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JR一般(その1)(JR東労組 大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー、リニアとコロナ JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風、JR西日本が「赤字ローカル線」公表 廃線議論のための3つの論点とは) [産業動向]

本日は、JR一般(その1)(JR東労組 大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー、リニアとコロナ JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風、JR西日本が「赤字ローカル線」公表 廃線議論のための3つの論点とは)を取上げよう。

先ずは、やや古いが、2019年7月29日付け東洋経済オンライン「JR東労組、大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/292377
・『JR東日本で最大の労働組合・JR東労組から2018年春、3万3000人もの組合員が一挙に脱退し、同労組の組合員はあっという間に3分の1に激減した。いったい、何が起きたのか。 旧国鉄時代から労働運動を牽引し、JR東労組の初代委員長を務めた松崎明氏がJR東日本を支配していく様子を丹念な取材で描いたのが牧久氏の著書『暴君』(小学館)である。 元日経新聞記者として長年にわたり鉄道業界を取材してきた牧氏には、国鉄分割民営化の軌跡を追った『昭和解体』(講談社)という著書がある。この『昭和解体』が表の歴史だとすれば、『暴君』はまさに裏の歴史である。松崎氏は“JRの組合のトップ”という表の顔の裏に、極左組織・革マル派の最高幹部の顔を持っていたのだ。 JR最大のタブーともされる組合問題をなぜ真正面から取り上げたのか。牧氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは枚氏の回答)』、「組合員はあっという間に3分の1に激減」「労組の「トップ」が、「極左組織・革マル派の最高幹部の顔を持っていた」、かねて噂にはなっていたが、事実だったようだ。
・『マスコミ側に「恐怖心」があった  Q:JR東日本の鉄道路線を多くの国民が毎日利用しており、同社は就職したい会社としても学生に高い人気があります。その会社の内部で、しかも現代の日本で、本書に書かれているようなことが起きていたというのが信じられません。世間が持つJR東日本のイメージと、なぜここまでかけ離れているのでしょうか。 A:われわれマスコミが正確に報道しなかったからです。恐怖心がマスコミの側にあったのだと思います。 Q:恐怖心? A:そうです。決定的となったのは、1994年にJR東日本管内のキヨスクの売り場から『週刊文春』が全部排除された問題です。小林峻一氏の「JR東日本に巣くう妖怪」と題する連載記事にJR東日本の労使が激しく反発、キヨスクでの販売拒否という信じがたい行動に出たのです。 あの当時は新聞も雑誌の駅売りの比率が非常に高く、キヨスクで販売できないと経営的には非常に痛い。キヨスクに『週刊文春』だけ並ばないという状態が3カ月も続きました。結局文春が「全面降伏」して事態は収束しましたが、こうなるとマスコミの側で自己規制が働き、松崎明氏や異常な労使関係の問題は扱いづらくなってしまいました。) それでも、2006年には『週刊現代』でジャーナリストの西岡研介氏が「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」を連載しました。しかし、この記事は松崎・組合側から50件もの訴訟を受けたのです。私も日経新聞の社会部長時代に名誉毀損で3件の訴訟を受けた経験がありますが、当事者として訴訟を受けるのは大変なことはよくわかります。 (牧 久氏の略歴はリンク先参照) メディアがこの問題を扱うのはどうしても慎重にならざるをえない。だからJRの内部で起きていることが世間に伝わらなかったのだと思います。 Q:では、今回、『暴君』を執筆した理由は? A:この年になって、知っていながら書かなかった、書けなかったことへの苦い思いと強い反省の念がふつふつとわいてきたんです。われわれがやるべき仕事を放棄しているようなものだから。生きている間に書き残したいという思いもありました。 本が出たら、昔の国鉄記者クラブの仲間や私がお世話になった人たちが、「ご苦労さん会」をやってくれました。みな新聞記者として、知っているのに書かなかった、書けなかったことを無念に感じていたようです。「お前はよくぞ書いてくれた」と言ってくれましたよ』、「小林峻一氏の「JR東日本に巣くう妖怪」と題する連載記事にJR東日本の労使が激しく反発、キヨスクでの販売拒否という信じがたい行動に出たのです。 あの当時は新聞も雑誌の駅売りの比率が非常に高く、キヨスクで販売できないと経営的には非常に痛い。キヨスクに『週刊文春』だけ並ばないという状態が3カ月も続きました。結局文春が「全面降伏」して事態は収束しましたが、こうなるとマスコミの側で自己規制が働き、松崎明氏や異常な労使関係の問題は扱いづらくなってしまいました」、このような騒ぎがあったことを思い出した。それにしても、「結局文春が「全面降伏」して事態は収束」、とは現在の「文春砲」で築いた圧倒的地位からは考えられないような事態だ。
・『JR東が毅然とした態度をとれなかった理由  Q:JR東日本の歴代の経営者は、組合に対してなぜ毅然とした態度をとらなかったのでしょうか。 A:分割民営化に際して、JR東日本の初代社長は元運輸事務次官の住田正二氏に決まりました。ただ、あのとき、民営化を推し進めた国鉄の若手幹部「改革3人組」の1人、井手正敬氏が住田氏を補佐すると誰もが思っていました。松田昌士氏、葛西敬之氏、井手氏という3人組の中では井手氏が最年長で、改革派の“総指揮官的な立場”にいたからです。 一方で、松田氏は旧国鉄では珍しい北海道大学出身で企画畑。東大出身者が幅を利かす旧国鉄時代には運輸省に出向していた時期もあります。住田氏にとっては旧国鉄のエリートコースを走り続けた、やり手の井手氏や葛西氏よりも、運輸省時代に部下として使ったことがあり気心も知れている松田氏がやりやすかったのでしょう。) 松田氏自身はJR北海道に行くと思っていたのですが、「JR東日本で住田を助けて、労務をやれ」ということになりました。JR西日本に行った井手氏、JR東海に行った葛西氏は、当時JR東労組の委員長だった松崎明氏の“革マルの本性”を見抜いて、いち早く決別しましたが、松田氏は松崎氏の力量をJR東日本の経営改革に活用しようと考え、積極的に手を握ったと、今回の取材で語りました。 また、松田氏は国鉄時代に手ごわい組合を相手にしてきた経験豊富な井手氏や葛西氏のような労務屋さんではないので、JR東日本で労務をうまくやっていくためには、松崎明氏と手を握らざるをえなかったという側面もあるでしょう。 2012年から2018年まで社長を務めた冨田哲郎氏が、2018年春の賃上げ交渉で会社側がJR東労組と全面対決に踏み切る姿勢を見せたわけですが、松田氏、大塚陸毅氏、清野智氏のJR東日本の歴代社長は労使関係の正常化は時間をかけて軟着陸するしかないと考えていました。それが2018年の動きにつながったともいえます。それにしても、ここまで時間をかけなければ変わらなかったというのはやっぱりおかしい』、「松田氏は国鉄時代に手ごわい組合を相手にしてきた経験豊富な井手氏や葛西氏のような労務屋さんではないので、JR東日本で労務をうまくやっていくためには、松崎明氏と手を握らざるをえなかったという側面もある」、「それにしても、ここまで時間をかけなければ変わらなかったというのはやっぱりおかしい」、その通りだ。
・『多くの組合員はじっと見ていた  Q:昨年、JR東労組から大量に組合員が脱退したのはなぜですか。 A:発端は春闘での賃上げをめぐってJR東労組がスト権を確立し、ストを構えたことです。JR東労組は全組合員一律のベースアップや格差ベアの永久的根絶を要求しましたが、実力によって賃金に差を付けることは当たり前で、どこの会社でもやっていることです。一律の賃上げを会社がのめないのは当然です。 かといって、平成の終わりの時代に昭和のような大規模な交通ストに突入するようなことがあれば、世間の厳しい目が労使双方に向けられるのは必至でしょう。 しかし、ここで会社側は一歩も引かず、JR東日本発足以来、JR東労組との間で結んできた、労使ともに過激な手段に訴えることなく平和的手段で問題を解決するという「労使共同宣言」の失効を宣言しました。この過程でJR東労組の12の地方本部が、強硬姿勢を崩さない地本と、それ以外の地本に分裂し、組合員の脱退に拍車がかかったのです。 松崎氏が組合を私物化し、当局に業務上横領容疑で送検されるなど失意のうち亡くなったのが2010年末ですから、それから8年経過してのことです。松崎氏の行動や発言には、彼の革命理論としては正しい部分もありましたが、松崎氏の死後にそれを受け継ぐリーダーは誰もいなかった。松崎氏は自らの権力を守るため、力のある後継候補を次々と排除したためです。多くの組合員はそれをじっと見ていたのでしょう。 Q:JR東日本の組合問題は今後どのような方向に向かうのでしょうか。 A:ここに至るまで30年もの時間がかかったのですから、JR東日本の経営者も性急に事を進めず、時間をかけて慎重に判断していくのではないでしょうか。 Q:『昭和解体』と『暴君』で、国鉄からJRにつながる歴史はすべて書き尽くしましたか。あるいは第3弾があるのでしょうか。 A:昭和解体の前に『不屈の春雷――十河信二とその時代』(ウェッジ)という本を書いています。これは明治から始まって、十河氏が後藤新平氏と出会い、そして十河氏が新幹線を造るまでの話です。 十河氏は、国鉄内外の誰もが猛反対する中で、当初の建設予算をわざと低く見積もって国会で予算を通した、つまりウソをついてまで新幹線を完成させました。東京オリンピック直前の開業式のときは国鉄を石もて追われ、1人寂しくその様子をテレビで見ていたんです。彼がいなければ、その後、高度成長を遂げる日本の「背骨」となる新幹線はこの世に生まれなかったでしょう』、「会社側は一歩も引かず、JR東日本発足以来、JR東労組との間で結んできた、労使ともに過激な手段に訴えることなく平和的手段で問題を解決するという「労使共同宣言」の失効を宣言しました。この過程でJR東労組の12の地方本部が、強硬姿勢を崩さない地本と、それ以外の地本に分裂し、組合員の脱退に拍車がかかったのです」、冒頭の「JR東労組、大量脱退の背景」が理解できた。「十河氏は、国鉄内外の誰もが猛反対する中で、当初の建設予算をわざと低く見積もって国会で予算を通した、つまりウソをついてまで新幹線を完成させました」、新幹線の真の功労者で、初めて知った。
・『リニアの経済効果を検証すべき  しかしその年(1964年)、皮肉なことに国鉄は赤字に転落し、以降、どんどん赤字が膨らみ、最後に解体され、そして今日、JRができておよそ30年が経ちました。明治から平成に至る鉄道の物語を書き尽くしたという思いはあります。 今、気になっているのはリニア中央新幹線です。日本のものづくりという点において、リニアという技術が、ITなど先端分野で後手に回っている日本の起死回生の武器になる可能性はもちろんありますが、リニアがもたらす経済効果についての検証はきちんと行われているのでしょうか。 もはや東海道新幹線開業時のような元気な時代でもないし、むしろ人口が減少期に入っているのは誰の目にも明らかです。そこに巨額の資金を投入して建設する必要性がどこまであるのか、この点についてメディアはもっと俎上に載せて、議論を盛り上げていくべきではないでしょうか』、「リニア」については、このブログでも紹介しているが、私は新幹線と競合するとして反対の立場だ。

次に、本年2月3日付け東洋経済オンライン「リニアとコロナ、JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/573358
・『名古屋城天守閣の南南東、愛知県庁や愛知県警のビルが立ち並ぶ官庁街の一角でリニア中央新幹線の建設工事が進められている。 品川と名古屋を結ぶリニアは、ルートの大半で地下を走る。首都圏や中京圏の都心部では、用地買収の必要がない地下40メートルより深い「大深度地下」と呼ばれる地下区間が使用される。 この大深度区間を含めた本線トンネルはシールドマシンで掘削工事が行われる。名古屋地区におけるシールドマシンの発進拠点の1つが、現在工事中の「名城非常口」である』、「大深度地下」の工事では、外環道の調布市周辺の工事で、予想外の土砂崩れが起こり、工事の安全性そのものに疑問符がつきつつある。
・『2027年のリニア開業は絶望的に  地表から約83メートルの地下に直径37メートルの円形の空間が広がる。シールドマシンはここから出発し、まず品川方面に向けてトンネルを掘り進める。その後、途中で引き返し、今度は逆に名古屋方面に向けて掘り進める。非常口という名称のとおり、リニアの営業運転開始後は異常時の乗客避難や保守作業の拠点として使用される。 首都圏と中京圏を結ぶリニアのルート上には、約5キロメートル間隔で非常口が設置され、首都圏では9カ所、中京圏では4カ所が設置される。この非常口のようにリニアは各所で工事が本格化しているが、唯一着工していないのが静岡工区だ。 リニアのトンネル工事は南アルプスの最深部を掘り進める。工事に伴って発生する湧水が大井川流域の利水者や南アルプスの生物多様性に影響を与えかねないとして、静岡県の川勝平太知事が工事にゴーサインを出さないためだ。 JR東海が目標としていた2027年の品川―名古屋間の開業はもはや絶望的だ。リニア駅周辺の自治体も2027年開業を前提に開発を予定しており、開業時期がいつになるか気をもんでいる。静岡工区の工事をいつ開始できるかわからないため、JR東海も新たな開業時期も見通せないというのが実情だ。) 「リニアの開業延期が静岡のせいにされるのは遺憾だ」。静岡県内からはこうした声も聞こえてくる。「静岡以外でも、工事が遅れているところがあるのではないか」。 実は、冒頭の名城非常口の工事も、掘削中に大量の地下水が噴出して工事が一時中断。そのため、工事完了は予定から1年半遅れの2022年7月となる。ただ、名城非常口の工事担当者は「工事の遅れはリニア全体の工期に影響を与えるものではない」と断言している』、「唯一着工していないのが静岡工区だ」、「JR東海が目標としていた2027年の品川―名古屋間の開業はもはや絶望的だ」、この際、「リニア工事」の中止を検討すべきではなかろうか。
・『東海道新幹線が追い打ち  膠着状態に陥ったリニア工期問題に追い打ちをかけたのが、コロナ禍による東海道新幹線の利用者激減だ。 東海道新幹線はJR東海の鉄道事業の9割を占める、経営の屋台骨というべき存在だ。2020年4月の緊急事態宣言により、同4〜5月における東海道新幹線の輸送量は前年比90%減少した。 6月以降、輸送量はじわじわと盛り返し、11月には同46%減まで回復したが、2020年の年末年始の利用は同68%減まで低下してしまった。 通勤や通学、買い物といった日常利用の多い在来線と比べると、出張や観光目的の利用が多い東海道新幹線の利用頻度はどうしても低くなりがち。新幹線への依存度が大きい分、在来線の割合の高いJR東日本よりも経営的には苦しい。その反面、好材料もある。それは、利用者数が過去20年間で4割近く増えた一方で、運行の効率化により経費は漸減傾向にあり、東海道新幹線の利益率が高くなっているためだ。 JR東海は東海道新幹線の利益率を開示していないため、JR東海単独決算から推計すると、新型コロナの影響を受けなかった2019年4〜9月期は売上高7512億円に対して営業利益は3900億円。売上高営業利益率は実に5割を超える。 新幹線の運行コストは運転士・車掌らの人件費、駅や設備の維持費用、車両や設備の減価償却費などが大半を占める。収入の多寡にかかわらず発生する固定費が中心だ。) コロナ禍の2020年4〜9月期(単独決算)は、売上高が前期比70%減の2217億円、営業損益は1000億円の赤字だった。ところが、2020年10~12月期の売上高は前年同期比51%減の1867億円にとどまり、177億円の営業利益を実現した。通期でも、売上高が前期比5割減程度であれば営業損益を黒字に持ち込むことができるわけだ。 【2021年2月3日10時10分追記】初出時の通期業績に関する表記を修正いたします』、足元の業績は改善傾向のようだ。
・『コロナ長期化ならリニア計画に影響も  2020年11月に行われた決算説明会でJR東海は、運輸収入(在来線を含む)は2021年3月に前年比40%減まで、6月には20%減まで回復するという見通しを発表した。このレベルであれば2022年3月期は営業黒字に復帰する可能性が高い。 問題はコロナの再拡大だ。もし新幹線の利用率が半減以下では営業赤字は解消できない。 コロナ禍があまり長引くようだと、リニアの建設計画にも影響が出かねない。品川―名古屋間の建設費用は約5兆5000億円と見込まれており、そのうち3兆円は政府から借り入れた財政投融資でまかなう。財投の資金使途はリニア工事に限定されており、当面はこの資金を取り崩せば、しのぐことができる。 2020年9月末時点で財投から調達した3兆円のうち、すでに7458億円を取り崩した。工事が佳境を迎え、これを使い切ってしまうと自己資金で賄う必要が生じる。そのときに業績が悪化したままの状況は避けたいはずだ。 これまでのJR東海は毎期数千億円単位で内部留保を積み上げてきた。コロナがなければ今後も同じペースで積み上がっていたはずだ。リニア建設費のうち財投で足りない2.5兆円は、これまでの内部留保の取り崩しや今後積み上がる利益で賄える予定だった。 コロナ禍による旅客収入の減少がもたらす資金不足が続くようだと、当初描いていたシナリオは根本から見直しを迫られることになる』、「コロナ禍」の影響は長引くと考えざるを得ないことも考えると、前述の「リニア工事」の中止を真剣に考えるべきだ。

第三に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の塚崎公義氏による「JR西日本が「赤字ローカル線」公表、廃線議論のための3つの論点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302093
・『JR西日本が赤字ローカル線の収支状況を公表した。ローカル線の状況が苦しいのは、ここだけにとどまらない。赤字ローカル線を存続させるのか、廃止してバスなどに代替させるかを、国民的に議論すべき時に来ているのではないだろうか』、興味深そうだ。
・『100円稼ぐのに経費2万5000円以上? 赤字ローカル線の収支は悲惨  JR西日本が赤字ローカル線の収支状況を公表した。過密と過疎が叫ばれて久しいので、ローカル線の赤字が悲惨であることは当然に予想されていたが、それにしてもすごい赤字だ。最悪の路線は、100円の収入を得るために2万5000円以上の経費がかかっている計算だという。 過疎地に暮らす人々にとっては、極めて重要な交通の足であろうが、その路線の赤字を誰かが負担しているということを忘れてはならない。 もう一つ重要なのは、鉄道を廃止しても、同じ区間にバスなどを運行すれば、住民にとって死活問題にはならないのではないか、ということである。 「おらが村には鉄道の駅がある」ということを誇りに感じている人もいるだろう。問題は、そうした誇りのために、他人に巨額の費用を負担してもらっている事態をどう考えるか、である。 以下では、赤字ローカル線を廃止してバス路線に切り替えることの是非について、「存続させるとして、費用は誰が負担すべきか」「費用負担者が納得しているのか」「人口減少社会で永遠に存続させるのは不可能」という3つの観点から論じてみたい』、論点は整理され、もっともだ。
・『赤字ローカル線を存続させるなら費用は誰が負担すべきか  赤字ローカル線の場合には、誰が費用を負担しているのか、明確でない部分もあろう。黒字路線の乗客が負担している部分が大きいのだろうが、株主も負担していることは疑いないし、沿線の自治体などから補助金が投入されているケースもある。) 都市部の黒字路線の乗客が負担するのは、筋が違うのではないか。「都市部の便利な所に住んでいる人が不便な人の分も負担すべき」というのは、一応理屈にはなる。しかし、そうであれば、都市部で私鉄通勤している人や、自動車通勤している人にも負担してもらうべきだ。 これは、「べき論」にとどまらない。潜在的な乗客が私鉄やマイカーなどに逃げてしまえば、JRの収入が減ってしまい、一層都市部の運賃を値上げしなければならない、といった悪循環に陥る可能性があるからだ。 株主が負担するのも、筋が違うだろう。過疎地に住む人のために、株主の利益を削ってローカル線を運転する義務はないからだ。 そうだとすれば、仮に存続させるとした場合には、政府が負担すべきだと思われる。「過疎地に住む人が困っているから、政府が助ける」というのは政府の重要な役割の一つだから、政府が負担するのは自然であろう。 ここで、中央政府なのか自治体なのか、という議論は当然必要だ。すなわち、大都市からの税収で過疎地のローカル線の赤字を補填(ほてん)すべきか、それともその自治体の中で完結すべきか、という議論だ。それはそもそも、地方自治体の財政をどう考えるべきか、という極めて大きな枠組みで議論されるべきであろう』、これは政策負担を中央政府と「地方自治体」でどう分け合うかというかなり難しい問題になる。
・『負担する人の納得は得られているか  日本人は、政府に対しても「かわいそうな人は助けてやれ」と言うだけの人が多く、「かわいそうな人は助けてやれ。そのための増税なら喜んで受け入れるから」「そのためなら、俺たちへの行政サービスを減らしてもいいから」と言う人は少ないのではなかろうか。 しかし、政府が「かわいそうな人」を助けるためには金がかかる。その金をどう捻出すべきなのかを併せて言わないと、政府としては困ってしまう。「かわいそうな人を助ける費用は赤字国債で賄って、子供たちに払わせろ」では無責任だ。増税、もしくは自分たちの行政サービスの縮小が不可避になる。 そうとなれば、国民的な議論が必要だ。自分たちがコストを負担すべきか、誰を優先的に助けるべきか、などを議論した上で、ローカル線の存廃を政治が決めればよい。 筆者は納税者が負担すべきだと考えている。都市部の乗客が負担するという現在の制度を維持するのであれば、都市部の乗客の理解を得なければなるまい。「過疎地のローカル線を維持しなければ運賃は半額になりますが、それでも過疎地のローカル線を維持するために現在の運賃を支払い続けていただけますでしょうか」といったアンケートを取ってはどうだろうか』、この場合、「過疎地」と一括りにしただけでは、判断し難いので、個別の路線毎にブレークダウンする方がよさそうと思うが、やはりそれも無理が多そうだ。
・『人口減少社会でローカル線の存続は困難  高度成長期にも赤字ローカル線の問題はあったが、当時は人口も増えていて経済も発展していたので、今とは状況が異なる。 日本の人口は、今後数十年は間違いなく減っていく。しかも、高度成長期に金の卵たちを都会に送り出した地域では、残った親たちが高齢化している一方で若者が少ないため、これからさらに人口減少が加速する。 そうした中で、乗客が何人まで減ったら廃線にするのか、といった基準も必要になる。「乗客が1人でもいる限り、廃線しない」という選択肢も当然あり得るが、納税者や都会の通勤客が納得するとは思えない。 この問題についても、人口減少と過疎地の問題として広範な議論が必要だ。例えば、人口3人の離島に郵便を届けるコストを全国民が負担すべきか、といったものだ。 筆者は、補助金を支払って問題を解決すべきだと考えている。「ローカル線をバス路線に転換してくれたら、沿線住民に多額の補助金を支払います」「人口3人の離島から引っ越してくれたら多額の補助金を支払います」という具合である。 赤字企業が希望退職を募るときには、割増退職金を支払う。それと同様に、こちらの要望に応えてくれた人にはそれに応じて謝礼を払う、というのが解決策になるのではなかろうか。 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解である。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない』、現実には、既に「ローカル線をバス路線に転換した」「沿線住民」や、少人数の「離島」から「引っ越した」住民に、今さら「謝礼」を払うとすえば歯止めがなくなってしまう。アイデア倒れで、余りに粗削りだ。本人も「細部は必ずしも厳密ではない」と認めているが、やはり単なる頭の体操に過ぎないようだ。
タグ:JR一般 (その1)(JR東労組 大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー、リニアとコロナ JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風、JR西日本が「赤字ローカル線」公表 廃線議論のための3つの論点とは) 東洋経済オンライン「JR東労組、大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー」 「組合員はあっという間に3分の1に激減」「労組の「トップ」が、「極左組織・革マル派の最高幹部の顔を持っていた」、かねて噂にはなっていたが、事実だったようだ。 「小林峻一氏の「JR東日本に巣くう妖怪」と題する連載記事にJR東日本の労使が激しく反発、キヨスクでの販売拒否という信じがたい行動に出たのです。 あの当時は新聞も雑誌の駅売りの比率が非常に高く、キヨスクで販売できないと経営的には非常に痛い。キヨスクに『週刊文春』だけ並ばないという状態が3カ月も続きました。結局文春が「全面降伏」して事態は収束しましたが、こうなるとマスコミの側で自己規制が働き、松崎明氏や異常な労使関係の問題は扱いづらくなってしまいました」、このような騒ぎがあったことを思い出した。それにしても、 「松田氏は国鉄時代に手ごわい組合を相手にしてきた経験豊富な井手氏や葛西氏のような労務屋さんではないので、JR東日本で労務をうまくやっていくためには、松崎明氏と手を握らざるをえなかったという側面もある」、「それにしても、ここまで時間をかけなければ変わらなかったというのはやっぱりおかしい」、その通りだ。 「会社側は一歩も引かず、JR東日本発足以来、JR東労組との間で結んできた、労使ともに過激な手段に訴えることなく平和的手段で問題を解決するという「労使共同宣言」の失効を宣言しました。この過程でJR東労組の12の地方本部が、強硬姿勢を崩さない地本と、それ以外の地本に分裂し、組合員の脱退に拍車がかかったのです」、冒頭の「JR東労組、大量脱退の背景」が理解できた。「十河氏は、国鉄内外の誰もが猛反対する中で、当初の建設予算をわざと低く見積もって国会で予算を通した、つまりウソをついてまで新幹線を完成させました」、新幹 「リニア」については、このブログでも紹介しているが、私は新幹線と競合するとして反対の立場だ。 東洋経済オンライン「リニアとコロナ、JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風」 「大深度地下」の工事では、外環道の調布市周辺の工事で、予想外の土砂崩れが起こり、工事の安全性そのものに疑問符がつきつつある。 「唯一着工していないのが静岡工区だ」、「JR東海が目標としていた2027年の品川―名古屋間の開業はもはや絶望的だ」、この際、「リニア工事」の中止を検討すべきではなかろうか。 足元の業績は改善傾向のようだ。 「コロナ禍」の影響は長引くと考えざるを得ないことも考えると、前述の「リニア工事」の中止を真剣に考えるべきだ。 ダイヤモンド・オンライン 塚崎公義氏による「JR西日本が「赤字ローカル線」公表、廃線議論のための3つの論点とは」 論点は整理され、もっともだ。 これは政策負担を中央政府と「地方自治体」でどう分け合うかというかなり難しい問題になる。 この場合、「過疎地」と一括りにしただけでは、判断し難いので、個別の路線毎にブレークダウンする方がよさそうと思うが、やはりそれも無理が多そうだ。 現実には、既に「ローカル線をバス路線に転換した」「沿線住民」や、少人数の「離島」から「引っ越した」住民に、今さら「謝礼」を払うとすえば歯止めがなくなってしまう。アイデア倒れで、余りに粗削りだ。本人も「細部は必ずしも厳密ではない」と認めているが、やはり単なる頭の体操に過ぎないようだ。
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