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コーポレート・ガバナンス問題(その11)(フジテック社長 株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で 再任議案を取り下げ、社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態、「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチが解説(有料、あと今月2本まで無料)、「長期的株主」は 企業にとって本当にありがたい存在なのか?) [企業経営]

コーポレート・ガバナンス問題については、昨年7月14日に取上げた。今日は、(その11)(フジテック社長 株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で 再任議案を取り下げ、社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態、「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチが解説(有料、あと今月2本まで無料)、「長期的株主」は 企業にとって本当にありがたい存在なのか?)である。

先ずは、本年6月24日付け東洋経済オンライン「フジテック社長、株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で、再任議案を取り下げ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598994
・『「株主が力を持ち、変化を起こせることを示した」 香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントの最高投資責任者であるセス・フィッシャー氏は、6月23日の午後に開いた説明会でそう振り返った。 オアシスは同日開催された東証プライム上場のエレベーター・エスカレーター大手、フジテックの株主総会に向け、創業家出身の内山高一社長(70)の再任議案への反対運動を展開してきた。内山氏が個人の利益のために権限を濫用していると指摘し、独自の調査に基づく資料を公開。ほかの株主の賛同を得ようと動いており、その結果が株主総会で明らかになるはずだった』、何があったのだろう。
・『株主が意見表明する機会を奪った  ところが、総会が開かれるわずか1時間前の午前9時、フジテックが衝撃の発表をした。内山社長の再任議案を取り下げたのだ。総会当日に会社が提案した現職社長の取締役再任案を撤回するのは、まさに異例の事態だ。 内山氏の再任以外の議案は予定通り株主総会に諮られ、すべて可決された。内山氏は代表取締役から外れ、取締役でも執行役員でもない「会長」となる。後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就くことになった。 総会当日という異例のタイミングで撤回に至ったのはなぜか。オアシスのセス氏は「大幅な反対票で負けることを避けるためだろう」と指摘し、「株主は異議を唱える機会を奪われた」と批判をしている。 株主総会の決議では、事前に議決権行使をするケースは少なくない。ギリギリまで事前行使の状況を見て、判断したとセス氏はみているわけだ。内山氏の再任に対しては、米議決権行使助言会社のISSやグラスルイスも反対を推奨していただけに、相応の反対票が集まっていたとしても不思議ではない。 これに対しフジテック側は、「票読みとは一切関係がない」と否定。内山氏の再任については、「継続的に議論を尽くし、(株主総会の)前日に取締役会で決議した」としている』、「総会が開かれるわずか1時間前に」、「フジテックが」「現職社長の取締役再任案を撤回」を発表。「後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就く」、こんな「ギリギリ」での議案撤回は「異例」のことだ。
・『内部告発で新たな疑惑も浮上  騒動はまだ終わりそうにない。フジテックが内山氏の取締役復帰の可能性をにおわせるからだ。 フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている。 一方のオアシスも「フジテックを守る取り組みは続け、より強化していく」(セス氏)としている。今回、内山氏の疑惑に関する資料を公開した後、新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じているという。 新たな疑惑はどんなものなのか。第三者委員会の委員は独立性のあるメンバーになるのか、調査の結果はどうなるのか。焦点は数多く残されており、今後も波乱含みの展開が予想される。 他社にとっても、今回の動きは無視できないものと言えるだろう。オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目を浴びていた。それにより、再任議案撤回に至ったことは、新手の手法が一定の効果を示したといってよい。 セス氏も「すべての投資先に対して、今後のデューデリジェンス(投資対象の価値・リスク調査)の一環になると捉えている」としている。今回のオアシスの手法は、これからのアクティビストたちの新たな武器となる可能性を秘めている』、「フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている」、「新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じている」、「オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目」、「(第三者委員会による)調査」の結果が大いに注目される。

次に、8月3日付けダイヤモンド・オンライン「社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307403
・『企業のガバナンス改革の急加速で、バブルに沸く社外取締役。しかし、内実は女性や外国人のアリバイ選任や「お飾り」でも高報酬の社外取がはびこっている。ダイヤモンド編集部は上場企業3700社の社外取「全9400人」を徹底分析。“老人支配”や赤字でも高報酬、サボりや過剰な兼務の実態などを浮き彫りにする』、「社外取」の「実態」とは興味深そうだ。
・『社外取は“最”上級国民!? 大赤字でも報酬2500万円  社外取締役は日本の“最”上級国民――。編集部の総力取材で上場企業3700社の社外取「全9400人」を分析すると、そんな実態が明らかになった。 経営トップに隠れ、スポットライトを浴びる機会の少ない社外取だが、今や上場企業のトップ人事を左右する存在で、国や産業界が進めるガバナンス改革の主役に据えられている。 ところが、である。実際にはサボりまくりの完全なお飾りポストで、それでいて高年収のお気楽な特権階級なのだ。 社外取の岩盤利権構造を示す第一が年齢。『社外取締役「高齢&長期在任」ランキング【トップ100人】最高齢99歳、上位にシャープや新日鐵出身の大物も』では、“老人支配”の実態を明らかにした。社外取全体の6割強を65歳以上が占め、最高齢はなんと99歳だ。 次が報酬だ。会社が1兆円を超す大赤字を計上していても、2500万円の報酬を平気でもらっている(『赤字・解散価値割れ企業なのに「高報酬な社外取締役」100社273人の実名、赤字1兆円超で報酬2500万円も!』参照)。しかも、社外取の3~4社兼務で数千万円規模の高額報酬を得るのは当たり前だ。 にもかかわらず、取締役会への出席率が異様に低い社外取も多い。大手キー局には、サボりまくっている名門私立大学元総長もいる――。『社外取「取締役会出席率」ワーストランキング【全55人】フジテレビで“7回中4回”の元私大総長も』ではワースト55人の実名を公開している。 あなたの会社は大丈夫?そんな疑問に答えるため『社外取締役・実名ランキング【上位4000人】報酬、兼務、業績で9400人の全序列を初試算』で、社外取「全9400人」を実名でぶった斬った。 トップ人事のみならず、企業の重要な意思決定を下すということは、「社外取が腐れば会社も腐る」のである』、「社外取全体の6割強を65歳以上が占め、最高齢はなんと99歳だ」、「次が報酬だ。会社が1兆円を超す大赤字を計上していても、2500万円の報酬を平気でもらっている」、「社外取の3~4社兼務で数千万円規模の高額報酬を得るのは当たり前だ」、「取締役会への出席率が異様に低い社外取も多い」、「フジテレビで“7回中4回”の元私大総長も」、確かに「トップ人事のみならず、企業の重要な意思決定を下すということは、「社外取が腐れば会社も腐る」のである」、今後、「社外取」の取締役選任議案はしっかり検討することにしたい。

第三に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチ情報部が解説」を紹介しよう。これは有料記事だが、私の場合、あと今月2本まで無料。
https://diamond.jp/articles/-/307879
・『上場3870社の2021年度決算(2021年4月期~2022年3月期)の有価証券報告書が7月31日までに提出された。この中で開示された役員報酬額1億円以上は432社、人数は926人だった。前年度より社数は50社、人数は165人増え、開示制度が始まった2010年度以降の最多を更新した。これまで浸透していた業績重視の原則が崩れ、新たな報酬ルールの流れが鮮明になった』、興味深そうだ。
・『役員報酬トップは約43億円 上位10人の顔ぶれは  今年5月、ある政治家の「上場企業の社長は、報酬を必ず1億円もらう」趣旨の発言が話題になったが、現実はそう甘くない。企業は上場、未上場を問わずコーポレートガバナンス(企業統治)が重視され、役員報酬の決め方や報酬額の妥当性を問われている。従業員や株主、金融機関などのステークホルダー(利害関係者)への説明責任が重みを増している。) 2021年度に役員報酬1億円以上を開示したのは432社で、上場企業3870社の1割(構成比11.1%)だった。開示制度が始まった2010年度の開示は229社、人数は368で、11年間で社数が1.8倍、人数は2.5倍に増えた。この背景には、ビジネスのグルーバル化で外国人役員の積極的な登用がある。 2021年度の役員報酬トップは、Zホールディングス(東証プライム)の慎ジュンホ取締役の43億3500万円。2014年度のオリックスの宮内義彦元代表執行役会長(報酬額54億7000万円)に次ぐ、歴代5位の報酬額。ただ、報酬内訳を見ると基本報酬は1億500万円で報酬額の2.4%にすぎない。大半はストック・オプションで、41億700万円と報酬額の94.7%に達する。 2位は、セブン&アイ・ホールディングス(東証プライム)のジョセフ・マイケル・デピント取締役の23億8800万円(固定報酬2億2200万円、賞与21億6500万円)。 3位は、第一交通産業(福証)の黒土始相談役で19億400万円(固定報酬2億4000万円、退職慰労金7000万円)だった。同氏は6月の株主総会で代表取締役会長を退任し、特別功労金15億9400万円が加算された。 4位は、ソニーグループ(東証プライム)の吉田憲一郎会長兼社長CEOの18億8800万円。定額報酬、業績連動報酬のほか、ストック・オプション4億4900万円、譲渡制限付株式8億2500万円と非金銭報酬が約7割(67.4%)を占めた。 5位は、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長兼CEOの18億5800万円。基本報酬、賞与のほか、業績連動株式ユニット報酬8億6500万円、譲渡制限付株式ユニット報酬3億9900万円と株式報酬(役員報酬BIP信託)が約7割(68.0%)を占めた。 トップ10のうち、日本人役員は4人と半分に届かず、外国人役員が多いのも特徴だ。(2021年度役員報酬額ランキングはリンク先参照)』、総じて「固定報酬」の割合は小さく、「業績連動報酬」や「ストック・オプション」などの割合が大きく、「外国人役員が多いのも特徴」だ。
・『業績連動型の定着で進む役員報酬の高額化  報酬額別では、報酬額10億円以上は14人で、前年度(6人)の2.3倍に増えた。また、9億円台は5人(前年度4人)、8億円台も2人(同1人)と、それぞれ前年度から人数が増えた。 一方、構成比は同1億円台が70.1%(同71.7%)、同2億円台が15.3%(同15.5%)、同3億円台が5.6%(同6.7%)と、前年度より低下した。 これまで役員報酬額は基本報酬が中心で、退職慰労金など多額の報酬額が押し上げるのが日本企業特有のシステムだった。だが、近年は外国人役員が増え、欧米型の業績連動型の報酬体系が定着してきた。金銭報酬以外のストック・オプションや譲渡制限付株式などは企業価値を高めた対価報酬で、ある意味、役員として正当な報酬でもある。だが、これが外国人役員に多く、日本人役員は従来の報酬制度が踏襲されているところにいびつさを残している。 2021年度に開示された926人のうち、前年度と連続して2021年度も1億円以上を受け取ったのは609人だった。このうち、前年度より報酬が増えたのは416人で、約7割(構成比68.3%)。一方、減額は138人(同22.6%)で、同額は55人(同9.0%)にとどまる。 また、前年度に開示されなかったのは317人で、2021年度に開示された926人の約3割(同34.2%)を占めた』、「近年は外国人役員が増え、欧米型の業績連動型の報酬体系が定着してきた」、「金銭報酬以外のストック・オプションや譲渡制限付株式などは企業価値を高めた対価報酬で、ある意味、役員として正当な報酬でもある。だが、これが外国人役員に多く、日本人役員は従来の報酬制度が踏襲されているところにいびつさを残している」、なるほど。
・『開示人数の最多は日立製作所の18人  企業別の開示人数を見ると、トップは日立製作所の18人。同社は2017年度18人、2018年度17人、2019年度18人、2020年度15人と、毎年多くの役員報酬1億円以上を開示している。 次いで、三菱UFJフィナンシャル・グループ(前年度11人)と会社分割で揺れる東芝(1人)の各13人、GMOインターネット10人(同7人)、大和証券グループ本社と三井物産の各9人(同9人)、東京エレクトロン(同8人)とバンダイナムコホールディングス(同6人)、三井不動産(同6人)の各8人と続く。 開示人数の上位は東証プライムに上場し、グルーバル展開する企業が多い。また、コロナ禍でも円安を追い風に、業績好調な海外事業部門の担当役員が開示されたケースも目立つ。 今年4月、東京証券取引所は市場区分を分けたが、市場別でのトップは、東証グロースではそーせいグループ4人(同3人)、東証スタンダードはユニバーサルエンターテインメント4人(同3人)で、個別開示を行った432社では40番目の多さだった。また、福証は第一交通産業の2人(各2人)で108番目だった。その他の市場の個別開示はなかった。 432社のうち、前年度と連続して開示したのは337社で、人数が増加したのは81社(構成比24.0%)、減少は28社(同6.4%)、同数は228社(67.6%)だった。前年度は開示がなく、2021年度に開示したのは95社だった。 人数別では、1人開示が226社(前年度212社)と半数(構成比52.3%)を占めた。また、2人は99社(構成比22.9%、前年度93社)、3人が45社(同10.4%、同31社)で、5人以上は39社(同9.0%、同30社)だった。 (2021年度役員報酬開示人数ランキングはリンク先参照)』、「開示人数の最多は日立製作所の18人」、「次いで、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)」、「東芝」の「各13人」。「福証は第一交通産業の(各2人)」、なるほど。
・『目立つ外国人役員の高額報酬 従業員平均の100倍以上は3人  2021年度の上場3213社の平均給与(変則決算・持株会社除く)は、605万5000円(前年度比1.7%増)だった。前年度(595万1000円)から10万4000円増え、3年ぶりに増加した。 上場企業は役員報酬だけでなく、従業員の給与も増えた。前年度と比較可能な3102社で見ると、約7割(67.2%)の2087社で平均給与が前年度を上回り、この10年間で最高を記録した。平均賃金が伸び悩む中小企業を尻目に、上場企業の羽振りの良さを見せつけた格好だ。 ただ、円安や資源高、ウクライナ情勢などで物価上昇が大きく、実質賃金のアップは実感がないとの声は多い。役員報酬(基本報酬と賞与の合計)と従業員の平均給与の格差を見ると、最大がセブン&アイ・ホールディングスで、ジョセフ・マイケル・デピント取締役(報酬額23億8800万円)と従業員の平均給与(738万8000円)の格差は323.2倍に達する。 このほか、電通グループのウェンディ・クラーク取締役(報酬額14億9400万円)は115.3倍(従業員の平均給与1295万円)、トヨタ自動車のジェームス・カフナー(James Kuffner)取締役(報酬額9億600万円)は105.7倍(従業員の平均給与857万1000円)と、従業員の平均給与との格差が100倍以上は3人だった。 日本企業は欧米に比べ役員報酬が低いといわれるが、従業員との格差は大きく、さらに上場企業と中小企業の格差も課題になっている。 役員は業績だけでなく、企業価値の向上への責任も負う。役員報酬額の決定方法は、有価証券報告書に記載されているが、まだ記載内容や決定方法は企業によって温度差が大きい。オーナー社長かサラリーマン社長か、それも大きな判断の違いだろう。また、役員報酬を抑え、配当収入が大きいケースもある。役員報酬の決定は、企業への貢献度、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みなど、ステークホルダーへの説明責任が欠かせない。 (役員報酬1億円以上開示企業_社数・人数推移のグラフはリンク先参照)』、「役員報酬・・・と従業員の平均給与の格差を見ると、最大がセブン&アイ・ホールディングスで、ジョセフ・マイケル・デピント取締役(報酬額23億8800万円)と従業員の平均給与(738万8000円)の格差は323.2倍・・・電通グループのウェンディ・クラーク取締役(報酬額14億9400万円)は115.3倍(従業員の平均給与1295万円)、トヨタ自動車のジェームス・カフナー(James Kuffner)取締役(報酬額9億600万円)は105.7倍(従業員の平均給与857万1000円)と、従業員の平均給与との格差が100倍以上は3人」、やはり「従業員の平均給与の格差」は大きいようだ。

第四に、10月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した大阪公立大学大学院経営学研究科・商学部教授の宮川壽夫氏による「「長期的株主」は、企業にとって本当にありがたい存在なのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311656
・『発売されるや、「ワクワクして眠れなくなる」「大発見が散りばめられている」と専門家からも絶賛の声が寄せられている異色のファイナンス本、『新解釈 コーポレートファイナンス理論 「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?』。 この連載では、著者・宮川壽夫教授(大阪公立大学大学院)のガイドのもと、同書の一部を転載・紹介していきます。今回のテーマは、多くの上場企業がありがたい存在と信じている「長期的株主」についてです』、「長期的株主」の意義とは興味深そうだ。
・『本当に長期株主がほしいですか?  企業経営者やIR(Investor Relations)担当者と話をしていると、よく出てくるのが「長期的株主」という言葉だ。「長期的株主に株を保有してもらいたい」ということを必ずと言っていいほど異口同音に表現される。一方の投資家のほうも「長期的視点から企業を評価している」とこれも異口同音に自分が長期的株主であることを表現される。 しかし、コーポレートファイナンス理論から見れば株式評価は長期的視点であることがあたりまえだ。たとえばDCF法は企業が永久に存続することを前提に計算される。図のように将来のキャッシュフローを文字どおり長期的に予測し、それを資本コストで割り引いて株主価値を算出するという考え方だ。 では短期的株主とはナニモノか? おそらく企業や投資家が言うところの短期的株主とは、目先の材料のみを頼りに短期間で売買し、株価の瞬間的な変動によって鞘を抜くような株主、そういう人々を想定しているのだと思う。しかし、目先の材料で短期的な売買をしたのか、当初の長期的な予想に変化が生じたために保有後まもなく売却したのかは、その投資家に聞いてみないとわからない』、「コーポレートファイナンス理論から見れば株式評価は長期的視点であることがあたりまえだ。たとえばDCF法は企業が永久に存続することを前提に計算される」、「企業や投資家が言うところの短期的株主とは、目先の材料のみを頼りに短期間で売買し、株価の瞬間的な変動によって鞘を抜くような株主、そういう人々を想定しているのだと思う。しかし、目先の材料で短期的な売買をしたのか、当初の長期的な予想に変化が生じたために保有後まもなく売却したのかは、その投資家に聞いてみないとわからない」、その通りだ。
・『IR担当者が、取材の際に足元の業績ばかりを話題にして長期的な視点での議論ができない投資家やアナリストが多いと言って困惑顔を見せることがある。しかし、いくら長期的な視点で投資している株主でも、彼らにとって足元の状況はなにより重要だ。 図のように長期的なキャッシュフローの予測をする場合、近い将来の予測ほど確実性が高くなる。多くのモデルでは、一定期間を過ぎた後はキャッシュフローが定率で成長すると仮定して予測するので、足元の状況に変化が起きるとキャッシュフロー予測のモデル全体を作り直さなければならなくなってしまう。モデル全体を左右する直近の予測をなるべく正確なものにするためには、まず足元の状況に注意深く目を配る必要があるのは当然だ。なによりも将来の成功と失敗は今日の投資によって決まるのだ。今日行ったことのリストのどこかに将来を見通すカギが埋もれているかもしれない。 また、長期的な予測をしていたとしてもなにか他の原因で株価が上昇し、自分の予測が間違っていたと思えば売却して利益を確保しなければならないこともあるだろう。もちろん逆の見込み違いもあるかもしれない。売りは買いの結果にすぎないのだ』、「いくら長期的な視点で投資している株主でも、彼らにとって足元の状況はなにより重要だ」、「長期的なキャッシュフローの予測をする場合、近い将来の予測ほど確実性が高くなる。多くのモデルでは、一定期間を過ぎた後はキャッシュフローが定率で成長すると仮定して予測するので、足元の状況に変化が起きるとキャッシュフロー予測のモデル全体を作り直さなければならなくなってしまう。モデル全体を左右する直近の予測をなるべく正確なものにするためには、まず足元の状況に注意深く目を配る必要があるのは当然だ」、その通りだ。
・『もしも自社の株主が文字どおり長期的な株主で株を買ったまま売らない人ばかりだったらどうなるだろうか。IR部門がどんなに情報開示をしても株価が動くことはないということになる。IRの仕事は退屈なものになってしまうだろう。一度買ったらずっと保有し続ける株主も大事かもしれないが、株価が情報を適切に織り込みながら健全な価格形成を実現するには企業の情報に敏感に反応しながら株式を売買してくれる株主のほうが大事であるように思う。むずかしく言えば、株主の情報生産効果を活用することが可能だ。 ひところ「ファン株主」という言い方をする人がいた(今でも言うのかもしれませんが)。ファンである企業の株式を買ったら、その企業がたとえどのような状況になってもずっと保有し続けてくれる株主のことを意味するらしい。そんな株主が本当にいるのかなと思う。絶対にいないとは言わないが、実務でブローカー業務や株主調査を行った私の経験の中では少なくともそんな株主に出会ったことはない。 ただ、決まった企業の株式ばかりを繰り返し売り買いするという個人投資家は意外に多い(決まってそういう人はベテランの頑固ジジイだったりします)。特定の銘柄しか買わない。その銘柄が上昇したら売るし、状況が悪化したら売るが、またしばらくしてチャンスだと思えば再び同じ銘柄を買う。売ったらまたその銘柄を買うチャンスを静かにうかがっている。他の銘柄には目もくれない。突然「例の銘柄な、今が買いだぞ!」なんて電話がかかってくる。そういう人のほうが「ファン株主」と呼ぶにふさわしいのではないだろうか。 「好きですねえ、この銘柄」「いやね、この銘柄とは長年の付き合いだからさ、だいたいわかってんのよ、いつ買っていつ売ればいいか。何度も損したけど、何度も儲けさせてもらってるからね。ま、実は通算するとトントンてとこだけど」 最近では長期保有の株主が有利になるような株主優待を行う企業が増えている。しかし、こういういぶし銀の個人投資家にこそ株主優待で報いてあげたほうがよほど公平であるような気がするが、どうでしょうか。いいときに買って悪くなったら売る、自由な株式市場において一体なにが悪いのだろう。常に株主が入れ代わり立ち代わり入ってきては出て行くような企業のほうが、流動性の実証などというむずかしい話をするまでもなく賑わっていていいような気がする。 企業のファンダメンタルズにかかわらず割安の株を買って割高の株を売るアービトラージャー(裁定業者)も嫌われる株主のひとつだ。しかし、アービトラージャーがいるから行き過ぎた株価が修正されることもある(逆もある)。 長期保有の株主もいれば、目先の材料でごろごろ売買を繰り返す短期株主もいて、強気な人も弱気な人も、豪胆な人も臆病な人もいて、自由な売買が繰り返される。しかも企業が開示する同じ情報に対してもポジティブに捉える人もネガティブに捉える人もいる。こうしてある時は間違いを犯しながらも株価は正しい居場所を目指してさまよっているというわけだ』、「長期保有の株主もいれば、目先の材料でごろごろ売買を繰り返す短期株主もいて、強気な人も弱気な人も、豪胆な人も臆病な人もいて、自由な売買が繰り返される。しかも企業が開示する同じ情報に対してもポジティブに捉える人もネガティブに捉える人もいる。こうしてある時は間違いを犯しながらも株価は正しい居場所を目指してさまよっているというわけだ」、確かに多様な投資家に支えられてこそ、「株価は正しい居場所を目指してさまよっている」もののようだ。
タグ:(その11)(フジテック社長 株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で 再任議案を取り下げ、社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態、「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチが解説(有料、あと今月2本まで無料)、「長期的株主」は 企業にとって本当にありがたい存在なのか?) 「総会が開かれるわずか1時間前に」、「フジテックが」「現職社長の取締役再任案を撤回」を発表。「後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就く」、こんな「ギリギリ」での議案撤回は「異例」のことだ。 東洋経済オンライン「フジテック社長、株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で、再任議案を取り下げ」 総じて「固定報酬」の割合は小さく、「業績連動報酬」や「ストック・オプション」などの割合が大きく、「外国人役員が多いのも特徴」だ。 「「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチ情報部が解説」 ダイヤモンド・オンライン 「社外取全体の6割強を65歳以上が占め、最高齢はなんと99歳だ」、「次が報酬だ。会社が1兆円を超す大赤字を計上していても、2500万円の報酬を平気でもらっている」、「社外取の3~4社兼務で数千万円規模の高額報酬を得るのは当たり前だ」、「取締役会への出席率が異様に低い社外取も多い」、「フジテレビで“7回中4回”の元私大総長も」、確かに「トップ人事のみならず、企業の重要な意思決定を下すということは、「社外取が腐れば会社も腐る」のである」、今後、「社外取」の取締役選任議案はしっかり検討することにしたい。 「社外取」の「実態」とは興味深そうだ。 ダイヤモンド・オンライン「社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態」 「フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている」、「新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じている」、「オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目」、「(第三者委員会による)調査」の結果が大いに注目される。 「役員報酬・・・と従業員の平均給与の格差を見ると、最大がセブン&アイ・ホールディングスで、ジョセフ・マイケル・デピント取締役(報酬額23億8800万円)と従業員の平均給与(738万8000円)の格差は323.2倍・・・電通グループのウェンディ・クラーク取締役(報酬額14億9400万円)は115.3倍(従業員の平均給与1295万円)、トヨタ自動車のジェームス・カフナー(James Kuffner)取締役(報酬額9億600万円)は105.7倍(従業員の平均給与857万1000円)と、従業員の平均給与との格差が 「開示人数の最多は日立製作所の18人」、「次いで、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)」、「東芝」の「各13人」。「福証は第一交通産業の(各2人)」、なるほど。 「近年は外国人役員が増え、欧米型の業績連動型の報酬体系が定着してきた」、「金銭報酬以外のストック・オプションや譲渡制限付株式などは企業価値を高めた対価報酬で、ある意味、役員として正当な報酬でもある。だが、これが外国人役員に多く、日本人役員は従来の報酬制度が踏襲されているところにいびつさを残している」、なるほど。 「長期保有の株主もいれば、目先の材料でごろごろ売買を繰り返す短期株主もいて、強気な人も弱気な人も、豪胆な人も臆病な人もいて、自由な売買が繰り返される。しかも企業が開示する同じ情報に対してもポジティブに捉える人もネガティブに捉える人もいる。こうしてある時は間違いを犯しながらも株価は正しい居場所を目指してさまよっているというわけだ」、確かに多様な投資家に支えられてこそ、「株価は正しい居場所を目指してさまよっている」もののようだ。 「いくら長期的な視点で投資している株主でも、彼らにとって足元の状況はなにより重要だ」、「長期的なキャッシュフローの予測をする場合、近い将来の予測ほど確実性が高くなる。多くのモデルでは、一定期間を過ぎた後はキャッシュフローが定率で成長すると仮定して予測するので、足元の状況に変化が起きるとキャッシュフロー予測のモデル全体を作り直さなければならなくなってしまう。モデル全体を左右する直近の予測をなるべく正確なものにするためには、まず足元の状況に注意深く目を配る必要があるのは当然だ」、その通りだ。 「コーポレートファイナンス理論から見れば株式評価は長期的視点であることがあたりまえだ。たとえばDCF法は企業が永久に存続することを前提に計算される」、「企業や投資家が言うところの短期的株主とは、目先の材料のみを頼りに短期間で売買し、株価の瞬間的な変動によって鞘を抜くような株主、そういう人々を想定しているのだと思う。しかし、目先の材料で短期的な売買をしたのか、当初の長期的な予想に変化が生じたために保有後まもなく売却したのかは、その投資家に聞いてみないとわからない」、その通りだ。 「長期的株主」の意義とは興味深そうだ。 宮川壽夫氏による「「長期的株主」は、企業にとって本当にありがたい存在なのか?」 コーポレート・ガバナンス問題
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