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トランプ大統領(その24)(トランプ大統領、「NFL選手を侮辱」の深刻度、トランプ氏は「真実がとても苦手」 与党有力議員、来日直前 トランプ政権の位置と外交の現在) [世界情勢]

トランプ大統領については、9月24日に取上げたが、今日は、(その24)(トランプ大統領、「NFL選手を侮辱」の深刻度、トランプ氏は「真実がとても苦手」 与党有力議員、来日直前 トランプ政権の位置と外交の現在) である。

先ずは、投資銀行家のぐっちーさんが10月7日付け東洋経済オンラインに寄稿した「トランプ大統領、「NFL選手を侮辱」の深刻度 言うに事欠き「Son of a bitch!」と煽った」の4頁目まで紹介しよう(▽は小見出し)。
・アメリカのラスベガスで、史上最悪の銃乱射事件が起きてしまいました。(代表的な日本の記事はこちら)。IS(いわゆるイスラム国)がすかさず犯行声明を出しており、関連も取りざたされますが、それよりなにより現場からは10丁以上の「改造軍用銃」が押収されています。ビルの32階から打ちまくっていることを考えても、単なるアサルトライフルやピストルのレベルをはるかに超えた殺傷力の高い銃が使われていることは明らかです。
・「こんなものが簡単に買えてしまう国」ということがアメリカに問われているのは、もはや明らかではないでしょうか。ドナルド・トランプ大統領はいち早く声明を出し「愛する人を失った何百人の人が悲しみに暮れている。彼らの痛みと喪失感は計り知れない。この悲しみと恐怖の時に、アメリカ国民は1つになろう」と呼びかけた。また、哀悼の意を示すため、半旗を掲げるよう求めた……」ということですが、今回の事件はトランプ大統領にさらに大きな課題を残した、といっていいと思います。
▽お手軽に銃を買えるアメリカは、ハードルが低すぎる
・というのもトランプ大統領は全米ライフル協会から全面的な支持を受けており、政策としても銃の所持には賛成、銃規制をしようとしたバラク・オバマ大統領とは180度方針が違います。 アメリカに住むとわかりますが、いわゆる護身用のピストルなどよりもすごい、『ゴルゴ13』でおなじみのアーマライトなどの軍用銃がそれこそスーパーマーケットのようなところでいとも簡単に買えてしまう。もちろんオンラインでも(!)、何の手間もなく買えてしまうのです(参考:Cabela’sのHP)。
・このお手軽さは日本人から見ると驚き以外の何物でもなく、スーパーの買い物かごに普通に機関銃の銃弾を入れてレジに行くアメリカ人を見ていると不思議な気持ちになるものです。まして、5~6歳の子どもに銃を扱わせる親も数多くいて、銃に対するハードルは極めて低いのがわかります。私が主に仕事をしているシアトル(ワシントン州)近郊などでは、銃を嫌がる親がかなり多いのですが、それでもガンショップはたくさんありますので、全米で見るとどれだけの銃器が売られ、家庭に保管されているのかわかったものではありません。
・「自衛のため」と言いますが、これだけ簡単に銃(しかも軍用銃)が手に入るとなると、おかしなやつが持つリスクも非常に高くなることは明らかでしょう(余談ですが、外国人旅行者でもその気になれば銃を買える州もあります)。 不法労働者を取り締まっているよりも、銃の所持そのものを規制するほうが先ではないか、という議論は昔からアメリカでもあり、今回の事件は再びそういう議論を巻き起こすことになるでしょう。トランプ大統領が全米ライフル協会との関係から引き続き銃の所持をフリーに認めるつもりなのか? 新たな問題がまた噴出した、と言っていいでしょう。
・誤解している方が多いのですが、元来アメリカ憲法で保障されている銃の所持は自衛のためではありません。あくまでもふざけた政府が出てきたときに国民がその政府を力ずくで倒す手段としての銃の保持が認められているので、ここは建国の根幹にかかわる部分だけにそう単純な話ではないのです。ただ、こうなってくるとさまざまな規制が必要なことはもう明らかで、トランプ大統領の指導力が再び問われます。
▽中身のない減税案を出してきたトランプ大統領
・話は変わりますが、トランプ大統領が減税案を示しました。(参考のために、一応「全文」を載せておきますが、正直中身は見る価値がありません)。 こんなものが、実現可能なのかどうか、まったく意味不明で、すでに共和党内でも意見が紛糾しています。ただし……大統領就任からすでに9カ月、何1つ法案を通しておらず、またそれらしいものも出していない大統領からすると、初めて「ちゃんと形になったものが出てきた」、ということは確かです。内容はともかくも、とにかく形になったものが初めて出てきた(それはそれで、実に情けない話ではありますが……)。
・さらに、これまでのようなツイッター上のつぶやきの延長線上にあるようなものを、唐突に出してきたわけではなく、一応共和党の「Big 6」 といわれる関係者の目を通してまとまってきた、という点でも画期的といってもいいかもしれません。Big 6という言葉は、日本のメディアではまだ浸透していませんが、アメリカではごく普通に使われている用語なので、読者の皆さんはご存じであったほうがいいと思います。ここでいうBig 6とは、ポール・ライアン下院議長、下院歳入委員会のケビン・ブレイディ委員長、ミッチ・マコネル上院院内総務、上院財政委員会のオリン・ハッチ委員長、スティーブン・ムニューシン財務長官、そして国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長の6人、となります。
・まあ今回の場合は、重要なメンバーのコンセンサスは取れている、という点が重要で、これまでのものとはちょっと違う、ということになりましょう。しかしながら、いわゆる財政緊縮の原理主義派といわれるフリーダムコーカス(自由議員連盟)の連中は1人も入っておらず、彼らだけでも40人近くいることを考えれば、オバマケア廃止法案と同様に葬り去られる可能性は低くない。もし、この法案が成立しなければそれこそ「何もできない大統領=口先男」の汚名を着せられ、早くもレームダック化する可能性すらあるので、この法案の行方は極めて重要です。
・さて、市場に目を移してみても、危ない要素が出てきています。FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げ、バランスシートの縮小、と明確に方針を出していますが、市場は今のところまったく動揺しておらず、株価は連日市場最高値を更新しております。 しかし、これはジャネット・イエレン議長の絶妙な手綱さばきを市場が信頼していればこそでありまして、一方でイエレン議長は減税そのものに反対です。また、そのほかの政策(たとえば移民制限)についても反対を表明しており、トランプ大統領は次期議長には指名しない、と思われます。イエレン議長不在の市場がはたして今のように落ち着いていられるのかどうか、これもまったく不明でしょう。その意味ではトランプ政権はいよいよ正念場を迎えたといっていいかもしれません。
・正念場、ということからいうと、トランプ大統領とNFL(ナショナル・フットボールリーグ)の問題も日本で報道されるよりも、アメリカでははるかに深刻で、大事件になりつつあります。 ことは昨年、NFLで国歌斉唱の際に起立を拒んだコリン・キャパニック選手の行為に端を発します。キャパニックはアフリカ系アメリカ人が白人警官に射殺される事件が立て続けに起こった背景に人種差別があると判断し、それに抗議するために国歌斉唱の際に片ひざをつきました。彼の主張は人種差別がはびこるこの国の国歌は敬意に値しないというもので、それに賛同して同様の行為を行う選手が少なからずいたのです。
▽安倍首相が力士に向かって、同じように語ったら?
・この行為をおかしい、とした意見もアメリカではかなりあったのですが、あくまでも個人的な問題として、いわゆる不問に付す形でNFLオーナーたちはやり過ごしてきました。ところがまた、「トランプ大魔王」が火をつけてしまい、9月22日、アラバマ州ハンツビルで行われた政治集会で、国歌斉唱の際に起立を拒むNFL選手をやり玉に挙げ、「オーナーは彼らをクビにすべきだ」と発言したのです。これは大きなニュースとなり、日本でも広く報道されたわけですが、その際にトランプ大統領は言うに事欠き、NFL選手に対し「Son of a bitch!」と呼んだのです。
・これはご存じのように、最上級の侮辱語でありまして、直訳すれば「売春婦の息子め!」となるので日本語ではイマイチ強烈感がないのですが、アメリカ人に向かってこの言葉を発すれば、発砲されても正当防衛になるくらいの侮辱語です。当然テレビでも規制されていますし、いわゆる「ピー音」を被せる言葉の1つです。それを、一国の大統領が、しかも公衆の面前で使い、そのターゲットがNFL選手なわけですから、これはもう、タダで収まるはずもありません。
・アメリカンフットボールはアメリカの国技と言っていいもので、その選手を最大級の侮辱語で罵ったわけで、この問題も間違いなく、今後尾を引くものと思われます(たとえば安倍晋三首相が横綱の白鵬に「このデブが!……」と言ったら間違いなく退陣問題になるんじゃないでしょうかね)。ということで、迷走する「トランプ丸」、もう毎週でもトランプ関連記事は書けそうな勢いです。困ったもんであります。
http://toyokeizai.net/articles/-/191951

次に、10月25日付け英BBCが掲載した動画「トランプ氏は「真実がとても苦手」 与党有力議員」を紹介しよう。
・上院外交委員会委員長のボブ・コーカー議員(共和党)は24日、記者の質問に対して、ドナルド・トランプ米大統領は「真実がとても苦手」で、米国の子供たちの手本には「まったくならない」と鋭く批判した。テネシー州選出で9月末に政界引退を発表したばかりのコーカー議員は、今月初めにも、トランプ氏が米国を「第3次世界大戦への道」に巻き込みかねないと警告。
・トランプ氏はツイッターでコーカー氏が「再選されることができない」「つまらない人間」だと罵倒していた。コーカー氏は昨年の政権移行期に、国務長官候補に挙がっていたが、その後はトランプ氏と仲たがいしている。
http://www.bbc.com/japanese/video-41744780

第三に、在米の作家、冷泉彰彦氏が10月28日付けメールマガジンJMMに寄稿した「来日直前、トランプ政権の位置と外交の現在」from911/USAレポートを紹介しよう。
・就任から9ヶ月、四半期で言えば3四半期を過ぎたトランプ政権ですが、劇的な大統領選からすればほぼ1年という年月が経過しています。この間、ずっと一本調子で「お騒がせな言動」を繰り返してきたわけです。
・この「一本調子」ということの意味ですが、正直言って受け止め方は人によって様々です。基本的に民主党支持者であれば、ヒラリーとの比較、あるいはオバマとの比較ということでも「トランプという人は、今でも受け入れられない」という人は多いと思います。私の住む、ニュージャージー州などは、NYやDCに近いということもあり、リベラルだけでなく、保守系の人も「眉をひそめる」という態度でずっと通してきている人が圧倒的です。
・ですが、その一方で、CNNや「NYタイムス」といった、リベラル系のメディアは、ずっとトランプ批判を一本調子で続けています。勿論、あの手この手でやっているので、「トランプ批判がマンネリ化する」ということはないのですが、それでも、「余りにも日常の光景」になっているのもまた事実です。
・明らかに常軌を逸している大統領ですが、それも日常になり、メディアが批判し、教養人的な政治家が批判をするというのも、日常の光景になってしまいました。例えば、今話題になっているのは、共和党の中道派議員との「舌戦」です。
・これまでも、元大統領候補のジョン・マケイン議員(上院、アリゾナ)などは、病魔を押して「トランプ批判」を強い調子で続けてきたわけですが、ここへ来てボブ・コーカー上院議員(上院、テネシー)やジェフ・フレイク議員(上院、アリゾナ)などとの対立が激しくなっています。 この、コーカー、フレイクの2名に関してはいずれも「議員引退」という声明を出しています。ですから「もう怖いものはない」ということで大統領批判のトーンを高めているわけですが、大統領からすれば「予備選でポピュリストに負けたくせに」というのです。つまり「負け犬の遠吠え」というわけです。
・なみに、このコーカー議員に関しては、2020年の大統領選へ向けて「待望論」が出ています。共和党内からの造反になりますが、現職がいても「予備選を堂々とやろう」という声は既に大きい中で、決して突飛な話ではありません。
・こうした問題は、個人的な確執に見えますし、共和党として「右派ポピュリスト」が増えている中での「中間派の退潮」というようにも見えるのですが、その背景には、大きな政治課題として税制改正に対する綱引きがあります。
・今回、ホワイトハウスが示している税制改正は、ドラスティックな減税(法人税、個人所得税とも)です。大統領は、「減税の効果によって好景気を続けることが可能」 と自信満々ですが、まず野党の民主党側からすればあまりの歳出カット、つまり「軍事費以外は全面的にカット」という「小さな政府論」を合わせて構成する政策ですから、当然これは呑めません。
・一方で、共和党からしても、こんな減税やったら財政規律が保てないということになります。特に、財政規律問題というのは、「均衡財政を主張してクリントンと対決した90年代のギングリッチ」にしても、「2010年からのティーパーティー」にしても「オバマの景気対策批判から始めて歳出カットを強く主張」していたわけです。
・勿論、共和党の根っこの思想は「減税」ですが、とにかく今回のトランプ案は「激しすぎて」共和党としても簡単には賛同できません。一方で、ホワイトハウス案というのは、財源確保のために「住宅ローン減税を残す代わりに、地方税負担額は国税上の控除をしない」という案に加えて、「確定拠出型年金の非課税枠を縮小する」などという案を持ち出しています。
・政治的には「大減税プラス税の簡素化」だと胸を張るのですが、この「地方税を国税で控除しない」とか「401Kの枠削減」というのは、いわゆる中産階級の「生活感」を攻撃するような政策であり、民主党だけでなく、議会の共和党からも「賛同できない」という声が上がっています。このような税制改正の問題も、議会との確執の背景にはあります。
・確執ということでは、ハリケーンでプエルトリコが大きな被害を受けているところに、大統領はケンカを売った格好になっています。プエルトリコはもともと民主党の牙城ですが、インフラ投資する割には経済が低迷、ほぼ破綻状態になっているのですが、法律上、「合衆国の属州は破産法適用ができない」ために、破綻を先送りしています。 この秋は、日本への台風上陸が相次いでおり、現在も22号が沖縄から関西にかけて大きな影響となる危険があるわけですが、アメリカの場合も、テキサス、フロリダに続いて、カリブ海のプエルトリコでは大きな被害となっています。
・10月の上旬に大統領は、一連の被災地の慰問を行ったのですが、テキサスにしても、銃撃の被害のあったラスベガスでも歓迎を受けた一方で、プエルトリコでは「ケンカを売りに行った」ような格好となっています。そもそも大統領としては、「破綻経済となっているのが気に入らない」一方で、訪問の少し前から民主党の政治家(知事や首都サンファンの市長など)が大統領批判をしたのが「気に入らなかった」ようです。
・そこで「派遣した軍は素晴らしい仕事をしているのに、いつまでもインフラが復旧しないのは、元々の破綻経済が悪い」とか、「文句を言うなら軍は撤退だ」などと暴言モードに入って行ったのでした。そして、実際に訪問した際には「物資の援助」をやっているというデモンストレーションで、避難所へ行って「ペーパータオルを投げる」というパフォーマンスを披露、このことに関して「最高品質のペーパータオルを投げてやったじゃないか」、つまり「そこまでしてやっているのに俺を批判するのは許さない」ということで、完全に確執になっているわけです。
・実は、この「プエルトリコ騒動」は、静かに世論の「失望」を惹起しているようです。要するに実務的な危機管理がうまく行っていないということですし、少なくとも「災害の被災者とケンカになる」というのは、いくらなんでも行き過ぎだということです。こうしたムードは、支持率に影響しており、現在は再び40%を割り込む状況になっています。
・そのような中での今回のアジア歴訪というのは、大統領に取っては失敗は許されないという状況です。具体的な論点としては、勿論、北朝鮮問題があるわけですが、歴訪が成功するかどうかということでは、注目点が3点あると思います。
 (1)まず ASEAN 参加となるベトナム、その後のフィリピンという後半は別として、 その前の「東アジア3ヶ国」についての順番という問題があります。仮に、中国が最初ということになると、何よりも「党大会後の新体制祝賀」というニュアンスが出て来て、米国のメンツは丸つぶれになります。また、北朝鮮の問題についても米中で合意したことを、日本や韓国に説明することになるわけで、そうなると益々、米国が習近平体制に主導される格好というイメージになってしまいます。ですから、トランプ政権に近い安倍政権の日本、そして、韓国、中国という順番は外せないわけです。
 (2)問題は、その中身です。北朝鮮問題に関しては、ドラスティックな解決策や、発火点すれすれの厳しい制裁というような「内容」よりも、米国、日本、韓国、そして中国の4カ国が少なくとも、この問題に関しては「歩調を合わせている」ということが大切です。具体的には、日米、米韓、米中の3セットの首脳会談において、北朝鮮に対するメッセージが共通したものとなるかどうかということです。同じであれば「米国主導の調整が機能している」ことになり、同時に「4カ国としての強い意志が示せる」からです。
 (3)この2つの問題は、北朝鮮に対する示威行動になるだけでなく、米国の威信というものが見えてくるわけですが、そこで威信を示すことができれば、その後のASEANでも、アメリカは存在感を発揮できるわけです。その場合ですが、ではASEANに行って何を話すのかというと、勿論そんな場所で「経済ナショナリズム」だとか「アメリカ国内雇用の重視」などをブチ上げても「バカみたい」なだけです。そうではなくて、アジアとアメリカが共存共栄していくための何らかのメッセージが出されるのだと思います。それもまたアメリカの威信ということ、その維持には欠かせません。ちなみに、米韓首脳会談で通商問題に関する歩み寄りができるかどうかという問題は、一種のASEANの前哨戦として見ることができると思います。
・さて、そんなわけで今回のトランプ大統領のアジア歴訪というのは、北朝鮮問題と通商問題という2つのテーマがあるわけですが、これに対してトランプという人は、どのような姿勢で対処していくのでしょうか?  勿論、一種の「俺様流」ということで、軍事的強硬策へ突き進むとか、通商問題で強硬になると言う可能性もゼロではありません。ですが、私は現在のこの政権が目指しているものは違うと考えています。
・それは極めて単純な問題です。アメリカでは、どうして「騒動ばかり」を起こし続けるこの政権が続いているのかというと、それは景気が好調だからであり、裏返して言えば株価が堅調だからです。このことが、トランプ政権の命綱になっています。野党の民主党だけでなく、与党の共和党からも多くの造反を出しているトランプですが、それでも「命脈を保っている」のは、そのためです。ですから、これに反する政策は取れないと考えるべきです。
・ですから、北朝鮮に関しては「軍事的な暴発回避」であり、通商問題に関しては「共存共栄を目指した妥協」ということになるのだと思います。この2つを、堂々と貫けるのか、そして、ブレずに日本、韓国、中国との同意を取り付けて、ASEANでは指導的に振る舞えるのかどうか、これは、この政権に取っては大きな試金石になるのではないでしょうか。
・ところで、アメリカでは北朝鮮問題というのは、現時点ではあまり話題になっていません。映画プロデューサーのハーヴィ・ワインスタインの巨大セクハラ・スキャンダルや、突如解任されたヤンキースのジラルディ監督の話題などが関心を集める中で、北朝鮮の問題は危機感を含めてやや忘れられた感があります。だからこそ、世論は、大統領のアジア歴訪について、北朝鮮問題も含めて「上手くいって当たり前」という種類の期待感を持っているわけです。ということは、政治的には絶対に失敗は許されない局面であると思います。

第一の記事で、 『元来アメリカ憲法で保障されている銃の所持は自衛のためではありません。あくまでもふざけた政府が出てきたときに国民がその政府を力ずくで倒す手段としての銃の保持が認められているので、ここは建国の根幹にかかわる部分だけにそう単純な話ではないのです』、というのは初めて知った。これでは、大量殺傷武器だからという理由で禁止するのも、容易ではなさそうだ。 『トランプ大統領は言うに事欠き、NFL選手に対し「Son of a bitch!」と呼んだのです』、を日本に引き直すと、 『たとえば安倍晋三首相が横綱の白鵬に「このデブが!……」と言ったら間違いなく退陣問題になるんじゃないでしょうかね』、という例はやや苦しいところだ。「このデブが!……」発言であれば軽いので、到底、退陣問題にはならないのではなかろうか。
第二の記事でのコーカー議員については、第三の記事でも引用されているが、発言内容は手厳しいトランプ批判だ。
第三の記事で、 『「プエルトリコ騒動」は、静かに世論の「失望」を惹起しているようです。要するに実務的な危機管理がうまく行っていないということですし、少なくとも「災害の被災者とケンカになる」というのは、いくらなんでも行き過ぎだということです』、というのは、どう考えてもトランプの暴走だ。ツィッターだけに、大統領スタッフたちも手が出せないのだろうか。 『今回のアジア歴訪・・・注目点』、はこの3点を参考に実際の成果を注視していきたい。
なお、明日30日から11月2日まで更新を休むので、3日にご期待を!
タグ:東洋経済オンライン トランプ大統領は言うに事欠き、NFL選手に対し「Son of a bitch!」と呼んだのです ASEAN 参加となるベトナム、その後のフィリピンという後半は別として、 その前の「東アジア3ヶ国」についての順番という問題 「トランプ大統領、「NFL選手を侮辱」の深刻度 言うに事欠き「Son of a bitch!」と煽った」 ジェフ・フレイク議員 こうしたムードは、支持率に影響しており、現在は再び40%を割り込む状況になっています 国歌斉唱の際に起立を拒んだコリン・キャパニック選手の行為に端を発します 彼の主張は人種差別がはびこるこの国の国歌は敬意に値しないというもので、それに賛同して同様の行為を行う選手が少なからずいたのです ボブ・コーカー上院議員 ジョン・マケイン議員 それも日常になり、メディアが批判し、教養人的な政治家が批判をするというのも、日常の光景になってしまいました トランプ大統領とNFL(ナショナル・フットボールリーグ)の問題 イエレン議長不在の市場がはたして今のように落ち着いていられるのかどうか、これもまったく不明 プエルトリコでは「ケンカを売りに行った」ような格好 法律上、「合衆国の属州は破産法適用ができない」ために、破綻を先送りしています ハリケーンでプエルトリコが大きな被害を受けているところに、大統領はケンカを売った格好 世論は、大統領のアジア歴訪について、北朝鮮問題も含めて「上手くいって当たり前」という種類の期待感を持っているわけです 、アメリカでは北朝鮮問題というのは、現時点ではあまり話題になっていません 通商問題に関しては「共存共栄を目指した妥協」 明らかに常軌を逸している大統領 リベラル系のメディアは、ずっとトランプ批判を一本調子で続けています 北朝鮮に関しては「軍事的な暴発回避」 ずっと一本調子で「お騒がせな言動」を繰り返してきたわけです 初めて「ちゃんと形になったものが出てきた」、ということは確かです どうして「騒動ばかり」を起こし続けるこの政権が続いているのかというと、それは景気が好調だからであり、裏返して言えば株価が堅調だからです トランプ政権 来日直前、トランプ政権の位置と外交の現在」from911/USAレポート フリーダムコーカス JMM 冷泉彰彦 はもともと民主党の牙城 その後はトランプ氏と仲たがいしている 米国の威信というものが見えてくるわけですが、そこで威信を示すことができれば、その後のASEANでも、アメリカは存在感を発揮できるわけです ぐっちーさん 日米、米韓、米中の3セットの首脳会談において、北朝鮮に対するメッセージが共通したものとなるかどうかということです 国務長官候補 中身のない減税案を出してきたトランプ大統領 コーカー議員 たとえば安倍晋三首相が横綱の白鵬に「このデブが!……」と言ったら間違いなく退陣問題になるんじゃないでしょうかね 問題は、その中身 共和党の根っこの思想は「減税」ですが、とにかく今回のトランプ案は「激しすぎて」共和党としても簡単には賛同できません 何の手間もなく買えてしまうのです (その24)(トランプ大統領、「NFL選手を侮辱」の深刻度、トランプ氏は「真実がとても苦手」 与党有力議員、来日直前 トランプ政権の位置と外交の現在) 中産階級の「生活感」を攻撃するような政策であり、民主党だけでなく、議会の共和党からも「賛同できない」という声が上がっています トランプ氏は「真実がとても苦手」 与党有力議員 動画 注目点が3点 プエルトリコ騒動」は、静かに世論の「失望」を惹起しているようです。要するに実務的な危機管理がうまく行っていないということですし、少なくとも「災害の被災者とケンカになる」というのは、いくらなんでも行き過ぎだということです 元来アメリカ憲法で保障されている銃の所持は自衛のためではありません。あくまでもふざけた政府が出てきたときに国民がその政府を力ずくで倒す手段としての銃の保持が認められているので、ここは建国の根幹にかかわる部分だけにそう単純な話ではないのです 英BBC トランプ大統領 ラスベガス トランプ政権に近い安倍政権の日本、そして、韓国、中国という順番は外せないわけです 財政緊縮の原理主義派 今回のアジア歴訪 単なるアサルトライフルやピストルのレベルをはるかに超えた殺傷力の高い銃が使われていることは明らかです 大統領に取っては失敗は許されないという状況 トランプ大統領は全米ライフル協会から全面的な支持を受けており、政策としても銃の所持には賛成、銃規制をしようとしたバラク・オバマ大統領とは180度方針が違います 税制改正は、ドラスティックな減税 最上級の侮辱語 史上最悪の銃乱射事件 プエルトリコ 一応共和党の「Big 6」 といわれる関係者の目を通してまとまってきた
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いじめ問題(その4)(なぜ教育委員会の対応はいつも不誠実なのか、"9月1日"始業式の日に自殺する子どもたち、「聞いた人が身震いするくらい怒られていた」 中2自殺、いじめ認知 最多32万件 小学校で57%増 けんかなど幅広く把握 昨年度 文科省調査) [社会]

いじめ問題については、4月21日に取上げたが、今日は、(その4)(なぜ教育委員会の対応はいつも不誠実なのか、"9月1日"始業式の日に自殺する子どもたち、「聞いた人が身震いするくらい怒られていた」 中2自殺、いじめ認知 最多32万件 小学校で57%増 けんかなど幅広く把握 昨年度 文科省調査) である。

先ずは、元参議院議員で政治評論家の筆坂 秀世氏が6月6日付けJBPressに寄稿した「なぜ教育委員会の対応はいつも不誠実なのか 「いじめはある」を大前提にすべき」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽取手市教育委員会の不誠実、無責任
・これまでどれほど多くの子どもがいじめによって自殺してきたことか。だが多くの場合、「いじめはなかった」「気が付かなかった」などという学校や教育委員会の無責任な発表ばかりを聞かされてきた。
・2015年11月に茨城県取手市の中学3年生だった中島菜保子さんがいじめによって自殺に追い込まれたという事件でもそうだった。菜保子さんは、「いじめられたくない」「学校に行きたくない」などとノートに書き残していた。この事実を見ただけでも、常識的な判断力を持つ人間なら、「いじめはあった」と判断して当然だ。
・しかし翌年12月、取手市教育委員会は、聞き取り調査を行ったが「いじめの事実は確認できなかった」と発表し、この問題に終止符を打とうとした。 納得できない両親は独自に調査を行い、同級生からの証言でいじめの事実を把握した。調査を基に「学校でのいじめはあった」と訴え続けると、2016年3月に第三者委員会が設置され、再調査をすることになった。
・ところが、この第三者委員会というのはひどいもので、報道によると、聞き取り内容は「家族関係について」や「ピアノの悩み」ばかりで、いじめの問題に直結するようなものはなかったという。そして第三者委員会が出した結論は、やはり「直接的ないじめがあったということは把握できなかった」というものだった。
・中学3年の女生徒が、「いじめがあった」と書き残して自殺したことが「重大事態」ではないというのだから、呆れるほかない。なんという愚かさだろうか。 取手市教育委員会は、両親が文科省に訴えると、途端に態度を180度変え、「不適切だった、反省している」と謝罪した。情けなくなる。こんな連中が教育委員、教育長だとは。しかし、こんな中身のない言葉では何の謝罪にもならない。「不適切だった」というが、何が不適切だったのか。「反省している」というが、何を反省しているのか。肝心なことがすっぽり抜け落ちている。 教育長は辞任したが、ただ逃げただけのことだ。不誠実、無責任、無能・・・、いくら言葉を並べても足りないぐらいだ。
▽小学生が「150万円おごった」という横浜市教育委員会
・横浜市でも、福島から自主避難していた小学生が、転校先の小学校で小学校2年生のときから5年生のときまで、放射能に汚染された「〇〇菌」などと罵られ、150万円も脅し取られていたことが発覚した。
・ところが横浜市の教育長は、「関わったとされる子どもたちが『おごってもらった』と言っているから、いじめと認定することに疑問がある」というのだ。脅し取った子どもたちは、こんな見え透いた弁明をそのまま受け取る馬鹿な大人たちのことを嘲笑していることだろう。
・そもそも小学生が150万円もの大金をどうやって調達するのか。このこと自体も大問題であり、調査すべきことだ。150万円もの金がどういう場所で何に使われたのか。教育委員会なら大いに関心を持つべきことだ。 それとも、横浜市の教育委員や、何の役にも立たなかった第三者委員会メンバー、親の訴えを真剣に聞こうともしなかった教師は、150万円ぐらいしょっちゅうおごってもらっているというのか。大人でも、何の利害関係もないのに数年間で150万円もおごってくれる人はそうそういない。いたら、横浜市教育委員会にぜひ紹介してもらいたいものだ。
・この生徒は、手記の中で「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」と述べている。震災で本当に辛い目に遭ったのに、よく頑張った。教師や教育委員会のメンバーよりも、この子どもの生きざまの方がはるかにけなげで、感動を呼ぶ。
・なぜ教育委員会の人々は、あるいは教師は、これほど“愚か”なのだろう。それは、馬鹿だからではない。保身のためだ。自分たちが関わる学校で自殺があれば、おそらくマイナス評価になるのだろう。だから隠そうとするし、真実に目を背けるのだ。 こんな生き方しかできない人々は、子どもの教育に関わってはならない、と断言したい。
▽「いじめはある」ことを前提にせよ
・絶望的なことを言うが、人間社会でいじめは絶対になくならないと私は思っている。もちろん残念なことだ。だが自分の生活している周りを見てみればいい。ママ友なる集まりでも、会社でも、誰かを血祭りにすることはいくらでもある。いじめは大人社会だってあるのだ。 動機は様々だ。妬みの場合もあれば、自分の立場を守るための場合もある。強者でいたいために、弱者を作り上げるための場合もある。烏合の衆になる場合もある。いじめに至る要因は、実に数多くあるのだ。
・それが学校現場では、実に簡単に「いじめはなかった」などという結論が下される。こういう結論を聞くたびに思うのは、「いじめはある」ということをなぜ大前提にしないのかということだ。 多くの場合、いじめや嫌がらせがあっても、笑って済ませたり、無視したりしながら、みんな耐えているに過ぎないのだ。そういう想像力が必要なのだ。教育委員会や教師は、そういう想像力を持たなければならない。
・電通に勤務する高橋まつりさんという24歳の東大卒の女性が自殺をして、大きな社会問題になった。過酷な長時間労働や違法なサービス残業がその原因とされている。三田労働基準監督署が過労自殺と認定しているように、確かに、過酷な過重労働がその要因であったのだろう。だが私は、このことをニュースで知った時、とっさに高橋さんが東大卒ということで、下らないいじめのようなプレッシャーをかけられていたのではないのか、と思ってしまった。
・事実、母親は「『ハラスメントや長時間勤務に関する相談が本人からなかった』と言われていますが、彼女のメールにはくり返し『会社に行くのが恐い』『上司が恐い』『先輩が恐い』『相談したことがわかったら恐い』とありました。電通における社風『体育会系レベルではない異常な上下関係』『年次の壁は海より深い』と娘が言っていた社風であるのに、新入社員が相談できる相手は年のごく近い先輩だけしかいなかったのです。人事に相談しても有効ではなかった」と語っている。
・要するに、“いじめ”があったということだ。このいじめが、高橋さんを過労に追い込んだのである。 そういうことはあるのだ。私は高卒で三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に就職した。配属されたのは大阪府下の池田支店であった。同支店に配属された男性は私ともう1人いて、その人は大阪大学卒だった。先輩も同期も、女子行員はすべて高卒だった。
・当時はまだ算盤の時代だった。私は商工会議所3級の資格(たいしたことはない!)を持っていたし、札勘定もすぐに早くなった。だが阪大卒のI氏は、算盤は遅い、札勘定は遅い、計算は間違う、その度にベテラン女子行員から馬鹿にされ、嫌味を言われていた。I氏は相手にもしてなかったと思うが、大卒へのやっかみも相当あったのだろう。
・先日、ゴルフの宮里藍選手が今季限りでの引退を表明した。彼女も高校生時代に優勝し、先輩プロから、さまざまな嫌がらせをされたという。だが彼女が、嫌がらせをしたという話など聞いたことがない。それどころかほとんどの後輩の憧憬の的になっている。本当に強い人間は、そんなことはしないものなのだ。いじめは、自分を小さくするだけだということを知ってほしい。子どもにも、大人にも。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50194(2頁目以降は有料)

次に、9月2日付け東洋経済オンラインが週刊女性PRIMEの記事を転載した「"9月1日"始業式の日に自殺する子どもたち 体調不良など"SOS"を見逃さないで」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・多くの地域で夏休みが終わり、新学期が始まる9月1日。その日が恐怖でしかない子どもたちが、自ら命を絶つ。 いわゆる“9月1日問題”。 データが明らかになったのは2015年のこと。原因や動機には学業不振や家庭問題、学校や友人関係などがあり、文部科学省の担当者は「これらの問題が複合的に重なったことが考えられる」と推測する。その中でも特に深刻なのがいじめを受けている子どもたちだ。
▽子どもたちはいじめを隠す
・不登校や引きこもりなどの情報交換や交流などを目的とした『不登校新聞』の石井志昴編集長は、子どもたちのギリギリの状況を説明する。 「夏休みが終わる数日前から学校に行くか、死ぬかの選択を迫られているんです。始業式が近づくと、いじめで苦しんだ1学期のことを思い出し、恐怖感が高まっていきます。その恐怖から逃げたい、と自ら死を選ぶのです」
・予兆はあるという。 一般財団法人『いじめから子供を守ろう ネットワーク』代表の井澤一明氏は大人たちに呼びかける。 「怯えている、夜泣く、スマホを見なくなっているなど、夏休みの前半と態度が変わってきたら注意してください。ほんの少しの変化でも、気づいてあげてほしい」 とポイントを明かす。 「宿題ができていない、体調不良などは赤信号。1学期に不登校ぎみだったら、最後のSOSだと思ってください」 と石井編集長。
・自殺の原因や理由はさまざまだが18歳以下の自殺者数は年間約300人~400人のあいだでほぼ横ばい。対策するものの減らない、という。 「いじめはどこの学校でも起きています。早期発見、早期予防が肝心です。しかし、今でも学校は、いじめを認識したがらない。教育現場はいじめがあればしっかり認め、いじめへの感度を高めるための努力をしていく必要があります」(前出・文部科学省の担当者) と教育現場の鈍感さに注文をつける。
・いじめが内包するわかりにくさも、事態を陰湿にする。 「男子は暴力系、女子はコミュニケーション系のいじめ。しかし大人からそれは見えません。子どもたちは隠します。いじめられている子も、苦しさを見せません」(石井編集長) 本人も学校も隠したがる傾向にあるという。
・北海道の私立高校の女性教諭が、現場の認識力の欠如を説明する。 「生徒たちの状況をいじめと先生が認識していない場合もあります。当該の生徒はいじめられて嫌な思いをしているかもしれませんが、大人はそれに気づけない。ふざけているだけなどと、いじめにカウントしないこともあるのです」 いじめ調査の実態について、 「学期終わりにアンケートをし、いじめが発覚すれば夏休み中に対応します。そして加害生徒に寄り添うことも必要です。というのも、加害者もトラブルを抱えていたりするからです。家庭に問題があったり、人との関わり方がわからない子もいます」
▽学校は命をかけてまで行くところじゃない
・さらに、教師の目に触れないいじめがネットに広がっているのも近年の顕著な傾向だ。 「LINEやツイッターなどSNSのいじめも増加しています。“学校来るな”“死ね”などの中傷はわかりやすいのですが、当事者にしかわからない内容でのからかいもあります。ネットでのいじめは、子ども本人が“いじめられている”と告白しない限り、わかりません」(前出・井澤氏) と深刻な実態を明かす。
・トラブル抑止のためLINE株式会社では、学校などに講師を派遣する啓発活動やその教材作りをする。一律の解決策はない、としながらも、 「大人は子どもの利用実態や使用感覚をまず理解することが必要ではないかと考えています。そのうえで子どもと普段からネットに関するコミュニケーションをもち、トラブル時には信頼して相談してもらえるような環境づくりが重症化抑止のために重要です」 と対策を伝えた。
▽学校に行かない選択もある
・子どもと親、子どもと教師の信頼感の大切さを訴える専門家は多い。 「自分の気持ちを受け止めてくれる大人に出会ったとき子どもたちは前向きになれるんです。出会いは命を助けます」と石井編集長。 前出の高校教諭も「親と学校とが協力関係をもたなければ解決できません。生徒と教師の間に不信感が生まれてしまえば、生徒は話してくれなくなります」と経験を明かす。
・いじめによる自殺で娘を亡くし、いじめ問題の解決に取り組むNPO法人『ジェントルハートプロジェクト』の小森美登里さんは話す。 「いじめを受けていた生徒が勇気をもって先生に相談しているのに“様子を見よう”とか“いじめはない”と言われたら、さらに傷つきます」  教師だけではない。 「親もそうです。私たちもそうでしたが“強さが必要”“頑張りどころ”などの言葉は子どもを突き放すだけです。いじめは子ども目線で考えることが重要です。助けようとしていても大人の思い込みが逆効果になることもあります」 と注意を促す。
・同法人では新学期の自殺防止対策の一環としてメッセージの展示などを企画。展示は神奈川県横浜市を皮切りに、東京都港区、青森県などでも行われる予定だ。同法人の小森新一郎代表理事は、 「子どもたちはいじめを受け親も先生も周囲は誰も自分のことはわかってくれないという孤独を抱えた中で死んでしまいます。この展示を通して“たくさん味方がいるんだよ”と伝わればと思っています」 と期待を込める。
・2学期へのカウントダウンが始まり、間もなく確実に新学期を迎える。 「学校は命をかけてまで行くところじゃない」と前出の石井編集長。小森美登里さんも、 「学校に行かない選択肢もあります。“うちの子に限って”はありません。突然、子どもが死んでしまうかもしれない危機感をもってください。子どもの命が最優先です」
・前出・井澤氏は悩みを抱える子どもたちに、 「親に相談できなければ近所の人、きょうだい、誰でもいいので、つらい胸の内を明かして、ひとりで抱えないで」 と、呼びかける。通話料無料の『24時間子供SOSダイヤル』も、いつでも子どもたちの味方だ。
http://toyokeizai.net/articles/-/186566

第三に、10月27日付け日経新聞「いじめ認知 最多32万件 小学校で57%増 けんかなど幅広く把握 昨年度、文科省調査」のポイントを紹介しよう。
・全国の小中高校と特別支援学校で2016年度に把握したいじめが過去最多の32万3808件で、前年度より9万8676件(44%)増えた(文部科学省の問題行動調査)。特に小学校で増えた。積極的に認知する姿勢が学校現場に浸透したほか、同省がささいなけんかにも注目して早期発見に努めるよう促したことも増加の要因。
・小学校の認知件数は23万7921件で全体の7割。前年度より57%増えており、増加率は中学校(20%)や高校(2%)を大幅に上回った。同省は16年度から、けんかやふざけ合いに見える行為であっても、教員の判断で「いじめ」と捉えるよう求めている。そのため目に見えるけんかなどが起きやすい小学校で認知件数が大幅に増加。文科省児童生徒課は「積極的に認知し、早めに対応する方針が浸透」とみる。小学校では暴力行為も2万2847件と前年度比34%増。
・文科省はいじめ認知の姿勢が浸透するなか、暴力行為についても「教員が抱え込まず報告するようになった」と分析。「感情のコントロールができない子供が増えた」との声も多かった。千人あたりの認知件数は最多の京都府では96件、最少の香川県では5件と19倍の差。いじめを認知した学校の割合は68%。前年度より6ポイント増えたが、同省は「残りの3割は『いじめゼロ』というのは多すぎる」と指摘。こうした地域に対し、同省はさらなる認知を促す。認知件数がすでに多い地域については「命の大切さを教えるなど、今度は予防にも力を入れてほしい」(同担当者)と要求

第一の記事のタイトルにある、 『「なぜ教育委員会の対応はいつも不誠実なのか』、は私も全く同感で、いつも腹立たしく思っている。特に、第三者委員会を設置しても、取手市や横浜市のようなケースでは、形式的につくっただけで、真相を探るという本来の役割から、わざと逃げているとしか思えない。恐らく教育委員会からの働きかけが原因と想像されるが、このような悪質な隠蔽があった場合には、さらにそれを調べる第三者委員会を設置してでも、隠蔽の責任を追及し、責任がある教育長などを処分すべきではなかろうか。 『人間社会でいじめは絶対になくならないと私は思っている』、 『「いじめはある」ことを前提にせよ』、というのは、その通りだ。
第二の記事で、 『始業式が近づくと、いじめで苦しんだ1学期のことを思い出し、恐怖感が高まっていきます。その恐怖から逃げたい、と自ら死を選ぶのです』、というのは悲惨極まりないことだ。 『いじめが内包するわかりにくさも、事態を陰湿にする。 「男子は暴力系、女子はコミュニケーション系のいじめ。しかし大人からそれは見えません。子どもたちは隠します。いじめられている子も、苦しさを見せません」』、というのでは、確かに見つけるのは簡単ではなさそうだが、先生が逃げずに、正面から接すれば見つけられるケースも多いのではなかろうか。
第三の記事で、 『同省(文科省)は「残りの3割は『いじめゼロ』というのは多すぎる」と指摘。こうした地域に対し、同省はさらなる認知を促す』、と今だにゼロで回答してくる都道府県が3割もあるというのは、驚きだ。
いずれにしても、問題が改善の方向に向かうことを祈っている。
タグ:いじめ問題 (その4)(なぜ教育委員会の対応はいつも不誠実なのか、"9月1日"始業式の日に自殺する子どもたち、「聞いた人が身震いするくらい怒られていた」 中2自殺、いじめ認知 最多32万件 小学校で57%増 けんかなど幅広く把握 昨年度 文科省調査) 筆坂 秀世 JBPRESS なぜ教育委員会の対応はいつも不誠実なのか 「いじめはある」を大前提にすべき 多くの場合、「いじめはなかった」「気が付かなかった」などという学校や教育委員会の無責任な発表ばかりを聞かされてきた 茨城県取手市の中学3年生 中島菜保子さんがいじめによって自殺 第三者委員会というのはひどいもので、報道によると、聞き取り内容は「家族関係について」や「ピアノの悩み」ばかりで、いじめの問題に直結するようなものはなかったという。そして第三者委員会が出した結論は、やはり「直接的ないじめがあったということは把握できなかった」というものだった 横浜市教育委員会 小学生が「150万円おごった なぜ教育委員会の人々は、あるいは教師は、これほど“愚か”なのだろう。それは、馬鹿だからではない。保身のためだ。自分たちが関わる学校で自殺があれば、おそらくマイナス評価になるのだろう。だから隠そうとするし、真実に目を背けるのだ いじめはある」ことを前提にせよ 東洋経済オンライン 週刊女性PRIME 「"9月1日"始業式の日に自殺する子どもたち 体調不良など"SOS"を見逃さないで」 9月1日問題 「夏休みが終わる数日前から学校に行くか、死ぬかの選択を迫られているんです。始業式が近づくと、いじめで苦しんだ1学期のことを思い出し、恐怖感が高まっていきます。その恐怖から逃げたい、と自ら死を選ぶのです 子どもたちはいじめを隠す 予兆はあるという いじめが内包するわかりにくさも、事態を陰湿にする。 「男子は暴力系、女子はコミュニケーション系のいじめ。しかし大人からそれは見えません。子どもたちは隠します。いじめられている子も、苦しさを見せません」(石井編集長) 本人も学校も隠したがる傾向にあるという 学校は命をかけてまで行くところじゃない 日経新聞 いじめ認知 最多32万件 小学校で57%増 けんかなど幅広く把握 昨年度、文科省調査 2016年度に把握したいじめが過去最多の32万3808件で、前年度より9万8676件(44%)増えた 同省がささいなけんかにも注目して早期発見に努めるよう促したことも増加の要因 同省は「残りの3割は『いじめゼロ』というのは多すぎる」と指摘
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社会問題(その2)(「大人の引きこもり」と高齢化する親 困窮家庭に行政の光は届くか?、小田嶋氏のコラム「図書館よ永遠なれ」) [社会]

社会問題については、昨年12月6日に取上げた。今日は、(その2)(「大人の引きこもり」と高齢化する親 困窮家庭に行政の光は届くか?、小田嶋氏のコラム「図書館よ永遠なれ」) である。

先ずは、4月6日付けダイヤモンド・オンライン「「大人の引きこもり」と高齢化する親、困窮家庭に行政の光は届くか?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽行政がいよいよ対策に乗り出した「引きこもり」長期化と親の高齢化
・いわゆる“8050問題”とも言われる、引きこもる本人の長期化と親の高齢化に対応しようと、行政も取り組みに乗り出した。 3月28日、参議院決算委員会で、公明党の山本博司議員の質問に対し、内閣府の加藤勝信特命担当大臣は、「40歳以上の引きこもり状態の方々の実態把握は重要。次回調査に向け、引きこもり状態について知見のある有識者とも連携して、40代以上も調査の対象に加える」方針を明らかにした。
・国による「大人の引きこもり」全容調査に向けて、大きく前進したと言える。 なぜなら、内閣府は昨年9月に、15歳から39歳の引きこもり者が約54万人に上るという第2回調査の推計結果を公表したものの、増加している40歳以上の実態調査は省略されたため、「大人の引きこもり」状態の課題については、これまで置き去りにされていた。
・しかし、引きこもり家族会全国組織である「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が、40歳以上の引きこもり当事者についての家族らからの聞き取り調査を実施し、長期化高齢化の課題に関する中間報告を今年1月に公表。いわゆる「8050問題」と言われる、80歳代の親が50歳代の子供の面倒をみる事例が増えている実態を報告した。
・「私も議員となってからこの10年間、引きこもり支援について取り組んで参りました。長期化すればするほど孤立は深刻になり、社会復帰が困難となります。安倍政権では、一度失敗してもチャレンジできる社会を目指しておりまして、大人の引きこもり支援は大変大事でございます」 山本参議院議員がこう質問すると、内閣府の加藤大臣は次のように答弁した。 「40歳以上の引きこもりの状態にある方々の実態把握は重要だという風に認識をしておりまして、次回調査に向けて、関係省庁や引きこもり状態について知見のある有識者などと十分に連携をさせていただいて、40歳以上の方々も対象に加えるべく検討して参りたいと思います」
・このように、加藤大臣が今回、内閣府で調査すると明言した意味は大きい。ちなみに、次回調査の時期は、1回目が2010年度、2回目(昨年9月公表)が2015年度という流れから考えると、5年後ということになる。しかし、内閣府の担当者は「5年後ということではない。このところの情勢の変化もあるので、もっと前に行うことも含め、これから検討していくことになる」と話している。 また、検討するにあたっては、「子ども・若者」以外の領域の有識者や、厚労省社会援護局などの省庁とも連携していくということなので、前向きに取り組んで行こうという意志が感じられた。
・今後、いつ調査を実施するのか、家族などの当事者たちは注視している。 さらに、厚労省の塩崎恭久大臣も、40歳以上を含めた引きこもり状態の当事者たちに対し、都道府県などに設置されたひきこもり地域支援センターでの相談支援や、生活困窮者自立支援制度における相談窓口での包括的支援とともに、こう答弁した。 「現在、国会にも提出をして、先ほど審議入りをいたしました地域包括ケアシステム強化法案の中においても、包括的に支援をする体制を整備している。この中で、これまでの支援に加えて、大人も含む引きこもりなどの社会的孤立の状態に置かれている方々を早期に発見し、確実に支援することができる地域づくりを目指してまいりたい」
▽東京都も乗り出した「大人の引きこもり」対応
・「大人の引きこもり」対応に関しては、首都・東京都でも動きがあった。 3月22日に行われた都議会厚生委員会で、公明党の中山信行都議の質問に対し、高橋生活支援担当部長は、「区市の相談員のさらなる資質向上を図るため、民間団体などの協力も得て、発達障害、DV、引きこもりなどのテーマ別検証を実施し、相談員が窓口で適切な支援を行えるよう、都内の実際の相談事例を踏まえた自立相談支援マニュアルを作成」することを明らかにした。
・担当する都の生活支援課によると、このマニュアルは、生活困窮者自立支援の相談窓口向けに、引きこもり事例の様々な課題の共有と就労に向けたノウハウ的なものを寄せ集めたいという。 「生活困窮の窓口だけでは、解決できない問題も多い。マニュアルの作成にあたっては、引きこもり家族会や、場合によっては当事者団体などからの意見をお聞きする場を設けることも含め、ヒアリングや紹介なども想定しています」(担当課長)
・今後、この自立相談支援マニュアルを年度内に作成。都内の生活困窮者自立支援法に基づく相談窓口50カ所と島しょ部4支所に配布する。都は、研修なども含めた事業費として、今年度予算に2千万円余りを計上した。 都の「引きこもり」施策については、これまで青少年・治安対策本部が担当していて、「34歳までで年齢を線引きするのはおかしい」「犯罪者予備軍のように捉えているのではないか」といった批判が、当事者や家族、支援者側からも挙がっていた。 福祉領域の部署が、生活困窮者対応に含める形とはいえ、社会的孤立にある「引きこもり」状態の課題に乗り出すのは、初めてと言える。
▽地域から「孤立」をなくせるか? 衆議院で審議される社会福祉法改正
・ここ数年、引きこもる本人たちや家族を取り巻く環境も大きく変わってきた。 地域に埋もれ、孤立していた当事者たちが声を出せるような空気もできてきて、社会的にも少しずつ認知されているように思う。 現場からの声を救い上げる周囲の人たちの意識や行政などの体制にも、幅が広がるなどの変化が生まれてきている。
・厚労省の社会援護局などの福祉部局では現在、「我がごと・丸ごと地域づくり」が進められている。その中で、社会的な孤立状況に置かれた人たちの解題を見つけて、その人の状況に応じた適切なところにつなげていける地域づくりが大事だ。 地域の住民が、「孤立」などの課題を把握できるような地域づくりを市町村に努力義務で課そうという趣旨の「社会福祉法」の改正も現在、衆議院で審議されている。
・「社会福祉法は、すべての人たちが役割を持って社会に参加できる地域をつくっていこうという地域共生社会の中で、支えたり支えられたりという“地域力”を再生しようというものです。引きこもり青年や、高齢者が一方的に支えられるだけでなく、そういった方々も支える側に回れるような社会を作りたいということです」(厚労省担当者) 順調に進めば、同法案は今国会の6月中には成立する見込みだ。
http://diamond.jp/articles/-/123817

次に、コラムニストの小田嶋隆氏が8月25日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「図書館よ永遠なれ」を紹介しよう。
・スタジアムでサッカーを見る楽しさの半分以上は、サッカーそのものとは別のところにある。 観戦の醍醐味について述べるなら、ディフェンスラインの駆け引きや、サイドチェンジのパスの軌跡が、スタジアムの座席からでないと真価の見えにくい技巧である一方で、ドリブル突破の際の細かいステップワークや密集の中での選手同士のボディコンタクトの詳細は、テレビ画面を通してでないと把握できない。それゆえ、競技としてのサッカーの全貌をあますところなく堪能するためには、スタジアムでゲームをひと通り見た後に、帰宅後、あらためて録画を確認する必要がある。
・ただ、競技としてのサッカーを観戦することとは別に、スタジアムには、「共同性」の魔法がある。 別の言い方で言えば、大勢の人間と同じ場所で同じ偶発事件を注視する共同体験の一回性が、半ば群棲動物であるわれわれを陶酔させるということだ。
・同じプレーに歓声をあげ、得点に跳び上がり、パスミスや反則のホイッスルに同じタイミングで嘆息を投げかけるうちに、スタジアムに集った数万人の観衆の間には、いつしか一体感が醸成される。無論、一体感の対偶には相手チームへの敵意が燃え上がっているわけだが、害意であれ仲間意識であれ、集団的な感情である点において遠いものではないわけで、いずれにせよ、同じスタジアムの中で同じ空気を吸っている観客は、徒党であることを楽しんでいる。
・常日頃、集団への同調に苦情を申し述べることの多い私のような人間でさえこのありさまなのだからして、群集心理がもたらす興奮はそれだけ格別な誘惑だということなのだろう。 群集心理はSNSがもたらす愉悦の主成分でもある。 何かを応援する時、あるいは誰かを野次る時、われわれは群衆のマナーを身につける。 そして、群衆となったわれわれは、自分たちが愚かな人間として振る舞うこと自体を楽しむようになる。
・それが、良いとか悪いとかいったことについて話をしたいのではない。 私は、集団的な娯楽が多かれ少なかれ愚民化の過程を含んでいることを指摘しているだけだ。
・本来は、ひとつの場所に大勢の人間が集まることで、はじめて群衆化への前提条件が整うわけなのだが、そもそもが架空の「場所」であるインターネットでは、人々はあらかじめ集まっている。 とすると、既に集まっている人間たちが群衆化するためには、ひとつの話題なり目的なりを共有すればそれで足りることになる。
・はるか昔の話だが、学校の近くに下宿している学生のアパートに集まってテレビを見るような時、共同視聴の対象は、出来の悪い番組であるほど面白かったことを覚えている。 というのも、5人とか8人みたいな人数で1つのテレビの前に群がっている行き場のない学生が粗末なブラウン管の中に期待していたのは、心踊る物語や卓抜な演技ではなくて、どちらかといえば寄ってたかっておもちゃにできる間抜けな「ツッコミどころ」だったからだ。
・であるから、たとえば、稚拙な演技と陳腐な演出と月並みな台詞が盛大に散りばめられている、そしてそれ故に大人気となったドラマである「スチュワーデス物語」あたりは、退屈した学生にとって最適なコンテンツだった。なんとなれば、われわれは、ドラマの内容でなく、自分たちが発する罵声と嘲笑を娯楽として楽しんでいたからだ。
・ほぼ同じことが、現代のSNSでも起こっている。 実際、ツイッターの同じハッシュタグに集うアカウントは、暑苦しい学生下宿の四畳半部屋に群れ集まっていた宙ぶらりんの若者たちと同様、思うさまに嘲弄できる手頃な攻撃対象を探し求めている。 そんなわけなので、ツイッターのタイムラインで私たちが遭遇する話題のうちの半分以上は、子供のいじめと区別がつかない。
・今回は、まずその話をする。SNSで発生するリンチの話だ。 いじめが良いとか悪いとか、リンチは残酷だからやめましょうとか、そういう話をするつもりはない。 個人的な見解を述べれば、私は、ツイッター上で特定の誰かの言動をあげつらって笑いものにしている人たちには、さほど悪気はないのだと思っている。
・悪気がないということの具体的な意味は、彼らが、悪口を言っている対象を憎んでいるわけではないということだ。意外かもしれないが、彼らは、先方が傷つくことを願っているのでもない。リンチ参加者は、ごく単純に自分たちの残酷さを楽しんでいるに過ぎない。 気持ちの上では、昭和の学生が、集団でテレビ画面に映っている女優さんの演技を大笑いしながら罵っていた時の心理と変わらない。
・集団テレビ視聴に際して、わたくしども20世紀の意識低い学生は、誰が最も的確に残酷な批評を浴びせることができるのかを競っていた。が、だからといって、私たちは、テレビの中の女優さんを憎んでいたのでもなければ、彼女が自信を失って引退することを期待していたわけでもない。われわれは、ただ「罵倒」というゲームを楽しんでいただけだ。
・現在のSNSでも事情は変わらない。 ひとつだけ違うのは、ネット上の罵倒が、テレビ画面への罵詈雑言と違って、本人に届くことだ。 つい先日も、ネット上に転載された雑誌の記事が炎上している場面に遭遇した。 書き手は、元新聞記者だったアフロヘアの女性で、この人は、別件でも何回か炎上している。 ちなみにこの記事(こちら)は有料記事で、契約外の人間は読めない。なので、以下、概要を紹介しておく。
・記事の書き手の女性は、ある日、とある行政機関の仲介で講演の仕事をする。現地におもむくと、担当の人間が、「付箋のいっぱいついた」自分の著書を持って現れる。礼を言おうと思ってよく見ると、図書館で借りた本だった。彼女はひどく傷ついた……と、大筋はこんな話だ。
・炎上したのは、《それが何であれ、仕事には相応の苦労が伴います。そして、それに敬意を表してお金を払ってくれる人がいて初めてその人は仕事を続けることができる。あなたが懸命に作ったものを当然のようにタダで持っていく人がいたらどう思いますか。自分にはそんなにも価値がないのかと傷つきませんか。》 という部分の書き方が強い調子だったことと、記事の末尾が 《お金とは、自分の欲望を満たすための手段。これまでずっと当たり前にそう思ってきた。だから同じものならちょっとでも安く、あわよくばタダで手に入ればラッキーと思ってきました。 でも世の中はつながっているのです。得をした自分の反対側には確実に損をしている人がいる。そして気づけば自分がいつの間にかその損をする側に回っていた。これを因果応報という。ここから抜け出すにはまず自分のお金の使い方を考えねばなりません。》 と、やや説教くさい言葉で結ばれているからだと思う。
・で、ツイッター上には 「普段から節電だのモノを持たない生活だのをアピールして、それで本まで書いていながら、他人が節約するといきなりこの態度かよ」 「それ以前に、文章を書くことで身を立てている人間が、図書館の役割に対してここまで意識が低いのは論外だと思うわけだが」 といった感じの批判の声が集中した次第だ。 主たる批判はこの2点に集約されていたものの、これ以外に、引用をはばかる残酷な罵倒や中傷が山ほど浴びせられている。で、じきに、罵倒そのものが主役化する。まあ、いつもの展開だ。
・私としては、当事者の女性が個人的に何度かお会いしたことのある人でもあるので、投げつけられている言葉の激越さには、当初から心を痛めていた。とはいえ、その一方で、炎上する理由にも色々と思い当たるところがあるので、全体として、複雑な気分で事態を眺めていたという感じだろうか。
・朝日新聞の関係者の発言は、ちょっとしたひっかかりがあるだけで、とても良く燃える。 「つまりそのお返事が○○新聞の公式見解だと受け止めてかまわないわけですよね?」 「記事では○○と言っておいて、プライベートでは△△なわけか。ダブスタだな」 といった調子で発言のブレや公私の言葉の使い分けをツッコまれるだけでなく 「なにしろメディア貴族さまだからなあ」 「大衆を啓蒙する気満々で恐れイリヤだな」 「っていうか、早期退職金って、○千万円らしいぞ」 「どうして隠れもしない富裕層が白々しく庶民ヅラするかなあ」 的な、マスコミ言論自体への反感をまぶしたヤッカミまじりのツッコミも大量に投下される。
・これは、宿命みたいなものだ。 今回の、彼女の書き方は、あまりにも無防備だった。 もっとも、世の中に向かって何かを訴える人間には、ある種の無防備さが求められるという考え方もある。 彼女のような全方位的に無防備な人間が繰り出す、ツッコミどころ満載の主張は、そこから始まる議論を活性化させる点で、まるで無意味ではないのかもしれない。
・というよりも、節電にしても脱原発にしてもミニマルなライフスタイルにしても、それらが、「無防備」な姿勢を貫いた先にしか結実しない困難な課題であることを思えば、彼女の問題提起の仕方は、あれはあれでスジの通ったものなのだろう。 ともあれ、あっけらかんと思うところを言い放つ人間がいないと、議論がはじまらないことはたしかで、そういう意味では、彼女のような人材は貴重だ。
・図書館の話にいこう。 図書館については、昔から、文筆家の間でも意見が分かれている。 特に、図書館が貸出予約の多い書籍を複数(2冊以上)購入して所蔵する(複本)傾向が一般化してからは、図書館への風当たりが強まっている。
・2001年には、日本ペンクラブ著作者の権利への理解を求める声明で、「幅広い分野の書籍を提供する公共図書館の役割を阻害」と批判、これに図書館側は「図書収集の実態への誤解」「資料費に占めるベストセラー本の割合はわずか1%」と反発。03年には日本推理作家協会と、大手出版社11社が、「作家が希望した本は発売後6カ月間の貸し出し猶予」を日本図書館協会に要望し、これを図書館側が拒否。(コトバンクー知恵蔵より) という展開で今日に至っている。
・最近でも、2015年の10月に、新潮社の社長が「売れるべき本が売れない要因の一つは図書館の貸し出しにある」と発言したことが記事化され、業界内でひとしきり話題になったことがある。 おそらく、50万部以上売れるようなベストセラーに限っていえば、新潮社の社長の言う「逸失利益」(本来なら売れるはずの書籍が買われずに図書館の本で済まされてしまうこと)が生じている可能性は高い。
・漏れ聞いたところでは、村上春樹さんの作品あたりになると、各図書館が各作品ごとに何十冊という複本を揃えているという。それでも、モノによっては予約待ちが何カ月にもなるのだそうで、そこで読まれている分を、逸失利益として計算すれば、それこそ何十万部という数の売り上げ見込みがみすみす失われていることは、たしかにありそうな話だ。
・とはいえ、わが国で一年間に出版される約8万点の出版物のうち、10万部以上売れる書籍―― 一説には、約300冊と言われているそうだが、だとすると、0.5%にも満たない。 ということは、これは、例外中の例外だ。 交通事故に近い確率…いや、それよりもずっと低い。私だって自転車で自損事故を起こしたしな。
・してみると、私のような基本的に安全運転の著者にとって、図書館で読んでもらえることは、普通に考えてありがたいこと以外のナニモノでもない。 2012年の2月、私は、図書館について、 《図書館は書籍売上のピークを下げるかもしれないが、裾野を嵩上げしている。だから私個人は図書館に悪い感情は持っていない。》(こちら) 《ついでにいえば、図書館は、図書館に収蔵されることによって購入を放棄されるタイプの著者にはマイナスだが、図書館で読んだ読者の多くが著書の購入者に変ずるタイプの著者には恩恵をもたらしている。だから私は図書館には感謝こそすれ、恨みはまったくない。》(こちら) という2つのツイートを投稿している。
・2つめの書き込みは、半分ぐらい強がりみたいなものだが、本を書く商売をしている人間の多くは、基本的には同じ気持ちだと思う。 もちろん本が売れてほしいとは思っている。でも、それ以上に、図書館であれ古本屋経由であれ、とりあえず読んでもらえればそれはありがたいことだし、その一方で、読んでもらえるのであれば、いつかはそれが売り上げにつながるはずだと信じていたりもする。
・われわれは、考えが甘いのだ。考えの甘くない人間が、本など書いてたまるもんかというのだ。 であるからして、図書館で借りてきた本を書き手の前であからさまに広げてみせることが、マナーとして失礼であるのはともかくとして、図書館で本を借りて読むことそのものは、誰に対してであれ、決して恥じるべきことではない。
・私自身は、図書館に通いつめた期間を、自分の全人生の中でほんの半年ほどしか持っていない人間なのだが、現在になって振り返ってみれば、あの、本当に、どこにも身の置き場がなかった半年ほどの時期が、自分にとって最も書籍から得たものの大きかった時代だと思っている。 ついでに言えば、あの時代に、もし図書館という場所がなかったら、私はどこに居場所を求めてよいのやらたいそう困ったはずで、もしかしたら、そのままこの世の中からいなくなっていたかもしれない。そういう意味でも、図書館には感謝している。
・で、2015年には、 《図書館について「そもそもタダで本を読もうという料簡が卑しい」てなことを言っちゃってる人がいるけど、それ「貧乏人は無知のまま死ね」ってことだぞ。ついでに言えば、図書館軽視は、読書という営為を高踏的な特権集団である「読書人」のサークル内に限定しようとする一種の貴族主義思想ですぞ。》(こちら) というツイートを発信している。
・これも、きれいごとといえばたしかにきれいごとだ。 が、書籍という商品は、関係者がきれいごとを信じることで流通している。 このことを忘れてはならない。 というよりも、人が本を読むという営為がそもそもきれいごとを含んでいるのであって、活字を読むことで知識を得るとか、自分が向上するとかいった幻想なり思い込みなり信仰心なりがなくなったら、書籍は滅亡するほかにどうしようもないものなのだ。
・いずれにせよ、著者と読者は、売り手を買い手、生産者と消費者という言葉だけで説明できる関係ではない。 もし、著者が生産者で読者が消費者だとすると、昨今の消費者万能思想からして、著者の側が読者にアタマを下げなければならなくなる。 「お買上げありがとうございます」 と、読んでもらったことに感謝するのは不自然なことではないが、その感謝が「買ってもらったこと」に対してなのかどうか、いろいろ考え方はあるのだろうが、個人的には疑問だ。
・私は、そういうつもりで本を書いていない。 個人的には、買っていながら読んでいない客よりも、買っていないながらもどうにかして読んだ読者の方を大切にしたいと考えている。 だから、時々タイムラインやコメント欄に現れる 「お前の本を買っている顧客なのだから相応の敬意を払え」 みたいなもの言いをする人間には、真面目に対応しないことにしている。
・私の本を読んでいながら、私に対して“相応の敬意”を抱くことができないのだとしたら、彼または彼女は、間違った本を読んでしまったという意味で、「被害者」と呼ぶのが妥当だと思う。 気の毒には思うが、賠償はできない。 私も、被害者だからだ。  ということで、お互い忘れるのが建設的だと思う。  ああ、そうだ。今後、本を買う時には、図書館でざっと目を通してからにすると良いかもしれないぞ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/082400107/

第一の記事で、 『引きこもり家族会全国組織である「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」が、40歳以上の引きこもり当事者についての家族らからの聞き取り調査を実施し、長期化高齢化の課題に関する中間報告を今年1月に公表。いわゆる「8050問題」と言われる、80歳代の親が50歳代の子供の面倒をみる事例が増えている実態を報告した』、らしい、「8050問題」とは初耳で、事態がここまで悲惨なものになっているのも再認識した。幸い、政治や行政も実態把握に乗り出すようなので、今後の進展に期待したい。
第二の小田嶋氏のコラムで、 『サッカーを観戦・・・スタジアムには、「共同性」の魔法・・・常日頃、集団への同調に苦情を申し述べることの多い私のような人間でさえこのありさまなのだからして、群集心理がもたらす興奮はそれだけ格別な誘惑だということなのだろう』、というのには小田嶋氏でもそうなのかと、妙に納得した。 『学校の近くに下宿している学生のアパートに集まってテレビを見るような時、・・・5人とか8人みたいな人数で1つのテレビの前に群がっている行き場のない学生が粗末なブラウン管の中に期待していたのは、心踊る物語や卓抜な演技ではなくて、どちらかといえば寄ってたかっておもちゃにできる間抜けな「ツッコミどころ」だったからだ』、というのには、現在の小田嶋氏の鋭い「ツッコミ」が鍛えられた所以が分かったような気がする。図書館で本を借りて読むことについては、私も買わずに済ませている派なので、小田嶋氏の肯定的見方に一安心した。 『人が本を読むという営為がそもそもきれいごとを含んでいるのであって、活字を読むことで知識を得るとか、自分が向上するとかいった幻想なり思い込みなり信仰心なりがなくなったら、書籍は滅亡するほかにどうしようもないものなのだ』、とのシャープな見解はその通りだ。
タグ:社会問題 (その2)(「大人の引きこもり」と高齢化する親 困窮家庭に行政の光は届くか?、小田嶋氏のコラム「図書館よ永遠なれ」) ダイヤモンド・オンライン 「「大人の引きこもり」と高齢化する親、困窮家庭に行政の光は届くか?」 “8050問題”とも言われる、引きこもる本人の長期化と親の高齢化 40歳以上の実態調査は省略されたため、「大人の引きこもり」状態の課題については、これまで置き去りにされていた 「8050問題」と言われる、80歳代の親が50歳代の子供の面倒をみる事例が増えている実態 東京都も乗り出した「大人の引きこもり」対応 社会福祉法改正 小田嶋隆 日経ビジネスオンライン 図書館よ永遠なれ ・スタジアムでサッカーを見る楽しさ スタジアムには、「共同性」の魔法がある 大勢の人間と同じ場所で同じ偶発事件を注視する共同体験の一回性が、半ば群棲動物であるわれわれを陶酔させるということだ 常日頃、集団への同調に苦情を申し述べることの多い私のような人間でさえこのありさまなのだからして、群集心理がもたらす興奮はそれだけ格別な誘惑だということなのだろう 群集心理はSNSがもたらす愉悦の主成分でもある 既に集まっている人間たちが群衆化するためには、ひとつの話題なり目的なりを共有すればそれで足りることになる 学校の近くに下宿している学生のアパートに集まってテレビを見るような時 5人とか8人みたいな人数で1つのテレビの前に群がっている行き場のない学生が粗末なブラウン管の中に期待していたのは、心踊る物語や卓抜な演技ではなくて、どちらかといえば寄ってたかっておもちゃにできる間抜けな「ツッコミどころ」だったからだ 現代のSNSでも起こっている ツイッターのタイムラインで私たちが遭遇する話題のうちの半分以上は、子供のいじめと区別がつかない 彼らは、先方が傷つくことを願っているのでもない。リンチ参加者は、ごく単純に自分たちの残酷さを楽しんでいるに過ぎない ネット上の罵倒が、テレビ画面への罵詈雑言と違って、本人に届くことだ 図書館の話 昔から、文筆家の間でも意見が分かれている 図書館が貸出予約の多い書籍を複数(2冊以上)購入して所蔵する(複本)傾向が一般化してからは、図書館への風当たりが強まっている。 図書館は書籍売上のピークを下げるかもしれないが、裾野を嵩上げしている。だから私個人は図書館に悪い感情は持っていない 図書館は、図書館に収蔵されることによって購入を放棄されるタイプの著者にはマイナスだが、図書館で読んだ読者の多くが著書の購入者に変ずるタイプの著者には恩恵をもたらしている。だから私は図書館には感謝こそすれ、恨みはまったくない 人が本を読むという営為がそもそもきれいごとを含んでいるのであって、活字を読むことで知識を得るとか、自分が向上するとかいった幻想なり思い込みなり信仰心なりがなくなったら、書籍は滅亡するほかにどうしようもないものなのだ
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「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その1)(検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか、株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか、米国GEとP&Gの対応姿勢の違い) [企業経営]

今日は、「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その1)(検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか、株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか、米国GEとP&Gの対応姿勢の違い) を取上げよう。

先ずは、10月19日付け東洋経済オンライン「検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか アクティビストに買われた企業の株価は?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・知らぬ間に株を買い集めて、気づけば保有比率は2ケタ以上。大株主として、会社側に「配当など株主還元の強化」「取締役の派遣」「不採算事業の売却、事業分割」などさまざまな要求を行う――。一般的な「物言う株主」(アクティビスト)のイメージはそんなものだろうか。
▽復活する「物言う株主」たち
・2015年から上場会社にコーポレートガバナンス・コードが適用されたことを機に、日本でも株主の権利が重要視されてきている。過剰な資産の貯め込みを戒め、株主価値を重視する動きも強まり、「ROE経営」という言葉も定着しつつある。
・個人投資家にとって、まとまった株式を確保することは難しく、会社側に働きかけをするのは難しい。一方で、アクティビストはファンドを組成し、資本の論理を駆使して利益を得る。その内容は冒頭のように経営陣との対話要求から株主還元の拡大、株主提案による取締役の派遣や事業売却までさまざまだ。
・日本でも、2000年代前半から中盤に掛けて村上世彰氏が立ち上げた、村上ファンドや米国のスティール・パートナーズなどのアクティビストが東京スタイル(現TSIホールディングス)やニッポン放送(現フジ・メディアHD)、サッポロHDなどに投資し、活発に活動していた時期があった。
・しかし、2006年のインサイダー事件で村上ファンドが解散に追いこまれ、スティール・パートナーズも敵対的TOBとその防衛策をめぐって行ったブルドッグソースとの訴訟で敗訴。それにリーマンショックによる市場の冷え込みが追い打ちをかけ、多くのファンドが撤退していった。
・ところが近年、再びアクティビストの活動が活発化している。2015年6月に村上世彰氏は娘・絢氏とともに黒田電気に対し株主提案を行い、世彰氏を含む4名の取締役就任を求めた。また、2016年6月には旧村上ファンド出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(エフィッシモ)が川崎汽船株の1/3を取得したことも話題となった。
・アクティビストの要求によって株価の上昇や還元の拡大が起きれば個人投資家もその恩恵を享受できる可能性がある。アクティビストが株式を保有していることを知ることができるのは株式保有割合が5%を超え、大量保有報告書が提出されてから。その時点から現在までどの程度株価が上昇したのかを検証してみた。
▽平均上昇率79.7%!
・主要なアクティビストが過去に大量保有報告書を提出しており、現在も保有している銘柄から、5銘柄ずつ無作為に抽出したものだ。 なお、損切りや利益確定で現在は保有していない銘柄は対象外で、保有期間中も株価変動に応じてトレードをしている場合がある。そのため、この騰落率は必ずしもファンドの損益とは一致しない。
・現在、アクティビストのうち、エフィッシモとストラテジックキャピタル、レノは旧村上ファンドのメンバーが立ち上げたファンドだ。特に、レノは村上世彰氏が直接影響力を及ぼしているファンドだ。一方でタイヨウ・ファンドは10年以上前から日本で活動しており、2014年にはローランドのMBOにも参画。経営陣と対話を重視する「ゲスト株主」を掲げる。
・全体の騰落率の平均は79.7%。ファンド別に見ると、騰落率に差はあるものの、どのファンドも平均2ケタ以上の上昇率だ。もっとも上昇したのはMCJで、株価は8倍以上になった。20銘柄中株価が倍増したのは5銘柄だ。 報告義務が発生した日で分類をすると、2012年までに義務が発生した銘柄の平均上昇率は196.6%と極めて高い。2013年以降の銘柄の平均上昇率は29.7%だ。これは、投資を開始して間もない銘柄ではアクティビスト活動の成果が出づらいこと、上昇し続けている銘柄はホールドし続けられやすいことに加え、アベノミクスによる株価上昇の恩恵を受けられたかどうかが反映されていると見られる。
・相場全体の上昇による影響を補正するため、東証株価指数比較(TOPIX)との比較も行った結果、20銘柄のうち11銘柄がTOPIX騰落率を上回った。TOPIX騰落率の平均は20.1%で、アクティビスト銘柄の騰落率が大きく上回る結果となった。
・また、アクティビストの株式保有は株主還元拡大の圧力となる。アコーディアゴルフは2014年にレノからの要求で200億円以上の株主還元を発表し、9割という配当性向も掲げている。また、宝印刷もストラテジックキャピタルキャピタルの大量保有発覚後、配当を大きく引き上げた。直近では、黒田電気が2016年3月期に年間の1株配当を前期比2倍以上にしている。
・2016年に入ってから冴えない相場環境の中、アクティビストの突破力に乗ってみるのも一つの手かもしれない。
http://toyokeizai.net/articles/-/140798

次に、経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏が10月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽機関投資家は投資先企業にどう関わるべきか
・近年、年金積立金などの運用の世界では、資産運用の在り方に関する「ESG」「コーポレート・ガバナンス・コード」、「スチュワードシップコード」「エンゲージメント」「議決権行使」といった言葉が頻繁に登場する。 たとえばESGとは、アセットマネージャーャー(運用会社)、アセットオーナー(年金基金など運用会社に運用を任せるスポンサー)ともに投資先企業の経営をチェックし、議決権行使を適切に行うことで経営者にプレッシャーをかけ、投資先企業のE(環境)・S(社会的価値)・G(ガバナンス)を改善することが、企業の長期的な成長、引いては株式のリターンを改善しうるのではないかという考え方だ。 そこから派生した「ESG投資」などと称するものは、環境や社会的価値などに反するような企業への投資を忌避するというものだ。
・いずれにしても、株主、あるいは潜在的株主である投資家が、投資先企業の経営を望ましい方向に導くことで、投資のリターンを高めたり、社会的に望ましい行動を選択させたりすることができるのではないかという考えだ。
・こうした影響力の行使が、どの程度有効なのか定かではない。だとしても、株主として、あるいは投資家として、市場や社会に参加しておきながら、企業の在り方に対して何も働きかけないのは「無責任ではないか」と言われると、何かしなければならないような気になる(世間体を気にする気の弱い人では、反論が難しかろう)。 日本でもこうした議論が目につくようになった。さて、どう考えたらいいものだろうか。
▽スポンサーと運用会社の事情
・少々、下世話な話になって恐縮だが、株式運用の大手プレーヤーである年金基金などのスポンサー(アセットオーナー)と、資金の運用を請け負う運用会社(アセットマネージャー)の事情を考えてみよう。 スポンサーは、その資金規模が大きく、同時に運用の意思決定において合理的であるほど、いわゆるインデックス運用を中心とする「パッシブ運用」(ベンチマークと同じパフォーマンスを目指す手数料の安い運用)への委託が多くなる傾向がある。加えて、アクティブ運用に委託しても、数多くのアクティブ運用者に資金運用を委託した場合、それらを合計するとインデックス運用に近づく傾向がある。
・特に運用資金が大きな公的年金のようなスポンサーは、自らの運用資金のうち、国内株式で運用している資産状況を見ると、ベンチマークから大きく離れることができないポートフォリオになっていて、実質的に大きくは身動きが取れないのが現実だ。
・こうなると、国内株式ポートフォリオのリターンを改善するためには、投資先企業の経営を株主にとって好ましいものに改善させるしかない。そのために、投資先企業に対して、株主としての影響力を少しでも行使できないかという発想が生まれた。 しかし、年金基金のようなスポンサーは、個々の投資先に関わるほどの人的リソースを持っていないし、公的年金などの場合は民間企業の経営に直接には関わらないのが建前である。
・そこで運用会社に対し、株主利益の立場からの議決権行使を促す動きが始まったわけだが、(1)判断の原則を示して運用会社に議決権行使や投資先企業との対話を促す、加えて(2)個別の議決権行使について事後チェックする、(3)スポンサー自身も企業と対話する、といった試みが順次行われるようになってきた。
・他方、運用会社の側にして見れば、運用手数料の高いアクティブ運用が、手数料の安いパッシブ運用に傾向として勝ちにくいことが世間や顧客に知れ渡り、特に運用資金額の大きなスポンサーの運用資金が、パッシブ運用に流れる傾向があった。そのため、一つには「ESG」を強調した運用商品が、手数料的にはインデックス運用よりも“まし”なのではないかというビジネスの可能性に着目するようになった。
・少し前までは、「SRI」(社会的責任投資)と呼んでいたような運用商品や、最近は「ESG運用」と呼ぶようになった運用を、例によって「欧米では広がりを見せている」と言って売るようになっている。
・一方、投資先企業に対する議決権行使を個別に検討することや、株主として経営者と対話することについて、一部の会社を除くともともと気乗りしないし、「形だけやっているふり」をしておけばいいというのが本音の運用会社が多かったが、スポンサーからの要求の高まりに応えるビジネス上の必要性から、徐々にこれらに力を入れざるを得なくなってきている。 また、不祥事を起こした企業や、敵対的な買収が問題になっている企業の株主総会で、機関投資家がどのように議決権行使するかが注目されるケースが増えてきたことも影響した。
・ところで、大手運用会社では、数千ある投資先企業について株主総会の議案を検討し、時には経営者に働きかけるといった「建前」を、「本気で」実行しようとすると人手もお金もかかる。しかし、もともと「これまでも投資家としてベストを尽くしてきました」という建前もあり、運用会社同志の競争の現実もあって、「議決権行使を熱心にやります」「投資先の成長のために経営者に働きかけます」といった行動をサービスとして提供することを理由に、運用手数料を値上げできたという話は今のところ耳にしない。
・つまり、運用会社は増えつつある手間を、ビジネス上の理由から我慢している段階にあるように見える。  こうした状況に対応したビジネスとして、議決権行使について機関投資家にアドバイスするサービスを営む会社が登場しており、こうした会社のアドバイスに従って議決権を行使していますという運用会社もある。
・こうした現状に対する評価は複数あり得るように思う。たとえば、以下のような意見があり得る。
 +機関投資家の保有株が、企業経営者にとって常に「口を出さない与党票」であるようなかつてのような状況よりは、企業の経営者にプレッシャーがかかるのはいいことだ。何もやらないよりはいい。
 +理想にはほど遠い。アセットオーナー(スポンサー)、アセットマネージャーャー(運用会社)ともに、建前を積み重ねた“おままごと”のような現状を打破して、もっと積極的に株主として行動すべきだ。
 +実質的な効果が上がっているようには見えない。余計な手間とコスト、あるいは運用への制約(ESG運用の場合)が生じているだけなので、やめた方がいいのではないか。
・こうした意見について、読者はどのように思われるだろうか。以下、いくつかの論点を拾ってみよう。
▽論点1 「売り」と「反対票」のどちらが強力か
・そもそも素朴な疑問がある。企業に収益を上げさせることが目的なのか、社会的に正しく行動させることが目的なのか、いずれの目的であるとしても、企業に対する影響力は、(A)「正しく行動しないと株式を売るぞ」というプレッシャーをかけることが有効なのか(例えばESG運用)、逆に(B)「株式を持って議決権行使するぞ」(例えば取締役の選任議案などに反対する)というプレッシャーをかけることが有効なのか、どちらなのだろうか。
・直感的には、全てではないとしても、自分の報酬がしばしば株価に大きく連動する米国の経営者には(A)が有効だろうし、世間体を気にして株主総会を無事に乗り切ることが大切な日本の経営者には(B)が有効な気がする。
・筆者の個人的な意見を言うと、(A)はリスクと期待リターンの観点から最適なポートフォリオを歪める可能性があり、(B)は日本の経営者が結構気にしてくれそうなので、日本の株式に投資するアセットオーナーは、運用手数料の安いインデックス運用で株式をまんべんなく保有しつつ(B)のアプローチに訴える方が、投資収益目的でも、社会正義目的でも、効果的であるように思える。
・例えば「悪い企業」には、政府と消費者が罰を下せば株価は下がるだろうが、機関投資家は下がったところをさらに売り叩くよりは、株主として例えば経営者を更迭するなど、プレッシャーをかけるといいのではないか。
▽論点2 エンゲージメントつきで手数料プラスの運用を採用するか
・アセットオーナーの側で、真に判断を迫られるのは、例えば(A)議決権行使や企業との対話(エンゲージメント)を積極的に行うけれど少し運用手数料が高いインデックス運用と、(B)これらを手抜きする(アドバイス会社の助言通りに議決権行使するというのは「準手抜き」と言ってよかろう)代わりに運用手数料が安いインデックス運用と、二つの選択肢が生じたときにどちらを選ぶかだ。
・アセットオーナーの義務(専門家として最善の運用を行う)を厳密に解釈するなら、(B)を選んで、(A)を選んでくれた資金の効果にフリーライドしつつ、安い運用手数料を享受するのが正解だ。
・しかし、それでは社会的な役割負担として不十分だという議論もあり得る。この場合、年金加入者などさらに一段上のアセットオーナーの同意が必要に思えるが(代議員会などで議決するのだろう)、あえて(A)を選び、他のアセットオーナーにも同調を呼びかけるような「運動」をしてもいいかもしれない。
・思考実験上、このような(A)と(B)を設例したが、アセットオーナーがアセットマネージャーに投資先への積極的なエンゲージメントを求めるなら、最終的にはその費用を自分たちが負担するような形になるだろう。つまりは、アセットオーナーたちは、現在、すでにこの問いかけを受けていると考えるべきである。
▽論点3 インデックス運用者の寡占
・先に、アセットオーナーは、アセットマネージャーに対して議決権行使や、投資先企業との対話を任せている実態をご説明した。また、公募の投資信託のように、不特定多数のアセットオーナーの資金で保有されている株式や、日銀が大量に保有するETF(上場型投資信託)の議決権行使なども、実質的に運用会社に委ねられている。
・さて、こうした状況で、少数の運用会社が大きなシェアを取ることになると、彼らの行動が企業経営に大きな影響力を持つようになる。 特に、インデックス運用にあっては、ETFも含めて同一指数に連動する運用商品は、競争力のある一つ、もしくは二つのファンドに資金が集中する傾向が顕著だ。例えば、米国では、ブラックロック、ヴァンガード、ステートストリートの3社がインデックス運用資金の大半を握っており、寡占化が進んでいる。インデックス運用の資金は今後も増えることが予想されるので、株式保有の寡占化はさらに進むことだろう。
・日本でも、こうした寡占化が進む可能性はある。判断は最終的に運用会社ごとに決まるものとなろうが、行動は透明化して、個人投資家も含むアセットオーナーにも分かりやすいものであるべきだろう(注:個別の議決権行使を公開することは、運用の制約になるので良くない、という異論も存在する)。
▽論点4 アセットオーナーの責任
・投資信託に投資する個人投資家の場合、投資先企業へのエンゲージメントは運用会社に任せざるを得ないが、年金基金、特に公的年金のようなアセットオーナーの場合、例えば議決権行使について「アセットマネージャーに任せているので、個別企業の経営には介入していません」という建前と、「我々は運用会社の議決権行使について、個々にその適切性を、責任を持ってチェックしている」という別の建前とを使い分けているのが現状なのだが、これら二つの建前はよく考えてみるまでもなく相互に矛盾している。
・顧客の立場から運用会社に対して、事後的にではあっても個々のケースについて判断するというなら、運用会社はスポンサーの意向を忖度するはずであり、アセットオーナーが個々の企業の経営に影響を与えていないというのは嘘だ。他方、議決権行使は運用会社の採否に影響しないし、その判断の自由は運用会社にあると言うのであれば、それは、個々の案件の適切性に対して責任を持っているとは言い難い。
・この問題は、特に公的年金にあって本来深刻なものだが、今のところ表立っては、突き詰めて問題にしないことにしているように見える。 もともとは、公的年金でも国内株式に投資するという制度設計の建て付けの悪さに問題があると筆者は考えているのだが、この問題もそろそろスッキリ整理すべき時期にきているのかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/146073

第三に、闇株新聞が10月17日付けで掲載した「絶好調の米国株式市場で「ちょっと気になる」ニュース」を紹介しよう。
・CEOが交代したばかりのゼネラル・エレクトリック(以下、GE)は10月9日、トライアン・ファンド・マネジメント(以下、トライアン)の最高投資責任者(CIO)であるエド・ガーデン氏が同日付けで取締役に就任したと発表しました。 また日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(以下、P&G)は10月10日に株主総会を開催し、同じトライアンを主宰するネルソン・ペルツ氏が株主提案していた同氏の取締役就任を否決したと発表しました。
・ここでトライアンとは2005年にこのネルソン・ペルツ氏、エド・ガーデン氏らが立ち上げた投資ファンドで、運用資産は100億ドル(1兆1000億円)を超えています。米国でも最大級のアクティビスト(物言う株主)とされており、かなりの大企業でも果敢に投資した上で、大胆な事業再編案やリストラ案を提案して株価上昇を狙う投資手法となります。
・そのトライアンが、GEには取締役を送りこむことに成功し、P&Gには失敗したことになります。逆に言えばGEはトライアンの要求を受け入れ、P&Gは拒絶したことになります。
・トライアンは2015年からGEに投資しており、合計25億ドル(2800億円)を投入してGEの約1%を保有しています。しかしGEの株価は年初から27%も下落しており、トライアンの持ち株も含み損となっています。
・GEの新CEOであるフラナリー氏は、このままでは株主である機関投資家がかなりトライアンに賛同して今後の経営がやりにくくなると考え、早めに要求を受け入れたはずです。また今後もトライアンの提言や要求を、ある程度は受け入れた経営となるはずです。
・一方でトライアンは本年に入ってからP&Gを大量に買い増し、合計35億ドル(3900億円)を投入してP&Gの約1.5%を保有しています。P&Gの株価は年初から5%上昇していますが、同期間におけるS&P500の12%上昇、同業・ユニリーバの29%上昇と比べれば「かなり」見劣りします。
・P&Gは株主総会における委任状争奪となり、P&Gの合計4割を保有する機関投資家や大手株主アドバイザーがトライアンを支持するなど拮抗していたはずですが、結果は否決でした。 トライアンは早速、独立した機関による票数確認を要求しています。また今回の委任状争奪を巡るキャンペーンに、P&Gとトライアン双方が合計で6000万ドル(67億円)を費やしたそうです。
・またトライアンのこれまでのアクティビストとしての活動は、ハインツ(ケチャップで有名)、ペプシコ、BNYメロン(大手の銀行持ち株会社です)、デュポンなどに投資して、同じような提案・要求を繰り返しています。BNYメロンには取締役1名を送り込みました。
・さてここからが本題です。 確かにトライアンはGEに25億ドル(2800億円)、P&Gに35億ドル(3900億円)と、巨額資金をつぎ込んでいますが、対象が大企業であるためそれぞれ1%、1.5%の株式を保有しているだけです。 それにも関わらずGEは委任状争奪の前に要求を受け入れ、P&Gは株主総会の委任状争奪で(今のところ)拮抗しているところまで漕ぎつけました。
・アクティビストの提案・要求とは、突き詰めれば投資している企業の株価を「手っ取り早く」上昇させるためであり、その企業の長期展望はあまり気にしないものです。 しかも同じように目先の株価上昇を求める機関投資家が比較的簡単に賛同するため、自らはそれほど大量の株式を保有する必要はありません。
・ということはアクティビストを含む株主が、比較的簡単に上場企業に提案・要求を受け入れさせられるようになり、(今でもその傾向がありますが)ますます上場企業は目先の業績や株価を重視する経営となってしまいます。
・つまり上昇を続ける米国株式市場では、今後ますます「将来の株価上昇まで先取りする」ことになりそうです。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2105.html

第一の記事で、 『主要なアクティビストが過去に大量保有報告書を提出しており、現在も保有している銘柄から、5銘柄ずつ無作為に抽出したものだ・・・全体の騰落率の平均は79.7%』、 『20銘柄のうち11銘柄がTOPIX騰落率を上回った。TOPIX騰落率の平均は20.1%で、アクティビスト銘柄の騰落率が大きく上回る結果となった』、と予想以上に高いようだ。そうであれば、 『アクティビストの突破力に乗ってみるのも一つの手かもしれない』。
第二の記事で、 『運用会社は増えつつある手間を、ビジネス上の理由から我慢している段階にあるように見える。 こうした状況に対応したビジネスとして、議決権行使について機関投資家にアドバイスするサービスを営む会社が登場しており、こうした会社のアドバイスに従って議決権を行使していますという運用会社もある』、というのは、個々の機関投資家が議案を調査するより、アドバイスサービスを営む会社に任せた方が効率的だろう。  『年金基金、特に公的年金のようなアセットオーナーの場合、例えば議決権行使について「アセットマネージャーに任せているので、個別企業の経営には介入していません」という建前と、「我々は運用会社の議決権行使について、個々にその適切性を、責任を持ってチェックしている」という別の建前とを使い分けているのが現状なのだが、これら二つの建前はよく考えてみるまでもなく相互に矛盾している』、との指摘は本質的で、 『そろそろスッキリ整理すべき時期にきているのかもしれない』、というのはその通りだ。
第三の記事で、 『アクティビストを含む株主が、比較的簡単に上場企業に提案・要求を受け入れさせられるようになり、(今でもその傾向がありますが)ますます上場企業は目先の業績や株価を重視する経営となってしまいます』、と企業経営の短期志向がさらに強まる方向にあるというのは、米国だけでなく日本でも進むとすれば、困ったことだ。
タグ:物言う株主 アクティビスト・ファンド その1)(検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか、株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか、米国GEとP&Gの対応姿勢の違い) 東洋経済オンライン 「検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか アクティビストに買われた企業の株価は?」 復活する「物言う株主」たち ・日本でも、2000年代前半から中盤に掛けて村上世彰氏が立ち上げた、村上ファンドや米国のスティール・パートナーズなどのアクティビストが東京スタイル(現TSIホールディングス)やニッポン放送(現フジ・メディアHD)、サッポロHDなどに投資し、活発に活動していた時期があった 2006年のインサイダー事件で村上ファンドが解散に追いこまれ、スティール・パートナーズも敵対的TOBとその防衛策をめぐって行ったブルドッグソースとの訴訟で敗訴。それにリーマンショックによる市場の冷え込みが追い打ちをかけ、多くのファンドが撤退 近年、再びアクティビストの活動が活発化 黒田電気 川崎汽船 大量保有報告書が提出されてから。その時点から現在までどの程度株価が上昇したのかを検証 全体の騰落率の平均は79.7% 東証株価指数比較(TOPIX)との比較も行った結果、20銘柄のうち11銘柄がTOPIX騰落率を上回った。TOPIX騰落率の平均は20.1%で、アクティビスト銘柄の騰落率が大きく上回る結果 アクティビストの突破力に乗ってみるのも一つの手かもしれない 山崎 元 ダイヤモンド・オンライン 株主は「もの言う」ことでリターンを向上させられるか ESG コーポレート・ガバナンス・コード スチュワードシップコード エンゲージメント 議決権行使 アセットマネージャーャー アセットオーナー 投資先企業の経営をチェックし、議決権行使を適切に行うことで経営者にプレッシャーをかけ、投資先企業のE(環境)・S(社会的価値)・G(ガバナンス)を改善することが、企業の長期的な成長、引いては株式のリターンを改善しうるのではないかという考え方だ 資金規模が大きく、同時に運用の意思決定において合理的であるほど、いわゆるインデックス運用を中心とする「パッシブ運用」(ベンチマークと同じパフォーマンスを目指す手数料の安い運用)への委託が多くなる傾向がある アクティブ運用に委託しても、数多くのアクティブ運用者に資金運用を委託した場合、それらを合計するとインデックス運用に近づく傾向 運用資金が大きな公的年金のようなスポンサーは、自らの運用資金のうち、国内株式で運用している資産状況を見ると、ベンチマークから大きく離れることができないポートフォリオになっていて、実質的に大きくは身動きが取れないのが現実 国内株式ポートフォリオのリターンを改善するためには、投資先企業の経営を株主にとって好ましいものに改善させるしかない。そのために、投資先企業に対して、株主としての影響力を少しでも行使できないかという発想が生まれた 年金基金のようなスポンサーは、個々の投資先に関わるほどの人的リソースを持っていないし、公的年金などの場合は民間企業の経営に直接には関わらないのが建前 運用会社に対し、株主利益の立場からの議決権行使を促す動きが始まった 用資金額の大きなスポンサーの運用資金が、パッシブ運用に流れる傾向があった 「ESG」を強調した運用商品が、手数料的にはインデックス運用よりも“まし”なのではないかというビジネスの可能性に着目 運用会社は増えつつある手間を、ビジネス上の理由から我慢している段階にあるように見える こうした状況に対応したビジネスとして、議決権行使について機関投資家にアドバイスするサービスを営む会社が登場しており、こうした会社のアドバイスに従って議決権を行使していますという運用会社もある 「売り」と「反対票」のどちらが強力か 日本の株式に投資するアセットオーナーは、運用手数料の安いインデックス運用で株式をまんべんなく保有しつつ(B)のアプローチに訴える方が、投資収益目的でも、社会正義目的でも、効果的であるように思える エンゲージメントつきで手数料プラスの運用を採用するか インデックス運用者の寡占 アセットオーナーの責任 年金基金、特に公的年金のようなアセットオーナーの場合、例えば議決権行使について「アセットマネージャーに任せているので、個別企業の経営には介入していません」という建前と、「我々は運用会社の議決権行使について、個々にその適切性を、責任を持ってチェックしている」という別の建前とを使い分けているのが現状なのだが、これら二つの建前はよく考えてみるまでもなく相互に矛盾している 闇株新聞 絶好調の米国株式市場で「ちょっと気になる」ニュース 、トライアン・ファンド・マネジメント トライアンが、GEには取締役を送りこむことに成功し、P&Gには失敗したことになります GEの新CEOであるフラナリー氏は、このままでは株主である機関投資家がかなりトライアンに賛同して今後の経営がやりにくくなると考え、早めに要求を受け入れたはずです。また今後もトライアンの提言や要求を、ある程度は受け入れた経営となるはずです P&Gは株主総会における委任状争奪となり、P&Gの合計4割を保有する機関投資家や大手株主アドバイザーがトライアンを支持するなど拮抗していたはずですが、結果は否決でした ・アクティビストの提案・要求とは、突き詰めれば投資している企業の株価を「手っ取り早く」上昇させるためであり、その企業の長期展望はあまり気にしないものです 同じように目先の株価上昇を求める機関投資家が比較的簡単に賛同するため、自らはそれほど大量の株式を保有する必要はありません アクティビストを含む株主が、比較的簡単に上場企業に提案・要求を受け入れさせられるようになり、(今でもその傾向がありますが)ますます上場企業は目先の業績や株価を重視する経営となってしまいます
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韓国(文在寅大統領)(その2)(韓国文政権が目論む日米中から「いいとこ取り」政策の限界、「懲りない韓国」に下す米国の鉄槌は「通貨」)  [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)については、5月13日に取上げたが、今日は、(その2)(韓国文政権が目論む日米中から「いいとこ取り」政策の限界、「懲りない韓国」に下す米国の鉄槌は「通貨」) である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が8月1日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「韓国文政権が目論む日米中から「いいとこ取り」政策の限界」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・韓国のムン・ジェイン(文在寅)政権は、依然として、北朝鮮との関係を対話によって改善する姿勢を取っている。これまでの北朝鮮の金正恩の態度を見ると、7月28日深夜にも大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施しており、同氏には対話の意図はまったく見られない。恐らく、対北朝鮮の関係は前には進まないだろう。
・一方、文大統領はわが国とのシャトル外交の再開に合意した。ただ、文大統領が本気でわが国との関係改善を図ろうとしているかは疑問だ。 現在、韓国の文政権は、先の朴大統領が結んだ日韓政府合意の検証を進めようとしている。中でも、慰安婦問題を再び蒸し返す意図が見られる。そうしたスタンスを見ると、同氏が本気でこの問題の解決を目指しているようには見えない。 今後の展開次第では日韓関係が冷え込む展開も考えられる。相変わらず、韓国は駄々っ子のように分かりやすい国のようだ。
▽避けられそうもない朝鮮半島情勢の混迷
・最近の韓国を見ていると、国全体で危機感を共有しているようには見えない。あるソウル在住のエコノミストは、「財閥改革を主張してきた文政権は、足元でサムスン電子の業績拡大に支えられている」と指摘していた。そうした状況を考えると、文政権がすぐに財閥依存の経済構造を改革する余裕はないだろう。
・一方、韓国政府は、国際社会での地位の向上や需要の取り込みを目指して中国との関係を強化しようとしている。ただし、それが中長期的な韓国自身の国力の引き上げにつながるかは疑問の余地がある。韓国が秋波を送る中国が重視するものは自国の利益であり、長い目で見ると、中国が韓国に対して重要なメリットを与え続けるとは考えにくい。
・韓国にとって最大のリスクの一つは北朝鮮問題であるはずだ。もし、北朝鮮の軍事的挑発を受けて米国が制裁を強化したり、何らかの軍事的対応をとるなら、朝鮮半島での有事勃発のリスクも排除できない。それは韓国の国家存亡にかかわる問題だ。
・この問題に対処するために、文政権は中国との関係強化によって事態が改善すると考えているように見える。長期の支配基盤を手に入れたい中国の習近平国家主席は、朝鮮半島情勢がさらに不安定化することを避けたい。そのため、中国は米国の強硬姿勢と距離を置き、韓国が米国のミサイル防衛システムの配備を進めることも批判してきた。
・米中の対北朝鮮政策の足並みがそろわない中、文政権は一貫して北朝鮮との対話政策を訴えてきた。背景には中国への配慮があるのかもしれない。文政権は中国との関係を強化して、経済的なメリットを受けたいのだろう。 この見方が正しければ、韓国における既存の政治・経済構造は当面、維持される可能性が高い。問題は、それは文大統領がこれまで主張してきた財閥改革などの革新=構造改革の推進に逆行することだ。
▽反日姿勢を強める韓国・文政権
・現在、北朝鮮は対話の意思をまったく示していない。それでも韓国の文政権は対話を重視するという。そのスタンスは分りにくい。対話をする意思のない北朝鮮に対して、対話を呼びかけて何か効果があるとは思えないからだ。
・7月上旬、日米韓の首脳会談では連携して北朝鮮に圧力をかけることが確認された。日韓両政府はシャトル外交の再開にも合意した。こうした結果を受けて、わが国では韓国が慰安婦問題の再交渉などを棚上げし、わが国との関係強化を念頭に置いているとの見方がある。
・一方、米国のトランプ政権が強引とも言えるスタンスで、韓国とのFTA協定の再交渉を求めている。それを考えると、韓国にとって中国はますます重要な存在となるだろう。ただし、北朝鮮との関係を考えると、韓国は、米国との関係が冷え込むなど国際社会から孤立する展開も避けたいはずだ。
・韓国としては日米との関係を土台としながら、中国との関係を少しずつ強化して、サムスンなどの韓国企業が中国市場で経済的メリットを享受できる体制を取りたいのだろう。つまり、韓国としてはすべて“いいとこ取り”をしたいというのが本音だろう。
・そう考えると、文政権がシャトル外交に同意したからと言って、今後の日韓関係が簡単に強化されると見るのは早計だ。状況によっては、韓国が反日姿勢を強め、慰安婦問題の再交渉などで国内の世論を味方につける行動に出ることは十分に考えられる。 現在、文政権は、2015年12月の日韓外相会談で合意に達した“最終的かつ不可逆的な解決”が盛り込まれた経緯を検証しようとしている。本来、国家間の合意は一方的な主張によって反故にできるものではない。最終的な合意に達した以上、遵守されなければならない。現時点で文政権に政府間の合意を遵守する意思があるとは考えづらい。
・今後の支持率にもよるが、有権者の支持をつなぎとめるためにも、文政権は慰安婦問題が未解決であると主張し、反日姿勢を強める可能性がある。それは、韓国が中国との関係を強化していくためにも都合の良い主張となるだろう。
▽アジア新興国との関係強化の重要性
・韓国が反日姿勢を強めた場合、わが国は合意内容の確認とその遵守を求めればよい。感情的になって相手を批判するのは避けるべきだ。それよりも、アジア各国との関係を強化し、自国の発言力と経済基盤の強化に注力することが重要だ。
・中国が目指すのは国際社会での発言力の強化である。中国は力の論理で各国に経済の開放を求めていくだろう。その要請に応えない国には、海洋進出などを通して圧力をかけるだろう。 本来、国際社会の利害調整を担うべき米国のトランプ大統領は、自国第一に傾倒し保護主義を重視している。この中でドイツが中国との関係強化に動いている。そうした政治のダイナミズムが、国際社会を不安定な状況に向かわせている。
・その中で、日EU経済連携協定が大枠合意に達したことは重要だ。わが国は多国間の経済連携を進め、国際社会の連携を重視する姿勢を国際社会に示すことができた。わが国は経済連携に関する議論を加速させるべきだ。政府はアジア新興国ともTPP11などに関する議論を重ね、自由貿易の促進や競争・投資に関するルールの統一を進めるべきだ。それは、対中包囲網を形成することでもある。
・国際社会での意思決定は、基本的に多数決に基づく。わが国は、経済連携に関する議論を進めつつ、賛同する国には経済支援を提供することで理解者=親日国を獲得できるだろう。わが国を中心とする経済連携の深化は、アジア新興国にとって中国への抑止力にもなるはずだ。わが国がアジア各国との経済的な関係を強化することができれば、中国との関係を重視しているドイツなどとも連携を強化することができるだろう。
・反対に、アジア各国と関係を強化できないと、わが国はアジア・極東地域の中で孤立するかもしれない。その場合、わが国の政治・経済は厳しい状況に直面することが予想される。こうしたリスクシナリオを避けるためにも、わが国は安全保障面では米国との関係を基礎としつつ、アジアを中心に各国との経済連携を進めるべきと考える。国内での構造改革や政治の安定が必要なことは言うまでもない。
http://diamond.jp/articles/-/137005

次に、10月19日付け日経ビジネスオンラインが日経新聞編集委員の鈴置 高史氏へのインタビューを掲載した「「懲りない韓国」に下す米国の鉄槌は「通貨」 日米の軍事情報を中朝に漏らす韓国」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は段落)
・「韓国の裏切り」は20年以上前から始まった。それが激しくなるたびに米国は「通貨」でお仕置きしてきたのだ。
▽すべて中国に筒抜けだ
――1997年の通貨危機の際、米国はなぜ、韓国を助けなかったのでしょうか。
鈴置:「『14年前のムーディーズ』に再び怯える文在寅」で指摘した通り、米韓関係が悪化していたからです。米国は韓国にお灸をすえるため、IMF(国際通貨基金)による救済に追い込んだのです。
――関係悪化の原因は貿易摩擦ですか?
鈴置:それもありました。でも、韓国が軍事的に米国を裏切って中国に接近したことが大きかった。 1990年代半ば、米国の国防関係者が日本政府に警告が発しました。韓国が――当時は、金泳三(キム・ヨンサム)政権(1993―1998年)でしたが、日米の軍事機密を中国に漏らしているというのです。訪日した米国防族の大物が以下のように語りました。
 +米韓が高官級の軍事協議を実施すると、その直後に韓国の情報機関のトップが極秘訪中し、江沢民主席と面談、米韓協議の内容を伝えている。
 +それを我々は黙って見ているのだが、韓国は露見したことに気づいていない。
 +今後、日本は韓国に軍事機密を漏らしてはならない。漏らせば、すべて中国に筒抜けになる。
・この話は自衛隊の第1線部隊の指揮官にも広まっていましたから「寝返った韓国に気をつけろ」との指示が下りたのかもしれません。 軍事機密を敵国に渡す、いわゆる「スパイ」は常にいます。しかし韓国の場合、個人ではなく、政府によるタレこみでした。
・2006年に聞いた話ですが、中国の人民解放軍の幹部が自衛隊幹部の前で「なぜ、韓国の軍人は頼みもしないのにどんどん機密を持ってくるのだろうか」と首を傾げたそうです。中国人も驚いていたのです。
▽卑日も中国頼み
――なぜ、金泳三大統領は中国にゴマをすったのでしょうか。
鈴置:米国一辺倒だった外交の幅を広げる狙いでした。執権開始の前年の1992年、韓国は中国と国交を回復しました。金泳三政権はこれをテコに米国や日本を牽制しようとしたのです。 久しぶりの非軍人出身の大統領でしたから「民主化」を要求してきた米国に、気兼ねする必要がなくなったこともあったでしょう。
――そういえば、江沢民主席を後見人にして日本を批判しました。
鈴置:1995年11月14日にソウルで開いた中韓首脳会談後の会見で、金泳三大統領は「日本の腐った根性を叩き直す」と発言しました。 共同会見の場ですから、江沢民主席がすぐ横に立っていました。日本に対しては文字通り、トラの威を借りて凄んで見せた。一方、江沢民主席には「中国と組んで日本を叩きます」と媚を売ったわけです。金泳三政権は韓国の「離米従中」の元祖となりました。
――しかし、軍事機密を中国に漏らすとは。
鈴置:属国意識です。金泳三政権に限らず、韓国人は基本的に中国に「媚びる」姿勢で接します。 韓国人が中国と接する様を見ると「蛇に睨まれた蛙」を思い出します。反日デモや反米デモは年中起きますが、反中デモはまずありません。韓国人にとって、中国は怖い国なのです。 恐ろしい中国に睨まれたくない。何とか歓心を買いたい・・・。そんな韓国人の心の奥深くにある感情が機密漏洩を起こすのです。
・井上靖の歴史小説『風濤』は「元」に侵攻された高麗を描きました。これを読むと、抗うことのできない地続きの巨人に対する小国の人々の精神状態がよく分かります。 強者の顔色をうかがうほか生き残る術がない、との絶望感です。島国の住人である日本人は「地続きの超大国」の圧迫感をなかなか理解できないのですが。
▽IMFに追い込む
――どんな情報が韓国経由で中国に渡ったのでしょうか。
鈴置:日本の政界では「日米が共有する潜水艦の音紋」との説が流れました。ただ実務家から、この情報の確認はとれていません。そこで記事にはせず、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(2010年11月刊)に盛り込んだのです。48―49ページです。
――いずれにせよ、米国は韓国の裏切りに怒り、通貨危機の際に助けなかったわけですね。
鈴置:「助けなかった」どころかIMFに行かせるために「追い込んだ」と言った方が正確です。IMFは米国の息がかかった組織です。その管理下に置けば自由自在に料理できる。実際、“GHQ”として振る舞ったわけです(「『14年前のムーディーズ』に再び怯える文在寅」参照)。
・旧・東京銀行で長らくアジアを担当した愛知淑徳大学の真田幸光教授の発言が興味深い。「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」で、話題が「米金融当局が日本の対韓スワップを止めた」ことに及んだ際、真田幸光教授はノータイムで以下のように語りました。 +本当に止めたのは、ペンタゴン(国防総省)、あるいはホワイトハウスかもしれません。米韓関係は相当に悪化していましたから。
・国際金融界も、韓国のIMF救済の背景には「米国に対する軍事的裏切り」があったと見ているのです。外交の相場観からも「貿易摩擦」の報復として、手術台に載せるほどの厳しいお仕置きをするとは考えにくい。
▽北の将軍も知っている
――韓国は「米国のお仕置き」に懲りたのでしょうか。
鈴置:全く懲りませんでした。左派政権が誕生すると、今度は北朝鮮に接近しました。金大中(キム・デジュン)政権(1998―2003年)と、それに続く盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003―2008年)は南北首脳会談を開いてもらう一方、北朝鮮には低姿勢で接しました。 
・金剛山観光や開城工業団地を通じ、外貨も送り続けました。北朝鮮の核武装を韓国が幇助したのです(「『14年前のムーディーズ』に再び怯える文在寅」参照)。 外貨だけではなく、軍事機密も送っていたのではないかと疑うのが韓国保守の論客、李度珩(イ・ドヒョン)氏です。
・日本語だけで出版した『韓国は消滅への道にある』(2017年9月刊)の「1章 軍事同盟の崩壊が始まる」で、興味深いエピソードを紹介しています。 2005年春、ラポルテ(Leon J. LaPorte)在韓米軍司令官の離任パーティで李度珩氏は、司令官本人から「(米韓連合司令部の)副司令官の韓国陸軍大将は素晴らしい軍人で情報を共有できた。しかしもう1人のコリアンの将軍がいて、この人も米韓軍の情報を共有していることが後になって分かった」と聞かされたのです。
・「もう1人のコリアンの将軍」とは北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記のことです。李度珩氏は以下のように嘆きました。20-21ページから要約します。 +2000年に入ったころから、北朝鮮の諜報機関は間諜を南派する必要性を感じなくなっていただろう。外部から韓国軍内部に要員を浸透させなくとも、情報を容易に入手できるようになったからだ。 +韓国の大統領の意向ひとつで、韓米連合軍の日々のトップ・シークレットも北朝鮮の最高責任者、当時は金正日国防委員長の机の上にすぐに置かれることになる。
・ラポルテ在韓米軍司令官は離任にあたり、韓国の左派政権に「北と内通するな。お見通しだぞ」と警告を発したのです。
▽機密を渡せば問題解決
――韓国に警告は届いたでしょうか。
鈴置:届かなかったようです。朴槿恵(パク・クネ)政権(2013―2017年)時代に驚くべき記事を読みました。中央日報のチェ・ヒョンギュ北京総局長が書いた「金章洙を眺める中国の相反する視覚」(2015年2月17日、韓国語版)です。 在韓米軍基地にTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)が配備される前でしたが、すでに韓国は配備を要求する米国と、反対する中国の間で板挟みになっていました。
・2015年2月、朴槿恵大統領は国防長官や青瓦台(大統領府)国家安保室長も務めた側近の金章洙(キム・ジャンス)氏を駐中大使に任命、問題の打開を図りました。チェ・ヒョンギュ総局長は金章洙氏にかける韓国政府の期待をこう、書いたのです。
 +中国が期待するのは韓国軍との協力を通じ、米国の作戦と武器体系に対する認知の強化だ。特に韓国海軍との協力を通じ、米海軍への認知度を上げようとしている。
 +韓米連合司令部の副司令官を務めた金章洙氏の経歴は米国の指揮のやり方を間接的に学ぶのに助けになる。
 +だから金章洙氏は中国の指導部が接触を望む史上初めての駐中大使になる可能性が高い。
・米国の軍事情報を渡す見返りに中国指導部に食い込み、THAAD問題を韓国に有利に解決できる、とこの人選を褒めちぎったのです。
▽裏切りの自覚なし
・チェ・ヒョンギュ総局長ほど露骨な書き方ではありませんでしたが、北京駐在の韓国記者は一斉に同じトーンで書きました。駐中韓国大使館が「米軍情報と引き換えに懸案を解決する方針」とレクチャーしたと思われます。 さらに驚いたのは、こうした記事に対し「米国との関係が悪化するぞ」と声をあげる韓国人が出なかったことです。 そもそも、国防長官経験者を駐中大使にする人事も異様です。米国はこの人事に関し、韓国に懸念を表明した模様です。
・中央日報の後任の北京総局長、イェ・ヨンジュン記者が、人事発令の1年半後に「特命全権大使 金章洙」(2016年10月4日、韓国語版)で以下のように書いています。 +金章洙駐中大使の赴任に米国が緊張したという。国防長官と青瓦台・国家安保室長を歴任した人を送ったということは、中国と安全保障戦略に関し、本格的に話し合うためではないか。もしかしたら米国抜きで朝鮮半島の未来を議論するつもりではないか、と疑ったのだ。
・しかし赴任当時、この人事を批判する記事は見当たりませんでした。李明博政権末期から韓国では「米中等距離外交こそが正しい道である」との考え方が主流になっていたからです。韓国人は自らの裏切りに全く無神経になっていたのです(「もう、韓国人の3割が『中国に鞍替え』」参照)。
▽もう、小国ではない
――なぜ、これほど堂々と同盟国を裏切るのでしょうか。
鈴置:2010年ごろから韓国人は「自分たちはもはや小国ではない」と自信を深めました。中国との軍事交流を深めても、少々、米軍の機密を漏らしても米国からは怒られないし見捨てられない、と考えたのです(「オバマが帰ると即、習近平に秋波を送った朴槿恵」参照)。 民主党政権下の日本が米国との関係を悪化させていましたから、日本に代わりアジアを代表する米国の同盟国に昇格したとも、言い出していました(「日米の『同時格下げ宣言』に慌てる韓国」参照)。
――裏切りに米国人は怒ったでしょうね。
鈴置:怒りました。ことに尊い犠牲を払いながら韓国を守ってきた軍人は怒り心頭に発しました。この頃から「米韓同盟はもう長続きしない」と日本に漏らす米国の安保専門家が一気に増えました。「防衛線を日本海まで下げる可能性が出てきた。物心両面で準備せよ」との通告です。 2010会計年度をピークに、トランプ(Donald Trump)政権発足まで国防予算は減り続けてきましたから、米国は戦線を縮小する必要に迫られていたのです。そんな時に裏切り者を守るわけにはいかないのです。
▽友軍がいない
――韓国人は「見捨てられ」に気がついたのでしょうか。
鈴置:最近になって、そうした論調が韓国紙に登場するようになりました。ただ「見捨てられ」はトランプという自国中心主義の大統領が米国に登場したから、と決めつける記事が多いのです。要は「他人が悪い」との主張です。
・典型が朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問の「韓国の安保をおもちゃにするな」(10月10日、韓国語版)です。書き出しは「大韓民国の危機がかかった北朝鮮危機の状況で、我々には友軍がいない」。ポイントを訳します。 +問題は信じていた米国である。トランプは東北アジアでは日本だけうまく扱えばよしとし、中国とは和平を維持できればよい、北朝鮮がやりたい放題しなければいいと言っているようなものだ。韓国の未来はそれらの副産物程度に考えているようだ。
――「諸悪の根源はトランプ」ということですね。
鈴置:ええ、韓国が困っているのは米国のせい、との主張です。これをトランプ大統領や米国人が読んだら、ますます怒り出したでしょう。 金大中顧問は2013年、韓国言論界の先頭に立って「米中等距離外交」を声高に主張した人なのです。自分たちの裏切りはさっぱりと忘れて「米国が悪い」と言うのですから(「保守派も『米中二股外交』を唱え始めた韓国」参照)。
▽2日で3000億円の売り
――本当に、無神経ですね。
鈴置:だから米国は時々「通貨危機」のような痛撃を食らわせる必要があるのです。 文在寅(ムン・ジェイン)政権の発足直前、アジア専門家のマイケル・グリーン(Michael Green)CSIS上級副所長は「裏切ると14年前と同じようにムーディーズが韓国の信用に疑問符を付けるよ」と警告しました(「『14年前のムーディーズ』に再び怯える文在寅」参照)。
・ところが世界が北朝鮮への制裁を強化する中、韓国は人道支援を発表するなど堂々と裏切り始めました(「怒るトランプは『米韓FTA破棄』を命じた」参照)。グリーン氏の警告を頭から無視したのです。 韓国債券市場では外国人投資家が9月26、27の2日間で3兆123億ウォン(約2985億円)の債券を売りました。8月1カ月間の市場全体の買い越し額に匹敵する金額でした。
・韓国の金融当局は「利益確定売り」と説明しました。しかし、あまりの巨額さから「北朝鮮の核問題に加え、米韓関係の悪化から資本流出が起き始めたのではないか」と市場関係者は見ました。 証券市場でも8、9月連続で外国人の売り越しが続きました。8月は2兆4170億ウォン(2395億円)、9月は1兆1020億ウォン(1092億円)です。
▽同盟強化で「格下げ」防げ
・資本逃避には朝鮮日報も懸念を表明しました。社説「国家の信用等級の下落を防げ」(9月27日、韓国語版)の結論部分を訳します。 +何よりも韓米同盟が確固たるものであることを国際社会に知らしめねばならない。(格付けが下がりかけた盧武鉉政権当時の)2003年にも、結局は韓米同盟を明確にすることで信用等級の下落を防いだのだ。
・金融に詳しい韓国人が読めば「盧武鉉政権と同様、今度も反米親北をやって米国から『通貨』で殴られる」と、暗然たる思いに陥ったことでしょう。
――韓国政府は「確固たる韓米同盟」を世界に示したのでしょうか。
鈴置:文在寅政権は反対方向に動いています。「同盟強化」どころか「有事の中立宣言」のそぶりを見せました(「『米韓同盟破棄』を青瓦台高官が語り始めた」参照)。 9月28日には大統領本人が「戦時作戦統制権を持ってこそ、北朝鮮は我々を恐れる」と、早期返還の必要性を改めて強調しました。戦時作戦統制権の返還は在韓米軍撤収につながると、保守派は強く批判しています。
▽韓国は大丈夫だ!
――文在寅政権は「通貨による揺さぶり」に対し……。 
鈴置:もちろん警戒しています。10月13日、青瓦台(大統領府)の洪長杓(ホン・ジャンピョ)経済首席秘書官は記者会見を通じ、市場の不安を抑えようとしました。 聯合ニュースの「北朝鮮核リスクあるも『経済の基礎しっかり』韓国大統領府」(10月13日、日本語版)は会見をこう報じました。
 +一部で「第2の通貨危機」発生が懸念されていることについて、(洪長杓首席秘書官は)現在の経常収支や外貨準備高の数値はアジア通貨危機が起きた1997年より良好だとし、「経済危機の可能性はないだろう」と述べた。
・青瓦台のホームページを開くと「韓国経済は大丈夫です!」との文言が目に飛び込んで来るようになりました。 このページを作らせた人は金融の知識に乏しいと思われます。信用を疑われている人が聞かれてもいないのに「自分は大丈夫だ」と言い出した時、市場は却って疑いを深めるものだからです。
▽謎の中韓スワップ
――中韓の通貨スワップが結ばれたそうですが。
鈴置:10月12日にワシントンで、李柱烈(イ・ジュヨル)韓国銀行総裁と金東兗(キム・ドンヨン)副首相兼企画財政相が「中国とスワップ延長で合意した」と記者らに語りました。 中央日報の「THAAD報復の中国が通貨スワップ延長に合意した理由は」(10月13日、日本語版)は、金東兗副首相が「11日に発効した。形式的には新規だが、延長と変わらない」と述べたと報じています。 東亜日報の「韓中スワップ延長、THAAD葛藤を解く契機となるか」(10月14日、日本語版)など韓国紙は「期間や規模は従来と同じ」と報じました。
・しかし、詳細は明らかにされず、韓国銀行のサイト(韓国語版)に何の発表文も載っていません。記者から質問を受けた中国側も「韓国に聞け」と繰り返すだけで、沈黙を守っています。 10月10日が満期の中韓スワップをなぜ、10月12日(米国東部時間)になって発表したかも訳が分かりません。何とも奇妙な「延長」です。
・市場は確報を待っています。ただ「従来と同じ」とすると、この中韓スワップは人民元ベース。韓国の通貨防衛にどれだけ寄与するかは疑問なのです。 韓国の通貨スワップ(2017年10月18日現在)(この表はリンク先参照)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/である。

韓国(文在寅大統領)については、私から見ても余りにお粗末なので、続報を控えていたが、重要な隣国であることは事実なので、再び取上げた次第である。
第一の記事で、 『韓国が反日姿勢を強めた場合、わが国は合意内容の確認とその遵守を求めればよい。感情的になって相手を批判するのは避けるべきだ。それよりも、アジア各国との関係を強化し、自国の発言力と経済基盤の強化に注力することが重要だ』、との指摘はその通りだ。ただ、安部政権がトランプの武力行使も含めた強硬路線に完全にべったりなのも、有事になった場合の日韓両国の惨状を考慮すると問題で、もう少し距離を置くべきだと思う。
第二の記事で、 『日米の軍事機密を中国に漏らしている』のは、金泳三(キム・ヨンサム)政権以来というのには、恐れ入った。その背後に、 『属国意識です。金泳三政権に限らず、韓国人は基本的に中国に「媚びる」姿勢で接します』、というのは、日本人には本当のところは理解し難いが、感覚的には分かるような気もする。 『国際金融界も、韓国のIMF救済の背景には「米国に対する軍事的裏切り」があったと見ているのです』、というのは「陰謀論」に近い見方ともいえなくもないが、否定する材料もないので、あり得るのかも知れない。 『謎の中韓スワップ』、も確かに不自然でよく分からない話だ。
このように韓国が多くの問題を抱えていることは事実だが、やはり隣国である以上、「嫌韓論」に組することなく、是々非々で付き合っていきたいものだ。
タグ:韓国 文在寅大統領 その2)(韓国文政権が目論む日米中から「いいとこ取り」政策の限界、「懲りない韓国」に下す米国の鉄槌は「通貨」) 真壁昭夫 イヤモンド・オンライン 韓国文政権が目論む日米中から「いいとこ取り」政策の限界 文大統領はわが国とのシャトル外交の再開に合意 先の朴大統領が結んだ日韓政府合意の検証を進めようとしている。中でも、慰安婦問題を再び蒸し返す意図が見られる 今後の展開次第では日韓関係が冷え込む展開も考えられる 朝鮮半島での有事勃発のリスク 国との関係強化によって事態が改善すると考えているように見える 文政権は中国との関係を強化して、経済的なメリットを受けたいのだろう 反日姿勢を強める韓国・文政権 トランプ政権 韓国とのFTA協定の再交渉 韓国としてはすべて“いいとこ取り”をしたいというのが本音 韓国としては日米との関係を土台としながら、中国との関係を少しずつ強化して、サムスンなどの韓国企業が中国市場で経済的メリットを享受できる体制を取りたいのだろう アジア新興国との関係強化の重要性 日経ビジネスオンライン 鈴置 高史 「「懲りない韓国」に下す米国の鉄槌は「通貨」 日米の軍事情報を中朝に漏らす韓国」 「韓国の裏切り」は20年以上前から始まった 米国は韓国にお灸をすえるため、IMF(国際通貨基金)による救済に追い込んだのです 韓国が軍事的に米国を裏切って中国に接近したことが大きかった 金泳三(キム・ヨンサム)政権(1993―1998年)でしたが、日米の軍事機密を中国に漏らしているというのです 卑日も中国頼み 軍事機密を中国に漏らすとは 属国意識です。金泳三政権に限らず、韓国人は基本的に中国に「媚びる」姿勢で接します 日米が共有する潜水艦の音紋」との説 助けなかった」どころかIMFに行かせるために「追い込んだ」と言った方が正確です 米金融当局が日本の対韓スワップを止めた 裏切りの自覚なし 韓国人は自らの裏切りに全く無神経になっていたのです 米韓同盟はもう長続きしない 米国の安保専門家 防衛線を日本海まで下げる可能性が出てきた。物心両面で準備せよ」との通告 韓国債券市場では外国人投資家が9月26、27の2日間で3兆123億ウォン(約2985億円)の債券を売りました 北朝鮮の核問題に加え、米韓関係の悪化から資本流出が起き始めたのではないか」と市場関係者は見ました 証券市場でも8、9月連続で外国人の売り越しが続きました 現在の経常収支や外貨準備高の数値はアジア通貨危機が起きた1997年より良好だとし、「経済危機の可能性はないだろう 謎の中韓スワップ
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高齢化社会(その5)(高齢者ほど運転への自信強まる ドライバー意識調査の怖い結果、「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解、西室氏の「老害」だ と責任逃れを図ってない?) [社会]

高齢化社会については、7月29日に取上げたが、今日は、(その5)(高齢者ほど運転への自信強まる ドライバー意識調査の怖い結果、「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解、西室氏の「老害」だ と責任逃れを図ってない?) である。

先ずは、7月8日付けダイヤモンド・オンライン「高齢者ほど運転への自信強まる、ドライバー意識調査の怖い結果」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽夏本番でドライブ真っ盛り ドライバーの96%が「ヒヤッ」を体験
・7月に入り、全国的に暑い日が続き、もうすでに夏本番といった様相の日本列島。すでに夏休みの計画を立てつつある人も多いのではないか。 おじいちゃん、おばあちゃんに孫の顔を見せるために帰省したり、友達と旅行に行ったり。そんなとき、車で長距離を移動する人もいることだろう。しかし、長期休暇の長距離ドライブ、安全にできる自信はあるだろうか。
・コインパーキング『タイムズ』などを展開するパーク24株式会社が自社サービスの会員を対象に実施した調査では、「クルマを運転中、ヒヤッとしたことはありますか」という質問に、96%の人が「ある」と回答した。  「どんなときにヒヤッとしたか」については、「急な飛び出し」が71%、「前のクルマの急ブレーキ」が42%、そして、「眠気」が31%となっている。
・皆さんはどうだろう。私としては「前の車の急ブレーキ」は非常によくわかる。あとは、タクシーの乱暴な運転や無理な割り込みにはヒヤヒヤさせられた。特に大学時代を過ごした京都は、「タクシーは無茶なことしはるさかい」的な共通認識がある土地柄だったし。 人の急な飛び出しの経験はないが、ネコの飛び出しなら2回。細い道であまりスピードを出していなかったし、後続もなかったので、助手席に積んでいた買い物袋から豪快に色々飛び出たくらいの被害しかなかったが。
▽初心者とベテランで異なる運転中の「ヒヤッ」傾向
・最近、「ブレーキとアクセルを踏み間違えてコンビニに突っ込んだ」というニュースがしばしば報道される。踏み間違えによる「ヒヤッ」を体験したのは、免許取得から1年未満の人で、なんと21%に上る。かなりの割合だ。停車中の若葉マークの車の前には絶対に立ちたくない。 踏み間違えは免許取得から年数が経つごとに減少していくが、それとは対象的なのが、眠気でヒヤッとした人。免許取得から1年未満の人は、他の人と比べると随分少ない(少ないと言っても15%。6人に1人くらいだから、それなりの数ではある)。注目すべきは、取得から5年以上経ったベテランドライバーたちは、3分の1が眠気での「ヒヤッ」を体験しているということ。
・長距離・長時間のドライブに慣れてきて、「どこまでもいけるぜ」と自信過剰になり始めたドライバーが陥る罠が眠気、ということなのだろう。 私もかなり運転に慣れてきた頃に、一番の「ヒヤッ」を体験した。冬の山梨を運転していたとき、吹雪に遭遇したのだ。視界は遮られ、スピード感覚がなくなり、泣きそうになった。泣きそうになりながら道の駅までたどり着き、車のなかで布団にくるまって寝た。 大学の頃からボロボロの旧式ハイエースに乗っているが、そんな泣きそうなときや、眠気に襲われたときはそのまま眠れる、いい車である。ボロボロだし、燃費は最悪だが。
▽高齢者になればなるほど運転に自信が出る?
・「踏み間違えてコンビニに突っ込む」のと同じくらい、ニュースを騒がせるのが高齢者の自動車事故。「自分で何歳まで運転できると思いますか」という質問に対して最も多かったのが「66歳~70歳」という回答だった。 しかし、同じ質問を年代別で見てみると、非常に興味深い結果が明らかになる。回答者の年代が上がるごとに、「高齢になっても自分は運転できる」という自信が強くなっているのだ。
・60代以上では、「66歳~70歳」は19%に減少し、「71歳~75歳」が42%と最多。「76歳~80歳」も23%だ。きっと「いま運転できてるし、若い頃に考えてたよりは、全然平気だな」と思っているのだろう。しかし、それって、ちょっと怖くないか。
・最後に、認知症の情報サイト『認知症ONLINE』を運営する株式会社ウェルクスが、認知症の介護経験者100名を対象にした調査を見てみる。「認知症兆候のあるご家族の運転を止めたことがありますか?」という質問に、74.1%が「ある」と回答した。 ただ、止めようとしても、「本人が納得せず中止できない」という経験をした人が28.9%、「基本的に中止できたが、時々運転してしまう」も5.3%という結果だった。
・「運転に年齢制限を」という声がにわかに高まりつつあるが、地域によっては、車が運転できないとまともに日常生活を送れないところもあるのは事実。高齢者が車を取り上げられるのが早いか、自動運転の普及が早いか――。
http://diamond.jp/articles/-/134608

次に、医師/医学博士の平松 類氏が10月9日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解 「老人の困った行動」はボケが原因と限らない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・人間、年を取ると、周りを困らせる行動をとることが増えます。「約束を完全に忘れてしまっている」 「赤信号でも平気で渡る」 「高額商品をいきなり買ってしまう」など、その典型です。高齢者がこうなってしまうのは「認知症でボケてきたから」 「カタブツで頑固になっているから」と思われる方も多いでしょう。
・『老人の取扱説明書』の著者である医師の平松類氏は、こういった行動は、ボケや性格によるものというよりも、老化による体の変化に原因があると言います。現在も診療の現場に立ち、延べ10万人以上の高齢者と接してきた平松氏が、その根本的な原因と、どう解決するべきなのか、どう予防するべきかを、医学的な観点を交えて解説します。
▽老化の原因を知れば、解決策も見えてくる
・「老化による体の変化」について丁寧に考えたことはありますか? それを知ることは、非常に重要です。知ってそれに対する対処・対応を間違えなければ、周囲は高齢者が困った行動を起こしてもイライラしなくなりますし、冷静に対処できます。高齢者自身は、思うように体が動かなかったり、周囲と上手にやり取りできなかったりすることに卑屈になることも減ります。
・本記事では、この「老化による体の変化」を踏まえて、周囲がすべきこと、高齢者本人がすべきことを、医学的背景に沿ってわかりやすく具体的に示します。理想論ではなく、現実的で手軽にできる方法です。
・高齢者は信号が赤になっても、平気でゆっくりと渡る。よく目にする光景の1つです。どうしてそんな行動をとってしまうのでしょうか? こう考える人が多いと思います。「車のほうが止まってくれると、老人が思っているから」 「渡り切れるという自信を、老人が持ってしまっているから」。でもそんな高齢者は、非常に少数派。先ほども触れたとおり「老化による体の変化」が原因なのです。
・そもそも日本の信号機は赤になるのがとても早く、特におばあちゃんには渡り切れないように作られています。歩行者が1秒に1m歩いた後に赤になる設定になっているのですが、85歳を超えると男性は0.7m、女性は0.6mしか歩けないのです。
・また、高齢者は信号機をもともとよく見ていません。それは信号無視ではなく、「瞼(まぶた)が下がってくるから、信号機が設置された上のほうがよく見えない」 「転倒すると寝たきりにもなりかねず怖いので、下を見て歩かないと不安」 「腰が曲がってしまうから、信号機はよく見上げないと見えない」など、多くの老化による体の変化が関係してしまいます。
・そういった事情を知っていれば、周囲も「歩くのが遅いなあ」 「なんで信号無視してるんだ?」といらだつことも減るでしょう。 こうならないための解決策としては、瞼の下がり防止には「目を強くつぶってから強く開けるという運動を、1日10回程度行う」 「メークを落とす際は、瞼を強くこすりすぎない」、転倒防止をして歩行速度を速めるには「シルバーカーを使う」 「簡単なスクワットで足腰を鍛える」などが解決策の一例となります。いずれも、そんなに難しい方法ではありません。 周囲は、高齢者が信号の近くにいる際には、手助けしたり、車の運転中はスピードを落とすなどができます。
▽「約束を忘れている」のではない
・約束したのに「そんなこと言ったっけ?」と言って、完全に約束を忘れてしまっていることも、高齢者の困った行動の典型でしょう。 もちろん完全に忘れてしまっていることもありますが、これは高齢者に限らず、若い人にもよくあることです。
・それよりも約束の話自体、もともと高齢者が聞こえていなかった可能性のほうが大きいのです。 特に、雑音が多い所では非常に聞こえにくくなります。実際に介護施設などでは「何も言われず、食べ物を口に詰め込まれた」と怒る高齢者が後を絶ちません。もちろん介護士は、ちゃんと話しかけてから食べ物を差し出しているのですが、周囲には多くの高齢者や職員がいるためにガヤガヤとしていますし、介護士は同時に多くの高齢者の世話をしているので、面と向かって話していないこともあります。
・つまり、なるべく面と向かって話すようにすることで、高齢者にも伝わりやすくなります。大事な用事は、雑音があまりない場所でしっかりと伝えることも意識するといいでしょう。 また、大人数での会話も、高齢者は苦手です。誰が誰に対して話をしているのかがわかりにくく、それが聞こえにくくなることにもつながっています。簡単にできる解決策としては、名前を呼んでから、あるいは肩をたたいてから話しかけるのを心掛けることです。
・周囲ができるほかのこととしては、横文字を乱用しないことです。「モチベーション」ではなく「やる気」、「ポジティブ」ではなく「積極的」、「コンセンサス」ではなく「意見が一致する」といった具合に、です。 また、同時に多くのことを言わず、短い文で少しずつ確認しながら伝えるのも有効です。「明日は一緒にそばを食べに行くから新宿西口に10時に待ち合わせましょう」だと長すぎるので「新宿だけどいい?」「時間は10時? それとも11時?」など、少しずつ話を詰めればいいのです。
・なお、注意したいのは、高齢者は聞こえたふりをすることがあることです。でもこれは、悪意があってではなく、むしろ気遣いによります。 「自分だけが聞こえなかったからといって、会話の流れを止めたくない」と思っているのです。また、何度も聞き返すと相手も「もういいよ!」 「そんな大した話じゃないから……」となり、それを恐れています。
・耳をよくするには、多くの人が同時に話し出すバラエティ番組などを観る、オメガ3脂肪酸の多い青魚やクルミを食べる、などが有効です。 すごく大事なことは、紙に書いてメモしたり、電話ではFAXも併用するのもいいでしょう。
▽「おカネがない」と言う割に、なぜそれを買うの?
・おカネがないと言う割に無駄遣いが激しいことも、よくある高齢者の困った行動です。 実家に帰ると、巨大なテレビや冷蔵庫を買っていたり、見慣れない高級羽毛布団があったり、もっと深刻になると不必要な家のリフォームの話が決まっていたりなどです。
・まず、高い買い物をしてしまうのは、行きつけのお店や、そこにいる店員の言うことを信じ切ってしまうことにあります。今はネットショップをはじめ非常に安い店は多いのですが、長年愛用して信頼しているお店で買ってしまうのです。 また、電化製品をはじめ商品の数は非常に種類が多くなっていますが、選択肢が多くなりすぎると高齢者はむしろ選びにくくなることも、研究でわかっています。そのため、店員に言われたおすすめ商品をホイホイと選んでしまうことが増えます。
・お店を限定してしまうのは、年を取ると移動が大変になることも関係しています。限られた時間で、限られた回数で買い物をしないといけないので、多少高くても買ってしまうのです。
・住宅のリフォームなどの訪問セールスにひっかかってしまうのは、高齢者のほうが、将来起きる悪いことを考えず物事のいい面を見がちな「ポジティブバイアス」が関係するからだと言われています。 ポジティブバイアスは、残された人生の長さを考えると自然に起きてくる現象です。「あと余命1年」と言われたら、どの商品やサービスを選ぶのかで迷うよりも、さっさと決めて趣味に時間を回すようになるはずです。
・こうした高齢者を相手にする犯罪が後を絶ちません。高額を請求するビジネスの多くは、老人以上に老人のことを徹底的に勉強して詳しく知っていますから、「自分はだまされないから平気」とタカをくくるのは非常に危険です。
・解決策としては、「電話は留守電モードにして、必要な用件だけかけなおす」 「高額商品やサービスは、支払う前に家族に相談する」 「アダルトサイトの高額請求など家族に相談しにくい案件は、消費者センターに相談する」などが挙げられます。
▽「認知症」や「頑固な性格」が原因だと決めつけるのは危険
・ほかにも、よくある老人の困った行動は多数あります。「同じ話を何度もする」 「自分の家の中など、『えっ、そこで!?』と思うような場所でよく転ぶ」、あるいは「せっかく作った手料理にしょうゆやソースをドボドボとかける」 「『私なんていても邪魔でしょ?』など、ネガティブな発言ばかりする」 「実の息子の話は聞くけど、自分は無視される」など、「嫁・姑問題」にありがちなことまで、多岐にわたります。
・ただ、医学的によく調べると老化による体の変化が原因であることが非常に多くなっています。 「認知症」や「頑固な性格」と決めつけては、何も始まりません。何が原因だと予想されるのか、それを踏まえてどうすれば少しでも状況が改善されるのかを考えていくことが重要です。老いて困った行動をする親などを持つ方も、これから高齢になっていくことに不安を抱えている方も、すでに高齢になっている方も、そのことを意識することが大事です。
・高齢者とかかわる職業の方も知っておくべきことです。医療や介護の業界が主かもしれませんが、シニア層にも向けたビジネスでしたらすべてが関係します。営業、接客業をはじめ、商品開発の方も含めまして、社会人のほとんどの方が該当するでしょう。
・先ほど挙げた事例が、あらゆる老化による体の変化を知るヒントになれば幸いです。
http://toyokeizai.net/articles/-/191967

第三に、健康社会学者の河合薫氏が本日付けの日経ビジネスオンラインに寄稿した「西室氏の「老害」だ、と責任逃れを図ってない? 10年前の「ぶっ込みインタビュー」を振り返る」を紹介しよう。
・先週、オリックスの宮内義彦チェアマンとの対談「その1」を公開した(「その2」は来週公開です)。 で、いつものようにコメント欄を読んでいると……、今さらながらわからなくなった。
・正社員の既得権益、経営者の既得権益、既得権益を変える、既得権益化、既得権益を捨てろ、既得権益層、既得権益が通じない、解雇されない既得権益システム、既得権益をぶっこわす、日本の遅れは既得権益から起こっている、一見既得権益はないように見える、既得権益、既得権益………。
・そうなのだ。コメント欄に散在する「既得権益」という言葉を見て、混乱した。 「既得権益って何なのだろう?」と。 メディアでは連日、日産や神戸製鋼所の問題が報じられていて、それを見ながらも「既得権益」という言葉がよぎるという困った有り様で。 私の脳内には常に、ウサギやらタヌキやらおサルが動き回っているので、自分では200%わかって使っていたつもりの言葉がわからなくなることは往々にしてある。今回も“1人パニック状態”に陥ってしまったのだ。
・ちょうどそのとき。 「西室泰三氏、死去」との速報が流れた。 西室泰三氏、享年81歳。 1996年に東芝の社長に就任し、2000~05年に東芝会長も務め、01年から経団連副会長、地方分権改革推進会議の議長、財政制度等審議会の会長など政府関連の要職を歴任。05年には、株式上場を目指していた東京証券取引所の会長となり、売買システムの障害で当時の東証社長が引責辞任後は社長を兼任。13年6月には、日本郵政の社長に就任し、西室さん自身が「郵政民営化プロセスの集大成」と位置づけていた日本郵政と傘下金融2社の株式上場を15年11月に実現させ、16年に体調を崩し、社長を退任した。
・その西室さんが、亡くなっていたことがわかったという。 私にとっての西室さんは、これまでお会いした方の中で、誰よりも心に残っている方で。 2007年、東証の会長をなさっているときにインタビューをさせていただいたのだが、そのときの西室さんの語りは私が歳を重れば重ねるだけ深みを増し、西室さんが紡いだ一語一句は今もなお鮮明に記憶している。
河合:経営面での取材は何度もお受けになったことがあると思いますが、きょうは経営者としての西室さんじゃなく、人間、西室泰三に迫ります!
西室:おやおやおや、何となく恐ろしいことですね(笑)。
河合:ご自分の今までの過去を振り返っていただき、当時のお話を私のほうからいろいろ質問させていただきますので。
西室:はいはい、どうぞ。
河合:それで自己分析をしていただきたいと思っております。
西室:自己分析をするわけ? 大変だ。いやぁ、こんなの初めてだな(笑)  ……
・インタビューをテープ起こしした原稿をハードディスクから探し出してみると、当時の私はこんな具合に相当に無鉄砲で、今以上にストレートというか、ぶっ込むというか。 人間的にも、職業人としても、研究者としても未熟で、海のモノとも山のモノとのわからない存在だった。そんな私を西室さんはとても広い心で受け止めてくれた。
・あとにも先にもあんな方にお会いしたことはない。 その西室さんがここ数年、批判を浴びるようになってしまったのはホントに悲しかった。 15年に発覚した東芝の不正会計問題、社長時代に日本郵政が買収した豪物流大手トールの巨額損失……。 それらの不祥事の原因は西室さん、と指摘する人たちがいた。 「既得権益にしがみつく人」 「ポストに執着」 「いまだに我が者顔で東芝社内を闊歩している」 「老害」……。
・私が見て、話して、感じた西室泰三という人物とは全く結びつかない暴言の数々を見聞きする度に、複雑な気持ちになった。「いや、西室さんはそんな方じゃないよ」と。
・「1回なくなるはずの命だったのが、幸いに恵まれて生きながらえている。だから、生かしていただいている間は、ちゃんと仕事をしようと自分を励ましてきました。 今もね、自分で何をしたいというよりは、こういうことをやってほしいという仕事をやっているんです。 東芝の相談役も財政制度審議会も、東証の会長も、他動的に、周りの方が見て、この人がいいだろうって言ってくれたことなんです。
+ただね、最近は過労もあって足の具合も悪い。もう少し仕事を減らそうかなと思っていたんだけど、サポーター付きの靴を履くようになってから、おかげさまで歩き方が相当よくなってね。 そうすると気持ちも違いますよね。まだ、なんかできそうな気持ちになるから、しばらくは東証のお手伝いをしようと思っているの。それ以外にも一種の社会貢献は続けたいと思っています。 これから先は自分が決めるよりは世の中が決めて、期待して、やってくれ、という話は受けざるを得ないだろうと思っています。しかしね、もうそろそろ年ですから……」
・25歳のときに「余命5年」と宣告され、「一度死ぬと言われたのだから、そのときのことを考えると大抵のことは我慢できる」と語った西室さんは、インタビューの最後でこのように話してくれた。 2000年に4年間務めた社長を退いたときに残した、「経営改革はまだ2合目だが、完全燃焼した」という言葉どおり、その後の人生には個人的な“欲”などなかった。
・不祥事発覚後、識者や記者の中には「ポストにしがみつくのは“財界総理”になりたいから」などと言う人がいたが、私は当時の西室さんの言葉を真摯に受け止めている。 そして、今回。西室さんの訃報を知り、東芝関係者の方たちに何人かコンタクトをとることができた。そこで10年前の「人間、西室泰三」に迫った…いや、迫ろうとした稚拙なインタビューを振り返るとともに、東芝で西室さんの部下だった方たちの証言を元に、「西室泰三と既得権益」について考えてみようと思う。
・「東芝にちょうど入社したころですかね。足がだんだん弱くなってきて筋肉が動かなくなった。最初は何が起こったか分からなかった。それから、いろいろと気にしてみると確かに筋肉がだんだんと死んでいる、という感じで。それで東大病院で最初に診てもらって、そのあとも、あちこち診てもらいました。結局、どこも結果は一緒で、筋肉が衰えていく原因不明の難病に違いないと。足から始まって、だんだん上のほうの筋肉まで衰えていって、最後、心臓まで行ったら終わり。早くて5年。余命、5年と宣告されたんです」
・これは西室さんを語る上で、絶対に避けて通ることのできないエピソードである。 東大の受験に失敗し、二浪したのち慶応に進学。商社に内定をもらうも「留学生試験、受けない?」との友人の誘いに1年間カナダに留学。
・厳格で教育熱心な父親に「小学校に入る前に毎朝、論語の素読をさせられたり」「英語も小学校の1~2年のころからおやじに教えられたり。本当は英語はおふくろのほうが上手だったみたいだけど。おやじが教えるというので任せたんじゃないかと思いますけど」という環境で育ち、外国に旅だった。
・「帰ってきてから、やっぱりメーカー、それもインターナショナルに発展できる会社で働きたくて、東芝に就職した」。ところが「東芝に入社した頃に身体の不調に気がついて、半年後に医者に余命宣告された」。 「『最後心臓までいったら終わりだ』と言われて、でも意味がよくわからなくてね。ショックというよりピンと来なかったというのが正直な気持ちでした。
・「僕は、その頃は仕事が面白くなっちゃっていたんです。貿易部に配属されて輸出の実務を始めたんですが、ある程度英語がわかったし、僕は生意気だから『これ、読み方違うんじゃないか』みたいなことを先輩に言ったりしてね(笑)。 真空管やらをアメリカ人に売り込むんだけど、すごく優秀な技術者の人で英語がそれほど得意でない方が僕に技術の速成教育をしてくれたわけ。こんな優秀な人たちが僕に時間を使っていいのかと心配になってしまうくらい、すごく親切にいろんなことを教えてくれてね。
・まだ、入って半年だけど、この会社には僕が必要な人材になっているんだ、なりつつあるんだなって感じていたの」 英語を武器に、社内でも頭角を現していった西室氏だったが、死の恐怖からかタバコを1日に10箱も吸い、医者からは「筋肉の病気で死ぬ前に肺がんで死ぬ」と警告された。
西室:将来を考える時間を減らしたかったってことかなぁ。できる限り仕事の時間で埋めちゃうようにしていたんだけど、仕事で埋まらない時間をたばことお酒で埋めたの。
河合:どんなことをお考えになったんですか。
西室:やっぱり5年で本当にこの世から私はいなくなるのかなぁと。自分がいなくなったあとで、みんなにすぐ忘れられる程度の存在だったら、生きている価値があるのかないのか分からない。だから残された時間で、いなくなったあとに自分のことを思い出してくれる人を、どのくらい増やすことができるだろうと考えましたね。何回も何回も自分で考えるうちにね、5年もあればなんとか自分でできるって思ったんです。そう、5年もあるってね。
河合:会社には病気のことは?
西室:言ってないです。言えない。絶対に言えない。
河合:友人には?
西室:言ってません。
河合:そのとき、彼女は?
西室:彼女、いましたよ、いろいろ(笑)。
河合:いろいろですか(笑)。
西室:いやいや……。あまり深い方はいないけれども、2人ぐらいです。
河合:2人ぐらい(笑)、同時進行じゃないですよね。
西室:いや、違う違う。大丈夫です。
河合:彼女には病気の話は?
西室:しませんね。僕はいなくなることが決まっているのに、相手をそこまで引きずり込んでいいのかっていう気がありました。
・仕事とたばこで「死の恐怖」に耐えていた西室さんに転機が訪れたのは、入社3年目。 「僕に技術を教えてくれた人のうちの1人が、上司になって『責任ははすべて俺がとるから、君が何でも決めなさい』とアメリカ出張に送り出してくれた。上司が部下に『好きにやってきていいよ』というのはすごく勇気がいる話なので、本当にありがたかった」
・海外出張を命じられた翌年、東芝アメリカの立ち上げに再び渡米。そのまま電子部品のセールスマネージャーとして駐在し、「もう一度、もう一度だけ医者に診てもらおうとニューヨークの医師を訪ねた」。 「5%ぐらいの確率で、脊髄に何かできて神経を圧迫しているかもしれないと。当時はMRIもCTもないから検査も危険。ちょっとでも神経に触れれば下半身麻痺になるし、最悪の場合は死ぬ。でも、僕はたった5%の確率でも可能性があるんだったら、それにすがりたくてね。検査を受けた。そしたらやっぱり脊髄の中に膿腫みたいなものができていて、それが神経を圧迫していたことがわかったので、取り除く大手術をしました」
・冒頭に書いたように、「1回なくなるはずだった命が、幸いに恵まれて生きながらえている」ことができたのである。 その後の西室さんの活躍は目覚ましく、3年間の海外駐在の中で白黒ブラウン管で大口顧客を獲得。「東芝の金字塔を打ち立てた」と賞賛される。
・しかし、帰国後、再びアメリカに駐在を命じられた時に、死の恐怖を抱えていたときに匹敵するくらいの困難な状況に遭遇した。DVDの規格統一交渉でソニーや松下電気産業と対立。一時は東芝の完敗が予想されたが、粘り強い交渉を続け、東芝の主導権獲得を成功させたのだ。
西室:どうやったら抜け出せるのかわからないくらい大変だった。それで、またタバコやお酒が増えて、自分でもわかるくらいやせていきましたね。これ以上いったら、本当に死ぬと思って、タバコをやめた。でもね、毎晩タバコの夢を見るくらい辛かったの。
河合:禁煙は、仕事の大変さと同じくらいつらかったですか?
西室:そうね。同じくらい。でも、せっかくもらった命を台無しにしたらばかばかしいなと思って、たばこはがんばって止めました。仕事のほうもそれからしばらくして、いろいろラッキーな契約が取れて解決できた。
河合:難しい状況を乗り越えられた最大の理由はなんだと思われますか?
西室:一度「死ぬ」と言われたんです。そのときのことを考えると大抵のことが我慢できるなって。亡くなるはずの命が、幸いに恵まれて生き永らえているんだから、生かしていただいている間はちゃんと仕事をしようと自分を励ましました。
+日本に帰ってきてからも自分のキャリアへの不安や、仕事で大変なことが何度かあったけども、何とか頑張っているうちにそれなりにちゃんと業績が上がるのが実感できましたから。 周りがね。やっぱりよかったの。仲間をつくらなけりゃいろんなことができないというのは、子どもの頃から思ってましたけど、本当に周りがよかったの。
河合:子どものときから?
西室:いたずらするときだって、1人でやるよりは仲間を呼び込んでやったほうがいいでしょ。
河合:屋根裏に上って悪さするときも、みんなを集めて。
西室:そうそう。だって、下から支えないと上がれないでしょう。
河合:じゃあ、自分が新しいことをチャレンジするために誰か仲間をつくんなくちゃと?
西室:それほど悪くないですけどね。
河合:(笑)そこまで悪くない。
西室:ガキ大将で通信簿には「注意散漫」って書かれてたけど、うん。そこまで悪くない(笑)。仕事をする上ではね、割に最初の頃からそういう意識はありましたね。
・以上が膨大なインタビュー原稿から抜粋した、「どうしてもみなさんに知ってもらいたかった、人間・西室泰三さん」だ。 これまで私が接してきた東芝の社員の方たちは、私が西室さんにインタビューして感銘を受けたことを伝えると、 「自分が課長時代に苦しかった時、わざわざ現場までやってきて『がんばんなさい』と言われて驚いた」 「紳士的で、それでいて戦略的。唯一自分があこがれた経営者」 と穏やかな顔で語り、 「本社のエレベーターでたまたま一緒になると『何階ですか?』と聞かれてボタンを押されようとするので、恐縮してしまった記憶があります」 という方もいた。
・また、今回の西室さんの訃報を聞きコンタクトできた方で、西室さんの元でやってきたという方は次のように話してくれた。 「部下たちの話には耳を傾けるが、経営の方向性は確実に指し示す人でした。あまり知られていないのですが、西室さんが専務時代に『Advanced- I』という新事業創出のダイナミックな経営変革のプロジェクトがあった。20年前の当時としては珍しく、東芝の中でも自由闊達で、上下に拘らず、何でも意見交換できる雰囲気があったし、西海岸との交流も多かったです。
・プロジェクトの打ち上げパーティの場では、若い人も含めて、メンバー1人ひとりにビールを注いで慰労する氏の姿が瞼に焼き付いています。 こんな挑戦は、江川英晴(副社長)、西室(専務)なくしてムリだったと思います。懐刀に森本泰生という経営戦略長がいたのも大きかった。西室さんが彼らに権限を移譲し、決断の人を部下に持っていたんです。森本は西室が社内カンパニー制を敷いたときに社内分社したセミコンダクター・カンパニー初代社長で、その後副社長になった。
・彼こそが東芝の背骨を支えた経営者です。大前研一が唯一、電機メーカーの経営者で尊敬する人といった男です」
・経営者の既得権益とは何か? 女性をどんどん活用するなど変革を進めているカルビーの松本晃会長兼CEOは、「権限を独占すること」と説く。「既得権益」化しないためには、独占するのではなく、部下に与えることが出来るかどうかだ、と。 「そして権限を移譲された人たちが、自ら考え決断することが大事。それができないと、社長が変わった途端に会社は元に戻る」(by 松本会長)。
・今から20年近く前に「既得権益」を捨てたのが、西室元東芝社長だった。少なくとも私にはそう思える。 「私が半年前まで関係していた燃料電池事業で、西室さんは長い間、私人としてもサポートして下さった。普通なら会社という公的な立場で関連推進団体の会長に就くのが自然ですが、敢えて個人会員として登録し、自分が東芝のトップの立場から離れた相談役の時まで、この事業の行く末を温かく守っていただいた」 と話してくださった関係者もいた。
・もちろん組織である以上、対立する人たちもいたし、批判する人もいた。 結果責任を負うのがトップの役目である以上、東芝の不祥事の責任を問われてもいたしかたない。 それでもやはり、インタビューと証言から受けた印象では、少なくとも「既得権益にしがみついた人」という評価は違うと思う。ただし、私がお会いしたのは西室氏が2006年春、70歳のときのこと。そこから10年間、人間の老化が進む時期に、衰えが隠せなくなったのは自然の摂理として当然あるだろう。
・「これから先は自分が決めるよりは世の中が決めて、期待して、やってくれ、という話は受けざるを得ないだろうと思っています。しかしね、もうそろそろ年ですから……」 インタビュー時の言葉を改めて読み直すと、これからいよいよ厳しくなる肉体・精神状況をおそらく覚悟していたことが感じられる。そしてなお、生きながらえた命を酷使した。
・かくも高齢な経営者に、それでも頼った人々は、何を彼に期待したのか。 その結果を、彼の私利私欲に結びつけてお仕舞い、としていいのだろうか。 西室さん、本当にお疲れさまでございました。どうかゆっくりなさってください。そして、心から、ありがとうございました。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/102300129/?P=1 

第一の記事で、 『回答者の年代が上がるごとに、「高齢になっても自分は運転できる」という自信が強くなっているのだ』、また 別の認知症の介護経験者100名を対象にした調査を見てみる。「認知症兆候のあるご家族の運転を止めたことがありますか?」という質問に、74.1%が「ある」と回答した。 ただ、止めようとしても、「本人が納得せず中止できない」という経験をした人が28.9%、「基本的に中止できたが、時々運転してしまう」も5.3%という結果だった』、との調査結果については、調査の信頼性は別としても、あり得る話だ。私としても、自重していきたい。
第二の記事で、 『日本の信号機は赤になるのがとても早く』、というのは私も感じていたが、 『高齢者は信号機をもともとよく見ていません』、 『高齢者は聞こえたふりをすることがあることです』、などというのは初めて知った。なるほどである。 『住宅のリフォームなどの訪問セールスにひっかかってしまうのは、高齢者のほうが、将来起きる悪いことを考えず物事のいい面を見がちな「ポジティブバイアス」が関係するからだと言われています』、というのも、疑り深い私は引っかからないと思うが、一般論としてはなるほどである。
第三の記事は、西室氏のインタビューして圧倒された若き日の河合氏なりのバイアスが多少あるとしても、西室氏は人間としての器量は確かに大きかったようだ。 仕事の面では、 『3年間の海外駐在の中で白黒ブラウン管で大口顧客を獲得。「東芝の金字塔を打ち立てた」と賞賛される』、 『VD(VTRの間違いでは?)の規格統一交渉』で勝利するなど、実績は申し分なく、慶應出身ながら社長になれたのだろう。 『「1回なくなるはずの命だったのが、幸いに恵まれて生きながらえている。だから、生かしていただいている間は、ちゃんと仕事をしようと自分を励ましてきました。 今もね、自分で何をしたいというよりは、こういうことをやってほしいという仕事をやっているんです』、との西室氏の言葉に偽りはなさそうだ。 『少なくとも「既得権益にしがみついた人」という評価は違うと思う』、との河合氏の指摘も説得力がある。ただ、WHの買収、日本郵政のトール買収などの責任は、やはりあるのではなかろうか。
タグ:なるべく面と向かって話すようにすることで、高齢者にも伝わりやすくなります 住宅のリフォームなどの訪問セールスにひっかかってしまうのは、高齢者のほうが、将来起きる悪いことを考えず物事のいい面を見がちな「ポジティブバイアス」が関係するからだと言われています 雑音が多い所では非常に聞こえにくくなります が曲がってしまうから、信号機はよく見上げないと見えない おカネがないと言う割に無駄遣いが激しいことも、よくある高齢者の困った行動 約束の話自体、もともと高齢者が聞こえていなかった可能性のほうが大きいのです 約束を忘れている」のではない 瞼(まぶた)が下がってくるから、信号機が設置された上のほうがよく見えない そもそも日本の信号機は赤になるのがとても早く、特におばあちゃんには渡り切れないように作られています 「「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解 「老人の困った行動」はボケが原因と限らない」 高齢者は信号が赤になっても、平気でゆっくりと渡る 老人の取扱説明書 転倒すると寝たきりにもなりかねず怖いので、下を見て歩かないと不安 こういった行動は、ボケや性格によるものというよりも、老化による体の変化に原因があると言います 高齢者は信号機をもともとよく見ていません 河合薫 東芝の不正会計問題 西室氏の「老害」だ、と責任逃れを図ってない? 10年前の「ぶっ込みインタビュー 2007年、東証の会長をなさっているときにインタビューをさせていただいたのだが、そのときの西室さんの語りは私が歳を重れば重ねるだけ深みを増し、西室さんが紡いだ一語一句は今もなお鮮明に記憶している 日本郵政が買収した豪物流大手トールの巨額損失 認知症」や「頑固な性格」が原因だと決めつけるのは危険 日経ビジネスオンライン 回なくなるはずの命だったのが、幸いに恵まれて生きながらえている。だから、生かしていただいている間は、ちゃんと仕事をしようと自分を励ましてきました。 今もね、自分で何をしたいというよりは、こういうことをやってほしいという仕事をやっているんです。 東芝の相談役も財政制度審議会も、東証の会長も、他動的に、周りの方が見て、この人がいいだろうって言ってくれたことなんです 25歳のときに「余命5年」と宣告され 海外出張を命じられた翌年、東芝アメリカの立ち上げに再び渡米。そのまま電子部品のセールスマネージャーとして駐在し、「もう一度、もう一度だけ医者に診てもらおうとニューヨークの医師を訪ねた」。 西室泰三と既得権益 脊髄の中に膿腫みたいなものができていて、それが神経を圧迫していたことがわかったので、取り除く大手術をしました 東芝に入社した頃に身体の不調に気がついて、半年後に医者に余命宣告された 3年間の海外駐在の中で白黒ブラウン管で大口顧客を獲得。「東芝の金字塔を打ち立てた」と賞賛される 。DVDの規格統一交渉でソニーや松下電気産業と対立。一時は東芝の完敗が予想されたが、粘り強い交渉を続け、東芝の主導権獲得を成功させたのだ 20年前の当時としては珍しく、東芝の中でも自由闊達で、上下に拘らず、何でも意見交換できる雰囲気があったし、西海岸との交流も多かったです 懐刀に森本泰生という経営戦略長がいたのも大きかった 一度「死ぬ」と言われたんです。そのときのことを考えると大抵のことが我慢できるなって。亡くなるはずの命が、幸いに恵まれて生き永らえているんだから、生かしていただいている間はちゃんと仕事をしようと自分を励ましました 部下たちの話には耳を傾けるが、経営の方向性は確実に指し示す人でした 自社サービスの会員を対象に実施した調査 今から20年近く前に「既得権益」を捨てたのが、西室元東芝社長だった 燃料電池事業 普通なら会社という公的な立場で関連推進団体の会長に就くのが自然ですが、敢えて個人会員として登録し、自分が東芝のトップの立場から離れた相談役の時まで、この事業の行く末を温かく守っていただいた 彼こそが東芝の背骨を支えた経営者です。大前研一が唯一、電機メーカーの経営者で尊敬する人といった男です 高齢者になればなるほど運転に自信が出る? 東洋経済オンライン 高齢化社会 ダイヤモンド・オンライン (その5)(高齢者ほど運転への自信強まる ドライバー意識調査の怖い結果、「赤信号を平気で渡る老人」への大きな誤解、西室氏の「老害」だ と責任逃れを図ってない?) 平松 類 、認知症の介護経験者100名を対象にした調査を見てみる。「認知症兆候のあるご家族の運転を止めたことがありますか?」という質問に、74.1%が「ある」と回答した。 ただ、止めようとしても、「本人が納得せず中止できない」という経験をした人が28.9%、「基本的に中止できたが、時々運転してしまう」も5.3%という結果 認知症ONLINE 。「自分で何歳まで運転できると思いますか」という質問に対して最も多かったのが「66歳~70歳」という回答だった。 しかし、同じ質問を年代別で見てみると、非常に興味深い結果が明らかになる。回答者の年代が上がるごとに、「高齢になっても自分は運転できる」という自信が強くなっているのだ パーク24株式会社 高齢者ほど運転への自信強まる、ドライバー意識調査の怖い結果
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医療問題(その9)(名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」、肺がんは喫煙者だけがなる病気ではない 肺がんのスペシャリストに聞く(予防編)、がんに特化したセンター病院はがん治療に最良か 肺がんのスペシャリストに聞く(治療編)) [社会]

医療問題については、9月19日に取上げたが、今日は、(その9)(名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」、肺がんは喫煙者だけがなる病気ではない 肺がんのスペシャリストに聞く(予防編)、がんに特化したセンター病院はがん治療に最良か 肺がんのスペシャリストに聞く(治療編)) である。

先ずは、9月19日付け現代ビジネス「名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」 メリットよりデメリットのほうが大きい」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽焦ってやると必ず後悔する
・「私は外科医なので、様々な手術をしてきましたが、今は基本的に人の身体を傷つける手術は、できるだけ避けるべきだと考えています」 こう語るのは、帯津三敬病院名誉院長の帯津良一氏(81歳)。そんな帯津氏が「自分が患者なら受けたくない手術」として挙げたのが食道がんの手術だ。
・「私が40代後半の頃、食道がんの手術をした患者さんに『先生だったら、この手術を受けましたか?』と聞かれたことがあります。当時の私は手術こそが最も有効な手段だと思っていたので、自信満々に『もちろん受けますよ』と答えました。 しかし、今はそうは思いません。あまりにも身体への負担が大きすぎるため、その後の患者さんの人生、QOL(生活の質)を大きく損なってしまうからです。特に首から上の手術をすると人相までも変わってしまう」
・健康増進クリニック院長の水上治氏(69歳)も同じ意見だ。 「食道がんの場合、『食道亜全摘術』(食道とリンパ節を切除し、胃を持ち上げて残っている食道とつなぎ合わせる)という大手術になるため、医者の腕によって大きな差が出ます。 中村勘三郎さん('12年、食道がんの手術後死去。享年57)のように、合併症の危険もある。術後死や後遺症を考えると、60歳を超えてからは受けたくない」 最悪の場合、食べられなくなり、寝たきりになることも考えられる。にもかかわらず、腕試し感覚で、食道がんの手術をしたがる医者は少なくない。しかし、医者自身がその手術を受けるかといえば、答えは「NO」だ。
・食道がん同様に、多くの60歳以上の医師が受けたくないと答えたのが、膵臓がんの「膵頭十二指腸切除術」だった。 大腸がんの権威で、神奈川県立がんセンターの赤池信氏(68歳)ですら膵臓がん手術には否定的だ。 「治癒切除率の低さと術後合併症の頻度、QOLを考慮すると正直、自分なら受けたくない。手術の代わりに重粒子線治療を選択したい。
・他にも膀胱がんに対する人工膀胱造設術は避けたいですね。理由は自己管理が非常に困難で、常に尿漏れが続くからです」 前立腺がんの手術も「受けない」と答えた医者が多かった。大阪大学人間科学研究科未来共創センター教授で循環器内科医の石蔵文信氏(62歳)が語る。「前立腺がんや甲状腺がんは進行が遅いので、手術せずとも、そのまま人生を終えられる可能性が高い。実際80歳以上で亡くなった男性を調べてみると、多くの人に前立腺がんが見つかっています。 最近はPSAという前立腺がんマーカーの数値がちょっと高いとすぐに『手術しよう』と言われますが、海外の論文では手術のやり過ぎを指摘する声も多い」
・がんと並んで、医者が受けたくない手術として挙げたのが脳の手術。たとえば、脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかったと言われたら、不安で手術を受けようと思う人もいるだろう。 だが、はるひ呼吸器病院病理部長の堤寛氏(65歳)は、無理に手術するほうが危険だと主張する。 「脳ドックによって、脳に小さな動脈瘤が見つかるケースがよくあります。 『破裂したら大変ですから、今のうちに取り除きましょう』と言う医者がいますが、私なら放置します。手術による死亡率が5%程度あるのに対し、10年以内に破裂する確率は1~2%程度と言われています。 高齢者は、無理に手術した場合と、そのままにした場合で寿命が変わらない可能性が高い。ちなみに脳ドックは日本でしかやっていません」
・脳と同じく、神経に影響を及ぼす可能性があるのが頸椎の手術だ。 「頸椎は神経が集中するものすごくデリケートな部分です。『手が痺れる』といった症状で手術に踏み切る人がいますが、良くなったという声をほとんど聞かない。 手術をしても痺れと痛みは残るし、よりひどくなる可能性はいくらでもある。私も自分で歩けるうちは絶対に受けない」(秋津医院院長の秋津壽男氏・63歳)
・さらに前出の堤氏は「自分なら大動脈瘤の人工血管置換術は受けたくない」と語る。 「手術の際、血栓が詰まって脳梗塞や心筋梗塞になって死亡する確率が10~20%ほどあり、たとえ手術を乗り越えたとしても、体力のない高齢者の場合、寝たきりの状態になる可能性も大きい。 実際、私の義父が担当医から胸部の大動脈瘤で手術を勧められたと聞き、私が『もし先生のお父さんが患者だったら手術をしますか』と問うと『しません』と答えました。 自分の家族にはやらない手術をなぜ勧めたのか。もっと患者のことを真剣に考えてほしいと憤りを感じましたね」
・前出の秋津氏は、扁桃腺の摘出手術、盲腸の手術、胆石の手術、白内障手術は、ギリギリまで逃げ回って受けないという。 「もともと扁桃腺自体は邪魔者ではなく、免疫の要になっている部分なんです。盲腸も同じです。以前はほかの手術のついでに取ったりしたのですが、いまは盲腸があったほうが、腸内環境がよくなると研究結果が出ています。
・白内障は徐々に悪くなっていく病気なので、本当に生活に支障をきたしてからでも十分に間に合う。 胆石も同様。昔は胆石が刺激になって胆嚢がんになるとされていましたが、いまは関係ないことがわかっている。炎症を起こしていない人は、知らん顔して死ぬまで持っておいたほうがいい」
▽腰痛で手術してはいけない
・遅らせても大丈夫な手術は、なるべくやらずに様子を見る。特に高齢者で残りの人生を考えた場合、これも立派な治療法の一つだ。 高齢者の多くが悩まされる腰痛。手術をすればすぐに良くなりますよと、甘い言葉を囁く医者もいるが「私は整形外科医ですが、脊柱管狭窄症(腰痛)の手術は受けたくない」と語るのは、望クリニック院長の住田憲是氏(71歳)だ。 「MRIやレントゲンの画像だけで診断して、治療費を稼ぐために、手術を勧める医者が多すぎる。そもそも腰痛は神経を含む腰以外の複合的な問題があることも多く、手術することでさらに苦しむ患者さんも少なくありません」
・医者の言うことを鵜呑みにして手術を受ければ、幸せになれないばかりか、余命を縮めることになる。常に疑問を持つことが大切なのだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52831

次に、10月10日付け日経ビジネスオンライン「肺がんは喫煙者だけがなる病気ではない 肺がんのスペシャリスト、順天堂大学鈴木教授に聞く(予防編)」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・喫煙率が下がり続けているのに、肺がんによる死亡者数が増え続けている。自覚症状が出にくい肺がんは、気がついた時には「手遅れ」となるリスクも高い。毎年の健康診断で胸部X線写真を撮っているからといっても安心できない。では、どうしたらいいのか。率直な疑問を、肺がんのスペシャリスト、順天堂大学医学部の鈴木健司教授に話を聞いた。
――「肺がん」と聞くと、タバコを吸っている人がなる病気だというイメージがあります。「自業自得だ」なんていう声も聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
・鈴木:医学の進歩によって、胃がんや肝臓がんは早期に発見することができるようになりました。そのため胃がんで死ぬ人は横ばい、肝臓がんで亡くなる人は2000年代に入って減少に転じています。ところが、肺がんで亡くなる人は増加の一途をたどっています(下の図の赤い線)。今や、日本国内でがんによる死亡者数は肺がんがトップになってしまいました。
+タバコとの関係はどうか。日本で喫煙率のピークは1965年、昭和40年頃です。当時の成人喫煙率は80%ぐらいありましたが、今は20%を切っています(2016年「国民健康・栄養調査」によると、男性が30.2%、女性が8.2%だった)。 タバコを吸う人は確実に減っているのに、肺がんになる人は確実に増えている。だから今、肺がんになるのはタバコを吸っていない人がほとんどということになります。
――そうなんですか!知り合いが肺がんになったと聞いたら、「タバコを吸い過ぎたんだな」と思ってしまいがちですが、そうではないということですね。
・鈴木:そうです。この情報はもちろん厚生労働省も把握している。けれども、世間にはあまり知られていません。禁煙運動に水を差すので言わないという考えもあるのかもしれませんが、もうちょっと広く知ってもらった方がいいと思うんですね。
▽肺がんは自覚症状が出にくい、発見された時には手遅れ
――喫煙率は下がっているのに、肺がんの罹患率は上がっている原因は分かっているのですか。
・鈴木:残念ながら分かっていません。 肺がんは大きく分けると2種類に大別されます。「扁平(へんぺい)上皮がん」と「腺がん」です。 このうち扁平上皮がんは喫煙が発症の原因とされています。タバコの煙が肺に入ってきて、気管支が3つに分かれる辺りに扁平上皮がんができます。腫瘍ができると喀血(かっけつ=咳の中に血が混じる)するので、割と早く分かります。昔は扁平上皮がんにかかる人は多かったけれど、喫煙率が下がってきたので、最近では扁平上皮がんにかかる人は減ってきています。
+一方、増え続けているのが腺がんという、肺の末梢にできるがんです。肺というのは感覚神経を持たないので、がん組織が大きくなっても痛みはありません。扁平上皮がんと違って喀血もしない。だから自覚症状もない。おまけに「タバコを吸っていなければ自分は肺がんにならない」という頭があるでしょう?
▽健診の胸部X線写真は「ほとんど意味なし」
――はい。今日、先生に会うまでずっとそう思ってきました。
・鈴木:だから発見が遅くなり、死亡率が高いのも肺がんの特徴です。だいたい死亡率は80%~85%といわれています。 では、どうやって見つけるか。健康診断などで、胸部のレントゲン写真を撮りますよね。それで大丈夫だと言われれば安心しちゃう。でも、実はそれが一番、危ないわけです。
・公益財団法人「東京都予防医学協会」が運営している「東京から肺がんをなくす会(ALCA)」という組織があります。その健診は年に2回、CT(低線量ヘリカルスキャンマルチスライスCT)、喀痰細胞診(痰の中にがん細胞が混じっていないかを確認する検査)、胸部X線撮影の3つをやります。これまでに、数十万人を検診してきた実績があります。
・ALCAの面白いところは、世界でも唯一、スモーカーでも入会できることです。通常、喫煙者はスクリーニングから除外されてしまいます。だから非常に実験的な取り組みと言えます。 これまでの調査の結果、胸部CTだけで見つかった肺がんがあります。喀痰細胞診だけで見つかった肺がんもあります。しかし、胸部レントゲンだけで見つかった肺がんというのは「ゼロ」なんです。 どういうことかと言うと、レントゲン写真で写っているがんというのはCTでも分かるし、痰でもがん細胞が検出される。だから胸部レントゲン写真は要らない、とと言えます。
――会社などでは年に1度の健康診断で、X線で胸部写真を撮りますが、あまり意味がないということですか。
・鈴木:肺がんを発見するという目的なら、そうとも言えます。効果的なのは胸部のCTを撮ることです。ノンスモーカーだったら、5年に一遍でいい。20歳でも肺がんになる人がいるので、成人したら5年に1回のペースで定期的に胸部のCTを撮ってもらいたいですね。
・一方、スモーカーは半年に一遍でも助からない人は助からない。喫煙していると、悪性度の高いがんが発生する可能性が高くなるからです。特に女性には極力、タバコを吸わないでもらいたい。通常、男の人の方が女性よりも予後(手術後の回復度合い)が悪い。つまり、治りにくいと言われています。ただ、タバコを吸う人同士で比べると、女性の方が予後は悪いです。
▽どうしても吸いたいなら葉巻か電子たばこ
――何か要因は分かっているんでしょうか。
・鈴木:タバコの中の発がん物質が、女性のX染色体、もしくは女性ホルモンと悪い相互作用を引き起こすことが学術的にも分かってきています。だから最近、若い女性がダイエットの目的でタバコを吸ったりするのは、絶対に止めてもらいたいですね。妊娠のことを考えても、良いことは1つもありません。
――どうしてもタバコが止められない人は、どうすればいいですか。
・鈴木:いろいろ方法はあります。例えば、葉巻はあんまり肺がんと関係ないと言われているんですね、量を吸えないから。タバコだとチェーンスモーキングになるでしょう。葉巻というのは吸っても結局、煙があんまり肺に入ってこないし、すごく時間がかかる。だから肺がんの発症とは、あんまり関係ない。
+最近増えている電子タバコは、紙巻きタバコよりはましでしょう。ニコチンだけを液体にして気化して吸うので、どうしても吸いたいんだったら、まだ電子タバコの方がいいでしょう。 繰り返しになりますが、タバコは止めた方がいいですよ、絶対に。先ほども申し上げた通り、肺は痛みを感じないので肺がんは見つけにくい。自覚症状が出るまで肺がんが進行していたら、もはや手遅れなのです。手術でどんなにきれいに摘出できたとしても、リンパ節に転移しているようであれば再発します。喫煙していると、肺がんの悪性度は確実に悪くなります。
▽肺がんを予防するためのポイント
 +タバコを吸わないから肺がんにならないとは限らない
 +ただ、喫煙が肺がんの悪性度を高めることは科学的に明らか 
 +胸部レントゲン写真だけでは肺がんを見つけきれない
 +非喫煙者であれば5年に1回のペースで胸部CT検査を受ける
 +どうしても禁煙できない人は電子たばこか葉巻を吸う
▽手術する前にリスクが分かる
・鈴木:肺がんが見つかったならば、CTスキャンでグレーディングができるようになりました。 
――グレーディングとは何ですか。
・鈴木:予後因子を解析できるようになったということです。CTの画像を見ることで、比較的治りやすいがんなのか、治りにくいがんなのかというのが、手術をする前にある程度分かるようになってきました。 だからその予後に応じて、治療の方針を決めることになります。肺がんに対しては、放射線治療と抗がん剤の投与、そして手術によるがん組織の摘出が対処法となります。
+肺がんがなぜ人の命を奪うかというと転移するからです。転移する場所はだいたい5カ所。脳、肝臓、副腎、骨、そして片方の肺であることが分かっています。転移している、もしくは転移が予測されている場合には、抗がん剤を投与します。 手術で取れるようだったら摘出します。しかし、がん細胞が心臓に密着していると摘出は難しいので、放射線治療に切り換えます。ただ、放射線と肺というのは非常に相性が悪いのです。
――相性が悪い、とはどういうことですか。
・鈴木:スポンジを火であぶるようなもの、と言えばイメージしやすいでしょうか。放射線を照射すると肺の組織がボロボロになって、機能しなくなってしまいます。だからできるならば、手術できれいに取った方がいい。肺がんの治療ガイドラインも、今そうなっています。 進行している肺がんに対しては、放射線、抗がん剤をやった後に手術とか、総動員してやる。そうすると手術はすごく難しくなる。リスクが高くなるので、外科医としてはあまりやりたがらない。そのため、全国から順天堂大学医院に来る患者が増えています。
――肺がん患者の「最後の砦」のようになっているということですか。
・鈴木:そうですね。だいたい2つのパターンがあって、1つは病変がすごく大きくて取れそうもないというパターン。病変が大きいと放射線治療もやりにくい。照射しなければならない部分が広くなってしまうからです。 もう1つが病変は小さいけれども、その患者さんの心臓が悪い、あるいは腎臓が悪い。そういうリスクがあると、手術自体は簡単なんだけれども、手術そのものに耐えられない。
+専門的には「耐術能」とも言うんですが、そういう場合もリスクが高くなるので、術後合併症(手術などの後に、それらが原因になって起きる病気)が起こって患者さんが亡くなってしまうリスクが高まります。それを恐れて、手術を回避しようとする外科医もいます。そういう、オペをしてもらえなくてウチに来る患者さんもいらっしゃいますね。
+やっぱり、医者と患者さんとでは、情報の非対称性がすごく大きいのが実情です。医師から言わせてもらえば、患者さんを誘導することは容易なんです。どんなに簡単に終わる手術でも、患者さん側から「手術は結構です」と言わせることができます。別に、うそを言うわけではありません。例えば0.1%の確率で起きることでも、言い方によって患者さんはより深刻に受けとめる。結果として、手術は回避されることになります。  ただ、そのこと自体は決して、医師が責められることではないと思っています。私もそうですが、外科医として、自分でできない手術まで引き受けることはできません。やってはいけないことだとも思います。
――人の命を預かる責任がある、からですか。
・鈴木:そうです。やっぱり、自分ができる範囲で引き受けるしかないと思っています。 「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」──私はこの孫子の言葉が大好きで、まさに手術の神髄を言い得ていると思っています。各外科医、各施設によって身の丈に合った臨床、手術を展開することが肝要だということです。
+例えば、順天堂大学病院でできることと、国立がんセンターでできることも違います。私はがんセンターに10年以上も勤務していましたので、よくわかりますが、がんセンターには、循環器専門医はいないし、糖尿病の専門医もいません。順天堂は総合病院なので、リスクの高い方の手術にも対応できます。市中病院だと、もっとリスクは負うことはできません。
+繰り返しになりますが、身の丈に合った治療をするということが大事です。そして患者さんには、正直に言わないといけない。うちはここまでしかできないから、高度な医療をお望みなら(別の)あの病院に行ったらどうですか、と。そういうシステムが、今はないんですよ。
――街中の小さな診療所であれば、地域の大病院に紹介する制度もあります。
・鈴木:開業医の先生方は、レピュテーション(信頼)が大事です。あそこに行ったら良くなった、という評判が積み重なって地域で不可欠な存在となります。 ただ、地域の中核病院と言われるような病院は、プライドもあるし、患者をお断りすることもやりにくい。「あそこへ行ったら結局、がんセンターを紹介されちゃった」と言われたら、それはそれでレピュテーションが落ちちゃうわけです。だからこそ、病院間できちんと患者を紹介し合うような仕組みを、制度として作った方がいいと思います。
+最近も地方の国立大学で起きてしまいましたが、経験があまりない医師が無理な治療を試みて、問題になりました。本人は一生懸命にやっていたんでしょうが、身の丈に合った医療をしないと被害を受けるのは患者さんです。これは絶対に、避けなければなりません。
――医療ドラマでは、医師の虚栄心から無理な手術に走るというのは良くある筋書きですが、実際の現場でも似たようなことが起きているのですね。
・鈴木:医学の世界だけではなくて、原理原則というのはどこも同じです。やはり「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」に尽きます。この言葉はまさに真理を突いていて、患者さんの体、病気の進行度、自分の力量、同時に自分の病院のキャパシティーを知って初めて、自分たちでオペできるかどうかが決まります。
+だから全国からいろいろな問題を抱えて、順天堂大学にいらっしゃる方がいます。手術前は本当に心配していた患者さんも、僕らとリスクを共有して、一緒に乗り越えていこうというような治療をした場合は、ほとんどうまくいきます。だから、無理なものは最初から無理だということはちゃんと言います。 (次回に続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/092900266/?P=1

第三に、上記の続きとして、10月16日付け日経ビジネスオンライン「がんに特化したセンター病院はがん治療に最良か 肺がんのスペシャリスト、順天堂大学鈴木教授に聞く(治療編)」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・数あるがんの中でも日本で最も死亡数が多いのが肺がんだ。痛みを感じない臓器ゆえに発見できた時には「手遅れ」となるリスクも高い。しかも、健康診断でも見つけにくいという厄介ながんだ。そこで肺がんのスペシャリスト、順天堂大学医学部の鈴木健司教授に「治療」について聞いた。(前回から読む)
――前回、がん治療は病院間の連携を促す仕組みが必要だと伺いました。
・鈴木:がんというのは、年齢が上がるほど発症する確率が高くなる病気です。高齢化が進む日本で、がん患者が増えるのは必然とも言えます。 高齢になると当然、他の疾患に罹患している確率も高くなります。糖尿病や脳梗塞の既往もあれば、心筋梗塞を患っている患者さんもいます。そうなると合併症を注意しなければなりませんが、そのようなリスクを持つがん患者の方にはがんに特化したセンター病院に行かれることはおすすめできません。
▽がんセンターは“元気な”がん患者向き
――がんと診断されたら、がんの専門病院にお世話になりたいと思いがちですが…… 
・鈴木:一般の方々がそのような考えをお持ちなのは無理からぬことです。ただ、病院にはそれぞれ役割があります。 いわゆるがんセンターというのは、治験(新しい医薬品や医療機器の承認を得るために行われる臨床試験)を実施することが重要な役割となっています。治験を成功させるためには患者さんをセレクトしなければなりません。新薬が本当に効くかどうかをテストするので、合併症リスクが高い患者さんは対象から外されます。
+変な言い方に聞こえるかもしれませんが、“元気な”がん患者を相手にするのが、がんセンターの本来の役割なのです。つまり、心筋梗塞を患っていたり透析をしていたりする患者さんには向いていないのです。  実際、がんセンターの将来向かう先はそうなっています。がんセンターというのは、通常の病院ではできないような臨床試験や治験をやるところだと。
+誤解を招かないように申し上げますが、がんの治療にかけては、がんセンターは非常にレベルが高い。私もがんセンターに10年以上勤務していたのでよく分かっています。だからこそこれから大事になっていくのは、大学病院を中心とした総合病院が、がん治療のレベルを上げていかなければならない、ということです。
▽糖尿病患者の手術はなぜ難しいのか
――病院はどこも同じではなく、それぞれ役割分担があるということですね。
・鈴木:そうです。治験をするのはがんセンター。一方、リスクの高い高齢の方の手術は総合病院でやった方が安全です。これまでがんの治療レベルはがんセンターの方が高かったので、患者さんとしてもがんセンターでやってほしいという意向が強かった。 だけど、我々のように総合病院もレベルを上げることによって、がんセンター以外でもちゃんとしたがんの治療ができるようになるのが一番良いと思うんですね。
――合併症に関して。例えば糖尿病を患っている方の手術というは、オペする立場からすると、何が、どう難しいのでしょうか。
・鈴木:糖尿病というのは血糖値が高いということは皆さんご存じでしょう。血糖値が高いから余分なものが尿に出るということで糖尿病と呼ばれています。ただ、糖尿病の正体というのは血管の炎症であるということです。「Vasculitis(血管炎)」である、と。だから、糖尿病の患者さんは新生血管が起きない。
+血管が新しくできないと何が問題か。例えば、肺がんの手術では気管支を切除した後に、糸で気管支同士を縫い合わせます。この傷が治るにはまず、気管支の両方から新しい血管が伸びて来て、そこにファイブロブラスト(線維芽細胞)が集まり、ファイブロブラストが分泌するコラーゲンなどによって繊維化という現象が起こり、ガチッと気管支同士がくっつく。
+この創傷治癒のプロセスにおいて、血管新生が起きることが不可欠です。だが、糖尿病の患者さんの場合、これが起きない。血管が炎症を起こしているからです。だから、糸で縫い合わせても、気管支同士がくっつかないのです。
――糖尿病患者は傷が治りにくい、と言われるのはそういう理由からなのですね。
・鈴木:手術療法で大前提となるのは、創傷治癒機転があるということです。傷が治らないので、患部がグチュグチュと化膿して、下手をすると壊疽(えそ)を起こして足を切除しなければならないこともあります。 これは肺がんに限らず、どこの外科手術でも同じです。切ったところが治らなければ手術は成り立たないから、糖尿病というのは非常にリスクが高いといわれているんですね。
――糖尿病の患者さんは日本でもたくさんいますが、そのような人の手術は何か特別な糸を使ったりするのでしょうか。
・鈴木:糖尿病患者を手術する場合、「周術期管理」が必要となります。手術前と手術後で血糖値を厳格にコントロールすることによって、合併症を減らせるというエビデンスがあります。血糖値をきちんとコントロールすれば、糖尿病の患者さんでも傷がちゃんと治ってくるということです。
+ただ、血糖値のコントロールというのはかなり難しくて、日内変動があるんですよ。糖尿病になると食事の後に血糖値が200(ml/dl)を超えることがある。この200を超えないようにインスリンを打って頭(上限)を抑えるわけですが、あんまり抑え過ぎちゃうと血糖値が下がりすぎてしまう。糖尿病って低血糖の方がずっと危ない。意識がなくなり、下手をすれば死んでしまうこともあります。
+要するに、血糖値は上げすぎず、下げすぎず、最適な領域でコントロールする必要があります。ただ、非常に安全域の狭い管理をやるためには、やっぱり経験のある医師が一定数いないとだめなんです。
▽高齢化時代こそ総合病院の出番が増える
――順天堂大学病院のような総合病院であれば、糖尿病の専門医もいるので患者の手術前、手術後もきちんと血糖値をコントロールできるということですか。
・鈴木:はい。手前味噌になりますが、順天堂の糖尿病科のレベルは世界的に見てもかなり高いと言えます。私は10年以上もがんセンターでオペしてきたのでよく分かります。糖尿病の専門医の数は圧倒的に順天堂の方が多く、レベルが高い。
・他の疾患でも同じです。例えば心臓のペースメーカーが入っている患者さんをがんセンターで手術しようとしたら大騒ぎです。ME(臨床工学技士)を外から呼んで、仮に手術中に心臓が止まっても対応できるようにしておく必要があります。順天堂なら、(MEが常駐しているので)普通に手術ができます。
+透析患者さんもそうです。昔、がんセンターで透析をしているがん患者の手術がありました。がんセンターには透析ができる設備がなかったので、月島の別の病院に患者を搬送して透析を受けてもらって、それで築地(がんセンターの所在地)に戻して手術をするなんてことをしていました。でも、順天堂なら一カ所で対応できます。
――複数のメディカルスタッフ(医療専門医)が連携して1人の患者に対応する、チーム医療が提供できるということですね。
・鈴木:そうです。誤解を招きかねないので申し上げますが、これはがんセンターが良いとか、悪いとかいう問題ではないのです。高齢化の時代を迎えて、がんになる人も高齢者の割合が増える。そうなると必然的に、総合病院じゃないと安心した対応ができなくなるということです。
+逆に言うと、患者さんががんセンターで手術を受けることに固執し過ぎると、総合病院だったら手術できるものも「できない」と言われてしまう可能性があるということです。前回も申し上げましたが、大きな病院間で患者を紹介し合う制度がない。 すると、どうなるか。がんセンターで「だめだ」と言われたら、ほとんどの人は「もうだめだ」と思ってしまうでしょう。これは良くありません。
+大事なことなので何度も申し上げますが、合併症をお持ちの患者さんは総合病院で手術した方がいい。そういうことは、医者が患者にきちんと説明しないといけません。これは私が、総合病院に属する医師だから申し上げているのではありません。
+そこで問題となるのが、各病院における治療レベルです。手術というのは、やればやるほど上手くなるものなのです。医者にとって症例数を重ねることが一番重要です。 ただ、がんセンターに比べると、都市部の大きな大学病院でさえも、がんの患者数は10分の1ぐらいになってしまう。普通の市中病院とがんセンターを比べた際、手術のクオリティーに差が出るのは、こなした症例数に圧倒的な差があるからです。
▽日本には呼吸器外科の「専門医」が1000人以上もいる
――手術をすればするほど、外科医として習熟度が上がる。
・鈴木:肺がんに関して言えば、胃がんと比べて手術の数が少ない。だから1年間に200件以上やっている病院は、全国でも9カ所しかありません。 例えば地方のある病院で年間、150件の手術を手掛けているとしますよね。そこに外科医が5人いるとする。そうすると1人当たり年間に30件でしょう。ということは、手術は2週に一遍しか回ってこない。
+ところががんセンターは、僕がいたときは年間に713件あって、これを3人でやっていたんです。だから1年間に200〜300件の手術をしていました。 天皇陛下の執刀医として知られる天野篤先生(順天堂大学医学部付属順天堂医院長、同医院心臓血管外科教授も兼ねる)もよく言いますけれども、医者が一人前になるにはだいたい1000件の手術をこなさなければならない。それで3000件までやってもまだ患者さんから学ぶことがあると。まだフィフティー・フィフティーなんですね。5000件になるとようやくほぼ100%、患者さんに還元できる。患者さんから学び尽くして、あとはもうどんな人にも対応できるようになるのです。私も全く同感です。  その基準で言うと、年間30件しかオペできない人が1000件やるには、30年でも足りません。
――それは現実的ではないですね。
・鈴木:これが日本の呼吸器外科の現状なのです。胃がんとか大腸がんというのは手術数がものすごく多いから、一般病院でもそれなりの症例数を経験できる。 これはちょっと語弊があるから慎重に言いますが、きちんと経験を積んだ呼吸器外科医によって手術が行われていないということなんですね。
+ちなみに呼吸器外科の専門医というのは、肺がんの手術を5年間に100件の術者か助手をやれば取れます。「専門医」と言っても、その程度なのです。だから天野論理でいうと、3000件のオペ経験がある医師は日本国内では非常に限られている。3000件とか5000件なんて、たぶん日本に数人ぐらいしかいないんですね。
――先生は今、どれぐらいですか。
・鈴木:僕はこれまで、4500件ぐらいの経験があります。 ちなみに英国には胸部外科医は75人しかいません。15年前はわずか19人だったそうです(David Waller氏からの私信による)。英国でも肺がんが増加したので増えたのですが、それでも人口が約6000万人の英国でその程度です。だから大英帝国呼吸器外科学会というのは存在しません。それだけしかいないので、学会が成り立たないのです。だから欧州に枠を広げて、欧州呼吸器外科学会ならあります。
+一方、日本の呼吸器外科専門医は1434人です。人口の数で比べると、いかに日本の呼吸器外科医が多いかがわかります。日本には独特の事情があり、英国と同じ数で良いと言うことはありません。しかし1434人の認定のされ方、教育には改善の余地があります。
+これも誤解していただきたくないのですが、日本のレベルが低いということではないのです。日本はすごくレベルを高く保っているんだけれども、それにしても「専門医」と呼ばれる人が多過ぎますよね。 (次回に続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/101000267/?P=1

第一の記事で、 『「自分が患者なら受けたくない手術」』、として、 『食道がんの手術・・・膵臓がんの「膵頭十二指腸切除術」・・・膀胱がんに対する人工膀胱造設術・・・前立腺がんや甲状腺がん・・・未破裂脳動脈瘤・・・頸椎の手術・・・大動脈瘤の人工血管置換術』、さらには、『扁桃腺の摘出手術、盲腸の手術、胆石の手術、白内障手術・・・腰痛手術』、と多いのに驚かされた。 『私は外科医なので、様々な手術をしてきましたが、今は基本的に人の身体を傷つける手術は、できるだけ避けるべきだと考えています』、自分の医者から手術を勧められても、他の医者からセカンド・オピニオンをとるなど慎重に臨んだ方がよさそうだ。
第二の記事で、 『タバコを吸う人は確実に減っているのに、肺がんになる人は確実に増えている・・・この情報はもちろん厚生労働省も把握している。けれども、世間にはあまり知られていません。禁煙運動に水を差すので言わないという考えもあるのかもしれませんが、もうちょっと広く知ってもらった方がいいと思うんです』、との指摘は、喫煙者である私には「それみたことか」と喜んだが、後ろの方で、 『喫煙が肺がんの悪性度を高めることは科学的に明らか』、という指摘で、改めて危険性の高さを再認識させられた。
第三の記事で、 『がんセンターは“元気な”がん患者向き』、 『高齢化時代こそ総合病院の出番が増える』、というのは初めて知ったが、なるほどと納得した。 『きちんと経験を積んだ呼吸器外科医によって手術が行われていないということなんですね。 ちなみに呼吸器外科の専門医というのは、肺がんの手術を5年間に100件の術者か助手をやれば取れます。「専門医」と言っても、その程度なのです。だから天野論理でいうと、3000件のオペ経験がある医師は日本国内では非常に限られている・・・それにしても「専門医」と呼ばれる人が多過ぎますよね』、というのはなんとも心もとない限りだ。
タグ:医療問題 (その9)(名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」、肺がんは喫煙者だけがなる病気ではない 肺がんのスペシャリストに聞く(予防編)、がんに特化したセンター病院はがん治療に最良か 肺がんのスペシャリストに聞く(治療編)) 現代ビジネス 名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」 メリットよりデメリットのほうが大きい 私は外科医なので、様々な手術をしてきましたが、今は基本的に人の身体を傷つける手術は、できるだけ避けるべきだと考えています 帯津三敬病院名誉院長の帯津良一氏 「自分が患者なら受けたくない手術」 食道がんの手術 QOL(生活の質)を大きく損なってしまうからです 膵臓がんの「膵頭十二指腸切除術」 膀胱がんに対する人工膀胱造設術 前立腺がんの手術 前立腺がんや甲状腺がんは進行が遅いので、手術せずとも、そのまま人生を終えられる可能性が高い 未破裂脳動脈瘤 脳ドックは日本でしかやっていません 頸椎の手術 良くなったという声をほとんど聞かない 大動脈瘤の人工血管置換術 扁桃腺の摘出手術、盲腸の手術、胆石の手術、白内障手術 腰痛で手術 日経ビジネスオンライン 肺がんは喫煙者だけがなる病気ではない 肺がんのスペシャリスト、順天堂大学鈴木教授に聞く(予防編) 喫煙率が下がり続けているのに、肺がんによる死亡者数が増え続けている 順天堂大学医学部の鈴木健司教授 この情報はもちろん厚生労働省も把握している。けれども、世間にはあまり知られていません。禁煙運動に水を差すので言わないという考えもあるのかもしれませんが、もうちょっと広く知ってもらった方がいいと思うんですね 肺がんは大きく分けると2種類に大別 扁平(へんぺい)上皮がん 腺がん 東京から肺がんをなくす会(ALCA) CT(低線量ヘリカルスキャンマルチスライスCT 喀痰細胞診 胸部X線撮影 胸部レントゲンだけで見つかった肺がんというのは「ゼロ」 喫煙していると、悪性度の高いがんが発生する可能性が高くなるからです 喫煙が肺がんの悪性度を高めることは科学的に明らか 放射線と肺というのは非常に相性が悪いのです 順天堂大学病院でできることと、国立がんセンターでできることも違います がんセンターには、循環器専門医はいないし、糖尿病の専門医もいません。順天堂は総合病院なので、リスクの高い方の手術にも対応できます がんに特化したセンター病院はがん治療に最良か 肺がんのスペシャリスト、順天堂大学鈴木教授に聞く(治療編) 日本で最も死亡数が多いのが肺がんだ 痛みを感じない臓器ゆえに発見できた時には「手遅れ」となるリスクも高い 高齢になると当然、他の疾患に罹患している確率も高くなります そうなると合併症を注意しなければなりませんが、そのようなリスクを持つがん患者の方にはがんに特化したセンター病院に行かれることはおすすめできません がんセンターは“元気な”がん患者向き がんセンターというのは、通常の病院ではできないような臨床試験や治験をやるところだと 糖尿病の正体というのは血管の炎症 糖尿病の患者さんは新生血管が起きない 創傷治癒のプロセスにおいて、血管新生が起きることが不可欠 尿病の患者さんの場合、これが起きない 糖尿病患者を手術する場合、「周術期管理」が必要 患者さんががんセンターで手術を受けることに固執し過ぎると、総合病院だったら手術できるものも「できない」と言われてしまう可能性があるということです 医者にとって症例数を重ねることが一番重要 がんセンターに比べると、都市部の大きな大学病院でさえも、がんの患者数は10分の1ぐらいになってしまう 日本には呼吸器外科の「専門医」が1000人以上もいる 呼吸器外科の専門医というのは、肺がんの手術を5年間に100件の術者か助手をやれば取れます。「専門医」と言っても、その程度なのです だから天野論理でいうと、3000件のオペ経験がある医師は日本国内では非常に限られている。3000件とか5000件なんて、たぶん日本に数人ぐらいしかいないんですね 日本の呼吸器外科専門医は1434人 それにしても「専門医」と呼ばれる人が多過ぎますよね
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企業不祥事(神戸製鋼の部材不正2)(神戸製鋼「不正40年以上前から」証言で注目すべきソ連との関係、納入先にも落ち度あり? 長期間にわたる品質データ偽装はなぜ見過ごされたのか?、小田嶋氏:品行方正日本企業が堕ちていく) [企業経営]

昨日に続いて、企業不祥事(神戸製鋼の部材不正2)(神戸製鋼「不正40年以上前から」証言で注目すべきソ連との関係、納入先にも落ち度あり? 長期間にわたる品質データ偽装はなぜ見過ごされたのか?、小田嶋氏:品行方正日本企業が堕ちていく) を取上げよう。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が10月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「神戸製鋼「不正40年以上前から」証言で注目すべきソ連との関係」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ベテラン社員たちから「40年以上前から不正があった」など、驚きの証言が出ている神戸製鋼所。ちょうどその時代、不正につながったのではないかと思われる、神戸製鋼とソ連(当時)との密接な関わりがあった。
▽バブル期以前から不正続ける!? 47年前、神戸製鋼を焦らせた“事件”
・日本の「ものづくり神話」を根底から覆す衝撃的なニュースではないだろうか。 国内よりもむしろ海外で注目を集めている神戸製鋼の品質検査データ改ざんについて、「毎日新聞」(10月17日)が「40年以上前から不正があった」という元社員の証言や、「鉄鋼製品では30年以上前から検査データの不正が続いている」というベテラン社員の証言を紹介しているのだ。
・同社は会見で、約10年前から改ざんがあったことを認めているが、そんなかわいいものではなく、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が謳われたバブル期はおろか、下手をしたら高度経済成長期から脈々と続く「伝統」だった恐れもあるのだ。 報道が事実か否かは、いずれ神戸製鋼側からしっかりとしたアナウンスがあるはずなので注目したいが、もし仮にこれが事実だとしても、個人的には「うそでしょ?」というほどの驚きはない。
・先週、筆者は『神戸製鋼も…名門企業が起こす不正の元凶は「世界一病」だ』という記事を書いて、「世界一の技術」を30年以上も謳ってきた同社の尊大すぎるスローガンで「現場」が追いつめられ、そこに実力が伴わずに不正を招いたのではないかと指摘したが、そのルーツが「40年以上前」にあるとなると、その可能性がさらに増してくる。
・実は今から47年前、神戸製鋼の技術者たちがすさまじい「世界一」のプレッシャーに襲われるようなニュースが鉄鋼業界を賑わせた。 《粗鋼生産高 「新日鉄」世界一に》(読売新聞1970年2月25日) 新日鉄が、それまで世界一だったUSスチールを追い抜いたのである。この「世界一」の勢いはとどまることを知らず、半年ほど経過した頃には新日鉄大分製作所に「世界一」の規模を誇る高炉の建設も始まっている。
▽かつては緊密だった神戸製鋼とソ連の関係
・着々と「世界一」の名声を得て、遠のいていくライバルの背中を見て、神戸製鋼の経営陣は焦ったに違いない。そんな上層部たちからすさまじいプレッシャーをかけられ、「成果」を求められた現場の人間の苦悩はどれほどだったことだろう。ましてや当時は「過労死」や「週休2日」といった概念もなく、朝から深夜まで働きづめが普通という超ブラック社会である。
・ほんのちょっとのズルでみんながラクになるのなら――。そんな悪魔のささやきに転ぶ人がいてもおかしくはないのではないか。 いやいや、誇り高い日本の技術者たちがいくら苦しいからって、そんな簡単に不正に手を染めるわけがない。そんな声が聞こえてきそうだが、これは十分ありえる。なぜなら、新日鉄が「世界一」となった1970年あたりから、神戸製鋼の「現場」は、日本のものづくりとはやや異なる独特の考え方をもった国の影響をモロに受けていたからだ。
・それは、「ソ連」である。「新日鉄」が「世界一」の座について5ヵ月後、鉄鋼業界に興味深いニュースが流れた。 「神戸製鋼、ソ連から技術導入」(読売新聞1970年7月10日) 実はこの7年前から神戸製鋼は、ソ連の技術提携公団と、鉄鋼連続鋳造設備の製造・販売についての技術提携を締結していた。連続鋳造とは、転炉や平炉から出てきた溶鉱をそのまま型に流し込むという製法だ。当時はソ連が世界をリードしていて、「画期的な製鉄技術」(読売新聞1963年10月24日)といわれていたものだ。
・そんな新技術をどうにか日本に持ち込めないかと、日本の鉄鋼業界を代表として調査に向かったのが、神戸製鋼の専務取締役だった安並正道氏(後に神鋼商事社長)である。)
▽ソ連の「計画経済」ではインチキは当たり前だった
・この訪ソをきっかけに、神戸製鋼とソ連は急速に接近する。68年には、機械メーカーでもある強みを生かして、ソ連の国営航空会社に「世界にも例がない」(読売新聞1968年9月11日)という陸、海、空すべて一貫輸送できるというコンテナを輸出。そのような蜜月関係は、この連続鋳造技術の導入をきっかけにさらに強固なものとなる。
・79年になると、ソ連の科学技術政策を立案する科学技術国家委員会と協力協定を締結。技術シンポジウムを8回開催した。 当時は冷戦まっただなか。アメリカからは、「ソ連に技術を簡単に渡すな」という強い外圧をかけられていた時代である。実際に87年には、東芝グループの企業の技師がソ連に招かれて、技術指導を受けてつくった工作機械を輸出したところ、アメリカから「ソ連の原子力潜水艦のスクリューの静かさを増すこと使われたじゃないか」と因縁をつけられている。
・だが、神戸製鋼はそのような「逆風」など意に介さない「親ソ企業」というスタンスを継続した。90年には亀高素吉社長(当時)自らソ連を訪れて、副首相と会談し、先の科学技術国家委員会と研究員同士の交流を図って、将来的にはバイオテクノロジーや新素材も開発するというパートナーシップを結んだ。 なんて話を聞くと、「神戸製鋼が旧ソ連と交流があったのはわかったが、それが不正とどう関係あるのだ」と首をかしげる人も多いかもしれないが、それが大いに関係ある。
・覚えている方も多いと思うが、神戸製鋼がソ連の研究者や技術者と親交を深めていた80年代、当のソ連ではさまざまな分野での「粉飾」が横行していた。 これはちょっと考えれば当然の話で、当時ソ連が固執した「計画経済」は、まずなにをおいても「目標」ありきで、これを計画通りに達成することがすべてである。「ちょっと無理なんで、やり方変えてみますか」という柔軟性に欠ける社会なので、どうしても「目標達成」が何をおいても優先される「目標」となる。無理ならインチキするしかないのだ。
・そんな当時のソ連の「粉飾文化」を象徴するのが、統計局が発表していた鉱工業生産実績だ。 年を重ねるごとに前年同期の生産を下回る品目が増えていくので、産業用ロボットとか収穫用コンバインとか新しい品目を統計にホイホイ放り込んだ。こういうものは前年がほぼ生産ゼロなので、生産増加率はずば抜けて高い。全体の生産率を少しでも良く見せようという、苦し紛れの「粉飾」である。
▽ソ連も大好きだった「世界一」のスローガン
・もちろん、労働現場にも粉飾は横行していた。「日本経済新聞」では当時、国際社会のなかで、まことしやかに囁かれた「ソ連の企業カルチャー」を以下のように紹介した。 「年度計画の鉱工業生産伸び率目標が7.3%だったのに、実績が7.0%に終わった1969年ごろから、特に企業レベルで裏帳簿めいたものが目立ってきたという説もある」(日本経済新聞1982年8月30日) 
・ここまで話せばもうおわかりだろう。69年といえば、神戸製鋼がソ連と急速に「技術交流」をおこなっていた時期である。当たり前の話だが、「技術交流」というものは紙切れみたいなものを渡されて「はい、完了」というものではない。異なる考え方の技術者が同じものを生み出そうと意見を交わし、互いの「知見」を学び合うものなのだ。
・神戸製鋼の「現場」がソ連の技術者との交流を重ねていくうち、彼らの「計画経済」の行き詰まりのなかで芽生えた「粉飾文化」まで吸収してしまった恐れはないか。 神戸製鋼の経営陣が30年以上、「世界一の技術」というスローガンを叫んでいたということは先週の記事でも詳しく述べたが、実はソ連も計画経済の調子がいいときは、よく「世界一の科学技術」というスローガンを掲げていたのである。
・つまり、「世界一の技術」という「計画経済」を掲げた神戸製鋼が、その目標の未達が恒常化することで危機感を覚えて「技術の粉飾」に走るというのは、実につじつまの合う話なのだ。 理屈ではそうかもしれないが、現場の人たちにだって罪悪感とかあるだろ、という意見もあろうが、「計画経済」のもうひとつの問題は、「ものづくり」だけに限らず、企業人としてのモラル崩壊も引き起こすことにある。
▽目標ありきの「計画経済」は顧客や社会のことを考えない
・ソ連崩壊後、ロシアになってからも国営企業の腐敗はなかなかなくならなかった。代表的なものが、国内企業保護の観点で安く入手できた原料を海外へ横流しする不正だ。 「企業経営者にとっては原材料を生産にまわすより、西側市場に横流しすることが手取り早く利益を上げる手段だ」(日本経済新聞1993年3月9日)  なぜこうなってしまうのかというと、「計画経済」が骨の髄までしみついている弊害で、「自社の利益を得る」という「目標達成」だけしか見えなくなってしまい、自由主義経済の基本ともう言うべき「顧客」や「社会からの信頼」なんてところにまで考えが及ばないのである。 
・「目標達成」ばかりが強調されるのは、神戸製鋼もソ連も同じ、そして、これこそが、品質検査のデータを改ざんするという「顧客への裏切り」を、神戸製鋼が長く続けられた最大の原因であるようなが気がしてならない。 もちろん、この件に関して、神戸製鋼の経営陣などに「みなさん、ソ連の計画経済の影響を受けてましたか?」なんて質問状を送ったわけではないので、以上はすべて筆者の仮説であることはお断りしておく。
・ただ、先週の記事でも述べたように、「世界一」という目標を掲げた企業がことごとくおかしなことになっている、というのは紛れもない事実だ。東京電力、電通、東芝など近年、不祥事で世間を騒がせている企業は多分にもれず、日本の鉄鋼業界が「世界一」を謳いはじめたのと同じ時期、なにかしらの分野で「世界一」を達成し、そこからなにかに取り憑かれたようにその座に固執してきた。 なぜ日本企業は「世界一」を謳いたがるのか。そしてなぜ、そのような「世界一企業」に限って、手抜き工事をした建物が耐え切れなくなったように、このタイミングで「崩壊」しているのか。
・このあたりの現象について実は数年前から興味があって、調査を続けており、近くそれらをまとめて出版する。興味のある方はぜひ手にとっていただきたい。 いずれにせよ、神戸製鋼の顧客や社会に対する裏切りが「40年以上」にのぼっていたとしたら、これはもはや一個人や一部署がどうこうという問題ではなく、「企業文化」というレベルを超越した、旧国鉄の「日勤教育」に近いものがなされていたのではないかという疑惑も出てくる。 神戸製鋼の徹底的な社内調査を期待したい。
http://diamond.jp/articles/-/146229

次に、元通信社記者で中国・上海在住のブロガー 花園 祐氏が10月20日付けJBPressに寄稿した「神戸製鋼の品質偽装事件、納入先にも落ち度あり? 長期間にわたる品質データ偽装はなぜ見過ごされたのか?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・10月8日、鉄鋼大手の神戸製鋼所が、指定規格や性能を満たしていない鋼材を偽って客先へ出荷していたという不正事実を明らかにしました。この事件は筆者が暮らす中国でも「日本の製造が揺らいでいる」などという見出しとともに大きく報じられました。  筆者は中国に来てから通信社で記者として働いたあと、日系メーカーで品質管理に従事した経験があります。今回はそんな筆者の視点から、なぜ長年にわたり不正が見過ごされてきたのかについて所見を述べたいと思います。
▽組織ぐるみの不正は明らか
・当初、神戸製鋼はこの問題はアルミ・銅製品に限られるとしていました。しかし、その後、鉄粉やばね鋼などの製品群でも同様の問題があることが明らかにされました。 こうした不正は少なくとも過去10年以上にわたって行われていたとみられ、中には「数十年前から行われていた」という報道もあります。その期間の長さと不正のやり方を見る限り、組織ぐるみの不正が行われていたことは間違いないでしょう。
・神戸製鋼は2016年にも、ばね鋼で今回と同じように検査データを改ざんして出荷していたという不正が発覚しています。その前年にも同様の不正が発覚しており、今後こうした不正を根絶できるのか神戸製鋼の自浄能力についても疑念を覚えざるを得ません。
▽納入先でも見過ごされたのはなぜ?
・今回の事件は鉄鋼業界の名門たる神戸製鋼で起こった技術不正事件であり、なおかつ問題の鋼材を使用していた企業や業種が多岐にわたることから、世間でも大きな注目を集めています。 しかし筆者には、報道を見ていてどうにも腑に落ちない点がありました。なぜこの問題が長年にわたり発覚しなかったのか? 言い換えると、なぜ納入先となるメーカー各社の受入検査時に検出されなかったのか? ということです。
・通常、どのメーカーでも仕入鋼材の受け入れ時には、その鋼材が指定規格通りであるかを、鋼材メーカーが発行する「ミルシート」と呼ばれる鋼材検査証明書と照合して確認します。さらに通常はロットごとに鋼材の一部を検査にかけ、その強度や耐性、硬度は当然のこと、場合によっては専門検査機関へ提出して鋼材を組成する化学成分も調べます。もしも納入された鋼材が指定規格や条件を満たさなければ、この時点で不良品と認定され、返品交換されることとなります。
・それだけに今回の事件の報道を見ていて、どうして今の今まで納入先は受入検査時に検出できなかったのか、不思議でなりませんでした。 不正が行われた期間が短く、かつ該当製品の出荷回数も少なかった、というのであれば、納入先の受入検査で洩れていたと考えることができます。しかし今回の神戸製鋼の不正は期間が数十年と長く、また品目も多岐にわたり、複数拠点で頻繁に行われていました。それだけに、納入先の受入検査で検出されていてもおかしくない、というより検出されてしかるべき不正だと思うのです。
▽不正が見過ごされる3つのケース
・納入先となるメーカー各社はどうして検出できなかったのか。考えられるケースは以下の3つです。 1つ目は、量産開始前、もしくは量産開始時期だけは良品を供給して、安定量産時期に入ってからは巧妙に品質を下げていた、というケースです。応用として量産開始以降も、検査用サンプルのみ良品を渡すというやり方もあります。これらは中国の鉄鋼メーカーがよくやる手口です。こうした工作をやられると確かに受入検査での検出が難しくなります。
・2つ目は、製品そのものの不良率は低かったというケースです。報道によると、神戸製鋼では検査自体は行われていなかったものの、規格や条件を満たしている製品もあったといいます。つまり、全部が全部不良品ではないということなので、受入検査も通ってしまいがちです。
・そして3つ目。これは一番望ましくない想定ですが、納入先のメーカー各社でほとんど受入検査をしていなかった、もしくはしていても杜撰だったというケースです。いわば、検査体制に不備があったのは神戸製鋼だけでなく、納入先のメーカー各社にも当てはまるのではないかという推測です。 筆者は内心、今回の不正が納入先でも見過ごされてきたのは、3つ目の可能性が濃厚なのではないかという気がしています。
▽「日系大手だから安心」?
・なぜ3つ目のケースが考えられるのかというと、筆者の個人的な経験として、日系メーカー各社ではサプライヤーが日系大手の場合、仕入れた納入品に対する検査プロセスを省略するケースが多いからです。 中国の鉄鋼メーカーが相手であれば、それこそ微に入り細に入り不良品が紛れ込んでないかを検査しますが(それでも混ざってくる!)、日系大手であれば、「長年不良がないから大丈夫」「大手だからうちより検査体制がしっかりしているはず」などと決めつけて、メーカーが発行する検査証明書の内容をそのまま受け入れてしまうところがあります。
・実際、今回のケースではJIS規格すら満たさない製品が神戸製鋼から出荷されていたわけで、きちんと受入検査にかけていれば確実に検出できていたはずです。それが長年放置されてきたということは、神戸製鋼のみならず納入先のメーカー各社でも受入検査プロセスに何か不備があったのではないかと疑わざるを得ません。 仮にそうだとすると、果たして今回の問題は神戸製鋼だけの問題だと言えるのか。むしろ日本のモノづくり全体に投げかけられた問題であると言わざるをえません。
▽大手メーカーで相次ぐ「技術不正」
・これまで日本の製品は、世界各地で品質面に関して高い評価を得てきました。しかし近年、今回の神戸製鋼の例に限らず、日系大手メーカー各社で検査不備、性能データの偽装や隠蔽、リコール案件の放置といった、あえて言うならば「技術不正」ともいうべき事件が相次いでおり、品質への評価は大きく揺らいでいます(下の表)。
・利益水増しなどといった会計不正については、監査法人による年次監査などによってある程度防止体制が担保されています。しかし、技術不正は専門家でなければ見抜けない問題が多く、その対策はメーカー各社の品質管理現場の良心に大きく依存しています。
・近年の技術不正事例を見ていて、筆者が感じることは大きく2つあります。1つ目は、一度技術不正を犯した企業はその後も不正を繰り返しやすい。2つ目は、大手だからといって必ずしも品質管理やコンプライアンスがしっかりしているわけではない、ということです。 品質管理の現場にいる皆さんは、この2点についてぜひとも改めて認識してほしいと思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51373

第三に、コラムニストの小田嶋隆氏が10月20日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「品行方正日本企業が堕ちていく」を紹介しよう。ただ、前半は危険運転の話なので、紹介は省略する。
・選挙の話は書きたくない。 私はうんざりしている・・・せっかくなので、神戸製鋼所のお話を持ってきて三題噺を完成させてみようと思う。 神戸製鋼所の品質データ改ざん事件は、どうやら、当初発覚した分のケースではおさまりそうにない(こちら)。 偽装は、既に非鉄金属のみならず、主力事業の鉄鋼にも及んでいるし、さらに多角化した別会社である建設機械の「コベルコ」にも飛び火している。しかも、OBの証言によれば、偽装は40年前から常識化していたという。
・なんともあきれた話だが、気楽にあきれてばかりもいられないのは、この事件が、なにも神戸製鋼所にだけ起こった例外的なできごとではなくて、どうやら、日本の少なからぬ数の名門企業で同じように起こっている、ほとんど見分けのつかないほどよく似た不祥事だからだ。
・つい最近になって発覚した事案だけでも、三菱重工が大型客船の製造から撤退し、三菱航空機は、MRJの納期を何度も延期する事態に追い込まれている。 タカタはエアバッグのリコール問題が拡大して、最終的に経営破綻することになった。
・東芝も然りだ。米国の原発製造メーカーの買収でしくじったところから、ついには虎の子の半導体事業を売却する。 日産でもつい先日大規模な不正検査が発覚している。 何年か前に、オリンパスの粉飾決算が明らかになった時にも驚かされたものだが、あの時はまだ、数字の問題だった。
・数字の問題だったというのはつまり、カネの勘定をする部門の人間がやらかしたごまかしに過ぎなかったということで、製品を作っているメーカーの中枢にいる本筋の社員たちが不正に手を染めていたわけではなかった、という意味だ。 そう思って、われわれは、 「経営陣は腐っていたのかもしれないが、社員が腐っているわけではない」 「帳面はインチキだったけど、製品がインチキだったわけではない」 と思い込むことで、なんとか栄光ある日本のモノづくりの名誉に傷がつくことを認めまいとしていた。
・ところが、今回の神戸製鋼所の不祥事は、一番カタいと思われていた鉄鋼の、しかもモノづくりの中枢にある鉄鋼および非鉄金属の製品がど真ん中が汚染されていた事件であるわけで、しかも、その汚染が、昨日今日の話ではなくて、前世紀から引き継がれてきた伝統だという。 ほかに発覚している不正や偽装やごまかしも、同じく、その企業の本筋の中枢の社員による、おそらくは組織ぐるみの不正だ。
・いったい、正直で勤勉で優秀な日本のエリートはどこに消えたのだろうか。 で、思うのだが、この場合も、個人としては誠実で小心で引っ込み思案で善良なわれら日本のエリートが、特定企業の一員という役割を担う段になると、とたんに強気で厚顔で残酷な組織人という別人格に変身するのは、ありそうな話なのではないだろうか。
・旧軍がやらかした組織的な失敗や蛮行の数々を思い浮かべるまでもなく、組織の中にいる日本人が個人的な良心を組織の中に溶解させてしてしまう傾向は、ほとんど「国民性」と呼んでもさしつかえないレベルではっきりした話であるわけで、とすれば、規律のとれた企業であればあるほど、法令遵守がままならなくなるであろうことは、はじめからはっきりした話ではないか。
・個人として社会に対峙していたり、市民として国家に向かっている限りにおいては、ごく力弱く頼りない一人の人間であるに過ぎない同じ人格が、ひとたび「会社名」だったり「役職名」だったり「匿名アカウント」だったり「クルマのハンドル」だったりするものを帯びると、いきなり強気一辺倒な非人間的な装置に化けるという私たちの国の勤労者のお話は、人間の完全さが人間性そのものを裏切るという意味でフランケンシュタインの物語に似ていなくもない。 普段は、フランケンシュタインの怪物は、匿名性の後に隠れている。 が、自分の力を過信するか油断したかで、時々そいつが表に出てくるのだ。
・神戸製鋼所がこの先どうなるのかはわからない。 できれば、立ち直ってほしいと思っている。 熱いうちに打って形を変えられてしまったものが、元の姿を取り戻せるものなのかどうか、私は金属を扱うことの専門家ではないのでよくわからない。 だが、人間は、多くの場合やり直せるものだと思っている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/101900115/?P=1

第一の記事で、 『かつては緊密だった神戸製鋼とソ連の関係』、 『連続鋳造・・・当時はソ連が世界をリードしていて、「画期的な製鉄技術」』、というのは初めて知った。だが、 『神戸製鋼の「現場」がソ連の技術者との交流を重ねていくうち、彼らの「計画経済」の行き詰まりのなかで芽生えた「粉飾文化」まで吸収してしまった恐れはないか・・・「世界一の技術」という「計画経済」を掲げた神戸製鋼が、その目標の未達が恒常化することで危機感を覚えて「技術の粉飾」に走るというのは、実につじつまの合う話なのだ』、、との推理は、審議のほどはともかく、なかなか興味面白い。
第二の記事で、 『神戸製鋼は2016年にも、ばね鋼で今回と同じように検査データを改ざんして出荷していたという不正が発覚しています。その前年にも同様の不正が発覚しており、今後こうした不正を根絶できるのか神戸製鋼の自浄能力についても疑念を覚えざるを得ません』、と過去にも同様の問題を起こしていたとなると完全に身にしみついた体質のようだ。 『納入先のメーカー各社でほとんど受入検査をしていなかった、もしくはしていても杜撰だったというケースです。いわば、検査体制に不備があったのは神戸製鋼だけでなく、納入先のメーカー各社にも当てはまるのではないかという推測です・・・サプライヤーが日系大手の場合、仕入れた納入品に対する検査プロセスを省略するケースが多いからです』、そうであるとすれば、根が深く、広がっているようだ。
第三の記事で、 『なんともあきれた話だが、気楽にあきれてばかりもいられないのは、この事件が、なにも神戸製鋼所にだけ起こった例外的なできごとではなくて、どうやら、日本の少なからぬ数の名門企業で同じように起こっている、ほとんど見分けのつかないほどよく似た不祥事だからだ』、 『個人としては誠実で小心で引っ込み思案で善良なわれら日本のエリートが、特定企業の一員という役割を担う段になると、とたんに強気で厚顔で残酷な組織人という別人格に変身するのは、ありそうな話なのではないだろうか・・・旧軍がやらかした組織的な失敗や蛮行の数々を思い浮かべるまでもなく、組織の中にいる日本人が個人的な良心を組織の中に溶解させてしてしまう傾向は、ほとんど「国民性」と呼んでもさしつかえないレベルではっきりした話であるわけで、とすれば、規律のとれた企業であればあるほど、法令遵守がままならなくなるであろうことは、はじめからはっきりした話ではないか』、などの指摘は大いに考えさせられる。
このまで問題が広がった以上、第三者委員会などによる問題の徹底解明と、実効性ある再発防止策が求められているといえよう。
タグ:ほかに発覚している不正や偽装やごまかしも、同じく、その企業の本筋の中枢の社員による、おそらくは組織ぐるみの不正だ 日系メーカー各社ではサプライヤーが日系大手の場合、仕入れた納入品に対する検査プロセスを省略するケースが多いからです 連続鋳造 ダイヤモンド・オンライン 当時はソ連が世界をリードしていて、「画期的な製鉄技術」 47年前、神戸製鋼の技術者たちがすさまじい「世界一」のプレッシャーに襲われるようなニュースが鉄鋼業界を賑わせた 神戸製鋼「不正40年以上前から」証言で注目すべきソ連との関係 かつては緊密だった神戸製鋼とソ連の関係 窪田順生 粗鋼生産高 「新日鉄」世界一に 神戸製鋼「不正40年以上前から」証言で注目すべきソ連との関係、納入先にも落ち度あり? 長期間にわたる品質データ偽装はなぜ見過ごされたのか?、小田嶋氏:品行方正日本企業が堕ちていく) 神戸製鋼の部材不正2 企業不祥事 納入先でも見過ごされたのはなぜ? 目標ありきの「計画経済」は顧客や社会のことを考えない 神戸製鋼の「現場」がソ連の技術者との交流を重ねていくうち、彼らの「計画経済」の行き詰まりのなかで芽生えた「粉飾文化」まで吸収してしまった恐れはないか 蜜月関係は、この連続鋳造技術の導入をきっかけにさらに強固なものとなる 神戸製鋼の品質偽装事件、納入先にも落ち度あり? 長期間にわたる品質データ偽装はなぜ見過ごされたのか? 、「世界一の技術」という「計画経済」を掲げた神戸製鋼が、その目標の未達が恒常化することで危機感を覚えて「技術の粉飾」に走るというのは、実につじつまの合う話なのだ 花園 祐 通常、どのメーカーでも仕入鋼材の受け入れ時には、その鋼材が指定規格通りであるかを、鋼材メーカーが発行する「ミルシート」と呼ばれる鋼材検査証明書と照合して確認します 不正が見過ごされる3つのケース JBPRESS 検査体制に不備があったのは神戸製鋼だけでなく、納入先のメーカー各社にも当てはまるのではないかという推測 納入先のメーカー各社でほとんど受入検査をしていなかった、もしくはしていても杜撰だったというケース 日経ビジネスオンライン 大手メーカーで相次ぐ「技術不正」 、一番カタいと思われていた鉄鋼の、しかもモノづくりの中枢にある鉄鋼および非鉄金属の製品がど真ん中が汚染されていた事件であるわけで、しかも、その汚染が、昨日今日の話ではなくて、前世紀から引き継がれてきた伝統だという なんともあきれた話だが、気楽にあきれてばかりもいられないのは、この事件が、なにも神戸製鋼所にだけ起こった例外的なできごとではなくて、どうやら、日本の少なからぬ数の名門企業で同じように起こっている、ほとんど見分けのつかないほどよく似た不祥事だからだ 品行方正日本企業が堕ちていく 旧軍がやらかした組織的な失敗や蛮行の数々を思い浮かべるまでもなく、組織の中にいる日本人が個人的な良心を組織の中に溶解させてしてしまう傾向は、ほとんど「国民性」と呼んでもさしつかえないレベルではっきりした話であるわけで、とすれば、規律のとれた企業であればあるほど、法令遵守がままならなくなるであろうことは、はじめからはっきりした話ではないか 個人として社会に対峙していたり、市民として国家に向かっている限りにおいては、ごく力弱く頼りない一人の人間であるに過ぎない同じ人格が、ひとたび「会社名」だったり「役職名」だったり「匿名アカウント」だったり「クルマのハンドル」だったりするものを帯びると、いきなり強気一辺倒な非人間的な装置に化けるという私たちの国の勤労者のお話は、人間の完全さが人間性そのものを裏切るという意味でフランケンシュタインの物語に似ていなくもない 正直で勤勉で優秀な日本のエリートはどこに消えたのだろうか。 で、思うのだが、この場合も、個人としては誠実で小心で引っ込み思案で善良なわれら日本のエリートが、特定企業の一員という役割を担う段になると、とたんに強気で厚顔で残酷な組織人という別人格に変身するのは、ありそうな話なのではないだろうか 小田嶋隆
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企業不祥事(神戸製鋼の部材不正1)(相次ぐ不祥事が示す「カビ」型行為の恐ろしさ、神戸製鋼の不正は経産省も知っていた!? 秘密を漏らせば潰される可能性もあり 闇株新聞が見通す「神戸製鋼の闇はまだ序の口」、久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」 コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題) [企業経営]

今日は、企業不祥事(神戸製鋼の部材不正1)(相次ぐ不祥事が示す「カビ」型行為の恐ろしさ、神戸製鋼の不正は経産省も知っていた!? 秘密を漏らせば潰される可能性もあり 闇株新聞が見通す「神戸製鋼の闇はまだ序の口」、久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」 コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題) を取上げよう。

先ずは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が10月10日付け同氏のブログに掲載した「日産、神戸製鋼、相次ぐ不祥事が示す「カビ」型行為の恐ろしさ」を紹介しよう。
・9月29日、日産自動車が、新車の完成検査を無資格の従業員に行わせていたこと、それらの検査を、提出書類上は有資格者である従業員が担当したかのように偽装していたことを公表したのに続いて、10月8日には、神戸製鋼所が、アルミニウムや銅製品の一部で、顧客企業との契約上の仕様を満たしているかのように強度や寸法などの性能データを改ざんして出荷していたことを公表した。
・日産自動車の問題では、110万台のリコールを実施する方針が明らかにされ、神戸製鋼の問題では、対象品の納入先であるトヨタ自動車(一部車種のボンネットやバックドアの周辺部)や三菱重工業グループ(開発中の国産初のジェット旅客機MRJ)、JR東海(東海道新幹線の車両の台車部分)などにまで影響が波及するなど、重大な社会問題にも発展しかねない状況となっている。
・日産の問題は、新車を出荷する際の完成検査に関わる問題だ。完成検査とは、自動車メーカーが、ハンドルやブレーキ、ライトなど、安全性に関わる性能を出荷前にチェックする検査のことをいう。道路運送車両法上、あらかじめ国土交通大臣の型式指定(75条)を受けた自動車については、国が行う新規検査(58条)に代えて、メーカー自らが完成検査を行うことができるが、この完成検査は、同法に基づく国交省の通達によって、社内で認定を受けた検査員が担当するよう定められている。ところが、日産では、国内の6工場全てにおいて、社内資格を有していない「補助検査員」も検査に携わっていた。
・そして、無資格者が関わった検査であっても、書類上は、有資格者の氏名を記載し、有資格者名の印鑑を押して、正しい検査を行ったかのように偽装して提出していた。ほぼ全ての工場で、偽装用の印鑑を複数用意し、帳簿で管理した上で無資格者に貸し出すという仕組みができており、偽装工作が常態化していたと見られている。
・こうした無資格者による検査実施と、提出書類の偽装工作は、3年以上前から横行していた可能性が高いとされている。日産の西川社長が10月2日の会見で、安全性には影響はなく、あくまで手続きの問題であることを強調し、「検査の工程そのものの意味が現場で十分に認識されていなかった」と述べた。
・神戸製鋼の問題では、強度などを示す検査証明書のデータを、顧客から求められた製品仕様に適合するように書き換えるなどして、顧客の基準に合わない製品を出荷していたことが明らかになっている。データの改ざんは、主要4工場で行われ、対象製品は、神戸製鋼の年間出荷量の4%にあたり、出荷先は約200社にものぼる。改ざんは、約10年前から行われていたことが判明している。梅原副社長は、管理職を含めて数十人が関わるなど、日常的かつ組織的に行われていたことを認めており、不正の背景について、納期を守るというプレッシャーの中で続けられてきたと説明している。
・これらの問題に共通するのは、問題が単発的ではなく、長期間にわたって継続しているという「時間的な拡がり」と、組織内の多数の人間が関わっているという「人的な拡がり」である。 私は、かねてから、そのような行為を“カビ型問題行為”と呼び、“日本の企業不祥事の特質”として指摘してきた。「個人の利益のために、個人の意思で行われる単発的な問題行為」である“ムシ型問題行為”とは対極にある。
・【「カビ型行為」こそが企業不祥事の「問題の核心」】(日経BizGate「郷原弁護士のコンプライアンス指南塾」)では、鉄鋼メーカーが水圧試験のデータを偽装していたことが発覚した“ステンレス鋼管データ捏造事件”や、マンション建設の際の杭打ち工事のデータ偽装が業界全体に蔓延していたことが明らかになった“マンションくい打ちデータ改ざん事件”などの重大な不祥事事例を「カビ型行為」として紹介し、通常のコンプライアンス対応による発見が困難であること、組織内での自主的な自浄作用を働かせることが難しいことなど、カビ型行為の「恐ろしさ」を指摘した。
・今回の日産の問題も、神戸製鋼の問題も、まさに、「カビ型行為」の典型だと考えられる。 「カビ型行為」には、不正が始まった時点においては、何らかの構造的な要因がある場合が多い。法律、規則の内容が実態に反していて、形式的には不正であっても、実質的には大きな問題はないと当事者が認識していることが背景になる。今回の日産自動車、神戸製鋼の不正も、「安全性には影響がない」と認識されていたようであり、当事者側には、法令による規制が過剰だという認識、客先の仕様・要求が過剰だという認識が、問題行為を正当化する要因になっていた可能性がある。
・データの「改ざん」や書類の「偽装」などは、「形式上の不正」にとどまる限り、昔は、それ程問題にされなかった。しかし、「コンプライアンスの徹底」が強調される昨今の日本社会の趨勢からは、「形式上の不正」であってもそれ自体が許容されないことになる。そうなると、過去に行われていた「改ざん」「偽装」が発見されないよう、「隠ぺい」という新たな不正が行われることになる。そして、その後は、「改ざん」「偽装」だけでなく、それを「隠ぺい」していることも巧妙に「隠ぺい」しなければならなくなる。そのようにして、不正行為は潜在化し、「カビ」として企業組織の末端ではびこることになる。
・このような形で潜在化した不正は、長期間にわたって継続的に行われていることが多いが、会社幹部が把握できない場合がほとんどだ。それが、監督官庁やマスコミへの内部告発という形で表面化すると、企業に重大かつ深刻なダメージを与えることになる。 一般的には、組織内で行われている問題行為を把握するための仕組みとして、内部監査と内部通報制度の二つがある。しかし、実際には、この二つは「カビ型」の問題行為を発見・把握する機能を十分に果たしているとは言えない。
・内部監査は、多くの場合、手法自体が、組織内で「意図的に」隠ぺいされた行為を発見しうるものにはなっていない。長期間にわたって行われる間に、「改ざん」の手法も、「隠ぺい」のやり方も進化する場合が多く、企業内の一部門に過ぎない内部監査担当部門が問題を発見し指摘することは容易ではない。
・2015年に免震ゴム事業で大規模なデータ改ざんの不正が明らかになり、社長辞任に追い込まれた東洋ゴム工業も、その問題を受けて、同種の行為が行われていないか全部門で徹底した監査を行ったはずだったのに、その3ヶ月後の10月、防振ゴム事業で、今回の神戸製鋼所の不正と同様の「客先の要求・仕様に適合しないデータの改ざん」の不正が明らかになった。内部監査の限界を示す事例と言えよう。
・内部通報制度は、2006年に公益通報者保護法が施行されたことを受け、ほとんどの大企業で何らかの形で導入されている。しかし、内部通報窓口への通報によって、業務に関する重大な問題が把握できたという話はほとんど聞かない。それは、内部通報というのが、あくまで「社員個人の自発的なアクション」だからである。通常、上司への不満や同僚への妬みなどの個人的動機によって行われるものが大部分であり、申告内容の多くは、軽微なセクハラ、パワハラ、服務規律違反などである。
・業務に関する問題行為で、しかも、多数の人間がかかわっている「カビ型」の問題行為は、行為者個人の問題ではなく、組織的な問題であり、個人的な動機による申告にはなじみにくい。逆に、そのような申告によって重大な問題が会社幹部の知るところになった場合、職場内で、通報の「犯人探し」が行われることもあり得る。そういった理由から、不正行為に堪えられない社員の行動は、告発者の秘匿が保障されるマスコミや監督官庁など、社外への「内部告発」という形で表面化することが多いのである。
・「カビ型行為」は、通常のコンプライアンス対応による発見が困難であり、組織内での自主的な自浄作用を働かせることが難しく、ひとたび内部告発などによって表面化すると深刻な問題に発展する。そのように企業内で潜在化している「カビ型問題行為」を把握し、問題解決する最も有効な方法は、「問題発掘型アンケート調査」である。その詳細については【「カビ型行為」対策の切り札、”問題発掘型アンケート調査”】(日経BizGate「郷原弁護士のコンプライアンス指南塾」)で述べているが、実際に、「問題発掘型アンケート調査」で、企業内で潜在化していた重大な問題を把握できたケースは多数ある。(今回の神戸製鋼所の問題や東洋ゴムの防振ゴム問題と同様の、客先の仕様・要求に適合しないデータの改ざんが、アンケート調査で明らかになった事例もある。) 
・私は、かつて、日本の公共調達に蔓延していた「非公式システム」としての談合を「カビ型行為」の典型として指摘して以来、「カビ型行為」という視点から様々な企業不祥事の実態をとらえ、それをいかに把握し、いかに解決していくのかの検討を続けてきた。
・今回、重大な不祥事が業界のトップクラスの大企業で相次いで表面化したことによって、「日本企業のガバナンスが問われる」という話になるのは当然ではある。しかし、これらは、まさに、その「カビ型行為」の典型であり、単なる「ガバナンス」では解決困難な問題である。このような大変厄介な「カビ型」の問題行為は、日本の企業社会においては、いまだに蔓延しているというのが現状だと考えられる。それをどのように把握し、正しく対応し、問題を解決していくのか、今、まさに、企業のコンプライアンスの真価が問われている。
https://nobuogohara.com/2017/10/10/%e6%97%a5%e7%94%a3%e3%80%81%e7%a5%9e%e6%88%b8%e8%a3%bd%e9%8b%bc%e3%80%81%e7%9b%b8%e6%ac%a1%e3%81%90%e4%b8%8d%e7%a5%a5%e4%ba%8b%e3%81%8c%e7%a4%ba%e3%81%99%e3%80%8c%e3%82%ab%e3%83%93%e5%9e%8b%e3%80%8d/

次に、10月18日付けダイヤモンド・オンライン「神戸製鋼の不正は経産省も知っていた!? 秘密を漏らせば潰される可能性もあり 闇株新聞が見通す「神戸製鋼の闇はまだ序の口」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・神戸製鋼がアルミ・銅・鉄鋼製品で品質データを改ざんしていたと発表しました。供給先は約500社に上り、10年以上前から組織ぐるみの不正が行われていたことになります。企業の不正に詳しくオリンパスや東芝の事件を暴いてきた刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』は、神戸製鋼の闇をどう見ているのか――。
▽真相が小出しにされている可能性も 神戸製鋼単独なら容赦なく叩かれる
・神戸製鋼が唐突に不正を公表したのは連休中の10月8日。顧客の求める品質基準を満たさないアルミ製部材や銅製品をデータを改ざんして出荷していたこと、供給先が航空・防衛・鉄道・自動車関連など約200社に上ること、管理職を含む数十人が関わり組織ぐるみであったことが梅原尚人副社長らから発表しました。
・さらに13日に2回目の記者会見が行われ、当初否定していた主力の鉄鋼製品にも不正がおよび、供給先は約500社に上ること、内外子会社や品質保証担当者の関与も明らかになってきました。さすがにこの記者会見には川崎博也会長兼社長が登場しましたが、自身を含む経営陣はまったく認識していなかったと繰り返しています。
・神戸製鋼は事業ごとの独立会社の集合体のようなものですが、もし本当に経営陣がまったく把握してなかったのだとすると、各事業部門がたまたま別個に・同時期に・同じような不正を、経営陣のまったく関知しないところで行なっていことになります。そんな話が信じられるでしょうか。真相が小出しにされているようで、今後どこまで大きくなるか想像がつきません。
・ポイントとなるのは、同じような不正が同業他社でも行われている可能性です。経験的には不正が業界全体に広がっている場合は、意外にも問題は大きくなりません。2016年初めに発覚した旭化成子会社による杭打ち偽装事件は、同業他社にも同じような不正があると囁かれたものの、結局それ以上には広がらず沈静化しました。
・海外では、欧州自動車メーカーのほとんどがディーゼル車の燃費検査不正にかかわっていましたが、結局は発端となったフォルクスワーゲンだけで止まり問題そのものも忘れられつつあります。最近急に広がり始めたEV(電気自動車)は、これ以上問題が拡大しないよう欧州自動車メーカーが一丸となった結果であるはずです。 今回の件が神戸製鋼単独の不正であれば、今後とことん叩かれるでしょう。
▽経産省も不正を知っていたのでは!? 情報を漏らせば神戸製鋼は潰される
・もう1つ経験的に感じることは、この手の問題が発覚するきっかけはだいたい内部告発であるということです。だとすると、管轄官庁である経済産業省も以前から把握しており、公表するタイミングも指導していた可能性があります。 こうなると経済産業省は責任逃れをするので、これから神戸製鋼から少しでも経産省の関与を伺わせる情報が漏れれば、潰されてしまう恐れも出てきます。
・そんな大袈裟なと思われるかもしれませんが、1990年代の証券会社の損失補填も、山一證券の「飛ばし」も、すべて事前に大蔵省(当時)に相談していたため、その責任逃れのために証券会社が一方的に悪者となり、山一證券は消滅させられました。
・今後の神戸製鋼の命運は、政治的なものになるはずです。最終的にどういう決着となるかは現時点で想像できませんが、この辺も頭に入れて今後の発表や報道を見ていく必要があります。 神戸製鋼の株価は不正発覚から急落し一時40%以上も下落したものの、774円(10月16日安値)を底に反発しています(10月17日現在)。悪材料が小出しにされているのだとすれば下げ止まったと楽観はできないところ。闇がどこまで深いのか、同業に広がっていく可能性も含め今後の成り行きが注目されます。金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』では引き続き、この問題について取り上げていくことになりそうです。
http://diamond.jp/articles/-/146106

第三に、10月20日付け東洋経済オンライン「久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」 コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは久保利氏の回答、+は回答内の段落)。
・神戸製鋼所の品質データ改ざん問題は同社の経営の根幹を揺るがし、日本の製造業全体の信頼性にも影響を及ぼしつつある。問題の悪質性や経営への影響、会社の対応の仕方、さらには国際的な影響などについて、ビジネス弁護士の草分けである、久保利英明・日比谷パーク法律事務所代表弁護士に聞いた。
▽「法令さえ守れば」という考えが間違い
Q:今回の神鋼のデータ改ざんについて、その悪質性、犯罪性をどう考えるか。
A:今回の改ざんは広い部署にわたって発生しており、対象の製品もアルミや銅、鉄鋼、液晶関連材料など幅広い。その意味で、全社にかかわる組織ぐるみの問題と考えざるを得ない。 これが犯罪になるかについては、神鋼の副社長は会見でコンプライアンス違反、法令違反はないと言っていた。実際、そこは捜査してみないとわからない。
+ただ、犯罪性以前に企業としての誠実性が問われている。本来、誠実性違反こそがコンプラ違反であり、法令順守さえしていればコンプラ違反はないと考えるのは大きな間違いだ。今回の件は、明らかな反社会的コンプラ違反といえる。
Q:神鋼の経営に与える影響についてはどうか。
A:納入先は世界中の約500社に広がっており、神鋼の製品が使われた自動車や新幹線、航空機には生身の人間が乗っている。つまり人間の安全性に対する、とてつもない裏切り行為をしたことになり、影響は非常に大きい。 問題を起こした神鋼の人たちは、そういうことを考えなかったのか。神鋼経営陣は納期の影響を挙げていたが、偽装した部材が原因となって事故が起きたときのことを考えずにこうした偽装をするのか。あまりに考え方が浅薄すぎて、利益至上主義に毒されているといわざるをえない。
+今後、リコールや部品交換の費用が発生すれば、納入先企業はそれを神鋼側に求めてくる。逆に求めなければ、株主から追及されることになる。
▽信用はゼロではなくマイナス
・信用力低下の影響も大きい。神鋼の社長は「信用はゼロになった」と言ったが、私はゼロではなく、マイナスになったと思う。信用力は大きく毀損した状況だ。神鋼の株価も連日ストップ安となるほど下がり、時価総額は約4割も減少した。マーケットでの信用低下で、経済的影響は大きい。金融商品取引法でストレートに損害賠償の請求ができる状況であり、社長など経営陣の責任が問われることになる。
+改ざん対象は売り上げの4%程度などと言っているが、大量保有報告書でいえば、5%でも大量という意味になる。4%を「大量でない」という意味で言ったとすれば、それは非常に愚かな話で、ほとんど大量に近いと考えるべきである。
Q:神鋼は8月末に改ざんを把握し、1カ月後に経済産業省へ報告、その10日後に対外公表を行った。こうした会社の対応をどう見るか。
A:いえるのは、対応が遅いということ。わかったことだけでいいから、遅くとも1~2週間以内には公表すべきだった。役所にはとりあえずすぐに一報を入れるべき。1カ月後というのは不思議な話で、経産省とは手を握っているから大丈夫だといった大会社意識があったのか、理解に苦しむ。 しかもその一報を入れた後、対外公表したのは3連休中であり、意味のない先延ばしだ。新聞休刊日前のタイミングでもあり、これは隠蔽ではないかとの疑念は強い。
+国民感情としては、やってしまったことは仕方ないとしても、それを隠蔽したり、ウソをついたりすることに対する憤りのほうが大きい。その意味で、今回の対応は先延ばしに次ぐ先延ばしで、汚い手を使って物事を小さく見せようとした、誠に拙劣な対応だ。
+本来、こういうときには社外取締役が前面に出て、企業価値を回復させるための対策を講じる必要がある。直ちに第三者委員会を作って徹底的に調査するのが常道だ。 ところが、神鋼は社内の調査委員会を作って、社外の法律事務所にも調査をしてもらっていると言うが、委員会の委員長は社長であり、どこの法律事務所を使っているかも公表しない。どんな独立性があって、顧問弁護士とは何の関係もないのかが定かでない。独立した社外取締役はいったい何をしているのかもはっきりしない。「経営者は交代せよ」という話になるのは当然だ。
▽日本にとって大きな打撃になる
Q:米ニューヨーク・タイムズ紙が1面トップで「日本のイメージに打撃」と報じるなど、日本の製造業全体に対する国際的な信頼性低下にもつながっている。米国の司法当局も調査を開始した。
A:これはまさに大きな打撃だ。神鋼の改ざんが単発の問題ならまだしも、タカタや三菱自動車、日産自動車など品質にかかわる不祥事が相次いでいる。そのため、オンリーワンで例外的な事件ではなく、日本の企業がみんなそうなのではとの疑いを募らせている。
+日本はものづくりナンバーワンで、いいものをしっかり作って信頼性抜群ではなかったのか。東芝のように会計も信用できない、安全性も信用できない、製品の検査も信用できないということになると、日本の経済に対して大ダメージだろう。
Q:今回の改ざんが発覚したのはアルミや鉄鋼など上流の素材事業であり、神鋼の経営陣は消費者に直結しないBtoB事業に問題が集中していると述べている。
A:納入先のBの先には消費者のCがある。B to Bは上流だから、下流に大きく広がるという点で影響力は大きく、本来いちばんケアすべき製造業の根幹といえる。根っこがしっかりしていなければ、上のほうでどんなことが起こるかわからない。上流で毒を流せば下流の人はみな死んでしまう。そういう大事件になるんだという想像力や視点を持たなければ、経営を完全に見誤ることになる。
・編集部注:神戸製鋼所の取締役は現在計16人。うち社外取締役は5人で以下の通り。北畑隆生・元経済産業事務次官、馬場宏之・元住友ゴム工業取締役、沖本隆史・元みずほコーポレート銀行副頭取、宮田賀生・元パナソニック取締役専務、千森秀郎・弁護士。)
・久保利英明(くぼり ひであき)/1971年弁護士登録。総会屋対策などを手掛け、早くから適法経営、企業統治などの考え方を提唱した。日本取引所グループ社外取締役。ゼンショーHDの労働環境問題では第三者委員会の委員長を務めた。
http://toyokeizai.net/articles/-/193711

第一の記事で、 『これらの問題に共通するのは、問題が単発的ではなく、長期間にわたって継続しているという「時間的な拡がり」と、組織内の多数の人間が関わっているという「人的な拡がり」である。 私は、かねてから、そのような行為を“カビ型問題行為”と呼び、“日本の企業不祥事の特質”として指摘してきた。「個人の利益のために、個人の意思で行われる単発的な問題行為」である“ムシ型問題行為”とは対極にある』、と郷原氏のまさに持論の“カビ型問題行為”を展開している。 『通常のコンプライアンス対応による発見が困難であること、組織内での自主的な自浄作用を働かせることが難しいことなど、カビ型行為の「恐ろしさ」を指摘』、 『一般的には、組織内で行われている問題行為を把握するための仕組みとして、内部監査と内部通報制度の二つがある。しかし、実際には、この二つは「カビ型」の問題行為を発見・把握する機能を十分に果たしているとは言えない・・・これらは、まさに、その「カビ型行為」の典型であり、単なる「ガバナンス」では解決困難な問題である。このような大変厄介な「カビ型」の問題行為は、日本の企業社会においては、いまだに蔓延しているというのが現状だと考えられる。それをどのように把握し、正しく対応し、問題を解決していくのか、今、まさに、企業のコンプライアンスの真価が問われている』、などの指摘はその通りだ。
第二の記事で、 『ポイントとなるのは、同じような不正が同業他社でも行われている可能性です。経験的には不正が業界全体に広がっている場合は、意外にも問題は大きくなりません。2016年初めに発覚した旭化成子会社による杭打ち偽装事件は、同業他社にも同じような不正があると囁かれたものの、結局それ以上には広がらず沈静化しました』、との指摘はさすがに鋭い。 『山一證券の「飛ばし」も、すべて事前に大蔵省(当時)に相談していたため、その責任逃れのために証券会社が一方的に悪者となり、山一證券は消滅させられました』、は初耳だが、当局のご都合主義の恐ろしさを改めて知らされた。
第三の記事で、 『信用はゼロではなくマイナス』、 『独立した社外取締役はいったい何をしているのかもはっきりしない』、 『日本にとって大きな打撃になる』、などの指摘はさすがに的確だ。
この問題は、余りに重大なので、明日も取上げるつもりである。
タグ:企業不祥事 (神戸製鋼の部材不正1) (相次ぐ不祥事が示す「カビ」型行為の恐ろしさ、神戸製鋼の不正は経産省も知っていた!? 秘密を漏らせば潰される可能性もあり 闇株新聞が見通す「神戸製鋼の闇はまだ序の口」、久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」 コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題) 郷原信郎 同氏のブログ 日産、神戸製鋼、相次ぐ不祥事が示す「カビ」型行為の恐ろしさ 日産自動車 神戸製鋼所 アルミニウムや銅製品の一部で、顧客企業との契約上の仕様を満たしているかのように強度や寸法などの性能データを改ざんして出荷 日産自動車の問題では、110万台のリコールを実施 神戸製鋼の問題では、対象品の納入先であるトヨタ自動車(一部車種のボンネットやバックドアの周辺部)や三菱重工業グループ(開発中の国産初のジェット旅客機MRJ)、JR東海(東海道新幹線の車両の台車部分)などにまで影響が波及するなど、重大な社会問題にも発展しかねない状況 これらの問題に共通するのは、問題が単発的ではなく、長期間にわたって継続しているという「時間的な拡がり」と、組織内の多数の人間が関わっているという「人的な拡がり」である 私は、かねてから、そのような行為を“カビ型問題行為”と呼び、“日本の企業不祥事の特質”として指摘してきた 「個人の利益のために、個人の意思で行われる単発的な問題行為」である“ムシ型問題行為”とは対極にある 通常のコンプライアンス対応による発見が困難であること、組織内での自主的な自浄作用を働かせることが難しいことなど、カビ型行為の「恐ろしさ」を指摘 、「コンプライアンスの徹底」が強調される昨今の日本社会の趨勢からは、「形式上の不正」であってもそれ自体が許容されないことになる 一般的には、組織内で行われている問題行為を把握するための仕組みとして、内部監査と内部通報制度の二つがある しかし、実際には、この二つは「カビ型」の問題行為を発見・把握する機能を十分に果たしているとは言えない 内部監査は、多くの場合、手法自体が、組織内で「意図的に」隠ぺいされた行為を発見しうるものにはなっていない 内部通報窓口への通報によって、業務に関する重大な問題が把握できたという話はほとんど聞かない 通常、上司への不満や同僚への妬みなどの個人的動機によって行われるものが大部分であり、申告内容の多くは、軽微なセクハラ、パワハラ、服務規律違反などである 「カビ型」の問題行為は、行為者個人の問題ではなく、組織的な問題であり、個人的な動機による申告にはなじみにくい 不正行為に堪えられない社員の行動は、告発者の秘匿が保障されるマスコミや監督官庁など、社外への「内部告発」という形で表面化することが多いのである 「カビ型問題行為」を把握し、問題解決する最も有効な方法は、「問題発掘型アンケート調査」 郷原弁護士のコンプライアンス指南塾 これらは、まさに、その「カビ型行為」の典型であり、単なる「ガバナンス」では解決困難な問題である 大変厄介な「カビ型」の問題行為は、日本の企業社会においては、いまだに蔓延しているというのが現状だと考えられる。それをどのように把握し、正しく対応し、問題を解決していくのか、今、まさに、企業のコンプライアンスの真価が問われている ダイヤモンド・オンライン 神戸製鋼の不正は経産省も知っていた!? 秘密を漏らせば潰される可能性もあり 闇株新聞が見通す「神戸製鋼の闇はまだ序の口」 真相が小出しにされている可能性も 神戸製鋼単独なら容赦なく叩かれる 神戸製鋼は事業ごとの独立会社の集合体のようなものですが ・ポイントとなるのは、同じような不正が同業他社でも行われている可能性です。経験的には不正が業界全体に広がっている場合は、意外にも問題は大きくなりません 2016年初めに発覚した旭化成子会社による杭打ち偽装事件は、同業他社にも同じような不正があると囁かれたものの、結局それ以上には広がらず沈静化しました 今回の件が神戸製鋼単独の不正であれば、今後とことん叩かれるでしょう 経産省も不正を知っていたのでは!? 情報を漏らせば神戸製鋼は潰される 山一證券の「飛ばし」も、すべて事前に大蔵省(当時)に相談していたため、その責任逃れのために証券会社が一方的に悪者となり、山一證券は消滅させられました 東洋経済オンライン 久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」 コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題 「法令さえ守れば」という考えが間違い あまりに考え方が浅薄すぎて、利益至上主義に毒されているといわざるをえない 信用はゼロではなくマイナス 直ちに第三者委員会を作って徹底的に調査するのが常道 神鋼は社内の調査委員会を作って、社外の法律事務所にも調査をしてもらっていると言うが、委員会の委員長は社長であり、どこの法律事務所を使っているかも公表しない。どんな独立性があって、顧問弁護士とは何の関係もないのかが定かでない 独立した社外取締役はいったい何をしているのかもはっきりしない 本にとって大きな打撃になる 米ニューヨーク・タイムズ紙が1面トップで「日本のイメージに打撃」と報じるなど、日本の製造業全体に対する国際的な信頼性低下にもつながっている。米国の司法当局も調査を開始した 東芝のように会計も信用できない、安全性も信用できない、製品の検査も信用できないということになると、日本の経済に対して大ダメージだろう
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日本の政治情勢(その13)(誰が首相になっても総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」、真の「保守」「リベラル」の観点から見直す衆院選の争点) [国内政治]

投票日が明後日に近づいたので、昨日に続いて、日本の政治情勢(その13)(誰が首相になっても総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」、真の「保守」「リベラル」の観点から見直す衆院選の争点) を取上げよう。

先ずは、博報堂を経て書籍情報社代表の矢部 宏治氏が10月8日付け現代ビジネスに寄稿した「誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」 『知ってはいけない』著者の警告」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・<自民・公明><希望・維新><立憲民主・共産・社民>という、「3極」の構図で争うことになったと報道される今度の総選挙。しかしどのような経緯をたどるにせよ、選挙後に私たちの目の前に姿を表すのは、<自民・公明・希望・維新>による巨大な保守連合体制である可能性が極めて高い。その結果、どんな事態が想定されるのか。
・「これから日本は非常に厳しい時代に入っていくが、たったひとつのことだけ守っていれば、充分に逆転のチャンスはある」――こう指摘するのは、ベストセラー『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』の著者・矢部宏治氏である。「戦後日本」最大の曲がり角に直面したいま、私たちが考えておくべきこととは。
▽あまりにも奇怪だった「前原民進党・解党事件」
・最近、本のPRをかねて、ラジオやネット番組にいくつか出演した。すると各番組のディレクターたちが、みな口をそろえて同じことを聞いてくるのである。 「矢部さん、いまいったい何が起きてるんですか? まったくわけがわからないんですが」
・もちろん、前原誠司代表が9月28日に起こした「民進党・解党事件」のことである。長い日本の戦後政治においても、これほど奇怪な事件はあまり見つからないだろう。なにしろ、豊富な資金と全国組織をもつ野党第一党の党首が、事実上独断で、 ① 目前に迫った衆議院選挙での、自党の候補者の公認をすべて取り消し、 ② できたばかりの小規模政党(希望の党)の党首(小池百合子氏)に、その候補者たちを自由に「選別」する権利を与え、 ③ 事実上、党を消滅させてしまったにもかかわらず、自分は100億円以上の政党助成金の分配権を握ったまま、代表の座にとどまり続ける ということを突然決めてしまったのだから。
・この出来事を、たとえば国外のメディアや知人に向けて合理的に説明できる人が、はたしてどれほどいるだろうか。
▽「野田民主党・自爆解散事件」との共通点
・けれども実を言えば、私自身はあまり驚かなかった。なぜならいまから5年前、民進党の前身である民主党のなかで、同じくらい奇怪な事件が起こったことをよく記憶していたからだ。それは2012年11月に、当時の野田佳彦首相が起こした「民主党・自爆解散事件」である。もう昔のことなので、忘れている人も多いと思うが、これは簡単に言えば、 ① 当時、政権公約と真逆の政策(消費税増税)を「命をかけてやりとげる」と公言していた野田首相が、 ② 自党の選挙準備がまったく整わない状況のなか※、野党の党首(安倍晋三・自民党総裁)との国会討論中突然解散に合意し、わずか2日後(11月16日)には本当に衆議院を解散して、230議席から57議席へという壊滅的な敗北を喫してしまった ③ そして政権を失ったにもかかわらず、野田氏はその後、政界から引退も離党もせず、そのまま党の実力者でありつづけた という、きわめて不可解な事件である。
・そしてこの事件は、 + 突然決まった衆議院選挙の混乱のなかで、 + 最高責任者が意図的に党を壊滅させるような行動をしたにもかかわらず、 + その後、議員辞職もせずに党内にとどまり、実力者としての地位を維持しつづけた という点において、前述の「前原民進党・解党事件」と完全な相似形をなしている。
※註 この自爆解散事件の直前には、鳩山由紀夫元首相や、すでに離党していた小沢一郎元幹事長に対して、「いまは絶対に解散しない」という野田首相からのメッセージが民主党の主要幹部を介して伝えられていた。だからこそ、あの「ヤラセの党首討論」(=そこで突然解散が決まったというフィクション)が必要だったわけである。
▽2つの奇怪な事件は、なぜ起きたのか
・ではこの2つの奇怪な事件は、いったいなぜ起きたのか。その理由については、私などよりもはるかにわかりやすく、しかも簡潔に説明している人物が存在する。元航空自衛隊のトップ(幕僚長)であり、対中国強硬派、核武装論者としても知られる右派の論客、田母神俊雄氏である。
・彼は「前原民進党・解党事件」が起こった直後、自分のツイッターでこう述べている。 「希望の党ができて民進党は解散になる。小池さんも前原さんも、日本の左翼つぶしに是非とも頑張ってほしい。右と左の二大政党では、国がつねに不安定だ。保守の二大政党制になってこそ、安定した政治になる。〔現在の〕日本のおかれた状況で、憲法改正に反対しているような政治家には、国民生活を任せることはできない」(2017年10月1日、下線筆者)
・実にわかりやすい「解説」ではないか。つまり、安全保障の問題から左派(リベラル派)の影響力を完全に排除する――。それこそが今回の「前原民進党・解党事件」と、5年前の「野田民主党・自爆解散事件」のウラ側にあった本当の目的であり、グランド・デザインだったというわけだ。実際、この2度の自爆選挙によって、かつて旧民主党政権に結集したいわゆるリベラル派勢力は、ほとんど消滅寸前まで追い込まれてしまった。
▽「最悪の愚作」
・そうした異常な行動を生みだした背景については、理解できないこともない。私が『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』で指摘したように、安保条約や地位協定にもとづく戦後の日米間の法的な関係は、独立の直前(1950年6月)に起こった朝鮮戦争のなかで生まれた「米軍への絶対従属体制」、いわゆる「朝鮮戦争レジーム」であり、そのなかで日本政府は米軍からの要求に対して、基本的に拒否する権利をもたないというつらい現実があるからだ。
・けれども、そうした米軍支配の構造のなかで、反対勢力を非民主主義的な手段で壊滅させるのは、これ以上ないほど愚かな行為である。なぜなら日本の戦後政治には、ながらく、 ① 自民党・右派 (安保賛成・改憲) ② 自民党・リベラル派(保守本流) (安保賛成・護憲)  ③ 社会党他の革新政党 (安保反対・護憲) という3つのグループが、それぞれ約3分の1ずつの議席をもつという構造のなかで、①と②が安保体制を維持しながらも、あまりにひどい要求に対しては、②と③があうんの呼吸で連携して、それを拒否するという政治的な知恵が存在したからである。
・けれどもいま、この②と③の勢力の多くが、一度民主党(民進党)に集められたのち、野田・前原の2度の自爆選挙によって壊滅しようとしている。その結果、訪れるのは、「朝鮮戦争レジーム」の最終形態である「100パーセントの軍事従属体制」に他ならない。
・枝野幸男氏が新たに立ち上げた立憲民主党をはじめ、選挙を戦うリベラル系の候補のみなさんに対しては心からのエールを送りたいと思うが、今回どのような選挙結果が出たとしても、選挙後に姿を表すのは、巨大な「自民・公明・希望・維新」による保守連合体制であり、その最終的な目的は、軍事問題についての「野党の消滅」または「大政翼賛体制の成立」なのである。
▽選挙後に必ず起こる2つのこと
・では、具体的に、これから何が起こるのか。選挙後に誕生する巨大な保守連合の、新たな目標として設定されているのは、まちがいなく、 ① 全自衛隊基地の米軍使用 ② 核兵器の陸上配備 の2つである。いずれも以前からアメリカの軍産複合体のシンクタンクで、集団的自衛権とともに日本の課題とされてきたテーマだからだ。
・今回の選挙結果がどうであれ、日本の首相に選ばれた人物には、この2つの課題を早急に実現せよという強烈な圧力がかかることになる。そのときわれわれ一般人は、いったいどう考え、行動していけばいいのか。その手がかりとなる情報を、以下、簡単にスケッチしておきたい。
・「自衛隊基地の米軍使用」については、多くの人が知らないだけで、すでに進行中の現実である。たとえば下の図のように、現在、富士山の北側と東側には広大な自衛隊基地(富士演習場)が存在する。ところが現実には、これらはすべて事実上の米軍基地なのである。
・というのも、この広大な自衛隊基地は、当初は米軍基地だったものが、1950年代から60年代にかけて日本に返還されたことになっているのだが、なんとそのウラ側では、日米合同委員会での密約によって、米軍が「年間270日間の優先使用」をする権利が合意されているのである。年間270日、つまり1年の4分の3は優先使用できるのだから、これはどう考えても事実上の米軍基地なのだ。
▽普天間は一度日本へ返還後、また米軍基地になる?
・なぜアメリカの軍産複合体がこうした「自衛隊基地の米軍使用」を、今後すべての基地に対して拡大しようとしているかと言えば、その理由は簡単だ。 ① 「自衛隊基地」という隠れ蓑によって、基地の運用経費をすべて日本側に負担させることができる。 ②「米軍基地」への反対運動を消滅させることができる。 ③ 今後海外での戦争で自衛隊を指揮するための、合同軍事演習を常時行なうことができる。
・米軍側にとって、いいことづくめなのである。 この「自衛隊基地の米軍使用」計画について考えるたび、私は非常に不吉な予感におそわれる。なぜなら現在、日本への返還が正式に決定していながら、そこで勤務する米軍の上級将校たちが、「いや、オレたちはここから出ていく予定はない」といっている、不思議な米軍基地がひとつあるからだ。
・沖縄の普天間基地である。 これからやってくる「大政翼賛体制」のもとで、一度日本に返還された米軍・普天間基地が、民間利用ではなく自衛隊基地となり、さらには現在の地位協定と密約の組み合わせによって、事実上の米軍基地となる可能性は非常に高いと私は思う。 もし本当にそんな事態が起きたとき、われわれ本土の人間が沖縄と一緒になって、「そこまでバカにするのか!」と、真剣に怒ることができるのか。そうした事態についても、あらかじめ想定して準備しておく必要があるのである。
▽「核兵器の本質」とは?
・そしてここからが、もっとも重要な問題だ。戦後日本の「国体」ともいえる「朝鮮戦争レジーム」は、いま最終局面を迎えている。このまま半永久的に続いてしまうのか。それとも解消へと向かうのか。実はこれまで、絶対に揺るがないように見えていたその体制が、終わりを告げる可能性が出てきているのだ。
・そのことについて説明する前に、読者のみなさんには、ひとつだけおぼえておいてほしいことがある。それは「核兵器の本質」が、「置いた国と置いた国のあいだで撃ち合いの関係になる」ということだ。そして一発でも撃ち合えばその被害があまりにも大きいため、両者の間には「恐怖の均衡」が成立する。
・アメリカとロシア・中国の間には、すでにこの「恐怖の均衡」が成立しており、両者が直接戦争する可能性が消滅して久しい。そしてさらにいま、少し前まで誰も予想しなかったことだが、北朝鮮とアメリカの間にも、この「恐怖の均衡」が成立(※)しつつあるのである。
※註 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の急速な発展の背後には、ロシアからの技術流出(または技術協力)の存在が確実視されており、現在でも精度はともかくとして、距離的にはアメリカ本土に届く可能性が高いと考えられている。
▽バノンが明かしたアメリカ政府の本音
・米軍にすっかり支配された日本の言論空間のなかでは、決して語られることのない多くの事実がある。「朝鮮戦争レジーム」の根幹である北朝鮮問題については、とくにその傾向が強い。だからわれわれ日本人の常識は、世界の常識とまったく違ってしまっているのだ。
・その証拠に、たとえば今年の8月、トランプ政権の本音をバラしすぎて解任された、トランプ大統領の側近中の側近、スティーブン・バノン首席戦略官の問題の発言を見てみよう(いずれも2017年8月16日のニュースサイト「アメリカン・プロスペクト」より)。 「北朝鮮問題に軍事的解決などない。まったくない。開戦30分でソウルの市民1000万人が通常兵器で死亡するという問題を、少しでも解決しないかぎり、(軍事的解決など)意味不明だ」 
・これはアメリカの本音というよりも、世界の常識だと言えるだろう。1994年の第一次核危機で、「韓国側に50万人の死者が出る」という予測が出たために、北朝鮮への軍事攻撃を思いとどまったアメリカが、どうしていま、本格的な核の撃ち合いなど容認することができるだろう。トランプも、もちろん本当はそのことをよくわかっている。
・メルケル首相やプーチン大統領が「北朝鮮問題に軍事的解決などない」とくり返し警告しているのは、トランプや金正恩に対してというよりも、むしろ自分たちが一番危険であるにもかかわらず、なぜか声高に強攻策を主張しつづける、理解不能な日本の首相へのメッセージなのである。
・「中国が北朝鮮の核開発を凍結させ、きちんとした査察を受けさせるなら、米軍を朝鮮半島から撤退させるという交渉もありえる。もっとも、かなり先の話になるだろうが」 バノンのこの発言も、多くの日本人にとっては非常に意外かもしれない。米軍が日本や韓国から撤退することなど、絶対にありえないとほとんどの人が考えているからだ。
・しかし国際的な常識からいえば、このバノンの発言は、ごく当然の話なのである。朝鮮戦争(※)を北朝鮮とともに戦った中国軍は、すでに1968年には朝鮮半島から完全に撤退している。休戦から64年もたつのだから、米軍も撤退するのが本来は当たり前なのである。
※註 このときの米軍は、国連安保理で「国連軍旗の使用」などを認められていたため「朝鮮国連軍」とよばれることもあるが、軍の指揮権は完全に米軍司令官がもっており、国連はいっさいそれに関与できなかったため、その実態が米軍であることは明らかである。
▽日本の未来を切り開くために
・こうして生まれた新しい状況のなかで、私たち日本人が今後注意しておくべきことは、たったひとつしかない。それは総選挙後に始まる安全保障の議論のなかで、「核兵器の地上への配備だけは絶対に認めてはならない」ということである。
・これから米軍、とくに日本と韓国に軍をおく米太平洋軍は、日韓両国に核兵器を地上配備させようと猛烈なプレッシャーをかけてくるだろう。もしもその圧力や巧妙な説得に負けて、日本と韓国が何百発、何千発もの核兵器を地上配備してしまえば、北朝鮮の攻撃対象は当然、日本と韓国へと向く。その結果、北朝鮮とアメリカの間の「恐怖の均衡」は崩れ、アメリカ本土は安全を回復する。結果として韓国からの米軍撤退の可能性も消え、日本における「朝鮮戦争レジーム」も永遠に続くことになるわけだ。
・誰だって、自分が核攻撃の標的になどにはなりたくない。しかも日本は世界で唯一の被爆国なのだ。核兵器の地上配備など、認めるわけがないだろう。多くの人がそう思うかもしれない。 しかしそこには大きな落とし穴が隠されているのだ。というのも今後、核兵器の地上への配備がおおやけに議論されるようになったとき、それがいくら公平な議論のように見えても、結論はすでに決まっているからだ。 それは、核を地上配備するのは、沖縄の嘉手納と辺野古の弾薬庫だということだ。
▽本当の平和国家になるために
・私も6年前から本に書いているように、本土への復帰前は沖縄に、最大1300発もの核兵器が地上配備されていた。 そして嘉手納と辺野古には当時それぞれ数百発の核兵器が貯蔵されていた巨大な弾薬庫がいまもあって、さらにはそれを「将来必要になったらいつでも使えるように維持しておく」という密約まで結ばれているのだ(1969年の佐藤・ニクソンによる「核密約」)。黙っていれば、自然にそういう流れができてしまうことは確実だ。
・けれどもこの沖縄への核兵器の地上配備だけは、本土の人間も一体となって、日本人全員で絶対に食い止めなければならない。 おそらく身勝手な本土の人間たちは、「沖縄なら自分は安全だ。核兵器だろうと何だろうと、配備すればいいじゃないか。オレには関係ない」と考えるかもしれない。ところが、そうはいかない。
・ここが問題の本質なのだが、北朝鮮対策という名目で沖縄に核が配備されたとき、それは自動的に、中国との間で核を撃ち合いかねない「恐怖の均衡」を成立させてしまうのである。そしていうまでもなく、中国のもつ核兵器は、日本列島全体を瞬時に壊滅させるだけの威力をもっている。
・今回の「前原民進党・解党事件」でもよくたとえに登場した、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の教訓を思い出してほしい。「オレだけが助かればいい。ほかの奴らは地獄に落ちてもかまわない」と思った瞬間、われわれ日本人はみな、一体となって地獄へ落ちていくことになる。 同じように核兵器の配備について「沖縄ならいいか」と思った瞬間、「核大国・中国との間での、永遠につづく軍事的対立」=「永遠の朝鮮戦争レジーム」という、最悪の結果がそこには待ち受けているのだ。
・けれども逆に、核の地上配備を沖縄と連帯する形で、日本人全体で拒否することができれば、北朝鮮とアメリカの間で「恐怖の均衡」が成立し、バノンが予言していたとおり、やがて北朝鮮の核開発の凍結とひきかえに、米軍は朝鮮半島から撤退し、日本の朝鮮戦争レジームも終わりを告げることになるだろう。
・われわれ日本人が望んでやまない「みずからが主権をもち、憲法によって国民の人権が守られる、本当の平和国家としての日本」という輝ける未来は、その先に訪れることになるのである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53127

次に、政策コンサルタントの室伏謙一氏が10月20日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「真の「保守」「リベラル」の観点から見直す衆院選の争点」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回の衆議院選挙は、とにかく政策面での「争点」が見えにくい。さらに「保守」「リベラル」「しがらみ」といった言葉が乱用されて本質が見えにくい状況になっている。ここで改めて本来の「保守」「リベラル」とは何か。その上で、各党で掲げている政策面での課題について考えてみた。
▽「争点」が見えにくい今回の衆院選挙
・消費税、北朝鮮問題、憲法改正……有権者にとっては唐突感の否めない今回の衆議院議員選挙、それ以上に有権者を悩ませているのは「争点」が見えにくいとうことだろう。 そもそも何か解散すべき大きな課題があったけではなく、急に解散が決まり、しかも解散から選挙の公示まで時間的余裕がない中で、各党はそれぞれの都合で、それぞれの考えで政策を急揃えの突貫工事で立案し、有権者に提示したのであるから、無理もない。
・もっとも、普段から明確な哲学や思想を持って体系的に政策を立案・整理し、国民・有権者に示し、理解や賛同を得るための活動を地道に行ってきていれば、難なく「本来争点にすべきことは何か」、「どのような政策が望ましいのか」といったことは、提示できるはずだと思われる。
・さて、今回の選挙においてはそうした政策的な争点とともに有権者と候補者をともに振り回しているのが、「保守」「リベラル」「しがらみ」といった言葉である。 特に、民進党の希望の党への合流を巡る一連の騒動を契機として、「寛容な保守政党」だの「リベラルの排除」だのといったように勝手気ままに使われるに至り、今回の選挙は「保守vsリベラル」の闘いといった話まで出てくる始末になった。
・一部の新聞報道によれば、保守、リベラルを「イデオロギー論争」と勘違いする風潮さえみられる。 どうも「保守」といえばなんとなく右、「リベラル」といえばなんとなく左という、根拠なきイメージが背景にあるようであるが、根拠がない分、それぞれの都合で解釈され、濫用され、それが混乱に拍車をかけている。
・そこで、本稿では「保守」や「リベラル」の本来の意味について、中島岳志氏の『リベラル保守宣言』(新潮社)等の著作に依拠して簡単に整理するとともに、「しがらみ」といった今回の選挙のみならずここ数年政治の世界で頻繁に使用されるようになった言葉についても元来意味するところを考え、それに基づき、今回の選挙において五月雨のように掲げられている憲法改正、経済政策、消費税、原発政策、国防・安全保障政策といった個別政策について分析し、投票行動を考える上でのヒントを提示することとしたい。
▽保守とは? 日米安保や憲法改正への態度とは関係ない
・「保守とは何か」と考える時、わが国では、日米安保の重視であるとか、構造改革推進派であるとか、憲法改正に積極的であるとかいったことがメルクマールとして考えられることが多いようであり、今回の選挙ではそれらを判断基準にして保守か否かを区別し、投票先を考える傾向があるようである。
・しかし、本来保守とは、そうした個別具体的な事項を軸にして考えられるものなのだろうか? 中島岳志氏によれば、保守思想は、「人間の理性によって理想社会を作ることなど不可能である」と考え、「人間の不完全性や能力の限界から目をそらすことなく、これを直視」し、「不完全な人間が構成する社会は、不完全なまま推移せざるをえないという諦念を共有」するという。そして「特定の人間によって構成された政治イデオロギーよりも、歴史の風雪に耐えた制度や良識に依拠し、理性を超えた宗教的価値を重視」するとし、「エリートの設計主義による理想社会の実現という構想に対して、疑いの目を向け」、「急進的な改革や革命を厳しく批判」するとする。一方で、「社会の変化そのものを否定するわけでは」なく、「漸進的改革を進めようと」するという。
・要するに、保守とは「人間や社会の不完全性を前提としつつ、長い歴史や伝統、それらの蓄積を守り生かしながら、時代時代の変化を受け入れて漸進的に改革を進めていく思想であり立場である」ということである。 したがって、日米安保や憲法改正への態度がどうこうということは、保守であるかどうかの基準ではないということである。
▽リベラルとは? サヨクと結びつけられるものではない
・中島氏は、「宗教戦争を繰り返していたヨーロッパ中世末期に宗教的寛容を認める思想として成立」したものであり、「リベラルには本来的に、異なる他者を容認するための社会的ルールや規範、常識の体系が埋め込まれている」としている。 また、「リベラルであることは、他者を尊重し、会話の作法を重視する姿勢に基づきます。」ともしている。
・つまり、リベラルとは「独断や独善を嫌う寛容な姿勢であり、いわゆるサヨクと結びつけられるものではない」ということである。 そうなると、寛容な保守改革政党を標榜しつつも、リベラル排除を明言した希望の党は、少なくとも寛容な政党ではないということになろうし、政策も物事の進め方もまたしかりであろう。
▽「リベラル」と「保守」は対立する思想でも概念でもない
・そして、この「リベラル」と「保守」は対立する思想でも概念でもない。 「保守」は人間の不完全性を前提として、急進的な改革ではなく漸進的な改革を進めるという立場である。したがって、独断や独善を嫌い、異なる意見に対しては寛容であることが必要であり、「リベラル」であることが求められる。 つまり、「保守」と「リベラル」は共存できるどころか一体であると考えることが妥当なのである(この辺りは西部邁氏の『リベラルマインド』(学研)に詳しい)。
▽「政治の世界」で頻繁に使用される「しがらみ」とは?
・「しがらみ」……この言葉が「政治の世界」で頻繁に使用されるようになってまだ日は浅いが(おそらく政党で最初に使用したのはみんなの党ではないか?)、今回の選挙では「しがらみ」がないことを、これをなくすこと良いこととして前面に押し出す主張が以前に増して多く見られるようになった。
・この「しがらみ」についても明確な定義も説明も意味づけもないまま、なんとなくネガティヴなイメージが植えつけられ、それをなくせば政治が、社会が、経済がよくなるという、単純化された、乱暴というか少なくとも雑な方程式が当然のことのように流布されるに至っている。
・しかし、この「しがらみ」とは元々は「水流を堰きとめる柵のこと」であり、転じて人間関係、地縁や血縁といったご縁のことである。まとわりつくものであるとか、なかなか切れないものといったネガティヴな説明も見られるが、少なくとも切ろうと思って簡単には切れない、自分や社会を形作る要素の一つであると言えよう。
・別の言い方をすれば、人間は重層的ないくつもの社会的な関係性の中に存在し生きているのであって、だからこそ価値観や規範、道徳を、日常生活を通じて獲得していくことができるのである。 そうなると、この世に生きとし生ける者であって「しがらみ」のない者など存在するはずがなく、そんな人間や状態を想定するというのはフィクションでしかないということなる。
・このことについて、自民党の小泉進次郎氏が、公示前の10月1日に行った街頭演説の中で上手いことを言っている。 「皆さんに敢えて問いたい、しがらみがない人なんていますか?私、しがらみばっかりです。自民党、しがらみばっかりです。しかし、私たちのしがらみは、いっぱいしがらみがあるから、時にそのしがらみから脱却することができるんです。〜(中略)〜前原さんが民進党代表選で言ったAll for all、これってしがらみのない政治と真逆じゃないですか?誰もがしがらみがある中で生きているんですよ。 でも、私は、しがらみと絆って紙一重だと思いますよ。そういった中で、しがらみのない政治、しがらみのない生き方って、一人で人間生きていけますか?いろんな人の支えがあって、いろんな人との助け合いがあって、困った時はお互い様という精神があって、だから、そういった中でどうやったらみんなで助け合う国を、助け合う地域を作っていくことができるのか、これが自民党が作りたい地域社会。 これが自民党が作っていきたい将来の社会ですよ。〜しがらみがあって絆もあって、それはコインの裏表なんです」 まさに的を射た話であると言えるのではないか。
▽「個別の政策」をどう考えるか? 財政健全化、消費税、社会保障、教育無償化
・さて、「保守」、「リベラル」、さらには「しがらみ」という言葉の意味が明確になり、「保守」は同時に「リベラル」であることが分かったところで、その観点から今回の選挙において挙げられている政策のあるべき方向性について考えてみたい。
・今回の解散総選挙に当たり、安倍総理大臣は「消費税の使い道の変更」をその理由の一つに挙げた。「消費税の使途」を保育や教育の無償化にも充てるということであり、これは消費税率の8%から10%への引上げとセットである。そしてこの話はわが国の社会保障の在り方や、現政権も掲げてきた財政健全化とも密接に関わっている。
・まず、「保育や教育の無償化」については、将来世代への投資であり、総論としては異論のないところであろう。 しかし、これは消費税率を引き上げた上での話であり、消費税率の引上げは財政健全化と結びついていることが、「保守」の観点からは問題視されるべきであろう。すなわち、財政健全化や財政再建を目標としその達成を最優先すること自体が、保守が疑いの目を向ける「設計主義」そのものである。 本来は、社会保障も含めて、国民が困らないような予算の使い方、公共投資の在り方を最優先に議論すべきであるし、提示すべきであって、その上で、財源として税によるのか公債の発行によるのかといった「資金調達の問題」が議論されるというのが、「保守」の観点からすれば当然の順序ということになろう。
▽憲法改正問題 「国の在り方」についての議論が必要
・立憲主義という言葉がこれほどまで注目された選挙は近年ではなかったのではないだろうか。 「保守」の観点からすれば、憲法は国の在り方、基本的な統治機構の在り方、国家としての重要政策の基本的な考え方を規定するものであるが、国家の理想像や理想的国家像を規定するものであってはならない。 立憲主義はあくまでも前者の観点に立脚してものである必要がある。したがって、憲法改正を考えるのであれば、国の在り方、国家観についての議論から時間をかけて進める必要があり、個別の条文の改正を短期間に行うという性格のものではない。
・少なくとも現状では改憲推進から護憲まで幅広い意見が存在し、聞く耳持たぬ一方的な主張の応酬が繰り返されているだけのようである。 そうした、異なる意見を尊重するという土壌が出来ていない状況で、憲法改正の発議などできようもない、「保守」かつ「リベラル」の観点からはそう考えざるをえないのではないか。
▽北朝鮮問題、国防・安全保障 各党ともバランス感覚に欠ける
・今回の解散の決断においては、「北朝鮮の脅威」という国難への対応もその理由として挙げられている。  確かに北朝鮮という“核保有国”が日本海を隔てて存在し、その軍事力が増しているというのはわが国の平和と安全にとって脅威であることは間違いない。しかし、“核保有国かつ軍事大国”であるという点でいえば、既にわが国は北朝鮮のみならずロシア、中国、それに米国に囲まれているわけであり、北朝鮮だけを殊更に問題視するというのは、自国の国防・安全保障を考える視点としてはバランスに欠けていると考えざるをえない。
・ロシアも中国も米国も独立国であり、当然にそれぞれの国益を考えて動く。「自国に利あり」と考えて急遽北朝鮮と友好関係を結ぶという可能性が全くないわけではない。 何を馬鹿げたことをと思われるかもしれないが、あらゆる可能性はゼロではない。一方で、絶対安全な措置であるとか、未来永劫良好であり続ける関係といったものもありえない。問題はそうしたことを当然の前提としつつ状況の変化に対処出来るバランス感覚、平衡感覚を持ち、それを保つことができるかである。
・今回の選挙における各党の政策では、個別の法律への賛否といったものが目立つものの、国防・安全保障におけるこうしたバランス感覚は、残念ながら見受けられないようである。
▽経済政策 保守から見たアベノミクスの問題点
・現政権が掲げてきたいわゆる「アベノミクス」の成果についても今回の選挙では論戦が行われている。  アベノミクスは、科学技術万能主義や設計主義に基づき、構造改革の名の下に進められる規制緩和をはじめとした徹底した自由化やサプライサイドへの措置を中心とするものである。 自由化や徹底した規制緩和は、1980年代に登場したインフレ対策のための個別措置であり、デフレからの脱却を謳いながら、その実態は「単なるデフレ推進政策」であるとの批判も識者からはある。
・「保守」の観点から問題視すべきは、アベノミクスがわが国の実態とは乖離して、特定の専門家が描いた設計図に基づいて、しかもある意味独善的に急進的に進められているということである。 加えて、その結果としてわが国が歴史的に積み上げてきたものや伝統が破壊されてきている。まさにこうした歴史的積み上げや伝統、それら体現した団体や共同体といったものが「しがらみ」であり、これをリセットするというのは歴史、伝統、共同体といったものを破壊すると言っているに等しい。
・「保守」の観点からすれば、まずはこれを止めることが必要であり、その上で、真のデフレ対策、例えば公共事業に限らない適切な財政支出の拡大による需要創出と国民の底上げ、「しがらみ」の再生といったことが主張されるべきということになる。
▽原発政策 保守は諸手を挙げての推進はありえない
・「保守」は人間の不完全性を前提としており、理性を絶対視しない。科学技術至上主義、科学技術の粋を集めれば安全は確保されるといった立場は取らない。したがって、諸手を挙げての原発推進はありえない。  一方で、「保守」は「リベラル」でもあるから、異なる立場に対しては寛容である。 そうした意見をも尊重するのであるから、例えば、エネルギーの自給自足という観点から、原発が絶対に安全ではない、むしろ危険であり万が一事故が起これば、想像を絶する被害に見舞われることになりうるということを住民に十分説明し理解を得るべきだと考える。
・その上で、事故に備え、責任の所在も明らかにした綿密な避難計画等も作成して初めて、「それでも設置すべき」といった主張には耳を傾け、しっかりと議論・対話は行う。 「保守」の立場が問題視すべきは、いずれかの主張が絶対に正しいとして他を問答無用で退けたり、科学技術を万能視して原発政策を考えたりすることである。
・以上、「保守」や「リベラル」の観点から今回の選挙において掲げられている主な政策について分析を加えてきたが、これらを見ると少々悲観的にならざるをえないかもしれない。 しかし、「保守」「リベラル」は寛容を旨として異なる意見を尊重して時間をかけて議論をし漸進的に改革を進めていく立場であるし、人間を完成された存在とは考えないのであるから、投票行動についてもそうした観点から検討いただければ幸いである(一方で、投票率が下がらないことを願うばかりである)。
http://diamond.jp/articles/-/146390

第一の記事で、「前原民進党・解党事件」が 『「野田民主党・自爆解散事件」との共通点』、との指摘は、言われてみればその通りだ。前原民進党・解党事件の背景として、右派の論客、田母神俊雄氏が指摘している 『希望の党ができて民進党は解散になる。小池さんも前原さんも、日本の左翼つぶしに是非とも頑張ってほしい。右と左の二大政党では、国がつねに不安定だ。保守の二大政党制になってこそ、安定した政治になる。〔現在の〕日本のおかれた状況で、憲法改正に反対しているような政治家には、国民生活を任せることはできない」』、というのは、私とは立場が逆とはいえ、ズバリ本質を突いた見方だ。 筆者が、『選挙後に姿を表すのは、巨大な「自民・公明・希望・維新」による保守連合体制であり、その最終的な目的は、軍事問題についての「野党の消滅」または「大政翼賛体制の成立」なのである』、 『選挙後に誕生する巨大な保守連合の、新たな目標として設定されているのは、まちがいなく、 ① 全自衛隊基地の米軍使用 ② 核兵器の陸上配備 の2つであるとの筆者の指摘は、残念ながらその通りだろう』、などと指摘しているのは、残念ながらその通りなのだろう。北朝鮮問題で、 『メルケル首相やプーチン大統領が「北朝鮮問題に軍事的解決などない」とくり返し警告しているのは、トランプや金正恩に対してというよりも、むしろ自分たちが一番危険であるにもかかわらず、なぜか声高に強攻策を主張しつづける、理解不能な日本の首相へのメッセージなのである』、 『北朝鮮対策という名目で沖縄に核が配備されたとき、それは自動的に、中国との間で核を撃ち合いかねない「恐怖の均衡」を成立させてしまうのである。そしていうまでもなく、中国のもつ核兵器は、日本列島全体を瞬時に壊滅させるだけの威力をもっている・・・芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の教訓を思い出してほしい。「オレだけが助かればいい。ほかの奴らは地獄に落ちてもかまわない」と思った瞬間、われわれ日本人はみな、一体となって地獄へ落ちていくことになる。 同じように核兵器の配備について「沖縄ならいいか」と思った瞬間、「核大国・中国との間での、永遠につづく軍事的対立」=「永遠の朝鮮戦争レジーム」という、最悪の結果がそこには待ち受けているのだ』、などの指摘は、確かにその通りだ。
第二の記事で、 『「リベラル」と「保守」は対立する思想でも概念でもない』、というのは語源に遡ってみれば、そうなのかも知れないが、生きた言葉は、時代と共に変化していくことも事実である。したがって、現在の世の中一般が理解している意味で、考えればいいと思う。「しがらみ」についての、小泉進次郎氏の街頭演説は、秀逸である。これに対する小池氏の反論を聞いてみたいところだ。 『憲法改正問題 「国の在り方」についての議論が必要』、 『「保守」「リベラル」は寛容を旨として異なる意見を尊重して時間をかけて議論をし漸進的に改革を進めていく立場であるし』、などの指摘はその通りだ。
明後日の国民の審判は、台風来週で投票率低下が、懸念されるが、「与党圧勝」などの事前予想は外れ、他方で、「小池新党の不振」や「立憲民主の健闘」の予想は当たって欲しい、などと勝手に願っている私は、ご都合主義なのだろうか。
タグ:憲法改正問題 「国の在り方」についての議論が必要 前原さんが民進党代表選で言ったAll for all、これってしがらみのない政治と真逆じゃないですか?誰もがしがらみがある中で生きているんですよ。 でも、私は、しがらみと絆って紙一重だと思いますよ。そういった中で、しがらみのない政治、しがらみのない生き方って、一人で人間生きていけますか?いろんな人の支えがあって、いろんな人との助け合いがあって、困った時はお互い様という精神があって、だから、そういった中でどうやったらみんなで助け合う国を、助け合う地域を作っていくことができるのか、これが自民党が作りたい地域社 皆さんに敢えて問いたい、しがらみがない人なんていますか?私、しがらみばっかりです。自民党、しがらみばっかりです。しかし、私たちのしがらみは、いっぱいしがらみがあるから、時にそのしがらみから脱却することができるんです 10月1日に行った街頭演説 小泉進次郎氏 「しがらみ」 リベラル」と「保守」は対立する思想でも概念でもない リベラルとは「独断や独善を嫌う寛容な姿勢 リベラルとは? サヨクと結びつけられるものではない 保守とは「人間や社会の不完全性を前提としつつ、長い歴史や伝統、それらの蓄積を守り生かしながら、時代時代の変化を受け入れて漸進的に改革を進めていく思想であり立場である」 保守思想は、「人間の理性によって理想社会を作ることなど不可能である」と考え、「人間の不完全性や能力の限界から目をそらすことなく、これを直視」し、「不完全な人間が構成する社会は、不完全なまま推移せざるをえないという諦念を共有」するという。そして「特定の人間によって構成された政治イデオロギーよりも、歴史の風雪に耐えた制度や良識に依拠し、理性を超えた宗教的価値を重視」するとし、「エリートの設計主義による理想社会の実現という構想に対して、疑いの目を向け」、「急進的な改革や革命を厳しく批判」するとする。一方で、「社 保守とは? 日米安保や憲法改正への態度とは関係ない 中島岳志氏の『リベラル保守宣言』( 「保守」や「リベラル」の本来の意味 真の「保守」「リベラル」の観点から見直す衆院選の争点 ダイヤモンド・オンライン 室伏謙一 芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の教訓を思い出してほしい。「オレだけが助かればいい。ほかの奴らは地獄に落ちてもかまわない」と思った瞬間、われわれ日本人はみな、一体となって地獄へ落ちていくことになる。 同じように核兵器の配備について「沖縄ならいいか」と思った瞬間、「核大国・中国との間での、永遠につづく軍事的対立」=「永遠の朝鮮戦争レジーム」という、最悪の結果がそこには待ち受けているのだ 北朝鮮対策という名目で沖縄に核が配備されたとき、それは自動的に、中国との間で核を撃ち合いかねない「恐怖の均衡」を成立させてしまうのである。そしていうまでもなく、中国のもつ核兵器は、日本列島全体を瞬時に壊滅させるだけの威力をもっている 核を地上配備するのは、沖縄の嘉手納と辺野古の弾薬庫 核兵器の地上への配備だけは絶対に認めてはならない 中国が北朝鮮の核開発を凍結させ、きちんとした査察を受けさせるなら、米軍を朝鮮半島から撤退させるという交渉もありえる ・メルケル首相やプーチン大統領が「北朝鮮問題に軍事的解決などない」とくり返し警告しているのは、トランプや金正恩に対してというよりも、むしろ自分たちが一番危険であるにもかかわらず、なぜか声高に強攻策を主張しつづける、理解不能な日本の首相へのメッセージなのである 世界の常識 北朝鮮問題に軍事的解決などない。まったくない。開戦30分でソウルの市民1000万人が通常兵器で死亡するという問題を、少しでも解決しないかぎり、(軍事的解決など)意味不明だ スティーブン・バノン 北朝鮮とアメリカの間にも、この「恐怖の均衡」が成立(※)しつつあるのである 米軍・普天間基地が、民間利用ではなく自衛隊基地となり、さらには現在の地位協定と密約の組み合わせによって、事実上の米軍基地となる可能性は非常に高いと私は思う 大政翼賛体制 普天間は一度日本へ返還後、また米軍基地になる? 事実上の米軍基地なのである 富士演習場 以前からアメリカの軍産複合体のシンクタンクで、集団的自衛権とともに日本の課題とされてきたテーマ ② 核兵器の陸上配備 ① 全自衛隊基地の米軍使用 選挙後に必ず起こる2つのこと 朝鮮戦争のなかで生まれた「米軍への絶対従属体制」、いわゆる「朝鮮戦争レジーム」であり、そのなかで日本政府は米軍からの要求に対して、基本的に拒否する権利をもたないというつらい現実があるからだ 、安全保障の問題から左派(リベラル派)の影響力を完全に排除する――。それこそが今回の「前原民進党・解党事件」と、5年前の「野田民主党・自爆解散事件」のウラ側にあった本当の目的であり、グランド・デザインだったというわけだ 小池さんも前原さんも、日本の左翼つぶしに是非とも頑張ってほしい。右と左の二大政党では、国がつねに不安定だ。保守の二大政党制になってこそ、安定した政治になる。〔現在の〕日本のおかれた状況で、憲法改正に反対しているような政治家には、国民生活を任せることはできない 右派の論客、田母神俊雄 野田民主党・自爆解散事件」との共通点 あまりにも奇怪だった「前原民進党・解党事件」 著者・矢部宏治氏 知ってはいけない――隠された日本支配の構造 その結果、どんな事態が想定されるのか 選挙後に私たちの目の前に姿を表すのは、<自民・公明・希望・維新>による巨大な保守連合体制である可能性が極めて高い 誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」 『知ってはいけない』著者の警告 現代ビジネス 矢部 宏治 (その13)(誰が首相になっても総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」、真の「保守」「リベラル」の観点から見直す衆院選の争点) 日本の政治情勢
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