SSブログ

リニア入札不正・談合(その3)(”逆らう者は逮捕する”「権力ヤクザ」の特捜部、:リニア工事談合事件の摘発はやはり日本版司法取引の試金石か?、ゼネコンのリニア談合で逮捕者 地検特捜部の次の狙いは?) [産業動向]

リニア入札不正・談合については、2月22日に取上げたが、今日は、(その3)(”逆らう者は逮捕する”「権力ヤクザ」の特捜部、:リニア工事談合事件の摘発はやはり日本版司法取引の試金石か?、ゼネコンのリニア談合で逮捕者 地検特捜部の次の狙いは?)である。

先ずは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が3月2日付けの同氏のブログに掲載した「”逆らう者は逮捕する”「権力ヤクザ」の特捜部」を紹介しよう。
・東京地検特捜部は、リニア新幹線建設工事をめぐる「談合事件」で、大成建設の元常務と鹿島の担当部長を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕した。 昨年末に出したブログ記事【リニア談合、独禁法での起訴には重大な問題 ~全論点徹底解説~】で詳細に述べたように、この事件は、「独禁法違反の犯罪」で刑事責任を問うような事件ではない。
・捜査の対象となったスーパーゼネコン4社のうち、課徴金減免申請を行って「談合を認めた」とされた大林組、清水建設に対して、大成建設、鹿島が徹底抗戦の姿勢を貫いたのは当然だった。 【リニア談合捜査「特捜・関東軍の暴走」が止まらない】で述べたように、特捜部は、その徹底抗戦の2社のみを対象に、再度の捜索を行い、その際、大成建設では、法務部に対する捜索で、弁護士が捜査への対応・防禦のために作成していた書類や、弁護士のパソコンまで押収し、さらに検事が社長室に押しかけ「社長の前で嘘をつくのか」「ふざけるな」などと恫喝したとして、大成建設側が「抗議書」を提出したところ、その日の夜、同社だけに「3度目の捜索」を行うなど、抵抗する社を捜査権限で踏みつぶそうとしてきた特捜部。その暴走は止まらず、とうとう、この「特捜部に逆らう2社の担当者を逮捕する」という暴挙に出た。
・大成、鹿島も、4社間の協議や情報交換等の「外形的事実」は認めた上で「独禁法違反には当たらない」と主張しているとのことだ。そのような法的主張をしている大成、鹿島の担当者について、なぜ「罪証隠滅の恐れがある」ということになるのか。単に、「検察の主張に反対して抗戦している奴らは、検察の捜査権限を使って徹底排除する」という、身勝手極まりない検察の論理による逮捕のように思える。
・昔、赤塚不二夫氏の漫画「天才バカボン」にしばしば登場する警察官の「本官さん」が、「タイホだ!タイホだー!」とわめきながら、空に向けてピストルをぶっ放す絵が印象的だった。今、特捜部がやっていることは、そのレベルだ。
・取材してきた記者によると、特捜部は、逮捕についての副部長の記者レクを開いたが、「品川駅舎建設工事、名古屋駅舎建設工事が対象」と説明しただけで、質問には全く答えないとのことだ。 そもそも、独禁法違反の「不当な取引制限」は、「一定の取引分野における競争を実質的に制限する『相互拘束性』のある競争事業者間の合意があったこと」が必要だ。東京名古屋間のリニア工事“全体”というのであれば「一定の取引分野」と言えるだろうが、品川と名古屋の駅舎建設工事だけでは「一定の取引分野」の競争制限ではない。個別の物件の談合“的”行為に過ぎない。
・仮に「品川と名古屋の駅舎建設工事」を「一定の取引分野」ととらえるとしても、受注しているのは大林と清水だけであり、大成、鹿島は、「協力しただけ」の立場だ。この場合に、「相互に(持ちつ持たれつの)関係を持って合意を実行する」という「相互拘束の関係」があったとは考えられない。 被疑者の逮捕にまで至った以上、起訴しないことは考えにくい。しかし、この事件の公判で、検察がまともに「独禁法違反の犯罪」を立証できるとは到底思えない。
・それでも、敢えて、逮捕・起訴を行う特捜部や検察の幹部には、「無謀な起訴も、やってしまえば責任を問われることはない」という「打算」がある。起訴さえしてしまえば、公判は一審だけでも数年がかかり、最終的に結果が出るのは現在の検察幹部がすべて現場を離れてから、退職してからのことなので、現時点の特捜幹部・検察幹部にとって、責任を問われることはないという「責任回避のシステム」がある。だから、無謀極まりない特捜の起訴も、決して思いとどまろうとしないのだ。
・独禁法は、経済社会における「公正かつ自由な競争」を法目的とする法律だ。その罰則の適用は、法目的実現の手段の一つだ。しかし、特捜部にとっては、独禁法という法律も、自らの都合で捜査権限を行使するための手段の一つに過ぎないと考えているのであろう。
・大阪地検不祥事による批判を受け信頼を失墜しても、全くめげることも、反省することもなく、組織の体面維持と責任回避のために、捜査権限を私物化する「権力ヤクザ」そのものの特捜部の「独善」の実態が、今回の逮捕で改めて露わになったと言えよう。
https://nobuogohara.com/2018/03/02/%E9%80%86%E3%82%89%E3%81%86%E8%80%85%E3%81%AF%E9%80%AE%E6%8D%95%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%8C%E6%A8%A9%E5%8A%9B%E3%83%A4%E3%82%AF%E3%82%B6%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%89%B9%E6%8D%9C%E9%83%A8/

次に、弁護士の山口利昭氏が3月5日付けビジネス法務の部屋に掲載した「リニア工事談合事件の摘発はやはり日本版司法取引の試金石か?」を紹介しよう。
・すでに多くのマスコミで報じられているとおり、リニア工事談合事件において逮捕者が出る事態となりました。課徴金減免申請(自主申告)をしている2社からは逮捕者が出ていないことから、リニエンシー制度の活用の有無によって検察の対応も分かれたとの推測(あくまでも推測です)も出ています。
・ただ、3月4日の毎日新聞ニュースによりますと、リニエンシーを活用した大林組、清水建設の役職員の方々も立件の予定、とされています。つまり公取委の調査開始前にリニエンシーを活用した(様式第2号による報告書を提出した)ものではないとして、課徴金の免除まではもらえず、減額にとどまる(つまり刑事告発を見送る、というわけではない)ものと推測されますね。検察による偽計業務妨害罪容疑の捜索・差押えが先行していたから、ということでしょうか。
・さて、今回のリニア工事談合への検察の捜査手法を眺めますと、昨年12月のこちらのエントリーでも予想したように、今年6月から施行される日本版司法取引(刑事訴訟法上の協議・合議制度)を先取りしたものではないか、といった観測がますます現実味を帯びているように思えます。元検事の著名な弁護士の方も、3月4日の産経新聞ニュースの記事で解説をされています。もちろん独禁法事件については公取委の告発権限もありますので、検察独自で判断できるわけではありませんが、捜査や公判に協力的な姿勢を示す役職員には、身柄拘束に関しては慎重な対応を心掛ける・・・といった実務を定着させるための試金石になっているように思います。
・先の毎日新聞ニュースでは、談合の事実を否認して逮捕された方の後任の方が「談合はあった」と供述している、と報じています。談合を認める供述を開示した時期と逮捕の時期との前後関係は明らかではありませんが、いずれにしても身柄拘束の可能性を仄めかして捜査協力を求めた可能性はあると思いますし、今後の経済財政関係犯罪への司法取引の威力を垣間見るような出来事です。
・逮捕者が出た2社については東京都が指名停止とするそうですから(こちらのニュース参照)、リニエンシー制度の活用に関する経営判断は、企業業績に大きなものとなります。企業の取締役、監査役にとって、今後リニエンシーを活用するかどうか、司法取引に応じるかどうかの判断には、大きなリーガルリスクが伴うことになりそうですね。
http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/weblog/2018/03/post-9432.html

第三に、3月12日付けダイヤモンド・オンライン「ゼネコンのリニア談合で逮捕者、地検特捜部の次の狙いは?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今月2日、リニア中央新幹線の工事をめぐる談合事件が、とうとう大手ゼネコン幹部らの逮捕に発展。ゼネコン業界に衝撃が走った。 「まさか逮捕に踏み切るとは思わなかった。見せしめとしか思えない」と大手ゼネコン幹部は言う。
・見せしめと断じるわけは、東京地検特捜部により独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕されたのが、談合に関わったとされる4社のうち、容疑を否認する2社、すなわち大成建設と鹿島のリニア担当者だけだったからだ。
・「到底承服致しかねる。嫌疑をかけられている内容は独禁法違反に該当しない」 逮捕という事態に、そう地検との対決姿勢をあらわにした大成に限らず、ゼネコン側には談合という意識は希薄だ。談合を認めた清水建設も社内弁護士が独禁法の課徴金減免(リーニエンシー)制度の活用を勧め、不承不承ながらだったという。4社以外のゼネコン幹部は心情をこう代弁する。「例えるなら、時速100キロ制限の高速道路を105~110キロで走っていたら捕まったという感じだろう」。
・逮捕に至った以上、起訴は避けられそうもなく、そうなれば対決の場は法廷へ移る。だが、立証のハードルは低いとは言い難い。 「独禁法違反の犯罪とはいえない」と地検を批判するのは、元検事の郷原伸郎弁護士だ。 「独禁法の『不当な取引制限』は、一定の取引分野で競争の制限があった場合を処罰の対象とする。リニア工事全体ではなく、(容疑となった)2駅の工事だけでは難しい。仮に、2駅を一定の取引分野と仮定しても、大成と鹿島は、受注した大林組と清水に協力しただけの立場。互いに持ちつ持たれつで合意を実行する『相互拘束の関係』とはいえない」
・片や、元公正取引委員会首席審判官の鈴木満弁護士は、「事案の重大性に加え、『談合決別宣言』を出した大手ゼネコンが、受注調整をしていたことを考えると悪質。ゼネコンの認識が甘過ぎる」と切って捨てる。その一方で「証拠がまだ不十分のため、逮捕に踏み切ったと考えられる。失敗すれば面目丸つぶれ。地検の威信に懸けて徹底的にやるということ」と言う。
▽次は南アルプストンネル?
・実際、地検による大成と鹿島への攻勢は「これからが本番だろう」と別の業界関係者は言う。前述のように今回の逮捕容疑は「品川駅」と「名古屋駅」の二つの新駅建設工事で、受注したのは大林と清水という白旗組。だが、両社はリーニエンシー制度を使ったが、調査開始後だったため30%の減免になり、有罪になれば数十億円規模の課徴金が科せられかねない。
・「否認する2社に課徴金を科せられる事案が立件されなければ不公平」と前出の関係者。特捜部の次の狙いは、大成と鹿島が受注した南アルプストンネル工事の立件と目されている。リニア談合事件は、ゼネコンと地検いずれの汚点と刻まれるのか。
http://diamond.jp/articles/-/162955

第一の記事で、郷原氏は、 『この事件は、「独禁法違反の犯罪」で刑事責任を問うような事件ではない』、と断言している。 『大成建設では、法務部に対する捜索で、弁護士が捜査への対応・防禦のために作成していた書類や、弁護士のパソコンまで押収し、さらに検事が社長室に押しかけ「社長の前で嘘をつくのか」「ふざけるな」などと恫喝したとして、大成建設側が「抗議書」を提出したところ、その日の夜、同社だけに「3度目の捜索」を行うなど、抵抗する社を捜査権限で踏みつぶそうとしてきた特捜部』、という特捜部の横暴ぶりは目に余る。 『単に、「検察の主張に反対して抗戦している奴らは、検察の捜査権限を使って徹底排除する」という、身勝手極まりない検察の論理による逮捕のように思える』、 『特捜部や検察の幹部には、「無謀な起訴も、やってしまえば責任を問われることはない」という「打算」がある。起訴さえしてしまえば、公判は一審だけでも数年がかかり、最終的に結果が出るのは現在の検察幹部がすべて現場を離れてから、退職してからのことなので、現時点の特捜幹部・検察幹部にとって、責任を問われることはないという「責任回避のシステム」がある。だから、無謀極まりない特捜の起訴も、決して思いとどまろうとしないのだ』、という無責任さが仕組み上にあるのであれば、「冤罪」なども無くなる筈がないことになる。司法に公正さを期待できる筈もないことになる。やれやれ・・・。
第二の記事で、 『毎日新聞ニュースでは、談合の事実を否認して逮捕された方の後任の方が「談合はあった」と供述している、と報じています』、というのはどういうことなのだろう。これだけでは、よく分からない。 『リニエンシー制度の活用に関する経営判断は、企業業績に大きなものとなります。企業の取締役、監査役にとって、今後リニエンシーを活用するかどうか、司法取引に応じるかどうかの判断には、大きなリーガルリスクが伴うことになりそうですね』、というのはその通りだろう。
第三の記事の最後で、 『「否認する2社に課徴金を科せられる事案が立件されなければ不公平」と前出の関係者。特捜部の次の狙いは、大成と鹿島が受注した南アルプストンネル工事の立件と目されている。リニア談合事件は、ゼネコンと地検いずれの汚点と刻まれるのか』、今後の展開が大いに注目される。
タグ:「リニア工事談合事件の摘発はやはり日本版司法取引の試金石か?」 リニエンシー制度 ビジネス法務の部屋 、課徴金減免申請を行って「談合を認めた」とされた大林組、清水建設に対して、大成建設、鹿島が徹底抗戦の姿勢を貫いたのは当然 大成建設では、法務部に対する捜索で、弁護士が捜査への対応・防禦のために作成していた書類や、弁護士のパソコンまで押収し、さらに検事が社長室に押しかけ「社長の前で嘘をつくのか」「ふざけるな」などと恫喝したとして、大成建設側が「抗議書」を提出したところ、その日の夜、同社だけに「3度目の捜索」を行うなど、抵抗する社を捜査権限で踏みつぶそうとしてきた特捜部。その暴走は止まらず、とうとう、この「特捜部に逆らう2社の担当者を逮捕する」という暴挙に出た 山口利昭 (その3)(”逆らう者は逮捕する”「権力ヤクザ」の特捜部、:リニア工事談合事件の摘発はやはり日本版司法取引の試金石か?、ゼネコンのリニア談合で逮捕者 地検特捜部の次の狙いは?) 郷原信郎 「”逆らう者は逮捕する”「権力ヤクザ」の特捜部」 東京地検特捜部 リニア入札不正・談合 日本版司法取引 ダイヤモンド・オンライン 「ゼネコンのリニア談合で逮捕者、地検特捜部の次の狙いは?」 次は南アルプストンネル
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感