ロシア(その3)(3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス、ハバナ症候群 原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?、プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前) [世界情勢]
ロシアについては、2018年7月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス、ハバナ症候群 原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?、プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前)である。
先ずは、本年3月29日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/744531
・『2024年3月22日に、モスクワ郊外のコンサートホールで140人以上の死者を出す銃撃テロ事件が起きてから約1週間が経過した。事件発生を聞いた瞬間、筆者の脳裏に、ある生々しい情景が浮かんだ。 1999年9月半ば、モスクワの巨大アパートで起きた爆破テロの現場の情景だ。当時、共同通信モスクワ支局長だった筆者は現場に足を踏み入れた瞬間、息を飲んだ』、興味深そうだ。
・『1999年のテロ事件 大きなビルの一角が上から下まで、ナイフでケーキの一部がきれいに切り取られたように、そこだけ完全に崩壊していたからだ。100人以上の住民が死亡した。 当時この事件を含めモスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた。 当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた。 この連続爆破事件は、戦争やテロといった流血の事態を起こす一方で、国内では政治的安定をもたらしてきた「プーチン時代」の血なまぐさい幕開けを告げる出来事だったと言える。) あれから四半世紀。今回のモスクワ郊外での銃撃テロ事件についても、当初、筆者はクレムリンによる自作自演ではないかとの疑いを持って情報分析を行った。 事件直前に行われた大統領選で5選を決めたばかりのプーチン氏としては、テロへの恐怖を再度国民に植え付けることで、国内を引き締め、自らの求心力を高めるという25年前と同じ構図ではないかと疑ったのだ。 しかし、情報を収集した結果、今回のテロは自作自演ではない、との判断に至った。すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている』、「1999年のテロ事件・・・モスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた・・・当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた・・・すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている」、なるほど。
・『ISとタリバン暫定政権との対立 ISはアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権との間で対立を深めている。ロシアは、そのタリバンにとって、数少ない事実上の「同盟国」と呼ばれており、ISが敵愾心を高めているからだ。 ロシアを標的にした事件はすでに起きていた。2022年9月、アフガニスタン・カブールのロシア大使館前で爆発があり、ロシア大使館の職員2人が死亡。ISが犯行声明を出したのだ。ISは、プーチン政権がアサド政権側に立ってシリア内戦に軍事介入したことにも強く反発している。 ある西側外交官は今回のテロ事件後、筆者に対しこう語った。「モスクワの事件がISの犯行であることは間違いない。それどころか、ISが世界各地で同様のテロを起こす可能性が出ている。アメリカ本土でも起きることを心配している」。 この外交官の発言の背景には、当然ながら、アメリカのバイデン政権がISによるテロ準備の動きを把握していたことがある。この事件が起こる直前、2回にわたってロシア政府に海外の過激派によるテロが起こる可能性を伝え、2回目ではISの可能性も伝えていたといわれる。) なぜウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ。 このため、アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている。 ロシア政府はこうしたアメリカの外交原則を承知していた。前例がすでにあったからだ。2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている』、「ウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ・・・アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている・・・2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている」、なるほど。
・『テロ情報を信用しなかったプーチン しかしプーチン氏は今回、ワシントンからのテロ情報を信用しなかった。テロ発生の3日前、対テロ作戦の中核である連邦保安局(FSB)での会議に出席したプーチン氏はこう警告をはねのけた。 「これは、あからさまな脅迫である。ロシア社会を脅し、不安定化を狙ったものだ」 なぜプーチン氏は今回、アメリカの警告を受け入れなかったのか。やはり、ウクライナ侵攻で間接的にロシアと対峙するバイデン政権への反発があったと思われる。実際に、事件当夜のコンサートホール周辺の状況を見ると、厳重な警戒態勢をとっていたとは言えない。 これは、明らかにプーチン政権の手落ちである。西側であれば、テロ警備上で大きなミスを犯したとして、政権への批判の大合唱が起きるところだが、ロシアではそうはならない。真の野党も、報道の自由もないからだ。) 逆にプーチン政権は、この事件をウクライナや米欧への攻撃材料として利用している。プーチン氏は「過激なイスラム主義者」の犯行とする一方で、ウクライナの関与の可能性に触れた。 大統領の側近でもあるボルトニコフFSB長官に至っては、ウクライナとともに米英両国の情報機関が関与している可能性が高いとの見方も示した』、なるほど。
・『説得力に乏しいロシア側の主張 しかし、上記したようにテロ情報を提供したアメリカはもちろん、ウクライナも、ロシア本土への攻撃に際しては、民間人を対象としないという原則を掲げている。ロシア側の主張はいかにも説得力に乏しい。 筆者は2024年3月22日付「大統領選『5勝』のプーチンが乗り出す世界戦略」の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。 事件の実行犯として逮捕された4人のタジキスタン人が法廷に連行された際、明らかに治安当局の取り調べを受けた際に拷問を受けていた痕跡があったのだ。 このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた。プーチン氏は2022年に拷問を禁止、厳罰の対象とすることをうたった拷問禁止法を成立させた。しかし、人権活動家によると、ロシアはこの法成立後も取り調べで実際には拷問は行われていたが、当局は隠そうとしていた。これが今や、隠そうともしなくなったのだ。 国際的注目を集めていた、反政権派指導者、ナワリヌイ氏の先日の収監中での事実上の殺害が象徴するように、今のプーチン政権には米欧からの違法行為批判を気にする気配はさらさらない。) こうしたプーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている』、「筆者は2024年3月22日付・・・の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた・・・プーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている」、恐ろしいことだ。
・『非人道的な残虐行為を犯すプーチン政権 プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう』、「プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう」、なるほど。
次に、4月2日付けNewsweek日本版「ハバナ症候群、原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?」を紹介しよう。
・『<世界各国でアメリカ政府職員を襲った耳鳴り、不眠などの症状はかねてから、エネルギー兵器か音響兵器による攻撃が原因ではないかと言われてきたが> いわゆる「ハバナ症候群」について、新たな調査報告が発表された。その背後に、エネルギー兵器を使用するロシア情報機関の工作員が存在していた可能性があるという内容だ。ハバナ症候群とは、キューバに駐在していたアメリカ政府職員を襲った、身体の衰弱を伴う謎の健康被害を指す。 『ハバナ症候群』の呼称で知られる原因不明の健康被害は、ロシアの対外軍事情報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)によって用いられた「指向性のエネルギー兵器の使用が発端となっていた可能性がある」と、ロシア語の独立系メディア「ザ・インサイダー」と、米CBSのドキュメンタリー番組「60ミニッツ」、ドイツの「デア・シュピーゲル」誌の合同調査報告は伝えた。 今回の報告は、攻撃主体として「29155部隊」と呼ばれるロシア軍秘密機関も名指ししている。 特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている。なお、アメリカの情報機関では、この症候群を公式には「特異な健康事案」と呼んでいる。) 報告書によると、この「攻撃」の最初の事例は、2014年にドイツのフランクフルトで記録されていた可能性があるという』、「特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている」、なるほど。
・『異変の現場にいた部隊 報告書は次のように言う。調査を行った3つの報道機関は、「29155部隊が兵器化された技術で実験を行っていたことを裏付ける証拠書類を発見した。この技術は、謎の症状の原因である可能性が高いと専門家が示唆しているものだ」 29155部隊の幹部は、「非致死性の音響兵器」に関する作戦遂行によって評価され、褒賞を受けた、とザ・インサイダーは記している。29155部隊に属する工作員たちが、「報告されている特異な健康事案の発生直前、あるいは発生時に、世界各地の拠点に駐在していたことが位置情報で確認されている」。 キューバをはじめ各国に駐在していたアメリカ政府職員が訴えたさまざまな症状については、かねてから、何らかのエネルギー兵器か音響兵器が原因ではないかとの臆測があり、注目を集めてきた。 スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュースに対し、これらの症状に関する研究から、「脳の聴覚系および前庭系に損傷が起きていることを示す明確な証拠」が浮かび上がったと証言していた。 ハバナ症候群については、米国立衛生研究所(NIH)も2024年3月に研究結果を公表したが、健康被害の原因について新たな知見は見つからなかった。 2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた』、「スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュース」に語った証言と、「2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた」というのでは全く逆の結論のようだ。未だに真相は霧の中のようだ。
第三に、6月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際政治アナリスト・危機管理コンサルタントの菅原 出氏による「プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/345730
・『ロシアの民間軍事会社のワグネルは、武装蜂起の失敗、そして創設者であるプリゴジン氏の死去で、一時代が終わった。しかし、ロシア国内ではワグネルの利権を得ようと新たなプレイヤーたちがうごめいているという。ワグネルのビジネスモデルの終焉とその後とは。※本稿は、菅原出著『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地』(平凡社新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『新たな政府系露民間軍事会社と「ワグネル・ビジネスモデル」の終焉 8月26日、プーチン大統領は、ワグネルの戦闘員たちにロシア国家への忠誠を誓う署名を命じた。プーチンがワグネルや他の民間軍事会社の従業員に宣誓を要求したのは、こうした組織をより厳しい国家の管理下に置こうとする明確な動きだと言えるだろう。 クレムリンのウェブサイトに掲載されたこの政令は、軍のために仕事をしたり、モスクワがウクライナでの「特別軍事作戦」と呼ぶものを支援したりする者は誰でも、ロシアへの忠誠を正式に誓うことを義務づけている。またこの法令には、宣誓する者は指揮官や上級指導者の命令に厳格に従うことを約束するという一行が含まれている。 今後ロシア政府は、民間軍事会社を国家の管理統制下に置き、活用していくことになるのであろう。当然、ワグネルの利権は、ロシア軍及び軍傘下の別の民間軍事会社が乗っ取ることになるのだろう。 実際、プリゴジンの死亡が発表されると、ロシアの治安部隊やクレムリンに近いオリガルヒとつながりのある民間軍事会社が、数千人規模のワグネルの戦闘員を吸収しようと画策した。その中には、ロシア軍情報将校によって設立され、プーチンに近いオリガルヒが資金を提供し、国営企業によって管理されている会社もある。 その一つ、レドゥート(Redut)社は、中東で活動するロシア企業に警備を提供している。同社は2008年に元ロシア空挺部隊員や軍事情報部の将校たちによって設立された会社とされる。米政府は23年2月にこの会社を、「ロシア軍情報機関とつながりがある」として制裁対象にした。 ワグネルの元社員が23年7月に英国議会で行った証言によれば、レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加した』、「レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加」、なるほど。
・『プリゴジン個人のネットワークで回す ワグネルのビジネスモデル もう一つの有力な会社がコンボイ社である。同社は、プリゴジンと決別する前にワグネルのアフリカ作戦を指揮していたコンスタンチン・ピカロフが率いる会社である。EUは2月にピカロフを制裁対象に指定し、彼が2018年7月に中央アフリカ共和国で3人のロシア人ジャーナリストの殺害を計画したと記している。 プリゴジンが亡くなる直前、ピカロフはコンボイ社がアフリカの8カ国で活動していることを明らかにしていた。「我々はアフリカの軍人に新しい武器を与え、その使い方を教える」と彼はロシアの調査サイト「iStories」に語っていた。 また23年8月21日に「テレグラム」に掲載された広告でコンボイ社は、アフリカでロシアの偵察・攻撃ドローンを指揮するボランティアを募集していると宣伝していた。 クレムリンを批判するロシアの富豪ミハイル・ホドルコフスキー氏が設立したロシアの調査機関「ドシエ・センター」によると、コンボイ社はオリガルヒでプーチンの側近であるアルカディ・ローテンベルクや国営VTB銀行から22年に数億ルーブルを受け取っていたという。 プリゴジンが亡くなる前日、ロシアのユヌス=ベク・イェフクロフ国防副大臣はリビアを訪問し、ワグネルがアフリカに進出した最初の国であるリビアの軍閥ハリファ・ハフタル将軍に会ったことが報じられた。米メディアによると、この時同国防副大臣は「ワグネルの部隊を別の民間軍事会社が引き継ぐ」と説明したという。民間軍事会社が戦闘員たちに給料を支払うが、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の将校たちが厳しく管理することも同時に伝えられたという。 同紙によれば、この会談にはピカロフ氏も同席しており、彼のコンボイ社が北アフリカのワグネルの利権を引き継ぐ最有力候補になっていると伝えられた。 プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう。) いずれにしても、プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである』、「プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう・・・プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである」、なるほど。
・『警備、軍事訓練から政府の代理人までワグネルという規格外の民間軍事会社 ここまでワグネルの物語を主に述べてきたが、この「規格外」の会社を民間軍事会社の歴史にどう位置づけるか、その総括は容易ではない。ワグネルは、民間軍事会社の標準サービスである警備、警護や軍事訓練等を提供する場合もあれば、ヴィネル社のように「政府の代理人」としての役割も果たしていた。 またエグゼクティブ・アウトカムズのように戦闘サービスを請け負うだけでなく、途上国で資源開発にも携わり、密輸やマネーロンダリング等の国際犯罪にも手を染めた。ロシアという国家の裏仕事を手掛ける何でも屋として、一時期はその存在や活動を否定していたが、プリゴジンがワグネル設立を公に認めただけでなく、自らSNSで自分たちの活動を公表し、軍や政府を公然と非難し、最後は武装蜂起までしてしまったのである。 この背景にはプリゴジンという個性豊かな人物の存在があり、彼とプーチン大統領の個人的な関係が彼を大胆にさせた可能性を指摘出来るだろう。またそれに加え、プリゴジンがSNSを使って自らの情報を発信し、世界中にフォロワーを拡大させ、行き詰まりをみせるウクライナ戦争に対する人々の不満を背景に、ロシア軍上層部への批判を自らのパワーに変えていったという情報社会の時代的な側面があったことも見逃せない。 SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか』、「今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない・・・ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか・・・SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか」、ロシア独特のワグネルのような民間軍事組織は、今後どうなっていくのだろうか。
先ずは、本年3月29日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/744531
・『2024年3月22日に、モスクワ郊外のコンサートホールで140人以上の死者を出す銃撃テロ事件が起きてから約1週間が経過した。事件発生を聞いた瞬間、筆者の脳裏に、ある生々しい情景が浮かんだ。 1999年9月半ば、モスクワの巨大アパートで起きた爆破テロの現場の情景だ。当時、共同通信モスクワ支局長だった筆者は現場に足を踏み入れた瞬間、息を飲んだ』、興味深そうだ。
・『1999年のテロ事件 大きなビルの一角が上から下まで、ナイフでケーキの一部がきれいに切り取られたように、そこだけ完全に崩壊していたからだ。100人以上の住民が死亡した。 当時この事件を含めモスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた。 当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた。 この連続爆破事件は、戦争やテロといった流血の事態を起こす一方で、国内では政治的安定をもたらしてきた「プーチン時代」の血なまぐさい幕開けを告げる出来事だったと言える。) あれから四半世紀。今回のモスクワ郊外での銃撃テロ事件についても、当初、筆者はクレムリンによる自作自演ではないかとの疑いを持って情報分析を行った。 事件直前に行われた大統領選で5選を決めたばかりのプーチン氏としては、テロへの恐怖を再度国民に植え付けることで、国内を引き締め、自らの求心力を高めるという25年前と同じ構図ではないかと疑ったのだ。 しかし、情報を収集した結果、今回のテロは自作自演ではない、との判断に至った。すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている』、「1999年のテロ事件・・・モスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた・・・当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた・・・すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている」、なるほど。
・『ISとタリバン暫定政権との対立 ISはアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権との間で対立を深めている。ロシアは、そのタリバンにとって、数少ない事実上の「同盟国」と呼ばれており、ISが敵愾心を高めているからだ。 ロシアを標的にした事件はすでに起きていた。2022年9月、アフガニスタン・カブールのロシア大使館前で爆発があり、ロシア大使館の職員2人が死亡。ISが犯行声明を出したのだ。ISは、プーチン政権がアサド政権側に立ってシリア内戦に軍事介入したことにも強く反発している。 ある西側外交官は今回のテロ事件後、筆者に対しこう語った。「モスクワの事件がISの犯行であることは間違いない。それどころか、ISが世界各地で同様のテロを起こす可能性が出ている。アメリカ本土でも起きることを心配している」。 この外交官の発言の背景には、当然ながら、アメリカのバイデン政権がISによるテロ準備の動きを把握していたことがある。この事件が起こる直前、2回にわたってロシア政府に海外の過激派によるテロが起こる可能性を伝え、2回目ではISの可能性も伝えていたといわれる。) なぜウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ。 このため、アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている。 ロシア政府はこうしたアメリカの外交原則を承知していた。前例がすでにあったからだ。2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている』、「ウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ・・・アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている・・・2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている」、なるほど。
・『テロ情報を信用しなかったプーチン しかしプーチン氏は今回、ワシントンからのテロ情報を信用しなかった。テロ発生の3日前、対テロ作戦の中核である連邦保安局(FSB)での会議に出席したプーチン氏はこう警告をはねのけた。 「これは、あからさまな脅迫である。ロシア社会を脅し、不安定化を狙ったものだ」 なぜプーチン氏は今回、アメリカの警告を受け入れなかったのか。やはり、ウクライナ侵攻で間接的にロシアと対峙するバイデン政権への反発があったと思われる。実際に、事件当夜のコンサートホール周辺の状況を見ると、厳重な警戒態勢をとっていたとは言えない。 これは、明らかにプーチン政権の手落ちである。西側であれば、テロ警備上で大きなミスを犯したとして、政権への批判の大合唱が起きるところだが、ロシアではそうはならない。真の野党も、報道の自由もないからだ。) 逆にプーチン政権は、この事件をウクライナや米欧への攻撃材料として利用している。プーチン氏は「過激なイスラム主義者」の犯行とする一方で、ウクライナの関与の可能性に触れた。 大統領の側近でもあるボルトニコフFSB長官に至っては、ウクライナとともに米英両国の情報機関が関与している可能性が高いとの見方も示した』、なるほど。
・『説得力に乏しいロシア側の主張 しかし、上記したようにテロ情報を提供したアメリカはもちろん、ウクライナも、ロシア本土への攻撃に際しては、民間人を対象としないという原則を掲げている。ロシア側の主張はいかにも説得力に乏しい。 筆者は2024年3月22日付「大統領選『5勝』のプーチンが乗り出す世界戦略」の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。 事件の実行犯として逮捕された4人のタジキスタン人が法廷に連行された際、明らかに治安当局の取り調べを受けた際に拷問を受けていた痕跡があったのだ。 このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた。プーチン氏は2022年に拷問を禁止、厳罰の対象とすることをうたった拷問禁止法を成立させた。しかし、人権活動家によると、ロシアはこの法成立後も取り調べで実際には拷問は行われていたが、当局は隠そうとしていた。これが今や、隠そうともしなくなったのだ。 国際的注目を集めていた、反政権派指導者、ナワリヌイ氏の先日の収監中での事実上の殺害が象徴するように、今のプーチン政権には米欧からの違法行為批判を気にする気配はさらさらない。) こうしたプーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている』、「筆者は2024年3月22日付・・・の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた・・・プーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている」、恐ろしいことだ。
・『非人道的な残虐行為を犯すプーチン政権 プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう』、「プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう」、なるほど。
次に、4月2日付けNewsweek日本版「ハバナ症候群、原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?」を紹介しよう。
・『<世界各国でアメリカ政府職員を襲った耳鳴り、不眠などの症状はかねてから、エネルギー兵器か音響兵器による攻撃が原因ではないかと言われてきたが> いわゆる「ハバナ症候群」について、新たな調査報告が発表された。その背後に、エネルギー兵器を使用するロシア情報機関の工作員が存在していた可能性があるという内容だ。ハバナ症候群とは、キューバに駐在していたアメリカ政府職員を襲った、身体の衰弱を伴う謎の健康被害を指す。 『ハバナ症候群』の呼称で知られる原因不明の健康被害は、ロシアの対外軍事情報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)によって用いられた「指向性のエネルギー兵器の使用が発端となっていた可能性がある」と、ロシア語の独立系メディア「ザ・インサイダー」と、米CBSのドキュメンタリー番組「60ミニッツ」、ドイツの「デア・シュピーゲル」誌の合同調査報告は伝えた。 今回の報告は、攻撃主体として「29155部隊」と呼ばれるロシア軍秘密機関も名指ししている。 特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている。なお、アメリカの情報機関では、この症候群を公式には「特異な健康事案」と呼んでいる。) 報告書によると、この「攻撃」の最初の事例は、2014年にドイツのフランクフルトで記録されていた可能性があるという』、「特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている」、なるほど。
・『異変の現場にいた部隊 報告書は次のように言う。調査を行った3つの報道機関は、「29155部隊が兵器化された技術で実験を行っていたことを裏付ける証拠書類を発見した。この技術は、謎の症状の原因である可能性が高いと専門家が示唆しているものだ」 29155部隊の幹部は、「非致死性の音響兵器」に関する作戦遂行によって評価され、褒賞を受けた、とザ・インサイダーは記している。29155部隊に属する工作員たちが、「報告されている特異な健康事案の発生直前、あるいは発生時に、世界各地の拠点に駐在していたことが位置情報で確認されている」。 キューバをはじめ各国に駐在していたアメリカ政府職員が訴えたさまざまな症状については、かねてから、何らかのエネルギー兵器か音響兵器が原因ではないかとの臆測があり、注目を集めてきた。 スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュースに対し、これらの症状に関する研究から、「脳の聴覚系および前庭系に損傷が起きていることを示す明確な証拠」が浮かび上がったと証言していた。 ハバナ症候群については、米国立衛生研究所(NIH)も2024年3月に研究結果を公表したが、健康被害の原因について新たな知見は見つからなかった。 2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた』、「スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュース」に語った証言と、「2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた」というのでは全く逆の結論のようだ。未だに真相は霧の中のようだ。
第三に、6月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際政治アナリスト・危機管理コンサルタントの菅原 出氏による「プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/345730
・『ロシアの民間軍事会社のワグネルは、武装蜂起の失敗、そして創設者であるプリゴジン氏の死去で、一時代が終わった。しかし、ロシア国内ではワグネルの利権を得ようと新たなプレイヤーたちがうごめいているという。ワグネルのビジネスモデルの終焉とその後とは。※本稿は、菅原出著『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地』(平凡社新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『新たな政府系露民間軍事会社と「ワグネル・ビジネスモデル」の終焉 8月26日、プーチン大統領は、ワグネルの戦闘員たちにロシア国家への忠誠を誓う署名を命じた。プーチンがワグネルや他の民間軍事会社の従業員に宣誓を要求したのは、こうした組織をより厳しい国家の管理下に置こうとする明確な動きだと言えるだろう。 クレムリンのウェブサイトに掲載されたこの政令は、軍のために仕事をしたり、モスクワがウクライナでの「特別軍事作戦」と呼ぶものを支援したりする者は誰でも、ロシアへの忠誠を正式に誓うことを義務づけている。またこの法令には、宣誓する者は指揮官や上級指導者の命令に厳格に従うことを約束するという一行が含まれている。 今後ロシア政府は、民間軍事会社を国家の管理統制下に置き、活用していくことになるのであろう。当然、ワグネルの利権は、ロシア軍及び軍傘下の別の民間軍事会社が乗っ取ることになるのだろう。 実際、プリゴジンの死亡が発表されると、ロシアの治安部隊やクレムリンに近いオリガルヒとつながりのある民間軍事会社が、数千人規模のワグネルの戦闘員を吸収しようと画策した。その中には、ロシア軍情報将校によって設立され、プーチンに近いオリガルヒが資金を提供し、国営企業によって管理されている会社もある。 その一つ、レドゥート(Redut)社は、中東で活動するロシア企業に警備を提供している。同社は2008年に元ロシア空挺部隊員や軍事情報部の将校たちによって設立された会社とされる。米政府は23年2月にこの会社を、「ロシア軍情報機関とつながりがある」として制裁対象にした。 ワグネルの元社員が23年7月に英国議会で行った証言によれば、レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加した』、「レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加」、なるほど。
・『プリゴジン個人のネットワークで回す ワグネルのビジネスモデル もう一つの有力な会社がコンボイ社である。同社は、プリゴジンと決別する前にワグネルのアフリカ作戦を指揮していたコンスタンチン・ピカロフが率いる会社である。EUは2月にピカロフを制裁対象に指定し、彼が2018年7月に中央アフリカ共和国で3人のロシア人ジャーナリストの殺害を計画したと記している。 プリゴジンが亡くなる直前、ピカロフはコンボイ社がアフリカの8カ国で活動していることを明らかにしていた。「我々はアフリカの軍人に新しい武器を与え、その使い方を教える」と彼はロシアの調査サイト「iStories」に語っていた。 また23年8月21日に「テレグラム」に掲載された広告でコンボイ社は、アフリカでロシアの偵察・攻撃ドローンを指揮するボランティアを募集していると宣伝していた。 クレムリンを批判するロシアの富豪ミハイル・ホドルコフスキー氏が設立したロシアの調査機関「ドシエ・センター」によると、コンボイ社はオリガルヒでプーチンの側近であるアルカディ・ローテンベルクや国営VTB銀行から22年に数億ルーブルを受け取っていたという。 プリゴジンが亡くなる前日、ロシアのユヌス=ベク・イェフクロフ国防副大臣はリビアを訪問し、ワグネルがアフリカに進出した最初の国であるリビアの軍閥ハリファ・ハフタル将軍に会ったことが報じられた。米メディアによると、この時同国防副大臣は「ワグネルの部隊を別の民間軍事会社が引き継ぐ」と説明したという。民間軍事会社が戦闘員たちに給料を支払うが、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の将校たちが厳しく管理することも同時に伝えられたという。 同紙によれば、この会談にはピカロフ氏も同席しており、彼のコンボイ社が北アフリカのワグネルの利権を引き継ぐ最有力候補になっていると伝えられた。 プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう。) いずれにしても、プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである』、「プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう・・・プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである」、なるほど。
・『警備、軍事訓練から政府の代理人までワグネルという規格外の民間軍事会社 ここまでワグネルの物語を主に述べてきたが、この「規格外」の会社を民間軍事会社の歴史にどう位置づけるか、その総括は容易ではない。ワグネルは、民間軍事会社の標準サービスである警備、警護や軍事訓練等を提供する場合もあれば、ヴィネル社のように「政府の代理人」としての役割も果たしていた。 またエグゼクティブ・アウトカムズのように戦闘サービスを請け負うだけでなく、途上国で資源開発にも携わり、密輸やマネーロンダリング等の国際犯罪にも手を染めた。ロシアという国家の裏仕事を手掛ける何でも屋として、一時期はその存在や活動を否定していたが、プリゴジンがワグネル設立を公に認めただけでなく、自らSNSで自分たちの活動を公表し、軍や政府を公然と非難し、最後は武装蜂起までしてしまったのである。 この背景にはプリゴジンという個性豊かな人物の存在があり、彼とプーチン大統領の個人的な関係が彼を大胆にさせた可能性を指摘出来るだろう。またそれに加え、プリゴジンがSNSを使って自らの情報を発信し、世界中にフォロワーを拡大させ、行き詰まりをみせるウクライナ戦争に対する人々の不満を背景に、ロシア軍上層部への批判を自らのパワーに変えていったという情報社会の時代的な側面があったことも見逃せない。 SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか』、「今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない・・・ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか・・・SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか」、ロシア独特のワグネルのような民間軍事組織は、今後どうなっていくのだろうか。
タグ:東洋経済オンライン ロシア (その3)(3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス、ハバナ症候群 原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?、プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前) 吉田 成之氏による「3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス」 「1999年のテロ事件・・・モスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた・・・当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた・・・すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている」、なるほど。 「ウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ・・・アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている・・・2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている」、なるほど。 「筆者は2024年3月22日付・・・の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた・・・ プーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている」、恐ろしいことだ。 「プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう」、なるほど。 Newsweek日本版「ハバナ症候群、原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?」 「特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている」、なるほど。 「スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュース」に語った証言と、「2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた」というのでは全く逆の結論のようだ。未だに真相は霧の中のようだ。 ダイヤモンド・オンライン 菅原 出氏による「プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前」 菅原出著『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地』(平凡社新書) 「レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加」、なるほど。 「プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。 この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう・・・プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである」、なるほど。 「今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない・・・ ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか・・・SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な 民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか」、ロシア独特のワグネルのような民間軍事組織は、今後どうなっていくのだろうか。
2024-09-14 19:43
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