株式・為替相場(その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?) [金融]
株式・為替相場については、5月14日に取上げた。今日は、(その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?)である。
先ずは、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/604586
・『毎回同じことばかり書いていると言われそうだが、7月20~21日に行われる金融政策決定会合を前に、日本銀行の政策について総括したうえで、「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」を提示したい。 以下の複数のプランの目的はいずれも日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することにある。また、敵は投機を繰り返すトレーダーであって、日銀ではない。 今回の決定会合は日銀が動くチャンスかもしれない。なぜなら、市場のトレーダーたちはアメリカの中央銀行の政策決定会合であるFOMC(連邦公開市場委員会、26~27日開催)における利上げ幅の予測の議論に掛かり切りで、日銀の政策変更を狙った投機的動きがないからである。政策変更が投機に屈したことにならない大チャンスだ』、今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。
・『なぜ「連日指し値オペ」を即刻やめるべきなのか 早速、日銀が原則毎営業日行っている「連日指し値オペ」(日銀が国債の利回りを指定して、無制限に買い入れる措置)の出口戦略から提案したい。 超短期:「指し値オペ出口戦略」 目的:投機的トレーダーを追い払うため アクション1:連日指し値オペを即時中止する。今回の金融政策決定会合で行う。 解説:① 日銀は自ら宣言して市場に約束した手前、アクションは縛られている。したがって、投機トレーダーに完全に読まれている。というか、読む必要もない。そのアクションを利用して、むしろ絶好のターゲットとして、好きなときに好きなだけ揺さぶりをかけることができる。 ② 国債を先物で売る投機トレーダーは失うものがない。国債の値上がり(利回り低下)の可能性はほぼゼロで、金利の上昇を避けようとして日銀が動けば儲かる。 ③ 一方、日銀は追い込まれている。金融政策も、中央銀行の信頼性も背負っているから、自由度がない。さらに、物価高の主要要因の1つである円安の1つの原因である日銀が政治的に、かつほぼ全国民から責められている。異次元緩和に当初から反対してきた経済学者だけでなく、これまで支持してきたエコノミストまで日銀総批判に回っている。 ④ 連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである。 アクション2:国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする。株式ETF(上場投資信託)についても日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)先物も買えるようにする。やはり今回の決定会合で決定するか、もしくは、検討されたことを議事要旨に書き込む。 解説:① 投機トレーダーは先物を多用するからだ。なぜかといえば、小額で大きく動かせるからである。そこへ、規模で圧倒的に大きい日銀が参入してくれば、先物市場も日銀に支配され、トレーダーたちの勝ち目はない。 ② 「日銀が先物市場に入ってくる可能性」だけで、十分投機トレーダーを撤退させることができる。彼らは、リスク小さく楽に儲ける、勝ち戦にしか参入しない小心者である。勝ち目がなければすぐに逃げる。 ③ 国債(株式も)の現物保有量を減らすことができる。少ない保有量で同じ金融緩和効果を持つので、先物利用はもともと望ましい。 アクション3:指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う。 目的:日銀側のアクションを読ませないように、多様な手段を持つ。かつ、利回りは絶対に低下しない、という投機トレーダーの予想を大きく外し、彼らにいったんポジション解消で撤退させる。 解説:① そもそも0.25%は変動幅の上限にすぎず、目標値でない。目標値は0%程度である。だから、0.1%指し値は極めて妥当、普通、むしろ本来の政策により整合的である。 ② ただし、いったん彼らを退却させたら直ちに次のアクションに移る』、「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う」、現在の硬直的なやり方を柔軟にする上で有効そうだ。
・『指し値オペ出口戦略の「次」は? 短期1:イールドカーブコントロール(長短金利操作)出口戦略 目的:投機家との戦いの場を、最後まで徹底的に戦い抜ける土俵に移す アクション1:イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある(その際はアクション2となる)。 ④ その場合は、傷が深くなる前に、さっさと戦いをやめることである。小を捨てて、本丸を守るということである。 ⑤ 本丸とは、日銀の金融政策への信頼の維持である。修正を繰り返し、ずるずると後退すれば、信頼を失うだけである。) 短期2:異常な円安の修正戦略 目的:円安を修正し、景気にプラスの影響を与えるため。なぜなら①円安は貿易赤字が巨大な現在、景気にマイナスである。②物価高は、日本においては、輸入コストの上昇が主な理由だ。つまり円安になれば、さらに輸入コストは上昇する。円安を解消すれば物価高は軽減される。 解説:① 為替は金融政策の目的ではない。つまり、為替相場にひずみを与えるような金融政策は望ましくない。為替相場は、経済、金融市場の妥当なバランスの上に決まるべきものである。 しかし、現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である。 ② 要は、手段が歪んでいる金融政策を、金融緩和の効果は維持したまま、修正するだけのことであり、為替市場が金融政策の目的になるかどうか、というような哲学的、理論的、枠組み的話ではなく、ただのテクニカルな修正である。バグを取り払うのである。 ③ そして、円安修正は日本の景気にプラスである。貿易赤字は異常に膨らんでおり、経常収支まで一時赤字になり、今後は再び赤字になり継続しそうな勢いである。この状況では、輸出よりも輸入のほうが圧倒的に大きいのだから、円安になれば、赤字は拡大し景気にはマイナスである。エネルギーや食品への支出額の増加によって、それ以外への消費、投資額が減少する。つまり、貧しくなる。 ④ 物価高の要因は、エネルギー・食料品などの必需品の輸入コストの上昇、必需品の部品など(スマートフォンなどの製品も)の上昇だから、為替は直接に影響する。円安が修正されれば、輸入インフレの影響は大きく減る』、「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある」、「現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である」、なるほど。
・『投機トレーダーを打ちのめすために団結せよ! 以上述べたことは、金融政策について、どんな立場をとろうとも、日本経済にプラスになるように行動しようと考えている人々であれば、議論の余地がなく、なんのデメリットもないはずだ。政治も国民も歓迎する。批判的な有識者、エコノミスト、経済学者も歓迎する。だから、即刻実行するべきである。 冒頭でも一部触れたが、大事なことは①金融引き締めではなく、緩和の継続であり、緩和の持続性、有効性を高めるために必須である。テクニカルな政策の修正にすぎない。②何よりも目的は日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することである。また、敵は投機トレーダーである。日銀ではないということだ。 有識者、メディアも日銀を攻撃するのをやめ、一致団結して、日銀と日銀の金融政策を支え、支持しよう。まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬について語るコーナーです。あらかじめご了承ください』、「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。
次に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307880
・『米国をはじめとして世界中で利上げが続出し、新型コロナウイルス感染拡大「第7波」も重なる中、意外にも日経平均株価は堅調だ。ほぼ2万8000円まで戻したこの株価の回復は「本物」なのか考えてみよう』、「日経平均株価」のグラフは
https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr=
・『意外に堅調な株価 ほぼ2万8000円まで戻す ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの流行「第7波」、安倍晋三元首相の非業の死など、経済的な悪材料に事欠かない中で、株価は意外に堅調だ。8月9日火曜日の日経平均株価は2万7999円(端数切捨)とほぼ2万8000円の水準にある。これは昨年末の2万8791円と大きく変わらず、ロシアのウクライナ侵攻の前日(2月23日)の2万6449円をかなり上回っている。 ロシアのウクライナ侵攻がエネルギーや食糧などのインフレにつながり、これを受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の急激な金融引き締めを背景に、内外の株式市場は不調である――。そんなイメージをお持ちの方が多いのではないかと推測するのだが、現在の株価の推移は少々意外なのではないだろうか。 株価の回復は今後も続くと見ていいのだろうか』、どうだろうか。
・『日本の株価は米国の株価次第 「小国のマーケット」 長期的には「ズレ」が生じるとしても、日本の株価の動きは米国の株価と連動せざるを得ない。ここまで、世界株に占める日本株の割合が低下し、世界の大きな投資資金がグローバル投資への傾斜を強めてきた。そうした背景から、日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている。 さて、米国の株式市場の状況を考えると、「下落相場はまだ終わっていない」と考えることが妥当ではなかろうか。 下図は、金融政策と景気の場合分けで株価の典型的な上下の循環パターンを図式化したものだ。 (図はリンク先参照) 左上の第2象限からスタートすると、景気はまだ良くないが金融緩和政策の影響が優勢で株価が上昇する「金融相場」の状況を想定している。その後、景気が回復して企業業績の改善が株価の上昇を牽引する「業績相場」(第1象限)、しかし景気が過熱してインフレが問題となり、強い金融引き締めが行われて株価が下落する「逆・金融相場」(第4象限)、不景気から企業業績が悪化することが株価の下落につながる「逆・業績相場(第3象限)」と株価と景気、金融政策、物価が循環するのが典型的なパターンとして想定できる。 「○○相場」の前に「逆」と付いている呼称は、「○○」が主導する「下げ相場」の意味で、わが国の株式投資の世界では、割合広く使われている言い回しだ。 周知の通り、米国のインフレは消費者物価指数(CPI)で9.1%(6月、前年同月比)、企業物価(卸売物価)で11.3%という、「FRBが焦る」状況となっている。先ほどの図の循環で考えると、普通なら円で循環するところが、右に大きく引っ張られた楕円になってしまったような状況だと考えられる』、「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。
・『原油価格に変化あり ウクライナ危機前の水準まで下落 ただ、物価の状況には少々変化が見られる。小麦などはすでにロシアのウクライナ侵攻前をかなり下回るところまで価格が下落していた。さらに、ここにきて原油相場も米国の原油指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で見て一時90ドル割れまで下落しており、侵攻直前の約92ドルを下回る場面もあった。 商品市場では景気後退を価格に織り込み始めたということでもあるし、ロシアに対する経済制裁が有効に機能しなくなっていることの表れでもあるだろう。従って、必ずしも喜べない状況だが、インフレに頭打ち感が出てくる可能性はある。 一方、エネルギーは欧州向けのガス供給量の操作を通じて、むしろロシア側の武器になっている。冬の需要期に向けてロシアが欧州向けのガス供給を絞って、エネルギー価格の上昇が再び起こる可能性は捨てきれない。現時点で「インフレの頭打ち」を決めつけるのは早計だろう。 米国のCPIではサービス価格の影響が大きいが、労働市場の逼迫を通じた賃金の上昇でサービス価格の上昇に歯止めが掛からなくなっている。先般発表された7月の雇用統計(非農業部門雇用者数)は52.8万人増と市場の予想を大きく上回り、失業率は前月の3.6%から3.5%に低下した。 FRBは物価と雇用の二つの目的を追う組織だが、雇用が堅調であることから物価抑制に集中しやすい状況になっている。 今や金融政策のさじ加減が分からなくなってしまったように見えるFRBが賃金の上昇に歯止めをかけるためには、景気を悪化させるところまで金利を引き上げる必要がある。しかも一般に雇用は景気に対する遅行指標なので、金融引き締めが物価抑制に効果を上げるところまでの道のりは長い。 先の図式でいうと、「逆・金融相場」の規模と期間は想定を上回る可能性がある。さらに、金融引き締めの終わりまでには「逆・業績相場」的な状況が現出することが予想される。 典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる』、「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。
・『「岸田リスク」の行方は? 金融所得課税、金融政策変更… 岸田文雄首相と株式市場は、これまで相性がいいとは言えない関係だった。これまで、金融所得課税の見直し(増税)や、自社株買いへの規制、日本銀行の金融政策見直しの可能性など幾つかのリスク要因を株式市場に提供した。そのうちの幾つかは小さいながら株価が急落する「岸田ショック」をもたらし、岸田首相が慌ててそれらを撤回する場面があった。 他方、話自体は言葉の印象ほど大きくなさそうだが、「資産所得倍増計画」を打ち出したことは、各種のNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充への期待を通じて、株式市場にフレンドリーな言動だった。 小さな問題から片付けると、金融所得課税の見直しは、自民党の税制調査会会長である宮沢洋一氏が最近のテレビ番組で「議論はしないといけない」と述べているように、「まだ死にきっていない」。従って、年末にかけての税制の議論の中で再登場して株価を下げるリスクが残っている。 投資のリスクを取って利益を得ることを処罰するがごとき悪しき増税であるし、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」に逆行する施策でもある。そのため、実現はしないと思われるが、税の世界の住人たちの中では「いまだ諦めていない人たちがいる」ことは警戒しておきたい。 一方、「特大の岸田リスク」になり得るのは、岸田首相が来春の日銀正副総裁3人の交代人事に絡めて、日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性だ。これは、リフレ派が減った今年の政策委員会人事で既に示唆されていると見ることができる。また、「アベノミクス」の名の下に金融緩和政策を主導してきた安倍元首相が不在となったことの政治的影響もあって、大いに懸念されるところだ。 本日10日に行われるとされている内閣改造で、「悪い円安論者」であると同時にほぼ財務省の言いなりの鈴木俊一財務大臣が留任するようだと、一段と心配が増す(本稿執筆時点では「留任調整」の報道があった)。 9月27日に予定されている安倍元首相の国葬が終わってから日数を経て、追悼ムードが薄れてくる頃合いが株式市場的には心配だ。 円安で上場企業の業績は好調であり、上方修正含みだ。また、日本企業がいわば有利なハンディキャップをもらっている効果を上げている点で、日本の金融緩和継続がもたらしている円安は、日本国内での技術・設備・人材への投資の大きなチャンスを提供している』、「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。
・『政策手段の見直し 例えば日銀の上場投資信託〈ETF〉買いはいい政策だとは思えない)は必要であるとしても、金融緩和の維持はまだしばらくの間必要だろう。岸田氏が功を焦って自分の政策を打ち出したがるリスク、あるいは緊縮財政や金融の引き締めを指向する官僚に担がれて利用されるリスクには注意が必要だ。 一方、資源価格の上昇が一服していることや、FRBの金融引き締めが続いて円安がキープされそうな状況は、日本の株価に対してはプラスのファクターだ』、なるほど。
・『個人投資家はどうしたらいいか? 株価下落を「楽しみにする」心構えを 前述の通り、株価の循環のパターンを考えると、「株価下落のリスクは遠のいた」とはまだ言えそうにない。 だが、一方では、FRBが金融引き締めを継続しそうだという株価下落リスクの主因となる状況は、多くの市場参加者の知るところでもある。従って、現在の株価にもある程度織り込まれていると考える必要もある。 内外の株式に投資している個人投資家は、「株価の下落に耐える準備をしながら」(自分にとって過大なリスクは早急に排除すべきだ、という程度の意味である)、「逆・金融相場」と「逆・業績相場」をやり過ごして、次の株価上昇を待つのが概ね上策だろう。 「持ち株をいったん売って、安く買い戻す」オペレーションは、想像する以上に難しく、機関投資家でも平均的にはうまくいかない。 精神的にタフでないとなかなかできないが、相場の循環パターンに「何周も付き合って長期投資する」のが投資の王道だ。利益が出たところで持ち株を売却すると、その時点で課税されることの不利も長期的にはばかにならない。 近年投資を始めて、つみたてNISAやiDeCoなどを開始した投資家は、今後来るかもしれない株価の下落局面を「むしろ楽しみにする」くらいの心境で積立投資を継続するのがいいだろう。 また、長期投資中心のオーソドックスな投資家も、意外に大きな株価の下げ局面が現れたときに追加投資する金策を想像しておくといい。「だいたい投資済みだが、まだ少し投資する余力がある」というくらいの状況は、多くの投資家にとって「適正なリスク量」に近いと想像する。 もちろん個人差はあるが、将来の稼ぎと支出の柔軟性を考えると、多くの人がイメージしている以上に自分のリスク負担能力は大きい。「株価下落の可能性」を説きながら言うのも気が引けるが、どっしり構えて投資を続けてほしい』、「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。
先ずは、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/604586
・『毎回同じことばかり書いていると言われそうだが、7月20~21日に行われる金融政策決定会合を前に、日本銀行の政策について総括したうえで、「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」を提示したい。 以下の複数のプランの目的はいずれも日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することにある。また、敵は投機を繰り返すトレーダーであって、日銀ではない。 今回の決定会合は日銀が動くチャンスかもしれない。なぜなら、市場のトレーダーたちはアメリカの中央銀行の政策決定会合であるFOMC(連邦公開市場委員会、26~27日開催)における利上げ幅の予測の議論に掛かり切りで、日銀の政策変更を狙った投機的動きがないからである。政策変更が投機に屈したことにならない大チャンスだ』、今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。
・『なぜ「連日指し値オペ」を即刻やめるべきなのか 早速、日銀が原則毎営業日行っている「連日指し値オペ」(日銀が国債の利回りを指定して、無制限に買い入れる措置)の出口戦略から提案したい。 超短期:「指し値オペ出口戦略」 目的:投機的トレーダーを追い払うため アクション1:連日指し値オペを即時中止する。今回の金融政策決定会合で行う。 解説:① 日銀は自ら宣言して市場に約束した手前、アクションは縛られている。したがって、投機トレーダーに完全に読まれている。というか、読む必要もない。そのアクションを利用して、むしろ絶好のターゲットとして、好きなときに好きなだけ揺さぶりをかけることができる。 ② 国債を先物で売る投機トレーダーは失うものがない。国債の値上がり(利回り低下)の可能性はほぼゼロで、金利の上昇を避けようとして日銀が動けば儲かる。 ③ 一方、日銀は追い込まれている。金融政策も、中央銀行の信頼性も背負っているから、自由度がない。さらに、物価高の主要要因の1つである円安の1つの原因である日銀が政治的に、かつほぼ全国民から責められている。異次元緩和に当初から反対してきた経済学者だけでなく、これまで支持してきたエコノミストまで日銀総批判に回っている。 ④ 連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである。 アクション2:国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする。株式ETF(上場投資信託)についても日経平均株価、TOPIX(東証株価指数)先物も買えるようにする。やはり今回の決定会合で決定するか、もしくは、検討されたことを議事要旨に書き込む。 解説:① 投機トレーダーは先物を多用するからだ。なぜかといえば、小額で大きく動かせるからである。そこへ、規模で圧倒的に大きい日銀が参入してくれば、先物市場も日銀に支配され、トレーダーたちの勝ち目はない。 ② 「日銀が先物市場に入ってくる可能性」だけで、十分投機トレーダーを撤退させることができる。彼らは、リスク小さく楽に儲ける、勝ち戦にしか参入しない小心者である。勝ち目がなければすぐに逃げる。 ③ 国債(株式も)の現物保有量を減らすことができる。少ない保有量で同じ金融緩和効果を持つので、先物利用はもともと望ましい。 アクション3:指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う。 目的:日銀側のアクションを読ませないように、多様な手段を持つ。かつ、利回りは絶対に低下しない、という投機トレーダーの予想を大きく外し、彼らにいったんポジション解消で撤退させる。 解説:① そもそも0.25%は変動幅の上限にすぎず、目標値でない。目標値は0%程度である。だから、0.1%指し値は極めて妥当、普通、むしろ本来の政策により整合的である。 ② ただし、いったん彼らを退却させたら直ちに次のアクションに移る』、「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1%で指し値オペを行う」、現在の硬直的なやり方を柔軟にする上で有効そうだ。
・『指し値オペ出口戦略の「次」は? 短期1:イールドカーブコントロール(長短金利操作)出口戦略 目的:投機家との戦いの場を、最後まで徹底的に戦い抜ける土俵に移す アクション1:イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある(その際はアクション2となる)。 ④ その場合は、傷が深くなる前に、さっさと戦いをやめることである。小を捨てて、本丸を守るということである。 ⑤ 本丸とは、日銀の金融政策への信頼の維持である。修正を繰り返し、ずるずると後退すれば、信頼を失うだけである。) 短期2:異常な円安の修正戦略 目的:円安を修正し、景気にプラスの影響を与えるため。なぜなら①円安は貿易赤字が巨大な現在、景気にマイナスである。②物価高は、日本においては、輸入コストの上昇が主な理由だ。つまり円安になれば、さらに輸入コストは上昇する。円安を解消すれば物価高は軽減される。 解説:① 為替は金融政策の目的ではない。つまり、為替相場にひずみを与えるような金融政策は望ましくない。為替相場は、経済、金融市場の妥当なバランスの上に決まるべきものである。 しかし、現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である。 ② 要は、手段が歪んでいる金融政策を、金融緩和の効果は維持したまま、修正するだけのことであり、為替市場が金融政策の目的になるかどうか、というような哲学的、理論的、枠組み的話ではなく、ただのテクニカルな修正である。バグを取り払うのである。 ③ そして、円安修正は日本の景気にプラスである。貿易赤字は異常に膨らんでおり、経常収支まで一時赤字になり、今後は再び赤字になり継続しそうな勢いである。この状況では、輸出よりも輸入のほうが圧倒的に大きいのだから、円安になれば、赤字は拡大し景気にはマイナスである。エネルギーや食品への支出額の増加によって、それ以外への消費、投資額が減少する。つまり、貧しくなる。 ④ 物価高の要因は、エネルギー・食料品などの必需品の輸入コストの上昇、必需品の部品など(スマートフォンなどの製品も)の上昇だから、為替は直接に影響する。円安が修正されれば、輸入インフレの影響は大きく減る』、「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよい)終了してしまう手もある」、「現在、為替市場に異常なひずみをもたらしているのは、日銀の連日指し値オペを手段としたイールドカーブコントロールである。日銀の金融政策が通常モードの金融緩和であれば、金融政策を為替市場のために変える必要はない。しかし、日銀の金融政策が金融市場の機能を殺し、異常な状態にしているために、異常な投機が起きている。それを止めることは、金融政策の役割である」、なるほど。
・『投機トレーダーを打ちのめすために団結せよ! 以上述べたことは、金融政策について、どんな立場をとろうとも、日本経済にプラスになるように行動しようと考えている人々であれば、議論の余地がなく、なんのデメリットもないはずだ。政治も国民も歓迎する。批判的な有識者、エコノミスト、経済学者も歓迎する。だから、即刻実行するべきである。 冒頭でも一部触れたが、大事なことは①金融引き締めではなく、緩和の継続であり、緩和の持続性、有効性を高めるために必須である。テクニカルな政策の修正にすぎない。②何よりも目的は日銀への信頼、金融政策への信頼性を維持することである。また、敵は投機トレーダーである。日銀ではないということだ。 有識者、メディアも日銀を攻撃するのをやめ、一致団結して、日銀と日銀の金融政策を支え、支持しよう。まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースや競馬について語るコーナーです。あらかじめご了承ください』、「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。
次に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307880
・『米国をはじめとして世界中で利上げが続出し、新型コロナウイルス感染拡大「第7波」も重なる中、意外にも日経平均株価は堅調だ。ほぼ2万8000円まで戻したこの株価の回復は「本物」なのか考えてみよう』、「日経平均株価」のグラフは
https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr=
・『意外に堅調な株価 ほぼ2万8000円まで戻す ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスの流行「第7波」、安倍晋三元首相の非業の死など、経済的な悪材料に事欠かない中で、株価は意外に堅調だ。8月9日火曜日の日経平均株価は2万7999円(端数切捨)とほぼ2万8000円の水準にある。これは昨年末の2万8791円と大きく変わらず、ロシアのウクライナ侵攻の前日(2月23日)の2万6449円をかなり上回っている。 ロシアのウクライナ侵攻がエネルギーや食糧などのインフレにつながり、これを受けた米連邦準備制度理事会(FRB)の急激な金融引き締めを背景に、内外の株式市場は不調である――。そんなイメージをお持ちの方が多いのではないかと推測するのだが、現在の株価の推移は少々意外なのではないだろうか。 株価の回復は今後も続くと見ていいのだろうか』、どうだろうか。
・『日本の株価は米国の株価次第 「小国のマーケット」 長期的には「ズレ」が生じるとしても、日本の株価の動きは米国の株価と連動せざるを得ない。ここまで、世界株に占める日本株の割合が低下し、世界の大きな投資資金がグローバル投資への傾斜を強めてきた。そうした背景から、日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている。 さて、米国の株式市場の状況を考えると、「下落相場はまだ終わっていない」と考えることが妥当ではなかろうか。 下図は、金融政策と景気の場合分けで株価の典型的な上下の循環パターンを図式化したものだ。 (図はリンク先参照) 左上の第2象限からスタートすると、景気はまだ良くないが金融緩和政策の影響が優勢で株価が上昇する「金融相場」の状況を想定している。その後、景気が回復して企業業績の改善が株価の上昇を牽引する「業績相場」(第1象限)、しかし景気が過熱してインフレが問題となり、強い金融引き締めが行われて株価が下落する「逆・金融相場」(第4象限)、不景気から企業業績が悪化することが株価の下落につながる「逆・業績相場(第3象限)」と株価と景気、金融政策、物価が循環するのが典型的なパターンとして想定できる。 「○○相場」の前に「逆」と付いている呼称は、「○○」が主導する「下げ相場」の意味で、わが国の株式投資の世界では、割合広く使われている言い回しだ。 周知の通り、米国のインフレは消費者物価指数(CPI)で9.1%(6月、前年同月比)、企業物価(卸売物価)で11.3%という、「FRBが焦る」状況となっている。先ほどの図の循環で考えると、普通なら円で循環するところが、右に大きく引っ張られた楕円になってしまったような状況だと考えられる』、「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。
・『原油価格に変化あり ウクライナ危機前の水準まで下落 ただ、物価の状況には少々変化が見られる。小麦などはすでにロシアのウクライナ侵攻前をかなり下回るところまで価格が下落していた。さらに、ここにきて原油相場も米国の原油指標WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で見て一時90ドル割れまで下落しており、侵攻直前の約92ドルを下回る場面もあった。 商品市場では景気後退を価格に織り込み始めたということでもあるし、ロシアに対する経済制裁が有効に機能しなくなっていることの表れでもあるだろう。従って、必ずしも喜べない状況だが、インフレに頭打ち感が出てくる可能性はある。 一方、エネルギーは欧州向けのガス供給量の操作を通じて、むしろロシア側の武器になっている。冬の需要期に向けてロシアが欧州向けのガス供給を絞って、エネルギー価格の上昇が再び起こる可能性は捨てきれない。現時点で「インフレの頭打ち」を決めつけるのは早計だろう。 米国のCPIではサービス価格の影響が大きいが、労働市場の逼迫を通じた賃金の上昇でサービス価格の上昇に歯止めが掛からなくなっている。先般発表された7月の雇用統計(非農業部門雇用者数)は52.8万人増と市場の予想を大きく上回り、失業率は前月の3.6%から3.5%に低下した。 FRBは物価と雇用の二つの目的を追う組織だが、雇用が堅調であることから物価抑制に集中しやすい状況になっている。 今や金融政策のさじ加減が分からなくなってしまったように見えるFRBが賃金の上昇に歯止めをかけるためには、景気を悪化させるところまで金利を引き上げる必要がある。しかも一般に雇用は景気に対する遅行指標なので、金融引き締めが物価抑制に効果を上げるところまでの道のりは長い。 先の図式でいうと、「逆・金融相場」の規模と期間は想定を上回る可能性がある。さらに、金融引き締めの終わりまでには「逆・業績相場」的な状況が現出することが予想される。 典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる』、「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。
・『「岸田リスク」の行方は? 金融所得課税、金融政策変更… 岸田文雄首相と株式市場は、これまで相性がいいとは言えない関係だった。これまで、金融所得課税の見直し(増税)や、自社株買いへの規制、日本銀行の金融政策見直しの可能性など幾つかのリスク要因を株式市場に提供した。そのうちの幾つかは小さいながら株価が急落する「岸田ショック」をもたらし、岸田首相が慌ててそれらを撤回する場面があった。 他方、話自体は言葉の印象ほど大きくなさそうだが、「資産所得倍増計画」を打ち出したことは、各種のNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充への期待を通じて、株式市場にフレンドリーな言動だった。 小さな問題から片付けると、金融所得課税の見直しは、自民党の税制調査会会長である宮沢洋一氏が最近のテレビ番組で「議論はしないといけない」と述べているように、「まだ死にきっていない」。従って、年末にかけての税制の議論の中で再登場して株価を下げるリスクが残っている。 投資のリスクを取って利益を得ることを処罰するがごとき悪しき増税であるし、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」に逆行する施策でもある。そのため、実現はしないと思われるが、税の世界の住人たちの中では「いまだ諦めていない人たちがいる」ことは警戒しておきたい。 一方、「特大の岸田リスク」になり得るのは、岸田首相が来春の日銀正副総裁3人の交代人事に絡めて、日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性だ。これは、リフレ派が減った今年の政策委員会人事で既に示唆されていると見ることができる。また、「アベノミクス」の名の下に金融緩和政策を主導してきた安倍元首相が不在となったことの政治的影響もあって、大いに懸念されるところだ。 本日10日に行われるとされている内閣改造で、「悪い円安論者」であると同時にほぼ財務省の言いなりの鈴木俊一財務大臣が留任するようだと、一段と心配が増す(本稿執筆時点では「留任調整」の報道があった)。 9月27日に予定されている安倍元首相の国葬が終わってから日数を経て、追悼ムードが薄れてくる頃合いが株式市場的には心配だ。 円安で上場企業の業績は好調であり、上方修正含みだ。また、日本企業がいわば有利なハンディキャップをもらっている効果を上げている点で、日本の金融緩和継続がもたらしている円安は、日本国内での技術・設備・人材への投資の大きなチャンスを提供している』、「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。
・『政策手段の見直し 例えば日銀の上場投資信託〈ETF〉買いはいい政策だとは思えない)は必要であるとしても、金融緩和の維持はまだしばらくの間必要だろう。岸田氏が功を焦って自分の政策を打ち出したがるリスク、あるいは緊縮財政や金融の引き締めを指向する官僚に担がれて利用されるリスクには注意が必要だ。 一方、資源価格の上昇が一服していることや、FRBの金融引き締めが続いて円安がキープされそうな状況は、日本の株価に対してはプラスのファクターだ』、なるほど。
・『個人投資家はどうしたらいいか? 株価下落を「楽しみにする」心構えを 前述の通り、株価の循環のパターンを考えると、「株価下落のリスクは遠のいた」とはまだ言えそうにない。 だが、一方では、FRBが金融引き締めを継続しそうだという株価下落リスクの主因となる状況は、多くの市場参加者の知るところでもある。従って、現在の株価にもある程度織り込まれていると考える必要もある。 内外の株式に投資している個人投資家は、「株価の下落に耐える準備をしながら」(自分にとって過大なリスクは早急に排除すべきだ、という程度の意味である)、「逆・金融相場」と「逆・業績相場」をやり過ごして、次の株価上昇を待つのが概ね上策だろう。 「持ち株をいったん売って、安く買い戻す」オペレーションは、想像する以上に難しく、機関投資家でも平均的にはうまくいかない。 精神的にタフでないとなかなかできないが、相場の循環パターンに「何周も付き合って長期投資する」のが投資の王道だ。利益が出たところで持ち株を売却すると、その時点で課税されることの不利も長期的にはばかにならない。 近年投資を始めて、つみたてNISAやiDeCoなどを開始した投資家は、今後来るかもしれない株価の下落局面を「むしろ楽しみにする」くらいの心境で積立投資を継続するのがいいだろう。 また、長期投資中心のオーソドックスな投資家も、意外に大きな株価の下げ局面が現れたときに追加投資する金策を想像しておくといい。「だいたい投資済みだが、まだ少し投資する余力がある」というくらいの状況は、多くの投資家にとって「適正なリスク量」に近いと想像する。 もちろん個人差はあるが、将来の稼ぎと支出の柔軟性を考えると、多くの人がイメージしている以上に自分のリスク負担能力は大きい。「株価下落の可能性」を説きながら言うのも気が引けるが、どっしり構えて投資を続けてほしい』、「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。
タグ:「典型的な循環のパターンと要因から見ると「株価下落はもう終わった」と安心できる状況ではないようにみえる」、その通りだろう。 「日本の株価は、日本国内の要因で独自に価格形成されるバブル時代のような「大国のマーケット」ではなくなった。今は、世界の主要マーケットである米国株と連動して上下する「小国のマーケット」となっている」、寂しい話だ。 「日経平均株価」のグラフは https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=1m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr= 「どっしり構えて投資を続けてほしい」、言うは易く、行うは難しいが、それを目指していきたい。 「日銀の金融緩和政策を大きく転換する可能性」については、私個人は出口戦略に入るべきと考えるが、岸田政権はそこまで大胆な政策転換には踏み切れないとの見方が有力だ。 山崎 元氏による「日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?」 ダイヤモンド・オンライン 「まずは、日本金融市場、日本経済、日本社会を混乱に陥れて、リスクなく儲けようとしている投機トレーダーを打ちのめそう。 そして、その後、異次元緩和の出口戦略については、喧々諤々議論しようではないか」、同感である。 「イールドカーブコントロールの目標を10年物から5年物に短期化する。 解説:① イールドカーブコントロールの修正は、効くとしても1度だけである。何度も小刻みに修正することは、日銀が投機トレーダーに負けたことを意味する。したがって、修正後はとことん戦える土俵にする必要がある。 ② 5年物か2年物か、など期間については、状況次第である。重要なのは、修正は最大1回まで。それ以上は負けだ。 ③ したがって、5年でも2年でも勝ちきれないのであれば、イールドカーブコントロールを修正せずに、即座に(今回の決定会合でもよ 「連日指し値オペは、当初は少ない国債買い入れ量で効果を持つという狙いとメリットがあった。しかし、現在では逆になっており、連日指し値オペが狙われて、それに対抗するため、結果的に、国債購入量が急増している。したがって「コミットメント戦法」ではなく、むしろ不意打ち、読めない戦略をとるために、事前には明かさず、指し値オペと量的入札を併用し、しかも、指し値の水準も毎回戦略的に動かすべきである」、「国債の買い入れは、先物市場でも行えるようにする」、「指し値オペと量による買い入れを併用し、かつ、10年もの利回り0.1% 「連日指し値オペ」を即刻やめるべき 今回の「決定会合」では「日銀」は全く動かなかったが、次回以降も動く可能性がある。 「最新の最重要アクションプラン(行動計画)」 小幡 績氏による「異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう」 東洋経済オンライン (その17)(異常な円安をすぐ止めるにはどうすればいいのか 日銀が投機筋に打ち勝つ有効な計画を教えよう、日経平均2万8000円に戻した株価の回復は「本物」か?) 株式・為替相場
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