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北朝鮮問題(その12)(北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か、北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告、北朝鮮の自制はなぜか 孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ) [世界情勢]

北朝鮮問題については、9月21日に取上げた。今日は、(その12)(北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か、北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告、北朝鮮の自制はなぜか 孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ) である。

先ずは、経済ライター、Beacon Reports発行人のリチャード・ソロモン氏が11月4日付け東洋経済オンラインに寄稿した「北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・イスラエルの歴史学者・執筆家のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、ほとんどのテロリストは陶器店を破壊しようとして飛び回る無力なハエのようなものだと話す。 「ハエは力が弱すぎてティーカップ1つをも押し傾けることができない。よってハエは見つけた雄牛の耳に入りその中でブーンと音を立てる。そうすると雄牛は恐怖と怒りで暴れ出し陶器店を破壊する」と例える。
▽北朝鮮が米国を攻撃する可能性
・テロリストはドラマチックな手法で挑発してくるため、狙われた側が過剰反応し、自分たちはテロリストよりもっと強く恐ろしいのだと威嚇してくるのだ。このハラリ氏の類比論は、ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩委員長の好戦的な発言に過剰反応することで、意図せず引き起こされる可能性のあるダメージに対する辛辣な警告である。
・北朝鮮は近いうちにサンフランシスコを破壊する能力のミサイルを開発する可能性がある。しかし、正恩氏が実際に米国を「狙う」ことはあるのだろうか。米国は過去70年以上もの間、比較にならないほど強い破壊力を持つ核兵器で攻撃を抑止してきた。 「旧ソビエトは数千もの核兵器を保有し、米国本土を繰り返し破壊する能力を持ち合わせていた。そのソビエトを思いとどまらせてきた米国が今なぜ北朝鮮を恐れないといけないのか?」と外交政策アドバイザー、ブラッド・グロッサーマン氏は問いかける。
・同氏は、米国の有力シンクタンク、CSISパシフィック・フォーラム事務局長を務めるほか、多摩大学ルール形成戦略研究所の客員教授でもある。同氏の見立てでは、正恩氏は、核兵器を米国や、その同盟国に対して最後の砦としてしか使わないはずだ。
・正恩氏は、北朝鮮が作り出すほんの少しの富でも軍事政権を支えられるよう多くの国民を貧困に陥れてきた――彼の父、祖父もそうした。正恩氏の究極の希望は、米国を朝鮮半島から退かせ、そこに韓国・北朝鮮の統一国家をつくり自分がその合法的な支配者に納まりたいというところではないか。 それを実現するために、国際社会ではナンバーワンではなく、「ナンバーツーの敵」となってきた。ナンバーワンになってしまえば、首をはねられてしまうからだ。「正恩氏はまったくもって理論的な人物で、彼にとって好ましくない境遇をうまく切り抜けてきた」と、グロッサーマン氏は話す。
▽「レッドライン問題」にするのは危険だ
・一方、トランプ大統領も世間からの注目を好み、人を嘲笑し、何かを得るためには相手をいじめにかかる性質を持っている。正恩氏同様、予測不能なことをして、人を驚かせるタイプだ。今のトランプ大統領は、国民が共有するところの国益としての理念、価値観、軍事以外の説得方法(つまりソフトパワー)を独断で抑えつけ独り歩きしている。
・トランプ大統領による、利益を得る者がいれば利益を失う者がいるという「ゼロサム」の攻撃的なリーダーシップ、多国間協調の軽視、過去に締結された協定からの脱退という行為は、同盟国を不安にさせている。 「トランプ大統領は、米国第一主義という公約を守るために本当に韓国や日本を犠牲にしてサンフランシスコを守るのではないか」と同盟国は考えているかもしれない。政策立案者たちがこのような疑問を持ち始めるということだけで、米国の友好的な地域の覇権、地域の安定の将来に暗い影が見え始めているということを意味する。
・グロッサーマン氏は北朝鮮問題を 「レッドライン問題」にしてしまうことは間違いだと指摘する。日本と韓国は、何年もの間、北朝鮮に威嚇され続けてきた。米国本土攻撃の危機感を理由に「今行動あるのみ」と米国が息巻くのは、同盟国に米国との同盟関係を懸念する材料を与えるだけだという。「もし何かがわれわれを歯車から切り離し力を弱めてゆくとすれば、それはまさに同盟国との脆弱な関係だ」と同氏は話す。
・一方、正恩氏がおとなしくし続けることは考えがたい。おそらく同氏は核弾頭を表面的に利用しながら西の同盟国の絆を弱めようとするだろう。 たとえば韓国船を沈下させるなどというような小さめの挑発から始め、後に第3、第4の手段として海中核爆発を実行するなどして衝突緊張をしだいにエスカレートさせていくことも考えられる。そして米国はそのつど韓国、日本、そして自国のうち誰の利益を守るかの選択を迫られるのである。
・北朝鮮に悩まされ続けてきた韓国政府は、軍事境界線から35マイル南に位置し、北の莫大に備蓄された従来兵器の射程距離に入っている。何百万人もの韓国人が攻撃対象のリスクとともに生活しているのだ。韓国政府は、北からの報復・先制攻撃を恐れ、米国は北朝鮮の挑発に対する態度を日本政府よりもトーンダウンすべきだと米国政府に要求してきてもおかしくない。 そこでトランプ大統領は、韓国政府と日本政府のどちらを守るかの二者択一を迫られるのである(もっともトランプ大統領が、日本と韓国の利益に少しでも関心があれば、の話だが)。
▽核不拡散条約が直面する新たな課題
・グロッサーマン氏は、トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ。
・「トランプ大統領が悪者に見える発言をするように仕掛け、日韓政府に不信感を抱かせる。さらに、中国にとっての道理が通らないパートナーになってもらい、米国が築いてきた世界における義務遂行能力、パワー、立場を弱めてもらう」(グロッサーマン氏)
・かつては、米国の持つ「核の傘」がアジア太平洋地域の国々を守ってきたが、これからは各国が自国を、核兵器の脅威から守る努力をしなければならない日がくるかもしれない。核拡散防止条約が、真の狂人が爆弾を手にしたらどうするのか、という新たな課題に直面する日も遠くなさそうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/196250

次に、11月10日付け東洋経済オンラインが「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部の記事を転載した「北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・地上侵攻は北朝鮮の核兵器を破壊するためのもの。もし北が先に核のボタンを押せば、攻撃されるのは在日米軍と在韓米軍だ。 アメリカが北朝鮮を地上侵攻したら、どれほどの犠牲が出るか。「流血の大惨事になる」と、専門家は警告する。 当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
・米軍の最高機関である米統合参謀本部は10月下旬、北朝鮮が開発する核兵器や関連施設を「完全に破壊する」ためには、地上侵攻しかないという見解を示した。北朝鮮の金正恩政権の内部情報がほとんどなく、核兵器や通常兵器の保管場所もほとんど把握できていないため、標的ありきの空爆では完全に破壊することができないのだ。
・地上戦が避けられないとしたら、それは具体的にどんな戦争になるのか。専門家に聞いた。 米軍が地上侵攻に踏み切るとしたら、それは多面的な軍事作戦の一部になるだろうと、英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)ワシントン所長のマーク・フィッツパトリックは本誌に語った。 地上侵攻の主力は韓国軍で、米軍の特殊部隊は諜報活動や後方支援を担うだろう。「地上侵攻の要は、北朝鮮の核兵器や関連施設を掌握することだ。問題は、それらの位置を特定できるかどうかだ」とフィッツパトリックは言う。
▽朝鮮戦争では数百万人が犠牲に
・だが地上侵攻に先駆けて、まずは米空軍のF22ステルス戦闘機やB2ステルス戦略爆撃機などが、すでに場所がわかっている北朝鮮の核関連施設や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射台を攻撃する。その後、米軍と韓国軍の特殊部隊がパラシュートで北朝鮮に降下し、核兵器の保管場所を特定して無力化する。この作戦は戦いの「かなり早い段階で」実施されるはずだと、米政府で対北朝鮮政策を担当したこともあるフィッツパトリックは言う。
・「米韓両軍は対立が戦争にエスカレートする前に核兵器を掌握しようとするだろう。北朝鮮の核攻撃だけは阻止しなければならない」 北朝鮮との戦争では「非常に短期間で相当数の死者が出る」とフィッツパトリックは警告する。実際、朝鮮戦争では約3万3000人の米軍兵士を含め数百万人が犠牲になった。たとえ核兵器が使われなくても、北朝鮮と韓国の死者は戦闘開始後あっという間に100万人以上に達すると、フィッツパトリックはみている。
・「北朝鮮は恐らく、戦闘開始後のできるだけ早い段階で核攻撃を行おうとすうるだろう。攻撃対象はたぶん在日米軍か在韓米軍、もしくはその両方だ」 ただしアメリカが北朝鮮の金正恩政権を相手にわざと戦争を始めるとは思わないと、フィッツパトリックは言う。「米朝戦争が勃発するとしたら、最もありそうなのは、米政府の声明や行動を北朝鮮が誤解した時だ」
▽望ましい軍事的選択肢など1つもない
・韓国には約2万4000人、日本には約4万人の米軍兵士が駐留している。一方、北朝鮮軍の兵士は約120万人で、1万1000人規模の砲兵部隊と60発程度の核兵器を保有すると見られている。技術力も含めた軍事力ではアメリカが北朝鮮を圧倒しており、負けるのは北朝鮮だろう。だがアメリカが北朝鮮と戦争を始めれば、数百万人の市民が犠牲になる、という見方が大勢だ。
・米軍の軍事作戦に対して北朝鮮が核攻撃で報復すれば、10万人の在韓・在日アメリカ人を含めて数百万人の市民の命が危険になる。そうなる前に、北朝鮮の核兵器をアメリカが完全に破壊できる保証はどこにもない。
・米議会調査局が10月下旬に発表した報告書は、米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した。米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書は、もし北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計した。 北朝鮮に対する望ましい軍事的選択肢など1つもないと、多くの人が感じるのは当然だ。
http://toyokeizai.net/articles/-/196890

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が11月16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「北朝鮮の自制はなぜか、孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮は9月15日の「火星12」の発射後2ヵ月間、弾道ミサイル発射を行っていない。従来、北朝鮮は米軍・韓国軍の共同演習を威嚇と見て、それに対抗しミサイルを発射、また国連の制裁決議に屈しない姿勢を示すためにもそうした行動を取ってきた。だが、トランプ大統領の11月5日からの日本、韓国、中国などの歴訪や日本海での日米、米韓海軍共同演習に対し、報道では口を極めた反発を示しつつ、軍事力の誇示を控えている。それはなぜかを考えてみた。
▽「核戦力の建設達成」は「中断」の弁明  米国の軍事圧力に一定の効果か
・唐突だったのは、朝鮮の「労働新聞」が10月28日号の論評で「核戦力の建設は既に最終完成の目標が全て達成された段階にある」と報じたことだ。 その1ヵ月以上前の9月15日には、北海道上空を経て北太平洋に落下した「火星12」の発射実験を視察した金正恩国務委員長が、「(開発は)終着点にほぼ達しているので全力を尽くして終えなければならない」と語った、と北朝鮮で報じられた。 わずか1ヵ月そこそこで、何がどう変わったのか。10月28日に突然「核戦力建設の目標は全て達成された」と発表したのは、ミサイル実験を今後行わない、しばらく中断することの内外に向けての弁明ではないか、と考えられる。
・北朝鮮の核・ミサイル開発は、1990年に当時のソ連が韓国を承認して国交を樹立、92年に中国もそれに続き、両国が北朝鮮に武器輸出を停止したため本格化した。 ソ連、中国に見放された北朝鮮は孤立し、経済は衰弱、兵器の更新もほとんどできない状況にある。圧倒的に通常戦力で優勢な米軍・韓国軍に対して北朝鮮が抑止力を持とうとすれば、その最終目標は米国本土を確実に狙えるICBM(大陸間弾道ミサイル)と核弾頭の保有だったはずだ。
・9月15日に金正恩委員長が「終着点にほぼ近付いた」と言ったのは、そうした悲願ともいえるICBMの完成が近いことを示した、と考えられる。だが課題は残っていた。 7月28日に発射した「火星14」は米国とロシアの間のICBMの飛行時間を上回る、47分間も飛び、理論上は、米本土ほぼ全域に到達する力を持つ。
・だが大気圏突入時の弾頭の姿勢制御や、その際に空気が圧縮されて生じる約7000度の高熱に耐え得るか、などの課題が残り、少なくとも完成までにはあと数回の発射実験が必要、と考えられていた。 その後、北朝鮮は8月8日の人民戦略軍の声明などで、グアム島周辺の海上に向け「火星12」を4発発射する計画を公表、島根県などの上空を通るその軌道まで通告していた。ところがそれは実施せず、8月29日に北海道南部上空を経て北大平洋に向け「火星12」1発を発射しただけだった。
・グアム周辺への威嚇発射をやめたのは、米国がそれに怒って軍事的圧力を強化し、武力衝突に発展すれば北朝鮮の敗北は必至だったからだろう。 米軍に攻撃されて、残った核ミサイルを急いで韓国、日本に撃ち込んだとしても、「刺し違い」となるだけで、北朝鮮は滅亡するから、米国に対し余りに露骨な威嚇は避けたものと考えられる。
・さらにその後、9月3日に北朝鮮は初の水爆実験を行い、9月15日に「火星12」を再び北太平洋に発射した。だが、それ以降2ヵ月ミサイル発射を行わず、10月28日に「核戦力建設の目標を達成した」と発表した。  これは米国の軍事的圧力が北朝鮮に核廃棄を強いるほどの効果はなくても、ある程度自制をさせる役には立つことを示した、と考える。
▽中国が石油禁輸の制裁で対北説得のカードを握る
・それ以上に重要なのは経済制裁、特に石油禁輸に対する中国の姿勢だろう。 9月3日に北朝鮮が行った水爆実験に対し、翌4日に開かれた国連安保理緊急会合では米国のN・ヘイリー大使が「24年間も北朝鮮と対話してきたのは無駄だった。もうたくさん」と舌鋒鋭く徹底的な制裁を求め、6日に米国は全面的な石油禁輸を行う制裁案を提出した。 だが、北朝鮮の石油輸入元の約9割を占める中国はそれに難色を示し、拒否権を発動しかねない状況だった。このため米国は中国と協議し、全面禁輸ではなく輸出量の上限を定める修正案を11日に提出。それが全会一致で決議された。
・実はこの米国案は骨抜きだった。北朝鮮への原油輸出を「年間400万バレル(63.6万キロリットル)以下」、石油精製品(ガソリン、軽油、重油など)は「200万バレル(31.8万キロリットル)以下」に制限することとしたが、OECD(経済協力開発機構)の付属機関である「国際エネルギー機関」の統計では、2014年の北朝鮮の石油輸入は原油が53.2万キロリットル、石油精製品が31.8万キロリットルだったから、安保理が定めた原油輸出の上限は2014年の北朝鮮の輸入量より10万キロリットルも多い。
・石油精製品の上限は2014年の輸入量と同じだった。米政府はメディアに「北朝鮮の石油精製品の輸入量は450万バレル(71.5万キロリットル)で、その55%の削減となる」と説明したが、2014年から16年までの間に輸入量が2倍以上に増えたとは信じ難く、トランプ流の成果の宣伝では、と疑われる。
・事実上、従来通りの北朝鮮への石油輸出を認めさせた中国は、その一存で北朝鮮への輸出量を左右できるから、それを北朝鮮説得のカギとすることができる立場となった。 「全面的石油禁輸になるところを助けてやったのだから、アメリカを刺激するような行動はやめろ。またやったら石油を止める」と中国に言われれば、北朝鮮も従わざるを得ない。そこで「核戦力建設の目標は全て達成された」としてミサイル発射を控えることになった、と考えれば、北朝鮮の突然の姿勢変化の説明がつく。
▽米中首脳会談でも習近平主席が主導権持つ
・トランプ大統領の11月8日の訪中を、習近平主席は最大級の厚遇で迎えたが、安倍首相の低姿勢のおもてなしと異なり、復活した「中華帝国」の威光をにこやかに示す風格が感じられた。 北朝鮮に対する圧力に関して両首脳は共同記者会見で、「国連安全保障理事会が採択したすべての制裁決議を今後も厳格に履行していくことで一致した」と述べた。
・制裁決議は常任理事国である中国が賛成して決まったのだからこれは当然だ。米国が当初、唱えた全面的石油禁輸案に中国が反対し、事実上、従来通りの輸出量を上限とするよう修正させたのだから、トランプ大統領がその決議の「厳格な履行」に同意したのは「その範囲内での石油輸出には文句は言わない」と再確認したことになる。
・またトランプ大統領は「北朝鮮の核保有は認めず、経済圧力をかけ続ける」とも述べた。安倍首相との会談で合意した「最大限の圧力」ではなく「経済的圧力」としたことは「軍事的圧力」は除外する意味となる。 習主席は「(米中)双方は対話と交渉による問題解決に努める」と共同会見で述べたが、これはトランプ大統領が「対話は無駄」とするこれまでの硬直姿勢を習主席との会談で緩めたことを意味する。
・トランプ大統領は、習主席との会談後、あらゆる手段による「最大限の圧力」や「対話は無駄」との日頃の主張をせず、「経済的圧力」を語り、習主席が求める「対話と交渉による解決」に反対する姿勢を示さなかった。トランプ大統領の場当たり的発言は定評があり、あまり当てにはならない、とはいえ、中国は北朝鮮と米国の双方をたしなめ、チキンゲームを続けて衝突することがないよう減速させることに、ある程度は成功したかに見える。
▽制裁で北の核放棄は期待できない 威嚇は武力衝突に発展する可能性が高い
・安保理が決めた経済制裁には、北朝鮮の核・ミサイル開発の速度を遅らせる効果はあっても、核廃棄をさせる効果があるか否かは疑わしい。 前回10月19日の本コラムで書いたように、韓国政府は北朝鮮の核・ミサイル開発費用は 「昨年200億円以上」と推計していることを日本外務省に伝えている。 これは日本が購入中のF35Aステルス戦闘機(1機146億円)の1.4機分でしかなく、北朝鮮のGDPの0.6%に過ぎない。この程度の額であれば、経済制裁によって「資金源を断って核・ミサイルを廃棄させる」効果はまずないといえよう。
・また、経済制裁で生活が苦しくなった国民が政府に対し蜂起した例もこれまでなく、むしろ制裁に反発し団結強化に向かいがちだ。経済制裁はせいぜいがミサイル発射や核実験を若干慎ませ、開発を遅らせる程度の効果しかあるまい。
・いずれ米国は「経済的圧力」に効果がなければ、「軍事的圧力」に力点を移すしかない。威嚇は相手がそれに屈しなければ一層エスカレートし、武力紛争に発展しがちだ。 米国はトランプ大統領の東アジア歴訪に合わせて、空母「R・レーガン」「T・ルーズヴェルト」「ニミッツ」3隻とイージス・ミサイルシステムを搭載した巡洋艦、駆逐艦11隻を北西太平洋に集結させ、最大154発の「トマホーク」巡航ミサイルを搭載する原子力潜水艦「ミシガン」も朝鮮半島水域に派遣している。
・11月11日から14日の米韓合同海洋演習には韓国海軍の7隻も参加、日米の共同訓練には海上自衛隊のヘリ空母「いせ」と護衛艦「いなずま」「まきなみ」やP‐3C哨戒機などが参加した。グアムのB1B爆撃機と航空自衛隊、韓国空軍との共同訓練も行われ、米空軍は嘉手納にF35Aを12機増派、岩国の海兵隊のF35Bの16機と合わせステルス戦闘機は28機になる。
・これらの計画は、今回のトランプ・習近平会談以前に決まったもので、この会談後にトランプ大統領が「経済的圧力の強化、継続」を表明したのとは完全には合致せず、もし北朝鮮がミサイル発射を控え続ければ、米空母は再び横須賀を母港とする「R・レーガン」だけに戻る可能性が高い。
・だが一方で、北朝鮮がミサイル発射や核実験を再開すれば、米軍は威嚇を強化せざるをえない。北朝鮮の領海付近で艦艇、航空機が活動し、米軍がこれまで他国上空でしばしば行ったように、領空上空に入って偵察活動をすれば、相手は対艦、対空ミサイルを発射するなどで対抗し、誰も望んでいない戦争の戦端が開かれる結果になりかねない。
▽日本にもミサイルが発射される 日本人の命を守るのは習近平?
・米統合参謀本部は11月初頭、米国議員の質問に答えた書簡で「北朝鮮の核兵器の位置を特定し、完全に破壊する唯一の方法は地上部隊の侵攻であり、地下深くの施設を無効化する間に北朝鮮が核兵器で反撃する危険がある」と述べ、外交的解決を求めている。
・もし米・韓軍が北朝鮮を攻撃すれば、滅亡が迫った北朝鮮は自暴自棄となり、急いで残った核ミサイルを韓国や日本に発射する公算は高いのだ。 仮に東京の都心上空で北朝鮮の水爆(推定威力は爆薬16万トン相当)が爆発すれば、半径4キロ以内では初期放射線と爆風、熱の相乗効果でほぼ全員が死傷し、6〜7キロメートル以内でもヤケドを負うことになる。
・勤務時間内なら、都心の4キロメートル圏内に400万人は居るだろう。日本の政治、行政、経済、情報の中枢は壊滅し、救援も遅れて悲惨な状況になる。米国防長官J・マティス海兵大将(退役)が「第2次大戦後最悪の惨事となる」として、外交的解決を求めるのは当然だ。
・習主席が「対話による北朝鮮核問題の解決」の必要性をトランプ大統領に説いたのは、米軍の首脳部やR・ティラーソン国務長官、与党共和党の主流など、現実派と軌を一にしている。 世界の国家指導者はほぼこぞって対話を求めている。一方、トランプ大統領は奇矯、浅慮の言動で世界から孤立、第一の同盟国である英国でも、「エリザベス女王が謁見をされるべきか否か」が論じられ、いまだに公式訪問ができないほどの不評だ。
・国内でも省庁幹部の任用がなお進まず、大統領令は裁判で次々に否定され、側近のロシアとの癒着の捜査が進み、共和党の重鎮とも罵倒の応酬をするありさま。彼の失態報道には「ウソだ。ウソだ」と耳をふさぐ、有権者全体の30数%のトランプ信者だけが頼りだ。
・ところが安倍首相だけはこの「四面楚歌」のトランプ大統領との密接さをアピールしようと、ひたすら歓待に努め、「対話は無駄」と言うトランプ大統領に歩調を合わせて、「最大限の圧力をかける」ことで完全に一致したのだ。 米国の現実派と同調し、対話の必要性をトランプ大統領に説いた習主席とは対称的だ。
・「戦争になれば大参事となる。核戦争を避けるには外交と対話が必要」とする米軍上層部の現状認識は私がこの数ヵ月間、本コラムで述べてきたことと「完全に一致する」。 「日本人の命を守る」ことに貢献するのは安倍・トランプ両首脳ではなく、習主席および慎重な米国の将軍達か、と慨嘆せざるをえない。
http://diamond.jp/articles/-/149090

第一の記事で、 『「旧ソビエトは数千もの核兵器を保有し、米国本土を繰り返し破壊する能力を持ち合わせていた。そのソビエトを思いとどまらせてきた米国が今なぜ北朝鮮を恐れないといけないのか?」と外交政策アドバイザー、ブラッド・グロッサーマン氏は問いかける』、 『米国本土攻撃の危機感を理由に「今行動あるのみ」と米国が息巻くのは、同盟国に米国との同盟関係を懸念する材料を与えるだけだ』、 『トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ』、などの指摘は極めて説得的だ。
第二の記事で、 『たとえ核兵器が使われなくても、北朝鮮と韓国の死者は戦闘開始後あっという間に100万人以上に達すると、フィッツパトリックはみている』、 『米議会調査局が10月下旬に発表した報告書は、米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した』、 『米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書は、もし北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計した。 北朝鮮に対する望ましい軍事的選択肢など1つもないと、多くの人が感じるのは当然だ』、いずれにしても、軍事衝突による犠牲者数は膨大のようだ。
第三の記事で、安保理事会で、『米国は中国と協議し、全面禁輸ではなく輸出量の上限を定める修正案を11日に提出。それが全会一致で決議された。 実はこの米国案は骨抜きだった』、 『中国が石油禁輸の制裁で対北説得のカードを握る』、 『米中首脳会談でも習近平主席が主導権持つ』、などトランプは習近平主席に完全に支配されたかのようだ。  『仮に東京の都心上空で北朝鮮の水爆(推定威力は爆薬16万トン相当)が爆発すれば、半径4キロ以内では初期放射線と爆風、熱の相乗効果でほぼ全員が死傷し、6〜7キロメートル以内でもヤケドを負うことになる。 勤務時間内なら、都心の4キロメートル圏内に400万人は居るだろう』、にも拘らず、 『安倍首相だけはこの「四面楚歌」のトランプ大統領との密接さをアピールしようと、ひたすら歓待に努め、「対話は無駄」と言うトランプ大統領に歩調を合わせて、「最大限の圧力をかける」ことで完全に一致したのだ。 米国の現実派と同調し、対話の必要性をトランプ大統領に説いた習主席とは対称的だ』、 『「日本人の命を守る」ことに貢献するのは安倍・トランプ両首脳ではなく、習主席および慎重な米国の将軍達か、と慨嘆せざるをえない』、口だけ勇ましい安部首相は、総選挙でも北朝鮮問題を自民党支持につなげたようだが、日本にとっての危険性を直視しないマスコミも困ったものだ。
タグ:安倍首相だけはこの「四面楚歌」のトランプ大統領との密接さをアピールしようと、ひたすら歓待に努め、「対話は無駄」と言うトランプ大統領に歩調を合わせて、「最大限の圧力をかける」ことで完全に一致したのだ 米中首脳会談でも習近平主席が主導権持つ たとえ核兵器が使われなくても、北朝鮮と韓国の死者は戦闘開始後あっという間に100万人以上に達する 中国が石油禁輸の制裁で対北説得のカードを握る 実はこの米国案は骨抜きだった 米・韓軍が北朝鮮を攻撃すれば、滅亡が迫った北朝鮮は自暴自棄となり、急いで残った核ミサイルを韓国や日本に発射する公算は高いのだ 地上侵攻の主力は韓国軍で、米軍の特殊部隊は諜報活動や後方支援を担うだろう。「地上侵攻の要は、北朝鮮の核兵器や関連施設を掌握することだ。問題は、それらの位置を特定できるかどうかだ 米軍がこれまで他国上空でしばしば行ったように、領空上空に入って偵察活動をすれば、相手は対艦、対空ミサイルを発射するなどで対抗し、誰も望んでいない戦争の戦端が開かれる結果になりかねない。 英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)ワシントン所長のマーク・フィッツパトリック 中国はそれに難色を示し、拒否権を発動しかねない状況だった。このため米国は中国と協議し、全面禁輸ではなく輸出量の上限を定める修正案を11日に提出。それが全会一致で決議された 世界の国家指導者はほぼこぞって対話を求めている 米国は全面的な石油禁輸を行う制裁案を提出 国連安保理緊急会合 北朝鮮が開発する核兵器や関連施設を「完全に破壊する」ためには、地上侵攻しかないという見解を示した 米国の軍事的圧力が北朝鮮に核廃棄を強いるほどの効果はなくても、ある程度自制をさせる役には立つことを示した、と考える 「北朝鮮の自制はなぜか、孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ」 米統合参謀本部 ダイヤモンド・オンライン 「北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告」 習主席が「対話による北朝鮮核問題の解決」の必要性をトランプ大統領に説いたのは、米軍の首脳部やR・ティラーソン国務長官、与党共和党の主流など、現実派と軌を一にしている 田岡俊次 ニューズウィーク日本版 勤務時間内なら、都心の4キロメートル圏内に400万人は居るだろう トランプ大統領が自分で気づかずに正恩氏の仕事をしてしまうこともありうると指摘する。トランプ大統領のドラマチックな言動が、不安定なのは正恩氏ではなくトランプ大統領だ、ということを世界に示してしまうからだ トランプ大統領は、米国第一主義という公約を守るために本当に韓国や日本を犠牲にしてサンフランシスコを守るのではないか」と同盟国は考えているかもしれない 北朝鮮に対する望ましい軍事的選択肢など1つもないと、多くの人が感じるのは当然だ 北朝鮮が韓国の首都ソウルと東京を核攻撃した場合、両都市で死者が最大210万人に上ると推計 米国の現実派と同調し、対話の必要性をトランプ大統領に説いた習主席とは対称的だ ・トランプ大統領による、利益を得る者がいれば利益を失う者がいるという「ゼロサム」の攻撃的なリーダーシップ、多国間協調の軽視、過去に締結された協定からの脱退という行為は、同盟国を不安にさせている 米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が10月に発表した別の報告書 仮に東京の都心上空で北朝鮮の水爆(推定威力は爆薬16万トン相当)が爆発すれば、半径4キロ以内では初期放射線と爆風、熱の相乗効果でほぼ全員が死傷し、6〜7キロメートル以内でもヤケドを負うことになる 正恩氏はまったくもって理論的な人物で、彼にとって好ましくない境遇をうまく切り抜けてきた 米朝戦争が起きた場合、通常兵器しか使用しない場合でも、最初の数日で最大30万人が死亡すると推計した ・米議会調査局が10月下旬に発表した報告書 威嚇は相手がそれに屈しなければ一層エスカレートし、武力紛争に発展しがちだ。 北朝鮮問題 (その12)(北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か、北朝鮮に米軍が地上侵攻したらどうなるのか 「流血の大惨事になる」と専門家は警告、北朝鮮の自制はなぜか 孤立するトランプと「完全に一致」した安倍の危うさ) リチャード・ソロモン 東洋経済オンライン 米国は過去70年以上もの間、比較にならないほど強い破壊力を持つ核兵器で攻撃を抑止してきた。 「旧ソビエトは数千もの核兵器を保有し、米国本土を繰り返し破壊する能力を持ち合わせていた。そのソビエトを思いとどまらせてきた米国が今なぜ北朝鮮を恐れないといけないのか?」と外交政策アドバイザー、ブラッド・グロッサーマン氏は問いかける 「北朝鮮にとってトランプは「都合のいい男」だ 本当に不安定なのは金氏かトランプ氏か」 北朝鮮が核攻撃で報復すれば、10万人の在韓・在日アメリカ人を含めて数百万人の市民の命が危険になる
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