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宇宙(その4)(インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」、この世界は「無数にある宇宙」のひとつに過ぎない…物理学者たちが「マルチバース」を信じる「深すぎる理由」、「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」) [科学技術]

宇宙については、本年11月14日に取上げた。今日は、(その4)(インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」、この世界は「無数にある宇宙」のひとつに過ぎない…物理学者たちが「マルチバース」を信じる「深すぎる理由」、「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」)である。

先ずは、3月2日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」」を紹介しよう。
・『宇宙はどのように始まったのか…… これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『これが「元祖インフレーション理論」だ  では、私が1981年に考え出した、元祖インフレーション理論を説明していきましょう。 宇宙の誕生直後、四つの力がそれぞれ、真空の相転移によって枝分かれをしたことはお話ししました。実は、これらの相転移のうち、2番目に起きた相転移によって強い力と電磁気力が枝分かれをするときに、まさに水が氷になるのと同様の現象が起きることがわかったのです。 水から氷に相転移するとき、エネルギーは高い状態から低い状態になります。これは秩序がない状態からある状態に変わるからです。水はH2O分子がランダムに動く秩序のない状態ですが、氷になって分子が結晶格子を組むと、秩序がある状態になります。そして水が氷に相転移するときには、333.5ジュール毎グラムの潜熱が生まれます。これは、秩序が「ない」状態よりも、秩序が「ある」状態のほうがエネルギーが低くなるため、その落差が熱として出てくるわけです。 宇宙は誕生したとき、水と似たような秩序のない状態でした。そして、空っぽのようで実は物理的な実体を持つ真空の空間自体が、実はエネルギーを持っていたのです。このエネルギーのことを「真空のエネルギー」といいます。繰り返しますが生まれたての宇宙は秩序のない状態ですから「真空のエネルギー」は高い状態にありました。 ところで、生まれたての宇宙空間自体にこのようなエネルギーがあるのならば、空間と時間についての方程式であるアインシュタイン方程式にも当然、普通の物質のエネルギーとともに、この真空のエネルギーも代入して計算しなければならないはずです。 そう考えて私が実際に計算してみたところ、この真空のエネルギーは互いに押し合う力として働くということがわかりました。物質のエネルギーのように互いに引き合う力(引力)とは違い、互いに押し合い、空間を押し広げようとする力(斥力)として働くのです。そして、生まれたての宇宙は、この真空のエネルギーの力によって急激な加速膨張をすることが、すぐに計算できたのです』、「生まれたての宇宙は、この真空のエネルギーの力によって急激な加速膨張をすることが、すぐに計算できたのです」、なるほど。
・『膨張を「インフレーション」と命名  さて、真空のエネルギーが空間を急激に押し広げると、宇宙の温度は急激に下がり、真空の相転移が起こります。このとき、まさに水が氷になるときに潜熱が発生するのと同じように、落差のエネルギーは熱のエネルギーとなります。真空のエネルギーが、熱のエネルギーに変わるということです。しかも、水ならば周辺の空間に熱を奪われることで氷になりますが、宇宙空間ではその潜熱が空間内に出てくるため、宇宙全体が火の玉になるほどのエネルギーになるのです。 こうしたことを考え合わせると、次のような宇宙初期のシナリオが描き出されてきました。 宇宙は、真空のエネルギーが高い状態で誕生しました。その直後、10のマイナス44乗秒後に、最初の相転移によって重力がほかの三つの力と枝分かれをします。いわゆる「インフレーション」は、そのあと10のマイナス36乗秒後頃、強い力が残りの二つの力と枝分かれをする相転移のときに起こりました。真空のエネルギーによって急激な加速膨張が起こり、10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒というほんのわずかな時間で、宇宙は急激に大きくなりました。その規模は、10の43乗倍とされています。 想像することが難しいと思いますが、そのような膨張が起きれば、1ナノメートル(1メートルの10億分の1)ほどの宇宙でも、私たちの宇宙(100億光年レベル)よりずっと大きくすることができるのです。 急激な加速膨張によって、宇宙のエネルギー密度は急激に減少し、宇宙の温度も急激に低下します。しかし、それによってすぐにまた真空の相転移が起こるため、前に説明した潜熱が出てきて、宇宙は熱い火の玉となるのです。これを「再熱化」といいます。 ビッグバン理論では「宇宙が火の玉になる」といわれていますが、実はそれは、宇宙が最初から火の玉として生まれ、そのエネルギーによって爆発的に膨張したのではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に押し広げるとともに相転移によって熱エネルギーに変わり、そのときに火の玉になったということだったのです。 以上が、インフレーション理論が描き出した宇宙のはじまりのシナリオです』、「真空のエネルギーが宇宙を急激に押し広げるとともに相転移によって熱エネルギーに変わり、そのときに火の玉になったということだったのです。 以上が、インフレーション理論が描き出した宇宙のはじまりのシナリオ」、なるほど。
・『数々の難問に、インフレーション理論はどう答える?  ではインフレーション理論は、ビッグバン理論がかかえる多様な問題を解決することができるのでしょうか。 まず、「モノポール問題」から見ていきます。モノポール問題とは、モノポール(磁気単極子)というものが理論上、宇宙の中にたくさんできることになってしまうという問題です。このことは、つまるところ力の統一理論から導かれる宇宙像と、現実の観測によって正しいとされているビッグバン理論が描く宇宙像とが矛盾してしまうことを意味しているのです。これでは、ビッグバン理論がつぶれるか、力の統一理論がつぶれるかのどちらかになってしまいます。 宇宙が生まれて以降の発展を示した図「インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張」を見てください。 (図:インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張 はリンク先参照) この図では、各断面の輪の大きさが宇宙の大きさを表していて、いちばん下の輪が宇宙のはじまりの頃に真空のエネルギーによって加速度的に急激な膨張をした宇宙の大きさです。 数学的にいえば指数関数的な膨張を起こしたことになるために、私はこのモデルを考え出した当初、「指数関数的膨張モデル」と呼んでいました。指数関数的膨張とは、簡単にいえば倍々ゲームで大きくなるということです。ある時間で倍になったものが、また同じだけの時間で倍に、さらに倍に…と大きくなることです。 これは私が高齢の方によく言う冗談ですが、もしもお孫さんが「お小遣いをちょうだい。1日目は1円でいいよ。2日目はその倍の2円。3日目は、その倍の4円と増やしていって、1ヵ月くれたらあとは何もいらないから」とねだってきたとき、最初の額が小さいので欲のない孫だと思って「ああいいよ」と言うと大変なことになります。31日目の額は、2の30乗、つまり10億円を超えてしまうのです。 このような倍々ゲームを100回も繰り返せば、素粒子のような小さな宇宙でも、何億光年もの宇宙にすることができます。 そこでモノポールについて考えると、実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。われわれの知りえる観測可能な宇宙は、せいぜい100億光年とか200億光年ほどの大きさです。 そのようなはるか遠くの宇宙に押しやられたモノポールが、われわれの知りえる宇宙の中にないのは、当然ということになります。つまり、存在はしていても観測できないという矛盾が解決されるのです』、「実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。われわれの知りえる観測可能な宇宙は、せいぜい100億光年とか200億光年ほどの大きさです」、なるほど。
・『ところで、宇宙の年齢はたしか137億年のはずでは…  ここで読者のみなさんは「宇宙の年齢はたしか137億年のはずなのに、なぜ1000億光年も先にまで宇宙が広がっているなどと言うのか?」と不審に思われるかもしれません。もっともな疑問です。しかし実は、インフレーション(指数関数的膨張)によって、宇宙は光の速度よりも速く膨張していたことがわかっているのです。なにしろ1ナノメートルよりも小さな宇宙が、わずか10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒後の間に、137億光年よりも大きな宇宙へと膨張するのですから。 実は、指数関数的な急激な膨張とはこのように、「困ったものはすべて宇宙の彼方に押しやることができる」という大変都合のいい話なのです。こうした考えを最初に示したのは私と共同研究者のM・アインホルンなのですが、このあたりのことが意外にも世界的にはあまり知られていないのが残念ではあります』、「インフレーション(指数関数的膨張)によって、宇宙は光の速度よりも速く膨張していたことがわかっているのです。なにしろ1ナノメートルよりも小さな宇宙が、わずか10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒後の間に、137億光年よりも大きな宇宙へと膨張するのですから」、なるほど。
・『その難問、インフレーション理論が解決!  インフレーションの効能は、このほかにもいろいろあります。 最初の大きな仕事はなんといっても、素粒子よりも小さい初期宇宙を指数関数的膨張によって一人前の宇宙にして、真空の相転移による潜熱を生じさせ、宇宙を火の玉にしたことでしょう。ビッグバン理論では「特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったか」を、説明することができなかったのです。 それから、初期宇宙には非常に小さな量子ゆらぎしかなかったのですが、これをインフレーションという急激な膨張によって大きく引き伸ばしてやることで、のちに星や銀河や銀河団を構成するタネをつくれることがわかっています。これによってまた一つビッグバン理論の困難、宇宙構造の起源が説明できないという問題を解決したことになります。 「宇宙がなぜ平坦か」という平坦性問題も、インフレーションモデルが解決します。 たとえば、私たちは丸い地球の上に立っている自分をイメージすることはできますが、「地球が丸い」ということを直接的に認識するのはなかなか難しいはずです。自分の体に比べて地球の半径が非常に大きいために、なかなかわからないのです。もし地球の半径が数キロメートルしかなければ、人間にもすぐに丸いことがわかるでしょう。 実は、宇宙も同様なのです。初期の宇宙が曲がっていたとしても、それがインフレーションによって巨大に引き伸ばされれば、人間には曲がっていることがわからなくなってしまうのです。宇宙はもしかしたら、現在でもわずかに曲がっているかもしれません。しかし、宇宙が指数関数的膨張をしてあまりにも巨大になったために、それを観測することができないのです。これで平坦性問題も説明することができます。 このように、ビッグバン理論におけるさまざまな困難が、インフレーション理論によって解決してしまうのです。 現在では多くの研究者によって、インフレーション理論の改良モデルが数えきれないほど提案されていますが、私とグースらが考えた元祖インフレーション理論と呼ばれているものは、このような姿をしています。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<「何も無いところから宇宙が生まれた」って言うけど、一体どういうこと…第一級の物理学者がわかりやすく解説>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから ▽インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか(多くの人に知ってほしい「宇宙のはじまり」の話 提唱者が思いきりやさしく書いた1番わかりやすいインフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 《目次》 第1章 インフレーション理論以前の宇宙像 第2章 インフレーション理論の誕生 第3章 観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎 第4章 インフレーションが予測する宇宙の未来 第5章 インフレーションが予言するマルチバース 第6章 「人間原理」という考え方)』、「宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書!」、なるほど。

次に、3月2日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「この世界は「無数にある宇宙」のひとつに過ぎない…物理学者たちが「マルチバース」を信じる「深すぎる理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/124963
・『宇宙はどのように始まったのか…… これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ユニバースからマルチバースへ  近年、さまざまな研究の成果から、マルチバース(multiverse)という言葉が流行してきています。宇宙は一つ(uni)ではなく、多数(multi)であるというのです。実は私のインフレーション理論でも多数の宇宙が生まれることは予言されていて、本書でも「子宇宙」「孫宇宙」という言葉がときどき出てきました。そのほかにもさまざまな理論によって、宇宙は多様に存在しているらしいと考えられるようになり、マルチバースという言葉が定着しつつあるのです。 そこで、ここからはマルチバースの話をしていきます。なかには少しイメージするのが難しい内容もあるかもしれませんが、あまり細部にこだわらず気楽に読み進めてください』、「マルチバース(multiverse)という言葉が流行してきています。宇宙は一つ(uni)ではなく、多数(multi)であるというのです」、なるほど。
・『無数の「子宇宙」「孫宇宙」  インフレーション理論はビッグバン理論の困難を解決してきただけではなく、まったく新しい宇宙の描像を描き出してもいます。それは、宇宙が急激な膨張をするとき、早くにインフレーションを起こして膨張している場所と、インフレーションをまだ起こしていない場所とが小さな泡のようにいくつも混在することによって、多数の「子宇宙」や「孫宇宙」が生まれてくるというものです。 これは、私と共同研究者が1982年頃に説いたことなのですが、インフレーションで宇宙が急激な膨張をするとき、宇宙全体が手を携えていっせいに大きくなるとは限りません。互いに連絡がとれないような遠いところまで、同時に、同様にインフレーションが起きるという必然性はないのです。つまり、でこぼこだらけの膨張を起こす可能性は十分にあるわけです。 これは現在の宇宙のような数百億光年という「小さな」スケールの話ではありません。われわれの宇宙を超えた、とてつもなく大きな話です。そういうスケールで見ると、インフレーションを起こして急膨張をしている場所と、インフレーションが終わって緩やかな膨張をしている場所が宇宙にはいくつも混在していると考えられるのです』、「現在の宇宙のような数百億光年という「小さな」スケールの話ではありません。われわれの宇宙を超えた、とてつもなく大きな話です。そういうスケールで見ると、インフレーションを起こして急膨張をしている場所と、インフレーションが終わって緩やかな膨張をしている場所が宇宙にはいくつも混在していると考えられる」、なるほど。
・『「ワームホール」と呼ばれるふしぎな現象も…  そうすると、とても不思議な現象が起こることがわかりました。周囲よりも遅れてインフレーションを起こした領域は、先にインフレーションを起こして宇宙規模の大きさを持った周囲の領域から見ると、表面は急激に押し縮められているけれども、その領域自体は光速を超える速さで急激に膨張して見えるということが、相対性理論から導き出されたのです。 まるでブラックホールでもつくっているかのように表面が急激に押し縮められている領域が、全体としては急激に膨張している。一見矛盾するこの問題に、当初、私自身も悩みました。しかし、何度計算しなおしても、まちがいではありません。 ところが、さまざまな可能性を探っているうちに、次のような描像が見えてきたのです。実は、表面を急激に押し縮められている部分は、虫食い穴のような小さな空間になりながら、周囲の空間と、新たにインフレーションを起こした空間をつないでいる。そして、新たにインフレーションを起こした空間は急激に膨張して、やがて新しい宇宙になる、というものです。これならば、周囲から表面を急激に押し縮められている空間が、なおかつ急激に膨張するということが矛盾なく説明できます。 こうして、すでにインフレーションの終わっている領域を親宇宙とするならば、急膨張した場所が子宇宙となり、さらに遅れて孫宇宙が生まれるというように、まん丸い親宇宙から、いくつものマッシュルームでも生えてくるように、無数の子宇宙、孫宇宙が生まれるというモデルができあがったのです。 押し縮められる虫食い穴のような空間のことをワームホールと呼んでいます。 これらの子宇宙、孫宇宙は、ワームホールもやがて消えて、親宇宙とは完全に因果関係の切れた、独立した宇宙になっていきます。 これが、インフレーション理論が予言するマルチバースの考え方です』、「これらの子宇宙、孫宇宙は、ワームホールもやがて消えて、親宇宙とは完全に因果関係の切れた、独立した宇宙になっていきます。 これが、インフレーション理論が予言するマルチバースの考え方です」、なるほど。
・『量子論は必然的に「マルチバース」へ  ところで、アレキサンダー・ビレンケンなどが考えた量子論的な宇宙論では、宇宙は「無」から創生されるという話を前にしました。とすると、無の状態から生まれる宇宙は当然ながら、私たちの宇宙だけでなければならない理由はなく、いくらでも別の宇宙ができる可能性があると考えられます。そして無から生まれた多数の宇宙はそれぞれインフレーションを起こし、子宇宙、孫宇宙を生みながら大きくなっていくわけですから、どうしたって宇宙はユニバース(universe=一つの宇宙) ではなく、マルチバース(multiverse=多数の宇宙)にならざるをえない。これが、最近の宇宙論の考え方です。 (図 インフレーションによるマルチバースのモデル はリンク先参照) 無からの創生という考え方だけでもいくらでも宇宙ができますし、インフレーションによっても多重発生をしていくのです。 では、別の宇宙が存在していることが実際にわかるのかと聞かれれば、わからないとしか答えようがありません。というのも、別の宇宙であるということは、その宇宙との間で因果関係が切れているということだからです。因果関係が切れていれば、こちら側の宇宙からいくら観測を試みても、できるはずがないのです。逆にもし、観測ができて存在が証明できれば、因果関係があるということになりますから、それは別の宇宙ではなく同じ宇宙ということになります』、「別の宇宙であるということは、その宇宙との間で因果関係が切れているということだからです。因果関係が切れていれば、こちら側の宇宙からいくら観測を試みても、できるはずがないのです。逆にもし、観測ができて存在が証明できれば、因果関係があるということになりますから、それは別の宇宙ではなく同じ宇宙ということになります」、なるほど。
・『宇宙にも「淘汰」がある?  マルチバースにおける物理法則では、こんな奇妙な考え方も出てきています。 無数にある宇宙の、無数にある物理法則は、自然選択で淘汰されるというのです。つまり、あたかも生物における進化論のようなアナロジーが、そのまま宇宙についても適用できるのではないかという考え方です。 何ともすごい着想です。現在の物理法則を持っている宇宙は、生存競争に打ち勝って、いちばん多く存在する宇宙になったのではないかというのです。リー・スモーリンという物理学者が考えたことですが、ここでわかりにくいのは生存競争とは何かということでしょう。 この考え方によれば、重力定数や強い力の定数といった定数ごとに、多様な宇宙があります。その中で宇宙が生まれて死んで、生まれて死んで、を繰り返すうちに、自然淘汰されていく宇宙があり、ある形の宇宙が多くなっていく。そして私たちは、そのいちばん多くなった宇宙に住んでいるのではないかというのです(図「淘汰される宇宙のイメージ」)。 (図:淘汰される宇宙のイメージ はリンク先参照) もちろん、現在の理論でこんなことが言えるわけではありません。そこで、彼はモデルをつくって、仮定をおいて進化を考えました。その仮定とは、一つの宇宙にブラックホールが生まれると、そのブラックホールには別の新しい宇宙が生まれるのだというものです。これは何の根拠もない仮定で、そんなことが証明されたことはありません。私はインフレーション理論に則って、ワームホールができたら別の宇宙ができるという話はしましたが、ブラックホールが生まれたら別の宇宙ができるというような話はないのです。 それはともかく、この仮定に沿って話を続けましょう。ここで、ブラックホールの誕生によって新しくできた宇宙の物理法則は、元の宇宙とは少しだけずれるというのです。言ってみれば、宇宙の物理法則というのは生物の遺伝子と同じようなもので、世代交代するうち突然変異によって少しだけ変化するというわけです。これはまさに、生物の進化の特徴です。 こうして、何世代にもわたるたくさんの宇宙の進化が生物の場合と同じように進めば、いずれはブラックホールをたくさんつくる宇宙が自然選択で栄えることになるといいます。彼の言い方によれば、現在の物理法則がこのような値になっているのは、この物理法則を持つ私たちの宇宙に多くのブラックホールがあるがゆえに、その値になっているというのです。 大変面白いアイデアではありますが、現実の法則でこのような理屈が説明できるわけではありません。いまの時点ではまだ、ひとつの面白いお話ということになると思います。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開に期待したい。

第三に、3月2日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/124967
・『宇宙はどのように始まったのか…… これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙は人類のために絶妙にデザインされている?  本連載の締めくくりに、宇宙を考えるうえで避けて通れない「人間原理(Anthropic Principle)」の話をしていきましょう。 現在の宇宙の法則の中には、さまざまな物理定数があります。たとえば強い力、電磁気力、重力などの力の強さもそうです。つまり具体的に決まっている数値のことですね。これらの定数をよく見ると、まるで人類が誕生するように値が調節されているとしか思えないものがあるのです。たとえば、電磁気力の強さを少しでも変えると、生命は生まれなくなってしまいます。強い力の値をちょっと弱くすると、星の中で元素を合成するトリプルアルファ反応というものが起こらなくなります。これは3個のヘリウム4の原子核が結合して炭素12ができる核融合反応ですが、この反応が起きないと、炭素や酸素といった生命に不可欠な元素が生成されなくなるのです。 これらの例に限らず、われわれが住む宇宙は、人類を含めた生命をつくるために絶妙にデザインされているように見えるのです。これは否定しようのない観測事実です。 このような話を聞くと、「ああ、やはり神様は人間を創造するようにこの世界を設計されたんだなあ」と思う人もあるかもしれません。しかし、科学者がそのように考えるわけにはいきませんから、このような物理定数のナゾをどう解決するかが重要な問題になります。人間原理も、この問題への答えとして考えられてきたものなのです。 これまで人間原理については、いろいろな研究者が自分の見解を述べていて、量子脳理論のアイデアでも知られるロジャー・ペンローズはこう言っています。 「神様がわれわれの住んでいる宇宙と同じような宇宙を創り出すためには、途方もなく小さな空間の中の小さな定数が必要である」 つまり、適当に物理定数を決めても、決していまの宇宙はできない。神様はよほど注意深くならなければならない、というのです。そして、どこから出てきた数字かわかりませんが、われわれの住む宇宙がつくれる確率は、10の10の123乗分の1だと、すこぶる具体的な数値を示しています。 この数字はおそらくジョークだとは思いますが、それくらいとてつもない精度で選択をしていかなければ、いまのような宇宙はできっこないというわけです。そして、なぜいまの宇宙がそうなっているかという問題は、人間原理でしか説明できないというのです』、「とてつもない精度で選択をしていかなければ、いまのような宇宙はできっこないというわけです。そして、なぜいまの宇宙がそうなっているかという問題は、人間原理でしか説明できないというのです」、その通りだ。
・『宇宙の法則が少し違ったら人類はどうなっていた?  アメリカの理論物理学者テグマークが、電磁気力や、強い力が、われわれの宇宙とは違う多様な値をとった場合を考えたグラフがあります(図「テグマークのグラフ」)。 難しい言葉もありますが、要するにこれによると、2つの力の値が変わると炭素原子が不安定になったり、水素原子が生まれなかったり、重水素が不安定であったりなど、多様な不都合が生じます。その結果、知的生命体が誕生するのに都合のいい領域はごくわずかしか残りません。四つの力のうち、二つの力だけで考えても、これほどまで制限されるのです。 テグマークはまた、空間の次元や時間の次元を変えるという考え方でも生命体存在の可能性を考えています。 時間がわれわれの世界と同じ1次元の場合は、空間が1次元や2次元だと単純すぎて多様な構造が生まれず、一方で空間が4次元にまでなると不安定になるとしています。たとえば原子核のまわりを回っている電子も、次元の大きな世界では不安定になって原子核に落ち込んでしまうようになります。これでは多様な構造を安定してつくることはできません。結局は、3次元が多様な構造をつくるのには適しているというのです。 時間の次元が多い宇宙については、4次元以上だと不安定な宇宙になるのだそうです。しかし、時間の次元が増えるというのはどういうことか私にはわかりません。それこそ腕時計が二つ必要になる世界でしょうか? 冗談はさておき、時間の次元がゼロの場合は、彼も想像不可能としています。 テグマークの主張はともかく、私たち人類はよほどの条件が整わなければこの宇宙に存在できないことは確かなのです』、「私たち人類はよほどの条件が整わなければこの宇宙に存在できないことは確かなのです」、確かに偶然とha
いえ、恐ろしいものだ。
・『人間は「選ばれし存在」か?  およそ50年前、プリンストン大学の物理学者ロバート・ディッケは、もし宇宙が現在のようにきわめて平坦でなければ、人間は存在していない、だから人間は選ばれた存在であると言いました。 もし、宇宙を創ったときに、神様がいまよりも弱い勢いで膨張させたとすると、膨張はすぐに止まってしまい、1000万年後あるいは1億年後に膨張は止まって、つぶれてしまう宇宙になります。そういう宇宙では十分に生命は進化できず、人類は生まれないことになってしまいます。 一方、神様が宇宙を膨張させる力が強すぎた場合は、膨張する速度が速すぎて、ガスが十分に固まる前に宇宙が膨張してしまいますから、ガスが固まれません。つまり、星もできません。ですから炭素も酸素もつくられず、生命も人類も生まれてきません。 このように考えると、神様はきわめて慎重に、曲率がゼロになるように宇宙を創造したということになりますが、それは非常に困難なことです。これが「平坦性問題」です。この問題を説明するためにディッケは、人類は曲率がゼロに近いきわめて平坦な宇宙にだけ住むことができる。だからこの宇宙は平坦な宇宙なのだ、と言ったのです。 この平坦性問題は、インフレーション理論によって解決したことも前にお話ししました。ごく簡単に言えば、神様の力を借りなくても、インフレーションさえ起こせば、曲率ゼロの宇宙を創ることができるからです。インフレーションによって一様で平坦な宇宙ができるため、平坦性問題は人間原理を使わなくても、物理学で説明できるようになったのです。 「人間原理」という言葉を最初に使ったのは、ブランドン・カーターです。 読者のみなさんはコペルニクスをご存じでしょう。地球は宇宙の中心にあるのではなく、太陽のまわりを回っているという地動説を考えた人です。このコペルニクスの考え方を太陽系だけに限らず、あらゆる一般的なことに敷衍したものをコペルニクスの原理と言います。人類は世界の中心にいるわけではなく、宇宙においては人類といえどもワンオブゼムの存在であるという考え方です。 カーターは、このコペルニクスの原理に対する逆の考え方として、人間原理という言葉を使ったようです。宇宙は人間を生むようにつくられていると見ることができるとして、人間を特別な存在として考えるべきであるというのです』、「カーターは、このコペルニクスの原理に対する逆の考え方として、人間原理という言葉を使ったようです。宇宙は人間を生むようにつくられていると見ることができるとして、人間を特別な存在として考えるべきであるというのです」、なるほど。
・『強い人間原理、弱い人間原理  やがて人間原理は、「弱い人間原理」と、「強い人間原理」に分かれます。 弱い人間原理とは、いまあるこの宇宙のあり方を決める数値(宇宙の初期条件など)は、なぜ人間が存在するのに都合よく定められているのかを問うものです。そのよい例はディッケの平坦性問題で、人間が宇宙に存在することから、宇宙は平坦になるよう微調整されたとする考え方です。ただし、やはり平坦性問題のように、インフレーション理論を使えば物理法則だけで説明できるものもあります。 これに対し、強い人間原理は、物理学の基本法則・物理定数や、宇宙や空間の次元などは、人間が存在できるようにつくられているというものです。2次元でも4次元でもだめで、3次元でなければならないとテグマークが言うのも、この強い人間原理です。 こうした人間原理が出てくるのは、ある意味で当然のことだと私は思います。なぜなら、いま私たちは物理法則を持っていて、その法則には多様なパラメーター、つまり数値がのぼっていますが、それらがどうしてそんな数値になっているのか、私たちは知らないからです。たとえば電気の力を表す微細構造定数という値は、137.035…分の1という数値になっていますが、なぜ、これが電気の強さになるのかもわかっていないのです。そうである以上、その値が人間が存在できるように決められたという考え方が出てきてもしかたないのです。 将来もしも、超ひも理論がめざす究極の物理法則、この方程式ひとつを解きさえすれば四つの力すべてがわかるという超大統一理論ができたとき、その方程式の中に何ひとつ数字(定数)がなく、すべては幾何学の問題だけに帰して、それだけで自動的に現在ある多様なパラメーターの数値がすべて導き出せるといったことになれば、人間原理など必要ありません。その理論さえあれば、この世界がつくれることになるからです。 しかし、かりに何らかの数字がまだ残っていたとしたら、そのときは問題です。その数値はなぜそうなるのか、説明がつかないからです。そのときは、人間原理のようなものを考えなくてはならないかもしれません。 今後の研究によって、そこがどうなるのかはわかりません。ただ、私は物理学者として、究極の物理法則となる超大統一理論には、そういうパラメーターがいっさい残っていないことが理想だと思っています』、「私は物理学者として、究極の物理法則となる超大統一理論には、そういうパラメーターがいっさい残っていないことが理想だと思っています」、面白い意気込みだ。
・『マルチバースと人間原理  読者のみなさんは、これまでの話をどう思われたでしょうか。「宇宙は人間が生まれるようにつくられている」と主張するかのような考え方など、科学にはほど遠いと思われたのではないでしょうか。たしかに人間原理を疑似科学や宗教的なものと見なしている人もいるようです。しかし、実はホーキングも弱い人間原理を支持しているなど、科学者の間でも人間原理への評価はさまざまに分かれているのです。 私自身はといえば、さきほども述べたように、物理学の法則だけでこの世界のことをすべて説明できれば理想的だと考えています。人間原理という概念を物理学は安易にうけいれるべきではないというのが基本的な立場です。ただ、最近の人間原理の考え方には、科学的に認められるものが生まれてきているとも考えています。 それは、マルチバースの考え方に立った人間原理です。インフレーション理論が予言するように、宇宙が子宇宙、孫宇宙…と無数に生まれているならば、それぞれの宇宙が持つ物理法則もまた無数に存在するはずです。それらの中には、人間が生存するのにちょうどよい物理法則があっても不思議ではありません。そして、私たちの宇宙がたまたま、そういう物理法則を持つ宇宙だったのだ、とする考え方です。 これにはみなさんも納得できるのではないでしょうか。この宇宙を認識する主体である私たち人間は、ほかの宇宙を認識することはできません。だから、たった一つの宇宙がたまたま人間に都合のいいよう絶妙にデザインされていることを不思議に感じますが、実はそれは、無数にある宇宙の中で私たちの宇宙がたまたま、人間が生まれるのに都合のいい宇宙だったにすぎないというわけです。そのような宇宙だからこそ生まれた人間が、この宇宙の物理法則について認識していくと、それは人間が生まれるように都合よくできていた、これは言ってみれば当たり前のことです。そして、そのような私たちの宇宙が、たとえペンローズが言ったように10の10の123乗分の1というわずかな確率でしかつくられないとしても、宇宙が無数にあるのなら、そのうちの一つが私たちの宇宙であっても何も不思議ではありません。 このように、インフレーション理論が予言するマルチバースという宇宙像を前提にすると、人間原理についても論理的な説明が可能になってくるのです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【初回<「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』、「宇宙が無数にあるのなら、そのうちの一つが私たちの宇宙であっても何も不思議ではありません。 このように、インフレーション理論が予言するマルチバースという宇宙像を前提にすると、人間原理についても論理的な説明が可能になってくるのです」」、分かったようで分からない話だ。少し難し過ぎたのかも知れない。
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