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金融関連の詐欺的事件(その3)(スルガ銀「シェアハウス」のずさん審査に疑問、シェアハウス投資で露呈したサブリース商法「規制不在」の罠、「かぼちゃの馬車」被害者をさらに騙す“二重詐欺”の卑劣な実態、「かぼちゃの馬車」被害者に詐欺を仕掛けた集団の実態と手口) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、1月29日に取上げた。今日は、(その3)(スルガ銀「シェアハウス」のずさん審査に疑問、シェアハウス投資で露呈したサブリース商法「規制不在」の罠、「かぼちゃの馬車」被害者をさらに騙す“二重詐欺”の卑劣な実態、「かぼちゃの馬車」被害者に詐欺を仕掛けた集団の実態と手口)である。

先ずは、3月12日付け東洋経済オンライン「スルガ銀「シェアハウス」のずさん審査に疑問 高収益で地銀のベンチマークだったが…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・700人もの所有者(オーナー)を破産の危機に追い込んでいるシェアハウスをめぐるトラブル。大半のオーナーに取得資金を融資したスルガ銀行(静岡県沼津市)の審査手続きが適切だったのかを問う声が上がっている。
・問題となっているのはスマートデイズ(東京都中央区)が運営する女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」。「高い家賃を30年間保証する」などと勧誘された会社員らが1棟当たり約1億円の融資を受けて、一括借り上げ(サブリース)契約を締結した。ところが昨年10月に突然家賃が減額され、今年の1月からは、家賃がまったく支払われない事態に陥っている。
▽「何とか空室を埋められないか」
・ある不動産業者は2016年11月、スマートデイズの担当者から物件リストを渡され、「何とか空室を埋められないか」と相談されたという。「実地でも調べたが、想定した賃料では埋まらないような物件ばかり。半年持たないと思った」と打ち明ける。
・スマートデイズは家賃に加えて、入居者の女性に仕事を紹介する人材斡旋料があるなどと「脱・不動産事業の新ビジネスモデル」を喧伝していた。だがその実態は、相場よりも高くオーナーに土地・建物を売って、そのカネを不足する家賃支払いに回す「自転車操業」だったようだ。
・2億円を超える借金を抱えた30代の男性は「スルガ銀行の融資判断自体を一つの信用と受け止めていたのに」と憤る。 スルガ銀行は、建物の耐久年数を超える長期の融資など、他行が躊躇するような不動産向け案件を積極的に手掛けてきた。 その特徴は「早い・長い・高い」。「独自の審査基準や商品があるため融資回答が早く、融資期間は長く、貸付金利は高い」(あるアナリスト)。地方銀行全体が低金利に苦しむ中、厚い利ザヤを背景とした収益力の高さは群を抜く存在だ。
▽72人中60人が「不正の疑いがあった」
・だが今回の融資では、提出した預金通帳の写しなどに改ざんがあったと多くのオーナーが声を上げている。「スマートデイズ被害者の会」が実施したアンケートでは、72人中60人が書類の改ざんなど不正の疑いがあったと回答した。誰の手で不正が行われたかは不明だが、もし与信の可否を左右する信用力を確認する書類に改ざんがあったのならば、誤った判断で融資が実行された可能性がある。
・融資を受ける際に使途自由のフリーローンを借りたオーナーも多い。7.5%の金利でローンを借りた50代の男性は「スキームが自動的に出来上がっていて、仲介業者からフリーローンと定期預金の契約をセットで求められた。少なくとも2年間は解約しないよう言われた」という。
・スルガ銀行は2月22日に顧客にアンケートを送付して実態把握を進めている。東洋経済の取材に対しては、調査中を理由に回答を控えた。いまだシェアハウス向けの融資がどれだけあったのかすら、わからない状況だ。 個人向け融資のニッチ分野に特化して地銀経営の「ベンチマーク」と称されてきたスルガ銀行だけに、自ら融資実態を解明して説明することが求められる。
https://toyokeizai.net/articles/-/212001

次に、4月4日付けダイヤモンド・オンライン「シェアハウス投資で露呈したサブリース商法「規制不在」の罠」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・急速に支持者を増やしたシェアハウス投資で使われた「サブリース」という商法には、投資家(オーナー)に不利な条件が存在する。不動産投資は自己責任とはいえ、将来に不安を抱える中でばら色の収支計画を見せられれば、誰しも欲望をかき立てられてしまう。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 大根田康介)
▽「精神的に追い詰められた。自己破産して早く楽になりたい」
・3月2日、「スルガ銀行スマートデイズ被害弁護団」による被害者向け説明会で、OLとみられる若い女性が悲痛な声でそう訴えた。 昨年10月ごろから、女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」を手掛けるスマートデイズが、大きな社会問題を巻き起こしている。 同社は、セミナーなどで不動産投資の経験が浅い一般人に土地購入とセットでシェアハウス建設を勧誘。建設後は、同社が物件を一括で借り上げて、30年間家賃を保証することで、安定した利回りを確保できるという夢のようなスキームを持ち掛けた(図参照)。
・そのため、それなりに収入がありつつも、老後に不安を抱くサラリーマン層を中心に投資する人が増えていた。 ところが今年1月、同社はオーナーへの賃借料の支払いを突然停止した。1億~4億円とされる物件購入のための借金を返済するめどが立たなくなった多数のオーナーが、破産状態に追い込まれたのだ。弁護団によれば、被害者は約1000人、被害総額は1000億~1500億円に上るという。
・「サブリース」と呼ばれるこの商法は、昔からある。最近では、土地所有者が相続税対策でアパートを建てる際に使われている。管理料をサブリース業者に支払う一方で、家賃収入が一定期間保証されるため、安定した利益を見込める。 しかも、経営を外部委託してオーナーの負担を減らし、投資しやすい環境をつくれる。そのため、サブリース物件は全国で360万戸以上に広がったとされる。
・サブリースは本来、ある程度の資本力がある企業が、入居者を募集して得た家賃を原資にするからこそ成り立つ事業だ。だが今回、スマートデイズは入居者をあまり確保できなかった。そこで、オーナーへの物件売却で得られた利益を家賃保証に充てる自転車操業に陥り、資金繰りが行き詰まったもようだ。
・今回、被害弁護団名にスルガ銀行の名前が入っているのは、同行の融資金額が多い上に、物件オーナーへの融資姿勢が問題視されているからだ。団長の河合弘之弁護士は、「偽造された通帳などで融資が通ってしまった」など、複数の違法行為を指摘する。 もちろん、通帳を偽造するというスマートデイズの違法行為はもっての外だが、それを通してしまった同行の審査の甘さにも問題がないとはいえない。
・同社に限らず、こうした不動産投資では、1棟売れば数十万~数百万円のインセンティブが業者の営業マンに転がり込む。一方で過剰なノルマに追われるケースがあり、強引な営業や書類偽造による不正融資につながる側面がある。
▽賃料支払い停止を突然通告し家賃減額をのませる
・現時点で、サブリースを直接規制する法律は存在しない。それ故に、もしもトラブルが起きた場合、オーナーは宅地建物取引業法や消費者契約法など既存の法律で争うしかない。一方、借り手であるサブリース業者は借地借家法という法律で守られている。本来は賃貸物件に入居する一般消費者を保護する法律だが、それが業者に適用されている。それ故、築年数が長くなると、業者は賃料増減額請求権を駆使して貸主であるオーナーに賃料減額を迫るのだ。
・最近、あるサブリース業者に賃料減額交渉を迫られたというオーナーのAさんは、「何の事前交渉もしていないのに、『サブリースの要件を満たしていない』という書面が突然来た」とため息交じりに話す。書面には、家賃減額の同意を得られず入居者募集ができないため、空室の借り上げ賃料が支払えない状況にあると記されていた。
・家賃減額の話を切り出された覚えがないAさんは、すぐに担当者と面談した。未払い分はさかのぼって支払ってもらう約束を取り付けたが、結局、家賃減額は覆らなかった。「賃料を下げて入居率を高く維持したいのでしょう。おとなしいオーナーだと丸め込まれてしまう」とAさんは憤慨する。
・業者の営業マンの中には、入居率が高い、家賃が下がらない、修繕費が少ないという三拍子そろったばら色の収支計画で勧誘する者もいる。最初の数年間は固定金額で家賃が保証されるが、その後キャッシュフローの赤字が表面化することも多い。「当初の計画と話が違う」という理由で裁判に至るケースもある。
・日本弁護士連合会は、今年2月、「サブリースを前提とするアパート等の建設勧誘の際の規制強化を求める意見書」を国土交通大臣および内閣府特命担当大臣(金融)に提出した。 この一件で、サブリース商法の闇が露呈した。だがこれは、氷山の一角にすぎない。
http://diamond.jp/articles/-/165659

第三に、4月24日付けダイヤモンド・オンライン「「かぼちゃの馬車」被害者をさらに騙す“二重詐欺”の卑劣な実態」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが経営破綻し、大問題になっている。「自前の土地や資金がなくてもシェアハウスのオーナーになれる」との触れ込みに乗り、投資したオーナーたちが1億円を超える借金を背負うという事態になっているからだ。しかし、話はそこで終わらなかった。DOL特集「地下経済の深淵」第14回は、被害者がさらなるトラブルに巻き込まれている事態を追った。(フリージャーナリスト 安藤海南男)
▽「かぼちゃの馬車」問題でついに自殺者まで
・「ついに死人が出たらしい」。関係者の間で不穏な情報が出回ったのは、4月中旬のことだった。 複数の関係者によると、亡くなったのは、経営破綻した不動産会社「スマートデイズ」からシェアハウス用物件を購入した物件所有者の1人だった。遺族から寄せられた弁護士への相談で悲劇が発覚したとされる。
・「遺族のこともあり詳細は言えないが、多額の借金に悩んだことによる自殺だ」。物件所有者側の弁護団は、記者たちの取材にこう答えたという。 “犠牲者”が出たことで、さらなる世論の反発を招きそうな今回の騒動だが、現役世代を覆う不安につけこむ詐欺的スキームの背後には、地下水脈でつながる「詐欺のカルテル」ともいうべき裏社会のネットワークの存在があった。
▽突然、1億円超の借金を背負い込んだ700人以上のオーナー
・まずは今回の騒動を振り返ってみよう。 スマートデイズは、2014年4月から、首都圏を中心に「かぼちゃの馬車」のブランド名で、女性専用シェアハウスを展開。土地と建物を借り上げて居住者から家賃を集め、所有者に保証した賃借料を毎月支払う「サブリース」と呼ばれる仕組みで、業容を急拡大させた。
・「スマートデイズが多くの顧客を獲得できた最大の要因は、『家賃保証』に加えて月に数万円程度の利益が出るというメリットがあったからです。物件を所有するだけで副収入が得られる、ということで物件購入に踏み切るサラリーマンが多かった」(不動産業界関係者) 実際、スマートデイズが営業の主要ターゲットとしたのは30代〜40代の働き盛りのサラリーマン。それも、一定以上の収入がある大手企業の社員らが狙い撃ちされた。
・しかし、昨年10月、主力行のスルガ銀行が融資を打ち切ったことで状況は一変する。 同社からの物件購入者に対する賃借料の支払いの一部が滞り始め、今年1月に入って完全にストップ。やがてこのトラブルがメディアで報じられるようになり、一連の騒動は燎原の火のように燃え広がっていった。
・「スマートデイズからの家賃収入が途絶えた“被害者”は、のべ700人以上に上る見込みです。すでに多くが複数の弁護士に相談し、原発訴訟などで知られる河合弘之弁護士を団長とする弁護団が現在、スマートデイズやスルガ銀行との交渉に当たっています」(全国紙社会部記者)
・スマートデイズが販売していた物件は、1棟当たり1億円前後。所有者の多くは、スルガ銀行からの全額借り入れによって物件を購入しており、「ほとんどの所有者が利息も含めて1億円超の債務を抱えることになった。複数の物件を購入した人の中には2億円以上の借金を背負った人もいる」(同)という。
▽疑惑の中心にいると目されるスルガ銀行
・スマートデイズをめぐる騒動では、同社と結託して物件の営業に関わっていた販売会社による物件購入者の預金通帳の改ざんや、物件の施工会社による販売会社へのキックバック、トンネル会社を使った資金環流など、さまざまな不正行為の疑いが浮上している。
・そうした一連の疑惑の中心に位置すると目されているのが、スルガ銀行である。 前出の記者は言う。 「スマートデイズのビジネスモデルを成り立たせていたのが、業界内で『スルガスキーム』と呼ばれている融資手法です。審査基準を極端に低く設定し、返済能力に乏しい人にも積極融資する。その代わりにべらぼうに高い金利と、本契約とは別に抱き合わせで組ませるローンでもうけを確保するという手法。業界内でも悪名高いこの手法に加え、スマートデイズやその関係会社の不正を黙認することで、スルガは莫大な利益を上げた。その融資姿勢が問題拡大を招いたとの批判が根強いのです」
・一方で、スマートデイズとの取引によって受けた損害を受けた物件購入者の中には、騒動に関連した別の被害に苦しむ者もいる。 “二重詐欺”とも呼べる手法で、多額の借金に苦しむ物件購入者から、さらに現金をだまし取ろうとする者がいるというのだ。
▽賃借料の収入が滞ったタイミングで自宅に届いたダイレクトメール
・「被害に遭った直後は、『投資金を少しでも回収しなくちゃ』という思いしかなかった。冷静な判断ができる状態じゃなかった」 都内の飲食店で取材に応じた30代の男性はこう切り出した。関東のある県に一軒家を構え、妻と2人の娘がいる。 勤め先は一部上場の通信系企業。理知的な物言いの節々からは、「人生の成功者」としての自負がにじみ出ている。ただ、順風満帆な人生に生じた“つまずき”に話題が及ぶと、自信に満ちた表情がにわかに曇った。
・「スマートデイズと契約したのは、老後への備えのつもりでした。今は銀行にお金を預けても資産が増えることはない。かといって、株やFXはリスクが大きい。不動産投資を検討し始めていたときに勧誘を受け、購入を決めてしまったんです」
・男性は2015年夏ごろ、都内のシェアハウスを約1億円で購入。その後、同社の経営が悪化。今年1月には、他の物件所有者同様、約束されていた賃借料の収入が途絶えた。自宅に「被害者救援」をうたうダイレクトメール(DM)が届いたのはそんな矢先だった。 「送り主は、自らも被害者だと名乗る団体でした。インターネット上にホームページも開設しているようで、そこには、『問題解決のプロ集団』『実務的アドバイスとサポートを行う』とありました。すでに、スマートデイズの問題がマスコミに取り上げられ始めていたときでしたので、このままでは大変なことになると焦りもあった。それで話を聞いてみよう、となったのです」
▽「自分たちも被害者だ」と言って対策のコンサル契約を迫る
・男性はDMが届いてから日を置かずに、団体にコンタクトを取った。 電話で応対した男性に自分が置かれた状況を説明すると、すぐに面談を提案されたという。指定されたのは東京・日本橋のオフィスビルの一室。面談当日、男性を迎えたのは、団体の関係者を名乗る2人の男だった。 「開口一番に言われたのが、『自分たちも立場が同じスマートデイズの被害者だ』ということ。団体は、スマートデイズで物件を購入したオーナーたちが中心になって組織されたものだと強調していました。正直、ホッとしました。同じ苦しみを分かっている人がいると。それで彼らに気を許してしまった」
・男らは男性が心を開いたとみるやこう畳み掛けてきた。 「対策は早い方がいい」「あなたはラッキーです。後の方になると取り戻せるものも取り戻せなくなる」 男性は、男らに促されるまま、差し出された契約書を受け取った。 「コンサルタント業務契約書」と銘打たれた契約書には、「コンサルタント契約の費用」として団体に200万円を支払う旨が記載されていた。
・男性が、指定の口座に100万円を振り込んだ後、男らは男性を伴って都内の弁護士事務所を訪れた。そこで、男性は「委任契約書」へのサインを迫られ、弁護士費用としてさらに50万円の支払いを求められたという。 「これで問題が解決できれば…」。しかし、そんな男性の期待は、もろくも崩れ去る。
▽100万円を入金した直後から連絡が途絶え始める
・当初は頻繁だった団体側からの連絡は、男性が100万円を入金した直後から途切れがちに。スマートデイズやスルガ銀行への交渉を求めても、男らはのらりくらりとかわすばかりで問題解決に動く気配は一向になかった。 「あまりの対応のひどさに契約の解除を求めても、なんだかんだと理由をつけて応じてもらえない。そこで知り合いの不動産業者に相談したら、『それは詐欺の可能性がある』と言われた。そこで初めて、だまされたかもしれないと気付いたんです」
・これまでのやりとりを振り返った男性は、団体側の対応に複数の不審点があったことに気付いた。 「面談の際、団体の担当者が出した名刺の名前と、面談が行われた不動産会社の社内で呼ばれている名前がなぜか違っていた。問いただすと、『親が離婚して、姓が変わった』と言っていたが、今考えるとおかしな話。そもそもなぜ、私がスマートデイズの被害者と分かってピンポイントでDMを送り付けてきたのか。何か裏があるとしか思えません」 実際、そこには、一度だまされた相手から金銭をさらにだまし取る巧妙なからくりが仕掛けられていた。
http://diamond.jp/articles/-/168348

第四に、上記記事の続き、5月1日付けダイヤモンド・オンライン「「かぼちゃの馬車」被害者に詐欺を仕掛けた集団の実態と手口」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが経営破綻し、シェアハウスに投資したオーナーたちが1億円を超える借金を背負い大問題となっている。DOL特集「地下経済の深淵」では、前回そんな被害者たちを狙った“二重詐欺”事件が起きていることを指摘した。今回は、詐欺を仕掛けている「詐欺のカルテル」の実態に迫った。(フリージャーナリスト 安藤海南男)
▽「こんなボロい商売はない」とうそぶくブローカー
・「確実に“お客さん”がいて、いくら取れるかもわかっている。これほどボロい商売はないよね」 東京・六本木のホテルラウンジで対峙した男は、こううそぶいた。 男は当初、「投資会社の代表」を名乗っていたが、実態は違う。不動産、ファンド、仮想通貨、そして時には犯罪すれすれの詐欺話にも手を出すいわゆる「ブローカー」が本来の生業だ。 雑多な人々が行き交う喧噪の中で、その男が明かしたのは、「不動産取引」を隠れみのにして繰り広げられるある「詐欺」の手口だった。
・「“お客さん”をどうやって見つけるかって?そんなの簡単だよ。誰にどんな物件をいくらで売ったか。それが全て載っている名簿が出回ってるんだ。その名簿に名前が出ているヤツを当たればいいだけだ」 男によると、投資用物件を販売する不動産会社の顧客リストが、詐欺師たちの手に渡っているのだという。
▽スマートデイズから流出した顧客リスト
・とはいえ、こうした顧客リストの悪用自体は珍しい話というわけではない。健康食品の通信販売利用者、クルーザーの購入者、情報商材の購入者…。世の中には、ありとあらゆる種類のリストが出回っており、それらはしばしば裏社会の住人の“飯の種”として悪用されている。
・特筆すべきは、このリストの流出源となった不動産会社の正体である。 男は声を潜めて言った。 「今、問題になっている『スマートデイズ』。シェアハウスへの投資という触れ込みで金を集めて破綻したあの会社だよ。しかも、この一件はただリストが流出したというだけで終わる話じゃない。後ろには、うまいもうけ話に引っかかったヤツからさらに金をだまし取る仕掛けが隠されているんだ」 男は目の前のグラスから水を一気に飲み干すと、その“仕掛け”の詳細を語り始めた。
・男を取材したのは4月のある日。すでにスマートデイズの賃借料不払い問題は、メディアに盛んに取り上げられて、社会問題化の様相を見せ始めていた。 「かぼちゃの馬車」というブランド名で女性専用シェアハウスを展開していた同社は、長期間にわたる家賃保証を前提とした「サブリース」と呼ばれる手法で顧客を集めて急成長を遂げた。しかし、主力行の「スルガ銀行」による融資停止をきっかけに資金繰りが急激に悪化。その結果、家賃支払いが滞ることとなり、ローン支払いが立ちいかなくなる多くの債務者を出すことになった。
・都内の不動産会社関係者は、「不動産業界では昨年春ごろから、『破綻間近』と危険視されていました。問題が一気に表面化したのは支払いが完全にストップした今年1月のことでした」と振り返る。
▽偽コイン事件とスマートデイズの意外な“接点”
・スマートデイズが大揺れに揺れていた1月下旬のこと、都内の貴金属販売会社の関係者の男ら数人が詐欺の疑いで警視庁に逮捕された。容疑は、2013年11月から14年9月にかけて、「英国ロイヤルベビー記念コイン(Bコイン)」と称する架空のコインの販売事業をめぐって、高齢者らから約10億9000万円を詐取したというものだ。
・事件を取材した大手紙の社会部記者はこう語る。 「この事件で主犯格として逮捕されたのは、50代のYという男。Yは摘発された貴金属販売会社の実質経営者で、以前から警視庁にマークされていたいわくつきの人物だった。架空コイン以外にもコンテナの所有権や仏具など、さまざまな“偽商品”を宣伝して、顧客から出資金をだまし取る犯行を重ねていた」
・詐欺的スキームによって多くの「破産予備軍」を生んだスマートデイズと、警視庁が長年にわたって追っていた詐欺集団。一見、何の関わりもなさそうに見える両者なのだが…。 冒頭のブローカーの男が、おもむろに1枚の名刺を取り出してこう言った。  「これがスマートデイズとYを結びつける“接点”だよ」
▽偽コイン事件の容疑者と「被害者支援室」の代表が同一人物
・差し出された名刺には、「支援室」なる団体の「代表」として「C」という人物の名前が記されていた。 ご記憶の向きもあるだろうが、この「支援室」は、前回の記事に登場したスマートデイズからの物件購入者にダイレクトメールを送りつけていた団体である。この団体には、「支援」「救済」をちらつかせて購入者から事実上の“解決金名目”で金銭をだまし取っていた疑惑があることは、前回指摘した。
・では、この「C」とは一体何者なのか。ブローカーの男はこう明かす。 「実は、このCという人物は、偽コインの件で警視庁に逮捕されたYと同一人物なんだ。Cというのは偽名で、逮捕された事件とは別に、スマートデイズの物件購入者らを相手にした、新たな詐欺を仕掛けようとしていた気配があるんだ」
・「支援室」が仕掛けた詐欺疑惑について、そのやり口を少し振り返っておこう。 彼らはまず、家賃支払いがストップして途方に暮れるスマートデイズの物件購入者たちにダイレクトメール(DM)を送る。 そこには、問題解決を期待させるような文言が並んでいる。何とか投資金を回収したい。そんな思いにとらわれている物件購入者の中には、この団体にコンタクトを取る者が、相当数いた模様。そのうちの1人が、前回記事で紹介した会社員の男性だ。
・スマートデイズ関連の訴訟に関与するある弁護士は、「親身に相談に乗るように装うが、彼らの真の目的は『コンサルタント契約料』の名目で金を得ることだ。50万~300万円程度の金を受け取りながらも、救済らしきことはほとんどしない。巧妙なのは、弁護士と結託して、後で『詐欺だ』と訴えられないような契約を結ばせる点だ。『コンサルタント』を偽装するのも、訴訟対策の一環であるのは間違いない」と説明する。
▽善意の第三者を装い不動産会社顧問を名乗る男
・実は「C」、もといYは、こうした本来の目的を糊塗し、善意の第三者を装って業界紙にも登場したことがある。 昨年12月に発行された業界紙でYは、「3社の不動産会社で顧問を務め、資産構築コンサルタントを生業としている」と紹介されている。だが、この経歴についても、虚偽のものであるとの疑念は消えない。では、別の詐欺事件で逮捕されたYが、偽名を使ってこの団体に関与したのにはどんな経緯があるのか。
・前出のブローカーがその舞台裏を明かした。 「スマートデイズが問題になる前、まったく同じビジネスモデルで破綻した不動産会社があった。当初、『支援室』は、その会社の物件購入者の救済を名目に立ち上げられたものだった。で、その代表に収まったのがY。その後、『支援室』はその目的を変えて、スマートデイズの破綻に伴ってターゲットを広げた格好だ」
・これまでも指摘したように、スマートデイズをはじめとするシェアハウスのサブリース事業の躍進を下支えしたのが、業界内で「スルガスキーム」の名で呼ばれる、スルガ銀行による極めてリスキーな融資手法だった。そして、その副産物として生み出されたのが、Yの隠れた“事業”だったという。
▽初めから事業の破綻を前提とした「詐欺のカルテル」が仕掛けた疑いも
・「スルガは、オーナーの多くとサブリース契約を結ぶ際、本契約とは別に自行で口座を開かせて、高金利な融資契約を結ばせている。Yたちが狙ったのが、このスルガからの融資金だった。破綻した物件のオーナーたちは多額の負債を背負ったものの、スルガで開いた口座には融資金が残っている。それもいただいてしまおう、というのがYたちの思惑だったというわけだよ」
・そして、Yらがこの「詐欺的スキーム」を仕掛ける際のよりどころとしたのが、スマートデイズをはじめとするシェアハウスのサブリース事業を手がける不動産各社から流出した顧客名簿だったとみられる。 名簿が出回った背景にも疑惑がつきまとっている。
・前出の弁護士はこう指摘する。 「一連の、シェアハウスのサブリース事業の背景にいるとされているのが、複数の経済事件にその名が登場する『S』だ。一部の週刊誌でもスマートデイズの破綻劇の『黒幕』と指摘されているいわくつきの人物。Sが関係する会社には、スマートデイズから巨額の資金が流れていたともいわれている。最初から事業の破綻を前提として、SやYが中心となった『詐欺のカルテル』ができあがっていた可能性も否定できない」
・「かぼちゃの馬車」にまつわる一連の騒動で、借金地獄に陥った物件購入者の多くが、30~40代の働き盛りのサラリーマンだった。 AIなどの新技術による産業構造の大転換、すさまじいスピードで押し寄せる人口減少の波。見えない未来への不安感を募らせる彼ら、彼女たちにとって、安定的な給与外収入が期待できる「サブリース」は魅力的な投資に映ったはずだ。
・しかし、甘美な夢はすぐに覚め、待っていたのは過酷な現実。Yたちが作り上げた「詐欺のカルテル」は、そうしたサラリーマンたちの心の隙間に入り込み、食い物にした。
http://diamond.jp/articles/-/168801

第一の記事で、 『スルガ銀行は、建物の耐久年数を超える長期の融資など、他行が躊躇するような不動産向け案件を積極的に手掛けてきた。 その特徴は「早い・長い・高い」。「独自の審査基準や商品があるため融資回答が早く、融資期間は長く、貸付金利は高い」(あるアナリスト)』、 『アンケートでは、72人中60人が書類の改ざんなど不正の疑いがあったと回答した』、 『スキームが自動的に出来上がっていて、仲介業者からフリーローンと定期預金の契約をセットで求められた』、 などから判断すると、どうもスルガ銀行も被害者というより、加害に加担していた疑いがある。既に金融庁が、立ち入り検査をしたようだ。今日の日経新聞では、「シェアハウス破綻で返済減免へ 元本は対象外」と報じられたが、利息分のみの返済減免では焼け石に水だ。今後の金融庁の判断が注目点だ。
第二の記事で、 『サブリース物件は全国で360万戸以上に広がったとされる』、 『本来、ある程度の資本力がある企業が、入居者を募集して得た家賃を原資にするからこそ成り立つ事業だ。だが今回、スマートデイズは入居者をあまり確保できなかった。そこで、オーナーへの物件売却で得られた利益を家賃保証に充てる自転車操業に陥り、資金繰りが行き詰まったもようだ』、というのでは、今回の破綻劇は起こるべくして起きたといえよう。
第三、第四の記事にある、 『被害者をさらに騙す“二重詐欺”』、の手口は確かに功名だ。 ただ、 『男らは男性を伴って都内の弁護士事務所を訪れた。そこで、男性は「委任契約書」へのサインを迫られ、弁護士費用としてさらに50万円の支払いを求められたという』、というグルになった弁護士は、たんなる委任契約とはいえ、悪質だ。何らかの処分が望まれる。 『初めから事業の破綻を前提とした「詐欺のカルテル」が仕掛けた疑いも・・・Sが関係する会社には、スマートデイズから巨額の資金が流れていたともいわれている』、というのであれば、メインバンクのスルガ銀行は資金の流れを把握していた可能性もある。闇の一刻も早い解明が望まれる。
タグ:「スルガ銀「シェアハウス」のずさん審査に疑問 高収益で地銀のベンチマークだったが…」 それを通してしまった同行の審査の甘さにも問題がないとはいえない ・サブリースは本来、ある程度の資本力がある企業が、入居者を募集して得た家賃を原資にするからこそ成り立つ事業だ 女性専用シェアハウス サブリース シェアハウスをめぐるトラブル 、「英国ロイヤルベビー記念コイン(Bコイン)」と称する架空のコインの販売事業 被害者は約1000人、被害総額は1000億~1500億円 「シェアハウス投資で露呈したサブリース商法「規制不在」の罠」 ダイヤモンド・オンライン 仲介業者からフリーローンと定期預金の契約をセットで求められた 「スマートデイズ被害者の会」が実施したアンケートでは、72人中60人が書類の改ざんなど不正の疑いがあったと回答した スルガは、オーナーの多くとサブリース契約を結ぶ際、本契約とは別に自行で口座を開かせて、高金利な融資契約を結ばせている その特徴は「早い・長い・高い」。「独自の審査基準や商品があるため融資回答が早く、融資期間は長く、貸付金利は高い」(あるアナリスト)。 「かぼちゃの馬車」問題でついに自殺者まで 、「偽造された通帳などで融資が通ってしまった」など、複数の違法行為を指摘 偽コイン事件の容疑者と「被害者支援室」の代表が同一人物 700人もの所有者(オーナー)を破産の危機に追い込んでいる スマートデイズ 「詐欺のカルテル」ともいうべき裏社会のネットワークの存在 スルガ銀行は、建物の耐久年数を超える長期の融資など、他行が躊躇するような不動産向け案件を積極的に手掛けてきた スルガで開いた口座には融資金が残っている。それもいただいてしまおう、というのがYたちの思惑だったというわけだよ 販売会社による物件購入者の預金通帳の改ざんや、物件の施工会社による販売会社へのキックバック、トンネル会社を使った資金環流など、さまざまな不正行為の疑いが浮上 多くの顧客を獲得できた最大の要因は、『家賃保証』に加えて月に数万円程度の利益が出るというメリットがあったからです 「「かぼちゃの馬車」被害者をさらに騙す“二重詐欺”の卑劣な実態」 東洋経済オンライン 対策のコンサル契約を迫る 今年の1月からは、家賃がまったく支払われない事態に (その3)(スルガ銀「シェアハウス」のずさん審査に疑問、シェアハウス投資で露呈したサブリース商法「規制不在」の罠、「かぼちゃの馬車」被害者をさらに騙す“二重詐欺”の卑劣な実態、「かぼちゃの馬車」被害者に詐欺を仕掛けた集団の実態と手口) 営業の主要ターゲットとしたのは30代〜40代の働き盛りのサラリーマン 多額の借金に苦しむ物件購入者から、さらに現金をだまし取ろうとする者がいる 高齢者らから約10億9000万円を詐取 二重詐欺 金融関連の詐欺的事件 「かぼちゃの馬車」 1棟当たり約1億円の融資を受けて、一括借り上げ(サブリース)契約を締結 スマートデイズは入居者をあまり確保できなかった。そこで、オーナーへの物件売却で得られた利益を家賃保証に充てる自転車操業に陥り、資金繰りが行き詰まったもようだ スルガは莫大な利益を上げた 昨年10月、主力行のスルガ銀行が融資を打ち切ったことで状況は一変 スマートデイズから流出した顧客リスト 「「かぼちゃの馬車」被害者に詐欺を仕掛けた集団の実態と手口」 ビジネスモデルを成り立たせていたのが、業界内で『スルガスキーム』と呼ばれている融資手法です。審査基準を極端に低く設定し、返済能力に乏しい人にも積極融資する。その代わりにべらぼうに高い金利と、本契約とは別に抱き合わせで組ませるローンでもうけを確保するという手法
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