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ウクライナ(その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編) [世界情勢]

ウクライナについては、昨年3月10日に取上げた。今日は、(その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編)である。

先ずは、昨年3月30日付けデイリー新潮「「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/03300559/?all=1
・『驚愕の侵攻開始から1カ月。投げられたさいは、誰もが予想しなかった方向へと転がっている。内外で孤立を深める一方の超大国独裁者と、世界の人々の心を味方に付けた、徒手空拳の元コメディアン……。かくして「最狂の皇帝」の前に、地獄の門が口を開けた。 ベトナム戦争ではナパーム弾から逃げ惑う裸の少女。スーダン内戦ではハゲワシに狙われる少女の姿が……。 戦争においては、一枚の写真が戦いの惨劇を知らしめ、時に勝敗を左右することがある。 この「ウクライナ戦争」においては、これが「その一枚」となるのか。猖獗(しょうけつ)を極めるロシア軍のマリウポリ爆撃。3月9日、半壊した産科病院から担架で運び出された妊婦の写真は、世界に衝撃を与えた。 「今すぐ私を死なせて!」 血まみれのお腹を撫でながら金切り声を上げたその女性は、30分後に息絶えた。お腹の中の赤ん坊と共に。 「有名なモスクやビーチがあり、多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」 ウクライナの新聞「キエフインディペンデント」でライターを務める寺島朝海さんは、マリウポリ出身のジャーナリストに取材し、そんな証言を得ている』、「多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」、悲惨さが伝わってくる。
・『水もなく脱水症状に マリウポリの劇場  同国南東部に位置する人口約40万人のマリウポリは、ロシア軍に包囲され、電気、水道、ガスが遮断された。そこに約35万人の市民が籠城状態を強いられている。 彼女のレポートによれば、 〈人々は凍りそうに寒い地下室に避難を余儀なくされ、十分な食べ物も、水もなく、脱水状態に陥っている〉 生活に必要な物資も、 〈食料品店や薬局には、在庫がもう無いか、ロシア軍に略奪されていた〉 食料や水でさえも、 〈危険なほど不足しているため、氷点下の気温で調理し、暖を取るために木材を切り刻んでいる〉 〈最も被害が大きかった地域に住む人々は、家の中で今は動かなくなったラジエーターを叩いたり、雪を溶かして飲料水にしている。破壊された家の瓦礫の中を歩いて、何か食べられるものを見つける人もいる〉 こうして包囲し、孤立させた街を、ロシア軍が無差別に爆撃しているのは周知の通りだ。 前出の産科病院に続き、16日には避難場所となっていた劇場が爆撃され、数百人が未だ生き埋めになっているといわれている。さらには19日、やはり避難場所となっていた美術学校が爆撃を受けた。 「このマリウポリに外国メディアで唯一入り、状況を伝えているのは、アメリカのAP通信です」 と述べるのは、さる全国紙の外信部デスク。 「英語で書かれたその記事によれば、爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導しているそうです」』、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導」、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎ」、ここまで酷いとは気の毒という他ない。
・『新生児の死体も  塹壕に折り重なる遺体には、頭部を榴散弾で飛ばされた1歳半の乳児や、爆風で足を吹き飛ばされた16歳のサッカー青年のものなどもあるという。 「しかし、そうしたケースはまだましかもしれません。病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている。中には臍の緒が付いたままの新生児の死体もあるそうです」 当局が発表する死者の数は2500人だが、本当のところは定かではない。 思い起こされるのは、第2次世界大戦時、ドイツ軍に900日近くも取り囲まれ、破壊された「レニングラード包囲戦」。100万人が死に、その97%が餓死だったというナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めているのである』、「病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている」、「「レニングラード包囲戦」の「ナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めている」、その通りだ。
・『ロシア軍の死者は7千人  2月24日に始まった戦いから1カ月余り。隣国に攻め込んでいるはずのロシア軍は、逆に日に日に追い込まれている。 「アメリカの報道によれば、開戦以来、ロシア軍の死者は7千人に上っているといいます」 と解説するのは、元時事通信モスクワ支局長で、拓殖大学海外事情研究所の名越健郎教授である。 「これはアフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまったのです。プーチンにとってこれは大誤算でしょう」 被害は一般兵に留まらず、 「20名いたロシア軍将官のうち、既に5人が戦死しています(取材当時)。セキュリティーで保護されていない携帯を使っていたことでウクライナ側に盗聴され、ピンポイントでスナイパーに撃たれたようです。ここにもロシア軍の慢心が表れていますよね」(同) 停戦交渉も断続的に開かれてはいるが、双方の主張に隔たりが大きく、進展を見せていない。 こうした苦境を感じてか、 「3月中旬以降、ロシアの世論にも大きな変化が読み取れます」 と述べるのは、元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明・大和大学教授である』、「ロシア軍の死者は7千人」、「アフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまった」、「プーチンにとってこれは大誤算」、その通りだ。
・『カリスマ歌手が反戦歌を公開  流れを作ったのは、ロシア国営放送のスタッフ、マリーナ・オフシャンニコワ女史だ。14日、ニュース放映中にキャスターの後ろに映り込み、「NO WAR」と書いた紙を掲げた姿は世界中で流されたから、ご記憶の方も少なくないだろう。 これに続いて、16日には、世界的バレエ団「ボリショイ・バレエ」のプリマ、オルガ・スミルノワが侵攻に抗議して国を離れた。 17日には、人気女性歌手のゼムフィラが反戦歌を動画で公開。彼女もまたロシアを脱出している。 「とりわけゼムフィラは、日本で言えば、宇多田ヒカルや椎名林檎のような、30~40代に絶大な人気を誇るカリスマ的歌手です」 と佐々木教授が続ける。 「こうしたスターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性があるのです」 女性や文化人だけでなく、副首相を務めたこともあるクレムリンの元高官や、複数のオリガルヒ(新興財閥)も続々と反戦を表明し始めている』、「スターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性がある」、その割には大したことにはなってないようだ。
・『学校での洗脳教育 Zダンス  この状況に危機感を覚えたのか、対するプーチンも“世論工作”に躍起だ。 18日にプーチンは、モスクワのスタジアムで開かれた式典に出席した。暗殺を警戒し、潜伏生活を続けているともいわれてきた大統領が大勢の国民の前に姿を現したのは、開戦以来初。演説では改めて戦争の正当性を強調したが、 「この時も、公務員や国営企業などに大量の動員がかかったといわれています」 と佐々木教授。 「恐ろしいのは、彼が子どもたちまでを『親プーチン運動』に駆り出していること。今、ロシアの学校では子どもたちが、勝利を表す『Z』のマークが描かれたシャツを着てダンスを踊らされたり、『Z』の人文字を作らされたりと、半ば洗脳のような教育が進められている。これは国内で高まる自らへの批判を恐れている証左といえるでしょう」 同時に、反対派への“締め付け”も強化している。 政府は3月、国内でのFacebookやTwitter、3800万人もの利用者がいるとされるInstagramの接続を相次いで遮断した。SNSはロシア当局が隠したい「不都合な真実」に溢れている。そこから目をそらせるためであろう。 更にはこの3月に法改正を行い、軍に関する虚偽情報の拡散や、信用失墜に繋がる行為をした者に対し、罰金や自由剥奪の刑を科すことができるようにした。 佐々木教授が続けるには、 「合わせて、最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言しています。これは、国内の反対派にレッテルを貼り、排除しようとするもので、完全に冷戦下のKGBの発想。まるでソ連時代のごとく国民をコントロール下に置こうとしているかのように見えます」』、「最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言、さすがKGB出身だけある。
・『国際的地位の失墜  「焦燥の皇帝」はもはや末期症状を迎えた感もある。 今後、ロシアの国際的地位が失墜し、大国の地位から引きずり降ろされることは間違いありません」 と述べるのは、同志社大学の浅田正彦教授。 国際法の権威である浅田教授に、プーチンの犯した罪がいかに重いかを解説してもらうと、 「まず国連憲章違反です。国連憲章の柱である2条4項は『武力による威嚇』及び『行使』を禁止している。それに明確に違反したことになります」 これに対してプーチンは、ドネツク、ルガンスクの二つの「国」から要請があり、集団的自衛権を行使した、それは2条4項の例外である、と主張しているが、 「これは通りません。まず二つの州はロシア以外の国からは独立国として承認されておらず、国際社会から国家として認められているとはいえません。国家でないものからの要請は集団的自衛権行使のベースとはなりえません」 実際に行われた戦闘行為についても、ロシアは数々の罪を犯している。 「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れがありますね」』、「「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れ」、サボリージャ原発にはIEAの査察官が来ている間にも、攻撃があったようだ。
・『「プーチンを裁けない」は誤解  問題は、こうした「戦争犯罪人」プーチンを実際に裁くことができるのか、ということである。 責任の追及は、国家に対して行われるものと、個人に対して行われるものに分かれる。前者を扱うのは国際司法裁判所(ICJ)、後者を扱うのは国際刑事裁判所(ICC)だ。 既に両者で手続きが開始されているが、浅田教授がより実効性の高いものとして注目するのは後者である。報道では、「ロシアもウクライナもICCに加盟していないからプーチンを裁けない」と解説されることがあるが、 「正確ではありません。ウクライナは確かに締約国ではありませんが、7年前に無期限で戦争犯罪等について管轄を受け入れると宣言しているため、ICCは本件の手続きを開始することができるのです」 となればあとは、法廷にプーチンを引きずり出せるかどうか。彼に逮捕状が出た場合、どうなるのだろうか。 「その場合、プーチンがICCの締約国を訪れた際に、その国は彼を逮捕してICCに引き渡すことが締約国として義務付けられることになります。実際に逮捕することは、その国にとって、ロシアと決定的に敵対するというリスクを背負い込むことになりかねないだけに難しいかもしれませんが、逆に逮捕をしなければ、その国はICC規程に違反することになる」 つまり、仮にプーチンが来日することがあれば、日本政府は彼に手錠をかけてしまえばいいのである。まあ、岸田首相がそこまでの度胸の持ち主だとは到底思えないが……。 いずれにしても、 「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」』、「「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」、当然の報いだ。
・市民をこのまま押さえつけられるのか  国内外で孤立を深める現代の暴君。 前出・名越教授は、 「どれだけ孤立しても、プーチンが撤収、譲歩、妥協をすることはない」 と言う。 しかし、各国の経済制裁強化により、国民生活への打撃は強まる一方で、 「ここに来て、これまで世界の戦争で様子見をしていた永世中立国のスイスが重い腰を上げ、制裁に参加しましたが、これは大きい。スイスに資産をため込んでいる富豪も多いですから痛手となるでしょう。4月には国債もデフォルトするでしょうし、そうなれば打撃はさらに大きくなる」(同) 前出・佐々木教授も言う。 「プーチン体制が強固なことには違いありませんが、さりとてソ連崩壊後、まがりなりにも欧米流の自由と開かれた言論空間の風を30年も受けてきた市民を、このまま押さえつけることができるかどうか」 いかに最狂の独裁者といえども、歴史という時計の針を巻き戻すことは不可能だ』、「プーチン」は言論機関を抑えているのが強みだ。
・『プーチンを頂点とする“山分けシステム”  「ロシアの権力構造は、プーチンを頂点とする“山分けシステム”で成り立っているわけです」 とは、東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠・専任講師。 「プーチンに忠誠を誓っていれば、石油や天然資源から上がる莫大な利益の分配を得られる。逆に言えば、プーチンはこの山分けの利益を与えることによって、何百人のエリートを鼓舞し、従わせてきたのです。しかし、今回の経済制裁を受け、このシステムが他ならぬプーチン自身の暴走によって、崩壊の危機に瀕している。今後、政権内部から“もう彼を担ぐメリットはない”という動きが出てくるかどうか。そしてその場合、プーチンがかつてのスターリンのように、そうした動きを徹底的に粛清するかどうか。いずれにせよ、プーチンがこのまま安穏と権力の座を維持していられないことは間違いありません」 その先にあるのはクーデターか暗殺か。 冒頭のAP通信によるマリウポリレポートに戻れば、砲撃を受けた女児を治療していた医師が、取材のカメラを見据えてこう怒鳴る場面がある。 「プーチンにこの子の目を、泣いている医者たちを見せてやれ!」 地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか』、「プーチン」にはガンで余命宣告を受けているとの噂もある。「地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか」、「余命宣告」が正しければ、「地獄に堕ちる」のも時間の問題なのかも知れない。

次に、4月21日付けエコノミストOnline「ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」、親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220421/se1/00m/020/001000d
・『ウクライナの悲劇が深刻になっている。1991年の旧ソ連崩壊後、NATO(北大西洋条約機構)1色に塗りつぶされてきた東欧の政治地図を、プーチン大統領は力によって変更しようとしている。ロシア軍は首都キーウ攻略戦に敗れ、一転して、東部ドンバス地方のルハンスク、ドネツク2州や南東部マリウポリで総攻撃を開始した。何がこの悲劇を招いたのか。核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景をひもといてみよう』、「核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景」とは興味深そうだ。
・『悲劇の発端「ブダペスト覚書」  ウクライナの悲劇は1994年の「ブダペスト覚書」から始まった。91年のソ連崩壊と同時に独立を果たしウクライナは、自国の命運を左右する難題に直面した。領内に残された旧ソ連の核兵器約1900発の処理という難題である。ウクライナには二つの選択肢があった。一つは、この1900発の核兵器を接収、領有し、ウクライナが米ロに次ぐ第3の強大な核兵器保有国となることだった。二つ目は、それをすべてロシアに移送、返還して、非核保有国として独立国家ウクライナの安全と繁栄を探る道である。 米英仏ロ中の5大核保有国は、当然、ウクライナが核を持つことを拒否し、強烈な外交圧力をくわえた。ウクライナはやむなく2つ目の道を選択し、94年に、旧ソ連の核兵器をすべてロシアに移送するとともに、80年成立の「核拡散防止条約(NPR)」に加盟して、非核保有国となる道を選んだのである。 しかし、ウクライナには大きな不安材料があった。非核保有国となったウクライナに対して、ロシアが核攻撃の脅しや核攻撃をしかけてきたら、果たして5大核保有国のどの国が「核の傘」を提供して、ウクライナの安全を保証してくれるのか、という至極もっともな懸念である。 現在、NPR加盟国は191カ国。5大核保有国を除く非核保有の186カ国は、すべて、今でも、当時のウクライナとおなじ安全保障懸念をかかえている。核保有国のどれかが自国に核威嚇や核攻撃の牙を剥いたら、非核保有国は丸裸の無防備状態にあるからだ。 だから、非核保有国は、特権的な5大核保有国に、①非核保有国には核の脅しや核攻撃をしかけないという「消極的な安全の保証」、②特定の核保有国が核威嚇や、核攻撃の脅しのもとに侵略してきた場合、他の核保有国が非核保有国を防衛してくれるという「積極的な安全の保証」すなわち「核の傘」の、2つの安全の保証を迫ったのである。 だが、5大核保有国はこの要求に応じなかった。それでも78年の第1回国連軍縮特別総会で、それぞれ、核保有国との軍事同盟に加盟していない非核保有国は「核威嚇や核攻撃のターゲットにしない」という「消極的な安全の保証」を渋々言明した。けれども、一番大事な「積極的な安全の保証」(核の傘)の要求は、きっぱりと拒否して顧みることはなかった。 核兵器を持った5大国と非核保有186カ国の間に見られる、この力の落差。ウクライナは、核拡散防止条約体制下の冷酷な現実を熟知していた。けれども、ウクライナには、インド、パキスタン、イスラエルのように核拡散防止条約加盟を拒否して核武装に走ることも、北朝鮮のように一旦加盟後に脱退して核兵器保有にまい進することもなかった。 心細い「消極的な安全の保証」より、せめて、もう一段強力な「積極的な安全の保証」(核の傘)を、とウクライナが外交努力を重ねた成果が、94年12月15日に、ハンガリーの首都ブダペストで開かれた欧州安全保障協力機構(OSCE)会議で、領内の核兵器をロシア移送後に非核保有国となったウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン3国と米英ロの核保有3国が署名した「ブダペスト覚書」(正式名称「ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの核拡散防止条約加盟に関連した安全保証上の覚書」)である。 「ブダペスト覚書」は、非核保有国となったベラルーシ、カザフスタン、ウクライナ3国にその代償として、米英ロの核保有3国が以下の3点の保証を約束していた。すなわち、①3国の独立・主権・既存国境の尊重(「力による現状変更の禁止」)、②3国に対する通常兵器・核兵器による脅威・武力行使を抑制(「消極的な安全の保証」)、③3国が特定の核保有国による侵略の犠牲者または核兵器使用の侵略脅威の対象となった場合、3国に支援を提供(「核の傘」提供と「積極的な安全の保証」)の3点である。 フランス、中国もまた、別々の書面で類似の約束をした。しかし、この「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった』、「「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった」、この「弱点」を突かれた形だ。それにしても、「核兵器」を「ロシア」に返還したのに、「核兵器」による「威嚇」を受ける立場になったとは気の毒だ。
・『親米革命でロシアは侵略国に変貌  それから約20年後の2014年、「ブダペスト覚書」が破られる大事件が突発した。安全の保証国ロシアが、突然、被保証国のウクライナに軍事侵略の牙を剥いたのだ。 ウクライナ東部2州に軍事介入したばかりか、ロシアは、ウクライナ領クリミア半島を占領し、自国に併合してしまったのである。その口実とされたのが、同年2月に勃発した「マイダン革命」だ。すなわち、親西欧の市民運動「ユーロマイダイン」が首都キーウの独立広場で起こした民衆蜂起で、親ロ派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権を打倒した政変である。 これを「米国扇動の革命による親米国家の出現である」と非難したロシアのプーチン大統領は、反ロの新国家ウクライナには「安全保証のいかなる義務も負っていない」と断言し、「ブダペスト覚書」違反やその白紙化、死文化を正当化したのである。 米英など他の保証国は、ロシアの行動は「「ブダペスト覚書」の義務違反だ、と非難したが、ウクライナに軍事援助を与え、ロシアの暴挙を阻止する具体的な行動はとらなかった。 安全の「保証国」から真逆の「侵略国」への変貌。ロシアの態度豹変のうらには、東欧諸国の怒涛のようなロシア離れやNATO加盟に対するプーチン大統領の焦燥感、不安感があったようである。 米ソ冷戦初期の1949年に12カ国の原加盟国からスタートしたNATOは、91年のソ連やその軍事同盟「ワルシャワ条約機構」の崩壊後に、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、エストニア、リトアニア、ラトビアなどを次々と吸収して、30カ国のメンバーを抱える巨大な軍事同盟に膨張した。 プーチン大統領の期待に反して、ロシア盟主の「集団安全保障条約機構(CSTO)」にとどまったのは、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キリギリスタン、タジキスタン5カ国にすぎない。肝心の東欧諸国の政治地図は、ロシアに与したのがベラルーシ1国だけで、それ以外の国はすべてNATO加盟の1色に塗りつぶされてしまったのだ。つまり、NATOに加盟しその「核の傘」に入ってしまったのである。 しかし、NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである。91年の独立以来、親ロ派保守政権と親西欧革新政権が交互に政権交代をくりかえした不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったからである』、「NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである」、「不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったから」、全く不運という他ない。
・『核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領  「核を含む武力による現状変更」をいとわないプーチン大統領下のロシアにとって、丸裸、無防備状態のウクライナは、かっこうの攻撃ターゲットである。オレンジ革命(2004年)、マイダン革命(14年)など親西欧の草の根民主化運動による親ロ派ヤヌコヴィチ大統領の失脚・追放や、ポロシェンコ(14~19年)、ゼレンスキー(19年~)など相次ぐ親欧米派大統領の誕生を見たプーチン大統領は、これを、持論の「米国扇動による親ロ政権打倒やNATOの攻撃的・侵略的な東方拡大策動」の証左ととらえた。 プーチン大統領からみれば、NATOの核の傘の外にあるウクライナやその親欧米派政権は、ロシアの核威嚇下の大規模軍事侵攻によって簡単に掃討、転覆できるはずであった。まず、米国やNATOの反応を試すために、核威嚇のシグナルを送った。2月19日、ロシア軍は自慢の核戦力を総動員して、ロシアに対する核攻撃への迅速な反撃作戦の大々的な演習をバイデン米大統領に誇示してみせた。つぎに、2月27日、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を呼びつけ、じきじきに、テレビカメラの前で、「ロシア核抑止力を特別警戒態勢におけ」と下命した。 この核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった。 これで、ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始した。この電撃作戦によって短期間にキーウを占領し、ゼレンスキー大統領打倒、傀儡(かいらい)親ロ政権樹立をもって、ウクライナをロシア色1色に塗り変え、東欧地図のロシア色への塗り変え戦略の橋頭保にしようとしたのだ。 しかし、ウクライナ軍の想定外の抵抗という誤算があった。たしかに、NATO軍の直接武力支援はなかったが、ウクライナ軍の強靭な抵抗によって、主進撃路の北部戦線で多大な損失を被ったロシア軍は退却を余儀なくされ、サブ進撃路の東部、南部の両戦線に、明確な戦略目的のない転進を迫られている。しかも、この間、3戦線の進撃路上のウクライナ都市は、無差別ミサイル攻撃で廃墟と化し、多数の住民がロシア軍の戦争犯罪行為によって殺害されている。 「ブダペスト覚書」の白紙化からはじまったウクライナの悲劇は、いま、そのピークに達しようとしている。ウクライナの安全の「保証国」から「侵略国」にかわり、東欧地図の塗り変えという侵略の牙を剥いたロシアは、全世界の非難を浴びている。 おなじ「保証国」だった英米中仏は、ロシアの侵略を阻止する支援をあたえず、悲劇の深刻化、長期化を招いた責任の一端がある。ウクライナは、NATO加盟の国論の統一ができず、その核の傘に入らなかった結果、国土・都市の破壊や人命損失という過酷な代償を払っている。 ウクライナの悲劇を、いつ、だれが、どのように終わらせるのか。ロシア、米英仏中などの特権的核保有国、ウクライナ自身やそれを支援する世界中の国民の責任がいま問われているのである。(丸山浩行・国際問題評論家)』、「核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった」、「ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始」、「バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長」は実に不味い「信号」を送ったものだ。

第三に、5月21日付けNewsweek日本版が掲載した元CIAオフィサーのグレン・カール氏による「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2022/05/post-81.php
・『<ヒトラーを蹴散らした歴史を誇るロシア軍がなぜ? 失敗の原因は軍事ドクトリンと経験にある> ウクライナではロシア軍が苦戦を続け、逆にウクライナ軍が見事な応戦を見せている。軍事専門家の目にも驚きの展開だ。 この流れは、侵攻開始当初から見られた。2月24日、ロシア軍はウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊の空港を急襲したが、明らかな戦術ミスによって失敗に終わった。ウクライナ軍は少なくとも輸送機1機を撃墜し、ロシアが誇る空挺部隊を退けた。 以来、ロシア軍は苦しんでいる。民間人の居住区域を空爆し、いくつかの都市を破壊したが制圧できた所は一つもない。侵攻開始から2カ月半が過ぎた今も、ロシア軍は大量の装甲車両と兵力を維持しているが、ウクライナ軍はロシア軍部隊の4分の1以上を「戦闘不能」の状態に追い込んでいる。 強力で非情に見えるのに、実は無能なロシア軍──。この特徴は今後も変わることがないだろう。 ウクライナでのロシア軍の戦いぶりは、その歴史と軍事ドクトリンを反映したものだ。第2次大戦時のスターリンの赤軍以来、ロシア軍は同じことを続けている。民間人を標的にし、相手国の戦闘員と民間人の人権を侵害する。大砲やロケット弾、装甲車、兵器と兵力を大量に投入する一方で、兵站(へいたん)を軽んじる。 民間人を標的にするのは戦争犯罪だ。ところがロシアの軍事ドクトリンは、民間人を戦争における正当な標的と見なしている。「自国の死傷者を減らすためなら、(相手国での)大規模な破壊や民間人の巻き添え死は許容される」と、ロシアの著名な軍事戦略家アレクセイ・アルバトフは2000年に書いた。そうした行為が国際社会から非難されても、ロシア政府は「無視」すべきだと、彼は付け加えている』、「ロシアの軍事ドクトリンは、民間人を戦争における正当な標的と見なしている。「自国の死傷者を減らすためなら、(相手国での)大規模な破壊や民間人の巻き添え死は許容される」と、ロシアの著名な軍事戦略家アレクセイ・アルバトフは2000年に書いた。そうした行為が国際社会から非難されても、ロシア政府は「無視」すべきだと、彼は付け加えている」、「戦争犯罪を堂々と侵す理由が理解できた。
・『残虐さは軍事ドクトリンから(軍事ドクトリンと実際の戦闘の内容は、軍の能力と経験に基づく部分が大きい。ロシア軍は1994年のチェチェン紛争で自軍に多くの死傷者を出し、膠着状態に陥って撤退した。だがウラジーミル・プーチンを大統領の座に押し上げた99年の第2次チェチェン紛争では、ロシアは訓練不足の歩兵に攻撃させる代わりに大砲を大量に配備してチェチェンの首都グロズヌイを破壊し、多数の民間人を殺害。2015年にも、ロシアはシリア内戦への軍事介入で同じ戦術を使い、成功を収めた。 ロシアの戦争のやり方は、ウクライナでも変わっていない。地面にロシア語で「子供たち」と書かれていた南東部マリウポリの劇場への空爆は残虐なものだったが、これも意図的であり、民間人を攻撃するロシア軍のドクトリンを示す例だ。 前線の兵士の独断と意図的な方針が合わさることにより、ロシア軍が組織的な人権侵害を行った記録もある。スターリンが、ドイツ軍に対抗して進軍する自国軍に略奪とレイプを許可していたというのがそれだ。ソ連兵がドイツ人女性を集団レイプしているという報告を受けると、「兵士のやりたいようにやらせろ」と指示した。 この流れは今も続いている。欧州人権裁判所は21年、ロシア軍が08年にジョージア(グルジア)に侵攻した際に民間人を「非人道的」に扱い、捕虜を拷問したと結論付けた。) いまロシア軍は、ウクライナで同じような行為を繰り返している。100万人ともされるウクライナ市民のロシアへの強制連行に、裁判なしの民間人の処刑。ロシア兵がウクライナ女性をレイプした事例も多数報告されている。プーチンは、ウクライナのブチャで戦争犯罪を働いたとされる部隊に名誉称号まで付与した。 ロシアの軍事戦略は、自国の広大な面積と脆弱な地理的条件に基づいている。およそ1000年にわたり東西から侵略を受けてきたロシアの歴代指導者は、中欧の脆弱な平原に位置する緩衝国を支配することで戦略的な安全保障を模索してきた。 ロシアの戦略家が安全保障と帝国の確立を求めてきた場所が、まさに現在のウクライナだ。プーチンは長年にわたってNATOに対し、ロシアにとってウクライナは自国存亡の問題だと警告してきた。ウクライナが親欧路線を強めるなか、「わが国には侵攻以外に選択肢がなかった」とも述べている。 ロシアの軍事文化は貴族社会で発展し、農民が多数死傷しても犯罪的とも言えるほど意に介さず、おびただしい数の兵士を送り込んで圧倒する戦術を特徴とした。自国兵士を軽視するボリシェビキの姿勢にも、類を見ない残忍さがあった。こうした以前からの傾向は、最近ウクライナで傍受されたロシア軍の無線通信にも表れ、「われわれは使い捨ての駒。平和な市民を殺している」と嘆く兵士の声が記録されている。 このような歴史から生まれたロシアの軍事ドクトリンは、いくつかの前提を基にしている。まずロシアは地理的な広さと脆弱性から、戦略的な奇襲に備えておかなければならない。ロシアは戦略的に唯一無二の国だが、西側は自分たちが提案する「軍事改革」(核兵器削減、軍備管理交渉、紛争削減措置など)を通じてわが国の弱体化をもくろんでいる。 さらにロシアの軍事・経済基盤は、敵対する可能性の高いアメリカやNATOより技術的に劣っている......。そのためロシア軍の計画立案者たちは先制攻撃、すなわち「エスカレーション・ドミナンス」に重点を置く。敵にとっての犠牲を増大させる用意があることを示しつつ、応戦すれば危険なことになり得ると思わせて優位に立とうという考え方だ。 ウクライナへの一方的な侵攻は、まさにこの戦略的先制攻撃だ。そしてプーチンが侵攻3日目にして核兵器使用をちらつかせたことも、優位に立って敵を無力化させようとするロシアの典型的なやり方だ。 ロシアの軍事ドクトリンは、先制と奇襲、大規模攻撃の威力による衝撃とスピードを重視してきた。ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致している』、「ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致」、なるほど。
・『兵站を軽視したツケは大きい  ロシアは将来の戦争においても、今回のウクライナ侵攻と同じアプローチを、そして同じ失敗を繰り返す可能性が高い。それはロシアが、第2次大戦時の米軍司令官オマー・ブラッドリーの「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」という言葉に耳を傾けてこなかったからだ。 ロシア軍の戦闘部隊は米軍部隊よりも保有している火器は多いが、支援車両や補給車両はずっと少ない。その結果、ロシア軍は何度も燃料切れに陥り、より機敏に動けるウクライナ軍の餌食になってきた。 ロシア軍には通信のトラブルが少なくなかった。軍の装備は長年にわたり修理が行き届かないままの状態で、戦場に配備されている。無線は機能せず、兵士たちが装備の使い方について十分な訓練を受けていないケースも多い。) さらに大隊や連隊レベルに有能な将校が不足しており、部隊間の連携やリーダーシップがうまく機能していない。そのため、将校たちが前線に出ざるを得なくなった。結果として、侵攻当初に前線に就いたロシア軍将校20人のうち、実に12人がウクライナ軍に殺害されている。 しかしトラックや整備士を増やすだけでは、ロシア側は問題を解決できない。 兵站業務には、従軍期間がわずか1年という、訓練不足で士気も低い徴用兵が割り当てられることが珍しくない。腐敗も兵站能力を弱体化させている。横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化している。 米国防総省によれば、いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう』、「横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化」、「いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう」、大損害だ。
・『活かされなかったアフガン侵攻の教訓  歴史は未来を見通す窓である。10年に及んだ旧ソ連のアフガニスタン侵攻はソ連の荒廃を招いたが、それでも指導部や軍の専門家は、アナリストが指摘したいくつもの誤りを一切修正しなかった。例えば、いくつかのポイントは次のように修正されるべきだった。 「現地の協力勢力を、ロシア流に当てはめて組織し直そうとするな」 「彼らがわれわれの大義のために進んで戦おうとしなければ、われわれは敗れる」 さらにここに、「アメリカによる敵対勢力への武器供与の意思を過小評価してはならない」という新たなポイントを加えたい。 ロシア軍は将来の紛争でも圧倒的に優位に立つことを狙うだろう。指導部は即座に全面戦争の脅しをかけ、また核兵器を使って敵を守勢に立たせようとする。軍は兵站の大幅な不足に苦しみ、それが軍全体の動きを減速させるかストップさせる。指揮権は上層部に集中し、連隊以下には回ってこない。それでもロシア軍は、とてつもない数の火器を保有し、それを使用し続ける。 多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた。 ロシア軍の残虐性も、将来の紛争に受け継がれる可能性が高い。徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ。 今後10年、あるいはそれ以上にわたり、ロシア軍の低迷は続くだろう。それでも、プーチンの帝国主義的な野望は消え去らないが』、「多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた」、「徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ」、自衛隊員による女性自衛官に対するセクハラには驚かされたが、「ロシア軍」は遥かに酷いようだ。

第四に、本年2月2日付け現代ビジネスが掲載した笹川平和財団主任研究員の畔蒜 泰助氏による「ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105424?imp=0
・『すべての領土奪還まで支援を続けるかは分からない  昨年2022年2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってから、そろそろ1年が経とうとしている。現時点で全くの膠着状態で先が見えないが、この戦争の決着、そしてその後の世界の様相はどうなっていくのか、探ってみたい。 ます侵攻当初、ロシア側は早期にキエフを陥落させるという計画だったが、それは失敗した。実はその直後、すぐ停戦交渉が始まっている。まずベラルーシのミンスクで、そしてトルコのイスタンブールで。2月末から3月末にかけて行われた。 「ウクライナのNATOからの中立化、ロシアを含む国連安保理常任理事国+アルファの国々によるウクライナへの安全保障の供与、ただしそのギャランティはドンバス地域とクリミアには及ばない、その代わりにロシアは2月24日以前の線に退く」。恐らく、その線で一旦、暫定的な合意に近づいたのではないかという観測がある。ただこれはブチャでのロシア軍による一般住民虐殺が発覚したしたことがあり、吹っ飛んでしまった。 ロシアが、特にプーチンが、本当にどこまで、この時の条件を守るつもりがあったのかは疑問だ。あの時期、まだそれほどロシアは負けているという感じではなかった。これ以降、ロシアは撤退したキエフ攻略部隊などで、東部と南部を増強し、占領地域を拡大する方針に舵を切った。 アメリカのバイデン政権は6月1日にウクライナから求められていた自走多連装ロケット砲システムHIMARSを含む7億米ドルの武器支援パッケージを正式に発表しているが、それに先立つ5月30日、バイデン大統領自身が射程70キロのミサイルは与えるが、ロシア領内への攻撃が可能な300キロの長射程ものは含めないと明言している。 問題はその翌日5月31日に、同大統領がニューヨークタイムズに発表したオプエドだ。この中に「米国の目標は明確だ。我々は更なる侵略を抑止し、自らを防衛できる手段を有する民主的で独立した主権を有する繁栄したウクライナを見たいのだ」との記述がある。ここで注目すべきは、「主権(sovereign)」という言葉はあるが通常必ずこれとセットで使用される「領土の一体性(territorial integrity)が入っていないことだ。 このオプエドは、事実上の外交文書に近い意味を持つ。もし方針として存在するなら、そこに一番重要な言葉を入れないということはあり得ない。 ただし、その後に「この危機を通じた私の原則は“ウクライナの関与なしにウクライナについて何も決めない”というものだ。私は私的にも公的にもウクライナ政府に対して何らかの領土的譲歩をするように圧力を掛けることはしない」とも述べている。 何れにせよ、長射程のミサイルを送らないという、ある種のエスカレーション管理を含めた対ウクライナ方針とセットとなって、その意味するところは、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めたことにある』、「バイデン大統領」の「オプエド」では、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めた」、本当だろうか、初めて知った。
・『あきらめないプーチン、小出しにする西側  この時期、ロシア有利の状況が続くのではという恐れもあった。ただ、この後、アメリカが供与を始めたミサイルや重砲などの兵器が効果を表してきており、ロシアの東部での攻勢などを食い止めていた。そして9月に入って、ロシア側が南部のヘルソン方面を気にして、精鋭部隊をドニエプル川西岸に集めていたところ、ウクライナが東部のハリコフ方面で攻勢をかけ、イジゥーム、リマンなどの拠点を始め、ハリコフ州全域を取り返す事に成功した。 この事態を受け、ロシア側は侵攻当初、否定的だった動員を決断し、9月21日、プーチン大統領が30万人の部分動員を発表。続いて30日に、ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の4州の併合を発表し、さらに核の使用を示唆した。こうして態勢を立て直そうとしたが、兵力が整うまでタイムラグがあるのであまりうまくいかず、結局、ヘルソン方面も西岸から撤退することになった。 そして11月には、アメリカのミリー統合参謀本部議長が、「ウクライナはそろそろ確保した奪還地域を交渉で確定させるべきなのではないか、停戦を真剣に考えるべきなのではないか」という発言を行っている。 ただこれに対してはバイデン政権内で異論があった。そもそもプーチンに全くそのつもりがない。プーチンが口にしている停戦というのは、あくまでも4州の併合をウクライナが認めるということを前提にした停戦である、という見方だった。 この前後まで、ヨーロッパでも、フランスのマクロンが停戦に言及するといった動きがあった。だが11月末、マクロンはワシントンに行ってバイデンと会談している。それと同時にドイツのショルツ首相がプーチンに電話している。 その結果、ヨーロッパの中でロシアとの対話が必要といっていた独仏とアメリカの間で、「今はまだロシアに圧力をかけ続ける時期だ」と、アセスメントを近づけていった。このことが年末に歩兵戦闘車を米独仏が同時出すという決定に、さらには1月末に戦車を供与するという動きに繋がっていったと考えられる。 ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう。 一方、1月にアメリカのバーンズCIA長官がウクライナにベラルーシからのロシアによるキエフ侵攻が再びあるかも知れないという警告を伝えたという報道があった。実際に行うかどうかはわからない。そう見せかけて、ウクライナに東部、南部での攻勢を控えさせるためかも知れない。 しかし、今の段階でいえることは、プーチンは全くあきらめていないということだ。そうでなければ、再動員をする、軍を150万人体制にする、と発言したりはしない。ソ連並みの軍事国家への回帰だ。彼からすると、ウクライナ戦争はネオナチとの戦いなので、現代の大祖国戦争のイメージなのだろう』、「ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう」、短い「チャンス」を「ウクライナ側」が活かせるのか注目点だ。
・『クリミアには慎重姿勢  1年前の侵攻開始の段階では、今よりも兵力も装備も充実していた。準備も出来ていた。しかし、南部ではかなり侵攻したが、全体としては、計画は挫折し、兵力も大きく失った。結局、西側の軍備体系に質的に勝てないのではないか、それでもなぜあきらめないのか、という見方も確かにあるかも知れない。 ただし、西側が直接、ロシアと戦うわけではない。どこまでも武器を供与するだけ。しかもやはり限定的だ。最終的にはドイツのレオパルド2、アメリカのM1エイブラハムズの供与が決定されたが、それでも、特にドイツは、長い期間、戦車供与に否定的な態度をとり続けていた。 ドイツは今回、ゴーサインを出したが、ウクライナ側が求める300両までどこまで近づけることが出来るか不明だし、しかも時期はかなり後になる。やはりなんだかんだいっても、ウクライナ軍が西側の援助でロシア軍を圧倒して、ウクライナ領から追い出すというのは簡単ではない。 そこで最近、議論されているのは、はやりアメリカの目指すゴールというのは、ウクライナの完全な勝利ではなく、ロシアを追い詰めて、交渉の場に(引き出すこと)引き出す事ではないかということだ。 12月の頭にアメリカのブリンケン国務長官がWSJのフォーラムに出席した際、モデレーターに「エスカレーションのリスクを第一の考えているのか?」と質問され、「アメリカのフォーカスは2月24日の前までに戻すことだ」と答えている。 アメリカも今のところクリミアからロシア軍を追い出す、つまり2014年以前の状態に戻すということが実行可能かといえば、そうは思っていないということだ。それでも、最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う。 だから最近、議論に出ているのが、クリミアへの攻撃を容認するのかしないのかだ。具体的には、ロシアが侵攻当初、まずザポロージャ州を抑えたが、それはロシアにとって、クリミアへの陸の回廊だったからだが、この方面に攻め込むための援助をウクライナに供与すべきかどうかということだ。そのための歩兵戦闘車であり、戦車である。 長射程のミサイルについては、まだそこまでは行かないだろう。それでもザポリージャ州を奪い返し、海岸線まで進出すれば、今持っているミサイルでもクリミアまで届くことになる。 そこまでロシアを追い込めるのかどうか。そこまでいって、改めてロシア側が交渉に乗るつもりにさせることが出来るのか』、「最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う」、なるほど。
・『大した影響のないバフムト戦線  現在、ロシア側は盛んに「交渉、交渉」と叫んでいるが、あれは全くやる気が無いものだ。「西側がウクライナに対して圧力をかけてくれ、我々は今の線だったら呑むぞ」といっているのだ。もちろん西側はそんな話にも圧力に応じる気持ちはない。 さらにいえば、今、ロシアは、ドネツクのバクムット周辺で延々と大攻勢をかけて、優位に立っていると宣伝しているが、戦略的には余り大きな意味を持たないだろう。 戦闘をやっているのは民間軍事会社のワグネルで、囚人兵を大量に犠牲にして攻撃を続け、ロシアの政権や国内向けに自分たちのアピールをしているもので、ハリコフのイジュームから攻勢をかけられるのであれば、ウクライナ軍を包囲できたかも知れないが、ハリコフ州をウクライナが奪い返した今、バクムットを占領しても大勢に大きな影響を与えない。 実はロシアの正規軍はあんなところを占領しても何の意味も無い事はわかっている。だからワグネルに勝手にやらせている。ワグネルからすれば、正規軍と競争関係にあるので存在感のアピールである。 確かに今、わずかでも成果を上げているのはワグネルだけだ。しかし、プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる。だからといってワグネル代表のプリゴジンを完全にパージすると言うことはないと思うが。 東部の戦いで本当の重要なのは、東部戦線におけるロシア軍の補給路のスバトベ-クレミンナの線の帰趨だ。ウクライナ軍はジワジワと前進しているが、なかなか一気に奪うということは難しく、膠着状態に陥っている』、「プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる」、「正規軍」と「ワグネル」の対抗意識は当然ながら高いようだが、「プーチンは依然として正規軍をメインに考えている」、「プーチン」はやはり保守的なようだ。
・『双方があきらめるまで消耗戦  ロシアもウクライナも、それぞれ思い描いている成功を手にするにはほど遠く、この膠着状態の末、妥協せざるを得ない均衡点に達することを、西側は狙っていることになる。 ただ、今はそのタイミングではない。お互い主張している事があまりにもかけ離れている。結局、ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる。 ウクライナでの戦闘が終息するまで、まだ相当な道程がある。その過程で、両国が消耗するだけでなく、世界に対する影響も深刻なものになる。ウクライナ戦争後の世界がどのような様相になるのか。大国とはいえないほど衰亡するであろうロシアの立ち回りによって引き起こされる世界の対立構図を【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】で解説する』、「ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる」、その通りだろう。もう既に長くなったので、「【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】」の紹介は省略する。
タグ:ウクライナ (その4)(「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言、ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」 親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領、ウクライナで苦戦するロシア軍 その失敗の本質、ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編) デイリー新潮「「子ども」「妊婦」「新生児」を虐殺するロシア軍 「まるで『地獄の黙示録』」マリウポリ住民の証言」 「多くの観光客を魅了するにぎやかな港町が、今では映画『地獄の黙示録』のシーンにそっくりだ」、悲惨さが伝わってくる。 「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎて対応が間に合わず、死体は凍土に掘られた塹壕に投げ捨てられている、と。時に爆撃は毎分にも及び、作業する人も身を守るために無造作に投げ入れざるを得ないとか。葬儀を行うこともできず、当局は“死体は路上に放置しなさい”と指導」、「爆撃によって殺された人々があまりに多過ぎ」、ここまで酷いとは気の毒という他ない。 「病院の地下には、引き取り手のない遺体が大人も子どもも一緒くたにされて並べられている」、「「レニングラード包囲戦」の「ナチスの非道に、今度はロシア自身が手を染めている」、その通りだ。 「ロシア軍の死者は7千人」、「アフガン戦争でアメリカ軍が失った兵士の数をはるかに超えている。米兵のアフガンでの戦いは20年間続きましたが、それを1カ月も経たないうちに軽く超えてしまった」、「プーチンにとってこれは大誤算」、その通りだ。 「スターが声を上げたことで今後、さらに雪崩を打って反戦の動きが拡大する可能性がある」、その割には大したことにはなってないようだ。 「最近のプーチンは、欧米志向のある市民を、スパイを意味する『第五列』と呼び、“ロシア社会を浄化する”“反対派をあぶり出す”などと発言、さすがKGB出身だけある。 「「戦時国際法は、ジュネーヴ諸条約とそれに対する追加議定書により、さまざまなルールが定められています」 と浅田教授が続ける。 「ここに抵触しそうなロシアの行為を挙げれば、まずは文民に対する攻撃です。これは第1追加議定書で絶対的に禁止されていますが、各地でロシア軍は民間人への攻撃を続けています。 また、住居・学校への攻撃や、病院への攻撃も、同様に違反している。原発への攻撃はもちろんのこと、原発敷地内の他の施設への攻撃も、原発近隣の施設は軍事目標であっても発電所からの危険な力の放出につながる場合には攻撃してはならないと定めているため、違反の恐れ」、サボリージャ原発にはIEAの査察官が来ている間にも、攻撃があったようだ。 「「プーチンは今後、123カ国にものぼるICC締約国に行くことは拘束の危険を孕むため、相当困難になる。国際社会での孤立が進むことは間違いありません」、当然の報いだ。 「プーチン」は言論機関を抑えているのが強みだ。 「プーチン」にはガンで余命宣告を受けているとの噂もある。「地獄を生み出した者は、いずれ地獄に堕ちる。プーチンの目に、この当たり前の道理は見えているだろうか」、「余命宣告」が正しければ、「地獄に堕ちる」のも時間の問題なのかも知れない。 エコノミストOnline「ウクライナの悲劇招いた「核の傘」喪失 米・NATOが出した“青信号”・・・悲劇の発端「ブダペスト覚書」、親米革命でロシアは侵略国に変貌、核威嚇で米・NATOを試したプーチン大統領」 「核兵器をめぐる動きを中心に歴史と背景」とは興味深そうだ。 「「ブダペスト覚書」には、安全の保証国となった核保有3国に約束履行や軍事援助を義務づける「法的拘束力」の規定がなく、美辞麗句をならべただけの空文に終わる弱点があった」、この「弱点」を突かれた形だ。それにしても、「核兵器」を「ロシア」に返還したのに、「核兵器」による「威嚇」を受ける立場になったとは気の毒だ。 「NATO非加盟でその核の傘に入らない例外が1国だけあった。核使用の威嚇下のロシアの大規模な軍事侵略に対して丸裸、無防備状態におかれたウクライナである」、「不安的な政権運営のせいで、NATOの早期加盟の国論統一が不可能だったから」、全く不運という他ない。 「核威嚇のシグナルに、バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長は、「核保有の米軍とロシア軍の交戦は第3次核世界大戦の引き金になる恐れがあるから、米軍およびNATO軍はウクライナに直接軍事支援はしない」と何度も言明した。プーチン大統領からみれば、この言明は、ロシア軍のウクライナ全面侵攻作戦への青信号であった」、 「ウクライナへの米軍、NATO軍の直接軍事支援はない、と確信したプーチン大統領は、2月24日から、首都キーウの北部戦線、オデーサの南部戦線、東部2州の東部戦線の3方面から、20万人のロシア軍をウクライナ領内に進撃させる侵略戦争を開始」、「バイデン大統領やストルテンベルグNATO事務総長」は実に不味い「信号」を送ったものだ。 Newsweek日本版 グレン・カール氏による「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」 「戦争犯罪を堂々と侵す理由が理解できた。 「ロシアの戦略担当者は、経済的・技術的に優位な立場にある西側諸国に対して主導権を握るために、短期の通常戦争に重点を置き、核戦争の脅威を利用して西側の優位性に対抗してきたのだ。この点でもウクライナ侵攻は、ロシアの戦略的ドクトリンに合致」、なるほど。 「横行する腐敗によって軍予算の20~40%が不正流用され、そのために質の低い、あるいは不十分な数の装備しか購入できない事態が慢性化」、「いまロシアは地上戦闘部隊の約75%をウクライナに投入している。侵攻からの2カ月余りで、このうち4分の1の部隊が戦闘不能な状態に陥り、その過半数が精鋭部隊だった。戦闘用の装備も少なくとも25%が破壊され、これらを元のレベルに立て直すには何年もかかるだろう」、大損害だ。 「多くの兵士が訓練不足のまま戦場に送られ、戦争犯罪や人権侵害を働くだろう。20年にロシアで発表された報告書は「兵士たちの専門的な訓練のレベルが低下し続けている」と指摘。国内のアナリストも、兵士たちには効果的に機能するための士気が欠けていると警告してきた」、「徴用兵の間には長年、「デダフシチーナ」という残虐なしごきの伝統がある。上官が若い兵士を殴ったり、あるいはレイプしたりするのだ」、自衛隊員による女性自衛官に対するセクハラには驚かされたが、「ロシア軍」は遥かに酷いようだ。 現代ビジネス 畔蒜 泰助氏による「ロシアは到底勝てるとは思えない、米欧が考えるこの戦争の落とし所はこの辺り ウクライナ戦争の先にある泥沼世界・前編」 「バイデン大統領」の「オプエド」では、ウクライナがすべての領土を取り戻すまで、ずっと支援するかは分からない、という、ニュアンスをそこに込めた」、本当だろうか、初めて知った。 「ロシアは部分動員した30万人のうち、すぐに戦場に投入した約8万人以外の人員の訓練を続けており、それが春以降、戦場に投入され、再び大攻勢をかけてくる可能性が高いと、ウクライナも米欧も見ている。逆に言えば、それまでの期間がウクライナにとってのチャンスとなる。 しかし、短い期間のウインドウである。地面が凍結して車両の移動が可能になってから、その凍結が溶け春の泥濘が始まるまでのわずかな期間ならウクライナは優勢なうちに攻勢に出られる。そこで、どれだけ失われた領土を取り返せるのかが、1つの勝負だというのが、ウクライナや西側が見ている局面なのではないかとおもう」、短い「チャンス」を「ウクライナ側」が活かせるのか注目点だ。 「最近では2月24日の前の状況に戻した上で、ロシアがそれに妥協するように、追い込む必要があると考えているようだ。今アメリカが目指しているのはそこだと思う」、なるほど。 「プーチンはそれを見てどうしたかというと、そのワグネルやチェチェンのカディロフが後押しして総司令官に立てたスロビキンを降格して、彼らが散々批判してきたゲラシモフ参謀総長を総司令官にした。つまりプーチンは依然として正規軍をメインに考えていることになる」、「正規軍」と「ワグネル」の対抗意識は当然ながら高いようだが、「プーチンは依然として正規軍をメインに考えている」、「プーチン」はやはり保守的なようだ。 「ウクライナの冬季攻勢、そして、春から夏に兵力を補充したロシアの攻勢があって、その先に、どういう状況が訪れるかということだろう。 西側の援助は、決定的な優位性をウクライナに付与するのではなく、優位性を保ったまま、状況を推移するのを見るという範囲に今でもある。そこには、どこかにエスカレーションリスクへの配慮が見られる。 これまでの経緯から考えると、お互いに目標を完全に達成しきれず、ただ体力だけが削られていく事になりかねないだろう。具体的な停戦の動きが出てくるのは、更にその先ということになる」、 その通りだろう。もう既に長くなったので、「【後編・衰退しかないロシアが最後にすがる、「西」vs「南」の世界対立構図はこれだ】」の紹介は省略する。
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