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北朝鮮問題(その17)(米朝首脳会談の可能性をめぐる3つの論点、日本の運命握る米朝首脳会談 成否を左右する「4つのリスク」) [世界情勢]

昨日に続いて、北朝鮮問題(その17)(米朝首脳会談の可能性をめぐる3つの論点、日本の運命握る米朝首脳会談 成否を左右する「4つのリスク」)を取上げよう。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が3月18日付けメールマガジンJMMに掲載した「米朝首脳会談の可能性をめぐる3つの論点」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・スキャンダルの続くトランプ政権の現状と、安倍政権の現状とどちらが「まし(?)」かというと、これは比較が難しいところです。トランプ政権の場合は、「ロシア疑惑とFBIとの抗争」「不倫もみ消し問題」「政権中枢の人事不安定」「身内の利益相反問題」「景気過熱不安」など多くの爆弾を抱えています。その点からすると安倍政権の「森友問題」の方がまだ「小さく」見えます。
・ですが、合衆国大統領というのは任期4年の間は地位が安定している一方で、安倍総理の場合は「明日をも知れぬ議院内閣制」ですから、政治的な不安定度としては「どっこいどっこい」かもしれません。支持率についても、40%を切るかどうかという点でも似通っています。
・それはともかく、トランプ政権が非常に不安定な基盤の上に立っており、非常な危機感に駆られた政権だということは重要です。特に現在の政治日程ということでは、今年、2018年11月の中間選挙で勝利できるかということが、大きな注目点になっています。理由はハッキリしています。それは、政権への信任投票とか、2020年再選への足がかりなどという「甘い」理由ではありません。
・そうではなくて、仮に議会での勢力逆転を許すと、それはそのまま弾劾につながるからです。大統領弾劾裁判というのは、下院の過半数で起訴、その後に上院の3分の2で有罪・罷免という制度ですが、上院議員に敵の多いトランプ大統領にとっては、下院での敗北はそのまま失職の危険につながるのです。その意味で、現在は再集計など揉めていますが、先週の3月13日に行われた連邦下院ペンシルベニア州18区補選における敗北(と考えて良いでしょう)は、相当に厳しい結果と言えます。
・トランプ大統領が、とりあえず「受諾」を表明した「米朝首脳会談問題」を考える3つの要素のうち、この「トランプ政権が安定していない」というのは、恐らくは1番大きな要素であると思います。何よりも、支持率回復のための実績を作らなくてはならないという「切迫した必要性」があるからです。同時にそのような「不安定ゆえの切迫感」は、思い切ったギャンブルを誘発し、また、それゆえに思い切った譲歩を迫られる可能性にもなります。
・同時にまた、米国の中長期にわたる「国のかたち」、特に「太平洋国家」として1950年以降のサンフランシスコ体制を維持しながら、冷戦とポスト冷戦の時代を「バランス・オブ・パワー」の当事者として、太平洋の平和を維持してきた「米国の国体」について、強い当事者意識を持つ部分には、仮にトランプの米朝外交が「許容できない逸脱」だと考えられる場合には、あらゆる手段を使って「国の路線変更」への抵抗がされるでしょう。
・そう考えると、とにかくこの「米朝外交」という問題は、米国の国内政治における激しい闘争の上に成立している問題であり、またその結果が、政権をめぐる闘争の勝敗を制することにもなる、そのような位置付けにあると思われます。これが論点の第1です。
・2点目は、この「米朝外交」というのには「大局観」が決定的に欠けているという問題です。例えば、トランプ大統領は選挙戦当時から「在韓米軍の撤退」を再三口にしています。最初は在日米軍も一緒にして「カネを払わないなら撤退」するが、その代わりに「核武装を認めてやる」という意味不明な言い方であり、同様の発言を繰り返していました。さすがに、その後この種の暴論はトーンダウンしましたが、それでも「在韓米軍撤退」ということは、独立した形でこの大統領の言動には見え隠れしています。
・そんな中で、今回仮に「米朝外交」が進展した場合には、北朝鮮が核開発を放棄する代わりに、米国に対して在韓米軍の撤退を要求するということが「まことしやかに」言われています。そして、トランプ大統領がそれを受諾する可能性もあるという見方があります。
・これは重大なことです。仮に在韓米軍撤退という事態となれば、これは東アジアの軍事外交のパワーバランスを大きく変えるからですが、それはそのままこの地域の「それぞれの国のかたち」に大きな影響を与えます。要するに「東アジアの21世紀をどうするか」という大局的な問題になるのです。 ですが、米国では現時点ではそのような議論は表立った動きとしてはありません。 何よりも、トランプ大統領の「お手並み拝見」という姿勢が支持・不支持を問わず大きいからですが、肝心の大統領とその周辺からも、「米朝外交」の結果として一体全体「どのような東アジア」を描くのかという問題提起は全くないのです。
・例えばですが、仮に米朝外交の結果として、北朝鮮が核を放棄し、在韓米軍が撤退したとしましょう。その際に、韓国と北朝鮮が焦らずに丁寧な交渉を行って、平和裡に統一の方向が出てきたとします。中国もそれを認め、ロシアも干渉はしないとします。最大の問題である北朝鮮における「過去の犯罪など」についても決着がつき、一国二制度のような政体を経て穏やかに政治的統一も進むとしましょう。
・その場合にも、大きな問題があります。それは南北格差の問題です。そこで東西ドイツの再統一という「前例」が出てきます。私は1990年代中期に韓国の経済官僚出身の政治家、姜慶植(カン・キョンシュク)氏が関与していたシンクタンクに出入りしていたことがあるのですが、そのシンクタンクは「統一を成功させるための国家戦略」を研究する機関でした。ちなみに、姜氏は一流の経済官僚であり政治家ですが、後に通貨危機の責任を問われて政治的な犠牲者となっています。
・その機関の人々が強く意識していたのは、「自分たちが統一する場合」には「東西ドイツの再統一」が大きな先例になるという問題でした。具体的には2つ、当時のヘルムート・コール首相(故人)が政治的な判断として実施した「東西マルクの等価交換」と「旧東ドイツ国民に対する年金積み立て不足額の全額補填」という政策です。
・90年代の韓国の人々は「自分たちの民族の誇りにかけて、統一の場合にはこの2つは実現したい」としながらも「90年の西ドイツと比較して、自分たちの国力は遥かに劣る」のであって、この2つは事実上不可能、仮に強行すれば破綻国家を吸収して韓国も連鎖倒産するという認識を持っていました。 その連鎖倒産を忌避する姿勢というのが、実は韓国の保守勢力の対立軸だと言っても過言ではないでしょう。そして、この点に関しては、現在の韓国社会は慎重論よりも、統一という「悲願」を重視する人々がイニシアティブを取っているわけです。
・仮に「慎重に」ではなく「悲願」を優先するにしても、再統一ということになれば、この「統一のコスト」の財源問題からは逃げられません。では、この「統一のコスト」の財源をどうするのかというと、それは周辺国にということになるのでしょうが、中国も日本も簡単には出せないと思います。統一韓国という国家が、東アジアにおいて「どのような国のかたち」を築いて、周辺国とどのように共存して行くのか、その形が見えなければ「補填財源」など中国も日本も出すはずがありません。
・この問題は非常に根の深い問題であり、例えばですが、在韓米軍の撤退などという話は、そこから逆算して考えなくては、そもそも議論が不可能なはずです。トランプ政権が、そうした「地域の将来像」というような「観」のレベルの議論に関心がないのであれば、反対に周辺国という当事者がそれを考えて行かなくてはなりません。その場合、日中間の議論というのが大変に重要になってくると思われます。
・3点目は、今回の米朝外交の中心テーマは「核」だという問題です。アメリカでは、少なくともトランプ政権の視点からすると「米国本土に届く核ミサイルの完成は許せない」ということになります。ですが、北朝鮮が核武装するということは、韓国、日本、中国の3カ国には強い拒絶反応があります。ですから、これまでの駆け引きの中でも米国と強調しつつ、この3カ国は強いプレッシャーをかけ続けてきたわけです。
・この問題は、仮に「米朝外交」で核放棄の合意に漕ぎ着けたとしても、それで終わるわけではありません。北朝鮮をNPT(核不拡散条約)の枠組みに戻す、その上で、IAEA(国際原子力機関)が核弾頭廃棄、核弾頭製造能力の廃棄について、厳格な査察を行わなくてはなりません。
・これに加えて、技術や部品、素材をどのように入手したのか、また反対に国際法の枠組みに違反する形で、核技術やその関連の製品を第三国に輸出したのかどうかなど、核開発をめぐる真相究明を行う必要があります。何故ならば、この事件は「深刻な核拡散未遂事件」であり、その事実の解明と、影響の除去が完全に行われる必要があるからです。場合によっては、当事者を免責してでも真相究明と原状回復を優先する必要があるかもしれません。
・そのような粘り強い外交上の実務遂行は、大統領が国務省を信用していないという、現在のアメリカ政府の体制では不可能です。国際社会、とりわけ日本と中国という近隣諸国にはそうした作業のイニシアティブを取ることが求められるのだと思います。 
・そのように考えると、日本の役目は極めて大きいように思います。そうした切迫した事態において、政権が動揺しているという状態は良くありません。アメリカから見ていると、詳しい雰囲気が今ひとつ分からないのですが、とにかく政争をやっている場合ではないように思います。
・政権側に危機感があるのであれば、より低い姿勢で世論に対して誠意を見せて、外交に徹するための政治的猶予を確保すべきです。仮にそのような判断ができず、またできないが故に、外交上も「政権末期」として見られてしまうのであれば、政権は変わるべきでしょう。政局において、攻める側も、守る側も、そのような切迫感がないのがとても気になります。

次に、元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏が3月21日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本の運命握る米朝首脳会談、成否を左右する「4つのリスク」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米朝首脳会談が5月までに開催されることが合意されている。驚くべき急展開だが、成功のためのハードルは高い。しかし失敗すれば朝鮮半島の緊張は極限に達するだろう。決裂ということになれば、そのコストは日本にとっても、とても大きい。首脳会談を成功させなければならないが、そのために認識すべき点も多い。
▽米朝の交渉文化は大きく異なる 力を背景にするのは逆効果
・私は日米経済摩擦が最も厳しい時に米国との貿易交渉を担当(1985-87年)し、また海兵隊員による沖縄の子女暴行事件で沖縄の反基地闘争が頂点に達した時には、米国との安保・基地縮小交渉を担当(1996年-1998年)した。 一方で小泉元首相の訪朝に至る一年間、北朝鮮と水面下の交渉にも携わった(2001年-2002年)。
・米朝両国との交渉経験から思う事は、米国と北朝鮮の交渉態度は両極端と言っていいほど大きく異なるという点だ。このことを十分、理解していないと、会談は失敗するリスクがある。 米国の交渉者は圧倒的な米国の力を背景に、その力を見せつつ、論理的な装いで相手を追い詰める。一方、北朝鮮の交渉の背景にあるのは、形容しがたい怨念と猜疑心、そして論理よりも精神主義である。
・交渉が結果を作るためのプロセスとすれば、相手を説得する必要があるが、そのためには相手の国民性や思考経路を理解することが重要だ。 核問題の交渉の歴史は北朝鮮に騙されてきた歴史であるとしても、もし米国が力を背景に相手を恫喝するような態度で交渉に臨めば、窮鼠猫をかむ形勢となるだろう。 朝鮮半島には中国・ロシア・日本に攻撃され蹂躪された歴史がある。交渉を成功させるためには、朝鮮半島の歴史を理解し、上から目線の抑圧的な態度を取るのではなく、むしろ普遍的な交渉原則に従うことが重要だ。  すなわち、できることとできないことを明確にすること、そこに揺らぎはないことを示すこと、同時に誠意を持って行動することである。
▽トランプ大統領と金正恩委員長  共通する「不確実性」
・両首脳の「個性」や置かれた状況などを認識することも重要だ。 北朝鮮では「金王朝」的専制支配が続いている。したがって金正恩委員長の力は強いが、この力を維持していくためには「カリスマ」性がなければならないと思われている。 小泉元首相の訪朝に向けた私の交渉相手もいつも「金正日委員長は、その時が来れば必ず驚くような決定をする」と言っていたのを思い出す。
・今回も、金正恩委員長を直接、巻き込まないと物事は決まらないことは明らかだが、金委員長もカリスマ的支配のためには「大国と相手をして対等の立場で大きな成果を挙げた」と言う形を国内に示すことも重要と考えているだろう。 首脳会談次第では非核化という大きな政策転換をする可能性もなくはないという事かもしれない。
・一方、トランプ大統領も同じような傾向を持った異色の大統領だ。 大統領としての統治力は知見や経験に基づくものではなく、既成の政治家にはない発想とやり方に基づくものだ。おそらく既成政治家のやるような政権内の手順に従うことなく、自分の判断を前面に出した「驚き」を演出することを重視すると思われる。  特に現在の米国の内政事情を見れば、日々トランプ大統領の政治的立場は困難になりつつあると言える。ロシアゲートの捜査は身辺に迫り、同時にティラーソン国務長官の解任など政権内の混乱もますます厳しくなっている。
・こうした状況で、北朝鮮問題は11月の中間選挙に向けて歴史的成果を誇りうる格好の材料となりつつある。国内での失地回復のため、北朝鮮問題を利用するようなことになるリスクも大きい。
・このように、金正恩委員長とトランプ大統領のいずれの特性も「不確実性」であり、うまく行けば従来にない大きな成功につながるかもしれないが、後述するように、決裂し、結果的にはさらに対決が深まる大きなリスクを併せ持つ。
▽首脳会談に何を期待するか 成果見込めれば電撃訪問も
・これらのことは、どこに首脳会談の場所を選ぶのか、にも反映されるだろう。 首脳会談がよく準備され、成果を挙げ得るという見通しがあれば、ピョンヤンにトランプ大統領が行く、あるいは金正恩委員長がワシントンを訪れるといった「驚き」を演出する可能性もあるだろう。 小泉元首相訪朝の際も、一定の具体的成果を想定してピョンヤンを電撃的に訪問した。
・今回の米朝首脳会談が、むしろ交渉の始まりといった性格の首脳会談という位置づけがされるのであれば、おそらく中立的な場所になるのだろう。 双方の代表部があるニューヨーク、ジュネーブあるいは北朝鮮大使館の存在する欧州・アジアの国、場合によっては板門店と言うこともあり得るかもしれない。
・では「成果」として何を求めるか。 北朝鮮が「非核化」の意思を明確にし、2005年9月の六者協議共同声明(検証できる形での非核化・朝鮮半島における平和体制・日米との国交正常化・経済協力・信頼醸成などのための作業開始)に戻ることについての合意ができれば成果と言えるだろう。 しかし2005年9月の共同声明は、その後、検証方法で合意ができず、結果的に履行されなかったし、北朝鮮は2006年10月以降合計6回の核実験を繰り返した。
・したがって今回は、核・ミサイル実験の凍結は当然のこと、放棄に向けての検証方法や時間的目処も明確にすることが好ましい。 北朝鮮は、非核化の意味するところは北朝鮮の核放棄だけではないとして、在韓米軍の撤退や米国から攻撃されない保障を条件付ける可能性もある。 さらに朝鮮戦争後の南北の停戦合意を平和条約とすること、米朝・日朝の国交正常化についてのコミットメントを求めるのだろう。
・しかしこのような具体的事項については、相当緻密な実務的協議が必要になる。米国だけで決められることでもない以上、いずれかの段階で北朝鮮・韓国・中国・米国・ロシア・日本からなる六者協議を復活させる必要があるだろう。 つまり、米朝首脳会談は実現しても一回の会談で物事が決するわけではなく、今後の長い非核化プロセスの始まりとなる可能性が高いと言うことだ。
・ここで致命的に重要なことは、これまでの核交渉の歴史から見ると、北朝鮮は何時でも核開発に戻る余地を残そうとするだろうし、それゆえに北朝鮮が検証を伴う形で核放棄の行動に入らない限り、制裁圧力は緩めてはならないということだ。
・日本では、米国が北朝鮮の核開発を凍結したまま、米国にとっての直接的な脅威であるICBMの制限だけの合意を作るのではないかという懸念を口にする人ももいる。 しかし非核化が実現しないような合意は成果とは言い難く、また同盟国である日本・韓国やそこに居住する多くの米国人を脅威にさらすような合意を米国が作るとは考えられない。
・また、日本にとってきわめて重要な拉致問題が置き去りにされるのではないかとの懸念も表明されている。 しかし、六者協議の合意でも日朝国交正常化はピョンヤン宣言に基づいて行われることになっている。 拉致問題の解決なしに正常化を行うことはない以上、もし米朝首脳会談が成功し、核放棄のプロセスができていけば、拉致問題にとっても前向きな動きが期待できる。
・このようなことを考えると、日本はあまり焦って日朝首脳会談を求めるといった動きをするより、ここは北朝鮮の非核化のための首脳会談の成功に向けて、米国、韓国と緊密に協議していくことに全力を尽くすべきなのだろう。
▽決裂のリスクも大きい 北朝鮮の専門家いないトランプ政権
・首脳会談には相当緻密な準備が必要となるが、トランプ政権には現在、朝鮮半島を知り、これまでの経緯にも詳しい専門家がいないことも、大きな懸念材料であり、会談を失敗に終わらせかねないリスクだ。 外交交渉の主体となるべき国務省が長官や主要スタッフを欠き、空洞化しつつある。 ティラーソン国務長官は3月31日に退任するが、後任のポンぺオCIA長官も上院の承認を経なければ国務長官としての活動はできない。 次官や次官補さらには北朝鮮問題担当大使や駐韓国大使も空席のままだ。
・このような状況では、北朝鮮とだけではなく関係国との実務的協議もままならないということになってしまう。 ホワイトハウスや国防総省、とりわけマティス国防長官やマクマスター国家安全保障担当補佐官と言った元軍人が政策決定の主要な役割を果たすと言うことだろうか。 ところがマクマスター補佐官についても解任のうわさが駆け巡っている。 さらに米朝首脳会談を行うこと自体が米国と北朝鮮の直接交渉で決められたわけでも、何らかの文書による合意があるわけでもない。
・韓国を通じての合意であり、北朝鮮の非核化の意図もすべて口頭での伝言の形をとっている。通常の外交であれば到底考えられないことだ。 北朝鮮はトランプ大統領の非伝統的な外交の手法を意識していたのだろう。しかし、北朝鮮が言を左右し、会談自体がなかなか開催されないというリスクは残る。
・ただ、トランプ大統領と金正恩委員長という両国のトップを巻き込むものだけに、北朝鮮も、失敗すれば後がないことは感じているはずだ。 トランプ大統領の判断基準は定かではなく、振幅も大きく、時として衝動的である。ポンペオ次期国務長官も対北朝鮮強硬派で知られている。失敗すれば、米国による軍事行動の可能性が急速に高まる。
・首脳会談の成否は、北朝鮮が真摯に非核化に取り組むか否かが最も重要な鍵であり、このことは、南北首脳会談を含め、北朝鮮に明確なメッセージを伝え続けることが重要だ。 この意味でも対北朝鮮経済制裁や米韓合同演習などはきちんと実施していく必要がある。 同時に関係国、とりわけ韓国、中国、米国、日本の間の緊密な連携が必要であり、万が一に備えた危機管理計画を練っておくことも重要になる。
・準備があることこそが、北朝鮮が無謀な行動に走らず真摯に非核化の道を進むことを可能にする抑止力となるはずだ。
http://diamond.jp/articles/-/164192

第一の記事で、 『中間選挙で勝利できるかということが、大きな注目点になっています。理由はハッキリしています。それは、・・・仮に議会での勢力逆転を許すと、それはそのまま弾劾につながるからです』、なるほどトランプにとっての切迫感が理解できた。 『トランプ大統領が、とりあえず「受諾」を表明した「米朝首脳会談問題」を考える3つの要素のうち、この「トランプ政権が安定していない」というのは、恐らくは1番大きな要素であると思います。何よりも、支持率回復のための実績を作らなくてはならないという「切迫した必要性」があるからです。同時にそのような「不安定ゆえの切迫感」は、思い切ったギャンブルを誘発し、また、それゆえに思い切った譲歩を迫られる可能性にもなります』、とはずいぶんリスキーな交渉のようだ。 『今回仮に「米朝外交」が進展した場合には、北朝鮮が核開発を放棄する代わりに、米国に対して在韓米軍の撤退を要求するということが「まことしやかに」言われています。そして、トランプ大統領がそれを受諾する可能性もあるという見方があります。 これは重大なことです。仮に在韓米軍撤退という事態となれば、これは東アジアの軍事外交のパワーバランスを大きく変えるからですが、それはそのままこの地域の「それぞれの国のかたち」に大きな影響を与えます・・・肝心の大統領とその周辺からも、「米朝外交」の結果として一体全体「どのような東アジア」を描くのかという問題提起は全くないのです』、こんなことになったら、全く予期していない日本側は大混乱に陥るだろう。 『そのような粘り強い外交上の実務遂行は、大統領が国務省を信用していないという、現在のアメリカ政府の体制では不可能です。国際社会、とりわけ日本と中国という近隣諸国にはそうした作業のイニシアティブを取ることが求められるのだと思います。 そのように考えると、日本の役目は極めて大きいように思います。そうした切迫した事態において、政権が動揺しているという状態は良くありません。アメリカから見ていると、詳しい雰囲気が今ひとつ分からないのですが、とにかく政争をやっている場合ではないように思います』、というのは一理はあるが、安部政権の動揺は驕りゆえに自ら招いたもので、これはこれで政局化するのはやむを得ないと思う。ただ、全体としては、さすが冷泉氏だけあって、深い分析は大いに参考になる。
第二の記事も、さすが外交のプロだけあって、なかなか読ませる。 『米朝の交渉文化は大きく異なる 力を背景にするのは逆効果』、トランプ政権にそうした機微を理解している人材がいることを期待する他なさそうだ。  『したがって今回は、核・ミサイル実験の凍結は当然のこと、放棄に向けての検証方法や時間的目処も明確にすることが好ましい。 北朝鮮は、非核化の意味するところは北朝鮮の核放棄だけではないとして、在韓米軍の撤退や米国から攻撃されない保障を条件付ける可能性もある。 さらに朝鮮戦争後の南北の停戦合意を平和条約とすること、米朝・日朝の国交正常化についてのコミットメントを求めるのだろう。 しかしこのような具体的事項については、相当緻密な実務的協議が必要になる。米国だけで決められることでもない以上、いずれかの段階で北朝鮮・韓国・中国・米国・ロシア・日本からなる六者協議を復活させる必要があるだろう。 つまり、米朝首脳会談は実現しても一回の会談で物事が決するわけではなく、今後の長い非核化プロセスの始まりとなる可能性が高いと言うことだ』、ただトランプにとっては、息の長い交渉というのは好みではなく、途中で飽きてしまうリスクもあるかも知れない。 『決裂のリスクも大きい 北朝鮮の専門家いないトランプ政権』、というのはなんとも頼りない印象だ。ただ、何らかの形で成果を打ち出す必要はあるので、そこに期待するしかなさそうだ。
今日入ってきたニュースで、安全保障政策補佐官のマクマスター氏を解任、後任にジョン・ボルトン氏を指名した。ボルトン氏はイラク戦争を主導した保守強硬派。国務長官を穏健派のティラーソン氏から保守強硬派のポンペイオCIA長官を充てる人事と並んで、外交の中心人物がいずれも保守強硬派という思い切った人事。上記で田中氏が、 『力を背景にするのは逆効果』、としているだけに、北朝鮮がこれにどう反応するのかが大いに注目される。
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