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核武装・核兵器(その3)(日本が「核兵器を廃絶する兵器」をつくる日、科学者「オッペンハイマー」を描く試みが不完全...原爆と水爆の違いも説明せず...映画に感じた「不満」、ロシア軍が戦術核使用想定の演習開始、西側諸国をけん制) [安全保障]

核武装・核兵器については、昨年8月11日に取上げた。今日は、(その3)(日本が「核兵器を廃絶する兵器」をつくる日、科学者「オッペンハイマー」を描く試みが不完全...原爆と水爆の違いも説明せず...映画に感じた「不満」、ロシア軍が戦術核使用想定の演習開始、西側諸国をけん制)である。

先ずは、昨年12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「日本が「核兵器を廃絶する兵器」をつくる日」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335114
・『「思い切ったことができない」岸田首相の起死回生の一手とは?  すでに政権崩壊に近づいている岸田内閣を再生させる、一つの提言をしたいと思います。 正直、今までの岸田氏の発言や行動から、「それほど思い切ったことはできないのでは」という想いが99%を占めていますが、人間、追い詰められれば思い切ったことができるもの。何もできずにこのまま退散するくらいなら、これから述べるような夢のある(?)発言で評価を逆転してほしいものです。 ウクライナのクリミア奪還がほぼ確実となった時点で、国連緊急総会が招集され、そこでG7議長国のトップを務めた岸田文雄総理が、緊急発言の許可を得て異例の登壇をするとしましょう。以下は架空のエピソードです。 冒頭から岸田氏らしからぬ自虐ジョークでスピーチが始まりました。 「私の国内でのニックネームはケントウシです。古くから日本は中国の衛星国でありました。7世紀から10世紀、世界の大帝国であった『唐』のご機嫌をとるための使節のことを『遣唐使』とわが国では呼んでいます。しかし、私の綽名の『ケントウシ』は、私が中国におべっかを使っているという意味ではありません。日本語でケントウとは、考え、研究するということですが、就任以来、いつも『ケントウ』ばかりして、実行や具体的プランが出てこないと揶揄されてきたのです。 しかし、今日、本日をもって岸田は『ケントウシ』とは呼ばれなくなるでしょう。日本人だけでなく世界が驚く、しかも、私の一生の持論である『原爆廃絶』に関する一大決心と政策を今から申し上げ、ウクライナ戦争後の世界の変革に巨大な寄与をすることを宣言するからです……」 どうせアメリカにお追従するだけだろうとタカをくくっていた外国人ジャーナリストが慌ててカメラを真剣に岸田氏にズームし、日本の記者たちは血相を変えて、ペンを握りしめ始めます。実際、そこで岸田氏が発した「核廃絶プラン」は、確かに世界を驚嘆させるものだったからです。 「日本は核兵器を全く無力化するレーザービーム兵器の開発に全力をあげ、2026年までに完成、実用化するための計画を立て、そのために巨額の予算を投じることを決定します。 レーザー兵器というと、一般の方々はSFの世界かゲームの世界でしか使われていないと思っています。しかし、実際には世界各国で開発は続けられ、一部は実用化しています。もちろん、それはまだ短い距離にある物体とか、小さな物体しか破壊できないものですが、開発関係者たちは、いつか、そんなに遠くない先に、数百キロ先の超高速で飛ぶミサイルも、蛇行を繰り返す巡航ミサイルも簡単に叩き落とすことができると断言しています。) そして、日本はその開発のネックとなる重要な技術を保有しているのです。私はその技術を保有する会社を中心に、巨額の開発費を投じ、私自身の悲願である核廃絶の実現への速度を一気に早め、『ケントウシ』という綽名を返上したいと決意したのです」』、「核兵器を全く無力化するレーザービーム兵器の開発に全力をあげ、2026年までに完成、実用化するための計画を立て、そのために巨額の予算を投じることを決定します」、「開発関係者たちは、いつか、そんなに遠くない先に、数百キロ先の超高速で飛ぶミサイルも、蛇行を繰り返す巡航ミサイルも簡単に叩き落とすことができると断言」、いわばスターウォーズ兵器のようだ。「日本はその開発のネックとなる重要な技術を保有しているのです。私はその技術を保有する会社を中心に、巨額の開発費を投じ」、成功したら確かに安全保障の概念に大きな変革を与えるだろう。
・『岸田首相の発言に海外メディアが大注目する理由  さて、実際にこのような演説が行われるとしたら、どんな反応が起きるでしょうか。 軍事問題に弱い日本の新聞記者たちはボーゼンとなって、「これは誰の入れ知恵か?安倍離れのための策略か?」など、お得意の政局話しにしようと考え込むでしょうが、海外の記者たちの反応はまったく違います。 もし岸田氏が言うレーザー兵器が完成し、核ミサイルも巡航ミサイルも、もしかすると普通の砲弾でさえ簡単に打ち落とせる兵器が完成すれば、これは世界を変える軍事的出来事です。 かつて米国が核爆弾をつくり世界を完全に制覇したことや、英国が通称弩級戦艦、ドレッドノート型戦艦をつくって列強の戦艦を一夜にして二流にしてしまったのと同様に、少なくとも数年の間、国際政治を日本が圧倒的にリードする世の中が実現するからです。まさに日本がゲームチェンジャーになる可能性を秘めた演説を、目の前の冴えないリーダーがやっているのだから、驚かないはずはありません。 しかし、レーザー兵器といっても、どんなものを日本は作ろうとしているのか、岸田氏がこれを詳細に話すわけはありません。演説終了とともに、各国の専門家の現状分析と推測が始まります。もちろん、各国も開発には着手しているため、一部の性能はわかりますが、かなり厳しい軍事機密のベールに覆われた世界です。 元陸上自衛隊第一師団長の矢野義昭氏の論文によると、一般にレーザー兵器(専門的には指向性エネルギー兵器)と呼ばれるものには3種類あります。 第一は、高出力レーザーで、すでに工業用では溶接・切断などに使われています。しかし、軍用に使う場合は 大気中の雲や屑にも反応して、その度にエネルギーが減っていき、遠距離の物体まで破壊する状態には進歩していません。また、相当な電力を必要とするのもネックです。とはいえ米国は、100kW級の電力を使用して、実験では数キロ以内の無人機や小型ボートなどを無力化できる段階になっています。 第二のレーザー兵器は電磁パルス兵器です。現在のレーダーの出力を倍加しつつ、そのエネルギーを電子的に操作して、弾道ミサイルの弾頭部に集中することにより、内部の電子部品などの性能を破壊し、機能を麻痺させてしまいます。実は、日本は電磁パルスについては、先進的な技術力を持っています(高空で原爆を爆発させ、通信網を破壊する電磁パルス兵器は核爆弾なので、一応除外します)』、「第二のレーザー兵器は電磁パルス兵器です。現在のレーダーの出力を倍加しつつ、そのエネルギーを電子的に操作して、弾道ミサイルの弾頭部に集中することにより、内部の電子部品などの性能を破壊し、機能を麻痺させてしまいます。実は、日本は電磁パルスについては、先進的な技術力を持っています」、なるほど。
・『有力科学誌が論じる兵器開発成功へのヒント  科学誌『Nature』の日本版である『Nature Japan』の記事では、以下のように述べられています。 <ニューメキシコ州での実験ではドローンが突然コントロールを失ってキリモミ状態で落下したり、迫撃砲弾が途中で燃え上がって爆発しました。これはボーイング社のファイバーレーザー兵器hel mdの力によるものです。砂漠に止められた凹型トラックの上では立方体の装置が素早く回転し、目に見えない赤外線ビームを発射して、標的を一つ一つ破壊しました> 開発者によれば、失敗を繰り返したレーザー兵器が成功の兆しを見せるようになったのは、光ファイバーを使ったファイバーレーザーの登場からだそうです。ファイバーレーザーは従来のレーザーに比べて、安価だけでなく移動可能で頑丈なのです。また、安定したレーザー光線を発生させられるようにもなりました。 使用する電力も、現在ではキロワット級。「スターウォーズ計画」時代にはメガワット級のレーダーが必要でしたが、桁違いに電力消費量が小さくなりました。実際、すでにテロリストが使うような兵器に対してはこれで十分であり、砲弾が安価なため、費用対効果も高いといいます。 同じく『Nature Podcast』は以下のように報じています』、「失敗を繰り返したレーザー兵器が成功の兆しを見せるようになったのは、光ファイバーを使ったファイバーレーザーの登場からだそうです。ファイバーレーザーは従来のレーザーに比べて、安価だけでなく移動可能で頑丈なのです。また、安定したレーザー光線を発生させられるようにもなりました。 使用する電力も、現在ではキロワット級。「スターウォーズ計画」時代にはメガワット級のレーダーが必要でしたが、桁違いに電力消費量が小さくなりました。実際、すでにテロリストが使うような兵器に対してはこれで十分であり、砲弾が安価なため、費用対効果も高いといいます」、なるほど。
・『<米国海軍は 2014年末に実験的な艦載レーザー兵器システムを使って、海賊が使う小型ボートを攻撃できることを証明し、現在ペルシャ湾に配備されている輸送揚陸艦USSポンスにはこれが搭載されています。 そして、レーザー兵器の大きな欠陥である、霧や雲の中でレーザーが拡散してしまう問題も解決しつつあります。この問題は天文学が明瞭な星の姿を得るのに用いる手法を使いました。簡単にいうと、乱気流の影響を打ち消すようにレーザー光線を自動的に歪ませることで、眼鏡をかけて目の収差を修正するのと同じ効果が出るのだそうです。この発見により2010年には米国の空中発射レーザーは飛んでいる弾道ミサイルを破壊できるようになりました。>) これもまた、光ファイバーの出現で高い出力を得ることができ、大量の電気が必要となる問題を解決しつつあります。米国だけでなくイスラエルでは、ガザ地区から発射されるロケット弾を破壊するのに、ADAM systemというレーザー兵器を実用化しています。この兵器は自動車エンジンや別の発電機から電力供給を受けるため、電気の力はカップ二杯以下の燃料で十分だといいます。ミサイルは安いものでも十万ドル、1回発射すれば終わりですが、レーザー兵器システムなら1発10ドルもかかりません。 レーザーそのものだけでなく、画像認識システムと承認システムが進歩したことにより、命中率も到達距離も一気に伸びつつあるというのです』、「乱気流の影響を打ち消すようにレーザー光線を自動的に歪ませることで、眼鏡をかけて目の収差を修正するのと同じ効果が出るのだそうです。この発見により2010年には米国の空中発射レーザーは飛んでいる弾道ミサイルを破壊できるようになりました・・・光ファイバーの出現で高い出力を得ることができ、大量の電気が必要となる問題を解決しつつあります。米国だけでなくイスラエルでは、ガザ地区から発射されるロケット弾を破壊するのに、ADAM systemというレーザー兵器を実用化しています。この兵器は自動車エンジンや別の発電機から電力供給を受けるため、電気の力はカップ二杯以下の燃料で十分だといいます。ミサイルは安いものでも十万ドル、1回発射すれば終わりですが、レーザー兵器システムなら1発10ドルもかかりません」、なるほど。
・『日米が協力すれば中ロの核攻撃に十分対抗できる  しかし、世界の軍事専門記者はまだ疑います。数百キロ先の大陸間弾道弾を撃墜するには、まだまだ電力問題の解決のメドが立っていないのでは、ということです。 そして、そこにこそ岸田演説の意味があります。 実は日本には、小型・強力かつ特殊能力を持つ電源をつくる能力がある会社が存在するのです。また、リニアモーターカーの開発で得た知識によって、冒頭で述べたレールガンについても優れた技術を有する企業が存在しています。 日本の技術に巨額の予算を投入すれば、この会社の電源で、平時でも大災害時のブラックアウトが解消するし、電気自動車は1分以内で充電でき200キロ以上走行することが可能になると見られます。 つまり、日米の技術を総結集すれば、中国やロシアに先行して核兵器を撃墜できるレーザー兵器を日本がつくることは可能になります。 日本の軍事力は、常に財務省により査定されてきました。もちろん財源は税金なので、財務省の査定も必要でしょう。しかし、懐具合だけを見て国が有する兵器を規定するのは、いかにもお役所仕事。相手に勝てなければ兵器を買う意味もありません。 今回、ウクライナ戦争や台湾有事に際し、防衛予算をGDPの1%から2%へとアップすべきという議論が起き、岸田総理もこれに賛成しました。日本の防衛費は、昨年度予算で5兆円程度。今の戦力を2倍にしたところで、中国の圧倒的武力に勝てる補償などありません。自衛隊の天下りと米国の軍需産業のいいなりで武器を買いつけても、本当に役に立つのか、自衛官自身が疑問に思っているのが現状です。) 日中両国の経済力や軍事力は、それほど差がついているのです。しかし、予算をGDP比2%にして、5兆円を5年間にわたり特定の兵器の開発だけにかけるという選択肢は、ないものでしょうか。25兆円を投じて、米国の支援も受けられれば、開発速度は一気に上がります。現状、専門家たちは冒頭に挙げた3種類のレーザー兵器の開発に10年はかかると予言しています。しかし、それも開発費次第なのです。 ゲームチャェンジャーになる兵器の開発こそ、日本の安全を飛躍的に向上することになるのではないでしょうか。 米国は核爆弾を製造するのに20億ドルをかけました。実はこれ、米国が先の大戦で使用した弾薬製造の費用と同等です。ゲームチェンジャーを創り出すには、それほどの予算が必要なのです』、「実は日本には、小型・強力かつ特殊能力を持つ電源をつくる能力がある会社が存在するのです。また、リニアモーターカーの開発で得た知識によって、冒頭で述べたレールガンについても優れた技術を有する企業が存在しています。 日本の技術に巨額の予算を投入すれば、この会社の電源で、平時でも大災害時のブラックアウトが解消するし、電気自動車は1分以内で充電でき200キロ以上走行することが可能になると見られます。 つまり、日米の技術を総結集すれば、中国やロシアに先行して核兵器を撃墜できるレーザー兵器を日本がつくることは可能になります」、なるほど。
・『日本が中止した原爆開発を米国は完遂 問われる「核廃絶」への本気度  たとえば、かつて日本にも原子爆弾の製造計画がありました。論理としては間違っていませんでしたが、ウラン濃縮の手段と能力からして、大戦に間に合わないと判断し、開発を止めたという経緯があります。しかし米国は、同じ手法で100倍の資金を投じ、ウラン濃縮器から原子爆弾を創り出す道を選びました。それだけの覚悟を要するのが、新兵器開発なのです。 しかも、原爆をその数年後にソ連が開発したように、すぐに他国に追いつかれることもわかっています。優位性はわずか数年しかありません。「アメリカがその優位性を活かして、まったく機能しない国連の組織改革を進め、「常任理事国であっても自国に関する決定への拒否権行使はできない」といったルール作りをしていれば、今日におけるロシアのウクライナでの無謀に対して、国連軍を結成することができたでしょう。核兵器を持つ大国が他国を侵略するリスクが明確になった以上、こうした改革は必須です。 そして、レーザー兵器の威力を背景に、日本が常任理事国入りを果たすことも可能です。このようなステップを踏んでいかないと、岸田総理の悲願である核廃絶などできるわけはないのです。 総理の任期など、どんなに頑張っても4~5年です。自身の政治的悲願のために大きな賭けに出る総理こそ、国民が信頼する総理ではないでしょうか。口だけで男女平等や新しい資本主義を唱えても、「ケントウシ」岸田氏の言葉は国民にほとんど信用されず、現に支持率は下がり続けています。その間にも台湾有事や円高・物価高も進行します。国民の信頼を取り戻すためには、発想の飛躍的転換と覚悟が必要です。 もちろん、皮肉な話ですが、もしレーザー兵器が実現すれば、核抑止が効かなくなり、局地戦争がもっと増えるのではないかという見方もあります。これも、多分正しい予想です。しかし、G7議長として「悲願」と言い切った以上、岸田総理には本当に核廃絶の実現のための政策を、国民に向けて掲げてほしいものです。) 【訂正】・記事初出時より以下の通り訂正します。1P目 3段落目:「2023年2月、ウクライナのクリミア奪還がほぼ確実となった時点で、国連緊急総会が招集されました。G7議長国のトップであった岸田文雄総理は、そこで緊急発言の許可を得て登壇しました。異例の登壇です。」→「ウクライナのクリミア奪還がほぼ確実となった時点で、国連緊急総会が招集され、そこでG7議長国のトップを務めた岸田文雄総理が、緊急発言の許可を得て異例の登壇をするとしましょう。以下は架空のエピソードです。」 ・2P目の中見出しの下に、以下を加えます。 「さて、実際にこのような演説が行われるとしたら、どんな反応が起きるでしょうか。」
(2023年12月10日17:25 ダイヤモンド・ライフ編集部)​』、「「アメリカがその優位性を活かして、まったく機能しない国連の組織改革を進め、「常任理事国であっても自国に関する決定への拒否権行使はできない」といったルール作りをしていれば、今日におけるロシアのウクライナでの無謀に対して、国連軍を結成することができたでしょう。核兵器を持つ大国が他国を侵略するリスクが明確になった以上、こうした改革は必須です」、いまさら「拒否権行使」に制限をつける改革はロシア、中国の反対で不可能だ。「レーザー兵器の威力を背景に、日本が常任理事国入りを果たすことも可能です。このようなステップを踏んでいかないと、岸田総理の悲願である核廃絶などできるわけはないのです」、これも全くの夢物語だ。筆者の「木俣正剛」氏には幻滅した。

次に、4月9日付けNewsweek日本版が掲載したニューヨーク大学ジャーナリズム研究所所長のチャールズ・サイフェ氏による「科学者「オッペンハイマー」を描く試みが不完全...原爆と水爆の違いも説明せず...映画に感じた「不満」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2024/04/post-104203_1.php
・『<ドラマチックな映像は素晴らしいが、科学者オッペンハイマーを描く試みは不完全。本誌「オッペンハイマー アメリカと原爆」特集より> 映画『オッペンハイマー』のような「実話に基づく物語」の難点は、分かりやすく整理された実話はめったにないということだ。ハラハラするクライマックスの後に、大団円のエンディングが待っていることはまずない。現実の世界は正義感と懸け離れた動機や失敗や挫折だらけで、話の展開もつまずいたり急に進んだりとスムーズにはいかない。 そこで創作の出番となる。話の流れをスムーズにしたり、第三者にも分かりやすくするために、実話に少しばかり手を加える作業がなされる。 だが、科学は分かりやすいストーリーにされることをかたくなに拒否する。そこが科学を描く映画の難しいところだ。ストーリーの基礎を成す科学と登場人物と歴史に忠実でありつつ、観客が求める緊張感やドラマを盛り込むのはとてつもなく大変な作業だ。そして多くの場合、科学が真っ先に犠牲になる。『オッペンハイマー』も例外ではない。 この作品では、科学が大きなカギを握っている。そもそも主人公のロバート・オッペンハイマーは物理学者であり、彼の科学を理解せずして、彼という人間を理解することはできないし、マンハッタン計画におけるオッペンハイマーの役割を完全に把握することもできない。 脚本も担当したクリストファー・ノーラン監督は、ある部分では物語の流れにマイナスになる可能性があっても、科学的な事実に忠実であるために極端なことをした。 例えば、音と光では伝わるスピードが違うという科学的な事実の扱い方。オッペンハイマーらが史上初の核実験を観察したベースキャンプは、爆心地から約16キロ離れていた。つまり、スクリーンいっぱいに原子爆弾のキノコ雲が広がってから、オッペンハイマーたちが爆音を聞くまでの間に、まるまる1分ほどの不気味な静寂があるはずだ。 下手な監督なら、観客がその間にけげんな顔をすることに不安を覚えるだろう。だが、ノーランはそれを完全に表現することを恐れなかったどころか、ドラマチックな演出のために時間差を延長している。しかも閃光と奇妙な沈黙と遅れてやって来る爆音という流れは、物語の中心的なテーマとして映画の中で何度か効果的に登場する』、「原子爆弾のキノコ雲が広がってから、オッペンハイマーたちが爆音を聞くまでの間に、まるまる1分ほどの不気味な静寂があるはずだ。 下手な監督なら、観客がその間にけげんな顔をすることに不安を覚えるだろう。だが、ノーランはそれを完全に表現することを恐れなかったどころか、ドラマチックな演出のために時間差を延長している。しかも閃光と奇妙な沈黙と遅れてやって来る爆音という流れは、物語の中心的なテーマとして映画の中で何度か効果的に登場」、なるほど。
・『原爆と水爆の違いも説明せず  ノーランは原爆のパーツや、マンハッタン計画の舞台となったロスアラモス研究所(現ロスアラモス国立研究所)の雰囲気などのディテールもうまく描いている。 ところが、これらの研究所で行われた科学の説明はかなりあっさりしたレベルに抑えられている。とりわけ原爆の科学的なプロセスについての言及はゼロに近い。どうしても説明が避けられない場合も、後のシーンとつじつまを合わせるレベルだ。 1944年にちょっとした危機を引き起こし、核開発の方向性を変更させることになったたプルトニウム240の問題については、言及すらされていない。 ロスアラモスを離れてからのオッペンハイマーの人生は、水素爆弾の開発に反対する立場によって大きく揺れ動くことになる。それなのに、マンハッタン計画で開発された核分裂兵器(原子爆弾)と、第2次大戦後に物理学者のエドワード・テラーや原子力委員会のルイス・ストローズ委員長らが開発の必要性を唱えた熱核融合兵器(水素爆弾)の違いも、十分に説明されることはない。 原爆と水爆は科学的にも、技術的にも、道徳的にも異なる兵器だ。それが全く明らかにされないから、史上初の核実験というクライマックスの次にやって来る映画の第3幕、すなわちオッペンハイマーが水爆の開発に反対し、それが彼の人生の転落と、兵器開発コミュニティーの分断を引き起こしたくだりも、科学的な事実と切り離されて進行する。 だが『オッペンハイマー』にはスムーズな進行のために科学的な説明を省略する以上に、科学を軽視している部分がある。例えば、カリフォルニア大学バークレー校の同僚だったフランス文学者のハーコン・シュバリエが「君にはわれわれには見えない世界が見える。それには代償が伴う」とオッペンハイマーに語るシーンがある』、「史上初の核実験というクライマックスの次にやって来る映画の第3幕、すなわちオッペンハイマーが水爆の開発に反対し、それが彼の人生の転落と、兵器開発コミュニティーの分断を引き起こしたくだりも、科学的な事実と切り離されて進行する。 だが『オッペンハイマー』にはスムーズな進行のために科学的な説明を省略する以上に、科学を軽視している部分がある」、なるほど。
・『「心を病む天才」のパターン  映画の多くの場面で、そしてよく知られる伝記でも、オッペンハイマーはギリシャ神話に出てくる男神プロメテウスになぞらえられる。神々を欺いて人類に火を与えたために、半永久的に拷問を受ける代償を払うことになった神だ。だが、シュバリエが言う代償は、プロメテウスの払った代償とは異なる。 ノーランによるオッペンハイマーの描き方は、実のところ同じギリシャ神話でも、プロメテウスよりもイカロスに近い。ロウでできた翼を得て、太陽に近づきすぎたために転落した青年イカロスのように、オッペンハイマーは純粋に科学を追求したがために人生に失敗する無垢な男として描かれているのだ。) こうして物理学者や数学者を主人公にした映画によくあるパターンと同じように、天才的な頭脳を持つが故に精神を病むようになった男が描かれていく。実際、オッペンハイマーが観客に向かって、「私は隠された宇宙があるという幻影に苦しめられた」と語りかけるシーンもある。量子力学を示唆する星やら閃光やらが飛び交う映像も、ところどころに挿入されている。 古代ギリシャ人は、哲学者タレスが星を見上げていたために穴に転落したと考えたが、ノーランが描くオッペンハイマーも科学のことばかり考えていた変わり者だ。「あれほどのことが分かる男が、どうしてこれほど盲目なのか」というある人物のセリフはそれを踏まえている。 多くの科学史家と同じように、筆者も映画『オッペンハイマー』については複雑な感情を多々抱いた。ある科学者の人生を芸術的に描いた素晴らしい作品であるという点には、全く異論はない。 だが、科学を通して世界を見るとはどういうことなのかという描写を省略している以上、科学者オッペンハイマーを描く試みが不完全に感じられるのは避けられない』、「科学を通して世界を見るとはどういうことなのかという描写を省略している以上、科学者オッペンハイマーを描く試みが不完全に感じられるのは避けられない」、その通りだ。

第三に、5月22日付けNewsweek日本版「ロシア軍が戦術核使用想定の演習開始、西側諸国をけん制」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/05/post-104562.php
・『ロシア軍がプーチン大統領の命令に基づき、戦術核兵器の使用を想定した演習を開始した。ロシア国防省が21日発表した。 ロシア側の説明では、フランスのマクロン大統領を含めた西側諸国首脳や政府関係者らの発言がロシアにとって安全保障上の脅威を生み出しており、今回の演習につながったという。 現在の演習は第1段階で、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル「イスカンデル」と極超音速ミサイル「キンジャル」が投入され、ウクライナに隣接する南部軍管区の部隊が参加している。今後同盟国のベラルーシも加わる。 同国防省は、西側からの挑発的言動や脅威に対応し、ロシアの領土の一体性と主権を無条件で守り切るため、非戦略的核兵器の戦闘に向けて関係する部隊と装備の即応態勢を整えることが目的だと述べた。 複数の専門家も、この演習はこれ以上ウクライナ支援に踏み込むな、というプーチン氏から西側諸国への警告だとの見方を示した。「ロイター」』、「この演習はこれ以上ウクライナ支援に踏み込むな、というプーチン氏から西側諸国への警告だとの見方を示した」、全く勝手な「警告」だが、「核兵器」による「脅し」は不気味だ。  
タグ:「科学を通して世界を見るとはどういうことなのかという描写を省略している以上、科学者オッペンハイマーを描く試みが不完全に感じられるのは避けられない」、その通りだ。 「史上初の核実験というクライマックスの次にやって来る映画の第3幕、すなわちオッペンハイマーが水爆の開発に反対し、それが彼の人生の転落と、兵器開発コミュニティーの分断を引き起こしたくだりも、科学的な事実と切り離されて進行する。 だが『オッペンハイマー』にはスムーズな進行のために科学的な説明を省略する以上に、科学を軽視している部分がある」、なるほど。 「原子爆弾のキノコ雲が広がってから、オッペンハイマーたちが爆音を聞くまでの間に、まるまる1分ほどの不気味な静寂があるはずだ。 下手な監督なら、観客がその間にけげんな顔をすることに不安を覚えるだろう。だが、ノーランはそれを完全に表現することを恐れなかったどころか、ドラマチックな演出のために時間差を延長している。しかも閃光と奇妙な沈黙と遅れてやって来る爆音という流れは、物語の中心的なテーマとして映画の中で何度か効果的に登場」、なるほど。 チャールズ・サイフェ氏による「科学者「オッペンハイマー」を描く試みが不完全...原爆と水爆の違いも説明せず...映画に感じた「不満」」 Newsweek日本版 このようなステップを踏んでいかないと、岸田総理の悲願である核廃絶などできるわけはないのです」、これも全くの夢物語だ。筆者の「木俣正剛」氏には幻滅した。 「「アメリカがその優位性を活かして、まったく機能しない国連の組織改革を進め、「常任理事国であっても自国に関する決定への拒否権行使はできない」といったルール作りをしていれば、今日におけるロシアのウクライナでの無謀に対して、国連軍を結成することができたでしょう。核兵器を持つ大国が他国を侵略するリスクが明確になった以上、こうした改革は必須です」、いまさら「拒否権行使」に制限をつける改革はロシア、中国の反対で不可能だ。「レーザー兵器の威力を背景に、日本が常任理事国入りを果たすことも可能です。 日本の技術に巨額の予算を投入すれば、この会社の電源で、平時でも大災害時のブラックアウトが解消するし、電気自動車は1分以内で充電でき200キロ以上走行することが可能になると見られます。 つまり、日米の技術を総結集すれば、中国やロシアに先行して核兵器を撃墜できるレーザー兵器を日本がつくることは可能になります」、なるほど。 「実は日本には、小型・強力かつ特殊能力を持つ電源をつくる能力がある会社が存在するのです。また、リニアモーターカーの開発で得た知識によって、冒頭で述べたレールガンについても優れた技術を有する企業が存在しています。 米国だけでなくイスラエルでは、ガザ地区から発射されるロケット弾を破壊するのに、ADAM systemというレーザー兵器を実用化しています。この兵器は自動車エンジンや別の発電機から電力供給を受けるため、電気の力はカップ二杯以下の燃料で十分だといいます。ミサイルは安いものでも十万ドル、1回発射すれば終わりですが、レーザー兵器システムなら1発10ドルもかかりません」、なるほど。 「乱気流の影響を打ち消すようにレーザー光線を自動的に歪ませることで、眼鏡をかけて目の収差を修正するのと同じ効果が出るのだそうです。この発見により2010年には米国の空中発射レーザーは飛んでいる弾道ミサイルを破壊できるようになりました・・・光ファイバーの出現で高い出力を得ることができ、大量の電気が必要となる問題を解決しつつあります。 使用する電力も、現在ではキロワット級。「スターウォーズ計画」時代にはメガワット級のレーダーが必要でしたが、桁違いに電力消費量が小さくなりました。実際、すでにテロリストが使うような兵器に対してはこれで十分であり、砲弾が安価なため、費用対効果も高いといいます」、なるほど。 「失敗を繰り返したレーザー兵器が成功の兆しを見せるようになったのは、光ファイバーを使ったファイバーレーザーの登場からだそうです。ファイバーレーザーは従来のレーザーに比べて、安価だけでなく移動可能で頑丈なのです。また、安定したレーザー光線を発生させられるようにもなりました。 「第二のレーザー兵器は電磁パルス兵器です。現在のレーダーの出力を倍加しつつ、そのエネルギーを電子的に操作して、弾道ミサイルの弾頭部に集中することにより、内部の電子部品などの性能を破壊し、機能を麻痺させてしまいます。実は、日本は電磁パルスについては、先進的な技術力を持っています」、なるほど。 「日本はその開発のネックとなる重要な技術を保有しているのです。私はその技術を保有する会社を中心に、巨額の開発費を投じ」、成功したら確かに安全保障の概念に大きな変革を与えるだろう。 「核兵器を全く無力化するレーザービーム兵器の開発に全力をあげ、2026年までに完成、実用化するための計画を立て、そのために巨額の予算を投じることを決定します」、「開発関係者たちは、いつか、そんなに遠くない先に、数百キロ先の超高速で飛ぶミサイルも、蛇行を繰り返す巡航ミサイルも簡単に叩き落とすことができると断言」、いわばスターウォーズ兵器のようだ。 木俣正剛氏による「日本が「核兵器を廃絶する兵器」をつくる日」 ダイヤモンド・オンライン (その3)(日本が「核兵器を廃絶する兵器」をつくる日、科学者「オッペンハイマー」を描く試みが不完全...原爆と水爆の違いも説明せず...映画に感じた「不満」、ロシア軍が戦術核使用想定の演習開始、西側諸国をけん制) 核武装・核兵器 Newsweek日本版「ロシア軍が戦術核使用想定の演習開始、西側諸国をけん制」 「この演習はこれ以上ウクライナ支援に踏み込むな、というプーチン氏から西側諸国への警告だとの見方を示した」、全く勝手な「警告」だが、「核兵器」による「脅し」は不気味だ。
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