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原発問題(その20)(福島原発の賠償負担金 密かに軽減されていた 電気代高騰の陰で電力会社が293億円の恩恵、「次世代革新炉」で原子力の「失われた10年」は取り戻せるか ウクライナ戦争によるエネルギー危機が岸田首相を動かした) [国内政治]

原発問題については、6月19日に取上げた。今日は、(その20)(福島原発の賠償負担金 密かに軽減されていた 電気代高騰の陰で電力会社が293億円の恩恵、「次世代革新炉」で原子力の「失われた10年」は取り戻せるか ウクライナ戦争によるエネルギー危機が岸田首相を動かした)である。

先ずは、7月5日付け東洋経済オンライン「福島原発の賠償負担金、密かに軽減されていた 電気代高騰の陰で電力会社が293億円の恩恵」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/600992
・『大手電力各社が負担している福島原発事故の損害賠償費用の一部について、きちんとした説明もないまま、負担額がひそかに軽減されていたことがNPO法人の調べでわかった。 軽減額は2021年度の1年間で293億円にのぼる。この事実を突きとめたNPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「電力ユーザーである国民にきちんとした説明もなく、やり方が不透明だ」と批判している』、事実だとすれば、確かに「不透明」極まるやり方だ。
・『電力各社の負担を約2割軽減  原発事故の被害者向けの賠償費用をまかなうために、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に基づき、東京電力ホールディングスなど大手電力9社と日本原子力発電、日本原燃の計11社は一般負担金と呼ばれる費用を負担してきた。 11社の一般負担金額は合計で年間1630億円と決められ、2011年度、2012年度はその一部、2013年度以降は全額を原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、原賠機構)に支払っていた。なお、2020年度には後述の「過去分」と呼ばれる追加負担として、別途305億円が上乗せされている。 松久保氏の指摘を踏まえて立憲民主党の山崎誠衆院議員が質問主意書を提出したところ、政府は2021年度の一般負担金の実質的な軽減額が293億円である旨を回答。同年度の実質的な負担は1337億円になっていた。 松久保氏によると、中部電力と日本原子力発電を除く9社の負担は2020年度比で約20%軽減されていた。中電は2.8%の負担増、日本原電の軽減率は約14%で、原発事故前から廃炉を進めていたという特殊事情があったという。 軽減について、原賠機構の担当者は「大手電力各社の経営状況が厳しい中、福島原発事故以前の利益水準をもとに決められていた従来の一般負担金の水準について、各社から引き下げを求められていた」と説明している。 経済産業相の認可を経て原賠機構が3月31日に公表した2021年度の一般負担金総額は、前年度比15億円増の1947億円だった。前出の担当者は「一般負担金の総額自体は2020年度と比べて大きく変わっておらず、電力ユーザー全体への負担は変わらない。一般負担金は毎年度法令に基づいて決めているもので、『軽減した』ということではない」と説明している。 だが、この説明にはからくりがある。 一般負担金には2種類あり、1つが福島原発事故の賠償に関連した負担金。もう1つが2015年、賠償費用が当初想定した金額を大幅に上回ることが判明した際に、増額分を託送料金(送配電線の利用料金)に上乗せして回収するために作られた過去分の一般負担金である。日本で初めて商用原発が稼働した1966年から福島原発事故が起こる2011年までに本来、徴収しておくべきだったのに徴収されていなかったとして、2020年度の下半期から新たに徴収されるようになった。 過去分の金額は1年分を徴収するようになった2021年度で約610億円。2021年度は過去分の前年比増分(305億円)があったために、前者の負担金の軽減額(293億円)が覆い隠される格好となった』、複雑怪奇な仕組みだ。
・『経産省、原賠機構はきちんと説明を  従来からの一般負担金のかなりの部分は電気料金の原価に算入され、ユーザーに転嫁されている。それを軽減したのであれば、本来電気料金引き下げの原資とすべきではないか。 電気料金を認可する立場の経済産業省がきちんと説明していないのも問題だ。重要な公共料金の改定に際しては、消費者庁や消費者委員会がチェックする仕組みもある。しかし、今回の一般負担金軽減については電気料金の改定と関係していないこともあり、消費者庁は「特段の協議もなく、情報提供を受けた事実もない」という。 一方、消費者委員会のある委員は、「初めて聞いた話で驚いている。やり方が不透明だ」と東洋経済の取材に答えている。 電気料金は仕組みや決定方法が複雑であるうえ、原発に関連する費用は事故が起きてから過去にさかのぼって新たに徴収されるなど、屋上屋を積み重ねる形で料金に上乗せされてきた。しかも、「一般負担金の決まり方はブラックボックスになっている」(松久保氏)。 現在、天然ガスなど化石燃料価格の高騰によって電気料金が値上がりし、家計の状況は厳しくなっている。その裏側で電力会社が秘かに負担軽減を認められていたという事実は、電力行政への疑念を引き起こしかねない。経産省や原賠機構は軽減の実態をつまびらかにすべきだ』、「電力会社が秘かに負担軽減を認められていたという事実は、電力行政への疑念を引き起こしかねない。経産省や原賠機構は軽減の実態をつまびらかにすべきだ」、同感である。

次に、9月2日付けJBPressが掲載したNHK出身で経済学者・アゴラ研究所代表取締役所長の池田 信夫氏による「「次世代革新炉」で原子力の「失われた10年」は取り戻せるか ウクライナ戦争によるエネルギー危機が岸田首相を動かした」を紹介しよう。
・『8月24日に開かれた政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」の会合で、岸田首相は「次世代革新炉の開発・建設」を「将来にわたる選択肢として強化するため、検討を加速してほしい」と指示した。 昨年(2021年)決まった第6次エネルギー基本計画では「可能な限り原発依存度を低減していく」という方針だったが、今回の方針はその大転換である。何も決めない「検討使」といわれた岸田首相に、何があったのだろうか』、「検討使」とは言い得て妙だが、興味深そうだ。
・『注目を集める「次世代革新炉」  まず「新増設」とは何だろうか。これは新設と増設という意味だが、常識的には新たな敷地に原発を建設するか、現在の敷地の中に原子炉を増やすことだろう。このうち前者は政治的には不可能に近いが、後者は不可能ではない。 図のように現在、全国で再稼動している原発は10基だが、原子力規制委員会が設置変更許可を出している原発が7基ある。合計17基が来年夏までには動くというのがGX実行会議の見通しだが、それ以外に審査中が10基あり、最大27基が運転できる。(出所:資源エネルギー庁) この他に、東電の東通原発や電源開発の大間原発、中国電力の島根3号機が建設中である。それ以外に廃炉になった原発が24基もあり、これを廃炉にすると敷地は空く。ここは立地について地元の合意を得ているので、政治的な障害は大きくない。 最大の問題は、どういう技術を採用するかの選択である。これについてGX実行会議では具体的な技術が挙げられていないが、経産省が今年つくった革新炉ワーキンググループでは、次の6つの原子炉を挙げている。 ・革新軽水炉(第3世代)・小型モジュール炉(SMR)・高速炉 ・高温ガス炉 ・溶融塩炉 ・核融合炉  このうち現実に稼働しているのが、革新軽水炉である。 現在の軽水炉の致命的な欠陥は、電源を喪失すると冷却できなくなり、燃料棒が過熱して炉心溶融が起こることだ。これを防ぐためにECCS(緊急炉心冷却装置)があるが、福島第一原発のように全電源が失われると冷却水が循環しなくなり、数時間で「メルトダウン」が起こる。 これを防ぐために、第3世代軽水炉ABWRは、従来のBWR(沸騰水型)に比べて、外部からの注水だけでなく、原子炉内部の再循環ポンプで冷却できるように設計して安全性を高めている。東電の柏崎刈羽6・7号、北陸電力志賀2号、中部電力浜岡5号で実績がある』、「第3世代軽水炉ABWR」が「柏崎刈羽6・7号、北陸電力志賀2号、中部電力浜岡5号で実績」、既に4基が稼働しているようだ。
・『SMRの弱点は安全審査  いま注目を集めているのはSMRである。その代表は米ニュースケール社の原子炉で、セールスポイントは受動的安全性である。出力が7万キロワット程度と小さいため、電源を喪失した場合も、大型軽水炉ほど大きな熱が出ないので自然循環で冷却できる。 しかし受動的安全性は、現在の軽水炉でも実装できる。中国がすでに運転しているウェスティングハウス社のAP1000は、電源がなくなっても自然循環で3日間運転できる受動的安全性を備え、ABWRやEPR(欧州加圧水型炉)などの第3世代原子炉でも受動的安全性は可能である。 SMRの弱点は経済性である。出力が小さいので、大量生産しないと規模の経済が生かせない。プレハブ住宅のように工場でモジュールを大量生産できるというのが売り物だが、日本のプレハブ住宅の生産台数は13万台である。廃炉になった原発24基をすべてSMRで置き換えても300基程度。これで規模の経済が生かせるのだろうか。 SMRのキロワット単価の目標は30万円前後といわれるので、1基のコストは約200億円。15基を1カ所に集めて管理すると約3000億円で、現在の軽水炉と大きく変わらないが、この価格を実現するには大量生産できる生産体制と需要拡大が必要である。 最大の問題は安全審査である。原子力規制委員会の田中俊一前委員長は、SMRの経済性について否定的である。 《田中氏は、出力10万キロワット級の小型モジュール炉であっても、求められる安全性は従来の大型原発と同じだと指摘。経済性が成り立たないことは、中小型炉が長年実用化に至っていないことからも明らかで、「電力会社は全く見向きもしないと思う」と述べた。》(ブルームバーグ) 7万キロワット級のSMRに今の100万キロワット級の原子炉と同じ安全審査をしていては、採算が合わないことは明らかだ。この点を改善するため、イギリスでは建設前に原子炉モジュールの安全性を審査する「包括的設計審査」という手法が導入されている。 逆にいうと、電機製品の型式認定のように出荷段階で安全審査がほとんど終われば、あとはサイト内で組み立てるだけなので、安全性のコストは大幅に下がる。日本でもこのような安全審査の改革をしないと、SMRの導入は無理だろう』、「1基のコストは約200億円。15基を1カ所に集めて管理すると約3000億円で、現在の軽水炉と大きく変わらないが、この価格を実現するには大量生産できる生産体制と需要拡大が必要である」、「原子力規制委員会の田中俊一前委員長」「は、出力10万キロワット級の小型モジュール炉であっても、求められる安全性は従来の大型原発と同じだと指摘。経済性が成り立たないことは、中小型炉が長年実用化に至っていないことからも明らかで、「電力会社は全く見向きもしないと思う」と述べた」、確かに「経済性が成り立たないことは、中小型炉が長年実用化に至っていないことからも明らか」、その通りだ。
・『原子力はエネルギー安全保障のコアである  今回のGX実行会議の資料の特徴は、今まで「次世代炉」として経産省が力を入れていた高速炉と核燃料サイクルにほとんど言及していないことだ。青森県六ヶ所村の再処理工場が稼働して使用済み核燃料を再処理しても、できるプルトニウムには使い道がない。 プルトニウムを燃やすには高速炉が適しているが、日本ではもう開発を断念した。これが今まで「次世代炉」を考える上で大きな障害だったが、今回は核燃料サイクルをあきらめたようにみえる。 高温ガス炉は水を熱分解して水素をつくれるメリットがあり、日本原子力研究開発機構が開発を進めているが、まだ実験炉の段階である。核融合は、まだ核融合反応が持続できる段階にも至っていない。 以上のようにみると、次世代革新炉に決定打はないが、技術的に安定しているという点では、第3世代の軽水炉が現実的だろう。SMRは原理的にメルトダウンが起こらないというイメージの良さは政治的に有利だが、安全審査体制を根本的に変えないと、日本に導入することは難しい。 それよりも大事なのは、政権の姿勢である。今回のGX実行会議では「エネルギーをめぐる世界の断層的変動」が強調され、ヨーロッパの「ガス途絶リスク」が問題意識となっている。「原発1基動かせばLNG(液化天然ガス)100万トン」という岸田首相の言葉も、対米協調でヨーロッパのエネルギー危機を救済しようというものだろう。 原子力は、日本のエネルギー安全保障のコアである。3・11以来「失われた10年」が続いてきたが、ウクライナ戦争で局面は変わった。既存の原発を再稼動・延命するだけでなく、新たに開発しないと人材も技術も失われ、製造業が壊滅してしまう。今回が最後のチャンスである』、「次世代革新炉に決定打はないが、技術的に安定しているという点では、第3世代の軽水炉が現実的だろう。SMRは原理的にメルトダウンが起こらないというイメージの良さは政治的に有利だが、安全審査体制を根本的に変えないと、日本に導入することは難しい」、「原子力は、日本のエネルギー安全保障のコアである。3・11以来「失われた10年」が続いてきたが、ウクライナ戦争で局面は変わった。既存の原発を再稼動・延命するだけでなく、新たに開発しないと人材も技術も失われ、製造業が壊滅してしまう。今回が最後のチャンスである」、しかし、「原発」は廃棄物処理とセットで考える必要があり、これが難題だ。「原発」問題は多面的なので、矛盾が最小になるような組み合わせが求められる。
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