50代が許されないという厳しさがある」と話す。 「年功序列」「終身雇用」といった特徴を持つメンバーシップ型雇用は、ともすればぬるま湯のようにも思われてきた。「職能等級制度」とも呼ばれ、年齢や勤続年数に応じて段階的に処遇(給与やポスト)も向上する。しかし、裏を返せば、本来はそれだけの結果を求められるということだ。 一方、欧米のジョブ型雇用は、「職務等級制度」と呼ばれるものだ。企業を人の集まりではなく、ジョブの集まりと見立て、ジョブの価値に値段をつける。ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)をつくり、職務内容や責任範囲、勤務地、必要なスキルをあらかじめ明確に示す。そして、その職務の椅子に座るのにふさわしい人を採用する。 ジョブ型雇用では年齢や勤続年数を重ねても、昇進や昇給をすることはない(ただし若年期のみ、最初の数年は一括で昇給することがある)。そればかりか、成果や能力、意欲も一切考慮しない。なぜならばジョブ型雇用ではごく一部の幹部層を除き、社員1人ひとりの仕事内容や能力の評価を行わないからだ。働きぶりには関係なく、あらかじめ職務につけられた価値(値段)の賃金のみが支払われる。 そのため、20代であるジョブに就き、そのまま同じ職務で働き続ければ、50代になっても昇進することはない。ベースアップといった全社的な賃金水準の引き上げを除けば、給与が上がることもない。その代わり、日本のように「働きぶりが高い賃金に見合わない」などと中高年社員が冷たい目で見られることはない。 かつての日本では「働きぶりは微妙だが、中高年なので高給取り」の社員を抱えている余裕があった。年功序列のもとでは、中高年社員の給与は高い一方で、若手社員の給与を低く抑えられる。40~50代の社員数と20~30代の社員数のバランスがとれている間は、仕事ぶりに見合っていない中高年社員の給与を抱えることができていた。 だが、「人口構成が変わり、多くの有名企業では40代や50代が一番大きなブロック(人数)になった。メンバーシップ型雇用が想定していた企業内人的資源のありかたからすれば矛盾をはらんだ構成になり、大した仕事はしないが給与は高いという人をたくさん抱えることは企業にとって非常に大きなマイナスになってきている」(濱口氏)。 この深刻な問題は、昨日今日の話ではない。1990年代後半以降、この日本型雇用の矛盾を是正しようと、「成果主義」を導入する企業が相次いだ。だが、成果主義の多くは失敗に終わっている。それはなぜか』、「ジョブ型雇用ではごく一部の幹部層を除き、社員1人ひとりの仕事内容や能力の評価を行わないからだ。働きぶりには関係なく、あらかじめ職務につけられた価値(値段)の賃金のみが支払われる」、なるほど。
・『日本企業は成果を「働きぶり」で評価  欧米と違い、日本では長年、「働きぶり」という主観的、抽象的なものさしで社員を評価してきた。例えば「あいつは夜中まで頑張っている」「いつも周りに気配りをしている」「意欲が高い」といった情意考課の要素を入れた、客観性の低い評価だ。 メンバーシップ型雇用は社員が「なんでもやる」前提のため、本人が希望しなくても社命で異動や転勤を命じることができる。野球でいうと、野手を希望しているのにチーム都合で投手をやれと言われるようなものだ。しかも、成果を出せなければ、評価が下がってしまう。 結果的にメンバーシップ型雇用のままでの成果主義の拡大は、多くの社員が評価やそれに伴う処遇に不満を持って退社したり、意欲を失ったりするという結果に終わった。 その代わりに注目されているのがジョブ型雇用というわけだ。だが、濱口氏は「成果主義のリベンジとしてジョブ型雇用を導入しようとしているのだろうが、どうも根本的な勘違いがあるようだ」と懸念する。というのも、欧米のジョブ型雇用では原則的に幹部を除く社員の成果や能力を評価せず、成果主義とは対極にあるからだ。 日本企業が「ジョブ型」と呼ぶ雇用形態はたいていの場合、職務等級制度ではなく、役割等級制度だ。役割等級制度では社員が担当する職務を固定化し、責任範囲もある程度示したうえで、責任や役割をどれだけ果たしたかで評価する。社員の能力や成果も見る点が、ジョブ型雇用とは大きく異なる。 日本で欧米型のジョブ型雇用の導入が進まないのは、職務の価値を評価して値付けしてこなかったためだ。すでにそれぞれの職務に社員がついている中、この仕事はいくら、と後から値付けをすることは難しい。また、このスキルや資格があるからこのジョブに就けるといった考え方やノウハウも持ち合わせていない。 加えて、日本の高等教育は実学よりも教養教育を志向しており、多くの場合では学生が学ぶ中身が仕事と直結しない。そのため、企業の新卒採用では職務を限定しない総合職採用が多い。大半の学生は仕事で使える専門性を持っていないため、採否は成長可能性(ポテンシャル)を重視して決めるのが一般的だ。入り口の段階からして、職務に適性のある人材を採用する欧米のジョブ型雇用とずれている』、「日本企業が「ジョブ型」と呼ぶ雇用形態はたいていの場合・・・役割等級制度だ。役割等級制度では社員が担当する職務を固定化し、責任範囲もある程度示したうえで、責任や役割をどれだけ果たしたかで評価する。社員の能力や成果も見る点が、ジョブ型雇用とは大きく異なる」、「入り口の段階からして、職務に適性のある人材を採用する欧米のジョブ型雇用とずれている」、確かに日本では「欧米のジョブ型雇用」は採用不可能だ。
・『雇用制度に正解はない  メンバーシップ型雇用に比べると、役割等級制度は求める役割と成果が明確かつ具体的なため、評価される社員の納得度は高いと言えそうだ。上述の通り、年功序列のメンバーシップ型雇用制度を維持することには限界があるが、単に成果主義を拡大するだけでは失敗する。そうした反省のうえに、日本流ジョブ型雇用として役割等級制度が広がっているとみられる。 そもそも、欧米のジョブ型雇用も完璧なわけではない。 欧米のジョブ型雇用では働きぶりや能力評価といった曖昧なものではなく、公的な資格がモノをいう。会社で上の職務に就くには、自分の実力を客観的に証明する資格を取り、それを武器に上の職務の公募に手を挙げる方法が一般的だ。だが、資格があるからといって必ずしも実務で「使えるヤツ」なのかと言えば、そうとも限らない。逆もまたしかりだ。 濱口氏によると、そのためか、欧米では旧来の日本型雇用のような要素を少し採り入れる動きも出てきているという。「パフォーマンスペイ」と称し、仕事の成果も評価して報酬を決める傾向が以前と比べれば強まってきたという。 濱口氏は「欧米のジョブ型雇用はかなり合理的で公平性を第一にしているが、そこで測れない指標が抜け落ちてしまっている。向こうではそこへの問題意識が出てきている」と指摘したうえで、「どの雇用制度が正解と言うつもりはない。日本企業がこれまでの賃金処遇制度に問題意識を持ち、何とかしようとして新たな人事制度を採り入れようとしていること自体は理解できる。ただ、制度の違いや中身を本質的によく理解したうえで考えるべきだ」と話す。 ジョブ型雇用は職務が固定化され、専門性が高まる一方、「つぶし」が利かなくなる一面を持つ。その職務がAI(人工知能)に取って代わられたりして、消えてなくなる可能性も否定できない。雇用の大転換期にある今、働く側が身の振り方を主体的に考えることが重要になる』、「雇用の大転換期にある今、働く側が身の振り方を主体的に考えることが重要になる」、確かにその通りだ。

第三に、12月15日付け東洋経済Plus「東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29063
・『日本企業に特有のメンバーシップ型雇用を続ける素材メーカー大手の東レ。「ジョブ型よりも会社は成長できる」という同社の日覺昭廣社長に聞いた。 素材メーカー大手の東レはいわゆる日本のメンバーシップ型雇用を続けており、終身雇用も堅持している。ジョブ型の本場、欧米での勤務も経験したうえで「終身雇用のほうが会社は成長できる」と主張する日覺昭廣社長に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは日覺氏の回答)』、「欧米での勤務も経験したうえで「終身雇用のほうが会社は成長できる」と主張」、説得力がありそうだ。
・『ジョブ型という言葉が独り歩き  Q:日本でもメンバーシップ型雇用を見直し、ジョブ型に近い雇用制度を導入する動きが広がってきました。どうみていますか。 A:ジョブ型という言葉だけが独り歩きしてメンバーシップ型と比較されているが、本来は二律背反するものではないはずだ。 ジョブ型雇用では専門性とスキルさえあればいい。手っ取り早く、中途採用で外から人材を連れてきてもいい。われわれもそうだが、メンバーシップ型が中心の企業でも、職種や場合によってはそのようにしている。いわばジョブ型とのハイブリッドだ。 企業の成熟度によっても判断は違ってくる。新興企業では社員を一から教育しているようでは話にならないので、職務への適性を持つ人材を外部から集めるのが普通だ。 しかし、10年、15年経ってきてある程度成長してくると、新卒できちんと採用し、社内で人材を育成することが重要になってくる。会社でさまざまな経験を積んで、いろいろなことを理解し、専門的な知識を持った人がほしくなる。つまり、(ジョブ型とメンバーシップ型の)どちらを採るのかは企業の背景によっても変わってくるだろう。 Q:東レの人事制度のベースはメンバーシップ型です。 A:それは、会社というのは単にモノを作るだけでなく、ビジョンをしっかりと持つべきだからだ。ジョブを中心に考えるのであれば、そういうもの(ビジョンに共感してくれるかどうか)は全部無視して、適性がある人を集めればいい。だが、それだけではしっかりした企業ブランドを確立できない。 こういうやり方では、会社に帰属意識を持ってもらい、会社のために頑張ろうという気持ちを持ってもらうのは難しい。ジョブ型は決まった職務の内容に応じて報酬を支払うが、さらに「当社の理念までよく理解して働いてくれ」と言っても、「そんなことは契約には書いてない」と思われてしまうかもしれない。 (日覺氏の略歴はリンク先参照)』、「会社というのは単にモノを作るだけでなく、ビジョンをしっかりと持つべきだからだ。ジョブを中心に考えるのであれば、そういうもの(ビジョンに共感してくれるかどうか)は全部無視して、適性がある人を集めればいい。だが、それだけではしっかりした企業ブランドを確立できない」、立派な経営理念だ。
・『終身雇用のほうが会社は強くなる  :東レでは終身雇用の維持も掲げています。 A:私は、終身雇用のほうが会社は強くなると思っている。日本ではわれわれみたいな企業が10年先、20年先に向かって研究開発を続けている。東レの事業でいえば、例えば水処理膜は1968年から始まって、最初にきちんとしたものができたのは1980年。12年かかっている。 どんどん改良して今がある。今のアメリカのような短期の利潤を追求する金融資本主義のもとで、こんなことはできないだろう。長期的な視野で事業をやるには会社や事業のベースを理解したうえで、さまざまな技術や知識を蓄積していることが必要だ。そのためにも、人材の育成や終身雇用は非常に重要だと思っている。 Q:「年功序列」についてはどう思いますか。 A:単に年齢が上だからというだけではなく、年齢に応じて知識と経験が付き、仕事をするうえでの能力も上がっている場合が多いので、(結果的に)年齢が上の人の給料が高くなる場合が多い。したがって、日本がいくら終身雇用で年功序列だと言っても、能力が上がらない人は職務も上がらず、給料もそこまでは上がらない。終身雇用は年功序列だから競争がないという人もいるが、実際にはそんなことはない。 ただし、人が成長をしていくには必要な時間というものがある。若い時に伸びる人もいれば、中高年になってから伸びる人もいる。ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる。 Q:日本でジョブ型を導入したと称する企業では、ジョブローテーションをやめてポストを公募制にし、「自律的なキャリア形成を図れるようにした」という趣旨の説明をしています。メンバーシップ型では社員が意思を反映してもらうことは難しいのではないですか。 A:東レではまずキャリアシートをつくって社員を教育している。一人前になるには8年間かかるとみて、職種ごとに必要な技術や知識、経験を書き出し、それをしっかりマスターしてもらう。 シートを通じ、社員には将来像も明確にしてもらっている。この職種で一人前になるにはこういう現場の経験もいるよ、という説明もしっかりやる。いろいろな仕事を経験させるのはあくまでも育成に必要なためであり、育成に関係ないものを経験させるわけではない。 東レでは以前から、社内公募制度もある。「この人にはこの仕事をやったほうがいいじゃないか」と上司らが思っていても、本人はどうしても別の仕事をやりたいと思っているかもしれない。そういう人が手を挙げて、希望する部署に行ける機会を設けている。希望とのミスマッチを防ぐ意味がある。 こうしたことは、別にメンバーシップ型をやめないとやれない話ではない。終身雇用のもとで、ジョブローテーションをしながらでもできることだ』、「人が成長をしていくには必要な時間というものがある。若い時に伸びる人もいれば、中高年になってから伸びる人もいる。ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる。 ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる」、なるほど。
・『教えたメモがゴミ箱に  Q:ジョブ型で社員を育成していくのは難しいのでしょうか。 A:ジョブ型だと、社員は他の人に仕事を教えない。私はアメリカとフランスに10年いて、それを嫌というほど経験している。 アメリカにいたとき、若い人たちにもこうやって教えたらいいよと仕事の仕方をメモに書いて社員に渡したら、後でそれがゴミ箱に捨てられていたこともあった。ジョブ型では、若い人たちに自分が知っているやり方を教えて、彼らが同じレベルのことができるようになったら、いつか自分の椅子(職務)が奪われるかもしれないと考えてしまう。だから絶対に他の人に仕事は教えない。あれには驚いた』、「ジョブ型では、若い人たちに自分が知っているやり方を教えて、彼らが同じレベルのことができるようになったら、いつか自分の椅子(職務)が奪われるかもしれないと考えてしまう。だから絶対に他の人に仕事は教えない。あれには驚いた」、アメリカとフランスに10年いて」実感しただけに、説得力がある。
・『ジョブ型の能力発揮はよくて100%  Q:日本企業の間で雇用制度が見直されているのは、右肩上がりの経済がとっくに終わり、多くの日本企業が厳しい事業環境に直面しているからではないでしょうか。 A:日本企業の事業環境が厳しくなっていることは事実だろう。だから派遣社員を増やすなど、これまでも工夫や対策をしている。最近は日本企業も欧米のように金融資本主義的なことを外部から言われてしまうので、(雇用も含めた経営方針が)フラフラとしてしまっているのが現実なのではないか。 しかし、(メンバーシップ型とジョブ型のうち)どちらに競争力があるのか。現実的に給料を下げられたり、首を切られたりして喜ぶ人はいないはず。日本は現場と現実をきちんと理解して、何が本当にいいやり方なのかを考える必要がある。日本企業には、日本の良さを見失わないようにする気骨を持ってほしい。 Q:昔と比べて事業の変革スピードが速くなっている中、事業環境が変わっても、メンバーシップ型では以前と同じ社員を残しながら対応していかなければなりません。 A:その点はみんな悩むところだと思う。 それでも、東レでは雇用をしっかり守って、人を大事にして、思う存分能力を発揮してもらうことを重視している。そういう形なら本人の能力が100%、150%出る可能性がある。 しかし、(契約で決められた職務さえできればいい)ジョブ型だと、(本人が発揮する能力は)よくて100%。悪くすると70%や80%にとどまる。ジョブ型では会社のカルチャーとか方針に共感できるかどうかを考慮していない。人間はモチベーションの有無で全然パフォーマンスが違ってくる。 ジョブ型というのは、その職務についての能力がある人を雇って力を発揮してもらう。だが、会社も成長していくわけだから、われわれが期待するのは社員にはさらに上を目指してもらうこと。そのためには、社員にも(メンバーシップ型で)基礎から時間をかけて成長してもらうことが大事なのではないか』、「会社も成長していくわけだから、われわれが期待するのは社員にはさらに上を目指してもらうこと。そのためには、社員にも(メンバーシップ型で)基礎から時間をかけて成長してもらうことが大事なのではないか」、同感である。
タグ:働き方改革 (その35)(若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」、日本企業でブーム 「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている、東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる) 東洋経済オンライン 「若者がハマる「ギグワーク」脱法的仕組みの大問題 労働問題に詳しい弁護士が指摘「日本は対応遅い」」 菅俊治弁護士 「立ち上げ期こそは、働き手の確保と囲い込みのために高い報酬を約束するなど好条件を提示するが、一定の寡占的なポジションを確保すると手のひらを返すように条件の切り下げへと転じている。 とりわけ最近問題となっているのが、収入維持のために相当無理して長時間労働を余儀なくされている人が増えている点だ」、「厚生労働省も経済産業省もきちんとした手立てを取ろうとしなかった」、由々しい問題だ。 「カリフォルニア州」で「プラットフォーマー側が猛反発して、州の住民投票でウーバーなどのアプリによる運転手を独立事業主することを賛成多数で承認させた」、リベラルな州なのに、ウーバーなどの抵抗が通ったとは意外だ。 日本の行政も、問題を放置することなく、実態調査やそれに「即した労働者概念の見直し」を積極的に取組むべきだろう。 東洋経済Plus 「日本企業でブーム、「欧米流働き方」の光と影 日本の「ジョブ型雇用」はここが間違っている」 それはそうだろう。 「ジョブ型雇用ではごく一部の幹部層を除き、社員1人ひとりの仕事内容や能力の評価を行わないからだ。働きぶりには関係なく、あらかじめ職務につけられた価値(値段)の賃金のみが支払われる」、なるほど。 「日本企業が「ジョブ型」と呼ぶ雇用形態はたいていの場合・・・役割等級制度だ。役割等級制度では社員が担当する職務を固定化し、責任範囲もある程度示したうえで、責任や役割をどれだけ果たしたかで評価する。社員の能力や成果も見る点が、ジョブ型雇用とは大きく異なる」、「入り口の段階からして、職務に適性のある人材を採用する欧米のジョブ型雇用とずれている」、確かに日本では「欧米のジョブ型雇用」は採用不可能だ 「雇用の大転換期にある今、働く側が身の振り方を主体的に考えることが重要になる」、確かにその通りだ。 「東レ・日覺昭廣社長が語る終身雇用の可能性 日本型の「終身雇用」のほうが会社は強くなる」 日覺昭廣社長 「欧米での勤務も経験したうえで「終身雇用のほうが会社は成長できる」と主張」、説得力がありそうだ。 「会社というのは単にモノを作るだけでなく、ビジョンをしっかりと持つべきだからだ。ジョブを中心に考えるのであれば、そういうもの(ビジョンに共感してくれるかどうか)は全部無視して、適性がある人を集めればいい。だが、それだけではしっかりした企業ブランドを確立できない」、立派な経営理念だ。 「人が成長をしていくには必要な時間というものがある。若い時に伸びる人もいれば、中高年になってから伸びる人もいる。ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる。 ある程度時間も与えながら、人のモチベーションをうまく引き上げることが会社の強さになってくる」、なるほど。 「ジョブ型では、若い人たちに自分が知っているやり方を教えて、彼らが同じレベルのことができるようになったら、いつか自分の椅子(職務)が奪われるかもしれないと考えてしまう。だから絶対に他の人に仕事は教えない。あれには驚いた」、アメリカとフランスに10年いて」実感しただけに、説得力がある。 「会社も成長していくわけだから、われわれが期待するのは社員にはさらに上を目指してもらうこと。そのためには、社員にも(メンバーシップ型で)基礎から時間をかけて成長してもらうことが大事なのではないか」、同感である。
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