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英語(楽天は英語公用化でどう変わった?担当者に直撃、厚切りジェイソン「WHY英語を話せない?」 出世のために勉強しても絶対に上達はしない、翻訳AIの進化でこれ以上の英語学習は不要? 専門家NICT隅田氏に聞く) [文化]

今日は、英語(楽天は英語公用化でどう変わった?担当者に直撃、厚切りジェイソン「WHY英語を話せない?」 出世のために勉強しても絶対に上達はしない、翻訳AIの進化でこれ以上の英語学習は不要? 専門家NICT隅田氏に聞く)を取上げよう。出所は日経ビジネスオンラインの特集である。

先ずは、12月4日付け「楽天は英語公用化でどう変わった?担当者に直撃 海外不振は公用語化失敗ではない。今はノウハウ外販も」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、+は回答内の段落)
・2010年に英語公用語化を宣言し、第一次英語ブームの口火を切った楽天。全社員へTOEIC800点取得を要求し、国内向け部署でも英語会議を義務化するなど、その施策は他の公用語化企業と比べても最も急進的な内容だった。
・あれから7年で社内はどう変わったのか、公用語化の果実は得られたのか。社内の制度設計に関わり、現在は公用語化のノウハウを生かした教育事業などに携わる葛城崇・教育事業部ジェネラルマネージャーと、葛城氏の後任として英語推進を担う周藤俊昭・人材開発課シニアマネージャーに話を聞いた。
Q:2010年から英語公用語化の準備を始め、12年から実施。これまでの成果を聞かせてください。  葛城崇・教育事業部ジェネラルマネージャー(以下、葛城):10〜13年に英語公用語化の推進役を務めました。宣言から7年経って、会社の一番の変化はダイバーシティ(多様性)だと思います。公用語化前は国内の外国人比率が2%。今は20%を超え、エンジニアでは50%近くになります。世界70カ国以上から社員が集まってきていますが、エンジニアでいえばインド、中国が多い。両国の有名大学から優秀な学生を新卒採用できるようになりました。
+個人レベルでの大きな変化は、キャリアの選択肢が広がったということでしょう。現在TOEICの点数は、帰国子女などを除いた平均で830点超。海外の展示会や研修の派遣にほぼ全員が参加できるようになっています。海外赴任も身近になったし、海外子会社の社員も英語で仕事ができるので日本に来やすくなりました。
▽次の一手は異文化理解
Q:どんな課題が残されていますか。
葛城:TOEICはあくまで一つの目安です。基礎力をつける段階が終わり、今後は具体的に全世界でビジネスを加速させていく段階に入っていきます。そのための準備として、異文化理解を深める研修も10月から新たに始めました。
周藤俊昭・人材開発課シニアマネージャー:異文化理解の研修は専門の外国人講師を呼び、ベーシックとアドバンスの2種類の講座を開いています。研修で伝えたいことは、外国人との違いを理解し、受け入れるということです。文化の違いは肌感覚でわかっていることもあるでしょうが、体系だった学問として学んでもらいます。
+ベーシックでは「日本人は行間を読み多くを語らない」といった国毎のコミュニケーションの特徴を学び、自身がどの文化に近いかを考察します。その上で、文化の違いを乗り越えてうまくコミュニケーションをとるアイデアを出し合う。アドバンスでは、ベーシックの内容を踏まえ、実際に業務で抱えている問題の解決方法を議論してもらいます。
Q:英語塾の開講や英語アプリの開発にも取り組んでいます。外部企業へ公用語化のノウハウを伝授するコンサルティング事業も始めていますね。
葛城:ダイハツ工業などにコンサルサービスを導入していただいています。クライアントの数は10社ぐらいですね。公用語化を既に宣言している企業、一部の部署だけで実験的に導入しようという企業、取り組みの方法は様々です。
+英語は学習時間が大事です。毎日15分でもいかにコツコツやるか。いかに全員でやりきるか。英語学習を歯磨きのようにやらなくては気持ち悪い生活習慣にしてしまう。そのノウハウを伝えたり、制度設計のサポートをしたりしています。
Q:楽天流の英語推進のポイントは何でしょうか。
葛城:まず、グローバルな部署はもちろんドメスティックな部署でも関係なく対象にしたこと。社員それぞれの学習量や到達レベルを見える化して、経営陣まで共有したこと。そして、人事部でトレーニングを考案するなど全面的なサポートをしてムーブメントに昇華させたことだと考えます。
Q:全員を巻き込むというのは難しいことですよね。業務に普段から使わなければ、モチベーションも湧かないのではないでしょうか。
葛城:楽天は若い社員が多かったこともあるでしょうが、必要性を理解している人が多かったと思います。少子高齢化の日本だけで勝負し続けるのが限界なのは明らかです。社員も、英語は苦手だけどやらなきゃいけない、という思いを持っていたようです。
Q:楽天は国内でもM&A(合併・買収)を多く手がけています。ドメスティックな文化に馴染んでいた買収企業の社員は辛かったのでは。
葛城:今は英語はいらないかもしれない。でも人事異動でグローバルな部署に行けば、その日から英語が必要になります。また、インターネットで日本語と英語のサイトの数を比較すると、実に10倍にもなります。つまり、英語ができる人はできない人の11倍の情報収集能力を持つことになる。このことは社員もわかっていたんです。英語を学ぶよう納得させたというよりは、社員が思っていたことを改めて伝えたという方が正しいでしょう。
▽「英語の成長は階段状」
Q:そのモチベーションを維持するポイントは何でしょうか。
葛城:スポーツと一緒で、英語の能力は右肩上がりの直線ではなく、階段のように伸びていきます。しばらくは成長の実感がなかなか得られないが、あるとき突然伸びる。この最初の一段を登るまでサポートするのが重要です。そのためにはトップダウンの命令だけでなく、英語の勉強を楽しんでもらう仕掛けも必要。楽天ではゲーム形式で英語を学べるトレーニングを開発しました。
Q:TOEICの目標を達成するまで居残る合宿なども開催していました。これだけ投資をかけて見合う効果はあったのでしょうか。
周藤:英語公用語は企業としての戦略です。通常の人事予算とは違う枠組みで投資をしました。こうした形で組織が活性化することもあります。日本において英語で働ける企業といえば楽天、というイメージもできました。人材獲得にかける広告費を削減できた側面もあります。
Q:英語公用語化のKPI(重要業績評価指標)はどのように設定したのでしょうか。
葛城:最初期はアンケートで会議やメールがどれだけ英語化されているのかをモニタリングしていました。そのあとはTOEICなどのスコアと学習時間で管理しました。人材育成の課題なので、どれだけ投資効果があったのかを厳密に見極める指標を設定するのは難しい。
Q:英語公用語化の目的は事業のグローバル化でした。直接的に海外事業に貢献したとはいえるのでしょうか。特に昨年度は英国など海外事業の撤退が相次ぎました。
葛城:楽天は海外M&Aで手堅い案件には手を出さない。買収企業とシナジー効果を出しながら一緒に成長していくという方針です。だから、苦労する事業も当然出てくる。これは英語公用語とは関係のない話です。
+英語公用語化のメリットを強調する楽天だが、7年前は「日本で働く社員まで英語を話すなんて無駄だ」などと批判の声も多かった。その懸念は一部で現実になっている。英語公用語化による副作用としては、社内の雰囲気の悪化や、外国人技術者の草刈り場になったという声が聞こえてくる。そうした現場の様子は本誌の特集記事の中で詳しく解説している。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/113000186/113000002/?P=1

次に、12月5日付け「厚切りジェイソン「WHY英語を話せない?」 出世のために勉強しても絶対に上達はしない」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問)。
・「Why Japanese People!」という決めセリフで知られる芸人の厚切りジェイソン氏。実は米ゼネラル・エレクトリック(GE)などでの勤務経験があり、現在はITベンチャーの経営にも関わるビジネスマンだ。12年前、旭化成のインターンとして日本に1年間滞在、その後、独学で日本語を習得。今も毎日、日本語の勉強を欠かさないというジェイソンさんに、外国語の学び方について聞いた。
▽出世のための勉強では英語はできるようにならない
Q:日本では管理職になるにはTOEICで700点以上、といったルールを定めている企業も多く、それを目標に多くのビジネスマンが英語を学んでいます。はたして、そのような勉強をしても、英語を話せるようになるのでしょうか。
厚切りジェイソンさん(以下、ジェイソン):それ、おかしいですよね。出世のために勉強するのですか。勉強のインセンティブにはなっても、最終的に、求めた結果にはならないと思いますよ。
Q:実際に、TOEICの点はよくても話せない人という人も少なくありません。
ジェイソン:それはね、話そうと思っていないんです。
Q:いえ、みんな話せるようになりたいとは思っていると思います。
ジェイソン:そうですか? 話せるようになりたいなら、そうなるように勉強すると思いますよ。決して、勉強をしている人を否定するつもりはないのですが。
Q:話せるようにならないとまずい、と思っている人は間違いなく増えています。海外企業に買収されたり、海外に進出したりする日本企業も多いので。
ジェイソン:全員ができるようになる必要はないと思いますが、英語を話せることでチャンスは広がるでしょうね。勉強すると決めたら、やるしかないでしょう。
▽1日5分でいい。楽しめば続けられる
Q:必要な人は覚悟を決めて、やればいいと。
ジェイソン:米国でゼネラル・エレクトリック(GE)に勤めていたとき、ロシア人や中国人、インド人と一緒に働いていましたが、何を言っているか分からないレベルの英語の人もいたんです。でも、その人がスキルを持っているから、誰も気にしませんでした。 だから、英語ができなくても、すごく優秀な人になるか、能力もあって英語も上手になることを目指すか、その人次第ではないですか。
Q:ジェイソンさんも日本語を相当勉強されてこられたのですよね。
ジェイソン:10年間、1日5分でも、毎日欠かさず続けています。 10年勉強すれば、英語は話せるようになりますよ。自分が10年後、どうなりたいか、考えてみてください。
Q:なるほど。10年間、毎日ですか。強い決意が必要ですね。
ジェイソン:強い決意はいらないよ。歯磨きするのに、決意する?
Q:しません。
ジェイソン:ですよね。楽しく続ければいいんですよ。
Q:勉強するときに、終わりを決めていませんか。TOEIC何点が目標だから、それが取れたら終わりとか、取れなかったら、悔しいからもうやめるとか。 ジェイソンさんはどうやって勉強を楽しんでいますか。
ジェイソン:漢字を勉強するとき、日本の人に勉強法を聞いたんです。そうしたら、同じ漢字を繰り返し、何度も書くと言われました。それはあまり楽しそうじゃないし、効率がよくないなと思ったんです。 それで、電車の中で、漢字の部首や意味を考えストーリーを作ったりしながら覚えます。書くのは1回。僕なりに面白おかしく考えてます。ネタの源にもなってるし。逆に、つまらない勉強をすると、英語が嫌いになると思う。
▽言い訳をする人は結局、話せない
Q:英語を話せない日本人に向けて、まずは簡単な単語を使って、話してみるといい、とアドバイスする人もいます。
ジェイソン:話してみるのはいいと思います。 でも、単語を使っているだけでは、英語のニュアンスを理解するのは難しいでしょうね。つまり「お疲れ様」と言っているつもりでも「お前、疲れた顔しているな」と受け取られることもあるかもしれません。
Q:難しいですね。
ジェイソン:3歳の娘がTV番組の「おさるのジョージ」が好きなんですが、日本語版で見ると、黄色い帽子のお兄さんが、少しイヤなヤツに見えるんです。でも、英語版だと何をやっても許す、気のいい人なんです。 ニュアンスが理解できれば、どちらが原作に近いか、分かるでしょう。
Q:どうすれば、そのようになれますかね。
ジェイソン:場数です。日本で生まれた赤ちゃんは日本語が話せるようになるし、アメリカの赤ちゃんは英語が話せるようになります。なぜだと思います? 場数を踏むからですよ。 僕は、日本語の練習をするとき、できるだけ日常生活の中で日本語に触れるようにしました。今の時代、日本にいても、英文はたくさんあふれているし、インターネットで英語のラジオも聴くことができます。
+もし1日10時間英語に触れたら、1年後にはかなり話せるようになりますよ。やらない人は言い訳をしているだけです。
▽ムダが嫌いだから芸人とIT企業の仕事を両立
Q:ジェイソンさんは飛び級で大学に入ったくらい、優秀だったそうですね。
ジェイソン:テレビゲームが大好きで。早くゲームがしたいから、学校が終わると、迎えの車が来る前に、宿題を終わらせて提出していました。
Q:優秀ですね。勉強が好きでしたか?
ジェイソン:嫌いでした。だから早く終わらせたかったのです。それなのに、先生が僕をほめるので、両親は怒っていました。「こんな勉強の仕方でほめられるから、勉強をしなくなる」と言って。  Q:時間を有効に使ってはいますね。
ジェイソン:もともとムダはきらいなんです。だからGEに務めながら、修士号をとり、今もIT企業で働きながら、芸人として働いています。
Q:確かにムダがないですね。
ジェイソン:どういう生き方をしたいか、なんですね。僕は、ある程度、お金を稼いだら後はゆっくりしたいと考えるほうなんです。そのために、今、何をやるべきか、考えます。
Q:いわゆるアーリーリタイアメントという考え方ですね。何かやりたいことがあるんですか。
ジェイソン:娘が3人いるのですが、子どもとゆっくり過ごしたいと思います。
Q:ちなみにお嬢さんたちとは日本語で話すのですか。
ジェイソン:英語です。娘たちは学校では日本語なので、家では英語です。日本語で話すと、英語で何というの?と確認するんです。だから、僕が出ているテレビ番組を見ると、娘たちが「パパ、日本語話せるんだ!」って驚くんですよ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/113000186/113000001/?P=1

第三に、12月11日付け「翻訳AIの進化でこれ以上の英語学習は不要? 専門家NICT隅田氏に聞く、AI時代に必要な英語力」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、+h回答内の段落)。
・翻訳AI(人工知能)の技術が急速に進化している。ビジネス会議で同時通訳をしてくれる世界が目前に迫っている。英語を話すのが苦手な日本人にとっては朗報だが、そうした世界ではこれまでとは全く異なるコミュニケーションの力も必要になりそうだ。AI時代に必要な英語力や英語学習のやり方はどのように変わるのか。自動翻訳技術の第一人者、情報通信研究機構(NICT)フェローの隅田英一郎氏に話を聞いた。
Q:まず、機械翻訳の研究の世界では、どのようなことが起こっているのか、教えてください。
隅田英一郎・NICTフェロー(以下、隅田):今、AI(人工知能)の時代ということで、自動翻訳の世界でもニューラルネットワークを使うのが主流になっています。人間の脳の働きを機械に置き換える、深層学習とも言われるものですね。例えば、日本語で「あ、い、う」と言ったら、英語で「A、B、C」になりますよといった翻訳例文をどんどん覚えてさせていくと、少しずつ賢くなっていきます(関連記事:深層学習AIで自動翻訳にパラダイムシフト)
Q:覚えさせる例文が多ければ多いほど、正確に訳せるようになるというわけですね。
隅田:そうです。こんな単純な仕組みで、どうして翻訳が上手くいくのか不思議に思われるかもしれませんが、この仕組みで翻訳精度が飛躍的に向上しています。 例えば、次のような日本語の文章を従来の方法で翻訳すると、いかにも機械が翻訳したような感じの、よろしくない文章になるんです。
■日本語(原文)近年のNMTの進展により、従来は自動翻訳が非常に困難だった日本語文章の英語への自動翻訳精度が飛躍的に向上した。
■従来技術(統計翻訳=SMT)で英訳 The Development of NMT in recent years, conventional automatic translation was very difficult to machine translation accuracy of Japanese sentences in English has improved  ところが、これをニューラルで翻訳すると、すごく流暢な訳文になります。
■AI時代の技術(ニューラル翻訳=NMT)で英訳  With the recent development of NMT, the automatic translation accuracy of Japanese sentences that had previously been very difficult to translate has improved significantly.
+ただし、ニューラルによる翻訳にも欠点があって、100%の答えを出せるわけではないんです。この例文では、ニューラルによる翻訳だと「英語への」というフレーズが抜け落ちてしまっています。正確に訳すのなら、「translate into English」といったフレーズが入らないとダメですよね。 これが時々重要な単語が抜け落ちてしまうという、ニューラルの典型な誤りです。それが今、大きな課題になっていて、世界中の研究者がこの問題を解決すべく競争しています。
Q:覚えさせるデータを増やせばいいという問題ではないのですか。
隅田:アルゴリズムをもうちょっと整理していく必要があると思います。覚えさせる量が増えればより流暢になるのですが、たくさん覚えさせても、こういう誤りは起きてしまいます。そこは、アルゴリズムの改良が必要と思われています。
+ただし、それでも非常に良い翻訳ができるようになったことは事実です。NICTの音声翻訳システムもニューラルに移行したことで、タクシーや買い物などで使った時に意味が通じる翻訳をする率が2割くらい向上しました。非常に効果が出ています。
▽米グーグルが変えた自動翻訳の競争環境
Q:NICTは「VoiceTra(ボイストラ)」という自動翻訳のスマートフォンのアプリを提供している。  NICTではニューラルの研究はいつ頃から取り組んできたのですか。
隅田:2013年からずっとやっていたんですが、先ほど申し上げていなかった欠点が実はもう1つありまして、本格的に移行できていませんでした。それは、非常に大きな計算量が必要だということです。  その計算をするには、GPU(画像処理半導体)という計算機を使うわけですが、非常に値段が高い。システムを作るのに大きなコストがかかるだけではなく、それを一般の人に使ってもらうときにも高いサービスになりかねません。そのため、タイミングを迷っていました。
+それなのになぜ、我々もニューラルに移行したかというと、昨年秋に米グーグルがニューラルを使ったサービスを出し、米マイクロソフトもその動きに即座に追随して、我々も負けてはいられないと判断したのです。
+実は、中国の検索大手バイドゥは数年前からニューラルを使った翻訳サービスを出していたんですよ。しかし、日本人の我々にはほとんどインパクトがないので、誰も気にしていませんでした。ところが、グーグルが出すと、みんなその精度の高さにショックを受けたというわけです。
Q:「グーグル翻訳(Google Translate)」ですね。
隅田:はい。それまでグーグルの翻訳は、必ずしも精度の高いものではありませんでした。機械翻訳に典型的な誤訳も多いという印象でした。ところが、ニューラルでやると、これほど翻訳精度が向上するのかと、翻訳関係の人たちはびっくりしたわけです。そこで我々も、最新の技術に取り組んでいるということを皆様にも理解してもらうために、今年6月にニューラルを使った翻訳を出しました。
+我々が独自に技術を開発する意義は、誰もがグーグルのようなクラウドサービスを使うわけにはいかないからです。情報の秘匿性を考えると、ビジネスではグーグルの翻訳サービスを使えないという企業もあるはずです。日本の国立研究所としては、そうしたニーズにもしっかりと対応する必要があります。
Q:日本独自に自動翻訳の技術を向上しておかないと、情報を海外企業に持っていかれるリスクもあるということですね。
隅田:絶対に情報を外に出せないというケースもあります。個人情報の塊である病院のカルテのような情報とか、防衛関連の情報とかはその典型でしょう。特許やIRに関連する情報も、企業の外には出しにくい。秘密を守りながら翻訳しなければならない分野は、数多くあります。
隅田:日本では、自動翻訳の研究を何十年も前からやってきた歴史があります。2014年には、当時の新藤総務大臣が我々の自動翻訳のシステムをご覧になって、これを2020年の東京オリンピックに向けてぜひ多言語化して、海外から来る人たちに使ってもらおうということになりました。それから総務省の予算を集中的に投下してきています。
+NICTの中に先進的音声翻訳研究開発推進センター(ASTREC)を作り、日本の企業から出向で研究員に来ていただいて、40人くらいのチームを作りました。出向元の企業はパナソニックやNEC、富士通、日立製作所、東芝、ソニー、NTT、KDDIなど多岐にわたります。翻訳エンジンはNICTで作り、そのエンジンを企業にいろいろな形で使ってもらうというものです。
+技術の進歩はここに来て急速に速くなっています。自動翻訳は、人間の通訳や翻訳に比べて圧倒的に低コストですし、24時間365日休まず働いてくれます。しかも、多言語対応が容易です。既に、日本人の平均的な語学力は完全に超えているレベルに達しています。
▽TOEIC800点レベルは超えている
Q:TOEICで換算すると、NICTの翻訳エンジンは800点レベルと聞いたこともあります。
隅田:TOEIC800点レベルというのは誰かが想像で言っているのですが、私も800点はいっているだろうと思っています。
Q:800点なら、日本人の平均のかなり上ですよね。
隅田:非常に流暢な英語力ですね。海外駐在に最低限必要な水準も…… 
隅田:超えていると思いますね。 既にご説明したように、データ量が増えれば性能は良くなりますし、アルゴリズムも世界中で開発競争が起きていますので、どんどん進化します。 近い将来、自動翻訳は人間にとってもう手放せないツールになるというか、頼っていくような状況になると思います。
▽会議の同時通訳をAIがやる世界がすぐそこに
Q:ビジネスにおける会議に外国人が入る場合、同時通訳に頼る場合も多いですが、会議の同時通訳を翻訳AIが担うような世界も、身近に来ているのでしょうか。
隅田:自動翻訳の究極のビジネス・アプリケーションは同時通訳だと考えています。会議のような雑音が入りやすい場所は苦手なのですが、一人ひとりマイクを付けるような方法なら、非常に近い将来、十分に実現できるのではないかと思います。
Q:10年後にはもうかなり?
隅田:ええ、もうできているでしょう。 実際、既にそうしたアプリケーションを作る場合のインターフェースはどのようなものがいいのか、実験できる技術レベルには達していると思います。イヤホン内蔵型のマイクでやるのがいいのか、会議の参加者が翻訳された内容を文字でも確認できるように、それぞれの席の前にモニターを置いたほうがいいのかといった、具体的なアプリケーションを考えられる段階に来ています。
Q:インターフェースとしてはまだこなれていませんが、まさに作り始めているといった状況ですね。 音声と文字で同時に確認できるというのは、翻訳AIならではの仕組みですね。
隅田:テレビ会議には、非常に適したツールになるでしょう。アジアに工場を持っている日本企業は多いですよね。これまででは、お互いに第2言語である英語を使ってコミュニケーションする場合がほとんどだったと思いますが、これからは、自動翻訳システムを介してお互いに母国語でコミュニケーションができるようになります。そうなれば、お互いに不得意な英語で会話をするよりも、ずっと効率的なコミュニケーションができると思います。お互い第2言語で話すと、言いたいことが言えない、伝えたいことの何割かしか話せないといったことが起こりますから。
Q:そうした状況になると、TOEIC800点などテストで高得点を取ることを目指して勉強するのが、意味がないようにも思えてきます。むしろ、英語は翻訳AIに任せて、人類は他のスキルを磨いてより高い次元のコミュニケーションを目指した方がいいという考え方もあるかもしれませんね。
隅田:絶対にそうだと思いますね。使える道具が出てきたら、使ったほうがいいでしょう。人類の移動手段が馬車からクルマに移行したのと同じことです。馬車とクルマとでは、生産効率が全く違いますよね。英語も、同じだと思います。
+ビジネスをやるうえで英語はツールです。ビジネスで重要なのは、そのツールに乗せて相手に伝える質のいいコンテンツ、中身でしょう。全てのビジネスパーソンが英語を上手くなる必要は、必ずしもないはずです。
+ビジネスの中心も今後、英語圏から中国圏に移るかもしれない。東南アジアの国々とのビジネスも、これからますます重要になるでしょう。そのたびに、現地の言葉を話せるようになることを目指すよりは、機械に任せるという選択肢もあった方がいいと思うんです。
+もちろん、それぞれの言葉を専門とする通訳者や翻訳者の仕事はなくならないでしょうが、誰もが通訳者や翻訳者を雇えるわけではないですよね。コストを安く抑えるには、自動翻訳・通訳システムを使った方が良いのではないでしょうか。もう、翻訳精度が箸にも棒にもかからなかった時代は終わったのですから。
▽もう「英語ができない」と文句を言わなくて良くなる
Q:近い将来、翻訳AIがビジネスで本格的に使えるようになるということが、よく分かりました。ですが、最低限の英語力というのは、やはり必要なのではないでしょうか。
隅田:ええ、基礎的な英語力はあった方がいいと思います。ただし、その英語力は、現状のままでいいと思います。特に、これまでより高い水準を目指す必要はないでしょう。 日本人の多くは、英語を中学、高校と勉強して、一部の人は大学でも勉強しています。既にかなりの時間を英語学習に割いていますよね。ところが、これまで多くの人が、こんなに勉強したのに英語ができない、話せないと嘆いてきました。これからは、そうした状況に文句を言うのではなくて、それで十分という世界になるのではないでしょうか。
+例えば、文書を翻訳する場合、まず自動翻訳に下訳を作ってもらって、その後に人間が中学や高校、大学で学んだ英語を使って、必要があれば加筆・修正して、さらに良い翻訳を作るということが、当たり前になるのではないでしょうか。冒頭にお話しした通り、機械翻訳は100%正しいわけではありませんから。
+こうすることで、文書が自分の専門外の分野であっても、自動翻訳を使えばどんどん翻訳できるようになります。例えば、医療分野は私の専門外ですが、試しに医療関係の論文を自動翻訳を使って訳してみたんです。そうすると、少し時間はかかっても、全く医療分野の知識がない私でも、難しい論文でもちゃんと翻訳できるんですね。それは、私という人間の能力が、自動翻訳によって拡張したことを意味します。こうしたことが、あらゆる人に起こり得ると考えています。
Q:まあ、英語の場合は多くの日本人が勉強していますが、中国語などそれ以外の言語については、ほとんどの人にとって、自動翻訳に頼り切ってしまう状況になるかとは思いますが。 先ほど、翻訳のアルゴリズムは世界の研究者が開発競争を繰り広げているので、どんどん進化していくとおっしゃられました。一方、翻訳精度を高めるために必要なAIに覚え込ませるデータについては、NICTはどのように集めているのですか。
隅田:「翻訳バンク」という取り組みを2~3年前から始めています。それまでNICTは、ウェブ上にある翻訳を使っていました。例えば、大企業では日本語のページと英語のページがありますよね。しかし、それだけではデータが足りません。
Q:NICTの「翻訳バンク」は民間企業に協力を依頼し、社内にある日本語の文書と、それが英語に翻訳された文書の両方を提供してもらい、それをAIに覚え込ませて翻訳精度の向上を目指している。
隅田:そこで、民間企業に社内にあるデータを提供してくださいとお願いしています。現在は29組織が協力してくれています。NICTはパブリックセクターですから、ライバル関係にある会社でも、翻訳という競争領域ではない分野では協力しやすい。むしろ、協調し合って自動翻訳の精度を高めていきましょうと話をしています。自動翻訳の精度が高まって海外からの情報を得やすくなれば、国全体のためになります。
+現在、日本全体で年間2000億~3000億円が翻訳作業に費やされています。それを、文章の数に換算すると、だいたい5億文くらいに相当します。仮に5億文のデータを学習させることができれば、今と段違いの高精度の自動翻訳ができるようになります。それを10年間継続すれば50億文ですから、さらにもう一段、ジャンプできると思います。
Q:現在、どれくらいの数の文章を覚え込ませているんですか。
隅田:それは言えません。ライバルのグーグルやマイクロソフトも、そこは一切、開示していないですね。
Q:そこが今、競争の肝になっているからですね。
隅田:そうです。
Q:グーグルはウェブ上にサービスとしてグーグル翻訳を提供していて、そこで使ってもらうことで例文を集めているようにも見えます。
隅田:はい。ただ、間違った翻訳結果を、どれくらいのユーザーが正しく直して、グーグルにフィードバックしているでしょうか。逆に言えば、悪意があるユーザーがいれば間違った翻訳をグーグルに覚え込ませることもできるわけです。
+我々は翻訳バンクを通じて、グーグルもマイクロソフトもやっていない手法でデータを集め、精度を高めていきたいと考えています。
▽「中国語・英語」の翻訳精度が最も良くなるかもしれない
Q:AIに覚え込ませるデータ量が精度向上のカギの1つだとすると、例えば、その言語を話す人口が多い国の方が、良い自動翻訳システムを手にできるということにはなりませんか。つまり、例えば、中国語・英語は飛躍的に精度が上がるけれども、日本語・英語の精度はそれに追い付けないということが起き得るのではないでしょうか。
隅田:それは正しい指摘かもしれませんね。翻訳の精度がデータ量に依存するシステムですので、データが集まらない以上、システムの性能は高まりません。そのため、日常的に多くのデータが生産されている国のシステムがどんどん強くなっていくというのは、その通りだと思います。
+実際、中国圏と英語圏の人口が一番多いですし、経済規模も大きいですよね。しかも、中国語と英語は文法が似ていますので、比較的、翻訳するのは簡単なんですよ。 我々のシステムでも、日英、日中、日韓と比べると、実は日韓の性能が一番良くて、日中がその次で、日英が一番、翻訳精度が良くないんです。
Q:英が一番、難しいんですか。
隅田:一番難しい。 その理由は、単語を翻訳する順序に関係があるんです。例えば、英語から日本語に訳すのは、比較的やりやすいんですね。まず英語の音声認識は、ネイティブスピーカーのように、ほぼ100%正しくテキスト化できるようになっていますから。さらに、英語の語順はS(主語)、V(動詞)、O(目的語)ですので、機械も十分に落ち着いて翻訳できます。
+一方、日本語から英語に訳すのは難しい。日本語を聞き取り理解するというのは、十分に高いレベルまで来ていますが、訳すのが難しいのです。語順がSVOの英語に対し、日本語はS、O、VでVが最後に出てきます。つまり、同時通訳をやろうとすると、一番重要な動詞を聞く前に訳し始めなくてはいけないわけです。この、動詞を推測しながら翻訳するのが、すごく難しいんです。
Q:つまり、より高度なアルゴリズムが必要になるということですね。
隅田:そうです。日本語から英語に翻訳するのが難しいというのは、人間でも機械でも一緒なんですね。ある種の真理と言いますか、やっぱりそうかと言う感じですね。
Q:自動翻訳が進化することで、日本人にとっての英語の必要性や、英語学習のやり方も変わってきそうですね。
隅田:これからも、機械を一切使わずに自分ですべてをやるんだという選択肢も、当然あります。その一方で、機械の使い方を習熟して、それをうまく使いこなすという選択肢は確実に重要になってくるでしょう。 例えば、日本人の多くが英語を話せない理由の1つに、「全然、伝えたいことを話せなかった」というような失敗体験が心理的な壁になっているという見方も良く聞きます。しかし、ゼロから外国人と英語で話そうとして失敗して落ち込むより、機械が訳してくれたものをちょっと話してみたり、機械も使って伝えたいことを補足したりして、「外国人と英語で話せた」という成功体験を積み重ねるのも、上達の近道になるかもしれません。
+また、機械が正しく訳してくれるような日本語を話す、書くという訓練を積むのも、これからの語学学習では重要になる可能性もあります。日本語を話す時も、主語をしっかり明確にするとか。そうすれば、論理的に物事を考える訓練にもなりますし、機械だけではなく、自分で英語を話すときも、英語に訳しやすくなります。当然、機械も英語に訳しやすいだけではなく、中国語や韓国語も正確に訳してくれます。
Q:計算するのにも、算盤から電卓、コンピューターへとツールが変わってきました。コミュニケーションも、翻訳AIが出てきたことで、いよいよツールを積極的に活用していく時代に入るということですね。
隅田:算盤を時間かけて覚えるというのも、頭の中でいろいろと計算ができるようになるので、それは素晴らしいことです。しかし、多くの人にとっては、電卓を使って計算した方が早いし、効率的ですよね。
+これからの英語学習も、結局は何のために英語を使えるようになりたいのか、という目的次第だと思います。英語をすべて自分で話すことが必要な人は、そういう勉強をすればいいし、そうでない人は、自動翻訳を積極的に活用して、浮いた時間を別のスキルの習得に回すという発想もあっていいでしょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/113000186/120800004/?P=1

第一の記事で、『基礎力をつける段階が終わり、今後は具体的に全世界でビジネスを加速させていく段階に入っていきます。そのための準備として、異文化理解を深める研修も10月から新たに始めました』、『公用語化前は国内の外国人比率が2%。今は20%を超え、エンジニアでは50%近くになります。世界70カ国以上から社員が集まってきていますが、エンジニアでいえばインド、中国が多い。両国の有名大学から優秀な学生を新卒採用できるようになりました』、というのは結構なことだ。他方で、『英語公用語化による副作用としては、社内の雰囲気の悪化や、外国人技術者の草刈り場になったという声が聞こえてくる』というのも、あり得る話だ。
第二の記事で、10年間、毎日ですか。強い決意が必要ですね。との問いかけに対し、『強い決意はいらないよ。歯磨きするのに、決意する?・・・ですよね。楽しく続ければいいんですよ』、『電車の中で、漢字の部首や意味を考えストーリーを作ったりしながら覚えます。書くのは1回。僕なりに面白おかしく考えてます。ネタの源にもなってるし』、などというのは如何にも要領良さそうなジェイソン氏らしい。
第三の記事で、『情報の秘匿性を考えると、ビジネスではグーグルの翻訳サービスを使えないという企業もあるはずです。日本の国立研究所としては、そうしたニーズにもしっかりと対応する必要があります』というので、日本で独自に開発する必要性が理解できた。 『自動翻訳は、人間の通訳や翻訳に比べて圧倒的に低コストですし、24時間365日休まず働いてくれます。しかも、多言語対応が容易です。既に、日本人の平均的な語学力は完全に超えているレベルに達しています(TOEIC800点レベルは超えている)』というのは、頼もしい限りだ。 『機械が正しく訳してくれるような日本語を話す、書くという訓練を積むのも、これからの語学学習では重要になる可能性もあります。日本語を話す時も、主語をしっかり明確にするとか。そうすれば、論理的に物事を考える訓練にもなりますし、機械だけではなく、自分で英語を話すときも、英語に訳しやすくなります』、というのは確かに多くの日本人の悪いクセを指摘している。これが治るきっかけになれば意義は極めて大きい。
タグ:英語 (楽天は英語公用化でどう変わった?担当者に直撃、厚切りジェイソン「WHY英語を話せない?」 出世のために勉強しても絶対に上達はしない、翻訳AIの進化でこれ以上の英語学習は不要? 専門家NICT隅田氏に聞く) 日経ビジネスオンラインの特集 「楽天は英語公用化でどう変わった?担当者に直撃 海外不振は公用語化失敗ではない。今はノウハウ外販も」 7年で社内はどう変わったのか 会社の一番の変化はダイバーシティ(多様性)だと思います。公用語化前は国内の外国人比率が2%。今は20%を超え、エンジニアでは50%近くになります。世界70カ国以上から社員が集まってきていますが、エンジニアでいえばインド、中国が多い。両国の有名大学から優秀な学生を新卒採用できるようになりました キャリアの選択肢が広がった 基礎力をつける段階が終わり、今後は具体的に全世界でビジネスを加速させていく段階に入っていきます 異文化理解を深める研修 異文化理解の研修は専門の外国人講師を呼び 外部企業へ公用語化のノウハウを伝授するコンサルティング事業も始めています クライアントの数は10社ぐらいですね グローバルな部署はもちろんドメスティックな部署でも関係なく対象にしたこと インターネットで日本語と英語のサイトの数を比較すると、実に10倍にもなります。つまり、英語ができる人はできない人の11倍の情報収集能力を持つことにな 「英語の成長は階段状」 人材育成の課題なので、どれだけ投資効果があったのかを厳密に見極める指標を設定するのは難しい 目的は事業のグローバル化 7年前は「日本で働く社員まで英語を話すなんて無駄だ」などと批判の声も多かった 英語公用語化による副作用としては、社内の雰囲気の悪化や、外国人技術者の草刈り場になったという声が聞こえてくる 「厚切りジェイソン「WHY英語を話せない?」 出世のために勉強しても絶対に上達はしない」 厚切りジェイソン ビジネスマン 独学で日本語を習得。今も毎日、日本語の勉強を欠かさない 出世のために勉強するのですか。勉強のインセンティブにはなっても、最終的に、求めた結果にはならないと思いますよ 日本語を相当勉強 10年間、1日5分でも、毎日欠かさず続けています 強い決意はいらないよ。歯磨きするのに、決意する? 楽しく続ければいいんですよ 電車の中で、漢字の部首や意味を考えストーリーを作ったりしながら覚えます。書くのは1回。僕なりに面白おかしく考えてます。ネタの源にもなってるし 1日10時間英語に触れたら、1年後にはかなり話せるようになりますよ。やらない人は言い訳をしているだけです 「翻訳AIの進化でこれ以上の英語学習は不要? 専門家NICT隅田氏に聞く、AI時代に必要な英語力」 自動翻訳の世界でもニューラルネットワークを使うのが主流に 深層学習 ニューラルによる翻訳にも欠点があって、100%の答えを出せるわけではないんです 重要な単語が抜け落ちてしまうという、ニューラルの典型な誤り NICTの音声翻訳システムもニューラルに移行したことで、タクシーや買い物などで使った時に意味が通じる翻訳をする率が2割くらい向上しました 米グーグルが変えた自動翻訳の競争環境 GPU(画像処理半導体)という計算機を使うわけですが、非常に値段が高い 米グーグルがニューラルを使ったサービスを出し、米マイクロソフトもその動きに即座に追随して、我々も負けてはいられないと判断したのです グーグル翻訳(Google Translate) 情報の秘匿性を考えると、ビジネスではグーグルの翻訳サービスを使えないという企業もあるはずです。日本の国立研究所としては、そうしたニーズにもしっかりと対応する必要があります。 先進的音声翻訳研究開発推進センター 自動翻訳は、人間の通訳や翻訳に比べて圧倒的に低コストですし、24時間365日休まず働いてくれます。しかも、多言語対応が容易です。既に、日本人の平均的な語学力は完全に超えているレベルに達しています 自動翻訳の究極のビジネス・アプリケーションは同時通訳 テレビ会議には、非常に適したツールになるでしょう これからは、自動翻訳システムを介してお互いに母国語でコミュニケーションができるようになります。そうなれば、お互いに不得意な英語で会話をするよりも、ずっと効率的なコミュニケーションができると思います 翻訳バンク 中国語・英語は飛躍的に精度が上がるけれども、日本語・英語の精度はそれに追い付けないということが起き得るのではないでしょうか 日本語から英語に訳すのは難しい。日本語を聞き取り理解するというのは、十分に高いレベルまで来ていますが、訳すのが難しいのです。語順がSVOの英語に対し、日本語はS、O、VでVが最後に出てきます。つまり、同時通訳をやろうとすると、一番重要な動詞を聞く前に訳し始めなくてはいけないわけです。この、動詞を推測しながら翻訳するのが、すごく難しいんです 機械が正しく訳してくれるような日本語を話す、書くという訓練を積むのも、これからの語学学習では重要になる可能性もあります。日本語を話す時も、主語をしっかり明確にするとか。そうすれば、論理的に物事を考える訓練にもなりますし、機械だけではなく、自分で英語を話すときも、英語に訳しやすくなります。当然、機械も英語に訳しやすいだけではなく、中国語や韓国語も正確に訳してくれます
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アベノミクス(その26)(「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す、「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由、アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断) [経済政策]

アベノミクスについては、10月12日に取上げた。今日は、(その26)(「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す、「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由、アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断)である。

先ずは、明治学院大学国際学部教授の熊倉正修氏が10月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・アベノミクスを担う日銀の異次元緩和が始まって4年半がたつが、「2%物価目標」は実現しないまま、さまざまな「副作用」が目立ち始めた。日銀が大量の国債などを買い取り、資金をばらまけば「インフレ期待」が生まれ、物価が上がるというシナリオに成算があったわけでもなかった。後戻りできないまま、泥沼に入り込んだのは、太平洋戦争当時の状況と同じだ――。日銀特集「砂上の楼閣」8回目は、熊倉正修・明治学院大学教授が異次元緩和の行く末を論考する。
・「アベノミクスと日銀の異次元緩和は、かつての太平洋戦争のようなものだ」 冒頭から物騒なことを言って恐縮だが、筆者はこのように考えている。アベノミクスと、その中心的な役割を担う日銀の異次元緩和は、もともと勝算も必要性もないのに、いったん始めてしまったために簡単には後戻りできなくなっている。そういう点が太平洋戦争と似ているからだ。
・事態が悪化すると為政者はますます過激な政策にのめりこんでいくが、それを永遠に続けることはできず、最終的には国民に甚大な被害が及ぶことになる。アベノミクスと異次元緩和も、そうなってしまう可能性が否定できないと考えている。その理由を論じていきたい。
▽非現実的な政策目標 高成長期の慣性で成長追求
・政府と日銀が2013年に現行の政策を始めた目的は「デフレと経済停滞からの脱却」だった。 私は当時この目的の意味がよく分からなかったし、今もって分からない。 確かに日本の経済成長率は、図1(a)のように、G7諸国の中でも、90年代以降、かつてに比べて大きく下落した。 だがその原因の一部は、労働人口が減少に転じたことに伴って、国民の労働時間全体が減ったことによるものだ。
・G7の国々に関して、実質経済成長率から国民の総労働時間の伸び率を引いた「労働生産性の上昇率」(図1(b))を比較すると、日本は今でもトップクラスだ。 その日本において、アベノミクスや異次元緩和が不可欠だとしたら、他国はもっと過激な政策が必要だということになるのではないか。
・◆図1:G7諸国の実質経済成長率の推移 (注)赤が日本、青がその他のG7諸国(米、英、独、仏、加、伊)。ドイツとイタリアのマンアワー当たり実質GDPの成長率は1990年以降のみ (出所)OECDと世界銀行のデータをもとに筆者集計
・それでも日本の政界や経済界に不満や停滞感が漂っているのは、欧米へのキャッチ・アップ過程にあった過去の高成長が忘れられないからだろう。 安倍政権は年率2%超の実質GDP成長率を目指しているが、日本の労働時間は 今後20~30年間に、年率平均で1%程度減少する可能性が高い。その中で年率2%の実質GDP成長率を維持するためには、年率3%程度の労働生産性上昇率が必要となる。  しかし図1(b)を見ると分かるように、G7の中でそのような高成長を維持している国は存在しない。 政府は「そのためにできることは何でもやる」などと言って財政支出を膨らませているが、そうしたことを続けると、すでに破綻状態にある財政が崩壊したときの被害がいっそう大きくなってしまう。
▽「デフレ」は起きていない 物価下落はCPI統計の要因
・デフレに関する政府と日銀の認識も誤謬に満ちている。 日本のCPIの上昇率は確かに1990年代半ばから低迷しているが、「物価水準の持続的下落」という本来の意味のデフレはなかったといってよい。 1990年代末から2010年代初頭にかけてCPIが下落傾向にあったのは、IT機器の品質改善を考慮して統計上の物価を大幅に下方修正することが頻繁に行われていたからである。
・それを考慮すると、日本の物価は驚くほど安定しており、ここ数年はむしろ上昇傾向にある。(図2) ◆図2:日本のCPIの推移(2010年=100)(注)いずれも季節変動と消費税率改訂の影響を調整している (出所)総務省統計局のデータをもとに筆者集計
・黒田東彦日銀総裁は「CPI上昇率が年率2%未満なら実質的にはデフレ」と主張するだろうが、国民は本当にそうした物価上昇を望んでいるだろうか。 百歩譲ってそれが望ましいとしても、それを阻んでいるのは当の日本政府である。
▽政府の規制価格がむしろ物価や賃金を抑えている
・日本のCPIが1990年代初頭まで上昇基調にあったのは、相対的に生産性上昇率の高い製造業の賃上げが他産業に波及する効果が機能していたからだ。 しかしその後に製造業の雇用縮小が本格化すると、そうした効果が働かなくなった。
・今の日本で、唯一強力な雇用吸収力を有しているのは、介護や医療等の高齢者向け社会福祉業である。 しかし社会福祉は、典型的な規制産業であり、サービスの価格も従業員の賃金も厳しく統制されている。 政府が高齢者福祉にとめどなく税金を投入して価格を抑え込むことを止め、従業員の賃金も自由化すれば、人員の奪い合いが生じて、他の産業にも賃上げと物価押し上げ効果が波及するはずだ。
・それをせずに異次元緩和だけで物価を引き上げようとするのは、アクセルとブレーキを同時に踏むのと同じ愚行と言ってよい。
▽問題は日銀の債務超過でなく財政の持続性に責任持たない政府
・このまま異次元緩和が続けばどうなるか。 最近、欧米諸国が量的緩和の手じまいに向かう中で、学者やアナリストの間で、「異次元緩和からの出口段階で日銀のバランスシートが棄損する」とか「政府と日銀が事前に負担の分担を決めておくべき」といった議論が行われている。
・確かに、「出口」の利上げ局面になれば、日銀の収益悪化、さらには「債務超過」といったことも考えられる。一方で政府と日銀が一体の「統合政府」と考えれば、債務超過は大きな問題ではないし、最終的には政府が公的資金を日銀に投入すればいいという反論もあり得る。
・だが、この種の議論は本質的なものでない。 中央銀行は究極的には政府の子会社にすぎないのだが、政府が財政の持続性に責任感を持っていない場合、中央銀行がどのように金融政策を運営しても最終的な結果は同じになる。
・したがって財政破綻状態にある日本の異次元緩和と欧米諸国の量的緩和は、もともと似て非なるものなのだ。 このことを理解するために、ここで図3を見てみよう。 これは異次元緩和によって政府と日銀のバランスシートがどのように変化するかを示したものだ。 ◆図3:異次元緩和と統合政府のバランスシート 上段の(a)は異次元緩和前の正常な状態である。 日本政府は圧倒的な債務超過であり、国債を発行してその大半をファイナンスしている。日銀は現金(とわずかな法定準備金、ここでは省略)に見合う分の国債を保有している。政府・日銀間の債権債務を相殺すると、右端の統合政府(広義の政府部門)のバランスシートになる。
・一方、下段の(b)は日銀がすべての国債を購入して超過準備が膨れ上がった状態を表している。  右上と右下の統合政府の債務残高は同一であり、異なるのは債務の内訳だけである。 ここで注意したいのは、国債の多くが固定金利の長期債務であるのに対し、日銀の超過準備は随時引き出し可能な超短期債務であり、量をコントロールするためには利率を変化させざるをえない変動金利負債であることだ。
・このことから分かるように、異次元緩和は、借り手である政府にとって望ましいはずの長期・固定金利負債を不安定な短期・変動金利負債に置き換えているだけで、財政管理の観点からするとむしろ有害である。 ただし、(a)と(b)の違いは究極的には必ずしも重要なものでない。 正常な金融政策が行われている(a)の状態において政府が国債の借り換えに行き詰まった場合、デフォルト(債務不履行)を宣言することはせずに日銀に支援を求めるだろう。
・日銀が国債買い入れを拒否した場合は、日銀法を改正してそれを強制すればよいだけのことだ。 すなわち、日銀が事前に異次元緩和を行っていなくても、財政に対する信頼が失われた時点で統合政府のバランスシートは(b)のそれに移行するわけだ。 ただ今日のように、日銀が自発的に国債を買い入れたのちに財政破綻や金融危機が表面化した場合、政府がそれを日銀の不手際だと主張することは必定だろう。 その意味で、特に日銀にとって異次元緩和がきわめてまずい政策であることは事実である。
▽資本逃避や超インフレ止められず太平洋戦争当時と同じに
・なお、(b)では日銀のバランスシートに負債と同額の国債が資産として計上されているが、統合政府のバランスシートを見ると、それが政府の債務を日銀の債務に置き換える役割しか果たしていないことが分かる。 このことは、日銀の負債が資産の裏付けを持たない純粋な借金であること、すなわち、日銀が発行する円という通貨が無価値であることを意味している。
・いま、(b)の状況において、国民がそのことに気づいたと しよう。 円が無価値になった以上、早くそれを外貨や実物資産に取り換えた者の勝ちである。したがって、現金や預金を外貨や実物資産に替える動きが広がるだろう。 そうして国民が民間銀行の預金を引き下ろしに来れば、民間銀行は日銀の準備預金を引き下ろしてそれに応じざるをえない。
・ハイパーインフレや海外への資本逃避を恐れる日銀は準備預金の引き出しを制限するかもしれないが、そのためには国民が民間銀行預金を引き出すことも制限する必要がある。それでも物価が上昇しない保証はないので、政府が価格や賃金を直接的に統制することも必要になるだろう。 実はこうした事態は以前に起きていた。まさに先の大戦時に起きたことなのである。
・日中戦争開始以降、戦争債券の乱発や公債の日銀引き受けによって通貨量が急増していったのに対し、物価の上昇は相対的に緩慢だった。 これは軍需に押されて生活物資が不足する中、政府が物価と賃金の統制を強めていったためであり、ヤミ価格は上昇していた。
・しかしいくら統制を続けて表面を取り繕っても、財政の持続性喪失と過剰流動性という本質的な問題は解決しない。 図4で、正常な状態が回復した1950年代半ばと日中戦争開始時を比較すると、生産量はほぼ横ばいで、通貨量と物価だけが300倍近く上昇している。いうまでもなく、その間で政府と日銀を信じて財産を国債や現金の形で保有していた人々はそのほとんどを失った。 図4:太平洋戦争前後の日本の通貨流通高と物価 (注)鉱工業生産指数は1937年の値が100、通貨流通高と卸売物価指数は1937年の値が1になるように調整した  (出所)日本経済研究所編(1958)『日本経済統計集-明治・大正・昭和』等をもとに筆者集計
▽財政破綻の実態を隠す 財政健全化指標は「大本営発表」と同じ
・安倍首相は「今日の状況は太平洋戦争時とまったく異なり、財政の持続性は維持されている」と言うだろうが、それを信じる人は相当おめでたいと言わざるをえない。 最近、政府は安倍政権発足時に自ら設定した「2020年までのプライマリー・バランスの黒字化」の代わりに「政府債務のGDP比」を財政健全化計画の指標として重視しつつある。 だがこれは事実上、自分の任期中は財政再建を放棄すると宣言するのに等しい行為である。
・プライマリー・バランスの影響を別とすると、「政府債務のGDP比」が上昇するか下落するかは、既発債の平均利率と名目GDP成長率のどちらが高いかに依存しており、後者の方が高ければ下落する。 正常な状況では経済成長率が高まれば金利も上昇するため、両者は本来、連動しているが、今の日本では日銀が長期金利を0%に固定してしまっている。 したがって実質GDPが増えるか、インフレが進むかすれば、「政府債務のGDP比」は下落して財政健全化が進んだように見える。そして恐ろしいことに、既存の債務残高が大きいほどその効果が大きくなる。
・昨年 GDPの集計方法が変更され、統計上のGDPが5%以上増えている。 2019年の消費税率引き上げによって物価が上がれば、その分も「政府債務のGDP比」の引き下げに寄与する。 こうした統計上の詭弁を弄して「財政は盤石」と主張するのではかつての「大本営発表」と同じである。
▽「最後通牒」は海外から 日本国債や円預金は見放される
・今後どのような形で現行の政策の矛盾が露呈するかは分からないが、国内に「王様は裸だ」と叫ぶ気概を持つ人が少ないことを考えると、先の戦争の時と同様に、「最後通牒」は海外からやってくる可能性が高い。 日本国債の格付けはすでに先進国にあるまじき水準にまで下落しているが、あと一、二段階引き下げられると、まともな海外投資家は日本国債や円預金を保有しなくなるだろう。
・日本の民間企業が日本国債以上の格付けで社債を発行することは不可能だから、その後、事業会社や金融機関の外貨調達が困難になり、貿易や国際投資にも甚大な影響が及ぶ可能性が高い。 そうした事態が発生した場合、政府と日銀は経済の混乱を「海外投機家」のせいにして自らの責任を回避しようとするだろう。
・太平洋戦争を惹き起こした人々も「あれは自衛戦争だった」「日本は戦争に巻き込まれた」などといって戦後すぐに政界や官界に復帰し、現在はその子孫が戦前の社会体制の復活に執念を燃やしている。 突然の衆議院解散によって政局が流動化しているが、ここまで財政状況が悪化してしまうと、まともな政治家や政党が責任ある政策を掲げて選挙に勝利することは不可能である。
・太平洋戦争末期にも大本営発表が嘘っぱちであることに薄々気づいていた人は多かったと思われるが、軍と政府がズルズルと既定路線を続けるのを許したことにより、二度の原爆投下を含む甚大な被害を発生させてしまった。 今回も同じ顛末になりそうだが、そのことは私たち日本人が歴史から学び合理的に行動することができない国民であることを意味しているのではないか。
http://diamond.jp/articles/-/146165

次に、慶應義塾大学経済学部教授の金子 勝氏が11月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界的な株高が続く中で、日本でも10月24日には、東証平均株価が1960年12月以来、57年ぶりの「16連騰」。11月7日は2万2800円台を回復し、約25年ぶりにバブル崩壊後の戻り高値を更新した。メディアは騒ぎ立て、景気拡大や雇用状況の良さも一段と強調されている。だが、なぜ多くの人々は豊かさの実感がないのだろうか。
▽日銀の緩和マネー、海外に流出 世界の「株価バブル」支える
・急激な株価上昇は、いまや実体経済とは乖離している。バブルである。だがかつてのバブルとは様相が違っている。貸し出しが伸びず、銀行経営が苦しくなっているのはその象徴だ。 日銀の「異次元の金融緩和」が続き、マイナス金利に踏み込んだことによる超低金利のために貸付金利息収入が減少し、大手銀行は3年連続の減益を記録した。三菱UFJ銀行が店舗の最大2割程度の削減を検討し、みずほ銀行も今後10年で1万9000人分の業務量を削減する。多くの地方銀行も経営が苦しくなり、しだいに合併に追い込まれている。
・本来、日銀が異例の超金融緩和を続けているのは、銀行に国内融資を増加させたいためである。だが、国内の設備投資が盛り上がらない中で、銀行の融資先は、都市部などの不動産、住宅ローンなどに傾斜するしかなく、不動産はバブル気味だ。
・一方で、米国の中央銀行FRBが利上げや資産縮小に向かっているために日米金利差が拡大し、資金が海外に流れてしまうのだ。 この3ヵ月、米国の10年債利回り(長期金利)は上昇して2.3%を超えた。それに対して、日本の10年債利回りも上昇傾向にあるが、0.5~0.7%で頭打ちになっている。儲かる国内投資先がなく困っている日本の金融機関が海外の債券や株式に投資するのは当然の成り行きだ。
・ついに日本の金融資産の海外流出が1000兆円を超えた。日銀の金融緩和がもたらすマネーが米国など世界の「株価バブル」を支えているのである。
▽日本の株高の主役は外人投資家と日銀
・日本の株価連騰もその一環だ。 米国の株価上昇は、10年前のリーマンショック前の時よりも急激だ。 日本の異常な金融緩和で米国に資金が流れ、米国の株高でもうけた外国人投資家が、今度は日銀の株買い支えを予想してまた日本株を買うという循環だ。
・日銀が買っているETF(指数連動型上場株式投信)はすでに16兆円を上回り、社債などと合わせると20兆円を上回る。必ず日銀が株価を支えてくれるという心理が働くので、外国人投資家が主導して日本の株価も上昇していくことになる。
・だが売買金額ベースで取引を見ると、外国人投資家が7割を占め、個人取引は2割前後にすぎない。 株式の保有主体としてみても、外国人は3割を占める。外国人の保有比率が3分の1を超えた企業を「外資系企業」と呼ぶが、名だたる大企業が実は「外資系企業」になっている。 その一方で、日銀と年金基金が筆頭株主になっている「国有企業?」化する大企業も出てきている。
・たしかに、この株高で「おこぼれ」にあずかった富裕層も一部にはいるだろうが、多くの人々は豊かになったという実感を持てないでいる理由だ。 株高で年金の運用益が増えており、一般国民も利益を享受しているではないかという声もある。だが、これで本当に老後が安心できるだろうか。否である。
・日銀の株保有はETFを含めて17兆円を超えたが、国債と違って株は償還がないから、日銀が将来、異次元緩和からの「出口戦略」で資産圧縮を始める時は株を売却しなければならない。だが、日銀当局から出口戦略の発言があるだけで株価は急落してしまうので、日銀は株を買い続けなければならない。
・年金基金も年金給付を賄うために株式を売却して利益を出そうとしても、多額の株を一気に売ることはできない。 むしろ日銀や年金基金は、株価を下げないために株購入を続けなければならない。まるでネズミ講のようだ。
・外国人投資家は、米国FRBが利上げと資産縮小に向かう中で、こうした日銀の異次元緩和が継続されると見込んで、また株価上昇が一段と進んだのだ。 しかし、無理なバブル相場は脆い。外国人投資家が売買の7割を占める株式市場はショックに弱い。 外国人投資家はバブルが弾けると見るや、一気に売り抜く。日銀単独で株価下落を食い止めようとすれば、「空売り」を浴びて、余計、食い物にされかねない。
・株価バブルが崩壊しても、すでにジャブジャブの金融緩和を実施しているので、新たな金融緩和策をとっても、麻薬中毒患者に麻薬を打つようなもので効果が薄くなってしまう。 日本経済は泥沼に沈んでいく危険性が高まっている。
▽アベノミクスの「成果」とは? 企業の内部留保は増えたが国民には恩恵なし
・株価の上昇は、アベノミクスの「成果」とされている。だが国民には「恩恵」はいきわたっていない。 2013年4月に、黒田東彦日銀総裁が、2年で2%の消費者物価上昇の目標を掲げて「異次元の金融緩和」を打ち出した。しかし、目標達成時期は6度も延期され、デフレ脱却は明らかに失敗している。実質的に、日銀の金融緩和政策はただの赤字財政のファイナンスになっている。
・財政赤字(国の借金)は2013年3月末に991兆円だったが、2017年3月末には1071兆円に膨らんだ。4年間で国の借金が約80兆円増加したわけだが、その一方で、企業の内部留保(利益剰余金)は2013年3月末の324兆円から2017年3月末には406兆円に増加し、同じ4年間で約82兆円増えた。
・内部留保の増加分は、財政赤字を増分とほぼ見合っている。つまり 政府が借金をしてさまざまな支出で(需要)を作りだしたり、減税をしたりしたその分は、結果的に、企業が内部留保としてため込み、赤字財政の「恩恵」が国民に行き渡っていないことを象徴している。
・アベノミクスの下で、法人税率は30%→25.5%→23.4%と引き下げられてきたが、その減税分が、社会保障の充実にあてられるはずの消費税率引き上げの増収分ほとんどを食ってしまう一方で、企業減税をしても内部留保が貯まるだけである。それでいて、総選挙直後に、榊原定征経団連会長は「痛みを伴う改革を」と社会保障の削減を求める。 経済界が求める通り年金や医療や介護など社会保障を削っていけば、人は将来不安からますます消費を増やせないだろう。
▽労働分配率下がり消費停滞 求人倍率急上昇は少子高齢化の影響
・本来、デフレ脱却で大胆な金融緩和を求める「リフレ派」の主張する通りであれば、企業収益が増えたり、株価が上がったりすれば、大手企業の投資や富裕層の消費増が、中小企業や普通の人の所得増につながる「トリクルダウン」が起きて、消費が増えて物価も上昇していくはずである。
・ところが、内部留保が貯まる一方で、労働分配率は低下を続けている。 そのためアベノミクスが始まって以降、実質賃金は基本的にマイナス基調が続いている。2017年に入っても、2月、5月、6月が対前年比でみてゼロ%、1~8月まで5ヵ月マイナスになっている。家計消費(2人以上世帯)も、2014年以降、マイナス基調が続き、2017年に入ってようやくプラスになる月が増えてきた程度である。
・そこで、政府はデフレ脱却の失敗を「道半ば」と言い続ける一方で、2017年9月期の有効求人倍率が1.52倍で3期連続、バブル期を超えたことを、アベノミクスの「成果」だと強調するようになってきた。 だが、有効求人倍率は分子が求人数、分母が求職者数であるが、分子の求人数が伸びているのは、非正規雇用やパートが中心であることに変わりはない。問題は、分母の求職者数が一貫して減少していることにある。
・生産人口年齢(15~64歳)は、1995年の約8700万人をピークに減少に転じ、2017年には約7600万人になった。約20年間で1000万人も減ったが、最近は団塊の世代が次々と65歳を超えたため減少幅が拡大している。 実際、2012年の8017万人から約4年間で388万人も減り、年平均97万人もの減少を記録している。 むしろ、有効求人倍率の急上昇は少子高齢化の深刻さを示しているのであって、アベノミクスの成果ではないのである。
▽企業自体が売買の対象になる資本主義 株価至上主義の経営加速
・では、なぜトリクルダウンが起きないのだろうか。その背景には、1990年代以降、席巻したグローバリズムによって、金融主導の「金融資本主義」とでも呼ぶべきものに資本主義が変質したことが上げられる。「金融資本主義」の特徴の一つは、景気循環をバブルとその崩壊を繰り返す「バブル循環」にしたこと、いま一つは、企業自体が売買の対象となったことである。
・とくに、1990年代末に導入された「国際会計基準」によって、企業の売買価値を表わすようなルールに改められたことが大きい。多額のフリーキャッシュフローを持つことが重視され、企業が保有する株式や不動産などの資産を市場価格で評価する時価会計主義が導入されるようになった。そして、企業が買収する側に回るには、自社の株式時価総額を高めることが求められる。そのためには、内部留保をため込む、配当金を出す、自社株買いによって一株当たりの利益率を上げることが優先される。
・「選択と集中」と称して不採算分門は切り売りされ、自社に足りない部門は自ら育てるのではなく内部留保をもとに買収するという短期利益優先の米国型経営が普及してきた。 こうした「ルール」の下では、雇用を非正規化させ、賃金支払総額を抑制し、労働分配率を低下させることが、企業経営にとっては「合理的」になる。だが、それは社会保障の不安定化とともに家計消費を冷え込ませ、雇用流動化に伴う若者の非正規労働者化は、結婚も出産もできない状態を作り出して、少子高齢化を加速させてしまうのである。
・それが、ブーメランのように国内市場の縮小をもたらす。企業は国内に投資をせず、ますます海外に投資をするようになっていくからだ。 しかも日本企業の場合、企業買収や合併戦略が必ずしもうまくいっているわけではない。東芝のウエスティングハウス買収、日本郵政のオーストラリア物流会社買収、武田薬品の製薬ベンチャー買収など、多額の損失を生む外国企業のM&Aも目立ち始めた。
▽短期利益の追求で競争力低下 「麻酔薬」ではじり貧に
・それどころか、企業合併の度に、短期の利益には貢献しない中央研究所などが閉鎖され、自社開発力が低下する。製薬業が典型だ。 こうした中で、日本企業の技術競争力の低下が止まっていない。  スーパーコンピューターのスカラー型への転換、ソフトやコンテンツを作る能力でも遅れたため、IT・電機産業の競争力が衰退した。さらに、原発推進政策に乗っかった東芝の経営危機に示されるように、重電機産業も同じく競争力を衰退させている。いまや自動車も電気自動車への転換に遅れ始めている。政府も企業も、世界で進む技術を見極め、大胆な産業戦略を立てることができない。
・大規模金融緩和という麻酔薬をいくら打ち、株価を上げたり円安にしたりしたところで、筋肉や臓器が弱っては体力を次々と低下させていくだけなのだ。
http://diamond.jp/articles/-/149099

第三に、12月13日付けダイヤモンド・オンライン「アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「教育無償化」の「2兆円の政策パッケージ」がまとまった。「デフレ脱却」から始まり、「経済最優先」を掲げて、まるで“日替わりメニュー”のように政策が打ち出される。最近では、市場重視の「小さな政府」路線は影をひそめ、政府介入色の強い「大きな政府」路線を歩み始めているように見える。「迷走」するアベノミクスの舞台裏で何が起きているのか。浮かび上がるのは、一人の「首相側近」の存在だ。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
▽頭越しに企業拠出金決める「官邸主導」に自民党反発
・12月8日、安倍首相が「人づくり革命」の目玉として掲げた「教育無償化」の政策パッケージが公表された。だがその柱となった「3~5歳児の保育・幼稚園料無償化」などの適用対象範囲や支給額は詰め切れず、結局、制度設計は来年夏以降に先送りされた。 背景には、無償化論議が終始、「官邸主導」で進められてきたことへの反発がある。
・自民党内からは、「無償化は認可外保育所にも認めるべき」「高等教育無償化は低所得世帯に限定しないと、金持ち優遇になる」などの異論が相次いだ。 そもそも、安倍晋三首相が「消費税の使途変更」による「教育無償化」を突然打ち出したのは、解散・総選挙を直前にした9月25日の記者会見だった。
・その後、選挙公約策定においても党との調整は行わず、無償化の対象範囲も明示しないまま。選挙大勝後は、政策パッケージ作りにおいて、都議選惨敗で鳴りを潜めていた官邸主導が一気に復活した。  それを象徴するのが、安倍首相が10月末、財源として企業から3000億円の拠出を経団連会長に要請したことだった。
・「党内で全く議論していない。官邸で何でもかんでも決めてしまうのはいかがなものか」と、党内で無償化問題を議論してきた「人生100年時代戦略本部」の小泉進次郎事務局長が苦言を呈したように、自民党内の苛立ちはピークに達した。
▽剛腕首相秘書官が司令塔 消費増税の使途変更も舞台回し
・一連の政府側の動きの「司令塔」の役割を担ったのが、今井尚哉・首相政務秘書官。「首相の最側近」として、これまでも原発再稼働や消費増税先送りなど、重要政策が打ち出される局面を仕切ってきた剛腕秘書官だ。
・財務省幹部はこう語る。「2兆円という規模も今井氏のイニシアティブで決まった話。選挙でアピールするには、わかりやすい丸い数字がよかったからだ。消費税増収分(1.7兆円)で足りない財源をどうするか。アイデアを出せといわれる中で、もともと企業が、企業設置保育所整備の名目で拠出金を出していたから、私立保育所のほうも出してもらおうと。最終的には、今井氏が首相に『この案で』と言って決まった」。
・その後、今井氏の指示を受けた同じ経産省出身の新原浩朗・内閣府政策統括官が、水面下で経団連に折衝。「首相要請の舞台」を整えたという。 「本来なら、うちが経産省と一緒に経団連に根回しをする話だけど、それをやらずに済んだ。楽をしたといえばそうだが、この政権では今井氏の存在がそれだけ大きいということ」。この幹部は自嘲気味に話す。
・もともと、消費増税の使途を変更する話も、選挙前から今井氏が、教育無償化を政権の次の目玉政策として考え、一部の財務官僚と話を進めていたものだという。 「首相表明の前に、内々に首相から(麻生太郎)大臣に話があって、そこから動き出したことにはなっているが、実はもっと前からの話だった」(財務省幹部)
・当初、「教育無償化」は、改憲を目指す首相が、維新や公明党を「改憲勢力」として取り込むという政治的な思惑が先行していた。だが、財源のめどがあったわけではなかった。一方で、財務省内では、消費増税が二度先送りされて、財政再建が遠のくばかりの状況に焦りが広がっていた。
・「消費増税の使途変更で、財政再建にあてる分が少なくなることには省内でも異論があった。だが、増税を先送りしてきた総理が増税にコミットするのだから、受け入れるほうが得策と考えた」(同)  つまり、今井氏が、首相の思いや「安倍色」を出すための目玉政策を考える中で、財務省を取り込んでの舞台回しが水面下で続けられていたというのが真相だ。
▽“賃上げ実現”狙った税制改正を経産省に「指示」
・今井氏の存在は、来年度の税制改正が大詰めを迎えている「自民党税制調査会」の議論でも影を落とす。 来春闘での「3%賃上げ」を実現させるとして、賃上げに熱心な企業には減税し、一方で賃上げしない企業には「ぺナルティ」として研究開発費控除などの租税特別措置を見直す。 こうした異例の税制改正(「所得拡大促進税制の拡充」)が検討されているのも、官邸からの「指示」が発端だった。
・「何かいい“弾”を出せないか」「ここはもっとブラッシュアップして、強力なものに」 各省庁が来年度の政策や予算要求内容を議論し始める6月ごろから、今井氏と経産省との間で、こんなやりとりが続いたという。
・「デフレ脱却」を掲げて異次元緩和を進めても消費は伸びず、物価目標の実現時期が何度も先送りされる中で、安倍政権はこの数年、経済界に賃上げ要請を続けてきた。だが「官製春闘」の効果が上がらない中で、官邸からの“圧力”は、例年になく強かったという。「アイデアとしては省内であたためてはいたが、幹部の間でも、税で民間の賃金にそこまで介入するのはどうかと、意見が分かれていた。だが今井氏からは強力な弾を出せと言われて…」と幹部は話す。 ここでも、党の頭越しに税制改正の方向が固まったわけだ。
▽「一億総活躍社会」で存在感 アベノミクスの政策転換を演出
・今井秘書官の“腕力”を与党や霞が関に一躍、印象付けることになったのが、自民党総裁選で再選を果たした安倍首相が、2015年10月に発足させた第三次政権で打ち出した「一億総活躍社会」プランだ。 この中で掲げられた「新三本の矢」は、最初に「強い経済(GDP600兆円)」こそ唱えているものの、残りの二つは「子育て支援(希望出生率1.8)」「安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)」と、市場重視の成長戦略などを特徴にした以前のアベノミクスの「三本の矢」とはまったく肌合いの違うものだった。
・この「路線転換」を演出したのが、今井氏だった。 総裁選前に、会合の席で今井氏に話しかけられたという財務省幹部はこう話す。「総裁選の弾として、これまでと違うものを打ち出したいのだが、一緒に考えてほしいと言われた。すでにいくつかの案を今井氏自身が持っていた」。 また別の幹部も同じ頃、今井氏から声をかけられた。 「介護職員の待遇改善をやりたい。金(予算)は出せるよね」。政府部内ではほとんど議論がされていなかった話だが、半ば決めたかのように念を押されたという。
・素案作りを指示された経産省が当初、あげた案には、「一億総活躍」の文言や「600兆円」「出生率1.8」の数字はなかったという。これも今井氏が首相の意向を踏まえて盛り込み、数字の根拠になるデータ集めを指示したといわれる。
・円安などで企業業績は良かったが、格差が拡大し、大企業や富裕層重視の「トリクルダウン政策」への批判が強まっていた中で、従来、野党が主張してきた「底上げ政策」や社会保障に力を入れて党内外のアベノミクスへの批判を封じ、政権への求心力維持を図りたいとの狙いが透けて見えた。
▽首相と「一心一体」 信頼を背景に差配
・今井秘書官が力を持つ背景は何なのか。 今井氏は、第一次安倍政権で事務の首相秘書官として仕えた後、安倍首相に求められて、第二次政権で政務の秘書官となった。 もともと事務秘書官は、財務、外務、経産、総務といった中枢官庁が出し、従来は財務省出身者がなることが多かった筆頭年次の秘書官を中心に、担当分野の省庁との政策作りなどの調整をしてきた。 政務秘書官は、時の首相が事務所のベテラン秘書や金庫番などを官邸に連れてくる例が多かったが、橋本政権以降からは、首相に近い特定の官僚が登用されるようになった。今井氏もそうした一人だ。
・首相と一心一体で、国会日程や政治日程なども考え、政権全体を見る立場であらゆることを差配し、政策作りでも事務秘書官とは違う突出した力を持つ。役所の担当者に直接、指示が来ることもしばしばだ。 ある経済官庁の幹部はこう話す。「この件はだめ、これはもっとこうしろと、かなり強く言ってくる。振り回されている感じはなくもないが、総理の信頼は絶大だと聞くし、総理がのってくれれば、政策もやりやすさが全然違う。結局、どこの省庁も今井氏の言うことを聞くしかない」。
▽ころころ変わる目玉政策 「実態は財政ばらまき政策」
・それゆえに、機動的に政策を転換したり、打ち出したりできるということかもしれない。 だが、その場その場での政権の利害が優先され、政策の目的や中身が十分に吟味されないまま生煮えで打ち上げられたり、人気取り政策に陥ったりするリスクと紙一重の危うさだ。 前述したように、「教育無償化」も政策効果を考えればどういうやり方がいいのか、吟味はないまま打ち上げられた観は否めない。財源論も誰がどういう形で負担をするのか、しっかりとした“理屈”が必要だったのに、「消費増税の使途変更」という安易な手に飛びついた。
・そもそも「教育無償化」は、教育機会の拡充や個人の能力を生かすことが狙いなのか、それとも成長戦略として位置付けられたものなのかも、はっきりしなかった。 こうした政策の狙いや、政策運営の「ストーリー」の分かりにくさや混乱は、アベノミクス全般の特徴だ。 「新三本の矢」のうちの「強い経済」と、「子育て支援」「介護離職ゼロ」とはどういう関係にあるのか。
・さらには、内閣改造ごとに担当大臣が“乱造”されてきた観のある「規制改革」や「地方創生」「女性活躍」「働き方改革」「人づくり革命」など、「目玉政策」がころころ変わる中で、それぞれの関係も見えにくいままだ。
・「それも、経済重視でスローガンを打ち出して“やっている感”を出せばいいということでやっているに過ぎない。実態は、アベノミクスの賞味期限が切れているのに、誰も反対しない政策を羅列した“スローガン政治”で、財政のばらまきをやり始めている。このままでは財政も金融も、事態はどんどん悪くなるばかりだ」「アベノミクスの総括」の勉強会を自民党内に立ち上げた村上誠一郎・元行革担当相(自民党税制調査会副会長)はこう話す。
▽「側近頼み」の首相 パッチワーク政策では限界に
・もとはといえば、「官邸主導」によるトップダウンの政策決定は、各省庁に任せた「積み上げ型」では、縦割りや既得権益が壁になって大胆な政策が出せないということで小泉政権時代から本格化し、「経済財政諮問会議」などが政策決定の舞台として活用された。 確かにこうした運営によって、経営者や学者らの民間委員を含めた“平場”の議論が行われることで、社会全体で問題の所在が共有され、政策に対する認知度、国民の理解も深まった。
・だが、安倍政権では諮問会議は形骸化し、限られた「側近主導」に変質してしまったのだ。 とはいえ、首相を優秀な側近が支えるといっても限界は明らかだ。 「経産官僚は、花火のように政策を次から次へと打ち上げるのは得意かもしれないが、財源や他の政策との整合性など、総合的に考えるという点では限界がある」(村上・元行革相)
・アベノミクスの政策に総花的で底の浅さを感じるのも、そういうことが背景にあるのかもしれない。 「かつてのような成長は難しくなり、多くの先進国が新たな価値観をもとにどうやって豊かに年老いていくか、成熟した社会のありようを模索している。だがいまだ安倍政権は、目先のGDPだけを見て、あらゆる政策を“景気対策”としてしか位置付けていない。本来、考えるべきことは、日本をどういう国にしたいのか、どういう国にするのかという“骨太の将来像”だ」と北村行伸・一橋大教授は言う。
・それは、本来なら政治家の仕事のはず。 だが、安倍首相自体が秘書官から吹き込まれた“借り物”のビジョンしか語っていないし、政策に一貫性のないことすら気がついていない様子だ。 側近官僚の発想と視野で帳尻を合わせる「パッチワーク」の政策の限界が、見え始めている。
http://diamond.jp/articles/-/152591

第一の記事で、 『「アベノミクスと日銀の異次元緩和は、かつての太平洋戦争のようなものだ」・・・アベノミクスと、その中心的な役割を担う日銀の異次元緩和は、もともと勝算も必要性もないのに、いったん始めてしまったために簡単には後戻りできなくなっている。そういう点が太平洋戦争と似ているからだ』、なるほどである。 『異次元緩和は、借り手である政府にとって望ましいはずの長期・固定金利負債を不安定な短期・変動金利負債に置き換えているだけで、財政管理の観点からするとむしろ有害である』、『ハイパーインフレや海外への資本逃避を恐れる日銀は準備預金の引き出しを制限するかもしれないが、そのためには国民が民間銀行預金を引き出すことも制限する必要がある。それでも物価が上昇しない保証はないので、政府が価格や賃金を直接的に統制することも必要になるだろう』、国民の預金引き出しまで制限されるとなれば、日本経済は大混乱に陥るだろう。
第二の記事で、『日銀や年金基金は、株価を下げないために株購入を続けなければならない。まるでネズミ講のようだ』、というのは空恐ろしいことだ。 『内部留保の増加分は、財政赤字を増分とほぼ見合っている。つまり 政府が借金をしてさまざまな支出で(需要)を作りだしたり、減税をしたりしたその分は、結果的に、企業が内部留保としてため込み、赤字財政の「恩恵」が国民に行き渡っていないことを象徴』というのは、偶然の一致とはいえ、恐ろしい符合ぶりだ。『短期利益の追求で競争力低下 「麻酔薬」ではじり貧に』、というのはその通りだ。
第三の記事で、 『その場その場での政権の利害が優先され、政策の目的や中身が十分に吟味されないまま生煮えで打ち上げられたり、人気取り政策に陥ったりするリスクと紙一重の危うさだ。 前述したように、「教育無償化」も政策効果を考えればどういうやり方がいいのか、吟味はないまま打ち上げられた観は否めない。財源論も誰がどういう形で負担をするのか、しっかりとした“理屈”が必要だったのに、「消費増税の使途変更」という安易な手に飛びついた』との指摘はその通りだ。『「経産官僚は、花火のように政策を次から次へと打ち上げるのは得意かもしれないが、財源や他の政策との整合性など、総合的に考えるという点では限界がある」(村上・元行革相)』、との指摘は的確である。
 
タグ:アベノミクス (その26)(「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す、「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由、アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断) 熊倉正修 ダイヤモンド・オンライン 「「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す」 日銀が大量の国債などを買い取り、資金をばらまけば「インフレ期待」が生まれ、物価が上がるというシナリオに成算があったわけでもなかった。後戻りできないまま、泥沼に入り込んだのは、太平洋戦争当時の状況と同じだ―― アベノミクスと、その中心的な役割を担う日銀の異次元緩和は、もともと勝算も必要性もないのに、いったん始めてしまったために簡単には後戻りできなくなっている。そういう点が太平洋戦争と似ているからだ 事態が悪化すると為政者はますます過激な政策にのめりこんでいくが、それを永遠に続けることはできず、最終的には国民に甚大な被害が及ぶことになる 「デフレ」は起きていない 物価下落はCPI統計の要因 政府の規制価格がむしろ物価や賃金を抑えている 問題は日銀の債務超過でなく財政の持続性に責任持たない政府 異次元緩和は、借り手である政府にとって望ましいはずの長期・固定金利負債を不安定な短期・変動金利負債に置き換えているだけで、財政管理の観点からするとむしろ有害である ハイパーインフレや海外への資本逃避を恐れる日銀は準備預金の引き出しを制限するかもしれないが、そのためには国民が民間銀行預金を引き出すことも制限する必要がある 「最後通牒」は海外から 日本国債や円預金は見放される 金子 勝 「「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由」 日銀の緩和マネー、海外に流出 世界の「株価バブル」支える 日本の金融資産の海外流出が1000兆円を超えた 日本の株高の主役は外人投資家と日銀 アベノミクスの「成果」とは? 企業の内部留保は増えたが国民には恩恵なし 内部留保の増加分は、財政赤字を増分とほぼ見合っている。つまり 政府が借金をしてさまざまな支出で(需要)を作りだしたり、減税をしたりしたその分は、結果的に、企業が内部留保としてため込み、赤字財政の「恩恵」が国民に行き渡っていないことを象徴 日本企業の場合、企業買収や合併戦略が必ずしもうまくいっているわけではない 短期利益の追求で競争力低下 「麻酔薬」ではじり貧に 「アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断」 教育無償化 2兆円の政策パッケージ まるで“日替わりメニュー”のように政策が打ち出される 最近では、市場重視の「小さな政府」路線は影をひそめ、政府介入色の強い「大きな政府」路線を歩み始めているように見える 都議選惨敗で鳴りを潜めていた官邸主導が一気に復活 党内で全く議論していない。官邸で何でもかんでも決めてしまうのはいかがなものか」と、党内で無償化問題を議論してきた「人生100年時代戦略本部」の小泉進次郎事務局長が苦言を呈した 今井尚哉・首相政務秘書官 “賃上げ実現”狙った税制改正を経産省に「指示」 「一億総活躍社会」で存在感 アベノミクスの政策転換を演出 首相と「一心一体」 信頼を背景に差配 ころころ変わる目玉政策 「実態は財政ばらまき政策」 「側近頼み」の首相 パッチワーク政策では限界に
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インフラ輸出(その5)(日立「英国高速車両」はトラブル続出だった、日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点 インドネシア案件 調査は日本の担当だが…、台湾新幹線 「たった4編成」国際入札のナゼ) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、4月29日に取上げた。今日は、(その5)(日立「英国高速車両」はトラブル続出だった、日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点 インドネシア案件 調査は日本の担当だが…、台湾新幹線 「たった4編成」国際入札のナゼ)である。

先ずは、10月19日付け東洋経済オンライン「日立「英国高速車両」は、トラブル続出だった 天井から水が流れ落ち、列車は大幅遅延」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「このたびのトラブルの件では、乗客の皆さまに大変なご迷惑をおかけした。申し訳なく思っている」。日立製作所の執行役常務で鉄道ビジネスユニットCOO(最高執行責任者)を務める正井健太郎氏が沈痛の面持ちで口を開いた。 10月16日、日立製作所が手がける英国向け高速車両が営業運転を開始した。地元の人々の期待を一身に受け華々しく登場したが、ロンドン行きの一番列車にトラブルが続出。そのデビューは苦々しいものとなってしまった。
・英国では、主要幹線を走る長距離用車両の老朽化が著しく、順次新車へと更新する都市間高速鉄道計画(IEP)が進められているが、今回の日立製新車の導入はその先駆けとなる。
▽ロンドンの起点はパディントン駅
・この日、営業運転が始まったのは「クラス800」と呼ばれる車両だ。日立は英国からIEPで更新される車両866両の納入および、現在から27年半にわたるメンテナンス事業を一括受注している。うち、最初の12編成は山口県下松市の同社笠戸事業所で生産され、現地に船で運ばれたが、残りの110編成は同社が2015年9月に運営を開始したイングランド北東部のニュートンエイクリフ工場で造られる。
・新型車両は、この日からクラス800を導入した鉄道運行会社グレートウェスタン鉄道(GWR)に369両、ロンドンからスコットランド方面に延びる東海岸本線を運営するヴァージントレインズに497両、それぞれ納入されることが決まっている。
・GWRのクラス800は「くまのパディントン」で日本でも広く知られるロンドンのパディントン駅を発着する。ロンドン発の一番列車は朝6時半過ぎ、多数のメディア関係者が見守る中、パディントン駅3番線へと現れた。出発を控えたプラットホームで、正井COOは「長い歳月を経て、このIEPの営業運転にこぎつけられたことは、われわれ鉄道に携わる者として誇りに思う。長期にわたる仕事の努力が報われ感無量」としたうえで、さらなる英国での受注に意欲を示した。
・ロンドン・パディントン駅は、ロンドンとウェールズ南部、イングランド西部とをそれぞれ結ぶGWRの拠点駅となっている。GWRの路線はブリストルで2手に分かれるが、新型車両はそのうちのロンドンーウェールズ南部を結ぶ区間に使われる。 
・これまで使われてきた車両は、1976年に導入が始まった「インターシティ125」と呼ばれるものだ。125とは「時速125マイル(201km)で走れる」という特徴から名付けられたもので、非電化区間を走る列車では当時最高速を誇った。しかし今では、地盤が悪いのか、台車の作りの問題なのか、横揺れや縦揺れがひどく、車内で本を読んだり、パソコンのキーボードを叩いたりするのはとてもつらい。そのうえ、ドアの開閉はすべて手動で、停車駅を示すデジタル掲示板などの備え付けがない。一方で、鉄道会社にとっても、発車前に係員が車両を歩いて席が指定済みであることを示す短冊を座席の頭に付けて回る作業が強いられる。さらに行き先表示も「印刷された紙を毎回両面テープで貼る」仕組みとなっている。
▽速度は新幹線ほど速くない
・今回の新型車両導入はあくまで「既存車両の更新」であって、スピードアップを図る目的で製造されたものではない。最高運転速度は時速201kmにとどまる。 それでも、乗り心地など車内設備はインターシティ125と比べ格段に向上している。1編成当たりの乗客定員が約25%増加、ラッシュ時の輸送力を増強するほか、座席のシートピッチの拡大、荷物や自転車などが置けるラックの増加、一目で空席状況がわかるデジタル表示などが施された。
・クラス800は、電化区間だけでなくディーゼル発電機の搭載で非電化区間への乗り入れもできる「バイモード」が最大の特徴だ。正井COOは「ディーゼルで走る従来車と比べ、加速性能が高い。今後電化区間が延伸すれば現在よりも所要時間が短縮する」と期待を寄せる。 ロンドンからの下り一番列車は予定どおり午前7時にパディントン駅を発車、順調にブリストルに向け走行を続けた。英国で交通アナリストとして活躍するサイモン・カルダー氏は乗り心地について「英国ではこれまでになかった素晴らしいもの。日本で新幹線に乗ったときのスムーズさを思い出す」とその性能に太鼓判を押した。
・ところが、早朝6時にブリストルを出発した上りの一番列車では、発車時刻の遅れ、天井から水が流れ落ちる、バイモードの故障など、いくつものトラブルが発生していた。 クリス・グレイリング運輸相をはじめとする政府関係者などVIPのほか、地元のメディア、さらに多くの鉄道ファンらが乗り合わせたこの列車でのトラブルについて、正井COOは翌17日に実施されたイタリア・ピストイア工場でのメディア向け見学会の席上、「大きく分けて3つの問題が起きた」とあらためて説明を行った。
・まず、ブリストル出発時に発車が20分ほど遅れたトラブルについてである。これは正井COOによれば、「トレインマネジメントシステムにかかわるもの」で、システムの立ち上げ時の設定に異なっている部分があったという。「問題は特定できたが復旧まで時間がかかってしまった」としている。
・続いて、走行途中には、クーラーパネルから「滝のように」水が流れ落ちるトラブルが発生。英紙デイリーメール(電子版)は、乗客のラップトップがずぶ濡れになったと報じている。これについて正井COOは「空調の水冷に使う水の排水管の先端に逆流防止弁があるが、それがうまく働かなく、たまりすぎてあふれてしまったため」と説明する。【10月23日12時50分追記】正井COOのコメント冒頭に「空調の水冷に使う水」とありますが、その後の取材で正しくは「空調の除湿で出る水」であることがわかりましたので、追記いたします。
・ただでさえ遅延を起こしていた一番列車に第3のトラブルが襲う。クラス800最大の武器ともいえるバイモード機能の「切り替わり」がうまく作動しなかったのだ。 非電化区間から電化区間への進入の際、走行中に無停車で「モードの切り替え」ができるはずが、パンタグラフが上がらず立ち往生してしまう事態となった。正井COOは、「バイモードの設定が間違っていたため、自動でモードが切り替わらなかった」と説明している。
・以上のようなトラブルが重なった新型車両の一番列車は、最終的にパディントン駅に定刻の約40分遅れで到着。その影響で後続列車に大幅な遅れが出て、ダイヤが大混乱しただけでなく、先に起こっていた「水の落下」のため、一部車両では空調が停止しており、新型車両での快適な通勤を楽しみにしていた人々に対し、文字どおり「水を差す」結果となってしまった。
・影響はさらに広がった。クラス800のウェールズへのお輿入れが延期となったのだ。ブリストルからの車両が折り返し、ウェールズの中心都市・カーディフに向かうはずの列車が一連のトラブルを受け、急遽キャンセル。ウェールズの鉄道ファンの間で失望が広がった。 GWRは30分以上の遅延に対し、支払い済み運賃の全額を返す補償サービスを行っている。この日、遅延や取り消しに巻き込まれた乗客は賠償請求ができるものの、新型車両の初乗りを楽しみにしていた人々にとっては「お金を返されても全然うれしくない」ことになってしまった。
・今回のトラブルを巡っては、車両メーカーである日立が自ら、運行オペレーターおよび利用者に対し、事情説明と陳謝を行った。これは、GWRとの契約で車両のメンテナンスを日立が受け持っているという事情による。GWRはツイッターで「メーカーである日立の素早い対応に感謝する」という声明を発表している。なお、その後当該車両は運行に復帰し、営業運転2日目の17日は無事に終えることができた。
▽事業トップが動画でお詫び
・上り一番列車のトラブルを受け、日立レールヨーロッパのカレン・ボズウェル社長は「計画どおりの運行とならず、オペレーターのGWR、利用客の皆さまには大変なご迷惑をお掛けした」と動画と文書で謝罪する事態となった。 日立はこの先英国で、スコットランド向け車両「AT200」に加え、イングランド西部などに投入される長距離車両「AT300(クラス802)」の納入を控えている。さらに「暑くて狭い」と不評なロンドン地下鉄の更新用車両への入札も行っている。同社によれば、営業運転までに行った5000マイル(約8000km)に及ぶ試験をトラブルなしで実施できていたという。にもかかわらず、トラブルは起きた。今回の一件を教訓に、安全・安定運行のために万全を期すことが、今後の日立の鉄道戦略にとって最優先の課題となる。
http://toyokeizai.net/articles/-/193477

次に、11月30日付け東洋経済オンライン「日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点 インドネシア案件、調査は日本の担当だが…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・インドネシアの首都ジャカルタと第二の都市スラバヤを結ぶジャワ北本線は、日本の円借款プロジェクトにて、架橋修繕・線形改良・路盤改良などが進められ、2014年9月に全線の複線化が完成した。これに合わせ、インドネシア鉄道会社(PT KAI)はCC206型ディーゼル機関車100両を新規発注し、ジャカルタ―スラバヤ間の旅客列車のスピードアップ、そして貨物列車の輸送力増強が図られた。全線複線化の効果は絶大で、基本的に定刻での運行が定着している。ほぼ全区間で100km/hでの高速走行が可能なまでに線路はすでに改良されているのである。
・それを今回、さらに高速化改良を行い、最高速度を140km/h~160km/hに引き上げ、ジャカルタ―スラバヤ間を5時間程度で結ばせる。現在、JICA(国際協力機構)によるF/S(フィジビリティ・スタディ:実現可能性)調査が鋭意進行中であり、まもなく中間報告がなされるのではないかと思われる。
▽住民が勝手に作った踏切が多数存在
・その全容はまだつかめないが、現状の線形を考慮すれば140㎞/h程度への速度向上は難しくない。しかし、これまでの議論を見ていると、カーブの多い既存線改良と踏切問題がやたらと主張されているようだ。すでに日本の手により北本線の線形改良は終わっているにもかかわらずだ。
・さすがに踏切は、対策待ったなしであるが、住民が作った勝手踏切(PT KAIは黙認している)が多数設置されており、その数は把握されていない。現実的には踏切を撤去するのではなく、線路脇に横断者が出ないようにさくを設置し、歩道橋を架けることになろう。
・本来ならば、ここに信号設備の話題も上がらねばならないのだが、どうもインドネシアでは信号保安に対する認識が極めて低いようで、議題に上がっているようには見受けられない。現在、当地鉄道信号は三灯式で、停止・注意・進行の現示しか出せない。少なくとも制限現示や高速進行現示を表示可能にせねばならないのだが、インドネシア側から不要と却下されそうで、笑うに笑えない。
・となると、今回ははたして日本の出る幕はあるのか。北本線高速化案が出た時点では、他国の援助は受けず、運輸省予算で対応できるとの試算が出ていた。現在でも、地上設備側の改良だけなら、信号はさておき、資金的にも技術的にもインドネシア側での対応は十分可能である。 今回のジャワ北本線高速化事業は、インドネシアの希望により円借款ではなく、官民パートナーシップ(PPP)により推進される見込みである。土木工事は純粋なインドネシア企業と資金で実施される可能性は高い。
・となると、残るは高速運転用の車両調達である。これも予算を抑えたいインドネシア側は、当初CC206型機関車の改良を検討していたようだが、本来貨物機である特性上、低速での牽引力を重視して、中高速域での加速性能が低く設定されているため、CC206の高速対応というのは、あまりにも現実離れしている。新車両の投入は、誰が見ても避けられない状況である。
・だが、ここにも問題が立ちはだかる。現在日本で140㎞/h走行以上の性能を持つ、ディーゼル車両は開発されていないのだ。最もそれに近いスペックを持っていたのが、JR北海道が開発していたものの、断念してしまったキハ285である。しかも最新の発表によると北本線では160km/h運転が有力視されている。いずれにせよ、開発費が相当かさむことは避けられず、国際入札にかけられた場合、日本が受注できる可能性は低い。
▽いい加減な予算では日本メーカーは入札しない
・かつ、F/S調査の結果はじき出されたいい加減な予算では、先のフィリピンの例のように日本の車両メーカーが入札を拒む可能性が極めて高い。これこそが、日本の鉄道インフラ輸出が進まない最大の要因であるのだが、もし本当に鉄道を世界に売り込むなら、綿密な予算の策定は絶対条件だ。さらに、メーカーへのなんらかの資金援助がなければ、国際入札で勝つことはできない。中国中車、そしてシーメンスやアルストムが世界で勝てるのは、バックに国の手厚い支援が存在するからだ。
・では日本がなすべきことは何なのか。その答えを導く前に、ジャカルタ―スラバヤ間約751kmは東京―岡山間に匹敵する、というレトリックから解放されなければならない。これにだまされてはいけない。あくまでも距離の比喩にはなっているが、インドネシア第二の都市スラバヤは、東京と大阪のようにジャカルタに並び立つものではなく、単なる地方都市にすぎないのだ。時刻表を見れば一目瞭然だが、北本線はジャカルタを起点とした先細りダイヤである。だから、東京―新大阪間のようなビジネス需要などない。
・また、北本線には単にジャカルタ―スラバヤ間を結ぶ列車以外に、バンドン方面、ジョグジャカルタ方面への直通列車も多数設定されている。バンドン方面は、ジャカルタ―バンドン間の高速鉄道が完成すると在来線特急は廃止となろうが、ジョグジャカルタ方面の需要は、スマラン、スラバヤ方面への需要よりも圧倒的に高い。
・さらに、貨物列車の存在も厄介だ。ジャカルタ―スラバヤ間だけを見ると、当然ながら旅客列車よりも多く設定されており、全線通しで運転されるものだけでも、コンテナ貨物9往復、急行荷物1往復、セメント貨物2往復がある。さらに区間運転のものも含めれば、倍近い本数となる。しかも、貨物列車の最高速度は75km/h(ただし急行荷物列車は旅客列車と同じ)である。
・つまり、ジャカルタ―スラバヤ間の全列車が高速運転になるのではなく、多数の一般列車と線路を供用するのである。しかも、ジャカルタ都市部のブカシ―チカラン間は通勤電車とも線路を共用する。つまり、ジャワ北本線を日本の路線にたとえるなら、東海道新幹線というよりもかつての東北本線なのだ。
・このように、北本線には雑多な行先、種別、速度の列車が入り乱れて走ることになるのだ。すべてが高速化されると思ったら大間違いである。もちろん、このあたりもF/S調査で詳細にリポートされることと信じているが、くれぐれも貨物切り捨て、他線区への乗り入れ廃止という、“短絡的”な解決が図られることのないことを願うばかりである。
▽JICAだけでなく、日本の鉄道会社の出番だ
・ジャワ島内のPT KAI収益構造から推測すると、北本線の鉄道収入のうち、25%~30%が貨物からの収益と思われる。またインドネシア人的心情からして、荷物を持っての途中駅での乗り換えは受け入れられるものではない。だからこそ、日本がなすべきことは、この複雑な運行形態のオペレーション支援なのではないか。
・そして、前述のとおりこのプロジェクトはおそらく官民パートナーシップにより実行に移される。これはJICA鉄道専門家の派遣程度で収拾のつく案件ではない。だからこそ、鉄道会社の出番ではないか。そして、この壮大なプロジェクトに対応できる鉄道会社は、おそらく日本に1社しかない。 ジャカルタ―バンドン間の高速鉄道のようにF/S調査だけやらされて、他国にいいように使われるのはもう御免である。今度こそは日本の官民が本当の意味で一体になって、北本線高速化を日本の手で実現されることを強く願いたい。
・追伸11月下旬、JICAはインドネシア運輸省に対し、高速列車の速度低下対策として、路線を3線化する案を提示したという報道が出た。用地買収に伴う予算拡大、工期延長を嫌い、別線(複々線)方式を採用せず、あくまでも既存線の改良を求めるインドネシア政府への妥協案と思われる。3線中、1線は上下線が共用して各駅で交換待ちをすることになる。しかし、結局線路を増やす方向に導くならば、そうした妥協ではなく複々線化をインドネシア側と交渉すべきだ。このままでは中途半端な高速化に終わる。わざわざコンサルを派遣して足して2で割るような解答しか出せないなら、全部インドネシア側にやらせれば良いのではないかと筆者は感じている。
http://toyokeizai.net/articles/-/198593

第三に、12月18日付け東洋経済オンライン「台湾新幹線、「たった4編成」国際入札のナゼ 新型N700Sの登場を待てず日本を見限ったか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・台湾を南北に貫く高速鉄道「台湾新幹線」は日本の新幹線技術を導入して運行している。その運営会社・台湾高速鉄路から、高速鉄道車両4編成を国際入札方式で調達するという話が今年7月に飛び出した。 台湾高鉄の担当者は「入札スケジュールは未定」としながらも、入札の前段階として「世界中の大手車両メーカーに対し、EOI(関心表明書)の提出を打診しようとしている」と、国際入札に向け着々と準備を進めている。
・台湾の高速鉄道車両は34編成すべてが日本製。日本にとっては、新幹線の海外展開の成功例という位置づけだ。台湾高鉄が4編成を新たに調達するといううわさはかねてからあり、新幹線製造で実績のある川崎重工業が受注することが当然視されていた。そこへまさかの国際入札。はたして、台湾高鉄は日本を見限ったのか。
▽川崎重工が追加製造オプションを持っていたが…
・台湾の高速鉄道は2007年に台北―左営(高雄)間が開業。もともとこの計画は、商社やメーカーで構成される日本連合と、ドイツやフランスのメーカーを中心とする欧州連合との間で争われ、1997年に入札額の低い欧州連合が優先交渉権を得た。しかし、1998年にドイツで高速鉄道ICEの脱線事故が発生したこと、そして1999年に台湾で大地震が発生し地震リスクが懸念されたことで、形勢が逆転。新幹線の安全性がクローズアップされ、最終的には、日本連合が車両や運行管理システムなど根幹部分の受注に成功した。
・高速鉄道車両「700T」は東海道・山陽新幹線「700系」をベースに開発された。川崎重工業、日本車輌製造、日立製作所の3社が2005年までに30編成を製造。その後、台北―南港間約10kmの延伸が決定し、2016年の延伸開業時には車両数が不足することから、川重が2012~2015年にかけて4編成の700Tを追加製造した。その際、台湾高鉄は将来さらに利用者が増えた際に生じる車両不足に備え、川重に700Tをさらに4編成追加製造するオプションを与えていた。
・こうした状況で突如浮上した国際入札。自然に考えれば、台湾高鉄は手続きの煩雑な国際入札ではなく、オプション契約を持つ川重に発注するのが利にかなう。しかし、「オプションは消滅してしまった」と川重の担当者は話す。
・たったの4編成。台湾高鉄がそれを川重への発注から国際入札に切り替えるのはなぜだろう。まず考えられるのは、同社が2015年に「実質国有化」されたことの影響だ。台湾高鉄は新幹線開業の遅れや運賃収入が当初計画を下回ったことから累積赤字が膨らみ、経営破綻の危機に陥っていた。そのため2015年経営再建を図ろうと、政府の出資を受け入れた。国の関与が強まったことから、従来の随意契約ではなく、透明性の高い国際入札が求められているという理屈は筋が通る。
・「日本メーカーの車両価格が高いので、国際入札に切り替えた」という見方も現地で出ている。台湾高鉄が2012~2015年に川重から調達した4編成の購入価格は66億台湾ドルとされる。当時の為替レートで1編成当たり45億円。東海道新幹線700系は1編成当たり約40億円で、確かに割高感はある。1編成当たりの車両数も700Tが12両、700系が16両で、台湾のほうが少ないことを考えれば、割高感はさらに強まる。
▽部品が調達できず、車両が造れない
・しかし、34編成がすべて日本製の同一車両なのに、追加の4編成だけをわざわざ国際入札で調達すると、車両の仕様が変わって運行管理やメンテナンスを煩雑にするだけだ。現行車両で統一しておくほうが格段に楽だということは誰にでもわかる。そもそも、経営破綻の危機から国有化された台湾高鉄であれば、新型車両を導入することで発生する余計な支出も避けたいはずだ。
・そんな中、事情をよく知る関係者が真相を明かしてくれた。「台湾高鉄は700Tを望んでいたが、必要な部品が調達できず700Tが製造できなくなったことが、国際入札に切り替わった理由だ」。 700Tのベースとなった700系は、N700系が登場するまで東海道・山陽新幹線の主力車両として活躍。約90編成が製造されたが、2006年に製造が終了。すでにN700系への置き換えが始まっており、2019年度までに700系は東海道新幹線から姿を消す予定だ。つまり700系自体が古いため、必要な部品がすでに存在しないというのはありうる話だ。そうはいっても、部品が足りないならまた造ればよいのではないかという気もする。だが、「造れない」ということで決着した。
・実は、造らないほうが得策という理由が日本側にはある。東海道新幹線で700系が新製から十数年で引退していることを考えれば、700Tも2020年代半ばまでに引退時期を迎える。そして、700Tに代わる新たな車両は、JR東海が現在開発中で2020年に営業運転を行う「N700S」をベースに開発されるというのが、最も有力なシナリオである。
・新幹線は車両ごとにコンバータや変圧器などの異なる床下機器が搭載されている。そのため東海道新幹線の標準である16両編成の列車から12両編成である台湾新幹線700Tを開発するためには、床下機器の再配置という開発工程が必要だった。
・N700Sは床下機器の小型・軽量化により、車両のバリエーションを大幅に削減。16両だけでなく、8両、12両といったさまざまな編成に対応できる(「JR東海・東日本、『新型』新幹線はこう変わる」)。つまり、N700Sをベースにすれば、700Tの開発で必要だった12両編成に対応させる改造工程が不要になり、車両の製造コストを下げられる。
・日本側のベストシナリオは4編成を新造せず、現行車両をフル稼働させることで当面は乗り切り、2020年以降にN700Sをベースとした新型車両を一気に受注するというものだ。しかし、台湾高鉄はそんな日本の思惑をくみ取ってくれなかった。
▽油断禁物、欧州勢が入札参加か
・現在の状況はどうなっているか。台湾高鉄は「各メーカーに意向を確認している段階で、まだ入札開始の予定は立っていない」としている。台湾高鉄の提案を受け独シーメンス、仏アルストム、あるいは中国中車といった世界のメーカーが採算性などの観点から入札すべきかどうか検討を行っているのだろう。日本が入札するとしたら、現行のN700系をベースに開発した車両ということになるだろう。では、その場合、日本に勝ち目はあるのだろうか。
・「心配はしていない。おそらく日本勢が選ばれるはず」と、前述の関係者は自信満々だ。欧州の技術は信用されていないからだというのだ。台湾の高速鉄道は、車両など根幹部分は日本製だが、欧州システムが採用されている部分もある。しかしドイツ製の分岐システムでトラブルが多発するなど、現場で欧州製のシステムに手を焼いているのは事実だ。仮に入札不調に終わったら、2020年以降に一気にN700Sベースを導入というベストシナリオが待っている。
・しかし、油断は禁物だ。前回、日本製に逆転受注を許した欧州勢にとって、今回の国際入札は雪辱戦である。わずか4編成だけを考えれば、うまみの少ない案件だが、これを落札すれば、将来の700Tの置き換えというビッグプロジェクトで、再び日本から主導権を奪い返す可能性があるからだ。価格が決め手になるのであれば、中国勢参入の可能性もゼロではない。
・アジアでは高速鉄道の導入を検討する国が多い。小型案件でも、他国に先駆け新幹線を導入した台湾の動向は、アジア諸国の高速鉄道戦略に大きな影響を与える可能性がある。日本にとっては気の抜けない戦いが続く。
http://toyokeizai.net/articles/-/201394

第一の記事で、 『早朝6時にブリストルを出発した上りの一番列車では、発車時刻の遅れ、天井から水が流れ落ちる、バイモードの故障など、いくつものトラブルが発生していた』、というのは締まらない話だ。幸い、『GWRはツイッターで「メーカーである日立の素早い対応に感謝する」という声明を発表している』、というのhがせめてもの救いだ。
第二の記事で、 『住民が作った勝手踏切(PT KAIは黙認している)が多数設置されており、その数は把握されていない。現実的には踏切を撤去するのではなく、線路脇に横断者が出ないようにさくを設置し、歩道橋を架けることになろう』、『どうもインドネシアでは信号保安に対する認識が極めて低いようで、議題に上がっているようには見受けられない。現在、当地鉄道信号は三灯式で、停止・注意・進行の現示しか出せない。少なくとも制限現示や高速進行現示を表示可能にせねばならないのだが、インドネシア側から不要と却下されそうで、笑うに笑えない』、『北本線には雑多な行先、種別、速度の列車が入り乱れて走ることになるのだ。すべてが高速化されると思ったら大間違いである』、『いい加減な予算では日本メーカーは入札しない』、安全に対するインドネシア側の意欲は低いようだが、それを前提に、いいかげんな工事を行い、事故を起こした場合には、日本側が免責される訳ではなく、非難の矢面に立たされこととなろう。安全性を十分に確認した上で、受注すべきだ。結果的に、安い中国などに受注をさらわれても、それでよしとすべきだ。
第三の記事で、『34編成がすべて日本製の同一車両なのに、追加の4編成だけをわざわざ国際入札で調達すると、車両の仕様が変わって運行管理やメンテナンスを煩雑にするだけだ。現行車両で統一しておくほうが格段に楽だということは誰にでもわかる。そもそも、経営破綻の危機から国有化された台湾高鉄であれば、新型車両を導入することで発生する余計な支出も避けたいはずだ』、というのは日本側の楽観的観測に過ぎない。『「台湾高鉄は700Tを望んでいたが、必要な部品が調達できず700Tが製造できなくなったことが、国際入札に切り替わった理由だ」。700Tのベースとなった700系は、N700系が登場するまで東海道・山陽新幹線の主力車両として活躍。約90編成が製造されたが、2006年に製造が終了。すでにN700系への置き換えが始まっており、2019年度までに700系は東海道新幹線から姿を消す予定だ。つまり700系自体が古いため、必要な部品がすでに存在しないというのはありうる話だ。そうはいっても、部品が足りないならまた造ればよいのではないかという気もする。だが、「造れない」ということで決着した』、のであれば、これも無理をせず、自然体で臨むべきではなかろうか。
タグ:部品が足りないならまた造ればよいのではないかという気もする。だが、「造れない」ということで決着し 同社が2015年に「実質国有化」されたことの影響 台湾高鉄は700Tを望んでいたが、必要な部品が調達できず700Tが製造できなくなったことが、国際入札に切り替わった理由だ 34編成がすべて日本製の同一車両なのに、追加の4編成だけをわざわざ国際入札で調達すると、車両の仕様が変わって運行管理やメンテナンスを煩雑にするだけだ 369両 都市間高速鉄道計画(IEP) 日立製作所 「クラス800」と呼ばれる車両 鉄道運行会社グレートウェスタン鉄道(GWR) 東海岸本線を運営するヴァージントレインズに497両 パディントン駅 ディーゼル発電機の搭載で非電化区間への乗り入れもできる「バイモード」が最大の特徴 今回の新型車両導入はあくまで「既存車両の更新」であって、スピードアップを図る目的で製造されたものではない 「日立「英国高速車両」は、トラブル続出だった 天井から水が流れ落ち、列車は大幅遅延」 (その5)(日立「英国高速車両」はトラブル続出だった、日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点 インドネシア案件 調査は日本の担当だが…、台湾新幹線 「たった4編成」国際入札のナゼ) 東洋経済オンライン トレインマネジメントシステムにかかわるもの インターシティ125 「台湾新幹線、「たった4編成」国際入札のナゼ 新型N700Sの登場を待てず日本を見限ったか」 北本線には雑多な行先、種別、速度の列車が入り乱れて走ることになるのだ 貨物列車の存在も厄介 全部インドネシア側にやらせれば良いのではないかと筆者は感じている 北本線はジャカルタを起点とした先細りダイヤである。だから、東京―新大阪間のようなビジネス需要などない いい加減な予算では日本メーカーは入札しない インドネシアの希望により円借款ではなく、官民パートナーシップ(PPP)により推進される見込み インドネシアでは信号保安に対する認識が極めて低いようで、議題に上がっているようには見受けられない 住民が作った勝手踏切(PT KAIは黙認している)が多数設置されており、その数は把握されていない。現実的には踏切を撤去するのではなく、線路脇に横断者が出ないようにさくを設置し、歩道橋を架けることになろう スラバヤ ジャカルタ 日本の円借款プロジェクトにて、架橋修繕・線形改良・路盤改良などが進められ、2014年9月に全線の複線化が完成 ジャワ北本線 自然に考えれば、台湾高鉄は手続きの煩雑な国際入札ではなく、オプション契約を持つ川重に発注するのが利にかなう。しかし、「オプションは消滅してしまった」と川重の担当者は話す 台湾の高速鉄道車両は34編成すべてが日本製。日本にとっては、新幹線の海外展開の成功例という位置づけだ 運営会社・台湾高速鉄路から、高速鉄道車両4編成を国際入札方式で調達するという話が今年7月に飛び出した 日本の新幹線技術を導入して運行 台湾新幹線 「日本企業が入札できない?鉄道輸出の矛盾点 インドネシア案件、調査は日本の担当だが…」 バイモード機能の「切り替わり」がうまく作動しなかった GWRはツイッターで「メーカーである日立の素早い対応に感謝する」という声明を発表している 空調の水冷に使う水の排水管の先端に逆流防止弁があるが、それがうまく働かなく、たまりすぎてあふれてしまったため 3つの問題が起きた 早朝6時にブリストルを出発した上りの一番列車では、発車時刻の遅れ、天井から水が流れ落ちる、バイモードの故障など、いくつものトラブルが発生していた インフラ輸出
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女性活躍(その6)(114位 男女平等が進まないニッポンへの処方箋、熊本「子連れ市議」の行動は政治家として評価できない、「#子連れ会議OK」アナタの常識はNOと言う? “赤ちゃんが可哀想”同伴出社拒否する薄っぺらい正義) [経済政策]

女性活躍については、11月20日に取上げた。今日は、(その6)(114位 男女平等が進まないニッポンへの処方箋、熊本「子連れ市議」の行動は政治家として評価できない、「#子連れ会議OK」アナタの常識はNOと言う? “赤ちゃんが可哀想”同伴出社拒否する薄っぺらい正義)である。

先ずは、11月15日付け読売新聞が上智大学法学部教授 三浦まり氏とのインタビューを掲載した「114位、男女平等が進まないニッポンへの処方箋」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは三浦氏の回答、+は回答内の段落)。
・スイス・ジュネーブの研究機関「世界経済フォーラム」が今月2日に発表した2017年版の男女平等度(ジェンダー・ギャップ)世界ランキングで、日本は昨年より3つ順位を落とし、144か国中114位に沈んだ。安倍政権は「女性の活躍」を重要政策と位置づけているが、男女が平等でなければ、それも絵に描いた餅になる。男女平等を推進するにはどんな処方箋が必要か。「ジェンダーと政治」に詳しい上智大学の三浦まり教授にインタビューした。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)
▽取り残された日本
Q:男女平等度ランキングで、日本は114位で過去最低となった。これをどう見るか。
A:安倍政権は女性活躍推進を看板に掲げ、それなりに取り組んできた。にもかかわらず、順位を落としていることは、深刻な状況を表している。日本の取り組みにはスピード感が全然足りない。他の国がどんどん状況を改善する中で、日本は取り残されている。
Q:順位を落とした原因はどこにあるのか。
A:男女の平等度にはいろいろな測り方があるが、世界経済フォーラムのランキングには、専門職や管理職、国会議員や閣僚といった要職にどれだけ女性が就いているかが、大きく反映される傾向がある。日本の場合、政治においては女性議員、女性閣僚、企業においては女性の管理職や役員が少ないことが響いて、この順位になった。
+安倍内閣は第2次改造内閣では女性閣僚が5人だったが、4人、3人と徐々に減って今は2人。今年のランキングには1月時点の「3人」という数字が反映されたが、このまま行けば、来年は「2人」となり、女性閣僚比率はさらに低下する。
Q:女性閣僚を増やすと言っても、短期の努力ではなかなか難しそうだ。
A:大統領制であれば議会の外から人材を引っ張って来ることができるが、日本は議院内閣制で、基本的には国会議員の中から閣僚を任命するというシステムになっている。国会議員の女性比率が高まらないと、女性閣僚比率の向上は難しい。 現在、衆議院自民党の女性比率は7.8%。数が少ないため、ある程度当選回数を重ねた「適齢期」の人の中から適材適所で選ぶのが難しくなっている。女性の方が早く要職に就けるが、経験値が低いままなので、その分、失敗する可能性も高くなりがちだ。下積みを続けている男性からは嫉妬の目で見られており、少しでも失敗をすると、難しい立場になってしまう。
▽女性議員が増えたことによる変化
Q:最近、新政権が発足したカナダやフランスでは、閣僚が男女半々だと聞いた。
A:フランスでは2000年からパリテ法(候補者の男女比を50・50にする法律)が施行されていて、閣僚の男女が同数のパリテ内閣は珍しくない。オランド前政権もそうだった。国会議員は小選挙区制度で選ばれるので、まだ半々になっていないが、地方議会のレベルではすでに半々だ。パリテはデフォルト(標準)で、政治に女性がいるのは当たり前ということだ。ただ、地方でも女性の首長は16%でしかなく、女性の首相はいたことがあるが、女性大統領はまだ誕生していない。
+女性の議員や閣僚が増えると政策がどのように変わるのか、因果関係を学術的に示すのは実は難しい。政党によるイデオロギーの違いも大きく、また、女性だから女性政策に力を入れるとは限らないし、男性でも熱心にワーク・ライフ・バランスに取り組む人もいる。パリテが実現する前に長い歴史があるわけで、その蓄積の中でいろいろなことが変わっていく。
+ただ、議会の透明性が向上するとは言えるかもしれない。台湾では女性の総統が誕生し、議会も女性が38%を占める。変わったのは夜の会合が減ったことだという指摘もある。今までは、男性たちが密室に集まって情報交換をして、そこが実質的な意思決定の場だった。ところが、今はそれをやっても、議会で採決をした時に4割弱いる女性たちにひっくり返されるかもしれないので、そうすることの意味がなくなってしまった。直接的に政策がどう変わるという以前に、透明性が確保され、民主主義の質が上がることはとても意義のある変化だと思う。
▽順位が上位の国は何が違うのか
Q:ランキング上位の国は日本と何が違うのか。
A:4位にアフリカのルワンダが入っているが、これは特殊なケースだ。内戦による虐殺で男性が非常に少ない中で、女性議員の比率が6割を超えている。10位のフィリピンは、管理職に占める女性の割合が5割を超えており、この結果も当然という気がする。 上位で目立つ北欧の国々は、男女平等が保障されている。それはつまり、生き方が自由であるということだ。男性であれ、女性であれ、自分が生きたい生き方を自分で選ぶ可能性が開かれている。
+逆に男女平等の度合いが低い国というのは、男性の生き方、女性の生き方が固定的で、それに合わせられる人はいいが、そうではない人には大きな抑圧構造となっている。
Q:男女平等を実現するために、どんな方策が考えられるか。
A:ノルウェーは新しいことを始める傾向のある国だ。候補者のクオータ(あらかじめ決められた比率に男女を割り振ること)を始めたのはノルウェーで、政治でも企業の役員でもクオータを導入しているし、パパ・クオータという形で父親が育児休暇をとる仕組みを整えている。
+法律にうたわれる性差別禁止は、最終的には、経済面での男女の賃金格差解消として表れる。賃金格差が生まれる理由のひとつは、育児の時期に女性の方が大きな負担を負わされてしまい、キャリアが断絶することがあるからだ。
+賃金の男女格差を小さくするには、管理職の男女比、男性がどのくらい育児休暇をとっているか、ワーク・ライフ・バランスがどうなっているか、など全てのことが関わってくる。賃金格差を見れば、その国がどの程度、男女平等を実現しているかがわかる総合指標ともいえるものだ。いろんな制度を組み合わせないと、目標達成には至らない。
▽日本的経営、社会の仕組みにメスを
Q:日本で男女平等がなかなか進まない原因はどこにあるのか。
A:日本は性差別を断固たる態度で是正していくという政治的意思が弱い国だと思う。その上、経済でも日本企業自体が性差別の上に成り立っている。 総合職と一般職という形で入り口から分け、主に女性からなる一般職の人にはキャリア向上のチャンスを与えない。総合職も女性の割合はわずか9%だ。大学では女性の方が一般的に成績は優秀なのに、男性の方から就職が決まっていく。
+日本企業は雇用体系に性差別を組み込んでいる。そこを変えるのは、日本的経営を変えるということだ。日本の場合、女性を活躍させないという経営判断にある種の合理性があると考える経営者が多かったのかもしれないが、世界的に見るとむしろ逆だ。女性が活躍できないから日本企業のパフォーマンスがよくないのではないだろうか。そこに、いつ日本の経営陣は気付くのかということだと思う。
+80年代、先進国は男女平等に舵を切ったが、日本はなるべく専業主婦を優遇するようにという真逆の政策を実行した。日本では、税制や年金で専業主婦を優遇しつつ、働きたい女性はパートで働いてもらうという流れを作った。パートは正社員と賃金の差があり、いつでもクビを切ることができる。そのうまみを企業は手放したくない。一般職の女性の生産性が低いという研究結果があるが、それは政策的に作り出した差別の帰結だ。
+製造業が強かった時代は、男性が稼ぎ主となるモデルが続く。ただ、サービス業が主体になってくると、共稼ぎが当たり前になってくる。今、共稼ぎと専業主婦世帯の割合は2対1だ。だが、それを後押しする税制、社会保障になっていない。配偶者控除もまだ廃止には至っていない。待機児童問題も長時間労働も解決していない。女性が働いても不利にならないような仕組みを整え、かつ、キャリアが形成できるように性差別禁止法を導入する。パートと正社員の差別を禁止するなど、様々な方策を組み合わせなければ、男女平等は実現しないが、日本はどれもやっていない。
▽女性活躍、安倍政権の取り組みをどう見る?
Q:安倍政権は「全ての女性が輝く社会づくり」を掲げているが。
A:安倍政権は女性活躍政策を経済政策としてやると言っている。日本は人口が減っているので、女性の労働力を活用しなければ、日本の経済力はもっと落ち込んでいく。この政策しか選択肢はなく、どの政権であっても推進しなくてはならない政策だ。だが、男女平等や人権の尊重など社会政策の側面に目を向けず、経済政策としてやってしまったがゆえに、安倍政権の政策には限界があると思っている。
+「これからは女性活躍だ」と時代の空気を変えたところまでは良かった。だが、性差別が組み込まれた雇用制度にまで切り込まないと、男女平等にはなっていかない。経済政策と言っている限り、そこには切り込めないと思う。
▽地方議員に女性を増やす
Q:現状を変えるためには、どこから手をつけたらいいか。
A:まず、女性の地方議員を増やすことが重要だ。都道府県議会の女性比率は9.8%、市区町村議会は12.8%で、衆議院とあまり変わらない。大阪府の島本町のように5割のところもある一方で、町村議会の3割が女性議員ゼロだ。
+女性は政治を人ごとだと思ったり、「汚い永田町の世界」のように見たりするが、実は、地域で活躍している。町おこし、学校の問題、保育や介護、食の安全、土地開発の問題など、いろいろな場面で女性が活躍しているのに、そうした活動が政治と結びつかない。 だが、地方の政治は地域活動の延長線上にある。地域活動をやっていた女性が議会に入ると、とたんに政治が身近なものになる。議会に入った女性たちが、都道府県政、国政に携わるようになれば、市民社会から国政までもっとつながりがよくなると思う。
+女性議員の増やし方にはいろいろあるが、女性が女性を押し上げることが決定的に重要だ。上からの一本釣りで、「キラキラ系」の女性候補を公認し、落下傘的に擁立する傾向があるが、それでは地域の女性とはつながっていないので、信頼を勝ち取ることは難しいだろう。そうして選ばれた彼女たちが失敗でもしようものなら、女性議員を増やそうという機運がしぼんでしまう。
+やはり、この人を応援したいと思う女性が出てくることが大切だ。トップが選んだ人が結果的にそうであればいいが、往々にして女性の目線で下から選ぶ場合と、男性が上から「こういう人がいいだろう」と選ぶのでは、視点がずれる。下からの声をちゃんと反映させないと持続性がない。
Q:妊娠した議員がバッシングに遭うなど、まだまだ女性議員を取り巻く環境は厳しい。
A:「職務放棄」などといった言葉は世間の無理解だと思う。そういう声を放置すると、女性議員のなり手を減らしてしまいかねない。 党のリーダーが率先して「わが党は母親であることも議員を全うする上で重要な資質の一つと考えている」などと言い返すべきだ。反論もできないようでは、バッシングを是認したことになってしまう。
+また、女性議員が怒り、「妊娠したことで、むしろ母親の気持ちがわかるようになる」と言い返すことも必要だ。女性が女性を支えていかないと、ただでさえ数が少ない女性議員が孤立してしまう。
Q:企業はどう変わるべきか。
A:キャリア形成の仕組みに性差別がひそんでいないかを各事業所、職場で見つけ、取り除かないといけない。ある百貨店では、新人はみんな最初、売り場に配属されるが、男性はすぐに管理部門に移るのに、女性はいつまでたってもお客様対応をしていた。そういう人事慣行を無意識のうちにやっていたことに気付き、是正し始めている。職務配置にステレオタイプが潜みこんでいないか、自己点検と改革が必要だ。
Q:男性の側にも変えるべき点がありそうだ。
A:男性が、専業主婦の妻がいることを前提に、24時間働くことができる働き方を見直さないといけない。男性も育児をするし、男女ともに家庭や地域での生活があり、仕事があり、そのバランスをとるというモデルに全体で移行しないといけない。社会全体のモデルチェンジだから、一つの企業で対応できる話ではない。ここに政府の出番がある。
+今、「女性活躍」という言葉が多用され、男性に焦点が当たりにくくなっている。日本の男性は家事に費やす時間が先進国で一番短い。男性の働き方改革といえば、残業時間の削減や過労死防止の話になっていて、ワーク・ライフ・バランスや家庭内の家事分担の見直しに及んでいない。そういうところに切り込む必要がある。
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20171110-OYT8T50005.html

次に、政治ジャーナリストの黒瀬徹一氏が12月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「熊本「子連れ市議」の行動は政治家として評価できない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月22日、熊本市議会で緒方夕佳市議が議場に赤ん坊を連れ込むという騒動が起きた。議場には選挙で選ばれた議員以外は入ることができないルールになっており、すったもんだの末、緒方議員は子どもを預けて一人で出席し、40分遅れて議会は開会した。「子育て支援」が声高に叫ばれ続ける中で、我々が直視すべき本質的な課題とは何か。
▽議員は子連れでできる仕事?本気かパフォーマンスか
・女性が活躍できるような議会になってほしい――。 確かに子育ては大変だが、「子育て支援」を正義の御旗にしても何も解決しない。本質を考えるべきだ 11月22日、熊本市議会で緒方夕佳市議が強行的に0歳の赤ちゃんを議場に連れ込んだ。議場には選挙で選ばれた議員以外は入ることができない規則があり、議長は緒方議員を注意。すったもんだの末、緒方議員が子どもを預けて一人で出席することで決着した。議会は40分遅れて開会した。
・この問題を論じる前提として、まず、議員という仕事は「子連れ」でも問題なく務まるものなのか、という素朴な疑問が湧いてくる。 例えば、道路工事の危険な現場に乳児を連れていく人はいないだろうし、その発想すら出てこないはずだ。ホワイトカラーの仕事であっても、カネや人事といった激しい議論をする会議の場に、子連れで参加するのは抵抗を感じる人が多いだろう。
・結局、市議会の定例会など、さほど議論らしい議論はなされず、ただ座って適当に話を聞いていればいい仕事だということを露呈しているようなものだ。 もし、それが議会の姿ならば、子連れを認めても全く問題ないだろう。 ただし、子連れを認めたとしても、許容範囲の議論は必ず生じる。あちらこちらに乳児や幼児がいる場で条例や予算が審議されているのもおかしな話だ。
・何歳まで認めるのか、乳児がいいなら介護高齢者も認められるべきではないか。議員以外の議場への参加を認めない規則の意味も含め、それなりに議論と合意を要するのは仕方ない。 したがって、こうした交渉を経ずに強行行為に出た以上、緒方議員が処分されること自体は妥当としか言いようがない。 もっとも、緒方議員は処分を受けることは承知の上で、あえて今回の行動に出たことは明らかだ。
・なぜなら、議長に注意を受けたら、結局、人に預けて出席したというのだから、子どもを預けることが可能な状況にもかかわらず、“あえて子連れで議場に出向いた”ということになる。 乳児を抱いて議場に入るのは、結構な労力だ。 控え室から議場までの道中でも目立っただろうし、途中で声をかけた方もいたに違いない。入念に準備した上でパフォーマンスに踏み切ったとしか思えないのだ。
▽パフォーマンスとして逆効果な理由 日本と海外の決定的な違い
・では、緒方議員はなぜ今回のようなパフォーマンスに踏み切ったのか。 斜に構えた見方をすれば、選挙対策だ。 緒方議員は前回の選挙では当選者13人中10位での当選であり、盤石とは言いがたい。「女性の活躍」で話題になれば、次の選挙での当選をより確実にすることができる。 さらに、全国的に知名度を上げることで、県議会や国政への道も開ける、という野心によるパフォーマンスだったとしたら、子どもを政局の具にすることも厭わない、なかなかの“策士”だといえよう。
・しかし、緒方議員の言葉を素直に受け止め、本当に女性が活躍できるような議会や社会を実現するために、今回のパフォーマンスを強行したとすれば、正直、逆効果であり、“政治家の行動”としては評価できない。
・確かに、海外では子連れで議会に参加する例もある。ただ、だからと言って、子連れで議会に参加することを是とするのはあまりに短絡的だろう。子連れで参加した場合のパフォーマンスへの影響も十分吟味すべきだ。 なにより、特に欧州における議員の報酬は極めて低く、日本の議員報酬が世界的に見ればかなり高い水準であることは「周知の事実」になってきている。 高額な議員報酬を支払っている理由は、議会活動に専念させるためであり、高所得者である議員が保育園やベビーシッターにコストをかけることなく、子連れで議会に参加すれば、批判されても文句は言えまい。
・議員をやっている以上、支援者でも友人でも子どもを預けることのできる人はいくらでも周囲にいるはずだし、その人脈さえ持たない人が議員をやっているのはそもそもおかしい。 つまり、緒方議員は「預けようと思えば預けることは可能」な状況下でこのパフォーマンスをやっているわけで、本当に困っている人たちに対して不快感さえ与えてしまう危険性がある。
・一部で「子連れ会議OK」の議論を巻き起こした点については功績があるかもしれないが、処分覚悟であえてやったパフォーマンスならば、世間は彼女を“ヒーロー視”してはならず、緒方議員は御沙汰を甘んじて受け入れるべきだ。 そして、その上で「女性の活躍」などという抽象的なワードではなく、もっと本質的で具体的な議論を喚起しなければ、政治家の行動としては極めて稚拙だと酷評せざるを得ない。
▽「子育て支援」を正義の御旗にしても何も解決しない
・では、緒方議員のパフォーマンスから、われわれが真剣に直視すべき本質とは何か。 まず、現代社会においては、「子育て」に対する考え方が根本的に変容してしまったという現実がある。 元々、子育ては親族や地域に支えられながら親が寄り添ってやるものだったし、人が動物である以上、子孫を残すのが当然だった。 ところが、現代社会では、子育てをする場が「家庭」であることに変わりない中で、家庭は親族や地域から孤立し、カネを支払うプロの保育士に預けざるを得ない状況に陥っている。子どもをつくることの他にも楽しいことややりがいのあることが数多くあるため、「子孫を残す」という動物の“本能”さえ忌避するような風潮にもなっている。
・このような状況下、「子育て支援」を正義の御旗として振りかざしていても、何も解決しないことをわれわれはそろそろ真剣に自覚すべきだ。 もっとも、社会変化の結果として、子育てが極めて難しい社会になっていることは事実だ。解決すべきは「少子化」ではなく、単純に「子育て」という人類にとって最重要な“営み”が困難になっており、そこを支援していくことに他ならない。
・それにはまず、「長時間労働の是正」など、効率的で自由な働き方を認めるべきだ。男性が家庭に入って女性も働けるだけでなく、小さな子どもがいる間は「両親ともに仕事を休む」といった働き方も含め、大胆な改革も視野に入れた議論と改革が必要になるだろう。
・そして何より筆者が懸念するのは、子育てに対するネガティブなメッセージばかりが社会に蔓延してしまうことだ。 子育てには困難もあることは承知しているが、それ以上に喜びがあるはずで、むしろそちらをもっと発信しなくてはならない。今回の子連れ議員騒動が、正直、社会――特に若者に対して、プラスの影響を与えたとは思えない。
・総理大臣や議会や議員に子育て支援をお願いするだけでなく、私たち自身が考え方や行動を改め、子育てに対するポジティブな環境と印象を広げていくしか解決策はないのだ。 ちなみに、筆者の記事は子連れでお読みいただいてもOKである。
http://diamond.jp/articles/-/151730

第三に、健康社会学者の河合 薫氏が11月28日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「#子連れ会議OK」アナタの常識はNOと言う? “赤ちゃんが可哀想”同伴出社拒否する薄っぺらい正義」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「常識と非常識」について考えてみる。 もう散々あっちこっちで“正義”のぶつかり合いが展開しているので、取り上げるつもりはなかったのだが、これまたあっちこっちから「意見」を聞かれるので取り上げることにしました。 と、しょっぱなから長い言い訳で申し訳ない。 だが、私の答えは決まっているのだ。
・「いいじゃない。お母さん・お父さんからのケアが必要な赤ちゃんも、幼稚園で預かってもらうのが難しい障害を持つ子供も、家族からのケアが必要なおじいちゃんおばあちゃんも、み~んな“同席する”。そんなにぎやかで、開かれた議会があってもいいじゃない」――。これが私の見解である。
・もし議長が、「実は昨日、申し出があったんですけど『それについてはまた後日、ゆっくり話しましょう』って言ったんですよね。でももう今日、彼女は赤ちゃん連れてきちゃったんで、とりあえず今回は特例ということでこのまま議会を始めます。後日、本人の意見も聞き、みなさんと議論をしたいと思います」 そう宣言してくれれば“チャンチャン”だった。
▽ヒーローになり損ねた議長
・というか、そうすれば熊本市の澤田昌作議長は、一躍“ヒーロー”になったに違いない。 だって、働く女性が増え、共働きが当たり前になり、どう考えてもケア労働者は足りていないわけで(ケア労働についてはこちら 『男だ女はもう「114」。埋まらぬ日本の格差問題』)。新たな問題を解決するために前例を壊し、それでまた問題が起これば、そこで一つひとつ何をすべきか考えればいい。
・が、“常識”好きの人たちはそれを許さない。 「何を言ってるんだ! だから河合薫はダメなんだよ!!」と、既に口を尖らせている人たちの顔が山ほど見える。 この手の問題については“自説”こそが正義で、早急な解決が必要にも関わらず「他人がなんと言おうと考えを変えるつもりが毛頭ない」人たちで溢れているのだ。
・ええ、そうです。遅くなりました。 取り上げるのは、平成のアグネス・チャンこと“熊本市の緒方夕佳議員(42歳)”が、市議会に生後7カ月の長男を連れて着席した“事件”です。 緒方議員の“行動”に議会は紛糾。結局、出席は認められなかった。緒方議員は長男を友人に預け、議会は40分間遅れで開会した。
・この“事件”はかなりのメディアが一斉に報じたが、大切な部分が切り落とされ、極めてセンセーショナルに伝えられている。なので、赤ちゃん同席に至るまでの経緯も含め、確認できた範囲で紹介する。
・緒方市議は今年が1期目で、1人会派「和の会くまもと」に所属。熊本市議会では前例のない任期中の出産(第2子)をした。4月以降は「出産後の体調不良」を理由に議会を欠席し、本会議出席は約8カ月ぶりだった。
・妊娠が判明した昨年から、「議会開会中に子供を預ける場所がない」として、乳児を連れての本会議出席や市議会への託児所設置、保育園やベビーシッター助成の整備などを議会事務局に相談。  しかしながら、「自分でどうにかして欲しい。議員を特別扱いできない」と言われるばかりで、前向きな回答はなかった。
・そこで「(子育ては)社会問題になっているのに職場では個人的な問題にされてしまう」との思いから強行を決意。「子育て世代の代表として、子どもと一緒に議会に参加して発言できる仕組みを整えるよう主張したかった」と記者団に話している。
・一方、熊本議会では市議会の規則で「本会議中は議員以外が議場に立ち入ることはできない」とされているため、今回の“事件”を事務局は「赤ちゃん連れでの着席はこの規則違反にあたる」と判断。 また、澤田昌作議長は記者団に対し、「今回のことはいきなりだった。子育てが大変で思い詰めた部分もあったのだろう。子連れでも議会に参加できる仕組みを考えたい」と述べ、近く開催する議会活性化委員会で議論する方針を示したとされている。
▽オーストラリアに於ける「歴史的授乳」
・ところが、である。 「いきなりだった」と言っていた澤田議長が、夜の報道番組の取材に「前日に緒方議員から申し出があった」と明らかにし、「それについてはまた後日、ゆっくり話しましょうという話をした」と答えている。 まぁ、あったのに「ない」という前提で報道が先行したことに他意はないのかもしれないけど、「また後日ゆっくり」と言われてもね……。
・いずれにせよ“事件”の一報が報じられるや否や、ネットでは賛否両論入り交じり、メディアも識者とされる人たちにインタビューしたり、街頭インタビューしたり、海外の事例などをいっせいに報じた。 ちなみに……  一番最初に議会に赤ちゃんを同席した議員は、1998年のカナダの国会議員ミッシェル・ドックリル氏(7か月の赤ちゃん)。 以下続々と、 2010年、イタリアのリチア・ロンズーリ議員(18か月の赤ちゃん)  2010年、オーストラリアのサラ・ハンソンーヤング議員(2歳)  2012年、カナダのサナ・ハッサイニア議員(3か月の赤ちゃん)  2016年、スペインのカロリーナ・べスカンサ議員(5か月の赤ちゃん) などが赤ちゃん連れで出席し、退場を命じられたのはハンソンーヤング議員のみだ(すべて女性議員です)。
・また、2015年にはアルゼンチンのビクトリア・ドンダ議員が、赤ちゃん連れで議会に出席し、自席で授乳。2017年には、オーストラリアのラリッサ・ウォーターズ議員が、生後2か月の娘に授乳し「歴史的授乳」と報じられた。 そのときの様子は→こちら。 
・ふむ。子供のころ電車の中で時折みた光景である。 “授乳”という言葉に「歴史的」という一大事を思わせる接頭語が付いたことに個人的にはいい意味で笑ってしまったのだが、この見出しにはもっともな理由がある。 オーストラリア議会では2016年、議会規定が改訂され、子供を持つ母親や父親が子連れで議場に入ることが認められるようになった。 議員が水を飲むように赤ちゃんもミルクを飲む。 「赤ちゃんがお腹を空かせたから議場で授乳したの(by ウォーターズ議員)」――。ただそれだけなのである。
・ちなみにイタリアのロンズーリ議員の“同伴出社”はこんな具合に記録されている→こちら。 どれもこれもなんだかとってもハッピーな空気が漂ってくる。いいね、コレ。
▽一部の議会では「つえの持ち込み」も禁止でした
・ついでと言ってはなんだが、西日本新聞が熊本県内の地方議員や首長、街の声を取材しているので紹介しておく→こちら。 賛否に関しては、全体では「反対」6割に対し「賛成」が2割、「どちらとも言えない」が2割だった(サンプル数は60人)。
・政治家と一般人を比べると……、 県議、市町村議員などは「反対19人、賛成2人、どちらでもない5人」であるのに対し、 街の声は「反対16人、賛成10人、どちらでもない8人」と賛成派が増える。 否定的な意見はメディアで報じられたものと似たり寄ったりで、 「議員が規則を無視するなんて言語道断」「もっと丁寧に進めるべき」「行動を取る前に、規則を変える働きかけをすべき」「議長に事前に相談すべきだった」 など、極めて“優等生的”なモノ。
・西日本新聞の記事でちょっと興味深かったのが、つい最近まで「つえの持ち込み」を禁止していた南阿蘇村議会の男性議員の意見だ。 「女性の社会進出を考えれば、こうしたケースを想定した規則の改正も必要。子どもが議会活動の足かせになってはいけない」。
・あまり大きく報じられていなかったので、ご存じない方も多いかもしれないけど、昨年まで「凶器になり得る」との偏見から一部の都道府県議会では「つえの持ち込み」を禁止していた。 2015年に障害者団体などから「今の時代に合っていない!」と要望が出され、昨年改訂されたのだ(要望書のPDFファイルは→こちら)。
・町を歩けばつえをつく高齢者、障害者の方に頻繁に出会う。 バリアフリーという言葉が一般化してから15年以上の歳月が経っているのに、昨年まで規制されていたとは……にわかに信じ難い。 議会とは「私たち」のことを議論し、決める場所なのに、いちばん「私たち」から遠い場所になってしまっているのかもしれない。 
・ともあれ、批判的な意見を述べる人たちの正義は、
 「強行突破は逆効果」と“やり方”を問題にするタイプ
 「神聖な議会の場、仕事の場に赤ちゃんを連れてくるのはおかしい」という“場”を問題にするタイプ
 「赤ちゃんは泣くからうるさい、集中できない」といった“赤ちゃん”を問題にするタイプ 
 の3つに大まかに分類できる。
・どれもこれも一見“常識的”で、「そうそう、そうだよね」とうなづきたくなるのだが、  “前例や常識に囚われる人たちの壁”がどうやっても壊せないから、強行突破したのだろうし、  “神聖な場”、“仕事の場”で、居眠りしてる議員さんは山ほどいるし、  “赤ちゃんの泣き声”より、“下品なヤジ”の方がよほどうるさい。
・要するに、「現状維持」の視点からちょっと離れれば、いかに上滑りな意見かがわかるはずだ。
▽しょせんは、「偏見のコレクション」
・育児経験者のママタレントが舌鋒鋭く、「授乳は逆セクハラ」だの 「仕事しながら赤ちゃんの面倒みれるほど育児は簡単じゃない」だの 「赤ちゃんがかわいそう」だの 批判し続けてたけど、だったら「テレビ会議」のように自宅から参加できるようにすればいい。
・「赤ちゃんがかわいそう」という誰も批判できない美しい言葉が、悪戦苦闘する母親や父親を追いつめ、この美しい言葉が発せられた途端、問題の解決は遠のいていく。 「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う」とは、アインシュタインの言葉だが、“否定派”の常識って、いったいいつの常識なのか? 
・その“常識”を見つめ直す作業こそが、「働き方改革」なんじゃないのか? 真の働き方改革、一人ひとりが輝く社会というのは、それまで見過ごされていたこと、仕方がないとされていたことを「みんなの問題」として考え、解決しようと努力することだ。 隠伏されてきた悲鳴を掘り起こし、仕事がより効率的にできるように働き方やモノを変える。 「今まで当たり前」だったことを、「本当に当たり前なのか?」「本当に必要なのか?」と考えてみる。
・その当たり前を壊すには、ときには強行突破も必要だ。 なんて言い方をすると「ルールを守らなくていいってことか!」と口を尖らせる人がいるけど、常識を変えるには、まず、後先考えず行動しちゃうしかない場合のほうが圧倒的に多いと私は考えている。 だって、人は変わるのをもっとも苦手とする動物で。 いったん「これだ!」と確信すると、その「確信を支持する情報」を探し、受け入れる一方で、「確信に反する情報」は目に入らない。
・この心の動きは、確証バイアスと呼ばれ、心理学者のピーター・ウェイソンによって名付けられた。 確証バイアスの存在を証明した有名な実験のひとつが、1979年に行われた「死刑制度の論文検証」実験である。(Lord, C.et al.. Biased assimilation and attitude polarization: The effects of prior theories on subsequently considered evidence) アメリカでは、当時、死刑制度の賛否が社会問題となっていたのだが、議論は平行線をたどり一向に進まなかった。
・そこで、実験では「死刑制度に反対か賛成かの確固たる意見」をもった人を被験者に選択。 そして、まず最初に被験者に「あなたは死刑制度は、犯罪を減らす効果があると考えているか?」と改めて聞き、「イエス・ノー」を答えてもらうことからスタートした(予想どおり半分がイエスだった)。  自らの考えを表明したのち、被験者は「死刑制度は犯罪を減らす効果がある」と結論付けた研究レポートを読み、研究が「信頼できるか否か」、判断を下すよう求められた。 その後「死刑制度は犯罪を減らす効果はない」と結論づけた研究レポートを渡され、再び読むように指示される。
・が、実はここにはトリックがあった。 なんと、2つ目の研究レポートの中身は、最初に渡されたレポートと全く同じもので、結論だけが書き換えられていたのだ(もちろん被験者には知らされていない)。 普通に考えれば、読み進めるうちに被験者は「このレポートの結論はおかしい」と矛盾に気付くはずだ。なんせ、最初に熟読してもらったレポートと全く同じなのだ。
▽新しい常識は「それもアリ」から生まれる
・ところが、である。 被験者たちは全く異なる反応を示す。 2つのレポートが「同じ内容」であることに全く気付かないばかりか、「自分の意見(犯罪に効果があるかないか)」を支持する研究を「これは質の高い優れた研究だ」と評価し、もう一方を「内容的にお粗末な研究」との見解を示したのである。 これが「確証バイアス」。不思議な心の一端である。
・人が何を見て、どう判断するかは「心の目」によるものが大きい。 心の目は、ときに「偏見」と化し、ときに「真実」を曇らせる。 前例を壊すことの難しさ、人が変わることの難しさを、この実験は証明したのだ。
・野村総研によれば、少なくとも31.1万人の児童の保護者が「すぐにでも保育サービスを利用したいのに利用できていない」とし(2016年度)、2020年に政府目標である「25歳~44歳の女性就業率77%」を達成するには、追加で88.6万人の児童を保育する受け皿が必要となると試算している(出典はこちら)。
・え? それでもやっぱり赤ちゃんは泣くから、大人の仕事の場に同伴すべきじゃない? 赤ちゃんにとって泣くのも仕事。“彼ら”の仕事を五感で味わえば、見えなかった真実が見えてくると思いますよ。 だいたい「仕事に行かねばならない、でも家に置いていけない」から「連れてきただけ」のこと。それ以上でもそれ以下でもない。新しい常識を生むのは「排除」じゃなく「寛容性」だ。
・ご批判のある方はどうぞ! 私には見えてないものを教えてくださいませ! 是非!
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/112700133/?P=1 

第一の記事については、一般紙の記事は通常、取上げないことにしているが、面白かったのであえて紹介した次第。記事では、 『日本の場合、政治においては女性議員、女性閣僚、企業においては女性の管理職や役員が少ないことが響いて、この順位になった』、 『日本企業は雇用体系に性差別を組み込んでいる。そこを変えるのは、日本的経営を変えるということだ』、『80年代、先進国は男女平等に舵を切ったが、日本はなるべく専業主婦を優遇するようにという真逆の政策を実行した。日本では、税制や年金で専業主婦を優遇しつつ、働きたい女性はパートで働いてもらうという流れを作った。パートは正社員と賃金の差があり、いつでもクビを切ることができる。そのうまみを企業は手放したくない』、『男女平等や人権の尊重など社会政策の側面に目を向けず、経済政策としてやってしまったがゆえに、安倍政権の政策には限界があると思っている』、などの指摘は的確だ。
第二の記事で、『日本の議員報酬が世界的に見ればかなり高い水準であることは「周知の事実」になってきている。高額な議員報酬を支払っている理由は、議会活動に専念させるためであり、高所得者である議員が保育園やベビーシッターにコストをかけることなく、子連れで議会に参加すれば、批判されても文句は言えまい』、というのは1つの見方だ。しかし、『議員をやっている以上、支援者でも友人でも子どもを預けることのできる人はいくらでも周囲にいるはずだし、その人脈さえ持たない人が議員をやっているのはそもそもおかしい』との批判は、通常の人脈で赤ん坊の世話までは依頼できないケースもあることを度外視した一方的見方だ。いずれにしろ、河合氏が批判している「常識論」の1つといえよう。
第三の記事で、批判論に対し、『 “前例や常識に囚われる人たちの壁”がどうやっても壊せないから、強行突破したのだろうし、  “神聖な場”、“仕事の場”で、居眠りしてる議員さんは山ほどいるし、  “赤ちゃんの泣き声”より、“下品なヤジ”の方がよほどうるさい』、との論駁はさすがだ。 『「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う」とは、アインシュタインの言葉だが、“否定派”の常識って、いったいいつの常識なのか? その“常識”を見つめ直す作業こそが、「働き方改革」なんじゃないのか? 真の働き方改革、一人ひとりが輝く社会というのは、それまで見過ごされていたこと、仕方がないとされていたことを「みんなの問題」として考え、解決しようと努力することだ。 隠伏されてきた悲鳴を掘り起こし、仕事がより効率的にできるように働き方やモノを変える。「今まで当たり前」だったことを、「本当に当たり前なのか?」「本当に必要なのか?」と考えてみる』、『人は変わるのをもっとも苦手とする動物で。 いったん「これだ!」と確信すると、その「確信を支持する情報」を探し、受け入れる一方で、「確信に反する情報」は目に入らない。 この心の動きは、確証バイアスと呼ばれ・・・』などの指摘は、説得力があり、完全に「脱帽」だ。

タグ:伏されてきた悲鳴を掘り起こし、仕事がより効率的にできるように働き方やモノを変える。 「今まで当たり前」だったことを、「本当に当たり前なのか?」「本当に必要なのか?」と考えてみる その“常識”を見つめ直す作業こそが、「働き方改革」なんじゃないのか? 真の働き方改革、一人ひとりが輝く社会というのは、それまで見過ごされていたこと、仕方がないとされていたことを「みんなの問題」として考え、解決しようと努力することだ 三浦まり 「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う」とは、アインシュタインの言葉 “前例や常識に囚われる人たちの壁”がどうやっても壊せないから、強行突破したのだろうし、  “神聖な場”、“仕事の場”で、居眠りしてる議員さんは山ほどいるし、  “赤ちゃんの泣き声”より、“下品なヤジ”の方がよほどうるさい 「赤ちゃんは泣くからうるさい、集中できない」といった“赤ちゃん”を問題にするタイプ 「神聖な議会の場、仕事の場に赤ちゃんを連れてくるのはおかしい」という“場”を問題にするタイプ 「強行突破は逆効果」と“やり方”を問題にするタイプ 批判的な意見を述べる人たちの正義は 一部の議会では「つえの持ち込み」も禁止でした 017年には、オーストラリアのラリッサ・ウォーターズ議員が、生後2か月の娘に授乳し「歴史的授乳」と報じられた 2015年にはアルゼンチンのビクトリア・ドンダ議員が、赤ちゃん連れで議会に出席し、自席で授乳 一番最初に議会に赤ちゃんを同席した議員は、1998年のカナダの国会議員ミッシェル・ドックリル氏(7か月の赤ちゃん) 市議会の規則で「本会議中は議員以外が議場に立ち入ることはできない」 子育て世代の代表として、子どもと一緒に議会に参加して発言できる仕組みを整えるよう主張したかった 4月以降は「出産後の体調不良」を理由に議会を欠席し、本会議出席は約8カ月ぶりだった 「「#子連れ会議OK」アナタの常識はNOと言う? “赤ちゃんが可哀想”同伴出社拒否する薄っぺらい正義」 日経ビジネスオンライン 河合 薫 長時間労働の是正」など、効率的で自由な働き方を認めるべきだ 社会変化の結果として、子育てが極めて難しい社会になっていることは事実だ。解決すべきは「少子化」ではなく、単純に「子育て」という人類にとって最重要な“営み”が困難になっており、そこを支援していくことに他ならない 高額な議員報酬を支払っている理由は、議会活動に専念させるためであり、高所得者である議員が保育園やベビーシッターにコストをかけることなく、子連れで議会に参加すれば、批判されても文句は言えまい 特に欧州における議員の報酬は極めて低く、日本の議員報酬が世界的に見ればかなり高い水準であることは「周知の事実」になってきている 議員は子連れでできる仕事?本気かパフォーマンスか 議場に赤ん坊を連れ込むという騒動 方夕佳市議 熊本市議会 「熊本「子連れ市議」の行動は政治家として評価できない」 ダイヤモンド・オンライン 黒瀬徹一 男女平等や人権の尊重など社会政策の側面に目を向けず、経済政策としてやってしまったがゆえに、安倍政権の政策には限界があると思っている (その6)(114位 男女平等が進まないニッポンへの処方箋、熊本「子連れ市議」の行動は政治家として評価できない、「#子連れ会議OK」アナタの常識はNOと言う? “赤ちゃんが可哀想”同伴出社拒否する薄っぺらい正義) 日本では、税制や年金で専業主婦を優遇しつつ、働きたい女性はパートで働いてもらうという流れを作った。パートは正社員と賃金の差があり、いつでもクビを切ることができる。そのうまみを企業は手放したくない 80年代、先進国は男女平等に舵を切ったが、日本はなるべく専業主婦を優遇するようにという真逆の政策を実行した 日本企業は雇用体系に性差別を組み込んでいる。そこを変えるのは、日本的経営を変えるということだ 日本企業自体が性差別の上に成り立っている。 総合職と一般職という形で入り口から分け、主に女性からなる一般職の人にはキャリア向上のチャンスを与えない。総合職も女性の割合はわずか9%だ。大学では女性の方が一般的に成績は優秀なのに、男性の方から就職が決まっていく 賃金の男女格差を小さくするには、管理職の男女比、男性がどのくらい育児休暇をとっているか、ワーク・ライフ・バランスがどうなっているか、など全てのことが関わってくる 男女平等の度合いが低い国というのは、男性の生き方、女性の生き方が固定的で、それに合わせられる人はいいが、そうではない人には大きな抑圧構造となっている だいたい「仕事に行かねばならない、でも家に置いていけない」から「連れてきただけ」のこと。それ以上でもそれ以下でもない。新しい常識を生むのは「排除」じゃなく「寛容性」だ 確証バイアス 人は変わるのをもっとも苦手とする動物で。 いったん「これだ!」と確信すると、その「確信を支持する情報」を探し、受け入れる一方で、「確信に反する情報」は目に入らない 読売新聞 「114位、男女平等が進まないニッポンへの処方箋」 女性閣僚比率はさらに低下 世界経済フォーラム 2017年版の男女平等度(ジェンダー・ギャップ)世界ランキング 日本の場合、政治においては女性議員、女性閣僚、企業においては女性の管理職や役員が少ないことが響いて、この順位になった 日本は昨年より3つ順位を落とし、144か国中114位に沈んだ 女性活躍 カナダやフランスでは、閣僚が男女半々 議会の透明性が向上するとは言えるかもしれない 上位で目立つ北欧の国々は、男女平等が保障されている。それはつまり、生き方が自由であるということだ。男性であれ、女性であれ、自分が生きたい生き方を自分で選ぶ可能性が開かれている ランキング上位の国は日本と何が違うのか
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金融規制・行政(その3)(MUFG元幹部 政策株禁止を提案、金融庁の次の標的は保険業界、金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身、リサーチ料設定に苦心の金融機関 EU新規制導入迫る) [金融]

金融規制・行政については、9月1日に取上げた。今日は、(その3)(MUFG元幹部 政策株禁止を提案、金融庁の次の標的は保険業界、金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身、リサーチ料設定に苦心の金融機関 EU新規制導入迫る)である。

先ずは、11月15日付けロイター「MUFG元幹部、政策株禁止を提案「経営者の地位安定に資する」」を紹介しよう。
・三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長で、金融庁参与の田中正明氏は15日、同庁で開かれた企業統治の諸課題を議論する有識者会議で、政策保有株について「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ」と指摘した。その上で、政策株の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないかと問題提起した。
・政策保有株をめぐっては、金融庁が策定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が保有する理由や合理性を具体的に説明するよう求めているが、開示が十分になされていない。メガバンクなどは目標を定めて政策株の削減に取り組んでいるが、会議では「ここからの削減は難しい。岩盤に当たっている」(小口俊朗委員)との見方も出た。金融庁は行政方針で、金融機関だけでなく、政策を保有させている企業側にも問題があると指摘した。
・もっとも、政策保有株の解消促進には保有禁止のみが有効なわけではないとの見方もある。ドイツではキャピタルゲインの非課税措置を打ち出したことで、企業が政策株の放出に動いた。政策株を保有する合理的な理由や事情はさまざまで、まずは企業が十分に説明することが重要だとして、金融庁内では一律の保有禁止に慎重な声が出ている。
・同有識者会議は、企業統治指針をもとに企業と投資家が実効性のある議論ができるよう、説明資料を作成する方向で議論している。政策保有株は論点の1つ。
https://jp.reuters.com/article/mufg-fsa-tanaka-idJPKBN1DF0FQ

次に、11月27日付けダイヤモンド・オンライン「金融庁の次の標的は保険業界、地銀と同列扱いの憂鬱」を紹介しよう。
・「一体どこまで踏み込んでくるつもりなんでしょうね」 銀行をはじめとした金融機関がそう警戒し、身構えていた金融庁の行政方針が11月中旬にようやく公表された。 行政方針は、金融庁が金融機関の経営状況をチェックするにあたって、どのような問題意識を持ち、1年を通じて何を重点的に調べていくのかを示すものだ。 例年9月までに公表しているものの、今年は10月になっても一向に方針が示されなかった。
・そのため、森信親長官が「在任3年目の総仕上げとして、強烈に改革を促すような方針を練り上げているのでは」と金融機関がざわつき、警戒感が日を追うごとに強まっていた。 しかし、いざふたを開けてみると、例年より1ヵ月も公表が遅れたわりには、目新しさはほとんどなく、昨年の行政方針の延長線上にある内容が大半だった。
・目立ったのは森長官がメインターゲットに据える地方の銀行に、改めて経営改革を強く迫る文言ぐらいで、特段のサプライズもないことから、方針発表翌日のメディアの扱いも自ずと小さかった。 身構えていた分、肩すかしを食らった格好の金融機関が多かった一方で、実は新たな行政方針に浮かない顔をしている業界がある。保険業界だ。
・一体何が保険会社を憂鬱にさせているのか。それは、保険会社は事業構造そのものに問題を抱えているのではないかという指摘を金融庁がしてきたことだ。 少子高齢化で人口減少が進む日本において、「収入保険料の量的拡大を前提とした現在の保険会社のビジネスモデルは、全体として持続できない可能性がある」とまで、金融庁は行政方針の中で言及している。
・保険会社のビジネスモデルが岐路に立たされていることは、今夏にあった生保業界と金融庁の意見交換会の中でも取り上げられたテーマだった。 初耳ではないため保険会社に大きな驚きはなかったものの、行政方針の中に盛り込まれたことで、現行のビジネスモデルが生み出す経営の先行き不安の程度は、“狙い撃ち”をしている地銀と同列だということが、より浮き彫りになりかつ広く周知されてしまったのだ。
・改革を促す次のターゲットが保険会社であるかのような文言は、それだけにとどまらない。 金融庁のある幹部は、行政方針文書の10ページ目にある文言を指差し、「これは主に生保のことを念頭に置いている」と明かす。 その文言とは「現行の営業体制等を維持しながら(顧客本位の取り組み方針を)実現することが可能かどうか」という部分だ。
・「多数の営業担当者を擁し、必ずしも顧客本位ではなく、収益を優先して需要を掘り起こすプッシュ型のビジネスモデルとなっている」とも指摘しており、大手生保であれば万人単位で抱える営業職員について、今後削減することを当局として期待しているかのようにも読める。 保険業界はこれまで、営業職員や代理店のネットワークが競争力の源泉となり、そのすそ野の広さと集票力がときに大きな政治力として機能することで、金融庁からの圧力をかわしてきた側面がある。
・その金融庁自身も、保険会社の監督業務に携わったことがある幹部が少ないがために、銀行などに比べて踏み込み不足の部分があったことは否めない。 そうした反省の下、金融庁の新たな行政方針には、保険会社に対する積年の思いが色濃くにじみ出ており、今後改革に向けた圧力は一層強まりそうな気配だ。
http://diamond.jp/articles/-/150687

第三に、12月4日付け現代ビジネス「金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身 続編もまだまだ出そうです」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・いま、金融業界で「おい、アレ読んだか?」と噂になっている、電子書籍がある。キンドル・ストア限定で販売されている、その暴露本には金融庁内部の人間にしか分からない、長官への激烈な皮肉が盛りだくさんだ。12月4日(月)発売の週刊現代が、金融庁をざわつかせているその内容を報じている。
▽電子書籍限定の「暴露本」をご存知か
・〈森信親(もり・のぶちか)長官のどなり声が絶えない、活気のある職場ですけどね〉〈部下の言うことよりお友達からの情報を重視する。誰かさんみたいですね。え、森長官ですか?〉 いま金融業界で、「読んだか?」と話題になっている本がある。金融庁職員が執筆したと思しき「暴露本」だ。
・電子書籍キンドル限定での配信。9月に『森信親長官の金融庁は金融機関をどうしたいのか?』が発売されたのを皮切りに、10月、11月と同じ著者による「続刊」が出ている。 内容は、金融庁の仕事の解説、有力候補の経歴や性格紹介を交えた次期長官予想、投資アドバイスなどだが、目を引くのは、森信親長官への皮肉、嫌味、当てこすりだ。
▽中枢の職員でなければ知り得ない「ディテール」
・金融庁のレポートが証券会社に厳しい内容を述べていることを紹介し、〈いやあ、森長官のぶち切れボイスが脳内再生されてしまいますよね〉。 長官の寵愛する部下が出世コースに乗ったことには、 〈森長官は(中略)人事のゴリ押しには前科のある人間だということです〉 部下の「好み」について〈順風満帆なプリンスみたいな人を嫌っている〉。
・「長官がアグレッシブな部下が好きだとか、中枢に近くないとわからない内容もけっこう的確に書かれているから、楽しんで読んでいる職員も少なくありません。 著者の正体がバレたときには、どんな処遇が下るのかを考えるとおそろしいですが……」(同庁中堅職員) まだまだ「新刊」が出てきそうな気配もある。 金融庁のザワつきはしばらく続きそうだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53695

第四に、12月5日付けロイター「アングル:リサーチ料設定に苦心の金融機関、EU新規制導入迫る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・銀行や証券会社にリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける欧州連合(EU)の新規則導入が1月に迫ったが、マクロ経済、外為、債券、株式などのリサーチ料をそれぞれどう設定すべきかについて、業界の見方は収れんしておらず、金融機関はぎりぎりまで頭を悩ませている。
・リサーチ費用の分離請求は「金融商品市場指令(MiFID)II」の一部で、市場の透明性を高め、投資家により良い価格を提供するのが狙い。ただ、実施には複雑な要素が絡むため、既に施行が1年延期された経緯がある。
・ロイターが取材した中で、少なくとも11の銀行は投資リサーチおよびアナリストとの面談に料金を課す方針を示した。複数の筋によると、債券のリサーチ料は低めに設定される見通しで、マクロ経済を中心とする一部リサーチについては、ポータルサイトで無料で見られるようにすると話す関係筋もいた。
・ロンドンにあるグローバル銀行筋は「当行は現在、お客様と話し合いを進めている」とした上で、「ほかの銀行もみな、料金設定をまだ決めていないと聞く。3月まで決まらないだろうと言う人もいた」と話した。 銀行業界で働くアナリスト数千人の雇用にも懸念が生じている。業界は世界金融危機とその後の規制強化で既に絞り上げられており、コアリションのデータによると、上位12行のアナリスト数は2012年から10%減って16年には5981人となった。
・新規則の施行を控え、株式アナリストが独立系の調査会社や投資銀行に転職したり、新たな職種を検討する事例も数多く伝えられている。 独立系投資調査会社BCAの推計によると、投資リサーチには世界で年間160億ドルが費やされているが、今後数年で減少する見通しだ。
・みずほ(ロンドン)の金利ストラテジー統括、ピーター・チャットウェル氏は今、毎週少なくとも1、2日はMiFID IIへの対応に時間を費やしていると話す。 チャットウェル氏は「リサーチ契約の料金決定や、新しいリサーチ・ポータルの作成、新規のお客様に素早くサービス提供する方法の検討などに、多大な時間を費やしている」と説明。
・新規制への対応は、1回きりの改定ではなく構造的な変化になるため、「Y2K(コンピューターの2000年問題)よりはるかに大きな出来事だ」と語った。
▽FICCリサーチは安く
・債券・為替・コモディティ(FICC)のリサーチ料は、株に比べて概して低く設定される見通しだ。 CFAインスティテュートによると、株式リサーチの平均的な料金率は10ベーシスポイント(bp)になると予想され、運用規模10億ユーロの企業だと年間100万ユーロを支払う計算になる。これに対し、FICCは平均3.5bp程度だ。
・ある欧州銀行筋は、リサーチ料の決定は「現実を直視する」瞬間になると話した。 別の銀行筋は「市場で今取り沙汰されている料金はスズメの涙ほどで、インボイスの送付料ぐらいにしかならない」と嘆いた。(Dhara Ranasinghe記者 Abhinav Ramnarayan記者)
https://jp.reuters.com/article/eu-banks-idJPKBN1DZ087?rpc=135

第一の記事で、田中正明氏が、『政策保有株について「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ」と指摘した。その上で、政策株の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないかと問題提起』、というのはよくぞ言ったと思うほどの正論である。ただ、出身母体のMUFGの17年3月末の政策保有株は2.5兆円と、みずほ、三井住友が共に1.7兆円に比べ大きく(金融庁、コーポレートガバナンス改革の進捗状況、20171018)、自論を母体で実現するには至らなかったようだ。有識者会議では、『政策株を保有する合理的な理由や事情はさまざまで、まずは企業が十分に説明することが重要だとして、金融庁内では一律の保有禁止に慎重な声が出ている』、と穏当な線に落ち着きそうだ。
第二の記事で、生保が、『「多数の営業担当者を擁し、必ずしも顧客本位ではなく、収益を優先して需要を掘り起こすプッシュ型のビジネスモデルとなっている」とも指摘』、との金融庁の見解はその通りだ。生保の場合、対面で顧客に不安を煽って契約を獲得するといった面もあるとの話もあり、ビジネスモデルの見直しは容易ではなさそうだ。
第三の記事で触れられている森長官は、安倍首相のお気に入りで、黒田日銀総裁の後継候補の1人に挙げられているが、こんな暴露本で評価が左右されるのだろうか?
第四の記事で、『銀行や証券会社にリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける欧州連合(EU)の新規則』、自体は透明性向上の観点からは望ましいが、実際に適用するとなると実務的には大変なようだ。それにしても、施行される来月からはどうなるのだろう。日本もそのうち追随するのだろうか?
タグ:『森信親長官の金融庁は金融機関をどうしたいのか?』 (その3)(MUFG元幹部 政策株禁止を提案、金融庁の次の標的は保険業界、金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身、リサーチ料設定に苦心の金融機関 EU新規制導入迫る) 新たな行政方針に浮かない顔をしている業界がある。保険業界だ 開示が十分になされていない 現代ビジネス 多数の営業担当者を擁し、必ずしも顧客本位ではなく、収益を優先して需要を掘り起こすプッシュ型のビジネスモデルとなっている」とも指摘 コーポレートガバナンス改革の進捗状況 投資リサーチには世界で年間160億ドルが費やされているが、今後数年で減少する見通し 順風満帆なプリンスみたいな人を嫌っている 金融庁参与の田中正明 三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長 「MUFG元幹部、政策株禁止を提案「経営者の地位安定に資する」」 アナリスト数千人の雇用にも懸念 収入保険料の量的拡大を前提とした現在の保険会社のビジネスモデルは、全体として持続できない可能性がある 少なくとも11の銀行は投資リサーチおよびアナリストとの面談に料金を課す方針 市場の透明性を高め、投資家により良い価格を提供するのが狙い 中枢に近くないとわからない内容もけっこう的確に書かれている 森長官は(中略)人事のゴリ押しには前科のある人間だということです 保有する理由や合理性を具体的に説明するよう求めている 政策株を保有する合理的な理由や事情はさまざまで、まずは企業が十分に説明することが重要だとして、金融庁内では一律の保有禁止に慎重な声が出ている 金融商品市場指令(MiFID)II 株式アナリストが独立系の調査会社や投資銀行に転職したり、新たな職種を検討する事例も数多く伝えられている 森信親長官 政策株の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないかと問題提起 長官がアグレッシブな部下が好きだ 政策保有株について「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ」と指摘 「金融庁の次の標的は保険業界、地銀と同列扱いの憂鬱」 金融庁は行政方針で、金融機関だけでなく、政策を保有させている企業側にも問題があると指摘 金融規制・行政 ロイター コーポレートガバナンス・コード 中枢の職員でなければ知り得ない「ディテール」 10月、11月と同じ著者による「続刊」 企業統治の諸課題を議論する有識者会議 電子書籍キンドル限定 1回きりの改定ではなく構造的な変化になる 「金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身 続編もまだまだ出そうです」 銀行や証券会社にリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける欧州連合(EU)の新規則導入 ダイヤモンド・オンライン 「アングル:リサーチ料設定に苦心の金融機関、EU新規制導入迫る」
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スパコン詐欺(アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑) [科学技術]

今日は、驚きの スパコン詐欺(アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑)を取上げよう。

先ずは、12月9日付け日刊ゲンダイ「アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・スーパーコンピューター開発の「ペジーコンピューティング」による助成金詐欺事件。元取締役が東京地検の調べに対し、不正は「社長の指示だった」と供述、社長の斉藤元章容疑者(49)も不正を認める供述を始めたという。
・「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)からの助成金は、ペジー社への35億円だけでなく、斉藤容疑者が役員を務める関連会社にも渡っていたようだが、やはり“永田町人脈”がモノを言ったのか? 斉藤容疑者は少なくとも別の3社で代表を務めているが、巨額投資が必要なスパコン開発で資金繰りに四苦八苦していたようだ。
・民間の信用調査機関などによると、関連会社で尋常ではない増資が繰り返されていた実態が見受けられるのだ。これらの増資に助成金が充てられていた疑いもあり、特捜部が資金の流れを調べているという。 ペジー社のスパコンの“核”である高効率液浸冷却装置の製造をする「エクサスケーラー」社は、2014年4月に資本金5000万円で設立されたが、その後、今年6月までの3年間で、実に13回もの増資を行い、現在資本金は27億円にまで膨らんでいる。
・「メディアなどで技術力は評価を受けていましたが、売り上げや利益を思うように計上できず、財務状態は追いついていなかったと推測されます。資金は助成金や投資としての直接調達がメインだったようです」(調査機関関係者)
▽会社はカツカツも……
・ペジー社の事業が国の認定を受けるだけでなく、斉藤容疑者が内閣府の有識者会議で委員を務めていることも、投資を受けるための“信用力”につながっていたとみられる。 そして驚くのは、会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ。17階建てのビルは下はオフィス、上層部の4フロアが住宅で、1戸の広さはナント126平方メートル。「外国人エグゼクティブにもお薦めのゆったりとした間取り」と不動産情報サイトで紹介されるようなゴージャス物件だ。
・斉藤容疑者は、安倍首相と親しい元TBS記者の山口敬之氏が事務所にしていた高級賃貸レジデンスの費用も負担していたと「週刊新潮」に報じられているが、そうした費用はどこから出ていたのか。また、自転車操業の財務力にもかかわらず山口氏に便宜を図っていたとしたら、そこまでしたのはどうしてなのか。闇は深そうだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/219141/1

次に、ライターの河野 正一郎氏が12月8日付け現代ビジネスに寄稿した「スパコン詐欺事件「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「彼とは深く付き合わない方がいいと…」
・東京地検特捜部が12月5日、スパコン開発会社「PEZY computing」(以下P社)の社長、斉藤元章容疑者らを逮捕した。経済産業省が所管する国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から約4億円の助成金を詐取した容疑が持たれている。
・メディアにも多数出演・登場し、「スパコン開発の第一人者」といわれた斉藤容疑者が、「安倍首相に最も近いジャーナリスト」と呼ばれる元TBSワシントン支局長だった山口敬之氏と昵懇であったと報じられていることもあって、ネットでは「P社に多額の助成金が渡ったのは、森友学園や加計学園と同じく、”忖度”によって便宜が図られた、という構図なのではないか」などと憶測を呼んでいる。
・助成金が認められる経緯に「忖度」があったのか、なかったのか−−。スパコンの「スパ」にひっかけて、「もりかけスパ」などと書き込む人もいるように、この事件は、逮捕容疑(=事件の本筋)とは別の「事件の背景」に注目が集まっている。 NHKの早朝の特ダネで事件が明るみに出た12月5日午前、私は、斉藤容疑者が米国で起業した頃に出会ったという知人X氏に「話を聞きたい」とメールを送った。すると、即座に折り返しの電話がかかってきた。X氏は早口でまくし立てた後、私にこう言った。
・「“彼”とは深く付き合わないほうがいい、と何度も言っておいたのに…」 “彼”とは、山口敬之氏のことだった。 斉藤容疑者と山口敬之氏との関係を最初に報じたのは週刊新潮(2017年6月15日号)だった。山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた。(https://www.dailyshincho.jp/article/2017/06071659/?all=1
・X氏によると、斉藤容疑者はスパコンを研究機関などに売り込むとき、山口氏を同行させ、研究機関などの担当者に、「安倍総理の信頼が厚い方で、当社の顧問です」と紹介していたという。X氏も何度か山口氏と会ったことがあるが、話題は政治のことばかりで、「スパコンについては知識がない人なのだろう」という印象を受けたという。
・斉藤容疑者は最近、X氏に「金が足りない。本当はコンピューターの製作をしたいが、このところは金集めが仕事の大半になってしまっている」と話していた。NEDOからの助成金で得られるのは開発資金の3分の2にすぎない。少なくとも3分の1は自前で調達しなければならなかったからだ。
・X氏は、「斉藤(容疑者)は開発資金を提供してくれる企業経営者らを探せばよかったのに、大手企業からの出資を受けることには消極的だった」と話したうえで、こう付け加えた。「その結果、国からの補助金を口利きしてくれる期待がもてる人と仲良くなったのだろう」
・この発言はあくまでX氏の見立てだ。実際に山口氏がP社顧問としてどんな役割を果たしていたかはわからない。詐取した助成金の使いみちを調べていけば、わかることもあるかもしれない。 だが、別の人物もX氏と同じような感想を抱いていた。P社が開発したスパコンを導入予定だった研究者Y氏だ。
▽研究者たちの悲鳴
・Y氏は斉藤容疑者とこれまで3回ほど会ったことがある。斉藤容疑者は山口氏を紹介したあと、「弊社はベンチャーですが、官邸との関係もあるので、信頼していただいて大丈夫です」と言い、隣りにいた山口氏は自著の『総理』をY氏に手渡したという。 Y氏は山口氏のことを知らなかったが、自宅に戻って渡された本を読み、P社を信頼したという。
・Y氏に事件の影響を聞くと、途端に早口になった。「たいへんなことになった。研究に大きな支障が出る。スパコンは納入されるのか。知っている情報があれば教えてくれませんか」 Y氏の素性を明らかにできないため、あいまいな表現になることをご了承いただきたいが、話を要約するとP社のスパコンには以下のような特徴がある。
 +計算性能が高い。
 +装置が小型(小さい体積)なので、装置を置く敷地が必要ない。
 +従来のスパコンに比べ、維持費や電気代がケタ違いに安い。
 +AI研究に勝った国が「次の産業革命の主役」と言われているなか、世界各国がいまAI研究に血道を上げている。P社のスパコンは日本が唯一リードする技術で、今後の研究に欠かせないものだった。
・Y氏はこうも言った。「2020年までにP社のスパコンを導入することを検討しており、どう活用するか研究者同士で話し合っていた矢先に事件が発覚した。P社が不正をしていたのなら、それは罰せられないといけない。だが、せめてスパコンが納入された後にしてほしかった……」
・法治国家において刑法犯と疑われる人物を野放しにすることが許されるはずはないし、スパコンの納入が済めば、詐欺容疑が持たれているP社に利益が生じることになる。その点で、Y氏の悲鳴はお門違いの指摘にも見える。
・一方で、次の世界的な産業革命の主役の座を射止めるか否かは、日本の“国益”をかけたテクノロジー開発競争といえる。今回、特捜部が事件に着手したことで、日本のAI研究スピードは世界各国に遅れをとることになるかもしれない。 刑法犯罪と“国益”を天秤にかけたとき、私はあえて批判されるのを覚悟したうえで、「Y氏の訴えは理解できないわけでもない」と思ってしまった。
▽検察の本当の狙い
・捜査する側の東京地検特捜部も、そのような影響は検討したうえで事件に着手したと思う。それでも特捜部が強制捜査に及んだ背景に、「この事件を端緒に政治家を巻き込んだ汚職事件に発展するのではないか」という見方がある。
・証拠資料のフロッピーを改ざんした事件が明るみに出た2010年以降、東京地検特捜部は政治家を逮捕する事件に着手していない。「最強の捜査機関」の復権をかけて、強制捜査に及んだのではないかというものだ。
・だが、関係者の話を総合すると、その見方は早計のようだ。ある検察関係者は私にこう話した。「検察が越年捜査するのは異例のことで、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。特捜部は斉藤容疑者を年末に起訴して捜査を終了すると考えるのが自然です」
・そもそも、国会議員には不逮捕特権があるため、国会が開かれている間に逮捕するには、国会での議決が必要になる。いま開会中の特別国会は12月9日に閉会する予定で、年明けの通常国会の召集日は2018年1月19日とも目されている。特捜部が国会議員逮捕を視野に入れているとすれば、かなりタイトな日程だ。
・ある検察関係者は私に、今後の捜査の行方についてこう漏らした。「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」
・事件が着手された12月5日は、奇しくも山口氏から強姦されたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが慰謝料を求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が開かれた日だった。
・これについてある政界関係者は「特捜部の案件だから、官邸の了承を受けたうえで捜査に踏み切っているはず。山口氏が立件されるとは思えないが、事件との関連でいろいろと報道される。最近の山口氏の言動などを快く思わない官邸が、山口氏と関係を断つために事件を利用した、とみることもできるのではないでしょうか」と言い、こう付け加えた。「仮に、今回の事件に政府が関与した疑いが出てきたとしても、特別国会が閉会すれば政府は追及される機会もないし、クリスマスと正月を過ぎれば、多くの人が事件のことを忘れ去っているでしょう。事件に着手するには最高のタイミングだったのかもしれません」
・山口氏に今回の事件について、SNSと携帯電話のメールを通じ、斉藤氏との関係など尋ねたい項目を送った。返信がないため、直接電話すると、山口氏は「いま電話に出られないので、すみません」と言って電話を切った。混乱している様子はうかがえるが、元気そうな声だった。それ以後も携帯電話で接触を試みたが、今回の事件について詳細な取材をすることはできなかった。(回答があり次第、追記したい)
・斉藤氏が事業について説明する場に同席していたとして、それで「山口氏の深い関与があった」とみるのも短絡的だろう。この事件にはどんな「背景」があるのか。今後、P社のスパコン開発は誰が担うのか、いや、そもそも開発自体が中止されるのか。誰かの「思惑」や「忖度」で国益が失われる結果になれば、被害者は私たちになる。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53767

第三に、元レバノン大使の天木直人氏が12月15日付け同氏のブログに掲載した「安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑」を紹介しよう。
・いま安倍政権が一番恐れている事は、リニア新幹線談合疑惑とスパコン詐欺疑惑の真相が国民の前に白日にさらされる事だろう。 だからこそ、どちらもその報道が自粛されている。 リニア新幹線談合疑惑については機会を改めて書いてみたい。 ここではスパコン疑惑についてその深刻性について書くことにする。
・この問題を最初に詳しく取り上げたのは、先週の週刊新潮(12月14日号)だった。 その後、日刊ゲンダイやいくつかの週刊誌が書き、直近ではきのう発売の週刊実話(12月28日号)が取り上げた。 ネット上の書き込みは言わずもがなである。 ところが、大手新聞やテレビの政治娯楽番組で取り上げられることはない。
・まさしく安倍首相にとって、もっとも都合の悪い疑惑なのだ。 どこが都合が悪いのか。 もちろん、詐欺容疑で逮捕された斎藤元章というスパコンベンチャー会社の社長が、経産省管轄の国立研究開発法人から助成金を不正に受け取って流用していた疑いがあるからだ。 公金横領に準ずる疑惑であるから、安倍政権の監督責任は免れない。
・しかし、より深刻なのは、この斎藤容疑者が安倍人脈につながっているということだ。 その中でも、斎藤氏が、あの沙織さん準強姦疑惑の山口敬之元TBS政治部記者のスポンサー(山口氏が使用してきたキャピタル東急ホテル代の肩代わりなど)だったという事実だ。
・いうまでもなく山口氏は安倍首相側近の御用記者であり、それを忖度した警察、検察官僚が山口氏を無罪放免したという、とんでもない疑惑が取りざたされている。 そんな中で、今度は山口氏のホテル代肩代わり疑惑だ。 これが事実なら脱税疑惑に発展する。
・しかも、この斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという。 麻生副総理の口利きで助成金を手にし、麻生副総理の口利きで斎藤氏が山口氏のスポンサーになったという疑惑までささやかれている。
・まさしく究極の安倍人脈犯罪疑惑だ。国家権力犯罪疑惑だ。 もし特捜や国税が本気で追及したら安倍政権が吹っ飛ぶ疑惑に発展する可可能性がある。 もし国民がこのスパコン詐欺疑惑の本当の深刻さを知れば、今度こそ世論は安倍政権を許さないだろう。
・パソコン詐欺疑惑について、テレビや大手紙がスルーするはずだ。 テレビや大手紙がスルーすれば大多数の国民は知らないままだ。 かくてこのパソコン疑惑は、その深刻性にもかかわらず、いや深刻であるがゆえに、なかったことにされて終わるに違いない(了)
http://kenpo9.com/archives/2989

第一の記事で、 『会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ。17階建てのビルは下はオフィス、上層部の4フロアが住宅で、1戸の広さはナント126平方メートル』、と私生活は優雅そうだ。
第二の記事で、『週刊新潮(2017年6月15日号)・・・山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた』、山口氏については、昨日のこのブログでも紹介した「アベ友」の1人である。賃料月額約130万円を負担してでも、斉藤容疑者には利用する価値があったらしい。 『大手企業からの出資を受けることには消極的だった』というのは、支配権を握られるのを警戒し、公的助成に走ったのかも知れない。 『「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」』、と特捜部の意図はいまだはっきりしない。
第三の記事で、『斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという。麻生副総理の口利きで助成金を手にし、麻生副総理の口利きで斎藤氏が山口氏のスポンサーになったという疑惑までささやかれている。
まさしく究極の安倍人脈犯罪疑惑だ』、というのはその通りだ。ただ、『テレビや大手紙がスルーすれば』、とあるが、日経新聞は12月5日夕刊で「スパコン助成金4.3億円詐取疑い 東京地検、「暁光」開発のベンチャー社長ら逮捕」と第一報を報じている。
上記の記事からは、肝心のスーパーコンピューター開発がどんな状況にあるのか、さっぱり分らない。本件の捜査が、今後どのように展開するか、注目していきたい。
タグ:究極の安倍人脈犯罪疑惑だ。国家権力犯罪疑惑だ この斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという 山口氏は安倍首相側近の御用記者であり、それを忖度した警察、検察官僚が山口氏を無罪放免したという、とんでもない疑惑が取りざたされている より深刻なのは、この斎藤容疑者が安倍人脈につながっているということだ。 その中でも、斎藤氏が、あの沙織さん準強姦疑惑の山口敬之元TBS政治部記者のスポンサー(山口氏が使用してきたキャピタル東急ホテル代の肩代わりなど)だったという事実 安倍政権の監督責任は免れない 安倍首相にとって、もっとも都合の悪い疑惑 「安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑」 同氏のブログ 天木直人 最近の山口氏の言動などを快く思わない官邸が、山口氏と関係を断つために事件を利用した、とみることもできるのではないでしょうか 「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」 「検察が越年捜査するのは異例のことで、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。特捜部は斉藤容疑者を年末に起訴して捜査を終了すると考えるのが自然です」 検察の本当の狙い 今回、特捜部が事件に着手したことで、日本のAI研究スピードは世界各国に遅れをとることになるかもしれない 従来のスパコンに比べ、維持費や電気代がケタ違いに安い 装置が小型(小さい体積)なので、装置を置く敷地が必要ない 計算性能が高い NEDOからの助成金で得られるのは開発資金の3分の2にすぎない 山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた もりかけスパ 元TBSワシントン支局長だった山口敬之 スパコン開発の第一人者 「スパコン詐欺事件「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?」 現代ビジネス 河野 正一郎 会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ 投資を受けるための“信用力”につながっていた 斉藤容疑者が内閣府の有識者会議で委員 売り上げや利益を思うように計上できず、財務状態は追いついていなかったと推測 メディアなどで技術力は評価を受けていましたが ペジー社への35億円 NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構 社長の斉藤元章容疑者 助成金詐欺事件 ペジーコンピューティング スーパーコンピューター開発 「アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇」 日刊ゲンダイ (アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑) スパコン詐欺
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マスコミ(その6)(伊藤詩織さんレイプ事件:手記 「ブラックボックスに光を」、逃げ答弁 警察庁に“第2の佐川長官”、日本は、なぜ「性暴力被害者」に冷たいのか) [メディア]

マスコミに関連した伊藤詩織さんレイプ事件につぃては、11月9日に取上げた。今日は、(その6)(伊藤詩織さんレイプ事件:手記 「ブラックボックスに光を」、逃げ答弁 警察庁に“第2の佐川長官”、日本は、なぜ「性暴力被害者」に冷たいのか) である。

先ずは、11月13日付け日刊ゲンダイ「レイプ被害で手記 伊藤詩織氏「ブラックボックスに光を」」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは伊藤さんの回答、+は回答内の段落)。
・司法記者クラブで開いた衝撃の会見から5カ月。安倍首相と昵懇な間柄の元TBSワシントン支局長の山口敬之氏から受けたレイプ被害を告発した女性ジャーナリストが手記「Black Box」(文芸春秋)を出版し、反響を呼んでいるジャーナリストの伊藤詩織氏。準強姦容疑で進められた捜査は、警視庁上層部の指示で逮捕目前に見送り。嫌疑不十分による不起訴処分に矮小化され、不服を申し立てた検察審査会の議決は不起訴相当だった。この国の司法制度は一体どうなってしまったのか。
▽真相究明を求め民事訴訟を提起
Q:手記では事件に至る経緯から捜査過程を含む一連の流れを克明につづり、被害者支援制度の不備などにも言及しています。
A:私が性暴力被害を受けたのは2015年4月でした。直面した捜査のあり方や司法制度、助けを求めた医療機関やホットラインをはじめとする被害者支援体制の問題などについての記録や調査、取材をもとにまとめたノンフィクションです。
Q:警察に訴えてから被害届の提出、告訴状の受理まで1カ月を要しました。
A:密室での出来事だという理由で、捜査員や担当検事の口からは「ブラックボックス」という表現が何度も出てきました。「相手は有名で地位もある。この業界で働けなくなるかもしれない」とも繰り返し聞かされ、性犯罪としての捜査は難しいからと、被害届の提出も考え直すように言われました。  この問題と2年以上向き合う中で、警察や検察に存在するたくさんのブラックボックスにも気づいたんです。個人的な経験を公に明かすことになりましたが、このブラックボックスに光を当て、箱を開くきっかけになることを願っています。
Q:9月に不起訴相当を決定した検察審の議決理由は「慎重に審査したが、検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに足りる事由がない」と記されているだけでした。「慎重審査」の中身がサッパリ分かりません。
A:検察審は申立人やその代理、証人を尋問することがあります。ですが、私も代理人弁護士も呼ばれることはなく、議決理由の説明もありませんでした。 申し立ての際、特に注記を付けてお願いしたのが、ホテルの防犯カメラ映像についてです。会食後に乗車したタクシーから私が抱えられるように降ろされ、ホテルに引きずられていくシーンを静止画ではなく、動画で見てほしいと伝えたのですが、実際に証拠が動画で提出されたのかどうかさえ分かりません。こうした疑問点について検察審に質問状を送りましたが、検察審査会法26条(審理非公開)を根拠に回答をいただけませんでした。
A:ゼロ回答だったんですか?
A:唯一分かったのが、審査員の男女比と平均年齢です。男性7人、女性4人、平均50.45歳とのことでした。男女でとらえ方が異なる可能性のある事案にもかかわらず、審査員の男女比を半々に近づけていただけなかったことも非常に残念です。
Q:真相究明などを求め、山口氏を相手取って東京地裁に民事訴訟を起こしたそうですね。
A:法廷で初めてお互いが事実関係を主張し、それをもとに第三者による公平公正な判断が下されることになります。提訴にあたって提出した資料は、検察審への申し立て資料とほとんど変わりはありません。
Q:民事訴訟提起を理由に、山口氏を相手取って東京地裁に民事訴訟は「月刊Hanada」に全20ページに及ぶ反論手記を寄せました。伊藤さんが訴える「デートレイプドラッグを使用された可能性がある」「意思に反してホテルに連れていかれた」「意識不明の状態で性行為が行われた」といった点を含め、疑惑を全面否定しています。
A:「あえて伏せている」などと指摘された点は、会見や手記ですでに説明していることばかりでした。読み比べれば分かっていただけると思います。
Q:米ニューヨークでの2人の初対面の状況についてですが、伊藤さんは「学費を稼ぐためにアルバイトしていたピアノバー」としているのに対し、山口氏は手記で〈私があなたに初めて会った時、あなたはキャバクラ嬢でしたね〉と強調しています。
A:手記に書いた通り、当時は学費の足しにするためにベビーシッターやピアノバーでアルバイトをしていました。山口氏と会ったのはピアノバーで、お酒が提供される場所ではありましたが、私は「ジャーナリズムを勉強している学生です」と話しましたし、その後も学生の立場でお会いしています。
+山口氏のほかにも、ネット上には私について韓国人だとか左翼だなどと、事実ではない書き込みをする人がいます。誰であろうと、どんな立場であろうと、性暴力の対象になっていいはずはありません。重要なのは、この事件に関して私も山口氏も認めている事実、捜査や証言で明らかになった客観的事実が9点あることです。
▽私も山口氏も認める9つの事実
 +当時TBSワシントン支局長だった山口氏と私は、支局で働くために必要な就労ビザについて話し合うために会った
 +山口氏に会ったのは3回目で、2人きりで会ったのは初めてだった
 +そこに恋愛感情はなかった
 +私が「泥酔した」状態だと山口氏は認識していた
 +山口氏は投宿先ホテルに私を連れて行った
 +性行為があった
 +私の下着のDNA検査で、山口氏のものと過不足なく一致するY染色体が検出された
 +ホテルの防犯カメラ映像、タクシー運転手の証言などの証拠を集めて警察は逮捕状を請求、裁判所が発付した
 +逮捕当日、山口氏の帰国を待ち受けて成田空港に捜査員が詰める中、警視庁の中村格刑事部長(当時)の判断で逮捕状執行が止められた
・これだけの事実があっても、現在の日本の司法制度では起訴されませんでした。
▽個人的な話と考えるなら忘れた方が良かった
Q:逮捕見送りの判断をめぐり、中村氏に何度も取材を試みているそうですね。
A:当初事件を担当した警視庁高輪署の捜査で集めた証拠などをもとに逮捕状が請求され、東京地裁から逮捕状が出されました。それが逮捕目前に中村氏の指示で執行が差し止められた。松本純国家公安委員長(当時)が国会で「警察署の捜査に関して警察本部が適正捜査の観点から指導を行うのは通常のこと。警視庁が告訴を受理し、法と証拠に基づき、必要な捜査を遂げた」と答弁していましたが、私にとっては全く不十分な説明でした。具体的な理由は判断を下した中村氏しか知り得ない。中村氏に何としてもお答えいただかなければならないと思い、何度も取材を申し入れていますが、いまだに何の回答も得られていません。
Q:司法記者クラブでの会見、手記出版に続き、外国特派員協会でも会見をされました。この5カ月で、世間の関心は高まっています。
A:私が告発を決めた理由のひとつは、自分に起きた事実を大切な人に置き換えて考えたことです。妹や友人が同じ状況に置かれてしまったら、彼らはどういう道をたどるのか。私が胸の内にしまい込むことで、同じようなことが繰り返されるのはとても苦しい。それに、自分で真実にフタをしてしまえば、真実を伝えるジャーナリストとしては働けないと思ったんです。
+どんな時代でもどんなところでも起こり得ることで、遠い誰かの話ではないことを知ってもらいたい。捜査方法や司法制度を改め、社会の意識を変え、レイプ被害者への救済システムの整備が必要です。それを考えるきっかけをつくりたいんです。自分自身がこの問題を個人的な話と考えるのなら、忘れた方が良かったと思います。(聞き手=本紙・坂本千晶) いとう・しおり 1989年生まれ、28歳。高校時代に渡米、ホームステイを経験。米国の大学でジャーナリズムと写真を専攻し、15年に帰国後、フリーランスで活動。エコノミスト、アルジャジーラ、ロイター通信など、海外メディアを中心に映像ニュースやドキュメンタリーを発信
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/217304

次に、12月6日付け日刊ゲンダイ「詩織さんレイプ事件で逃げ答弁 警察庁に“第2の佐川長官”」を紹介しよう。
・国民の追及から逃れられると思ったら大間違いだ――。安倍首相は「モリカケ問題」の幕引きに躍起だが、忘れちゃならない事件がある。安倍と昵懇の元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(51)が、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)を2015年4月にレイプしたとされる疑惑だ。
・6日、国会議員の有志が超党派で「『準強姦事件逮捕状執行停止問題』を検証する会」の第3回会合を開く予定だが、これに先立ち、5日、衆参両法務委員会でこの事件が取り上げられた。 最大の焦点は「警察権力のトップが捜査に不当介入したのかどうか」で、中村格警察庁総括審議官(当時・警視庁刑事部長)は、山口氏に対する逮捕状の執行停止を「決裁した」と認めている。
・5日は、希望の党の柚木道義衆院議員や民進党の有田芳生参院議員がそれぞれ質問に立ち、警察対応を追及。ところが、答弁に立った警察庁の大賀真一官房審議官は「個別案件については答えられない」「(決裁文書について)把握していない」――などと“ナイナイ答弁”を繰り返した揚げ句、答えても「一般論として」と枕ことばをつけて逃げまくったのだ。まるで森友問題で官邸の“守護神”と言われた、佐川宣寿国税庁長官の答弁とそっくりだ。いったい何者なのか。
・「京大法学部を卒業して警察庁に入庁したキャリア官僚です。本庁や県警、府警で捜査2課長、捜査1課長、刑事部長などを務めたことがあり、刑事部門の経験が長い。今年9月から現職です」(警察庁関係者)
・大賀氏は北海道警の警務部長だった2012年、道警で不祥事が相次いだことを受け、全国紙のインタビューで「税金で仕事をしている警察職員として極めて情けない」と答えている。それが今やどうだ。自分の姿は情けないと思わないのか。委員会で質問した有田芳生参院議員がこう言う。 「詩織さんの事案に関する国会答弁で、関係省庁は一貫して『個別案件について答えは差し控える』としてきました。当時の刑事部長が逮捕状を執行停止したり、捜査員が示談を求めていない詩織さんを弁護士のところへ連れて行って示談を要求したり、オカシなことだらけです」 佐川長官も大賀氏も「税金で仕事をしている官僚」としての自覚が全くない。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/218971

第三に、『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏が12月14日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本は、なぜ「性暴力被害者」に冷たいのか 伊藤詩織氏の主張は軽視できない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・男性警察官に囲まれ、1人の女性が自分の体の上に乗せた人形を上下に動かしながら、自分が性的暴行を受けた時の状況を再現――。 元TBSワシントン支局長に性的暴行を受けたと民事訴訟を起こしている伊藤詩織氏にとって、これは彼女が耐えた屈辱の1つにしかすぎない。伊藤氏はこのとき、警察官に対して自身がどんな被害に遭ったかを説明していたのである。
▽成田空港で直前の「逮捕取り消し」
・伊藤氏は2015年4月3日の夜、ジャーナリストの山口敬之氏におそらく薬物を飲まされて、性的暴行を受けたと主張している。もともと仕事上で面識があった同氏と、TBSワシントン支局への就職について話をするために夕食に出向いた伊藤氏だが、2軒目のすし屋で数杯飲酒した後、気を失った。その6時間後、彼女が見知らぬホテルで目覚めた時、山口氏が上にまたがっていたと伊藤氏は主張している。
・10月18日に上梓した『ブラックボックス』、そして、その後、外国人記者クラブで開いた記者会見などを通じて、伊藤氏の体験は広く世間に知られるようになっている。詳細は同書に譲るが、伊藤氏によるおおまかな主張は以下のとおりだ。
・伊藤氏が被害届を出しに行った高輪警察署は、「準強姦罪」(現在は準強制性行等罪)の疑いで捜査するための十分な証拠があると考えた。そして、伊藤氏が酩酊したすし屋の職人や、伊藤氏らをホテルまで乗せたタクシー運転手に話を聞き、山口氏が伊藤氏を抱きかかえて運ぶホテルの映像の確認もした。
・入念な捜査の後、裁判所から逮捕状の発付を得て、2015年6月8日には、成田国際空港で山口氏を逮捕する予定となっていたが、警視庁からの電話で逮捕は取り消しになったとされる。『週刊新潮』によると、突然逮捕状が取り消されたことについて、当時、警視庁の刑事部長だった中村格氏が自らの判断だったと認めている。
・その後捜査は、警視庁捜査一課に回され、書類送検されるが、不起訴処分となる。検察の判断を不当と感じた伊藤氏は、検察審査会に申し立てるが、同審査会も9月22日に「不起訴相当」とする議決を公表。が、事態はここで収束せず、伊藤氏は1100万円の損害賠償金と真相究明を求め、東京地裁に民事訴訟を起こし、12月5日には、第1回口頭弁論が行われた。
・一方、この間、山口氏は自身のフェイスブックに、「法に触れることは一切していません」「当該女性が今回会見で主張した論点も含め、1年余りにわたる証拠に基づいた精密な調査が行われ、結果として不起訴という結論が出ました。よって私は容疑者でも被疑者でもありません」とコメント。検察審査会が不起訴相当の決議を公表した日も、「これによりこの案件は完全に終結し、不起訴が確定しました」と書いている。
・また、第1回口頭弁論で提出した答弁書では、伊藤氏側の「原告が意識を失っているのに乗じて、避妊具もつけずに原告の下腹部に陰茎を挿入させる等の性行為を行った」などの訴えを全面的に否認し、争う姿勢を示している。今回、山口氏には弁護士を通じてコメントを求めたが、係争中との理由でコメントは得られなかった。
▽日本の性的暴行対策は遅れている
・大物ジャーナリストが絡んでいる件にもかかわらず、当初、日本の主要メディアはこの件をほぼ報じなかった。また、安倍晋三首相に関する著書もあって、首相と懇意だとされる人物のスキャンダルだというのに、国会で取り上げられることもなかった。「山口氏は安倍首相に近しいジャーナリストで、今回の組閣についても相談を受けていた」と山口氏のかつての同僚は話す。
・もう1つ、今回の件が図らずもあぶり出されたのは、性的暴行対策について日本がいかに遅れているか、ということである。自らがニュースになるとは思っていなかった伊藤氏は、被害者としては正義を、そして、ジャーナリストとしては日本が性的暴行被害者とより真摯に向き合う社会に変わることを望んでいる。「私には山口氏に対する怒りはないし、高輪署に文句もない。ただ、日本社会が少しでもよくなるようにしたい」と同氏は言う。
・そもそも、日本人の多くが、伊藤氏と同じ状況に追い込まれた場合、まずどうしていいかわからないのではないだろうか。実際、伊藤氏も、性的暴行を受けたとする直後からの「極めて重要な時間」に、法的助言を得たり、必要な支援を求めたりする時間に充てるべきだとは知らなかった。
・彼女が助けを求めた先の対応もお粗末だった。訪れた近所の産婦人科医は、伊藤氏が診察室に入ると、伊藤氏と目も合わせず「いつ失敗されちゃったの?」と聞いてきた。そして、モーニングアフターピルを差し出すと、ドアを指し、退室するように促したという。
・NGOにも連絡したが、電話に応答した女性は何の理解も共感も示さず、情報提供は面談してからでないとできないと告げた。伊藤氏が混乱していたこの時間に、適切な支援が得られていれば、実際に薬物が使用されたのか、そして、性行為の前に身体的な暴力があったのかなどを調べる、法医学的検体を採取できたかもしれない。
・伊藤氏によると、事態が発生してから5日後にようやく警察署へ出向いた時も、警察は当初、捜査に対して後ろ向きだっただけでなく、伊藤氏自身のために、刑事責任を問わないように助言したという。女性検察官で『性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック』の著者、田中嘉寿子氏によると、強姦事件のわずか4%だけしか、実際に警察に通報されていない。通報された場合でも、半数は起訴を断念。有罪判決が下された場合でさえ、初犯なら執行猶予がつくことがある。
・11月17日、法務省は「犯罪白書」を発表した。それによると、日本で強姦被害に遭う割合は、10万人に1人と他国に比べて圧倒的に低い。フランスはこれの19倍、米国は31倍に上る。しかし、この数字が実際に日本で起こっている強姦の数字を表しているのかどうか法務省関係者に問うと、「これはあくまで通報された数字だ」と明かした。
▽強姦被害数は過少報告されている
・別の法務省関係者はこう話す。「白書には他国との比較も収録されている。国連からそうするように要請があったからだ。しかし、強姦の定義は国によってまちまちなので、こうした比較は少々誤解を招くおそれがある。強姦が日本では過少報告されていることを、われわれは認識している。警察は事態を改善し始めた。われわれも、被害調査を実施し、被害者と刑事訴訟を関連づけてきた。今後もさらに被害調査を実施する」。
・一方、フランスでは被害実態をより詳細に把握する努力がなされている。たとえば、こうした調査では、被害者の心情や話しやすさを考慮して、「強姦」という言葉が使われることはない。最近のフランス政府の発表では、フランスでは年間8万4000人が強姦被害に遭っており、このうち約1割が訴えを起こしている。
・さらに重要なのは、2017~2019年にかけて1億2500万ユーロ(約167億円)をかけて、性的暴行被害者を支援するシステムを確立しようとしていることだ。 たとえば、被害相談のためのホットライン「3919」には年間約5万件の相談が寄せられるほか、フランス全体にカウンセリングセンターを327カ所設置。さらに、2013年からこれまでに約30万人に上る公務員が性的暴行に関する相談に対応できるよう訓練を受けているほか、被害者が簡易的に訴訟を起こせる制度もある。
・日本でも、「女性団体などNPOの対応は少しずつ改善している」と、伊藤氏の弁護団の1人で、性的暴行に詳しい西廣陽子弁護士は話すが、それでも対策が遅れていることは否めない。伊藤氏も10月に開かれた外国人記者クラブの会見で、「複数の女性弁護士からは連絡があったが、日本の女性団体から支援するという連絡はなかった。唯一連絡があったのは、イギリスにある女性権利の保護団体だった」と語っている。
・数年前に日本で起きた強姦事件で、あるフランス人女性の代理人を務めたフランス大使館元随行警察職員も、自らの経験を次のように回想する。「警察官は被害者に対していかなる共感も示していなかった。彼女が薬物を摂取した状態で強姦されたので、警察は彼女にも責任の一端があると考えていた。たとえ彼女が不本意に薬物を飲まされていたとしても、だ。
・この事件を扱っていた女性警察官ですら、男性と同じ反応を示していた。30年前のフランスの警察官だったら、レイプ被害者をそうやって扱っていただろう。しかし、今のフランスの警察は、レイプの通報があれば、被害者の証言を額面どおり受け取り、共感を示す。そして、警察は被害者の主張を立証することに力を尽くす」。
・伊藤氏は、検察審査会の判断にも疑念を抱いている。発表によると、審査会の構成員11人のうち、女性は4人のみ(平均年齢は50.45歳)。仮に構成員の女性比率が半分に近い水準であれば、判断は変わっていたのではないか、と思うこともあるという。
▽世界的に広がる「#MeToo」の動き
・現在、世界では性的暴行やセクハラに対する非難が世界的に高まっており、伊藤氏の件に関する海外メディアの関心も高い(実際、外国人記者クラブの会見には、多くの海外メディアが訪れていた)。きっかけとなったのは、10月15日付の米ニューヨーク・タイムズ紙が報じたハリウッドの映画プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏による性的暴行やセクハラ疑惑で、これに世界中の女性たちがたちまち反応したのである。
・こうした中、女優のアリッサ・ミラノ氏がツイッターで被害を受けたことのある女性に
「#MeToo(私も)」と声を上げるように呼びかけると、多くのハリウッド女優や世界中の女性たちが次々と自分の経験をツイートする一大ムーブメントに。これまで性被害に遭ってきた女性だけでなく、男性たちも自らの体験を共有し始めたのである。
・しかし、日本ではこの動きがどうやら#youNeither(あなたも被害者ではない)になってしまったようだ。 実際、伊藤氏は女性を含む国民からの無関心や疑惑、ひどい反感に直面している。10月末の会見で伊藤氏は、「女性から脅迫やネガティブなコメントを受けたこともあった」と明かしている。
・「今の(日本の)環境で生きていくには、忍耐強くなければいけないと(女性側が)思っているからではないか。たとえば、スウェーデンでは、警察官の30%が女性で、この割合は高いポジションでも変わらない。日本では、女性の地位や社会的立場、権力が低いことが(バッシングに)影響しているのではないか」。 日本では、女性の女性に対する「冷たさ」を感じる。たとえば、筆者の知人女性は伊藤氏の件について、「男性と2人きりで、夜遅くまで飲酒する女性なら、こんなことが起きても驚くべきではない」と話す。
・こうした中でも伊藤氏は、警察での手続きや、いつ終わるともしれない事情聴取、彼女自身に向けられた疑惑の目、示談や金銭的解決を促す圧力に耐えた。5月19日には、身元を隠さずに記者会見を開くという前代未聞の手段にも出た。公表することに反対した肉親もいたため、しばらくは自らの姓を隠すことを選んだが、最近になってそれも明らかにすることにした。
▽社会が望む被害者の役割は果たさない
・友人からの助言を退け、伊藤氏は社会が彼女に演じることを望んでいる被害者の安直な役割を果たすことを拒絶した。記者会見には、白いシャツの上に黒いスーツを着用し、普通の現代的な若い女性として臨んだ。 当時、森友・加計スキャンダルの真っ最中だったこともあり、安倍首相の支持者とアンチとの政争に巻き込まれそうになったと伊藤氏は主張する。同氏によると、『週刊新潮』で同氏の記事が掲載されようとしているといううわさが広がった時には、自宅に警察が訪れ、彼女の行動に政治的な意図があるのかどうかをチェックしたとしている。
・今後、民事訴訟がどう進むのかは未知数だ。伊藤氏の弁護団の1人、杉本博哉弁護士は、「(民事訴訟は)一般的には1年半くらいかかる」と見る。「逮捕されるのと、されないのでは、証拠の質が違う」(同氏)ため、伊藤氏の主張が完全に認められるかどうかを現時点で予測するのは難しいが、仮にホテルの映像が証拠として提出されるようなことがあれば、真相究明に近づくかもしれない。
・筆者自身は、警視庁の刑事部長だった中村氏が突然逮捕を取り消したにもかかわらず、それに対する正当な説明をしていないことを不誠実だと感じている。ここへきて、中村氏に説明を求めようとする動きもあるようだが、日本の政治家がなぜこの件について同氏に説明を求めてこようとしなかったのか、不思議でしょうがない。司法が政治から独立したものであることは理解しているが、それこそまさに「ブラックボックス」だ。
・伊藤氏は会見でこう話していた。「日本のメディアは、不起訴だから報じないのではなく、それが本当に正しい判断だったか考えてほしい」。民事訴訟で真相究明が進むと同時に、日本で性的暴行対策が改善することが望まれる。
http://toyokeizai.net/articles/-/200210

第一の記事での、検察審査会については、Wikipediaによれば、『検察官が独占する起訴の権限(公訴権)の行使に民意を反映させ、また不当な不起訴処分を抑制するために地方裁判所またはその支部の所在地に設置される、無作為に選出された日本国民(公職選挙法上における有権者)11人によって構成される機関』、とのことである。伊藤氏の場合、『審査員の男女比・・・男性7人、女性4人』、と男性の方が多かったのは「不運」だったのかも知れない。しかし、『私も代理人弁護士も呼ばれることはなく、議決理由の説明もありませんでした』、というのは単に「不運」で片づけることは無理がある。代理人弁護士の見解も聞いてみたいところだ。さらに、11月9日付けブログでも紹介したように、『多くの検察審査会では、中立的な立場から法令の解釈や説明、問題点を整理する弁護士を審査補助員に選任(委嘱)している』のに、今回は審査補助員の名前がないというのは、不自然だ。 『伊藤氏も、性的暴行を受けたとする直後からの「極めて重要な時間」に、法的助言を得たり、必要な支援を求めたりする時間に充てるべきだとは知らなかった。彼女が助けを求めた先の対応もお粗末だった』、というのはやはり「不運」と言う他ない。もっとも、被害者女性への対応マニュアルのようなものがあり、それを伊藤氏が知っていれば、必要な証拠固めなどが出来ていただろう。
第二の記事で、『中村格警察庁総括審議官(当時・警視庁刑事部長)は、山口氏に対する逮捕状の執行停止を「決裁した」と認めている』、ようだが、国会で追及すべきは、間際になっての逮捕状執行停止の決裁を、どんな理由で行ったのかである。
第三の記事で、『大物ジャーナリストが絡んでいる件にもかかわらず、当初、日本の主要メディアはこの件をほぼ報じなかった。また、安倍晋三首相に関する著書もあって、首相と懇意だとされる人物のスキャンダルだというのに、国会で取り上げられることもなかった』、国会は遅まきながら取上げたようだが、主要メディアの黙殺は続いている。ジャーナリストの仲間意識、安倍政権への「忖度」が働いているためだろう。 『強姦事件のわずか4%だけしか、実際に警察に通報されていない。通報された場合でも、半数は起訴を断念。有罪判決が下された場合でさえ、初犯なら執行猶予がつくことがある』、という日本の遅れは嘆かわしい。 『日本ではこの動きがどうやら#youNeither(あなたも被害者ではない)になってしまったようだ』、とは最大限の皮肉だ。 『中村氏に説明を求めようとする動きもあるようだが・・・』、と中村氏への説明の要求には大賛成だ。
タグ:警視庁の刑事部長だった中村氏が突然逮捕を取り消したにもかかわらず、それに対する正当な説明をしていないことを不誠実だと感じている 日本ではこの動きがどうやら#youNeither(あなたも被害者ではない)になってしまったようだ 世界では性的暴行やセクハラに対する非難が世界的に高まっており 世界的に広がる「#MeToo」の動き 強姦被害数は過少報告されている これはあくまで通報された数字だ 日本で強姦被害に遭う割合は、10万人に1人と他国に比べて圧倒的に低い 「犯罪白書」 田中嘉寿子氏によると、強姦事件のわずか4%だけしか、実際に警察に通報されていない。通報された場合でも、半数は起訴を断念。有罪判決が下された場合でさえ、初犯なら執行猶予がつくことがある NGOにも連絡したが、電話に応答した女性は何の理解も共感も示さず、情報提供は面談してからでないとできないと告げた 近所の産婦人科医は、伊藤氏が診察室に入ると、伊藤氏と目も合わせず「いつ失敗されちゃったの?」と聞いてきた。そして、モーニングアフターピルを差し出すと、ドアを指し、退室するように促したという 彼女が助けを求めた先の対応もお粗末だった 安倍晋三首相に関する著書もあって、首相と懇意だとされる人物のスキャンダル 大物ジャーナリストが絡んでいる件にもかかわらず、当初、日本の主要メディアはこの件をほぼ報じなかった 日本の性的暴行対策は遅れている 1100万円の損害賠償金と真相究明を求め、東京地裁に民事訴訟 検察審査会に申し立てるが、同審査会も9月22日に「不起訴相当」とする議決を公表 書類送検されるが、不起訴処分 成田国際空港で山口氏を逮捕する予定となっていたが、警視庁からの電話で逮捕は取り消しになったとされる 裁判所から逮捕状の発付 伊藤氏が酩酊したすし屋の職人や、伊藤氏らをホテルまで乗せたタクシー運転手に話を聞き、山口氏が伊藤氏を抱きかかえて運ぶホテルの映像の確認もした 「準強姦罪」(現在は準強制性行等罪)の疑いで捜査するための十分な証拠があると考えた 高輪警察署 「日本は、なぜ「性暴力被害者」に冷たいのか 伊藤詩織氏の主張は軽視できない」 東洋経済オンライン レジス・アルノー 警察庁の大賀真一官房審議官は「個別案件については答えられない」 中村格警察庁総括審議官(当時・警視庁刑事部長)は、山口氏に対する逮捕状の執行停止を「決裁した」と認めている 衆参両法務委員会 「詩織さんレイプ事件で逃げ答弁 警察庁に“第2の佐川長官”」 捜査方法や司法制度を改め、社会の意識を変え、レイプ被害者への救済システムの整備が必要です 外国特派員協会でも会見 成田空港に捜査員が詰める中、警視庁の中村格刑事部長(当時)の判断で逮捕状執行が止められた 私も山口氏も認める9つの事実 東京地裁に民事訴訟は「月刊Hanada」に全20ページに及ぶ反論手記 山口氏を相手取って東京地裁に民事訴訟 男性7人、女性4人 私も代理人弁護士も呼ばれることはなく、議決理由の説明もありませんでした 検察審の議決理由は「慎重に審査したが、検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに足りる事由がない」と記されているだけでした 警察や検察に存在するたくさんのブラックボックス 性犯罪としての捜査は難しいからと、被害届の提出も考え直すように言われました 検察審査会の議決は不起訴相当 嫌疑不十分による不起訴処分に矮小化 警視庁上層部の指示で逮捕目前に見送り 準強姦容疑 伊藤詩織 手記「Black Box」 レイプ被害を告発 元TBSワシントン支局長の山口敬之氏 「レイプ被害で手記 伊藤詩織氏「ブラックボックスに光を」」 日刊ゲンダイ (その6)(伊藤詩織さんレイプ事件:手記 「ブラックボックスに光を」、逃げ答弁 警察庁に“第2の佐川長官”、日本は、なぜ「性暴力被害者」に冷たいのか) マスコミ
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ソフトバンクの経営(その6)(ソフトバンクはどこへ行く?、ソフトバンク孫社長 スプリント統合がまた破談でも強気な訳) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、8月16日に取上げた。今日は、(その6)(ソフトバンクはどこへ行く?、ソフトバンク孫社長 スプリント統合がまた破談でも強気な訳) である。

先ずは、闇株新聞が11月8日付けで掲載した「ソフトバンクはどこへ行く?」を紹介しよう。
・ソフトバンクグループ(以下、「ソフトバンク」)が11月6日に発表した2017年4~9月期連結決算は、営業利益が前年同期比35%増の8748億円と(4~9月期として)過去最高となりましたが、最終純利益は同87%減の1026億円しかありません。
・主なセグメント別利益は、国内通信事業が前年同期比6.9%減の4339億円、海外のスプリント事業が同93.3%増の2021億円、新たに加わったソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、SVF事業)が1862億円となっています。
・何と言ってもソフトバンクの大胆な買収戦略を支えてきた「規制に守られた国内通信事業が稼ぎ出す潤沢なキャッシュフロー」が減少に転じていることが気になりますが、その代わりに海外のスプリント事業がやっと収益化して補っているように見えます。
・ところがその全米第4位のスプリントと同3位のTモバイルの経営統合が、まさに決算発表直前の11月4日に「破談」となりました。その理由は孫社長が経営統合する新会社の経営権(50%以上の出資比率や取締役選任)を主張して譲らなかったからとされています。
・しかし直近(11月6日)の時価総額が、スプリントの236億ドルに対してTモバイルが462億ドルと「ちょうど2倍」であるため、そもそも無理な話です。そして孫社長はすぐさまスプリントと米CATV会社のアルティスUSAとの業務提携を発表し、また現在83%であるスプリントの持ち株比率を85%に引き上げるとも発表しています。
・ここは7月4日付け「スプリントが米通信・メディア再編に組み込まれる?」に書いてありますが、スプリントに米CATV最大手のコムキャストと同2位のチャーター・コミュニケーションズが共同で、スプリントの通信設備を借りて業務展開する提携話が持ち込まれていました。 もともと移動通信会社とCATV会社はビジネスの親和性が大きく、経営統合のメリットも大きいとされています。そこでスプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATV(チャーター・コムニケーションズの方だったようです)との経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫してしまいました。
・そこで孫社長は「CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう」と考え、出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません。またこれでソフトバンクはスプリントを売却できる可能性がほとんど消滅してしまいました。
・ソフトバンクの2017年4~9月期連結決算に話を戻しますが、今回から10兆円のSVFが連結されており、そこに組み込むはずのエヌビディアの評価益として1862億円が計上されています。しかしこれがソフトバンクの利益なのか、(自身も含む)SVF投資家の利益なのかが、依然としてよくわかりません。
・しかし最大の疑問は、アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円です。これで最終純利益が大きく減少してしまいました。 ソフトバンクは2016年6月に将来の買収資金を確保するためにアリババ株式の一部を売却しています。最終的に34億ドル分をアリババ(自社株買い)やシンガポール系の政府ファンドに売却し、66億ドル分をアリババ株式(正確にはADR)の他社転換社債を発行し、合わせて100億ドルを調達しています。
・当時のアリババの株価は77ドル前後で、ソフトバンクのアリババ株の取得コストは総額で105億円だったため、売却金額はほとんど売却益だったはずです。ソフトバンクは2016年4~9月期に2381億円の売却益を計上しており、34億ドル分の売却益とするとだいたい辻褄が合います。つまり66億ドル分の売却益は一切計上されていません。
・この66億ドルの他社転換社債は、利率が5.75%、償還まで3年、投資家は償還時に現金かアリババ株式かその組み合わせで受け取るもので、(細かい計算は省きますが)転換価格は1株=100ドルに設定されているはずです。 当時の発行資料では、償還時にソフトバンクの関連会社が現金か、アリババ株式か、その組み合わせを「決める」とはっきり書かれています。つまり投資家は選べないことになり(だから利率が5.75%と格付けがBBクラスのソフトバンクとしても高い)、当然にソフトバンクは3年後にアリババの株価が100ドルを上回っていれば現金で償還し、下回っていればアリババ株式で償還するはずです。
・じゃあソフトバンクはこの償還に合わせて何かヘッジしておく必要があるかといえば「全くない」はずで、2017年4~9月期に計上している5084億円もの損失が一時的にも出てくるはずがありません。 直近のアリババの株価は187ドル前後で、本年1月下旬に転換価格の100ドルをこえています。ヘッジファンド的に考えれば、アリババの株価が100ドルをこえれば少しずつ売り上がり、その後に100ドルを下回れば買い戻すことを繰り返せば、ほぼリスクなしに利益を積み上げられます。しかしインサイダー情報もある(アリババの馬会長がソフトバンクの社外取締役)ソフトバンクがそうするわけにもいきません。
・まあソフトバンクはこの他社転換社債分を除いてもまだアリババの27%を保有しているため、直近の含み益は14.5兆円になっているはずです。課題であると言われている15兆円の有利子負債とほとんど同額となり、よくわからない5000億円くらいの損失など気にする必要はないのかもしれません。 そんな感じのするソフトバンクの決算発表でした。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2119.html

次に、11月14日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンク孫社長、スプリント統合がまた破談でも強気な訳」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ソフトバンクグループ傘下の米通信大手スプリントと、米通信大手TモバイルUSとの経営統合が再び破談になった。孫正義社長が会見で語った交渉停止の経緯とは──。
・「米国は世界最大の市場で、通信インフラを手放すわけにはいかない」 11月6日、東京都内で開催されたソフトバンクグループの決算説明会。普段は笑顔を絶やさず好業績や投資案件の魅力をアピールするはずの孫正義社長の表情はこわばり、声のトーンも沈んでいた。 この日の会見の冒頭、孫社長は約20分にわたって、グループ傘下の米通信大手スプリントと、米通信大手TモバイルUSとの統合交渉中止について説明した。
・スプリントとTモバイル。この組み合わせは、2013年に約2兆円を掛けてスプリントを買収した当初から描いていた構想だった。 米国通信市場は、ベライゾンとAT&Tがシェアの約7割を占める2強の地位を固め、残りをスプリントとTモバイルで分け合う2強2弱体制。下位2社を束ね「強いナンバー3」をつくることができれば2強に対抗できるからだ。
・スプリントの理想的なパートナーといえるTモバイルの買収は、14年夏に合意しかけた。ところが、立ちはだかったのが米連邦通信委員会(FCC)のトム・ウィーラー委員長だった。「4社の競争が消費者にとって望ましい」と統合に否定的な立場を取り続け、結局、14年8月に統合を断念した。
・そこから、赤字体質だったスプリントの自力再建という、ソフトバンクにとって試練の時期が訪れる。一方、この間にTモバイルは勢力を伸ばすことに成功した。 契約の“2年縛り”の撤廃や音楽・ビデオの視聴無料化、データ通信量無制限プランなど、2強に真っ向から挑戦する「アンキャリア(脱通信キャリア)」と掲げたキャンペーンで顧客数を拡大。スプリントはTモバイルに抜かれ、米国4位へと転落してしまった。
・白紙になってしまった統合話が再度動きだしたきっかけは、16年11月のドナルド・トランプ米大統領の誕生だ。FCCの委員長には規制緩和派のアジット・パイ氏が就任し、「合併を前向きに受け止めてもらえるかもしれないという望みを持って、再度交渉に入った」(孫社長)。
▽経営権手放せない 最後の交渉は孫社長の自宅で
・だが、前回の交渉時と状況は一変していた。Tモバイルの時価総額はスプリントの約1.8倍まで増大。Tモバイルの親会社である独通信大手ドイツテレコムにとって、米国3位に浮上し、勢いのあるTモバイルは手放せない存在になっていたのだ。 統合後の会社の経営権をドイツテレコムが握りたいという意向は、早期の段階でソフトバンクに伝えられていた。それでも交渉を続けたのは、「ほぼイコールパートナーという立場なら、選択肢としてあり得る」(孫社長)と考えたからだ。だが、ドイツテレコムは単独経営権という条件を譲らなかった。
・そして10月27日のソフトバンク取締役会。スプリントは単なる投資案件なのか。それともグループにとって戦略的に重要な企業なのか。スプリントの位置付けについて、激論が交わされた。 「スプリントの経営権を手放してまで合併すべきでない。5年後、10年後を考えると、それが正しいものの考え方だ」 取締役会は全会一致で、統合交渉の中止を決断。終了後、孫社長はドイツテレコムのティム・ヘッドゲスCEO(最高経営責任者)に電話をかけた。
・「(金額などの)小さな条件ではなく、経営権という根本的な問題だ。もう合併の話はなしにしよう」  ただ、統合を望むヘッドゲスCEOは、対面交渉に最後の望みを託した。11月4日、福岡ソフトバンクホークスが劇的なサヨナラ勝ちで日本一を決めた試合の観戦を孫社長はキャンセル。そして、東京都内の孫社長の自宅にヘッドゲスCEOやTモバイルのジョン・レジャーCEO、スプリントのマルセロ・クラウレCEOら経営陣8人が集まった。だが、お互いに主張を譲らず、物別れに終わった。
・「3年前なら焦って違う判断をした。ソフトバンクが強い立場になり、ゆとりある意思決定ができた」 4年越しの統合構想が再度白紙に戻っても、孫社長は強気の姿勢を崩さない。今後、スプリントは4位から単独での巻き返しとなるが、グループ傘下に英半導体大手アームと米衛星通信大手ワンウェブを抱えていることを挙げ、「IoT(モノのインターネット)の時代を考えると、がぜん有利な立場にある」と主張する。
・その一方で、ケーブルテレビ大手など他業種との再編については「何でもありだ」と繰り返し、Tモバイルとの再交渉についても、「われわれが経営権を持てる、もしくはそれに近い形ならば門戸は常に開かれている」とも言及した。米国通信業界での地位を高められる、Tモバイル以上のパートナーは果たして現れるか。
http://diamond.jp/articles/-/149308

第一の記事で、 『スプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATVとの経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫してしまいました。
そこで孫社長は「CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう」と考え、出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません』、つまりアルティスUSAとの提携は、苦しまぎれの産物らしい。 『アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円』、についてはよく分らないが、気にするほどの問題ではないとのことらしい。なお、本日付けの日経新聞は「楽天、第4の携帯会社に 回線に最大6000億円 電波取得申請へ 3社寡占に風穴、値下げも」を伝えた。楽天がどれほど力を発揮するかは不明だが、ソフトバンクにとっては、既に国内通信事業の利益が細りつつあるなかで、競合が激化するというのは、悩ましい材料が増えたようだ。
第二の記事で、孫社長がトランプ米大統領とせっかく仲良くなり、『FCCの委員長には規制緩和派のアジット・パイ氏が就任』した折角のチャンスが結果的に水泡に帰してしまったとは、タイミングが如何に重要かを示唆している。今回の件では、孫社長も運に見放されたようだ。それでも、『孫社長は強気の姿勢を崩さない』、とはさすがだ。
タグ:「楽天、第4の携帯会社に 回線に最大6000億円 電波取得申請へ 3社寡占に風穴、値下げも」 日経新聞 4年越しの統合構想が再度白紙に戻っても、孫社長は強気の姿勢を崩さない スプリントの経営権を手放してまで合併すべきでない ドイツテレコムにとって、米国3位に浮上し、勢いのあるTモバイルは手放せない存在になっていたのだ 前回の交渉時と状況は一変 「合併を前向きに受け止めてもらえるかもしれないという望みを持って、再度交渉に入った」 FCCの委員長には規制緩和派のアジット・パイ氏が就任 トランプ米大統領の誕生 赤字体質だったスプリントの自力再建 立ちはだかったのが米連邦通信委員会(FCC)のトム・ウィーラー委員長 スプリントの理想的なパートナーといえるTモバイルの買収は、14年夏に合意しかけた 米国は世界最大の市場で、通信インフラを手放すわけにはいかない 「ソフトバンク孫社長、スプリント統合がまた破談でも強気な訳」 ダイヤモンド・オンライン 15兆円の有利子負債とほとんど同額となり、よくわからない5000億円くらいの損失など気にする必要はないのかもしれません 直近の含み益は14.5兆円 他社転換社債 アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円 出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう スプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATV(チャーター・コムニケーションズの方だったようです)との経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫 スプリントと米CATV会社のアルティスUSAとの業務提携を発表 「破談」 Tモバイルの経営統合 新たに加わったソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、SVF事業)が1862億円 海外のスプリント事業が同93.3%増の2021億円 国内通信事業が前年同期比6.9%減の4339億円 2017年4~9月期連結決算 ソフトバンク 「ソフトバンクはどこへ行く?」 闇株新聞 (その6)(ソフトバンクはどこへ行く?、ソフトバンク孫社長 スプリント統合がまた破談でも強気な訳) ソフトバンクの経営
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安倍外交(その2)(今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥、横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる、エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ) [外交]

安倍外交については、1月7日に取上げたままだったが、今日は、(その2)(今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥、横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる、エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ) である。

先ずは、11月20日付け日刊ゲンダイ「安倍外交のツケ 今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ついに白旗か――。この5年間、中国を敵視し、「中国包囲網」を築こうとしてきた安倍政権。ところが、対応を一変させ、嫌いな中国が推し進める国家プロジェクト「一帯一路」構想に参加しようとシャカリキになりはじめている。
・河野太郎外相は18日、「一帯一路」について、「世界経済にメリットがある」と講演で明言。さらに、経団連の榊原定征会長など250人の財界人が、20日から中国を訪問し、「一帯一路」に対する日本企業の取り組みについて話し合う予定だ。
・「一帯一路」構想は、習近平肝いりの国家プロジェクト。海と陸の2つのルートでヨーロッパまでつなぐ現代版のシルクロード構想だ。「一帯」はユーラシア大陸を通ってヨーロッパまで鉄道を敷き、「一路」は東南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパまで各地の港湾を整備して海路でつなぐ。5月に行われた「一帯一路」のフォーラムには、130カ国以上が代表を送っている。
▽トランプ大統領も強い関心
・世界各国が「一帯一路」に関心を強めているのは、巨額な利益を得られるチャンスだからだ。中国が整備する陸運ルートと海運ルートにうまく加えさせてもらえれば、企業の海外展開を加速させられる。 なにしろ「一帯一路」経済圏のGDPは、2400兆円に達する。中国と対立しているように見えるアメリカも、加わっている。
・「トランプ大統領がビジネスマン出身ということもあって、アメリカも一帯一路に強い関心を持っています。9月中旬には、一帯一路で連携しようと米中の企業関係者50人が北京の高級ホテルで密かに顔を合わせています。エネルギー、電力、建設、鉄道……業種はさまざまです。アメリカ側は、北京のアメリカ大使館が呼びかけたようです。ヨーロッパでは、ドイツが熱心に動いています」(外交関係者)
・日本は「このままでは取り残される」と慌てて動きだした形だ。しかし、いまから動きだして間に合うのか。元外交官の天木直人氏が言う。 「日本企業は相当な危機感を持っているはずです。ただでさえ、日本企業は国際競争力が低下しているのに、ビジネスチャンスを逃すことになりかねないからです。一帯一路の玄関となる東南アジアには、日本企業の拠点が数多くありますからね。安倍首相は、世界の動きを完全に見誤った格好です。どうせ一帯一路に参加するなら、もっと早く動くべきでした」  安倍外交は、ことごとく失敗している。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/218005/1

次に、元レバノン大使の天木直人氏が12月10日付けの同氏のブログに掲載した「横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる」を紹介しよう。
・ニュースの醍醐味はやはりスクープだ。 きょう12月10日の東京新聞が一面トップで大スクープを報じた。 日本政府は横田空域の返還交渉を米国に求めない方針である事が、外務省と国土交通省、そして在日米軍などの取材でわかったというのだ。
・横田空域とは、東京都心上空を含めた首都圏の広大で、高度の空域を、米軍が日米安保条約によって排他的に使用している空域の事である。 その空域を避けて民間航空機は飛行しなければいけないので危険極まりない。 そして、その危険性は、2020年の東京五輪に向け、羽田空港の国際線発着枠を増やすため、さらに高まる。 当然ながら、日本政府は米国政府と協議して来たはずだ。
・ところが、東京新聞の問い合わせに、外務省は「横田空域の削減(返還)は求めない」と答え、国交省は「2008年の削減で当面の航空需要には対応できており、これ以上の削減を求めるのは米軍の運用上もむつかしい」と答えたというのだ。
・一方で、在日米軍司令部は、「横田空域のいかなる部分に関しても、永久的な返還の実質的な交渉は行っていない」と答えたという。 これを要するに、日本政府は米国の大きな壁の前に横田空域の返還交渉求めても応じてもらえなかった、だから断念せざるを得なかった、ということだ。
・これは大スクープだ。 東京五輪に参加する世界中の国々の国民に、この事を知らせなければいけない。 このような主権放棄を許しているのは、世界広しといえども日本しかない。 そして、この主権放棄は、たんに日本国民の生命と安全を犠牲にするだけでなく、東京五輪に参加する世界中の選手や、東京五輪を見に来る世界中の国民の生命と安全を危険にさらすことになる。
・日本は、唯一の被爆国でありながら、米国の核の傘に守られているからといって、核兵器廃絶に反対して世界に恥をさらした。 恥さらしのついでに、この横田空域という恥さらしを世界に知らしめて、世界の圧力で、少なくとも東京五輪期間中だけでも横田空域の全面開放を米国と交渉して勝ち取るべきだ。
・その蟻の一穴が辺野古移設阻止につながり、歪んだ日米不平等条約の改定につながる事になる。  日本政府は横田空域の返還交渉を断念してはいけない。 それが出来ないようでは、何をやっても日本は世界からまともな国に見られない。 これ以上世界の笑いものにならないためにも、この東京新聞の一大スクープを活かさなければいけない。
・はたしてきょう12月10日の東京新聞のスクープ記事は、他のメディアが後追い記事を書いて、ひろく国民の知るところになって、世論を気にする対米従属の安倍首相を追い込む事になるだろうか(了)
http://kenpo9.com/archives/2960

第三に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が12月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界中の首脳たちが、「エルサレムをイスラエルの首都と認め、大使館を移す」という米国トランプ大統領の決定に困惑し、異口同音に異議を唱え、非難の声を上げている。ところがひとり、日本の首脳だけが固く口を閉ざし、不安げにあたりを見回している。世界第3の経済大国であることを誇り、トランプ大統領との緊密な関係を自慢している日本が、この問題に対して黙り込んでいる異常な光景だ。
・米国のメディアを中心に、トランプ大統領の決定については、中東和平への具体的な道筋を描いての戦略的判断などではなく、中間選挙を有利に進めたいためなど内政が理由と報じられている。歴代の米大統領はイスラエルとパレスチナのトップ会談を設定するなど、和平実現に汗をかいてきた。トランプ大統領の決定はこうした努力を否定する自己中心的なものである。
・同時にこの決定は中東に新たな悲劇を生み出す。ガザ地区を実効支配するハマスの指導者は「インティファーダ―」(住民蜂起)を呼び掛け、すでに多くの死傷者が出ている。今後さらに無数の人たちが危険にさらされ、生活を破壊されるであろう。中東の地以外でのテロの可能性も高まっている。1人の人間の誤った決断が世界中を新たな混乱に陥れるのであるから、非難されるのは当然である。
▽先進国首脳が非難、行動的だったマクロン大統領
・各国首脳らの反応を見ると、親米国を含めほぼ例外なくトランプ大統領の決定を、「国連決議などに反する」「中東のみならず世界中を不安に陥れる」などと批判している。アラブ諸国が激しく批判するのは当然だが、英国のメイ首相、ドイツのメルケル首相、イタリアのジェンティローニ首相ら主要国も同じトーンで批判している。中でも行動的だったのはフランスのマクロン大統領で、トランプ大統領が正式に決定する前に電話で再考を促してさえいる。ロシアや中国も「状況を複雑化させる」などと懸念を表明している。
・それに対し日本政府は、菅義偉官房長官が記者会見で記者から繰り返し質問受けたが、「本件の動向については大きな関心を持っており、これからも注視して参りたいと思っております」などと書かれた紙を読み上げるだけで、政府としての評価は言わずじまいだった。河野太郎外相は「トランプ氏が恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントと二国家解決への支持を表明したことは評価する」と、ピント外れのコメントをしている。安倍晋三首相はこれまでのところ、この問題について一切、発言をしていない。そして、政府の反応に合わせてか、欧米に比べ日本のメディアの報道ぶりは極端に少ない。国民にとって中東はあまりにも遠く関心を持てない地域なのである。
・むろん日本政府が何も考えないでいい加減な対応をしているのではない。外務省などを中心にどう対応すべきか検討したうえでのコメントだろう。したがって意識的、意図的な判断停止、ノーコメントなのである。しかし、その理由をだれも公に説明はしていないから正確なことはわからない。
・おそらく北朝鮮の核ミサイル問題に直面している今、トランプ大統領の対応を批判することでこれまで築き上げてきた信頼関係を崩すわけにはいかないというのが最大の理由だろう。 パレスチナ問題は欧州の帝国主義や植民地支配の生み出した問題であり、日本には関係のない話である。一方で北朝鮮問題は直接の脅威であり、政策の優先順位は明らかだ。またトランプ大統領は、相手が外国の首脳であっても自らを批判する者に対して非常に激しい反応をしてきた。日本政府が欧州各国と同じように大統領の決定を批判すれば、機嫌を損ねてしまい、北朝鮮問題への対応で協力を得られなくなるかもしれない。そんなことは何としても避けなければならない。もちろん判断停止の姿勢をとれば、日本が国際社会で浮いてしまうことはわかりきっている。それよりも北朝鮮問題を優先するという判断だろう。
▽「安倍首相がトランプ大統領と親密」は本当か
・となると安倍首相が作り上げてきたトランプ大統領との信頼関係を疑ってみたくもなる。 昨年の米大統領選でトランプ氏が当選後、安倍首相は各国首脳に先駆けて就任前に会い、その後も繰り返し会談するとともに頻繁に電話で話し合い、大統領と最も親しい首脳であることを喧伝してきた。首相秘書官らは政治や外交の経験がまったくなかった大統領に対して安倍首相が指南役としてさまざまなアドバイスをし、大統領もそれを素直に受け入れていると強調していた。
・11月のアジア歴訪でも、大統領は安倍首相の発案である「自由で開かれたインド太平洋戦略」を気に入って、ベトナムの講演などで繰り返し発信してくれたなどと説明していた。それほどの信頼関係があるのであれば、なぜエルサレム問題でアドバイスをしないのだろうか。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定や地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱についても、日本政府は米国に苦言を呈することを控えている。「物言えぬ信頼関係」なのだろう。
・米国に対する日本の外交姿勢は冷戦中を含めしばしば「対米追随」と揶揄されてきた。1970年代には中国の国連加盟反対などで最後まで米国と歩調を合わせた。そのため各国からは、米国の対応を見れば日本がどうするかわかるとさえ言われてきた。しかし、貿易摩擦問題などでは米国と正面衝突してきた歴史もある。またアジアを中心に時に米国と対立しつつも日本独自の外交を展開してきた歴史もある。
・外務省幹部の1人は現在の状況について、「トランプが嫌がりそうなことは一切、言わないしやらない。戦後歴代政権の中で、最も米国への従属に徹した政権だろう」と話している。 残念なことに、物言わないのは米国に対してだけではない。例えばカンボジアだ。かつて日本は初めてPKO(国連平和維持活動)のため自衛隊を派遣し選挙実施と復興を支援した。いまカンボジアはフン・セン首相が野党を解党に追い込み独裁体制を敷きつつある。しかし日本政府は何の反応もしていない。ミャンマーで起きている少数民族ロヒンギャの迫害問題に対しても日本は目立った動きを見せていない。
▽対北朝鮮以外は視野にない「外交小国」
・まるで外交のあらゆるエネルギーを米国との良好な関係維持と北朝鮮問題への対応だけに注入しているかのような単線的外交になっているのだ。 安倍政権は外交面で今、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を看板にしている。その中核は、自由や民主主義、市場経済、人権、法の支配など「普遍的価値」を共有する国々との連携である。また、国会演説などでは機会あるごとに「積極的平和主義」や「地球儀を俯瞰する外交」という言葉を多用している。
・今回のトランプ大統領の決定のように「普遍的価値」に反する政策や出来事に対して政府として明確な評価を示すべきであろう。そうした行動が伴わなければ、「インド太平洋戦略」を信じる者はいなくなるだろう。
・世界の政治や経済がグローバル化した時代に、自国の利益実現のためだけに奔走する狭い外交は、結果的に他国から信頼されず軽蔑さえ受けかねない。「普遍的価値」「地球儀を俯瞰する外交」を掲げるのであれば、それを踏まえた「徳のある外交」が世界から信頼を得るためには不可欠だ。
・残念ながら安倍政権からはそのような発想を感じられない。このままでは日本は引き続き「外交小国」であり続けることになる。
http://toyokeizai.net/articles/-/200802

第一の記事で、日本の財界人による訪中団については、11月22日付けの産経新聞では、『経団連の榊原定征会長は「中国が再び日本経済から環境や企業管理などを学ぼうとする姿勢が出てきたことを歓迎する」と評価。中国側には、習近平国家主席が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」に日本企業の協力を得たいとの思惑があるが、透明性があやふやな事業も多く、日本企業には慎重論も根強い』、と「一帯一路」については、日刊ゲンダイの記事はやや先走り過ぎのようだ。
http://www.sankei.com/politics/news/171122/plt1711220034-n1.html
第二の記事で、横田空域返還問題については、一時は決まった既定路線であるかのような報道も出たが、結局、 『日本政府は米国の大きな壁の前に横田空域の返還交渉求めても応じてもらえなかった、だから断念せざるを得なかった』、というのは誠に残念である。 『この主権放棄は、たんに日本国民の生命と安全を犠牲にするだけでなく、東京五輪に参加する世界中の選手や、東京五輪を見に来る世界中の国民の生命と安全を危険にさらすことになる』、との指摘はその通りだ。ただ、『東京新聞のスクープ記事は、他のメディアが後追い記事を書いて、ひろく国民の知るところになって、世論を気にする対米従属の安倍首相を追い込む事になるだろうか』、というのは、他のメディアが黙殺したため、多くの国民は知らないままとなった。メディアの安部政権に対する「忖度」のあまり、国民の知る権利は無視されたようだ。
第三の記事で、 『世界第3の経済大国であることを誇り、トランプ大統領との緊密な関係を自慢している日本が、この問題に対して黙り込んでいる異常な光景だ』、 『先進国首脳が非難、行動的だったマクロン大統領』、とは好対照だ。 『政府の反応に合わせてか、欧米に比べ日本のメディアの報道ぶりは極端に少ない』、というのは第二の記事と同様に、残念なことだ。 『戦後歴代政権の中で、最も米国への従属に徹した政権だろう」』との外務省幹部の発言は、確かにその通りだ。 『対北朝鮮以外は視野にない「外交小国」』、というのも残念ながら、その通りだ。カンボジアやミャンマー問題でも、沈黙を続けるのは、日本外交の世界の中での地位をますます貶める愚策だろう。
タグ:ミャンマー カンボジア トランプが嫌がりそうなことは一切、言わないしやらない。戦後歴代政権の中で、最も米国への従属に徹した政権だろう 自由で開かれたインド太平洋戦略 安倍首相が作り上げてきたトランプ大統領との信頼関係を疑ってみたくもなる 北朝鮮の核ミサイル問題に直面している今、トランプ大統領の対応を批判することでこれまで築き上げてきた信頼関係を崩すわけにはいかないというのが最大の理由だろう 政府の反応に合わせてか、欧米に比べ日本のメディアの報道ぶりは極端に少ない 先進国首脳が非難、行動的だったマクロン大統領 同時にこの決定は中東に新たな悲劇を生み出す。ガザ地区を実効支配するハマスの指導者は「インティファーダ―」(住民蜂起)を呼び掛け、すでに多くの死傷者が出ている 歴代の米大統領はイスラエルとパレスチナのトップ会談を設定するなど、和平実現に汗をかいてきた。トランプ大統領の決定はこうした努力を否定する自己中心的なものである 世界第3の経済大国であることを誇り、トランプ大統領との緊密な関係を自慢している日本が、この問題に対して黙り込んでいる異常な光景だ 「エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ」 東洋経済オンライン 薬師寺 克行 唯一の被爆国でありながら、米国の核の傘に守られているからといって、核兵器廃絶に反対して世界に恥をさらした この主権放棄は、たんに日本国民の生命と安全を犠牲にするだけでなく、東京五輪に参加する世界中の選手や、東京五輪を見に来る世界中の国民の生命と安全を危険にさらすことになる このような主権放棄を許しているのは、世界広しといえども日本しかない 日本政府は横田空域の返還交渉を米国に求めない方針 「横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる」 天木直人 どうせ一帯一路に参加するなら、もっと早く動くべきでした トランプ大統領も強い関心 「一帯一路」のフォーラムには、130カ国以上が代表を送っている 経団連の榊原定征会長など250人の財界人が、20日から中国を訪問し、「一帯一路」に対する日本企業の取り組みについて話し合う予定 「一帯一路」について、「世界経済にメリットがある」と講演で明言 河野太郎外相 「一帯一路」 「安倍外交のツケ 今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥」 日刊ゲンダイ (その2)(今ごろ慌てて中国「一帯一路」参加の大恥、横田空域返還交渉を断念した日本は世界の笑いものになる、エルサレム首都宣言でも「物言わぬ」日本外交 安倍政権の「普遍的価値」は看板倒れ) 安倍外交
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企業不祥事(その15)(レオパレス21が抱える オーナーの集団訴訟を招く「火種」、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める、「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が) [企業経営]

企業不祥事については、8月6日に取上げた。今日は、(その15)(レオパレス21が抱える オーナーの集団訴訟を招く「火種」、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める、「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が) である。

先ずは、9月7日付けダイヤモンド・オンライン「レオパレス21が抱える、オーナーの集団訴訟を招く「火種」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・賃貸アパート大手のレオパレス21が複数の集団訴訟にさらされている。そんな中、9月7日、新たに2名のアパートオーナーが訴訟を起こすことが「週刊ダイヤモンド」の取材で分かった。管理戸数約57万戸、賃貸オーナー数約2万7000人を誇る同社は、サブリース契約をめぐる度重なる集団訴訟という難局に直面している。
▽1万人以上もいる?10年未満の家賃減額
・レオパレス21は、アパート建築を地方の地主に提案し、その地主がオーナーとなった物件を一括借上げして30年間家賃収入を保証する「サブリース契約」を武器に、建築請負業で成長してきた。しかし、2008年のリーマンショックで大幅な赤字に陥り、経営方針を転換した。今では建築請負は都心に絞り、サブリース契約による賃貸管理をメーンに経営の安定化を図っている。
・この家賃保証に関わる訴訟が、今年2月に起こされていた。愛知県の男性が05年に同社とサブリース契約を結んだ際、契約書には「家賃は当初10年間は不変」との記載があったにもかかわらず、リーマンショックによる経営悪化を理由に、同社から10年未満で家賃減額を求められたという。
・同じように10年未満で減額されたオーナー約50名が代理人弁護士を通じて、9月4日付で同社側に家賃増額一斉請求の内容証明郵便を発送しており、さらなる家賃増額訴訟の予備群となっている。今回はその内の2人が、合計1214万円の不当利得を返還請求する訴訟に踏み切るのだ。
・訴状によれば、減額交渉において賃料減額調停などの客観性の高い法的手段ではなく、全国支店の担当者が、減額に応じなければ同社が賃貸借契約を解除できるといった誤った説明をしたり、オーナーが退去を命じても長時間自宅に居座るなど困惑させる態度をとって強引に合意書に押印させ、減額に応じさせていたというのだ。
・同社の宮尾文也取締役は本誌の取材に対し、「家賃減額に関してはきちんと戸別訪問し、9割以上の方に了承していただいた」と答える。一方で、今回の原告を含む一部オーナーらで構成されるLPオーナー会の前田和彦代表によれば、「原告オーナーは最近に至るまで、法的に誤った説明をされたこと自体、認識していなかった。当会の調査活動を通じて、減額時のレオパレスの説明の問題点が判明した。全国的に見ても減額された方が1万人以上いるため、今後は毎週のように訴訟が提起されるのではないか」と話す。
▽サブリース契約違反か?「いずれはっきりする」と社長
・同社に対する訴訟はこれだけではない。実は先月29日にもオーナー29人による集団訴訟に見舞われている。 訴状によれば、同社のサブリース契約には、賃貸借契約の他に「建物メンテナンス契約」があった。「屋根の塗り替えが築10年目」などといった国土交通省のガイドラインに沿った修繕目安を基に、同社がアパートの修繕を実施する。それに対し、オーナーが毎月一定額のメンテナンス費用及び前払い金を支払うというものだ。
・前田氏によれば、「目安表に従った修繕がほとんど実施されていない実態が明らかになった」という。29人分の費用総額は1億4743万円に達しており、これを不当利得とみなして返還請求する集団訴訟に発展した。この訴訟に対し、同社の宮尾氏は「当社では定期的に建物調査をしており、その記録もある。修繕が必要かどうかは、その都度きちんと判断している」と主張しており、両者の見解は真っ向から対立している。
・これらの訴訟に先駆けて、昨年11月にはオーナー129人が「家具・家電総合メンテナンスサービス契約」が守られていないとして集団訴訟を起こしていた。 同社物件の売りは、入居時から家具・家電が備え付けられていることだ。その利便性を、テレビCMなどでも学生や単身赴任者に対して盛んに訴求している。そのサービス料が1戸当たり2000円、オーナーの家賃収入から天引きされているのに、一定期間が経過しても新品に交換されていないことを理由に4億8684万円の返還を求めたのだ。
・こうした一連の訴訟に対し、同社の深山英世社長はどう答えるのか。同社は“開かれた会社“を目指し、今月4日に東京・帝国ホテルで初の試みとなる記者懇談会を開催したが、そこには社長自らの声を聴こうとメディアが詰めかけていた。 訴訟のことを問われた深山社長は、「あまり余計なことを言うなと広報から言われるかもしれないが、1つだけ言いたいのは、修繕費に関してはあちら(オーナー)も経費で落としているということ。そういう契約をしていたわけだから、今さら言われても……まあ、いずれはっきりすることです」と歯切れが悪い。
・同社にとって、サブリース物件のオーナーは重要なパートナーだ。彼らからの集団訴訟が今後も相次げば、経営の屋台骨が揺らぎかねない。建築請負主体から脱却して黒字転換し経営は安定してきたが、不透明なサブリース契約の“火種”がくすぶり続けている。
http://diamond.jp/articles/-/141420

次に、健康社会学者の河合 薫氏が10月10日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「えっ、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「○○を追いつめる高揚感」について考えてみる。 先週、NHKの記者だった女性(31歳)が4年前の2013年7月に、心不全で亡くなっていたことがわかった。原因は長時間労働による過労死。亡くなった翌年、労災認定された。
・亡くなる直前の1カ月間の時間外労働は159時間37分。5月下旬からの1カ月間も146時間57分。また、亡くなる直前には都議選と参院選の取材で、「深夜に及ぶ業務や十分な休日の確保もできない状況」で、「相当の疲労の蓄積、恒常的な睡眠不足の状態であったことが推測」されたそうだ(渋谷労働基準監督署による)。
・亡くなったのは参院選の投開票から3日後の7月24日。同月末に横浜放送局への異動が決まっていたことから、前日の23日は勤務終了後に送別会に参加。翌24日未明に都内の自宅に帰宅したあと倒れたとみられる。
・「忙しいしストレスもたまるし、1日に1回は仕事を辞めたいと思うんだけど踏ん張りどころだね」――。 泣き言や弱音をめったに吐かない彼女から、両親に心配なメールが届いたのはひと月前。  「明るくいつも笑顔。ヒマワリの花のような子。亡くなった時、携帯を握ったままだったのは、何かメールしようとしていたのかもしれない」 朝日新聞の取材に母親は悔しさを滲ませた。
・いったい何人の命を奪えば、この国の人たちは「過労死・過労自殺」と正面から向き合い、この“異常”を異常なこととして受け止めるのか。
▽ご両親は最初は公表を望まなかった
・そもそも今回、3年以上前のことが報じられた理由も、NHK側の対応のずさんさにある。 昨年までは命日にNHK幹部が弔問に訪れていたが、今年は連絡はなし。電通の過労自殺事件はNHKはかなりの時間を使い報じてきたが、NHK内部で起きたことは公表しなかった。 そればかりか局内にも知らされていなかった。
・ご家族は当初、公表を望んでいなかった。NHKの幹部からお嬢さんの死後、長時間労働対策を進めていると説明されてきたそうだ。 しかし、お嬢さんの元同僚から、今夏から対策は始まったものの、そのきっかけとなったのがお嬢さんの過労死にあることは職員に周知されていないと知らされた。 そこで「娘の死を風化させたくない」との思いで、命日の7月以降、局内でお嬢さんの死の“事実”の周知、自発的な対外公表を要望。そして、やっと。ホントにやっと4日の夜「ニュースウオッチ9」で、マイクを握る彼女の写真が画面に映し出された。
・番組では、「二度と同じようなことを起こさないという決意を組織内で共有し、改革の徹底を図るため、全職員に伝え、外部に公表することが必要だと判断した」と説明、 「このことをきっかけに記者の勤務制度を見直すなど働き方改革に取り組んでおり、職員の健康確保の徹底をさらに進めて参ります」とコメントした。
・……先々週、私は「現電通社長の山本敏博氏が公開の法廷の場に立った」という事実が、日本中のトップの意識改革に繋がればいいと、心から願うばかりだ」と書いた(こちら)。 そして、「法人の代表として、社長が裁判所に顔を見せるまでの26年間(1991年の過労自殺事件から)、トップにいた方たちは、この死をどう考えていたのか」と。 この言葉をまんまNHKのトップに聞きたい。
・お嬢さんの死の公表を望んでいなかったご家族が、なぜ、「自発的な対外公表を要望」したのか。その心情を少しでも考えたことがあるのだろうか。過労自殺や過労死は、ご家族が公表を望まないことも多いし、労災(過労死)申請が行われないこともある。大切な人を亡くし「そっとしておいて欲しい」。その気持ちは“自分の大切な人”を亡くした経験があれば、痛いほどわかるはずだ。
・そして、NHKのトップはいったいどんな気持ちで高橋まつりさんの死を報じる自局の報道を見ていたのか? まさか「黙っておけばバレない」とでも思っていた? あるいは「うちは過労死だから、過労自殺とは違う」とでも考えていたのだろうか?
・確かに、これまでも繰り返し指摘しているとおり過労死と過労自殺は別物である。 2014年に過労死遺族たちの「過労死をなくそ う」という活動がやっと実を結び、制定された「過労死等防止対策推進法」が、“等”となっているのはそのためだ。
・過労死等防止対策推進法では「過労死等」を、以下のように定義している。  業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡  業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死  (これら脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害も、死に至らなくとも「過労死等」に含まれる)
・1の「過労死」と2の「過労自殺」は、どちらも「過労」による「死」であることに変わりはない。が、過労死と過労自殺は明確に分けて考える必要がある。 過労死では長時間労働が直接的に関係し、過労自殺は長時間労働が引き金となる。 「過労死」は長時間労働に肉体が耐えきれず、脳疾患や心臓疾患にいたる「突然死」。一方、「過労自殺」は、長時間労働の影響以上に目標の達成ができないなど精神的なストレスの比重が高く、「仕事による過労・ストレスが原因となって自殺に至ること」だ。
▽止められる死を、なぜ止めない
・長時間労働もトップの責任だし、業務の過剰なプレッシャーやパワハラなどもそうである。トップの判断で救える命だ。 「娘がいなくなり、体半分がもぎ取られた気持ち。心から笑える日は一生こないと思う」――。 こう語るご家族の言葉を過労死や過労自殺を出した企業のトップたちはどう思うのか? 申し訳ないけど、私には全く理解できないのです。
・2009年、ある裁判が起こった。 過労死発生企業の公表を求める裁判である。 原告は、「全国過労死を考える家族の会」の代表の寺西笑子さん。ご自身も過労自殺で夫を亡くしている。 現状では遺族が労災を申請し、公表しないと、企業の社会的な責任が問われないため、過労死企業の情報公開を申請したところ、不開示とされたため決定の取り消しを求めた。
・一審の大阪地裁は、過労死企業の開示を認めたが、二審の大阪高裁は、ブラック企業との風評が生まれると判断。最高裁も高裁判決を支持したため、逆転敗訴となった。 トップもトップなら、裁判官も裁判官だ。 「ブラック企業との風評が生まれる」だって? いったいどこまで人の命を軽んじているのか。 なぜ、企業がきちんと向き合えば「止められる死」を、救おうとしないのか。
・そして、おそらく私がここで憤っていることを、「感情的なことをいうなよ。長時間労働したって全員が死ぬわけじゃないだろ。俺もやってるけど元気だよ。第一、そんなにストレスなら辞めればよかっただけだ」などとのたまう人が少なからずいる。
・長時間労働しても俺は大丈夫、だって? なるほど。確かに。そのとおりだ、今はね。 たまたま、まだ、死んでないだけ。ただ、それだけだ。 そして、世間には「長時間労働はダメだよ。ホントトップ次第なんだよね」と言いつつも、自分が寝る時間がないほど忙しいことを、どこか自慢げに言う人たちも少なくない。
・奇しくもNHKの過労死事件が明るみになったその日。 元電通社員で「青年失業家」の田中泰延さんのコラム「ひろのぶ雑記」が、SNSで話題となった(こちら)。 ブログは高橋まつりさんの事件のことを書いたもので、 「私は古巣のことを悪く言うつもりはサラサラない。逆に、大きな、悲しい事件があり、いろいろな社会的制裁を受け、変革を余儀なくされている電通という会社をことさらに擁護する立場にもない。
・そもそも、わたしは電通を卒業したわけではない。それは、定年退職したり、役員になって退任したり、その職務を全うできた者だけが使える言葉だ。私は、『中退』であり、ドロップアウトした人間だ」 という文章から始まっている。  電通は忙しすぎたこと 何度もクライアントから戻ってきた営業担当の「明日までに再提出しなければならない」という言葉で、プライベートの予定がぶっ飛んだこと  24年間の会社員生活で、1か月以上の入院を4回もすることになったこと などがリアルな表現で書かれ、 高橋まつりさんが亡くなる数ヶ月前に、深夜3時ごろ、会社で徹夜作業をしていたときに、「まだ会社にいる しんどい」といった内容のTwitterを見て、 「おれも会社で徹夜 がんばろう」と言葉を返してしまった、と。
▽エールを送ってしまった悔悟
・そのTwitterこそが高橋まつりさんのもので、「私は、彼女の訃報を知ったとき、過去を検索して自分のそのツイートを探し出し、慌てるように消去した。慚愧の念が私を包んだ。後悔してもしきれない」 と告白されている。 自分も心身を酷使しながらやっているときに、悲鳴をあげている人に「自分もがんばってる。あなたもがんばって」とエールを送ってしまうことは誰にでもある。
・「お互い大変だ。でもさ、もうちょっとだけがんばろう」と。 田中さんがこの「エールを送ってしまった自分」を後悔されているお気持ちは、痛いほど伝わってくる。 ただ、大変失礼な物言いを承知で言えば、問題はエールを送った行動にはない。
・「私は、『中退』であり、ドロップアウトした人間だ」と田中さんに言わせてしまう組織にこそ、大きな問題がある、私にはそう思えてならない。 ブログには、この田中さんが体調を壊して入院をしていたときのことが書かれていた。 何度目かの入院から戻っておそるおそる出社した時、職場のホワイトボードに、 【田中 入院中 そっとしておいてやろう 必ず戻ってくるから】 と上司が書いてくれてあったのを消しながら、 【田中 本日より元気に出社】 とマジックで大きく書いた時は涙が止まらなかった。(※田中様からは快く引用をご許諾いただきました。ありがとうございます。なお、行間隔はオリジナルと異なります)
・なぜ、「そっとしておいてやろう。必ず戻ってくるから」なのか?  自分たちの仲間が肉体を酷使し、心身が限界を超え、“大切”で“大好き”な仕事が出来ない状態になっているなら、「そんな働き方はおかしい」と声をあげられないのか? 「金曜の夜にクライアントからNGが出て、月曜日にプレゼンだ? それは断っていい。いや、断るべきだ」と、なぜ、現場から声をあげられない? 当然ながら、それを「そんな仕事は請けなくていい」と徹底しないトップの責任であり、先日の最終意見陳述で山本社長が「『仕事に時間をかけることがサービス品質の向上につながる』という思い込みがあった」と述べたように、そういった組織風土に問題があったわけだが、…どうにも納得できない。
・だって、知的な発想を要する仕事についている人たちほど「業務の成果を時間ではなく結果で評価してほしい」とホワイトカラーエグゼンプション、すなわち裁量労働制を訴える。 時間じゃないという人たちが、時間をかけることを美徳とする。このダブルバインドもまた、“悲劇”があとを絶たないことにつながっているように思えてならないのである。
・だからこそ、あくまでも私の個人的な気持ちだが、田中さんに「ドロップアウトした人間だ」とは言って欲しくなかった。 仕事で心身を蝕み、入院を4回するなんておかしい。体を休めること、仕事を離れること、そして、仕事以外の環境に身を置くことが、豊かな発想をもたらし、結果的にいい仕事につながる。と言って欲しかった。
▽「いい仕事をしたい」から無理をすると高揚感につながる
・でも、それは外部の人間の感覚であり、無理なことを言っているというのも実は分かる。 現場にいれば、目の前の仕事に集中するのが当然だ。 「いい仕事をしたい」「会社に貢献したい」「お客さんを喜ばせたい」 という気持ちが高い人ほど、「いい仕事をするためには、私的な時間を犠牲にしてもやむをえない」と、過剰に自分を追い込んでいく。
・仕事の要求とプレッシャーが高まることで、社会に認められたいという承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、“働き過ぎ”を拡大する。 働き過ぎに人を向けるのは、いわゆる「高揚感」。高揚感こそが、自らを追いつめ、周りの人たちをも追いつめる。 身も心も疲れ果ててボロボロになっているのに、あたかも、そのぼろぼろになっていること自体が「すごいこと」「できる人」の証明のように思えるのだ。
・だからこそ、ご自身や上司、同僚の方との、涙が止まらなかった思い出とは別のお話として、「これはおかしい」と、その環境を“卒業”した人に言って欲しかった。やってきたことを否定するようなことを言え、というのは、我ながら何様だろうと思うのだけれど……。
・本来「体を休める」時間に、「体を酷使する」ことがいかに危険かを最後に紹介する。 今年のノーベル生理学・医学賞を受賞した、米ブランダイス大学名誉教授のJ.ホール博士と同大学のM.ロスバッシュ博士、ロックフェラー大学のM.ヤング博士。 博士らの功績は、「体内時計(概日リズム)を生み出す遺伝子とそのメカニズムの発見」だ。
・人間の身体は24時間のリズムで変化。活動や睡眠の変化だけでなく、 朝が来ると血圧と心拍数が上がり始め、  昼には血中のヘモグロビン濃度が最も高まり、 夕方には体温が上がり,夜には尿の排出量が多くなり、 真夜中には免疫を担うヘルパーT細胞の数が最大になり、成長ホルモンがさかんに分泌する。
・その身体の1日のリズムを遺伝子レベルで解き明かす道を開いたのが、今回ノーベル賞を受賞する3人の博士である。 で、その人間の体内に宿る「体内の時計」と「生活のリズム」がうまく同期しなくなると、がんや神経変性疾患、代謝疾患などのリスクが高まることが近年の研究で確かめられ、更なる研究が進められている。
・たとえば、WHOの行なった調査では、乳がん、前立腺がんなどの、性差に特徴のあるがんで大幅にリスクが上がることがわかり、デンマークでは、看護師さんなどの交代制勤務をする人が乳がんにかかった場合、労災の対象になる。
・また、昨年にはハーバード大学などの共同研究グループが、看護師約7万5000人分の経年データから分析した結果、以下のことがわかった(1988年から2010年までのデータ)。  1988年から2010年の22年間に、対象者のうち約1万4000人が亡くなり、うち約3000人は心臓や血管の病気、約5400人はがん。  交代制夜勤のある人は、全く夜勤の無い人よりも死亡率が11%高く、中でも夜勤を6~14年続けている女性は、心臓や血管の病気による死亡率が19%、15年以上続けている人は23%も高い。肺がんによる死亡率は25%高い。
▽体内時計には逆らえない
・日本でも山口大学時間学研究所の明石真教授らの研究から、「体内時計と生活リズムのずれ」がもたらす影響は確かめられている。 早出や夜勤など勤務の交代制がある職場で働く人たちに、3時間に1回“ヒゲ”を抜いてもらい、毛根の細胞を利用して、体内時計と勤務の関係を調べたところ……、「早出と遅出のシフトが1週間ごとに入れ代わるシフト勤務についている人の場合、睡眠や食事の時間が7時間ほどズレが生じるのに対し、体内時計の変化は2時間程度」 ということが分かった。 内臓は“就寝時間”になっているのに無理に働くという“不自然な勤務”が、動脈硬化や高血圧、肥満、糖尿病などの引き金になっていたのだ。
▽夜は何のために夜なのか?
・私たちは「労働者」である前に、「人」という霊長類の動物である。 仕事のために生きているのではない。生きるために仕事しているだけだ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/100600126/?P=1

第三に、金融ジャーナリストの伊藤 歩氏が12月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「カラオケまねきねこ」と女性向けフィットネスジム「カーブス」を2本柱に、快進撃が続くコシダカホールディングス(HD)が、法曹関係者の間で注目を集めている。 11月24日に開催された、同社の2017年8月期定時株主総会の招集手続きについて、「上場会社にあるまじき不手際」(株主総会運営に詳しい弁護士)という声が出ているのだ。
・コシダカHDは2007年6月の上場以来、目下のところ10期連続で増収営業増益を継続中。上場当時と比較すると、営業利益は9倍、時価総額はおよそ15倍になっている、急成長企業である。
▽監査報告書を未受領のまま招集通知発送
・そのコシダカHDが、11月9日、発送済みの定時株主総会の招集通知から、会計監査人の監査報告書と監査等委員会の監査報告書を削除することを公表した。 監査法人からも、監査等委員会からも、監査報告書を受領していないのに、受領したことにして招集通知を出してしまったが、実はまだ受領していないから削除する、というものだった。
・4日後の11月13日には監査法人の交代議案も撤回した。今総会で新日本監査法人から仰星監査法人に変更する予定だったが、仰星が辞退したためだ。11月17日になって会計監査人と監査等委員会から監査報告書を入手できたので、招集通知の監査報告書のページを時間差で差し替えた形を取り、24日の総会に臨んだ。
・結果的に監査報告書は総会に間に合い、波乱なく総会は終了したわけだが、そもそも定時総会の招集通知を送るには取締役会決議がいる。招集通知を送るには、総会に上程する議案決定に関する取締役会決議が必要で、そのためには決算の承認決議も必要になる。
・それではその決算の承認決議を、いったいどのようにして行ったのか。通常は、決算期末からおよそ7~8週間後までに会計監査人から無限定適正意見のついた「独立監査人の監査報告書」を監査役会が受領する。 監査役会は会計監査人が行った監査の方法と結果を「相当」と判断したら、その旨を記載した『監査役会の監査報告書』を作成して取締役会に提出する。 取締役会は監査役会の見解を踏まえて決算承認決議をすると、決算が確定し、株主総会には『報告事項』として上程できる。
・もっとも、会計監査人と監査役会、経営陣の見解が一致せず、会計監査人から不適正意見や限定付き適正意見がついたり、意見を表明しないというケースもありうる。その場合、監査役会が決算は適正であると判断するのなら、その理由を明示した監査報告書を取締役会に提出、取締役会が決算を承認することは可能だ。 そうすると株主総会での扱いは「報告事項」ではなく「承認事項」となり、判断は株主の手に委ねられる。
・さらに、粉飾が発覚して第三者委員会の調査中である場合など、定時総会の招集通知発送までに会計監査人の監査報告書を会社側が受領できないという事態は起こりうる。 企業は定款で基準日を定めており、定時株主総会は必ず開催しなければならないし、決算の報告もしくは承認は、定時株主総会でなすべき事項として会社法に定められている。
・実務上は次善の策として、定時株主総会では取締役の選任など、できることだけを決議しておき、決算に関しては後日、臨時株主総会を開催して報告もしくは承認を得る方法がとられている。
▽浮かび上がる2つの疑問(コシダカは監査等委員会設置会社なので、上記の監査役会の業務は監査等委員会が担う。 会社側は「監査報告の受領を前提とした条件付きで、決算承認と定時株主総会に決算を報告事項として上程することを決議した」ことを認めている。
・会社側によれば、「10月25日になって、新日本監査法人から追加の資料提出も含めた追加の手続きが必要であり、当初予定していた監査報告を提出できないことを通告された」という。 11月30日の同社開示によれば、多岐にわたる勘定科目の誤り、関係会社株式評価プロセスの運用不備、カラオケ事業におけるカード未収売掛金の適切な消し込み処理の不備などを監査法人から指摘されていた、とある。
・同時に開示した2017年8月期決算短信の一部修正も、損益科目では売上総利益が144億5664万円から142億8497万円へと、1億7166万円減額訂正されたが、販管費も同額減額されており、営業利益には影響がなかった。つまり、原価計上すべき費用が販管費計上されていたということだろう。 数字が大きく動く可能性があるような見解の相違ならば、もっと早い段階で問題になっていたはずで、会社側は細かい確認の次元と考え、確認が済めば当然に無限定適正意見がもらえると考えていたのだろう。
・実際、総会開催1週間前に会社は無限定適正意見が付いた監査報告書を入手している。それでもなお、一連の手続きには2つの疑問が浮かび上がる。 1つ目は新日本の動きだ。11月30日の開示にあるような、細かいながら見逃すべきではない不備を、新日本はいつから指摘していたのか。第3四半期まで四半期報告書がつつがなく提出されていることからすると、最近まで新日本は問題視してこなかったことになる。 10月25日になって突然追加資料の提出を求めたのであれば、担当の公認会計士が監査法人内のレビューで指摘を受け、確認を余儀なくされた可能性が浮上する。
・同社の定時総会が11月下旬に予定されていること、そのためには遅くとも11月2週目の前半には招集通知を発送しなければならず、招集通知のゲラチェックや印刷の時間を考慮すれば、10月末までには監査報告書を必要としていたことは承知していたはずだ。 この点については、会社側は回答を控えており、真相は明らかにされていない。
・最大の疑問は監査等委員がどう行動したのかである。会社側が監査等委員会の監査報告書を受領したのは新日本の監査報告書を受領した日と同日だから、少なくとも監査等委員会は新日本の監査報告書を見ずに監査報告書を作成したわけではない。 さらに、決算承認を報告事項で上程するのか、承認事項で上程するのかで議案は変わる。株主総会提出書類の調査は監査等委員会の義務だ。
・会社側は、決算承認と議案決定について「条件付き」で、全会一致で決議をしたことは認めているが、監査等委員を含め、各取締役がどういった意見を述べたのかについては明らかにしていない。  加えて、11月7日に発送された招集通知には、仰星監査法人への交代が盛り込まれていた。会社側は「11月6日に適時開示をする予定だったが、辞退されてしまった」ことは認めている。
・ただ、印刷、ゲラチェックの時間を考えれば、10月中には決定していておかしくないのに、仰星への交代リリースは出ないまま、11月13日になって「(仰星が)辞退してしまったので交代しない」というリリースが出されている。 仰星への変更をいつ決議したのか、そして会社側は決議後速やかに開示をしたのか、それともしなかったのかも明かにされていない。
・会社側は11月30日の開示で、さまざまな不備の発生について、経理に必要な人材を確保できていなかったことや、内部監査人の退職、期末直前での経理担当者の退職などを原因として挙げている。  加えて、「株主総会招集手続きにかかる事務処理ミスについては、財務報告に係る内部統制とは直接関係ないものと認識しているが、内部統制における課題として認識している」とある。
▽新興企業にとっては他山の石
・有価証券報告書と同時に提出する内部統制報告書は、あくまで財務報告に関する内部統制を対象としているので、招集手続きに関する部分が“直接関係ない”のは間違いない。 しかし、総会招集手続きについて、「事務処理ミス」と認識している点は重い。予定稿として決議したのに、予定稿のまま招集通知を発送してしまったことを事務処理ミスと認識していて、「条件付き」で決議したこと自体は問題がないと考えていることになる。
・11月24日の定時株主総会では、取締役選任議案の賛成割合は、監査等委員長のみ76%で、残る7人は9割以上。創業一族が発行済みの4割強を保有しているとはいえ、一連の不手際を株主が問題視している形跡は見られない。 業績は絶好調であり、優待狙いの個人投資家からの人気も高いゆえんだろう。
・しかし、ガバナンスの脆弱さは思わぬ落とし穴になりかねない。株主総会実務に詳しい弁護士は、「招集手続きに瑕疵(かし)があるとして、株主から株主総会決議取り消し訴訟を起こされてもおかしくないケース」だと指摘する。特殊株主に付け入る隙を与えれば、経営が混乱する可能性もある。  会社の機関に関するガバナンスは会計監査人の領域からも外れるため、外部からの監視も効きにくい。だからこそ社外取締役の機能が重要になる。
・小規模かつ新興の上場会社の実態に詳しい弁護士は、「上場会社にふさわしいガバナンスを備えているとは言いがたく、苦笑するしかない」という。 「よくある、とまでは言わないが、新興の小規模な上場会社では、表面化していないだけで、似たような話はそこそこ耳にする。現場はずさんな体制を危険だと感じているが、トップがその危機感を共有しておらず、リスクにも自覚がない。今回のケースはぜひとも“他山の石”としてほしい」(同弁護士)
http://toyokeizai.net/articles/-/200713

第一の記事で、 『同社の宮尾文也取締役は本誌の取材に対し、「家賃減額に関してはきちんと戸別訪問し、9割以上の方に了承していただいた」と答える』、しかし、『LPオーナー会の前田和彦代表によれば、「原告オーナーは最近に至るまで、法的に誤った説明をされたこと自体、認識していなかった。当会の調査活動を通じて、減額時のレオパレスの説明の問題点が判明した。全国的に見ても減額された方が1万人以上いるため、今後は毎週のように訴訟が提起されるのではないか」と話す』、確かに、法律に詳しくないオーナーは、会社側からの一方的な説明で一応、応諾したケースも多いと思われる。 『彼らからの集団訴訟が今後も相次げば、経営の屋台骨が揺らぎかねない』、と目が離せない状況が当面続きそうだ。
第二の記事で、 『過労死発生企業の公表を求める裁判で・・・一審の大阪地裁は、過労死企業の開示を認めたが、二審の大阪高裁は、ブラック企業との風評が生まれると判断。最高裁も高裁判決を支持したため、逆転敗訴となった。トップもトップなら、裁判官も裁判官だ。「ブラック企業との風評が生まれる」だって? いったいどこまで人の命を軽んじているのか。 なぜ、企業がきちんと向き合えば「止められる死」を、救おうとしないのか』、については全く同感だ。『元電通社員で「青年失業家」の田中泰延さんのコラム「ひろのぶ雑記」・・・「お互い大変だ。でもさ、もうちょっとだけがんばろう」と。田中さんがこの「エールを送ってしまった自分」を後悔されているお気持ちは、痛いほど伝わってくる』、『知的な発想を要する仕事についている人たちほど「業務の成果を時間ではなく結果で評価してほしい」とホワイトカラーエグゼンプション、すなわち裁量労働制を訴える。時間じゃないという人たちが、時間をかけることを美徳とする。このダブルバインドもまた、“悲劇”があとを絶たないことにつながっているように思えてならないのである』、『仕事の要求とプレッシャーが高まることで、社会に認められたいという承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、“働き過ぎ”を拡大する。働き過ぎに人を向けるのは、いわゆる「高揚感」。高揚感こそが、自らを追いつめ、周りの人たちをも追いつめる。身も心も疲れ果ててボロボロになっているのに、あたかも、そのぼろぼろになっていること自体が「すごいこと」「できる人」の証明のように思えるのだ』、などの分析は河合氏ならではのもので、説得力がある。
第三の記事で、コシダカHDが 『監査報告書を未受領のまま招集通知発送・・・発送済みの定時株主総会の招集通知から、会計監査人の監査報告書と監査等委員会の監査報告書を削除することを公表』、とはいくら急成長企業とはいえ、上場企業とは思えないようなお粗末さだ。 『小規模かつ新興の上場会社の実態に詳しい弁護士は、「上場会社にふさわしいガバナンスを備えているとは言いがたく、苦笑するしかない」という。「よくある、とまでは言わないが、新興の小規模な上場会社では、表面化していないだけで、似たような話はそこそこ耳にする。現場はずさんな体制を危険だと感じているが、トップがその危機感を共有しておらず、リスクにも自覚がない。今回のケースはぜひとも“他山の石”としてほしい」』、というのは同感だ。
タグ:よくある、とまでは言わないが、新興の小規模な上場会社では、表面化していないだけで、似たような話はそこそこ耳にする。現場はずさんな体制を危険だと感じているが、トップがその危機感を共有しておらず、リスクにも自覚がない。今回のケースはぜひとも“他山の石”としてほしい 小規模かつ新興の上場会社の実態に詳しい弁護士は、「上場会社にふさわしいガバナンスを備えているとは言いがたく、苦笑するしかない」という 担当の公認会計士が監査法人内のレビューで指摘を受け、確認を余儀なくされた可能性が浮上 結果的に監査報告書は総会に間に合い、波乱なく総会は終了 監査法人の交代議案も撤回 発送済みの定時株主総会の招集通知から、会計監査人の監査報告書と監査等委員会の監査報告書を削除することを公表 監査報告書を未受領のまま招集通知発送 コシダカHD 「「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が」 東洋経済オンライン 伊藤 歩 「早出と遅出のシフトが1週間ごとに入れ代わるシフト勤務についている人の場合、睡眠や食事の時間が7時間ほどズレが生じるのに対し、体内時計の変化は2時間程度 「体内の時計」と「生活のリズム」がうまく同期しなくなると、がんや神経変性疾患、代謝疾患などのリスクが高まる 身も心も疲れ果ててボロボロになっているのに、あたかも、そのぼろぼろになっていること自体が「すごいこと」「できる人」の証明のように思えるのだ 働き過ぎに人を向けるのは、いわゆる「高揚感」。高揚感こそが、自らを追いつめ、周りの人たちをも追いつめる 仕事の要求とプレッシャーが高まることで、社会に認められたいという承認欲求に加え「人に迷惑をかけたくない」という意識が、“働き過ぎ”を拡大する 「いい仕事をしたい」「会社に貢献したい」「お客さんを喜ばせたい」 という気持ちが高い人ほど、「いい仕事をするためには、私的な時間を犠牲にしてもやむをえない」と、過剰に自分を追い込んでいく 知的な発想を要する仕事についている人たちほど「業務の成果を時間ではなく結果で評価してほしい」とホワイトカラーエグゼンプション、すなわち裁量労働制を訴える。 時間じゃないという人たちが、時間をかけることを美徳とする。このダブルバインドもまた、“悲劇”があとを絶たないことにつながっているように思えてならないのである 「私は、彼女の訃報を知ったとき、過去を検索して自分のそのツイートを探し出し、慌てるように消去した。慚愧の念が私を包んだ。後悔してもしきれない」 高橋まつりさんが亡くなる数ヶ月前に、深夜3時ごろ、会社で徹夜作業をしていたときに、「まだ会社にいる しんどい」といった内容のTwitterを見て、 「おれも会社で徹夜 がんばろう」と言葉を返してしまった、と 元電通社員で「青年失業家」の田中泰延さんのコラム「ひろのぶ雑記」 トップもトップなら、裁判官も裁判官だ。 「ブラック企業との風評が生まれる」だって? いったいどこまで人の命を軽んじているのか 一審の大阪地裁は、過労死企業の開示を認めたが、二審の大阪高裁は、ブラック企業との風評が生まれると判断。最高裁も高裁判決を支持したため、逆転敗訴となった 過労死発生企業の公表を求める裁判 2009年、ある裁判 長時間労働もトップの責任だし、業務の過剰なプレッシャーやパワハラなどもそうである。トップの判断で救える命だ 「過労自殺」 「過労死」 ご両親は最初は公表を望まなかった 労災認定 長時間労働による過労死 2013年7月に、心不全で亡くなっていた NHKの記者だった女性 「えっ、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める」 日経ビジネスオンライン 河合 薫 「家具・家電総合メンテナンスサービス契約」が守られていないとして集団訴訟 LPオーナー会 原告オーナーは最近に至るまで、法的に誤った説明をされたこと自体、認識していなかった。当会の調査活動を通じて、減額時のレオパレスの説明の問題点が判明した。全国的に見ても減額された方が1万人以上いるため、今後は毎週のように訴訟が提起されるのではないか 家賃減額に関してはきちんと戸別訪問し、9割以上の方に了承していただいた 全国支店の担当者が、減額に応じなければ同社が賃貸借契約を解除できるといった誤った説明をしたり、オーナーが退去を命じても長時間自宅に居座るなど困惑させる態度をとって強引に合意書に押印させ、減額に応じさせていたというのだ 契約書には「家賃は当初10年間は不変」との記載 今では建築請負は都心に絞り、サブリース契約による賃貸管理をメーンに経営の安定化を図っている リーマンショックで大幅な赤字に陥り、経営方針を転換 30年間家賃収入を保証する「サブリース契約」を武器に、建築請負業で成長 サブリース契約をめぐる度重なる集団訴訟という難局に直面 管理戸数約57万戸、賃貸オーナー数約2万7000人 複数の集団訴訟にさらされている レオパレス21 「レオパレス21が抱える、オーナーの集団訴訟を招く「火種」」 ダイヤモンド・オンライン (その15)(レオパレス21が抱える オーナーの集団訴訟を招く「火種」、NHKは自社の過労死は沈黙したのか!「いい仕事をしたい」高揚感があなたを追い詰める、「カラオケまねきねこ」コシダカで重大不手際 会計監査人報告書を「白紙撤回」の背景に何が) 企業不祥事
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