日本型経営・組織の問題点(その12)(なぜ おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活、社員の責任と役割を明確化 若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景) [経済政治動向]
日本型経営・組織の問題点については、8月9日に取上げた。今日は、(その12)(なぜ おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活、社員の責任と役割を明確化 若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景である。
先ずは、10月26日付けダイヤモンド・オンライン「なぜ、おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/284715
・『ウィズ・コロナによって会食や集団行動が規制される中、政治家による大人数での会食や会合などが相次いで報道されたことは記憶に新しい。また会社においてもおじさんたちは対面での打ち合わせや会議を熱望していることも多い。このように中高年になるほど集団行動かつ対面を重視したがる理由は何なのか。『大人力検定』(文藝春秋)などの著者であり、大人の振る舞いに詳しいコラムニストの石原壮一郎氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)』、身につまされそうだが、興味深そうだ。
・『仕事に絡めないと人に会えない悲哀 コロナ禍によって3密が避けられ、仕事でもプライベートでも以前のような対面を基本とするあらゆるコミュニケーションが制限された。にもかかわらず、政治家らが大人数で会食をしたり、中高年のおじさん社員がテレワークに苦言を呈すなどの話は後を絶たない。また、緊急事態宣言の期間中は比較的減少したが、解除後は部下を引き連れてランチや飲み会に行く姿も目にするようになった。 このように改めて振り返ると、おじさんほど公私を問わず対面を重視し、なにかと群れて行動したがる傾向があるのではないだろうか。その理由を石原氏はこう分析する。) 「かつての日本の企業文化は組織という群れの中にいれば生活をまるごと会社が守ってくれるものでした。組織で役割を果たしていれば、よほどのことがない限り、その群れから追い出されることもなく、安心・安全だったのです。そのため、現在のおじさんの多くは、若手の頃から群れの一員となることに腐心し、今も同じ習慣と価値観が残っているのです」 先輩や同僚と昼食や飲みに行き、毎日会社で顔を合わせることは、群れの一員を自覚し、結束するという儀礼でもあった。 ただ、トヨタ自動車の豊田章男社長による「終身雇用を守っていくのは難しい」という発言や副業の解禁、大企業でも相次ぐ早期退職制度など、組織や雇用のあり方は平成から令和にかけて、めまぐるしく変化している。 このような状況にもかかわらず、かつてと同じように社内の人間を中心に群れるという行動原理を中高年は変えられないのであろう。 そのような長年の積み重ねによる行動原理の他にも、おじさんならではの悲哀と寂寞(せきばく)感が群れることには表れているという。 「おじさんの相手はおじさんしかしてくれないのです。父親として尊敬されている人は少ないので家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです。年を取るほど気軽に遊びや食事に誘える友人も少なくなるので、社会的地位や仕事の必然性を絡めないと誰かと会うこともなくなりますから」』、「家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです」、寂しい限りだ。
・『変化への不安から若手と群れたがる このような会合は当人同士でやってほしいものだが、往々にして若手や後輩も巻き添えになる。おじさんたちの雑談を聞かされ続けるだけの会議や、行きたくもない飲み会に有無を言わさず駆り出されるということは、多くの社員が経験しているだろう。このような行動をしてしまうおじさんに石原氏は苦言を呈す。 「おじさんたちは『俺らの何気ない話も若手には勉強になるはず』と思いがちですが、それはあまりにも自らを美化しすぎています。多少は有意義な話題があるかもしれませんが、現代の多くの若者は好きでもないおじさんから何かを得ようと思いません。知りたいことはネットでいくらでも検索できますし、そもそも群れ(組織)にいれば安心という意識も薄いので、貴重な時間を削っておじさんに付き合うメリットも感じません」 さらに若者と群れたがるおじさんには、ある種の焦りがあると石原氏は語る。 「インターネットやパソコンなどテクノロジーの変化への対応力を欠くおじさんは多く、柔軟に対応する若者に差をつけられていないかと不安になっています。このようなおじさんたちは会議や飲みの場で人生経験などを語ることで、自分はまだ若者よりも秀でていると思い込みたいのです。また、自分がバリバリ仕事をできないと自覚する上司に残るのは『部下に慕われる』という矜持だけなので、彼らは若者にとって迷惑な群れ方を強要している可能性が高いです」 コロナによって新しいコミュニケーションツールや仕事の進め方などが急激に変化したが、その反動でより群れたい欲が強くなっているのかもしれない。 「コロナによって不安や焦りはますます強くなっています。そうした気持ちを慰めてくれる場所がキャバクラなどの、いわゆる夜のお店だった。お金を払って仕事に関する愚痴をこぼし『俺に言わせりゃ』と気勢を上げられるオアシスだったのです。しかし、コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」 緊急事態宣言の解除を一番待ち望んでいたのは、このように行き場を失ったおじさんたちだったのかもしれない』、「コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」、「身近な人」こそいい迷惑だ。
・『コロナ禍で増えるオンライン上の群れ ただ、現在はテレワークや飲食店の時短営業、人数制限で思うように人と会えない。こうした中で増えつつあるのが、LINEグループやメーリングリストといった「オンライン上の群れ」を作りたがるおじさんたちである。 「やたらとLINEグループを作りたがったり、『今日は中秋の名月ですね』などと仕事と関係のない投稿やメールを送ったりするおじさんもいます。対面で話せない寂しさをオンラインで晴らそうとするわけですが、他のメンバーにとっては興味がないか、もしくは迷惑なだけ。『やめた方がいいですよ』と言うと逆恨みされるので、メンバーは精いっぱいの抵抗として既読スルーするわけですが、そのような空気を察することができないおじさんも多い。彼らは、上司や先輩というだけで若手が構ってくれるという価値観から抜け出せていません」 このような投稿は、時として部下の労働意欲をそぐ効果も働いてしまうので、上司の役割としては本末転倒だ。 ここまで散々、若者に群れを強要するおじさんについて書いてきたが、決して世代間の対立をあおりたいわけではない。石原氏も、おじさんをあまりに忌避する若者に対してこう警鐘を鳴らす。 「おじさんを老害とやゆし、あたかも世代の仮想敵のように考えるのも危険です。そこには、おじさんを否定することで自分たちの価値やプライドを保っている側面があり、おじさんたちが『最近の若者は……』と話すことと構造は同じなのです。実際、高慢で群れたがる先輩にはなるまいと思っていたおじさんも多いのですが、期せずしてそうなってしまった。若者にとっても明日は我が身なのです」 大抵の人間は、「こんな大人にはなるまい」と思っていたのに、気づけばそんな大人になっているものだ。今の若者も30年後には、迷惑な群れるおじさんになってしまう可能性はある。最後に、石原氏はおじさんのあるべき振る舞い方について、次のように話す。 「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます。こうした状況下において『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『オイ、行くぞ』という上から目線ではなく、『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。また、プライベートでは一人でできる趣味を見つけ、会社や家庭以外の居場所を見つけると迷惑な群れ方を予防できます」 これらに気をつければ時代や周りに取り残されず、慕われる中高年になれるはずだ』、「「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます」、「『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。大変な時代になったものだ。
次に、12月24日付け東洋経済Plus「社員の責任と役割を明確化、若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29234#contd
・『総合化学大手の三菱ケミカルが大胆な人事改革を進めている。日本的な職能等級制度を廃止し、若手でも成果次第で大きく昇進することが可能になった。その狙いは何か。 年功序列にとらわれない「ごぼう抜き人事」で大抜擢――。 日本では、社長人事など経営幹部層の間ではよくある話でも、一般社員の間で起こることはこれまでほとんどなかった。それが、国内最大手の総合化学メーカー・三菱ケミカルホールディングスの中核会社の三菱ケミカルで、現実的な話になった。2021年の春、ジョブ型に近い新たな人事制度を導入したからだ。 「すでに飛び級のような例もいくつか出てきている。従来よりも、若い世代の登用が進んでいる。本人にスキルさえあれば、年齢関係なしにやりたい仕事に就けるようになってきている」 アメリカの製薬大手ファイザーの日本法人を経て2018年3月に招聘され、三菱ケミカルで大胆な人事制度改革を進める人事戦略担当の取締役、中田るみ子氏はこう語る』、さすが「三菱ケミカルホールディングス」の社長は外国人だけあって、思い切ったやり方だ。
・『年功序列賃金を廃止 三菱ケミカルのこれまでの人事制度は管理職と一般社員とで大きな違いがあった。三菱化学など3社が統合して発足した2017年4月から、管理職では欧米のようなジョブ型雇用(職務等級制度)を採り入れていた。ただ、一般社員の人事制度のほうは前身からほぼ変わらず、年功序列になりやすい日本型のメンバーシップ型雇用(職能等級制度)がベースのものだった。 一般社員は働きぶりに加え、経験につながる勤続年数などの要素も加味して評価し、処遇を決めていた。飛び級はなく、昇級は段階的に一歩ずつ上がる。出世に差がつかないわけではないが、昇級の蓄積がモノを言うため、年齢が高いほどよいポストや高い給与を得やすかった。 社員は会社命令に従い、転勤も含めて異動するのが当たり前だった。その代わり、与えられた仕事さえこなして働けば、昇級昇格がほぼ自動的に与えられてきたという。 三菱ケミカルはそうした職能等級制度を2021年4月に廃止し、年功序列の要素がない役割等級制度に変えた。職務(ジョブ)はある程度固定して責任の範囲や求める役割を明確化し、職務の責任の重さや役割貢献への評価に応じて処遇を決めるようになった。これにより、若手でも成果次第で大きく昇進することが可能になった。 本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止した。事業拡大や社員の退職により欠員が出たポストは、社内公募か中途採用でまかなう。公募を通過すれば、社内FA(フリーエージェント)のように、やりたい職務に移ることができる。公募や中途採用で欠員が補充できない場合には、会社命令で異動をさせる可能性があるという。 人事制度を大きく変えた背景の1つが社会情勢の変化だ。中田氏は「例えば、転勤を理由に辞めてしまう人が少しずつ増えてきていた。これまでの制度ではそういう層に十分に応えられるようにはなっていなかった」と振り返る』、「本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止」は社員にはいいことだ。
・『「制約社員」とみなして人事改革 女性総合職や共働き世帯、親の介護をする人も増え、男性社員にも転勤を伴う異動命令を出しにくくなっている。また、少子化で若者の数が減少し、やりたい仕事を求めて転職する人も増えている。 そこで三菱ケミカルは、すべての社員を会社の都合だけでは動かせない「制約社員」(働く場所、時間、仕事内容などの労働条件に関して、何らかの制約がある社員のこと)とみなすことにした。その結果、社員が職務や勤務地を主体的に選ぶことができ、年齢や勤続年数といった属性に関係なく処遇が決まる設計の役割等級制度へ行きついた。 中田氏は「昔のように若くて健康な男性を数多く採れる時代は終わった。採用はこれからもっと難しくなっていくだろう。多様な人材にとって『魅力的な会社』に映るように、人事制度を改める必要があった」と話す。 人事制度を大きく変えたもう1つの要因がイノベーション推進の必要性だ。 中田氏は「グローバルでの競争という面でも(国境や事業間での)垣根がどんどん低くなってきている。社員が創造性を発揮できるようにしていかないと、会社がこのまま成長を続けていくことができなくなる」と危機感を口にする。 かつて主力事業だった化学系の汎用品は、今や中国や中東勢に価格面で押されて厳しくなっている。脱炭素の流れもダメ押しとなり、親会社である三菱ケミカルホールディングスは汎用品が多い石化事業と炭素事業を分離させる方針を発表したばかりだ。 今後の成長は、製品の高機能化や環境負荷の軽減といった付加価値をどれだけ生み出せるかにかかっている。同時に社員にも、より高いレベルの創造性が求められるようになってきている。 会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致する』、「会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致」、極めて合理的な選択だ。
・『降格・降級もありえる 新人事制度への移行に伴い、今後は昇格・昇給だけでなく降格・降給もありえるという。2020年12月には50歳以上の管理職を対象にした退職募集も行っている。三菱ケミカルHDの伊達英文CFOは退職募集を発表した2020年11月の決算会見で、「(新人事制度によって)若い人にポストを取られていく。忸怩たる思いをする人には(転職を)サポートする」と説明していた。 これまで年功序列の恩恵を受けてきた40~50代を中心に、新人事制度への移行によって大きく降格・降給している社員はいないのか。また、不満はないのか。 三菱ケミカルによると、「ある一定のポジションに着くためには、スキルや経験といった年功に一定程度比例する要素も必要なため、大幅な降格や減給になった事例は把握していない」という。中田氏も「昇格昇給は一気にポーンとやるが、降格・降給は、指導を含む話し合いを入れるなどの手順を踏んで段階的に行う」と説明する。 成果評価を強めると、社員の将来設計を難しくさせるおそれがある。20代後半から30代の社員でも、職能等級制度の賃金モデルで将来収入を見込んで住宅ローンを組んでいる人もいるだろう。旧人事制度時代のような、ほぼ自動的な昇格・昇給がなくなったことで社員が不安を抱き、逆に人材流出につながるおそれも否定はできない。 三菱ケミカル労働組合の堀谷俊志・中央執行委員長は、「(新人事制度の導入によって)必ずしも全員の賃金が向上するとは限らないことは、組合としても検討段階から懸念の1つだった」としたうえで、「それでも(会社と新人事制度で)合意したのは、中長期で雇用を守るためだ。急速な技術革新で、人の仕事が機械に取って代わられる可能性がある。社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる。レベルの高い仕事には賃金で応える必要がある」と文書で回答した』、「社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる」、なるほど。
・『人件費総額は増えていく 三菱ケミカルでは成果目標や評価に関する上司と部下の面談を今までの年3回から年5回に増やしたほか、評価者向けの研修なども実施する。 また、新人事制度の導入で人件費総額はむしろ増えると想定している。レベルの高い職務に就く社員がいっそう増えていけば、給与総額もさらに増えていく設計になっているという。 三菱ケミカルで人事制度改革のプロジェクトリーダーを務める労制人事部の杉浦史朗氏は「もともとの人事制度では年功の要素があったことで若い社員の給与のスタートライン(最初の水準)が低かった。(役割等級制度にして)職務のレベルを明確化したことにより、最低水準を引き上げている。一方で上の層は、職務レベル並みの賃金を維持している。結果的に給与が上がる人のほうが多いので総額も上がる」と説明する。 労組の堀谷氏は人件費総額の増加方針への評価は示しつつ、「課題は、会社がよりレベルの高い職務を従業員に本当に提示できるかどうか。また、従業員を育成できるかだ。それができなければ制度改革の目的を達成できない」とくぎを刺す。 新人事制度に基づく初めての評価と処遇は、2022年3月末で最初の1年が終わってから決まる。時間の経過とともに、社内での処遇格差が広がっていく可能性もある。それが実際に社員のモチベーションにどのように影響するのか。大胆な人事制度改革の本当の真価が問われるのはこれからになる』、「本当の真価」はどう出てくるのだろうか。
先ずは、10月26日付けダイヤモンド・オンライン「なぜ、おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/284715
・『ウィズ・コロナによって会食や集団行動が規制される中、政治家による大人数での会食や会合などが相次いで報道されたことは記憶に新しい。また会社においてもおじさんたちは対面での打ち合わせや会議を熱望していることも多い。このように中高年になるほど集団行動かつ対面を重視したがる理由は何なのか。『大人力検定』(文藝春秋)などの著者であり、大人の振る舞いに詳しいコラムニストの石原壮一郎氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)』、身につまされそうだが、興味深そうだ。
・『仕事に絡めないと人に会えない悲哀 コロナ禍によって3密が避けられ、仕事でもプライベートでも以前のような対面を基本とするあらゆるコミュニケーションが制限された。にもかかわらず、政治家らが大人数で会食をしたり、中高年のおじさん社員がテレワークに苦言を呈すなどの話は後を絶たない。また、緊急事態宣言の期間中は比較的減少したが、解除後は部下を引き連れてランチや飲み会に行く姿も目にするようになった。 このように改めて振り返ると、おじさんほど公私を問わず対面を重視し、なにかと群れて行動したがる傾向があるのではないだろうか。その理由を石原氏はこう分析する。) 「かつての日本の企業文化は組織という群れの中にいれば生活をまるごと会社が守ってくれるものでした。組織で役割を果たしていれば、よほどのことがない限り、その群れから追い出されることもなく、安心・安全だったのです。そのため、現在のおじさんの多くは、若手の頃から群れの一員となることに腐心し、今も同じ習慣と価値観が残っているのです」 先輩や同僚と昼食や飲みに行き、毎日会社で顔を合わせることは、群れの一員を自覚し、結束するという儀礼でもあった。 ただ、トヨタ自動車の豊田章男社長による「終身雇用を守っていくのは難しい」という発言や副業の解禁、大企業でも相次ぐ早期退職制度など、組織や雇用のあり方は平成から令和にかけて、めまぐるしく変化している。 このような状況にもかかわらず、かつてと同じように社内の人間を中心に群れるという行動原理を中高年は変えられないのであろう。 そのような長年の積み重ねによる行動原理の他にも、おじさんならではの悲哀と寂寞(せきばく)感が群れることには表れているという。 「おじさんの相手はおじさんしかしてくれないのです。父親として尊敬されている人は少ないので家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです。年を取るほど気軽に遊びや食事に誘える友人も少なくなるので、社会的地位や仕事の必然性を絡めないと誰かと会うこともなくなりますから」』、「家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです」、寂しい限りだ。
・『変化への不安から若手と群れたがる このような会合は当人同士でやってほしいものだが、往々にして若手や後輩も巻き添えになる。おじさんたちの雑談を聞かされ続けるだけの会議や、行きたくもない飲み会に有無を言わさず駆り出されるということは、多くの社員が経験しているだろう。このような行動をしてしまうおじさんに石原氏は苦言を呈す。 「おじさんたちは『俺らの何気ない話も若手には勉強になるはず』と思いがちですが、それはあまりにも自らを美化しすぎています。多少は有意義な話題があるかもしれませんが、現代の多くの若者は好きでもないおじさんから何かを得ようと思いません。知りたいことはネットでいくらでも検索できますし、そもそも群れ(組織)にいれば安心という意識も薄いので、貴重な時間を削っておじさんに付き合うメリットも感じません」 さらに若者と群れたがるおじさんには、ある種の焦りがあると石原氏は語る。 「インターネットやパソコンなどテクノロジーの変化への対応力を欠くおじさんは多く、柔軟に対応する若者に差をつけられていないかと不安になっています。このようなおじさんたちは会議や飲みの場で人生経験などを語ることで、自分はまだ若者よりも秀でていると思い込みたいのです。また、自分がバリバリ仕事をできないと自覚する上司に残るのは『部下に慕われる』という矜持だけなので、彼らは若者にとって迷惑な群れ方を強要している可能性が高いです」 コロナによって新しいコミュニケーションツールや仕事の進め方などが急激に変化したが、その反動でより群れたい欲が強くなっているのかもしれない。 「コロナによって不安や焦りはますます強くなっています。そうした気持ちを慰めてくれる場所がキャバクラなどの、いわゆる夜のお店だった。お金を払って仕事に関する愚痴をこぼし『俺に言わせりゃ』と気勢を上げられるオアシスだったのです。しかし、コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」 緊急事態宣言の解除を一番待ち望んでいたのは、このように行き場を失ったおじさんたちだったのかもしれない』、「コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」、「身近な人」こそいい迷惑だ。
・『コロナ禍で増えるオンライン上の群れ ただ、現在はテレワークや飲食店の時短営業、人数制限で思うように人と会えない。こうした中で増えつつあるのが、LINEグループやメーリングリストといった「オンライン上の群れ」を作りたがるおじさんたちである。 「やたらとLINEグループを作りたがったり、『今日は中秋の名月ですね』などと仕事と関係のない投稿やメールを送ったりするおじさんもいます。対面で話せない寂しさをオンラインで晴らそうとするわけですが、他のメンバーにとっては興味がないか、もしくは迷惑なだけ。『やめた方がいいですよ』と言うと逆恨みされるので、メンバーは精いっぱいの抵抗として既読スルーするわけですが、そのような空気を察することができないおじさんも多い。彼らは、上司や先輩というだけで若手が構ってくれるという価値観から抜け出せていません」 このような投稿は、時として部下の労働意欲をそぐ効果も働いてしまうので、上司の役割としては本末転倒だ。 ここまで散々、若者に群れを強要するおじさんについて書いてきたが、決して世代間の対立をあおりたいわけではない。石原氏も、おじさんをあまりに忌避する若者に対してこう警鐘を鳴らす。 「おじさんを老害とやゆし、あたかも世代の仮想敵のように考えるのも危険です。そこには、おじさんを否定することで自分たちの価値やプライドを保っている側面があり、おじさんたちが『最近の若者は……』と話すことと構造は同じなのです。実際、高慢で群れたがる先輩にはなるまいと思っていたおじさんも多いのですが、期せずしてそうなってしまった。若者にとっても明日は我が身なのです」 大抵の人間は、「こんな大人にはなるまい」と思っていたのに、気づけばそんな大人になっているものだ。今の若者も30年後には、迷惑な群れるおじさんになってしまう可能性はある。最後に、石原氏はおじさんのあるべき振る舞い方について、次のように話す。 「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます。こうした状況下において『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『オイ、行くぞ』という上から目線ではなく、『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。また、プライベートでは一人でできる趣味を見つけ、会社や家庭以外の居場所を見つけると迷惑な群れ方を予防できます」 これらに気をつければ時代や周りに取り残されず、慕われる中高年になれるはずだ』、「「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます」、「『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。大変な時代になったものだ。
次に、12月24日付け東洋経済Plus「社員の責任と役割を明確化、若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29234#contd
・『総合化学大手の三菱ケミカルが大胆な人事改革を進めている。日本的な職能等級制度を廃止し、若手でも成果次第で大きく昇進することが可能になった。その狙いは何か。 年功序列にとらわれない「ごぼう抜き人事」で大抜擢――。 日本では、社長人事など経営幹部層の間ではよくある話でも、一般社員の間で起こることはこれまでほとんどなかった。それが、国内最大手の総合化学メーカー・三菱ケミカルホールディングスの中核会社の三菱ケミカルで、現実的な話になった。2021年の春、ジョブ型に近い新たな人事制度を導入したからだ。 「すでに飛び級のような例もいくつか出てきている。従来よりも、若い世代の登用が進んでいる。本人にスキルさえあれば、年齢関係なしにやりたい仕事に就けるようになってきている」 アメリカの製薬大手ファイザーの日本法人を経て2018年3月に招聘され、三菱ケミカルで大胆な人事制度改革を進める人事戦略担当の取締役、中田るみ子氏はこう語る』、さすが「三菱ケミカルホールディングス」の社長は外国人だけあって、思い切ったやり方だ。
・『年功序列賃金を廃止 三菱ケミカルのこれまでの人事制度は管理職と一般社員とで大きな違いがあった。三菱化学など3社が統合して発足した2017年4月から、管理職では欧米のようなジョブ型雇用(職務等級制度)を採り入れていた。ただ、一般社員の人事制度のほうは前身からほぼ変わらず、年功序列になりやすい日本型のメンバーシップ型雇用(職能等級制度)がベースのものだった。 一般社員は働きぶりに加え、経験につながる勤続年数などの要素も加味して評価し、処遇を決めていた。飛び級はなく、昇級は段階的に一歩ずつ上がる。出世に差がつかないわけではないが、昇級の蓄積がモノを言うため、年齢が高いほどよいポストや高い給与を得やすかった。 社員は会社命令に従い、転勤も含めて異動するのが当たり前だった。その代わり、与えられた仕事さえこなして働けば、昇級昇格がほぼ自動的に与えられてきたという。 三菱ケミカルはそうした職能等級制度を2021年4月に廃止し、年功序列の要素がない役割等級制度に変えた。職務(ジョブ)はある程度固定して責任の範囲や求める役割を明確化し、職務の責任の重さや役割貢献への評価に応じて処遇を決めるようになった。これにより、若手でも成果次第で大きく昇進することが可能になった。 本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止した。事業拡大や社員の退職により欠員が出たポストは、社内公募か中途採用でまかなう。公募を通過すれば、社内FA(フリーエージェント)のように、やりたい職務に移ることができる。公募や中途採用で欠員が補充できない場合には、会社命令で異動をさせる可能性があるという。 人事制度を大きく変えた背景の1つが社会情勢の変化だ。中田氏は「例えば、転勤を理由に辞めてしまう人が少しずつ増えてきていた。これまでの制度ではそういう層に十分に応えられるようにはなっていなかった」と振り返る』、「本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止」は社員にはいいことだ。
・『「制約社員」とみなして人事改革 女性総合職や共働き世帯、親の介護をする人も増え、男性社員にも転勤を伴う異動命令を出しにくくなっている。また、少子化で若者の数が減少し、やりたい仕事を求めて転職する人も増えている。 そこで三菱ケミカルは、すべての社員を会社の都合だけでは動かせない「制約社員」(働く場所、時間、仕事内容などの労働条件に関して、何らかの制約がある社員のこと)とみなすことにした。その結果、社員が職務や勤務地を主体的に選ぶことができ、年齢や勤続年数といった属性に関係なく処遇が決まる設計の役割等級制度へ行きついた。 中田氏は「昔のように若くて健康な男性を数多く採れる時代は終わった。採用はこれからもっと難しくなっていくだろう。多様な人材にとって『魅力的な会社』に映るように、人事制度を改める必要があった」と話す。 人事制度を大きく変えたもう1つの要因がイノベーション推進の必要性だ。 中田氏は「グローバルでの競争という面でも(国境や事業間での)垣根がどんどん低くなってきている。社員が創造性を発揮できるようにしていかないと、会社がこのまま成長を続けていくことができなくなる」と危機感を口にする。 かつて主力事業だった化学系の汎用品は、今や中国や中東勢に価格面で押されて厳しくなっている。脱炭素の流れもダメ押しとなり、親会社である三菱ケミカルホールディングスは汎用品が多い石化事業と炭素事業を分離させる方針を発表したばかりだ。 今後の成長は、製品の高機能化や環境負荷の軽減といった付加価値をどれだけ生み出せるかにかかっている。同時に社員にも、より高いレベルの創造性が求められるようになってきている。 会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致する』、「会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致」、極めて合理的な選択だ。
・『降格・降級もありえる 新人事制度への移行に伴い、今後は昇格・昇給だけでなく降格・降給もありえるという。2020年12月には50歳以上の管理職を対象にした退職募集も行っている。三菱ケミカルHDの伊達英文CFOは退職募集を発表した2020年11月の決算会見で、「(新人事制度によって)若い人にポストを取られていく。忸怩たる思いをする人には(転職を)サポートする」と説明していた。 これまで年功序列の恩恵を受けてきた40~50代を中心に、新人事制度への移行によって大きく降格・降給している社員はいないのか。また、不満はないのか。 三菱ケミカルによると、「ある一定のポジションに着くためには、スキルや経験といった年功に一定程度比例する要素も必要なため、大幅な降格や減給になった事例は把握していない」という。中田氏も「昇格昇給は一気にポーンとやるが、降格・降給は、指導を含む話し合いを入れるなどの手順を踏んで段階的に行う」と説明する。 成果評価を強めると、社員の将来設計を難しくさせるおそれがある。20代後半から30代の社員でも、職能等級制度の賃金モデルで将来収入を見込んで住宅ローンを組んでいる人もいるだろう。旧人事制度時代のような、ほぼ自動的な昇格・昇給がなくなったことで社員が不安を抱き、逆に人材流出につながるおそれも否定はできない。 三菱ケミカル労働組合の堀谷俊志・中央執行委員長は、「(新人事制度の導入によって)必ずしも全員の賃金が向上するとは限らないことは、組合としても検討段階から懸念の1つだった」としたうえで、「それでも(会社と新人事制度で)合意したのは、中長期で雇用を守るためだ。急速な技術革新で、人の仕事が機械に取って代わられる可能性がある。社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる。レベルの高い仕事には賃金で応える必要がある」と文書で回答した』、「社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる」、なるほど。
・『人件費総額は増えていく 三菱ケミカルでは成果目標や評価に関する上司と部下の面談を今までの年3回から年5回に増やしたほか、評価者向けの研修なども実施する。 また、新人事制度の導入で人件費総額はむしろ増えると想定している。レベルの高い職務に就く社員がいっそう増えていけば、給与総額もさらに増えていく設計になっているという。 三菱ケミカルで人事制度改革のプロジェクトリーダーを務める労制人事部の杉浦史朗氏は「もともとの人事制度では年功の要素があったことで若い社員の給与のスタートライン(最初の水準)が低かった。(役割等級制度にして)職務のレベルを明確化したことにより、最低水準を引き上げている。一方で上の層は、職務レベル並みの賃金を維持している。結果的に給与が上がる人のほうが多いので総額も上がる」と説明する。 労組の堀谷氏は人件費総額の増加方針への評価は示しつつ、「課題は、会社がよりレベルの高い職務を従業員に本当に提示できるかどうか。また、従業員を育成できるかだ。それができなければ制度改革の目的を達成できない」とくぎを刺す。 新人事制度に基づく初めての評価と処遇は、2022年3月末で最初の1年が終わってから決まる。時間の経過とともに、社内での処遇格差が広がっていく可能性もある。それが実際に社員のモチベーションにどのように影響するのか。大胆な人事制度改革の本当の真価が問われるのはこれからになる』、「本当の真価」はどう出てくるのだろうか。
タグ:「家庭は窮屈だし、会社の中でもプライベートを重視する今時の若手社員は付き合いも悪い。そうなるとおじさん同士で寂しさを埋め、承認欲求を満たすしかなく、会議を開いたり会食をしたりとなにかと集まりたがるのです」、寂しい限りだ。 日本型経営・組織の問題点 「本当の真価」はどう出てくるのだろうか。 「会社命令に従うのが当たり前の職能等級制度から、社員が主体的にキャリア形成を考え、専門性を深められる役割等級制度にシフトすることは、三菱ケミカルが置かれた事業環境の要請に合致」、極めて合理的な選択だ。 「本人の同意がない異動や転勤も原則的に廃止」は社員にはいいことだ。 「コロナ禍によりそれもかなわず、欲求がより身近な人に向いている可能性があります」、「身近な人」こそいい迷惑だ。 「「現在のおじさんが若手の頃は我慢して先輩に気を使いましたが、いざ先輩の立場になったときに、かつてと同じようには振る舞えない時代になりました。リストラや技術革新など状況の変化もあり、おじさんにとっては受難の時代ともいえます」、「『自分の言動は若者にとって迷惑かもしれない』ことを念頭に置くべきです。部下を誘うときは『行けたらうれしい』と下手に出る。会話する際も『尊敬されたい』という欲を捨てる。大変な時代になったものだ。 石原壮一郎 ダイヤモンド・オンライン「なぜ、おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活」 (その12)(なぜ おじさんは「群れたがる」のか?対面会議や打ち合わせが早くも復活、社員の責任と役割を明確化 若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景) 「社員が年齢や年功にかかわらず、機械では代替が難しいレベルの高い仕事に今のうちから挑戦することが、中長期で雇用を守ることにつながる」、なるほど。 東洋経済Plus さすが「三菱ケミカルホールディングス」の社長は外国人だけあって、思い切ったやり方だ。 『大人力検定』 「社員の責任と役割を明確化、若手も昇進可能に 三菱ケミカル、日本的人事と決別宣言した背景」
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