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アベノミクス(その26)(「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す、「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由、アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断) [経済政策]

アベノミクスについては、10月12日に取上げた。今日は、(その26)(「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す、「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由、アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断)である。

先ずは、明治学院大学国際学部教授の熊倉正修氏が10月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・アベノミクスを担う日銀の異次元緩和が始まって4年半がたつが、「2%物価目標」は実現しないまま、さまざまな「副作用」が目立ち始めた。日銀が大量の国債などを買い取り、資金をばらまけば「インフレ期待」が生まれ、物価が上がるというシナリオに成算があったわけでもなかった。後戻りできないまま、泥沼に入り込んだのは、太平洋戦争当時の状況と同じだ――。日銀特集「砂上の楼閣」8回目は、熊倉正修・明治学院大学教授が異次元緩和の行く末を論考する。
・「アベノミクスと日銀の異次元緩和は、かつての太平洋戦争のようなものだ」 冒頭から物騒なことを言って恐縮だが、筆者はこのように考えている。アベノミクスと、その中心的な役割を担う日銀の異次元緩和は、もともと勝算も必要性もないのに、いったん始めてしまったために簡単には後戻りできなくなっている。そういう点が太平洋戦争と似ているからだ。
・事態が悪化すると為政者はますます過激な政策にのめりこんでいくが、それを永遠に続けることはできず、最終的には国民に甚大な被害が及ぶことになる。アベノミクスと異次元緩和も、そうなってしまう可能性が否定できないと考えている。その理由を論じていきたい。
▽非現実的な政策目標 高成長期の慣性で成長追求
・政府と日銀が2013年に現行の政策を始めた目的は「デフレと経済停滞からの脱却」だった。 私は当時この目的の意味がよく分からなかったし、今もって分からない。 確かに日本の経済成長率は、図1(a)のように、G7諸国の中でも、90年代以降、かつてに比べて大きく下落した。 だがその原因の一部は、労働人口が減少に転じたことに伴って、国民の労働時間全体が減ったことによるものだ。
・G7の国々に関して、実質経済成長率から国民の総労働時間の伸び率を引いた「労働生産性の上昇率」(図1(b))を比較すると、日本は今でもトップクラスだ。 その日本において、アベノミクスや異次元緩和が不可欠だとしたら、他国はもっと過激な政策が必要だということになるのではないか。
・◆図1:G7諸国の実質経済成長率の推移 (注)赤が日本、青がその他のG7諸国(米、英、独、仏、加、伊)。ドイツとイタリアのマンアワー当たり実質GDPの成長率は1990年以降のみ (出所)OECDと世界銀行のデータをもとに筆者集計
・それでも日本の政界や経済界に不満や停滞感が漂っているのは、欧米へのキャッチ・アップ過程にあった過去の高成長が忘れられないからだろう。 安倍政権は年率2%超の実質GDP成長率を目指しているが、日本の労働時間は 今後20~30年間に、年率平均で1%程度減少する可能性が高い。その中で年率2%の実質GDP成長率を維持するためには、年率3%程度の労働生産性上昇率が必要となる。  しかし図1(b)を見ると分かるように、G7の中でそのような高成長を維持している国は存在しない。 政府は「そのためにできることは何でもやる」などと言って財政支出を膨らませているが、そうしたことを続けると、すでに破綻状態にある財政が崩壊したときの被害がいっそう大きくなってしまう。
▽「デフレ」は起きていない 物価下落はCPI統計の要因
・デフレに関する政府と日銀の認識も誤謬に満ちている。 日本のCPIの上昇率は確かに1990年代半ばから低迷しているが、「物価水準の持続的下落」という本来の意味のデフレはなかったといってよい。 1990年代末から2010年代初頭にかけてCPIが下落傾向にあったのは、IT機器の品質改善を考慮して統計上の物価を大幅に下方修正することが頻繁に行われていたからである。
・それを考慮すると、日本の物価は驚くほど安定しており、ここ数年はむしろ上昇傾向にある。(図2) ◆図2:日本のCPIの推移(2010年=100)(注)いずれも季節変動と消費税率改訂の影響を調整している (出所)総務省統計局のデータをもとに筆者集計
・黒田東彦日銀総裁は「CPI上昇率が年率2%未満なら実質的にはデフレ」と主張するだろうが、国民は本当にそうした物価上昇を望んでいるだろうか。 百歩譲ってそれが望ましいとしても、それを阻んでいるのは当の日本政府である。
▽政府の規制価格がむしろ物価や賃金を抑えている
・日本のCPIが1990年代初頭まで上昇基調にあったのは、相対的に生産性上昇率の高い製造業の賃上げが他産業に波及する効果が機能していたからだ。 しかしその後に製造業の雇用縮小が本格化すると、そうした効果が働かなくなった。
・今の日本で、唯一強力な雇用吸収力を有しているのは、介護や医療等の高齢者向け社会福祉業である。 しかし社会福祉は、典型的な規制産業であり、サービスの価格も従業員の賃金も厳しく統制されている。 政府が高齢者福祉にとめどなく税金を投入して価格を抑え込むことを止め、従業員の賃金も自由化すれば、人員の奪い合いが生じて、他の産業にも賃上げと物価押し上げ効果が波及するはずだ。
・それをせずに異次元緩和だけで物価を引き上げようとするのは、アクセルとブレーキを同時に踏むのと同じ愚行と言ってよい。
▽問題は日銀の債務超過でなく財政の持続性に責任持たない政府
・このまま異次元緩和が続けばどうなるか。 最近、欧米諸国が量的緩和の手じまいに向かう中で、学者やアナリストの間で、「異次元緩和からの出口段階で日銀のバランスシートが棄損する」とか「政府と日銀が事前に負担の分担を決めておくべき」といった議論が行われている。
・確かに、「出口」の利上げ局面になれば、日銀の収益悪化、さらには「債務超過」といったことも考えられる。一方で政府と日銀が一体の「統合政府」と考えれば、債務超過は大きな問題ではないし、最終的には政府が公的資金を日銀に投入すればいいという反論もあり得る。
・だが、この種の議論は本質的なものでない。 中央銀行は究極的には政府の子会社にすぎないのだが、政府が財政の持続性に責任感を持っていない場合、中央銀行がどのように金融政策を運営しても最終的な結果は同じになる。
・したがって財政破綻状態にある日本の異次元緩和と欧米諸国の量的緩和は、もともと似て非なるものなのだ。 このことを理解するために、ここで図3を見てみよう。 これは異次元緩和によって政府と日銀のバランスシートがどのように変化するかを示したものだ。 ◆図3:異次元緩和と統合政府のバランスシート 上段の(a)は異次元緩和前の正常な状態である。 日本政府は圧倒的な債務超過であり、国債を発行してその大半をファイナンスしている。日銀は現金(とわずかな法定準備金、ここでは省略)に見合う分の国債を保有している。政府・日銀間の債権債務を相殺すると、右端の統合政府(広義の政府部門)のバランスシートになる。
・一方、下段の(b)は日銀がすべての国債を購入して超過準備が膨れ上がった状態を表している。  右上と右下の統合政府の債務残高は同一であり、異なるのは債務の内訳だけである。 ここで注意したいのは、国債の多くが固定金利の長期債務であるのに対し、日銀の超過準備は随時引き出し可能な超短期債務であり、量をコントロールするためには利率を変化させざるをえない変動金利負債であることだ。
・このことから分かるように、異次元緩和は、借り手である政府にとって望ましいはずの長期・固定金利負債を不安定な短期・変動金利負債に置き換えているだけで、財政管理の観点からするとむしろ有害である。 ただし、(a)と(b)の違いは究極的には必ずしも重要なものでない。 正常な金融政策が行われている(a)の状態において政府が国債の借り換えに行き詰まった場合、デフォルト(債務不履行)を宣言することはせずに日銀に支援を求めるだろう。
・日銀が国債買い入れを拒否した場合は、日銀法を改正してそれを強制すればよいだけのことだ。 すなわち、日銀が事前に異次元緩和を行っていなくても、財政に対する信頼が失われた時点で統合政府のバランスシートは(b)のそれに移行するわけだ。 ただ今日のように、日銀が自発的に国債を買い入れたのちに財政破綻や金融危機が表面化した場合、政府がそれを日銀の不手際だと主張することは必定だろう。 その意味で、特に日銀にとって異次元緩和がきわめてまずい政策であることは事実である。
▽資本逃避や超インフレ止められず太平洋戦争当時と同じに
・なお、(b)では日銀のバランスシートに負債と同額の国債が資産として計上されているが、統合政府のバランスシートを見ると、それが政府の債務を日銀の債務に置き換える役割しか果たしていないことが分かる。 このことは、日銀の負債が資産の裏付けを持たない純粋な借金であること、すなわち、日銀が発行する円という通貨が無価値であることを意味している。
・いま、(b)の状況において、国民がそのことに気づいたと しよう。 円が無価値になった以上、早くそれを外貨や実物資産に取り換えた者の勝ちである。したがって、現金や預金を外貨や実物資産に替える動きが広がるだろう。 そうして国民が民間銀行の預金を引き下ろしに来れば、民間銀行は日銀の準備預金を引き下ろしてそれに応じざるをえない。
・ハイパーインフレや海外への資本逃避を恐れる日銀は準備預金の引き出しを制限するかもしれないが、そのためには国民が民間銀行預金を引き出すことも制限する必要がある。それでも物価が上昇しない保証はないので、政府が価格や賃金を直接的に統制することも必要になるだろう。 実はこうした事態は以前に起きていた。まさに先の大戦時に起きたことなのである。
・日中戦争開始以降、戦争債券の乱発や公債の日銀引き受けによって通貨量が急増していったのに対し、物価の上昇は相対的に緩慢だった。 これは軍需に押されて生活物資が不足する中、政府が物価と賃金の統制を強めていったためであり、ヤミ価格は上昇していた。
・しかしいくら統制を続けて表面を取り繕っても、財政の持続性喪失と過剰流動性という本質的な問題は解決しない。 図4で、正常な状態が回復した1950年代半ばと日中戦争開始時を比較すると、生産量はほぼ横ばいで、通貨量と物価だけが300倍近く上昇している。いうまでもなく、その間で政府と日銀を信じて財産を国債や現金の形で保有していた人々はそのほとんどを失った。 図4:太平洋戦争前後の日本の通貨流通高と物価 (注)鉱工業生産指数は1937年の値が100、通貨流通高と卸売物価指数は1937年の値が1になるように調整した  (出所)日本経済研究所編(1958)『日本経済統計集-明治・大正・昭和』等をもとに筆者集計
▽財政破綻の実態を隠す 財政健全化指標は「大本営発表」と同じ
・安倍首相は「今日の状況は太平洋戦争時とまったく異なり、財政の持続性は維持されている」と言うだろうが、それを信じる人は相当おめでたいと言わざるをえない。 最近、政府は安倍政権発足時に自ら設定した「2020年までのプライマリー・バランスの黒字化」の代わりに「政府債務のGDP比」を財政健全化計画の指標として重視しつつある。 だがこれは事実上、自分の任期中は財政再建を放棄すると宣言するのに等しい行為である。
・プライマリー・バランスの影響を別とすると、「政府債務のGDP比」が上昇するか下落するかは、既発債の平均利率と名目GDP成長率のどちらが高いかに依存しており、後者の方が高ければ下落する。 正常な状況では経済成長率が高まれば金利も上昇するため、両者は本来、連動しているが、今の日本では日銀が長期金利を0%に固定してしまっている。 したがって実質GDPが増えるか、インフレが進むかすれば、「政府債務のGDP比」は下落して財政健全化が進んだように見える。そして恐ろしいことに、既存の債務残高が大きいほどその効果が大きくなる。
・昨年 GDPの集計方法が変更され、統計上のGDPが5%以上増えている。 2019年の消費税率引き上げによって物価が上がれば、その分も「政府債務のGDP比」の引き下げに寄与する。 こうした統計上の詭弁を弄して「財政は盤石」と主張するのではかつての「大本営発表」と同じである。
▽「最後通牒」は海外から 日本国債や円預金は見放される
・今後どのような形で現行の政策の矛盾が露呈するかは分からないが、国内に「王様は裸だ」と叫ぶ気概を持つ人が少ないことを考えると、先の戦争の時と同様に、「最後通牒」は海外からやってくる可能性が高い。 日本国債の格付けはすでに先進国にあるまじき水準にまで下落しているが、あと一、二段階引き下げられると、まともな海外投資家は日本国債や円預金を保有しなくなるだろう。
・日本の民間企業が日本国債以上の格付けで社債を発行することは不可能だから、その後、事業会社や金融機関の外貨調達が困難になり、貿易や国際投資にも甚大な影響が及ぶ可能性が高い。 そうした事態が発生した場合、政府と日銀は経済の混乱を「海外投機家」のせいにして自らの責任を回避しようとするだろう。
・太平洋戦争を惹き起こした人々も「あれは自衛戦争だった」「日本は戦争に巻き込まれた」などといって戦後すぐに政界や官界に復帰し、現在はその子孫が戦前の社会体制の復活に執念を燃やしている。 突然の衆議院解散によって政局が流動化しているが、ここまで財政状況が悪化してしまうと、まともな政治家や政党が責任ある政策を掲げて選挙に勝利することは不可能である。
・太平洋戦争末期にも大本営発表が嘘っぱちであることに薄々気づいていた人は多かったと思われるが、軍と政府がズルズルと既定路線を続けるのを許したことにより、二度の原爆投下を含む甚大な被害を発生させてしまった。 今回も同じ顛末になりそうだが、そのことは私たち日本人が歴史から学び合理的に行動することができない国民であることを意味しているのではないか。
http://diamond.jp/articles/-/146165

次に、慶應義塾大学経済学部教授の金子 勝氏が11月13日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界的な株高が続く中で、日本でも10月24日には、東証平均株価が1960年12月以来、57年ぶりの「16連騰」。11月7日は2万2800円台を回復し、約25年ぶりにバブル崩壊後の戻り高値を更新した。メディアは騒ぎ立て、景気拡大や雇用状況の良さも一段と強調されている。だが、なぜ多くの人々は豊かさの実感がないのだろうか。
▽日銀の緩和マネー、海外に流出 世界の「株価バブル」支える
・急激な株価上昇は、いまや実体経済とは乖離している。バブルである。だがかつてのバブルとは様相が違っている。貸し出しが伸びず、銀行経営が苦しくなっているのはその象徴だ。 日銀の「異次元の金融緩和」が続き、マイナス金利に踏み込んだことによる超低金利のために貸付金利息収入が減少し、大手銀行は3年連続の減益を記録した。三菱UFJ銀行が店舗の最大2割程度の削減を検討し、みずほ銀行も今後10年で1万9000人分の業務量を削減する。多くの地方銀行も経営が苦しくなり、しだいに合併に追い込まれている。
・本来、日銀が異例の超金融緩和を続けているのは、銀行に国内融資を増加させたいためである。だが、国内の設備投資が盛り上がらない中で、銀行の融資先は、都市部などの不動産、住宅ローンなどに傾斜するしかなく、不動産はバブル気味だ。
・一方で、米国の中央銀行FRBが利上げや資産縮小に向かっているために日米金利差が拡大し、資金が海外に流れてしまうのだ。 この3ヵ月、米国の10年債利回り(長期金利)は上昇して2.3%を超えた。それに対して、日本の10年債利回りも上昇傾向にあるが、0.5~0.7%で頭打ちになっている。儲かる国内投資先がなく困っている日本の金融機関が海外の債券や株式に投資するのは当然の成り行きだ。
・ついに日本の金融資産の海外流出が1000兆円を超えた。日銀の金融緩和がもたらすマネーが米国など世界の「株価バブル」を支えているのである。
▽日本の株高の主役は外人投資家と日銀
・日本の株価連騰もその一環だ。 米国の株価上昇は、10年前のリーマンショック前の時よりも急激だ。 日本の異常な金融緩和で米国に資金が流れ、米国の株高でもうけた外国人投資家が、今度は日銀の株買い支えを予想してまた日本株を買うという循環だ。
・日銀が買っているETF(指数連動型上場株式投信)はすでに16兆円を上回り、社債などと合わせると20兆円を上回る。必ず日銀が株価を支えてくれるという心理が働くので、外国人投資家が主導して日本の株価も上昇していくことになる。
・だが売買金額ベースで取引を見ると、外国人投資家が7割を占め、個人取引は2割前後にすぎない。 株式の保有主体としてみても、外国人は3割を占める。外国人の保有比率が3分の1を超えた企業を「外資系企業」と呼ぶが、名だたる大企業が実は「外資系企業」になっている。 その一方で、日銀と年金基金が筆頭株主になっている「国有企業?」化する大企業も出てきている。
・たしかに、この株高で「おこぼれ」にあずかった富裕層も一部にはいるだろうが、多くの人々は豊かになったという実感を持てないでいる理由だ。 株高で年金の運用益が増えており、一般国民も利益を享受しているではないかという声もある。だが、これで本当に老後が安心できるだろうか。否である。
・日銀の株保有はETFを含めて17兆円を超えたが、国債と違って株は償還がないから、日銀が将来、異次元緩和からの「出口戦略」で資産圧縮を始める時は株を売却しなければならない。だが、日銀当局から出口戦略の発言があるだけで株価は急落してしまうので、日銀は株を買い続けなければならない。
・年金基金も年金給付を賄うために株式を売却して利益を出そうとしても、多額の株を一気に売ることはできない。 むしろ日銀や年金基金は、株価を下げないために株購入を続けなければならない。まるでネズミ講のようだ。
・外国人投資家は、米国FRBが利上げと資産縮小に向かう中で、こうした日銀の異次元緩和が継続されると見込んで、また株価上昇が一段と進んだのだ。 しかし、無理なバブル相場は脆い。外国人投資家が売買の7割を占める株式市場はショックに弱い。 外国人投資家はバブルが弾けると見るや、一気に売り抜く。日銀単独で株価下落を食い止めようとすれば、「空売り」を浴びて、余計、食い物にされかねない。
・株価バブルが崩壊しても、すでにジャブジャブの金融緩和を実施しているので、新たな金融緩和策をとっても、麻薬中毒患者に麻薬を打つようなもので効果が薄くなってしまう。 日本経済は泥沼に沈んでいく危険性が高まっている。
▽アベノミクスの「成果」とは? 企業の内部留保は増えたが国民には恩恵なし
・株価の上昇は、アベノミクスの「成果」とされている。だが国民には「恩恵」はいきわたっていない。 2013年4月に、黒田東彦日銀総裁が、2年で2%の消費者物価上昇の目標を掲げて「異次元の金融緩和」を打ち出した。しかし、目標達成時期は6度も延期され、デフレ脱却は明らかに失敗している。実質的に、日銀の金融緩和政策はただの赤字財政のファイナンスになっている。
・財政赤字(国の借金)は2013年3月末に991兆円だったが、2017年3月末には1071兆円に膨らんだ。4年間で国の借金が約80兆円増加したわけだが、その一方で、企業の内部留保(利益剰余金)は2013年3月末の324兆円から2017年3月末には406兆円に増加し、同じ4年間で約82兆円増えた。
・内部留保の増加分は、財政赤字を増分とほぼ見合っている。つまり 政府が借金をしてさまざまな支出で(需要)を作りだしたり、減税をしたりしたその分は、結果的に、企業が内部留保としてため込み、赤字財政の「恩恵」が国民に行き渡っていないことを象徴している。
・アベノミクスの下で、法人税率は30%→25.5%→23.4%と引き下げられてきたが、その減税分が、社会保障の充実にあてられるはずの消費税率引き上げの増収分ほとんどを食ってしまう一方で、企業減税をしても内部留保が貯まるだけである。それでいて、総選挙直後に、榊原定征経団連会長は「痛みを伴う改革を」と社会保障の削減を求める。 経済界が求める通り年金や医療や介護など社会保障を削っていけば、人は将来不安からますます消費を増やせないだろう。
▽労働分配率下がり消費停滞 求人倍率急上昇は少子高齢化の影響
・本来、デフレ脱却で大胆な金融緩和を求める「リフレ派」の主張する通りであれば、企業収益が増えたり、株価が上がったりすれば、大手企業の投資や富裕層の消費増が、中小企業や普通の人の所得増につながる「トリクルダウン」が起きて、消費が増えて物価も上昇していくはずである。
・ところが、内部留保が貯まる一方で、労働分配率は低下を続けている。 そのためアベノミクスが始まって以降、実質賃金は基本的にマイナス基調が続いている。2017年に入っても、2月、5月、6月が対前年比でみてゼロ%、1~8月まで5ヵ月マイナスになっている。家計消費(2人以上世帯)も、2014年以降、マイナス基調が続き、2017年に入ってようやくプラスになる月が増えてきた程度である。
・そこで、政府はデフレ脱却の失敗を「道半ば」と言い続ける一方で、2017年9月期の有効求人倍率が1.52倍で3期連続、バブル期を超えたことを、アベノミクスの「成果」だと強調するようになってきた。 だが、有効求人倍率は分子が求人数、分母が求職者数であるが、分子の求人数が伸びているのは、非正規雇用やパートが中心であることに変わりはない。問題は、分母の求職者数が一貫して減少していることにある。
・生産人口年齢(15~64歳)は、1995年の約8700万人をピークに減少に転じ、2017年には約7600万人になった。約20年間で1000万人も減ったが、最近は団塊の世代が次々と65歳を超えたため減少幅が拡大している。 実際、2012年の8017万人から約4年間で388万人も減り、年平均97万人もの減少を記録している。 むしろ、有効求人倍率の急上昇は少子高齢化の深刻さを示しているのであって、アベノミクスの成果ではないのである。
▽企業自体が売買の対象になる資本主義 株価至上主義の経営加速
・では、なぜトリクルダウンが起きないのだろうか。その背景には、1990年代以降、席巻したグローバリズムによって、金融主導の「金融資本主義」とでも呼ぶべきものに資本主義が変質したことが上げられる。「金融資本主義」の特徴の一つは、景気循環をバブルとその崩壊を繰り返す「バブル循環」にしたこと、いま一つは、企業自体が売買の対象となったことである。
・とくに、1990年代末に導入された「国際会計基準」によって、企業の売買価値を表わすようなルールに改められたことが大きい。多額のフリーキャッシュフローを持つことが重視され、企業が保有する株式や不動産などの資産を市場価格で評価する時価会計主義が導入されるようになった。そして、企業が買収する側に回るには、自社の株式時価総額を高めることが求められる。そのためには、内部留保をため込む、配当金を出す、自社株買いによって一株当たりの利益率を上げることが優先される。
・「選択と集中」と称して不採算分門は切り売りされ、自社に足りない部門は自ら育てるのではなく内部留保をもとに買収するという短期利益優先の米国型経営が普及してきた。 こうした「ルール」の下では、雇用を非正規化させ、賃金支払総額を抑制し、労働分配率を低下させることが、企業経営にとっては「合理的」になる。だが、それは社会保障の不安定化とともに家計消費を冷え込ませ、雇用流動化に伴う若者の非正規労働者化は、結婚も出産もできない状態を作り出して、少子高齢化を加速させてしまうのである。
・それが、ブーメランのように国内市場の縮小をもたらす。企業は国内に投資をせず、ますます海外に投資をするようになっていくからだ。 しかも日本企業の場合、企業買収や合併戦略が必ずしもうまくいっているわけではない。東芝のウエスティングハウス買収、日本郵政のオーストラリア物流会社買収、武田薬品の製薬ベンチャー買収など、多額の損失を生む外国企業のM&Aも目立ち始めた。
▽短期利益の追求で競争力低下 「麻酔薬」ではじり貧に
・それどころか、企業合併の度に、短期の利益には貢献しない中央研究所などが閉鎖され、自社開発力が低下する。製薬業が典型だ。 こうした中で、日本企業の技術競争力の低下が止まっていない。  スーパーコンピューターのスカラー型への転換、ソフトやコンテンツを作る能力でも遅れたため、IT・電機産業の競争力が衰退した。さらに、原発推進政策に乗っかった東芝の経営危機に示されるように、重電機産業も同じく競争力を衰退させている。いまや自動車も電気自動車への転換に遅れ始めている。政府も企業も、世界で進む技術を見極め、大胆な産業戦略を立てることができない。
・大規模金融緩和という麻酔薬をいくら打ち、株価を上げたり円安にしたりしたところで、筋肉や臓器が弱っては体力を次々と低下させていくだけなのだ。
http://diamond.jp/articles/-/149099

第三に、12月13日付けダイヤモンド・オンライン「アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「教育無償化」の「2兆円の政策パッケージ」がまとまった。「デフレ脱却」から始まり、「経済最優先」を掲げて、まるで“日替わりメニュー”のように政策が打ち出される。最近では、市場重視の「小さな政府」路線は影をひそめ、政府介入色の強い「大きな政府」路線を歩み始めているように見える。「迷走」するアベノミクスの舞台裏で何が起きているのか。浮かび上がるのは、一人の「首相側近」の存在だ。(ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
▽頭越しに企業拠出金決める「官邸主導」に自民党反発
・12月8日、安倍首相が「人づくり革命」の目玉として掲げた「教育無償化」の政策パッケージが公表された。だがその柱となった「3~5歳児の保育・幼稚園料無償化」などの適用対象範囲や支給額は詰め切れず、結局、制度設計は来年夏以降に先送りされた。 背景には、無償化論議が終始、「官邸主導」で進められてきたことへの反発がある。
・自民党内からは、「無償化は認可外保育所にも認めるべき」「高等教育無償化は低所得世帯に限定しないと、金持ち優遇になる」などの異論が相次いだ。 そもそも、安倍晋三首相が「消費税の使途変更」による「教育無償化」を突然打ち出したのは、解散・総選挙を直前にした9月25日の記者会見だった。
・その後、選挙公約策定においても党との調整は行わず、無償化の対象範囲も明示しないまま。選挙大勝後は、政策パッケージ作りにおいて、都議選惨敗で鳴りを潜めていた官邸主導が一気に復活した。  それを象徴するのが、安倍首相が10月末、財源として企業から3000億円の拠出を経団連会長に要請したことだった。
・「党内で全く議論していない。官邸で何でもかんでも決めてしまうのはいかがなものか」と、党内で無償化問題を議論してきた「人生100年時代戦略本部」の小泉進次郎事務局長が苦言を呈したように、自民党内の苛立ちはピークに達した。
▽剛腕首相秘書官が司令塔 消費増税の使途変更も舞台回し
・一連の政府側の動きの「司令塔」の役割を担ったのが、今井尚哉・首相政務秘書官。「首相の最側近」として、これまでも原発再稼働や消費増税先送りなど、重要政策が打ち出される局面を仕切ってきた剛腕秘書官だ。
・財務省幹部はこう語る。「2兆円という規模も今井氏のイニシアティブで決まった話。選挙でアピールするには、わかりやすい丸い数字がよかったからだ。消費税増収分(1.7兆円)で足りない財源をどうするか。アイデアを出せといわれる中で、もともと企業が、企業設置保育所整備の名目で拠出金を出していたから、私立保育所のほうも出してもらおうと。最終的には、今井氏が首相に『この案で』と言って決まった」。
・その後、今井氏の指示を受けた同じ経産省出身の新原浩朗・内閣府政策統括官が、水面下で経団連に折衝。「首相要請の舞台」を整えたという。 「本来なら、うちが経産省と一緒に経団連に根回しをする話だけど、それをやらずに済んだ。楽をしたといえばそうだが、この政権では今井氏の存在がそれだけ大きいということ」。この幹部は自嘲気味に話す。
・もともと、消費増税の使途を変更する話も、選挙前から今井氏が、教育無償化を政権の次の目玉政策として考え、一部の財務官僚と話を進めていたものだという。 「首相表明の前に、内々に首相から(麻生太郎)大臣に話があって、そこから動き出したことにはなっているが、実はもっと前からの話だった」(財務省幹部)
・当初、「教育無償化」は、改憲を目指す首相が、維新や公明党を「改憲勢力」として取り込むという政治的な思惑が先行していた。だが、財源のめどがあったわけではなかった。一方で、財務省内では、消費増税が二度先送りされて、財政再建が遠のくばかりの状況に焦りが広がっていた。
・「消費増税の使途変更で、財政再建にあてる分が少なくなることには省内でも異論があった。だが、増税を先送りしてきた総理が増税にコミットするのだから、受け入れるほうが得策と考えた」(同)  つまり、今井氏が、首相の思いや「安倍色」を出すための目玉政策を考える中で、財務省を取り込んでの舞台回しが水面下で続けられていたというのが真相だ。
▽“賃上げ実現”狙った税制改正を経産省に「指示」
・今井氏の存在は、来年度の税制改正が大詰めを迎えている「自民党税制調査会」の議論でも影を落とす。 来春闘での「3%賃上げ」を実現させるとして、賃上げに熱心な企業には減税し、一方で賃上げしない企業には「ぺナルティ」として研究開発費控除などの租税特別措置を見直す。 こうした異例の税制改正(「所得拡大促進税制の拡充」)が検討されているのも、官邸からの「指示」が発端だった。
・「何かいい“弾”を出せないか」「ここはもっとブラッシュアップして、強力なものに」 各省庁が来年度の政策や予算要求内容を議論し始める6月ごろから、今井氏と経産省との間で、こんなやりとりが続いたという。
・「デフレ脱却」を掲げて異次元緩和を進めても消費は伸びず、物価目標の実現時期が何度も先送りされる中で、安倍政権はこの数年、経済界に賃上げ要請を続けてきた。だが「官製春闘」の効果が上がらない中で、官邸からの“圧力”は、例年になく強かったという。「アイデアとしては省内であたためてはいたが、幹部の間でも、税で民間の賃金にそこまで介入するのはどうかと、意見が分かれていた。だが今井氏からは強力な弾を出せと言われて…」と幹部は話す。 ここでも、党の頭越しに税制改正の方向が固まったわけだ。
▽「一億総活躍社会」で存在感 アベノミクスの政策転換を演出
・今井秘書官の“腕力”を与党や霞が関に一躍、印象付けることになったのが、自民党総裁選で再選を果たした安倍首相が、2015年10月に発足させた第三次政権で打ち出した「一億総活躍社会」プランだ。 この中で掲げられた「新三本の矢」は、最初に「強い経済(GDP600兆円)」こそ唱えているものの、残りの二つは「子育て支援(希望出生率1.8)」「安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)」と、市場重視の成長戦略などを特徴にした以前のアベノミクスの「三本の矢」とはまったく肌合いの違うものだった。
・この「路線転換」を演出したのが、今井氏だった。 総裁選前に、会合の席で今井氏に話しかけられたという財務省幹部はこう話す。「総裁選の弾として、これまでと違うものを打ち出したいのだが、一緒に考えてほしいと言われた。すでにいくつかの案を今井氏自身が持っていた」。 また別の幹部も同じ頃、今井氏から声をかけられた。 「介護職員の待遇改善をやりたい。金(予算)は出せるよね」。政府部内ではほとんど議論がされていなかった話だが、半ば決めたかのように念を押されたという。
・素案作りを指示された経産省が当初、あげた案には、「一億総活躍」の文言や「600兆円」「出生率1.8」の数字はなかったという。これも今井氏が首相の意向を踏まえて盛り込み、数字の根拠になるデータ集めを指示したといわれる。
・円安などで企業業績は良かったが、格差が拡大し、大企業や富裕層重視の「トリクルダウン政策」への批判が強まっていた中で、従来、野党が主張してきた「底上げ政策」や社会保障に力を入れて党内外のアベノミクスへの批判を封じ、政権への求心力維持を図りたいとの狙いが透けて見えた。
▽首相と「一心一体」 信頼を背景に差配
・今井秘書官が力を持つ背景は何なのか。 今井氏は、第一次安倍政権で事務の首相秘書官として仕えた後、安倍首相に求められて、第二次政権で政務の秘書官となった。 もともと事務秘書官は、財務、外務、経産、総務といった中枢官庁が出し、従来は財務省出身者がなることが多かった筆頭年次の秘書官を中心に、担当分野の省庁との政策作りなどの調整をしてきた。 政務秘書官は、時の首相が事務所のベテラン秘書や金庫番などを官邸に連れてくる例が多かったが、橋本政権以降からは、首相に近い特定の官僚が登用されるようになった。今井氏もそうした一人だ。
・首相と一心一体で、国会日程や政治日程なども考え、政権全体を見る立場であらゆることを差配し、政策作りでも事務秘書官とは違う突出した力を持つ。役所の担当者に直接、指示が来ることもしばしばだ。 ある経済官庁の幹部はこう話す。「この件はだめ、これはもっとこうしろと、かなり強く言ってくる。振り回されている感じはなくもないが、総理の信頼は絶大だと聞くし、総理がのってくれれば、政策もやりやすさが全然違う。結局、どこの省庁も今井氏の言うことを聞くしかない」。
▽ころころ変わる目玉政策 「実態は財政ばらまき政策」
・それゆえに、機動的に政策を転換したり、打ち出したりできるということかもしれない。 だが、その場その場での政権の利害が優先され、政策の目的や中身が十分に吟味されないまま生煮えで打ち上げられたり、人気取り政策に陥ったりするリスクと紙一重の危うさだ。 前述したように、「教育無償化」も政策効果を考えればどういうやり方がいいのか、吟味はないまま打ち上げられた観は否めない。財源論も誰がどういう形で負担をするのか、しっかりとした“理屈”が必要だったのに、「消費増税の使途変更」という安易な手に飛びついた。
・そもそも「教育無償化」は、教育機会の拡充や個人の能力を生かすことが狙いなのか、それとも成長戦略として位置付けられたものなのかも、はっきりしなかった。 こうした政策の狙いや、政策運営の「ストーリー」の分かりにくさや混乱は、アベノミクス全般の特徴だ。 「新三本の矢」のうちの「強い経済」と、「子育て支援」「介護離職ゼロ」とはどういう関係にあるのか。
・さらには、内閣改造ごとに担当大臣が“乱造”されてきた観のある「規制改革」や「地方創生」「女性活躍」「働き方改革」「人づくり革命」など、「目玉政策」がころころ変わる中で、それぞれの関係も見えにくいままだ。
・「それも、経済重視でスローガンを打ち出して“やっている感”を出せばいいということでやっているに過ぎない。実態は、アベノミクスの賞味期限が切れているのに、誰も反対しない政策を羅列した“スローガン政治”で、財政のばらまきをやり始めている。このままでは財政も金融も、事態はどんどん悪くなるばかりだ」「アベノミクスの総括」の勉強会を自民党内に立ち上げた村上誠一郎・元行革担当相(自民党税制調査会副会長)はこう話す。
▽「側近頼み」の首相 パッチワーク政策では限界に
・もとはといえば、「官邸主導」によるトップダウンの政策決定は、各省庁に任せた「積み上げ型」では、縦割りや既得権益が壁になって大胆な政策が出せないということで小泉政権時代から本格化し、「経済財政諮問会議」などが政策決定の舞台として活用された。 確かにこうした運営によって、経営者や学者らの民間委員を含めた“平場”の議論が行われることで、社会全体で問題の所在が共有され、政策に対する認知度、国民の理解も深まった。
・だが、安倍政権では諮問会議は形骸化し、限られた「側近主導」に変質してしまったのだ。 とはいえ、首相を優秀な側近が支えるといっても限界は明らかだ。 「経産官僚は、花火のように政策を次から次へと打ち上げるのは得意かもしれないが、財源や他の政策との整合性など、総合的に考えるという点では限界がある」(村上・元行革相)
・アベノミクスの政策に総花的で底の浅さを感じるのも、そういうことが背景にあるのかもしれない。 「かつてのような成長は難しくなり、多くの先進国が新たな価値観をもとにどうやって豊かに年老いていくか、成熟した社会のありようを模索している。だがいまだ安倍政権は、目先のGDPだけを見て、あらゆる政策を“景気対策”としてしか位置付けていない。本来、考えるべきことは、日本をどういう国にしたいのか、どういう国にするのかという“骨太の将来像”だ」と北村行伸・一橋大教授は言う。
・それは、本来なら政治家の仕事のはず。 だが、安倍首相自体が秘書官から吹き込まれた“借り物”のビジョンしか語っていないし、政策に一貫性のないことすら気がついていない様子だ。 側近官僚の発想と視野で帳尻を合わせる「パッチワーク」の政策の限界が、見え始めている。
http://diamond.jp/articles/-/152591

第一の記事で、 『「アベノミクスと日銀の異次元緩和は、かつての太平洋戦争のようなものだ」・・・アベノミクスと、その中心的な役割を担う日銀の異次元緩和は、もともと勝算も必要性もないのに、いったん始めてしまったために簡単には後戻りできなくなっている。そういう点が太平洋戦争と似ているからだ』、なるほどである。 『異次元緩和は、借り手である政府にとって望ましいはずの長期・固定金利負債を不安定な短期・変動金利負債に置き換えているだけで、財政管理の観点からするとむしろ有害である』、『ハイパーインフレや海外への資本逃避を恐れる日銀は準備預金の引き出しを制限するかもしれないが、そのためには国民が民間銀行預金を引き出すことも制限する必要がある。それでも物価が上昇しない保証はないので、政府が価格や賃金を直接的に統制することも必要になるだろう』、国民の預金引き出しまで制限されるとなれば、日本経済は大混乱に陥るだろう。
第二の記事で、『日銀や年金基金は、株価を下げないために株購入を続けなければならない。まるでネズミ講のようだ』、というのは空恐ろしいことだ。 『内部留保の増加分は、財政赤字を増分とほぼ見合っている。つまり 政府が借金をしてさまざまな支出で(需要)を作りだしたり、減税をしたりしたその分は、結果的に、企業が内部留保としてため込み、赤字財政の「恩恵」が国民に行き渡っていないことを象徴』というのは、偶然の一致とはいえ、恐ろしい符合ぶりだ。『短期利益の追求で競争力低下 「麻酔薬」ではじり貧に』、というのはその通りだ。
第三の記事で、 『その場その場での政権の利害が優先され、政策の目的や中身が十分に吟味されないまま生煮えで打ち上げられたり、人気取り政策に陥ったりするリスクと紙一重の危うさだ。 前述したように、「教育無償化」も政策効果を考えればどういうやり方がいいのか、吟味はないまま打ち上げられた観は否めない。財源論も誰がどういう形で負担をするのか、しっかりとした“理屈”が必要だったのに、「消費増税の使途変更」という安易な手に飛びついた』との指摘はその通りだ。『「経産官僚は、花火のように政策を次から次へと打ち上げるのは得意かもしれないが、財源や他の政策との整合性など、総合的に考えるという点では限界がある」(村上・元行革相)』、との指摘は的確である。
 
タグ:アベノミクス (その26)(「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す、「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由、アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断) 熊倉正修 ダイヤモンド・オンライン 「「アベノミクス」「異次元緩和」は太平洋戦争と同じ過ちを繰り返す」 日銀が大量の国債などを買い取り、資金をばらまけば「インフレ期待」が生まれ、物価が上がるというシナリオに成算があったわけでもなかった。後戻りできないまま、泥沼に入り込んだのは、太平洋戦争当時の状況と同じだ―― アベノミクスと、その中心的な役割を担う日銀の異次元緩和は、もともと勝算も必要性もないのに、いったん始めてしまったために簡単には後戻りできなくなっている。そういう点が太平洋戦争と似ているからだ 事態が悪化すると為政者はますます過激な政策にのめりこんでいくが、それを永遠に続けることはできず、最終的には国民に甚大な被害が及ぶことになる 「デフレ」は起きていない 物価下落はCPI統計の要因 政府の規制価格がむしろ物価や賃金を抑えている 問題は日銀の債務超過でなく財政の持続性に責任持たない政府 異次元緩和は、借り手である政府にとって望ましいはずの長期・固定金利負債を不安定な短期・変動金利負債に置き換えているだけで、財政管理の観点からするとむしろ有害である ハイパーインフレや海外への資本逃避を恐れる日銀は準備預金の引き出しを制限するかもしれないが、そのためには国民が民間銀行預金を引き出すことも制限する必要がある 「最後通牒」は海外から 日本国債や円預金は見放される 金子 勝 「「株価連騰」なのに誰も豊かにならない理由」 日銀の緩和マネー、海外に流出 世界の「株価バブル」支える 日本の金融資産の海外流出が1000兆円を超えた 日本の株高の主役は外人投資家と日銀 アベノミクスの「成果」とは? 企業の内部留保は増えたが国民には恩恵なし 内部留保の増加分は、財政赤字を増分とほぼ見合っている。つまり 政府が借金をしてさまざまな支出で(需要)を作りだしたり、減税をしたりしたその分は、結果的に、企業が内部留保としてため込み、赤字財政の「恩恵」が国民に行き渡っていないことを象徴 日本企業の場合、企業買収や合併戦略が必ずしもうまくいっているわけではない 短期利益の追求で競争力低下 「麻酔薬」ではじり貧に 「アベノミクス教育無償化で迷走の裏に「首相側近」の独断」 教育無償化 2兆円の政策パッケージ まるで“日替わりメニュー”のように政策が打ち出される 最近では、市場重視の「小さな政府」路線は影をひそめ、政府介入色の強い「大きな政府」路線を歩み始めているように見える 都議選惨敗で鳴りを潜めていた官邸主導が一気に復活 党内で全く議論していない。官邸で何でもかんでも決めてしまうのはいかがなものか」と、党内で無償化問題を議論してきた「人生100年時代戦略本部」の小泉進次郎事務局長が苦言を呈した 今井尚哉・首相政務秘書官 “賃上げ実現”狙った税制改正を経産省に「指示」 「一億総活躍社会」で存在感 アベノミクスの政策転換を演出 首相と「一心一体」 信頼を背景に差配 ころころ変わる目玉政策 「実態は財政ばらまき政策」 「側近頼み」の首相 パッチワーク政策では限界に
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