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働き方改革(その14)(日本人が働き方改革で心がけるべき「助け合い成果主義」とは?、無責任トップがはびこる末の「息子の自殺」 電通や野村不動産だけが「異常な職場」じゃない、働き方改革「議論やり直すべき」 専門家はプロセス疑問視) [経済政策]

働き方改革については、3月2日に取上げたが、今日は、(その14)(日本人が働き方改革で心がけるべき「助け合い成果主義」とは?、無責任トップがはびこる末の「息子の自殺」 電通や野村不動産だけが「異常な職場」じゃない、働き方改革「議論やり直すべき」 専門家はプロセス疑問視)である。

先ずは、マイクロソフト シンガポール シニアマネジャーの岡田兵吾氏が3月9日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本人が働き方改革で心がけるべき「助け合い成果主義」とは?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽働き方改革議論で広まり始めた実力主義・成果主義への不安
・3月に入って早々、安倍首相が働き方改革関連法案の柱の1つだった「裁量労働制拡大」を法案から切り離し、今国会での成立を断念したニュースが話題を呼んだ。そのこともあり、いま巷では「働き方改革」の在り方が大きな話題になっている。
・「働き方改革」と言えば、日本ではよいイメージで捉えられることが多かったが、それが実現することによって生じる課題も多いということを、今回の裁量労働制を巡る議論は改めて世の中に問いかけた。 そんな「働き方改革」によって生じる課題の1つとして語られることが多くなったのが、「グローバル社会でスタンダードになっている個人主義・成果主義が日本企業に浸透することにより、職場に混乱が生じるのではないか」というものだ。働く時間・場所・方法などがより個人の裁量に委ねられるようになると、「自分の仕事が終わったら早々に帰る」「他人の仕事を手伝わない」といった、個人の成果や利益しか考えないビジネスパーソンが増えるのではないか、というのだ。そうした未来を憂慮する記事を目にすることもある。
・しかし、実際のグローバル社会の現場の様子は、そんな日本人の思い込みとはまったく異なっている。グローバル企業で働くビジネスパーソンがもし前述のような仕事のやり方をしようものなら、おそらくその人は一般スタッフ以上に昇進できないだろうし、最悪の場合クビになってしまうだろう。
・こうして偉そうに語る筆者も、実は以前はそんなことにまったく気がつかず、徹底した個人主義・成果主義こそがグローバルな働き方だと信じて、我が道を進んでいた。 シンガポールに転職したばかりの頃も、「自分がいかに素晴らしい経験をしてきて、特別なスキルを持っているか」を周囲に見せつけることばかりを気にかけながら働いていた。自分さえ評価してもらえたらいいと思っていたのだ。
・しかし、とりわけ筆者が現在勤めているマクロソフト・シンガポールでは、これはまったく意味のない行為でしかなかった。なぜなら転職採用であっても、人事部、上司になる人、同僚になる人、仕事の関係者、希望部署の大ボスと、職場のあらゆる立場の人たちと最低5回の面接を繰り返すので、採用が決まった時点で、すでに新しい職場の関係者に自分の能力を認められているからだ。
・それなのに入社してからも、ことあるごとに「自己アピール」を繰り返していると、新しい職場の人たちからは「付き合いにくい」「自分の領域を脅かす敵」などと思われてしまう。こうした人は、得てして自分の弱みを周囲に見せまいと見栄を張りたがるものだが、万一仕事で失敗してしまったとき、絶対に助けてもらえないだろう。一度も失敗せずに仕事を続けられる人間はいない。いくら個人主義・成果主義の世界といえども、いざというときに助けてもらえる環境づくりはリスク管理の側面からも必須になってくる。
・また、高い成果を目指す仕事となれば、同じ部署の同僚や他部署の関係者とワンチームになって働くことも多い。会社やチームにとっても利を生む行動こそが、大きな貢献を生み、結果として個人の高い評価につながるのだ。
・筆者がワンチームで周囲の人と助け合って働くようになったのは、シンガポールでは転職が多く、仕事自体もどんどん他国へ移管されることが日常茶飯事だったからだ。同じメンバーで同じ仕事を続けたいと思っても、自分ではコントロールできない外的要因で、チームの仕事がなくなることも多い。こうした流動的な環境下で生き残っていくには、チームで働ける間にベストな仕事をこなし、周囲の人と信頼や人脈を築き、次の仕事やポジションを確保できるよう助け合う必要があるのだ。
▽グローバル企業こそ お互いの文化や考えを尊重し合う
・シンガポールはアジアのハブと言われるように、マイクロソフト・シンガポールでもたくさんの異なる国籍のメンバーが働いている。シンガポールオフィスには、60ヵ国以上の国籍の人々が働いているし、筆者もいままでに15ヵ国の国籍のメンバーをマネージしてきている。
・このような多国籍メンバーと一緒に働くと、文化・価値観が違うので、どうしても受け入れ難い他者との確執が生じる。しかし確執は外国人だけでなく、日本人同士であっても生まれるものだ。他者と助け合いワンチームとなるなら、確執なく上手くやっていきたいと思うのは、グローバル社会でも同じだ。
・グローバル社会には、ちゃんと他者との確執を緩和してくれる言葉が存在する。「Assume Best」だ。「違っているから批判する」のではなく「相手には相手なりの考えがあってベストな対応を尽くしてくれている」といった意味合いの言葉だ。この言葉を聞いてから、筆者は人を批判するより先に「この人なりにベストな考えを言ってくれたのだろう」と感謝できるようになった。
・徹底した個人主義・実力主義のグローバル社会で生きる人々は、特別な価値観や文化を持っていても、個々の異なる文化や考えを尊重し合っているのだ。日本人同士であっても、他者との違いを尊重する働き方、人との接し方が求められることは同じなのだ。
▽筆者が「ジャパニーズ・エルビス」と外国人から呼ばれている理由
・くだらない例えだが、筆者は外国人から「ジャパニーズ・エルビス」と呼ばれることが多い。海外では「リーゼントヘア」という言葉が一般的でないので、筆者がエルビス・プレスリーに憧れて同じ髪型にしていると誤解されるのだ。いくら訂正しても、外国人は大ウケ、大喜びしてハイテンションで接してくるので、こちらの言い分を聞き入れてもらえない。
・筆者のリーゼントは、ゴッドファーザーや日本の任侠映画に出てくる男たちに感銘を受け、「男の生き様」を貫く覚悟で始めた髪型なので、まったくもって不本意に思う。しかし外国人の価値観では「リーゼント=エルビス」だから仕方がないため、あえて「ジャパニーズ・エルビス」と呼ばれることに甘んじている。
・これは異なる価値観を持つ両者の間で、どちらか一方がもう片方の価値観に合わせた例だが、仕事の現場なら、それぞれの違いを認め、考慮した上で、相手に合わせるのではなく共存・共栄することが重要だ。そして、仕事の目的を共有し合ったら、1人だけがヒーローとなるのではなく、ワンチームでヒーローになって輝くことが求められる。
▽1人だけ活躍するのではなく皆で輝くのが「グローバルの仕事」
・日本人だけとは言わないが、日本人は同一民族であっても、自分と他人を比較することが多いと思われる。自分だけが目立って成功することを考えるのではなく、各々がユニークに輝ける方法に、もっとこだわってみてはどうだろうか。そうすることで、あなた自身ばかりかあなたの周囲も輝き出し、互いに成長を助け合えるはずだ。
・シンガポールの小学校では「Everyone is special in their own way」(誰もが、それぞれ異なる魅力がある特別な存在である)と教えている。グローバル社会では、この言葉を基礎としているからこそ、異なるバックグランドの人たちが集まり、ダイバーシティの環境で仕事をし、ビジネスシーンを変えるようなイノベーションが生み出され続けているのだ。
・日本人は、「働き方改革」で個人主義、成果主義が浸透して職場が混乱するといったネガティブな意見に振り回されることなく、ビジネスは変化することで好転することも多いと前向きに捉えて欲しい。そして誰もが特別であることを理解する一方、これまで以上にワンチームで輝けるよう、周囲を巻き込み、ビジネスの可能性を最大化させることを願っている。 STAY GOLD!(注)  
(注)「いつまでも輝く」「輝き続ける」といった意味合いで用いられる言葉

次に、健康社会学者の河合 薫氏が3月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「無責任トップがはびこる末の「息子の自殺」 電通や野村不動産だけが「異常な職場」じゃない」を紹介しよう(+は段落)。
・いったい何人の尊い命が奪われれば、この国のお偉いさんは目を覚ますのか? いったい何組の家族が涙すれば、企業経営者は「自分の責任」を自覚するのか? いったい何故、メディアは不倫報道はしつこくやり続けるのに、過労自殺はあっさりとした扱いになるのか?
・感情的な書き出しになってしまった。 森友学園への国有地売却にからむ疑惑で財務省近畿財務局の男性職員が自殺していた事件も気になるところだが、今回注目したのは、野村不動産の50代の社員が過労自殺に追い込まれていた事件である。
・裁量労働制をめぐる国会での議論でも野村不動産の事件は取り上げられ、過労自殺の事実を厚労省が(事前に)「知っていたのか?いないのか?」という点ばかりにフォーカスが当たり、本質的なことがまるで議論されていない。とてもとても、残念に思っている。
・本来であれば「事前に知って」いようとも、「報告を受けてない」だろうと、これまで進めようとしていた事案を再考すべきだ。ところが、
 +1日の中で一定の休息時間を確保(インターバル制度)
 +労働時間の上限設定
 +2週間の休日
 +臨時の健康診断の実施
のいずれかひとつを実施、という「こんなのあったり前じゃん!」な健康確保措置の強化策でさえ、「裁量労働制を拡大しないのなら止めちゃお?!」とするというのだ。
・残念というか、悲しいというか。 今回の“事件”は、裁量労働制のそもそもの問題を解決する絶好のチャンスなのに…。 過労死や過労自殺という言葉は、死語にしなきゃいけないのに。 この国の“お偉いさんたち”が、過労死や過労自殺に正面から向き合う気がないことを痛感させられ、憤りを感じている。
・しかも、これは氷山の一角でしかない。 裁量労働制を違法に適用。その違法の末の過労自殺──。 本来なら企業が払うべき代償が、働く人の「命」にすり替わっている。 経営者の方にお聞きしたいです。 「あなたのお子さんが、勤め先の企業で違法労働を強いられ、命を絶ったときでも、『生産性を上げろ』と言い続けることができますか?」と。
・ということで、今回は「裁量労働制のホントの問題」について書きます。 では、まずは“事件”の概要から。  裁量労働制で働いていた野村不動産の男性社員(50代)が2016年9月に過労自殺していた。これを東京労働局が労災認定していたことが分かった。 男性は2017年末、野村不動産が「裁量労働制を違法に適用していたとして是正勧告を受けた」うちの一人で、“違法発覚”は、男性の家族が2017年春に労災を申請したのがきっけかだった。
・野村不動産は全社員約1900人のうち、約600人に裁量労働制を適用。課長代理級の「リーダー職」と課長級の「マネジメント職」に就く30~40代が中心で、その多くは営業戦略の企画・立案と現場での営業担当だとされている。
・過労自殺した野村不動産の男性社員は、転勤者の留守宅を一定期間賃貸するリロケーションの業務を担当し、東京本社勤務だった。 2015年秋ごろから長時間労働が続き、頻繁に休日出勤もするなど、ひと月の残業時間は180時間超。2016年春には、体調を崩して休職。その後、復職し、同年9月に自殺。入居者の募集や契約・解約、個人客や仲介業者への対応などにあたり、契約トラブルへの対応で顧客や仲介業者からの呼び出しに追われていたそうだ。
・現行では「営業職」は裁量労働制の対象から外れているので「違法」だが、今国会で先送りになった拡大が認められれば「合法」となる。 「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客のために開発し、当該顧客に提案する業務(主として商品の販売又は役務の提供を行う事業場において当該業務を行う場合を除く)」(by 提出される“予定だった”法律案、該当記述は10ページ目)
・ちなみに、2016年には大手医療機器メーカーのメドトロニック(2度にわたる是正勧告)、2017年には損保ジャパン日本興亜で裁量労働制の違法適用が発覚している。 労働問題に詳しい弁護士さんや関係者に話を聞いたところ、 「国会に提出された裁量労働制拡大を先取り、違法適用している企業は多い。特に損害保険業界は実質的に導入している」とのこと。
・つまり、この国の経営者の中には、違法に残業労働をさせているだけではなく、端っから「労働基準法なんて関係ないね?」という人たちが一定数、存在しているのである。 裁量労働制拡大の議論が紛糾したときに 「いやいや、今のご時世『ブラック企業』なんてレッテル貼られたら人材確保できないから、法律を悪用する企業なんてないよ」 と豪語する人たちがいたけど、その方たちにこの事件の見解を伺ってみたい。
・改めて言うまでもなく、裁量労働制は「時間」ではなく「成果」で賃金を決める制度だ。そして、裁量制は本来「会社に行かなくてもいい自由」が認められている。 実は、ここにこそ「裁量労働制」の本質的な問題がある。 「結果を出さなきゃ」「良い仕事をしなきゃ」という思いが強くなればなるほど、人は自ら長時間労働する矛盾した心を持つ。仕事の要求とプレッシャーが高まるほど、“働き過ぎ”に過剰適応してしまうのだ。そして、必死になればなるほど視野狭窄になり、逃げ場を失っていく。
・仮にそのような状態に陥っても、「職場」にいれば救われるチャンスがある。 上司や同僚たちが、 「最近ちょっと根をつめ過ぎだぞ。休め」 とブレーキをかけてくれることもあれば、 「どうした? 何か問題があるのか?」 と手を差し伸べてくれることだってあるかもしれない。 優秀な上司であれば、 「ボク(ワタシ)があとの責任は持つから、これ以上、お客さんの無茶な要求に応える必要はない。断りなさい」とストップをかけてくれることだって期待できる。
・でも、裁量労働制という「好きな時に、好きな場所で働ける」環境が、その可能性のすべてを奪い去る。  そこに残るのは「上司からのプレッシャー」のみ。 「あれはどうなった?」 「まだ終わってないのか?」 「早く決めろ!」 「結果を出せ!」 etc etc……。
・疲れ果て、ギリギリの状態で踏ん張っている人には、上司の言葉や態度のすべてがプレッシャーとなる。いわゆる“パワハラ”。そう。パワハラによって、ますます窮地に追い込まれていくのである。 友人の突然の自殺をきっかけに実例を追い、“過労自殺”という言葉を作った川人博弁護士が、 「どの事例も、自殺の半年から1年前は長時間残業、休日出勤が繰り返されたことに加え、納期の切迫やトラブルの発生などにより精神的に追いつめられていた」(『過労自殺』より) と指摘する通り、過労自殺をなくすには、長時間労働の撲滅に加え、パワハラ規制が絶対的に必要なのだ。
・ところが日本には「パワハラ防止措置を義務付ける法律」が、存在しない。 厚生労働省では、2011年度からパワハラ対策の議論をスタートし、翌年にはワーキンググループを立ち上げ、パワハラ防止を法律に盛り込むことを訴え続けている。 ところが、企業側が反発しているのだ(以下は朝日新聞より引用)。
 +「上司が適正な指導すらためらってしまう懸念もある。まずはガイドラインで企業の自主的な取り組みを促すべき」(経団連 布山裕子労働法制本部上席主幹)
 +「ガイドラインが現実的な対応だ」(日本商工会議所 杉崎友則産業政策第二部副部長)
 +「大企業は法制化で画一的な対策を押しつけられていることに嫌悪感が強い。中小企業の経営層には『強めの指導が許されなければ、営業成績が落ちる』など心配する声がある」(労働ジャーナリスト 金子雅臣氏)
・なるほど。ガイドラインね。 指導、現実的、業績が落ちる、とのたまう方たちは、ワーキンググループが、2012年にパワハラを定義し、類型化した真意が分かっているのだろうか(こちら)。 「あなたたちの問題なんですよ」と経営者層に自覚してほしかったのですよ。 パワハラに悩み、傷つき、生きる力をも失った人たちに関わってきた専門家たちが、さまざまな角度から議論を重ねた結果、企業とそのトップが、「パワハラをなくそう!」と積極的に取り組むことが欠かせないと考えたからにほかならない。
・つまり、パワハラは個人だけの問題ではない。会社、すなわち環境の問題だ、と。 だからこそ、欧米には「パワハラを規制する法律」が存在し、企業に予防・禁止措置を課した厳しい規制を設けているのだ。 労働基準法を逸脱し過労自殺者を出した電通は、労働基準法違反罪に問われ50万円を支払った。過労自殺の背景にパワハラがあろうとも、それを罰する法律がない以上、たった50万円。それしかペナルティーは科せられないのである。
・「経営の足かせになる」「指導の支障になる」と反対しているトップたちに、ワーキンググループの思いは届いているのだろうか? ストレスの雨にびしょ濡れになっている社員には、『強めの指導』が刃と化し、生きる力まで奪っていくことを本当に分かっているのか。
・長時間労働は睡眠不足を招き、思考力の低下、注意力散漫をもたらす。自分でもどうにかしなきゃと思っているときに、上司からのプレッシャー(=パワハラ)がかかると、前しか見えなくなる。「成果さえ出せば、結果さえ出せばいい」と自己暗示をかければかけるほど、暗闇に入り込む──。
・繰り返すが、過労自殺のほとんどに「パワハラ」などのストレス要因が深く関係しているのは、まぎれもない事実なのだ。 そもそも裁量労働制は、「時間じゃなく成果」というけれど、「成果」で評価されるためには、「時間」で評価されていたとき以上に時間に拘束される。
・フリーランスの私は完全なる裁量労働制で働いているので、そのことを嫌と言うほど実感している。 朝4時にベッドから起きてそのままパソコンに向かい、深夜遅くまで仕事漬けになることもあれば、わずか5分のテレビ出演のために、1週間近くも時間をかけることもある。1000字ほどの原稿を書くために、何日間も時間を費やすことだってある。
・もちろん就業時間が決まっている会社員ではないので、真っ昼間に買い物に出かけたり、平日にゴルフに行ったりすることだって可能だ。だが、そういう自由な時間を持つことは、想像以上に難しい。そんな「自由」を満喫できているフリーランスなんて、本当に、マジで、稀な存在なのだ。
・突っ込みが入る前に自分で言っておきますけど、これは私の能力が不足していることが問題なのかもしれない。私は個人事業主なので、すべては自己責任。求められる成果を出せなければ、ジ・エンドとなっても仕方がない。仕事の「成果」で評価される働き方を選んだ以上、その仕事に投入した「時間」の多寡は他人には関係ない。
・だが、過労自殺した人たちが所属するのは、会社だ。会社員なのだよ。 会社=COMPANY(カンパニー)は、「ともに(COM)パン(Pains)を食べる仲間(Y)」こと。つまり、会社とは、「(食事など)何か一緒に行動する集団」であり、一緒にパンを食べる人に救われ、元気をもらい、「もう無理!」と思った時でも仲間がいれば、最後まで踏ん張れることもあるはずなのだ。
・その一緒にパンを食べる人とのつながりを育むのが、“時間”であり“空間”だ。 日本の会社には、ジョブディスクリプション(職務記述書)がない。 日本の会社は、たとえ社員がパワハラで死にいたろうとも罰する法律もない。 日本の会社の経営者の一部は、現在の労働基準法すら守っていない。
・今回は先送りになったとはいえ、こんな状況で裁量労働制も何もあったもんじゃないし、高度プロフェッショナル制度も時期尚早だ。 1週間当たりの労働時間を35時間に規制しながらも、職場のモラハラ(パワハラ)で過労自殺が問題になっているフランスでは、モラハラの被害者(労働者)は2つの形で会社に賠償要求することができる。 1つ目は、加害行為そのものに対する賠償。2つ目は、会社の予防義務違反に対する賠償である。つまり、「パワハラは職場の問題」という前提が存在しているのだ。
・一方、損害は、労働者側が証明しなくてはならないという点では、日本の労災裁判と同様である。だが、有罪の場合は、2年間の実刑判決か、最大3万ユーロ(約400万円)の罰金が科せられる。日本とは大きな違いだ。 現場あってこその企業であり、人あってこその経営なのに……
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/031200150/

第三に、3月26日付け日刊ゲンダイが掲載した労働研究者で法大教授の上西充子氏へのインタビュー「働き方改革「議論やり直すべき」 専門家はプロセス疑問視」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは上西教授の回答、+は回答内の段落)。
・一強に驕り、デタラメの限りを尽くしてきた安倍首相も、ついに虫の息だ。暗転の始まりは、働き方改革関連法案をめぐる国会審議だった。裁量労働制拡大について、データのインチキが発覚。法案から裁量労働制部分の全面削除に追い込まれたが、もともと8本の改正案を一本化したこの法案は問題だらけだ。
・「スーパー裁量労働制」とも呼ばれる高度プロフェッショナル制度(高プロ)は輪をかけて悪質な代物だし、残業時間の上限規制や同一労働同一賃金の実現にも穴がある。当初からこの法案の危険性を問題視していた労働研究者で法大教授の上西充子氏に聞いた。
▽「高プロ」の対象は全ホワイトカラー、週5日24時間働かせ放題
Q:問題となった「裁量労働者の労働時間は一般労働者よりも短い」という安倍首相の答弁は、厚労省の「平成25年度労働時間等総合実態調査」を根拠にしていた。その比較データの異常さを早くから指摘されていました。
A:見る人が見れば、明らかにあのデータはおかしかった。調査結果そのものではありませんし、公表されていない数字を引っ張り出して都合よく足し算し、本来比較すべきではないものを比べていたのです。裁量労働制の労働時間を短く見せかけるために、おかしな計算やおかしな比較をするなんて、やってはいけないこと。野党の追及にシラを切り通そうとしたのもア然でした。
Q:安倍首相は「(答弁案は)厚生労働省から上がってくる。それを参考にして答弁した」「担当相は厚生労働相だ。すべて私が詳細を把握しているわけではない」と釈明しました。
A:「働き方改革は一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と言って、今国会を「働き方改革国会」とまで名付けたのに無責任過ぎます。加藤厚労相は2016年8月から働き方改革担当相を務めていて、いまも兼務です。2人とも16年秋から17年春にかけて開かれた諮問会議「働き方改革実現会議」の主宰者なのに、どちらの答弁も不誠実ですよ。
+働き方改革はボロボロの法案です。だからこそ、ズル賢い一括法案という手法を使って国会に上げ、うわべを取り繕って聞き心地のいい言葉を繰り返して通そうとしたのでしょう。政府がデータ問題にこだわったことで狡猾さや悪質さが浮き彫りになりました。
Q:野党は、裁量労働制同様に長時間労働を助長するとして、高プロの削除も求めていますが、応じる気配はありません。
A:安倍首相は長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現を声高に訴えますが、本当にやりたいのは財界の要望である裁量労働制拡大と高プロ創設なんです。05年に経団連が提言した「ホワイトカラーエグゼンプション」が前身の高プロは、労働基準法の労働時間に関する規制をすべて外すもので、新たに残業の上限規制が設けられたとしても適用されません。
+「4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日を与える」という健康確保措置が企業に義務付けられますが、1週間のうち休日を2日与えれば、残りの5日は24時間働かせ続けられるトンデモない制度です。
Q:適用されるのは年収1075万円以上の金融ディーラーなどの専門職で、対象は数%程度といわれています。
A:対象業務は法案成立後に省令で定められるものですし、年収要件は実績に基づきません。すでに1075万円以上を稼いでいるサラリーマンだけが対象になるわけではないのです。
Q:もっと年収の低い人も対象になる可能性があるということですか?
A:そうです。厚労省が昨年9月に発表した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」では対象者をこう定義しています。 〈使用者との間の書面等の方法による合意に基づき職務が明確に定められていること〉 〈労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること〉
+ポイントは〈見込まれる〉と〈一年間当たりの賃金の額に換算した額〉というくだりです。年収ベースで1075万円以上の月収が見込まれれば、高プロの対象にすることができます。
▽1075万円以上の年収要件は「見込み」、1カ月契約もOK
Q:1075万円を12カ月で割ると月収約90万円です。雇用形態についてはどうですか?
A:有期契約にも適用できます。法案要綱には〈一年間当たりの賃金の額に換算した額〉としか書いていないので、月額90万円以上を支払えば1カ月の短期契約でもOK。1カ月契約のお試し雇用で激務をさせ、それに耐えられるか見極めてから契約期間を延長したり、正規採用に切り替える、なんてことも可能になります。
Q:そこまで幅広い解釈ができるとは思いませんでした。企業側にとって高プロは使い勝手がいい。
A:今だったら、そんな企業に出くわしたらみんな逃げ出すでしょう。安倍首相は高プロ対象者は「会社に対する交渉力が相当違う」と言っていますが、あらゆる企業が高プロを始めてしまったら逃げ場がなくなる。
Q:繁忙期の残業を過労死ラインの100時間未満まで認めるなど、残業時間の上限規制も抜け穴があります。
A:100時間は長すぎます。緩すぎる例外を設けたら、それが許される基準になりかねない。過労死問題に詳しい川人博弁護士も大反対していますよね。労災認定基準の80時間を超える時間外労働を認めたら、労災認定のハードルが上がり、損害賠償訴訟も難しくなる可能性がある。国がお墨付きを与えた格好になってしまいますから。
Q:同一労働同一賃金はどうですか。
A:法案要綱に「同一労働同一賃金」という言葉は入っていませんし、どれほど実現されるかは不透明です。正規雇用と非正規雇用では責任の度合いや配置転換の範囲が異なる点なども考慮されるので、実質的な賃金格差はあまり埋まらないのではないでしょうか。
Q:掛け声だけで何も変わらない?
A:変わる可能性があるのは手当の部分です。正規雇用者に交通費や食事手当を支給している場合は、非正規にも同額を支払いなさい、という流れになるでしょう。それがかえって手当の縮小を招く懸念もある。パートやアルバイトにも払う必要が生じるのなら、手当そのものをやめて両方ゼロで均等にしよう、食事手当分を失う正規雇用者には賃上げでフォローしましょう、と。そうなったら、非正規の処遇改善にはつながりません。
▽導入すべきは労働時間の客観管理とインターバル規制
Q:安倍政権のやることはアベコベばかりですね。本来目指すべき働き方改革はどんなものでしょうか。
A:労働時間の客観的管理とインターバル規制の導入は必須です。16年にまとめられた野党4党案にはこの2項目が入っていたのですが、政府の働き方改革法案ではまったく触れていません。労働時間の客観的管理がなされなければ、いくら上限を設けてもゴマカシはきく。裁量労働制や高プロのような例外を設けず、あらゆる人の労働時間把握をキチンと行い、適正な賃金支払いはもちろん、健康確保にも生かさなければなりません。
+EUでは「24時間につき最低連続11時間の休息時間」を義務化する「勤務間インターバル規制」を定めています。心身健康で仕事に打ち込み、労働生産性の高い高付加価値のある働き方をするには、毎日の休息確保が必要です。月ごとに残業時間の上限規制を設けるだけでは不十分なのです。
Q:今の法案ではまったくダメですね。
A:そもそも、働き方改革法案の政策プロセスの正当性にも疑問があります。公労使三者構成で労働行政を議論する労働政策審議会に諮られていますが、労働者代表委員は裁量労働制拡大も高プロも「認められない」としてきた。それがドタバタの中で「おおむね妥当」という答申に集約された経緯がある。労政審に差し戻し、一から議論をやり直すのが筋です
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/225610/1

第一の記事で、マイクロソフト シンガポール といえども、チームプレーが求められるようだ。 『グローバル社会には、ちゃんと他者との確執を緩和してくれる言葉が存在する。「Assume Best」だ。「違っているから批判する」のではなく「相手には相手なりの考えがあってベストな対応を尽くしてくれている」といった意味合いの言葉だ。この言葉を聞いてから、筆者は人を批判するより先に「この人なりにベストな考えを言ってくれたのだろう」と感謝できるようになった』、 『シンガポールの小学校では「Everyone is special in their own way」(誰もが、それぞれ異なる魅力がある特別な存在である)と教えている。グローバル社会では、この言葉を基礎としているからこそ、異なるバックグランドの人たちが集まり、ダイバーシティの環境で仕事をし、ビジネスシーンを変えるようなイノベーションが生み出され続けているのだ』、なるほど。しかし、日本企業とのギャップは大きく、グローバル化にはまだまだ課題がありそうだ。
第二の記事で、 『過労死や過労自殺という言葉は、死語にしなきゃいけないのに。 この国の“お偉いさんたち”が、過労死や過労自殺に正面から向き合う気がないことを痛感させられ、憤りを感じている』、というのには同感だ。 『「国会に提出された裁量労働制拡大を先取り、違法適用している企業は多い。特に損害保険業界は実質的に導入している」』、野村不動産だけでなく、かなり広がりがあるというのは、驚かされた。 『日本の会社は、たとえ社員がパワハラで死にいたろうとも罰する法律もない。 日本の会社の経営者の一部は、現在の労働基準法すら守っていない。 今回は先送りになったとはいえ、こんな状況で裁量労働制も何もあったもんじゃないし、高度プロフェッショナル制度も時期尚早だ』、というのも正論だ。
第三の記事で、 『「働き方改革は一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と言って、今国会を「働き方改革国会」とまで名付けたのに無責任過ぎます。加藤厚労相は2016年8月から働き方改革担当相を務めていて、いまも兼務です。2人とも16年秋から17年春にかけて開かれた諮問会議「働き方改革実現会議」の主宰者なのに、どちらの答弁も不誠実ですよ。 働き方改革はボロボロの法案です。だからこそ、ズル賢い一括法案という手法を使って国会に上げ、うわべを取り繕って聞き心地のいい言葉を繰り返して通そうとしたのでしょう。政府がデータ問題にこだわったことで狡猾さや悪質さが浮き彫りになりました』、 『労働時間の客観的管理とインターバル規制の導入は必須です。16年にまとめられた野党4党案にはこの2項目が入っていたのですが、政府の働き方改革法案ではまったく触れていません』、などの指摘は、政府の不誠実さを突いた正論だ。
タグ:「高プロ」の対象は全ホワイトカラー、週5日24時間働かせ放題 会社やチームにとっても利を生む行動こそが、大きな貢献を生み、結果として個人の高い評価につながるのだ マクロソフト・シンガポール 導入すべきは労働時間の客観管理とインターバル規制 グローバル企業こそ お互いの文化や考えを尊重し合う Everyone is special in their own way 河合 薫 日経ビジネスオンライン (その14)(日本人が働き方改革で心がけるべき「助け合い成果主義」とは?、無責任トップがはびこる末の「息子の自殺」 電通や野村不動産だけが「異常な職場」じゃない、働き方改革「議論やり直すべき」 専門家はプロセス疑問視) 「日本人が働き方改革で心がけるべき「助け合い成果主義」とは?」 「無責任トップがはびこる末の「息子の自殺」 電通や野村不動産だけが「異常な職場」じゃない」 野村不動産 50代の社員が過労自殺に追い込まれていた事件 裁量労働制 現行では「営業職」は裁量労働制の対象から外れているので「違法」だが、今国会で先送りになった拡大が認められれば「合法」となる 岡田兵吾 ダイヤモンド・オンライン 裁量労働制拡大について、データのインチキが発覚。法案から裁量労働制部分の全面削除に追い込まれたが、もともと8本の改正案を一本化したこの法案は問題だらけだ 上西充子 メドトロニック 損保ジャパン日本興亜 過労自殺をなくすには、長時間労働の撲滅に加え、パワハラ規制が絶対的に必要なのだ 働き方改革 裁量労働制の違法適用が発覚 職場のモラハラ(パワハラ)で過労自殺が問題になっているフランスでは、モラハラの被害者(労働者)は2つの形で会社に賠償要求することができる この国の経営者の中には、違法に残業労働をさせているだけではなく、端っから「労働基準法なんて関係ないね?」という人たちが一定数、存在しているのである 日刊ゲンダイ 「働き方改革「議論やり直すべき」 専門家はプロセス疑問視」
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