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金融規制・行政(その3)(MUFG元幹部 政策株禁止を提案、金融庁の次の標的は保険業界、金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身、リサーチ料設定に苦心の金融機関 EU新規制導入迫る) [金融]

金融規制・行政については、9月1日に取上げた。今日は、(その3)(MUFG元幹部 政策株禁止を提案、金融庁の次の標的は保険業界、金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身、リサーチ料設定に苦心の金融機関 EU新規制導入迫る)である。

先ずは、11月15日付けロイター「MUFG元幹部、政策株禁止を提案「経営者の地位安定に資する」」を紹介しよう。
・三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長で、金融庁参与の田中正明氏は15日、同庁で開かれた企業統治の諸課題を議論する有識者会議で、政策保有株について「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ」と指摘した。その上で、政策株の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないかと問題提起した。
・政策保有株をめぐっては、金融庁が策定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が保有する理由や合理性を具体的に説明するよう求めているが、開示が十分になされていない。メガバンクなどは目標を定めて政策株の削減に取り組んでいるが、会議では「ここからの削減は難しい。岩盤に当たっている」(小口俊朗委員)との見方も出た。金融庁は行政方針で、金融機関だけでなく、政策を保有させている企業側にも問題があると指摘した。
・もっとも、政策保有株の解消促進には保有禁止のみが有効なわけではないとの見方もある。ドイツではキャピタルゲインの非課税措置を打ち出したことで、企業が政策株の放出に動いた。政策株を保有する合理的な理由や事情はさまざまで、まずは企業が十分に説明することが重要だとして、金融庁内では一律の保有禁止に慎重な声が出ている。
・同有識者会議は、企業統治指針をもとに企業と投資家が実効性のある議論ができるよう、説明資料を作成する方向で議論している。政策保有株は論点の1つ。
https://jp.reuters.com/article/mufg-fsa-tanaka-idJPKBN1DF0FQ

次に、11月27日付けダイヤモンド・オンライン「金融庁の次の標的は保険業界、地銀と同列扱いの憂鬱」を紹介しよう。
・「一体どこまで踏み込んでくるつもりなんでしょうね」 銀行をはじめとした金融機関がそう警戒し、身構えていた金融庁の行政方針が11月中旬にようやく公表された。 行政方針は、金融庁が金融機関の経営状況をチェックするにあたって、どのような問題意識を持ち、1年を通じて何を重点的に調べていくのかを示すものだ。 例年9月までに公表しているものの、今年は10月になっても一向に方針が示されなかった。
・そのため、森信親長官が「在任3年目の総仕上げとして、強烈に改革を促すような方針を練り上げているのでは」と金融機関がざわつき、警戒感が日を追うごとに強まっていた。 しかし、いざふたを開けてみると、例年より1ヵ月も公表が遅れたわりには、目新しさはほとんどなく、昨年の行政方針の延長線上にある内容が大半だった。
・目立ったのは森長官がメインターゲットに据える地方の銀行に、改めて経営改革を強く迫る文言ぐらいで、特段のサプライズもないことから、方針発表翌日のメディアの扱いも自ずと小さかった。 身構えていた分、肩すかしを食らった格好の金融機関が多かった一方で、実は新たな行政方針に浮かない顔をしている業界がある。保険業界だ。
・一体何が保険会社を憂鬱にさせているのか。それは、保険会社は事業構造そのものに問題を抱えているのではないかという指摘を金融庁がしてきたことだ。 少子高齢化で人口減少が進む日本において、「収入保険料の量的拡大を前提とした現在の保険会社のビジネスモデルは、全体として持続できない可能性がある」とまで、金融庁は行政方針の中で言及している。
・保険会社のビジネスモデルが岐路に立たされていることは、今夏にあった生保業界と金融庁の意見交換会の中でも取り上げられたテーマだった。 初耳ではないため保険会社に大きな驚きはなかったものの、行政方針の中に盛り込まれたことで、現行のビジネスモデルが生み出す経営の先行き不安の程度は、“狙い撃ち”をしている地銀と同列だということが、より浮き彫りになりかつ広く周知されてしまったのだ。
・改革を促す次のターゲットが保険会社であるかのような文言は、それだけにとどまらない。 金融庁のある幹部は、行政方針文書の10ページ目にある文言を指差し、「これは主に生保のことを念頭に置いている」と明かす。 その文言とは「現行の営業体制等を維持しながら(顧客本位の取り組み方針を)実現することが可能かどうか」という部分だ。
・「多数の営業担当者を擁し、必ずしも顧客本位ではなく、収益を優先して需要を掘り起こすプッシュ型のビジネスモデルとなっている」とも指摘しており、大手生保であれば万人単位で抱える営業職員について、今後削減することを当局として期待しているかのようにも読める。 保険業界はこれまで、営業職員や代理店のネットワークが競争力の源泉となり、そのすそ野の広さと集票力がときに大きな政治力として機能することで、金融庁からの圧力をかわしてきた側面がある。
・その金融庁自身も、保険会社の監督業務に携わったことがある幹部が少ないがために、銀行などに比べて踏み込み不足の部分があったことは否めない。 そうした反省の下、金融庁の新たな行政方針には、保険会社に対する積年の思いが色濃くにじみ出ており、今後改革に向けた圧力は一層強まりそうな気配だ。
http://diamond.jp/articles/-/150687

第三に、12月4日付け現代ビジネス「金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身 続編もまだまだ出そうです」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・いま、金融業界で「おい、アレ読んだか?」と噂になっている、電子書籍がある。キンドル・ストア限定で販売されている、その暴露本には金融庁内部の人間にしか分からない、長官への激烈な皮肉が盛りだくさんだ。12月4日(月)発売の週刊現代が、金融庁をざわつかせているその内容を報じている。
▽電子書籍限定の「暴露本」をご存知か
・〈森信親(もり・のぶちか)長官のどなり声が絶えない、活気のある職場ですけどね〉〈部下の言うことよりお友達からの情報を重視する。誰かさんみたいですね。え、森長官ですか?〉 いま金融業界で、「読んだか?」と話題になっている本がある。金融庁職員が執筆したと思しき「暴露本」だ。
・電子書籍キンドル限定での配信。9月に『森信親長官の金融庁は金融機関をどうしたいのか?』が発売されたのを皮切りに、10月、11月と同じ著者による「続刊」が出ている。 内容は、金融庁の仕事の解説、有力候補の経歴や性格紹介を交えた次期長官予想、投資アドバイスなどだが、目を引くのは、森信親長官への皮肉、嫌味、当てこすりだ。
▽中枢の職員でなければ知り得ない「ディテール」
・金融庁のレポートが証券会社に厳しい内容を述べていることを紹介し、〈いやあ、森長官のぶち切れボイスが脳内再生されてしまいますよね〉。 長官の寵愛する部下が出世コースに乗ったことには、 〈森長官は(中略)人事のゴリ押しには前科のある人間だということです〉 部下の「好み」について〈順風満帆なプリンスみたいな人を嫌っている〉。
・「長官がアグレッシブな部下が好きだとか、中枢に近くないとわからない内容もけっこう的確に書かれているから、楽しんで読んでいる職員も少なくありません。 著者の正体がバレたときには、どんな処遇が下るのかを考えるとおそろしいですが……」(同庁中堅職員) まだまだ「新刊」が出てきそうな気配もある。 金融庁のザワつきはしばらく続きそうだ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53695

第四に、12月5日付けロイター「アングル:リサーチ料設定に苦心の金融機関、EU新規制導入迫る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・銀行や証券会社にリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける欧州連合(EU)の新規則導入が1月に迫ったが、マクロ経済、外為、債券、株式などのリサーチ料をそれぞれどう設定すべきかについて、業界の見方は収れんしておらず、金融機関はぎりぎりまで頭を悩ませている。
・リサーチ費用の分離請求は「金融商品市場指令(MiFID)II」の一部で、市場の透明性を高め、投資家により良い価格を提供するのが狙い。ただ、実施には複雑な要素が絡むため、既に施行が1年延期された経緯がある。
・ロイターが取材した中で、少なくとも11の銀行は投資リサーチおよびアナリストとの面談に料金を課す方針を示した。複数の筋によると、債券のリサーチ料は低めに設定される見通しで、マクロ経済を中心とする一部リサーチについては、ポータルサイトで無料で見られるようにすると話す関係筋もいた。
・ロンドンにあるグローバル銀行筋は「当行は現在、お客様と話し合いを進めている」とした上で、「ほかの銀行もみな、料金設定をまだ決めていないと聞く。3月まで決まらないだろうと言う人もいた」と話した。 銀行業界で働くアナリスト数千人の雇用にも懸念が生じている。業界は世界金融危機とその後の規制強化で既に絞り上げられており、コアリションのデータによると、上位12行のアナリスト数は2012年から10%減って16年には5981人となった。
・新規則の施行を控え、株式アナリストが独立系の調査会社や投資銀行に転職したり、新たな職種を検討する事例も数多く伝えられている。 独立系投資調査会社BCAの推計によると、投資リサーチには世界で年間160億ドルが費やされているが、今後数年で減少する見通しだ。
・みずほ(ロンドン)の金利ストラテジー統括、ピーター・チャットウェル氏は今、毎週少なくとも1、2日はMiFID IIへの対応に時間を費やしていると話す。 チャットウェル氏は「リサーチ契約の料金決定や、新しいリサーチ・ポータルの作成、新規のお客様に素早くサービス提供する方法の検討などに、多大な時間を費やしている」と説明。
・新規制への対応は、1回きりの改定ではなく構造的な変化になるため、「Y2K(コンピューターの2000年問題)よりはるかに大きな出来事だ」と語った。
▽FICCリサーチは安く
・債券・為替・コモディティ(FICC)のリサーチ料は、株に比べて概して低く設定される見通しだ。 CFAインスティテュートによると、株式リサーチの平均的な料金率は10ベーシスポイント(bp)になると予想され、運用規模10億ユーロの企業だと年間100万ユーロを支払う計算になる。これに対し、FICCは平均3.5bp程度だ。
・ある欧州銀行筋は、リサーチ料の決定は「現実を直視する」瞬間になると話した。 別の銀行筋は「市場で今取り沙汰されている料金はスズメの涙ほどで、インボイスの送付料ぐらいにしかならない」と嘆いた。(Dhara Ranasinghe記者 Abhinav Ramnarayan記者)
https://jp.reuters.com/article/eu-banks-idJPKBN1DZ087?rpc=135

第一の記事で、田中正明氏が、『政策保有株について「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ」と指摘した。その上で、政策株の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないかと問題提起』、というのはよくぞ言ったと思うほどの正論である。ただ、出身母体のMUFGの17年3月末の政策保有株は2.5兆円と、みずほ、三井住友が共に1.7兆円に比べ大きく(金融庁、コーポレートガバナンス改革の進捗状況、20171018)、自論を母体で実現するには至らなかったようだ。有識者会議では、『政策株を保有する合理的な理由や事情はさまざまで、まずは企業が十分に説明することが重要だとして、金融庁内では一律の保有禁止に慎重な声が出ている』、と穏当な線に落ち着きそうだ。
第二の記事で、生保が、『「多数の営業担当者を擁し、必ずしも顧客本位ではなく、収益を優先して需要を掘り起こすプッシュ型のビジネスモデルとなっている」とも指摘』、との金融庁の見解はその通りだ。生保の場合、対面で顧客に不安を煽って契約を獲得するといった面もあるとの話もあり、ビジネスモデルの見直しは容易ではなさそうだ。
第三の記事で触れられている森長官は、安倍首相のお気に入りで、黒田日銀総裁の後継候補の1人に挙げられているが、こんな暴露本で評価が左右されるのだろうか?
第四の記事で、『銀行や証券会社にリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける欧州連合(EU)の新規則』、自体は透明性向上の観点からは望ましいが、実際に適用するとなると実務的には大変なようだ。それにしても、施行される来月からはどうなるのだろう。日本もそのうち追随するのだろうか?
タグ:『森信親長官の金融庁は金融機関をどうしたいのか?』 (その3)(MUFG元幹部 政策株禁止を提案、金融庁の次の標的は保険業界、金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身、リサーチ料設定に苦心の金融機関 EU新規制導入迫る) 新たな行政方針に浮かない顔をしている業界がある。保険業界だ 開示が十分になされていない 現代ビジネス 多数の営業担当者を擁し、必ずしも顧客本位ではなく、収益を優先して需要を掘り起こすプッシュ型のビジネスモデルとなっている」とも指摘 コーポレートガバナンス改革の進捗状況 投資リサーチには世界で年間160億ドルが費やされているが、今後数年で減少する見通し 順風満帆なプリンスみたいな人を嫌っている 金融庁参与の田中正明 三菱UFJフィナンシャル・グループの元副社長 「MUFG元幹部、政策株禁止を提案「経営者の地位安定に資する」」 アナリスト数千人の雇用にも懸念 収入保険料の量的拡大を前提とした現在の保険会社のビジネスモデルは、全体として持続できない可能性がある 少なくとも11の銀行は投資リサーチおよびアナリストとの面談に料金を課す方針 市場の透明性を高め、投資家により良い価格を提供するのが狙い 中枢に近くないとわからない内容もけっこう的確に書かれている 森長官は(中略)人事のゴリ押しには前科のある人間だということです 保有する理由や合理性を具体的に説明するよう求めている 政策株を保有する合理的な理由や事情はさまざまで、まずは企業が十分に説明することが重要だとして、金融庁内では一律の保有禁止に慎重な声が出ている 金融商品市場指令(MiFID)II 株式アナリストが独立系の調査会社や投資銀行に転職したり、新たな職種を検討する事例も数多く伝えられている 森信親長官 政策株の保有を法令で禁止することを検討する時期に来ているのではないかと問題提起 長官がアグレッシブな部下が好きだ 政策保有株について「経営の安定というよりも、経営者の地位の安定に資するものだ」と指摘 「金融庁の次の標的は保険業界、地銀と同列扱いの憂鬱」 金融庁は行政方針で、金融機関だけでなく、政策を保有させている企業側にも問題があると指摘 金融規制・行政 ロイター コーポレートガバナンス・コード 中枢の職員でなければ知り得ない「ディテール」 10月、11月と同じ著者による「続刊」 企業統治の諸課題を議論する有識者会議 電子書籍キンドル限定 1回きりの改定ではなく構造的な変化になる 「金融庁長官を猛批判した「限定暴露本」の中身 続編もまだまだ出そうです」 銀行や証券会社にリサーチ費用と売買手数料の分離請求を義務付ける欧州連合(EU)の新規則導入 ダイヤモンド・オンライン 「アングル:リサーチ料設定に苦心の金融機関、EU新規制導入迫る」
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