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資本市場(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ) [金融]

資本市場については、昨年4月13日に取上げた。今日は、(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ)である。

先ずは、本年1月31日付け東洋経済オンライン「JTに物言う株主が株主提案、問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/649493
・『アクティビスト(物言う株主)が、子会社に続いて親会社にも噛みついた。2022年、医薬品中堅の鳥居薬品(東証プライム上場)に株主提案したアクティビストが、今度は親会社であるJT(日本たばこ産業)にも、3月の定時株主総会に向けて株主提案したことが東洋経済の取材でわかった。 今年に入って東京証券取引所が親子上場問題に関する研究会を再開させるなど、親子上場問題をめぐる議論が活溌になっているだけに、今回の株主提案は波紋を広げそうだ』、興味深そうだ。
・『「JTは大株主の責任を果たしていない」  提案をしたのは、香港の投資会社であるリム・アドバイザーズ。リムは2022年1月にも、JTが54.8%の株式を握る子会社で、現在は医薬品の販売会社となっている鳥居薬品に対して株主提案を行っている。今回は鳥居薬品に加えて、親会社のJTにも株主提案を行った。 関係者の話を総合すると、リムはJTに対して、同社が鳥居薬品を買収してから25年が経過したにもかかわらず、「一定の実績だと認められるのは、2020年に発売したアトピー性皮膚炎治療剤コレクチムに限られ、親子間のシナジーが見込めなくなっている」としたうえで、「鳥居薬品のPBR(株価純資産倍率)が0.7倍程度で1倍を割っていることに加え、EV/EBITDA倍率(買収にかかるコストを何年で回収できるかを示す指標)が、同規模の医薬品会社が10?15倍程度であるにもかかわらず、それを大きく下回る4倍程度に沈んでいる」ことを問題視しているようだ。 そのためリムは、「JTは鳥居薬品の企業価値向上に失敗し、大株主としての責任を果たしていない」として、JTに対して鳥居薬品の非上場化もしくは売却を求めているという。 またまたJT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案しているという。) さらに、キャピタル・アロケーション(資本の配分)の観点から、グループ内で資金を包括的に管理するキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によって、「鳥居薬品からキャッシュを適切に活用する機会を奪っている」として、CMSをやめることも合わせて求めているもようだ。 これに対しJTは、「株主提案を受領したことは事実」と認めたうえで、「現在、株主提案に対する会社意見を作成中であり、取締役会で承認され次第開示する予定だ」としている。他方でリムは「個別案件にはお答えできない」とコメントした』、「JT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案」、「JT」が単なる天下り先として、「鳥居薬品」を位置づけている懸念もあり、「リム」の要求は、一定の合理性をもつ。
・『東証も親子上場議論を再開  親子上場をめぐっては、東証が2022年4月にスタートさせた市場区分の再編に関する議論の中でも問題視されるなど、ここ数年、市場では大きな検討課題となっている。そのため東証は、プライム市場を選択する企業の基準として「流通株式比率35%以上」を求めるなど、親子上場の解消を間接的に促している。 また、2020年1月に設置し、2020年9月に「中間整理」を発表して以降、休眠状態だった親子上場の問題点を議論する「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」も2023年1月6日に再開、議論を再スタートさせた。 というのも市場区分の見直しをきっかけに、東証には海外の機関投資家やアクティビストなどから親子上場に関する抗議の声が相次いで寄せられているといい、無視できない状況に追い込まれているからだ。 リムが昨年鳥居薬品に行った株主提案には、JTからの天下りの禁止やCMSによる資金提供の禁止などが盛り込まれていたが、いずれも株主総会で否決されている。今回は親会社であるJTにも同様の提案を行うことで、親子上場の問題を正面から問いかける姿勢だ。両社の株主はどう判断するか。その結果次第では、他の親子上場会社にも影響を及ぼしそうだ』、「親子上場」は日本の株式市場における恥部だ。「東証も親子上場議論を再開」するので、今後の成り行きを注目したい。

次に、2月1日付け東洋経済オンラインが掲載した関西学院大学経済学部教授の堀 敬一氏による「一世を風靡した「SPAC」、明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/648604
・『もし「どこに投資するかは決めていないが、私を信じてあなたのお金を私に預けなさい」と言われたら、多くの人はうさんくさく感じるに違いない。しかし、そんな証券が米国などの市場で取引されている。特別買収目的会社(SPAC)の証券である。 SPACの仕組みはこうだ。まず、設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める。この時点では、資金をどこに投資するかは決まっていない。次にスポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる。米国ではSPACの制度自体は以前から存在していたが、2020年ごろから突然、金融業界の関心を集めるようになった。20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった』、「設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める」、「スポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる」、確かに「IPOの一形態」だ。 20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった」、かなりの比重だ。
・『何がSPACの魅力か  SPACは上場証券なので、投資家保護に一定の配慮がある。制度上、スポンサーに持ち逃げされる心配はない。企業との合併には投資家の一定割合の賛成が必要で、スポンサーは独断できない。SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる。 事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行うので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る。 だが、いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介したい』、「SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる」、「事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行うので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る」、「いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介」、「SPAC」は案件ごとにメリットとデメリットを比較しながら落ち着くところに落ち着くのだろう。
・『問題が発生する理由  米国では企業が合併する際、ニューヨーク証券取引所やナスダックの規制により、被買収企業が買収企業の純資産の80%以上の価値を有することが条件となっている。したがってSPACは調達額を大きく下回る価値しか持たない企業とは合併できない。 だがこの条件が、スポンサーが事業会社を真剣に審査する誘因をそぐことになる。時間と費用をかけて企業を審査し、その企業が相対的に低価値だとわかったとする。前述の規制によってSPACはその企業とは合併できない。合併できなければスポンサーは報酬を得られない。それならいっそ、審査などせず「この会社は高価値です」と投資家に伝えるほうが得になる。 もちろんすべてのスポンサーがつねにそのような無精をするわけではない。スポンサーの報告が虚偽だと明らかになれば投資家からの信用を失い、以後、SPACを組成することは難しくなるからだ。だが、スポンサーが短期的な利益を志向するのであれば、将来の評判の損失を気にせず虚偽の報告を続けるかもしれない。時間と費用をかけて企業価値を精査する伝統的なIPOと比較すると、審査の精度が低くなる可能性がある。 なぜこのような問題が起きるのか。原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策はないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ。 こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきであろう』、「時間と費用をかけて企業価値を精査する伝統的なIPOと比較すると、審査の精度が低くなる可能性がある」、「原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策はないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ」、「こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきであろう」、同感である。
タグ:(その9)(JTに物言う株主が株主提案 問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求、一世を風靡した「SPAC」 明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ) 資本市場 「親子上場」は日本の株式市場における恥部だ。「東証も親子上場議論を再開」するので、今後の成り行きを注目したい。 「JT」が単なる天下り先として、「鳥居薬品」を位置づけている懸念もあり、「リム」の要求は、一定の合理性をもつ。 「JT出身者が代々、鳥居薬品の代表取締役に就任していることについて、その人物たちが「医薬品事業に関する豊富な知見を有しているようには見受けられない」としたうえで、天下りが「鳥居薬品の株式価値を毀損し、引いては親会社であるJTの株主価値も毀損している」と見ており、「JTで5年以上役員または従業員として勤務経験のある者が鳥居薬品の取締役に選任されることを防ぐ定款規定を設ける」よう提案」、 東洋経済オンライン「JTに物言う株主が株主提案、問われる「親子上場」 上場子会社・鳥居薬品の非上場化、売却を要求」 東洋経済オンライン 堀 敬一氏による「一世を風靡した「SPAC」、明らかになった問題点 新興企業の資金調達の革新を続けることが必要だ」 「設立者(スポンサー)がSPACを上場させ、投資家から資金を集める」、「スポンサーは株式市場に上場したい未上場の事業会社を探す。合意できればSPACがその会社を買収、合併する。その際、事業会社は存続し、SPACは消滅する。結果的に事業会社が上場したことになり、投資家はその会社の株主になる。 これは新規株式公開(IPO)の一形態と見なすことができる」、確かに「IPOの一形態」だ。 20年と21年にSPACによる資金調達額は飛躍的に成長し、IPO全体に占めるSPACの調達額の割合は半分近くになった」、かなりの 比重だ。 「SPAC上場から事業会社との合併までの期限は多くの場合2年以内とされ、それまでに合併できなければSPACは清算、資金は投資家に返還される。つまり投資の成否を比較的短期間で判断できる」、「事業会社にとってもメリットが大きい。伝統的なIPOでは上場までの審査に多大な費用と時間を要する。また上場してみないと、実際にどれだけ資金を調達できるかがわからない。しかしSPACの場合、実態としては新規上場だが形式的には合併なので、審査は伝統的なIPOと比べると相対的に簡単だ。またSPACによる資金調達後に合併交渉を行う ので、調達可能額の見通しがつきやすい。 スポンサーはSPAC設立時に自ら出資するが、金額は非常に少額である。一方で合併が成功すれば、事業会社の20%程度の株式を保有できる。株価が上昇すればスポンサーも多額の利益を得る」、「いいことばかりではない。第1の問題点は「証券価値の希薄化」である。SPACが事業会社を合併する際には、合併に反対する投資家だけでなく、賛成する投資家もSPAC証券を償還できる。合併に反対する投資家が資金を返還してもらうことは、投資家保護の観点から必要だろう。だが合併に賛成する投資家まで償 還可能だと、合併前に予想外の多額の資金がSPACの信託口座から流出する可能性がある。するとスポンサーは事業会社に約束していた資金を提供できなくなって、合併交渉自体が消滅するだろう。 ここで困るのはスポンサーだ。なぜならスポンサーは合併を成功させて初めて報酬を得ることができるからだ。スポンサーには合併を成功させたいという誘因が強く働く。そこでスポンサーは新たに株式を発行して、流失した資金の穴埋めをする。これは多くの場合、私募増資(PIPE)という形態で実施されるが、発行株式数が増加するのでSPAC投資家が保 有する株式の価値は低下する。増資はPIPEに応じる投資家に有利な条件で行われる傾向があるので、SPAC投資家の株式の価値はより低下するかもしれない。 第2の問題点は、事業会社に対するスポンサーの審査の精度である。この点について筆者が甲南大学の小佐野広特任教授と行った共同研究の成果を簡単に紹介」、「SPAC」は案件ごとにメリットとデメリットを比較しながら落ち着くところに落ち着くのだろう。 「原因として大きいのが、合併不成立時にはスポンサーの報酬が生じない仕組みだ。また仮にSPACによるIPOが成功したとしても、消費者保護や合併に対する規制が強く機能した結果、それが利害関係者に意図せざる費用を負わせることになっている。 前者の解決は、合併不成立の場合でも一定の報酬がスポンサーに支払われるよう制度を修正すればよいので、それほど難しくはない。しかし後者の解決は容易ではない。既存の法律や規制は何らかの役割があるから存在しているのであって、これを撤廃すれば新たな問題が生じるだけである。明確な解決策は ないが、少なくとも時代や環境の変化に応じて既存の法律や規制を見直す機会を絶えず持つことは必要だ」、「こうした問題点が意識されるようになったことも影響したのか、22年になってSPACによるIPOは件数も金額も急速に減少している。それを受けて、SPACは「一時的なブームにすぎない」という声も聞かれるようになった。だが確かにそうだとしても、多大な時間と費用を要し、調達額が不透明な伝統的IPOの問題点が解決したわけではない。投資家にとって有益で、新興企業にとって使いやすい新たな資金調達方法が絶えず模索されるべきで あろう」、同感である。
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