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医薬品(製薬業)(その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌) [産業動向]

医薬品(製薬業)については、2021年10月5日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌)である。

先ずは、昨年2月22日付けダイヤモンド・オンライン「モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む」を紹介しよう。
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします』、興味深そうだ。
・『コロナ禍前までは製品販売の売り上げがゼロだったモデルナ  オミクロン株のまん延によって、新型コロナウイルスと人類の闘いの出口が見えづらくなってきた。今後どんな変異株が登場するか、予測がつかないからだ。ワクチンと特効薬の開発、そして日常生活での感染対策を続けるとともに、一人一人が当事者意識を持って、ウィズコロナへのシフトを考えていかなければならない。 ワクチンに関しては、ファイザーに続きモデルナも、オミクロン株に対応したワクチンの臨床試験を開始したと報じられている。日本における新型コロナウイルスワクチン接種は今のところ、この2社製に限られており、有効性の高いワクチンの開発に期待したいところだ。 さて、もはやほとんどの日本人にその名が知れ渡ったモデルナだが、どのような企業なのか、ご存じだろうか? 海外では有名な、製薬大手と思っている人もいるかもしれない。だが実はモデルナは、2010年に米国で設立されたばかりのバイオベンチャーなのだ。 わずか創業10年余りのベンチャー企業が、170年以上の歴史を誇る巨大製薬会社であるファイザーと、コロナワクチンでは肩を並べているのは驚くべきことだ。しかもモデルナは、2019年度まで市販製品が一つもなく、製品販売による売り上げはゼロだったという。) 本書『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』は、モデルナをはじめ、アップル、アマゾン、アリババといった企業の戦略が世界の医療・健康(ヘルスケア)産業を激変させる可能性を探っている。 著者の田中道昭氏は立教大学ビジネススクール教授で、テレビ東京の「WBS(ワールドビジネスサテライト)」コメンテーターを務める。シカゴ大学経営大学院MBA、専門は企業戦略&マーケティング戦略。『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH』(日本経済新聞出版)など多数の著書がある。 モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、「モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、よくぞここまでスピードアップできたものだ。
・『「一石○鳥」を狙うmRNAプラットフォーム戦略  モデルナが驚異的な速さでワクチンを開発し、しかもその有効性が認められ世界中で使われるようになった理由について田中氏は、「プラットフォーム」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という二つのポイントを指摘している。 まず、モデルナの「mRNAプラットフォーム戦略」から説明しよう。 知っている人も多いだろうが、ファイザー製とモデルナ製のワクチンは「mRNAワクチン」である。mRNA(メッセンジャーRNA)は、体内の細胞でタンパク質を作り出すのに必要な「設計図」を伝える働きをする物質。各細胞にはヒトの全遺伝子情報が格納されたDNAがあり、mRNAはその一部をコピーして細胞の外に持ち出し、タンパク質の「工場」であるリボソームに伝える。リボソームでは、mRNAがもたらした情報をもとに、特定の機能を担うタンパク質を作り出す。 mRNAワクチンは、体外から人工のmRNAを注入し、特定のタンパク質を合成させる。新型コロナウイルスワクチンの場合は、コロナウイルス特有のスパイクと呼ばれる細胞を覆う突起部分となるタンパク質を作らせる。スパイクという異物が体内にできれば、それを排除する免疫機能が働き、抗体ができる。そうすれば次にコロナウイルスが体内に侵入しても、抗体がスパイクを目印に撃退するので、感染や重症化を防げるというわけだ。 mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう。すなわち、これまでは個々の疾患ごとに治療法を考え、それに応じた薬を開発していた。しかし、mRNAを共通のプラットフォームとして開発すれば、mRNAを使った同じ仕組みでさまざまな疾患に対処できるようになる。) モデルナは、創業当初から、こうしたmRNAの可能性に着目し、より効率的でスピーディーに開発できる「mRNAプラットフォーム」を構築してきた。その最初の成果が新型コロナウイルスワクチンだった。 mRNAプラットフォームは、言ってみれば「一石○鳥」を狙うものだ。mRNA(一石)を使うことで、複数の疾患(○鳥)に対応できるからだ。 アマゾン ジャパンで新規ビジネス立ち上げに携わったキャリアを持つ太田理加氏が著した『アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方』(宝島社)によると、アマゾンでは「イノベーションは誰にでも起こせる」という意識が全ての社員に浸透しているそうだ。 太田氏もそうした意識を持ち、イノベーションを「一石二鳥の問題解決」と分かりやすく解釈し、二つ以上の問題を同時に解決するにはどうしたらいいか、という視点で新規ビジネスを考えていったという。 太田氏も指摘しているが、アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ。 『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』で紹介されているアマゾンのヘルスケア事業の一つに「アマゾン・ヘルスレイク」がある。病院、薬局などのデータをAIによって整理・インデックス化・構造化するもので、AWSの機能の一つに位置付けられている。アマゾンも、AWSというプラットフォームを活用して多事業展開をしているのである』、「mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう」、「アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS・・・がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ」、「mRNA」に通じる考え方だ。
・『モデルナは創業当初から「デジタルを前提とした」製薬会社  田中氏が指摘するモデルナのもう一つの成功ポイントが、「DX」だ。モデルナの場合、前述のmRNAプラットフォームを機能させるのに、DXが前提となっているとのこと。より多くのデータの集積・解析や実験・臨床試験、それらによる、より効果のあるmRNAによる医薬品や治療法の開発のためにはデジタル技術が必須だからだ。実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ。田中氏は、プラットフォームとDXをセットで展開するモデルナを「製薬業界のアマゾン」とみなしている。 モデルナは、2021年5月に開催した「Moderna Fourth Annual Science Day」において、生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している。 このように、異分野のシステム同士の類似性を見つける「見立て」は、さまざまなイノベーションのヒントになるだろう。なかなか新しい発想が浮かばない時には、「一石○鳥」で問題を解決できる方法はないか、異分野の似たシステムに「見立て」ることはできないか、と考えてみてはいかがだろうか』、「実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、「生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している」。「モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、すごいビジネスモデルのようだ。

次に、本年5月25日付けダイヤモンド・オンラインが転載した医薬経済ONLINE「アステラス製薬が過去最高8000億円の買収、不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌」を紹介しよう。これは有料記事だが、今月はあと2本まで無料。
・『今年の大型連休は平日の5月1日と2日に有給休暇をとれば最大9連休となり、帰省や旅行に出かけた人も多いと思う。その大型連休の真っただ中にアステラス製薬が“サプライズ”を発表した。眼科領域の治療薬を開発する米アイベリック・バイオ(ニュージャー州)の買収で、5月1日の午前8時に発表。日本ではあまり知られていない企業の買収のうえ、連休中の早朝で寝ていた記者もいたようだが、買収額がアステラスとしては過去最高額の約59億ドル(約8000億円)というのを知り、一気に目が覚めるニュースだった。 アステラスの岡村直樹社長CEOは急遽、午前11時からオンライン記者会見を開くと、買収の戦略的意義を約1時間にわたり説明。アイベリックが米国で承認申請中の加齢黄斑変性の開発品を獲得するのが狙いで、主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題となっている。 4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された。 相次ぐトラブルから「運のない社長」と不名誉な呼称さえ囁かれる岡村氏だが、今度は大型買収というサプライズである。果たして、このサプライズは「吉」となるか』、「主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題」、「4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された」、確かに「運のない社長」だ。
・『9年前から狙っていた開発品  アステラスが買収するアイベリックは米国で07年に眼科領域に特化したバイオ医薬企業として設立。社員数は約260人とそれほど大きくない企業だ。パイプラインは、米国で承認申請中の加齢黄斑変性を対象とした補体因子C5阻害剤「アバシンカプタドペゴル」(ACP)を除けば、残りは前臨床段階であまりパッとしない。だが、その申請中のACPが「ブロックバスター」になる可能性を秘めており、しかも、米国食品医薬品局(FDA)から優先審査の指定を受けて8月19日には審査を終える予定。順調に承認されれば早期に収益を確保できそうだ。 老化で網膜の中心部である黄斑に障害が起こり、視力が低下する加齢黄斑変性には大きく分けて2つのタイプがある。ひとつが網膜の下にできた異常な血管から出血などを起こす「滲出型」と呼ばれるタイプ。現時点での加齢黄斑変性治療薬の主戦場で、バイエルの「アイリーア」やノバルティスの「ルセンティス」が鎬を削る。 もうひとつが網膜の下にある網膜色素上皮が痛んで弱っていく「萎縮型」で、このタイプは米アキュセラなどが開発に挑んできたが失敗。長きにわたり治療薬が望まれ、ようやく今年2月に米アペリス・ファーマシューティカルズの「サイフォブレ」が米国で初めて地図状萎縮症(GA)の適応で承認を取得した。1バイアルあたり2190ドル(約30万円)と安くはないが、GA治療の「ゲームチェンジャー」と目される。続いてアイベリックのACPが承認を得れば、2番手ながら標準治療に喰い込めるポテンシャルがある。米国のGA患者は160万人おり、この市場を狙ってノバルティスや米ビライト・バイオも開発を急ぐ。 アステラスはGAを対象に自社開発品の第I相試験を進行中。以前からアイリベックの開発品にも注目してきたそうで、岡村氏は14年頃から「実はウォッチしていた化合物。臨床試験のデータなどがだんだん明らかになり、当初は米国外のライセンス案件としてアイベリックと話してきた」と語る。それが今年3月に急展開。アイベリックから会社買収も視野に入れた提案があり、とんとん拍子で買収が決定した。 前々から注視していた開発品だけに失敗はないと願いたいが、買収にリスクはつきもの。20年に約3200億円で買収した米オーデンテス・セラピューティクスの遺伝子治療薬「AT132」には、500億~1000億円の製品ポテンシャルがあると期待をかけるが、臨床試験で死亡例が多発して開発が遅延。また、前臨床段階の複数の開発品では有効性が確認できず中止となり、4月に500億円の減損損失を計上した。 最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である。米ファイザーは今年3月に米シージェンを430億ドル(約5兆7000億円)で、米メルクは4月に米プロメテウス・バイオサイエンシズを108億ドル(約1兆4500億円)で買収すると発表した。アステラスが吹っかけられてオーデンテスの二の舞になれば運がなかったでは済まない』、「最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である」、今回の「アイベリックのACP」買収が「吹っかけられ」たものでないことを祈る。
・『日本市場は期待薄か  では、ACPはどれほどの「金のなる木」になりそうなのか。アステラスはイクスタンジの特許切れで失う売上高減少分を、尿路上皮がん治療剤「パドセブ」と更年期障害治療薬「フェゾリネタント」に、ACPを加えることで埋める戦略を立てる。パドセブはピーク時3000億~4000億円を見込む。また、フェゾリネタントに関してはピーク時5000億円と試算。岡村氏はACPについて、「フェゾリネタント、パドセブに次ぐ第3の柱と申し上げているところから、だいたいの規模をお察しいただければといいなと思う」と述べており、ピーク時1000億~2000億円は固そう。 ただ米国で8月に承認されても勝負はこれから。先行するサイフォブレとの競合は避けられない。サイフォブレは臨床試験で18~24カ月の間に病変の拡大を最大36%減少。一方、ACPは12カ月で最大27.4%抑制した。岡村氏は「現在の症例の臨床試験の結果から議論するには時期尚早」と話すが、勝つ自信はあるようだ。 当然、米国以外でも開発しグローバル製品として展開したいところで、欧州と日本での開発を精査中という。ぜひ日本でも開発してもらいたいところだが、市場としての魅力は米国に劣るかもしれない。というのも米国では萎縮型の患者が多いが、日本ではほとんどが滲出型とされる。稼ぎは欧米市場が中心になると見られる。 アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない。 岡村氏は、前任の安川健司氏が策定した経営計画を託されるかたちで社長となった。就任会見では「結果にこだわる会社でありたい」と表明しただけに、運のせいにはできない。強引にでも運を引き寄せることができるかも力量。今回のサプライズ買収で流れが変わればいいのだが』、「アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない」、「焦り」でないことを願うばかりだ。
(注)POC:「概念実証」という意味。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指します(IoT用語辞典)
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