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資本主義(知日派エモット氏:「衰退する西洋と日本の共通点」、デジタル時代、消費者は商品を「所有」できない 米国では「所有権」を取り戻す州法成立の動きも) [経済]

今日は、資本主義(知日派エモット氏:「衰退する西洋と日本の共通点」、デジタル時代、消費者は商品を「所有」できない 米国では「所有権」を取り戻す州法成立の動きも) を取上げよう。

先ずは、7月25日付けダイヤモンド・オンライン「「衰退する西洋と日本の共通点」知日派エモット氏語る ビル・エモット(国際ジャーナリスト)特別インタビュー」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aはエモット氏の回答、+は回答内の段落)。
・元「エコノミスト」誌編集長で、知日派として著名なビル・エモット氏。同氏は最新作『「西洋」の終わり』で、日本や欧米先進国の繁栄の基盤となった「平等」と「開放性」が、衰退の危機にあると警鐘を鳴らしている。世界と日本は今、どう変容しようとしているのだろうか。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
Q:著書『「西洋」の終わり』の中で、西洋の繁栄を支えた二つのキーワードである「平等」と「開放性」が、衰退の危機にあると指摘しています。衰退のきっかけは何だったのでしょうか。
A:トリガーは、2008年のリーマンショックによって引き起こされた金融危機だと考えています。 世界中に広まったこの問題は、多くの人々に対して所得の減少や、教育や福祉など子どもたちに対するさまざまな機会の喪失、それによって将来への希望の喪失をもたらしました。
+一方で、元凶となった金融機関の経営陣や富裕層は生き残り、責任者が罰せられることはありませんでした。所得の低い人々を中心に被害を受けたということです。多くの人々はそんな実態を見て、西洋的市場メカニズムに疑問を持ち、信頼は大きく揺らぎました。 この影響が政治に及び、西洋の繁栄の基礎となった平等や開放性に対する信頼が地に落ちることになり、今は危険な状態にあります。
+これから日本や欧米先進国は平等や開放性の価値を再び認め、維持するのか、または、衰退して経済や政治が長い凋落の時代を迎えるのか、今はターニングポイントにあるといえるでしょう。
Q:格差の拡大も、世界中で問題視されています。
A:私は格差の拡大は、「平等の欠如」によって生まれる差だと考えています。 自分は政治的に存在を認められているのか。同じ権利があるのに、平等に扱われているのか。自分たちの声は届いているのか──。多くの人々は、リーマンショックで富裕層が生き残り、自分たちが損害を被ったことで、富裕層は政治的にも大きな力を持っているんだと分かってしまいました。 そこで、ドナルド・トランプ米大統領は選挙戦で、「忘れ去られていたアメリカ人のために」ということを強調して、支持を得たわけです。
▽日本の監視社会化は将来的な脅威となる
Q:日本でも、平等性や開放性は危機的状況にあるとみていますか。
A:日本でも平等については衰退していると思います。それによって収入の格差は拡大し、貧困率も上がっています。顕著なのが、増え続ける非正規雇用者と、正規雇用者とが分断されている点です。非正規雇用者はいつでも不安定な状況にあります。
+ですが、開放性については衰退しておらず、米国や英国のように閉鎖的な方向に進んでいるわけではありません。 ただ、残念なのが、開放性をさらに拡大する方向にはいっていない、いわば“ステイ”な状況だということです。日本が今後、成長してゆくためには、経済のダイナミズムが必要です。それには開放性の向上が大切なはずです。
Q:著書の中で、二つのキーワードから、西洋が従うべき八つの原則が示されていて、その中で監視社会は法の支配をむしばみ、平等を損なうと指摘しています。日本は共謀罪や特定秘密保護法等、国民への監視を強め、閉鎖的な方向へと進んでいるように見えます。
A:確かに、そうです。日本政府が最近通した法律の中には、監視社会を強める法律があります。監視する力が増すということは、政府の力が増すということ。将来的に平等や開放性が損なわれる脅威であるといえると思います。 こうした政府の動きには、日本国民は抵抗しなくてはならないのではないでしょうか。
Q:今、安倍政権の支持率は急落しています。これも著書にありましたが、政府は支持率が落ちると、短期的に支持を得るために、大衆迎合的な政策を打つ傾向があります。今後、安倍政権はどういう方向へ政策を進めると考えますか。
A:そもそも、安倍晋三首相は、ポピュリストです。これは何も新しいことではありません。 日本の政治の先行きを見通すのは非常に難しいのですが、私はフランス大統領選挙が参考になるのではと思っています。  マクロン仏大統領はポピュリストで穏健右派。短期間で多くの支持を集めました。同様に、日本では東京都知事選挙で大きな支持を集めた小池百合子氏も、ポピュリストであり穏健右派です。小池氏のように、新しいメッセージを示せば、短期間で多くの支持を集められることも実証されました。
+次にどのような政策が打ち出されるかの詳細は分かりません。楽観主義的な見方かもしれませんが、極端な政策が出てくることはないと思っています。  都知事選を見ていると多くの人々が、平等の欠如による格差拡大や不公平感、女性や子どもに対する支援の充実について、高い関心を持っていることが分かりました。つまり政治的には、こうしたテーマについて何かポジティブなことをやっていく、強いインセンティブになっているわけです。 もちろん、これからどのような政治や政党の勢いが増すのかについては分かりませんが。
Q:平等と開放性は、外的要因によって失われることもあります。日本でいえば、「北朝鮮情勢の不安定化」のように、二つのキーワードの価値観を全否定する存在が脅威として浮上すると、その脅威から自らの価値観を守るために、閉鎖的な政策にかじを切ることがあると思います。
A:確かに、外の脅威はいつの時代にもあります。今は北朝鮮やIS(過激派組織「イスラム国」)がそうで、欧州ではテロの脅威があります。 ですが、今がこれまでと違うのは、私たちの内部からこの二つのキーワードを衰退させる要因が生み出されているという事実です。
+私たちは「平等」と「開放性」がもたらした繁栄や強さをもう一度認識して、これまでの市場や社会の仕組みを再構築しなければならない時期にきています。 08年の金融危機を発端にした大惨事が、いかにして起きてしまったのか。それを振り返る必要があります。民主主義がカネで覆いかぶされてしまい、本来の民主主義の強さが半減されていなかったのか。富が一部の富裕層に独占されていなかったのか──。
+西洋の仕組みの脆弱さを正しく理解すれば、もう一度、私たちはかつての強さを取り戻すことができると考えています。
http://diamond.jp/articles/-/136184

次に、10月23日付け日経ビジネスオンラインがThe Economistの記事を転載した「デジタル時代、消費者は商品を「所有」できない 米国では「所有権」を取り戻す州法成立の動きも」を紹介しよう。
・かつて、「(ものを)所有」するということは、小切手を切るのと同じくらい単純な行為だった。何かを購入したら、それを所有することになった。壊れたら修理をするし、不要になったら売るか捨てる、といった具合だ。  一部の企業は、アフターサービス市場で儲ける技を編み出した。有料の長期保証を導入したり、メーカーが認定する修理店を展開したり、あるいはプリンター本体の価格は安く抑えて、定期的に買い替えが必要なインクカートリッジを高値で売りつけるといった手法を発案した。 ただ、利益をさらに絞り出すためのこうした手法が登場しても、何かを「所有する」という意味の本質が変わることはなかった。
▽今や消費者は「買った」商品の「使用を許されているだけ」だ
・ところが、デジタル時代においては、「所有」という概念はつかみどころのないものに変わってしまった。例えば、米電気自動車(EV)メーカー、テスラの最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏は、米ウーバー・テクノロジーズなどのライドシェア企業においてテスラのクルマを購入し、そのクルマを使ってウーバーなどの運転手が働くことを禁じている。
・あるいは米トラクターの「ジョンディア」を所有する人は、それを制御するソフトウェアをいじらないよう“推奨”されている。スマートフォンが登場して以来、消費者はデバイスの中のソフトに手を加える権利を奪われ、単にその使用を許されているだけ、ということを受け入れざるを得なくなっている。
・だが、デジタル化が進み、自動車や温度自動調節器、そして性具にいたるまで、あらゆる機器がメーカー側の都合でこれらの機器を自由にする権利がますます制限される中、誰が何を「どこまで所有し」、「コントロールできるのか」という問題が生じつつある。消費者は、今や最も基本的な「所有権」というものが脅かされていることを認識すべきだ。
・こうした最近の流れは、決して悪いことばかりではない。メーカー各社が、ますます複雑な技術により所有者の行動を制限しようとするのには、それなりに正当な理由がある。具体的には、著作権の保護だったり、機械の故障を防ぐことだったり、環境基準を満たすためだったり、ハッキングを防止するためといった理由がある。
▽ハリケーンに備え、遠隔操作でバッテリー寿命を伸ばしたテスラ
・場合によっては、メーカーがソフトを制御していることで、消費者が恩恵を受けるケースもある。例えば、9月に大型ハリケーン「イルマ」が米フロリダ州を襲った際、テスラは一部のモデルのソフトを遠隔で更新し、安全な場所へ避難できるようにバッテリーの寿命を延ばしたという。
・だが、商品にデジタルの面で様々な制限が課されれば課されるほど、商品の所有者よりも生産者の方が大きな裁量権を握るようになりつつある。これは、なかなか厄介な話だ。 どのクルマを買うかを選ぶだけでも難しいのに、そのクルマの使い方がどのように制限されるのか、また、どういった個人データをメーカー側が収集するのか、といったことをクルマの仕様から読み解かなければならないとなれば、なおさら困難だ。
・さらに、そうした仕組みによってメーカーの都合で商品が長くは使えないようになっていたら、消費者にとってはそれだけコストがかかることになる(注*1)。既に、スマホから洗濯機まで、あらゆる商品は修理がしにくくなっている。つまり、壊れたら修理されることはなく、廃棄されているのだ。 (注*1) 一部のスマートフォンは、電池がだめになっても電池だけを交換することができず、買い換えなければならないようなケースを指していると思われる)
▽家庭内の間取り情報を吸い上げる「ルンバ」
・消費者のプライバシーも脅かされている。例えば、米アイロボットの掃除機「ルンバ」が、床を掃除するだけでなく家庭内の間取りデータを収集し、メーカー側がそれを外部企業に売り込もうとしていると報じられた時は、ユーザーたちを愕然とさせた(しかし、アイロボットはそのような意図はないと強調している)。
・また、「ウィーバイブ」というバイブレーターを製造販売しているカナダのスタンダード・イノベーションは、そのユーザーに関する非常にプライベートな情報を収集、記録していることがハッカーによって暴かれた。これを受けて、同社は、原告1人当たり最大127ドル(約1万4300円)、総計で最大320万ドル(約3億6100万円)を支払うことで示談に同意した。
・さらに、トラクターのジョンディアについては、メーカーが認定したソフトしか使用が認められていないことに対し、農家側が反発している。問題が発生した場合、遠く離れた修理店まで行かなければならないため、繁忙期に故障が起きたら商売上、大きな痛手を被る可能性があるというのだ。一部の農家は、ユーザーが自分で直せないように組んであるソフトの制限を解除してある。制限を回避するために、東欧で開発されたソフトを利用しているという。
・こうしたメーカー側による消費者のプライバシーへの介入を前に消費者たちは、自分たちの所有権というものを注意深く守らなければならないことを改めて認識すべきだ。 自分の「所有物」に手を加え、改造したければ好きなように改造できる権利、そして、そこから収集されるデータを誰が使っていいのかを決める権利に至るまで、闘ってでも守らなければならない。
▽米国の十数の州では「修理する権利」を法制化する動きも
・米国ではこうした考え方が浸透し、「修理をする権利」というのを定めるための法案が十数の州で検討されている。また、欧州議会は、洗濯機などの製品をもっと修理しやすくするようにメーカーに働きかけている。  フランスの家電メーカーは、予想される耐用年数を買い手に伝えることを義務付けられている。それによって、修理しやすいかどうかがある程度わかるというわけだ。
▽デバイスによって得られる「自由」が損なわれる
・さらに、規制当局はもっと競争を促すために、メーカーが認定する修理店と同様に、独立系の修理店も商品に関する情報やスペア部品、修理ツールなどを入手できるようにするべきだろう。これは既に自動車業界では当たり前のルールとなっている。
・「所有」という概念は決して消滅しつつあるわけではない。その意味が変化しつつあるだけに、今よく考える必要があるということだ。 概してスマホをはじめとしたデバイスは、それを使う人にとって、様々なやりたいことを実現させるための手段という前提で販売されている。しかし、それが他の誰かにコントロールされているとなれば、せっかくそのデバイスの入手によって新たに手にした自由が損なわれてしまうことを意味する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/101900144/?P=1

第一の記事で、 『西洋の繁栄を支えた二つのキーワードである「平等」と「開放性」が、衰退の危機にある・・・トリガーは、2008年のリーマンショックによって引き起こされた金融危機』、 『元凶となった金融機関の経営陣や富裕層は生き残り、責任者が罰せられることはありませんでした。所得の低い人々を中心に被害を受けたということです。多くの人々はそんな実態を見て、西洋的市場メカニズムに疑問を持ち、信頼は大きく揺らぎました。 この影響が政治に及び、西洋の繁栄の基礎となった平等や開放性に対する信頼が地に落ちることになり、今は危険な状態にあります・・・そこで、ドナルド・トランプ米大統領は選挙戦で、「忘れ去られていたアメリカ人のために」ということを強調して、支持を得たわけです』、との鋭い指摘はさすがエモット氏ならではである。 『日本でも平等については衰退していると思います・・・ですが、開放性については衰退しておらず、米国や英国のように閉鎖的な方向に進んでいるわけではありません』、との日本の開放性についての指摘には違和感がある。 『日本政府が最近通した法律(共謀罪や特定秘密保護法等)の中には、監視社会を強める法律があります。監視する力が増すということは、政府の力が増すということ。将来的に平等や開放性が損なわれる脅威であるといえると思います。 こうした政府の動きには、日本国民は抵抗しなくてはならないのではないでしょうか』、 『08年の金融危機を発端にした大惨事が、いかにして起きてしまったのか。それを振り返る必要があります。民主主義がカネで覆いかぶされてしまい、本来の民主主義の強さが半減されていなかったのか。富が一部の富裕層に独占されていなかったのか──。』、などの指摘はその通りだ。
第二の記事で、 『今や消費者は「買った」商品の「使用を許されているだけ」だ』、との指摘は、これまで、自分では気づかなかったが、言われてみれば確かにその通りだ。ただ、日本ではかつて、湯沸かし器の不正修理で死亡事故が起きたこともあり、所有権が完全にはないことが一概に不合理な訳ではない。 『ハリケーンに備え、遠隔操作でバッテリー寿命を伸ばしたテスラ』、はいいとしても、 『家庭内の間取り情報を吸い上げる「ルンバ」』には、驚かされた。 『米国の十数の州では「修理する権利」を法制化する動きも』、というは、日本も見習う必要があるだろう。
今日は、「資本主義」とおおげさなタイトルをつけた割には、その端をかすっただけで終わってしまったが、今後、よりふさわしいネタが出てきてほしいものだ。
タグ:ビル・エモット 「衰退する西洋と日本の共通点」知日派エモット氏語る ビル・エモット(国際ジャーナリスト)特別インタビュー」 資本主義 (知日派エモット氏:「衰退する西洋と日本の共通点」、デジタル時代、消費者は商品を「所有」できない 米国では「所有権」を取り戻す州法成立の動きも) ダイヤモンド・オンライン メーカーが認定する修理店と同様に、独立系の修理店も商品に関する情報やスペア部品、修理ツールなどを入手できるようにするべきだろう 米国の十数の州では「修理する権利」を法制化する動きも メーカー側による消費者のプライバシーへの介入を前に消費者たちは、自分たちの所有権というものを注意深く守らなければならないことを改めて認識すべきだ 非常にプライベートな情報を収集、記録していることがハッカーによって暴かれた バイブレーターを製造販売しているカナダのスタンダード・イノベーション 家庭内の間取りデータを収集し、メーカー側がそれを外部企業に売り込もうとしていると報じられた 家庭内の間取り情報を吸い上げる「ルンバ」 ハリケーンに備え、遠隔操作でバッテリー寿命を伸ばしたテスラ メーカー各社が、ますます複雑な技術により所有者の行動を制限しようとするのには、それなりに正当な理由がある。具体的には、著作権の保護だったり、機械の故障を防ぐことだったり、環境基準を満たすためだったり、ハッキングを防止するためといった理由がある。 今や消費者は「買った」商品の「使用を許されているだけ」だ 一部の企業は、アフターサービス市場で儲ける技を編み出した 「デジタル時代、消費者は商品を「所有」できない 米国では「所有権」を取り戻す州法成立の動きも」 The Economist 日経ビジネスオンライン 08年の金融危機を発端にした大惨事が、いかにして起きてしまったのか。それを振り返る必要があります。民主主義がカネで覆いかぶされてしまい、本来の民主主義の強さが半減されていなかったのか。富が一部の富裕層に独占されていなかったのか──。 こうした政府の動きには、日本国民は抵抗しなくてはならないのではないでしょうか 日本政府が最近通した法律の中には、監視社会を強める法律があります。監視する力が増すということは、政府の力が増すということ。将来的に平等や開放性が損なわれる脅威であるといえると思います 共謀罪や特定秘密保護法等 開放性については衰退しておらず、米国や英国のように閉鎖的な方向に進んでいるわけではありません 日本でも平等については衰退していると思います ドナルド・トランプ米大統領は選挙戦で、「忘れ去られていたアメリカ人のために」ということを強調して、支持を得たわけです 多くの人々はそんな実態を見て、西洋的市場メカニズムに疑問を持ち、信頼は大きく揺らぎました。 この影響が政治に及び、西洋の繁栄の基礎となった平等や開放性に対する信頼が地に落ちることになり、今は危険な状態にあります 元凶となった金融機関の経営陣や富裕層は生き残り、責任者が罰せられることはありませんでした。所得の低い人々を中心に被害を受けたということです トリガーは、2008年のリーマンショックによって引き起こされた金融危機だと考えています 日本や欧米先進国の繁栄の基盤となった「平等」と「開放性」が、衰退の危機にあると警鐘を鳴らしている 『「西洋」の終わり』
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