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医療問題(その41)(「大多数の精神科医は投薬の専門家に過ぎず 精神療法は独学」...和田秀樹氏も驚愕した「日本の心療内科」の「ヤバすぎる実態」、「海外の新しい科学的発見をも無視する日本の医学界」...改革を阻み続ける 多すぎる「日本の病理」、「このままでは殺される…どうか助けてください」相次ぐ患者の“死亡退院”はNHKがスクープした後も続いていた#1、「暴力や虐待が日常茶飯事」八王子・滝山病院の“おぞましい実態”が明るみに…高級スポーツカーを乗り回す院長の“反応”とは#2) [生活]

医療問題については、本年4月3日に取上げた。今日は、(その41)(「大多数の精神科医は投薬の専門家に過ぎず 精神療法は独学」...和田秀樹氏も驚愕した「日本の心療内科」の「ヤバすぎる実態」、「海外の新しい科学的発見をも無視する日本の医学界」...改革を阻み続ける 多すぎる「日本の病理」、「このままでは殺される…どうか助けてください」相次ぐ患者の“死亡退院”はNHKがスクープした後も続いていた#1、「暴力や虐待が日常茶飯事」八王子・滝山病院の“おぞましい実態”が明るみに…高級スポーツカーを乗り回す院長の“反応”とは#2)である。

先ずは、本年4月16日付け現代ビジネス「「大多数の精神科医は投薬の専門家に過ぎず、精神療法は独学」...和田秀樹氏も驚愕した「日本の心療内科」の「ヤバすぎる実態」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127582
・『2020年の国内の精神科患者は、入院と通院を合わせて614.8万人。日本人の20人に1人が精神科で治療を受けている計算だ。 一般的な精神疾患である「うつ病」に加え、近年は「発達障害」と診断される人も急増している。このような異常事態に警鐘を鳴らしているのが、『精神医療ビジネスの闇』(北新宿出版)の著者であり、20年以上にわたり精神医療現場での人権侵害問題に取り組む米田倫康氏だ。 米田氏は「患者が増えていることに伴い、診療の質が低い精神科クリニックも急増している」と指摘する。 一方の精神科医・和田秀樹氏は「発達障害者を異端扱いし、社会から除け者にしている現状では、過剰診断は危険だ」と語る。 日本の精神医療の問題点をめぐり、米田氏と和田氏との対談を全3回にわたり、お届けする』、興味深そうだ。
・『精神科クリニックに流れ込む悪徳精神科医  和田 米田さんの本を読んでまず驚いたのは、精神科の悪徳病院がいまだにこんなに存在することですよ。 私が東大医学部を卒業したのが1985年で、研修医として入ったのは新左翼ばかりでいわくつきの、「赤レンガ病棟」(東大病院精神神経科病棟)というところ。その頃、一般的な精神科医は「収容所の番人」でしたが、左翼の人たちは理想主義で、「精神科の患者は社会の抑圧の犠牲者。解放されねばならない」と考えていました。そのために悪徳精神病院を糾弾するなど、まともに変えていこうという運動をやっていたんです。 米田 ちょうど宇都宮病院事件があった頃ですよね。栃木県宇都宮市の精神科病院で、患者への虐待が日常化していて、入院患者2名が看護職員らに金属パイプで乱打されて亡くなりました。 和田 あれが明るみに出たのは、1984年3月で、私はまだ学生の身として糾弾に関わっていました。宇都宮病院の入院患者の平均年齢はそう高くないのに、事件発覚前の3年間で222人も亡くなっていたんですから、異常ですよ。ただ、そういう悪徳病院の大きなトレンドとしては、社会的非難を浴びやすい精神科をやめて、老人向けにシフトする動きが起こりました。だからいま残っている精神科病院は、さすがにもうまともになっているだろうと思い込んでいた。 米田 たしかに、宇都宮病院事件後も悪徳精神科病院の摘発が相次ぎ、精神病床も減少へと転じました。ですが、患者の人権などなんとも思っていないような精神科病院はまだ健在です。最近では、東京都八王子市の滝山病院において、2023年2月以降、看護師ら5人が入院患者への暴行容疑で逮捕・書類送検されました』、「宇都宮病院の入院患者の平均年齢はそう高くないのに、事件発覚前の3年間で222人も亡くなっていたんですから、異常ですよ」、確かに死亡者が異常に多い。
・『『厚生労働省「医療施設調査」より作成  そしてそれ以上に私が指摘したいのは、精神科・心療内科を標榜するクリニック(病床数が0あるいは19床以下)の急増です。1984年は精神科を標榜するクリニックが1425ですが、2020年は精神科標榜が7223、心療内科標榜が5063です(図参照、米田氏の著書より転載)。 同じ施設で精神科・心療内科を両方標榜するケースもありますが、それにしても多い。こうしたクリニックは、医師の資格さえあれば大きな設備投資を必要とせずに開業できますし、誰も診療の質をチェックしません。だから、悪徳精神科病院を経営するような層が、そのままここへ流れ込んでいます。 1950~60年代に起きた精神科病院乱立ブームと同様、畑違いの診療科の医師が突然参入して開業するケースも目立ちます』、「こうしたクリニックは、医師の資格さえあれば大きな設備投資を必要とせずに開業できますし、誰も診療の質をチェックしません。だから、悪徳精神科病院を経営するような層が、そのままここへ流れ込んでいます。 1950~60年代に起きた精神科病院乱立ブームと同様、畑違いの診療科の医師が突然参入して開業するケースも目立ちます」、なるほど。
・『口コミの高評価は当てにならない  和田 精神科医の養成システムにも問題があると思いますよ。医学部を持つ大学は全国に82ありますが、その精神科の医局の主任教授の9割が、要は投薬の専門家です。体系だったカウンセリングを重視する精神療法のトレーニングをする場は、慶應大の認知行動療法研究室や慈恵医大の森田療法(精神科医・森田正馬によって創始された神経症に対する独自の精神療法)くらい。 つまり日本の精神科医の大多数は、精神療法を自学自習でやっているし、中には、精神療法なんて意味がないと考える者もいます。そういう精神科医が開業したら、患者の話をろくに聞かず、ただ薬を出すだけのクリニックになるのは当然でしょう。 米田 うつ病などになる前の段階として、学校での人間関係だとか会社での労働環境だとか、いろいろなものが積もり積もって発症しているわけですから、そうしたところにカウンセリングで向き合っていくのが精神療法です。が、薬しか治療手段を持っていない精神科医は、たくさんいます。 しかも、現在の診療報酬体系では、患者に丁寧に向き合う長時間の診療や精神療法は収入の足かせにしかならず、5分という短時間で患者を回転させるのが経営上の正解となっています。これでは、短時間診察でひたすら薬だけ出して対症療法のサイクルを延々と繰り返すことしかできないですよね。 和田 私は精神科医として高齢者ばかりを診ていますが、彼らのうつ病には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という、脳内でセロトニンの再取り込みを阻害し、セロトニンの働きを増強することで抗うつ作用などをあらわす薬を出しています。 高齢者はそもそものセロトニンのベースラインが、40代のような若い人と比べると低いので、SSRIはよく効く。これは私にとっては風邪薬のようなイメージで、症状を緩和して患者を元気にして、あとは患者自身の自然回復力で治るのを待つんです。実際、それでかなりの数の人が治っていきます。ただ、根本原因は変わってないので、また大きなストレスがかかると再発しますが。 米田 そういう一時的に症状をしのがないといけないという必要性があって、そのゴールも分かっている先生が使うのと、漫然とずっと症状を抑え続けるのとでは、やっぱり違うと思うんですね。 和田 いい先生かダメな先生かは、治療の結果で評価するしかないでしょう。だから、精神科医をみんなが評価する『食べログ』みたいなのがあったらいいんじゃないか。「あの先生と話したらすごい楽になった」とか「いい先生だ」とかって、みんなで書き込みをするんです。 米田 それはおっしゃるとおりなんですけど、一筋縄ではいかないのです。私は診療報酬の不正請求をはじめ、いろいろと問題のある精神科クリニックを幅広く調査しているのですが、そういったところのいくつかをGoogleで検索すると、クチコミがたくさんついており、評価が高い。不思議に思ってそこの患者さんに詳しく聞いてみたら、高評価をつけると、クリニックから特典がもらえるそうです。 和田 そうですか……。そういうステマはありえるでしょうね。 米田 だから患者は、高評価に値しないクリニックに通ってしまっている可能性があります』、「私は診療報酬の不正請求をはじめ、いろいろと問題のある精神科クリニックを幅広く調査しているのですが、そういったところのいくつかをGoogleで検索すると、クチコミがたくさんついており、評価が高い。不思議に思ってそこの患者さんに詳しく聞いてみたら、高評価をつけると、クリニックから特典がもらえるそうです」、悪質な「ステマ」だ。「精神科の医局の主任教授の9割が、要は投薬の専門家です。体系だったカウンセリングを重視する精神療法のトレーニングをする場は、慶應大の認知行動療法研究室や慈恵医大の森田療法(精神科医・森田正馬によって創始された神経症に対する独自の精神療法)くらい。 つまり日本の精神科医の大多数は、精神療法を自学自習でやっているし、中には、精神療法なんて意味がないと考える者もいます」』、「高評価をつけると、クリニックから特典がもらえるそうです」、悪質な「ステマ」だ・・・「体系だったカウンセリングを重視する精神療法のトレーニングをする場は極めて少ないとは問題だ。
・『自殺リスクが高まるだけで効果のない抗うつ薬を処方  和田 精神科がややこしいのは、「ずっと通い続けて治さない医者が面倒見がいい」と思っている患者もいるところ。そういう先生は、障害年金とか生活保護とかの申請に使える書類のひな型を持っていて、すぐに書いてくれるんですよ。「これ書いてもらったから働かなくていい。ずっとクリニックに通い続けよう」となるわけです。そして、親切でいい先生ってことになってしまうから、精神科医の評価は難しいよね。 米田 監督官庁は、医療の中身までは踏み込めません。看護師の人数の配置はこうしろとか施設基準はこうなっているなどの形式的なところには口出しできたとしても、投薬の内容や診断がおかしいというところまで踏み込んだ指導はできないんです。 和田 精神科クリニックは、開業したての頃は全然流行ってなくても、患者が治らないからどんどん雪だるま式にたまっていくんですよ。たとえば、循環器の疾患は、急に増えたりしませんよね。小児科で言えば、急に子どもの患者が増えたりしませんよね。でも、精神科は違う。患者さんを治す技術がないほど、通い続けてくれることになります。 私のような老人精神科だと、ある年齢になったら亡くなっていくからそうそう増えないけど、一般の精神科で、40〜50代でかかってる人というのは、ずっとかかり続けます。 米田 若い頃から通う人も増えているし、それどころか子供時代からずっと通い続ける人もいますから、何十年単位ですね。そうなると若い頃からの長期にわたる投薬が、大きな問題になります。 つい最近相談を受けた件なんですが、17歳の子がSSRIを出されていました。SSRIは、若い人には要注意の薬です。厚労省は2007年に「24歳以下に自殺のリスクが高まる」とし、 2013年には「18歳未満のうつ病に効果は認められない」としています。 つまり若い人にとっては、「自殺のリスクがあるけど、うつ病には効果がない薬」ということです。だけどそのことは、本人も親も知らされていなかった。小児精神科の先生からもらってるから安心だと思っていたそうです。 和田 医者は説明しないし、親も患者も薬の危険性を知らない状態で服薬しているケースは多々あると思います。日本が薬に対してとにかくチェックの甘い国であることは確かだし、 薬の副作用による民事訴訟もすごく少ないから、みんないい加減に薬を出す。 でもこれって、他人事みたいに思われるかもしれないけど、医者が無駄な薬をたくさん出せば出すほど、健康保険料って上がるんですよ。だからそれによるステルス増税みたいになってるわけ。とても犯罪的なことだと思う』、「SSRIは、若い人には要注意の薬です。厚労省は2007年に「24歳以下に自殺のリスクが高まる」とし、 2013年には「18歳未満のうつ病に効果は認められない」としています。 つまり若い人にとっては、「自殺のリスクがあるけど、うつ病には効果がない薬」ということです。だけどそのことは、本人も親も知らされていなかった。小児精神科の先生からもらってるから安心だと思っていたそうです」、恐ろしいことだ。「日本が薬に対してとにかくチェックの甘い国であることは確かだし、 薬の副作用による民事訴訟もすごく少ないから、みんないい加減に薬を出す。 でもこれって、他人事みたいに思われるかもしれないけど、医者が無駄な薬をたくさん出せば出すほど、健康保険料って上がるんですよ。だからそれによるステルス増税みたいになってるわけ。とても犯罪的なことだと思う」、その通りだ。

次に、4月16日付け現代ビジネス「「海外の新しい科学的発見をも無視する日本の医学界」...改革を阻み続ける、多すぎる「日本の病理」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127619?imp=0
・『2020年の国内の精神科患者は、入院と通院を合わせて614.8万人。日本人の20人に1人が精神科で治療を受けている計算だ。 一般的な精神疾患である「うつ病」に加え、近年は「発達障害」と診断される人も急増している。このような異常事態に警鐘を鳴らしているのが、『精神医療ビジネスの闇』(北新宿出版)の著者であり、20年以上にわたり精神医療現場での人権侵害問題に取り組む米田倫康氏だ。 米田氏は「患者が増えていることに伴い、診療の質が低い精神科クリニックも急増している」と指摘する。2020年の国内の精神科患者は、入院と通院を合わせて614.8万人。日本人の20人に1人が精神科で治療を受けている計算だ。 一方の精神科医・和田秀樹氏は「発達障害者を異端扱いし、社会から除け者にしている現状では、過剰診断は危険だ」と語る。 日本の精神医療の問題点をめぐり、米田氏と和田氏との対談を全3回にわたり、お届けする。 中編『「子どもから大人まで異様に増え続ける発達障害」と「日本社会のヤバすぎる特性」...正常な人が「異常」扱いされるのは日本だけ』に引き続き、今回は日本社会で「発達障害=正常」にならない背景について対談する』、「日本人の20人に1人が精神科で治療を受けている計算」、意外に多いことに驚かされた。
・『科学的データより教授の意見が優先される日本  和田 堀江貴文さんをはじめ、多くの有名人が、自分を発達障害だと認めてますよね。彼らのような人が世に出てきて、「正常」のヤツらのほうがバカだとガンガン言っている。いまの露骨な弱肉強食型資本主義の世界の中では、発達障害の人間が「正常」な人間に勝ちますから。 そりゃそうですよ。みんなに合わせてないといけない、上の言うことを聞かなきゃいけない、なんて思うやつが勝てるわけがない。そうなってくると、「発達障害、いいじゃん!」って流れになるかもしれない。 米田 私は、そうした変化は、そんな先の話ではないと考えています。メンタルヘルスの世界的な常識は、いま大きくパラダイムシフトのときを迎えています。 2023年10月、WHO(世界保健機関)と国連人権高等弁務官事務所は、メンタルヘルスについてのガイダンスを共同で作成しました。要旨としては、 「メンタルヘルスと幸福は、貧困、暴力、差別と同様に、社会的、経済的、物理的環境と強く関連しています。しかし、ほとんどのメンタルヘルスシステムは、診断、投薬、症状の軽減に焦点を当てており、人々のメンタルヘルスに影響を与える社会的決定要因を無視しています。メンタルヘルスケアやサポートを求める際に、あまりにも多くの人が差別や人権侵害を経験しています。非自発的な入院と治療、隔離または独房、拘束の使用も、ほとんどのメンタルヘルスシステムで蔓延しています。メンタルヘルスに関する法律は、新たな方向を向かなければなりません」 とあります。投薬を中心とした従来の治療モデルから脱却した、新たな法整備を求めている点で画期的ですよ。 和田 しかし、そうした社会の側からの要請だけで状況が大きく変わるかと言うと、私は悲観的ですね。医学界の内部からの変革が最も必要なことですが、医学界にはそれを妨げる構造的な問題があるからです。 海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります。 米田 実際、先のWHOのガイダンスを、厚生労働省をはじめ精神医療の関係各所にぶつけてみたんです。「メンタルヘルスのパラダイムシフトですよ!」と。しかし、まったく箸にも棒にもかかりませんでした。 一般的な精神疾患である「うつ病」に加え、近年は「発達障害」と診断される人も急増している。このような異常事態に警鐘を鳴らしているのが、『精神医療ビジネスの闇』(北新宿出版)の著者であり、20年以上にわたり精神医療現場での人権侵害問題に取り組む米田倫康氏だ。 米田氏は「患者が増えていることに伴い、診療の質が低い精神科クリニックも急増している」と指摘する。 一方の精神科医・和田秀樹氏は「発達障害者を異端扱いし、社会から除け者にしている現状では、過剰診断は危険だ」と語る。 日本の精神医療の問題点をめぐり、米田氏と和田氏との対談を全3回にわたり、お届けする。 中編『「子どもから大人まで異様に増え続ける発達障害」と「日本社会のヤバすぎる特性」...正常な人が「異常」扱いされるのは日本だけ』に引き続き、今回は日本社会で「発達障害=正常」にならない背景について対談する』、「海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります』、「日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまう」、困ったことだ。
・『科学的データより教授の意見が優先される日本  和田 堀江貴文さんをはじめ、多くの有名人が、自分を発達障害だと認めてますよね。彼らのような人が世に出てきて、「正常」のヤツらのほうがバカだとガンガン言っている。いまの露骨な弱肉強食型資本主義の世界の中では、発達障害の人間が「正常」な人間に勝ちますから。 そりゃそうですよ。みんなに合わせてないといけない、上の言うことを聞かなきゃいけない、なんて思うやつが勝てるわけがない。そうなってくると、「発達障害、いいじゃん!」って流れになるかもしれない。 米田 私は、そうした変化は、そんな先の話ではないと考えています。メンタルヘルスの世界的な常識は、いま大きくパラダイムシフトのときを迎えています。 2023年10月、WHO(世界保健機関)と国連人権高等弁務官事務所は、メンタルヘルスについてのガイダンスを共同で作成しました。要旨としては、 「メンタルヘルスと幸福は、貧困、暴力、差別と同様に、社会的、経済的、物理的環境と強く関連しています。しかし、ほとんどのメンタルヘルスシステムは、診断、投薬、症状の軽減に焦点を当てており、人々のメンタルヘルスに影響を与える社会的決定要因を無視しています。メンタルヘルスケアやサポートを求める際に、あまりにも多くの人が差別や人権侵害を経験しています。非自発的な入院と治療、隔離または独房、拘束の使用も、ほとんどのメンタルヘルスシステムで蔓延しています。メンタルヘルスに関する法律は、新たな方向を向かなければなりません」 とあります。投薬を中心とした従来の治療モデルから脱却した、新たな法整備を求めている点で画期的ですよ。 和田 しかし、そうした社会の側からの要請だけで状況が大きく変わるかと言うと、私は悲観的ですね。医学界の内部からの変革が最も必要なことですが、医学界にはそれを妨げる構造的な問題があるからです。 海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります』、「海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります」、こうした保守的体質は困ったものだ。
・『医学部の入試面接が良い人材をはじく  和田 いちばん悪いのは、東大の理Ⅲだよ。東大の医学部は、1999年〜2007年にかけて入試に面接を課すようになり、一旦中止したのですが2018年からまた始めています。 いまは全国すべて82の大学医学部の入試で、面接が課されています。それは、医者に向かない人間をはじこう、勉強だけできるけど性格が悪い人間を落とそう、という建前で実施されているんですけど、面接官は教授なんですよ。ということは、教授に忖度する人間が入ってきてしまう。 教授に逆らいそうな人間は、医学部に入れなくなる。つまり私がいま受験したら、合格できないってことです。たしかに、ハーバードやイェールなど、海外の医学部でも入試面接はありますが、教授には面接させていません。既存の教授に喧嘩を売れそうな人間を入れないと、学問は進歩しないという考え方がベースにあるからです。精神科の領域に限ったって、たった30分の面接で人間を見抜けると考えているような精神科医は、治療なんてできませんよ。 和田 2018年に発覚した東京医大での得点調整では、その後、結局、半分ぐらいの大学がやっていたことがわかりました。あのタイミングは、発達障害の人や身体障害者が面接で落とされている現状を是正する絶好機だったんだけど、そうならなかった。 入試を変えようという話の中で、面接もやめようという話にならなかった。医学部のキャンパスを見学に行ったらわかるけど、車椅子に乗っている人なんてほとんどいないよ。入試面接で落としてるからですよ。 車椅子に乗ってる人はバカで試験に通らないのか? そんなことないでしょ。日本の医学部は、勉強だけできるんじゃダメだ、人間への共感力があるヤツしか医者にはなっちゃダメだとかと言っているくせに、受験生をはじいてる教授たちのほうが、じつは共感力がない人ばかりですよ。 関連記事 「大多数の精神科医は投薬の専門家に過ぎず、精神療法は独学」… 米田 実際、先のWHOのガイダンスを、厚生労働省をはじめ精神医療の関係各所にぶつけてみたんです。「メンタルヘルスのパラダイムシフトですよ!」と。しかし、まったく箸にも棒にもかかりませんでした。米田倫康氏だ。 米田氏は「患者が増えていることに伴い、診療の質が低い精神科クリニックも急増している」と指摘する。 一方の精神科医・和田秀樹氏は「発達障害者を異端扱いし、社会から除け者にしている現状では、過剰診断は危険だ」と語る。 日本の精神医療の問題点をめぐり、米田氏と和田氏との対談を全3回にわたり、お届けする。 中編『「子どもから大人まで異様に増え続ける発達障害」と「日本社会のヤバすぎる特性」...正常な人が「異常」扱いされるのは日本だけ』に引き続き、今回は日本社会で「発達障害=正常」にならない背景について対談する』、「大学医学部の入試で、面接が課されています。それは、医者に向かない人間をはじこう、勉強だけできるけど性格が悪い人間を落とそう、という建前で実施されているんですけど、面接官は教授なんですよ。ということは、教授に忖度する人間が入ってきてしまう・・・ハーバードやイェールなど、海外の医学部でも入試面接はありますが、教授には面接させていません。既存の教授に喧嘩を売れそうな人間を入れないと、学問は進歩しないという考え方がベースにあるからです」、日本も今からでも見直すべきだ。
・『科学的データより教授の意見が優先される日本  和田 堀江貴文さんをはじめ、多くの有名人が、自分を発達障害だと認めてますよね。彼らのような人が世に出てきて、「正常」のヤツらのほうがバカだとガンガン言っている。いまの露骨な弱肉強食型資本主義の世界の中では、発達障害の人間が「正常」な人間に勝ちますから。 そりゃそうですよ。みんなに合わせてないといけない、上の言うことを聞かなきゃいけない、なんて思うやつが勝てるわけがない。そうなってくると、「発達障害、いいじゃん!」って流れになるかもしれない。 米田 私は、そうした変化は、そんな先の話ではないと考えています。メンタルヘルスの世界的な常識は、いま大きくパラダイムシフトのときを迎えています。 2023年10月、WHO(世界保健機関)と国連人権高等弁務官事務所は、メンタルヘルスについてのガイダンスを共同で作成しました。要旨としては、 「メンタルヘルスと幸福は、貧困、暴力、差別と同様に、社会的、経済的、物理的環境と強く関連しています。しかし、ほとんどのメンタルヘルスシステムは、診断、投薬、症状の軽減に焦点を当てており、人々のメンタルヘルスに影響を与える社会的決定要因を無視しています。メンタルヘルスケアやサポートを求める際に、あまりにも多くの人が差別や人権侵害を経験しています。非自発的な入院と治療、隔離または独房、拘束の使用も、ほとんどのメンタルヘルスシステムで蔓延しています。メンタルヘルスに関する法律は、新たな方向を向かなければなりません」 とあります。投薬を中心とした従来の治療モデルから脱却した、新たな法整備を求めている点で画期的ですよ。 和田 しかし、そうした社会の側からの要請だけで状況が大きく変わるかと言うと、私は悲観的ですね。医学界の内部からの変革が最も必要なことですが、医学界にはそれを妨げる構造的な問題があるからです。 海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります。 米田 実際、先のWHOのガイダンスを、厚生労働省をはじめ精神医療の関係各所にぶつけてみたんです。「メンタルヘルスのパラダイムシフトですよ!」と。しかし、まったく箸にも棒にもかかりませんでした』、「海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります」、困ったことだ。
・『医者が医学部を批判できない構造  米田 医学界の内部からは異論の声を上げられないシステムになってるんですね。いまの時代だと、教授が一番上にいて、その下の部下がたとえなにか言ったとしても何も変わらない。そうなると、「いまの精神医療はおかしいぞ」と言えるのは、医者ではない私のポジションだからこそなんでしょう。現場をわかってない人間が偉そうだと医療関係者からご批判もあるかと思いますが、だからこそ、風穴を開けていく私の活動にも意味があるのかなと考えています。 和田 私も風穴を開けようとしていますが、私以外に今の医学部を批判してる医者は本当に少ない。それは子供を人質に取られてるからです。つまり、親が目立った形で医学部を批判して主流派に嫌われたら、子供が入試面接のときに落とされかねない。その可能性を少しでも考えたら、批判できません。 だいたい、医学部というのは医師ではなくて医学研究者への道だってあるんですから、どうしても医師の候補者に面接をしたいのなら、大学入試ではなく医師国家試験でやるべきでしょう。そもそも入試面接のある大学と、ない大学の両方があるべきですよ。でなければ、どちらのシステムのほうがいい医者を生み育てられるかの比較調査すらできない。 米田 82も大学があるのに、医学部の入試から面接をはずそうという動きは、ひとつもないんでしょうか?  和田 それについては、実際に提言したことがあります。私は日大が相次ぐ不祥事で揺れていた頃に常務理事を務めていて、とっておきのブランド回復の案を出したんです。 「日大だけ医学部の入試面接を廃止したら、入試の偏差値は10ぐらい跳ね上がりますよ」と。ですが、大学側はまったく聞く耳を持たない。 それでは、手術はめちゃくちゃうまいけど、患者に説明するのがヘタだったり患者さんとのコミュニケーションが取れない医者Aがいます。一方、手術はヘボだけど失敗したときの説明の仕方がめちゃくちゃうまくて共感的な医者Bがいます。さあ、どちらを選びますか、という話です。 私だったら前者を選びたいから、面接など廃止すべきだと思っているわけです。結果で勝負して、腕がいい医者が勝ちという、『ドクターX』みたいな世界になれば、発達障害の人間にも活躍の場所があるけど、それを入り口で止めているということです。 米田 患者が医者を選ぶ自由を、医学部の入試が阻んでいることになりますね。 和田 そうですよ。自閉症スペクトラムの人というのは、すごい研究者になったり、とても手術がうまかったりする。でも変わり者。そういう人をはじくシステムになっているのが現状です。しかし、大学側だけの問題ではありません。 「コミュ力がない人間や変な人間は医者になってはいけない」という思い込みや刷り込みが国民全体に浸透してしまっている。そのあたりの病理はあまりに深くて、変な人間を入試面接ではじきましょうという意見に、国民の9割ぐらいは賛成する。 「子供はノーマルであってほしい」「大学の医学部入試で面接をするのは当たり前だ」と、みんなが思うぐらいに、日本人は、みんなと同じ「まともな人間」でありたいと願っている。これは日本にとってある種の不幸ですけど、そういう空気が蔓延していることが、精神医療の改革にあたっての一番の難しさだと思います。 構成・文/野中ツトム(清談社)』、「「コミュ力がない人間や変な人間は医者になってはいけない」という思い込みや刷り込みが国民全体に浸透してしまっている。そのあたりの病理はあまりに深くて、変な人間を入試面接ではじきましょうという意見に、国民の9割ぐらいは賛成する。 「子供はノーマルであってほしい」「大学の医学部入試で面接をするのは当たり前だ」と、みんなが思うぐらいに、日本人は、みんなと同じ「まともな人間」でありたいと願っている。これは日本にとってある種の不幸ですけど、そういう空気が蔓延していることが、精神医療の改革にあたっての一番の難しさだと思います」、もっと尖った人材が入ってくるようにしたいものだ。

第三に、7月29日付け文春オンライン「「このままでは殺される…どうか助けてください」相次ぐ患者の“死亡退院”はNHKがスクープした後も続いていた#1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72244
・『昨年2月25日にNHK-Eテレで放送された「ETV特集 ルポ死亡退院 ~精神医療・闇の実態~」。2023年のテレビで最も優れたスクープ報道として高く評価された。日本新聞協会賞、放送人の会グランプリ、石橋湛山早稲田ジャーナリズム大賞、貧困ジャーナリズム大賞など主だった賞の最高賞を受賞した。 東京・八王子市にある民間の精神科病院・滝山病院。精神科のほかに内科も併設し、人工透析治療などができるため、精神疾患に加えて腎疾患などを抱える合併症の患者が他の病院からも送り込まれてくる。そこではベッドに寝たきりの高齢患者を看護師らが問答無用で殴る、叩く、つねる、蹴る。暴力や虐待が日常茶飯事。ベッドに縛り付ける身体拘禁も日常化。入手した資料で入院患者の約8割が死亡して退院。いったん入院すると死亡しない限りは退院できないというおぞましい実態、“死亡退院”の現実があった。 「このままでは殺される……。どうか助けてください」 悲痛な声で弁護士に助けを求めた高齢の男性患者はその後、亡くなった。 あれから1年4か月。滝山病院の「その後」を追跡した第2弾が6月29日放送の「ETV特集 死亡退院 さらなる闇」だ。このドキュメンタリーは、ふだん週刊誌などが得意としている「院長とカネ」の問題に切り込んでいたのが印象的だった。(全2回の1回目/後編に続く)』、「そこではベッドに寝たきりの高齢患者を看護師らが問答無用で殴る、叩く、つねる、蹴る。暴力や虐待が日常茶飯事。ベッドに縛り付ける身体拘禁も日常化。入手した資料で入院患者の約8割が死亡して退院。いったん入院すると死亡しない限りは退院できないというおぞましい実態、“死亡退院”の現実があった」、ここまで酷いとは監督官庁の怠慢だ。
・『「死亡退院」はその後も続いた  暴力や虐待が横行していた恐怖の病院はどうなったのか。一般的にスクープの「その後」の報道はなかなか難しい。最初のスクープだけなら、「暴行」の証拠となる衝撃的な映像で十分にドキュメンタリーになる。だが、「その後」を取材して第2弾を出すとなると、病院経営や体質、さらには精神医療全体をめぐる「大きな構図・背景」を浮き彫りにしない限り、単なる焼き直しと言われてしまう。取材班は大きな背景にも斬り込んで本格勝負を挑んだ。) 第1弾の報道を受け、警察は病院を捜査して看護師ら5人を逮捕、略式起訴した。監督官庁の東京都も病院に対して改善を命令。厚生労働省も全国の自治体に虐待防止を通知した。しかし入院患者を支援して問題を告発した弁護士は「死亡退院の状況から何も変わっていない」と語る。 都の改善命令を受けて滝山病院は「虐待防止委員会」を設置。弁護士が中心の「第三者委員会」を作って虐待の真相究明に乗り出した。 東京都も患者の聞き取り調査を実施。転退院の支援に乗り出した。 ところが行政の縦割りや公立病院の受け入れへの消極姿勢、さらに主な受け入れ先として想定された民間病院が費用面や合併症患者の扱いなどで及び腰になるなどで遅遅として進まない。 転院を希望した高齢の男性患者も引き受ける病院が見つからないまま体調を崩して死亡。転退院支援の遅れで「死亡退院」はその後も続いたのだ』、「都の改善命令を受けて滝山病院は「虐待防止委員会」を設置。弁護士が中心の「第三者委員会」を作って虐待の真相究明に乗り出した。 東京都も患者の聞き取り調査を実施。転退院の支援に乗り出した。 ところが行政の縦割りや公立病院の受け入れへの消極姿勢、さらに主な受け入れ先として想定された民間病院が費用面や合併症患者の扱いなどで及び腰になるなどで遅遅として進まない。 転院を希望した高齢の男性患者も引き受ける病院が見つからないまま体調を崩して死亡。転退院支援の遅れで「死亡退院」はその後も続いたのだ」、酷いものだ。
・『薬剤を大量に投与されて…  この患者の記録を調べると病院側が鎮静のための薬剤を大量に投与した不適切な医療行為で死にいたった可能性があることを複数の医師が指摘した。投薬を指示した朝倉重延院長は外部の医師の指摘に「おっしゃるとおり歩み寄りは必要だったと思う」としながらも医療判断の誤りは認めなかったという。 第三者委員会が行った職員アンケートでも多くの職員が「過剰医療」を指摘し、医療の内容に問題ありと考えていたこともわかる。 不衛生な病室。経験が浅いアルバイトの職員に体位交換させて患者に重症の褥瘡(床ずれ)ができ、それが原因で敗血症によって死にいたったケースも多数見つかったと番組では伝えられた。 ところが第三者委員会は「医療行為の適切性」については「判断に医学的知見を要する」からと是非を判断しない姿勢だ。 カルテを分析すると医学的に必須とされる所見がないのに「心筋梗塞」と診断名をつけられ、血液がさらさらになる薬剤などを大量に投与されたケースも見つかる。やはり朝倉院長が診断していた。 医師が院長に電話で問い合わせて「心筋梗塞」の診断名をつけていた音声記録も。蘇生の難しい患者に繰り返し高い薬剤を投与していたという証言もあった。 ◆ 院長が率先する患者への過剰な医療行為をスタッフは「濃厚治療」と隠語で呼んでいたという。後編で詳しく取り上げる』、「第三者委員会は「医療行為の適切性」については「判断に医学的知見を要する」からと是非を判断しない姿勢だ」、こんな責任放棄を認めるべきではない…。)

第四に、7月29日付け文春オンライン「「暴力や虐待が日常茶飯事」八王子・滝山病院の“おぞましい実態”が明るみに…高級スポーツカーを乗り回す院長の“反応”とは#2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72245
・『東京・八王子市にある民間の精神科病院・滝山病院。精神科のほかに内科も併設し、人工透析治療などができるため、精神疾患に加えて腎疾患などを抱える合併症の患者が他の病院からも送り込まれてくる。そこではベッドに寝たきりの高齢患者を看護師らが問答無用で殴る、叩く、つねる、蹴る。暴力や虐待が日常茶飯事。ベッドに縛り付ける身体拘禁も日常化。入手した資料で入院患者の約8割が死亡して退院。いったん入院すると死亡しない限りは退院できないというおぞましい実態、“死亡退院”の現実について、NHK-Eテレ・6月29日放送の「ETV特集 死亡退院 さらなる闇」が続報した。(全2回の2回目/前編を読む)』、「入院患者の約8割が死亡して退院。いったん入院すると死亡しない限りは退院できないというおぞましい実態」、病院とは名ばかりのおそろしい施設だ。
・『「お金にもなる。お金取れるでしょ」  院長が率先する患者への過剰な医療行為をスタッフは「濃厚治療」という隠語で呼んでいた。「1B」と呼ばれる「濃厚治療」用の病室の映像も出てきた。 「院長が『1B運べ』といって、ICUみたいに人工呼吸器をつけたり、濃厚な治療するんですよ。そうやればお金にもなる。お金取れるでしょ。いっぱい濃厚治療するんだから」とスタッフは証言した。 過剰医療、濃厚治療……。すべて「カネ」がらみだ。第2弾は「朝倉院長とカネ」について第1弾以上に踏み込んで報じている点が注目される。) 医療機関は診療報酬というかたちで収入を得ている。一般的に精神科の医療行為の評価は診療報酬上で内科や外科などに比べてかなり低いとされている。そうした面を取り戻そうと意識して稼ごうとしたのか。滝山病院で「濃厚治療」していた実態がスタッフの口から語られた。 たくさんの薬剤などが投与されて「濃厚な治療」が行われれば行われるほど、その分、収入が増える仕組みだ。だが、医療行為として適切な治療でなければ当初は話ができた患者が会話できなくなり、意識が混濁した状態になってしまう。 そうした医療行為を院長が率先して行っていた疑惑。番組では関係者の証言を元に踏み込んで伝えている。 朝倉重延院長には今回と似た事件で報道された過去があった。2001年にはおよそ40人が不審死をとげた埼玉県の朝倉病院の院長だった。患者の身体を違法に拘束。過剰な栄養点滴など不必要な治療を行い、診療報酬を不正請求したことが発覚。朝倉病院は事実上廃院に。院長は保険医の資格を取り消された。その後、保険医の資格を再取得。5年前に父親の死後に滝山病院の院長を引き継いでいた』、「朝倉重延院長には今回と似た事件で報道された過去があった。2001年にはおよそ40人が不審死をとげた埼玉県の朝倉病院の院長だった。患者の身体を違法に拘束。過剰な栄養点滴など不必要な治療を行い、診療報酬を不正請求したことが発覚。朝倉病院は事実上廃院に。院長は保険医の資格を取り消された。その後、保険医の資格を再取得。5年前に父親の死後に滝山病院の院長を引き継いでいた」、「保険医の資格を再取得」のハードルを高くするべきだ。
・『高級スポーツカーを乗り回す院長の“収入”  圧巻は取材班が入手した「厳秘」と記された病院経営の内部文書だ。 朝倉重延院長の役員報酬は2017年度から2020年度までは毎年5820万円。2021年度は6320万円。2022年度は6420万円と増加傾向にある。病院の経常利益に対する院長の役員報酬の割合が2019年度48%。2020年度59%と経常利益の半分を超え、2021年度は337%に跳ね上がる。実に経常利益の3倍以上の金額だ。病院全体の利益が減少する中で院長の報酬だけが突出して増加していた。 院長が車で出かけようとするところをディレクターが直撃する場面がある。 車高が低い流線型の高級スポーツカー。左ハンドルで明らかに外国産だ。呼びかけに応じずに無言で車は走り去った。外観から調べてみると英国製の豪華スポーツカーで新車ならば約4000万円の値段だという。 ドキュメンタリーはインタビューやナレーションなどの「言葉」以上に「映像」が雄弁に語るジャンルである。) 役員報酬だけで毎年5000万円、6000万円という内部資料の証拠映像に加え、高級スポーツカーの映像。この2つの映像が雄弁に語っている。 事件発覚後に「精神障害者の家族会」の関係者が初めて病院内に入ると廊下にエアコンがなく、シャワールームも狭いなど他では考えられない劣悪さに衝撃を受けたという場面があるが、患者の環境改善のための病院設備には費用をかけなかった。 患者の死因についても院長が心筋梗塞や悪性リンパ腫などの病名をいとも軽い口調で語る音声も出てくる。何を重視して病院運営をしている人なのか伝わってくる構成だ』、「役員報酬は2017年度から2020年度までは毎年5820万円。2021年度は6320万円。2022年度は6420万円と増加傾向」。「英国製の豪華スポーツカーで新車ならば約4000万円」、結構なご身分だ。 
・『医療現場の「さらなる闇」  病院スタッフの一人は朝倉院長について「(滝山病院では)不正請求はしていない。前の朝倉病院のときみたいに『やったことにしてお金を取っている』わけじゃないので……。(保険医の)取り消しはないので大丈夫と思ったみたい」とその胸の内を想像する。 診療報酬の不正請求がないとしても、不必要な投薬などを意図的に繰り返して患者の命を危険にさらした疑惑があることは浮かび上がった。そのことで患者が次々に死亡した可能性があると専門医たちが指摘する。医師としてやってはならない行為ではないか。本来、監督官庁や捜査機関などが動くべき事案ではないのか。 番組ではこうした「医療の内容」にまで行政が踏み込んで規制することは今の制度では極めて困難だと関係者のインタビューで示している。利益を得る目的で意図して「過剰医療」をやっていたとしても現状では取り締まることが難しい。「医療の判断」とされれば踏み込みにくい。これこそ番組のサブタイトルにある「さらなる闇」である。 精神科の入院患者の9割以上が民間の病院にいる現状を考えると、民間病院がこうしてカネを得ていくことも私たちは容認しなければならないのだろうか。こうして患者たちの命や人権が犠牲になっていく。暴力や虐待の背景にあった患者をカネと見るような人権軽視の姿勢。こうした病院の実態を許していいものか。番組が突きつけている問いかけは重い』、まずは「監督官庁」が「過剰医療」を判定し、「捜査機関などが動く」形にもっていくべきだろう。こんな違法状態を放置すべきではない。
タグ:現代ビジネス「「大多数の精神科医は投薬の専門家に過ぎず、精神療法は独学」...和田秀樹氏も驚愕した「日本の心療内科」の「ヤバすぎる実態」」 精神科クリニックに流れ込む悪徳精神科医 「宇都宮病院の入院患者の平均年齢はそう高くないのに、事件発覚前の3年間で222人も亡くなっていたんですから、異常ですよ」、確かに死亡者が異常に多い。 「こうしたクリニックは、医師の資格さえあれば大きな設備投資を必要とせずに開業できますし、誰も診療の質をチェックしません。だから、悪徳精神科病院を経営するような層が、そのままここへ流れ込んでいます。 1950~60年代に起きた精神科病院乱立ブームと同様、畑違いの診療科の医師が突然参入して開業するケースも目立ちます」、なるほど。 「高評価をつけると、クリニックから特典がもらえるそうです」、悪質な「ステマ」だ・・・「体系だったカウンセリングを重視する精神療法のトレーニングをする場は極めて少ないとは問題だ。 「SSRIは、若い人には要注意の薬です。厚労省は2007年に「24歳以下に自殺のリスクが高まる」とし、 2013年には「18歳未満のうつ病に効果は認められない」としています。 つまり若い人にとっては、「自殺のリスクがあるけど、うつ病には効果がない薬」ということです。だけどそのことは、本人も親も知らされていなかった。小児精神科の先生からもらってるから安心だと思っていたそうです」、恐ろしいことだ。 「日本が薬に対してとにかくチェックの甘い国であることは確かだし、 薬の副作用による民事訴訟もすごく少ないから、みんないい加減に薬を出す。 でもこれって、他人事みたいに思われるかもしれないけど、医者が無駄な薬をたくさん出せば出すほど、健康保険料って上がるんですよ。だからそれによるステルス増税みたいになってるわけ。とても犯罪的なことだと思う」、その通りだ。 現代ビジネス「「海外の新しい科学的発見をも無視する日本の医学界」...改革を阻み続ける、多すぎる「日本の病理」」 「日本人の20人に1人が精神科で治療を受けている計算」、意外に多いことに驚かされた。 「海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります』、 「日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまう」、困ったことだ。 「海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります」、こうした保守的体質は困ったものだ。 「大学医学部の入試で、面接が課されています。それは、医者に向かない人間をはじこう、勉強だけできるけど性格が悪い人間を落とそう、という建前で実施されているんですけど、面接官は教授なんですよ。ということは、教授に忖度する人間が入ってきてしまう・・・ハーバードやイェールなど、海外の医学部でも入試面接はありますが、教授には面接させていません。既存の教授に喧嘩を売れそうな人間を入れないと、学問は進歩しないという考え方がベースにあるからです」、日本も今からでも見直すべきだ。 「海外で新しい科学的発見があって新しい常識が生まれても、日本の医学界はそれを受け入れません。例えば海外では、血糖値はやや高めの人のほうが死亡率が低いことなど、いままでの日本の常識に反することがわかってきているのに、日本の医者たちは態度を変えようとしません。 日本の医療全般に言えますが、守旧派、つまりいまの教授たちが偉すぎて誰も逆らえず、科学的データより教授のほうが正しいことにされてしまうという構造があります」、困ったことだ。 「「コミュ力がない人間や変な人間は医者になってはいけない」という思い込みや刷り込みが国民全体に浸透してしまっている。そのあたりの病理はあまりに深くて、変な人間を入試面接ではじきましょうという意見に、国民の9割ぐらいは賛成する。 「子供はノーマルであってほしい」「大学の医学部入試で面接をするのは当たり前だ」と、みんなが思うぐらいに、日本人は、みんなと同じ「まともな人間」でありたいと願っている。 これは日本にとってある種の不幸ですけど、そういう空気が蔓延していることが、精神医療の改革にあたっての一番の難しさだと思います」、もっと尖った人材が入ってくるようにしたいものだ。 文春オンライン「「このままでは殺される…どうか助けてください」相次ぐ患者の“死亡退院”はNHKがスクープした後も続いていた#1」 「そこではベッドに寝たきりの高齢患者を看護師らが問答無用で殴る、叩く、つねる、蹴る。暴力や虐待が日常茶飯事。ベッドに縛り付ける身体拘禁も日常化。入手した資料で入院患者の約8割が死亡して退院。いったん入院すると死亡しない限りは退院できないというおぞましい実態、“死亡退院”の現実があった」、ここまで酷いとは監督官庁の怠慢だ。 「都の改善命令を受けて滝山病院は「虐待防止委員会」を設置。弁護士が中心の「第三者委員会」を作って虐待の真相究明に乗り出した。 東京都も患者の聞き取り調査を実施。転退院の支援に乗り出した。 ところが行政の縦割りや公立病院の受け入れへの消極姿勢、さらに主な受け入れ先として想定された民間病院が費用面や合併症患者の扱いなどで及び腰になるなどで遅遅として進まない。 転院を希望した高齢の男性患者も引き受ける病院が見つからないまま体調を崩して死亡。転退院支援の遅れで「死亡退院」はその後も続いたのだ」、酷いものだ。 「第三者委員会は「医療行為の適切性」については「判断に医学的知見を要する」からと是非を判断しない姿勢だ」、こんな責任放棄を認めるべきではない。)… 「入院患者の約8割が死亡して退院。いったん入院すると死亡しない限りは退院できないというおぞましい実態」、病院とは名ばかりのおそろしい施設だ。 「保険医の資格を再取得」のハードルを高くするべきだ。 「役員報酬は2017年度から2020年度までは毎年5820万円。2021年度は6320万円。2022年度は6420万円と増加傾向」。「英国製の豪華スポーツカーで新車ならば約4000万円」、結構なご身分だ。 まずは「監督官庁」が「過剰医療」を判定し、「捜査機関などが動く」形にもっていくべきだろう。こんな違法状態を放置すべきではない。
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