「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その6)(京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求、花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」、京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ) [企業経営]
「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)については、昨年3月15日に取上げた。今日は、(その6)(京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求、花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」、京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ)である。
先ずは、昨年4月28日付け東洋経済オンライン「京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求」を紹介しよう。
・『イギリスの投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは4月26日、京都銀行に対して株主提案を行う方針を明らかにした。4月30日までに、6月の定時株主総会に向けた提案書を会社側へ提出する。 シルチェスターによる京都銀行への株主提案は2度目だ。2022年の定時株主総会でも特別配当を求めたが否決に終わっている。リベンジとなる今年は1株あたり62円の特別配当に加えて、発行済み株式の1%にあたる、上限50億円の自己株取得も要求する構えだ。 京都銀行の広報担当者は「シルチェスターが株主提案の意向を表明したことは承知している。ただ、提案をまだ受領していないためコメントは控える」としている。1年に渡るつばぜり合いを経て、両社はまたも株主総会で衝突することになった』、興味深そうだ。
・『16年目の「豹変」 最初にシルチェスターが京都銀行の株式を取得したのは2006年9月。15年以上の間、株主提案を行ったことは一度もなく、どちらかと言えば穏健な株主とみなされていた。 牙を剥いたのは2022年4月だった。シルチェスターは1株当たり100円という会社側の配当計画にかみつき、別途132円の特別配当を求めると表明。地方銀行関係者を一様に驚かせた。 豹変の背景には運用体制の変更があったという指摘もあるが、シルチェスターは「会社との対話はこれまでも行ってきたが、われわれの要望が理解されなかった」と、しびれを切らしたという。 シルチェスターが問題視したのは、京都銀行の利益構造だ。任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった。 そこでシルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた。シルチェスターは「受取配当金を盾にごまかしをするのではなく、コアの銀行業務の収益性改善に確実に注力させる」案だと胸を張った。) 京都銀行は当時、2021年末に総還元性向50%程度という地銀最高水準の還元方針を策定したばかりだった。2022年1月に4年ぶりとなる自己株取得も発表していた。そんな中で受けたシルチェスターの提案を「地域金融機関である当行の特徴を考慮しない、短期的な視点に立脚したもの」と断じた。すると、シルチェスターは「(京都銀行の説明は)認識の甘さと財務的洞察力の欠如を示すもの」と反発。両社の対立は決定的となった。 結局、2022年6月の定時株主総会では、シルチェスターの株主提案への賛成率は25%にとどまった。だが、これでシルチェスターが諦めると見る向きは少なかった』、「任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった・・・シルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた」、京都の優良企業からの「配当」が大幅黒字なのに、「本業は赤字」とは苦しく、「物言う株主」に付け入れられたようだ。
・『株を買い増し臨戦態勢 これは来年も仕掛けるな」。地銀関係者の間では、2023年も京都銀行が株主提案を受領するという見方が早くから広がっていた。総会後、シルチェスターは京都銀行の株を買い進めていたからだ。 シルチェスターは2022年、京都銀行のほかに岩手、滋賀、中国(現ちゅうぎんフィナンシャルグループ)の3行にも同様の株主提案を行っていた。しかし、株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている』、「シルチェスター」が「株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている」、不運にも狙われたものだ。
・『シルチェスターが過去株主提案した地銀の保有比率 対する京都銀行は、提案を受けた危機感もあってか、さらなる還元強化に踏み込んだ。2023年1月には2年連続となる自己株取得の実施を発表し、3月に策定した中期経営計画では総還元性向を「50%程度」から「50%以上」へと引き上げた。2024年3月期の総還元性向は60%超となる見通しだ。リスク資産への投資や還元強化による自己資本比率の縮減など、過去の中計では見られなかった資本政策も掲げた。 だが、シルチェスターは納得しなかった。「資本配分政策の変更を発表しない限り、株主総会において議案を提出する」。3月下旬、シルチェスターは京都銀行に書簡を送付した。やり玉に挙げたのはROE(自己資本利益率)とPBR(株価純資産倍率)だ。 シルチェスターは資本コストを上回る水準として、かねて10%以上のROEを投資先企業に求めている。京都銀行に対しても、2022年に行った株主提案の中でROEの低さを指摘していた。特別配当の実施は還元強化に加えて、資本の圧縮を促す意図もある。 PBRについては、1倍に引き上げるための計画を求めた。2022年の株主提案ではPBRに関する言及がなかったが、東京証券取引所が上場企業に対してPBRなどの改善策を求めた動きに呼応したものと見られる。今回の株主提案ではPBRの改善を期待してか、昨年にはなかった自社株買いが追加されている。 京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した』、「京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した」、やむを得ないだろう。
・『要求水準まで提案は続く 通常の場合、弊社は当会社(京都銀行)の更新後の中期経営計画を支持し、取締役会に対する賛成票を投じることでしょう」。26日の公表文の中で、シルチェスターは京都銀行が資本政策の見直しに踏み切ったこと自体は評価している。だが、あくまで同社の要求水準に達していない限り、株主提案を行うというスタンスだ。 関係者によれば、シルチェスターの目的は必ずしも株主提案を可決することだけではないという。「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」。両社が「停戦」を迎える兆しは見えない』、「「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」、なるほど。
次に、本年4月14日付け東洋経済オンライン「花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」」を紹介しよう。
・『「花王は今こそよりよい企業になるべきだ」 モノ言う株主として知られるオアシス・インベストメント・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者が来日し、4月8日の会見で花王に対する要求をぶちまけた。 オアシスによれば、花王にコンタクトしたのは約9カ月前のこと。社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された。 オアシスは花王株の3%超を握っているとする。直近ではドラッグストアのツルハホールディングス(HD)やエレベーターメーカーのフジテックなどの株式を買い増してきた。ただ、花王の時価総額は約2.8兆円。オアシスの日本での投資案件としては最大規模とみられる』、「社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された」、なるほど。
・『強面ファンドの変化 オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ。) ツルハHDでも取締役会が鶴羽順社長ら創業家に牛耳られており、ガバナンス面で問題があると訴えた。最終的にイオンに保有株式を約1000億円で売却することでエグジットしたが、手法は似ている。 今年3月にはMBO(経営陣による買収)をめぐって買い付け価格に異議を唱えた大正製薬HD案件でも、土地の売買について創業家を攻撃している。 だが今回、花王に突きつけた要求は、これまで得意としてきた“戦法”とは中身が異なる』、「オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ」、コーポレート・ガバナンスを徹底する上で果たしている役割は無視できない。
・『ブランド集約は”不十分” 8日の会見でセス氏は「海外大手ブランドと比べても花王のブランドは多すぎる。もっと絞り込むべきだ」と主張。さらに「優れた製品があるにもかかわらず、積極的な海外展開が見られない」と日本国外の市場へのより積極的な進出を訴えた。 確かに花王はここ数年、業績不振に悩まされてきた。 2019年度まで7期連続で営業最高益を更新したが、20年度以降は4期連続の営業減益。19年度に2117億円あった営業利益は、23年度に600億円まで縮小。23年度に計上した547億円の構造改革費用を除いても、収益悪化は明白だ。 背景にはインバウンド需要剥落や原料高騰といった外部要因のみならず、花王固有の問題が重なっている。 オアシスの指摘どおり、花王は過去10年間で商品数が倍増している。消費者ニーズの広がりに合わせて商品を細分化したためだが、結果として1つの商品に充てるマーケティング費用や研究費が分散した。 海外進出も出遅れている。花王の消費者向け(コンシューマープロダクツ)事業の23年度の海外売上比率は35%にとどまる。) 花王は足元で利益重視に方針転換し、低収益なSKU(商品の品目数)の削減や、ブランドの売却・撤退を進めている。 昨年8月には紙おむつ「メリーズ」の中国生産撤退を発表。化粧品では中価格帯メイク「コフレドール」「オーブ」の販売終了を決めた。茶飲料「ヘルシア」はキリンビバレッジに売却する。スキンケアの海外展開では、とがった技術を武器に攻略を目指している。独自技術を生かせる領域で、差別化を図る戦略を掲げる。 しかし、オアシスはこれでは不十分と指摘する。例えば、長谷部佳宏社長は21年1月の社長就任時に、「アナザー花王」という新事業の構想を掲げた。「未来の成長エンジンとなる新事業」として、健康状態の予測ができる技術などを事業化する方針だ。 だが、オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい』、「オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい」、なるほど。
・『経営陣の交代に含み セス氏は「(社長交代が必要とは)今日は言わないでおく」と経営トップのすげ替え要求に含みを持たせた。意見の対立がさらに先鋭化すれば株主総会で議決権の奪い合いに発展する可能性もある。 花王側は「オアシスの主張では、23年度決算で示した積極的なポートフォリオ管理と構造改革について、残念ながら十分な理解がなされていません」(4日リリース)と公表した。 改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか。多くのファンを抱えるブランドを展開する花王だけに、影響は大きい。議論の行方次第では、消費者をも巻き込んだ“場外乱闘”へと発展しかねない』、「改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか」、大いに注目される。
第三に、5月10日付け東洋経済オンライン「京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ」を紹介しよう。
・『「京成電鉄は強い。ファンドの要求に応じているようでいて、実はまともに対峙していないように見える」。大手私鉄のある幹部はそう語る。 千葉、東京東部などを地盤とする京成電鉄とアクティビスト(物言う株主)の対立がヒートアップしている。イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求していた。 当初は勧告的な内容にとどめていたが、京成電鉄側が拒否したため、法的拘束力のある株主提案として再提出した』、「イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求」、なるほど。
・『パリサーとは10回以上の会談 パリサー側の資料によると、京成電鉄の取締役会とは2021年8月に協議を開始している。このころに京成電鉄株を取得したと推察される。 これまで両者は10回以上にわたりオンラインや対面でミーティングを実施してきた。OLC株の売却などを要請するパリサーに対し、京成電鉄側は「OLC株の売却は当面ない」などと対立の姿勢を見せていた。 だが、2024年2月に330億円を上限とする自己株買いを発表。さらに3月には約1640万株のOLC株式を801億円で譲渡し、保有比率を約19%と1%ポイント引き下げた。売却益は特別配当として、株主に一部還元した。 譲歩の姿勢を見せたように映る京成電鉄だが、パリサー側は対応に不満を募らせる。「OLC株1%の売却自体は歓迎。大きな一歩。だが、成長戦略や株主還元の意識は到底足りない」と、京成電鉄の内情に詳しい市場関係者は指摘する。) 株価もこの市場関係者の不満を反映しているかのようだ。OLC株1%売却と増配の発表を受けた4月30日、京成電鉄の株価(終値)は5893円と前営業日終値比で0.6%下落した。株式市場の反応は冷ややかだった。 「これが株式市場の評価だ。しぶしぶ、1%を売ったことが市場に見透かされている。これでは(この程度の規模の売却では)ダメでしょう、というのが投資家の大半の見方ではないか」(別の市場関係者) 京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた。 京成電鉄は明治時代の1909年に、成田山新勝寺の参拝輸送を目的に設立された「京成電気軌道」を起源とする。その後、東京への延伸を繰り返し、1960年には「押上ー浅草橋」駅間を開業。東京圏の需要は大きく、安定成長していった』、「京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた」、「一種の祖業」とは苦しい位置づけだ。
・『京成にとってOLC株は「打ち出の小槌」 一方、OLCの設立は1960年。浦安沖の海面を埋め立て、商住地域の開発と一大レジャーランドの建設を行い、国民の文化などに寄与することを目的に創業した。 OLCの設立に大きく関わったのが、当時の社長であり、京成電鉄の「中興の祖」と言われる川崎千春氏だ。アメリカでディズニーランドを体験した川崎氏は、帰国後、三井不動産の江戸英雄社長(当時)らとともに、「オリエンタルランド設立計画趣意書」をまとめた。 OLCが創業時に事務所を置いたのは当時の京成電鉄の本社(東京都上野)でもあった。 その後、京成電鉄は「打ち出の小槌」のようにOLC株を少しずつ売却して、設備投資や自己株買いの資金として充当してきた。2023年9月末時点での保有比率は20%弱。筆頭株主ではあるが、子会社ではなく持ち分適用会社となっている。 ところが、京成電鉄の時価総額1兆円強に対し、OLCの時価総額は7兆9000億円(ともに5月8日時点)。京成電鉄の保有比率に換算すると、京成電鉄が持つOLC株の時価は京成電鉄の時価総額を上回ることになる。 この「資本のねじれ」につけ込んだのが、2021年に設立されたパリサーだ。 パリサーの創業者で最高投資責任者であるジェームズ・スミス氏は、エリオット・マネジメントの出身。アメリカの投資ファンドであるエリオットは、「武闘派」のアクティビストとして知られる。 しかし京成電鉄は、折衝力に長けるパリサーに対し冷静な姿勢をこれまで崩さなかった。「パリサーは京成電鉄の老獪さに翻弄されているかのようだ」(市場関係者)との見方まである。) 株主提案をしたものの、パリサーの株式保有比率は1.6%に過ぎない。多くの株主の支持を得て決議を成立させるのはハードルが高そうだ。 京成電鉄がこの先、パリサーの要求に応じて保有比率を15%未満にするためにOLC株を約4%売却しすることは考えにくいようにも見える。ところが京成電鉄の関係者は、「京成電鉄がOLC株を大量に売っても不思議ではない」と話す。 上場企業は近年、資本コストや株価を意識した経営がより強く求められている。「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある』、「「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある」、どんな「資金需要」なのだろう。
・『資金使途が説明できれば株を売る? 京成電鉄にとって成田国際空港へのアクセス路線は収益柱だ。その成田空港は滑走路の新設など拡張計画を打ち出している。「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」(京成電鉄の関係者)。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A(企業合併・買収)を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す。 「京成電鉄の小林敏也社長が、『OLCが当社の持ち分適用会社であることにこだわる必要はない』と、周りにつぶやいている」――。市場関係者からは、こういった声も漏れ伝わってくる。 パリサーのOLC株に対する要求について、その対応を京成電鉄の広報・IR担当者に確認したところ、「個別の投資家に関することは回答できない」とした。 おりしも、エリオットからOLC株売却を求められている三井不動産は、その保有比率を徐々に減らしている。京成電鉄は現在の保有比率を継続するとなると、多額のOLC株を保有する合理性を説明できなければならない。 当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める』、「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」・・・。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A・・・を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す・・・当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める」、さて、実際にはどうするのだろうか。
先ずは、昨年4月28日付け東洋経済オンライン「京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求」を紹介しよう。
・『イギリスの投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは4月26日、京都銀行に対して株主提案を行う方針を明らかにした。4月30日までに、6月の定時株主総会に向けた提案書を会社側へ提出する。 シルチェスターによる京都銀行への株主提案は2度目だ。2022年の定時株主総会でも特別配当を求めたが否決に終わっている。リベンジとなる今年は1株あたり62円の特別配当に加えて、発行済み株式の1%にあたる、上限50億円の自己株取得も要求する構えだ。 京都銀行の広報担当者は「シルチェスターが株主提案の意向を表明したことは承知している。ただ、提案をまだ受領していないためコメントは控える」としている。1年に渡るつばぜり合いを経て、両社はまたも株主総会で衝突することになった』、興味深そうだ。
・『16年目の「豹変」 最初にシルチェスターが京都銀行の株式を取得したのは2006年9月。15年以上の間、株主提案を行ったことは一度もなく、どちらかと言えば穏健な株主とみなされていた。 牙を剥いたのは2022年4月だった。シルチェスターは1株当たり100円という会社側の配当計画にかみつき、別途132円の特別配当を求めると表明。地方銀行関係者を一様に驚かせた。 豹変の背景には運用体制の変更があったという指摘もあるが、シルチェスターは「会社との対話はこれまでも行ってきたが、われわれの要望が理解されなかった」と、しびれを切らしたという。 シルチェスターが問題視したのは、京都銀行の利益構造だ。任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった。 そこでシルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた。シルチェスターは「受取配当金を盾にごまかしをするのではなく、コアの銀行業務の収益性改善に確実に注力させる」案だと胸を張った。) 京都銀行は当時、2021年末に総還元性向50%程度という地銀最高水準の還元方針を策定したばかりだった。2022年1月に4年ぶりとなる自己株取得も発表していた。そんな中で受けたシルチェスターの提案を「地域金融機関である当行の特徴を考慮しない、短期的な視点に立脚したもの」と断じた。すると、シルチェスターは「(京都銀行の説明は)認識の甘さと財務的洞察力の欠如を示すもの」と反発。両社の対立は決定的となった。 結局、2022年6月の定時株主総会では、シルチェスターの株主提案への賛成率は25%にとどまった。だが、これでシルチェスターが諦めると見る向きは少なかった』、「任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった・・・シルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた」、京都の優良企業からの「配当」が大幅黒字なのに、「本業は赤字」とは苦しく、「物言う株主」に付け入れられたようだ。
・『株を買い増し臨戦態勢 これは来年も仕掛けるな」。地銀関係者の間では、2023年も京都銀行が株主提案を受領するという見方が早くから広がっていた。総会後、シルチェスターは京都銀行の株を買い進めていたからだ。 シルチェスターは2022年、京都銀行のほかに岩手、滋賀、中国(現ちゅうぎんフィナンシャルグループ)の3行にも同様の株主提案を行っていた。しかし、株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている』、「シルチェスター」が「株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている」、不運にも狙われたものだ。
・『シルチェスターが過去株主提案した地銀の保有比率 対する京都銀行は、提案を受けた危機感もあってか、さらなる還元強化に踏み込んだ。2023年1月には2年連続となる自己株取得の実施を発表し、3月に策定した中期経営計画では総還元性向を「50%程度」から「50%以上」へと引き上げた。2024年3月期の総還元性向は60%超となる見通しだ。リスク資産への投資や還元強化による自己資本比率の縮減など、過去の中計では見られなかった資本政策も掲げた。 だが、シルチェスターは納得しなかった。「資本配分政策の変更を発表しない限り、株主総会において議案を提出する」。3月下旬、シルチェスターは京都銀行に書簡を送付した。やり玉に挙げたのはROE(自己資本利益率)とPBR(株価純資産倍率)だ。 シルチェスターは資本コストを上回る水準として、かねて10%以上のROEを投資先企業に求めている。京都銀行に対しても、2022年に行った株主提案の中でROEの低さを指摘していた。特別配当の実施は還元強化に加えて、資本の圧縮を促す意図もある。 PBRについては、1倍に引き上げるための計画を求めた。2022年の株主提案ではPBRに関する言及がなかったが、東京証券取引所が上場企業に対してPBRなどの改善策を求めた動きに呼応したものと見られる。今回の株主提案ではPBRの改善を期待してか、昨年にはなかった自社株買いが追加されている。 京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した』、「京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した」、やむを得ないだろう。
・『要求水準まで提案は続く 通常の場合、弊社は当会社(京都銀行)の更新後の中期経営計画を支持し、取締役会に対する賛成票を投じることでしょう」。26日の公表文の中で、シルチェスターは京都銀行が資本政策の見直しに踏み切ったこと自体は評価している。だが、あくまで同社の要求水準に達していない限り、株主提案を行うというスタンスだ。 関係者によれば、シルチェスターの目的は必ずしも株主提案を可決することだけではないという。「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」。両社が「停戦」を迎える兆しは見えない』、「「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」、なるほど。
次に、本年4月14日付け東洋経済オンライン「花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」」を紹介しよう。
・『「花王は今こそよりよい企業になるべきだ」 モノ言う株主として知られるオアシス・インベストメント・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者が来日し、4月8日の会見で花王に対する要求をぶちまけた。 オアシスによれば、花王にコンタクトしたのは約9カ月前のこと。社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された。 オアシスは花王株の3%超を握っているとする。直近ではドラッグストアのツルハホールディングス(HD)やエレベーターメーカーのフジテックなどの株式を買い増してきた。ただ、花王の時価総額は約2.8兆円。オアシスの日本での投資案件としては最大規模とみられる』、「社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された」、なるほど。
・『強面ファンドの変化 オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ。) ツルハHDでも取締役会が鶴羽順社長ら創業家に牛耳られており、ガバナンス面で問題があると訴えた。最終的にイオンに保有株式を約1000億円で売却することでエグジットしたが、手法は似ている。 今年3月にはMBO(経営陣による買収)をめぐって買い付け価格に異議を唱えた大正製薬HD案件でも、土地の売買について創業家を攻撃している。 だが今回、花王に突きつけた要求は、これまで得意としてきた“戦法”とは中身が異なる』、「オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ」、コーポレート・ガバナンスを徹底する上で果たしている役割は無視できない。
・『ブランド集約は”不十分” 8日の会見でセス氏は「海外大手ブランドと比べても花王のブランドは多すぎる。もっと絞り込むべきだ」と主張。さらに「優れた製品があるにもかかわらず、積極的な海外展開が見られない」と日本国外の市場へのより積極的な進出を訴えた。 確かに花王はここ数年、業績不振に悩まされてきた。 2019年度まで7期連続で営業最高益を更新したが、20年度以降は4期連続の営業減益。19年度に2117億円あった営業利益は、23年度に600億円まで縮小。23年度に計上した547億円の構造改革費用を除いても、収益悪化は明白だ。 背景にはインバウンド需要剥落や原料高騰といった外部要因のみならず、花王固有の問題が重なっている。 オアシスの指摘どおり、花王は過去10年間で商品数が倍増している。消費者ニーズの広がりに合わせて商品を細分化したためだが、結果として1つの商品に充てるマーケティング費用や研究費が分散した。 海外進出も出遅れている。花王の消費者向け(コンシューマープロダクツ)事業の23年度の海外売上比率は35%にとどまる。) 花王は足元で利益重視に方針転換し、低収益なSKU(商品の品目数)の削減や、ブランドの売却・撤退を進めている。 昨年8月には紙おむつ「メリーズ」の中国生産撤退を発表。化粧品では中価格帯メイク「コフレドール」「オーブ」の販売終了を決めた。茶飲料「ヘルシア」はキリンビバレッジに売却する。スキンケアの海外展開では、とがった技術を武器に攻略を目指している。独自技術を生かせる領域で、差別化を図る戦略を掲げる。 しかし、オアシスはこれでは不十分と指摘する。例えば、長谷部佳宏社長は21年1月の社長就任時に、「アナザー花王」という新事業の構想を掲げた。「未来の成長エンジンとなる新事業」として、健康状態の予測ができる技術などを事業化する方針だ。 だが、オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい』、「オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい」、なるほど。
・『経営陣の交代に含み セス氏は「(社長交代が必要とは)今日は言わないでおく」と経営トップのすげ替え要求に含みを持たせた。意見の対立がさらに先鋭化すれば株主総会で議決権の奪い合いに発展する可能性もある。 花王側は「オアシスの主張では、23年度決算で示した積極的なポートフォリオ管理と構造改革について、残念ながら十分な理解がなされていません」(4日リリース)と公表した。 改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか。多くのファンを抱えるブランドを展開する花王だけに、影響は大きい。議論の行方次第では、消費者をも巻き込んだ“場外乱闘”へと発展しかねない』、「改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか」、大いに注目される。
第三に、5月10日付け東洋経済オンライン「京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ」を紹介しよう。
・『「京成電鉄は強い。ファンドの要求に応じているようでいて、実はまともに対峙していないように見える」。大手私鉄のある幹部はそう語る。 千葉、東京東部などを地盤とする京成電鉄とアクティビスト(物言う株主)の対立がヒートアップしている。イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求していた。 当初は勧告的な内容にとどめていたが、京成電鉄側が拒否したため、法的拘束力のある株主提案として再提出した』、「イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求」、なるほど。
・『パリサーとは10回以上の会談 パリサー側の資料によると、京成電鉄の取締役会とは2021年8月に協議を開始している。このころに京成電鉄株を取得したと推察される。 これまで両者は10回以上にわたりオンラインや対面でミーティングを実施してきた。OLC株の売却などを要請するパリサーに対し、京成電鉄側は「OLC株の売却は当面ない」などと対立の姿勢を見せていた。 だが、2024年2月に330億円を上限とする自己株買いを発表。さらに3月には約1640万株のOLC株式を801億円で譲渡し、保有比率を約19%と1%ポイント引き下げた。売却益は特別配当として、株主に一部還元した。 譲歩の姿勢を見せたように映る京成電鉄だが、パリサー側は対応に不満を募らせる。「OLC株1%の売却自体は歓迎。大きな一歩。だが、成長戦略や株主還元の意識は到底足りない」と、京成電鉄の内情に詳しい市場関係者は指摘する。) 株価もこの市場関係者の不満を反映しているかのようだ。OLC株1%売却と増配の発表を受けた4月30日、京成電鉄の株価(終値)は5893円と前営業日終値比で0.6%下落した。株式市場の反応は冷ややかだった。 「これが株式市場の評価だ。しぶしぶ、1%を売ったことが市場に見透かされている。これでは(この程度の規模の売却では)ダメでしょう、というのが投資家の大半の見方ではないか」(別の市場関係者) 京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた。 京成電鉄は明治時代の1909年に、成田山新勝寺の参拝輸送を目的に設立された「京成電気軌道」を起源とする。その後、東京への延伸を繰り返し、1960年には「押上ー浅草橋」駅間を開業。東京圏の需要は大きく、安定成長していった』、「京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた」、「一種の祖業」とは苦しい位置づけだ。
・『京成にとってOLC株は「打ち出の小槌」 一方、OLCの設立は1960年。浦安沖の海面を埋め立て、商住地域の開発と一大レジャーランドの建設を行い、国民の文化などに寄与することを目的に創業した。 OLCの設立に大きく関わったのが、当時の社長であり、京成電鉄の「中興の祖」と言われる川崎千春氏だ。アメリカでディズニーランドを体験した川崎氏は、帰国後、三井不動産の江戸英雄社長(当時)らとともに、「オリエンタルランド設立計画趣意書」をまとめた。 OLCが創業時に事務所を置いたのは当時の京成電鉄の本社(東京都上野)でもあった。 その後、京成電鉄は「打ち出の小槌」のようにOLC株を少しずつ売却して、設備投資や自己株買いの資金として充当してきた。2023年9月末時点での保有比率は20%弱。筆頭株主ではあるが、子会社ではなく持ち分適用会社となっている。 ところが、京成電鉄の時価総額1兆円強に対し、OLCの時価総額は7兆9000億円(ともに5月8日時点)。京成電鉄の保有比率に換算すると、京成電鉄が持つOLC株の時価は京成電鉄の時価総額を上回ることになる。 この「資本のねじれ」につけ込んだのが、2021年に設立されたパリサーだ。 パリサーの創業者で最高投資責任者であるジェームズ・スミス氏は、エリオット・マネジメントの出身。アメリカの投資ファンドであるエリオットは、「武闘派」のアクティビストとして知られる。 しかし京成電鉄は、折衝力に長けるパリサーに対し冷静な姿勢をこれまで崩さなかった。「パリサーは京成電鉄の老獪さに翻弄されているかのようだ」(市場関係者)との見方まである。) 株主提案をしたものの、パリサーの株式保有比率は1.6%に過ぎない。多くの株主の支持を得て決議を成立させるのはハードルが高そうだ。 京成電鉄がこの先、パリサーの要求に応じて保有比率を15%未満にするためにOLC株を約4%売却しすることは考えにくいようにも見える。ところが京成電鉄の関係者は、「京成電鉄がOLC株を大量に売っても不思議ではない」と話す。 上場企業は近年、資本コストや株価を意識した経営がより強く求められている。「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある』、「「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある」、どんな「資金需要」なのだろう。
・『資金使途が説明できれば株を売る? 京成電鉄にとって成田国際空港へのアクセス路線は収益柱だ。その成田空港は滑走路の新設など拡張計画を打ち出している。「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」(京成電鉄の関係者)。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A(企業合併・買収)を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す。 「京成電鉄の小林敏也社長が、『OLCが当社の持ち分適用会社であることにこだわる必要はない』と、周りにつぶやいている」――。市場関係者からは、こういった声も漏れ伝わってくる。 パリサーのOLC株に対する要求について、その対応を京成電鉄の広報・IR担当者に確認したところ、「個別の投資家に関することは回答できない」とした。 おりしも、エリオットからOLC株売却を求められている三井不動産は、その保有比率を徐々に減らしている。京成電鉄は現在の保有比率を継続するとなると、多額のOLC株を保有する合理性を説明できなければならない。 当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める』、「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」・・・。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A・・・を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す・・・当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める」、さて、実際にはどうするのだろうか。
タグ:「物言う株主」(アクティビスト・ファンド) (その6)(京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求、花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」、京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ) 東洋経済オンライン「京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求」 「任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった・・・シルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、 および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた」、京都の優良企業からの「配当」が大幅黒字なのに、「本業は赤字」とは苦しく、「物言う株主」に付け入れられたようだ。 「シルチェスター」が「株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている」、不運にも狙われたものだ。 「京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した」、やむを得ないだろう。 「「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」、なるほど。 東洋経済オンライン「花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」」 「社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された」、なるほど。 「オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ」、コーポレート・ガバナンスを徹底する上で果たしている役割は無視できない。 「オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい」、なるほど。 「改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか」、大いに注目される。 東洋経済オンライン「京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ」 「イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求」、なるほど。 「京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた」、「一種の祖業」とは苦しい位置づけだ。 「「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある」、どんな「資金需要」なのだろう。 「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」・・・。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A・・・を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す・・・当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める」、さて、実際にはどうするのだろうか。
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