防衛問題(その22)(防衛大告発論3題:石原俊教授は防衛大告発論考どう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて 他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、「コスプレ感覚のミリタリー好き」「リストカット」「適応障害で留年」…幹部自衛官を目指すには適性を欠く学生も多々いる集団生活の“地獄”、女子学生への公然セクハラ シャワー室の盗撮 頻発する窃盗事件…問題だらけの防衛大でそれでも私が4年間退校せずに全うすることができた理由【学生たちの証言】) [国内政治]
防衛問題については、本年7月18日に取上げた。今日は、(その22)(防衛大告発論3題:石原俊教授は防衛大告発論考どう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて 他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、「コスプレ感覚のミリタリー好き」「リストカット」「適応障害で留年」…幹部自衛官を目指すには適性を欠く学生も多々いる集団生活の“地獄”、女子学生への公然セクハラ シャワー室の盗撮 頻発する窃盗事件…問題だらけの防衛大でそれでも私が4年間退校せずに全うすることができた理由【学生たちの証言】)である。
先ずは、本年8月11日付け集英社オンライン「大学問題のスペシャリスト・石原俊教授は防衛大告発論考どう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて、他国の将校クラスよりも心もとないという評価」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/152530?page=1
・『2023年6月30日に防衛大学校の等松春夫教授が衝撃的な論考を発表した。防大、防衛省の構造に警鐘を鳴らすこの論考を有識者たちはどのように読んだのだろうか。『硫黄島』(中公新書)、『シリーズ 戦争と社会』(岩波書店)などの著書で知られ、「大学の自治」に詳しい明治学院大学の石原俊教授が綴る』、興味深そうだ。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子 #2 大木毅 #3 現役教官 4 石破茂 【元防大生の声】#1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」 【防大生たちの叫び】 #1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄” #2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件…』、ずいぶん内容が濃いようだ。
・『一般の大学等とは大きく異なる「防衛大学校」という存在 筆者は防衛大学校と深い交流を持つ者ではなく、自衛隊や外国の軍隊を専門的な研究対象とする者でもない。そのため、本稿で述べる内容は徹頭徹尾、一般論にとどまることを、あらかじめ承知いただきたい。 防衛大学校(以下、防大)は、国際的にみれば各国の士官学校に比肩する教育機関であり、学校教育法第1条が定める「1条校」ではない。 この点で防大は、一般の大学等とは大きく異なる。 等松春夫教授による告発文書「危機に瀕する防衛大学校の教育」は、高等教育機関として特殊な組織である防大が、教育体制・事務体制から、教官人事・指導官人事、ガバナンスにいたるまで、重大な問題を長年にわたって放置してきた結果、学生の教育環境が危機的状況に陥っていると指摘する。 特に、学生舎(寮)における共同生活や、上級生から下級生への「指導」の慣習が、公私混同の命令や悪質な威圧の温床となり、ハラスメント、いじめ、賭博、詐欺などが蔓延する要因になってきたと告発している。 これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう。 等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した【※】。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。 ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある』、「これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう・・・等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。 ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある」、なるほど。
・『「その任には堪えられない人々」が登用される現状 他方で、一般にはあまり知られていない点だが、防大は一般の大学等と同様、学校教育法に沿って文部科学省が定める「大学設置基準」に服しており、卒業時には大学改革支援・学位授与機構の審査を経て、学士の学位(学士号)が授与されている。 防大のカリキュラムは、いわゆる軍事教練にあたる「訓練課程」と、学術・科学分野を学ぶ「教育課程」に分かれている。 後者の「教育課程」には、防大特有の「防衛学」だけでなく、人文学・社会科学から、理工系の基礎科学・応用科学、そして外国語まで、一般の大学等と変わらぬバリエーションがそろっている。このように、防大が「大学設置基準」に沿った教育機関(かつ研究機関)と認定されているからこそ、防大の卒業生には、他の大多数の「大学校」(各種学校)と異なり、学士号が授与されているのだ。 ところが、等松教授の告発文書によれば、「防衛学」を担当する自衛官教官の多くが、文官教官のような教育能力や研究業績の厳格な審査を経ずに、教授や准教授に採用されており、「とてもその任には堪えられない人々」も少なくないという。 一方で、文官教官が雑誌や新聞に論考やコメントを発表する場合、原稿を事前に事務部門に提出しなければならず、学術的には素人の事務官が事実上の検閲を行うばかりか、原稿を書き換える事例さえあるという。 筆者は率直なところ、驚愕した』、「等松教授の告発文書によれば、「防衛学」を担当する自衛官教官の多くが、文官教官のような教育能力や研究業績の厳格な審査を経ずに、教授や准教授に採用されており、「とてもその任には堪えられない人々」も少なくないという。 一方で、文官教官が雑誌や新聞に論考やコメントを発表する場合、原稿を事前に事務部門に提出しなければならず、学術的には素人の事務官が事実上の検閲を行うばかりか、原稿を書き換える事例さえあるという」、なるほど。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 「学問の自由」に反する事実上の検閲 こうした事実上の検閲は、一般の大学等ではとうてい考えられない。たしかに、昨今は大学等においても、学長や理事会などの経営陣によってガバナンスの「トップダウン」化が進められ、教員による「ボトムアップ」の意思決定・意見表明の場である教授会などの権限が削減されつつある。 とはいえ、たとえ「一族ワンマン経営」の理事会が支配するような小規模私立大学にあってさえ、教員の対外発信の内容を、学長や理事会ましてや事務部門が事前にチェックすることはありえない。 なぜならそれは、憲法23条が定める「学問の自由」に、根本的に反するからだ。 前述の久保校長の反論文書は、文官教官の対外発信時の事前届出制度が検閲を目的としておらず、また等松教授の告発文書に、防大執行部や事務官が一切、手を加えていないと強調している。 ただ留意すべきは、等松教授が世界的に認められた外交史の研究者であり、また幹部学校や統合幕僚学校、防衛研究所での教育歴も長く、自衛隊内で相当な権威をもつ文官教官であることだ。 他の研究者、特に中堅・若手を含むすべての文官教官が、対外発信時に防大執行部や事務官からの書き換え圧力を受けていないと明言できなければ、防大に検閲が存在しないということにはならない。 そもそも、重要な防衛機密事項の漏洩リスクがある場合を除き、研究者の対外発信内容について防大執行部や事務官が事前確認をおこない「意見を述べる」内部ルール自体が、憲法秩序に照らして著しく不適切である。 「学問の自由」が保障されていないこと、この一点のみをもってしても、防大は「大学設置基準」に沿った教育機関・研究機関の認定(学士号が授与される資格)を取り消されてもおかしくない状況にあるのだ』、「重要な防衛機密事項の漏洩リスクがある場合を除き、研究者の対外発信内容について防大執行部や事務官が事前確認をおこない「意見を述べる」内部ルール自体が、憲法秩序に照らして著しく不適切である。「学問の自由」が保障されていないこと、この一点のみをもってしても、防大は「大学設置基準」に沿った教育機関・研究機関の認定・・・を取り消されてもおかしくない状況にある」、なるほど。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 他国に劣る幹部自衛官の知的・学術的水準 防大の4年と幹部候補生学校の1年、計5年の課程を修めた自衛官は、大多数が20歳代前半の若者ながら、ただちに尉官に任官し、国際基準では「将校」とみなされる。 つまり自衛隊は、一般の大学の学部4年間相当と、大学院修士課程2年間のうち1年間相当の高等教育を修めれば、いきなり将校クラスに任官するという、メリット・システム(閉鎖型任用制)を採用している。 これは、おおむね20代後半に係長、30代前半に課長補佐になる、霞が関のキャリア官僚の世界と比べてさえ、劇的といえるメリット・システムだ。もちろん、このシステム自体は、日本の旧軍や他国の軍隊を参照して設計されているので、驚くべき点はない。 ここで問題なのは、防大の(たった4年間の課程を担う)教育現場に、自衛隊の劇的なメリット・システムを支える責任と負荷が一身にかかっていることである。 しかしながら、防大受験者数は2010年代半ば以降、著しい減少傾向にあり、また中退者数、任官辞退者数、幹部候補生学校入校辞退者数などは、全体として増加傾向にある。自衛隊が優秀な幹部自衛官の確保・育成に苦労していることは、数字上からも事実といわざるをえない。 そして残念ながら、等松教授の告発文書にある「思考停止の中堅幹部が年々増えている」という評価は、筆者のもとに集まってくる情報とも符合している。 筆者自身、幾人もの幹部自衛官と長時間、腹を割って話したことはあり、職務において誠実で高潔な現役幹部自衛官が大勢いることは知っている。だが、筆者の研究仲間や知人で、外国軍将校と幹部自衛官の双方と日常的に交流の機会をもつ何人もの研究者が、異口同音に指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて他国の将校クラスよりも心もとないという評価だ。 北東アジアでは今後当分の間、朝鮮戦争以来の不安定な安全保障環境が続き、自衛隊は創設以来最大のプレゼンスを発揮することが求められる。防大の教育環境の抜本的な改善は、自衛隊・防衛省のみの問題にとどまらず、国家的・国民的な課題なのである』、「筆者の研究仲間や知人で、外国軍将校と幹部自衛官の双方と日常的に交流の機会をもつ何人もの研究者が、異口同音に指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、みっともないことだ。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 防大教育問題の根本要因は… このシリーズで先に大木毅氏や石破茂氏が、防大教育問題の根本要因は、日本国憲法下で自衛隊の存在意義が曖昧にされ、自衛隊のなかで民主主義体制を守るという防衛規範が育ってこなかったことにあると論じている。 シリーズ「防衛大論考ーー私はこう読んだ」#4で防衛省の問題点を指摘した石破茂氏 筆者も基本的には、両氏と大きく異ならない国家観・安全保障観をもつ者である。 北東アジアの安全保障環境の悪化もふまえるとき、日本の自由民主主義(リベラル・デモクラシー)体制を防衛する実力組織としての自衛隊の存立規範を、社会的・国民的規模で打ち立てることは、急務だと考えている。 したがって両氏が主張するように、自衛隊の存立規範に変化がなければ、防大の教育環境が改善されがたい部分があることは、筆者も否定しない。 しかしながら、防大の教育環境を改善することによって、自衛隊全体によい影響が波及する側面も、確実に存在するはずだ。 加えて、等松教授らが真摯に求めている、防大の教育・人事・事務体制やガバナンスの抜本的な改善は、自衛隊改革全般のなかでも、おそらく技術的に最も「手をつけやすい」部分のひとつではないだろうか。 防大執行部と防衛省当局は、各学術・科学分野の専門家である文官教官の意見、特に中堅・若手教官の意見を聴く「ボトムアップ」の回路を十分に確保し、教育環境とガバナンスの改善に取り組むべきである。 これまで教授しか参加を認められてこなかった防大教授会に、他の大多数の大学と同様、准教授や専任講師を参加させるのは、その初めの第一歩だろう。 最後に強調しておくが、防大と自衛隊そして国防の将来を憂う等松教授は、真の意味での「国士」である。 等松教授はもちろんのこと、実名告発にはいたらない中堅・若手の文官教官、そして心ある自衛官教官や事務官に対して、有形無形の圧力や恫喝が加えられるべきではない。 ましてや、等松教授に不当な懲戒が下されるようなことがあってはならない。 【※】久保校長はアメリカ政治研究で著名な政治学者であり、多数の著作をもつ。テレビにもときどき解説者などとして出演しているので、顔を見知っている読者もいるだろう。慶応義塾大学や東京大学の教授を経て、2021年4月から防大校長を務めている。 等松教授は近代日本をめぐる戦争と外交、戦前期日本の植民地をめぐる国際関係などを専門としており、日本語の著作としては『日本帝国と委任統治―南洋群島をめぐる国際政治 1914-1947』(名古屋大学出版会、2011年)が、筆者を含む研究者の間でよく知られている。玉川大学教授を経て、2009年から防大教授を務めている。 久保校長、等松教授、2人とも政治学者である。) 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子:「教育者としての絶望」 #2 大木毅:「自衛隊が抱える病い」 #3 現役教官:「学生を変質させるカリキュラム」 #4 石破茂:「国防を真剣に考えると疎んじられる」 【元防大生の声】 #1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」 【防大生たちの叫び】 #1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄” #2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件… ※「集英社オンライン」では、本記事や防衛大学校に関しての取材協力者や情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:shueisha.online@gmail.com Twitter:@shueisha_online 』、「防大の教育環境を改善することによって、自衛隊全体によい影響が波及する側面も、確実に存在するはずだ。 加えて、等松教授らが真摯に求めている、防大の教育・人事・事務体制やガバナンスの抜本的な改善は、自衛隊改革全般のなかでも、おそらく技術的に最も「手をつけやすい」部分のひとつではないだろうか。 防大執行部と防衛省当局は、各学術・科学分野の専門家である文官教官の意見、特に中堅・若手教官の意見を聴く「ボトムアップ」の回路を十分に確保し、教育環境とガバナンスの改善に取り組むべきである」、同感である。
次に、9月6日付け集英社オンライン「〈防衛大告発によせて〉「「コスプレ感覚のミリタリー好き」「リストカット」「適応障害で留年」…幹部自衛官を目指すには適性を欠く学生も多々いる集団生活の“地獄”」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/155170
・『防衛大学校の等松春夫教授が発表した告発論考を受けて、防大のあり方について世間ではさまざまな議論を呼んでいる。現在の防大が抱える問題を現場の学生たちはどう考えているのか。集英社オンラインでは任官辞退者(卒業後、幹部候補生学校への配属の辞退者)と現役防大生への取材をおこなった。(前後編の前編)』、興味深そうだ。
・『防大生たちの叫び#1 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子 #2 大木毅 #3 現役教官 #4 石破茂 #5 石原俊 【元防大生の声】 #1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」 【防大生たちの叫び】 #2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件…』、個々には説明がないので、項目だけを読んで見当をつけてほしい。
・『ミリタリー好きがコスプレ感覚で入学してくる現状 「等松先生のおっしゃることも、防大OBの方々のおっしゃることもわかるので、やり切れない思いです」 任官辞退者の本田さん(仮名/女性)【1】は、そう語る。任官辞退とは、幹部候補生学校への配属【2】を辞退して民間人にもどることを意味し、批判的な人々の間では、「任官拒否」とも呼ばれる。 これまで集英社オンラインで公開した記事に登場した退校者たちとは異なり、本田さんをはじめとした任官辞退者は防衛大学校を正式に卒業している。その彼女は、本メディアが報じた退校者たちの証言については「五分五分です」と評した。 「特定の学生を“ガイジ”呼ばわりしたり、吐くまで食べさせるようなおこない【3】は、言語道断です。厳しく処分するべきだと思いますが、入室要領や清掃に関する学生間指導などを、単純に『嫌がらせ』と断じてしまうことには違和感も覚えました」 集英社オンラインの記事をきっかけに、ネット上には防大を擁護する声と非難する声があふれた。中でも、(自称も含む)退校者やOBたちによる「学生間指導の闇」についての書き込みはとどまるところを知らない。 「退校者が書いているであろうサイトや書き込みを読みましたが、彼らの半分近くは、入学当初から幹部自衛官を目指すには適性を欠いていた方々なのではないか。そんな思いもあります」 本田さんによれば、近年の防大にはミリタリー系のアニメやドラマ、スパイものの漫画、ライトノベル小説などにハマって、まるでコスプレでもするような気分で入学してくる者や、被災地支援の側面にのみ注目して、軍人としての自衛官という立場に思いが至らないまま憧れだけを募らせた学生も少なくないという』、「近年の防大にはミリタリー系のアニメやドラマ、スパイものの漫画、ライトノベル小説などにハマって、まるでコスプレでもするような気分で入学してくる者や、被災地支援の側面にのみ注目して、軍人としての自衛官という立場に思いが至らないまま憧れだけを募らせた学生も少なくないという」、嘆かわしいことだ。
・『防大生たちの叫び#1 問題は適性のない学生を学校が退校させないこと 「等松先生が告発するずっと前から、学生舎の暮らしがどんなものかは散々ネット上で書かれています。それなのに、どうして(新入生たちは)わからないのか。私には、むしろそれがわかりません。『戦場の理不尽さに耐えるための、日常の理不尽だ』なんて言い方は非常識だし、おかしいと思いますが、それでも、私たちはただの学生じゃないんです。 特別職の公務員として学費を免除していただき、手当ももらい、実質的には軍人を目指している。学園ドラマの遊びじゃないってことぐらいは覚悟して入ってきてほしい」 「信じられないかもしれませんが……」と前置きし、本田さんは言う。 「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか」 その上で、「本館」(防大執行部を意味する隠語)や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘した。 「私が勝手に決めつけているのではありません。実際、医官が適応障害の診断を下した学生だったり、手首を切ったり、痙攣を起こしたりする学生たちは一定数います。 もちろん、本館や指導官が問題を抱えた学生のケアをして、立ち直るための手助けをするのであれば、ぜひそうしていただきたいですが、現実は違います。学校は手をこまねいたまま上級生に丸投げし、すべての問題を学生間指導で解決するよう強いてくるのです」』、「「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか・・・「本館」・・・や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘」、定員不足に悩む「本館」にすれば、不適格な人間でも抱えておきたいのだろう。
・『防大生たちの叫び#1 「地獄」の集団生活 たとえば、本田さんが2年生のとき、同室になった1年生のひとりは、本来同級生であるはずの女性だったという。 「彼女は『適応障害』と診断されて留年し、2度目の1学年でした。“上”が『復学プログラム』【4】を準備したということだったのですが、私たち2学年はともかく、4学年の部屋長たちさえ、直前まで事情を知らされていませんでした」 そして始まった同じ居室での集団生活は、文字通りの「地獄」だったという。 「彼女は朝起きられないので、当然、清掃はできません。清掃だけじゃなくて、ほとんどの服務ができないので、他の1学年や私たちがやるしかない。座っているだけで済む授業は受けられますが、すぐに疲れてしまうので(1学年が全員参加することになっている)遠泳訓練にも参加せず。『とにかく、なにがあっても彼女を叱るな』と指導官から厳命された部屋長は、対応に苦慮していました。 ほとんど何もできていないので、この1年が過ぎても彼女は2学年には上がれません。そんなこと、みんなわかっているのに、指導官も当局も何もせず、私たち(居室の)学生にすべての負担を押しつけるだけでした。 本当にその子のことを思い、その子を復学させたいなら、少なくとも同室になる最上級生たちには事前に説明の機会を設けて、復学プログラムと連動した居室におけるケアの計画を立てるとか、服務を満足におこなえないメンバーを抱えるという、その居室の負担への配慮があってもいいと思うのです」 たまりかねた上級生たち【5】が、指導官に抗議したこともあったそうだ。 「指導官から『我々だって苦労しているんだ』などと他人事のように言われ、部屋長は呆れていました。その指導官によれば、本館や指導官に対して『うちの娘をなんだと思っているんだ。適応障害に追い込んだ犯人を探し出せ』などとクレームの電話が何回もかかってきている、と。そういう状況なので、本人が『やめる』と口にするまで、学校側から『別の人生がある』とは言えないと。それじゃあ、監督責任を放棄しているとしか思えません」』、「本館や指導官に対して『うちの娘をなんだと思っているんだ。適応障害に追い込んだ犯人を探し出せ』などとクレームの電話が何回もかかってきている、と。そういう状況なので、本人が『やめる』と口にするまで、学校側から『別の人生がある』とは言えないと。それじゃあ、監督責任を放棄しているとしか思えません」、悪質な「クレーム」に腰が引けて「監督責任を放棄」している「学校側」の責任は重大だ。
第三に、9月6日付け集英社オンライン「女子学生への公然セクハラ、シャワー室の盗撮、頻発する窃盗事件…問題だらけの防衛大でそれでも私が4年間退校せずに全うすることができた理由【学生たちの証言】」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/155360?page=4
・『現在、防衛大学校が置かれている状況には改善されるべき点が多々あるものの、任官辞退した防大の卒業生は、「防衛省・自衛隊を役立たずの組織、酷い組織だと即断してほしくない」と話した。彼女が防大で4年間を全うすることができた理由とは…。任官辞退者と現役防大生への取材からお伝えする。(前後編の後編)』、興味深そうだ。
・『防大生たちの叫び#2 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子 #2 大木毅 #3 現役教官 #4 石破茂 #5 石原俊 【元防大生の声】 #1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」』、見出しを見るだけで酷い様子がアリアリとする。
・【防大生たちの叫び】 #1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄” 学生舎で頻発する窃盗事件 現役の防大生である立花さん(仮名/女性)【6】からも、前編で語ってくれた任官辞退者の本田さん(仮名/女性)と似通った証言が出た。 「心臓が弱いとのことで、しばしば全身痙攣を起こす学生がいました。突然倒れて、医務室に担ぎ込まれたりするのに、指導官は『仲間なんだから、十分注意して目を離すな』と言うばかり。 もしも居室で命を落とすような事態になったら、学校はいったいどう責任をとるつもりだったのでしょうか。心配だったので、夜間は交代でずっとその学生を見守っていました。そのせいで3か月以上、居室の全員が寝不足です【7】。 しばらくして、その学生は退校しましたが、どうしてもっと早く手を打ってくれなかったのか。結局、その子の両親のクレームが怖くて、私たちに押しつけようとしたんじゃないですか」 さらに深刻な問題があると、立花さんは証言した。入学希望者の減少に苦しむ防大が「見かけの退校者数を抑える」ために、不適格な学生への処罰を控え、放置しているというのだ。 「皆さんが思っている以上に、学生舎では窃盗が頻発しています。盗まれるのは現金やスマートフォンが多いですが、まず指導官に言われるのは『証拠がないんだから、仲間を泥棒扱いするな。警務隊を呼ぶ前に、居室の全員でよく話し合え』です。けれど、窃盗は手癖なので、話し合ったってなくなりません。 さっさと警務隊を呼んで、持ち物を検査すれば、たいてい一発で(犯人が)わかります。前の居室でも、その前の居室でも、だいたい特定の学生がいる部屋で窃盗が起きていますから。それで最終的に警務隊を呼んで犯人がわかっても、大した処罰を受けないんです」 そう言って、立花さんは現在進行形のトラブルを列挙した』、「「心臓が弱いとのことで、しばしば全身痙攣を起こす学生がいました。突然倒れて、医務室に担ぎ込まれたりするのに、指導官は『仲間なんだから、十分注意して目を離すな』と言うばかり。 もしも居室で命を落とすような事態になったら、学校はいったいどう責任をとるつもりだったのでしょうか。心配だったので、夜間は交代でずっとその学生を見守っていました。そのせいで3か月以上、居室の全員が寝不足です【7】。 しばらくして、その学生は退校しましたが、どうしてもっと早く手を打ってくれなかったのか。結局、その子の両親のクレームが怖くて、私たちに押しつけようとしたんじゃないですか・・・入学希望者の減少に苦しむ防大が「見かけの退校者数を抑える」ために、不適格な学生への処罰を控え、放置しているというのだ。 「皆さんが思っている以上に、学生舎では窃盗が頻発しています。盗まれるのは現金やスマートフォンが多いですが、まず指導官に言われるのは『証拠がないんだから、仲間を泥棒扱いするな。警務隊を呼ぶ前に、居室の全員でよく話し合え』です。けれど、窃盗は手癖なので、話し合ったってなくなりません。 さっさと警務隊を呼んで、持ち物を検査すれば、たいてい一発で(犯人が)わかります。前の居室でも、その前の居室でも、だいたい特定の学生がいる部屋で窃盗が起きていますから。それで最終的に警務隊を呼んで犯人がわかっても、大した処罰を受けないんです」、「指導官」らのやり方は本当に酷い。
・『防大生たちの叫び#2 酔った男子学生が嫌がる女子学生にセクハラ 「6月に第2大隊前の路上でおこなわれたバーベキューで、酔った男子学生が衆人環視のなかで、嫌がる女子学生の身体を無理やり触り続けるという事件がありました。最終的には、周囲の学生らに制止されましたが、指導官は警務隊に報告せず、学生の風紀委員が点呼の際に口頭注意したのみです。 また、4月に4大隊で起きた3階シャワー室の盗撮事件。これは警務隊が扱いましたが、隠しカメラを設置して女子学生の裸を撮影して、盗撮したデータを他の学生たちと回覧した主犯の学生ふたりは、中隊の学生長と副学生長でした。それなのに、彼らは反省部屋(服務室)に入れられただけで、いまだに在学しています。本来は、退学相当じゃないですか。もっと酷いものでは、67期(今春卒業した期)の女子学生に対する性的暴行事件もありました」 この証言を受けて、編集部は防大に事実確認をおこなった。まず、第2大隊前の路上でおこなわれたバーベキューにおける「性的暴行」について、防大はこう回答した。 〈現在、細部の調査を慎重に進めているところであり、判明した事実関係に基づき、厳正に対処致します〉 そして〈学生から報告を受けた指導官は、なぜ自ら対応するのではなく、加害行為の処理を中隊(学生)に委任したのでしょうか〉との編集部の問いかけに対しては、〈被害学生が警務隊に対する被害届の提出を希望しなかったことから警務隊には通報していません〉と回答した。 だが、「被害者が希望しなかったから、指導官は通報しなかった」という釈明は、まさに〈細部〉のごまかしそのものであると、立花さん(前出)は怒りを露わにした。 「時系列がまったく違います。まず指導官は、彼女(被害学生)の話をまともに聞こうともせず、中隊(学生)に任せました。これが発端です。その一方的なやり方にショックを受けた被害学生と、怒った4学年の部屋長たちはその後、自分たちで警務隊に通報しようとしたんです。ところが、通報の直前になって被害学生のフラッシュバックがさらに悪化しました。 彼女は心配してくれた部屋長たちを巻き込みたくなくて、警務隊への通報を諦めたのです」(立花さん) 女子学生専用のシャワー室での盗撮事件について、主犯とされる中隊学生長および副学生長に対して〈現在までにどのような処分がなされたのか〉という編集部の質問に対して、防大は次のように回答した。 〈現在、細部の調査を慎重に進めているところであり、判明した事実関係に基づき、厳正に対処致します〉 67期の女子学生に対する性的暴行事件については〈調査の結果、判明した事実関係に基づき、厳正に対処しました〉(防大)とのことだが、具体的にどう〈対処〉したのかは開示されなかった』、「指導官」の対応は全く酷いもので、「細部のごまかし」も目に余る。
・『防大生たちの叫び#2 防大は「惰性と同調圧力に満ちた場所」 任官辞退者の本田さん、現役学生の立花さんが口にしたのは――防大のガバナンスが「法治」ではなく「人治」に傾斜しているという――等松教授の告発に通ずる指摘である。 等松教授は学生間指導を「悪しきリーダーシップ」の産物と見ていたが、問題はさらに根深い。ふたりの証言からは、悪しきリーダーシップというより、防大執行部や事務官、指導官たちの無責任な人治のツケが、学生たち(学生間指導)に回されている実態がうかがえる。 苦労の絶えない学生舎生活をやり抜いた本田さんやその同期たちが、揃って幹部候補生学校に進むことを“辞退”した理由は、決して“軍隊”が怖くなったからでも、学費の免除が目的だったからでもない。防大の「人治」に翻弄され、疲れ果ててしまったからなのではないか。 「多くの指導官は、自分の任期交代まで平穏に過ごせればそれでいい、と考えているのでしょう。自分の監督不行届きということにされたくないために、学生をなだめ、次年度の中隊替え、卒業を待つ。それも仕方のないことだと思います。ひとりで対抗するには、あまりにも惰性と同調圧力に満ちた場所です。 私が、4年間あの場所にいて思ったのは『はたして、ここは何を育てたいのだろうか』ということでした。学業時間の確保とか一斉喫食や清掃が辛いといった、そういったことも問題なのかもしれませんが、『どのような学生』を育て、『どのような能力』を身につけさせたいのかの方針を明確にしないまま『学生間指導』などというものを要求するから、指導官も上級生も困惑するのだと思います。 今のカリキュラムのままでは、幹部候補生学校に進んだとき、知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけになってしまうのではないでしょうか」(本田さん)』、「等松教授は学生間指導を「悪しきリーダーシップ」の産物と見ていたが、問題はさらに根深い。ふたりの証言からは、悪しきリーダーシップというより、防大執行部や事務官、指導官たちの無責任な人治のツケが、学生たち(学生間指導)に回されている実態がうかがえる。 苦労の絶えない学生舎生活をやり抜いた本田さんやその同期たちが、揃って幹部候補生学校に進むことを“辞退”した理由は、決して“軍隊”が怖くなったからでも、学費の免除が目的だったからでもない。防大の「人治」に翻弄され、疲れ果ててしまったからなのではないか・・・今のカリキュラムのままでは、幹部候補生学校に進んだとき、知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけになってしまうのではないでしょうか」、「幹部」の「知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけ」、恐ろしいことだ。
・『防大生たちの叫び#2 「曹士の人柄や態度、実践に感銘を受けたから4年間を全うできた」 それでも、本田さんは最後に言った。 「世間、国民の皆さんには、防大の置かれた状況だけをみて、防衛省・自衛隊を役立たずの組織、酷い組織だと即断していただきたくはありません。等松先生の告発も、その後の専門家の論説や記事も、国防における防衛省・自衛隊の重要性を『ゆるぎない前提』として『改善するため』になされている議論でしょうから。 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】で等松教授の論考について言及した石原俊教授(『改善』を目指す取材であるため、私も主として『問題』についてお話ししましたが、指導官として補職されてこられた方々には、毅然と、そしてフェアに学生を監督する素晴らしい幹部自衛官の方々も、たくさんおられました【8】。 私が防大で4年間を全うすることができたのは、毎年の訓練でお目にかかった部隊の皆さん、とくに曹士の人柄や態度、実践に感銘を受けたからです。尊敬すべき下士官の皆さんの前に、堂々と立てるほどの研鑽を積めなかった自分を恥じる気持ちもあります。 このような状況下にあっても真面目に頑張ってくれている方々や、私がお世話になった方々のためにも、さまざまな現状から目を背けず、本館の方々に一考していただくことを祈ります」 衷心より発せられた彼女の言葉は、はたして「本館」に届くだろうか』、(以下省略)、「本田さん」の「衷心より発せられた」「言葉は、はたして「本館」に届くことは殆ど考え難い。「防衛大」のあり方・組織などは抜本的な見直しが不可欠だ。
先ずは、本年8月11日付け集英社オンライン「大学問題のスペシャリスト・石原俊教授は防衛大告発論考どう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて、他国の将校クラスよりも心もとないという評価」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/152530?page=1
・『2023年6月30日に防衛大学校の等松春夫教授が衝撃的な論考を発表した。防大、防衛省の構造に警鐘を鳴らすこの論考を有識者たちはどのように読んだのだろうか。『硫黄島』(中公新書)、『シリーズ 戦争と社会』(岩波書店)などの著書で知られ、「大学の自治」に詳しい明治学院大学の石原俊教授が綴る』、興味深そうだ。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子 #2 大木毅 #3 現役教官 4 石破茂 【元防大生の声】#1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」 【防大生たちの叫び】 #1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄” #2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件…』、ずいぶん内容が濃いようだ。
・『一般の大学等とは大きく異なる「防衛大学校」という存在 筆者は防衛大学校と深い交流を持つ者ではなく、自衛隊や外国の軍隊を専門的な研究対象とする者でもない。そのため、本稿で述べる内容は徹頭徹尾、一般論にとどまることを、あらかじめ承知いただきたい。 防衛大学校(以下、防大)は、国際的にみれば各国の士官学校に比肩する教育機関であり、学校教育法第1条が定める「1条校」ではない。 この点で防大は、一般の大学等とは大きく異なる。 等松春夫教授による告発文書「危機に瀕する防衛大学校の教育」は、高等教育機関として特殊な組織である防大が、教育体制・事務体制から、教官人事・指導官人事、ガバナンスにいたるまで、重大な問題を長年にわたって放置してきた結果、学生の教育環境が危機的状況に陥っていると指摘する。 特に、学生舎(寮)における共同生活や、上級生から下級生への「指導」の慣習が、公私混同の命令や悪質な威圧の温床となり、ハラスメント、いじめ、賭博、詐欺などが蔓延する要因になってきたと告発している。 これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう。 等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した【※】。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。 ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある』、「これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう・・・等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。 ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある」、なるほど。
・『「その任には堪えられない人々」が登用される現状 他方で、一般にはあまり知られていない点だが、防大は一般の大学等と同様、学校教育法に沿って文部科学省が定める「大学設置基準」に服しており、卒業時には大学改革支援・学位授与機構の審査を経て、学士の学位(学士号)が授与されている。 防大のカリキュラムは、いわゆる軍事教練にあたる「訓練課程」と、学術・科学分野を学ぶ「教育課程」に分かれている。 後者の「教育課程」には、防大特有の「防衛学」だけでなく、人文学・社会科学から、理工系の基礎科学・応用科学、そして外国語まで、一般の大学等と変わらぬバリエーションがそろっている。このように、防大が「大学設置基準」に沿った教育機関(かつ研究機関)と認定されているからこそ、防大の卒業生には、他の大多数の「大学校」(各種学校)と異なり、学士号が授与されているのだ。 ところが、等松教授の告発文書によれば、「防衛学」を担当する自衛官教官の多くが、文官教官のような教育能力や研究業績の厳格な審査を経ずに、教授や准教授に採用されており、「とてもその任には堪えられない人々」も少なくないという。 一方で、文官教官が雑誌や新聞に論考やコメントを発表する場合、原稿を事前に事務部門に提出しなければならず、学術的には素人の事務官が事実上の検閲を行うばかりか、原稿を書き換える事例さえあるという。 筆者は率直なところ、驚愕した』、「等松教授の告発文書によれば、「防衛学」を担当する自衛官教官の多くが、文官教官のような教育能力や研究業績の厳格な審査を経ずに、教授や准教授に採用されており、「とてもその任には堪えられない人々」も少なくないという。 一方で、文官教官が雑誌や新聞に論考やコメントを発表する場合、原稿を事前に事務部門に提出しなければならず、学術的には素人の事務官が事実上の検閲を行うばかりか、原稿を書き換える事例さえあるという」、なるほど。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 「学問の自由」に反する事実上の検閲 こうした事実上の検閲は、一般の大学等ではとうてい考えられない。たしかに、昨今は大学等においても、学長や理事会などの経営陣によってガバナンスの「トップダウン」化が進められ、教員による「ボトムアップ」の意思決定・意見表明の場である教授会などの権限が削減されつつある。 とはいえ、たとえ「一族ワンマン経営」の理事会が支配するような小規模私立大学にあってさえ、教員の対外発信の内容を、学長や理事会ましてや事務部門が事前にチェックすることはありえない。 なぜならそれは、憲法23条が定める「学問の自由」に、根本的に反するからだ。 前述の久保校長の反論文書は、文官教官の対外発信時の事前届出制度が検閲を目的としておらず、また等松教授の告発文書に、防大執行部や事務官が一切、手を加えていないと強調している。 ただ留意すべきは、等松教授が世界的に認められた外交史の研究者であり、また幹部学校や統合幕僚学校、防衛研究所での教育歴も長く、自衛隊内で相当な権威をもつ文官教官であることだ。 他の研究者、特に中堅・若手を含むすべての文官教官が、対外発信時に防大執行部や事務官からの書き換え圧力を受けていないと明言できなければ、防大に検閲が存在しないということにはならない。 そもそも、重要な防衛機密事項の漏洩リスクがある場合を除き、研究者の対外発信内容について防大執行部や事務官が事前確認をおこない「意見を述べる」内部ルール自体が、憲法秩序に照らして著しく不適切である。 「学問の自由」が保障されていないこと、この一点のみをもってしても、防大は「大学設置基準」に沿った教育機関・研究機関の認定(学士号が授与される資格)を取り消されてもおかしくない状況にあるのだ』、「重要な防衛機密事項の漏洩リスクがある場合を除き、研究者の対外発信内容について防大執行部や事務官が事前確認をおこない「意見を述べる」内部ルール自体が、憲法秩序に照らして著しく不適切である。「学問の自由」が保障されていないこと、この一点のみをもってしても、防大は「大学設置基準」に沿った教育機関・研究機関の認定・・・を取り消されてもおかしくない状況にある」、なるほど。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 他国に劣る幹部自衛官の知的・学術的水準 防大の4年と幹部候補生学校の1年、計5年の課程を修めた自衛官は、大多数が20歳代前半の若者ながら、ただちに尉官に任官し、国際基準では「将校」とみなされる。 つまり自衛隊は、一般の大学の学部4年間相当と、大学院修士課程2年間のうち1年間相当の高等教育を修めれば、いきなり将校クラスに任官するという、メリット・システム(閉鎖型任用制)を採用している。 これは、おおむね20代後半に係長、30代前半に課長補佐になる、霞が関のキャリア官僚の世界と比べてさえ、劇的といえるメリット・システムだ。もちろん、このシステム自体は、日本の旧軍や他国の軍隊を参照して設計されているので、驚くべき点はない。 ここで問題なのは、防大の(たった4年間の課程を担う)教育現場に、自衛隊の劇的なメリット・システムを支える責任と負荷が一身にかかっていることである。 しかしながら、防大受験者数は2010年代半ば以降、著しい減少傾向にあり、また中退者数、任官辞退者数、幹部候補生学校入校辞退者数などは、全体として増加傾向にある。自衛隊が優秀な幹部自衛官の確保・育成に苦労していることは、数字上からも事実といわざるをえない。 そして残念ながら、等松教授の告発文書にある「思考停止の中堅幹部が年々増えている」という評価は、筆者のもとに集まってくる情報とも符合している。 筆者自身、幾人もの幹部自衛官と長時間、腹を割って話したことはあり、職務において誠実で高潔な現役幹部自衛官が大勢いることは知っている。だが、筆者の研究仲間や知人で、外国軍将校と幹部自衛官の双方と日常的に交流の機会をもつ何人もの研究者が、異口同音に指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて他国の将校クラスよりも心もとないという評価だ。 北東アジアでは今後当分の間、朝鮮戦争以来の不安定な安全保障環境が続き、自衛隊は創設以来最大のプレゼンスを発揮することが求められる。防大の教育環境の抜本的な改善は、自衛隊・防衛省のみの問題にとどまらず、国家的・国民的な課題なのである』、「筆者の研究仲間や知人で、外国軍将校と幹部自衛官の双方と日常的に交流の機会をもつ何人もの研究者が、異口同音に指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、みっともないことだ。
・『防衛大論考-私はこう読んだ#5 防大教育問題の根本要因は… このシリーズで先に大木毅氏や石破茂氏が、防大教育問題の根本要因は、日本国憲法下で自衛隊の存在意義が曖昧にされ、自衛隊のなかで民主主義体制を守るという防衛規範が育ってこなかったことにあると論じている。 シリーズ「防衛大論考ーー私はこう読んだ」#4で防衛省の問題点を指摘した石破茂氏 筆者も基本的には、両氏と大きく異ならない国家観・安全保障観をもつ者である。 北東アジアの安全保障環境の悪化もふまえるとき、日本の自由民主主義(リベラル・デモクラシー)体制を防衛する実力組織としての自衛隊の存立規範を、社会的・国民的規模で打ち立てることは、急務だと考えている。 したがって両氏が主張するように、自衛隊の存立規範に変化がなければ、防大の教育環境が改善されがたい部分があることは、筆者も否定しない。 しかしながら、防大の教育環境を改善することによって、自衛隊全体によい影響が波及する側面も、確実に存在するはずだ。 加えて、等松教授らが真摯に求めている、防大の教育・人事・事務体制やガバナンスの抜本的な改善は、自衛隊改革全般のなかでも、おそらく技術的に最も「手をつけやすい」部分のひとつではないだろうか。 防大執行部と防衛省当局は、各学術・科学分野の専門家である文官教官の意見、特に中堅・若手教官の意見を聴く「ボトムアップ」の回路を十分に確保し、教育環境とガバナンスの改善に取り組むべきである。 これまで教授しか参加を認められてこなかった防大教授会に、他の大多数の大学と同様、准教授や専任講師を参加させるのは、その初めの第一歩だろう。 最後に強調しておくが、防大と自衛隊そして国防の将来を憂う等松教授は、真の意味での「国士」である。 等松教授はもちろんのこと、実名告発にはいたらない中堅・若手の文官教官、そして心ある自衛官教官や事務官に対して、有形無形の圧力や恫喝が加えられるべきではない。 ましてや、等松教授に不当な懲戒が下されるようなことがあってはならない。 【※】久保校長はアメリカ政治研究で著名な政治学者であり、多数の著作をもつ。テレビにもときどき解説者などとして出演しているので、顔を見知っている読者もいるだろう。慶応義塾大学や東京大学の教授を経て、2021年4月から防大校長を務めている。 等松教授は近代日本をめぐる戦争と外交、戦前期日本の植民地をめぐる国際関係などを専門としており、日本語の著作としては『日本帝国と委任統治―南洋群島をめぐる国際政治 1914-1947』(名古屋大学出版会、2011年)が、筆者を含む研究者の間でよく知られている。玉川大学教授を経て、2009年から防大教授を務めている。 久保校長、等松教授、2人とも政治学者である。) 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子:「教育者としての絶望」 #2 大木毅:「自衛隊が抱える病い」 #3 現役教官:「学生を変質させるカリキュラム」 #4 石破茂:「国防を真剣に考えると疎んじられる」 【元防大生の声】 #1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」 【防大生たちの叫び】 #1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄” #2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件… ※「集英社オンライン」では、本記事や防衛大学校に関しての取材協力者や情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:shueisha.online@gmail.com Twitter:@shueisha_online 』、「防大の教育環境を改善することによって、自衛隊全体によい影響が波及する側面も、確実に存在するはずだ。 加えて、等松教授らが真摯に求めている、防大の教育・人事・事務体制やガバナンスの抜本的な改善は、自衛隊改革全般のなかでも、おそらく技術的に最も「手をつけやすい」部分のひとつではないだろうか。 防大執行部と防衛省当局は、各学術・科学分野の専門家である文官教官の意見、特に中堅・若手教官の意見を聴く「ボトムアップ」の回路を十分に確保し、教育環境とガバナンスの改善に取り組むべきである」、同感である。
次に、9月6日付け集英社オンライン「〈防衛大告発によせて〉「「コスプレ感覚のミリタリー好き」「リストカット」「適応障害で留年」…幹部自衛官を目指すには適性を欠く学生も多々いる集団生活の“地獄”」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/155170
・『防衛大学校の等松春夫教授が発表した告発論考を受けて、防大のあり方について世間ではさまざまな議論を呼んでいる。現在の防大が抱える問題を現場の学生たちはどう考えているのか。集英社オンラインでは任官辞退者(卒業後、幹部候補生学校への配属の辞退者)と現役防大生への取材をおこなった。(前後編の前編)』、興味深そうだ。
・『防大生たちの叫び#1 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子 #2 大木毅 #3 現役教官 #4 石破茂 #5 石原俊 【元防大生の声】 #1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」 【防大生たちの叫び】 #2 女子学生へのセクハラ、シャワー室の盗撮、窃盗事件…』、個々には説明がないので、項目だけを読んで見当をつけてほしい。
・『ミリタリー好きがコスプレ感覚で入学してくる現状 「等松先生のおっしゃることも、防大OBの方々のおっしゃることもわかるので、やり切れない思いです」 任官辞退者の本田さん(仮名/女性)【1】は、そう語る。任官辞退とは、幹部候補生学校への配属【2】を辞退して民間人にもどることを意味し、批判的な人々の間では、「任官拒否」とも呼ばれる。 これまで集英社オンラインで公開した記事に登場した退校者たちとは異なり、本田さんをはじめとした任官辞退者は防衛大学校を正式に卒業している。その彼女は、本メディアが報じた退校者たちの証言については「五分五分です」と評した。 「特定の学生を“ガイジ”呼ばわりしたり、吐くまで食べさせるようなおこない【3】は、言語道断です。厳しく処分するべきだと思いますが、入室要領や清掃に関する学生間指導などを、単純に『嫌がらせ』と断じてしまうことには違和感も覚えました」 集英社オンラインの記事をきっかけに、ネット上には防大を擁護する声と非難する声があふれた。中でも、(自称も含む)退校者やOBたちによる「学生間指導の闇」についての書き込みはとどまるところを知らない。 「退校者が書いているであろうサイトや書き込みを読みましたが、彼らの半分近くは、入学当初から幹部自衛官を目指すには適性を欠いていた方々なのではないか。そんな思いもあります」 本田さんによれば、近年の防大にはミリタリー系のアニメやドラマ、スパイものの漫画、ライトノベル小説などにハマって、まるでコスプレでもするような気分で入学してくる者や、被災地支援の側面にのみ注目して、軍人としての自衛官という立場に思いが至らないまま憧れだけを募らせた学生も少なくないという』、「近年の防大にはミリタリー系のアニメやドラマ、スパイものの漫画、ライトノベル小説などにハマって、まるでコスプレでもするような気分で入学してくる者や、被災地支援の側面にのみ注目して、軍人としての自衛官という立場に思いが至らないまま憧れだけを募らせた学生も少なくないという」、嘆かわしいことだ。
・『防大生たちの叫び#1 問題は適性のない学生を学校が退校させないこと 「等松先生が告発するずっと前から、学生舎の暮らしがどんなものかは散々ネット上で書かれています。それなのに、どうして(新入生たちは)わからないのか。私には、むしろそれがわかりません。『戦場の理不尽さに耐えるための、日常の理不尽だ』なんて言い方は非常識だし、おかしいと思いますが、それでも、私たちはただの学生じゃないんです。 特別職の公務員として学費を免除していただき、手当ももらい、実質的には軍人を目指している。学園ドラマの遊びじゃないってことぐらいは覚悟して入ってきてほしい」 「信じられないかもしれませんが……」と前置きし、本田さんは言う。 「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか」 その上で、「本館」(防大執行部を意味する隠語)や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘した。 「私が勝手に決めつけているのではありません。実際、医官が適応障害の診断を下した学生だったり、手首を切ったり、痙攣を起こしたりする学生たちは一定数います。 もちろん、本館や指導官が問題を抱えた学生のケアをして、立ち直るための手助けをするのであれば、ぜひそうしていただきたいですが、現実は違います。学校は手をこまねいたまま上級生に丸投げし、すべての問題を学生間指導で解決するよう強いてくるのです」』、「「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか・・・「本館」・・・や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘」、定員不足に悩む「本館」にすれば、不適格な人間でも抱えておきたいのだろう。
・『防大生たちの叫び#1 「地獄」の集団生活 たとえば、本田さんが2年生のとき、同室になった1年生のひとりは、本来同級生であるはずの女性だったという。 「彼女は『適応障害』と診断されて留年し、2度目の1学年でした。“上”が『復学プログラム』【4】を準備したということだったのですが、私たち2学年はともかく、4学年の部屋長たちさえ、直前まで事情を知らされていませんでした」 そして始まった同じ居室での集団生活は、文字通りの「地獄」だったという。 「彼女は朝起きられないので、当然、清掃はできません。清掃だけじゃなくて、ほとんどの服務ができないので、他の1学年や私たちがやるしかない。座っているだけで済む授業は受けられますが、すぐに疲れてしまうので(1学年が全員参加することになっている)遠泳訓練にも参加せず。『とにかく、なにがあっても彼女を叱るな』と指導官から厳命された部屋長は、対応に苦慮していました。 ほとんど何もできていないので、この1年が過ぎても彼女は2学年には上がれません。そんなこと、みんなわかっているのに、指導官も当局も何もせず、私たち(居室の)学生にすべての負担を押しつけるだけでした。 本当にその子のことを思い、その子を復学させたいなら、少なくとも同室になる最上級生たちには事前に説明の機会を設けて、復学プログラムと連動した居室におけるケアの計画を立てるとか、服務を満足におこなえないメンバーを抱えるという、その居室の負担への配慮があってもいいと思うのです」 たまりかねた上級生たち【5】が、指導官に抗議したこともあったそうだ。 「指導官から『我々だって苦労しているんだ』などと他人事のように言われ、部屋長は呆れていました。その指導官によれば、本館や指導官に対して『うちの娘をなんだと思っているんだ。適応障害に追い込んだ犯人を探し出せ』などとクレームの電話が何回もかかってきている、と。そういう状況なので、本人が『やめる』と口にするまで、学校側から『別の人生がある』とは言えないと。それじゃあ、監督責任を放棄しているとしか思えません」』、「本館や指導官に対して『うちの娘をなんだと思っているんだ。適応障害に追い込んだ犯人を探し出せ』などとクレームの電話が何回もかかってきている、と。そういう状況なので、本人が『やめる』と口にするまで、学校側から『別の人生がある』とは言えないと。それじゃあ、監督責任を放棄しているとしか思えません」、悪質な「クレーム」に腰が引けて「監督責任を放棄」している「学校側」の責任は重大だ。
第三に、9月6日付け集英社オンライン「女子学生への公然セクハラ、シャワー室の盗撮、頻発する窃盗事件…問題だらけの防衛大でそれでも私が4年間退校せずに全うすることができた理由【学生たちの証言】」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/155360?page=4
・『現在、防衛大学校が置かれている状況には改善されるべき点が多々あるものの、任官辞退した防大の卒業生は、「防衛省・自衛隊を役立たずの組織、酷い組織だと即断してほしくない」と話した。彼女が防大で4年間を全うすることができた理由とは…。任官辞退者と現役防大生への取材からお伝えする。(前後編の後編)』、興味深そうだ。
・『防大生たちの叫び#2 【関連記事:防衛大現役教授が実名告発】 #1 自殺未遂、脱走、不審火、新入生をカモにした賭博事件 #2 防衛大の時代錯誤なリーダーシップ・フォロワーシップ教育 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】 #1 望月衣塑子 #2 大木毅 #3 現役教官 #4 石破茂 #5 石原俊 【元防大生の声】 #1 上級生が気の利かない下級生を“ガイジ”と呼びすて… #2 「1年はゴミ、2年は奴隷、3年は人間、4年は神」 #3 「叫びながら10回敬礼しろ。何もできないくせに上級生ぶるな」』、見出しを見るだけで酷い様子がアリアリとする。
・【防大生たちの叫び】 #1 適性のない学生と同室で…集団生活の“地獄” 学生舎で頻発する窃盗事件 現役の防大生である立花さん(仮名/女性)【6】からも、前編で語ってくれた任官辞退者の本田さん(仮名/女性)と似通った証言が出た。 「心臓が弱いとのことで、しばしば全身痙攣を起こす学生がいました。突然倒れて、医務室に担ぎ込まれたりするのに、指導官は『仲間なんだから、十分注意して目を離すな』と言うばかり。 もしも居室で命を落とすような事態になったら、学校はいったいどう責任をとるつもりだったのでしょうか。心配だったので、夜間は交代でずっとその学生を見守っていました。そのせいで3か月以上、居室の全員が寝不足です【7】。 しばらくして、その学生は退校しましたが、どうしてもっと早く手を打ってくれなかったのか。結局、その子の両親のクレームが怖くて、私たちに押しつけようとしたんじゃないですか」 さらに深刻な問題があると、立花さんは証言した。入学希望者の減少に苦しむ防大が「見かけの退校者数を抑える」ために、不適格な学生への処罰を控え、放置しているというのだ。 「皆さんが思っている以上に、学生舎では窃盗が頻発しています。盗まれるのは現金やスマートフォンが多いですが、まず指導官に言われるのは『証拠がないんだから、仲間を泥棒扱いするな。警務隊を呼ぶ前に、居室の全員でよく話し合え』です。けれど、窃盗は手癖なので、話し合ったってなくなりません。 さっさと警務隊を呼んで、持ち物を検査すれば、たいてい一発で(犯人が)わかります。前の居室でも、その前の居室でも、だいたい特定の学生がいる部屋で窃盗が起きていますから。それで最終的に警務隊を呼んで犯人がわかっても、大した処罰を受けないんです」 そう言って、立花さんは現在進行形のトラブルを列挙した』、「「心臓が弱いとのことで、しばしば全身痙攣を起こす学生がいました。突然倒れて、医務室に担ぎ込まれたりするのに、指導官は『仲間なんだから、十分注意して目を離すな』と言うばかり。 もしも居室で命を落とすような事態になったら、学校はいったいどう責任をとるつもりだったのでしょうか。心配だったので、夜間は交代でずっとその学生を見守っていました。そのせいで3か月以上、居室の全員が寝不足です【7】。 しばらくして、その学生は退校しましたが、どうしてもっと早く手を打ってくれなかったのか。結局、その子の両親のクレームが怖くて、私たちに押しつけようとしたんじゃないですか・・・入学希望者の減少に苦しむ防大が「見かけの退校者数を抑える」ために、不適格な学生への処罰を控え、放置しているというのだ。 「皆さんが思っている以上に、学生舎では窃盗が頻発しています。盗まれるのは現金やスマートフォンが多いですが、まず指導官に言われるのは『証拠がないんだから、仲間を泥棒扱いするな。警務隊を呼ぶ前に、居室の全員でよく話し合え』です。けれど、窃盗は手癖なので、話し合ったってなくなりません。 さっさと警務隊を呼んで、持ち物を検査すれば、たいてい一発で(犯人が)わかります。前の居室でも、その前の居室でも、だいたい特定の学生がいる部屋で窃盗が起きていますから。それで最終的に警務隊を呼んで犯人がわかっても、大した処罰を受けないんです」、「指導官」らのやり方は本当に酷い。
・『防大生たちの叫び#2 酔った男子学生が嫌がる女子学生にセクハラ 「6月に第2大隊前の路上でおこなわれたバーベキューで、酔った男子学生が衆人環視のなかで、嫌がる女子学生の身体を無理やり触り続けるという事件がありました。最終的には、周囲の学生らに制止されましたが、指導官は警務隊に報告せず、学生の風紀委員が点呼の際に口頭注意したのみです。 また、4月に4大隊で起きた3階シャワー室の盗撮事件。これは警務隊が扱いましたが、隠しカメラを設置して女子学生の裸を撮影して、盗撮したデータを他の学生たちと回覧した主犯の学生ふたりは、中隊の学生長と副学生長でした。それなのに、彼らは反省部屋(服務室)に入れられただけで、いまだに在学しています。本来は、退学相当じゃないですか。もっと酷いものでは、67期(今春卒業した期)の女子学生に対する性的暴行事件もありました」 この証言を受けて、編集部は防大に事実確認をおこなった。まず、第2大隊前の路上でおこなわれたバーベキューにおける「性的暴行」について、防大はこう回答した。 〈現在、細部の調査を慎重に進めているところであり、判明した事実関係に基づき、厳正に対処致します〉 そして〈学生から報告を受けた指導官は、なぜ自ら対応するのではなく、加害行為の処理を中隊(学生)に委任したのでしょうか〉との編集部の問いかけに対しては、〈被害学生が警務隊に対する被害届の提出を希望しなかったことから警務隊には通報していません〉と回答した。 だが、「被害者が希望しなかったから、指導官は通報しなかった」という釈明は、まさに〈細部〉のごまかしそのものであると、立花さん(前出)は怒りを露わにした。 「時系列がまったく違います。まず指導官は、彼女(被害学生)の話をまともに聞こうともせず、中隊(学生)に任せました。これが発端です。その一方的なやり方にショックを受けた被害学生と、怒った4学年の部屋長たちはその後、自分たちで警務隊に通報しようとしたんです。ところが、通報の直前になって被害学生のフラッシュバックがさらに悪化しました。 彼女は心配してくれた部屋長たちを巻き込みたくなくて、警務隊への通報を諦めたのです」(立花さん) 女子学生専用のシャワー室での盗撮事件について、主犯とされる中隊学生長および副学生長に対して〈現在までにどのような処分がなされたのか〉という編集部の質問に対して、防大は次のように回答した。 〈現在、細部の調査を慎重に進めているところであり、判明した事実関係に基づき、厳正に対処致します〉 67期の女子学生に対する性的暴行事件については〈調査の結果、判明した事実関係に基づき、厳正に対処しました〉(防大)とのことだが、具体的にどう〈対処〉したのかは開示されなかった』、「指導官」の対応は全く酷いもので、「細部のごまかし」も目に余る。
・『防大生たちの叫び#2 防大は「惰性と同調圧力に満ちた場所」 任官辞退者の本田さん、現役学生の立花さんが口にしたのは――防大のガバナンスが「法治」ではなく「人治」に傾斜しているという――等松教授の告発に通ずる指摘である。 等松教授は学生間指導を「悪しきリーダーシップ」の産物と見ていたが、問題はさらに根深い。ふたりの証言からは、悪しきリーダーシップというより、防大執行部や事務官、指導官たちの無責任な人治のツケが、学生たち(学生間指導)に回されている実態がうかがえる。 苦労の絶えない学生舎生活をやり抜いた本田さんやその同期たちが、揃って幹部候補生学校に進むことを“辞退”した理由は、決して“軍隊”が怖くなったからでも、学費の免除が目的だったからでもない。防大の「人治」に翻弄され、疲れ果ててしまったからなのではないか。 「多くの指導官は、自分の任期交代まで平穏に過ごせればそれでいい、と考えているのでしょう。自分の監督不行届きということにされたくないために、学生をなだめ、次年度の中隊替え、卒業を待つ。それも仕方のないことだと思います。ひとりで対抗するには、あまりにも惰性と同調圧力に満ちた場所です。 私が、4年間あの場所にいて思ったのは『はたして、ここは何を育てたいのだろうか』ということでした。学業時間の確保とか一斉喫食や清掃が辛いといった、そういったことも問題なのかもしれませんが、『どのような学生』を育て、『どのような能力』を身につけさせたいのかの方針を明確にしないまま『学生間指導』などというものを要求するから、指導官も上級生も困惑するのだと思います。 今のカリキュラムのままでは、幹部候補生学校に進んだとき、知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけになってしまうのではないでしょうか」(本田さん)』、「等松教授は学生間指導を「悪しきリーダーシップ」の産物と見ていたが、問題はさらに根深い。ふたりの証言からは、悪しきリーダーシップというより、防大執行部や事務官、指導官たちの無責任な人治のツケが、学生たち(学生間指導)に回されている実態がうかがえる。 苦労の絶えない学生舎生活をやり抜いた本田さんやその同期たちが、揃って幹部候補生学校に進むことを“辞退”した理由は、決して“軍隊”が怖くなったからでも、学費の免除が目的だったからでもない。防大の「人治」に翻弄され、疲れ果ててしまったからなのではないか・・・今のカリキュラムのままでは、幹部候補生学校に進んだとき、知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけになってしまうのではないでしょうか」、「幹部」の「知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけ」、恐ろしいことだ。
・『防大生たちの叫び#2 「曹士の人柄や態度、実践に感銘を受けたから4年間を全うできた」 それでも、本田さんは最後に言った。 「世間、国民の皆さんには、防大の置かれた状況だけをみて、防衛省・自衛隊を役立たずの組織、酷い組織だと即断していただきたくはありません。等松先生の告発も、その後の専門家の論説や記事も、国防における防衛省・自衛隊の重要性を『ゆるぎない前提』として『改善するため』になされている議論でしょうから。 【シリーズ:防衛大論考――私はこう読んだ】で等松教授の論考について言及した石原俊教授(『改善』を目指す取材であるため、私も主として『問題』についてお話ししましたが、指導官として補職されてこられた方々には、毅然と、そしてフェアに学生を監督する素晴らしい幹部自衛官の方々も、たくさんおられました【8】。 私が防大で4年間を全うすることができたのは、毎年の訓練でお目にかかった部隊の皆さん、とくに曹士の人柄や態度、実践に感銘を受けたからです。尊敬すべき下士官の皆さんの前に、堂々と立てるほどの研鑽を積めなかった自分を恥じる気持ちもあります。 このような状況下にあっても真面目に頑張ってくれている方々や、私がお世話になった方々のためにも、さまざまな現状から目を背けず、本館の方々に一考していただくことを祈ります」 衷心より発せられた彼女の言葉は、はたして「本館」に届くだろうか』、(以下省略)、「本田さん」の「衷心より発せられた」「言葉は、はたして「本館」に届くことは殆ど考え難い。「防衛大」のあり方・組織などは抜本的な見直しが不可欠だ。
タグ:「指導官」の対応は全く酷いもので、「細部のごまかし」も目に余る。 』です。けれど、窃盗は手癖なので、話し合ったってなくなりません。 さっさと警務隊を呼んで、持ち物を検査すれば、たいてい一発で(犯人が)わかります。前の居室でも、その前の居室でも、だいたい特定の学生がいる部屋で窃盗が起きていますから。それで最終的に警務隊を呼んで犯人がわかっても、大した処罰を受けないんです」、「指導官」らのやり方は本当に酷い。 しばらくして、その学生は退校しましたが、どうしてもっと早く手を打ってくれなかったのか。結局、その子の両親のクレームが怖くて、私たちに押しつけようとしたんじゃないですか・・・入学希望者の減少に苦しむ防大が「見かけの退校者数を抑える」ために、不適格な学生への処罰を控え、放置しているというのだ。 「皆さんが思っている以上に、学生舎では窃盗が頻発しています。盗まれるのは現金やスマートフォンが多いですが、まず指導官に言われるのは『証拠がないんだから、仲間を泥棒扱いするな。警務隊を呼ぶ前に、居室の全員でよく話し合え 「「心臓が弱いとのことで、しばしば全身痙攣を起こす学生がいました。突然倒れて、医務室に担ぎ込まれたりするのに、指導官は『仲間なんだから、十分注意して目を離すな』と言うばかり。 もしも居室で命を落とすような事態になったら、学校はいったいどう責任をとるつもりだったのでしょうか。心配だったので、夜間は交代でずっとその学生を見守っていました。そのせいで3か月以上、居室の全員が寝不足です【7】。 「本田さん」の「衷心より発せられた」「言葉は、はたして「本館」に届くことは殆ど考え難い。「防衛大」のあり方・組織などは抜本的な見直しが不可欠だ。 今のカリキュラムのままでは、幹部候補生学校に進んだとき、知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけになってしまうのではないでしょうか」、「幹部」の「知性や教養では一般大学からの入校者に劣り、戦技では部隊の曹士の皆さんに劣る、という、いかにも中途半端な卒業者が量産されるだけ」、恐ろしいことだ。 「これまでも、防大生をめぐる不祥事が起こると事実関係が報道されることはあった。だが、そうした不祥事が頻発する構造的背景を、一般社会に向けて体系的かつ説得的に説明したのは、おそらく等松教授が初めてだろう・・・等松教授の告発に対して、防大執行部は7月14日、久保文明学校長名による反論文書「本校教官の意見発表に対する防衛大学校長所感」を公表した。 集英社オンライン「女子学生への公然セクハラ、シャワー室の盗撮、頻発する窃盗事件…問題だらけの防衛大でそれでも私が4年間退校せずに全うすることができた理由【学生たちの証言】」 「本館や指導官に対して『うちの娘をなんだと思っているんだ。適応障害に追い込んだ犯人を探し出せ』などとクレームの電話が何回もかかってきている、と。そういう状況なので、本人が『やめる』と口にするまで、学校側から『別の人生がある』とは言えないと。それじゃあ、監督責任を放棄しているとしか思えません」、悪質な「クレーム」に腰が引けて「監督責任を放棄」している「学校側」の責任は重大だ。 定員不足に悩む「本館」にすれば、不適格な人間でも抱えておきたいのだろう。 「「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか・・・「本館」・・・や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘」、 「「私が籍を置いていた、つい最近までの防大の退校者のうち半数程度は、本当に単純な問題として、朝起きられない、夜眠れない、すぐ泣く。ミスを指摘されると、パニック発作を起こす。何度やり直させても、必要な物品を揃えられない。リストを作らせてチェックさせると、そのリスト自体に抜けがあるなど、そもそも閉鎖的な空間での共同生活に適性のない人たちなのではないでしょうか・・・「本館」・・・や指導官たちが「適性のない学生の存在を把握していながら、退校させないこと」こそが、最大の問題だと指摘」, 「近年の防大にはミリタリー系のアニメやドラマ、スパイものの漫画、ライトノベル小説などにハマって、まるでコスプレでもするような気分で入学してくる者や、被災地支援の側面にのみ注目して、軍人としての自衛官という立場に思いが至らないまま憧れだけを募らせた学生も少なくないという」、嘆かわしいことだ。 個々には説明がないので、項目だけを読んで見当をつけてほしい。 集英社オンライン「〈防衛大告発によせて〉「「コスプレ感覚のミリタリー好き」「リストカット」「適応障害で留年」…幹部自衛官を目指すには適性を欠く学生も多々いる集団生活の“地獄”」 「防大の教育環境を改善することによって、自衛隊全体によい影響が波及する側面も、確実に存在するはずだ。 加えて、等松教授らが真摯に求めている、防大の教育・人事・事務体制やガバナンスの抜本的な改善は、自衛隊改革全般のなかでも、おそらく技術的に最も「手をつけやすい」部分のひとつではないだろうか。 防大執行部と防衛省当局は、各学術・科学分野の専門家である文官教官の意見、特に中堅・若手教官の意見を聴く「ボトムアップ」の回路を十分に確保し、教育環境とガバナンスの改善に取り組むべきである」、同感である。 「筆者の研究仲間や知人で、外国軍将校と幹部自衛官の双方と日常的に交流の機会をもつ何人もの研究者が、異口同音に指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、みっともないことだ。 「重要な防衛機密事項の漏洩リスクがある場合を除き、研究者の対外発信内容について防大執行部や事務官が事前確認をおこない「意見を述べる」内部ルール自体が、憲法秩序に照らして著しく不適切である。「学問の自由」が保障されていないこと、この一点のみをもってしても、防大は「大学設置基準」に沿った教育機関・研究機関の認定・・・を取り消されてもおかしくない状況にある」、なるほど。 「等松教授の告発文書によれば、「防衛学」を担当する自衛官教官の多くが、文官教官のような教育能力や研究業績の厳格な審査を経ずに、教授や准教授に採用されており、「とてもその任には堪えられない人々」も少なくないという。 一方で、文官教官が雑誌や新聞に論考やコメントを発表する場合、原稿を事前に事務部門に提出しなければならず、学術的には素人の事務官が事実上の検閲を行うばかりか、原稿を書き換える事例さえあるという」、なるほど。 久保校長は防大改革を進めようとしており、反論文書は「学生間指導においても、上級生による強圧的な言動を排除してき」たとして、この1~2年の間に状況が劇的に改善したと主張している。 ただ、「上級生による強圧的な言動」はそれ以前の長きにわたり、幾度となく指摘されてきた問題だ。久保校長の退任後も含めて、これから十年単位で、防大が真に変化したかどうか、国民はウォッチしていく必要がある」、なるほど。 「等松教授は学生間指導を「悪しきリーダーシップ」の産物と見ていたが、問題はさらに根深い。ふたりの証言からは、悪しきリーダーシップというより、防大執行部や事務官、指導官たちの無責任な人治のツケが、学生たち(学生間指導)に回されている実態がうかがえる。 苦労の絶えない学生舎生活をやり抜いた本田さんやその同期たちが、揃って幹部候補生学校に進むことを“辞退”した理由は、決して“軍隊”が怖くなったからでも、学費の免除が目的だったからでもない。防大の「人治」に翻弄され、疲れ果ててしまったからなのではないか・・・ ずいぶん内容が濃いようだ。 集英社オンライン「大学問題のスペシャリスト・石原俊教授は防衛大告発論考どう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて、他国の将校クラスよりも心もとないという評価」 (その22)(防衛大告発論3題:石原俊教授は防衛大告発論考どう読んだのか?「何人もの研究者が指摘するのは、幹部自衛官の知的・学術的水準が相対的にみて 他国の将校クラスよりも心もとないという評価」、「コスプレ感覚のミリタリー好き」「リストカット」「適応障害で留年」…幹部自衛官を目指すには適性を欠く学生も多々いる集団生活の“地獄”、女子学生への公然セクハラ シャワー室の盗撮 頻発する窃盗事件…問題だらけの防衛大でそれでも私が4年間退校せずに全うすることができた理由【学生たちの証言】) 防衛問題
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