SSブログ

企業不祥事(神戸製鋼などの部材不正)(その6)(三菱マテリアル 社長の現場糾弾発言が示す「統治機能不全」、名ばかりの「第三者委員会」…日産 神鋼など不祥事5社名指し批判 弁護士ら『第三者委格付け団体』、3つの謎を残した神戸製鋼事件の報告書 企業不正の研究(上)、社員が不正に走る「危ない会社」に共通する欠陥 企業不正の研究(下)) [企業経営]

企業不祥事(神戸製鋼などの部材不正)については、1月14日に取上げた。今日は、(その6)(三菱マテリアル 社長の現場糾弾発言が示す「統治機能不全」、名ばかりの「第三者委員会」…日産 神鋼など不祥事5社名指し批判 弁護士ら『第三者委格付け団体』、3つの謎を残した神戸製鋼事件の報告書 企業不正の研究(上)、社員が不正に走る「危ない会社」に共通する欠陥 企業不正の研究(下))である。

先ずは、1月16日付けダイヤモンド・オンライン「三菱マテリアル、社長の現場糾弾発言が示す「統治機能不全」」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「三菱マテリアルグループを率いる能力は、当然ながら持っていると考えている。持っていないと考えるならこの席にいるべきではない」 仕事納めだった人も多かったであろう、2017年12月28日。検査データ改ざん問題に対する特別調査委員会の中間報告会見の場で、竹内章・三菱マテリアル社長は、自身らについて大胆にもこう言ってのけた。だが、特別調査委によって明らかにされた不正の実態は深刻だった。
・何しろ、不正に手を染めていた同社子会社の三菱伸銅と三菱電線工業の製作所には、それぞれ「需要家別検査ポイント表」「シルバーリスト」なる不正の“指南書”が、少なくとも1990年代から存在していたというのだ。 特別調査委は、調査が完了した三菱伸銅を「製造業を営むものとして基本的な事項がないがしろにされていた」と批判。不正案件の数が膨大で、調査継続中の三菱電線についても「非常に深刻な内容を含んでいる」と懸念を示した。
・一方、現時点では経営トップに重い処分が下されているとは言い難い。社長辞任に追い込まれたのは三菱電線の村田博昭氏のみ。三菱マテリアル出身の堀和雅・三菱伸銅社長は13年4月に三菱伸銅の社長に就任して同社のガバナンスを取り仕切ってきたはずだが、今のところ18年1月の報酬を30%自主返上するだけで済まされている。
▽信頼なき親子関係
・村田氏の辞任は、下から不正の報告を受けてから7カ月以上も親会社に報告していなかった上、その間、不適合品の出荷を続けていたためだという。中間報告書を読み解くに、村田氏と親会社には、問題を共有し、解決に動くだけの信頼関係がなかった。親会社と子会社との間には、越えられない高い壁が立ちはだかっていた。
・同様のデータ不正問題が神戸製鋼所の本社とグループ会社でも勃発しているが、同社と三菱マテリアルには共通する点がある。事業領域が広範にわたる多角化経営を展開していることだ。 多角化には、ある事業の環境悪化で収益が毀損したとしても他の事業でカバーできるというメリットがある。だが半面で、事業領域が広ければ広いほど、本社の事業部はもちろん、子会社を含む関係会社の経営管理は難しくなる。
・竹内社長は会見で、不正が起こった最大の原因は「直接不正行為を行った人間のコンプライアンス意識の低さ」と言い切り、現場を糾弾した。しかし、この発言こそグループ統治が機能不全に陥っていたことを表している。そもそも、「現場任せを放置するなら、経営者なんか要らない」と大手化学メーカーの元首脳は手厳しい。
・身の丈に合った業容へ縮小するのか、コストを投じて統治体制を整えるのか。両社の経営陣は、先送りにしていた課題をたたき付けられている。
http://diamond.jp/articles/-/155924

次に、2月9日付けZAKZAK「名ばかりの「第三者委員会」…日産、神鋼など不祥事5社名指し批判 弁護士ら『第三者委格付け団体』」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・不祥事を起こした企業の外部調査に不十分な点があるとして、弁護士らで構成する「第三者委員会報告書格付け委員会」(委員長・久保利英明弁護士)が問題企業を名指し批判する声明を出した。なかには委員会すら設置していない企業もあり、「名ばかり第三者委員会」以下との指摘も上がっている。
・格付け委員会が問題視したのは、新車の無資格検査が発覚した日産自動車、アルミ・銅などの性能データ改竄(かいざん)が分かった神戸製鋼所、燃費データの書き換え疑惑が持たれているSUBARU(スバル)、子会社で製品データ改竄が発覚した三菱マテリアル、子会社による製品検査データ改竄が判明した東レ-の5社。
・久保利委員長は6日、「日本を代表する企業が不祥事を出すことも情けないが、外部調査といっても、評価に値するような報告を出していない」と声明を出した理由を話した。 日本取引所自主規制法人が2016年に出した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」では、調査の客観性・中立性・専門性確保のため第三者委員会設置が有力な選択肢とされている。
・だが、声明では「少なくとも、日産自動車とスバルは委員会を設置せず、東レの有識者委員会は調査を自ら実施せず、プリンシプルに即した対応を避けている」と批判した。さらに、経営者が不十分な調査に逃げないよう社外役員のリーダーシップを求め、名ばかりの第三者委員会にならないよう注意喚起した。
・不祥事を受けての外部調査はどうあるべきか。久保利氏は「『第三者委員会に、会社がよくなるためにどうしたらいいのか言ってもらわないと困る』という覚悟でやるCEO(最高経営責任者)がいれば、第三者委員会は劇的に変わる。ヘボな第三者委員会報告書や第三者の名前もかぶせられないような報告書を出すことはCEOがみっともないことの証左だと思う」と話した。
・不祥事をめぐる調査では、大企業だけでなく、公益財団法人の日本相撲協会に対しても世間の厳しい目が向けられた。格付け委員会の目に相撲協会の姿はどう映るのか。 久保利氏は「もともとガバナンスがない。そんなところに第三者委員会のように立派なものを期待するほうがかわいそうだ。そういう意味では公益財団法人の名に値しない」と批判した。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180209/soc1802090002-n1.html

第三に、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授の安岡 孝司氏が4月11日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「3つの謎を残した神戸製鋼事件の報告書 企業不正の研究(上)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽BBC、ブルームバーグ、WSJが報じた「日本品質問題」
・このところ「日本品質」を代表する名門企業で不正事件が続いています。海外のメディアでは、「日本企業で何が起きているのか?」(BBC: What is happening with Japan Inc?、2017年10月13 日)や、「日本の品質管理は制御不能」(Bloomberg : Japan's Quality Control Is Out of Control、2017年10月11日) と報じられました。  この不信感は品質のみに限られてわけではありません。最近では「どこの企業も日本の製造業をまねてきたが、今やそのモデルはひびが入っている」(The Wall Street Journal : Companies Everywhere Copied Japanese Manufacturing. Now the Model Is Cracking、2018年2月4日)と、日の丸ビジネスモデルの日没が論じられ始めています。 私たちは、これらの事件を教訓として、足元を固めなおさなければいけません。
▽リスクマネジメントの根幹での不備
・筆者は今年3月、『企業不正の研究 リスクマネジメントがなぜ機能しないのか?』(日経BP社)という本を上梓しました。その中では、最近の企業不正事件8件を取り上げ、外部調査委員会の報告書などをもとにして、リスクマネジメントの限界や盲点などについて解説しました。
・そのうち神戸製鋼所に関しては、執筆時点では暫定報告「神戸製鋼:当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書(2017年11月10日)」だけしか発表されていませんでしたが、本の発売直前になって最終報告「当社グループにおける不適切行為に関するご報告(2018年3月6日)が発表されました。ここでは最終報告の内容を加味して、原因分析と再発防止策をリスクマネジメントの視点で考えます。
・本件に関して同社は米国司法当局の調査下にあり、カナダで損害賠償請求訴訟が提訴されていることから、外部調査委員会の報告書をそのまま公表していません。最終報告はそれに基づいて会社側の立場でまとめたものです。
・その内容はというと、以下で説明するように原因分析も再発防止策も不十分で、社会通念上期待される説明責任を果たすレベルには至っていません。信頼回復は極めて困難といえるでしょう。 しかし報告書の何が不十分なのかを考えることは、多くのビジネスパーソンに貴重なヒントをもたらすはずです。 最終報告を読み進める前に、まずは『企業不正の研究』の中で指摘していた、リスクマネジメントの根幹での不備について、解説しましょう。
▽「企業理念」と「リスク認識」の不一致
・企業リスクマネジメントの目的を一言でいうなら「経営理念の実現」に尽きます。したがってリスクマネジメントの基本は、経営理念をリスク管理の中心軸に据えることです。 神戸製鋼では企業理念の第1を「信頼される技術、製品、サービスを提供」としています。この理念はリスクマネジメントに反映されていたのでしょうか。
・下の表は同社の有価証券報告書に記されている8つの事業リスクをまとめたものです。そのほとんどは市場リスクで、品質に関するリスクは見当たりません。 (神戸製鋼所の事業リスクの表はリンク先参照)
・経営理念がリスクマネジメントに反映されていないため、品質不正が全社的に拡がり、「信頼」を失ってしまったといえます。同社の関係者に限らず、すべての経営者はこの失敗を教訓に活かすべきかと思います。
▽予測可能だった品質不正問題
・リスクマネジメントでは、過去に経験したか、十分予測可能な事象を管理の対象とします。逆に、未経験で予測不能な事件が起きた時はアクシデントだったと考えます。神戸製鋼は「信頼」を第一に謳うほどの企業です。品質不正は未経験で予測不可能だったのでしょうか。
・残念ながら、子会社の日本高周波鋼業では2008年に鋼材強度試験データのねつ造が発覚し、JIS認証を取り消されています。品質不正は同社グループとして経験済みのリスクなので、品質リスクをリスクマネジメントの対象にするべきでした。
・つまりリスクマネジメントの根幹の部分で二重の不備があったことになります。この不備は暫定報告にも最終報告にも触れられていません。同社はさまざまな再発防止策を打ち出していますが、形だけの対策に陥らないためには、リスクマネジメントの基本から考え直すことが必要です。
▽最終報告の謎(1)なぜ不正が広がったのかを解明していない
・筆者は、最終報告から神戸製鋼が把握した問題の全体像をまとめてみました。それが下の表です。 (神戸製鋼 試験データ改ざん・ねつ造の指示書と実行者の表はリンク先参照) 
・最終報告では国内19拠点で検査データの改ざん・ねつ造が43事案あったとし、不適切行為の指示者、実行者、方法、期間を記しています。 表からわかるように、データ改ざんの大半が品質保証室で行われています。そして同じ拠点内の製造部署や品質保証室の上席から担当者への指示があったこともわかります。
・しかし、「なぜ、そこでおきたのか?」が書かれていません。不正の根本的原因の第1を「収益偏重の経営」としているので、経営の圧力が重大な原因だったことになります。この圧力はどのように品質保証室に伝わったのでしょうか?
・同社ではすべての事業部門長が取締役でした。したがって、経営の圧力は事業部門長から事業部門内に直接加わります。しかしこの圧力は事業部門長から末端の品質保証室へ、どの経路で加わったのかが分析されていません。これが最終報告のもっとも不透明な点といえます。
・神戸製鋼では事業所間の人事異動がなく閉鎖的なところが不正の原因のひとつとしています。拠点間の人事異動がないのなら、従業員を介した伝染病型の不正拡大ではなさそうです。 ではなぜ不正が各拠点の品質保証室に広がったのでしょうか。同社に脈々と伝わっている風土病なのでしょうか。この疑問をしっかり解明したうえで、再発防止策を考えることが必要です。
▽品質管理に甘い組織体制
・品質保証室は検査部署なので、生産現場とは独立な立場で検査を行うことが期待されているはずです。その独立性を確保するために、収益責任のない位置づけとするのがセオリーです。なぜなら、もし検査部署が生産部署と同じ収益責任をもっていると、不良品を意図的に合格させることがあるからです。
・電化製品のように製品不良がユーザーにわかりやすいものでは、検査部署で意図的に不良品を合格させることはないかもしれません。しかし素材の品質はわかりにくい話です。仮に不適合品の割合が1%だったとして、これを0.1%に改ざんしてもユーザーは気づきませんし、実用上の問題に直結しないかもしれません。生産能力が苦しいと、納期に間に合わせるため検査結果の改ざんなどが起こりやすくなります。
・神戸製鋼では工場や事業部の下部組織として品質保証室が置かれています。これでは検査の独立性を確保しにくくなります。前出の表に記したように、神鋼アルミ線材では工場長が品質保証課長を兼務しているところに、品質管理に甘い姿勢を感じます。 (次回に続く)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/032500241/?P=1

第四に、上記の続の4月18日付け日経ビジネスオンライン「社員が不正に走る「危ない会社」に共通する欠陥 企業不正の研究(下)」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽最終報告の謎(2)経営責任を不透明なままにしている
・前回は、神戸製鋼所の不正事件に関する最終報告が残した謎の1つ目を取り上げました。今回は、あと2つの謎を取り上げます。
・最終報告の公表に合わせて、社長と担当副社長の引責辞任が発表されました。しかし最終報告では現経営陣や過去の経営陣と監査役の責任について説明していません。この点でも社会通念上期待される説明責任を果たしているとはいえず、社長の辞任という結論には不透明感と唐突感が免れません。前回の表に記したように本件は1970年代から続いている問題であり、過去の取締役には不正の実行者もいます。現経営陣も過去の経営陣も責任は同質だからです。
・また1972年以降、神戸製鋼の社長は11人が務めているので、社長の在任期間は平均4.2年です。現社長は就任5年目で、ちょうど代替わりの時期です。このタイミングでの辞任を実質的な引責といえるのでしょうか。
▽「現場の妨害行為」はプレス発表したのに、役員になった不正実行者の発表はなかった
・暫定報告と最終報告では、長府製造所のアルミ押出工場で自主点検に対する妨害行為があったため、外部調査委員会による調査を開始したとしています。さらに「当社グループの品質自主点検における妨害行為について、2017/10/20」というプレスリリースを出し、厳正に処分するとしています。
・一方、最終報告では昔のデータ改ざんの実行者がその後専務や副社長に昇格し、不正について取締役会に報告していなかったとしています。同社はこの件をプレスリリースしていないようですが、従業員の妨害行為に比べてプレスリリースに値しないことなのでしょうか。経営と現場との距離というよりも、地位の格差を感じてしまいます。 過去に船場吉兆(2008年廃業)が2007年に商品の賞味・消費期限を偽装していた問題で、当時の専務が「パート従業員の独断」と責任転嫁した発言を思い出してしまいました。
▽「水戸黄門型アクション」の偽物が増える?
・最終報告の再発防止策では「経営幹部が国内外の複数の事業所・拠点を定期的に回り、社員に直接語りかける」としています。これは従業員と経営陣との距離を縮めるための水戸黄門型アクションといえます。しかし、報告書の不透明さや報道の姿勢を正さない限り格差は消えず、ニセ黄門が増えるだけです。
・昨年の神戸製鋼事件の一連の報道からは、「経営者は真面目によく頑張っている」という印象を受けてきました。 しかし、同社のリリースや最終報告に現れていない部分から浮かび上がるのは、印象操作に長けた不気味さです。同社に求められているのは印象ではなく、数値に裏付けられた信頼のはずです。その意味では非常にもったいないことをしました。
▽最終報告の謎(3)再発防止策の実効性が未知数
・次に、最終報告が打ち出した再発防止策をいくつかの視点で考えます。 最終報告の再発防止策では、品質憲章を定め、取締役会の構成を見直すなどガバナンスレベルの改革案が打ち出されています。具体的には独立社外取締役の構成比を3分の1以上(5人)に増やすとか、「指名・報酬委員会」を設置するといった内容です。この委員会の体制は示されておらず、監査委員会の3人が社外取締役であることと、取締役の構成比からみて、社内出身取締役が支配力を保つ委員会になる可能性が高いように感じます。したがって実質的なガバナンス改革が進むのかについてはほとんど未知数です。
・わからないのは、このようなガバナンス改革がデータ改ざんの防止にどのようにつながるのかという点です。繰り返しになりますが、最終報告で経営陣の責任が記されていないこと、経営の圧力がどの経路で不正の現場に伝わったかが解明されていないからです。
▽3つのディフェンスラインは機能するか?
・次に、執行部門での再発防止策をチェックしてみましょう。その時に欠かせない考え方が「3つのディフェンスライン」です。 第1のディフェンスラインは、現場レベルでのリスクマネジメントを意味します。たとえば、製造部署での品質検査が第1のディフェンスラインです。
・第2のディフェンスラインは現場と独立な立場でリスクマネジメントを行うことです。たとえば、工場で作られた商品の品質や性能は検査部署でチェックしますが、この検査部門が第2のディフェンスラインになります。第1と第2の違いは、業務リスクをとっているかどうかで分かれます。
・第3のディフェンスラインは、内部監査です。第2と第3の違いは執行部門にあるか否かです。このことから内部監査部は社長や取締役会直属の組織になっています。
・3つのディフェンスラインは義務ではないので、できていなくても法的に問われることはありません。しかし、リスクマネジメント体制の有効性を検証するためには、わかりやすい考え方です。
▽「品質保証室」の置き位置が不適切
・暫定報告と最終報告で、試験・検査記録の自動化とデータ入力時の1人作業排除によってデータの改ざんを防止する対策が出ています。これは第1のディフェンスラインを強化するために有効な方法といえるでしょう。しかし不正行為はハッキングのようなもので、さらに巧妙な方法で不正が起きるかもしれません。
・品質保証体制の強化はすでに暫定報告で打ち出されています。具体的には各事業部門直轄の品質保証部(室)を置き、各事業所の品質管理と品質保証の機能を分離し、品質保証部署を事業所長直轄とするという対策です。 現場でミスや不正が起きないように監視するのが、第2のディフェンスラインの役割です。本来なら、品質保証部署は第2のディフェンスラインであるべきですが、事業所直轄に置かれているため、事業所内の製造を監視する立場での検査ができません。これは拙著『企業不正の研究』で繰り返し指摘したことです。
・また、同書の中で、改ざんが数十年続いている拠点では不正の関与者が昇格して事業部長や役員クラスに昇格している可能性があり、そのような体制では品質保証部署からの監視が効かなくなるとしました。最終報告をみると、不正の実行者のうち2人がその後製造部長や工場長、製造所長などを経て役員になっています。まさに懸念していたことが起きていました。
・再発防止策では、品質保証部署の長を事業所の設計・製造部門長と兼務させないなど、品質保証の独立性を強化しています。しかし、品質保証部署が事業所長直轄にある限り、第2のディフェンスラインは不在のままです。
▽危うい監査機能
・品質面での監査については、本社に品質統括部と品質監査室を新設し内部監査を行うとしています。つまり品質監査室が第3のディフェンスラインの役割を担います。上に書いたように、監査は第3のディフェンスラインとして、執行部門と独立な立場で行うものです。事業部門に監査機能を置いてしまうと、事業部門レベルでの不正を監視できないからです。
・とくにアルミ・銅事業部門では、品質保証部の品質監査室が部門内監査の企画、実施、フォローなどを行うとしています。ここが監査を企画して実施するということは、監査機能が事業部門に支配されやすくなるかもしれません。この体制では第3のディフェンスラインの監視が効きにくくなります。
・さらに理解できないのは、各事業部門・事業所内の品質保証部署が抜き打ち監査を行うという対策です。これも執行部門と独立であるべき監査機能を事業所内にもたせることになるからです。 この結果、監査機能が事業部門や配下の事業所に重複的に分散され、監査責任があいまいになるという危うさをはらんでいます。3重の監査体制は万全かというと、現場が関わっている限り逆効果です。
・再発防止策のリスクマネジメント上の問題点をまとめると、第2のディフェンスラインが不在なことと、監査機能の重複化によってその独立性が弱まる点に尽きます。全体として第1のディフェンスラインは強化されたものの、第2、第3のディフェンスラインが整備されたとはいえません。
▽コンプライアンス頼みの限界
・今の日本は、エリート官僚が公文書を改ざんし、東芝やオリンパスなど超名門企業の社長が不正会計の主役になる時代です。三菱自動車では社員が燃費不正の疑いを指摘しても、経営陣は真摯な対応を怠りました。
・にもかかわらず、神戸製鋼の品質保証は事業部門長や事業所長クラスのコンプライアンス頼みになっています。第2、第3のディフェンスラインを立て直すために思い切った対策を打つことが、信頼回復への課題といえるでしょう。(了)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/040600246/?P=1

第一の記事で、 三菱マテリアル社長が、『「三菱マテリアルグループを率いる能力は、当然ながら持っていると考えている』、と発言したというのには、心底、驚いた。能力がないからこそ、長年の問題を放置していたという反省が窺えない。 『最終報告は・・・原因分析も再発防止策も不十分で、社会通念上期待される説明責任を果たすレベルには至っていません。信頼回復は極めて困難といえるでしょう』、 『竹内社長は会見で、不正が起こった最大の原因は「直接不正行為を行った人間のコンプライアンス意識の低さ」と言い切り、現場を糾弾した』、などというのはあきれるばかりだ。これだけのガバナンス不全に対し、三菱グループであるため、外部の機関投資家からの圧力もあまりかからず、放置されてしまうのだろうか。
第二の記事で、 『東レの有識者委員会は調査を自ら実施せず、プリンシプルに即した対応を避けている』、というのが経団連会長会社というのだから、恐れ入る。 『名ばかりの「第三者委員会」』、の横行には、マスコミにも一端の責任がある。
第三の記事で、 外紙で 『日の丸ビジネスモデルの日没が論じられ始めています』、というのはみっともない話だ。 神戸製鋼の 『最終報告は・・・原因分析も再発防止策も不十分で、社会通念上期待される説明責任を果たすレベルには至っていません。信頼回復は極めて困難といえるでしょう』、 『工場や事業部の下部組織として品質保証室が置かれています。これでは検査の独立性を確保しにくくなります』、というのは飛んでもないことだ。
第四の記事で、 『「現場の妨害行為」はプレス発表したのに、役員になった不正実行者の発表はなかった』、 『昔のデータ改ざんの実行者がその後専務や副社長に昇格し、不正について取締役会に報告していなかったとしています』、 『再発防止策のリスクマネジメント上の問題点をまとめると、第2のディフェンスラインが不在なことと、監査機能の重複化によってその独立性が弱まる点に尽きます。全体として第1のディフェンスラインは強化されたものの、第2、第3のディフェンスラインが整備されたとはいえません』、などは、これだけの問題を起こしていながら、この程度の甘い報告書で済まそうとする姿勢には、あきれ果てるという他ない。
タグ:企業不祥事 (神戸製鋼などの部材不正) (その6)(三菱マテリアル 社長の現場糾弾発言が示す「統治機能不全」、名ばかりの「第三者委員会」…日産 神鋼など不祥事5社名指し批判 弁護士ら『第三者委格付け団体』、3つの謎を残した神戸製鋼事件の報告書 企業不正の研究(上)、社員が不正に走る「危ない会社」に共通する欠陥 企業不正の研究(下)) ダイヤモンド・オンライン 「三菱マテリアル、社長の現場糾弾発言が示す「統治機能不全」」 「需要家別検査ポイント表」「シルバーリスト」なる不正の“指南書” 少なくとも1990年代から存在 竹内社長は会見で、不正が起こった最大の原因は「直接不正行為を行った人間のコンプライアンス意識の低さ」と言い切り、現場を糾弾した ZAKZAK 「名ばかりの「第三者委員会」…日産、神鋼など不祥事5社名指し批判 弁護士ら『第三者委格付け団体』」 「第三者委員会報告書格付け委員会」 委員長・久保利英明弁護士 、「名ばかり第三者委員会」以下との指摘も 日産自動車 神戸製鋼所 SUBARU 三菱マテリアル 東レ 少なくとも、日産自動車とスバルは委員会を設置せず、東レの有識者委員会は調査を自ら実施せず、プリンシプルに即した対応を避けている」と批判 安岡 孝司 日経ビジネスオンライン 「3つの謎を残した神戸製鋼事件の報告書 企業不正の研究(上)」 BBC、ブルームバーグ、WSJが報じた「日本品質問題」 リスクマネジメントの根幹での不備 予測可能だった品質不正問題 (1)なぜ不正が広がったのかを解明していない 品質管理に甘い組織体制 「社員が不正に走る「危ない会社」に共通する欠陥 企業不正の研究(下)」 経営責任を不透明なままにしている 再発防止策の実効性が未知数 3つのディフェンスラインは機能するか? 危うい監査機能
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感