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三菱重工はどうしたのか?(その6)(三菱重工との合弁会社に日立が「改革派急先鋒」を送り込む真意、三菱重工の宮永改革 火力発電と造船の2事業で生じた大誤算、MRJは“安定飛行”に進めるか) [企業経営]

三菱重工はどうしたのか?については、昨年3月4日に取上げたままになっていた。今日は、(その6)(三菱重工との合弁会社に日立が「改革派急先鋒」を送り込む真意、三菱重工の宮永改革 火力発電と造船の2事業で生じた大誤算、MRJは“安定飛行”に進めるか)である。

先ずは、3月19日付けダイヤモンド・オンライン「三菱重工との合弁会社に日立が「改革派急先鋒」を送り込む真意」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・日立製作所の4月1日付役員人事が波紋を呼んでいる。その人事とは副社長の西野壽一氏を三菱重工業との火力発電機器合弁会社、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)会長として送り込むというものだ。 
・火力発電機器業界は世界的な再生可能エネルギーへのシフトで逆風下にあり、最大手の米GEは1万2000人、2位の独シーメンスは6900人を削減する。 MHPSの業績も振るわない。2014年の設立時は世界一の火力発電機器メーカーになることと、20年の売上高2兆円を目指したが、現状の売上高は約1兆円だ。
・そんな中、MHPSは国内4カ所の工場の役割を見直し、効率化を図るが、日立には、「元三菱重工の長崎工場はなくせる」(日立中堅幹部)との声が根強くある。 MHPS株式の35%を出資する日立は「MHPSをどう立て直すか三菱重工に問い続けているが満足のいく回答はない」(日立幹部)。 日立の不満は拠点集約にとどまらない。GEは、顧客である発電事業者にガスタービンの保守や発電を効率化するサービスを提供して囲い込むが、MHPSはこの分野で出遅れている。
・その上、日立には電力需要を予測して発電を効率化する技術で実績があるのに、三菱重工はあくまで自社主導にこだわり、日立とは別のサービスをMHPSで始めた。 IoT(モノのインターネット)を成長の柱にする日立にとって、データ解析による合理化で成果を出しやすい発電分野で実績を作る機会を失うのは大きな損失だ。
・このように課題が山積する中で日立が白羽の矢を立てたのが、ソフトな外見とは裏腹に「仕事には厳しく、怖い」と評判の西野氏だ。 半導体の技術者である西野氏は、三菱電機と半導体事業を統合してできたルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)の役員として人員削減や生産拠点のスリム化を断行。NECの半導体子会社との統合でも各社の技術を整理する難交渉をまとめた。
▽重工・宮永社長と朋友関係
・4月からはMHPS会長に加え、電力事業出身者で占められてきた日立の電力部門トップ(=電力担当副社長)に初めて部門外から就任する。「20年の発送電分離で激変する業界に対応しろという東原敏昭社長のメッセージが込められた人事だ」(日立幹部)という。
・三菱重工関係者は改革派の西野氏に戦々恐々としているが、恐怖をさらに増幅するのが三菱重工の改革派、宮永俊一社長と西野氏が気脈を通じていることだ。 日立と三菱重工の統合が11年に破談になった後、「やれる分野で進めよう」と当時の社長室長の宮永氏と戦略企画本部長だった西野氏が交渉を重ね、誕生したのがMHPSだ。もとよりMHPSの安藤健司社長は剛腕で知られる。西野氏が会長になれば抜本改革の役者がそろう。
http://diamond.jp/articles/-/163857

次に、3月27日付けダイヤモンド・オンライン「三菱重工の宮永改革、火力発電と造船の2事業で生じた大誤算」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・三菱重工業が直面する三大問題──火力発電事業の不振、商船事業の巨額損失、三菱リージョナルジェット(MRJ)の開発遅延──。連載第4回では、火力発電事業と造船事業で生じた誤算の本質に迫る。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
・三菱重工業が、最大の盟友であるはずの日立製作所と想定外の熾烈なけんかを繰り広げている。 三菱重工と日立は2014年、火力発電事業を統合し、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)を設立した。 両社の火力発電事業は言わずと知れたライバル同士だった。が、世界を舞台に米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスという“巨人”と戦わねばならない時代である。国内で火花を散らしている場合ではないと、三菱重工と日立の経営陣が「昨日の敵」とタッグを組む大決断をした。
・そんな盟友のけんかの原因は、07~08年に日立側が総額約5700億円で受注し、MHPSが引き継いだ南アフリカ共和国の火力発電用ボイラー建設プロジェクトだ。この損失の負担割合をめぐり、どうにも折り合いがつかない。 それもそのはずだ。確定済みの損失額だけで約3800億円にも上るのだ。当初、三菱重工はこの3800億円を日立に求めたものの、「法的根拠に欠ける」と日立は拒否。しかし三菱重工は請求権の一部を資産計上しており、決算短信に状況をしれっと記載した。
・事態が明るみに出て日立幹部は慌てふためいたというが、3800億円でも譲歩したつもりの三菱重工は攻撃の手を緩めなかった。続けて「統合時の契約書にある損失の算出方式通りにはじいた」(三菱重工関係者)約7600億円をあらためて請求し、今は第三者機関に仲裁を委ねている状態だ。
・両社共に公式には、「こういうことになっても2社の関係に亀裂は入っていないし、MHPSにも何ら影響はない」と取り繕う。 とはいえ、思いの外“夫婦げんか”はこじれている。「三菱重工全体の業績が思わしくないから仕方がないけど、もうちょっと穏やかにできなかったものか」(日立役員)といった具合に、両社の不信感はくすぶり続けている。
・それだけではない。三菱重工は、主力の火力発電事業をめぐって、より重大な「想定外」に直面している。世界的な再生可能エネルギーの台頭により、火力発電市場に大逆風が吹き荒れているのだ。 事ここに至っては、仏アルストムのエネルギー事業をGEに買い負けたことは不幸中の幸いだった。半面、宮永俊一・三菱重工社長自身が「大きな誤算の一つ」と認めるように、順風満帆と踏んでいたMHPSの業績が振るわない。火力発電事業のビハインドが響き、「17年度に連結売上高5兆円」の目標は約1兆円も下回りそうだ。
・むろん、MHPSの設立にメリットはあった。国内の石炭火力発電設備では、強力な両社が統合したことで市場を席巻。東日本大震災後に原子力発電所の稼働が停止して需要が伸びたこともあり、受注が拡大した。  ガスタービンでも、大型が得意な三菱重工と、中小型が得意な日立が組んだことで製品のラインアップが拡充された。その上、三菱重工の持つ技術的ノウハウを日立の中小型のガスタービンに転用したり、技術・性能志向の強かった三菱重工の工場に、日立のコスト削減ノウハウを導入したりと、互いのノウハウが共有された。
・しかしGE、シーメンスはMHPS以上に強かった。特にGEは、売れ残りのリスクに敏感なMHPSより部品の計画生産比率が高いため、生産効率が良く、納入までのリードタイムも短い。 市況が急激に冷え込んだ最近でも、「GEは在庫処分のようにすさまじい安値攻勢を掛けて受注を取っていった」(火力発電業界幹部)。 「生き延びていくためには背に腹は代えられない。社員全員がコストダウンの重要性をひしひしと感じるようになった」(安藤健司・MHPS社長)
・実際に、市場縮小と競争激化が相まって、MHPSのガスタービンの受注台数は極端に減少。大型ガスタービンでは世界シェアまで落ち込んでいる(下図参照)。 足元はまだいい。例えば、石炭火力発電設備の過去の受注分を製造するだけで、長崎工場や呉工場は大忙しだからだ。だが、受注が取れなければ工場の稼働率はいずれ下がり、尻すぼみは必至だ。
・発電設備では、「故障する前にメンテナンスする」といった稼働率を最大化するためのアフターサービス需要が増している。発電機器メーカーは、安定的な収益をもたらすこうした需要をこぞって取り込もうとしているが、これとて受注あってこそという面が強い。
・切羽詰まったコスト削減のかいあって、「コスト構造の改革は道半ばだが、2月にタイで大規模な案件を取るなど、ようやく受注ができるようになってきた」と語る安藤社長。しかし巨人はどんどん先手を打ってくる。 例を挙げれば、GEとシーメンスは今後の火力発電市場の需給環境を鑑み、それぞれ1万2000人、6900人の人員削減を発表、“ドラスチックなコスト削減”に着手しようとしている。対するMHPSは、この3月にやっと工場ごとの製造製品の集約が完了するところだ(下図参照)。
・安藤社長は「今後も拠点の統廃合や、人員の再配置などを着々と進めていく方針だ」とさらなるてこ入れの必要性を否定しない。とはいえ、長崎工場のある長崎県長崎市は三菱重工発祥の地、日立工場のある茨城県日立市は日立発祥の地である。もし、こうしたしがらみに過度に縛られ、スピーディーに動けないとすれば、主力である火力発電事業にはさらなる「想定外」の未来が待ち受けている。
▽嵐の前の静けさか 再浮上する造船再編
・一方、やはり“三大問題”の一角を占める商船事業はどうか。一時は大型客船の工事大混乱で累計2719億円もの巨額損失を計上したが、今では落ち着きを取り戻し、新たなステージに踏み出したかのように見える。 三菱重工本体と子会社2社にまたがっていた商船機能を整理し、1月に新たに設立した三菱造船と三菱重工海洋鉄構の2社に集約。商船事業を成長させるための“骨格”がいよいよ完成したのだ。
・「優先したのは、何に将来価値を生む強みがあるのか」(大倉浩治・三菱造船社長)。自身の得手不得手を客観的に評価することで、新会社では事業内容を取捨選択した。 三菱造船ではフェリー、中小型客船などの設計・建造や液化天然ガス(LNG)船などの設計を、三菱重工海洋鉄構ではLNG船の建造や防波堤といった大型海洋鉄構構造物の建造などを行う。
・ただし、ノウハウは絞り出して使い切る。ばら積み貨物船などの汎用的な船は、もはや建造では勝てないものの設計力は生かす考え。建造効率を極める今治造船といった専業会社と提携を進めるのは、その戦略の一環だ(下図参照)。
・新会社2社の合計売上高は現在約1000億円。三菱重工は20~21年にこれを1500億円まで積み上げる方針を表明する。「商船事業は、他社との統合に動くと思いますよ」。ある三菱重工幹部がささやくように、競合との再編も拡大のための選択肢の一つだろう。
・折しも、国内では再編機運が高まりつつある。川崎重工業は、JR西日本に納めた新幹線の台車に亀裂が入るという前代未聞の大問題に直面中。損害賠償を請求されるなど問題が深刻化すれば、3期連続で営業赤字に落ち込む見込みの船舶海洋事業の“切り出し”も考えられる。
・重工系で最大規模のジャパン マリンユナイテッド(JMU)は、前身のユニバーサル造船時代から約10年間トップに就いていた再編論者の三島愼次郎社長が3月末に退任する。だからこそ、「冷静に提携話を進めやすくなるという競合もいるだろう」(JMU関係者)。 「世界で勝つという前提に立ち、目指すべきゴールを共有できる相手がいるなら、強者連合もあり得る」(大倉社長)。「世界の三菱造船」を目指すという大倉社長の考え方は、MHPSの設立を決めたときの宮永社長のそれと通じている。
http://diamond.jp/articles/-/164866

第三に、4月3日付けダイヤモンド・オンライン「MRJは“安定飛行”に進めるか、激変中の世界の競争環境を読む」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・三菱重工業が直面する、最大にして最難関の課題。それが、すでに5000億円という巨額の開発費を投じるMRJの“安定飛行”だ。連載最終回では、MRJ事業の収益化への道に横たわる難題について追う。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)
・三菱重工業グループ戦略推進室戦略企画部──。この、宮永俊一・三菱重工社長の改革を円滑に遂行させるための究極のリスクヘッジ部隊が、昨年12月を境ににわかに騒がしくなっている。 航空機メーカー界の二大巨頭の一つである米ボーイングと、リージョナルジェット大手のブラジル・エンブラエルとの提携交渉が明らかになったからだ。エンブラエルは、三菱重工傘下の三菱航空機が開発する国産初のジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の最大のライバル機を開発している。
・両社の提携次第では、MRJ事業の収益化への道筋が変わる。それだけに、戦略企画部は目下のところ、持てる情報と知恵をフル活用し、MRJ事業の今後の在り方について議論しているところだ。
・三菱重工の技術力を生かし、自社、ひいては日本の収益の柱になる事業を確立する──。MRJの開発は、こうした壮大な夢を乗せて2008年にスタートした。だがスケジュールは遅れに遅れ、MRJの初号機納入の時期は当初の目標から実に5度、7年も後ろにずれ込んでいる(下図参照)。
・宮永社長が「際立って難しい製品であることは間違いない」と言うように、民間機のゼロからの開発が一筋縄ではいかないことは紛れもない事実である。部品点数だけでも、MRJのそれは一般的な自動車の約30倍にも上るのだ。 しかし、理由はそればかりではない。MRJ事業には、三菱重工が直面している構造的な課題が凝縮されている。まず、過去の実績への過信と、グローバルで有利に戦うための交渉力不足があった。大損失を計上した大型客船を受注したときと同じである。 同様に、性能が高く技術的に優れているものを造ることは得意でも、安全性や製品へのニーズを追求する過程で起こる諸問題や設計変更への対処が不得手だった。
・要は、プロジェクトマネジメント能力の欠如だ。機体を市場投入する際に必須の「型式証明」と呼ばれる“安全性に関するお墨付き”の取得にてこずってきたというのが、それを如実に表している。 現場でさみだれ式に発生する課題について、何から、どう手を付けるべきかなかなか判断を下せない。しかも、その現実を打破するためのてこ入れ策が甘いから、開発はどんどん遅れていく……。
・この状況を前に宮永社長の堪忍袋の緒が切れたのが16年11月のことだった。MRJを自身の直轄事業とする荒療治に着手したのだ。 これを機に人員体制の抜本改革を断行。日本人社員に任せていてはいつまでたっても型式証明は取得できないと、外国人のエキスパートを大量採用し、要職に就けて開発を進める方向にかじを切った。 「何をすべきか分かっている外国人と直接やりとりできるようになったから、話が速く進むようになった」。型式証明の発行元となる国土交通省航空局のある関係者も、ほっと胸をなで下ろす。
・事業開始から8年半。宮永社長主導でようやく課題の抽出や、それを解決する適切なプロジェクトチームの設置が可能となり、三菱航空機の組織が回り始めたわけだ。
▽競合の提携交渉は有害か無害か
・宮永社長が気長に日本人社員のレベルアップを待っていられなかったのも無理はない。開発遅延により失った三菱重工の信用を取り戻すのは容易ではない。 開発費が5000億円に膨れ上がっている上に、MRJ最大の売りだったはずの「燃費性能の高さ」もかすんでしまった。MRJと同じ最新鋭のエンジンを搭載するエンブラエルのライバル機の投入時期が、MRJの投入時期の約1年後に迫ってしまったのだ。
・さらに深刻なのは、気付けば世界の競争環境が激変しようとしていることだ。それが前述したボーイングとエンブラエルの提携交渉である(下図参照)。 現在、両社は民間機部門のみの共同出資会社の設立などを検討しているもようだが、両社の交渉スタートにはトリガーがあった。昨年10月にボーイングの永遠のライバルである欧州エアバスと、エンブラエルに並ぶリージョナルジェット大手のカナダ・ボンバルディアの接近が決定的となったことだ。
・これが座席数100席未満のリージョナルジェットをめぐる蜜月なら、ボーイングも黙視したかもしれない。だが実際には、エアバスはボーイングの製品ラインアップと重複するボンバルディアの新型小型機「Cシリーズ」の事業会社への資本参加を決めた。 この出資により「座席数100席超の品ぞろえを拡充できるエアバスに対抗し、ボーイングはエンブラエルとの提携に動いている」(水谷久和・三菱航空機社長)。これが三菱重工側の見立てだ。つまり、機体単価も客筋も違う座席数100席未満のMRJへの影響は考えにくいのだという。
・しかし、この言葉を額面通りに受け取るわけにはいかない。三菱重工社内にも三菱航空機社内にも、「MRJの早期収益化のためには、将来的にはより大型の機体(座席数100席超)の開発を目指す必要がある」(三菱重工関係者)という共通認識が根強くあるからだ。 そして100席超への参入の最短ルートこそボーイングとの提携締結なのだ。ボーイング向けの開発・製造を請け負うOEMメーカーとして成長戦略を描けるからだ。
・ある航空業界関係者によれば、「エンブラエルの飛行機は設計が古いが、MRJの設計は最新だから、ボーイングは共同開発するなら三菱航空機と組んだ方が技術的には得なはずだ」という。 ならばMRJを引っ提げてボーイングに横恋慕すればいいはずだが、ここで立ちはだかるのが開発遅れだ。「ボーイングにアピールしようにも、型式証明も取れていない『幻の飛行機』では交渉のテーブルにすら着きようがない」(三菱重工幹部)。 この最悪の乱気流をどう乗り切るか。いまや航空機産業を所管する経済産業省をも巻き込み、せっせと対応策が練られている。
▽一縷の望みはスコープクローズ
・むろん、新興国での需要増加を見据えれば、ボーイングとエンブラエルとの提携範囲がリージョナルジェットにまで及ぶ恐れも捨て切れない。そうなれば、将来のボーイングとの提携可能性が低くなるだけではなく、MRJのビジネス自体が劣勢に立たされてしまう。
・ただ、両社の提携範囲が限定的なものにとどまれば、MRJが勝利する余地はある。MRJとそのライバル機であるエンブラエルの「E175-E2」には、どちらも一長一短があるからだ。 MRJは前述の通り、搭載エンジンの相対的なメリットが薄れてもなお、燃費性能に優位性がある。対するE175-E2は、古い設計の機体にエンジンだけ最新鋭のものを搭載しているにすぎない半面、エンブラエル自体にリージョナルジェットの量産実績があり、絶大な安心感がある。
・一縷の望みがあるとすれば「スコープクローズ」。米国における大手航空会社とパイロット組合の労使協定に盛り込まれた条項だ。 リージョナルジェットを運航する航空会社は、大手航空会社から受託運航することも多い。そのためリージョナルジェットには大手航空会社のパイロットの職を奪わぬよう座席数や重量に制限が設けられているのだが、この緩和が遅れている。このままだと、90席クラスの「MRJ90」とE175-E2は米国での運航が難しくなる。
・幸いなことに、三菱航空機は70席クラスの「MRJ70」も開発中だ。これに対抗する機体の開発予定がないエンブラエルはすでに、「重量オーバーのまま座席数だけ減らして折り合いをつける方向で、パイロット組合と交渉を始めている」(別の三菱重工幹部)というものの、交渉が決裂した場合はMRJが一気に優勢となる。
▽総合商社かトヨタか 資本増強の有力候補
・MRJがエンブラエルよりも優位に立てるかどうか。MRJの競争力の有無は、三菱航空機の資本政策にも影響する。開発費がかさむ三菱航空機は17年3月期時点で510億円の債務超過に陥っており、資金の手当てが不可欠なのだ。
・型式証明を取得できたところで、MRJにはまだまだ金が掛かる。カスタマーサポート体制を確立する必要もあれば、新型機に付きもののトラブルにも対応していかなければならない。「事によると数千億円必要。さすがに全てのリスクを三菱重工一社で負うことはできない」(前出の三菱重工幹部)。
・三菱航空機の株主の中では、三菱商事などの商社はMRJが優勢ならば一枚かんでおこうと色気を出す公算が大きい。 未来を見据えれば、トヨタ自動車による増資もあり得る。「空飛ぶタクシーじゃないですが、陸と空のモビリティーは今後大きく変わると思いますから。そのときがチャンスだと思っているんですよ」。宮永社長がこう語るように、MRJの開発ノウハウは未来のモビリティー開発に役立ち得るのだ。
・MRJは、三菱重工が今後の成長戦略を描けるかどうかの試金石となる事業だ。MRJが難局を乗り切り、安定的な収益源となるためには、三つの力の合わせ技が求められる。多段階にわたるサプライヤーをまとめ上げる統率力。大規模プロジェクトを工程ごとに管理するマネジメント能力。そして、世界のトップ企業や政府・当局と渡り合える交渉力である。
・これらは三菱重工の大問題である火力発電事業や商船事業はもちろん、その他の全事業のグローバル競争力をも決める。世界で戦い抜けるよう、組織を抜本的に改革する。宮永社長による改革の最終目標は道半ばだ。三つの力を磨き、内弁慶体質を返上できるか。宮永社長の最後の戦いが始まった。
http://diamond.jp/articles/-/165732

第一の記事で、 『三菱重工関係者は改革派の西野氏に戦々恐々としているが、恐怖をさらに増幅するのが三菱重工の改革派、宮永俊一社長と西野氏が気脈を通じていることだ。 日立と三菱重工の統合が11年に破談になった後、「やれる分野で進めよう」と当時の社長室長の宮永氏と戦略企画本部長だった西野氏が交渉を重ね、誕生したのがMHPSだ』、というのでは、三菱重工関係者が戦々恐々とするのも無理からぬところだ。
第二の記事では、MHPSを巡る両社の対立の深刻ぶりが仮説されている。 『盟友のけんかの原因は、07~08年に日立側が総額約5700億円で受注し、MHPSが引き継いだ南アフリカ共和国の火力発電用ボイラー建設プロジェクトだ。この損失の負担割合をめぐり、どうにも折り合いがつかない。 それもそのはずだ。確定済みの損失額だけで約3800億円にも上るのだ』、というのでは、宮永俊一社長と西野氏が気脈を通じているだけでは簡単に解決しかねる難問だ。 さらに、 『より重大な「想定外」に直面している。世界的な再生可能エネルギーの台頭により、火力発電市場に大逆風が吹き荒れているのだ』、しかも、リストラでは、長崎工場や日立工場といった両社の発祥の地も対象とせざるを得ないというのも難問だ。
第三の記事で、MRJ開発の遅れを、 『プロジェクトマネジメント能力の欠如だ』、というのはその通りなのだろう。それにしても、「お粗末」としか言いようがない。 ただ、宮永社長の対応策、 『MRJを自身の直轄事業とする荒療治に着手したのだ。 これを機に人員体制の抜本改革を断行。日本人社員に任せていてはいつまでたっても型式証明は取得できないと、外国人のエキスパートを大量採用し、要職に就けて開発を進める方向にかじを切った』、というのは遅きに失した面はあるにせよ、正しい対応だったのだろう。 『MRJは、三菱重工が今後の成長戦略を描けるかどうかの試金石となる事業だ。MRJが難局を乗り切り、安定的な収益源となるためには、三つの力の合わせ技が求められる。多段階にわたるサプライヤーをまとめ上げる統率力。大規模プロジェクトを工程ごとに管理するマネジメント能力。そして、世界のトップ企業や政府・当局と渡り合える交渉力である』、という三つの力はいずれも、「ないものねだり」に近い難問だ。お手並みを拝見していきたい。
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