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ソニーの経営(その10)(EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは ROIC導入でどのように復活したか、ソニー復活の集大成となるか?十時新社長の「本当の実力」) [企業経営]

ソニーの経営については、昨年3月27日に取上げた。今日は、(その10)(EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは ROIC導入でどのように復活したか、ソニー復活の集大成となるか?十時新社長の「本当の実力」)である。なお、タイトルから「問題」は削除した。

先ずは、昨年3月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した米国公認会計士でビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院客員教授の大津広一氏による「EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは、ROIC導入でどのように復活したか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299929
・『「資本コスト」「コーポレートガバナンス改革」「ROIC」といった言葉を新聞で見ない日は少ない。伊藤レポートやコーポレートガバナンス・コード発表以来、企業には「資本コスト」を強く意識した経営が求められている。では、具体的に何をすればいいのか。どの経営指標を採用し、どのように設定のロジックを公表すれば、株主や従業員が納得してくれるのだろうか? そこで役立つのが『企業価値向上のための経営指標大全』だ。「ニトリ驚異の『ROA15%』の源泉は『仕入原価』にあり」「M&Aを繰り返すリクルートがEBITDAを採用すると都合がいいのはなぜか?」といった生きたケーススタディを用いながら、無数の経営指標の根幹をなす主要指標10を網羅的に解説している。すでに役員向け研修教材として続々採用が決まっている。 そんな『経営指標大全』から、その一部を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『EVAを使いこなせなかったソニーの「恨み節」  2000年代初頭、花王と並んでEVA(経済付加価値)採用企業としてもっとも著名であった日本企業は、おそらくソニー(現ソニーグループ)であろう。当時の会長兼グループCEOの出井伸之氏が肝いりで始めたソニーのEVAは、ソニーの先端的なイメージと重なり、経営指標として大きな脚光を浴びた。総合電機業界の多くの企業がEVA、またはそれに準ずる経営指標を導入する流れを作り出したといっても過言でない。 しかし、ソニーはその後の業績の急速な悪化により、2003年にはソニーショックと呼ばれるソニー株の暴落を引き起こした。道半ばで2005年6月に退任した出井氏とともに、EVAはソニーから完全に姿を消した。 出井氏は退任後に出版したソニー時代を振り返る著書『迷いと決断』の中で、EVAに対する思いを2ページにもわたって以下のように綴っている(*1)』、導入した「出井伸之氏」による「思い」とは、興味深そうだ。
・『理解されなかったEVA  ソニーのように、全く性質の異なる事業をいくつも抱えている企業にとっては、それぞれの事業を出来るだけ公平に評価するための「共通の尺度」が求められます。 そこで私は、EVA(経済的付加価値)という指標の導入を試みました。EVAはアメリカ生まれのコンセプトですが、ソニーのような複合企業には大変適した尺度です。複数の性質の異なる事業を1つの企業が統治している場合に、通常のバランスシートでは内実が見えにくいので、事業ごとに「仮想的に」バランスシートを分離して評価してみようというのが、このEVAの考え方です。 EVAで重要視されるのは「資本コスト」。平たく言えば、その事業にどれだけの資本が投入され、どれだけのスピードでその資本が回転して、どれだけの利益を生み出しているか、という点です。例えば、パソコンなどの組み立て産業には、投下資本はあまり必要ありませんが、販売・サポートなどには沢山の人手が必要になります。反対に、半導体の生産には大きな設備投資が必要で、変化のスピードも速いので、短期に資本を償却してしまいます。こうした性質の異なる事業を、「売上げ」と「利益率」という2つの尺度だけで評価するのではなく、売上げを立てるためにどれだけの「資本」が必要だったのかに注目したのがEVAなのです。 大規模な投資が必要な事業では資本回収のスピードを速くするなど、EVAは具体的施策にも直結する優れた指標なのです。またこれは、事業の性格を責任者に理解させ、事業のスピードアップを促すためのもので、毎月の売上げ数値の競争を誘発するような性質のものではありません。ところが、この基本が理解されずに、「ソニーはEVAを指標に使っているから長期的な投資が出来なくなった」などと、頓珍漢な批判が内部からも出されたりしたのは残念なことでした。 出井氏が記述している大部分は、EVAが資本コストを重視した、いかに優れた経営指標であるかという点と、特にソニーのように事業が多岐にわたる企業にもっとも適した経営指標であるという点であろう。これらはなんら否定するものではない。しかし、出井氏がこの文章の中でもっとも言いたかったのは、最後の一文ではないかと考える。「ソニーはEVAを指標に使っているから長期的な投資が出来なくなった」などと、頓珍漢な批判が内部からも出されたりしたのは残念なことでした。 EVAを短期的に上げることは非常に簡単である。儲かっている事業において、できるだけ投資を抑制すればよい。そうすることで、NOPAT(税引後営業利益)から差し引く投下資本は減少し、EVAは上昇する。それで部門の評価や部門長の賞与が決まるとあっては、事業責任者がそうした行動に偏向することは否めない。 安定した事業環境にあれば、すべてをEVAで意思決定する経営も悪くないが、大きな市場や技術の変化が起きているときには最大の注意を要する。将来の果実をつかむための先行投資を禁止する指標となってしまうからだ。 おそらくソニーは過度にEVAを重視した経営、短期的な評価もEVAに基づいて決定されるといった経営をやりすぎたのであろう。それを社員は指摘していたのだから、「頓珍漢な批判」で片づけられる代物でない。 経営指標でありながら、過度にやりすぎてはいけない。まるで矛盾するような示唆だが、ブラウン管から液晶へとテレビの市場や技術が大きな変化を遂げており、サムスン電子をはじめとしたライバル企業が虎視眈々と巨額の設備投資を液晶に向けて行っている下で、EVAを軸にして短期的に業績を評価する企業であっては、取り返しのつかない事態を引き起こす。短期の果実を得た代償として、長期的な優位性を失うトリガーとして、ソニーのEVAは寄与してしまったのではないだろうか。 これはEVAの限界ではなく、本書で紹介しているすべての経営指標の限界である。会計数値に基づいて計算する経営指標である以上、単年度ベースでの算出が基本となる。それが金科玉条だと言われれば、短期的な費用や投資の抑制によって、目標は達成できてしまうだろう。ROE、ROA、ROIC、営業利益、フリー・キャッシュフロー……、すべて同一である。 市場や技術、顧客といった環境変化によって大きな先行投資が必要とされる企業や部門にあっては、経営指標のターゲットの時期や水準の設定において、熟考しなくてはならないことの示唆を与える。イメージセンサーに代表されるソニーの世界的にシェアの高い半導体事業を捕まえて、ソニーの資産が膨らんでいるのは問題だ、などと批判する人があれば、事業内容をまったく理解していない「頓珍漢な批判」と一蹴されることだろう。 5年後のターゲットとしての設定や、3年間累計としての設定など、手法はいくらでもある。経営指標が社員の行動特性を導くのだから、社員に期待する行動特性を見据えたターゲットの設定が不可欠である』、「会計数値に基づいて計算する経営指標である以上、単年度ベースでの算出が基本となる。それが金科玉条だと言われれば、短期的な費用や投資の抑制によって、目標は達成できてしまうだろう。ROE、ROA、ROIC、営業利益、フリー・キャッシュフロー……、すべて同一である。 市場や技術、顧客といった環境変化によって大きな先行投資が必要とされる企業や部門にあっては、経営指標のターゲットの時期や水準の設定において、熟考しなくてはならないことの示唆を与える。イメージセンサーに代表されるソニーの世界的にシェアの高い半導体事業を捕まえて、ソニーの資産が膨らんでいるのは問題だ、などと批判する人があれば、事業内容をまったく理解していない「頓珍漢な批判」と一蹴されることだろう。 5年後のターゲットとしての設定や、3年間累計としての設定など、手法はいくらでもある。経営指標が社員の行動特性を導くのだから、社員に期待する行動特性を見据えたターゲットの設定が不可欠である」、その通りだ。
・『ROICの流行は「EVA経営」の再来  さて、出井氏が書籍の中で語っていた文章に今一度目をやり、「EVA」の個所を「ROIC」に置き換えて読んでみてほしい。いかがだろう。まったく違和感なく、文章としてすべて成立していることが確認できよう。 EVAが悪者だという方がもしあれば、それはROICが悪者だと言っていることに等しい。もちろん短期的にはROICやEVAを重視しない成長著しい企業であればそれでも良かろう。しかし第7章で触れたROIC導入を進める日本企業の増大は、形を変えた「EVA経営の再来」と見ることもできるのである。 かくいうソニーもまた、ROIC経営で復活を遂げた企業である。ソニーは2015年に発表した第二次中期計画(2015~17年度)において、図表1の1枚のスライドを示し、ROE重視の経営と、そのためのROICによる事業管理を明確化した。 図表1 ソニーグループのROEとROIC重視の経営 事業領域1 成長牽引領域 “成長に向けた施策と集中的な投資により、売上成長と利益を実現” デバイス、ゲーム&ネットワークサービス、映画、音楽  事業領域2 安定収益領域  “大規模な投資は行わず、着実な利益計上、キャッシュフロー創出を目指す” イメージング・プロダクツ&ソリューション、ビデオ&サウンド  事業領域3 事業変動リスクコントロール領域 “事業の変動性や競争環境を踏まえ、リスクの低減と収益性を最優先” モバイル・コミュニケーション、テレビ  EVA時代と異なるのは、事業を大きく3つの領域に切り分け、P/L(売上、利益)とB/S(投下資本)に関する方向性について、対外的に明示したことであろう。時間軸は記載されていないものの、デバイス、ゲーム、映画、音楽が含まれる成長牽引領域は、投下資本を積極的に増加するとしており、短期的にはROICは悪化することもいとわない方針とも読み取れる。 イメージング(主にカメラ)やビデオが含まれる安定収益領域は、売上は横ばい、利益は微増、投下資本は微減と、正に「安定」であることを求めており、過度な成長や投資は、もはや期待していない。 そして最大の特徴は、事業変動リスクコントロール領域と呼ばれる3つめの領域に、従来のソニーの中心事業でもあったモバイルとテレビが含まれていることである。売上と投下資本は減少させ、利益は黒字化・改善を目指すとされている。 これら市場にはアップルやサムスン電子など、世界で強力なライバルが出現し、2015年時点ではソニーはどちらも赤字が継続する事業であった。もはや規模やシェアの競争では勝ちえない。選択と集中やコストの徹底的な削減、アセットライトの推進によって、確実にROICを生み出す事業にしていきたいという意思表明である。 ソニーのモバイルやテレビに携わる社員からすれば、もはや投資はできるだけ抑制して利益を出しなさいという、ショッキングな経営方針かもしれない。しかし長年にわたって赤字を計上してきた事業であり、ソニー全社のROEへの強いコミットメントに基づいて各事業に対して求められたROIC経営である。 EVA時代はすべてまとめてEVA、かつ足元からの単年度ベースで厳しく管理、といった印象であったが、ROIC経営では、各事業においてどのようにROICを作り出していくのかが経営方針として明示された。社員は自分たちの各事業において何を実行し、どういった数値を作り出すことが求められ、そして実現した際に評価されるのか。道筋は明らかになったものと推察する。 EVAで失われた15年を作り出したソニーが、実質的には同じ経営指標であるROICで復活を果たした。経営指標そのものが良い者、悪い者では決してない。すべてはその運用の仕方だということを明示する好例であろう。 ROIC経営の浸透によって、EVAは影を潜めた印象にあるが、本質的にはROIC経営が目指すところとまったく同一である。資本コストはパーセントで示されるので、同じパーセントであるROICのほうが比較上もわかりやすいというメリットはあるだろう。また、ROICは必ずしも資本コストという言葉を使わなくても、「目標10%」のように具体的な数値で目標を設定してしまっても構わない。 これに対してEVAは計算式の中にWACC(加重平均資本コスト)が存在するため、WACCの設定に苦慮し、計算されたEVAも実額なのでこれを時系列での成長率や、将来予測EVAの現在価値で考えるなど、もう一段の手間を要する。一般の社員からすれば、EVAよりROICのほうが理解しやすい、という面は否めない。 しかし、出井氏の文章で試みたように、EVAをROICと置き換えても意味はすべて通じる。両者の目指す姿、すなわち資本コストに基づいて事業を評価し、企業価値の向上を実現するための経営指標という点において、両者は寸分たがわないのだ。 姿を消したと思われた日本のEVA経営は、ROIC経営という形で、現在進行系で隆盛を極めているのである』、「EVAで失われた15年を作り出したソニーが、実質的には同じ経営指標であるROICで復活を果たした。経営指標そのものが良い者、悪い者では決してない。すべてはその運用の仕方だということを明示する好例であろう。 ROIC経営の浸透によって、EVAは影を潜めた印象にあるが、本質的にはROIC経営が目指すところとまったく同一である」、「姿を消したと思われた日本のEVA経営は、ROIC経営という形で、現在進行系で隆盛を極めているのである」、なるほど。

次に、本年2月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「ソニー復活の集大成となるか?十時新社長の「本当の実力」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317118
・『十時新社長に期待する「戦略家」としての手腕  ソニーグループは同社の十時裕樹副社長兼CFOを、4月1日付で社長に昇格させる人事を発表した。この人事は2000年代以降のソニーの経営不振とその後のリカバリーという、一連のイベントの集大成といえるかもしれない。 イノベーションとは、新たな組み合わせやアイデアで新製品や新事業を起こすことであるが、イノベーションの定義には「経済的な収益が得られるもの」ということがある。それが単なる発明(インベンション)とイノベーションとの違いだ。 20世紀はエレクトロニクスの技術の変化が大きく、新たな発明が新たな機能や性能を生み出し、インベンションを起こすだけでも企業に収益がもたらされてきた。そのため、日本企業の多くのイノベーション施策の焦点が技術開発だけに絞られてきた。しかし2000年代以降、技術がデジタル化すると機能・性能は一気に上昇し、機能・性能だけでは製品の差別化が難しくなった。 またデジタル化は、ソフトウエア、半導体中心の開発となり、莫大な固定費をカバーするために、よりオープンな環境で競合企業とも協業しながら、自社の収益の最大化を考えなければならない状況を生み出した。この状況をいち早く予見したのが、ソニー創業者の井深大氏である。 ソニーは1982年にCDを発売し、デジタル技術に率先して取り組んだイメージがあるが、井深氏はデジタルが嫌いであったという。嫌いというより、デジタルのリスクを理解していたというべきかもしれない。デジタルになると高品質なものが大量に複製される。そうした厳しい環境の中でどのようにビジネスをすべきか、覚悟をもってデジタルには取り組まなければならないというのが井深氏の考えであった。 つまり2000年代以降のエレクトロニクス産業は、素朴に技術開発を行うだけではなく、きちんとした戦略的な取り組みが重要になったのだが、技術一辺倒できた日本企業はそうした状況になかなか適合できなかったといえる。) その点でいえば、十時氏は一貫して戦略家であった。十時氏といえば、ソニー銀行を作ったことで知られるが、生命保険会社をグループに持つとはいえ、まったく知見のないところから新銀行を作り、他社と差別化し、ソニー銀行をソニーの金融グループの中核企業に育て上げた手腕は十時氏の戦略家としての実力と言える』、「十時氏は「吉田氏」と同様に財務部門出身である。個別の技術部門出身とは異なり広い視野で考える訓練を積んできたのが、実った可能性がある。
・『イノベーションを語る上で重要な価値創造と価値獲得のフェーズ  先にイノベーションには経済的収益が必要と述べたが、MITスローンマネジメントスクールでは、イノベーションを価値創造と価値獲得のフェーズに分けて説明している。価値創造とは、どのような製品や事業を新たに生み出すか、何を作るかの話である。一方価値獲得は、想像した価値からどのように収益化を生み出すかという議論である。 たとえば、最近のソニーの好調な事業のひとつにCMOSイメージセンサーがある。なにかと昨今話題の半導体産業で、日本がほぼ唯一グローバルにトップをとることができている半導体製品である。これも、単に優れた半導体製品を作れば自動的にトップになれるというものではない。 日本の多くの新規半導体企業が「いたずらに数を追わず製品力で差をつける」としながら競争に敗れたのも、まさに数を追わないその姿勢に問題があった。ソニーは近年のリカバリーの中で、多くの事業を整理し、ただ単に数を追うだけのビジネスからは撤退している。しかし半導体については、いまだにしっかりとした設備投資を続け、数を追っている。これは、半導体が装置産業であり「1位企業総どり」の事業であるからだ。 そうした中で、しっかりと設備投資を続けていること、またそうした事業の展開について適切なタイミングで的確な情報をステークホルダーに提供していることも、最近のソニーの特徴であり、それはCFOとしての十時氏の力量によるところが大きい。歴史的に直接金融の比率が高いソニーにおいて、こうした的確な情報開示によって、ステークホルダーからの信認を得ることは非常に重要だ』、「歴史的に直接金融の比率が高いソニーにおいて、こうした的確な情報開示によって、ステークホルダーからの信認を得ることは非常に重要だ」、その通りだ。
・『堅実で地味に見える十時氏だからこそ求められる理由  ただ、派手なプレゼンテーションと「感動」というキーワードで新たなソニーの方向性を打ち出した平井一夫前会長や、昨今のCESにおけるEVのプレゼンなどで注目を集めた吉田憲一郎会長に比べると、十時氏は堅実で地味に見えるかもしれない。しかし、それこそが今のソニーのマネジメントに求められるものであろう。 一言で戦略といっても環境に応じてやらなければならないことや、そこで必要な組織や人材は異なる。ハーバード大学の故ウィリアム・J・アバナシー教授は、不確実性の高低によってイノベーションの性質が異なることを発見した。簡単に言えば、不確実性が高い局面では効率よりも効果を重視して、新たな価値創造が求められるのに対し、不確実性が低い局面では、効率性を重視して確実な価値獲得が必要だということだ。 この議論に組織論における「探索と活用」という議論を組み合わせて、異なるイノベーションの局面ごとに必要な組織形態があることを示したのが、マイケル・L・タッシュマン氏とチャールズ・A・オライリー氏の示した「両利きの組織」の議論である。 2000年代以降、ソニーがタービュラントな環境に巻き込まれ、新たな方向性を打ち出すためには平井氏のような探索型、効果重視のマネジメントが重要であったといえる。吉田氏が打ち出した人に近づく、あるいは動くものを作るという方向性で、aiboやドローン、EVに進出したのも探索型の戦略である。 しかし、これらは価値創造、価値獲得のフレームワークでいえば、価値創造の話である。ソニーは歴史的に価値創造が得意な会社だ。テープレコーダー、トランジスタラジオ、トリニトロンカラーテレビなど、20世紀は技術に裏付けられた価値創造だけで持続的に収益を得ることができていた。しかし、先に述べたように今日の経営環境では、それだけではメーカーの経営は成り立たない。 今求められるのは、平井氏以降に打ち出された新たな事業や製品を着実に成長させ、しっかりと価値獲得に結び付けることだ。言い方は悪いが、ソニーにはこれまで「作りっぱなし」にしてきた失敗の過去がある。出井伸之会長時代の多くの新事業もその多くは先見性があり、しっかりと育てていれば今日のソニーの中核ビジネスに育っていたはずのものも多くあった。しかし、価値創造中心のソニーの経営の中では、しっかりと育て、収益を獲得するプロセスが不十分であった』、「今求められるのは、平井氏以降に打ち出された新たな事業や製品を着実に成長させ、しっかりと価値獲得に結び付けることだ。言い方は悪いが、ソニーにはこれまで「作りっぱなし」にしてきた失敗の過去がある」、「価値創造中心のソニーの経営の中では、しっかりと育て、収益を獲得するプロセスが不十分であった」、なるほど。
・『ソニーの弱点だった「価値獲得」を実現できるか  十時氏は、ソニー銀行を育てた後、ISPのSo-netでコーポレートベンチャーキャピタルを担当、その後、不振の携帯電話事業の立て直しを指揮するなど、事業を育てることに長けた人材だ。ソニーの中では珍しく、価値獲得のプロセスを堅実に担える人材であるともいえる。 現在のソニーを立て直した経営者が、平井氏、吉田氏、十時氏の三銃士であることに、多くの人は異論がないと思われるが、3人の共通点は、ソニーの周縁の事業で社長として経営を行ってきたことである。単に技術を知っている、特定の事業で成果を上げたというだけでなく、企業の経営者として組織を運営してきた、戦略の力を持った人材がトップに就いたというのが、ソニーのリカバリーの大きな要因と言えよう。 今後のソニーに対する期待は、着実に事業を成長させることができる十時氏によって、EVなどの新事業を成長させ、しっかりと価値獲得に結び付けることであり、このプロセスこそが今までのソニーの弱点であり、今後期待すべきところといえる。その意味で、十時氏の社長就任はソニーのリカバリーの集大成といえる。 一方で課題はある。現在は、ドローンやEVなどの新事業を効率よく成長させるという、両利きの探索と活用でいえば活用が重要な局面であり、十時氏の本領が発揮されるタイミングである。しかし、どの事業も成長の後には成熟化が待っている。効率と活用がメインの時であっても、次の探索のフェーズに備えて、新たな種まきは必要となる。そうした探索型の次世代のリーダーを育て、経営チームに加えていくことが、十時体制のもう一つの役割といえよう』、「平井」氏は国際基督教大学出身で英語が流暢、ストリンガー氏により引き上げられた人物。「今後のソニーに対する期待は、着実に事業を成長させることができる十時氏によって、EVなどの新事業を成長させ、しっかりと価値獲得に結び付けることであり、このプロセスこそが今までのソニーの弱点であり、今後期待すべきところといえる。その意味で、十時氏の社長就任はソニーのリカバリーの集大成といえる。 一方で課題はある。現在は、ドローンやEVなどの新事業を効率よく成長させるという、両利きの探索と活用でいえば活用が重要な局面であり、十時氏の本領が発揮されるタイミングである。しかし、どの事業も成長の後には成熟化が待っている・・・次の探索のフェーズに備えて、新たな種まきは必要となる。そうした探索型の次世代のリーダーを育て、経営チームに加えていくことが、十時体制のもう一つの役割といえよう」、同感である。
タグ:ソニーの経営 (その10)(EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは ROIC導入でどのように復活したか、ソニー復活の集大成となるか?十時新社長の「本当の実力」) ダイヤモンド・オンライン 大津広一氏による「EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは、ROIC導入でどのように復活したか」 経営指標大全 導入した「出井伸之氏」による「思い」とは、興味深そうだ。 「会計数値に基づいて計算する経営指標である以上、単年度ベースでの算出が基本となる。それが金科玉条だと言われれば、短期的な費用や投資の抑制によって、目標は達成できてしまうだろう。ROE、ROA、ROIC、営業利益、フリー・キャッシュフロー……、すべて同一である。 市場や技術、顧客といった環境変化によって大きな先行投資が必要とされる企業や部門にあっては、経営指標のターゲットの時期や水準の設定において、熟考しなくてはならないことの示唆を与える。 イメージセンサーに代表されるソニーの世界的にシェアの高い半導体事業を捕まえて、ソニーの資産が膨らんでいるのは問題だ、などと批判する人があれば、事業内容をまったく理解していない「頓珍漢な批判」と一蹴されることだろう。 5年後のターゲットとしての設定や、3年間累計としての設定など、手法はいくらでもある。経営指標が社員の行動特性を導くのだから、社員に期待する行動特性を見据えたターゲットの設定が不可欠である」、その通りだ。 「EVAで失われた15年を作り出したソニーが、実質的には同じ経営指標であるROICで復活を果たした。経営指標そのものが良い者、悪い者では決してない。すべてはその運用の仕方だということを明示する好例であろう。 ROIC経営の浸透によって、EVAは影を潜めた印象にあるが、本質的にはROIC経営が目指すところとまったく同一である」、「姿を消したと思われた日本のEVA経営は、ROIC経営という形で、現在進行系で隆盛を極めているのである」、なるほど。 長内 厚氏による「ソニー復活の集大成となるか?十時新社長の「本当の実力」」 「十時氏は「吉田氏」と同様に財務部門出身である。個別の技術部門出身とは異なり広い視野で考える訓練を積んできたのが、実った可能性がある。 「歴史的に直接金融の比率が高いソニーにおいて、こうした的確な情報開示によって、ステークホルダーからの信認を得ることは非常に重要だ」、その通りだ。 「今求められるのは、平井氏以降に打ち出された新たな事業や製品を着実に成長させ、しっかりと価値獲得に結び付けることだ。言い方は悪いが、ソニーにはこれまで「作りっぱなし」にしてきた失敗の過去がある」、「価値創造中心のソニーの経営の中では、しっかりと育て、収益を獲得するプロセスが不十分であった」、なるほど。 「平井」氏は国際基督教大学出身で英語が流暢、ストリンガー氏により引き上げられた人物。「今後のソニーに対する期待は、着実に事業を成長させることができる十時氏によって、EVなどの新事業を成長させ、しっかりと価値獲得に結び付けることであり、このプロセスこそが今までのソニーの弱点であり、今後期待すべきところといえる。その意味で、十時氏の社長就任はソニーのリカバリーの集大成といえる。 一方で課題はある。現在は、ドローンやEVなどの新事業を効率よく成長させるという、両利きの探索と活用でいえば活用が重要な局面であり、十時氏の本領が発揮されるタイミングである。しかし、どの事業も成長の後には成熟化が待っている・・・次の探索のフェーズに備えて、新たな種まきは必要となる。そうした探索型の次世代のリーダーを育て、経営チームに加えていくことが、十時体制のもう一つの役割といえよう」、同感である。
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