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中国経済(その15)(「こんな要求は前代未聞」中国ビジネスに異変続出で 日本の中小企業が困惑、「奇跡の都市」深センが暗転 中国経済の未来を暗示か、習近平のゼロコロナ政策が新卒大学生を空前の就職難に突き落とす、中国で「大学卒業=失業だ」の悲鳴…中国の失業問題に建国以来最悪の恐れ) [世界経済]

中国経済については、本年2月19日に取上げた。今日は、(その15)(「こんな要求は前代未聞」中国ビジネスに異変続出で 日本の中小企業が困惑、「奇跡の都市」深センが暗転 中国経済の未来を暗示か、習近平のゼロコロナ政策が新卒大学生を空前の就職難に突き落とす、中国で「大学卒業=失業だ」の悲鳴…中国の失業問題に建国以来最悪の恐れ)である。

先ずは、6月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「「こんな要求は前代未聞」中国ビジネスに異変続出で、日本の中小企業が困惑」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304536
・『中国の対外貿易の窓口といわれる上海で断行されたロックダウンは、一部の日本の経営者の心理にも微妙な影を落とした。新型コロナウイルス感染拡大から約2年半が経過した今、中小・零細企業の対中ビジネスには微妙な変化が表れ、中国との距離が一段と広がっている』、「中国との距離が一段と広がっている」とは穏やかではない。
・『「海外からの輸入品は要注意」 比較的自由だった貿易も“終わり”の兆候  今年3月末から上海で強行されたロックダウンによって、世界の物流網が大混乱したことは報道のとおりだ。上海は2021年に4.3兆元(約85兆円)のGDPをたたき出した中国最大の経済都市だが、同市における物流のまひは多くの日本企業に打撃を与えた。 夫婦で貿易業(本社・東京都)を営む林田和夫さん(仮名)も、上海のロックダウンで通関を待たされた一人だ。中国向けに日本製の生活雑貨を輸出している林田さんは、「貨物は3月中旬に上海に到着しましたが、通関したのは6月1日。2カ月半も止められていました」と打ち明ける。 林田さんの対中貿易はこれまでトラブルもなく順調だった。ところが今回は、上海の税関から「製品に含まれる成分について、追加資料を提出せよ」と要求され、植物由来の成分についてはラテン語の学術名訳まで求められたという。 約20年にわたり対中貿易に携わってきた林田さんだが「こんな要求は前代未聞です。コロナ禍の2年半で、対中貿易がとてもやりにくくなりました」と嘆く。輸出製品は毎月同じだが、抜き取り検査(ランダムに一部を抜き取って検査)も頻度を増した。 一方、2020年に武漢のロックダウンが解除され、「中国はコロナの感染拡大を抑え込んだ」と宣言して以降、中国では「感染ルートは海外から輸入した貨物にある」という解釈が定着した。 その後も中国内で局所的に感染者が出るが、中国政府はその原因を「海外からもたらされたものだ」と主張し、今春の上海市におけるオミクロン株の拡大についても、同様の説明を行った。習近平指導部は「海外からの輸入品は要注意だ」と警告して国内の防疫体制を強化したが、“海外”を過剰に意識したアナウンスは「別の目的があるのではないか」と疑う声もある。) コロナ禍直前まで、林田さんのビジネスは、中国での日本製品ブームを追い風に上昇気流に乗っていたが、この2年半で大きく狂ってしまった。林田さんは“時計の針の逆戻り現象”を敏感に感じ取り、「中国が対外貿易のハードルを高めているのは明らか。比較的自由になった対中貿易も、この2年半ですっかり後退してしまいました」と語る』、「上海の税関から「製品に含まれる成分について、追加資料を提出せよ」と要求され、植物由来の成分についてはラテン語の学術名訳まで求められた」、明らかな嫌がらせだ。
・『中国に呑み込まれる前に、国内事業に軸足をシフト  ササキ製作所(本社・埼玉県、佐々木久雄代表取締役)は、自動車・家電部品を中心としたプラスチック材料の金型を製作する中小企業だ。 50年近い歴史を持つが、10年ほど前から中国に加工拠点を設け、仕事をシフトさせてきた。日本で受注した金型を中国で製作し、最終加工を日本で行うというモデルを構築するために、佐々木社長自らが中国に何度も訪れ、現地企業に技術指導を行ってきた。 長江デルタ地帯を中心に同社が築いてきた中国の加工拠点は、約10年の歳月とともに成熟期を迎え、上海のロックダウンでも長年培った信頼関係が力を発揮した。中国からの貨物の遅れに気をもむこともあったが、「中国人パートナーが奔走してくれて、4月23日に上海港を出る船に金型を積んでくれた」(佐々木社長)と、胸をなでおろす場面もあった。 中国には自動運転やEVなど金型の仕事が山のようにある――と語る佐々木社長だが、そこにのめり込むつもりはない。「我々のような金型業界はいずれ苦境に陥る」と楽観を許さない理由を次のように説明する。 「中国の金型業界は資金力もあれば、設備もすごい。早晩ものづくりの主流は中国になり、我々はいずれ中国から金型の仕事をもらうようになるでしょう。放っておけば“お払い箱”になりかねない。そのためにも事業構造の転換を急がなくてはいけないのです」 今、同社が心血を注ぐのは、日本の国内工場での新規事業だ。コロナ禍の混乱とはいえ、そこでつかんだのは、長期安定性が見込める日本の鉄道インフラに関わる通信機器の製造だった。 「不謹慎かもしれないですが、弊社はコロナに助けられた面もあります。銀行から調達できなかった資金を国の支援制度で工面できたおかげで、今は日本国内の3工場がフル稼働しています」(同) 事業構造の転換を進める中、同社の中国事業もメインからサブに存在価値を変えつつある』、「武漢のロックダウンが解除され、「中国はコロナの感染拡大を抑え込んだ」と宣言して以降、中国では「感染ルートは海外から輸入した貨物にある」という解釈が定着した。 その後も中国内で局所的に感染者が出るが、中国政府はその原因を「海外からもたらされたものだ」と主張し、今春の上海市におけるオミクロン株の拡大についても、同様の説明を行った。習近平指導部は「海外からの輸入品は要注意だ」と警告して国内の防疫体制を強化したが、“海外”を過剰に意識したアナウンスは「別の目的があるのではないか」と疑う声も」、「「海外からの輸入品は要注意だ」と警告」、とは完全な責任転嫁だ。
・『中国企業とオープンな会話は不可能 “まるごと中国生産”を見直す  2020年上半期、日本はコロナ感染拡大により、医療用品や衛生用品が品薄となった。 当時、「人命にかかわる医療・衛生用品の中国依存は見直すべきだ」という世論が強まった。 こうした中でも、東京に拠点を置く衛生用品メーカーのA社は、上海からマスクを調達し続けていた。今回の上海ロックダウンを経ても、長年のパートナーである上海企業のB社とは安定的な取引が続いているという。 目下、“サプライチェーンの脱中国”が取り沙汰されているが、A社は「高品質を実現できる中国の生産拠点を別の国にシフトさせる考えはない」という。 その一方、A社管理職の坂場健氏(仮名)は、上海のパートナーであるB社とのやりとりに微妙な変化が生じていることを感じ取っていた。 「今回の上海ロックダウンもそうでしたが、B社の歯切れの悪さを感じています。ロックダウン中も『大丈夫ですか』の一言さえ掛けられませんでした。答えにくいことが想像できるからです。今の中国の状況を思えば、当社としてもメールやチャットに余計な履歴を残さないよう用心しなければなりません。コロナの2年半はB社への忖度(そんたく)ばかりが増え、これまでのようなオープンな会話は、ほとんどできなくなってしまいました」(坂場氏) 長年の協力先でありながらも、日本のA社が上海パートナーB社に対し “虎の尾”を踏まないよう神経を使う様子がうかがえる。幸い、A社がB社から輸入する製品は、長年のリピート注文がベースだ。リピート注文であれば、新たな問題や交渉が生じる余地はほとんどない。 しかし、仮にA社がB社との間で新たな事業を一から立ち上げるとなると話は別だ。中国の地方政府の介入やB社の緊張が高まる中で、取引条件はさまざまな制約を受けることが目に見えているからだ。坂場氏は、今後の方向性をこう見据えている。 「新規事業については、原材料のみ中国から調達して、日本国内で製造する計画です。これができれば、為替リスクも減らせます。確かに中国は“安定したパートナー”ではあるのですが、新たな製品を企画しそれを完成品として生産する場所ではなくなりました」 ちなみに、海外現地法人を持つ日本企業を対象に、国際協力銀行(JBIC)が行った「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2021年度海外直接投資アンケート調査結果・第33回)」を見ると、2020~2021年度にかけて「海外事業は現状維持」「国内事業は強化・拡大」する傾向が高まっていることがわかる。 一昔前、「中国を制する者が世界を制す」といった言葉も流行したものだが、最近は「中国をあてにしていたら、食いはぐれる」という正反対の受け止め方を耳にするようになった。 “コロナの2年半”を経て転換点を迎えた中小企業の中国ビジネスは、今後ますます国内回帰を進める気配だ』、「コロナの2年半はB社への忖度・・・ばかりが増え、これまでのようなオープンな会話は、ほとんどできなくなってしまいました」(坂場氏) 長年の協力先でありながらも、日本のA社が上海パートナーB社に対し “虎の尾”を踏まないよう神経を使う様子がうかがえる」、信じ難い取引関係の変化だ。「“コロナの2年半”を経て転換点を迎えた中小企業の中国ビジネスは、今後ますます国内回帰を進める気配だ」、その通りなのだろう。

次に、6月22日付け日経ビジネスオンラインが転載したロイター「「奇跡の都市」深センが暗転 中国経済の未来を暗示か」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/062000388/
・『デービッド・フォンさんが中国中部の貧しい村を出て、急発展を遂げる南部の深センに移り住んだのは、若かった1997年のことだ。それから25年間、外資系メーカーを転々とした末、通学かばんから歯ブラシまで幅広い製品を手がける数百万ドル(数億円)規模の企業設立にこぎ着けた。 47歳になったフォンさんには、インターネットに接続できる消費者向け機器を製造して海外進出する計画がある。しかし新型コロナウイルス対策で2年にわたってロックダウン(都市封鎖)が繰り返されたことで、出荷コストは上がって消費者心理は冷え込んでしまった。今では会社が存続できるかどうかを心配している。 「この1年、持ちこたえられればよいのだが」とフォンさん。高層ビルが立ち並ぶ街を見下ろす最上階のオフィスで、商品に囲まれながら「商売の正念場だ」と語った。 フォンさんの出世物語は、深センそのものの歩みと重なる。 深セン市は、中国が経済改革に乗り出した1979年に誕生。経済特区に指定された同市は、農村が集まる地域から主要な国際港湾都市へと変貌を遂げ、中国の名だたるハイテク、金融、不動産、製造企業が拠点を置くようになった。 過去40年間は、毎年少なくとも20%の経済成長を記録。オックスフォード・エコノミクスは昨年10月時点で、2020年から22年に深センが世界トップの成長率を達成すると予想していた。 しかし今では、米カリフォルニアのシリコンバレーにあるサンノゼにその地位を奪われた。深センの今年第1・四半期の経済成長率はわずか2%と、新型コロナの第一波で中国経済が停止状態となった20年第1・四半期を除くと、過去最低となった。 深センは今も中国最大の輸出都市ではあるが、3月にはロックダウンの影響で海外向け出荷が14%近く落ち込んだ。 深センは長年、中国の改革開放政策の成功ぶりを示す都市と見なされてきた。習近平・国家主席は19年に同市を訪問した際、「奇跡の都市」と呼んだ。 オックスフォード・エコノミクスの世界都市調査ディレクター、リチャード・ホルト氏は、深センは「炭鉱のカナリア」であり、ここが苦しくなることは中国経済全体への警戒信号だと指摘する』、「習近平・国家主席は19年に・・・「奇跡の都市」と呼んだ」のが、いまや「「炭鉱のカナリア」であり、ここが苦しくなることは中国経済全体への警戒信号だと指摘」されるまでになったようだ。
・『ロックダウンで魅力あせる  人口約1800万人の深センではここ数年、地元を拠点とする大手企業が次々と災難に見舞われた。通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は米国の制裁を受け、不動産開発大手、中国恒大集団は経営危機に陥った。 加えて3月には深センその他の都市で新型コロナ感染対策のロックダウンが敷かれ、深センで製造される製品への国内需要が落ち込んだ。 政府系シンクタンク、中国開発研究所のディレクター、ソン・ディン氏は5月のエッセーに、「深センの経済はぐらつき、傾き、低迷している。深センは十分な勢いを失ったのではないかとの見方もある」と記した。 ロイターは深セン政府にコメントを要請したが、回答は得られなかった。 しかし市当局者らは内々に、深センの「奇跡」を持続させることが日増しに難しくなっていると認めている。 中国行きの国際便はほとんど停止し、ロックダウンにより港湾の作業は滞り、かつてにぎわった香港との境界も閉鎖同然となった今、深センはビジネスに向かない都市になってしまった。深セン、香港、マカオなどを結ぶ中国の「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア、GBA)」構想は棚上げになったようにみえる。 かつて自社デザインを製品化しようと深センに押しかけていた海外企業家らの来訪も途絶え、数十軒の駐在員向けバーやレストランは閉店、もしくは地元民の嗜好に合わせた店に変わった。 外国の商工会議所は中国政府に対し、海外人材が大量流出すると警告している。 「中国のシリコンバレー」とも言われる深センは、野心と才能を備えた新卒者が中国全土から集まる都市でもあり、平均年齢は34歳と全国屈指の若さだ。しかし景気減速によって新卒者の職探しも難しくなった。 ハイテク企業が集まる「ハイ・テク・パーク」地区近くにはアパートが密集しており、例年5月には不動産屋が家探しの新卒者でごった返す。しかしある不動産代理店経営者は先月ロイターに対し、取り扱い件数が昨年の半分になったと明かした。「貸します」の看板も目立つようになっている。 低賃金で働く出稼ぎ労働者の状況は厳しい。生計費の上昇に苦しみ、不動産価格は全国有数の高さとあって家を持つこともかなわない。 マッサージ師のシュー・ジュアンさん(44)の友達は最近、成都市の故郷に帰って火鍋屋を始めた。シューさん自身もそうしようかと考えている。 「飲食代ですら値上がりし過ぎているし、仕事はきついし、他の地方の生活水準はすごく良くなった。そろそろここを離れる時かもしれない」とシューさんは語った』、「中国行きの国際便はほとんど停止し、ロックダウンにより港湾の作業は滞り、かつてにぎわった香港との境界も閉鎖同然となった今、深センはビジネスに向かない都市になってしまった」、「景気減速によって新卒者の職探しも難しくなった。 ハイテク企業が集まる「ハイ・テク・パーク」地区近くにはアパートが密集しており・・・しかしある不動産代理店経営者は先月ロイターに対し、取り扱い件数が昨年の半分になったと明かした」、「カナリア」は生き続けられるだろうか。

第三に、6月27日付けNewsweek日本版「習近平のゼロコロナ政策が新卒大学生を空前の就職難に突き落とす」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2022/06/post-98970_1.php
・『ジェニー・バイさんは、北京のあるインターネット企業の厳しい面接を4回もくぐり抜け、最終的に内定を勝ち取った優秀なコンピューター科学専攻の10人の大学生の1人だった。 しかし、5月になってこの企業から内定取り消しを通告された。新型コロナウイルスの感染拡大や中国経済全般の悪化が理由だ。この点に今年1080万人と過去最高となった中国の大学新卒者が直面している大きな問題がある。 今月卒業したバイさんは「心配だ。就職先を見つけられない場合、どうすれば良いか分からない」と不安を隠せない。ただ、内定を取り消された企業名については、今後もその企業と良好な関係を維持したいと明らかにしなかった』、「内定取り消し」とは深刻だ。
・『若者の失業率は18.4%  中国経済は昨年の不動産市場の冷え込みや地政学的問題、当局によるハイテク、教育など幅広い産業への締め付けで既に減速していた。そこに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」と言える。 一方で、数十年来で最悪の状況となった労働市場に、ポルトガルの全人口を上回る規模の中国の大学新卒者が、一斉に参入しようとしている。足元の若者の失業率は、全世代の3倍以上で過去最高の18.4%に達している。 こうした就職できない若者の大量発生が、中国社会にどう影響するかは全く読めない。 中国が何十年も高成長を続けてきた後で、職探しに苦労するという事態は、せっかく高等教育を受けてきた若者にとって全くの想定外だ。 社会の安定を最優先に考える共産党指導部にとっても、特に今年は習近平国家主席の続投が秋に正式に決まろうかという局面で、若者の雇用不安が起きるのはあまりにも間が悪い。 北京大学のマイケル・ペティス教授(ファイナンス)は「(中国の)政府と人民が交わした社会契約では、人民が政治に参加しない代わりに、生活水準が年々向上すると保証されている。だから、懸念されるのはいったんこの保証が崩れれば、契約の他の部分も変わらざるを得なくなるのではないか、という点にある」と述べた』、「足元の若者の失業率は、全世代の3倍以上で過去最高の18.4%」、「中国が何十年も高成長を続けてきた後で、職探しに苦労するという事態は、せっかく高等教育を受けてきた若者にとって全くの想定外だ」、「北京大学のマイケル・ペティス教授(ファイナンス)は「(中国の)政府と人民が交わした社会契約では、人民が政治に参加しない代わりに、生活水準が年々向上すると保証されている。だから、懸念されるのはいったんこの保証が崩れれば、契約の他の部分も変わらざるを得なくなるのではないか、という点にある」と述べた」、「習近平国家主席の続投が秋に正式に決まろうかという局面で、若者の雇用不安が起きるのはあまりにも間が悪い」、その通りだ。
・『ハイテク雇用が大幅縮小  李克強首相は、大学新卒者の雇用確保が政府の最優先課題だと明言している。実際、新卒者向けにインターンシップ枠を設けている企業には、他の一般的な雇用支援措置を差し置いて補助金が支給される。 一部の地方政府は、起業する新卒者に低利の融資を提供。いくつかの国有企業は、民間で余剰化した非熟練雇用の一部を吸収する見通しだ。) 総合人材サービス企業・ランドスタッドの広域中華圏マネジングディレクター、ロッキー・チャン氏は、中国の非熟練雇用市場は2008─09年の世界金融危機時よりも悪化しており、新規雇用は昨年比で20─30%減ると見積もっている。 20年にわたって求人業務に携わってきた同氏は、今年はこれまで見てきた中で市場が最も低調だと指摘した。 大手求人サイト、智辯招聘によると、予想給与水準も6.2%低下するとみられる。 最近まで中国の大学新卒者の大量採用してきたのが、ハイテクセクターだった。ところが、業界全体では今、雇用を縮小する動きが広がっている。 インターネットサービスのテンセント(騰訊控股)から電子商取引のアリババまで、多くの大手IT企業は規制当局の取り締まり強化のあおりで、大規模な人員削減を強いられた。ハイテクセクター全体で今年、何万人もが職を失った、と5人の業界関係者がロイターに明かした。 上海を拠点する人材管理サービスの許姆四達集団が4月に公表したリポートを見ると、ハイテク大手約10社のほぼ全てが最低でも10%の人員を減らし、動画配信の愛奇芸などさらに削減幅が大きくなったケースもあった。 教育サービスも当局からにらまれた業界の1つで、やはり何万人も解雇した。最大手の新東方教育科技集団は6万人の削減を発表している。 逆に新規採用の動きは鈍い。テンセントの人事部門幹部の1人は、「数十人」の新卒者採用を検討中と話した。以前の同社は年間に約200人を採用していた。 人材紹介会社ロバート・ウォルターズのジュリア・ジュー氏は「インターネット企業は多くの雇用を減らしている。今、彼らに採用資金があるなら、新卒者よりも経験者を選んでいる」と説明した』、「新規雇用は昨年比で20─30%減る」、「20年にわたって求人業務に携わってきた同氏は、今年はこれまで見てきた中で市場が最も低調」、「多くの大手IT企業は規制当局の取り締まり強化のあおりで、大規模な人員削減を強いられた。ハイテクセクター全体で今年、何万人もが職を失った」、「規制当局の取り締まり強化」も最悪のタイミングだ。
・『ヘッドハンターも政府系企業に鞍替え  近年はハイテク企業との仕事がほとんどだった北京拠点のヘッドハンター、ジェーソンウォン氏は目下、政府系通信企業が主な顧客だ。「インターネット企業の採用が、活発化する黄金時代は終わりを迎えた」と言い切る。 中国では大学を出た後、しばらく仕事がないまま過ごす若者は企業側から歓迎されないのが普通だ。多くの家庭もそれを不運とみなすより「一家の恥」と考える。 かといって学士号を得ながらブルーカラーの仕事に就くというのも社会的に認められにくいため、大学院などの研究職に応募する人数が過去最高に上ったことが、公式統計から確認できる。 昨年大学を卒業したビセンテ・ユーさんは、その暮れにメディア企業での仕事を失って以来、再就職できていない。貯金は1─2カ月の家賃と生活費を賄える程度。不安感や不眠症と向き合う毎日で「父親には二度と家に帰るなと言われた。私の代わりに犬を育てた方がましだったという言葉も浴びせられた」とやつれた様子で語った。 ユーさんが夜間に訪れるのがソーシャルメディア。そこには同じ境遇の若者が集う。「私のように、仕事が見つからない人たちばかりで、それが多少慰めになる」という』、「ヘッドハンターも政府系企業に鞍替え」、さすが先読みの鋭さでならすだけある。「大学院などの研究職に応募する人数が過去最高に上った」、そこでの吸収力は僅かの筈だ。「ソーシャルメディア」の動向は当局も神経質に目を光らせているのだろうが、突如、爆発しかねないだけに要注意だ。

第四に、7月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国で「大学卒業=失業だ」の悲鳴…中国の失業問題に建国以来最悪の恐れ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305892
・『中国で16~24歳の失業率が上昇し続けている。2022年5月の水準は18.4%と統計開始来の最高水準を更新した。SNS上では、「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」などと将来の悲観を吐露する若者が増えている。より自由かつ安心できる生活の基盤を手に入れたいと考え、わが国での就職を目指す人も増えているようだ』、興味深そうだ。
・『建国以来最悪の中国の失業問題  中国で失業者が急増している。その状況はかなり深刻で、中国の労働市場は1949年の建国以来、最悪期を迎える懸念が高い。特に、16~24歳の若年層の雇用環境の厳しさが増している。中国の新卒者の中には、わが国での就職を目指す若者も増えていると聞く。 失業者急増の最大の要因は、経済成長が限界を迎えていることだ。改革開放以来、天安門事件という大きな混乱を挟みつつ、共産党政権は党の指揮によって需要増加が期待される分野に生産要素を再配分し、実質GDP成長率が10%を超える高度経済成長期を実現した。しかし、2017年の党大会以降、成長率の低下は鮮明だ。米中対立やゼロコロナ政策の徹底、ウクライナ危機などが成長率低下に拍車をかけている。 当面の間、世界の供給制約は深刻化する。資源価格の高騰も長引くだろう。中国では石炭不足などによって電力供給も不安定だ。在来分野から先端分野、中小零細企業から大企業までコスト削減を優先せざるを得ず、追加的に雇用を削減する企業が増えるだろう。中国の失業問題の深刻化が懸念される』、「建国以来最悪の中国の失業問題」とは深刻だ。
・『「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」  中国では、全国を対象とした失業率ではなく、都市部の調査ベースによる失業率が発表されている。21年10月に4.9%だった失業率は、11月以降に急上昇。特に、ゼロコロナ政策による物流・人流寸断のインパクトは大きく、22年4月に失業率は6.1%に達した。5月は5.9%に低下したが、状況は楽観できない。 特に、16~24歳の失業率が上昇し続けていることは深刻だ。18年5月に9.6%だった若年層の失業率は、20年2月に13.6%に上昇。22年5月の水準は18.4%と統計開始来の最高水準を更新した。若年層が労働市場から勢いよくはじき出されるかのような構図が鮮明になっている。 中国では科学技術の向上のために高等教育が強化され、22年の学部卒業生は1000万人を超えるといわれている。新卒学生の多くは、外国語やプログラミングなどの専門スキルを身に付けるなどしてより良い条件での就職を目指す。しかし、本来であれば成長期待の高いIT先端分野の企業であっても、新卒学生を雇い入れることが難しくなっている。IT企業で内定の取り消しに直面する新卒学生も増えているようだ。 中国のSNS上では、「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」などと将来の悲観を吐露する若者が増えている。より自由かつ安心できる生活の基盤を手に入れたいと考え、わが国での就職を目指す人も増えているようだ。 IT以外の業種でも雇用環境は厳しい。過剰生産能力の削減、ゼロコロナ政策や不動産バブルの崩壊、それらによる債務問題の深刻化によって、鉄鋼や不動産など在来分野の雇用環境が悪化している。 15~64歳の生産年齢人口の減少を背景とする労働コストの増加、トランプ政権以降の米中対立などを背景に中国での生産を見直し、ベトナムなどのASEAN地域やインドなどに事業拠点を移す海外の企業も増えた。都市への人口流出に直面してきた内陸部では需要が急速に縮小均衡していると考えられる。黒竜江省鶴崗市のように事実上の財政破綻に陥る地方政府も出始めた』、「16~24歳の失業率が18.4%」とは本当に深刻だ。「事実上の財政破綻に陥る地方政府」はこの他にも出てきそうだ。
・『限界を迎えている共産党主導の雇用創出  深刻化する失業問題の主たる要因として、改革開放以来の共産党政権の雇用政策が限界を迎えたことが大きい。 共産党政権は、人々の雇用・所得環境の安定を実現することによって求心力を維持してきた。1978年12月に改革開放路線が策定されて以降、共産党政権は一党独裁体制を維持したまま経済特区を設けて海外の企業の直接投資を呼び込んだ。それによって軽工業の基盤が整備され製鉄など重工業化も進み、社会インフラ整備によって雇用が生み出された。 さらに、国有・国営企業が事業活動を行なっていない分野では民間企業の設立を認め、今日のアリババやテンセント、ファーウェイなどの先端企業が急成長を遂げた。その結果、共産党政権による経済運営の下で雇用が増えて所得も伸びた。膨大な消費需要の獲得と生産コストの引き下げを目指してより多くの海外企業が対中直接投資を積み増すという流れも連鎖反応的に強まった。 中国の国民は、党の指示に従うことによって豊かになることができるという考えを強めたはずだ。それがあったからこそ、89年の天安門事件の後も、中国では共産党政権が一党独裁体制を維持し、党の指揮による経済運営が続いた。リーマンショック後、共産党政権はインフラ整備や不動産開発など投資を積み増すことによって景気を押し上げ、雇用の創出に励んだ。 しかし、2018年頃から党主導で雇用を生み出すことが難しくなっている。17年の党大会の終了後に公共事業が絞られた結果、想定外に景気が減速した。投資に頼った経済運営が限界を迎えた。その中で米中対立が先鋭化し、中国をはじめ世界の企業がサプライチェーンの混乱と寸断に陥った。 さらに、コロナ禍におけるゼロコロナ政策が経済成長率を低下させ、失業問題が輪をかけて深刻化している。習近平政権は金融の緩和を進め、公共事業の積み増しなど企業の経営体力を支えて雇用を増やそうとしているが十分な効果は出ていない。習政権の経済運営は正念場を迎えている』、「コロナ禍におけるゼロコロナ政策が経済成長率を低下させ、失業問題が輪をかけて深刻化している」、「ゼロコロナ政策」へのこだわりが強いようだ。
・『今後もヒト・モノ・カネの海外流出は増加  今後も若年層を中心に中国の失業問題は深刻化するだろう。中国では経済全体で資本の効率性が低下している。 まず、不動産バブル崩壊によって「灰色のサイ」と呼ばれる債務問題の厳しさが増している。共産党政権は恒大集団など債務返済能力が大きく低下した不動産デベロッパーに公的資金を注入して金融システムの健全化を目指さなければならない。 しかし、公的な救済措置の発動は民間企業の創業経営者を救済することになるため、共同富裕の考えに逆行する。結果的に不動産バブル崩壊はさらに深刻化せざるを得ない。それによって、土地の利用権の売却益は減少し、財政運営が難航する地方政府も増えるだろう。 IT先端分野の民間企業の締め付けも強められる。8月からは改正独占禁止法が施行され、データ利用などに関する罰則が強化される。貧富の格差の拡大をなんとしても阻止するために、共産党政権は改革開放の果実として成長した民間企業に対する統制を強めなければならない。 習近平政権の経済運営は、成長期待の高い分野のアニマルスピリットを伸ばすのではなく、カンナでそぎ落としているかのようにみえる。そうして浮き出た資金を、貧困や失業問題に直面する層に配分し、社会の閉塞感の解消を目指す「ポーズ」を示している。 他方で、ゼロコロナ政策の長期化懸念、台湾海峡の緊迫感の高まり、半導体や人工知能など先端分野を中心とする米中対立の先鋭化リスク上昇などを背景に、中国から逃避する資本は増えるだろう。ウクライナ危機によるインフレ懸念の高まりが加わることによって、人民元で保有してきた財産を海外に持ち出し、その価値を守らなければならないと危機感を急速に強める国民も増えるだろう。 習政権にとって、人々の自由な発言や行動を認め、人材や資本を中国国内につなぎ留めることは容易ではない。それよりも習氏は長期の支配体制の確立に向けて社会と経済の統制を強化している。今後も、中国のアニマルスピリットは減殺されてヒト・モノ・カネの海外流出は増加し、雇用・所得環境は悪化するだろう』、「習氏は長期の支配体制の確立に向けて社会と経済の統制を強化」、「中国のアニマルスピリットは減殺されてヒト・モノ・カネの海外流出は増加し、雇用・所得環境は悪化するだろう」、同感である。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 姫田小夏氏による「「こんな要求は前代未聞」中国ビジネスに異変続出で、日本の中小企業が困惑」 「中国との距離が一段と広がっている」とは穏やかではない。 「武漢のロックダウンが解除され、「中国はコロナの感染拡大を抑え込んだ」と宣言して以降、中国では「感染ルートは海外から輸入した貨物にある」という解釈が定着した。 その後も中国内で局所的に感染者が出るが、中国政府はその原因を「海外からもたらされたものだ」と主張し、今春の上海市におけるオミクロン株の拡大についても、同様の説明を行った。習近平指導部は「海外からの輸入品は要注意だ」と警告して国内の防疫体制を強化したが、“海外”を過剰に意識したアナウンスは「別の目的があるのではないか」と疑う声も」、「「海外からの輸入 「コロナの2年半はB社への忖度・・・ばかりが増え、これまでのようなオープンな会話は、ほとんどできなくなってしまいました」(坂場氏) 長年の協力先でありながらも、日本のA社が上海パートナーB社に対し “虎の尾”を踏まないよう神経を使う様子がうかがえる」、信じ難い取引関係の変化だ。「“コロナの2年半”を経て転換点を迎えた中小企業の中国ビジネスは、今後ますます国内回帰を進める気配だ」、その通りなのだろう。 次に、6月22日付け日経ビジネスオンラインが転載したロイター「「奇跡の都市」深センが暗転 中国経済の未来 日経ビジネスオンライン ロイター「「奇跡の都市」深センが暗転 中国経済の未来を暗示か」 「習近平・国家主席は19年に・・・「奇跡の都市」と呼んだ」のが、いまや「「炭鉱のカナリア」であり、ここが苦しくなることは中国経済全体への警戒信号だと指摘」されるまでになったようだ。 「中国行きの国際便はほとんど停止し、ロックダウンにより港湾の作業は滞り、かつてにぎわった香港との境界も閉鎖同然となった今、深センはビジネスに向かない都市になってしまった」、「景気減速によって新卒者の職探しも難しくなった。 ハイテク企業が集まる「ハイ・テク・パーク」地区近くにはアパートが密集しており・・・しかしある不動産代理店経営者は先月ロイターに対し、取り扱い件数が昨年の半分になったと明かした」、「カナリア」は生き続けられるだろうか。 Newsweek日本版「習近平のゼロコロナ政策が新卒大学生を空前の就職難に突き落とす」 「内定取り消し」とは深刻だ。 「足元の若者の失業率は、全世代の3倍以上で過去最高の18.4%」、「中国が何十年も高成長を続けてきた後で、職探しに苦労するという事態は、せっかく高等教育を受けてきた若者にとって全くの想定外だ」、「北京大学のマイケル・ペティス教授(ファイナンス)は「(中国の)政府と人民が交わした社会契約では、人民が政治に参加しない代わりに、生活水準が年々向上すると保証されている。だから、懸念されるのはいったんこの保証が崩れれば、契約の他の部分も変わらざるを得なくなるのではないか、という点にある」と述べた」、「習近平国家主席 「新規雇用は昨年比で20─30%減る」、「20年にわたって求人業務に携わってきた同氏は、今年はこれまで見てきた中で市場が最も低調」、「多くの大手IT企業は規制当局の取り締まり強化のあおりで、大規模な人員削減を強いられた。ハイテクセクター全体で今年、何万人もが職を失った」、「規制当局の取り締まり強化」も最悪のタイミングだ。 「ヘッドハンターも政府系企業に鞍替え」、さすが先読みの鋭さでならすだけある。「大学院などの研究職に応募する人数が過去最高に上った」、そこでの吸収力は僅かの筈だ。「ソーシャルメディア」の動向は当局も神経質に目を光らせているのだろうが、突如、爆発しかねないだけに要注意だ。 真壁昭夫氏による「中国で「大学卒業=失業だ」の悲鳴…中国の失業問題に建国以来最悪の恐れ」 「建国以来最悪の中国の失業問題」とは深刻だ。 「16~24歳の失業率が18.4%」とは本当に深刻だ。「事実上の財政破綻に陥る地方政府」はこの他にも出てきそうだ。 「コロナ禍におけるゼロコロナ政策が経済成長率を低下させ、失業問題が輪をかけて深刻化している」、「ゼロコロナ政策」へのこだわりが強いようだ。 「習氏は長期の支配体制の確立に向けて社会と経済の統制を強化」、「中国のアニマルスピリットは減殺されてヒト・モノ・カネの海外流出は増加し、雇用・所得環境は悪化するだろう」、同感である。
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