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悪徳商法(その2)(緑のオーナー制度 責任はどこに、被害者続出「ジャパンライフ」 安倍首相も“広告塔”だった、中国人やヤクザが年間100億円を荒稼ぎ ネット通販詐欺の意外な手口) [社会]

悪徳商法については、1月15日に取上げたが、今日は、(その2)(緑のオーナー制度 責任はどこに、被害者続出「ジャパンライフ」 安倍首相も“広告塔”だった、中国人やヤクザが年間100億円を荒稼ぎ ネット通販詐欺の意外な手口)である。

先ずは、やや古い記事だが、2017年5月11日付けのNHK時論公論「緑のオーナー制度 責任はどこに」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・一般の人たちから森林に出資してもらい、成長した木材を販売して収益を分けあう林野庁の「緑のオーナー制度」。実に500億円という巨額の資金を集めながら、全国で元本割れが相次いでいます。国の責任を認める判決が最高裁で確定し、今、さらに新たな裁判も始まっています。問題の背景とその影響を考えます。
▽【解説のポイント】「緑のオーナー制度」とはどのような内容で何が問題となったのか。確定した国の責任と、現在新たに起きている裁判について。最後に国有林野事業の現状と今後を考えます。
▽【緑のオーナー】
・「緑のオーナー制度」は昭和59年に林野庁が始めました。一般の人たちから1口50万円などで、成育途中の国有林に出資してもらいます。自分が希望する地域を選び、基本的に数人から数十人で山林の一定の面積を林野庁と契約します。その後、おおむね20年から30年後に成長した木を競売にかけ、収益を分け合う仕組みです。
・当時のチラシやパンフレットです。「資産づくりに最適」「安全確実」「夢とロマン」こうした言葉が並んでいます。各地で説明会が開かれ、全国から出資が相次ぎます。募集を中止した平成11年までに、8万6千人から500億円という巨額の資金を集めました。
・ところが、木材の貿易自由化や一時的な円高などいくつかの理由で、国内の木材価格は、下落を続けます。スギは半額以下、ヒノキは3分の1近くになっています。 満期を迎えた支払額の平均です。出資額の50万円を超えたのは最初の年度、平成11年度の54万円の1回だけでした。その後13年度は40万1千円、15年度は36万8千円、20年度は30万1千円、25年度は29万3千円など、ずっと元本割れが続き、平成27年度は、24万7千円まで下落しました。50万円を20年預けて半額以下しか受け取ることができない計算です。
▽【裁判で国の責任が確定】
・全国の出資者が、国に裁判を起こします。神戸市の石井昌平さん(74)もその1人です。石井さんは、仕事で海外の赴任が長く、故郷の山の保護に関心を持っていました。そこで、昭和63年に出身地の栃木県の緑のオーナーとして50万円を出資します。
・「こうした出資は利益が目的だから自己責任だ」という意見もあります。しかし、当時は今よりも高金利で多くの金融商品があった中、あえてこの制度に参加した人たちの中には、石井さんのように制度の理念に共感し、自然保護も目的だった人が少なくありませんでした。しかし、平成21年に受け取ったのは13万円でした。石井さんは「国にだまされた思いだ」と話しています。 裁判所は1、2審とも国の責任を認め、去年、最高裁で確定しました。時間がたって賠償を求めることのできる期間が過ぎている人を除き、84人に1億円近くの支払いを命じました。
・裁判所が国に責任があると判断したのは、さきほどのチラシに書かれていた「安全確実」などの表現が不当だったこと、それに平成5年までパンフレットに「元本を保証しない」と書かれていなかったことなどが主な理由でした。国が説明義務に違反していたことが確定しました。
▽【落札できない山林が増加】
・ところが、4月から、また、新たな裁判が始まっています。原告たちは「契約期間が終わったのに国は木材を販売しなかった」と訴えています。 去年の緑のオーナーの森の入札結果の一部をみると、「不落」という文字が並んでいます。これは「落札できなかった」つまり入札で売却できなかったという意味です。 実はいま、満期になっても予定価格を超える入札がなく、買い手のつかない山林が増えています。弁護団によると落札できない割合は平成27年度で52%。実に半分以上が、売ることもできない事態になっているのです。
・この裁判で国は争う姿勢を示す一方、満期を迎えたオーナーが希望すれば、林野庁が決めた金額で買い取る制度を、今年度から拡充しました。 しかし、オーナーからは、少なくとも出資した金額で買い戻すべきと言う声が上がっています。 林野庁によりますと、これまでに契約が終わったオーナーは一昨年度の時点でまだ4割、3万3千人です。5万5千人以上が、これから入札などの時期を迎える計算になります。この問題はむしろ今後、本格化する恐れがあります。
▽【問題の背景は】
・そもそもどうして、このような制度が始まり、そして歯止めがかけられなかったのでしょうか。背景には国有林野事業が抱えてきた構造的な問題も理由の1つだったのではないかと指摘されています。 戦後、国有林野事業は、木材を売った利益などを主な財源とする特別会計で、経済性を重視し企業のような独立採算制に近い形を求められてきました。
・しかし木材価格の低迷で国有林野事業は赤字が膨らみます。「緑のオーナー制度」はこうした中で始まりました。ある専門家は「結果的に制度は国民から資金を得て赤字を減らす手段となった。見通しが甘いままやめられなかったのではないか」と指摘しています。
・その後、特別会計は廃止され、平成25年度から国有林野事業は一般会計となります。経済性の重視から環境保護など公益性をより重視した管理経営に転換しました。当時の状況を考えると、木材価格の下落は避けられない側面もあります。しかし、価格が低迷してもなお「緑のオーナー制度」は継続され、今も重い影響を残しているのです。
▽【「国民参加の森づくり」を実現するには】
・ただ、この制度は、経済的な側面だけではない、大きな役割を果たしてきたことも、確かです。それはトータルで2万4000ヘクタール、東京ドーム5000個分に相当する面積の山林が、整備されてきた事実です。国民の協力で森が育ち、環境の保全や、きれいな水を生み出してきました。これは簡単には金額に換算できませんが、評価できることです。
・林野庁は、「国民参加の森づくり」をアピールしています。国有林の整備に協力することが大切なのは確かです。しかし、本当に国民の協力を求めるならば、国はまず、緑のオーナー制度の出資者に理解を得られるよう努力すべきではないでしょうか。 オーナーの多くは、もともと森や自然に理解がありました。本来、「森の応援団」になってくれる人たちが、裁判となり、国有林に背を向ける結果になったことこそ、この問題で最も不幸な事態というほかありません。
・すでに裁判で国の違法性が確定している以上、国は責任を認め、少なくとも説明義務違反が認められた時期の契約については、オーナーが納得する形で買い戻すなど、話し合いで解決をめざしてほしいと思います。 また、林野庁は赤字を減らすために職員を大幅に削減し、営林署も減らしてきました。政策を転換したのだから、進めてきた職員の削減も見直し、森を守り、環境を保護するために必要な人材を確保することも、大切だと思います。
・国有林は日本の国土のおよそ2割に上ります。また、過疎化と高齢化で、手入れの行き届かない山林が、全国で課題となっています。 森を守るには、都市部を含めた幅広い国民の協力がますます必要になってくるでしょう。そのためにも国はこの「緑のオーナー制度」を解決し、その上で、改めて国民参加の森作りを呼びかける。それが欠かせないのではないでしょうか。(清永 聡 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/270471.html

次に、2月1日付け日刊ゲンダイ「被害者続出「ジャパンライフ」 安倍首相も“広告塔”だった」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ついに国会でも問題視され始めた。磁気治療器の預託商法を展開し、昨年末、2000億円超の負債を抱え事実上、倒産した「ジャパンライフ」。被害対策弁護団の元には「もう首をくくるしかない」といった悲痛な声が寄せられているという。 日刊ゲンダイは、これまで安倍政権の中枢がジャパンライフの宣伝チラシに登場していた問題を報じてきたが、ナント安倍首相まで同社の“広告塔”になっていたことが分かった。
・〈安倍晋三内閣総理大臣から山口(隆祥)会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました〉――本紙が入手したジャパンライフの宣伝チラシにはそう記され、同社の山口会長の宛名が書かれた招待状の写真が掲載されている。招待状には〈平成二十七年三月〉とあり〈「桜を見る会」を催すことといたしました 御夫婦おそろいにて御来観下さいますよう御案内申し上げます〉との記載がある。〈受付票〉とともに、安倍首相の顔写真まで掲載されている。
・本紙は、ジャパンライフが消費者庁から1回目の行政処分を受けた1カ月後の17年1月13日、加藤勝信1億総活躍担当相(当時)が山口会長と会食し、宣伝チラシ上で同社を持ち上げるコメントを寄せたことと、自民党ナンバー2の二階俊博幹事長までも宣伝チラシに登場していたことを問題視。ジャパンライフが問題ビジネスを継続してきた背景に、大物政治家の威光が影響していた可能性を報じてきた。
・30日の衆院予算委では、希望の党の大西健介議員が同問題を徹底追及。「(安倍政権中枢と接点があるような)立派な人がやっているから『大丈夫だろう』と、おじいちゃん、おばあちゃんがコロッとだまされても不思議ではないのではないか」と、首相本人を問いただした。安倍首相は「桜を見る会には、毎年1万3000人くらいの方々に私の名前で招待状を出しているが、私自身が存じ上げる方ばかりではない」と逃げの一手だった。
・桜を見る会は、毎年4月に都内の新宿御苑で開催されている。与野党問わず国会議員からの紹介があれば、一般人にも招待状が送られてくるというから、政界人脈を持つ山口会長なら、招待されても何らおかしくはあるまい。ジャパンライフの担当取締役は、本紙にこう語った。 「チラシに掲載された招待状は3年前のものですし、誰がこういったチラシを作製したのか不明です。いずれにせよ、大物政治家を掲載したチラシを対外的に配るようなことは、まずあり得ないと思っています。造反して退社した元幹部らが勝手に作った可能性が考えられます」
・結局、安倍自民はジャパンライフ内部の人物に勝手に利用されていたのかもしれないが、脇が甘すぎる。山口会長は1975年に、当時展開していたマルチ商法が問題視され、国会に参考人招致されたほどの“有名人”だ。 麻生太郎財務相も昨年4月の参院財政委で「この人は結構有名人」と発言していた。「知らなかった」は、とても通用しないだろう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/222266

第三に、4月11日付けダイヤモンド・オンライン「中国人やヤクザが年間100億円を荒稼ぎ、ネット通販詐欺の意外な手口」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今や、百貨店の売上高さえ抜き去ってしまうほど普及し、すっかり身近となったインターネット通信販売。しかし、偽造品の販売や、海外への不正転売などを通して荒稼ぎする例が後を絶たない。DOL特集「地下経済の深淵」第13回は、そうしたネット通販の闇に迫る。
▽人がいるはずのない空き部屋で中国人が通販の荷物を受け取る
・昨年7月。東京地方裁判所立川支部で一つの判決が言い渡された。被告は中国人の男。技能研修生として来日したものの脱走し、その後、アルバイトをしながら中国人コミュニティに参加、犯罪に手を染めてしまったのだ。 そんな中国人の容疑は、入国管理法違反と邸宅侵入罪。邸宅とは、大きな家や屋敷を指す言葉ではない。法律用語では誰も暮らしていない家、つまり「空き家」「空き部屋」のことだ。 
・この中国人が逮捕されたのは、宅配業者から警察にかかってきた一本の電話からだった。 「空き部屋のはずの部屋が宛先の荷物がやたらとあるのです。しかも、そこには…」 宅配業者は、その部屋の住人がすでに引っ越しており、今は誰も住んでいないことを知っていた。にもかかわらず、そんな部屋を宛先とする荷物が多く、なぜか配送の時間帯だけ中国人の男がいて、荷物を受け取っていたことに不審を抱いたのだ。
・中国人の男は、空き部屋で何をしていたのか。 供述内容を総合すると、この中国人は、コミュニティの連中から宅配業者の配達時間を知らされ、「送られてきた荷物を受け取って、指定の場所まで運べ」と命じられていたという。
▽共通の「合鍵」を使い侵入 90億〜100億円余りの被害
・その荷物とは、インターネット通信販売で販売されていた商品だ。コミュニティの連中が、闇サイトや偽装サイト、フィッシングメールなどで不正にクレジットカード情報を入手。その情報を使い、大量の商品を注文して空き部屋に配送、受け取った商品を海外に高額で転売し、荒稼ぎしていたのだ。 カードの名義はバラバラだが、商品の送付先は同じ。2~3週間で送付先を次々に変え、犯行を繰り返していたという。
・この中国人は、空き部屋の「合鍵」を渡されて、部屋に侵入していた。アパートを中心に展開している、ある特定の不動産会社が、空き部屋の鍵をすべて同じものにしている点に目をつけて合鍵を作り、いくつもの空き部屋にやすやすと侵入していたというのだ。 こうした、空き部屋を使ったネット通販の詐欺が急増している。
・流通総額で国内トップの楽天は、2016年に101億3100万円相当、17年に95億2500万円相当の注文が、他人名義のクレジットカードなどを使った不正なものと判断し取引を中断した。 そうした不正注文の送付先は、マンションやアパートといった賃貸住宅が多く、その半分以上が空き部屋だったという。その他、配送サービス会社を配送先とする手口も少なくない。
・地域別で見たのが下図だ。これを見ると、やはり関東や関西といった大都市圏に集中していることが分かる。次に首都圏で見てみると、豊島区、北区、板橋区など、北西部の街が多い。 商品別では、粉ミルク、化粧品、スニーカー、腕時計、そしてパソコンがトップ5だ。「粉ミルクやおむつといった赤ちゃんに使う商品は、品質を気にする親が中国でも増えており、日本製は非常に高く転売できる。そのため、大量に注文するケースが散見される」(楽天)という。
・楽天だけで、これだけの金額なのだから、ネット通販全体で見れば恐ろしい金額に上ることは想像に難くない。 このように、空き部屋が悪用されるのは、短期の賃貸マンションや私書箱に比べて、身元が割れにくく費用も一切かからないからだ。また、荷物を受け取るだけであれば会話もしなくても済み、外国人でも大丈夫といった事情もある。
・そのため楽天では、不動産や住宅情報を提供しているサイト「LIFULL HOME'S」を運営する株式会社LIFULLと組み、空室情報と注文情報とを結びつけ、大量の注文が入る前に不正注文検知、取引を中止させる取り組みをスタートさせている。
▽名義貸し出店による偽造品販売も横行
・ネット通販をめぐる不正や犯罪は、偽造したり盗難に遭ったクレジットカードを使ったものだけではない。  ある日のこと。川崎市で整体院を開いているという個人事業主の男性から、楽天に対し出店の申請があった。要件を満たしていたため、とりあえず出店は認められたが、不審に思った楽天は出店後の調査を実施した。 すると、その店は、整体院とは全く関係のないコスプレの衣装や、子ども服を販売していたことが判明。しかも、商品は全て偽造品で、大阪の転送会社から発送、返品先も福岡の住所になっていたという。
・これは、いわゆる「名義貸し」出店による「偽造品販売」の手口だ。具体的には、(1)名義貸しをした個人や法人の名前を使い、さまざまな名義で繰り返し出店する、(2)中国からシステムを操作し、偽造品を中国から転送会社を使って直接ユーザに届けるというもの。その際、出店者の名義はさまざまだが、返品先は東京都の新小岩や千葉の松戸市、三重県の鈴鹿市など同じケースが多い。つまり、同一の「組織」が、偽造品販売を行っているというわけだ。
・写真は、不正を調査する楽天のサービス管理部が、返品先の住所に訪問して撮影したもの。ポストには「留学生」「うえの寮」などと書かれているだけで、会社としての実態はなく、明らかなペーパーカンパニーだ。その他にも、一つのポストに11社もの社名が書かれていたり、反社会的勢力の関連会社だったりするケースも少なくないという。
・こうした「組織」に対し、カネに困った人たちが名義を貸しているのだ。楽天の調べによれば、名義貸しをしているのは、長野県や山形県といった地方在住者が多いほか、年齢別に見ると20代前半の男女、30〜40代の主婦、そして60代の男性が多いという。 また、法人が代表者となっているケースのうち、日本人代表者の多くは休眠会社が使われており、外国人代表者の場合は東京都や千葉県、埼玉県などが多く、ほぼ同じ行政書士が手続きを行っているという。
・つまり、こうしたネット通販の偽造品販売は、中国を始めとする外国人や、反社会的勢力を中心とした組織が主導する「組織犯罪」となっているわけだ。
▽警視庁と連携し情報を共有
・ 犯罪収益口座は凍結へ(もちろん、ネット通販各社も手をこまねいているわけではない。最も積極的な対策を進めている楽天は、1200以上のブランド権利者と連携して商品の鑑定を行い、偽造品の摘発を進めているほか、「違反点数制度」を設けて、偽造品を販売していることが判明した場合には契約を解除し、損害に応じた違約金を課している。
・また、昨年には警視庁と協定を結び、毎月、犯罪との関連が疑われる出店者情報や、配達先の住所といった情報を警視庁に提供。情報提供を受けた警視庁は、犯罪で得た収益を差し押さえるという目的で、銀行に対し出店者の口座凍結を依頼しており、既に口座が凍結されているケースが何例もあるという。
・とはいえ、これまで見てきたような犯罪もなかなか減らず、「まさにいたちごっこだ。しかし、消費者が安心して利用できるよう、地道な取り組みで不正や犯罪を撲滅していくしかない」(ネット通販関係者)という。 今や、「使ったことがない人はほとんどいない」と言われるほど、普及したネット通販。今後もさらに市場は拡大していくことが予想されるが、便利さの裏側で、顔が見えにくいことを悪用して荒稼ぎする輩も増殖している。
http://diamond.jp/articles/-/166631

第一の記事の 『林野庁の「緑のオーナー制度」』、は私も現役時代に、通勤電車の吊広告でよく見た記憶がある。1994年から1999年まで6年間続いたことになる。これは、証券化商品の先駆けともいえるものだ。しかし、国が説明義務違反で敗訴するとは、みっともないもいいところだ。 『オーナーの多くは、もともと森や自然に理解がありました。本来、「森の応援団」になってくれる人たちが、裁判となり、国有林に背を向ける結果になったことこそ、この問題で最も不幸な事態というほかありません』、 『国はこの「緑のオーナー制度」を解決し、その上で、改めて国民参加の森作りを呼びかける。それが欠かせないのではないでしょうか』、などはその通りだ。
第二の記事で、 『磁気治療器の預託商法を展開し、昨年末、2000億円超の負債を抱え事実上、倒産した「ジャパンライフ」』、というのは悪徳商法の典型だ。 『消費者庁から1回目の行政処分を受けた1カ月後の17年1月13日、加藤勝信1億総活躍担当相(当時)が山口会長と会食し、宣伝チラシ上で同社を持ち上げるコメントを寄せた』、というのは飛んでもないことだ。 その他の自民党の有力議員や安部首相は名前を勝手に使われたと言い訳できるかも知れないが、加藤大臣の場合は、言い訳の余地はあまりなさそうだ。財務官僚出身者は、意外に「脇が甘い」人間が多いが、彼もその例に漏れなかったようだ。
第三の記事で、 『楽天は、2016年に101億3100万円相当、17年に95億2500万円相当の注文が、他人名義のクレジットカードなどを使った不正なものと判断し取引を中断した』、というのは、驚くほど大規模だ。 さらに、『名義貸し出店による偽造品販売も横行』、しているのであれば、楽天が 『警視庁と連携し情報を共有』、という努力をしているのも理解できる。他のEC業者も努力しているのだろうが、 『いたちごっこ』、が当分は続かざるを得ないようだ。
タグ:悪徳商法 (その2)(緑のオーナー制度 責任はどこに、被害者続出「ジャパンライフ」 安倍首相も“広告塔”だった、中国人やヤクザが年間100億円を荒稼ぎ ネット通販詐欺の意外な手口) NHK時論公論 「緑のオーナー制度 責任はどこに」 500億円という巨額の資金を集めながら、全国で元本割れが相次いでいます 緑のオーナー 林野庁 裁判で国の責任が確定 国が説明義務に違反 木材価格の低迷で国有林野事業は赤字が膨らみます 日刊ゲンダイ 「被害者続出「ジャパンライフ」 安倍首相も“広告塔”だった」 磁気治療器の預託商法 2000億円超の負債を抱え事実上、倒産 安倍晋三内閣総理大臣から山口(隆祥)会長に「桜を見る会」のご招待状が届きました 消費者庁から1回目の行政処分を受けた1カ月後の17年1月13日、加藤勝信1億総活躍担当相(当時)が山口会長と会食し、宣伝チラシ上で同社を持ち上げるコメントを寄せた 二階俊博幹事長までも宣伝チラシに登場 ダイヤモンド・オンライン 「中国人やヤクザが年間100億円を荒稼ぎ、ネット通販詐欺の意外な手口」 楽天は、2016年に101億3100万円相当、17年に95億2500万円相当の注文が、他人名義のクレジットカードなどを使った不正なものと判断し取引を中断した 名義貸し出店による偽造品販売も横行 いたちごっこ
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自動運転(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) [科学技術]

自動運転については、昨年8月7日に取上げた。今日は、(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ)である。

先ずは、作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督で東大助教授の伊東 乾氏が3月23日付けJBPressに寄稿した「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・懸念されていた事態が現実のものとなってしまいました。 米国アリゾナ州で、ウーバーが実施していた自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです。 報道によると、現地時間の3月18日午後、アリゾナ州テンピ近郊で実施されていたウーバーの試験運転走行中、横断歩道ではない場所を自転車を押して渡っていた女性が車に接触してしまいました。 ウーバーの試験車は完全自動運転モード中で、減速した形跡は全くなく、時速約65キロで進行、歩行者をはねてしまったという経緯であるようです。
・自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった。 ウーバーはただちに、カリフォルニア州サンフランシスコやアリゾナ州フェニックス、またカナダのトロントなどで実施していた自動運転車の試験走行をすべて中止しました。
・米国ではカリフォルニア州など、すでに規制緩和が進んで自動運転車の公道走行が部分的に許可され始めたエリアもあり、今回の事態は大きな波紋を投げかけています。 非常に大まかに言って、現状の「自動運転」は自動車が勝手に走行するという水準にあり、これはモノレールその他の軌道交通機関では、すでに当の昔に実現されていることで、実は取り立てて問題にするようなことではありません。
・日本国内でも、博覧会会場などとして設定された「未来交通」の路線を、駅から駅へ、自動的に運転する路線が運行されています。 これらの特徴は、軌道上に歩行者やほかの車などがいないこと、ホームドアなどで厳密に乗客と軌道とは仕切られ、十分な安全が確保されているということでしょう。
・逆に言えば、既存のモノレールなどの路線では、センサーによって危険を感知し、自動的に停車する装置などは取りつけられているはずです。 これはJR線などでもときおり経験することでしょう。線路内に人が進入した可能性がある危険信号を感知しましたので列車は急ブレーキをかけました、という車内アナウンスを耳にしたことがある人は少なくないはずです。
・この場合、JR線でも新都市交通でも、極めて限られたエリア、決まった軌道上の特定のチェックポイントで危険信号が感知されたとき「急停止」その他の安全アクションが取られることになります。 逆に言うと「想定外」のリスク、突然横方向から歩行者や自転車が飛び込んで来るといった事態は、モノレールなどの場合はまず発生しないので、そのようなセンサーもリスク対策も一切取られていません。 対策や考慮の対象外ということになります。
・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません。 
・すでに発生しているテスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている。 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです。
・かつ「物議をかもす」程度の報道からも明らかなとおり、米国やカナダでは、自動運転に伴う事故リスクや、そこでの保険商品のあり方、法規制その他の落ち着いた制度設計の議論がほとんどなされていません。  何かと米国に右向け右のどこかの国でも、そんな話はついぞ耳にしないでしょう。
・すなわち、自動運転車が何らかの事故を引き起こしたとき、どのような責任が問われるか。リスクに備えてどのような法制度や、新たな保険商品を準備すればよいか・・・。 一部省庁の専従には意識の高い人がありますが、国全体として議論の期が熟しているとは到底言えません。 これを強調するのは、本連載でも今まで幾度も記してきたように、ドイツを中心にEUでは自動運転に関する法制度、もっと言えば、AI駆動されるシステムが、何らかの被害を人に与えた場合の責任の所在を問う「ロボット法」が、大枠すでに確立されているからにほかなりません。
▽責任主体としての「ロボット法人」
・EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます。 まるで手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム」のような話と言っても、すでにいまの若い世代には通じないのかもしれません。 人間の心を持つロボット少年アトムの悲劇を描いた原作マンガは、テレビアニメーションとしては軽い冒険活劇としてヒットしました。
・しかし、もはや漫画の中の世界ではなく、もっと落ち着いてリアルに考えるべき対象です。 例えば、福島第一原子力発電所事故が発生し、責任主体として東京電力という「法人格」が、重い司法上の責任を問われている。これは全く普通です。 しかし、東京電力さんという人がいるわけではなく、切れば血が出る生身の体があるわけではない。 でも東京電力には資産があり、損害賠償の必要が発生すれば、会社がその主体として責任を負うことになる。もちろん、並行して企業の経営に責任をもった生身の個人が訴追される場合もあり得る。
・全く同様のことを、一定以上自立的に作動するシステムに関しても、それ自体を「ロボット法人」として責任の主体とみなす必要があるという、手堅い判断をEU~ドイツはすでに下しています。  自動運転車はその典型として分かりやすいですが、ほぼ自動的に動くという意味では、産業用ロボットなどの自動システムの方が、2018年時点ですでによほど多く、実用化されています。
・今回の事故は、ウーバーの試験走行ですから、責任は全面的に会社にあると判断される可能性が高いでしょう。 しかし、自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか? ここで言う「責任」は、哲学的な抽象論ではなく、損害賠償であればもっとリアルな「過失割合」であり、行政上、司法上の責任であれば処分の対象と認められるか、という値引きのない話にほかなりません。
・さらに、これが一般の路上交通で発生したものとすれば、どうなるでしょう? 例えばT社の自動運転車は、基本すべてT社のAIシステムが運転しているものとしましょう。それで発生した事故は、すべてT社の責任になるのか? そんな制度設計にしたら、経営が成り立たないのは火を見るより明らかでしょう。 どこかで適切に責任の主体を切り離し、その範囲でリスクを分散させ、また損害賠償などの必要が出た場合には、そこに責任の主体を限局する必要がある。そのような意味で、「EUロボット法」は議論されています。
・分かりやすく言えば、原発で事故が起きれば、裁判の結果、電力会社という「法人」の資産で賠償が行われるように、自動運転車やスマートファクトリーの産業用ロボットが事故を起こした場合、「自動運転車法人」や「産業用ロボット法人」が自分自身の資産をもって責任を負う。 具体的には保険制度などが活用され、従来とは違うAI社会のエコシステムを円滑に動かしていく、そういう議論が、早くから進んでいます。
・たまたま私は大学の公務で、ミュンヘン工科大学などを中心とする、こうした「自動運転倫理委員会」メンバーと年来の共同プロジェクトを進めており、関連の状況は一通り承知しています。 例えばドイツでは、自動運転車の安全システムで、「あらかじめ、特定の人を犠牲にするようなプログラム」を組んだ人がいた場合、「そのシステムを組み上げたシステムエンジニア個人を含め刑事責任が問われる」という、著しく重い判断がすでに下されています。
・通常の路上交通では、リスクは常に複数存在します。対向車であったり、後続車であったり、前後左右複数方向からの歩行者であり自転車でありバイクであり、また運転者自身や同乗者であり・・・。 今回の例では、何のセキュリティも施されていない拙劣な車で事故が起きました。2つ以上のリスクが重なる場合、そのどれか1つ、あるいは複数でも、必ず犠牲になるものが決まっているというソフトウエアを組んだ人があれば、それに起因して発生した事故について、民事刑事の責任を負うという判断です。
・現場の運転と何ら関係しない、ウーバーで期間開発に関わったシステムエンジニアにも法的な責任が問われるという重い社会ルールが、ドイツ・欧州ではすでに準備されています。 どうしてそんなことになってしまったかと言うと、1つの原因はフォルクスワーゲンの排気ガス安全基準ごまかしの大型犯罪で、国際社会にドイツ産業界が面目を丸潰しにした経緯が関係しています。
・あの時点では、誰が見ても不正にしか使えないあのシステムを作ったボッシュにも、そこで請け負ってシステムを作ったエンジニアにも、限られた責任しか問うことができなかった。 でも、犯罪以外に使いようがないことは、関連した人がすべて知り、それこそ忖度し合いながら、企業秘密として伏せられていた。 二度とこれを繰り返してはならないという決意をもって「システム開発者も牢屋に入れられ得る」という厳しい法制度準備が進んでいるわけです。
・ 翻って、米国にはそういう制度はおよそ存在していません。 欧州では、重い責任とともに、慎重な自動運転の実用化が一歩一歩検討され、致命的な事故はいまだ発生していませんし、米国では気軽に自動運転車の実用化が叫ばれ、今回の事態を含め、かなりの高頻度でアクシデントが発生しています。
・別段「規制緩和はよろしくなく、重い規制がすばらしい」などと一面的に言うつもりはおよそありません。 しかし、この件に関する限り実用化・商品化を焦る米国企業の拙劣さは隠しようもなく、またそうした拙速な開発を煽るベンチャーキャピタルなど、経営主体より後方の加速圧にも、間違いなく道義的な責任はあると言わねばならないでしょう。
・AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います。 関連の推移に注意しつつ、日本での自動システム、その導入と保険商品などを含む制度設計、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52645

次に、ジャーナリストの井元康一郎氏が4月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国でのウーバーによる自動運転実験車両の死亡事故は、自動運転技術の開発競争に大きな衝撃を与えた。今後、開発競争の行方はどうなるのか、あるいはどうすべきなのか。そのポイントを整理してみた。
▽自動運転の開発競争に“冷や水” ウーバーによる実験車の死亡事故
・このところ激化の一途をたどる自動運転の開発競争に“冷や水”をぶっかけるような事態となったアメリカ・アリゾナ州でのUber(ウーバー)自動運転実験車の死亡事故。 捜査の結果、事故自体は人為的なミス、技術パッケージの“見立ての甘さ”などによるところが大きいことが判明しつつある。とはいえ、自動運転の技術開発のペース自体がこの事故によって鈍ることはないであろう。
・一方で、この事故は自動運転車をどう実用化するか、また社会にどうインストールしていくか、といった課題を浮き彫りにした。 「クルマの自律走行技術の開発は、もともとは安全技術の発展形だったのですが、最近は新ビジネスの創出が主なモチベーションになっている観が強かった。自動車メーカー側にとっては他社に先んじて技術を確立して先行者利益を得ることが第一目的なのですが、交通弱者の救済、商業ドライバー不足の解消など、社会的意義を口にしやすい分野だったので、自動運転の開発が正義という風潮が余計に強まった。今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」 自動運転開発に関わる情報通信系エンジニアはこう語る。
・実際、近年の自動運転に関し、自動車メーカーやITプラットホーム企業が繰り出すアジェンダは急進的なものが多かった。
▽フォードやGMが相次いで将来の完全自動運転車発売を宣言
・アメリカのフォードは2016年に、「2021年までにタクシー向けを想定したステアリングレスの完全自動運転車をリリースする」と宣言。するとGMは、ウチは2019年に発売すると応酬。しかもその自動運転車はシボレー「クルーズ」がベース。シティコミュータなどではなく、本格乗用車で出すというのだ。
・限定エリアでなく、公道であればどこでも走行可能なクルマが実現できればとてつもなくすごい話だ。カーシェアを無人でユーザーのところに送り届けたり、トラックを無人で走らせたり、免許を持たない人がクルマで自由に移動することを可能にしたりといった新ビジネスはすべて、自動運転の「レベル5」、すなわち完全な自動運転車が完成しなければ実現しないものだ。
・安全が担保され、しかも低コストなレベル5カーが出てくれば、それはモビリティにおける壮大なパラダイムシフトになるだろう。 しかし、業界ではウーバーの事故の前からフォードやGMが打ち出したビジョンの実現性については懐疑的な見方が少なくなかった。日系メーカーの技術系幹部は欧米企業が次々に楽観的なアジェンダを発表するのを見て、次のように語っていた。 「不確定要素の多い道路上で完全自動運転を実現するには、オンロードでのデータ収集が不可欠なのですが、その状況は刻々変わる。たとえば季節によって街路樹の枝が伸び、葉をつけたりといった風景の変化ひとつ取っても、それが何なのかをAIが自分で知ることができるわけではありません。そして、その変化が思わぬ事態を引き起こす可能性もある。データを教え込み、それをもとにAIが深層学習で応用範囲を広げたとしても、次に待ち受けている何かを察知できないうちは、自動運転車は社会の中でコンフリクトの火種にしかならない」(前出のITエンジニア)
▽自動運転の開発ブームの中で あおりを食った日本企業
・アメリカでは10年ほど前から自動運転が「未来の高付加価値分野になる」という期待が盛り上がっており、それを実現するための「規制緩和こそ正義」という風潮が強まっていた。リスクについては「機械が時に間違いを犯すとしても、人間よりはずっと着実だ。それに異を唱えるのは馬鹿者」といった物言いで封じ込んできた。 多くのメディアもこのムーブメントに乗った。
・AIの深層学習技術が長足の進化を遂げていることを根拠に「完全自動運転はすぐにでも実用化できる」という論説があふれ、それが実現したときの“バラ色の物語”を流した。 こういったトレンドの中で、あおりを食ったのは日本企業である。 日本陣営は自動運転技術に関する特許保有が世界で最も分厚いトヨタ自動車、早い段階から自律走行の実走行データを鋭意収集していた日産自動車、ロボティクス技術や機械と人間のコミュニケーションに関する研究で先んじていたホンダ――と、ことクルマの制御に関しては世界最先端だった。
・日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ。
▽ウーバーのことは「なかったことにしたい」
・日本陣営のなかで自律走行に最も前向きだったのは日産自動車だ。 DeNAと自動運転技術やコネクテッド技術を使った新サービスの開発で提携したりと、基本戦略は今も大きくは変わっていない。だが、日産のBMI(ブレイン・マシン・インターフェース。脳と機械の間でコミュニケーションを取る技術)開発の中核人物のひとりであるルチアン・ギョルゲ氏は「我々はハンドルのないクルマを作るつもりはない」と断言する。
・「クルマをただ人や荷物が運ばれるためのものにはしない。人間の思考は脳波から読み取ることが可能だと思っている。それができれば人の認知から操作までのタイムラグをなくすることができ、クルマはもっと安全でファンなものになる」(ギョルゲ氏))
・機械が100パーセント、自動的に人間の意思や願いを叶えてくれるということはなく、あくまで人間が主役であるべき、また人間には人間の長所があり、機械と人間が調和することでより高い安全、楽しさを実現させられるという思想だ。人が運転者のいない箱にただ運ばれていくという今日の自動運転の考え方に対するアンチテーゼとも言える。
・日産以外の日本メーカーも、基本的には人間と機械の調和を高めていくべきで、理想的な自動運転はその延長線上にあるという考え方をしている。そのほうが安全で、かつパーソナルモビリティならではの価値を提供できると考えているからだ。その知見に一定の理とバリューがあったことを、ウーバーの事故は“最悪の形”で証明した格好だ。
・記者をやっているアメリカの知人によれば、アメリカではウーバーの事故を境に、自動運転の実用化という名目を唱えれば何でもありという風潮に危惧を抱きながら、これまで抑圧されてきた人たちからの異論が“ここぞ”とばかりに噴出し、業界はほとぼりが冷めるのをじっと待っている状況だという。
・「できればウーバーのことは『なかったことにしたい』という気運を強く感じる。ウーバーがルーズだったから事故が起こったので、本来は起こり得なかったことなのだ、と。だが、できるだけ簡単なシステムで最高のパフォーマンスを実現するというウーバーのアプローチは、技術開発の考え方としては全然間違ってはいない。それだけ難しいことをやっているという自覚が、業界全体として欠如していたのが浮き彫りになっただけだ。なかったことにすれば彼らは一安心だろうが、そのうちもっと大きな問題が起きる。自動運転の技術開発自体は止まらないとしてもね」
▽自動運転はどうあるべきか ポリシーを見直すべき
・テストカーとはいえ、死亡事故が起こってしまった今、自動運転はどうあるべきかというポリシーを今一度しっかり見直すべきだ。 まずは技術的な側面。完全自動運転は人間のほうが得意なことまで全部機械任せにするものだが、人間がリスクに気がついてもハンドルやブレーキがなく操作不能というのは、やはりまずい。
・突発的な事態に対処できる物理的な余裕の有無についてはともかく、少なくともリスクの認知の段階で機械が100%、リスクを察知できないうちは、人間と機械が互いに助け合うことでフェイルセーフを図るのが最も安全だろう。 また、自動運転をどういうところから導入するかについても再考が必要だ。トヨタのエンジニアは「まずは高速道路や決められたエリアなど、リスクが限定された環境で導入すべき」と言う。
・前述のように完全自動運転車の実用化について、自動車業界は交通弱者の救済や物流の無人化といった社会的意義を強調しているが、開発に前がかりになっていた最大の動機は技術の囲い込みや新ビジネス創出といったそろばん勘定だ。不可能へのチャレンジは技術進化に欠かせないが、本音と建前が乖離しすぎると往々にしてトラブルが起こる。投資家へのアピールのために無理なアジェンダを提示するのは少し控えたほうがよかろう。
▽自動運転技術はこれで終わったりはしない
・自動運転の“進化のさせ方”についても決着した観がある。 システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう。
・素晴らしい新技術が萌芽的に出てきたとき、社会は当然その技術の進展に期待を寄せる。モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい。
・数年前の欧州におけるディーゼルの排出ガス不正もそうだったが、正義を振りかざしながら“無理筋”を通そうとしているときに限って、何らかの問題をワンパンチ食らっただけで腰砕けになってしまうものだ。ウーバーの事故でいきなり自動運転関連企業が静かになってしまったのもその類である。
・しかし、自動運転技術はこれで終わったりはしない。 ニーズは確実にあるし、場合によってはまったく新しい交通の景色を見せてくれるようになるかもしれない。そういう技術の開発であるからこそ、プレーヤーは広げた“風呂敷”が実情に沿ったものか、それとも“虚栄心”が勝っているかどうかを常に自省し、本筋を踏み外さないようにする理性を大事にすべきだ。
http://diamond.jp/articles/-/166660

第一の記事で、 『自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった・・・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません』、どう考えてもお粗末過ぎる事故だ。 『テスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている』、というのはさもありなんだ。 『自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか?』、無論、運転者にも責任はあるが、自動運転ということで、気が緩んでしまいがちになるのは、人間の性ともいえる。 『AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います』、日本としては堅実な欧州スタイルでいくべきだろう。
第二の記事で、 『今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」』、というのは正論だ。 『日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ』、というのいで、必ずしも日本メーカーが立ち遅れている訳ではないことを知って、一安心した。 『システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう』、 『モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい』、などは説得力がある。
タグ:自動運転 (その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) 伊東 乾 BPress 「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」 ウーバー 自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです テスラの自動運転車事故 商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います 井元康一郎 ダイヤモンド・オンライン 「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」 日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない 近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ
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日本の政治情勢(その20)(小田嶋氏:頑張ると叱られる職場の記憶、田原氏:「首相案件」スクープは安倍政権終焉の引き金) [国内政治]

日本の政治情勢については、4月12日に取上げたが、今日は、(その20)(小田嶋氏:頑張ると叱られる職場の記憶、田原氏:「首相案件」スクープは安倍政権終焉の引き金)である。

先ずは、コラムニストの小田嶋 隆氏が4月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「頑張ると叱られる職場の記憶」を紹介しよう。
・何日か前、ツイッターのタイムラインに、わたくしども日本人の働き方を題材とした、なかなか考えさせられるツイートが流れてきた。 内容は、4つのツイートのスクショ(スクリーンショット、画面写真)を並べて、それらがいずれも同じ主張を含んでいることを指摘したものだった。スクショの中で紹介されている主張は、つまるところ「うちの国の労働生産性が上がらない理由は、われら日本人が、仕事の成果ではなく、時間にしばられる働き方をしているせいなのではなかろうか」という問題提起であった(こちら)。
・ツイートの中で指摘されているポイントは、多くの人が以前からそう感じていたところと一致しているはずで、なればこそ、このツイートはすでに9万件以上リツイートされ、13万以上の「いいね」を獲得している。
・当該のツイートを読んで、思い出した話がある。 はるか昔、私が中学2年生だった頃の話だ。 数えてみると48年前ということになる。なんと、半世紀前だ。 当時、私が通っていた近所の区立中学校は、生徒のアルバイト労働を禁じていた。
・もっとも、ことあらためて学校側が禁じるまでもなく、当時も今も中学生を働かせてくれる職場がそうそう簡単に見つかったわけでもないのだが、そんななか、冬休み期間中、地元の郵便局が、押し寄せる年賀状を整理する仕事のために、中学生を募集していた。 局が求めていたのは、ポストに投函された年賀状を宛先別に分類する仕事だった。彼らが中学生を募集の対象に含めたのは、この種の単純作業が、むしろ中学生に向いていると考えたからなのだろう。
・仲間うちの何人かが郵便局で働くことになった。 私は、学校の校則を尊重する気持ちを持っていたからなのか、それとも単にめんどうくさかったからなのか、そのアルバイトには参加していない。 だから、これからここに書く話は、私の直接の体験談ではない。
・郵便局でアルバイトをした同級生たちが異口同音に語っていたのは、あそこでは真面目に働くと叱られるんだぞということだった。 なんでも、郵便局では、時間内に処理しなければならないノルマの総量が決まっていて、勤勉な中学生ががんばってそれ以上の仕事量をこなすと、局員に叱責されるというのだ。
・たとえばの話、5時間分のノルマを3時間で処理し終えれば、早く帰っても良いのかというと、そうはいかない。拘束時間は決まっていて、早く作業をしたからといって早く帰れるわけではない。 かといって、定められたノルマ以上の件数をこなすと、割増分の報酬をもらえるのかというと、そういう仕様にもなっていない。
・一方、時間内にノルマをこなせない場合は、その分が時給から差し引かれることになるのだが、ふつうに働いている限り、まずノルマ以下にはならない。というのも、設定されている時間あたりのノルマを達成するための労働強度が、中学生の目から見ても大変にヌルかったからだ。
・ということはつまり、求められているのは、一定時間内に一定量のノルマを、ダラダラとこなしながら、終業時間を待つことだった。 これは、当時の中学生にとっても、比較的意外な要求だった。 「だって、頑張ると怒られるんだぜ」 「やり過ぎてないか、時々監視のヤツが見にくるんだから」 と、彼らは証言していた。 この話について、ある年かさの親戚が漏らした 「そりゃ、サボタージュ体質ってやつだな。あの組合の人間は、働けば働くほど損をすると考えているんだ」  という解説を鵜呑みにしたわけでもないのだが、ともあれ、中学生だった私が、この時の郵便局の人間の働きぶりの話から強い印象を受けたことはたしかだ。
・「なるほど。頑張りすぎないように気をつけることが、自分の身を守る大切な心得であるような職場があるのだな」 という私の当時の観察が正しかったのかどうかはいまとなってはよくわからない。 ともあれ、昭和のある時代に、雇用側の労働強化に対する抵抗の仕方のひとつとして、ひたすらにダラダラ働く人々がいたことについては、この場を借りて、証言しておきたい。
・無論この話は、半世紀も前の逸話だし、当時、日本中のすべての郵便局の組合員がダラダラ働いていたわけでもないのだとは思う。でも、少なくとも、私の住んでいたあたりの郵便局の50年前の局員たちが、年末年始にアルバイトでやってきている中学生に、根を詰めて働きすぎることをいましめる旨の指導をしていたことは、事実なのだ。
・似た話はいくらでもある。 いったいに、われら日本人が集まって働くことになる職場では、人並み外れて優れた仕事ぶりをアピールすることよりは、周囲の同僚の能力なり労働強度なりに同調することが重要視されることになっている。 あんまりガツガツ働く態度は、あからさまに手を抜く仕事ぶり同様、最終的には白眼視を招く。
・この傾向は、昨今、コンサルだったり経営評論家だったりする人たちが繰り返し指摘している定番の日本特殊論エピソードのひとつで、概念的には「プロセスよりも結果が重視される諸外国の職場において、個々の働き手が自己裁量で仕事の進め方を決めているのに対し、結果よりプロセスが重視され、ひとつのプロジェクトをチーム単位で請け負うことの多いわが国の職場では、個々の労働者のノルマはチーム内の同僚の顔色から算出される」ぐらいなマイナスの実例として紹介されることになっている。 まあ、おおむねその通りなのだとは思う。
・とはいえ、それでは、業務分担のあり方をチーム単位から、個人の責任に着する方向に改めれば万事解決なのかというと、たぶんそんなに簡単に話が運ぶことはない。 われわれは、心の奥深いところで、みんなと一緒にダラダラ過ごす時間を至上の経験として重んじている。 この設定は、簡単には変わらない。
・というのもわたくしどもこの極東の島国で暮らす人間たちは、伝統的に、成果を出すことや利益をあげることそのものよりも、みんながいっしょである状況を愛しているからだ。
・国会の答弁にも、この傾向はあらわれている。 つい昨日(4月11日)、衆院予算委員会での質疑の様子を映し出すテレビ中継を見るともなく見ていたのだが、国会でも、焦点となっていたのは、質疑の内容ではなくて、時間の過ごし方だった。 どういうことなのかというと、野党議員からの質問に答える首相ならびに政府側の答弁者が、回答の内容を研ぎ澄ますことよりも、ただただひたすらに「持ち時間をしのぎきる」ことに重点を置いて言葉を並べているように見えたということだ。
・質問者には、それぞれ所属する政党の議席数から割り出された質問時間があらかじめ割り当てられている。 ということは、答える側が、質問とは直接に関係のない背景説明を延々と並べることで時間を浪費すれば、質問者の側の持ち時間を奪うことができるわけで、してみると、質問に対してどのような答えを提供するかではなくて、答えにくい質問に答えないためにいかにして余計な寄り道をするのかといったあたりが、答弁者にとっての当面の着地点になるからだ。
・サッカーのロスタイム戦術に似ていなくもない。 説明する。 サッカーの世界では、リードしている側のチームが、試合終了のホイッスルを間近に控えた2分か3分ほどの間、勝利を確実なものにするべく、点を獲るための努力を放棄して、あえて無駄な時間を空費する目的で、自陣ゴールライン際で無意味なパス交換を繰り返したり、コーナーキックエリア付近で身体を張ったボールキープを続けることがよくある。
・この間、競技としてのサッカーは死んでいる。 というのも、サッカーはゴールを奪うためにボールを前に運ぶスポーツであり、そのほからならぬゴールを断念したところから出発する時間稼ぎのプレーは、原理的に非サッカー的な営為だからだ。 であるからして、この種の露骨な非サッカー的時間稼ぎは、せいぜい3分間しか許されない。
・たとえばの話、リードしている側のチームが、終了10分前から時間稼ぎのプレーに走ったら、敵チームはもとより、味方チームのサポーターからも激しいブーイングを浴びるはずだ。もし仮に、露骨きわまりない時間稼ぎプレーを毎度10分間以上にわたって繰り返すチームがあったとすれば、そのチームは、早晩観客から見放されることになるだろう。
・ところが、わが国会では、なんだかんだで少なくとも3カ月以上にわたって、ほとんど答弁拒否に等しいダラダラした迂回答弁が繰り返されている。 ゴールライン近辺でのボール回しがアンチサッカー的行為であるのと同じ意味で、現在繰り広げられている無内容な答弁は、非国会的、アンチ議会政治的な言語道断の非道ということになるはずだし、本来なら、こんなことを何カ月も繰り返している政権の支持率は、測定限界以下に低迷するはずだ。
・ところが、政権支持率は、大筋において安泰だ。森友問題が再燃しているこの半月ほど、じりじりと下がり続けてはいるものの、調査主体にもよるが、いまなお4割に近い底堅い支持層を確保し続けている。 「とにかく、質問時間をしのぎ切ったのだからこっちの勝ちってことだろ?」 と、首相周辺の人々が本気でそう考えているのかどうかはわからない。
・とはいえ、現政権のコアな支持層の多くが 「こんなくだらない言い掛かりみたいな質問にいちいち真正面から答える必要はない」 「とにかく相手の持ち時間を粛々とツブしながら、論点をはぐらかしおおせばOKなわけだ」 「これで野党の側に追い打ちをかける手が無いのだとしたら、要するに連中が無能だってことだ」 と考えているであろうことはどうやら間違いない。
・サッカーファンの一部に、試合内容よりもとにかく勝利だけを重視する一派が含まれているのと同様な構造において、おそらく、政権支持層の中にも、国会質疑の内容よりも、結果として野党の追及をかわし切る手腕を評価する人々がいる。そして、その彼らにしてみれば、安倍総理や麻生副総理が、無内容な答弁を繰り返しつつ、まんまと野党の質問を無効化し去っている現状は、痛快ではあれ、屈辱ではないのだろう。
・彼らの見るところでは、答弁の内容が不毛なのは、首相ならびに政権側のスタッフが無能だからではなく、野党側の質問そのものがあまりにも荒唐無稽だからだってなことになる。とすれば、恥ずかしいのは、無内容な答弁を繰り返している政権側ではなくて、その無内容な回答を論破するに至る有効な弁論術を持っていない野党側のタマ切れの方だ、と、まあ、そう考えればそう考えられないこともないわけだ。
・働き方についても、相容れない二つの立場がある。 すなわち、一方には、しかるべき仕事量をこなして、所属先に対して報酬に見合った利益なり貢献をもたらすことが大切だという考え方があり、その反対側には、とにかく定められた勤務時間の間、働いているように見える体を保ちながら自らの身を職場に存在させておくことを第一とする考え方の持ち主がいるということだ。
・議会人としての所作について言うなら、国民からの付託を受けた選良として、国会で実りのある議論をして、ひいてはその議論を国政に活かすことをあくまでも重視する理想家肌の議員さんもいれば、逆に、どんな法案をいくつ通して、結果として自分たちの政見をどれほど現実の国政の中に落とし込むことができたのかという結果だけが政治家の仕事を評価する唯一の物差しだと考えるリアリストの議員もいる。
・どちらが正しいという話ではない。 このお話は、つまるところ、わたくしども国民が、いずれの態度を高く評価するのかという選択の問題に帰着するのだと思っている。 ちなみに、昭和の半ば頃の中学生にダラダラ働くことを教えていた郵便局は、その何十年か後、政府の手で解体されることになった。 解体という選択が正しかったのかどうか、今の段階では、私は確たる答えを持っていない。 ただ、なるほどね、とは思っている。
・組織も人も、長い目で見れば、いずれ、過ごしてきた過ごし方にふさわしい末路を迎えることになっている。 最後に私自身の話をすれば、私は、この3年ほど、毎週木曜日に2本の原稿と2つのイラストを描き上げ、夕方にラジオの仕事をこなすスケジュールで仕事をこなし続けている。 単純な仕事量としては、週のうちの作業量の6割から7割ほどを、木曜日1日だけで処理していることになる。
・もっとコンスタントに働いた方が水準の高い仕事ができるのではないかという意見もあるし、私自身、時々、落ち着いた暮らし方に心ひかれる瞬間もある。 でも、何回か試してみてわかったことなのだが、原稿を書く仕事の場合、執筆者は、ゆっくり考える時間を与えられれば与えられるほど、結果としてまじめに考えない方向で帳尻を合わせに行ってしまうものなのだ。 少なくとも私はそうだ。
・執筆時間が3日あれば、3日がかりでダラダラ書いては消しを繰り返してしまうし、〆切まで半日しかないということになれば、半日でさっさと書き上げることになる。 だから、私は、毎週木曜日に、早起きして頑張ることで集中力を高める方法を選択している。 逆にいえば、必死になって取り組まないと間に合わないスケジュールを自らに課すことでしか集中力を保てない、ということでもある。
・国会に集まっている議員さんたちも、自分たちに残された時間が限られていることを意識した方が良い、と思う。 
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/041200139/?P=1

次に、政治評論家の田原 総一朗氏が4月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「首相案件」スクープは安倍政権終焉の引き金 足元では「官僚たちの反乱」相次ぐ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・4月10日の朝日新聞朝刊トップに「『本件は、首相案件』と首相秘書官 加計めぐり面会記録」という記事が載った。これは、安倍内閣が幕を閉じる決定打になるだろう。
・学校法人加計学園の獣医学部新設をめぐる疑惑が注目された。同学園は愛媛県今治市に獣医学部を新設しようと15回も申請したものの、却下され続けた。それが第二次安倍内閣発足後に今治市が国家戦略特区に指定された途端、獣医学部の新設が決まった。ここに、安倍首相の特別な配慮が絡んでいるのでないか、という疑惑が2017年に浮上した。
・この問題は一時、沈静化したと思われたが、事態が大きく動いたのが今回の朝日新聞の報道だ。15年4月、愛媛県や今治市の職員や学園の幹部が柳瀬唯夫首相秘書官(当時)と面会した際に作成された記録文書の存在とその内容を報じた。 これまで加計問題について、首相は「便宜の指示をしていない」と主張してきたが、今回の報道で、当時の秘書官が面会で述べた内容が表に出てきた。
・問題の文書には柳瀬氏の「本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」という発言が記されているという。さらには、「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」という発言も記録されていると報じる。ここから続報も相次いでいる。
・11日の衆議院予算委員会では、15年4月の「愛媛県職員らと面会した記憶はない」という柳瀬元首相秘書官の発言に対し、「信頼している 」と言った。「首相案件」と記載される文書については、「コメントを差し控えたい」と述べ「「首相案件」スクープは安倍政権終焉の引き金 足元では「官僚たちの反乱」相次ぐ」、自身の関与について改めて否定した。
・それでも私は首相の秘書官がかかわっていたことを報じるこの記事が決定打になるのは間違いないとみている。もう一つの焦点である森友問題について、安倍首相は「私や妻が認可や払い下げにかかわっていたら首相を辞める」と明確に言ってきた。それは秘書官がかかわっていた加計問題でも当然、同じことだ。
▽相次ぐ問題は、官僚たちが「わざと起こした」と感じざるを得ない
・このところ、官僚たちに起因する問題が相次いでいる。しかも、それらはいずれも「不自然」なところがある。 例えば、防衛省が存在を否定していた南スーダン国連平和維持活動(PKO)に関する日報と、陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が見つかった問題だ。 イラク派遣時の日報が見つかったのは1月12日。それを防衛大臣が認識したのが、3月31日 だ。さらに4月4日には、防衛大臣は実は去年の3月時点でわかっていたいたことが明らかになった。1年余りもなぜ隠蔽を続けたのか。自衛隊がイラクに派遣されたのは何年も前のことである。なぜ、今頃当時の日報が見つかったのか。しかも、1月12日に見つかった時に、なぜ即座に防衛大臣に報告しなかったのか。その後、さらに航空自衛隊の日報も秘匿されていたことがわかった。
・これらの問題は、ひどい出来事というよりは、防衛省が自ら恥をさらけ出しているようにも感じる。 防衛省側から見れば、全てが明確になってから発表するほうが、社会から受けるダメージが少ないはずだ。それを、なぜわざわざ発表しては覆すようなことを繰り返しているのか。 一連の出来事は、防衛省自身が国民に対して「我が省庁はこんなにひどい有様なのだ」「これほどまでに隠ぺい体質が浸透しているのだ」ということを知らしめているように感じざるを得ない。
・マスメディアも野党も、防衛省に「シビリアンコントロールが全く効いていない」と批判しているが、防衛省自身がわざわざそう言わせるように行動しているのではないだろうか。 今回の加計文書問題のスクープも同様だ。森友文書改ざん問題が国民の注目を集めている時期に、なぜ公表するのだろうか。考えてみればこれは最悪のタイミングであるのに。
・森友問題もそうだ。3月2日の朝日新聞のスクープ記事で、森友学園への国有地売却に関する文書を財務省が書き換えていたことが明らかになった。朝日新聞が自信満々に報じたことで、「これはリークされた情報だろう」という憶測が広がっていた。しかも事情通たちの間では、大阪地検がリークしたととらえられている。
・その後、NHKが衝撃的なニュースを報じた。森友学園への国有地売却問題について、近畿財務局が大阪航空局に地下のごみの積算量をかさ上げするように依頼していたことが明らかになった。 NHKは、よほど確証がなければ報じない。信憑性の高い情報源としては、大阪地検と考えると自然だ。
・この問題が明るみに出ると、財務省の太田充理財局長は「それは事実だ」と認めてしまった。となると、国有地8億円の値引きの背景には、尋常ならぬ理由があったのではないかと感じる。 値引きをした時の理財局長は、迫田英典氏だ。ごみの積算量をかさ上げするよう要求したのも、迫田氏だ。果たして、地検は迫田氏まで迫るのだろうか。
・もう一つ、先日、前文部科学事務次官である前川喜平氏が名古屋市立中学でした講演について、文科省が調査した問題も浮上した。なぜ、文科省はそこまで介入するのか。すでに前川氏は辞任しており、文科省とは無関係である。これは大問題だ。 僕は、この問題について文科省の情報筋に取材をしたところ、どうも文科省は、問題になるのを承知でやったということが分かった。 つまり、問題を起こして、安倍内閣を困らせようとしたのである。
▽人事権を握る内閣に官僚たちの不満が暴発した
・官僚たちは安倍内閣に強い不満を持っている。背景は14年5月、約600人の省庁幹部人事を一元管理する「内閣人事局」が発足したこと。内閣人事局が幹部候補者の名簿を取りまとめ、首相、官房長官、閣僚らが幹部人事に直接関わることになった。 政権が内閣人事局の力を強化して、各省庁の幹部人事を一元的に内閣が掌握するようになったことに対し、官僚たちの不満が高まったのだろう。さらに政権は、地検の人事にも介入している。
・官僚たちの政権に対する強い反発が、問題を次々と明るみにさせていると読み解ける。 問題が立て続けに明らかになる今、野党にとっては安倍内閣を倒す絶好のチャンスである。僕は、立憲民主党、希望の党、民進党の幹部たちに「野党が政権を奪取するチャンスではないか」と言ってきたが、ここまでのところ野党には意欲も戦略もみえない。これでは「税金泥棒」である。今こそ野党は、戦略を持って問題追及に努めるべきだ。
・官僚たちの反乱は、安倍政権にとって致命傷となることは間違いない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/041200065/?P=1

台地の記事で、郵便局でかつて求められていた  『一定時間内に一定量のノルマを、ダラダラとこなしながら、終業時間を待つことだった』、とのエピソードが現在の国会審議の伏線になっていたとは、さすがである。 『野党議員からの質問に答える首相ならびに政府側の答弁者が、回答の内容を研ぎ澄ますことよりも、ただただひたすらに「持ち時間をしのぎきる」ことに重点を置いて言葉を並べているように見えたということだ』、というのはその通りだ。 『現在繰り広げられている無内容な答弁は、非国会的、アンチ議会政治的な言語道断の非道ということになるはずだし、本来なら、こんなことを何カ月も繰り返している政権の支持率は、測定限界以下に低迷するはずだ。 ところが、政権支持率は、大筋において安泰だ。森友問題が再燃しているこの半月ほど、じりじりと下がり続けてはいるものの、調査主体にもよるが、いまなお4割に近い底堅い支持層を確保し続けている』、 ただ昨日の新聞が伝えた共同通信での内閣支持率は37%と、半月間で5.4ポイント低下したようだ。ただ、これだけ悪材料が出てもまだ37%が支持しているということは、「底堅い」ともいえるのかも知れない。
第二の記事で、 『「『本件は、首相案件』と首相秘書官 加計めぐり面会記録」という記事が載った。これは、安倍内閣が幕を閉じる決定打になるだろう』、とあるが、私もそうなってほしいと願っている。 『相次ぐ問題は、官僚たちが「わざと起こした」と感じざるを得ない・・・人事権を握る内閣に官僚たちの不満が暴発した
』、というのはその通りなのだろう。ただ、防衛省の日報隠し問題は、指示したのは官邸で、官邸の力が弱くなったのを見透かして、官僚が官邸にさらなる打撃を与えていると私は推測している。 『今こそ野党は、戦略を持って問題追及に努めるべきだ』、というのは全く同感だ。
タグ:日本の政治情勢 (その20)(小田嶋氏:頑張ると叱られる職場の記憶、田原氏:「首相案件」スクープは安倍政権終焉の引き金) 小田嶋 隆 日経ビジネスオンライン 「頑張ると叱られる職場の記憶」 冬休み期間中、地元の郵便局が、押し寄せる年賀状を整理する仕事のために、中学生を募集 郵便局では、時間内に処理しなければならないノルマの総量が決まっていて、勤勉な中学生ががんばってそれ以上の仕事量をこなすと、局員に叱責されるというのだ われら日本人が集まって働くことになる職場では、人並み外れて優れた仕事ぶりをアピールすることよりは、周囲の同僚の能力なり労働強度なりに同調することが重要視されることになっている 野党議員からの質問に答える首相ならびに政府側の答弁者が、回答の内容を研ぎ澄ますことよりも、ただただひたすらに「持ち時間をしのぎきる」ことに重点を置いて言葉を並べているように見えたということだ ・サッカーのロスタイム戦術に似ていなくもない 田原 総一朗 「「首相案件」スクープは安倍政権終焉の引き金 足元では「官僚たちの反乱」相次ぐ」 私は首相の秘書官がかかわっていたことを報じるこの記事が決定打になるのは間違いないとみている 相次ぐ問題は、官僚たちが「わざと起こした」と感じざるを得ない 人事権を握る内閣に官僚たちの不満が暴発した 官僚たちの反乱は、安倍政権にとって致命傷となることは間違いない
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トランプ大統領(その30)(池上彰が斬る米国の内幕「炎と怒り」の本質、危うすぎるトランプ「単独飛行」 11月中間選挙を経て「弾劾裁判」の可能性、シリア空爆 決断の背景にある国内事情) [世界情勢]

トランプ大統領については、3月14日に取上げた。日米首脳会談を17,18日に控えた今日は、(その30)(池上彰が斬る米国の内幕「炎と怒り」の本質、危うすぎるトランプ「単独飛行」 11月中間選挙を経て「弾劾裁判」の可能性、シリア空爆 決断の背景にある国内事情)である。

先ずは、ジャーナリストの池上 彰氏が3月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「池上彰が斬る米国の内幕「炎と怒り」の本質 トランプ陣営は元々選挙に勝つ気がなかった」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今年1月5日にアメリカで刊行されるや全世界を衝撃の渦に巻き込んだ話題作、『炎と怒り――トランプ政権の内幕』。ドナルド・トランプ政権の知られざる内情を、1年半にわたる200件以上の関係者取材を基に明かした本作は、発売3週間足らずで全米170万部を突破し、たちまち大ベストセラーに。邦訳版も早川書房から刊行された。ジャーナリスト、池上彰氏が本書の読み解き方を解説する。
▽アメリカの分断を象徴する反響
・本書『炎と怒り――トランプ政権の内幕』(原題はFire and Fury: Inside the Trump White House)の出版により、アメリカでは書名のごとく「炎と怒り」が渦巻いた。トランプ政権の驚くべき内幕を知って怒る人もいれば、トランプを批判するための偽りの本だという炎上も起きたからだ。
・原著の初版部数は15万部の予定だったが、ドナルド・トランプ大統領が本の発売前に「出版差し止めだ」と怒ったため、出版社は刊行予定を4日早めて発売(2018年1月5日)。にわかに注目されることになり、100万部を追加重版した。 出版前から話題になったため、首都ワシントンの書店では発売日の午前0時から売り出したところ、瞬時に売り切れてしまった。「『ハリー・ポッター』の最盛期のような売れ行き」とコメントした書店員もいる。
・書名は、2017年8月、核開発やミサイル発射実験を繰り返している北朝鮮に対し、トランプ大統領が「世界が見たことのない炎と怒りに直面するだろう」と威嚇した際の表現から取られている。人々は、この表現が先制核攻撃を示唆したのではないかとおののいた。 とはいえ、この表現はトランプ大統領のオリジナルではない。もともと『旧約聖書』の中の「イザヤ書」の一節からきている。神の怒りを象徴した言葉だ。
・この本が発売されると、アメリカ国内の反応は真っ二つに分かれた。トランプ大統領に批判的な報道を続けているCNNは、著者のマイケル・ウォルフ氏をスタジオに呼んで、本書の中身を詳しく説明した。一方、トランプ大統領寄りのFOXニュースは、著者をジャーナリストとして信用ならない人物として描き出した。トランプ大統領の誕生後、アメリカのメディアが完全に分裂してしまったことを象徴する反応だった。
・何より驚かされたのは、この本でウォルフ氏がトランプ大統領について、精神的に大統領にはふさわしくないと批判したところ、トランプ大統領は、「人生を通して私が持つ2つの最上の資質は、精神的安定性と天才であることだ」とツイートしたことだ。自分のことを天才と言ってのける神経。本当にこの人は大丈夫なのだろうか。
▽「ドナルドほど医療保険に無知な人間はいない」
・2017年1月にトランプ大統領が就任して以来、世界は振り回されてきた。TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱に続いて、温暖化防止対策のパリ協定からも離脱を宣言。トランプ大統領の言う「アメリカ・ファースト」とは、「アメリカの国益をまず考える」という意味だと思われてきたが、実際は「アメリカさえ良ければ、あとはどうでもいい」という意味であることがわかってきた。
・トランプ氏は、大統領に当選が決まってまもなく、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統からお祝いの電話を受けたことを公表した。これには外交関係者がビックリ。アメリカが「一つの中国」の路線を放棄し、台湾を国家として承認する「二つの中国」政策に舵を切ったのかと受け止めたからだ。 このときトランプ氏は、「一つの中国という政策に縛られる必要はない」という趣旨の発言もしている。外交の大転換だと驚いたものだ。
・ところが、大統領に就任後は、台湾に関して発言しなくなり、いつしか「一つの中国」という伝統的な対中政策に戻っていた。いったい何があったのか。大統領就任以来、これが大きな疑問の一つだった。この本を読んで得心した。トランプ大統領は、大統領になるまで外交に関して何も知らなかったのだ。
・そういえば2016年の共和党の大統領候補選びの最中、トランプ氏は「TPPは中国の陰謀だ」と主張していた。これにライバル候補が「中国はTPPに参加していないが」と反論した途端、何も言わなくなった。 驚くほど政策を何一つ知らない人物。この本は、そんなトランプ大統領の姿を描き出す。たとえばオバマ大統領の時代に導入された医療保険制度。通称オバマケアに関し、トランプ氏は、選挙中に「最悪だ」と批判していたが、どこがどのように問題なのか触れることはなかった。本書では、FOXニュースの最高経営責任者だったロジャー・エイルズの言葉を紹介している。「国じゅう、いや地球じゅうを見渡しても、ドナルドほど医療保険に無知な人間はいない」と。
・これはあまりに大げさな表現だろうが、庶民が悩んでいる医療保険制度とは無縁に過ごすことができてきたトランプ氏には関心がないのは確かだろう。オバマケアを批判はしても、どのように改革するのかについてのコメントはない。オバマ前大統領が導入した施策のすべてをひっくり返したいという思いだけが伝わってくる。
▽衝撃の内情を暴いた著者の手の内
・本書の中身は、「そうだろうな」と納得するエピソードが満載だが、あまりにショッキングな内容が続くので、「本当だろうか」という疑問も湧くだろう。 こういう疑問を持った読者を納得させるには、「秘密の暴露」が有効だ。ホワイトハウスの奥の院でしか知られていないことを暴露するのだ。それが奇想天外であればあるほど、とても想像では書けないことであり、かえって書の中身が信頼できるということになる。たとえばトランプ大統領が、寝室の内側に鍵をつけさせたことや、テレビを新たに2台入れさせ、常時3台のテレビを見ながらハンバーガーを食べているという話。
・さらに衝撃的な「秘密の暴露」が、トランプ大統領の髪型の秘密だ。彼の髪型はあまりに不思議で、カツラ説も出ていたが、トランプ氏は否定してきた。これについて、なんとトランプ大統領の娘のイヴァンカ氏が、父親の不思議な髪型の理由を友人に話して聞かせたという。頭頂部の禿を隠すために周囲の髪をまとめて後ろになでつけ、ハードスプレーで固定しているというのだ。ここでは、ヘアカラーのブランド名まで明らかにされている。
・神は細部に宿る、という言葉がある。こうした細かい事実の描写が説得力を増すことになる。細部にまでわたった暴露の表現は、いささか下品に陥りがちだが、深い取材の結果であることをうかがわせる。 実は著者のウォルフ氏は、大統領選挙運動中にトランプ氏に気に入られ、大統領に当選後は、ホワイトハウスの中で自由に取材できたという。政治の素人の集まりでは、場を仕切る人がいないから、ジャーナリストが勝手に歩き回っても、誰ひとり制止することもなく、自分たちの発言に気をつけることもなく、完全に身内の扱いをしていたという。
・陣営幹部同士の会話を立ち聞きしていたに違いないと思えるシーンも出てくる。トランプ大統領のことを平然とバカにする発言が身内から次々に飛び出してくるのは驚きだが、彼らは、まさかその発言が公になるとは思っていなかったのだろう。
・この本が成立した大きな理由は、一時は「影の大統領」とまで呼ばれたスティーブン・バノン氏が取材に全面的に協力したことが大きい。この本でバノン氏がトランプ陣営のスタッフを歯に衣着せず批判していることを知ったトランプ大統領は、バノン氏を「正気を失った」と口汚くののしった。バノン氏はその後、本書に引用されている自身の発言の一部が誤って使われていると指摘はしたが、本書の内容は否定していない。要は事実だと認めているのだ。
▽そもそも、大統領選に勝つ気がなかった
・本書によると、トランプ陣営には3通りの人間がいる。まずはイヴァンカ氏と夫のジャレッド・クシュナー氏。2人を称して「ジャーヴァンカ」という言葉が生まれたという。要はトランプ氏のファミリーだ。ファミリー・ファーストがトランプ大統領の本音である。
・次に、陣営に取り入って、利益を得ようとする利己主義者ないし詐欺師に近い人々。こうした人々は、登用された後、すぐにボロを出し、怒ったトランプ大統領があっさりクビにする、という結末を迎えている。
・そして、もうひとつのグループが、自分たちが何とかしないとアメリカという国家に危機が訪れると危機感を燃やして国家に尽くす元軍人たち。ごく少数の人々によって、今のアメリカ政府はかろうじて機能していることがわかる。しかし、これはいつまで続くのだろうか。
・トランプ政権の幹部たちは、選挙中に駐米ロシア大使やロシアのエージェントと密会していたことが次々に明らかになっている。どうしてこんなことをしたのか。大統領になった後、大問題になるのは明らかなのに。そんな私の疑問は、この本で解消された。陣営の誰もが、トランプ氏が大統領になるとは思っていなかったからだという。
https://toyokeizai.net/articles/-/211623 

次に、みずほ証券チーフ・マーケット・エコノミストの上野 泰也氏が4月3日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「危うすぎるトランプ「単独飛行」 11月中間選挙を経て「弾劾裁判」の可能性」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽米トランプ政権の動きにより、金融市場は大荒れの展開
・3月22~23日の金融市場は、米トランプ政権の動きを材料に大荒れの展開になった。22日の米国に続いて23日の日本でも株価が急落し、日経平均株価は2万1千円割れ。ドル/円相場は104円台に沈んだ。そして23日の米国株は続急落。中国が知的財産権を侵害しているとして通商法301条に基づく制裁措置(500~600億ドル規模の中国製品を対象とする関税)を盛り込んだ大統領令に22日署名したトランプ大統領は、中国企業による対米投資規制強化策の検討も指示した。また、これより前に決定済みだった通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品への新たな関税が23日に発動されたが、適用除外となる国・地域のリストに中国および日本は入らなかった。これに対し中国商務省は23日、最大30億ドルの米国からの輸入品を対象に対抗措置を講じる計画を明らかにした。
・トランプ大統領はこのタイミングで、ゴルフ仲間で親密な関係だと思われていた安倍首相に関し、驚くほど辛辣なコメントを発した。3月22日にホワイトハウスで開催された会合で大統領は、「安倍首相と話をすると、ほほ笑んでいる。『こんなに長い間、米国を出し抜くことができたとは信じられない』という笑みだ」と述べて、米国の対日貿易赤字への強い不満を表明。安倍首相は「偉大な男で、私の友人」だとしつつも、「こういった時代はもう終わりだ」と述べて、より米国に有利な通商関係を日本に求めていく考えを示した。
▽11月に行われる中間選挙を念頭に置いた政策
・こうした保護主義を前面に出した政策は、「ラストベルト」に数多く存在するトランプ支持者に対して実績や行動力をアピールすることを通じて、11月に行われる中間選挙で共和党の議席減を最小限にとどめようとする狙いから展開されている可能性が高い。
・むろん、そこまでは誰でもわかるのだが、打ち出された政策を大統領がどこまで「本気」で実行するつもりでいるのかは誰にもわからない。「ディール」の流れ次第で落としどころが変わる話だとするならば、大統領本人も事前に決着点を決めていないのかもしれない。そうした悪い方向の不確実性を市場は本質的に好まず、「リスクオフ」へと傾きやすくなる。
▽トランプ大統領は「単独飛行」を始めた
・上記に加えて市場の不安心理増大につながっているのが、トランプ政権の「リシャッフル」(閣僚入れ替え)である。国際協調派・穏健派を更迭し、代わりに保護主義派・強硬派を登用する流れが続いている。 3月22日には、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)が4月9日に辞任し、ネオコン(新保守主義派)の代表的人物として知られるボルトン元国連大使が後任となることが発表された。3月はティラーソン国務長官やコーン国家経済会議(NEC)委員長の退任も明らかになった。
・ジャーナリストの木村太郎氏は3月15日の東京新聞に掲載されたコラムで、AP通信が11日に配信したニュース「トランプは単独飛行をはじめた」に注目。トランプ大統領はこれまでは「補佐官や顧問などの教官の指導でホワイトハウスという飛行機の操縦を覚えていたが、ここへきて単独飛行を始めた」ようだが、それは「全て自分の考えだけで超大国を操縦してゆくということではないらしい」「『右へ旋回』とか『上昇して』というような指示は受けなくなったが、『進路を横切る飛行機がいますよ』とか『前方に積乱雲が発達していますよ』という情報を得て単独飛行をしているようで、とりあえず墜落の心配はなさそうだ」とした。
▽「行き先」はとんでもない場所になりかねない
・だが、木村氏のこの結論は楽観的に過ぎる。自分の考えに沿わない、あるいは相性がよくないと感じた人物を遠ざけて、保護主義派・強硬派を周囲に数多く置いて彼らから情報を得てトランプ大統領は「操縦」しているわけであり、それで「墜落」しないとしても、「行き先」がとんでもない場所になりかねないと、筆者は厳しく考えてしまう。保護主義的な政策を本気で実行していってしまう場合は、世界経済全体に悪い影響が及び、成長や貿易が鈍ってしまう。
・さらに、共和党内の亀裂が一層深まることを警戒する見方もある。コーンNEC委員長の辞任で「自由貿易」という共和党の伝統的に大切な理念が覆されたと感じた党員の「トランプ離れ」が進むのではないか、ライアン下院議長が中間選挙で出馬を見送るのではないかといった観測である(「日本版ニューズウィーク」3月20日号)。
▽中間選挙の結果、弾劾手続きが開始される可能性も
・11月6日に投開票される中間選挙の結果、仮に民主党が上院だけでなく下院でも過半数を奪還するなら、トランプ大統領の弾劾手続きが開始される可能性が高まる。
・合衆国憲法第2条第4節は、「大統領、副大統領および連邦政府職員は、国家反逆、贈収賄あるいは他の重大犯罪や非行行為によって弾劾されたり有罪判決を受けたりした場合には解任されるものとする」と規定している。そして、罪を問う弾劾訴追を行う権限を下院に、弾劾裁判を行う権限を上院に付与している。下院は訴追に相当するかどうかを審議し、本会議で過半数の賛成があれば訴追される。そして、上院で行われる弾劾裁判は、訴追対象が大統領の場合は連邦最高裁長官が裁判長になって行われ、下院の代表が検察官役の訴追委員、上院議員100人が陪審員を務める。訴追された条項のうち1つでも出席議員の3分の2が有罪に投票すれば、大統領は罷免される決まりである(罷免の場合は副大統領が大統領に昇格する)。議員の過半数の同意により弾劾裁判を途中で打ち切ることもできる。
▽実際に大統領の弾劾裁判が行われた事例はこれまで2つ
・実際に大統領の弾劾裁判が行われた事例はこれまで2つしかない。ウォーターゲート事件で辞任したニクソン大統領(共和党)の場合、1974年に下院司法委員会が弾劾決議案を可決した時点で辞めており、弾劾裁判には至らなかった。 弾劾裁判の最初の事例は1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領(民主党・第17代)。この時は辛くも1票差で無罪が確定した。
・もう1つの事例は、1998~99年にクリントン大統領(民主党)の不倫もみ消し疑惑に関して行われた弾劾裁判である。1998年1月に疑惑が発覚し、スター独立検察官が捜査を開始。その捜査報告書に基づいて、偽証・司法妨害の2点について1998年12月19日に下院本会議で過半数が賛成してクリントン大統領は訴追され、上院に舞台を移して弾劾裁判が行われた。当時の上院の勢力分布は、共和党55、民主党45。政治的な駆け引きが展開された末、1999年2月12日に偽証・司法妨害のいずれについても無罪になった。投票結果は、偽証が有罪45・無罪55、司法妨害が有罪50・無罪50。罷免に必要な3分の2どころか過半数にも届かずに、クリントン大統領の無罪が確定した。
▽共和党員の「トランプ離れ」が加速しかねない情勢
・ここで興味深いのは、民主党議員45人に加えて共和党議員10人が偽証で、5人が司法妨害で、民主党の大統領であるクリントン氏の無罪に票を投じたことである。日本と違って米国の議会では党議拘束が基本的になく、議員個々人の見識・考え方に沿って投票するため、このような結果になった。
・すでに述べたように、トランプ政権内で国際協調派のシンボル的存在だったコーンNEC委員長の辞任により、共和党が伝統的に重視する自由貿易の理念が覆されたと感じた共和党員の「トランプ離れ」が加速しかねない情勢である。社会的ステータスや自尊心が強い共和党有力者の中には、同じ党でありながら「異端」とも言うべき存在であるトランプ大統領とあからさまに対立している人が何人もいる。
▽「そうしたシナリオ」を描いておく必要性が高まる
・11月の中間選挙については、上院で民主党が過半数を奪回するという見方が現時点では多い。一方、全員改選の下院については、ゲリマンダー(党利党略に基づいた選挙区の恣意的な区割り)の影響もあって、共和党が過半数を維持するのではないかという見方がなお多い。だが、3月13日に行われたペンシルベニア州の下院補選では、「ラストベルト」に属する共和党の強固な地盤であるにもかかわらず、民主党候補が大接戦の末に勝利しており、世論の大きな流れは明らかに民主党に傾いている。
・モラー特別検察官の捜査報告書がトランプ大統領による司法妨害などを示すものになり、下院本会議で過半数の票が入って同大統領が訴追され、上院で弾劾裁判が行われる。そして、過半数を有する民主党議員に加えて「トランプ離れ」した共和党議員からも賛成票が入り、大統領の弾劾がギリギリの票数で成立する。あるいは、ニクソン大統領の例にならい、弾劾プロセスの途中段階で、国民の信を失ったことを悟ったトランプ大統領が自発的に辞任する。
・そうしたシナリオを描いておく必要性が徐々にではあるが着実に高まっているように、筆者には思える。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/033100135/?P=1

第三に、在米の作家、冷泉彰彦氏が4月15日付けのメールマガジンJMMに掲載した[JMM997Sa]「シリア空爆、決断の背景にある国内事情」from911/USAレポートを紹介しよう。
・2018年4月13日、「13日の金曜日」の東部時間午後9時、トランプ大統領は緊急会見を行って、シリアのアサド政権に対する攻撃命令を下したと発表しました。1時間後の午後10時には、国防総省でマティス国防長官とジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長(海兵隊)が会見し、攻撃は完了したとしています。
・本稿の時点では、この攻撃に反発したロシアが安保理で攻撃への非難決議を行おうとして、否決されたというニュースがありましたが、それ以上の動きはありません。ちなみに、13日夜の会見については、トランプ大統領は「今後も続ける」ような言い方をしていた一方で、マティス国防長官は「一回限り」としており、政権内に分裂のあるような印象を与えていました。ですが、14日の時点では大統領からも「これで終わり」という発言があり、分裂ということではないようです。
・いずれにしても、奇妙な、そして異例づくめの「攻撃」でした。化学兵器の使用が疑われ、それに対する懲罰ニュアンスの空爆が行われたということでは、2017年4月にも同様の攻撃がありましたが、あの時点ではまだ「反アサド勢力」は抵抗を続けていました。また、アメリカはシリア領内におけるクルド勢力の支援、少なくともトルコ軍との間の「引き離し」は行っていました。また、ISISとの対決も続いていたわけです。
・ですが、その後、トランプのアメリカは「反アサド勢力」には特別な支援をしたわけではありませんし(その中のアルカイダ系との区別ができないという理由で)、またクルド系に対しては徐々に「見放す」姿勢に転じています。ISISに関しては、少なくともシリアでの拠点ラッカは陥落しました。そんな中、東グータ地区での反政府勢力の組織的抵抗は終わっています。
・ですから、今回の攻撃というのは、アメリカとしては「支援する勢力」もなければ「ISISのように少なくとも交戦し敵対する勢力」もありません。従って、純粋にアサド政権に対する懲罰という意味しかありません。この点が、2017年4月の空爆とは背景が異なります。また、2017年に関してはサリンの使用ということが、かなり濃厚であったわけですが、今回は恐らくは塩素ガスの使用だろうという中での攻撃となりました。
・では、一体何のために大統領は攻撃命令を出したのでしょうか。表面的には化学兵器を含む大量破壊兵器を「使わせない」ために、「使ったら懲罰する」という「レッドライン」を明確にするためという「大義」が掲げられています。また、このことは、北朝鮮に対する「核武装を許さない」というメッセージにもなる、そのような好意的解釈も全く出来ないというわけではありません。
・ですが、その奥には2つの目的があると考えられます。 1つは、自分は「ロシアと癒着している」とか「ロシアに弱みを握られている」という疑惑の目を向けられ、実際に自分の政権の周辺や顧問弁護士、選対メンバーなどが特別検察官の捜査を受けているわけです。この点に関して、「それは違う」ということを「自分はロシアと敵対できる」という行動によって証明したいという動機です。
・もう1つは、仮にこの攻撃がなければ、恐らくこの週末にはメディアを通じてある一つの言葉が「一人歩きを始める」可能性があったと思われます。その「一つの言葉」を少なくとも、この週末の48時間は社会から封じるため、そのような不純な動機も指摘できると思います。 その「一つの言葉」というのは「弾劾(インピーチメント)」という言葉です。
・2017年1月の就任以来、いや2016年11月に大統領選に当選して以来、トランプ大統領という存在に対しては激しい反発がありました。支持率も終始50%を切っており、40%前後で推移していますし、不支持という意思表明をした人の比率、すなわち「不支持率」は50%を常に超えています。 また、ロシア疑惑から下半身の問題に至るまで、スキャンダルには事欠かないですし、政治的にもツイートを使った「過激なパフォーマンス」は常に批判を浴びています。特に、今回の唐突な通商保護政策の表明には、市場も反応して乱高下を喚起しました。
・ですから、アメリカ人の、あるいはアメリカの世論の中には「大統領には早く辞めて欲しい」という気持ちはあるし、恐らくホンネの部分ではその声は50%を超えていると思います。  そうではあるのですが、これまでは「大統領をクビにする」つまり「弾劾(インピーチメント)」という言葉がメディアで使われることは稀でした。誰もが思っているのに口には出さないという一種のタブー感があったのです。ただ、そのタブー感には複雑な屈折があるというよりは、幾つかの思いが重なっていたように思います。 
・一つは、何と言っても合衆国大統領という存在の重みです。反対派にしてみれば「大統領としては不適格」であり「認めたくない」存在という実感は確かかもしれませんが、少なくとも過半数の票を獲得して、憲法の定めるところによって就任した大統領を「取り除く」というのは「余程のこと」だという感覚はあったと思います。
・また、過去の例との比較という問題もあるでしょう。大統領が実際に弾劾手続きに乗せられて、最後まで行かなかったものの、途中で辞任に追い込まれた例としては、1972年に発生し73年から74年にかけて本格的に発覚したウォーターゲート事件があるわけです。
・この時のニクソンに関して言えば、ドル防衛やベトナム和平、米中国交など大きな政治的成果を挙げており、事件発覚前は圧倒的な大差で再選された大統領でした。その同一人物が「実は民主党本部に忍び込んで盗聴」するという「コソ泥のような行為を指示」しており、それを「コソ泥レベルの」工作でもみ消そうとしていたこと、その過程で「信じられないような嘘」が露見するショック、「大統領にあるまじき」下品な会話の録音発覚など、虚像と実像の間の巨大な落差が発生したわけです。そのインパクトは激しいものがあり、最終的には与党共和党からも完全に見放された格好になりましたし、世論の見方も厳しいことになりました。
・更に新しいところでは、1998年に起きた「モニカ疑惑」問題があります。この時のビル・クリントンの場合は、大統領執務室における不倫行為という、極めて「破廉恥」な事件で告発を受けたわけですが、やはり「嘘をついていた」ということが問題になっています。98年と言えば、グローバル経済における成功でアメリカ経済が絶好調の時期であり、大統領への信頼も高かったのですが、その大統領が「恥ずかしいこと」をしており、しかも「堂々と偽証していた」ということのインパクトは大きなものがありました。
・尚、弾劾の手続きとしては、ニクソンの場合は、(1)下院司法委員会での弾劾勧告、(2)これを受けての下院本会議での決議による事実上の起訴、(3)下院決議を受けての上院における弾劾裁判という3段階の中で(1)が成立した時点で辞任しています。一方のクリントンの場合は、(1)だけでなく(2)も成立し、(3)の段階で辛うじて「3分の2には達しない」結果となって弾劾を免れたのでした。 
・この2大事件と比較すると、現時点でのトランプ大統領の立ち位置は異なります。まず、一つ一つのスキャンダルが小粒だということもありますが、それ以前に、根本的な違いがあると言えます。それはニクソンやクリントンを追い詰めた「品格の崩壊」と「虚偽の露見」という落差が構造的に「発生しにくい」ということです。
・どういうことかと言いますと、支持派であろうが反対派であろうが、「ドナルド・トランプ」には「品格」も「真実」も期待していないという大前提があるわけです。 勿論、反対派からすれば「品格がなく、虚偽を口にする」トランプというのは許し難い存在であるわけですが、支持派からすれば「偉そうな高学歴の政財界要人」こそ自分たちの敵であり、大統領の「品格のなさ」はそれ自体が正義という感覚があるわけです。そこには、根深い国家の分裂という問題があり、その分裂を前提にすることで「虚偽もまたもう一つの真実」という相対性と政治性が成立してしまっています。
・いずれにしても、それを「是とするか非とするか」は別として、トランプという人には「誰も品格を期待していない」し、同時にトランプの発言には「唯一の普遍的かつ本当の真実」というのも「誰も期待していない」のです。 ですから、いくらトランプの「品格」や「虚偽」を問題にしても、「多少のこと」では世論はビクとも動かないわけであり、例えば「通商戦争」や「ロシア疑惑の深化」更には「不倫もみ消し疑惑」などが大きな話題になる中でも、支持率は40%を大きくは割らないという構造があるわけです。
・もう一つ、「弾劾」という言葉が憚られる理由としては、先ほどの3つの弾劾プロセスを進めるには、大前提として(1)と(2)を成立させなくてはならないわけですが、そのどちらも、下院の過半数が必要ということです。つまり(1)の下院司法委員会での勧告決議を通すためには、司法委員会の人数割りで過半数を抑えなくてはなりませんが、そのためにも下院本会議での過半数が事実上必要になるわけです。
・現時点では、共和党は下院の絶対的過半数を擁しています。定員435(欠員5)で、共和党が237、民主党が193ですから、その差は圧倒的です。そして、下院の選挙区というのは、「現職有利」に地盤割がされており、これを逆転するのは困難と言われていました。ですから、この2月頃までは、2018年11月の中間選挙における下院の「逆転」はほぼ不可能と言われていたのです。そうなると、民主党としては弾劾を口にしても「虚しい遠吠え」のようなものでした。そんな中で、「弾劾(インピーチメント)」という言葉は事実上タブーになっていました。
・ですが、どうも先週の半ばぐらいから、その風向きが変わってきたのを感じます。 その変化というのは、まだ微妙なものであり、決定的なターニングポイントは来ていないのかもしれません。ですが、同時に、3月までとは明らかに違う「政治的な景色」になっているのもまた事実なのです。 例えばですが、先週4月20日の火曜日に、ホワイトハウスの定例記者会見で、CNNのエイプリル・ライアンという記者が「一連の混乱を受けて大統領が辞任する可能性はあるか?」という質問をして、セラ・サンダース報道官が「馬鹿馬鹿しい質問」と即座に「却下」したという事件がありました。この時は、漠然ではありますが「唐突な質問」というニュアンスがまだあったのです。
・ですが、その後、このライアン記者に「殺害予告」のような脅迫があり、ライアン記者はそれをFBIに訴えという流れになったのですが、そのような中で「辞任するのか?」という質問には、何らかの意味が出て来ている、そんな感じもあるのです。
・先週は、ミズーリ州の知事弾劾の可能性も話題になりました。ミズーリ州のグレイテンズ知事(共和)は、「不倫相手に対して不倫の事実を後悔したらヌード写真をバラまく」という脅迫を行なった容疑で、この2月に起訴されています。ですが、グレイテンズ知事は「これは政治的な魔女狩りだ」として一切を否認しています。 知事としては、トランプ大統領を真似て「居直り」を続ければ事実関係を「政治的な敵味方の論理」にズラす事ができる、そんな計算のようなのですが、州議会の議員たちはかなりカンカンになっており、共和党側からも「辞任しないのなら弾劾するしかない」という声が出ています。このグレイテンズ知事の「弾劾の可能性」という問題が、先週は何度もニュースで取り上げられる中、それが「トランプ弾劾」の可能性とダブって見え始めているという感触もあります。
・そのように、空気が変わって来たのには、いくつか理由があります。一つは、何と言っても連邦下院の選挙情勢の変化です。まず、3月13日に行われたペンシルベニア19区の補欠選挙で、あり得ないと言われた民主党の勝利が全米に衝撃を与える中で、改めて選挙情勢の変化が浮き彫りになりました。 磐石と思われた下院における共和党の「過半数確保」がジリジリと崩壊しつつあるのです。それは、共和党の票が民主党に流れ始めたということもありますが、共和党下院議員の「不出馬ドミノ」が起きているということもあります。 極め付けは先週発表になった「ライアン下院議長の中間選挙不出馬」という宣言です。家庭の事情というのが理由で、それはそれで根拠のない話でもないのですが、48歳の働き盛りの政治家が突如選挙に出ないというのは、相当なことです。議会共和党のリーダーとして敗北の責任を取りたくない、自分の小さな政府論と「減税+軍拡」に加担した事実に引き裂かれた、共和党内の左右対立をまとめ切れない、などの理由が考えられますが、一番の原因はトランプ政権の気まぐれにこれ以上「振り回されたくない」ということだと思います。
・そんな中で、ロシア疑惑を捜査しているムラー特別検察官の動き、またこれに同調して動いているFBIの捜査の動きも活発化しています。特に、先週からこの週末にかけて話題になっているのは、マイケル・コーエンというトランプの個人弁護士が司直の手によって厳しい追及を受けているという問題です。
・また、今週の火曜日、17日にはトランプがクビにした前FBI長官のジム・コミー氏の回顧録『より高きものへの忠誠』が発売になります。この本は、タイトルからして「大統領ではなく、より高いものとしての倫理や国家への忠誠を誓う」という極めて挑発的なものですが、大統領への露骨なまでの批判に溢れた本として、評判になっていました。シリアへの空爆は、この「コミー暴露本」のことが週末の話題になるのを「上書き」するという狙いもあるでしょう。
・現在進んでいる「特別検察官+FBI」の捜査というのは、一時期のロシアと経済的に癒着した側近の告発という段階を超えて、大統領本人に迫ろうとしています。そのストーリーは、どうやら次のような流れのようです。 まず「大統領は多くの女性と不倫し、そのことを顧問弁護士のコーエンなどが金や恐喝で口封じしてきた」ことを確実に立証しようとしています。その一方で、「2013年にロシアでも売春婦を大勢呼んだり破廉恥な行為を行っており、その映像などをロシア当局に押さえられて脅迫を受けている」ということの立証作業も続いているようです。
・ですが最大の問題は、大統領の積極的支持派は、トランプの「女性に対するだらしなさ」にしても「手段を選ばない豪快な生き方」にしても、「アンチ・エスタブリッシュメント」の象徴として「だからこそ庶民の味方」的な屈折した支持を与えているという問題です。ですから、捜査側としては反対派だけでなく、少なくとも中間派の世論に対しては「大統領はやはりひどい人物だった、裏切られた」と思われるような暴露をしなくてはならないわけです。
・その意味で、捜査は徹底を極め、いよいよ佳境を迎えているわけですが、反対にそのような捜査の対象となっているトランプの側としては、「政治的な陰謀」とか「魔女狩り」だという非常に強い反発になるわけです。一部の報道によれば、その反発が「ムラー特別検察官を何とかして解雇したい」という執念になっている、そのためにはムラー氏の任命権者であるロッド・ローゼンスタイン司法副長官を辞めさせたいという意向が見え隠れしていると言われています。
・仮にローゼンスタインを辞めさせて、トランプ派の代理なり後任を立てることができれば、ムラー特別検察官の解雇ができるというわけです。(セッションズ司法長官は、自分は選挙運動に関与しており利害関係があるので、特別検察官の任命権者であることを回避しています) ですが、まさにウォーターゲートの際のニクソンがそうであったように、この「特別検察官の解雇」というのは、自分を含めた行政府を捜査する存在の「独立性」を否定する行為になります。つまり、合衆国大統領が憲法による行政府への牽制を否定する、つまり憲政の危機を到来させる行為に他なりません。ニクソンはその禁じ手に走ることで、自滅して行きましたが、トランプの場合も同様であると言われています。
・そのローゼンスタインに関する人事問題も、この週末には極めてホットな話題になっていました。そして、大統領としては、TVニュースや新聞、ネット、そして人々の口を通じてこの「ローゼンスタイン問題」が語られるのも、大いに嫌がっていたに違いありません。 ちなみに、ローゼンスタイン氏自身は、司法省の倫理委員会に出頭して、「自分がムラーの任命権者であることに、法的な利害対立関係のないこと」を証明しようと動いたようです。ということは、万が一自分が解雇された場合に、それ自体が憲政の危機になるように、厳重な予防線を張ったという理解が可能です。 
・いずれにしても、この週末、本来であれば「ライアン不出馬=下院過半数喪失の可能性」「顧問弁護士への捜査=トランプの不倫口封じ問題進展」「コミー回顧録出版=ローゼンスタイン解雇問題=憲政の危機」という3点セットが、ニュースメディアには溢れるはずでした。 そして、そのことは「弾劾(インピーチメント)」という言葉を一気にタブーから解き放つことになったかもしれません。残念ですが、それを避けるというのが、今回シリア空爆へ踏み切った最大の動機であると思われます。そして、仮にそうであれば、そのこと自体がこの政権が既に末期的状況を呈してきたことを示しています。 

第一の記事で、 『FOXニュースの最高経営責任者だったロジャー・エイルズが、「国じゅう、いや地球じゅうを見渡しても、ドナルドほど医療保険に無知な人間はいない」』、と言ったというのは、トランプ派の人間が発しただけに、真実味がある。 最後の部分の 『トランプ政権の幹部たちは、選挙中に駐米ロシア大使やロシアのエージェントと密会していたことが次々に明らかになっている。どうしてこんなことをしたのか。大統領になった後、大問題になるのは明らかなのに。そんな私の疑問は、この本で解消された。陣営の誰もが、トランプ氏が大統領になるとは思っていなかったからだという』、というのはなるほどと納得である。
第二の記事で、 『打ち出された政策を大統領がどこまで「本気」で実行するつもりでいるのかは誰にもわからない。「ディール」の流れ次第で落としどころが変わる話だとするならば、大統領本人も事前に決着点を決めていないのかもしれない。そうした悪い方向の不確実性を市場は本質的に好まず、「リスクオフ」へと傾きやすくなる』、というのは、まさにトランプ・リスクだ。 『トランプ大統領は「単独飛行」を始めた』、 『「行き先」はとんでもない場所になりかねない』、というのはその通りだろう。 『中間選挙の結果、弾劾手続きが開始される可能性も』、ということであれば、安部首相は首脳会談でトランプの要求に即答せず、先延ばしする方がよさそうだ。
第三の記事は、さすが冷泉氏だけあって、深く読ませる内容である。 シリア攻撃に関して、 『今回の攻撃というのは、アメリカとしては「支援する勢力」もなければ「ISISのように少なくとも交戦し敵対する勢力」もありません。従って、純粋にアサド政権に対する懲罰という意味しかありません』、というのは確かにその通りだろう。 『この週末、本来であれば「ライアン不出馬=下院過半数喪失の可能性」「顧問弁護士への捜査=トランプの不倫口封じ問題進展」「コミー回顧録出版=ローゼンスタイン解雇問題=憲政の危機」という3点セットが、ニュースメディアには溢れるはずでした。 そして、そのことは「弾劾(インピーチメント)」という言葉を一気にタブーから解き放つことになったかもしれません。残念ですが、それを避けるというのが、今回シリア空爆へ踏み切った最大の動機であると思われます。そして、仮にそうであれば、そのこと自体がこの政権が既に末期的状況を呈してきたことを示しています』、には、動機の余りの不純さに驚かされた。トランプはもっと単純な単細胞人間と思っていたが、やはり相当、したたかなようだ。ただ、その効果は単に先延ばししているだけなので、いずれ弾劾がタブーから解き放たれることになるだろう。中間選挙の行方と並んで、先行きの注目点として見ていきたい。
タグ:池上 彰 「池上彰が斬る米国の内幕「炎と怒り」の本質 トランプ陣営は元々選挙に勝つ気がなかった」 日米首脳会談 、『炎と怒り――トランプ政権の内幕』 東洋経済オンライン トランプ大統領 (その30)(池上彰が斬る米国の内幕「炎と怒り」の本質、危うすぎるトランプ「単独飛行」 11月中間選挙を経て「弾劾裁判」の可能性、シリア空爆 決断の背景にある国内事情) 「ドナルドほど医療保険に無知な人間はいない」 上野 泰也 日経ビジネスオンライン 「危うすぎるトランプ「単独飛行」 11月中間選挙を経て「弾劾裁判」の可能性」 11月に行われる中間選挙を念頭に置いた政策 トランプ大統領は「単独飛行」を始めた 「行き先」はとんでもない場所になりかねない 中間選挙の結果、弾劾手続きが開始される可能性も 共和党員の「トランプ離れ」が加速しかねない情勢 冷泉彰彦 JMM ]「シリア空爆、決断の背景にある国内事情」from911/USAレポート 今回の攻撃というのは、アメリカとしては「支援する勢力」もなければ「ISISのように少なくとも交戦し敵対する勢力」もありません。従って、純粋にアサド政権に対する懲罰という意味しかありません この週末、本来であれば「ライアン不出馬=下院過半数喪失の可能性」「顧問弁護士への捜査=トランプの不倫口封じ問題進展」「コミー回顧録出版=ローゼンスタイン解雇問題=憲政の危機」という3点セットが、ニュースメディアには溢れるはずでした そして、そのことは「弾劾(インピーチメント)」という言葉を一気にタブーから解き放つことになったかもしれません。残念ですが、それを避けるというのが、今回シリア空爆へ踏み切った最大の動機であると思われます。そして、仮にそうであれば、そのこと自体がこの政権が既に末期的状況を呈してきたことを示しています
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自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その7)(陸自の攻撃ヘリ部隊はすでに瓦解している、「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由、自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由) [外交・防衛]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、昨年11月12日に取上げた。今日は、イラク日報問題は別途取上げるとして、(その7)(陸自の攻撃ヘリ部隊はすでに瓦解している、「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由、自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由)である。

先ずは、軍事ジャーナリストの清谷 信一氏が2月10日付け東洋経済オンラインに寄稿した「陸自の攻撃ヘリ部隊は、すでに瓦解している 墜落事故を機に長年の課題に向き合うべきだ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2月5日、佐賀県神埼市の住宅街に陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)所属の「AH-64D(アパッチヘリコプター)」が墜落する事故が発生。乗組員2人が死亡し、激突して炎上した住宅の小学5年生の女児が軽傷を負った。
・この事故に関して筆者は複数の陸自航空隊OBに意見を求めた。そうしたところ、見解はほぼ同じ。整備後は地上で十分な試運転を行っており、その後飛行試験をするため、整備不良であれば地上試験で気がつくはずで、部品の不良を疑うべき、とのことだ。いまだ調査の結果が出ておらず、現段階で原因などを安易に推測するのは避けるべきだが、部品不良の可能性は高いといえるのだろう。
▽調達価格が予定外の高騰
・今回の事故を機に、陸自のヘリに対する関心が高まっている。この機会に、AH-64Dそのものの問題、さらにはヘリ部隊の運用全体の問題について論じたい。 陸上自衛隊は2002年からAH-64Dの導入を、富士重工(現SUBARU<スバル>)のライセンス生産により開始した。当初62機を調達する予定だったが、陸幕(陸上自衛隊幕僚監部)は調達開始からまもない2006年ぐらいから、急に調達をやめると言い出した。
・その理由について陸幕は、米国が64D型から64E型に移行して追加発注ができなくなる、部品がなくなる、調達価格が予定外に高騰した、などと説明してきた。 だが内部関係者によると、調達をやめた最大の理由は、ボーイング社がアパッチの生産を終了すると聞いて狼狽したからだ。ボーイング社は韓国が採用したF-15Kのオフセットとして2003年からアパッチの組み立てラインを韓国に移管したが、2006年から新規の胴体の製造が止まり、D型からE型へのアップグレードだけに対応することになった。
・だが、「実は生産ラインが止まるまで相当期間があり、それまでのペースで調達しても30機程度は調達できた。一部を安い輸入に切り替えれば予定数はほぼ調達できたはずだ」と当時の調達関係者は語る。 陸幕の担当者とスバルは、2006年に単年度で10機ほどをまとめて調達しようと画策したが、当時は装備の「まとめ買い」というシステムがなく(注:2007年からは可能になっている)、単年度の調達だと予算が膨大となり、また中期防衛力整備計画で定められた機数を超えるので実現できなかった。そこで陸幕と防衛省は、性急に調達中止を決定したというのが真相のようだ。
・実際に調達打ち切りが決定されたのは合計10機が調達された2007年だ。先述のように皮肉にも、この年から防衛省の装備のまとめ買いが始まっている。当時は当初かかった生産設備などの初期費用などを機体に按分していたために、わずか10機で調達を打ち切られると、スバルは初期投資費用を回収できなくなった。
・だが、陸自は62機調達する契約はしていないとして、2007年にその費用を払うことを拒否し、調達中止を宣言したのだ。恐ろしいことにライフ・サイクル・コストが2000億円を超えるプロジェクトで契約が結ばれずに、口約束で調達が開始されるのだ。このため2010年、スバルは初度費用などを求めて訴訟を起こすこととなった(過去記事「富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明」参照)。 この訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定した。
▽たった13機では部隊としての運用ができない
・訴訟と並行して防衛省は2011年度から2013年度までに毎年1機ずつ予算計上して3機の追加発注を行い、合計13機の調達を行ったところで、AH-64Dの調達は終了した。この一件によって防衛省は2008年から装備調達の初期に、「初度費」という費用を別途払う制度を導入している。だが、調達方式の抜本的な見直しを行ったわけではない。
・実は2010年から米軍のアフガンの戦闘などでの損耗機体の補充などの理由もあって、新規の胴体の製造が再開されたが、陸幕はすでにアパッチ調達は終わった計画だとして、決定した13機以降の調達の再開は行われなかった。
・だが、たった13機では訓練や整備、人事のローテーションを考慮すれば、実際に常に稼働できるのは5~6機程度しかない。これでは部隊としての運用は困難だ。しかも整備予算を十分に確保できず、飛行可能な機体であっても射撃ができない機体もあるという。こんな状態では、事実上、攻撃ヘリ部隊して戦力化されたとは言いがたい。 通常軍隊では部隊の3割が撃破されると組織的な活動が不可能となり「全滅」と判断される。この伝でいくと、射撃のできない機体もある陸自のAH-64D部隊は、戦う前からして「全滅」しているともいえるだろう。
・現在、陸自ヘリの稼働率は、公表はされていないが、関係者によると平均で6割程度という。これは整備予算が減らされていることが大きいという。飛行時間も10年ほど前は年220時間程度だったものが、現在では年120時間程度に減らされているという。飛行時間が減ることは搭乗員の技量が落ちるということだ。 のみならず整備の頻度も減るので整備員の練度も低下することを意味している。その分事故が発生する可能性は増大する。また複数の関係者によるとスバルのIRAN(Inspection and Repair As Necessary:機体定期修理)に出すと、悪くなって返ってくるという証言もある。
▽AH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了
・しかもつねに災害派遣という「実戦」に投入される可能性がある汎用ヘリの稼働率維持が優先され、戦闘ヘリや偵察ヘリの稼働率は後回しにされる傾向がある。 その上、AH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了する。さらに2019年頃から部品の枯渇が始まる。米軍や主要ユーザーはE型に移行しているので痛くもかゆくもないが、D型を使用している陸自の機体は、全機とも射撃が不可能になるなどの障害が出る可能性が高い。部隊としての戦闘力はさらに低下するどころか、2025年を待たずに、まったく稼働できない事態すら推測される。
・このような部隊を多額の税金を投じて維持を続ける合理的な意味はない。たとえばまったく使用されない空港や道路を巨額の費用をかけて建設し、これまた多額の費用と人員をかけて長年維持するようなものだ。単に税金の無駄遣いでしかない。 その揚げ句に民間を巻き込んで事故を起こしてしまった。命を落とすことになった現場の隊員にとっては、大きな悲劇だ。10機で調達を諦めた段階で、全部廃棄して部隊を解散し、他のリソースにつぎ込んだほうがよかったのではないだろうか。
・ヘリ部隊はほかにも問題を抱えている。本来AH-64Dで更新されるはずの旧式攻撃ヘリ「AH-1S」も問題だ。AH-1Sは90機調達されたが、現在残っているのは半分の45機程度で、しかもどうにか稼働している機体はそのうち3分の2程度であるという。
・稼働率が低いだけでなく旧式化したAH-1Sの対戦車ミサイルは命中するまで1分以上空中に停止してミサイルを誘導しなければならず、今日では生存性が極めて低い。だがAH-1Sは近代化も、延命措置や近代化は行われておらず、これまた多額の費用をかけて部隊を維持する必要性は極めて低い。赤字を垂れ流すだけのAH-1Sの部隊もすぐさま解散するべきだ。
・これらの事実をみれば、陸自のヘリの調達と運用がいかに大きな問題を抱えているかがわかるだろう。まず実質戦力とは言えない状態のままにするのであれば、攻撃ヘリは不要だ。AH-64DやAH-1Sは即座に廃棄して部隊を解散し、隊員をほかの任務に回したほうがいい。浮いた費用はネットワークの充実やサイバー戦機能の向上などに振り向ければ、よほど国防に資する。偵察ヘリも、調達・運用コストが安く信頼性の高い機体に更新すればいい。
・実際のところ、陸自の航空隊に予算の余裕はない。ティルトローター機であるMV-22オスプレイが陸自に17機配備されるが、その調達費用3600億円はおおむね陸自のヘリ調達予算の10~12年分である。オスプレイ1機の整備費は年間約10億円といわれており、17機ならば170億円だ。対して陸自のヘリの整備予算は年間220億円程度にすぎない。オスプレイがそろえばその3分の2を食うことになる。そうなればただでさえ不足している維持整備費は逼迫を免れない。 現状を放置するならば整備予算不足のために、墜落事故が多発する可能性が極めて高い。
▽では、どうすればいいか?
・筆者は、攻撃ヘリが必要なのであれば、現在のAH-64DをE型にアップグレードし、さらに1個飛行隊と予備機を合わせ、現存12機に新たに18機ほど加えて30機程度の体制とするのが現実的な選択だと考える。  こうすれば、既存のアパッチの機体とインフラを生かせる。追加の機体は国内メーカーによるライセンス生産でなく、コストが安く早期に調達が完了する輸入で調達するべきだ。輸入であれば調達単価は80億円程度で、スバルの生産ラインを復活させて国産化するよりも半額程度で済みそうだ。この2個飛行隊を陸自のネットワークの基幹とし、空海自、米軍との共同作戦能力を獲得するべきだろう。
・現在の陸自の予算では元の計画の62機の調達は不可能だ。数が足りないのであれば、武装型の軽汎用ヘリ、無人攻撃機、あるいはターボプロップエンジンのCOIN機(軽攻撃機の一種)など、より安価なシステムを組み合わせるという発想もある。COIN機であればAH-64E2機分の値段で1個飛行隊と予備機をそろえることができる。維持整備費も1ケタ安い。米空軍では、ゲリラ部隊と戦うような非対称戦においてはCOIN機を使用する「OA-X」という計画を進めている。
・そもそも攻撃ヘリにどのような任務を与えるのか、またその任務をほかのプラットフォームで代用できないか、という点も検討するべきだ。 陸自はメンツに固執することをやめて現実を直視すべきだ。その上でスクラップ&ビルドを行い、現実的かつリーズナブルな航空兵力を整えればいい。そうでなければ抑止力にも戦力にならない部隊に無駄な税金を使い続けることになる。さらに、整備費不足の無理がたたり、今回のような墜落事故が多発する事態にもなりかねないのである。
https://toyokeizai.net/articles/-/208101

次に、ガバナンスアーキテクト機構研究員の部谷 直亮氏が3月28付けJBPressに寄稿した「「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由 防衛予算の8%を費やして中国を喜ばせるだけ?」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・2017年末から、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」級を、F-35B戦闘機を搭載可能な「空母」として改修する話が相次いで報道されている。2018年3月2日の参議院予算委員会では、小野寺五典防衛大臣が「いずも」でF-35Bの運用が可能かどうかを調査していることを明らかにした。
・しかし単刀直入に言って、いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策である。以下ではその4つの理由について論じよう。
(1)高額な改修費がかかる
・第1の問題点は、高額な改修費である。この点に関して、「Defense News」誌で日本関連記事を数多く執筆していたカイル・ミゾカミ氏が、技術誌「Popular Mechanics」で具体的な論考を行っている。彼の主張は以下のとおりである。 いずも空母化を日本政府が決断した場合、(1)F-35Bの離着陸時の排気ガスの高熱に耐えうるための甲板の耐熱コーティング、(2)艦首の邪魔な近接防御火器システムの撤去、(3)F-35特有の部品管理システムALISの艦船版の組み込み、(4)1隻につき艦載機たるF-35B12機の導入などが必要になる。これらの改造費として、船舶の改修費が5億ドル、F-35Bが14億ドルかかる。
+要するに「いずも」「かが」を空母化すれば、約38億ドル(約4000億円)の予算がかかるのである。これは日本の年間防衛費の7.7%に匹敵するコストである。装備品の調達コストで見れば14.6%を占めることになる。しかも、補修パーツ対空ミサイル・誘導爆弾・航空燃料等の積載増加により、艦内のスペースが食われることになり格納能力も低下すると指摘している。
+いずもの空母化ですらこれなのだから、一説に言われている「おおすみ」級の後継艦でより本格的な「空母」(実態は強襲揚陸艦に過ぎないが)を建造すれば、コストは柔軟性と余裕に乏しい防衛費をさらに圧迫するだろう
(2)政治的効果が見込めない
・第2の問題点は、その改修費に見合う政治的効果が見込めないことである。 政治的効果を発揮できないことは、隣国の中国の「遼寧」を見れば分かる。「遼寧」は24機の戦闘機を中心に艦載しているが、これに政治的な影響力があるだろうか。先日も台湾海峡を航行したが、何か具体的な影響をもたらしたのだろうか。我々は「遼寧」を脅威に感じているだろうか? 決してそんなことはない。
+なぜか。それは第1に「遼寧」が米空母に比べるとあまりに小型であり、なおかつ中国の空母が「現在」は1隻しか存在しないからである。そして第2に、トータルの武力が劣るからだ。米空母が大きな政治的効果を発揮するのは、単体での巨大さや艦載機数や空母の数の多さもさりながら、その後の米軍の大規模な武力行使の先駆けとなる存在だからだ。だが、中国にはそのいずれもない。タイの空母「チャクリ・ナルエベト」、インドの空母「ヴィクラマーディティヤ」についても同様のことが言える。
+日本も同様だ。「いずも」を空母化したところで、F-35Bとはいえせいぜい10機前後と米軍の強襲揚陸艦(ワスプ級は6~20機搭載可能)以下の艦載機でしかない。しかも「いずも」「かが」のたった2隻である。「おおすみ」級の後継艦を入れても4隻では、常時1~2隻の展開がやっとだろう。強襲揚陸艦の1隻や2隻に何の政治的効果があるのか。なお、米軍の強襲揚陸艦は世界中を移動しているが、その1隻の動向が注目されることはない。しかも、「いずも」空母化で海自のその他の戦力は予算・人員を吸収され弱体化するので抑止・対処力も低下する。
+また、ネット上の一部では、日本の空母が東南アジア諸国との訓練や協力を図れば大きな政治的効果があるという声も聞かれるが、これについても、強襲揚陸艦でしかない“自称”空母である必然はない。政治的影響力を拡大させようとするならば、装備移転や能力構築の方がはるかに効果・効率的(経済成長も見込める)だろう。 
+その点で日本は中国、韓国の後塵を拝している。中国はタイ、ミャンマー、バングラデッシュなどに兵器を輸出している他、タイとの間では無人機を含む軍需製品の現地生産まで調整が進んでいる。韓国も、トラックや潜水艦をインドネシアに、インドにはK-9自走砲を、フィリピンにはFA-50戦闘機を輸出している。こうした武器輸出や能力構築は、維持整備や教育訓練もセットになっている。そのため、輸出先の軍事組織が輸出元のシステムで何十年も稼働し、教育担当の軍人を配置できるメリットがあるのである。
+中国や韓国は既にそうした状況を作り上げつつあるのに、我が国は無縁である。現在はパプアニューギニアの軍楽隊支援、法律等の勉強会の開催、TC-90供与など、きわめてシャビーな活動しか行っていない。しかも、外務省と海保が巡視船をマレー、ベトナム、フィリピン等にODA等により供与していることを考えれば防衛省自衛隊の装備移転の遅れは際立っている。
+こうした状況を考えれば、強襲揚陸艦が東南アジア諸国に短期間寄港するより、武器輸出や能力構築を進めた方が、はるかに持続的で高い影響を誇ることができるのは明白である。しかも、日本の経済的な利益にもつながる。つまり、「いずも」「かが」に約4200億円を充てるよりも、その予算を今後10年間の防衛装備品の移転や供与支援に充てる方がよほど効果的だろう。
(3)軍事的効果が乏しい
・第3の問題点は、軍事的効果が乏しいということだ。 まず、空母化した「いずも」は戦局が圧倒的に有利でなければ投入できない。例えばフォークランド紛争においてアルゼンチン軍は空母を前線に投入できなかった。あまりにも虎の子過ぎる戦力は活用できないのだ。もし日中紛争時にいずもが撃沈されれば国内外の世論がどうなるか想像してみほしい。もしくは温存しすぎた挙句、戦局が決定的に不利となり、その無策への批判を恐れて戦艦「大和」のように沖縄にでも特攻させるのがオチだろう。
+費用対効果の悪さも問題である。ここで比較対象となるのは中国のA2/AD戦力だ。中国は米軍の地域における戦力と来援戦力を叩き潰すための戦力を重点的に整備している。内容は、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー攻撃、ゲリラコマンド攻撃、潜水艦戦力等の強化である。
+中国の対艦弾道ミサイルDF-21は、1ユニット6~12億円。それに対していずもは1隻1200億円であり、空母化すれば3300億円である。つまり中国にとっては、いずもにDF-21を225~550発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。たしかにDF-21対艦弾道ミサイルの命中率には議論があるが、大量の発射でカバーできるし、母港に停泊中であれば命中率は問題ではなくなる。そもそも自衛隊はドローン攻撃に対して110番通報しかできない現状では、「いずも」もドローンで一部機能を無力化されかねない。甲板上のF-35Bを破壊されれば目も当てられないことになる。
+ 他方、南西諸島の島々は、下地島をはじめ滑走路(弾道ミサイルを吸引するおとりとしても)として活用できる余地がある。また、民間空港の有事転用の訓練や装備は空自にはほとんどなく、これも改善の余地がある。そして、米軍や自衛隊の保有する空中給油機を使えば、海上基地がなくとも展開可能である。KC-767空中給油機(1機223億円)を増勢する方が効果的であろう。
(4)海自をさらに疲弊させる
・第4の問題は海上自衛隊の疲弊を加速化させかねないことだ。 海自ではダメージコントロールを中心に省力化が進まないのに、艦艇を大型化し、艦艇を増勢し、様々な任務を増やした結果、充足率は危機的な状況である。しかも、予算要求上の都合から艦艇不適の人間も艦艇の充足率に含めてしまっており、見かけ上の充足率より実は低くなっている。そして、それはさらなるブラック化、充足率の悪化を招くという悪循環に陥っているのである。そのため近年の一部艦艇では、地方総監部が行うべき事務業務を艦艇でも行うという中世のような勤務が行われている。
+このような現状で空母化や空母の導入を行い、海外への展開を増加させるというのは、自衛隊を破滅に追い込むだけである。
▽「個別の装備品」議論から脱却せよ
・そもそも、個別の装備品の導入が最初に議論されるというところに、日本の安全保障論議の欠陥がある。例えば、治水行政を語る際に「このブルドーザーやダムを導入すれば良い」というような議論があるだろうか。医療行政を語る際に「このレントゲン機器を導入すべきだ」といような議論があるだろうか。企業の経営戦略を論じる際に「この工作機械を導入するべきだ」で始まる議論があるだろうか。どの分野の政策議論でも、個別の装備の導入が議論の入口になることはない。ところが防衛分野だけがその種のいきなり手段から議論に入って、目的や目標を後付けで語るか無視するような議論を繰り広げている。要するに空母導入の政治的・軍事的意味を単独で云々すること自体が児戯に等しいのだ。
・諸外国では、現在の戦略環境や作戦環境を議論した上で、戦略と作戦構想を設計し、その上でいかなるドクトリンを採用し、それに見合った装備は何かという議論をしている。だが、我が国だけはなぜか個別の議論が必要か否かが最初に出てきてしまう。だが、それは日本の戦略・作戦環境に最適な戦略と作戦構想とその延長のドクトリンを整理・議論した上で行われてしかるべきものである。
・不毛ないずも空母化論争は打ち止めにして、そろそろ、兵器評論や論争ではなく、戦争指導も含めた戦争全般に関する議論こそ始めるべきだろう。兵器評論はその後だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52667

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が4月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・4月7日、島嶼防衛部隊「水陸機動団」(2100人、将来3000人)の発足を祝う「隊旗授与式」が佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で行われ、式典後にはヘリコプター、水陸両用車を使って、敵が占拠したという想定で島への上陸作戦の展示訓練も行われた。
・その映像をテレビで見ていると、第2次世界大戦での硫黄島、沖縄、アッツ島やグアム、サイパンなど、10以上の島々での守備隊の悲惨な「玉砕」を思い起こし、暗い気持ちにならざるを得なかった。 島の争奪と防衛に決定的な要素は制空権と制海権(空と海での優勢)を確保することであり、それが失われると、孤立し、補給も来援も途絶した島嶼防衛部隊は全滅が必至だ。
▽「水陸機動団」が創設されたが重要なのは制空、制海権
・こちらが島の周辺海域で制海、制空権を握っていれば、相手が島に上陸作戦を行おうとしても、海上で敵の輸送艦は撃沈され、輸送機も撃墜されるから相手にとっては自殺行為だ。 仮にこちらの隙を突いて上陸に成功しても、補給さえ断てば敵は遅かれ早かれ降伏するか玉砕するしかない。 尖閣諸島など南西諸島の防衛を考える際の要点は一にも二にも制空権で、それに制海権も付随する。
・だが航空自衛隊が東シナ海で優勢を確保できる公算は低い。中国軍にとっては、北方でのソ連の脅威が去った今日、東シナ海は台湾との軍事衝突を想定した場合の最重要の「台湾正面」であり、その正面を担当する東部戦区には新鋭機が優先的に配備されている。
・東部戦区の中国空軍は10個戦闘機部隊(旅団あるいは連隊)で戦闘機約240機を持つと推定される。 うち旧式の戦闘機である「J7」と「J8」で構成されるのは3個隊だけで、他の7個隊(約170機)はロシア製の「Su30」や国産の「J10」など、米国のF15、F16に一応、匹敵する「第4世代戦闘機」を持つと考えられる。また海軍東海艦隊の航空隊は新鋭戦闘機2個連隊(40機余)を持つと見られる。
・これに対する台湾空軍は戦闘機400機余を持ち、うち「第4世代戦闘機」は190機だ。 当面の航空戦力はほぼ拮抗か、台湾優位と思えるが、中国は全土に戦闘機1300機余、うち第4世代戦闘機710機余を持つから、有事の際には他地域の部隊も台湾正面に移動展開が可能だ。
・一方で、航空自衛隊は那覇にF15戦闘機約40機を配備しているほか、福岡県築城にF2戦闘機約40機、宮崎県新田原にF15約20機がいる。このうち40機を防空に残せば、尖閣上空には20機を出動させることができる。 だが九州の基地から尖閣諸島へは約1000kmだから行動半径ぎりぎりで、上空で待機、哨戒するには空中給油が必要だ。中国沿岸からは約400kmだから、中国空軍にとってはるかに有利な場所だ。
・中国空軍のパイロットの年間飛行訓練は、かつては70~80時間程で、練度は低かった。だが一時は4500機もあった戦闘機は、単価の高騰のため1300機程に減り、財政全体にも余裕が生まれて、今日では訓練飛行は年間約150時間とされ、日本と同等だ。
・日本側が尖閣上空に出せる戦闘機は那覇の40機と九州から20機の計60機、中国は海軍航空隊を含め、200機程の第4世代戦闘機を出せるから、数的には日本は3対1の劣勢となる。 大型レーダーを積み、敵機を遠距離で発見する「空中早期警戒機」の性能の差や、電波妨害などの「電子戦」能力では日本が当面優位と思われるが、それで3対1の劣勢を補えるかどうかは大いに疑問だ。
▽どちらに転んでも「尖閣防衛」には役立たない
・もし制空権と、それに伴う制海権を十分に確保できないまま水陸機動団による島の奪回作戦が発動されれば、輸送艦は中国の空対艦ミサイルの標的となり、「オスプレイ」やヘリコプターは簡単に撃墜される危険が大きい。 仮に上陸、制圧に成功しても、補給が続かなければ、第2次世界大戦時と同様、兵は餓死の渕に立たされる。
・制空権、制海権が確保されるまで「水陸機動団」を出動させなければよいが、島を占拠されたとなれば、「水陸機動団は何をしているのか」との批判が出て、政治家やメディアもそれに乗る可能性がある。こうした声に押されて水陸機動団が危険を冒して出勤し、海上で全滅の事態も起こりかねない。
・真珠湾攻撃の前、陸軍は「海軍の方から対米戦争に勝ち目はない、と言ってもらえまいか」と内閣書記官長(今の官房長官)を通じて事前に働きかけた。だが、海軍は「長年、対米戦準備のためとして予算をいただいて来たのに、今さらそんなことは言えません」と断り、日本は勝算のない戦争に突入した。
・こうしたことは日本だけではない。どの国の軍も巨大な官僚機構で、組織の防衛と面目の維持を第一としがちだから、そのために部隊を犠牲にすることが起こる。 その最も顕著な例は、第1次世界大戦末期のドイツ海軍だ。 敗色濃い中、巨費を投じた「大海艦隊」は出動すれば英海軍に撃滅されるのは必定だったから、港内に引きこもっていた。 だが、海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命した。  制空、制海権が十分に確保されない場合、「水陸機動団」が出動しなくても、メディアや政治家はそれを「臆病」と非難しないよう、気を付けねばならない。
・一方、制空、制海権が確立していれば、まず相手は攻めて来ないし、仮に上陸しても、補給が切れて立ち枯れになるのを待てばよい。この場合にも「水陸機動団」の出動を急がせるのは、無駄に死傷者を出すだけで愚策だ。 どちらに転んでも「水陸両用団」の創設は無駄と考える。
▽予算獲得の思惑 ヘリ空母改修も「便乗」
・そもそもどうして「水陸機動団」が作られることになったのか。 陸上自衛隊が「南西諸島防衛」を主張し始めたのは、ソ連の崩壊後だ。 それまではもっぱらソ連軍の北海道侵攻への対処を主眼としていたが、その可能性が消えたため、大幅削減の“危機”に直面した陸上自衛隊は次の存在目的を南西諸島に求めた。  当初、海上、航空自衛隊では「陸上自衛隊は苦しまぎれにそんなことを言い出した」と冷笑し、「対艦ミサイル・ハープーン搭載の潜水艦を1隻出しておけば十分ですよ」とか、「航空優勢さえ確保すれば相手は来られませんよ」との声を当時、よく聞いた。
・だが、「南西諸島防衛に必要」と言えば、海上、航空自衛隊も予算が取れる、と分かってそれに便乗し始めた。 ヘリコプター空母「いずも」(満載時2万6000トン)を、来年度に始まる次期中期防衛力整備計画で改修し、垂直離発着が可能なF35Bステルス戦闘機を搭載、対空、対艦船、対地攻撃能力を持つ空母にすることも真剣に検討されているが、これも便乗の一例だろう。
・海上自衛隊は私が防衛庁担当になった1960年代から、空母を持つことを悲願としてきた。 当初は「水上艦の速力を上回る30ノット以上の速力で潜航するソ連の原子力潜水艦を追うには、ヘリコプターが必要」との論で、それには合理性があると私も同意していた。 だがその後、大型護衛艦が各3機の対潜水艦用ヘリを搭載、中型護衛艦もヘリ1機(別に予備1機)を積むようになったから、潜水艦対策にヘリ空母を持つ必要はなくなった。
・だが海上自衛隊はヘリ空母をあきらめず、ソ連が1991年に崩壊し、その400隻近い巨大な潜水艦隊が今日の62隻(うち旧式30隻余)にまで減少する時期になって、ヘリ空母「ひゅうが」(満載時1万8000トン)と「いせ」(同型)を2009年と11年に就役させた。さらに「いずも」(同2万6000トン)と「かが」(同型)が2015年と17年に就役した。
・特に「いずも」「かが」は計画当初からヘリ空母ではなく、普通の空母への転用を目的として造られたことは、航空機を格納甲板から、飛行甲板に上げるエレベーターの配置などから明白だった。 飛行甲板の塗装をジェット噴気に耐える耐熱塗装とし、その先端を少し上に反らした「スキージャンプ」に改装し、垂直離着陸機が短距離を滑走して発艦できるようにし兵装の搭載力を増すようにすれば、対空、対艦、対地攻撃力を持つ小型空母になる。
・現状での搭載機数は、中型、大型のヘリ計14機だが、2万6000トンという大型艦だから、改装により搭載機をさらに増やすことも可能と考えられる。 仮に20機を搭載するとすれば、F35Bを14機、遠距離の敵機を探知するための早期警戒機を4機、発着艦の失敗で海に落ちた機のパイロットを救うための救難ヘリが2機、となるだろう。
・米空母は、早期警戒機として皿型のレーダーアンテナを付けた双発ターボプロップのE2Dを4機積むが、これはカタパルト(発進加速装置)がないと発艦できない。だから「いずも」級では、垂直離着陸ができるV22(オスプレイ)の胴体上部に「平均台」と呼ばれる細長いレーダーアンテナを付けることになるかもしれない。
・だが、F35Bが14機程度では戦闘能力は限られる。米空母は平時には約60機を搭載、うち44機が戦闘・攻撃機だ。尖閣諸島周辺では中国の第4世代戦闘機約200機が活動可能で、日本の空母から14機が戦列に加わっても大勢は変わらない。 同型の「かが」を改装して参加すれば計28機になるが、軍艦は1年のうち3ヵ月はドックに入って定期点検、修理をするし、それが終わって再訓練をした後に配備につくから、米海軍では空母1隻を運用するには3隻が必要とされている。
▽空母保有は「国家的虚栄心」 対中では潜水艦のほうが有効
・米国以外に空母を持つ国としては、中国が「遼寧」のほか1隻を建造中だ。インドも1隻と他に1隻建造中、イギリスは2隻建造中、フランス、ロシア、イタリア、タイが各1隻を保有する。 だが1隻ではそれがドック入り中に何か起きると空母は役立たない。不測の事態に備える防衛用ではなく、こちらの都合の良いときに弱い相手に対する攻撃や威嚇に使えるだけだ。
・米国のように10万トン級の原子力空母を11隻も持てば、常時3、4隻が出動可能で、搭載する戦闘・攻撃機は3隻で130機以上だから、有力な戦力となる。 だが1、2隻の空母を保有する国々は軍事力を誇示して威信を高めたい面があり、国家的虚栄心の表れでもある。
・F35Bステルス戦闘機を10機余積んだ「いずも」「かが」でも、「遼寧」が搭載する「J15」(燃料、兵装を満載すれば空母から発進できない)約20機に対抗できるかもしれない。 だが、実は中国海軍に対抗するには空母の必要はない。潜水艦で十分なのだ。
・中国海軍は敵の潜水艦を探知する対潜能力が極めて低く、一方で保有する原子力潜水艦の発する音は大きい。静粛性が高い日本の潜水艦で容易に処理できる。 海中では音波は必ずしも直進せず、水温、水深などにより上下に曲がるし、潮流や他の船舶の機関音などの雑音の多い中から、敵の潜水艦の出す音だけを拾うには高度の「水中音響学」の蓄積が重要だ。
・旧ソ連の潜水艦を主敵と見てきた米海軍と海上自衛隊はその探知の経験を積み、装備を開発してきたから、対潜水艦能力では中国と大差がある。 小型の空母よりはるかに建造費用は安く、人員も少ない潜水艦に力を入れる方が合理的だろう。
・日本が小型空母2隻「いずも」「かが」を持てば、イギリスが建造中の「クィーン・エリザベス」級(6万5000トン)2隻にははるかに及ばなくても、「海軍国」としての外見を備えることにはなるだろう。 だがそれが実際に活動するのは、おそらく米海軍の空母戦隊が中東などに出勤する際、その助手として付いて行く程度になるのではないか、と思われる。
http://diamond.jp/articles/-/166765

第一の記事で、 AH-64Dの調達を当初予定の64機から、僅か13機に減らされたのでは、生産していたSUBARUが、訴訟を起こしたのも当然だ。 『最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定』、というのも当然だが、自衛隊の乱暴な調達方針変更は、余りに身勝手だ。SUBARUにとっては、訴訟が今後の受注に悪影響を与える可能性があるのは覚悟の上で、約351億円を獲得する方が得策と考えたのかも知れない。 『旧式化したAH-1Sの対戦車ミサイルは命中するまで1分以上空中に停止してミサイルを誘導しなければならず、今日では生存性が極めて低い』、こんな敵に恰好の標的となるようなAH-1Sは、筆者も主張するように、直ちに引退させるべきだろう。 『陸自はメンツに固執することをやめて現実を直視すべきだ。その上でスクラップ&ビルドを行い、現実的かつリーズナブルな航空兵力を整えればいい。そうでなければ抑止力にも戦力にならない部隊に無駄な税金を使い続けることになる。さらに、整備費不足の無理がたたり、今回のような墜落事故が多発する事態にもなりかねないのである』、というのは正論だ。
第二の記事で、 『いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策』、 『「個別の装備品」議論から脱却せよ』、というのはその通りだと思うが、「個別の装備品」議論からスタートするお粗末な現在のやり方が何故、やられてきたのだろうか。それなりの理由がある筈だが、記事では触れてないのが残念だ。
第三の記事で、 『「水陸機動団」が創設されたが重要なのは制空、制海権』、というのはその通りだろう。 『ソ連の崩壊後・・・大幅削減の“危機”に直面した陸上自衛隊は次の存在目的を南西諸島に求めた』、というのは、よくよく考えるとおかしな話だ。 ソ連軍の地上侵攻に備えるには大規模な部隊が必要だろうが、島嶼防衛であれば、小規模で済む筈だ。やはり、陸上自衛隊の定員を大幅削減すべきだろう。 『第1次世界大戦末期のドイツ海軍・・・海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命』、という史実は、どこの軍隊でも、いいかげんな意思決定をするものだと、改めて思わされた。 『空母保有は「国家的虚栄心」 対中では潜水艦のほうが有効』、との主張には説得力がある。 『日本が小型空母2隻「いずも」「かが」を持てば・・・だがそれが実際に活動するのは、おそらく米海軍の空母戦隊が中東などに出勤する際、その助手として付いて行く程度になるのではないか、と思われる』、というのでは、壮大な無駄以外の何物でもない。
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通商問題(その1)(トランプ暴走に巻き込まれる世界経済 米中貿易戦争の危険な賭け、米中貿易戦争が激化するとは考えられない理由、米中関係はすでに大きな転機を迎えている トランプの対中貿易戦争には理由がある) [世界情勢]

今日は、通商問題(その1)(トランプ暴走に巻き込まれる世界経済 米中貿易戦争の危険な賭け、米中貿易戦争が激化するとは考えられない理由、米中関係はすでに大きな転機を迎えている トランプの対中貿易戦争には理由がある)を取上げよう。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が3月27日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「トランプ暴走に巻き込まれる世界経済 米中貿易戦争の危険な賭け」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米中貿易戦争を仕掛け、輸入制限を強行したトランプ米大統領の暴走が世界経済を巻き込んでいる。国際協調派の相次ぐ辞任でブレーキ役を失ったトランプ保護主義は歯止めがきかない。それは世界同時株安に直結した。1930年代、米国発の保護主義で始まった世界大不況を連想させる。トランプ大統領は貿易戦争に勝てると公言するが、最大の敗者が覇権国の威信を失墜した米国であることは間違いない。トランプ大統領にひたすら追随してきた日本への打撃も大きい。ひたすら輸入制限の例外扱いを希うのではなく、自由貿易の原点に立ち「ノーと言える日本」に戻り、国際社会の結束をめざさない限り、トランプ暴走は止められないだろう。
▽よぎる1930年代の悪夢
・トランプ大統領は鉄鋼、アルミニウムにそれぞれ25%、10%の高関税を課す輸入制限措置を打ち出したが、それだけでは済まなかった。中国の知的財産権の侵害を理由に、5000億ドル相当の輸入品の約1割に高関税を課す方針を打ち出した。情報通信機器や機械など約1300品目を対象に25%の関税を課す。大統領権限で強力な貿易制限をかける「通商法301条」をたてにした措置である。中国企業の対米投資も制限する。
・これを受けて、中国も鉄鋼、アルミの輸入制限に対抗して、最高25%の関税を上乗せする報復措置を打ち出した。果物、ナッツ、継ぎ目のない鋼管など120品目に15%、豚肉、アルミ・スクラップなど8品目に25%の関税を上乗せする。さらに、米国産大豆などで対中制裁への対抗措置を検討している。全面的な「米中貿易戦争」の様相が濃くなっている。
・トランプ発の貿易戦争は世界同時株安に波及した。こうした状況は、1930年代の世界大不況を思わせる。1929年のニューヨーク株暴落を受けて、1930年、米国はスムート・ホーレイ関税法を制定、世界に関税引き上げなど保護主義が連鎖する。通貨切り下げ競争と相まって世界貿易は縮小し、世界大不況につながる。それがヒットラーはじめ極右政権の台頭を許し、第2次大戦への導火線になったのである。
▽最大の敗者は米国
・トランプ大統領は「貿易戦争、いいじゃないか。簡単に勝てる」などを公言しているが、米国発で保護主義の連鎖が起きれば、最大の敗者は米国になるだろう。 トランプ政権は国際協調派が次々に更迭や辞任に追い込まれ、保護主義にブレーキがかからなくなっている。世界に保護主義の連鎖が続き、その傷が深まりかねない。経済政策の司令塔である国家経済会議(NEC)議長は、輸入制限に反対したコーン氏が辞任し、対中強硬派のクドロー氏が指名された。ロス商務長官、ナバロ通商製造政策局長と並んで、対中強硬派が顔をそろえることになる。
・国際協調路線ゆえに更迭されたティラーソン国務長官の後任は、強硬派のポンぺオ氏だ。マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の座を引き継ぐのは、「ネオコン」で名をはせたボルトン氏である。これでは、トランプ大統領の強硬路線に待ったをかけるどころか、政権全体が呼吸を合わせて一直線で突き進む危険がある。覇権国としての米国の信認は地に落ちるだろう。保護主義に警告した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも「米国の孤立」が鮮明になった。
・米連邦準備理事会(FRB)の政策運営も厳しさを増すだろう。パウエル新議長は年3回の利上げという慎重な出口戦略を打ち出したが、物価しだいでは利上げを加速する必要に迫られる。しかし、保護主義発動による世界同時株安で消費が萎える恐れもある。保護主義の連鎖で、世界貿易が停滞し、米国経済が打撃を受ければ、利上げテンポにも影響しかねない。
・とくにトランプ大統領から貿易戦争をしかけられた中国は米国債売却まで視野に入れているようにみえる。劉鶴副首相は「中国は準備ができており、国家の利益を守る実力もある」と警告している。中国が米国債を売却すれば、米市場を揺るがしかねないだけに、パウエルFRBの対応はさらに厳しくなる。
・米産業界はトランプ発の貿易戦争がコスト増になってはねかえることを警戒している。トランプ大統領の支持基盤に恩恵をもたらすどころか、打撃をこうむることが鮮明になれば、劣勢が予想される11月の中間選挙にも影響するだろう。貿易戦争はすべてが敗者になるが、最大の敗者は火をつけた米国であることを思い知らされるはずだ。
▽米中覇権争いの様相
・「米中貿易戦争」は、貿易を超えた覇権争いの側面もある。知的財産権の侵害を名目にしているのは、先端技術をめぐる大競争を想定しているからだろう。米国は知的財産権の保護では同じ問題を抱える日欧との連携をめざしたいところだろう。一方、中国は知的財産権保護で日米欧連携、中国包囲網という事態だけ避けたい考えだ。トランプ保護主義に対抗して世界貿易機関(WTO)を重視し、自由貿易を堅持するため日欧との連携をめざしている。
・米国が警戒するのは、習近平政権が2025年に向けて人工知能(AI)やビッグデータ解析、産業ロボットなど次世代技術に集中投資しようとしている点だ。米国から中国への技術移転が続けば、先端分野でも米中逆転が起こりうるという警戒心が潜む。 米中はこれまでに経済相互依存を深めてきているだけに、貿易戦争が覇権争いに発展すれば、世界経済への打撃は深刻化しかねない。
▽功を奏した硬軟両様のEU戦略
・欧州連合(EU)が北米自由貿易協定(NAFTA)見直し交渉中のカナダ、メキシコなどとともに、鉄鋼、アルミの輸入制限で「適用除外」を獲得したのは、「圧力」と「融和」の硬軟両様の通商戦略が功を奏したからだろう。トランプ大統領の輸入制限に真っ先にかみつき、共和、民主両党幹部のおひざ元の製品に対抗関税を課すと表明したのはユンケル欧州委員長だった。EUの盟主でトランプ嫌いのメルケル独首相が政権に「復帰」するやいなや、対抗関税でトランプ保護主義に警告したのも効いた。米国の巨大情報技術(IT)企業に照準を合わせたEUのデジタル課税構想も無視できなかったはずだ。
・その一方で、EUは通商担当のマルムストローム欧州委員が適用除外を働きかけるとともに、トゥスク大統領が中断している米国との自由貿易協定(TTIP)の再開を求めるなど融和路線の構えもみせた。 EUを適用除外にするうえでは、安全保障面の配慮も働いたはずだ。ロシアでプーチン大統領が再選され、強権化が予想されるなかで、北大西洋条約機構(NATO)の米欧同盟まで揺るがすわけにはいかなかったのだろう。
▽「ノーと言える日本」に戻れ
・巧みなEUの通商戦略に比べて、トランプ保護主義に対する日本の対応は、あまりにお粗末だった。保護主義を真っ向から批判するより先に、適用除外をひたすら願い出たのは情けなかった。繊維、カラーテレビ、自動車、半導体など何度も日米通商摩擦を経験し、2国間の保護主義がいかに不毛なものであるかわかっているはずの日本がなぜ正々堂々とトランプ保護主義に「ノー」を突きつけなかったのか。
・北朝鮮問題もあり、トランプ政権との関係を重視するのはわかるが、世界経済全体を大きく揺さぶる覇権国の保護主義に、真正面から切り込めないとすれば、それこそまともな同盟国とはいえない。 しかも、同盟国としての「適用除外」のお願いは無視される結果になった。そのせいか、世界同時株安のなかでも日本株の下げは最も大きい。安倍晋三首相はトランプ大統領を最も親しい関係と位置付けているかもしれないが、トランプ大統領の方は何でも通る「安全パイ」としか考えていないのではないか。
・トランプ保護主義には「ノーと言える日本」に戻るしかない。EUのように、はっきり物申さないかぎり、通商戦略は成り立たない。 まず、トランプ政権が求める2国間の自由貿易協定(FTA)は受け入れるべきではない。2国間で貿易不均衡を是正する考え方自体が誤っていることを説くしかない。何より環太平洋経済連携協定(TPP)への米国復帰を優先すべきである。
・そのうえで、中国が加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)とTPPを結合することだ。それは「米中貿易戦争」に終止符を打つ近道でもある。TPPにもRCEPにも足場を置く日本の役割は極めて大きい。トランプ保護主義を逆手に取って、日本が歴史的使命を果たす番である。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/032600058/?P=1

次に、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏が4月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「米中貿易戦争が激化するとは考えられない理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ドナルド・トランプ米大統領は、3月22日、知的財産権侵害を理由に、中国製品に25%の関税を課す貿易制裁措置を表明した。また、23日には、鉄鋼とアルミ製品への追加関税適用を開始した。4月4日には、制裁関税の原案を発表した。 これが米中貿易戦争に発展するのではないか、との懸念が広がっている。株価も下落した。
・しかし、これは、まったく経済合理性を欠く政策だ。このままエスカレートするとは考えられない。 アメリカが本当に恐れるべきことは、中国の特殊な社会構造が、ビッグデータの利用やAIの開発に有利に働いていることだ。
▽中国への高関税で困るのは米国の企業や消費者
・アメリカの対中貿易赤字は、2016年で3470億ドルと巨額だ。 トランプ大統領は大統領選挙戦のときから、この削減が必要だと主張してきた。 そのために、中国を為替操作国に指定するなどの措置を取る可能性があると報道されてきた。 それがついに今回、関税という形で現実のものとなったのだ。
・しかし、これは、経済的に合理性を欠く政策だ。 中国からの輸入5000億ドルの約1割に25%の高関税が課されれば、困るのはアメリカの消費者や企業である。アメリカ国内で製品価格が上昇し、消費や投資が抑えられる。 アメリカの経済力を弱めるだけであり、実際に、反対の声がアメリカ国内で上がっている(中国でなく、アメリカ国内であることに注意)。すでに、全米小売業が反対している。
・情報通信機器などは中国で組み立てて輸入しているので、コストが上昇する。米中のサプライチェーンは極めて巨大であり、これを変えることなどできない。 他方で、この措置によってアメリカの雇用が増大するとは考えられない。
・トランプ大統領の政策は、国際協調を無視したアメリカ第一主義だと言われる。しかし、この政策は、アメリカのためにならないという点が最も重要だ。 米中経済戦争の可能性をまったく否定するわけではないが、これがエスカレートしていくような事態は、あまり現実的なこととは思えない。
▽政治的な意味や駆け引きの道具として意味があるか?
・トランプ大統領がこうした政策を打ち出している理由としては、つぎの2つが考えられる。 第1は、中間選挙に向けた政治的なメッセージだ。 アメリカでは、今年11月に中間選挙が実施される。そこで、こうした措置を講じて、アメリカの雇用を増やそうとしているとのアピールをしたいのだろう。
・ただし、政治的にも本当に効果があるかどうか、疑問だ。 中間選挙でどのような結果が出るかが注目されるが、そのときまでにはっきりした成果を示すことは、おそらくできないだろう。
・もう1つ考えられるのは、国際的な交渉での、取引の手段にすることだ。 対中関税も6月までに具体的な内容を決めるとされており、まだ最終化していない。発動を決めるまでの2ヵ月間に中国と貿易赤字の削減策などを交渉する。 鉄鋼製品に25%、アルミ製品に10%の高関税適用も、除外国がまだ最終的には決まっていない。これからさまざまな駆け引きの道具に使うつもりだろう。 ただし、輸入量を制限できたところで、それがアメリカの雇用を増やすことにはならない。アメリカで鉄鋼業が復活するなどということは、およそ考えられない。
▽「報復」で米国債売れば、長期金利上昇で困るのは中国
・アメリカの措置に対して、中国は報復措置として4月2日から米国からの輸入品128項目に最高25%の高関税をかけ始めた。 中国外務省の華春瑩報道官は、記者会見で、「中国は貿易戦争を望んでいないが、怖がってもいない。お返しをしなければ失礼になる。私たちは最後まで付き合う」と述べたとされる。
・2日から高関税が実施されたのは、米国産豚肉や果物、ワイン、継ぎ目なし鋼管などで、こうした報復措置の実行で、アメリカの畜産業や農業などは困るだろう。 しかし、中国の消費者も、価格が上がるという問題に直面する。
・中国の報復措置としてもっと強力なのは、アメリカ国債の購入を減らすことだとも言われる。 中国の米国債保有額は2017年10月末時点で約1兆1900億ドル(約135兆円)と国別で最大だ。 これを売却したり購入量を減らしたりすれば、アメリカの金融市場は混乱する可能性が強い。そして、アメリカの長期金利の上昇に拍車がかかるだろう。
・だが、それで一番困るのは中国なのだ。 人民元に下落圧力が生じて資本流出が再び増加するリスクを、中国としてはなんとしても避けたい。実際、中国人民銀行は、これまで、アメリカの利上げに対して、人民元安の阻止に全力を挙げてきた。
・長期金利が上昇すると、中国ではもう1つの問題が生じる。 それは、本コラム「なぜ日米金利差が拡大しているのに円高になるのか」で書いたように、国内の企業の債務残高が巨額なことだ。 仮に金利が上昇すると、金融危機が発生する可能性がある。
▽日米貿易への影響は限定的だが円高をもたらす可能性
・では、トランプ政策の日本への影響はどうか? トランプ政権の鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置は、日本も適用対象になった。 ただし、日本の鉄鋼輸出のうちアメリカ向けは2%程度なので、影響は限定的と考えられる。 他方で、アメリカのエネルギー産業は、パイプライン用鋼管などを輸入に依存している。このため、エネルギー産業が適用除外を求めている。
・こうした事情を考えると、通商面での直接的な影響は限定的と考えられる。 影響は、為替レートや金利を通じて働くだろう。 最も影響が大きいのは、アメリカがどんな経済政策を出してくるかがまったくわからないことが、国際貿易経済に大きな攪乱要因になることだ。 国際経済環境のリスクが増し、リスクオフの動きが強まる。円が安全資産と見なされて、資金が流入し、円高になる。
・第2に、中国が報復措置でアメリカ国債の購入を減らせば、アメリカの長期金利の上昇に拍車がかかる。これは、日本の金融政策に影響を与える。 ところで、本コラム「世界株安は『トランプ期待』が止めていた正常トレンドへの復帰だ」で書いたように、日本経済は、為替レートによって大きな影響を受ける。というより、円高になるか円安になるかで、経済の大勢が決まってしまう。
・今後、円高が進めば、日本企業の利益は落ち込み、株価は下落するだろう。 では、日本はこうした事態に対してどう対処すべきか? 本来であれば、自由貿易の重要性を世界に向かって訴えるべきだ。 しかし、そう主張すれば、アメリカは二国間交渉で、「それでは農業についても自由貿易をしよう」という要求をしてくる。 ところが、日本は農産物に高関税をかけている。 だから、日本は自由貿易を声高に主張することができない。 アメリカの保護貿易に口を挟むには、日本が自由貿易を実行しなければならない。
▽アメリカが本当に危惧すべきことがある
・これまで中国は、大量の留学生をアメリカの大学に送り込み、そこで学んだ知識を中国に持ち帰らせて、中国の知識、技術水準を向上させてきた。 その結果、コンピュータサイエンスの分野では、清華大学が世界一になるほどの発展を遂げた。 これを知的財産権の侵害とは言わないが、歴史上かつてなかったほどの規模の膨大な知識の移転である。このような知識移転がなければ、中国の工業化は実現しなかっただろう。
・ただし、それによってアメリカが損失を被ったわけではない。また、衰退したわけでもない。アメリカは、中国の工業化を利用して生産を委託し、互いに「Win-Winの関係」で成長してきた。現在でもこの関係は強固であり、それが簡単に変わるとは思えない。
・アメリカが本当に危惧すべきは、中国の先端的IT(とくにAI)が、近い将来にアメリカを抜くことだ。 しかも、それが中国独自の国家体制と深い関係を持っていること(ビッグデータの利用に国民が警戒心を持たないこと)だ。 中国は、AIに支えられた独裁政治に向かいつつあるように見える。
・習近平国家主席は、これまでいかなる独裁者も手にすることができなかった完全な支配手段を手に入れ、ビッグブラザー(ジョージ・オーウェルの『1984年』に登場する独裁者)より強力な独裁者になろうとしている(「中国の最先端AIが作り出す戦慄の未来社会」参照)。 これは、「デジタル・レーニン主義」とも呼ばれるものだ。
・こうした国家が出現することは、世界全体にとって重大な問題だ。自由な政治・社会構造を維持しつつ先端的情報技術の開発を進める方策を、日本はアメリカとともに考える必要がある。
http://diamond.jp/articles/-/165999

第三に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が4月12日付け東洋経済オンラインに寄稿した「米中関係はすでに大きな転機を迎えている トランプの対中貿易戦争には理由がある」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米中両国が相手側の輸出品への関税引き上げで激しいぶつかり合いを演じている。米国が次々と打ち出す関税引き上げに中国が同じ規模の対抗策を取れば、中国は米国からの輸入品のすべてに高関税をかけざるをえないような勢いだ。
・もちろん両国のこうした強気の姿勢は、約2カ月後に米国が制裁対象品目を正式に決定することを念頭に置いた駆け引きの面が強い。したがって多くの関係者が、米中両国間で水面下の交渉が行われ、現実的な落としどころを見いだすであろうとみている。むろんトランプ大統領は何をしでかすかわからないという不安の声も根強いが、世界経済を根底からひっくり返すようなことはしないであろう。そう信じたいところだ。
▽米国の対中政策は「関与」から「封じ込め」へ
・ただし、昨年来の経緯を分析すると、米中関係が大きな転機を迎えたことは間違いない。それは中国を何とかして米国中心の世界の経済システムに取り込もうという、オバマ前大統領までの歴代米国政権が続けてきた「関与政策」(engagement policy)から、もはや中国は自分たちに協調してこないから力ずくで抑え込もうという一種の「封じ込め政策」(containment policy)への転換だ。
・そうなると米中のみならず、両国の同盟国も巻き込んだ世界的な対立構造ができかねない。今回の米中貿易摩擦の展開は冷戦時代を彷彿させる状況への突入を予感させるような出来事である。 今回の高関税をめぐる「報復合戦」は急に始まったことではない。2016年の米大統領選挙中から、トランプ氏は中国との膨大な貿易不均衡を問題にしており、中国を「貿易で優位に立つため為替を操作している」と批判し、自分が大統領に当選すれば中国を為替操作国に認定すると公約していた(実際には認定しなかった)。さらに、当選後は米中間の貿易不均衡を理由に、米国がこれまで維持してきた「一つの中国」という政策について「なぜ堅持する必要があるのかわからない」と中国を挑発する発言をした(これも後に事実上撤回した。
・だからといって、今回の鉄鋼やアルミニウムに対する関税上積みや、知的財産権侵害を理由とした幅広い中国製品に対する関税引き上げは、怒りに満ちたトランプ大統領の強引な判断だけで打ち出されたものではない。通商問題の分野で制裁を打ち出すには、国内法だけでなくWTO(世界貿易機関)の規則などに関する高度で専門的な知識とともに、過去の詳細なデータを踏また判断が不可欠である。メキシコとの国境に壁を作るというような問題とは異なり、大統領一人で決められるような単純なものではない。
・2017年4月、トランプ大統領は通商拡大法に基づいて商務省に鉄鋼輸入の実態調査を指示した。商務省は今年に入って調査結果を大統領に報告するとともに、関税率引き上げの対象をすべての国とするか、特定の国に限定するか、すべての国に輸入割り当てを設けるか、の3つの選択肢を示した。トランプ大統領は、その中で最も厳しい、一部の国を対象から外すものの、すべての国を関税率引き上げの対象とする案を選択して、公表した。
・知的財産侵害を理由とした通商法301条発動も、「包括経済対話」の決裂を受けてUSTR(米国通商代表部)が調査を行った結果の対応だ。つまりいずれの政策も、米国はじっくりと時間をかけて、法律に定められた手順を踏んで打ち出している。
▽習近平の中国は「韜光養晦」から「中国の夢」へ
・実は対中貿易の巨額の赤字も、中国による知的財産権の侵害も、米国にとって長年の懸案だった。しかし歴代米政権は中国に対し強硬姿勢を見せるどころか、逆に中国との良好な関係を維持しようとしてきた。  第2次世界大戦後、米国は台湾に移った国民党政権が作った中華民国を合法的な中国の政府とみなし国交を結ぶとともに、大陸の中華人民共和国とは朝鮮戦争やベトナム戦争で対峙するなど対立関係にあった。しかし、ニクソン政権時代に米国は中華人民共和国に急接近し、1979年に国交を樹立した。ここから米国の中国に対する「関与政策」が始まった。
・中国側も鄧小平氏の指導の下、社会主義体制の中で市場主義経済を取り入れる「改革開放路線」を打ち出すとともに、対外政策は「自らの能力を隠して時機を待つ」という戦略を意味する「韜光養晦(とうこうようかい)」を掲げ、大国ぶらない比較的穏健な姿勢を打ち出し、米国との関係を維持してきた。
・巨大な人口を持つ中国は市場としても魅力的であることから、経済成長を支援するとともに、米国主導で作り上げた戦後の世界経済システムに中国を取り入れる。これが米国の中国に対する「関与政策」だ。1980年代以降は一時期を除き、ほぼ一貫して積極的な首脳往来を繰り返し、2001年には中国のWTO加盟を支持した。こうした姿勢は、米国の政権が共和党、民主党にかかわらず継続されてきた。
・こうした関係を変えるような動きを先に見せたのは習近平主席が率いる中国だったかもしれない。急成長した経済力と軍事力を背景に、習近平氏は「中華民族の偉大なる復興」と「中国の夢」の実現を掲げ、今世紀半ばには「社会主義現代化強国の建設」を目標に掲げた。これはわかりやすく言えば米国に匹敵する大国になることを宣言したものである。同時に習氏は、欧米流の民主主義システムを取り入れることを明確に否定している。つまり、米国流の政治や経済システムに組み込まれるつもりはないのだ。そればかりか今や「一帯一路」戦略の下、近隣諸国にとどまらず、遠く中東や東欧、アフリカ諸国までをも中国の影響下に置こうという戦略を実践している。
▽中国の勢いは止まらず、米国の影響力は低下
・こうなると米国もこれまでの「関与政策」を続けているだけでは済まないと考えざるをえない。経済・貿易政策で今できることは、いささか古めかしい発想だが貿易不均衡の是正という名目で中国からの輸入を減らす、さらに知的財産侵害を理由に米国からの技術移転などに制約を設ける。そして、中国経済の発展に歯止めをかけるくらいのことだろう。こうした政策を日本や欧州など同盟国を巻き込んで実行すれば、冷戦時代の米国がソ連に行った伝統的な「封じ込め政策」に似たものとなる。しかし、トランプ大統領にはまだ、そこまでの明確な戦略はないようだ。
・もちろんこんな対応で中国の勢いを止めることはできない。今年、ちょうど40年目を迎える「改革開放政策」で中国は経済大国に成長し、そのGDP(国内総生産)は2030年前後には米国を追い越すともいわれている。対照的に米国の国際社会に対する影響力はますます低下している。これまで中国を見下し余裕を持って対応していたが、そんな時代はとっくに終わった。「関与政策」から新しいスタイルの「封じ込め政策」に米国が対中政策の舵を切らざるをえなくなりつつあることがそれを証明している。
・こうした言動はトランプ大統領が得意とする、最初に威嚇的発言で相手を脅し、その後の交渉で譲歩を引き出そうという交渉スタイルだったのかもしれない。実際、2017年4月の首脳会談では、習近平国家主席が貿易不均衡について「米中包括経済対話メカニズム」を立ち上げることで合意するとともに米国の対中輸出を増やすための「100日行動計画」を策定することを約束した。中国側が一方的に米国に譲歩したかのような結果だった。
・ところが同年7月に行われた第1回の「包括経済対話」は決裂し、共同声明はもちろん、出席者の記者会見もできないまま終わった。そして、1年経ってみると、米国の対中貿易赤字は減るどころか逆に増えてしまった。首脳会談の合意を受けた米中間の協議は何ら成果を生み出さないまま時間だけが過ぎているのだ。「米国は完全に中国にだまされたと思っている」というのが日本外務省の見立てである。
https://toyokeizai.net/articles/-/216306

第一の記事で、 『国際協調派の相次ぐ辞任でブレーキ役を失ったトランプ保護主義は歯止めがきかない・・・全面的な「米中貿易戦争」の様相が濃くなっている』、というのは本当に困ったことだ。 『貿易戦争はすべてが敗者になるが、最大の敗者は火をつけた米国であることを思い知らされるはずだ』、ただ、思い知るには相当の時間がかかるだろう。 『貿易戦争が覇権争いに発展すれば、世界経済への打撃は深刻化しかねない』、 『「ノーと言える日本」に戻れ』、などの指摘はその通りだ。なお、今日の新聞では、トランプ大統領がTPP復帰の検討を指示したらしいが、復帰の条件としてアメリカに有利な取り決めを要求してくるようであれば、日本としては、せっかく調印にこぎつけたものが、白紙還元されかねないと、断固拒否すべきだ。
第二の記事で、 『中国への高関税で困るのは米国の企業や消費者』、さらに農民も中国側の対抗関税引上げで打撃を被るだろう。 政治的にも本当に効果があるかどうか、疑問だ。 中間選挙でどのような結果が出るかが注目されるが、そのときまでにはっきりした成果を示すことは、おそらくできないだろう』、 『「報復」で米国債売れば、長期金利上昇で困るのは中国』、 『日米貿易への影響は限定的だが円高をもたらす可能性』、などの指摘はその通りだろう。 『「デジタル・レーニン主義」・・・こうした国家が出現することは、世界全体にとって重大な問題だ。自由な政治・社会構造を維持しつつ先端的情報技術の開発を進める方策を、日本はアメリカとともに考える必要がある』、これは深刻だが、如何に対応するかは本当に難しい問題だ。
第三の記事で、 『米国の対中政策は「関与」から「封じ込め」へ』、というのは参考になる深い考察だ。  『今回の鉄鋼やアルミニウムに対する関税上積みや、知的財産権侵害を理由とした幅広い中国製品に対する関税引き上げは、怒りに満ちたトランプ大統領の強引な判断だけで打ち出されたものではない。通商問題の分野で制裁を打ち出すには、国内法だけでなくWTO(世界貿易機関)の規則などに関する高度で専門的な知識とともに、過去の詳細なデータを踏また判断が不可欠である』、という冷静な分析はさすがだ。 『習近平の中国は「韜光養晦」から「中国の夢」へ』、 『中国の勢いは止まらず、米国の影響力は低下』、こうした中国と如何に良い関係を築いてゆくかは、本当に難しい課題だ。
タグ:通商問題 (その1)(トランプ暴走に巻き込まれる世界経済 米中貿易戦争の危険な賭け、米中貿易戦争が激化するとは考えられない理由、米中関係はすでに大きな転機を迎えている トランプの対中貿易戦争には理由がある) 岡部 直明 日経ビジネスオンライン 「トランプ暴走に巻き込まれる世界経済 米中貿易戦争の危険な賭け」 ・トランプ発の貿易戦争は世界同時株安に波及した こうした状況は、1930年代の世界大不況を思わせる 最大の敗者は米国 米中覇権争いの様相 功を奏した硬軟両様のEU戦略 「ノーと言える日本」に戻れ 野口悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン 「米中貿易戦争が激化するとは考えられない理由」 中国への高関税で困るのは米国の企業や消費者 政治的な意味や駆け引きの道具として意味があるか? 「報復」で米国債売れば、長期金利上昇で困るのは中国 日米貿易への影響は限定的だが円高をもたらす可能性 ・アメリカが本当に危惧すべきは、中国の先端的IT(とくにAI)が、近い将来にアメリカを抜くことだ 中国は、AIに支えられた独裁政治に向かいつつあるように見える デジタル・レーニン主義 こうした国家が出現することは、世界全体にとって重大な問題だ。自由な政治・社会構造を維持しつつ先端的情報技術の開発を進める方策を、日本はアメリカとともに考える必要 薬師寺 克行 東洋経済オンライン 「米中関係はすでに大きな転機を迎えている トランプの対中貿易戦争には理由がある」 米国の対中政策は「関与」から「封じ込め」へ つまりいずれの政策も、米国はじっくりと時間をかけて、法律に定められた手順を踏んで打ち出している 習近平の中国は「韜光養晦」から「中国の夢」へ 中国の勢いは止まらず、米国の影響力は低下 米国は完全に中国にだまされたと思っている
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公文書管理(その3)(小田嶋氏:「発見」された不存在の日記について、泉氏:安倍政権がはまった「公文書疑獄」の底なし沼) [国内政治]

公文書管理については、4月3日に取上げたが、今日は、(その3)(小田嶋氏:「発見」された不存在の日記について、泉氏:安倍政権がはまった「公文書疑獄」の底なし沼)である。なお、前回まで「公文書管理・公開」としていたタイトルから「公開」は外した。

先ずは、コラムニストの小田嶋隆氏が4月6日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「発見」された不存在の日記について」を紹介しよう。
・大阪市内の路上に、840枚ほどの機密文書を含む国土交通省の廃棄書類がぶちまけられたのだそうだ。  1990年代制作のB級テレビドラマに出てきそうなシーンだ。 風に舞う文書。這いつくばって紙切れを拾い集める背広姿の職員たち。遠巻きに眺めながらヒソヒソ話をする主婦。なぜか周囲を走り回る野犬。あくびをする猫。無意味に全力疾走するオダユージ。民放夜8時の2時間枠で放送されるバカなサスペンス巨編にぴったりの絵だ。
・もっとも、映像として「絵になる」のはその通りなのだとして、起こったことそのものは、たいした事件ではない。書類の廃棄を請け負った下請け業者が、運搬中に積荷を落としただけの話だ。国交省の体質が問われねばならないというほどのお話でもない。 ただ、タイミングがタイミングだけに、必要以上に注目されることは避けられない。
・というのも、この何週間か、あるいはもっとさかのぼれば現政権が発足して以来のこの5年ほどの間を通じて、「文書」ないしは「書類」をめぐる前代未聞の事態が進行中だからだ。 してみると、廃棄書類がナニワの路上に散乱している絵面(えづら)が、絶賛興行中の行政文書受難物語を象徴するスラップスティック(注)なトレーラー映像として世間の耳目を集めるのは、いたしかたのないところだ。
(注)スラップスティックとは、体を使ったギャグ(Wikipedia)
・文書は官僚の仕事の結果でもあれば、そのよって立つ基盤でもある。 魂という意味で言えば、武士における刀に相当する存在だと言っても差し支えない。 官僚による文書の不当廃棄や、紛失や、あるいは隠蔽や、さらには改竄といった未曾有の不祥事が続発しているここしばらくの展開は、武士が丸腰で出仕したとか、城内で大小を紛失したとか、でなければ、差している腰のものが竹光でしたみたいな不祥事に相当するお話なわけで、世が世なら切腹を申し付けられてもおかしくない。
・と、書き進めながら気づいたのだが、官僚にとっての文書を、武士にとっての刀になぞらえたのは不適切だった。撤回する。武士の刀は、形骸化した職能の象徴をスタイルとして残したドレスコードに過ぎない。大筋において甲子園球児の丸刈りや銀行員のネクタイと大差のないものだ。もっといえば、武士道における日本刀は「様式化された愚かさ」を忠誠のフックとして利用したアナクロニズムの発露なのであって、結局のところ、組織の構成員が陳腐な強制に従うことで保たれている秩序のための秩序といったあたりが、武士道の正体だったということになる。刀はその武士道という事大主義のちいちいぱっぱにおける統合の象徴というのかドーナツのアナというのか、いずれにせよ空虚な中心を穿つために用いられた滑稽千万な演出道具だったわけだ。
・話がズレた。 大嫌いなサムライの話になるとつい余計なことを言い募ってしまう。 武士道大好きな皆さんは上記の十行ほどの内容は忘れてください。 私がお伝えしたかったことの骨子は、役人にとっての文書の重要性に比べれば、武士にとっての刀などしょせんはアクセサリーに過ぎないということだ。官僚にとって文書は手段でもあれば目的でもあり、結果でもあれば歴史でもある。かててくわえて、自らの存在証明でもあれば退路でもある致命的に重要な存在だ。寿司屋にとっての寿司ネタどころか鳥にとっての翼、犬にとっての尻尾、猫にとっての肉球に近い、それなしには自分たちの存在そのものが意味を喪失してしまう何かだと言っても良い。
・今回は「文書」の話をする。 たいして関心を持たれているようにも見えないこの話題を、あえて持ち出してきた理由は、文書がないがしろにされていることへの世間一般の受けとめ方が、あまりにものんびりしているように見えて、そのことが、言葉にかかわる稼業にたずさわっている人間として残念に思えたからだ。
・ちなみに、私自身は、行政文書が軽視されていることは、官僚が自分たちの仕事への情熱を失っていることのあらわれなのだというふうに受けとめている。でもって、官僚が為すべき義務を果たしていないことは、行政が機能していないということであり、行政が滞っているということは、国政が狂っていることだとも考えている。 大げさな言い方に聞こえるかもしれないが、私自身は、事態を過大に申告しているつもりはない。 私は、この国は、狂いはじめる過程にあると、半ば本気で、そう思っている。
・もっとも、国が狂っているってなことを言い張る人間があらわれた場合、一般的に言って、当該の国家なり国民が狂っている可能性よりも、その旨を言い立てている人間のアタマが狂っている可能性を先に考慮した方が良い。してみると、狂っているのは私の方なのかもしれない。うむ。その可能性は認めなければならない。
・防衛省で、陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が「発見」された。 「発見」は、普通は古文書や歴史的文書に使われる名詞で、リアルな行政文書や記録に対して使用される単語ではない。 が、4月3日の日経新聞の朝刊は 《防衛省、「不存在」の日報発見》 という見出しを打っている(こちら)。
・「おい、発見って、防衛省は古墳か何かなのか?」 「まあ、庁舎の地下に秘密のダンジョンがあってもオレは驚かない」 「どうせ天の岩戸ぐらいな名前つけて 自衛隊OBの軍事オタクがコレクションを秘蔵してる程度だと思うけど」 「あとはイシバさんのコスプレ衣装をおさめたワードローブな」 「そこに日報やら交換日記やらを隠蔽してたってわけか?」 「まあ、ガチムチの組織だけにそれぐらいの秘密の花園は許してやろうぜ」
・もちろんだが、日報は地下迷宮の壺の中から発見されたわけではない。 ごく当たり前な保管場所から出てきたのだと思う。 ただ、なぜなのか、誰も気づかずにスルーされていたということなのだろう。 ともあれ、「『不存在』の日報」という、日経の見出しにある表現は、なかなか皮肉の効いた言い方だ。 ほとんど哲学的ですらある。
・が、この見出しを考案したデスクは、おそらく皮肉を言いたかったのではない。単純に「これまで国会答弁などを通じて公式に存在しないとされていた日報が、その不存在を語った国会答弁から1年以上の年月を経たいまになって突然現れた」という、このたびの経緯を短い言葉で伝えるために、「不存在の日報」なる禅問答じみた用語法を採用せざるを得なかったのだと思う。
・してみると、2004年~06年に書かれてから10年以上、不存在があらためて公式認定されてから数えても1年と2カ月ほど日の目を見ずにいた日報がわれわれの前に登場したなりゆきは、やはり「発見」という言葉を持ってこないと表現することができない。
・あらためて考えるに、1万4000ページに及ぶ公文書が「発見」されるに至った経緯は、考えるだに異様だ。われらのような凡人の想像を絶している。 というのも、「発見」されるためには、「発見」に先立って、その公文書を誰かが「紛失」していないと説明がつかないからだ。 とすると、1万4000ページに及ぶ公文書のヤマを、いったい誰がどうやって「紛失」できたものなのだろうか。
・仮に、なんとか周囲に気づかれることなく無事に紛失しおおせたのだとして、調査を命じられた人々は、その1万4000ページの日報のカタマリをどうやってこんなにも長い間見つけずにいることができたであろうか。 私にはどうしてもうまい説明を思いつくことができない。
・とすれば、事ここに至った以上、そもそも「紛失」していたという説明がウソで、「発見」というのもウソの上塗りだったという可能性を考慮せねばならない。つまり、当初の段階で、存在していた日報を「ない」と言い張る「隠蔽」ないしは「虚偽答弁」がおこなわれていたということだ。そう考えた方が、その先の説明についてもずっと理解しやすくなる。
・では、どうしてあるはずの日報を「ない」と答弁せねばならなかったのだろうか。 この謎を解くためには、今回「発見」されたイラク派遣の日報の話以前に、同じく自衛隊の南スーダン派遣(2012年1月~17年5月)の際の日報について、よく似たいきさつがあったことを知っておく必要がある。 2016年の12月、防衛省は、陸上自衛隊の部隊がまとめた日報の情報公開請求に対し、廃棄して存在しないことを理由に不開示とした。だが、同じ月のうちに別組織の統合幕僚監部に保管されていた事実が判明、2017年の2月になって開示した。
・で、ここから先、国会答弁や報道とのやりとりが色々とあったわけなのだが、最終的には、日報についての説明が二転三転したことの責任を取る形で、7月には、このとき防衛相だった稲田朋美氏が辞任する。この間の事情は、以下のリンク先の記事に詳しい(こちら)。 もう半年以上前に書かれたものだが、今回の「発見」に先立つ事態の背景がよく説明されていると思う。
・ともあれ、自衛隊としては、南スーダン派遣の際の日報を「廃棄した」と説明した時点で、PKO南スーダン派遣から遡ること10年前の、2004年から06年の記録であるイラク派遣の日報が残っていてはマズいことになるわけで、ということはつまり、イラク派遣の日報隠蔽の動機は、南スーダン時の日報の廃棄という国会答弁から事後的に発生したことになる。
・誰かの国会での答弁を受けて、事後的に隠蔽なり改竄なり口裏合わせの必要が生じるというこの展開は、民主主義国家の行政の過程としては極めて異常ななりゆきではあるが、縁故主義(ネポティズム)と、人治主義が猛威をふるう前近代的な独裁国家ではさしてめずらしいことではない。というよりも、独裁的なリーダーが官僚の人事を壟断している世界では、あらゆる行政的な決定事項は、ボスの鼻息をうかがう形で決裁される。少しも不思議なできごとではない。
・稲田朋美元防衛相は、今回の事態を受けて 「驚きとともに、怒りを禁じ得ない」 と述べ、あわせて 「上がってきた報告を信じて国会で答弁してきたが、一体なにを信じて答弁していいのか。こんなでたらめなことがあってよいのか」 とコメントしている(こちら)。
・なんという見事な被害者ポジションによる受け身のとり方であろうか。 あるいは、稲田氏がコメントしている通り、彼女は、日報の存在をまったく知らされていなかったのかもしれないし、隠蔽工作や調査の実際についてもきちんとした報告を受けていなかったのかもしれない。
・でも、だとしたら、それは自衛隊という実力組織がその上司である防衛大臣の指揮を裏切って行動していたことを意味するわけで、ご自身の大臣としての無能さを裏書きする出来事でもあれば、政権内でシビリアンコントロール(文民統制)が失われていることを示唆する危険な兆候でもある。
・とすれば、現今の状況への感想を求められて「驚き」だとか「怒り」だとかいった、電車の中で足を踏まれたおばさんみたいなコメントを漏らしていること自体不見識なわけで、本来なら、自身の「監督不行届」と「力不足」を「痛感」して「痛哭」くらいはしてみせてくれないと計算が合わない。
・まして 「こんなでたらめなことがあってよいのか」 は、到底、責任者だった大臣が言って良いセリフではない。 なぜなら、当時の指揮官である防衛大臣は、被害者でもなければ傍観者でもなく、言葉の正しい意味でかかる事態を招いた当事者であり責任者であり、より強い言葉をもって報いるなら、張本人でもあれば犯人ですらあるからだ。 どうせ言うなら 「こんなでたらめが進行していたことを知らなかった自分の無能さにめまいをおぼえています」 ぐらいは言わないといけない。
・一連の事件には、いまだ不透明な部分が数多く残されている。 今後、真相が明らかになるにしても、その頃には、問題自体が忘れられていることだろう。 もっとも、大切なのは、今回の日報についてのピンポイントの真相そのものではない。 私たちが考えなければならないのは、こんなにも大量の文書が、あらゆる場面で、廃棄され、隠蔽され、改竄され続けていることの理由についてだ。
・官僚は、本来、文書にウソを書くことができない人たちだ。 当然、書いた文書を捨てることもできないはずの人たちでもある。 少なくとも私はそう思っている。 逆に言えば、文書にウソを書いた時点で、官僚は官僚としての生命を終えなければならない。 そんなことを命じることができる人間がいるのだとすれば、それは官僚ではない。 官僚に死を求めることができるのは、政治家以外にいない。
・10年ほど前の流行語であった「政治主導」の目指したところは、省益や前例踏襲にとらわれがちな視野の狭い官僚の発想とは別の、より大局的な政治家の立案で行政を動かすというお話だった。それはまた、行政のリーダーシップを試験に通った人間(官僚)の手から選挙で選ばれた人間(政治家)の手に委譲することで、より国民の意思に近い政治を実現するストーリーでもあった。
・が、政治の覇権争いが人治主義と縁故主義に傾き、選ばれてくる議員が世襲の三代目だらけである現状において、政治主導の理想は急速に色あせている。 それにしても、財務省をはじめとして、厚労省、防衛省、文科省の官僚たちはどうして自分たちの仕事を冒涜しにかかるみたいな暴挙に走ったのであろうか。
・ふつうに考えれば、心あるパティシエがケーキの味見をするためにクリームに指を突っ込まないのと同じように、マトモな官僚は行政文書を捨てたりなくしたり改竄したりはしないものだ。 なのに、なぜなのか、この何年かの間に、見渡す限りのお役所で、本来なら優秀なはずのお役人が、一斉に自分たちの仕事に泥を塗りはじめている。 これは、大きな謎だ。 官僚の職業モラルがある日突然地に落ちたからこんなことが起こっていると考えることも不可能ではない。 ただ、私はそうは思っていない。
・昨今の行政官僚の頽廃は、1人ひとりの官僚の不心得に起因する帰結ではなくて、官僚が官僚であるための基礎的な条件のうちの何かが毀損されたことによって生じている一時的な現象なのだと、私は推測している。 文書が隠蔽され、不当に廃棄され、改竄されているのは、なるほど、官僚のモラルが崩壊しつつあることの現れなのかもしれない。
・しかし、だとすれば、ここへ来て廃棄されたはずの文書が発見され、隠蔽されていた文書が再登場し、改竄されていたはずの文書の改竄前の原本が出てくるケースが続発しているのは、あるいは、官僚がモラルを回復しつつあるからこそ起こっている事態であるのかもしれない。
・個人的には、今後、より重大な文書が「発見」されることを期待している。 みなさん、がんばってください。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/040500138/?P=1

次に、 政治ジャーナリストの泉 宏氏が4月12日付け東洋経済オンラインに掲載した「安倍政権がはまった「公文書疑獄」の底なし沼 「天網恢恢疎にして漏らさず」との声も」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・口裏合わせ、隠蔽、備忘録…。新年度に入って相次いで発覚した「公文書スキャンダル」の連鎖が、安倍晋三政権を激しく揺さぶっている。 森友学園への国有地売却交渉での「口裏合わせ」と、自衛隊イラク日報での「隠蔽工作」を、それぞれ財務省と防衛省が渋々認めた直後に発覚したのが、加計学園問題での首相秘書官の「首相案件」発言を記した愛媛県職員の備忘録で、県知事も県の文書であることを明言した。
・いずれも4月初めから複数の新聞・テレビが相次いで「特ダネ」として報道し、当事者の政府当局者や県知事が追認するというパターンで、それぞれが、一連の問題での首相や関係閣僚らの「国会答弁」などを否定、もしくは矛盾を露呈させるという展開になっている。
・この「もり・かけ」に「イラク日報」の真相をあぶり出すような公文書は、1年余にわたる国会での野党などの追及に対し、政府が内容や存在を否定していたものばかり。まさに「天網恢恢疎にして漏らさず(注)」の故事を地で行くような政府の失態に、野党は「官邸の地獄の(釜の)ふたが開いた」(辻元清美・立憲民主党国対委員長)などとして、安倍政権打倒へ勢いづく。防戦一方の首相や関係閣僚も陳謝の連続で、内閣支持率も続落する中、与党内からも「このままでは政権が持たない」との悲鳴が聞こえてくる。
(注)天の張る網は、広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない。悪事を行えば必ず捕らえられ、天罰をこうむるということ(コトバンク)
▽「報道→追認」の悪循環で八方塞がりに
・一連の公文書問題はいずれも報道が先行し、政府側が渋々認めるという「悪循環の繰り返し」(自民国対)で、国民の失望と怒りを増幅させるばかりだ。首相が大号令をかけた働き方関連法案など後半国会の重要法案処理も成立のメドが立たなくなり、日本の進路にも直結する4月中旬の日米首脳会談から始まる一連の「安倍首脳外交」への影響も避けられそうもない。9月の自民党総裁選で3選を狙う首相にとって現在の八方塞がりの状態は、「第2次政権発足以来最大の危機」(自民幹部)となりつつある。
・4月9日夜のNHKの報道をきっかけに、朝日新聞、東京新聞両紙が10日付け朝刊の1面トップで報じたのが、学校法人・加計学園の愛媛県今治市での獣医学部新設計画の問題で、2015年4月2日午後に首相官邸などを訪れた愛媛県と今治市の担当職員に加計学園事務局長を加えた陳情団一行と、当時の首相秘書官や内閣府担当次長との面会記録だ。朝日はその記事の中で、「柳瀬(唯夫)首相秘書官の主な発言(総理官邸)15:00」との標題で書かれた文書の一部を写真も含めて掲載した。また東京は、この陳情団が同2日昼前に面会した藤原豊内閣府地方創生推進室次長の発言内容も詳しく報じた。
・朝日、東京両紙の報道のポイントは、柳瀬秘書官(現経済産業審議官)が陳情団に対し「本件は首相案件となっており、内閣府藤原(豊)次長の公式ヒアリングを受けるという形で進めていただきたい」などと発言したとの文書記録の存在(朝日)と、これに先立つ藤原氏(現経済産業省貿易経済協力局審議官)の「要請の内容は首相官邸から聞いている」(東京)などの発言(東京)だ。
・これらの発言内容が事実なら、首相の「腹心の友」の加計孝太郎氏が運営する加計学園の獣医学部新設(2018年4月に開学)について、申請前の段階から首相官邸や内閣府が後押していたことになり、「すべては一点の曇りもないプロセスで進んだ」という首相らの国会答弁に疑問符がつくからだ。
▽県知事「全面的に信頼」、首相秘書官「記憶にない」
・この報道について、中村時広愛媛県知事は10日夕に記者会見し、「県職員が作成した備忘録だ」と県の文書であることを公式に認めた。同知事はさらに「職員が文書をいじる必然性はまったくない。全面的に信頼している」と記述の真実性も力説した。他方、柳瀬氏は10日午前にコメントを発表し、「記憶たどっても、愛媛県や今治市の人と会ったことはない」「私が『首相案件』など具体的に発言することはあり得ない」などと否定した。
・この陳情会見問題は、昨年夏に野党側が国会の閉会中審査などで繰り返し追及し、参考人として呼ばれた柳瀬氏が、今回同様「会った記憶がない」などと事実関係を認めなかった経緯がある。しかも、首相はその後、国会で「加計学園の獣医学部新設計画を知ったのは2017年の1月20日」との答弁を繰り返してきた。それより2年近く前に首相秘書官が愛媛県などに対し「首相案件」と発言していたとすれば、首相の答弁が「内閣総辞職に値する虚偽答弁」(民進党)にもなりかねないだけに、首相は11日の衆院予算委員会集中審議で「柳瀬秘書官のコメントを信じる」と繰り返した。
・ただ、首相も含め政府側が一様に「コメントを控える」とした愛媛県の文書は、官邸に派遣された県職員が「報告のために忘れないように書いたもの」(中村知事)とされるだけに、内容の信ぴょう性は高い。このため、野党側はすぐさま、柳瀬、藤原氏や当該県職員らの証人喚問を要求した。柳瀬、藤原両氏の証人喚問については与党側にも容認論があり、今後の与野党折衝次第では柳瀬氏らの国会招致が実現する公算が強まっている。
・柳瀬氏は2008年から2009年にかけて現在の麻生太郎財務相が首相時代に首相秘書官を務め、2012年12月の第2次安倍内閣発足時に再び首相秘書官に就任、2015年8月に経済産業省経済産業政策局長に転じた。柳瀬氏は通商政策の専門家で早くから次官候補とされた超エリートで、秘書官退任後も首相との親密な関係を維持している。このため、与党内では仮に証人喚問が決まっても「記憶にない」の一点張りで佐川宣寿前国税庁長官と同様に事実上の証言拒否に徹するとの見方が広がる。
・この「首相案件」と記載した備忘録文書に先行して、メディアの報道によって問題化したのが森友学園問題でのごみ撤去費をめぐる「口裏合わせ」と、自衛隊イラク派遣時の日報の隠蔽疑惑だ。 ごみ撤去費をめぐって財務省理財局が学園側に口裏合わせを要請していたとの報道については、太田充理財局長が9日の参院決算委員会で、理財局職員が2017年2月20日に森友学園側の弁護士に電話で地下埋設物の撤去について「費用に関して相当かかった気がする」「トラック何千台も走った気がする」といった言い方をするよう求めていたことを認めた。その上で太田氏は、「森友学園側に事実と異なる説明を求めるという対応は間違いなく誤った対応だ。大変恥ずかしいことで、大変申しわけない。深くおわび申し上げる」と平謝りした。
・この問題ではさらにメデイアが「ゴミ撤去に関する学園の認識をまとめた文書を、理財局が近畿財務局に依頼して作成し、学園側に示した」と報道した点についても、太田氏は11日の衆院予算委集中審議で「好ましくない対応だった」と陳謝した。こうして次々と発覚する森友学園との土地取引に関する財務省に失態ついて、与党内からも「底なし沼のようだ」(公明党幹部)と嘆き節が聞こえてくる。
▽「イラク日報」問題で文民統制欠如の危機も
・一方、防衛省も4月上旬に、それまで国会で「不存在」と説明していた陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が多くの部署で見つかるという失態を露呈した。防衛相による日報探索の指示をないがしろにするような防衛省内部の対応は、大原則の文民統制(シビリアンコントロール)」の欠如にもつながる問題で、政府・与党内にも危機感が広がる。
・菅義偉官房長官は記者会見で「1週間に3回も大臣が国民におわびする事態となったことを防衛省職員一人一人が重く受け止め、再発防止に向け真摯(しんし)に取り組む必要がある」と危機感をあらわにした。公明党の井上義久幹事長も会見で「文民統制上の観点で極めて深刻な問題だ。速やかに調査結果を公表すべきだ」と求めた。
・このイラク日報の隠蔽疑惑が広がるという事態も、安倍政権にとっては極めて深刻だ。首相が「在任中の実現」を目指す憲法改正の最大のポイントは憲法9条への自衛隊明記だからだ。すでに自民党は3月下旬の定期党大会で「9条1、2項を維持しての自衛隊明記」を軸とする改憲条文の「たたき台」を確認している。しかし、なお党内での異論も根強いだけに、「実力組織の自衛隊」が起こした日報隠蔽問題は、今後の改憲論議進展の大きな障害になることは確実だ。首相も11日の集中審議で「シビリアンコントロールが問題になる」と苦悩を隠せなかった。
・一連の公文書スキャンダルが政権を直撃していることで、政局も一段と不透明感を増した。そうした中、永田町に波紋を広げたのが、政府と自民党の大黒柱として政権を支える麻生財務相と二階俊博幹事長の10日夜の会談だ。両氏は党内第2派閥の麻生派と第5派閥の二階派の領袖で、政局運営のキーマンでもあるからだ。
・都内の料理店で両派幹部も交えて会談した両氏は、「もり・かけ」や「イラク日報」問題で安倍政権が動揺している現状について「力を合わせて難局を乗り切る」ことを確認した。両氏はこれまで、9月の党総裁選での首相の3選を支持する立場を明確にしており、その点でも突っ込んだ意見を交換したとみられている。
・ただ、党内では両氏について「状況次第で、いつでも対応を変える」(岸田派幹部)との声も少なくない。特に二階氏は「政界の絶滅危惧種」(自民長老)とも呼ばれる寝業師として知られるだけに、「今は首相に恩を売ろうとしているが、3選が困難になればさっさと変身する」(同)との見方も多く、10日の会談でも双方の思惑が異なるままでの「協力確認」とみられている。
・政権危機の指標ともなる内閣支持率もここにきて続落している。大手メデイアが実施した最新の世論調査ではそろって「支持」と「不支持」が逆転し、「不支持」が上回っている。特に不支持の理由では「首相が信頼できない」が圧倒的多数で、一連の文書スキャンダルなどで国民が首相自身への不信感を強めていることがわかる。首相周辺も「支持率が3割を切って危険水域に入ると、政権危機が深刻化する」(政府筋)と眉をひそめる。
▽「黒い霧」の歴史踏まえた解散断行論も
・そうした中、党内の一部からは「衆院解散で一気に態勢を立て直すべきだ」との物騒な声も出始めている。佐藤栄作政権時代の1966年のいわゆる「黒い霧解散」で当時の佐藤首相が政権危機を脱した歴史があるからだ。首相周辺では「野党がバラバラの現状で解散すれば、自民党の議席は微減にとどまる」との強気の読みも出ている。しかし、「死なばもろとも」(自民幹部)ともみえる解散断行論には「二階幹事長や菅官房長官が、首相を羽交い絞めしてでも止めるはず」(同)との声も多い。
・首相は11日の集中審議での野党側の厳しい追及に、時折興奮する場面もあったが、ほとんどは「答弁メモ」を読み続けることでじっと耐えた。野党の質問が報道を引用した繰り返しばかりで、首相の固いガードを崩せなかったことも審議が盛り上がらなかった原因だ。
・与党内からは真相解明のための、「森友・加計問題等特別委員会」や国会での「特別調査委員会」の設置を求める声も上がっている。ただ、過去の例をみても「時間稼ぎにしかならない」のも事実。手練手管で真相解明を先送りにすれば政権への国民の不信は拡大し、結果的に第1次安倍政権の崩壊という11年前の悪夢の再現ともなりかねない。
https://toyokeizai.net/articles/-/216366

第一の記事で、 『官僚にとって文書は手段でもあれば目的でもあり、結果でもあれば歴史でもある。かててくわえて、自らの存在証明でもあれば退路でもある致命的に重要な存在だ』、 『イラク派遣時の日報・・・2004年~06年に書かれてから10年以上、不存在があらためて公式認定されてから数えても1年と2カ月ほど日の目を見ずにいた日報がわれわれの前に登場したなりゆきは、やはり「発見」という言葉を持ってこないと表現することができない』、 『「発見」されるためには、「発見」に先立って、その公文書を誰かが「紛失」していないと説明がつかないからだ。 とすると、1万4000ページに及ぶ公文書のヤマを、いったい誰がどうやって「紛失」できたものなのだろうか』、などの鋭い「謎かけ」に対して、 『自衛隊としては、南スーダン派遣の際の日報を「廃棄した」と説明した時点で、PKO南スーダン派遣から遡ること10年前の、2004年から06年の記録であるイラク派遣の日報が残っていてはマズいことになるわけで、ということはつまり、イラク派遣の日報隠蔽の動機は、南スーダン時の日報の廃棄という国会答弁から事後的に発生したことになる』、というのは見事な「謎解き」だ。 『民主主義国家の行政の過程としては極めて異常ななりゆきではあるが、縁故主義(ネポティズム)と、人治主義が猛威をふるう前近代的な独裁国家ではさしてめずらしいことではない。というよりも、独裁的なリーダーが官僚の人事を壟断している世界では、あらゆる行政的な決定事項は、ボスの鼻息をうかがう形で決裁される。少しも不思議なできごとではない』、 『政治の覇権争いが人治主義と縁故主義に傾き、選ばれてくる議員が世襲の三代目だらけである現状において、政治主導の理想は急速に色あせている。 それにしても、財務省をはじめとして、厚労省、防衛省、文科省の官僚たちはどうして自分たちの仕事を冒涜しにかかるみたいな暴挙に走ったのであろうか・・・この何年かの間に、見渡す限りのお役所で、本来なら優秀なはずのお役人が、一斉に自分たちの仕事に泥を塗りはじめている。 これは、大きな謎だ・・・ここへ来て廃棄されたはずの文書が発見され、隠蔽されていた文書が再登場し、改竄されていたはずの文書の改竄前の原本が出てくるケースが続発しているのは、あるいは、官僚がモラルを回復しつつあるからこそ起こっている事態であるのかもしれない。 個人的には、今後、より重大な文書が「発見」されることを期待している』、との結びには、強く同意する。
第二の記事で、 『柳瀬秘書官(現経済産業審議官)が陳情団に対し「本件は首相案件」』、との発言は、本人だけは否定しているが、愛媛県の文書になっているだけに、安部首相には致命傷になりかねない。 『「黒い霧」の歴史踏まえた解散断行論・・・「死なばもろとも」(自民幹部)ともみえる解散断行論には「二階幹事長や菅官房長官が、首相を羽交い絞めしてでも止めるはず」(同)との声も多い』、のであれば、普段は好きになれない二階幹事長や菅官房長官に大いに頑張ってもらいたいところだ。
タグ:公文書管理 (その3)(小田嶋氏:「発見」された不存在の日記について、泉氏:安倍政権がはまった「公文書疑獄」の底なし沼) 小田嶋隆 日経ビジネスオンライン 「「発見」された不存在の日記について」 官僚にとって文書は手段でもあれば目的でもあり、結果でもあれば歴史でもある。かててくわえて、自らの存在証明でもあれば退路でもある致命的に重要な存在だ。 行政文書が軽視されていることは、官僚が自分たちの仕事への情熱を失っていることのあらわれなのだというふうに受けとめている。でもって、官僚が為すべき義務を果たしていないことは、行政が機能していないということであり、行政が滞っているということは、国政が狂っていることだとも考えている イラク派遣の日報隠蔽の動機は、南スーダン時の日報の廃棄という国会答弁から事後的に発生したことになる ここへ来て廃棄されたはずの文書が発見され、隠蔽されていた文書が再登場し、改竄されていたはずの文書の改竄前の原本が出てくるケースが続発しているのは、あるいは、官僚がモラルを回復しつつあるからこそ起こっている事態であるのかもしれない 泉 宏 東洋経済オンライン 「安倍政権がはまった「公文書疑獄」の底なし沼 「天網恢恢疎にして漏らさず」との声も」 官邸の地獄の(釜の)ふたが開いた 報道→追認」の悪循環で八方塞がりに イラク日報」問題で文民統制欠如の危機も 「黒い霧」の歴史踏まえた解散断行論も 解散断行論には「二階幹事長や菅官房長官が、首相を羽交い絞めしてでも止めるはず」
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日本の政治情勢(その19)(昭恵夫人の証人喚問の前に安倍首相は辞任する 佐川氏の答弁拒否はこれから裏目に出るだろう、 「影の総理」今井首相秘書官に見える2つのほころび 「森友」「東芝」が「安倍首相が最も信頼する男」を揺るがす) [国内政治]

日本の政治情勢については、4月7日に取上げたが、今日は、(その19)(昭恵夫人の証人喚問の前に安倍首相は辞任する 佐川氏の答弁拒否はこれから裏目に出るだろう、 「影の総理」今井首相秘書官に見える2つのほころび 「森友」「東芝」が「安倍首相が最も信頼する男」を揺るがす)である。

先ずは、政治評論家の田原 総一朗氏が3月30日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「昭恵夫人の証人喚問の前に安倍首相は辞任する 佐川氏の答弁拒否は、これから裏目に出るだろう」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・3月27日(火曜日)に、国会で佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた。これによって森友文書改ざん問題の疑惑を一層強めてしまったと思う。 この日の佐川氏の表情を見ると、事前に戦略を練って証人喚問に臨んだように感じた。3月9日に辞任した時の顔とはまるで違うのだ。あの時は相当うろたえていた印象があるが、この日にはそういったところが全くない。むしろ、受け身より攻めの表情だった。
・公文書改ざんの問題で、あの文書を、いつ、誰が、何の目的で改ざんしようとしたのか。その改ざんに、佐川氏はどの程度関わったのか。野党はそれらの点について質問したわけだが、佐川氏はいずれも「刑事訴追の恐れがあるので、ここでそのことを説明するわけにはいかない」と具体的な説明をしなかった。「刑事訴追」を隠れ蓑にして、肝心な点についての回答を避けたわけだ。
・野党各党の中で、共産党の小池晃氏が非常に鋭い切り込みをしていた。彼だけは他の議員たちとは異なる質問をした。佐川氏はかつて国会で「森友側と価格についての話し合いがなかった」と説明していた。ところがその後、事前に値段交渉している音声データが出てきた。一体、どちらが本当なのか。 佐川氏が言っていることが本当なら、録音データはインチキである。共産党の小池氏は「どちらが真実なのか」と問いただすと佐川氏は、「刑事訴追の恐れがあるので、答えられない」と言った。小池氏は、「ただ事実を尋ねただけだ。刑事訴追と関係あるわけがない。なぜ、YESかNOかすら答えられないのか」と詰め寄った。この問答については、非常にリアリティがあると感じた。
・さらに小池氏の質問の中には、「改ざん前の文書に安倍昭恵夫人の名前が出てきたが、それについてあなたはどう感じたか」というものがあった。やはり佐川氏は、再び刑事訴追を盾にして回答を避けた。 小池氏は「何を言っているのか。これも刑事訴追には全く関係ない話だ」と憤慨し、ここでまた証人喚問は中断された。 「何も答えないのであれば、証人喚問の意味は全くない」と小池氏は声を荒げたが、視聴していた国民の多くも同じように感じていただろう。
▽佐川氏の答弁拒否で不信感はますます増幅
・なぜ、佐川氏は回答を避け続けたのか。動機の一つは、佐川氏は官僚の世界で孤立したくないと考えているということ。もう一つは、官邸からこれ以上嫌われたくないということだ。 その代わり、国民からは決定的な不信感を持たれてしまった。僕は、そのせいで彼は将来的に大きな損をするのではないかと思う。
・昨年、佐川氏は森友問題で官邸に有利な答弁をしたことが評価され、国税庁長官に就任した、と言われている。いわゆる論功行賞だ。当時、社会から多くの批判の声が上がった。今回も、問題のほとぼりが冷めたら、何らかのポジションが用意されている可能性がある。しかし、そんなにうまくいくだろうか。
・まず、彼は答弁を避けて周囲に不信感を与えたことで、刑事訴追では検察からかなり厳しく追及されるだろう。もっと長期的な戦略を持たなければ、自分で自分の首を絞めることになる。 昨年、佐川氏が国会で答弁した時もそうだ。答弁の内容が、改ざん前の文書とあまりにも違いがあるから、公文書を変えざるを得なくなった。つまり、その場ではいいと思ったものが、結果的には非常に都合が悪くなり、事態をより複雑にしてしまったわけだ。
・今度も同じだ。彼は今回の証人喚問について、ベストな対応をしたと考えているかもしれないが、それによって自民党が国民の信頼を失う原因になりかねない。 これ以後、自民党では、安倍内閣を守るべきだという意見と、やはり自民党が国民の信頼を取り戻すために真相解明に全力を注ぐべきだという二つの意見に割れると思う。最終的には、後者の声が強まってゆくだろう。それは、安倍昭恵夫人の証人喚問の可能性が高まっていくということである。
▽支持率が30%を下回れば、昭恵夫人の証人喚問は必至
・森友問題などで内閣支持率は急落した。安倍首相にとって宿願である憲法改正の実現は、おそらく、もうできないだろう。僕は、安倍首相の辞任は刻一刻と近づいていると思う。 可能性として最も大きいのは、こんなシナリオだ。今回の証人喚問によってますます不信感が強まり、野党は早くも、昭恵夫人や、国有地の売却交渉当時の理財局長だった迫田元国税庁長官らの証人喚問を求めていく方針を固めた。
・今のところ、自民党は昭恵夫人の証人喚問を徹底的に拒否しているが、安倍内閣の支持率がさらに下れば、野党の要求を受け入れざるを得なくなる。そんな事態になれば、安倍首相は昭恵夫人の証人喚問の前に辞任するだろう。 佐川氏の証人喚問は、そういった流れを引き起こす要因になる可能性があるのである。
・では、それがいつになるのか。目安としては、安倍内閣の支持率が30%を切るかどうかだ。これまで安倍内閣が最も支持率を落としたのは、昨年1~2月に森友・加計問題が注目された時である。当時、支持率は20%台まで落ち込んだ。 その水準まで下落すると、自民党内でも安倍首相に対する反発の声が相当強まることは間違いない。この時が、安倍首相にとって大きなターニングポイントになるだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/122000032/032900063/

次に、4月5日付けJBPressが転載した経済ジャーナリストの大西 康之氏による 新潮社フォーサイトへの寄稿「 「影の総理」今井首相秘書官に見える2つのほころび 「森友」「東芝」が「安倍首相が最も信頼する男」を揺るがす」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「安倍晋三首相が最も信頼する男」。内閣総理大臣秘書官の今井尚哉(たかや)氏の権勢に陰りが見える。元経産官僚の今井氏による首相夫妻への進言は、経済政策、政治日程からプライベートのトラブルにまで至る。しかし、「現代のラスプーチン」さながら絶頂にある今井氏の鉄壁の守りに、ほころびが見えてきた。ほころびは2つ。「森友問題」と「東芝危機」だ。
▽人生のすべてを安倍首相に
・栃木県生まれの今井氏は東京大学法学部を卒業し、1982年に通商産業省(現在の経済産業省)に入省した。新日本製鐵(現在の新日鐵住金)の社長、会長、経団連会長を歴任した今井敬(たかし)氏、元通産省事務次官の今井善衛(ぜんえい)氏(今井敬氏の兄)という2人の叔父を持つである。
・入省後は主に産業政策・エネルギー畑を歩み、資源エネルギー庁次長などを務めた。嶋田隆氏(現・経産省事務次官)、日下部聡氏(現・資源エネルギー庁長官)と同期で「経産省三羽烏」と呼ばれたこともある。2006年の第1次安倍内閣で、事務担当の首相秘書官に任命された。今井氏の叔父、善衛氏が戦前、通産省が商工省だった時代、商工省次官、大臣を歴任した岸信介(安倍首相の祖父)の部下だったことを知ると、安倍首相は「そうだったの。昔からお世話になっているんだね」と、今井氏に心を開くようになったという。
・2007年、潰瘍性大腸炎で安倍首相が退くと、今井氏は経産省に戻る。それまで安倍氏にすり寄っていた官僚や記者は潮が引くように離れていったが、今井氏は高尾山登山に同行するなど、不遇時代も寄り添い続けた。今井氏は昭恵夫人に対しても、「奥様、奥様」と如才なく振る舞い、大のお気に入りになる。
・2012年、第2次安倍内閣が発足すると、安倍首相のたっての願いで政務担当の首相秘書官に就任する。この時、今井氏は経産省事務次官の最有力候補だったが、「俺の役人人生はここで終わり。最後まで安倍首相に仕える」と周囲に漏らしている。離婚もしている今井氏は言葉通り、人生のすべてを安倍政権に捧げるようになる。
・そんな今井氏に安倍首相は全幅の信頼を置いており、「消費税率引き上げの時期から解散のタイミングまで、なんでも相談する」(関係者)という。「一億総活躍社会」やアベノミクス「新・三本の矢」など、安倍政権の目玉政策を策定しているのも今井氏である。3本目の矢である「経済」の中で「インフラ輸出」の旗を掲げ、日本の原発を海外に輸出する政策を推し進めた。これが、東芝を倒産寸前まで追い込んだ巨額赤字の原因になった。このことについては後で詳しく述べる。
▽鉄壁のガードにほころび
・その異常なまでの権限集中により、今や今井氏は「菅義偉官房長官より首相に近い」とされ、「影の総理」または「日本のラスプーチン」と呼ばれている。グレゴリー・ラスプーチンは帝政ロシア末期、ニコライ2世皇帝夫妻に寵愛されてロシアの政治、外交に大きな影響を及ぼし、ロシア帝国崩壊の一因を作ったとされる怪僧だ。
・その血筋と経歴故に極めて用心深く、スキャンダルと無縁だった今井氏だが、ここへきて鉄壁のガードにほころびが見えてきた。1つは今、国会を揺るがしている森友問題への関与だ。 財務省と森友学園の国有地取引に関する決済文書が改竄された問題で、前文部科学省事務次官の前川喜平氏は『週刊朝日』(3月30日号)でこう語った。 「忖度ではなく、官邸にいる誰かから『やれ』と言われたのだろう。私は、その“誰か”が総理秘書官の今井尚哉氏ではないかとにらんでいる」
・気の小さい官僚に自分の一存で公文書を改竄する勇気などない、というのが自らも官僚であった前川氏の見立てである。3月27日には、国有地管理の責任者である理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問が開かれる予定だ。トカゲの尻尾切りで終わらせたい安倍政権側は、佐川氏に「改竄は自分の一存」と言わせたいところだが、切り捨てられる佐川氏がヤケを起こし、「上から言われた」と証言すれば、「上」の中に今井氏が入っている可能性が高い。それを見越した前川氏は最近、長野県で開いた講演で、こうコメントしている。 「役人は辞めればなんでも言える。佐川さんにそう教えてあげたい」
・森友問題でも官邸で収束のシナリオを書いているのは、間違いなく今井氏だ。圧倒的な情報量でマスコミを操ってきたのも同氏だが、佐川氏が腹をくくってパンドラの箱を開ければ、中から「今井」の名前が飛び出してくる可能性は高い。
▽新会長兼CEOは不可能を可能にした「戦友」
・もう1つ、今井氏を脅かしているのは東芝問題である。東芝は4月、元三井住友銀行副頭取の車谷暢昭(くるまたに・のぶあき)氏を会長兼CEO(最高経営責任者)に迎える。一見、東芝のメインバンクである三井住友銀行の支援と思われるが、そうではない。「三井のエース」と言われた車谷氏は、頭取レースに敗れて1年前に三井住友銀行を去り、英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズの日本法人会長兼共同代表になっていた。メインバンクが送り込んだ訳ではないのである。
・車谷氏に目をつけたのは今井氏と経産省事務次官の嶋田隆氏だとされる。車谷氏は東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、経営危機に瀕した東電に対し、2兆円の緊急融資をまとめあげた。この時、民主党政権下で東電危機に対処するタスクフォースを取り仕切ったのが、経産省に戻り資源エネルギー庁次長を務めていた今井氏だ。
・仙谷由人官房副長官をヘッドとする、このタスクフォースは「チーム仙谷」と呼ばれ、嶋田、日下部、今井の経産省三羽烏が顔を揃え、そこに内閣官房参与だった国際協力銀行(JBIC)の前田匡史(ただし)副総裁、東芝電力システム社の首席主監だった田窪昭寛氏が加わった。チーム仙谷は、原発政策を維持するため、史上最悪の原発事故を起こし、誰がどう見ても経営破綻していた東電を存続させた。そのための絶対条件が、2兆円の緊急融資であり、交渉テーブルの向こう側にいたのが車谷氏であった。今井氏にとって車谷氏は、不可能を可能にした時の「戦友」なのだ。
・しかし、経産省が主導する日本の原発政策は事実上、破綻している。東電が国から借りた9兆5157億円の賠償金を返済するには、今のレベルの営業利益をそっくり返済に充てたとしても40年はかかる。そんなことをしたら設備投資も技術開発もできず、会社として死んでしまう。それでも今井氏を筆頭に、経産省・官邸の原発推進勢力は強引に東電を延命させている。
▽刑事訴追されないのは「官邸からの圧力」?
・そうこうするうちに、東電に続いて東芝が火を噴いた。経産省の強い後押しを受けて買収した米原発大手のウエスチングハウスが1兆5000億円近い赤字を生み、東芝本体が債務超過に陥った。海外原発事業で巨額の減損処理が必要なことは、リーマン・ショック後の2009年頃から原発部門や財務部門で認識されていたが、東芝はこれを隠蔽するために粉飾決算を続けた。利益水増しの総額は、7年間で2248億円に及んだ。
・が、2248億円という巨額粉飾にもかかわらず、東芝は刑事訴追されていない。東京地検特捜部OBの弁護士はこう指摘する。 「債務超過転落の原因となった2015年の米原発建設会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)の買収に、原発事業の損失を隠蔽する意図があったとすれば、経営陣は背任に問われる。これだけの規模の粉飾を捜査しないのは、検察の怠慢ではないか」
・ここでささやかれているのが、「官邸からの圧力」である。今井氏は田窪氏を通じて東芝経営陣と密接な関係を持ち、ウエスチングハウス買収以降の東芝の海外原発事業を後押しした。東芝社内では、常識から考えて無謀と思われる投資でも、田窪氏やその上司で後に社長になる佐々木則夫氏らは、「これは国策だ」の一言で反対を封じてきた。
・佐々木氏と前任の西田厚聰(あつとし)氏(2017年に死去)、後任の田中久雄氏の歴代3社長は、粉飾決算の責任を取って辞任。現在は東芝から損害賠償請求を受けている。経産省と気脈を通じる経営者はいなくなったが、今井氏と嶋田氏はそこに車谷氏を送り込み、東芝をリモートコントロールするつもりではないか。
▽米国で4基、中国で4基を作りかけ
・東芝は昨年、増資で海外ファンドから6000億円を掻き集め、2期連続の債務超過を免れた。ウエスチングハウスはカナダの投資グループ傘下のファンドが46億ドル(当時約5200億円)で買収することになり、車谷新会長を迎える東芝には、「一件落着」の空気が漂う。しかし、米国で4基、中国で4基の原発を作りかけて倒産したウエスチングハウスの問題は、まだ収束していない。
・施主のスキャナ・コーポレーションとサンティ・クーパー社が建設を断念したVCサマー原発があるサウスカロライナ州では、3月21日、州議会が米ウエスチングハウスの経営幹部を証人喚問した。同原発では建設コストが約1兆7000億円と当初計画の2倍近くに膨らんでおり、経営責任を問う声が高まっている。ウエスチングハウスの親会社だった東芝も責任を免れない。地元住民も東芝に損害賠償を求める訴訟を起こしている。
・森友問題も東芝危機も震源を探っていくと今井氏に辿り着く。ラスプーチンに籠絡されたニコライ2世夫妻の代で、ロシア帝国は崩壊した。首相秘書官という陰の立場から官庁や企業を動かし、国を危うくしている今井氏は、まさに現代の日本のラスプーチンと言える。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52740

第一の記事で、 『佐川氏の答弁拒否で不信感はますます増幅』、というのはその通りだ。本日の日経新聞によれば、加計学園問題で、柳瀬元秘書官が愛媛県今治市への獣医学部新設計画を「首相案件」と発言したとする文書が見つかり、証人喚問を自公が容認の方向と伝えている。森友学園問題でも、肝心の安倍昭恵夫人の証人喚問まで波及すれば、 『安倍首相は昭恵夫人の証人喚問の前に辞任するだろう』、との田原説が現実味を増してくる。ここ数日がヤマ場なのだろう。
第二の記事で、 内閣総理大臣秘書官の今井尚哉氏の血筋は、確かに 『サラブレッド中のサラブレッド』、だ。 『今井氏は経産省事務次官の最有力候補だったが、「俺の役人人生はここで終わり。最後まで安倍首相に仕える」と周囲に漏らしている』、と次官より総理大臣秘書官を選んだというのは、忠臣の典型だ。 『「三井のエース」と言われた車谷氏は、頭取レースに敗れて』、とあるが、これは筆者の筆のすべり過ぎだ。三井住友銀行では、頭取には旧住友銀行出身者が就き、いくら「三井のエース」でも転出せざるを得ないのが既定路線となっているからだ。 『今井氏にとって車谷氏は、不可能を可能にした時の「戦友」なのだ』、それを東電の会長兼CEOに就け、『東芝をリモートコントロールする』、のは、今井氏にとってこの上なく好都合なのだろう。しかし、 『米国で4基、中国で4基の原発を作りかけて倒産したウエスチングハウスの問題は、まだ収束していない・・・ウエスチングハウスの親会社だった東芝も責任を免れない。地元住民も東芝に損害賠償を求める訴訟を起こしている』、という爆弾を抱えたままの状態のようだ。仮に、安部辞任ということになっても、天下り先に困らない経産省が、しかるべき先を世話してくれるのだろう。
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森友学園問題(その18)(森友問題が象徴する「縁故資本主義」が日本を滅びに向かわせる、忖度という非言語コミュニケーション、森友学園問題 「口裏合わせ依頼」の巨大衝撃 昨年2月20日前後 いったい何があったのか) [国内政治]

今日まで更新を休む予定だったが、国会が大荒れになっているようなので、更新することとした。森友学園問題については、3月30日に取上げたが、今日は、(その18)(森友問題が象徴する「縁故資本主義」が日本を滅びに向かわせる、忖度という非言語コミュニケーション、森友学園問題 「口裏合わせ依頼」の巨大衝撃 昨年2月20日前後 いったい何があったのか)である。

先ずは、慶應義塾大学経済学部教授の金子 勝氏が3月30日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「森友問題が象徴する「縁故資本主義」が日本を滅びに向かわせる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・森友学園に対する国有地の大幅値引き売却をめぐって、財務省による決済文書の改ざんが発覚した。27日、行われたキーマンの佐川宣寿・元理財局長の証人喚問では、佐川氏は改ざんの動機や自らがどう関わったかは、「刑事訴追の恐れがある」ことを理由に明らかにしなかった。その一方で、首相や昭恵夫人、官邸の「関与」については明確に否定した。根拠を何ら示さずに断言答弁する姿勢も変わっていない。 政権が描く幕引きのシナリオ通り「トカゲのしっぽ切り」の「しっぽ」を忠実に演じようとしているような印象だ。
▽佐川氏喚問で「幕引き」狙い 真実を知る人物は「隔離」
・証人喚問では「刑事訴追の恐れがある」とした証言拒否は少なくとも46回を数える。「刑事訴追の恐れがある」が「文書は消去した」に取って代わっただけで、説明責任を果たそうとしない姿勢も相変わらずだ。 だが国会証人喚問での「訴追の恐れ」で証言拒否できるのは、犯罪行為にかかわる事項だけでだ。そう考えると、証言からいくつもの疑問がわいてくる。
・たとえば、昨年3月15日の国会答弁について契約文書を見ていたかどうかを言えないということは、その時点で犯罪行為にかかわるという認識があったということだ。 ならば、佐川氏の答弁に応じて文書が改ざんされたのではなく、2月17日の安倍総理の総理も国会議員も辞めるとの国会答弁を受けて、契約文書の改ざんが同時進行していた可能性を示唆していることにならないか。
・これまで「交渉記録も面談記録も消去した」を盾に事前の価格提示を否定してきたが、あの発言は「文書管理規則」を説明したものだという証言にも無理がある。 さらに、国会答弁を大臣官房にもあげていたかと問われて、形式的には大臣官房にあげるが、実質的にはあげていない、という証言も無理がある。
・首相や昭恵夫人との「親交」を誇示する籠池夫妻が経営する森友学園に、「便宜供与」が行われたことはなかったのかどうか。 国有地貸し付けから売却に至るまでに、定期借地権設定、「価格非公開」、そして大幅値引きという異例ばかりの「特例的」な案件について、誰が何を目的に指示をして決裁文書の改ざんが行われたのか、はっきりさせねばならない。
・その際、真実を知る者が実質「隔離」されていることが真相の解明を妨げている。 与党は、佐川氏の証人喚問で収束を図ろうとしており、昭恵夫人の証人喚問には応じない構えだ。 田村嘉啓国有財産審理室長に「口利き」のファックスを送った総理夫人付けの政府職員の谷査恵子氏は、事態が発覚するや、イタリア大使館一等書記官に異例の昇進をし、海外にいる。
・さらに、証拠隠滅や逃亡の恐れのないにもかかわらず、籠池夫妻は、詐欺罪を適用され「容疑者」のまま7ヵ月も拘留されている。
▽隠ぺい、恣意的データ作り 文書改ざんの横行
・政権の「隠ぺい体質」が浮き彫りになったのは森友疑惑だけではない。 安倍政権になってから、証拠になる政府文書を隠す、都合のいいデータを作る、時には政府文書そのものを改ざんする、といった事態が横行している。
・安倍首相の「長年の友人」の加計孝太郎氏が理事長をする加計学園の獣医学部新設をめぐる疑惑問題でもそうだった。 昨年7月に、獣医学部新設4条件を満たしているかどうか非常に疑わしいまま、加計学園を国家戦略特区(今治市)の事業者に決定した。この問題を追及されて、松野博一文科相は、2016年9?10月に行われた内閣府と文科省の会合記録文書の存在を否定した。その文書には「総理のご意向」と書かれた文言が含まれていた。
・ところが、前川喜平前事務次官が文書の存在を確認すると、文科省は「再調査」で文書があったことを認めた。それでも、「総理の意向」を文科省担当者に伝えたとされた萩生田光一官房副長官(当時)、和泉洋人首相補佐官らは「記憶にない」で押し切った。
・さらに、事業者決定を審議していた内閣府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)の議事録でも、常識では理解できないことが起きていた。 事業者決定の前の段階で、今治市職員と加計学園関係者がこの会議に参加していたが、この時の事前参加の記録は「未記載」だった。そして、国家戦略特区WGの「議事要旨」部分について、2016年12月に開示されたものは大半が黒塗りされ、その分量は約2頁ページ半あったが、17年8月の開示分では1ページに短縮されていた。ここでも文書改ざんの疑惑が浮上している。
・また安倍首相自身も、加計氏を長年の友人と認め、ゴルフや会食を繰り返していたにもかかわらず、加計学園が特区の事業者に決定したことを正式に決定した「17年1月20日に初めて知った」という。 いかにも不自然な答弁を国会でしたが、それ以前に知っていれば、関係業者の供応接待や便宜供与を禁じた大臣の服務規定(国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範)に反することになる。
・同じ頃、南スーダンPKOの日報隠し問題も露見した。 陸上自衛隊がPKOで派遣されている南スーダンが実質的に「戦闘状態」に陥っていることが書かれていた「日報」を、防衛省は当初「廃棄済み」としていた。  しかし、その後、電子データが発見されたことを知りながら、稲田朋美防衛相と黒江哲郎防衛事務次官が隠蔽した。隠蔽が発覚して稲田防衛大臣は粘ったあげくに、世論の批判が強まり、ようやく辞任した。
・最近では、「働き方改革」で、質問事項の違うデータを“恣意的”に使って、政府は裁量労働の方が一般労働者より労働時間が短いと主張した。 当初、加藤勝信厚労相は、国会などでの追及に対して「個票データはない」としていたが、これも、後日、本省内の地下室から大量のデータ資料が出てきた。 そこには、残業時間の数値が勤務実態と矛盾するなどの「不適切データ」がたくさん含まれており、役に立たない調査であることが露呈した。
・このように見てくると、財務省だけ、あるいは佐川宣寿氏ひとりが改ざんをしたとは考えにくい。これは安倍政権の体質の問題だと考えざるを得ない。 内閣府人事局を設置して600名もの霞ヶ関の幹部人事を握ることで、官邸の意向を推し量って、政権の都合のいいように使える「忖度官僚」を生み出し、本来は、中立公平であるべき官僚制そのものを壊した。
・国会に出てくるすべての資料は虚偽でできているとすれば、もはや国会審議は何の意味も持たなくなる。  そして、いったん権力を握れば、どんな不正も腐敗行為も行うことができるようになってしまう。国の統治機構そのものが崩壊してしまう事態に直面していると言えよう。
▽「原発再稼働」でも首相側近が官邸を仕切る
・こうした「崩壊」現象が顕著になったのは、福島原発事故の処理から始まっているように思える。 3月17日付の朝日新聞によれば、福島原発事故が起き、1~4号機が次々に水素爆発を起こしていた2011年3月12日~15日に、松永和夫経産事務次官(当時)は寺坂信昭保安院長に「再稼働を考えるのが保安院の仕事だ」と言い放ったという。
・新潟県と東京電力ホールディングスとの合同検証委員会によれば、清水正孝東京電力社長(当時)が、事故を過小に見せるために、炉心溶融(メルトダウン)という言葉を使わないように社内に指示していたとされる。 未曽有の原発事故という危機の状況で、情報の混乱や情報の開示自体が新たな不測の事態を招きかねないリスクを考えざるを得なかった面があったことは確かだ。
・だがこれ以降、情報を隠蔽し、内々で物事を進めるやり方に抵抗が薄れ、一部の首相側近が情報を管理し、さらには情報を統治に都合よく使って、ということがひどくなった。 「原発再稼働」でも、今井尚哉政務秘書官を筆頭に、経産省(資源エネルギー庁)や電力会社などの「原子力ムラ」の面々が、公安警察出身の長田和博官房副長官と戦前の特高警察を礼賛する論文(「外事警察史素描」(『講座警察法』第三巻)を書いた北村滋内閣情報官らと連携して、政権を動かしている。
・ちなみに、今井政務秘書官は、昭恵首相夫人付き政府職員で、財務省の田村国有財産審理室長に、森友学園の土地取引について「問い合わせ」をするファックスを送った谷査恵子氏の上司にあたる。 国民に対しても、前言を翻し「嘘」をつくようなことも起きている。
・自民党が政権を奪回した2012年12月の総選挙では、安倍自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」を掲げていた。 ところが、第2次安倍内閣は発足早々、政府と国会の事故調査委員会の報告書を無視し、フォローアップする有識者会議も設けずに福島原発事故の原因究明を放り投げ、十分な避難計画も整備しないまま原発再稼働へ動いてきた。
・そして、2013年9月7日、東京オリンピック・パラリンピックを誘致するために出席したIOC総会では、安倍首相は、福島原発の状況を「アンダーコントロール」と述べ、公然と嘘をついた。 その後も、政府のエネルギー計画策定で、原発を「ベースロード電源」とし、全電源に占める原発の比率を「20~22%」と、「脱原発」の流れを逆戻りさせ、再稼働に邁進していく。
・2016年12月9日に、経産省「東京電力改革・1F問題委員会」は福島第1原発の事故処理費用が11兆円から約22兆に倍増したと発表。東電幹部の経営責任や監督責任を問わないまま、処理費用のうち2兆円を税金でまかない、7~8兆円を託送料金に乗せる方針を出したのである。
▽長年の友人や近い関係者を“優遇” 異論や批判は封じ込める
・森友問題をはじめとした様々な疑惑や国民を欺くような背信行為を生み出した背後にあるのは、安倍政権の時代錯誤的なクローニーキャピタリズム(縁故資本主義)にある。 縁故資本主義とは、民主主義的チェックが働かず、権力者周辺に利益がばらまかれる経済体制をさす。 「アベ友」と呼ばれる一部の親しい関係にある人や逆らわない人に利益を誘導する一方で、異論や批判を力で封じ込めてしまうやり方だ。
・このことが典型的に現れているのが金融政策だろう。 まず、日銀の政策委員の多くを「リフレ派(インフレターゲット派)」で固めることによって、「2年で」としていた2%の物価上昇目標実現時期が6回の延期を余儀なくされても、「政策的失敗」に対する根本的な批判を封じ込めてしまった。 その結果、いまや日銀の金融緩和政策は出口のないネズミ講のようになっている。 日銀が金融緩和を止めたとたん、株価が暴落し、金利が上昇して国債価格が下落して日銀を含む金融機関が大量の損失を抱え込んでしまう状況だ。
・産業政策もおかしな事例が続出している。 新しい生命科学(ニューライフサイエンス)分野で、国家戦略特区の事業者に指定されたのは、鳥インフルエンザの研究実績のある京都産業大学を押しのけて、加計学園獣医学部だった。 加計学園は高齢化した教員構成や設備の不備も指摘されていたが、モデル事業者として選ばれた。
・コンピュータ開発では、ペジー・コンピューティング社による補助金の不正受給、詐欺事件が起きた。 スパコンにかかわって成立した国際特許がなく、高度な科学計算論文もなく、実用性がなく民間納入はない、ただベンチマークとなるコンピュータ速度だけを上げるスパコンに100億円近くの資金が注ぎ込まれてきた。
・とくに科学技術振興機構(JST)は2週間緊急募集でまともな審査を行ったかも疑わしく、しかも9割返還の必要のない52億円の融資を垂れ流した。 社長の斉藤元章は自ら役員に収まっていくつも会社を作るという手法を使っていた。そして同社への助成金支給を媒介したのは、「準レイプ疑惑」の元TBS記者だと言われているが、この人物も、『総理』という著作で知られ、安倍首相と近い関係が指摘されている。
・原発でも、アメリカで相次ぐ原発の建設中止・中断によって東芝が経営危機に陥っているにもかかわらず、政府は、総額3兆円という日立のイギリスへの原発輸出プロジェクトを推進するために、政府系金融機関を使って出資させ、メガバンクの融資についても政府保証をする方針を出している。 福島原発の事故処理・賠償費用を国民負担させている東京電力にも出資させる計画だ。
・原発はいまや採算がとりにくくリスクが高い事業で、へたをすれば事業の失敗は国民の税金で後始末を余儀なくされる可能性が高い。 この時代錯誤的な原発輸出を担う日立会長の中西宏明氏も安倍首相と近い関係にあり、しばしば会食する間柄だ。
・大手建設会社4社の談合が表面化し逮捕者も出たリニア新幹線の場合も、JR東海の葛西敬之名誉会長が安倍首相の長年の友人として知られている。 安倍首相と友人関係にある人物らが担う事業に多額の国家資金が注ぎ込まれている構図だ。
・すでに、日本の産業競争力は衰弱の道をたどっている。 この“縁故資本主義”は、競争力を失った遅れた産業に巨額の資金を注ぎ込んで旧体制を支える一方で、新しい先端産業分野では不正・腐敗行為をもたらしている。
・だが公正なルールを失ったところに健全な競争はなく、やがて国際競争力を一層失わせていくことになるだろう。 「一強政治の弊害」は日本経済までも蝕む事態になっている。
http://diamond.jp/articles/-/165153

次に、在米作家の冷泉彰彦氏が4月1日付けメールマガジンJMMに掲載した「「忖度という非言語コミュニケーション」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・朝鮮半島情勢や、国際経済の動向を考えると「森友」どころではない・・・ということをずっと申し上げてきたのですが、状況がここまで来ると、そうも言っていられなくなりました。とにかく、政権が信用されなければ、内外に影響力行使をすることはできない、つまりは国家を代表できないわけですから、政権の行く末に対して黄信号が灯ったということは無視できません。
・では、この「森友」問題を大きく取り上げて、一気に倒閣に向かうべきかというと、どうも気の重い感じが消せません。というのは、仮に政権動揺の原因がこの「森友」の問題だとしても、ここまでの「告発の流れ」に納得が行かないからです。
・この「森友事件」の一番の問題というのは、教育勅語を信奉する(学園の募集パンフレットによれば「教育勅語の素読・解釈による日本人精神の育成」)などという「現在の日本の国のかたち」を根本から否定するような小学校の設立が企図され、それに保守政治家の家族が同調したということにあると思われます。ですから、この問題はかなり深刻な話と思われるのですが、残念ながらしっかりした批判は起きていません。
・というのは、この学校を設立しようとした籠池という人物を、左派を含めた野党は利用して、いわば安倍政権を右と左から挟撃するという愚挙に出たからです。こうなると、何が正しいのか間違っているのか、少なくとも「戦前の価値観での教育」が企図されたことへの批判や追及はできなくなっているわけです。そこに、何とも言えない「イヤな感じ」がしています。
・後は、いわゆる「三大忖度事件」の中で、もっと悪質な強姦不起訴事件や、許認可案件などではなく、この問題だけが、土地取引を巡る政争という、まるで明治の開拓使スキャンダル(のミニ版)みたいな形で取り上げられるのは、納得が行きません。
・更に言えば、その土地取引というのは「もしかしたら地中の廃棄物というトリックを使って」値下げされたという悪質性があるのに、その点については「既に買い戻された」として、現時点では「文書の改ざん」という話に矮小化されているのにも違和感があります。
・そうではあるのですが、今回の事件に意義があるのであれば、「忖度」という不思議な概念が話題になったことです。もっとも、現在の事件の展開というのは、必ずしも「忖度」というものを徹底的に批判するのではない方向に行っているわけで、それはそれで大いに不満であるわけなのですが、少なくとも、この不思議な「忖度」なるものが、これだけ話題になったというのは無意味ではないと思います。
・忖度というのは、一体何なのでしょうか? それは「非言語コミュニケーション」の変型であると考えることができます。Aということを望んでいる上司がいて、その上司はAを希望するということは、一切、少なくとも公的には全く口にしていないにも関わらず、Aの部下は、上司の希望はAだという判断、あるいは謎解きを行っ
て、具体的な指示がないのにAが実行される、これが忖度です。
・ですから、忖度というのは部下の一方的な独断ではなく、上司と部下との間に発生する非言語コミュニケーションということになります。部下が一見独断で行ったことが忖度なのではなく、何らかの記号なり暗号なり、あるいは比喩や示唆などでAというメッセージを出した上司と部下の間におけるコミュニケーションが忖度だと考えることができます。
・明言がされていないで非言語のコミュニケーションが成立しているというと、空気に似ているようにも思われます。ですが、空気と忖度は違います。忖度の背景に空気があることはあり、多くの場合はそうなのですが、では空気があれば忖度があるのかというと、それは違うのです。
・空気というのは、いわば「自明の情報、既知であり既に共有化されている情報」は省略するという非言語コミュニケーションを指します。ずいぶん前に「「関係の空気」「場の空気」」という本で述べたのですが、日本語の特質として既知の情報は省略して良いし、場合によっては省略したほうが「情報の共有確認は強化される」ということがあるわけです。
・例えば、この「森友事件」において、その核心とも言える国有地払い下げの価格決定の過程では、恐らく近畿財務局の現場では、「産廃テクニック」を使って事実上の値下げをするかしないか、大いに困ったことが推測されます。その場合に、局内の会話として、一々「学校法人森友学園の案件」であるとか「豊中市の案件」というのではなく「例の件」とか「アレ」などと省略、もしくはボカし表現が使われていたと考えるのが普通でしょう。
・そのように既知情報として省略やボカしが使われる、つまり濃厚な空気があるということは、忖度が発生する一つの条件と言えるかもしれません。ところで、ここで一つ気になるのは、近畿財務局の局内では、頭を抱えていた「既知情報」であり、恐らくは空気を使っての会話の対象になっていたはずの「豊中市国有地の森友学園への払い下げ案件」について、これまた「既知情報」であったはずの総理夫人の名前が「文書の中で省略されることなく」何度も何度も実名で登場したという問題です。
・だからこそ後に「改ざん」が必要になったわけですが、総理夫人の名前については、既知情報として自明であっただけでなく、下手をすると政治家の贈収賄的な問題に発展しかねない「微妙な情報」であったわけで、それがオリジナルの文書では何度も記載されているというのは興味深いと言えます。 もしかしたら、余りにも異例な措置を講じるので、会計検査院などの検査を恐れて「正確な経緯を記録しておきたかった」のかもしれませんが、いずれにしても「オリジナルには名前が何度も書かれていて、それが改ざんを招いた」ということは特筆すべき点だと思います。
・それはともかく、この忖度ですが、空気と似た点があります。それは、やはり非言語コミュニケーションの一つであり、常識的には言語で行われるべき指示や期待感の表明が、しばしば省略されるか、あるいは「途切れる」「記録されない」「消される」といった形で「一部が非言語化される」ということだと思います。
・オリジナルの言葉の意味としては、非社会的な用法、例えば「最近お母さんを亡くした友人の気持ちを忖度して母の日の話題は避ける」というようなものもありますが、こちらも同じメカニズムがあります。ここでは友人の母親の訃報に関して積極的に弔意を述べるのではなく、「母の日の話題を消す」という対応で、友人の心情に配慮するという発言、いや発言の忌避が起きているわけです。
・空気の場合は、既知情報が思い切り顕在化しており、だからこそ非言語化することで、余計に情報が共有されているという心理が増幅されるわけですが、忖度の場合は、そのような心理が共有されるのではなく、むしろ心理的な事故を回避するために、一方の側が一方的にある表現を忌避するということになります。この「母の日」の場合ですが、友人は母の死という心理的ショックから立ち直りつつある中で、その場では積極的な弔意を示す局面ではないし、まして「気持ちを逆なでするような母の日の話題」は忌避するのが無難もしくは誠実という判断があったと推測されます。
・勿論、このように「言語表現の忌避」だけが忖度ではありません。例えば、ものすごく「イチゴのショートケーキが好きな」知人があり、その人が急に来るというので、慌ててショートケーキを用意してもてなすというような場合、つまり積極的に相手の気持ちを推量して行動するという場合は、もしかしたら昔の用法としては忖度になるのかもしれませんが、現代の語感としては違うように思われます。
・つまりちょっと陰にこもる語感というのが、忖度にはあるのかもしれません。この点については、大阪府の松井一郎知事が「良い忖度と悪い忖度がある」という興味深いスピーチを行っており、その中で「民選の政治家は有権者の意図を忖度して行動すべき」であり、それは「良い忖度」だというようなことを言っていたようです。確かに政治家が有権者の意図、特に自分の支持者の意図を推し量って、それを尊重するのは良いことではあります。
・ですが、この場合は常に忖度していてはダメで、任期途中であっても定期的に有権者の声を直接聞くべきですし、世論調査やジャナーリズムの反応などを直接受け止めて行動するのが政治家だと思うのです。静かに隠れたところで、一方的に政治家個人が有権者の意図を「推測」するだけというのは不十分であり、忖度という言葉の用法としては積極的には勧められないように思います。
・つまり、丁寧に直接聞けば良いし、刻々と変化する世論にはきめ細かく対応しなくてはならない政治家にとっては、個人の思い込みでの「有権者への忖度」というのは、姿勢としては悪くなくても十分ではないということです。つまり「隠れて行う」「一方的な判断」で「対象との間には分断が」あるということだからです。
・さてこの「一方的」で「分断がある」という問題ですが、忖度というのはそういうものだとすると、例えば今回の「森友事件」などのケースでは、それこそ近畿財務局だけが悪い、彼らが一方的に隠れて行ったことであり、政治家や官邸とは明らかに分断があったということになります。 佐川前国税庁長官などは、国会証言において「忖度とは個々の内面の問題」という「名言(迷言?)」を吐いていましたが、仮にそうしたロジックを認めるとなると、責任は近畿財務局内だけの問題になってしまいます。
・そうなれば、同様の問題が将来も続くという可能性が残ります。つまり終身雇用制の官僚組織は組織防衛のために、その時々の政治家の意向を忖度し続けるという極めて不透明な制度が残って行くということです。そうなると、この種の「汚職に近いグレーな行為」というのは根絶できないし、官僚組織としては「上からの暗黙の押し付け」と「法律」の板挟みという状況に今後も晒されてしまいます。
・こうした状況を防止するには、2つのアプローチがあります。1つは東洋的な考え方で、こうした「汚職に近いグレーな行為」が発生しないように、権力者には「帝王学」を徹底的に学習させるとともに、その一環として部下からの「諫言(上司への耳の痛い忠告)」を行わせるというものです。
・もう1つは、欧米的な契約社会、組織統制の考え方で、決定権限のあるレベルでの決定は、上位者が覆すことはできないというルールを徹底するという考え方です。実は、日本の官僚組織にしても、企業内組織にしても、まともな組織であれば、この考え方はかなり厳格に運用されています。
・今回の事件を教訓に、こうした2つのアプローチで類似の事件の発生を抑えて行くことは必要と思われます。更に言えば、今回の「森友」のようなケースでは、どうしてもこの種の小学校を認可して、しかも教育機関だからと国有地の廉価な払い下げで支援したいというのであれば、「左派系だろうが、右派系だろうが、他民族系だろうが」私立学校の認可基準を緩めた上で、公明正大に土地を売るしかないと思います。
・また、官僚組織や企業内組織だけでなく、一般の個人の生活における「忖度」についても、時代が進むにつれて「不適当」になるケースが増えているのではないかと思います。価値観が多様化した中で、高齢者だから和食が好みだろうとか、女性向けだから花柄がいいだろう的な「忖度」を一方的に先回りしても「ハズレ」になる可能性が増えたからです。
・やや強引な結論になりますが、「忖度」という非言語コミュニケーションは明らかに弊害があり、個人のレベルでも相当に警戒して使わなくてはならないし、また組織内での「忖度」というのは、不正の温床となる危険を改めて意識しなくてはならないようです。「忖度」のあるところ、まずは警戒モードに入るというのが、現代における常識なのかもしれません。
・ところで、アメリカの場合はどうかというと、トランプ政権という異端の政治が行われている中で、例えば「不法移民の摘発」であるとか「ビザ発行の遅滞」といった具体的な問題が出てきているわけですが、こうした行政の末端における「トランプ流政策の実施」はどのように行われているのでしょう? 確かに、不法移民に対する人権無視の摘発は続いています。ビザの発給は前政権時とは比較にならないほど、遅滞しており、大学における留学生入学数は減少、多国籍企業における駐在員ビザも「半年待ち」という異常な状態が現出しています。こうした状況ですが、何となく、行政組織がホワイトハウスを忖度して行っているイメージを持ちがちですが、そうではありません。
・では、例えば国務省などは「政治任用」によって思い切り「トランプ的な人物」が管理職に任用されているかというと、この点に関しては「半分ノー」であり同時に「半分イエス」とも言えるのです。 通常は、民主党政権から共和党政権に政権が変わると、シンクタンクや大学などで待機していた「共和党系のエリート官僚候補」がドッとワシントンDCに押し寄せて猟官運動を行い、最終的に落ち着くべき人が落ち着くべきところにポジションを得ることになります。
・ところが、トランプ政権の場合は「政権があまりにも異常」なので、自分の経歴に「キズ」がつくのを恐れて政権入りを拒否する人材が続出しています。ですから、政治任用ができているかというと「半分ノー」ということになります。では、完全に管理職ポストは空席なのかというと、それでは組織が回らないので、その下のポジションの人物などを「代理」として立てることになります。
・そうすると、本来であれば「局長ポスト」などには一生かかっても就任できないような人材が「局長代理」として権限行使をすることになります。そうなると、判断は極めて政治的となり、ホワイトハウスの示す原理原則無視の荒っぽい政策が、そのまま実行レベルへ向けて指示されることになります。これがアメリカの行政組織の現状であり、そこには忖度はないと考えられます。ですが、これはこれで大変に困った状況ではあります。

第三に、 ジャーナリストの安積 明子氏が4月7日付け東洋経済オンラインに寄稿した「森友学園問題、「口裏合わせ依頼」の巨大衝撃 昨年2月20日前後、いったい何があったのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・新年度に入り、さすがに森友学園問題はそろそろ沈静化するようにみえた。3月27日に衆参両院で行われた佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が野党の追及の甘さで“不発”に終わったため、これ以上なすすべもなくくすぶり続けるように見えたからだ。
・ところが4月4日の『ニュース7』(NHK)が豊中市内の国有地の8億2000万円の“値引き”を巡って財務省(理財局)が森友学園に“口裏合わせ”を求めたと報じたことをきっかけに、この問題に再び火が付いた。
▽民放も相次いで後追い報道
・もっとも同番組のこの日のトップニュースは、新たに見つかった防衛省の日報問題。放映開始直前に小野寺五典防衛相が会見していたため、“口裏合わせ問題”の報道時間はわずか2分余りにとどまっている。 しかし財務省による“口裏合わせ問題”はその後の『ニュース9』でも報じられ、午後10時からの『クローズアップ現代+』は、森友学園問題を巡る「公文書改ざん問題」を取り上げた。翌日には民放のニュース番組も相次いで後追い報道をしている。
・『クローズアップ現代+』では、国有地売買についての決裁書が改ざんされた昨年2月下旬から4月にかけて、904回にもわたった佐川理財局長(当時)の答弁を分析。このうち改ざん前と食い違う答弁は44回で、そのうち事前の価格提示や政治家に関する記録についての答弁は41回とその大部分を占めることを明らかにした。決裁書の改ざんに政治家による関与が色濃くあったことが伺える。
・理財局から森友学園に“口裏合わせ”の申し出があったのは昨年2月20日の月曜日。このタイミングは、野党から「ゴミ撤去のための値引きの根拠が曖昧」と批判されていた頃だ。 約8億2000万円の費用でゴミを撤去するのならば、約1万2000立方メートルの残土を運び出し、新たな土で埋め立てなければならず、そのためには約4000台ものトラックによる運搬が必要になる。
・この時、野党議員は調査のために現地に赴いたが、数千台ものトラックが実際に行き交うことは不可能であること、その様子を目撃した人もいなかったことを確認している。にもかかわらず、理財局は森友学園に「何千台ものトラックでゴミを撤去したと言ってほしい」と口裏合わせを依頼し、学園側はこれを断った。
・当時を振り返ってみると、安倍晋三首相が「私と妻が関係していたら、総理も議員も辞める」と衆議院予算委員会で啖呵を切ったのは、その3日前の2月17日金曜日。間に土日を挟むため、実質的に理財局から口裏合わせの依頼があったのは、その直後ということになる。
▽不自然なまでに理財局長の責任を強調
・そしてこの“口裏合わせ”の依頼から2日後の昨年2月22日、財務省と国交省は官邸で菅義偉官房長官にこの件について説明していた。これには財務省からは理財局長だった佐川氏が参加したことが明らかにされているが、その他に財務省から誰が同行したのか。
・これについて今年4月3日の衆議院財政金融委員会で、立憲民主党の川内博史議員が質している。ところが、太田充理財局長はなかなか答えようとはしなかった。審議はいったん打ち切りになり、立憲民主党の海江田万里理事らが強く抗議した結果、小里泰弘委員長に指示されて答えざるをえなくなった太田氏は「総務課長と総括審議官が同席した」と述べたものの、その名前を頑として伏したままだった。 だが太田氏は理財局長に就任前の2015年7月から2年間、大臣官房総括審議官を務めており、まさにこの時期に該当している。つまり太田氏は同席していたわけである。
・「基本的に(佐川)理財局長が説明した。本来であれば局長が責任をもって説明すべきこと。仮に誰かを連れていって説明させたとしても、最終的責任者は理財局長だ」 この時、太田氏は何度も「理財局長の責任」を繰り返している。不自然なまでに理財局長の責任を強調したその理由はいったい何なのか。
・疑問はまだある。理財局からの口裏合わせを断った2月20日夜、森友学園の籠池泰典元理事長はTBSのラジオ番組に出演。約8億2000万円とされたゴミ撤去費用について以下のように話しているのだ。 「8億円云々というけれど、元々その金額がいくらだったのか知らない」 「(「8億いくか?」と聞かれて)いやだって、運動場の下のところは取り出さなくていいから、触っていないから。運動場で使うところは何も触らなくていいから、お金がかかることはない」
・この直後、籠池氏が当時の顧問弁護士を通じて理財局の職員から「身を隠してほしい」と言われたことも謎だ。籠池夫妻はメディアの前からしばらく姿を消したが、その間、安倍首相の籠池評が大きく変化したこともまた不思議である。
▽首相の態度激変と文書改ざんの時期が同じ
・「妻から森友学園の教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いております」 2017年2月17日の衆議院予算委員会では、このように安倍首相の籠池評は好意的だった。だがこれが2月下旬になると、一気に否定的へと変わっていく。 「この方は非常にこだわるというか、そう簡単に引き下がらない方でございまして」(2017年2月24日衆議院予算委員会) 「非常にしつこい中において、非常に何回も何回も熱心に言ってこられる中」(同)
・その激変ぶりは質問に立った野党議員をも戸惑わせたほどだったが、この頃から決裁書の改ざんが始まっているのである。 なお同問題を追及している共産党の辰巳孝太郎参議院議員は4月5日の野党共同ヒアリング終了後、「昨年の2月17日、20日、22日、24日を繋いでいけば、真実が見えてくる。籠池氏に『姿を消せ』と言ったのは、ラジオ番組でしゃべりすぎたために口止めが必要だと思ったのだろう」と、記者団に述べている。
・まだまだ闇は深いのだが、NHKのスクープを契機に全容解明へ向けて一歩前進したことは間違いない。
https://toyokeizai.net/articles/-/215582

第一の記事で、 『佐川氏喚問で「幕引き」狙い 真実を知る人物は「隔離」』、というのは酷いものだ。イタリアに隔離された谷査恵子氏も、呼び出して証人喚問の対象にすべきだ。 籠池夫妻を不当に勾留しているのも、本来、政治的中立性が求められ検察の横暴だ。 『政権の「隠ぺい体質」が浮き彫りになったのは森友疑惑だけではない。 安倍政権になってから、証拠になる政府文書を隠す、都合のいいデータを作る、時には政府文書そのものを改ざんする、といった事態が横行している』、というのは改めて列挙された事例を見ると、かつてであれば、内閣が何度も退陣に追い込まれるような重大な問題が続出している。マスコミの安部政権への遠慮も一因になっているのだろう。  『安倍政権の時代錯誤的なクローニーキャピタリズム』、の事例も酷いものだ。 『「一強政治の弊害」は日本経済までも蝕む事態になっている』、というのは由々しいことだ。
第二の記事で、 『いわゆる「三大忖度事件」の中で、もっと悪質な強姦不起訴事件や、許認可案件などではなく、この問題だけが、土地取引を巡る政争という、まるで明治の開拓使スキャンダル(のミニ版)みたいな形で取り上げられるのは、納得が行きません』、というのは同感である。 空気と忖度の違いについての考察はさすがである。 『総理夫人の名前については、既知情報として自明であっただけでなく、下手をすると政治家の贈収賄的な問題に発展しかねない「微妙な情報」であったわけで、それがオリジナルの文書では何度も記載されているというのは興味深いと言えます』、これは冷泉氏の指摘の他にも、財務省側が消費増税に消極的な安部政権に仕掛けた爆弾説まであるようだ。 『トランプ政権の場合は「政権があまりにも異常」なので、自分の経歴に「キズ」がつくのを恐れて政権入りを拒否する人材が続出しています。ですから、政治任用ができているかというと「半分ノー」ということになります。では、完全に管理職ポストは空席なのかというと、それでは組織が回らないので、その下のポジションの人物などを「代理」として立てることになります』、というのが、今後の日米通商問題にどう影響するかも見物だ。
第三の記事で、 『財務省(理財局)が森友学園に“口裏合わせ”を求めた』、というのは事前の価格交渉を否定してきた理財局の説明が、根底からひっくり返る重大な問題だ。  『首相の態度激変と文書改ざんの時期が同じ』、というのは記憶が薄れかけている私には、貴重な指摘だ。
加計学園問題も再燃、防衛省の日報問題の拡大、など安部政権の命運もいよいよ尽きかけているのかも知れない。
タグ:森友学園問題 (その18)(森友問題が象徴する「縁故資本主義」が日本を滅びに向かわせる、忖度という非言語コミュニケーション、森友学園問題 「口裏合わせ依頼」の巨大衝撃 昨年2月20日前後 いったい何があったのか) 金子 勝 ダイヤモンド・オンライン 「森友問題が象徴する「縁故資本主義」が日本を滅びに向かわせる」 佐川氏喚問で「幕引き」狙い 真実を知る人物は「隔離」 隠ぺい、恣意的データ作り 文書改ざんの横行 加計学園 南スーダンPKOの日報隠し問題 財務省だけ、あるいは佐川宣寿氏ひとりが改ざんをしたとは考えにくい。これは安倍政権の体質の問題だと考えざるを得ない 原発再稼働」でも首相側近が官邸を仕切る IOC総会 福島原発の状況を「アンダーコントロール」と述べ、公然と嘘をついた 時代錯誤的なクローニーキャピタリズム アベ友 日銀の金融緩和政策は出口のないネズミ講のようになっている 、ペジー・コンピューティング社による補助金の不正受給、詐欺事件 同社への助成金支給を媒介したのは、「準レイプ疑惑」の元TBS記者 日立のイギリスへの原発輸出プロジェクトを推進するために、政府系金融機関を使って出資させ、メガバンクの融資についても政府保証をする方針 「一強政治の弊害」は日本経済までも蝕む事態になっている 冷泉彰彦 JMM 「「忖度という非言語コミュニケーション」from911/USAレポート」 「三大忖度事件」の中で、もっと悪質な強姦不起訴事件や、許認可案件などではなく、この問題だけが、土地取引を巡る政争という、まるで明治の開拓使スキャンダル(のミニ版)みたいな形で取り上げられるのは、納得が行きません 忖度 非言語コミュニケーション 空気 総理夫人の名前については、既知情報として自明であっただけでなく、下手をすると政治家の贈収賄的な問題に発展しかねない「微妙な情報」であったわけで、それがオリジナルの文書では何度も記載されているというのは興味深いと言えます 安積 明子 東洋経済オンライン 「森友学園問題、「口裏合わせ依頼」の巨大衝撃 昨年2月20日前後、いったい何があったのか」 ニュース7』(NHK)が豊中市内の国有地の8億2000万円の“値引き”を巡って財務省(理財局)が森友学園に“口裏合わせ”を求めたと報じたことをきっかけに、この問題に再び火が付いた 首相の態度激変と文書改ざんの時期が同じ
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