ゴーン問題(その4)(終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉、ゴーン被告を「仏検察が国際手配」 フランスで出廷が避けられない理由、日産元COOの志賀氏に直撃 「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方) [企業経営]
ゴーン問題については、2021年11月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉、ゴーン被告を「仏検察が国際手配」 フランスで出廷が避けられない理由、日産元COOの志賀氏に直撃 「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方)である。
先ずは、2021年11月14日付け東洋経済オンライン「終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/577356
・『一審判決に対し、日産の元役員であるグレッグ・ケリー氏の弁護団は即日控訴の意向を示した。 3月3日午前10時、東京地方裁判所104号法廷。そこには判決の言い渡しを受ける日産自動車元役員であるグレッグ・ケリー被告が座っていた。 金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)に対する判決は、懲役6カ月、執行猶予3年だった。 下津健司裁判長は「平成30年12月10日付け起訴状記載の公訴事実第1及び第2の1ないし4並びに平成31年1月11日付け追記訴状記載の公訴事実第1及び第2の各事実について、被告人グレゴリー・ルイス・ケリーは無罪」と述べ、少し間を置いてこう付け加えた。 「つまり2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪ということです」』、「2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪」、どういうことなのだろう。
・『日産が判決に対してコメント 裁判の争点は、有価証券報告書にカルロス・ゴーン元CEOの役員報酬を実際よりもかなり少なく、しかも故意に記載して関東財務局に提出したのかどうかだった。 罪が問われる対象期間は日産が2011年度~2017年度、ケリー氏が2010年度~2017年度まで。1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と報酬額を開示することが内閣府令で義務付けられたのは2010年度から。日産の対象期間が1年少ないのは時効が成立しているためだ(海外生活が長いケリー氏には時効が成立していない)。 容疑を認めていた日産には、検察の求刑どおり罰金2億円の判決が下った。無罪を主張し続けたケリー氏に検察は懲役2年を求刑したが、判決は懲役6カ月。しかも執行猶予がついた。 ケリー氏は判決の言い渡し後、「裁判所が(中略)1年分について(2017年度)だけ有罪としたことは理解できません」とのコメントを発表。弁護団も「最後の1年について有罪とした点は、明らかに誤っているため承服できない。控訴する」とし、完全な無罪判決の獲得を狙う。 日産は判決の翌日である3月4日にリリースを出し、罰金2億円の判決は「正当なご判断」とし、控訴はしないとした。 一方、ケリー氏の名前を挙げ「客観的な裏付け証拠がないと判断された年度があることについては予想外でした」と言及した。つまり、日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ。 東京地検は控訴していない。森本宏次席検事は3月9日の定例会見で、「無罪部分を有罪にできるかや、1審判決を承服できるかなどを高検と協議し、意見が一致したら控訴する」と述べるにとどまる。控訴期限は3月17日だ』、「日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ」、なるほど。
・『未払報酬は「存在した」 裁判での最大論点はゴーン氏への「未払報酬」が存在したかどうかだった。 実は、金融商品取引法や開示府令には、「いかなる決定がなされれば役員報酬として開示しなければならないかについて、具体的な規定があるわけではない」(下津裁判長)。 そこで下津裁判長はほかの裁判官と協議し、①報酬を決定する正当な権限を有する者が、②所定の手続きに従って報酬額を決定し、③所定の部署で報酬額を継続的に管理していれば、当然開示すべきとした。 これを本件に当てはめると、日産ではゴーン氏に他の取締役から役員報酬の決定が事実上一任されていたといえる。つまり、①の「正当な権限を有する者」はゴーン氏だ。 ②の「所定の手続き」はどうか。 手続き上は、ゴーン氏はほかのもう一人の代表取締役と協議して自身の報酬を決めることになっていた。だが、「本件当時のゴーン以外の代表取締役であった小枝(至元共同代表)、志賀(俊之元COO・副会長)、西川(廣人元社長兼CEO)は、協議を行わないことについて特段の異議を差し挟まず、ゴーン単独で決定することを容認していた」(判決)。 だから、「具体的な協議を行わなくても、協議を行ったとする慣行が確立していた」とした。このことから、②の所定の手続きも満たしていると裁判所は判断した。 ③の「継続的な管理」については、秘書室で、「報酬総額」、「実際に支払われた報酬額」「それらを差し引いた未払報酬額」を1円単位で管理。毎年、3月から4月にかけてゴーン氏へ報酬計算書を提示していた。 以上から①~③の条件を満たしていると判断し、裁判所は「ゴーンの開示すべき未払報酬が存在することが認められる」と結論づけ、主犯はゴーン氏だとした。 未払報酬は存在し、その主犯がゴーン氏だとなると、次の焦点は共犯者だ。 判決は、2010年度~2016年度まではゴーン氏と大沼敏明秘書室長との共謀が成立していたが、ケリー氏との共謀はなかったと認定した。未払い報酬を記した文書の作成をケリー氏に指示されたとする大沼氏の供述は客観的に裏付けられず、検察と日本版司法取引をした大沼氏の証言を「信用できない」と退けた。 ゴーン氏は「報酬総額」などの情報管理を大沼氏のみに指示。これらの情報はトップシークレット扱いで、ほかの取締役に知らされていなかった。報酬総額は、秘書室のスタッフ数名が知るのみでそれも断片的だった。経理部には有価証券報告書の提出直前に、それらの情報のうち「実際に支払われた報酬額」だけが一方的に伝えられただけだった。 ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している。2審ではこの点が最大の争点になりそうだ』、「ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している」、「2審ではこの点が最大の争点になりそうだ」、真相はどちらなのだろう。
・『最大焦点はゴーン裁判 執行猶予がついたことから自由の身となり、ケリー氏は早々に日本を発ちアメリカへ行った。2審では被告に出廷義務がなく、ケリー氏を法廷で見ることはないだろう。 日産とケリー氏の1審が終わったが、はたして、海外逃亡したゴーン被告の裁判はどうなるのか。 東京地検の森本次席検事は3月9日の定例会見で「公判を一番受けるべきはゴーン被告。引き続きゴーン被告に日本で裁判を受けさせたい気持ちに変わりはない」と語気を強めた。そして、ほかの国で裁判を受ける可能性については、「国籍のある国で裁判を受けるのは可能。ゴーン被告は『レバノンで受けたい』と言っているそうだが、ちゃんとした裁判が開かれるはずがない」と、いつになく饒舌だった。 これまで、日本での裁判を「あきらめていない」と繰り返してきた検察だが、逃亡したゴーンを日本に連れ戻すどんな奥の手を持っているのだろうか。 2018年11月の逮捕から3年余り。ゴーン事件は何も片づいていない』、「ゴーン事件は何も片づいていない」、このまま時間だけが無駄に経過していくのだろう。
次に、昨年4月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「ゴーン被告を「仏検察が国際手配」、フランスで出廷が避けられない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302353
・『日本からレバノンに逃亡した元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(68)=金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)、会社法違反(特別背任)の罪で起訴=に対し、フランスの検察当局は21日、自動車大手ルノーの資金を不正に流用した疑惑を巡り国際逮捕状を発布した。ゴーン被告は日本の司法制度を「不公正」と批判する一方、フランスの司法制度は「信頼できる」と捜査を歓迎。訴追されても「自らの無罪を立証できる」と強弁していた。 ※ゴーン元会長は日本の司法的な立場は「被告」、フランス検察当局から見ると「容疑者」になりますが、本稿では被告と統一します※』、「フランスの検察当局」が「国際逮捕状を発布」、したことで事態は動き出すのだろうか。
・『「フランスに行くか」の質問に明言を避けたゴーン被告 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版によると、国際逮捕状が発布されたのはゴーン被告とオマーンの自動車販売代理店スハイル・バハワン自動車(SBA)の現オーナーと元取締役ら計5人。 AFP通信によると、ルノーと日産の企業連合統括会社とSBAで交わされた計約1500万ユーロ(約21億円)の金銭授受を巡り、不正な流用や贈収賄、マネーロンダリングの疑いが持たれているという。) 容疑はヨットの購入やベルサイユ宮殿での結婚披露宴など、個人的な目的でルノーの資金を流用したとされる。ゴーン被告は容疑を否定しているようだと伝えている。 ゴーン被告は22日、フランスのニュース専門テレビBFMのインタビューに応じ「ルノーの資金を不法に得たり、流用したりしたことはない」と主張。その上で「判決が出たわけではなく、無罪を主張する準備ができている」と述べたが、フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた。 全国紙社会部デスクによると、フランス検察当局は2020年2月、検察よりも権限が強い予審判事に指揮を委ね、本格捜査に着手。予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取していた』、「予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取」、「ベイルート」は「フランス」の影響力が強いようだ。「ゴーン被告は」「フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた」、なるほど。
・『東京地裁の判決では「ゴーン被告が主犯」と認定 ゴーン被告の日本での起訴内容は、日産の元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)と共謀し、10~17年度の役員報酬総額が計約170億円だったのに、支払い済みの計約79億円だけを記載した有報を関東財務局に提出。退任後、相談役か顧問として受け取る未払いの報酬約91億円を除外したとされる(金融商品取引法違反)。 08年には私的な投資で生じた約18億5000万円の評価損を日産に付け替えたほか、09年にはこの投資に関する信用保証で協力してもらったサウジアラビア人実業家の会社に、日産子会社「中東日産」から計約12億8000万円余りを入金させたなどとしている(会社法違反)。 ゴーン被告の逃亡により“主役不在”で開かれた金融商品取引法違反事件を巡るケリー被告と法人としての日産の公判は60回を超え、東京地裁は3月3日、ケリー被告の起訴内容に「慎重に検討する必要」があるとして大半を無罪としながら、一部重要な点を重視し懲役6カ月、執行猶予3年(求刑懲役2年)、日産には求刑通り罰金2億円の判決を言い渡した。 判決によると、ゴーン被告の高額な報酬を開示せずに維持するため、支払い済みの報酬だけを有報に記載するよう元秘書室長に指示。未払い分を隠しながら報酬額の計算書なども作成させ、ゴーン被告は1円単位で把握していた。 その上で「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定されたわけだ。 ゴーン被告は共同通信のオンライン取材に応じ「日本の司法や協力した日産の体面を保つための判断だ」と批判。主犯とされたことには「不在の私に是が非でも罪を着せたいようだ。司法のごう慢さを示している」と主張した』、「判決で」「「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定」、なるほど。
・『ゴーン被告の裏切りでとばっちりを受けた人たち 前述のデスクによると、実は金融証券取引法違反事件では、検察側の完全勝利は厳しいかもしれないという予想はあったという。今回、ケリー被告が無罪となった部分は、司法取引した元秘書室長の証言に対する信用性を否定した結果だが、ほかにも過去に未払い報酬の不記載について違法かどうかの判例がなく、将来的に顧問や相談役として就任できないなど何らかの理由で報酬を受け取れなくなった場合はどうなるのか――など、予測不能な点があったという。 ただ、日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる。) ゴーン被告については、日産側から資料の提供を受けている会社法違反事件の方が有罪は堅いとみられていたが、公判が開かれる見通しはなく、もちろん判決が出る可能性もまずないだろう。 しかし、東京地裁判決が指摘した通り、ケリー被告には「直接的な利得」はなかったのだが、受けたとばっちりは軽くない。 日産は1月19日、ケリー被告が金融商品取引法違反事件に関与して損害を与えたとして、約14億円の賠償を求めて横浜地裁に提訴した。日産は金融庁から約24億円の課徴金納付を命じられ、既に納付した14億円について賠償を求めたのだ。 ケリー被告は二審で有罪になっても最高裁まで争うとみられるが、判決が確定すれば損害賠償が認められる可能性は高い。ケリー被告側は全面的に争うとみられ、第1回口頭弁論は5月12日に指定された。 ゴーン被告のとばっちりを受けたのはケリー被告だけではない。19年12月にレバノンへの逃亡を手助けしたとして、犯人隠避の罪に問われた米陸軍特殊部隊グリーンベレーの元隊員とその息子は昨年7月、実刑判決が確定し、塀の向こう側に落ちた。 事件を担当していた弘中惇一郎弁護士(ゴーン被告の逃亡後、辞任)も、裏切られた一人だ。数々の裁判で無罪判決を勝ち取るなど「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまったわけだ』、「日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる」、「弘中惇一郎弁護士」が「「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまった」、ついてなかったと諦めるしかなさそうだ。
・『フランスで出廷して戦うのかレバノンでさえずり続けるのか ゴーン被告の両親はレバノン人で、同国では「ビジネスの成功者」「経営のカリスマ」として英雄だった。しかし、現在では威光は地に落ち、政府に匿(かくま)われた「国際的なお尋ね者」に成り下がってしまった。 日本の司法への不信感を理由に国外逃亡を企てたわけだが、感情的な発言ばかりが目立ち、主張する無罪の合理的な理由を明らかにしていない。 ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという。 日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう』、「ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという」、「日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう」、その通りだ。
第三に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「「日産元COOの志賀氏に直撃、「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方」を紹介しよう」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321011
・『日産元COOが語るゴーンの変節 「規模を追うことが野望に」 志賀俊之氏といえば、かつて日産自動車のCOO(最高執行責任者)を2005年4月から13年11月まで務め、10~12年には日本自動車工業会会長として東日本大震災を受けた困難な時期の日本自動車産業を引っ張った人物だ。 現在、官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)の代表取締役会長・CEOとして日本のスタートアップ企業などの支援を手掛けている。日産COOや自工会会長を歴任した志賀氏と筆者は、筆者が現役のときから深い付き合いがある。今回、この100年に一度の大変革期に日本自動車産業が進むべき道というテーマで、インタビューを実施した。 だが、その前に志賀氏の古巣である日産と仏ルノーが今年2月初めに、両社が15%ずつを出資し合う対等の資本関係にすることで合意したという大きなニュースが飛び込んできたタイミングでもあるので、まずはインタビューの前編として、四半世紀にわたる日産・ルノー提携が「新連合」として再出発したことの背景や今後の行方について語ってもらった(Qは聞き手の質問)。 Q:今年(23年)に入り、トヨタ自動車の豊田章男社長の交代をはじめとして、スバル・マツダ・いすゞ自動車もトップ交代を発表するなど自動車業界の大変革期における新たな動きが活発化しています。中でも、自動車産業界として最大の出来事ともいうべきなのが、2月に入ってからの「日産・ルノーの対等出資合意」というニュースでした。ここは何としても志賀さんに聞かねば、ということで。 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) そう、確かにトヨタの豊田章男さんの社長交代発表から日本電産の関潤さん(日産出身)の台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)のEV責任者入りまで、ずいぶん多くのメディアからコメントを求められましたよ(笑)。日産とルノーの15%ずつ双方出資合意の件も、もちろんのことでした。ただ、多くが「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ』、「「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ」、どういうことなのだろう。
・『1999年3月に日産・ルノーが資本提携契約を結んだときに、私が交渉をやって締結に持ち込んだ役割をしただけに、不平等条約からの解放という“悲願達成”で喜んでいるだろうとのコメントを取りたかったのでしょうが、それは違う。 当時、倒産しかかっていた日産を、ルノーは助けてくれたのです。その後も、ルノーに搾取されてきたという見方もあるけど、それは大株主に還元してきただけのこと。「ルノーが日産をいじめてきた」みたいに見るのは、いかがなものかということなんです。 Q:確かに私も、石原俊さんが社長の頃から日産を長くウオッチしてきましたし、1990年代末に社長だった塙義一さんの苦悩もよく知っています。99年3月の塙さんとルイ・シュバイツァールノー会長(当時)の両トップの提携会見にも出席して取材しています。その後、資本提携で派遣されたカルロス・ゴーン元会長が業績をV字回復させたことで“日産の救世主”となりゴーン氏の長期政権が続いたわけですが、プロ経営者としての力量が誰しも認めた中で一転して“逮捕から逃亡”という結末となりました。いつからゴーン経営は“変節”したんですかね。 志賀氏 私は2005年にCOOに就任してから13年11月に日産の現役を降りたんですが、ゴーン“変節”は14年頃からなんですね。ルノーは4年ごとにCEOを交代するのですが、18年にゴーンはマクロン仏大統領から「(会長を)またやってくれ」と言われて、ルノー・日産を「世界最大のグループ」にする野心を明確に打ち出してきた。 それ以前からも、私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となったんですね。それから三菱自動車工業さんも傘下(16年10月)に収めたんです』、「私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となった」、なるほど。
・『筆者が現役記者として取材した中で、20世紀の日本自動車産業をリードしたのは、まさしくT(トヨタ)・N(日産)だった。さらに言えば、筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った。 時の塙義一日産社長は、自力再生の道は困難として外資との提携の道を探った。米フォードや独ダイムラーとも水面下で交渉したが、最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日、東京・経団連会館で資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというものだった(筆者はこの一連の動きをまとめた『トヨタの野望、日産の決断―日本車の存亡を賭けて―』を99年6月にダイヤモンド社から上梓)』、「筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った」、確かにかつては「日産」の方が「トヨタ」を上回っていた。「日産」が「最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日・・・資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというもの」、「ルノー」が「救世主」として登場したのを、思い出した。
・『ゴーン政権は日産のV字回復後も長く継続し、三菱自を傘下に収めて3社トップに君臨した。だが、ゴーンは18年11月に金融商品取引法違反で逮捕され被告の身となり、19年12月にはレバノンに逃亡した。 23年2月、ルノー・日産の資本関係はルノーが43%出資を15%に引き下げ双方15%ずつの対等となることで合意した。 Q:99年6月にルノーからゴーンCOO(当時)が派遣され、リストラ断行を含めた「日産リバイバルプラン(NRP)」が実行されました。ゴーン氏は「日産の救世主」と呼ばれ、05年にルノー社長CEOにも就任し日産社長CEOと兼ねたことで、志賀さんをCOOに抜てきしました。 以来、志賀さんはゴーンの右腕としてCOOを続けたわけですが、志賀さんが言うように、どうも志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。ゴーン長期政権が前半と後半で大きく変貌したことが、今回のルノー・日産の資本関係見直しにつながっているのでしょうね』、「志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。志賀氏 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントのすごさは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩(じくじ)たる思いもあります。すでに19年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むようなことは一切していないが、日産の将来、方向に期待するものは当然大きいですよね」、なるほど。
・『ルノーの事業再編の新戦略は「相当、的を射ている」 Q:2月6日にロンドンで日産とルノーの日産株出資引き下げの資本関係見直し合意の会見が行われました。99年に資本提携して以来続いてきた“親子”の関係が、双方15%ずつ出資の対等の関係となる。昨年来の交渉が長引いてきてようやく合意に達したわけですが、これはルノーの事業構造改革の一環であるルノーの電気自動車(EV)新会社に日産が最大15%出資し、グループの三菱自も参画を検討することが条件であり、会見は3社トップの合同によるものでした。志賀さんはこれをどう受け止めたのですか。 志賀氏 ルノーのルカ・デメオCEOの戦略を最初に聞いたときは、相当、的を射ているなと思ったんですよ。やはりトヨタとEV事業で先行する米テスラの時価総額を見ても大きな開きが出ている。私は現在、投資ファンドの世界に身を置いていますが、いまや伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました。 もう一つは、43年間の日産での経験から言うと、自動車産業は20年前に「国際化」から「グローバル化」へと進んで(生産や経営が)フラット化されたのですが、ルノーの新戦略は、世界中に工場を造って大量生産でばらまくようなグローバリゼーションのビジネスモデルは終焉を迎えたことを象徴しています。ゴーンは最後に“量”を求めたが、むしろ今は地域ごと、国ごとの戦略が求められています』、「伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました」、なるほど。
・『ルノー・日産というクローズな関係だけでなく、新たな提携関係が求められてきたということでしょう。「400万台クラブ」や「1000万台クラブ」なんてなくなり、ルノー・日産の資本関係の見直しも起こるべくして起こったといえます。 Q:ルノーもフランス、というより欧州における立ち位置や業績面の打開が求められて事業構造改革に踏み切ったということもあるのでしょう。これを受けて日産サイドはルノーEV新会社「アンペア」への出資を決める一方で、ルノーとの資本関係を15%ずつ出資する対等関係を認めさせました。今後、日産はどうなるのですかね。 志賀氏 先述したように私は19年に日産取締役を退任してから経営とコンタクトしていないし距離を置いているのですが、“感じ”としては、従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります。 もちろん、二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね。 Q:三菱自動車はどうなんですかね。私は三菱自も長らく取材してその変遷もしっかり見てきましたが、1970年に三菱重工業から独立して以降、三菱グループにおける“親の役”は同社でした。しかし、18年に三菱商事が三菱重工から株を買い取り保有比率を20%に引き上げてから、ここへ来て三菱商事が後見人の立場に代わってきた。いまは日産が三菱自を傘下に収めているけど、一時は三菱商事がルノー保有の日産株を半分買い取る構想も水面下であったと聞きます。それぞれの歴史の変化の中で、3社連合において三菱自はどうするのですかね』、「従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります」、「二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね」、なるほど。
・『志賀氏 三菱自動車さんは、この3社連合の新たな関係をうまく利用していけばいいと思いますよ。何と言っても東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない。私もかつて日産で東南アジアを経験(ジャカルタ事務所長などを経験)していますから。ここは、日産は弱いしルノーもほとんどやっていないけど、市場の成長性は高い。そうはいっても販売地域は東南アジアだけではないので、欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい。 三菱自動車の3社連合のポジションは、CASE投資が必要なところでいいとこ取りをすればいいと思いますよ。 Q:いずれにしても今回のルノー・日産・三菱自の3社連合は、新たな関係で再出発ということですが、いろいろな課題を抱えていますね。かつては「ルノー・日産統合論」から「日産・ホンダ合併案」、「三菱商事のルノー保有株半分買い取り案」などが水面下で揺れ動きましたが、今回実に23年ぶりに対等な形の日仏新連合になったということで、どうなるか注目されます。 志賀氏 自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています』、「東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない」、「欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい」、「自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています」、今後の「日産」の「変革」に期待したい。
先ずは、2021年11月14日付け東洋経済オンライン「終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/577356
・『一審判決に対し、日産の元役員であるグレッグ・ケリー氏の弁護団は即日控訴の意向を示した。 3月3日午前10時、東京地方裁判所104号法廷。そこには判決の言い渡しを受ける日産自動車元役員であるグレッグ・ケリー被告が座っていた。 金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出罪)に対する判決は、懲役6カ月、執行猶予3年だった。 下津健司裁判長は「平成30年12月10日付け起訴状記載の公訴事実第1及び第2の1ないし4並びに平成31年1月11日付け追記訴状記載の公訴事実第1及び第2の各事実について、被告人グレゴリー・ルイス・ケリーは無罪」と述べ、少し間を置いてこう付け加えた。 「つまり2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪ということです」』、「2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪」、どういうことなのだろう。
・『日産が判決に対してコメント 裁判の争点は、有価証券報告書にカルロス・ゴーン元CEOの役員報酬を実際よりもかなり少なく、しかも故意に記載して関東財務局に提出したのかどうかだった。 罪が問われる対象期間は日産が2011年度~2017年度、ケリー氏が2010年度~2017年度まで。1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と報酬額を開示することが内閣府令で義務付けられたのは2010年度から。日産の対象期間が1年少ないのは時効が成立しているためだ(海外生活が長いケリー氏には時効が成立していない)。 容疑を認めていた日産には、検察の求刑どおり罰金2億円の判決が下った。無罪を主張し続けたケリー氏に検察は懲役2年を求刑したが、判決は懲役6カ月。しかも執行猶予がついた。 ケリー氏は判決の言い渡し後、「裁判所が(中略)1年分について(2017年度)だけ有罪としたことは理解できません」とのコメントを発表。弁護団も「最後の1年について有罪とした点は、明らかに誤っているため承服できない。控訴する」とし、完全な無罪判決の獲得を狙う。 日産は判決の翌日である3月4日にリリースを出し、罰金2億円の判決は「正当なご判断」とし、控訴はしないとした。 一方、ケリー氏の名前を挙げ「客観的な裏付け証拠がないと判断された年度があることについては予想外でした」と言及した。つまり、日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ。 東京地検は控訴していない。森本宏次席検事は3月9日の定例会見で、「無罪部分を有罪にできるかや、1審判決を承服できるかなどを高検と協議し、意見が一致したら控訴する」と述べるにとどまる。控訴期限は3月17日だ』、「日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ」、なるほど。
・『未払報酬は「存在した」 裁判での最大論点はゴーン氏への「未払報酬」が存在したかどうかだった。 実は、金融商品取引法や開示府令には、「いかなる決定がなされれば役員報酬として開示しなければならないかについて、具体的な規定があるわけではない」(下津裁判長)。 そこで下津裁判長はほかの裁判官と協議し、①報酬を決定する正当な権限を有する者が、②所定の手続きに従って報酬額を決定し、③所定の部署で報酬額を継続的に管理していれば、当然開示すべきとした。 これを本件に当てはめると、日産ではゴーン氏に他の取締役から役員報酬の決定が事実上一任されていたといえる。つまり、①の「正当な権限を有する者」はゴーン氏だ。 ②の「所定の手続き」はどうか。 手続き上は、ゴーン氏はほかのもう一人の代表取締役と協議して自身の報酬を決めることになっていた。だが、「本件当時のゴーン以外の代表取締役であった小枝(至元共同代表)、志賀(俊之元COO・副会長)、西川(廣人元社長兼CEO)は、協議を行わないことについて特段の異議を差し挟まず、ゴーン単独で決定することを容認していた」(判決)。 だから、「具体的な協議を行わなくても、協議を行ったとする慣行が確立していた」とした。このことから、②の所定の手続きも満たしていると裁判所は判断した。 ③の「継続的な管理」については、秘書室で、「報酬総額」、「実際に支払われた報酬額」「それらを差し引いた未払報酬額」を1円単位で管理。毎年、3月から4月にかけてゴーン氏へ報酬計算書を提示していた。 以上から①~③の条件を満たしていると判断し、裁判所は「ゴーンの開示すべき未払報酬が存在することが認められる」と結論づけ、主犯はゴーン氏だとした。 未払報酬は存在し、その主犯がゴーン氏だとなると、次の焦点は共犯者だ。 判決は、2010年度~2016年度まではゴーン氏と大沼敏明秘書室長との共謀が成立していたが、ケリー氏との共謀はなかったと認定した。未払い報酬を記した文書の作成をケリー氏に指示されたとする大沼氏の供述は客観的に裏付けられず、検察と日本版司法取引をした大沼氏の証言を「信用できない」と退けた。 ゴーン氏は「報酬総額」などの情報管理を大沼氏のみに指示。これらの情報はトップシークレット扱いで、ほかの取締役に知らされていなかった。報酬総額は、秘書室のスタッフ数名が知るのみでそれも断片的だった。経理部には有価証券報告書の提出直前に、それらの情報のうち「実際に支払われた報酬額」だけが一方的に伝えられただけだった。 ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している。2審ではこの点が最大の争点になりそうだ』、「ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している」、「2審ではこの点が最大の争点になりそうだ」、真相はどちらなのだろう。
・『最大焦点はゴーン裁判 執行猶予がついたことから自由の身となり、ケリー氏は早々に日本を発ちアメリカへ行った。2審では被告に出廷義務がなく、ケリー氏を法廷で見ることはないだろう。 日産とケリー氏の1審が終わったが、はたして、海外逃亡したゴーン被告の裁判はどうなるのか。 東京地検の森本次席検事は3月9日の定例会見で「公判を一番受けるべきはゴーン被告。引き続きゴーン被告に日本で裁判を受けさせたい気持ちに変わりはない」と語気を強めた。そして、ほかの国で裁判を受ける可能性については、「国籍のある国で裁判を受けるのは可能。ゴーン被告は『レバノンで受けたい』と言っているそうだが、ちゃんとした裁判が開かれるはずがない」と、いつになく饒舌だった。 これまで、日本での裁判を「あきらめていない」と繰り返してきた検察だが、逃亡したゴーンを日本に連れ戻すどんな奥の手を持っているのだろうか。 2018年11月の逮捕から3年余り。ゴーン事件は何も片づいていない』、「ゴーン事件は何も片づいていない」、このまま時間だけが無駄に経過していくのだろう。
次に、昨年4月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「ゴーン被告を「仏検察が国際手配」、フランスで出廷が避けられない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302353
・『日本からレバノンに逃亡した元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(68)=金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)、会社法違反(特別背任)の罪で起訴=に対し、フランスの検察当局は21日、自動車大手ルノーの資金を不正に流用した疑惑を巡り国際逮捕状を発布した。ゴーン被告は日本の司法制度を「不公正」と批判する一方、フランスの司法制度は「信頼できる」と捜査を歓迎。訴追されても「自らの無罪を立証できる」と強弁していた。 ※ゴーン元会長は日本の司法的な立場は「被告」、フランス検察当局から見ると「容疑者」になりますが、本稿では被告と統一します※』、「フランスの検察当局」が「国際逮捕状を発布」、したことで事態は動き出すのだろうか。
・『「フランスに行くか」の質問に明言を避けたゴーン被告 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版によると、国際逮捕状が発布されたのはゴーン被告とオマーンの自動車販売代理店スハイル・バハワン自動車(SBA)の現オーナーと元取締役ら計5人。 AFP通信によると、ルノーと日産の企業連合統括会社とSBAで交わされた計約1500万ユーロ(約21億円)の金銭授受を巡り、不正な流用や贈収賄、マネーロンダリングの疑いが持たれているという。) 容疑はヨットの購入やベルサイユ宮殿での結婚披露宴など、個人的な目的でルノーの資金を流用したとされる。ゴーン被告は容疑を否定しているようだと伝えている。 ゴーン被告は22日、フランスのニュース専門テレビBFMのインタビューに応じ「ルノーの資金を不法に得たり、流用したりしたことはない」と主張。その上で「判決が出たわけではなく、無罪を主張する準備ができている」と述べたが、フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた。 全国紙社会部デスクによると、フランス検察当局は2020年2月、検察よりも権限が強い予審判事に指揮を委ね、本格捜査に着手。予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取していた』、「予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取」、「ベイルート」は「フランス」の影響力が強いようだ。「ゴーン被告は」「フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた」、なるほど。
・『東京地裁の判決では「ゴーン被告が主犯」と認定 ゴーン被告の日本での起訴内容は、日産の元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)と共謀し、10~17年度の役員報酬総額が計約170億円だったのに、支払い済みの計約79億円だけを記載した有報を関東財務局に提出。退任後、相談役か顧問として受け取る未払いの報酬約91億円を除外したとされる(金融商品取引法違反)。 08年には私的な投資で生じた約18億5000万円の評価損を日産に付け替えたほか、09年にはこの投資に関する信用保証で協力してもらったサウジアラビア人実業家の会社に、日産子会社「中東日産」から計約12億8000万円余りを入金させたなどとしている(会社法違反)。 ゴーン被告の逃亡により“主役不在”で開かれた金融商品取引法違反事件を巡るケリー被告と法人としての日産の公判は60回を超え、東京地裁は3月3日、ケリー被告の起訴内容に「慎重に検討する必要」があるとして大半を無罪としながら、一部重要な点を重視し懲役6カ月、執行猶予3年(求刑懲役2年)、日産には求刑通り罰金2億円の判決を言い渡した。 判決によると、ゴーン被告の高額な報酬を開示せずに維持するため、支払い済みの報酬だけを有報に記載するよう元秘書室長に指示。未払い分を隠しながら報酬額の計算書なども作成させ、ゴーン被告は1円単位で把握していた。 その上で「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定されたわけだ。 ゴーン被告は共同通信のオンライン取材に応じ「日本の司法や協力した日産の体面を保つための判断だ」と批判。主犯とされたことには「不在の私に是が非でも罪を着せたいようだ。司法のごう慢さを示している」と主張した』、「判決で」「「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定」、なるほど。
・『ゴーン被告の裏切りでとばっちりを受けた人たち 前述のデスクによると、実は金融証券取引法違反事件では、検察側の完全勝利は厳しいかもしれないという予想はあったという。今回、ケリー被告が無罪となった部分は、司法取引した元秘書室長の証言に対する信用性を否定した結果だが、ほかにも過去に未払い報酬の不記載について違法かどうかの判例がなく、将来的に顧問や相談役として就任できないなど何らかの理由で報酬を受け取れなくなった場合はどうなるのか――など、予測不能な点があったという。 ただ、日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる。) ゴーン被告については、日産側から資料の提供を受けている会社法違反事件の方が有罪は堅いとみられていたが、公判が開かれる見通しはなく、もちろん判決が出る可能性もまずないだろう。 しかし、東京地裁判決が指摘した通り、ケリー被告には「直接的な利得」はなかったのだが、受けたとばっちりは軽くない。 日産は1月19日、ケリー被告が金融商品取引法違反事件に関与して損害を与えたとして、約14億円の賠償を求めて横浜地裁に提訴した。日産は金融庁から約24億円の課徴金納付を命じられ、既に納付した14億円について賠償を求めたのだ。 ケリー被告は二審で有罪になっても最高裁まで争うとみられるが、判決が確定すれば損害賠償が認められる可能性は高い。ケリー被告側は全面的に争うとみられ、第1回口頭弁論は5月12日に指定された。 ゴーン被告のとばっちりを受けたのはケリー被告だけではない。19年12月にレバノンへの逃亡を手助けしたとして、犯人隠避の罪に問われた米陸軍特殊部隊グリーンベレーの元隊員とその息子は昨年7月、実刑判決が確定し、塀の向こう側に落ちた。 事件を担当していた弘中惇一郎弁護士(ゴーン被告の逃亡後、辞任)も、裏切られた一人だ。数々の裁判で無罪判決を勝ち取るなど「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまったわけだ』、「日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる」、「弘中惇一郎弁護士」が「「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまった」、ついてなかったと諦めるしかなさそうだ。
・『フランスで出廷して戦うのかレバノンでさえずり続けるのか ゴーン被告の両親はレバノン人で、同国では「ビジネスの成功者」「経営のカリスマ」として英雄だった。しかし、現在では威光は地に落ち、政府に匿(かくま)われた「国際的なお尋ね者」に成り下がってしまった。 日本の司法への不信感を理由に国外逃亡を企てたわけだが、感情的な発言ばかりが目立ち、主張する無罪の合理的な理由を明らかにしていない。 ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという。 日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう』、「ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという」、「日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう」、その通りだ。
第三に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「「日産元COOの志賀氏に直撃、「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方」を紹介しよう」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321011
・『日産元COOが語るゴーンの変節 「規模を追うことが野望に」 志賀俊之氏といえば、かつて日産自動車のCOO(最高執行責任者)を2005年4月から13年11月まで務め、10~12年には日本自動車工業会会長として東日本大震災を受けた困難な時期の日本自動車産業を引っ張った人物だ。 現在、官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)の代表取締役会長・CEOとして日本のスタートアップ企業などの支援を手掛けている。日産COOや自工会会長を歴任した志賀氏と筆者は、筆者が現役のときから深い付き合いがある。今回、この100年に一度の大変革期に日本自動車産業が進むべき道というテーマで、インタビューを実施した。 だが、その前に志賀氏の古巣である日産と仏ルノーが今年2月初めに、両社が15%ずつを出資し合う対等の資本関係にすることで合意したという大きなニュースが飛び込んできたタイミングでもあるので、まずはインタビューの前編として、四半世紀にわたる日産・ルノー提携が「新連合」として再出発したことの背景や今後の行方について語ってもらった(Qは聞き手の質問)。 Q:今年(23年)に入り、トヨタ自動車の豊田章男社長の交代をはじめとして、スバル・マツダ・いすゞ自動車もトップ交代を発表するなど自動車業界の大変革期における新たな動きが活発化しています。中でも、自動車産業界として最大の出来事ともいうべきなのが、2月に入ってからの「日産・ルノーの対等出資合意」というニュースでした。ここは何としても志賀さんに聞かねば、ということで。 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) そう、確かにトヨタの豊田章男さんの社長交代発表から日本電産の関潤さん(日産出身)の台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)のEV責任者入りまで、ずいぶん多くのメディアからコメントを求められましたよ(笑)。日産とルノーの15%ずつ双方出資合意の件も、もちろんのことでした。ただ、多くが「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ』、「「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ」、どういうことなのだろう。
・『1999年3月に日産・ルノーが資本提携契約を結んだときに、私が交渉をやって締結に持ち込んだ役割をしただけに、不平等条約からの解放という“悲願達成”で喜んでいるだろうとのコメントを取りたかったのでしょうが、それは違う。 当時、倒産しかかっていた日産を、ルノーは助けてくれたのです。その後も、ルノーに搾取されてきたという見方もあるけど、それは大株主に還元してきただけのこと。「ルノーが日産をいじめてきた」みたいに見るのは、いかがなものかということなんです。 Q:確かに私も、石原俊さんが社長の頃から日産を長くウオッチしてきましたし、1990年代末に社長だった塙義一さんの苦悩もよく知っています。99年3月の塙さんとルイ・シュバイツァールノー会長(当時)の両トップの提携会見にも出席して取材しています。その後、資本提携で派遣されたカルロス・ゴーン元会長が業績をV字回復させたことで“日産の救世主”となりゴーン氏の長期政権が続いたわけですが、プロ経営者としての力量が誰しも認めた中で一転して“逮捕から逃亡”という結末となりました。いつからゴーン経営は“変節”したんですかね。 志賀氏 私は2005年にCOOに就任してから13年11月に日産の現役を降りたんですが、ゴーン“変節”は14年頃からなんですね。ルノーは4年ごとにCEOを交代するのですが、18年にゴーンはマクロン仏大統領から「(会長を)またやってくれ」と言われて、ルノー・日産を「世界最大のグループ」にする野心を明確に打ち出してきた。 それ以前からも、私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となったんですね。それから三菱自動車工業さんも傘下(16年10月)に収めたんです』、「私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となった」、なるほど。
・『筆者が現役記者として取材した中で、20世紀の日本自動車産業をリードしたのは、まさしくT(トヨタ)・N(日産)だった。さらに言えば、筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った。 時の塙義一日産社長は、自力再生の道は困難として外資との提携の道を探った。米フォードや独ダイムラーとも水面下で交渉したが、最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日、東京・経団連会館で資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというものだった(筆者はこの一連の動きをまとめた『トヨタの野望、日産の決断―日本車の存亡を賭けて―』を99年6月にダイヤモンド社から上梓)』、「筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った」、確かにかつては「日産」の方が「トヨタ」を上回っていた。「日産」が「最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日・・・資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというもの」、「ルノー」が「救世主」として登場したのを、思い出した。
・『ゴーン政権は日産のV字回復後も長く継続し、三菱自を傘下に収めて3社トップに君臨した。だが、ゴーンは18年11月に金融商品取引法違反で逮捕され被告の身となり、19年12月にはレバノンに逃亡した。 23年2月、ルノー・日産の資本関係はルノーが43%出資を15%に引き下げ双方15%ずつの対等となることで合意した。 Q:99年6月にルノーからゴーンCOO(当時)が派遣され、リストラ断行を含めた「日産リバイバルプラン(NRP)」が実行されました。ゴーン氏は「日産の救世主」と呼ばれ、05年にルノー社長CEOにも就任し日産社長CEOと兼ねたことで、志賀さんをCOOに抜てきしました。 以来、志賀さんはゴーンの右腕としてCOOを続けたわけですが、志賀さんが言うように、どうも志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。ゴーン長期政権が前半と後半で大きく変貌したことが、今回のルノー・日産の資本関係見直しにつながっているのでしょうね』、「志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。志賀氏 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントのすごさは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩(じくじ)たる思いもあります。すでに19年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むようなことは一切していないが、日産の将来、方向に期待するものは当然大きいですよね」、なるほど。
・『ルノーの事業再編の新戦略は「相当、的を射ている」 Q:2月6日にロンドンで日産とルノーの日産株出資引き下げの資本関係見直し合意の会見が行われました。99年に資本提携して以来続いてきた“親子”の関係が、双方15%ずつ出資の対等の関係となる。昨年来の交渉が長引いてきてようやく合意に達したわけですが、これはルノーの事業構造改革の一環であるルノーの電気自動車(EV)新会社に日産が最大15%出資し、グループの三菱自も参画を検討することが条件であり、会見は3社トップの合同によるものでした。志賀さんはこれをどう受け止めたのですか。 志賀氏 ルノーのルカ・デメオCEOの戦略を最初に聞いたときは、相当、的を射ているなと思ったんですよ。やはりトヨタとEV事業で先行する米テスラの時価総額を見ても大きな開きが出ている。私は現在、投資ファンドの世界に身を置いていますが、いまや伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました。 もう一つは、43年間の日産での経験から言うと、自動車産業は20年前に「国際化」から「グローバル化」へと進んで(生産や経営が)フラット化されたのですが、ルノーの新戦略は、世界中に工場を造って大量生産でばらまくようなグローバリゼーションのビジネスモデルは終焉を迎えたことを象徴しています。ゴーンは最後に“量”を求めたが、むしろ今は地域ごと、国ごとの戦略が求められています』、「伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました」、なるほど。
・『ルノー・日産というクローズな関係だけでなく、新たな提携関係が求められてきたということでしょう。「400万台クラブ」や「1000万台クラブ」なんてなくなり、ルノー・日産の資本関係の見直しも起こるべくして起こったといえます。 Q:ルノーもフランス、というより欧州における立ち位置や業績面の打開が求められて事業構造改革に踏み切ったということもあるのでしょう。これを受けて日産サイドはルノーEV新会社「アンペア」への出資を決める一方で、ルノーとの資本関係を15%ずつ出資する対等関係を認めさせました。今後、日産はどうなるのですかね。 志賀氏 先述したように私は19年に日産取締役を退任してから経営とコンタクトしていないし距離を置いているのですが、“感じ”としては、従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります。 もちろん、二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね。 Q:三菱自動車はどうなんですかね。私は三菱自も長らく取材してその変遷もしっかり見てきましたが、1970年に三菱重工業から独立して以降、三菱グループにおける“親の役”は同社でした。しかし、18年に三菱商事が三菱重工から株を買い取り保有比率を20%に引き上げてから、ここへ来て三菱商事が後見人の立場に代わってきた。いまは日産が三菱自を傘下に収めているけど、一時は三菱商事がルノー保有の日産株を半分買い取る構想も水面下であったと聞きます。それぞれの歴史の変化の中で、3社連合において三菱自はどうするのですかね』、「従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります」、「二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね」、なるほど。
・『志賀氏 三菱自動車さんは、この3社連合の新たな関係をうまく利用していけばいいと思いますよ。何と言っても東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない。私もかつて日産で東南アジアを経験(ジャカルタ事務所長などを経験)していますから。ここは、日産は弱いしルノーもほとんどやっていないけど、市場の成長性は高い。そうはいっても販売地域は東南アジアだけではないので、欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい。 三菱自動車の3社連合のポジションは、CASE投資が必要なところでいいとこ取りをすればいいと思いますよ。 Q:いずれにしても今回のルノー・日産・三菱自の3社連合は、新たな関係で再出発ということですが、いろいろな課題を抱えていますね。かつては「ルノー・日産統合論」から「日産・ホンダ合併案」、「三菱商事のルノー保有株半分買い取り案」などが水面下で揺れ動きましたが、今回実に23年ぶりに対等な形の日仏新連合になったということで、どうなるか注目されます。 志賀氏 自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています』、「東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない」、「欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい」、「自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています」、今後の「日産」の「変革」に期待したい。
タグ:ゴーン問題 (その4)(終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉、ゴーン被告を「仏検察が国際手配」 フランスで出廷が避けられない理由、日産元COOの志賀氏に直撃 「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方) 東洋経済オンライン「終わらないゴーン事件:第9回 判決 日産が元役員の“ほぼシロ”判決に浴びせた言葉」 「2010年度~2016年度は無罪、2017年度は有罪」、どういうことなのだろう。 「日産としては2010年度~2016年度分についてケリー氏が無罪となった点に不満げなようだ」、なるほど。 「ケリー氏が「2017年度のみ有罪」とされたのは、有価証券報告書を提出する前日に「ミーティングで未払報酬の資料をケリー氏に見せた」という大沼氏の供述が、秘書室スタッフの証言など客観証拠から裏付けられると裁判所が認めたからだ。 しかし、ケリー氏は「見せられた記憶はない」「ミーティングは10分程度の簡単なものだった」と否定している」、「2審ではこの点が最大の争点になりそうだ」、真相はどちらなのだろう。 「ゴーン事件は何も片づいていない」、このまま時間だけが無駄に経過していくのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 戸田一法氏による「ゴーン被告を「仏検察が国際手配」、フランスで出廷が避けられない理由」 「フランスの検察当局」が「国際逮捕状を発布」、したことで事態は動き出すのだろうか。 「予審判事らは21年5~6月、ベイルートを訪れ、ゴーン被告を事情聴取」、「ベイルート」は「フランス」の影響力が強いようだ。「ゴーン被告は」「フランスに行くつもりがあるか問われ「レバノン当局に出国を禁じられている」と明言を避けた」、なるほど。 「判決で」「「犯行はゴーン被告の利益のためになされ、ケリー被告に直接的な利得はなかった。本件の主犯はゴーン被告だ」と認定。背景に「長期の独裁体制で醸成された日産の企業体質があった」と指摘した。 つまり、ケリー被告(被告・検察側の双方が控訴)と法人としての日産(確定)の判決で、ゴーン被告の有罪が認定」、なるほど。 「日産に対する判決が司法判断として確定したわけで、二審東京高裁がケリー被告に無罪を出してしまうと整合性が取れなくなる。元秘書室長の証言を追認して完全有罪か、一審を追認するのではないかとみられる」、「弘中惇一郎弁護士」が「「無罪請負人」の異名を取り、保釈を認めさせたのは弘中氏の手腕と関係者をうならせたが、とんだ恥をかかされてしまった」、ついてなかったと諦めるしかなさそうだ。 「ゴーン被告のパスポートはレバノン政府の管理下にあり、それが本人が主張する「出国を禁じられている」という発言の根拠とみられるが、前述のデスクによると、法治国家であれば「公判に出廷する権利を行使し、身の潔白を主張して無罪を勝ち取るため出国したい」という意向を示してパスポートの返還を求めれば、拒否する理由はないはずだという」、「日仏両国の検察当局からかけられた疑惑が、いずれも事実なら「守銭奴」のそしりを免れない。 自ら「信頼できる」と語ったフランス当局に「無罪」を追認させるために、法廷で正々堂々と戦うのか。それとも安全な場所から、さえずり続けるだけなのか。 後者なら、自らの罪と向き合わず、ただ刑務所行きを恐れる臆病者・卑怯者でしかない。今後は国内外のメディアは耳を貸さず、冷笑するだけだろう」、その通りだ。 佃 義夫氏による「「日産元COOの志賀氏に直撃、「ゴーン変節」の時期とルノー・日産連合の行方」 「「日産はルノーと不平等条約を結んでここまで来たが(どう思うか)」という質問でしたが、そうではないんですよ」、どういうことなのだろう。 「私が日産COOを降りる前の最後のアライアンスコンベンションでゴーンが「巨人を目指す」というスピーチをしたんです。その頃からゴーンはおかしくなった。規模を追うことがゴーンの野望となった」、なるほど。 「筆頭代表格はトヨタよりむしろ日産であったが、いわゆる「旧日産」は、長く抱えていた内部の労使対立問題などにより、次第にトヨタにリーダーの座を追い上げられ、追い抜かれて、90年代後半には業績不振で膨大な有利子負債を抱えるに至った」、確かにかつては「日産」の方が「トヨタ」を上回っていた。 「日産」が「最終的な資本提携先に選んだのが仏ルノーだった。その交渉実務を担当していたのが志賀氏で、両社は99年3月27日・・・資本提携記者会見を開いた。その提携内容は、ルノーが6430億円を出資して日産を傘下に収めルノーからCOO、カルロス・ゴーンを派遣するというもの」、「ルノー」が「救世主」として登場したのを、思い出した。 「志賀さんがCOOを降りた頃からゴーン政権はおかしくなっていったと私も感じます。志賀氏 実際、経営者としてのゴーンのマネジメントのすごさは目の当たりにしてきたのですが、私自身、反省するところは反省していますし、忸怩(じくじ)たる思いもあります。すでに19年1月に日産の取締役も退任してからは内情に口を挟むようなことは一切していないが、日産の将来、方向に期待するものは当然大きいですよね」、なるほど。 「伝統的な自動車メーカー(OEM)に対して投資家は新たに金を入れようとはしません。将来成長に目を向けないと、投資家から金が回ってこない。 EVやソフトウエアに投資家は関心を持っているのです。ルノーが事業を5つに再編しEV事業などを分社化する事業構造改革は、将来に向けてのフォーメーションとして好感を持って受け止めました」、なるほど。 「従来の資本関係で日産は結構窮屈だったことも事実です。 例えば「e-POWER」(エンジンで発電しモーターで駆動する日産独自のパワートレイン)なんかは早く日本市場に出したかったのだけど、アライアンスではルノーのハイブリッドが承認されていて日産(の技術)がなかなか使えない状況もあったのです。いわば、日産の技術力が縛られていたものもある。そうした、縛られてギクシャクしてやりづらかったものが解放されるとなれば、自由度が増していいものを出していけることになります」、 「二十数年間やってきたアライアンスの経験の中ではいいものもいっぱいあるし、この変革の時代だからこそスピードを上げて、日産の技術力を生かし共にやってほしいとの期待感を持っていますね」、なるほど。 「東南アジアは、三菱自の“牙城”です。これは間違いない」、「欧州はルノーを、米国は日産を活用すればいい」、「自動車産業の大変革の中で、この日仏アライアンスが新たなスタートに立ったということですし、敵は新興メーカーやソニー・ホンダのような新しいフォーメーション、“アップルカー”などになる。日産もその意味ではこれからですよ。株価の低迷などまだまだ課題は山積してますし、次のレベルの変革に期待しています」、今後の「日産」の「変革」に期待したい。
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