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政府財政問題(その10)(MMT信者がインフレ期に決まって口にすること、「血の出るような努力」でバラマキ財政を脱却せよ!今すぐ取り組むべき3つの課題とは? コロナ禍が収束した今こそ、財政運営は平時に復帰せよ 2024年度当初予算は正常化へ立ち返る意志が欠如、「日本は財政赤字で将来ヤバイ」→実は財政赤字が縮小していた!【エコノミストがデータで解説】) [経済政策]

政府財政問題については、本年2月8日に取上げた。今日は、(その10)(MMT信者がインフレ期に決まって口にすること、「血の出るような努力」でバラマキ財政を脱却せよ!今すぐ取り組むべき3つの課題とは? コロナ禍が収束した今こそ、財政運営は平時に復帰せよ 2024年度当初予算は正常化へ立ち返る意志が欠如、「日本は財政赤字で将来ヤバイ」→実は財政赤字が縮小していた!【エコノミストがデータで解説】)である。

先ずは、本年3月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した英国の経済学者のスティーヴン・D・キング氏と翻訳家の千葉敏生氏による「MMT信者がインフレ期に決まって口にすること」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339710
・『たびたびニュースを騒がせている「インフレ」。実は日本では実に40~50年ぶりであることをご存じだろうか(日本のバブル期には資産価格は上がったが、物価はほぼ上がらなかった)。インフレを経験として知っている人は少ない。そんななか、これから物価が上昇していく時代に突入しようとしている。 本連載では、ローレンス・サマーズ元米国財務長官が絶賛したインフレ解説書『僕たちはまだ、インフレのことを何も知らない』から、「そもそもインフレとは何か?」「インフレ下では何が起こるのか?」「インフレ下ではどの資産が上がる/下がるのか?」といった身近で根本的な問いに答えている部分を厳選して紹介する』、「「インフレ」。実は日本では実に40~50年ぶり・・・日本のバブル期には資産価格は上がったが、物価はほぼ上がらなかった」、改めて思い出した。
・『政府がインフレの誘惑に負けると何が起こるのか  究極的には、政府は増税に代わる狡猾な手段として、貨幣を印刷したいという誘惑に駆られる。そのメカニズムは状況に応じてさまざまだが、結果はたいてい同じだ。 その他の条件がすべて同じならば、インフレ率の上昇を招く金融緩和による政府借り入れの大幅な増加は、次の作用を及ぼすだろう。 (ⅰ)実質金利を低下させることで(現金資産に対する課税に相当)、貯蓄家から資産を奪い取る。 (ⅱ)為替レートを下落させ、輸入価格を上昇させることで(輸入品に対する付加価値税の増税に相当)、または物価を賃金と比べて相対的に上昇させることで(稀少資源を軍事転用しなければならない戦時中によく起こるように[*1])、消費者から資産を奪い取る。 (ⅲ)わずかばかりの貯蓄をインフレに強い資産ではなく現金で保有していることが多く、インフレ圧力の上昇に対する効果的な保護について交渉する能力に乏しい貧困者から資産を奪い取る。逆に、恩恵を受ける可能性があるのは、住宅ローンを抱える人々、価格支配力を持つ人々(大企業、労組加入の労働者)、そしてもちろん、政府の財政に責任を負う人々だ。しかし、このプロセスは秘密裏に進むとともに、このうえなく非民主的でもある』、「貯蓄家から資産を奪い取る」、「消費者から資産を奪い取る」、「貧困者から資産を奪い取る」、「恩恵を受ける可能性があるのは、住宅ローンを抱える人々、価格支配力を持つ人々」、「このプロセスは秘密裏に進むとともに、このうえなく非民主的でもある」、その通りだ。
・『MMT信者がインフレ対策でよく主張する2つのこと  おまけに、インフレが実際に姿を現わすと、MMTの支持者たちは、インフレ全般を抑制するかわりに、より問題のある分野(最たる例はエネルギー分野)の需要を制限するか、供給を押し上げることが解決策になる、と主張することが多い。 この考え方の根底には、歴史の不思議な解釈がある。たとえば、1980年代、「最終的にインフレを終結させたのは、中東で交渉された平和条約[*2]と、カーター政権下の規制緩和の恩恵を受けた代替エネルギー源、つまり天然ガスの開発だった[*3]」という主張がその1つだ。 それと同様のことをする、というのが2022年中盤に出された提言だった。 ウクライナ戦争の解決の交渉が必要だ。また、(長く先延ばしになっている)再生可能エネルギーへの投資も必要だ。(中略)Fedにはインフレ率は下げられない。エネルギー価格は下げられないからだ。(中略)バイデン大統領は腹を割ってアメリカ国民に語りかけるべきだ。(中略)不要不急の旅行を避けるよう呼びかけ、(中略)雇用主に在宅勤務を認めるよう促し、(中略)公共交通を全乗客に対して無料化し、(中略)港での滞留を緩和し、(中略)住宅を建設するのだ![*4] どれも立派な提言だが、この文章が書かれる頃には、ウイルスパンデミックはインフレパンデミックへと姿を変えていた。アメリカのインフレ率を上昇させていた犯人はエネルギー価格だけではなかった。耐久消費財、非耐久消費財、サービス、そして遅ればせながら人件費。何もかもがどんどん値上がりしていった。 平和条約の実現を待つとか、単純に供給が需要に追いつくのを期待するというのは、希望的観測でしかなく、インフレ対策に有効な政策の選択肢とはいえなかった。 1940年、ジョン・メイナード・ケインズが有名な著書『戦費調達論』を記したのは、戦争がインフレの元凶だと正確に認識していたからだ。彼の答えは複雑で、戦争終結時まで「消費を繰り延べる」ための貯蓄政策を含むものだった。しかし、彼の提言は、アドルフ・ヒトラーとの「解決の交渉」から始まったりはしなかった[*5]』、「ウイルスパンデミックはインフレパンデミックへと姿を変えていた。アメリカのインフレ率を上昇させていた犯人はエネルギー価格だけではなかった。耐久消費財、非耐久消費財、サービス、そして遅ればせながら人件費。何もかもがどんどん値上がりしていった」、なるほど。
・『MMTは「虚構」である  単純に、MMTの支持者たちはインフレなど眼中にないのだ、と結論づけたくなる。誰でもそうだが、彼らもインフレが起こらないに越したことはない、と思っている。 しかし、実際にインフレが起きると、彼らは目先の経済的な痛みを避けようとして、あわてて適当な言葉で取り繕ったり、説得力に欠く解決策を提案したりする。 そもそも、印刷機(現代における物価安定の最大の脅威)が政府債務を穴埋めする最も手軽で信頼できる道具だ、と信じる学派なのだから、それもしかたないのだろうが。 彼らもまた、財政政策が金融政策から完全に独立していると口では言いつつも、テイラーとバートンと同じ道〔財政政策と金融政策が結びつくこと〕を歩んでいるのだ。 しかし、従来のアプローチとMMTのアプローチには1つ、大きな違いがある。従来のフレームワークの支持者は、金融政策に対する財政支配〔財政当局が先導的な立場に立ち、金融政策が財政政策に従属している状態。←→金融支配〕を嫌う。政治的なご都合主義は物価の不安定性を高めるだけだ、と心配しているからだ。 彼らはまた、財政政策と金融政策という2種類の政策的な「てこ」を分離できる、と思い込んでいる。そのほうがすっきりしているからだ。 対照的に、MMTの支持者たちは、財政支配を支持している。その根底には、政府が印刷機の誘惑に逆らえるはずだ、という歪んだ歴史観があるように思えてならない。 つまり彼らの世界では、信用できない存在は金融当局だけなのだ。だが、それは虚構の世界であり、じっくりと観察のなされた事実とはいえない。 注 *1 よく用いられる代替策(または追加策)が配給だ。 *2 どの平和条約なのかは明記されていない。原油価格は1985年に暴落したが、イラン・イラク戦争は1988年の停戦まで続いた。いずれにせよ、インフレ体験は国によってまちまちだったので、金融政策の違いが重要な役割を果たしたことに疑いの余地はない。 *3以降の注は省略)』、「MMTの支持者たちは、財政支配を支持している。その根底には、政府が印刷機の誘惑に逆らえるはずだ、という歪んだ歴史観があるように思えてならない。 つまり彼らの世界では、信用できない存在は金融当局だけなのだ。だが、それは虚構の世界であり、じっくりと観察のなされた事実とはいえない」、その通りだ。

次に、4月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した財政評論家の米澤潤一氏による「「血の出るような努力」でバラマキ財政を脱却せよ!今すぐ取り組むべき3つの課題とは? コロナ禍が収束した今こそ、財政運営は平時に復帰せよ 2024年度当初予算は正常化へ立ち返る意志が欠如」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341476
・『ただでさえ大きな日本の国債残高はコロナ禍の4年間でさらに200兆円、率にして24%も増えた。この間の財政運営にも問題が多いとはいえ、コロナ禍が収束した現在、これを引きずることなく正常な平時の財政運営に復帰することが急務である。しかし、2024(令和6)年度当初予算にはその決意が欠けている。日本財政の現状を踏まえた上で将来を見据え、コロナ禍後の財政運営の課題を示す』、興味深そうだ。
・『直近4年間で国債残高が200兆円も増加  コロナ禍直前の2019(令和元)年度末から直近23(令和5)年度末までの4年間で、(借換債の前倒し発行を除いた)実勢国債残高は約200兆円増えた。それ以前9年間分の増加額に半分以下の年数で達しており、結果として国債残高の対GDP比は159.2%から186.7%へと27.5%ポイントも上昇した。 本誌23年5月30日号掲載の拙稿「積み上がった国債残高『1,000兆円』の要因分析と今後の課題」(以下、前稿)で解説しているとおり、国債残高は特殊要因を除きプライマリーバランス(PB)の赤字と利払い費等の合計額だけ増加する。これに沿ってこの4年間200兆円の増加要因を分析すると、利払い費などはわずか30兆円強で、残り170兆円弱がこの間のPBの赤字の累計である(図表1)。 (図表1:コロナ期の財政悪化状況 はリンク先参照) このPB赤字をもたらした要因の過半を占めるのが、20(令和2)年度から22(令和4)年度までの3年間の補正追加141兆円であり、その内訳は図表2のとおりである。感染拡大防止や医療体制整備などの直接的コロナ対策費はわずか1割強の14.6兆円にとどまっている。残りの経費を見れば、雇用維持・事業継続といった経済対策はまだしも、10万円一律給付というバラマキや、感染拡大防止に逆行した「Go To ××」をはじめとする飲食宿泊旅行業者支援や、デジタル化・防衛費といった便乗、使途不明な地方交付金などで、ひいき目に見ても半分は財政法の補正予算の要件に該当しない不要不急の補正追加だったといわざるを得ない。 (図表2:2020(令和2)~22(令和4)年度の補正追加141兆円の内訳 はリンク先参照) このことは、その分だけ財政を悪化させたということだけにとどまらない。コロナ禍対策など時々の旗印があれば何でも許される風潮を常態化させ、将来にわたって安易な財政出動が繰り返される先例となることが何よりも恐ろしい。コロナ禍が収束した今こそ、こうした風潮を払拭し、財政の現状に対する危機感と改善に向けた真剣な努力を復活することが求められている。24(令和6)年度の財政運営は、平時への復帰初年度として、その第一歩を踏み出すか否かの試金石といえるはずだ』、「PB赤字をもたらした要因の過半を占めるのが、20(令和2)年度から22(令和4)年度までの3年間の補正追加141兆円であり、その内訳は図表2のとおりである。感染拡大防止や医療体制整備などの直接的コロナ対策費はわずか1割強の14.6兆円にとどまっている。残りの経費を見れば、雇用維持・事業継続といった経済対策はまだしも、10万円一律給付というバラマキや、感染拡大防止に逆行した「Go To ××」をはじめとする飲食宿泊旅行業者支援や、デジタル化・防衛費といった便乗、使途不明な地方交付金などで、ひいき目に見ても半分は財政法の補正予算の要件に該当しない不要不急の補正追加だったといわざるを得ない」「ひいき目に見ても半分は財政法の補正予算の要件に該当しない不要不急の補正追加だった」とは酷い話だ。特に「Go To ××」は悪乗りした悪手だ。
・『平時への回帰の兆候が見えない24年度当初予算  差し当たっては、先に成立した当初予算について、いわばコロナ禍からの脱却の第一歩が踏み出されているか否かを評価してみたい。 財務省が公表している23(令和5)年度当初予算との対比では、24(令和6)年度当初予算は国債発行額が微減、PB赤字が10.8兆円から8.8兆円へと2兆円減少しており、心持ち改善しているようにも見える。しかし、実は23(令和5)年度歳出には防衛力強化のための将来年度支出の財源となる「防衛力強化資金繰入」が3.4兆円含まれている。仮にこれを考慮すれば実質的には改善になっていない。 その上、そもそも23(令和5)年度予算にはコロナ対策の後遺症的なものも含まれていることから、両者の比較ではポストコロナ予算初年度としての評価には適さない。そこで、本稿ではコロナ禍直前、いわば直近平時に策定された20(令和2)年度当初予算との比較で分析する(図表3)。 (図表3:2020(令和2)年度と24(令和6)年度の当初予算対比 はリンク先参照) 注目すべきことは、コロナ禍にもかかわらず、この4年間の税収は好調で、減税前で8.5兆円増加したことだ。これは消費税率の8%への引き上げが実現した14(平成26)年度以降7年度分の増収を上回る。税外収入の増加額を加えると9.4兆円の増収となった。 残念なことにこれで気が緩んだのか、この税収増は財政改善には回らず、減税2.4兆円、歳出増9.9兆円に充てられた。結果、国債発行額は2.9兆円増え、PBの改善はわずか0.8兆円で、税収等増加分の1割以下にとどまった。リーマンショックから回復した11(平成21)年度以降の当初予算では、国債発行額が10年連続で減少を続け、国債残高の対GDP比も低下はしないものの、緩やかな上昇にとどまっていた。そのように控えめながら財政改善への努力が営々と続いたコロナ以前の路線(図表4)には復帰していないということだ。 (図表4:リーマンショック以降の当初予算国債発行額と国債残高GDP比の推移 はリンク先参照) 当初予算での歳出構造の改革については、前稿で、社会保障における受益と負担の不均衡是正、地方交付税等の水準適正化などを課題として提起した。しかし今回、当初予算での歳出構造の改革にも見るべきものがない。まさに財政改善への意欲の欠如の現れである。一方で社会保障と防衛以外の社会インフラや、科学技術などの成長の基盤は横ばいないし減少している。つまり、経済の活力をそいでいるか、財政法を無視した補正予算での計上が常態化するなどの弊害が生じているということだ』、「財政法を無視した補正予算での計上が常態化するなどの弊害が生じている」、その通りだ。
・『ポストコロナにおける財政運営の課題  前稿で詳しく分析したとおり、現在の国債残高1,000兆円超の発生要因は4割が利払い費など、6割がPB赤字の累計によるものである。そのPB赤字累計600兆円をさらに分解すると、その6割が当初予算から計上されている構造的要因、残り4割が年度途中の補正追加などによる臨時的要因である。 コロナ禍が収束して平時に戻った今日、財政の持続可能性を回復し、将来また起こり得るリーマンショックやコロナ禍に匹敵するような不測事態や大規模災害に備え、財政の機動力を確保するために財政改善が急務である。そのためには、この構造的要因と臨時的要因の双方について改革が必要である。 今年度については、前述のとおり当初予算での構造的要因の改善には残念ながら見るべきものがないが、もはや予算は成立しているので、この点は来年度以降の予算に期待するほかない。そう考えると24(令和6)年度財政運営の正念場は、年度内の執行や補正予算編成にかかっている。予算の概算決定をやり直すという異例なプロセスで倍額の1兆円にまで上積みされた一般予備費や、新規の「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」をどう使うかなども今後の注目点となる。 平時に戻った24(令和6)年度こそ、コロナ禍の時期に(「やむを得ず」という気持ちからにしても)営んだ財政法無視の「何でもあり」の財政運営から完全に脱却して、財政法の原則に沿った財政運営に復帰すべきである。具体的には、次の三つを励行してほしい。 一つ目は、補正予算を財政法29条の「予算策定後の事由に基づき特に緊要となった経費」に限るという原点に立ち戻り、災害復旧等、真にやむを得ないものに限ることだ。ましてや補正予算での予備費積み増しなどという憲法違反の疑いがあるような措置を繰り返さないことは言うまでもない。 二つ目は、税の自然増収や歳出不用による剰余金発生が見込まれる場合には、法律どおり特例公債の発行をその分だけ減額し、剰余金を発生させないようにすることだ。そして、摩擦的に剰余金が発生した場合にはその全額を公債償還財源に充てるべきである。 そして三つ目は、前述のとおり、当初予算に計上したそれぞれ1兆円の一般予備費と「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」の取り扱いだ。これらの執行に厳正を期することが求められる』、「平時に戻った24(令和6)年度こそ、コロナ禍の時期に(「やむを得ず」という気持ちからにしても)営んだ財政法無視の「何でもあり」の財政運営から完全に脱却して、財政法の原則に沿った財政運営に復帰すべきである。具体的には、次の三つを励行してほしい。 一つ目は、補正予算を財政法29条の「予算策定後の事由に基づき特に緊要となった経費」に限るという原点に立ち戻り、災害復旧等、真にやむを得ないものに限ること・・・二つ目は、税の自然増収や歳出不用による剰余金発生が見込まれる場合には、法律どおり特例公債の発行をその分だけ減額し、剰余金を発生させないようにすることだ・・・三つ目は、前述のとおり、当初予算に計上したそれぞれ1兆円の一般予備費と「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」の取り扱いだ。これらの執行に厳正を期することが求められる」、なるほど。
・『実現可能な中長期的財政改善計画を  さらに1点ほど制度的な観点を追加しておきたい。1975(昭和50)年度の特例公債依存以降、財政再建ないし財政構造改革の必要性は認識され、改善目標が繰り返し提示されては挫折してきた。 最初は翌76(昭和51)年5月、三木武夫内閣で80(昭和55)年度の特例公債脱却がうたわれた。この目標は2度先延ばしされた後、90(平成2)年度にいったん実現した。これが史上唯一の実現で、その後はことごとく挫折の歴史をたどる。 バブル崩壊後、一時景気回復が見られた橋本龍太郎内閣時代の96(平成8)年には、2003(平成15)年度の財政赤字GDP比をEU基準並みの3%以下に引き下げることと、特例公債脱却を柱とする包括的な財政構造改革法が立案され、国会に提出された。しかし、不幸なことにその成立は1997(平成9)年11月の金融危機直後の12月となり、同法は一度も施行されることなく翌98(平成10)年12月にお蔵入りとなった(図表5)。 (図表5:特例公債脱却目標と財政構造改革法の実績 はリンク先参照) その後2002(平成14)年には、小泉純一郎内閣が「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」で「2010年代初頭に国・地方のPBのGDP比黒字化を目指す」と提起した。それ以来計6回にわたって国・地方合計のPBのGDP比黒字化目標が掲げられたが、すべて画餅に帰している。 現在は7回目の「経済財政運営と改革の基本方針2018」の25年黒字化目標が生きていることになっている。しかし、24(令和6)年度予算の国会提出と同時に内閣府が公表した非現実的に楽観的な前提を置いた中長期財政試算によってすら、その実現は見込まれていない(図表6)。 (図表6:PB黒字化目標と実績 ハリンク先参照) 付言すれば、国・地方の合計PBが均衡しても地方が恒常的にプラス(1%前後)のため、国はなおマイナスである。地方交付税などの水準適正化が必要な理由の一つはこの点にある。 お蔵入りになった財政構造改革法のような具体的な改革方策を示さない限り、ただの空念仏を繰り返すだけに終わってしまう。高校時代のドイツ人教師から教わった「地獄への道は善意で敷き詰められている」という西洋のことわざが思い出される。 さらにいえば、防衛力強化策や少子化対策のように、追加的な歳出増加策をつまみ食い的に策定し、その財源すらまともに確保されていないようでは財政改善は望むべくもない。コロナ禍の収束後、平時に復帰した日本財政の在り方として、まずは現実的な前提の下に実効性のある歳入・歳出両面からの具体策を伴う全体像を策定すべきだ。その上でこれに沿って、血の出るような努力を計画的に一歩ずつ続けていく必要がある。必要な新規施策はその歳入歳出の全体像の中で、一体的に織り込むべきものである。(米澤氏の略歴はリンク先参照)』、「コロナ禍の収束後、平時に復帰した日本財政の在り方として、まずは現実的な前提の下に実効性のある歳入・歳出両面からの具体策を伴う全体像を策定すべきだ。その上でこれに沿って、血の出るような努力を計画的に一歩ずつ続けていく必要がある。必要な新規施策はその歳入歳出の全体像の中で、一体的に織り込むべきものである」、同感である。

第三に、5月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田 泰氏による「「日本は財政赤字で将来ヤバイ」→実は財政赤字が縮小していた!【エコノミストがデータで解説】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/343523
・『日本は財政赤字で大変なことになると言われているが、実は日本の財政赤字は縮小している。このことは何度も書いたのだが、残念ながらこの事実を認めて下さる方は少ない(例えば、「日本の財政は本当に危機的なのか?『ワニの口』財政理論のカラクリとは」)。加えて、将来は大変なことになるという方も多い。そこで将来の財政状況がどうなるかを予測してみたい。財政状況の指標としては政府債務対GDP比を用いる。なお、ここでの債務は、通常使われる粗債務ではなく、粗債務から政府の保有する金融資産を差し引いた純債務を用いている。後述するように、金利の動きが重要なので、政府が支払う金利と受け取る金利を相殺することが必要だからだ。なお、2023年の政府粗債務残高の対GDP比は260.1%、政府純債務残高の対GDP比は161.5%である』、興味深そうだ。
・『政府債務の対GDP比の変化はどう説明できるか  予測の上で重要なのは、「基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)」という概念である。政府支出のうち金利払いと元本返済のための支出を除いたものをE、政府収入をR、とするとE-Rが基礎的財政収支である。さらに金利をr、名目GDPをY、t+1期の政府債務をDt+1、前期の政府債務Dtとすると Dt+1=E-R+rDt+Dt となる。この式の意味は、当たり前だが、今期の政府債務Dは、基礎的財政収支E-Rと政府債務の利払い(金利×前期の政府債務)と前期の政府債務とを足したものということである。 また、政府債務の増加をΔDと書くと ΔD=Dt+1-Dt=(E-R)+rDt となる。 政府債務の対GDP比D/Yの変化率をΔ(D/Y)、名目GDPの成長率をgと書くと  Δ(D/Y)=(E-R)/Y+(r-g)D/Y となる。 D/Yが減少するためには、Δ(D/Y)<0でなければならないから (E-R)/Y+(r-g)D/Y <0 であればよい。 すなわち、基礎的財政収支E-R/名目GDP Yと(金利r-名目成長率g)×(政府債務残高D/名目GDP Y)の和がマイナスであれば政府債務の対GDP比率は低下する』、簡単な数式での定式化はわかりやすい。
・『現実の動きはどうだったのか  上記の変数がどう動いてきたかを示したのが図1である。 (図表:図1 政府債務残高変化の要因 はリンク先参照) 図に見るように、リーマンショック以来急上昇していた政府債務残高の対GDPは安定するようになった。 それを2つの要因で説明すると、まず第1の要因として、基礎的財政収支(PB)/名目GDPが90年代初から常にプラスとなり(赤字の時がプラス)、98年の日本の金融危機時、2008年のリーマンショック時に拡大したことが分かる。しかし、2013年の大規模緩和以降、基礎的財政収支は縮小した。 第2の要因として(r-g)×(政府債務残高/名目GDP)を見ると、大規模緩和までプラスであった(r-g)が大規模緩和後マイナスに転じた。これは大規模緩和で金利が低下し、名目GDP成長率がプラスになったからである。 以上2つの要因で政府債務残高の対GDP比は安定した。 コロナショックで再び政府債務残高の対GDP比が上昇するようになったが、それはやむを得ない。非常時には政府支出で人々を助けるしかないからで、基礎的財政収支の赤字も拡大せざるを得ない。もちろん、やむを得ない支出ばかりだったかどうかは精査すべきではある。そのあたりについては、原田泰『コロナ政策の費用対効果』(ちくま新書)を参照いただきたい』、「リーマンショック以来急上昇していた政府債務残高の対GDPは安定するようになった。 それを2つの要因で説明すると、まず第1の要因として、基礎的財政収支(PB)/名目GDPが90年代初から常にプラスとなり(赤字の時がプラス)、98年の日本の金融危機時、2008年のリーマンショック時に拡大したことが分かる。しかし、2013年の大規模緩和以降、基礎的財政収支は縮小した。 第2の要因として(r-g)×(政府債務残高/名目GDP)を見ると、大規模緩和までプラスであった(r-g)が大規模緩和後マイナスに転じた。これは大規模緩和で金利が低下し、名目GDP成長率がプラスになったからである。 以上2つの要因で政府債務残高の対GDP比は安定した」、なるほど。
・『2つの要因による将来予測  以上の分析から明らかになったことは、政府債務残高の対GDP比は、基礎的財政収支(PB)/名目GDPと(r-g)×(政府債務残高/名目GDP)の2つの要因で説明できるということである。 図2は、PB/Y=1かつr-g=-1、PB/Y=2.5かつr-g=-1、PB/Y=0かつr-g=2の3つのケース、すなわち、基礎的財政収支の対GDP比が1%の赤字かつ金利-名目GDP成長率がマイナス1%、基礎的財政収支の対GDP比が2.5%の赤字かつ金利-名目GDP成長率がマイナス1%、基礎的財政収支の対GDP比が均衡(0%)かつ金利-名目GDP成長率がプラス2%の3つのケースを示している。 ここで金利-名目GDP成長率がプラス2%とは2013年4月の異次元金融緩和以前の平均、金利-名目GDP成長率がマイナス1%とは異次元緩和以後の平均である。(図表:図2 政府債務残高のシミュレーション はリンク先参照) 図に見るように、金利-名目GDP成長率がマイナス1%の場合、基礎的財政収支が2.5%の赤字でも政府債務残高の対GDP比があまり上昇せず(2060年で194%)、基礎的財政収支の赤字を1%にすれば政府債務残高の対GDP比は順調に低下していくことが分かる(2060年で148%)。 ところが、基礎的財政収支を均衡(0%)させても、金利-名目GDP成長率がプラス2%では政府債務残高の対GDP比は上昇してしまうことが分かる(2060年で244%)。すなわち、基礎的収支均衡を達成しても異次元緩和以前のように名目GDPの成長率がマイナスでは財政再建は達成できない。財政再建にはデフレ脱却が重要ということである。逆に言えば、過去のデフレ政策は財政悪化の大きな要因であったということである。 つまり、基礎的収支の赤字をいくら頑張って減らしても、デフレで金利が名目成長率よりも高いような状況を作っては、財政再建などできないということである。 財政安定化には、基礎的財政収支の赤字を2.5%程度にすることが必要だが、これにはどの程度の緊縮策が必要だろうか。2024年の基礎的財政収支は、IMFの予測によれば3.6%であるから、後1.1%の財政赤字削減で良いということになる。すなわち、財政再建には、まず金融緩和を続けることが必要であり、その中で徐々に財政赤字を縮小していけばよいということになる』、「基礎的収支の赤字をいくら頑張って減らしても、デフレで金利が名目成長率よりも高いような状況を作っては、財政再建などできないということである。 財政安定化には、基礎的財政収支の赤字を2.5%程度にすることが必要だが、これにはどの程度の緊縮策が必要だろうか。2024年の基礎的財政収支は、IMFの予測によれば3.6%であるから、後1.1%の財政赤字削減で良いということになる。すなわち、財政再建には、まず金融緩和を続けることが必要であり、その中で徐々に財政赤字を縮小していけばよいということになる」、「財政再建には、まず金融緩和を続けることが必要であり、その中で徐々に財政赤字を縮小していけばよいということになる」、財政再建の観点からはそうでも、金融政策はそろそろ利上げも展望したものになるとすれば、「財政再建」は二義的な目標に下げざるを得ないようだ。
タグ:政府財政問題 (その10)(MMT信者がインフレ期に決まって口にすること、「血の出るような努力」でバラマキ財政を脱却せよ!今すぐ取り組むべき3つの課題とは? コロナ禍が収束した今こそ、財政運営は平時に復帰せよ 2024年度当初予算は正常化へ立ち返る意志が欠如、「日本は財政赤字で将来ヤバイ」→実は財政赤字が縮小していた!【エコノミストがデータで解説】) ダイヤモンド・オンライン スティーヴン・D・キング氏 千葉敏生氏 「MMT信者がインフレ期に決まって口にすること」 「「インフレ」。実は日本では実に40~50年ぶり・・・日本のバブル期には資産価格は上がったが、物価はほぼ上がらなかった」、改めて思い出した。 「貯蓄家から資産を奪い取る」、「消費者から資産を奪い取る」、「貧困者から資産を奪い取る」、「恩恵を受ける可能性があるのは、住宅ローンを抱える人々、価格支配力を持つ人々」、「このプロセスは秘密裏に進むとともに、このうえなく非民主的でもある」、その通りだ。 「ウイルスパンデミックはインフレパンデミックへと姿を変えていた。アメリカのインフレ率を上昇させていた犯人はエネルギー価格だけではなかった。耐久消費財、非耐久消費財、サービス、そして遅ればせながら人件費。何もかもがどんどん値上がりしていった」、なるほど。 「MMTの支持者たちは、財政支配を支持している。その根底には、政府が印刷機の誘惑に逆らえるはずだ、という歪んだ歴史観があるように思えてならない。 つまり彼らの世界では、信用できない存在は金融当局だけなのだ。だが、それは虚構の世界であり、じっくりと観察のなされた事実とはいえない」、その通りだ。 米澤潤一氏による「「血の出るような努力」でバラマキ財政を脱却せよ!今すぐ取り組むべき3つの課題とは? コロナ禍が収束した今こそ、財政運営は平時に復帰せよ 2024年度当初予算は正常化へ立ち返る意志が欠如」 「PB赤字をもたらした要因の過半を占めるのが、20(令和2)年度から22(令和4)年度までの3年間の補正追加141兆円であり、その内訳は図表2のとおりである。感染拡大防止や医療体制整備などの直接的コロナ対策費はわずか1割強の14.6兆円にとどまっている。 残りの経費を見れば、雇用維持・事業継続といった経済対策はまだしも、10万円一律給付というバラマキや、感染拡大防止に逆行した「Go To ××」をはじめとする飲食宿泊旅行業者支援や、デジタル化・防衛費といった便乗、使途不明な地方交付金などで、ひいき目に見ても半分は財政法の補正予算の要件に該当しない不要不急の補正追加だったといわざるを得ない」「ひいき目に見ても半分は財政法の補正予算の要件に該当しない不要不急の補正追加だった」とは酷い話だ。特に「Go To ××」は悪乗りした悪手だ。 「財政法を無視した補正予算での計上が常態化するなどの弊害が生じている」、その通りだ。 「平時に戻った24(令和6)年度こそ、コロナ禍の時期に(「やむを得ず」という気持ちからにしても)営んだ財政法無視の「何でもあり」の財政運営から完全に脱却して、財政法の原則に沿った財政運営に復帰すべきである。具体的には、次の三つを励行してほしい。 一つ目は、補正予算を財政法29条の「予算策定後の事由に基づき特に緊要となった経費」に限るという原点に立ち戻り、災害復旧等、真にやむを得ないものに限ること・・・ 二つ目は、税の自然増収や歳出不用による剰余金発生が見込まれる場合には、法律どおり特例公債の発行をその分だけ減額し、剰余金を発生させないようにすることだ・・・三つ目は、前述のとおり、当初予算に計上したそれぞれ1兆円の一般予備費と「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」の取り扱いだ。これらの執行に厳正を期することが求められる」、なるほど。 「コロナ禍の収束後、平時に復帰した日本財政の在り方として、まずは現実的な前提の下に実効性のある歳入・歳出両面からの具体策を伴う全体像を策定すべきだ。その上でこれに沿って、血の出るような努力を計画的に一歩ずつ続けていく必要がある。必要な新規施策はその歳入歳出の全体像の中で、一体的に織り込むべきものである」、同感である。 原田 泰氏による「「日本は財政赤字で将来ヤバイ」→実は財政赤字が縮小していた!【エコノミストがデータで解説】」 簡単な数式での定式化はわかりやすい。 原田泰『コロナ政策の費用対効果』(ちくま新書) 「リーマンショック以来急上昇していた政府債務残高の対GDPは安定するようになった。 それを2つの要因で説明すると、まず第1の要因として、基礎的財政収支(PB)/名目GDPが90年代初から常にプラスとなり(赤字の時がプラス)、98年の日本の金融危機時、2008年のリーマンショック時に拡大したことが分かる。しかし、2013年の大規模緩和以降、基礎的財政収支は縮小した。 第2の要因として(r-g)×(政府債務残高/名目GDP)を見ると、大規模緩和までプラスであった(r-g)が大規模緩和後マイナスに転じた。これは大規模緩和で金利が低下し、名目GDP成長率がプラスになったからである。 以上2つの要因で政府債務残高の対GDP比は安定した」、なるほど。 「基礎的収支の赤字をいくら頑張って減らしても、デフレで金利が名目成長率よりも高いような状況を作っては、財政再建などできないということである。 財政安定化には、基礎的財政収支の赤字を2.5%程度にすることが必要だが、これにはどの程度の緊縮策が必要だろうか。2024年の基礎的財政収支は、IMFの予測によれば3.6%であるから、後1.1%の財政赤字削減で良いということになる。すなわち、財政再建には、まず金融緩和を続けることが必要であり、その中で徐々に財政赤字を縮小していけばよいということになる」、 「財政再建には、まず金融緩和を続けることが必要であり、その中で徐々に財政赤字を縮小していけばよいということになる」、財政再建の観点からはそうでも、金融政策はそろそろ利上げも展望したものになるとすれば、「財政再建」は二義的な目標に下げざるを得ないようだ。
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