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医療問題(その15)(医者選び 「専門医」はどれほど重視すべき?、今春スタートした研修医の新制度は「地域医療崩壊」の序曲だ、過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実 いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎) [社会]

医療問題については、2月26日に取上げた。今日は、(その15)(医者選び 「専門医」はどれほど重視すべき?、今春スタートした研修医の新制度は「地域医療崩壊」の序曲だ、過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実 いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎)である。

先ずは、総合南東北病院外科医長 中山 祐次郎氏が3月19日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「医者選び、「専門医」はどれほど重視すべき? 第26回 分かりにくい資格の仕組みを解説」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・こんにちは、総合南東北病院外科医長の中山祐次郎です。(途中省略)
・さて、今回は「医者選び」というテーマでお話ししたいと思います。
▽医者の肩書にある「専門医」って?
・医者には、医師免許の他に「専門医」という資格があります。病院のホームページを見ると、医師の肩書のところに「○○専門医」と書いてあるのが分かるでしょう。私が勤める病院のホームページには、私の名前とともに 外科専門医  消化器外科専門医 などと書いてあります。
・医師以外の方には、この専門医という資格がどれほど信頼に値するものなのか、分かりづらいと思います。そこで、かなりリアルな実情を書いてみました。なお、医者同士であっても他の科の専門医資格はあまりどんなものか分かりません。
▽専門医は「2階建て」構造
・専門医は科によって取得にかかる苦労や難易度もまちまちです。よく言われるのが、「専門医は2階建て(あるいは3階建て)でできている」というもの。 外科の場合、この1階部分が外科専門医になります。平成25(2013)年時点で2万1275人が外科専門医資格を持っています。日本に2万人以上もいるんですね。55個ある広告可能な専門医の中で、最多の人数を誇ります。ちなみに次点は消化器病専門医(1万8876 名)、その次が整形外科専門医(1万7280名)です。
・この資格を私が取ったのは、医者になって6年目のことでした。私は研修医で入植した病院の同期に外科医が4人おりましたが、私以外は全員5年目で取得していました。 実はこの資格には2回の試験があり、1回目は医師4年目に筆記試験を受けます。それに合格した者が、2回目の面接試験を受けるのです。私は1回目の筆記試験には合格したのですが、多忙を言い訳に2回目の試験の申請をし忘れたため1年遅れで受験をしたのでした。なんとも間抜け。
・ちなみに1回目の筆記試験は、8割くらいが合格する試験です。最新のデータ(2017年度、第12回外科専門医試験)では968名が受験し、786名が合格。合格率は81.2%でした。
▽120件の手術執刀をしていなければ試験すら受けられない
・正直なところ、この筆記試験はそれほど難しくありません。過去問を集めた問題集が市販されており、それをやるのとあとは日常の診療で学べば十分だと思います。ただし、これは「消化器外科」という胃腸や肝臓などを専門としている医師に限ったもので、肺を専門とする呼吸器外科医や、乳がんを専門とする乳腺外科医にとってはなかなか難しいようです。それもそのはず、試験問題の多くは消化器外科の問題だからです。私の印象では、「ふだんきちんと勉強しながら学んでいる消化器外科医ならだれでも合格する試験」と言えるでしょう。
・しかしこの試験を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。その条件とは、 +120例以上の手術を執刀していること +350例以上の手術に参加していること です。まず、120例以上もの手術を「執刀」せねばなりません。執刀とは、手術において「メス」と言って患者さんの皮膚を切ってから、悪いものを切除して最後にお腹を閉じて「ありがとうございました」までの大部分を行わなければならないということ。これを医者になって1~4年目くらいで経験するのは、なかなか大変です。もちろん今の私かそれより年長の医師が指導医として同じ手術に参加し、手取り足取りということになります。
▽乳がんから胃腸、外傷、心臓まで幅広く学ぶ
・そして、後者の350例のなかには、同じような手術に参加すれば良いというわけではなく、まんべんなく色んな手術に参加する必要があり、このような縛りがあります。すなわち、 消化管および腹部内臓(50例) 乳腺(10例)  呼吸器(10例) 心臓・大血管(10例) 末梢血管(10例) 頭頸部・体表・内分泌外科(甲状腺など)(10 例) 小児外科(10例) 外傷の修練(10点) です。
・これらを全て学んで初めて受験資格が得られるのですが、このハードルが高いのです。私も若手のころは、心臓の手術を学びに他の病院に3カ月泊まり込みで行ったり、外傷(おおけがのことです)の手術を経験するために救命センターに3カ月学びに言った(注:「行った」のミス)記憶があります。 なお、この試験に受かった翌年に受ける面接試験では、ほとんど落ちないと聞いています。
▽外科専門医であっても一人で執刀できる手術があまりないことも
・しかし、ここで大切なことを申し上げておきます。それは、「外科専門医を持っていても、一人で責任を持って執刀できる手術はあまりない」という点です。専門医という名前はかっこいいのですが、私のイメージではあくまでスタートラインに立った外科医、という印象です。医師6年目に外科専門医になったとき、「独力でできる手術」の少なさに唖然としたのをよく覚えています。
・ちょっとややこしいのですが誤解ないようにお願いしたいのが、外科専門医だけを持っていても、そしてそれを持っていなくても、ハイレベルな外科医は存在するという点です。ややこしいのですが、この資格をなぜか取得せず、しかし第一人者としてバリバリ手術をしている医師も稀にいます。ですから、専門医とは、「その資格を持っていれば、ある一定以上の知識と技術があることが保証されている」くらいの資格として認識していただければ良いでしょう。
▽勉強をし過ぎた消化器外科専門医試験
・そして、次の資格です。最初に示した図の2階建ての2階部分になります。1階目の外科専門医を持っていなければ取れない資格だからです。「消化器外科専門医」という資格は、外科専門医とは少し違う趣があります。これを取るために、私は結構な労力を費やしました。
・この専門医を取得するためには、消化器外科に特化したより専門的な知識と技術を要求されます。そして、難易度が高いとされる手術の執刀100例に加え、全部で450例以上の手術参加が必要です。さらには筆記試験も難しく、私は試験前3カ月ほど、ほぼ毎日勉強をしました。医師15年目、40歳代半ばのベテランでも落ちる試験と聞いていたので、ビビッた私はスタディプラス(高校生や受験生が多く使う学習管理アプリです)というスマホアプリを使いました。後から計測された勉強時間を見てみると、実に合計100時間ほどを費やしており驚きました。さすがにちょっと勉強をしすぎたようで、試験当日は一番最初に解き終わり会場を出ることになりましたが。
・こちらの試験も合格率は74.5%(2017年度)でしたので、外科専門医と同じくらいとなります。試験会場には、私より先輩の医歴(医者になってからの年数)の外科医もたくさんお見かけしました。
・また、試験を受けるためには論文を3本以上自分で書いていなければならないなど、外科専門医とは比較にならない高いレベルが要求されます。ですので、こちらをもっている医者は「かなり高いレベルで消化器外科について専門性を有している」と言えると思います。一般的な「専門医」というイメージでは、こちらの消化器外科専門医がそのイメージに合うでしょう。
▽専門医制度は変わりつつあります
・他の科の専門医資格では、私が聞いたところではだいたい消化器外科専門医と同じ程度の能力を求められるようです。医師になって6~8年目に取れる資格が多いです。つまり2階建ての2階部分ですね。どの科の医師も、キャリアを始める時には「あと何年で専門医を取る」ことを目標にしていることが多い印象です。
・以上、医者の専門医について解説しました。まとめると、皆さんが医者を選ぶ際、「専門医は必ずしも必要ではないが、あったらある一定以上の水準は保証される」となります。
・実は今、この専門医をどうするか色々と議論がなされていて、業界ではゴタゴタしています。専門医制度の導入が大学病院への医師誘導となり、地域医療に悪影響を及ぼすのではないかという意見が多く、運用規則が改定されるなどしています。あと数年後にはまたちょっと変わってくるかもしれませんが、原則は私が書いたような内容で良いかと思います。 ではまた次回、お会いしましょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011000038/031600029/?P=1

次に、5月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した山梨大学学長の島田眞路氏へのインタビュー「今春スタートした研修医の新制度は「地域医療崩壊」の序曲だ 島田眞路・山梨大学学長に聞く」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは島田氏の回答、+は回答内の段落)。
・ 『週刊ダイヤモンド』5月19日号の第1特集は「20年後も医学部・医者で食えるのか? 医歯薬看の新序列」。国家試験に合格した医学部卒業生が初期臨床研修(2年)を経て進む後期研修が形を変え、「新専門医制度」として今春始まった。新制度で資格を取得できる施設は大学病院が中心。専門医の質の向上と共に、医師の地域偏在が是正されると一部で期待されたが、都市集中は変わらず。地方から憤りの声が上がる。怒れる一人、日本皮膚科学会理事長で山梨大学学長の島田眞路さんに話を聞いた。
▽新専門医研修で約500人が東京都に流入 地方は相当怒っている
Q:専門医制度(下表参照)が今春始まりました。
A:東京都で今春までに初期臨床研修を受けた人数が1350人だったのに対し、今春に新専門医研修で採用された人数は1825人。つまり、約500人も東京都に流入しました(次ページ表参照)。 第1回の結果をみて、地方は相当怒っていると思いますよ。喜んでいるのは東京や被害を受けなかった府県だけ。地方で本当に地域医療を心配している人は、怒っています。
▽危惧したことが現実に 山梨県で新制度の外科の研修医たった1人
Q:山梨県はどうでしたか?
A:山梨県は当然出ていく人の方が多いです。いわゆる旧帝、旧六、新八と呼ばれる国立大学(病院)が研修先としてある都府県ぐらいがまあ増えました。 国立大学には全部格があるんですよ。その格に応じて文部科学省の役人も配置されている。下克上なんてないんですよ。普通の競争を阻害している要因があるんです、既に。それが国立大学が発展しない本当の理由。東京大、京都大、大阪大……と。何段階もあって、うちなんか底のほう。
Q:新専門医制度の課題は何だと思いますか。
A:結局、各学会がプログラム(≒各都道府県の定員)をたくさん作りすぎました。要するにその地域に必要なぶんだけじゃなくて、過剰にあるのです。 プログラムを作っても応募がゼロだったら意味がありません。地方のプログラムには必ず何人は入れるとか、強制性を持たせれば行きわたるのに。
+危惧したことが現実になりました。山梨県で新制度の研修医になった外科はたった1人。これが続いたら医療崩壊です。今までだってこれに近いことが起きていて、ロートル(年寄り)の医師が頑張っていた。大学が好きで残っているからまだ医療が成り立っていました。
Q:なぜ研修医は東京に行きたいのでしょうか?
A:そりゃ魅力ある街だからでしょう。医師の卵の望み通りにやるとこういうことがずっと続いてきたわけで、何とかしなきゃいけない。でもその意識が少ない。日本専門医機構(以下、機構)の柱は「プロフェッショナル・オートノミー(職業的自律性)」。要するに、「医師が自分たちだけで運営して決めたい」ということ。それを変えたくないのだったら、どうやって自己犠牲してやるんだという案を出さないといけません。
▽医療は公益的な事業 職業選択の自由、医師に認められるのか
Q:機構は今回、都市部である5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)の14基本領域については、「過去5年間の平均採用実績を超えない」との条件(シーリング)を課していました。その結果、すべて枠内に収まったと発表しています。
A:地方に医師を回すためには、過去の平均採用実績以下に上限を定めるべきです。でもそうすると反対理由として、憲法22条の職業選択の自由が必ず出てくる。医師に本当にそれが認められるのでしょうか。医療は公益的な事業。本当に個人の自由をそこまで認めていいのでしょうか。公益が優先するのではないでしょうか。
Q:今年3月末にあった機構の社員総会でも、島田さんはシーリングの提案をされた?
A:例えばとして、「過去の平均採用実績×0.8」と提案しました。 社員総会で機構は「東京都への集中は防げた」みたいなことを言いましたから、「集中は防げていないよ」と言い返しました。今までも東京都に集中はありました。そして東京都は医者であふれている。一方私たちのような地方は本当に大学病院の運営が厳しい。新専門医制度が始まると、少しは地方に医師が回るようになるんじゃないかとの期待感はゼロではありませんでした。
Q:でも、社員総会では反対意見が上がったと。
A:「東京都が減れば、東京都の大学医局から地方に派遣する医師が減る」と。でもそれって詭弁ですよね。東京都の大学病院には関連病院というのがあって、そこに行かせるという話なんだから。山梨県まで来ないんですよ。地方の隅々までは行かないんですよ。派遣って2、3ヵ月とかで、しかも派遣される医師はぐちぐち不満を言いながら。そういうのがいいのか、本当にその県の医療事情が分かっている国立大学病院に最初から研修医を入れるのがいいのか。山梨県も、山梨大学附属病院に入れてくれれば地域の医療事情を分かっているからちゃんと回せる。
+東京都は集まりすぎるから適当に関連病院に回して、その結果研修医が辞めちゃう。東京都の指導医は若手医師を本気でケアしないからです。ぐるぐる回されたら、良い研修もできるわけないです。それよりも地方のことは地方に任せたらっていうのが私の考えです。「なんでもかんでも俺に任せろ」と中央集権的なことを言って、「関連病院をかわいがりますよ」と。無責任なことを言っているんですよ。
▽2004年に始まった初期臨床研修制度 地域医療の崩壊の引き金
Q:そもそも、島田さんは2004年に始まった初期臨床研修制度(新研修医制度、医師臨床マッチング制度)を問題視している。
A:国は壮大な制度を作ったつもりでしょうが、結局都会に医師を集める制度だったんですよ。なぜ作られたかというと、それまでの研修制度では、研修してもあまりにもレベルが低い。その結果、当直の研修医が担当した患者が亡くなったりすると、これはなんだと。だから最低2年は基本の科を回って研修しましょうよと。それはいいですが、皆さん出身大学に残らないでどこいっても自由ですよとなった。一大事。地域医療の崩壊の引き金になりました。
+医学部にいくような人はやはり都会から来ています。受験戦争に勝ち抜く人しか通らないからです。それで初期臨床研修制度が始まって何が起こったかと言うと、皆故郷、すなわち都会に帰るんですね。
▽推薦制度で地域枠 35人確保しないと地域医療が崩壊
Q:山梨大学で言いますと。
A:初期臨床研修制度が始まる前は、結構な数が残ってくれました。100人いたら50人とか60人とか。 制度が始まっても、私たちは優秀な大学になりたかったものだから、山梨県の学生をというより優秀な学生をとるポリシーを続けました。まあ残ってくれるだろうという思いもありました。だから結果的に山梨県からは5人ぐらいしかとっていなかった。制度が始まると、その人たちが残っても他の人は皆帰るみたいなことが起こりはじめました。これは危機です。
+なので、私たちは推薦制度で山梨県の学生をできる限りとる地域枠を作りました。過去には山梨県で将来働くと約束してくる県外学生の推薦枠もありましたが、結局残ってくれないのでやめました。今は1学年125人のうち35人が地域枠、90人が一般入試です。35人確保しないと地域医療が崩壊する。いろいろ議論しましたが、医療崩壊を防ぐにはこれしかないと。
+90人の一般入試枠は研究者になったり海外に出て行ったり。日本のためになる医師を育てたい。その中から少しは山梨県に残ってほしいと思いますが、なかなか現れてくれません。もうトレンドだから。「残るとダサい」みたいな感じのようです。
▽島田眞路(しまだ・しんじ)
・1977年東京大学医学部卒業。山梨医科大学(現山梨大学医学部)皮膚科学教室助教授、東京大学医学部附属病院分院皮膚科科長・助教授、山梨大学医学部附属病院病院長などを経て、2015年から山梨大学学長。現在、日本皮膚科学会理事長なども兼務。
https://diamond.jp/articles/-/170251

第三に、5月21日付け東洋経済オンライン「過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実 いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ほとんどの風邪には抗菌薬(抗生物質)が効かないことは、医者の間では常識だ。風邪の原因の9割はウイルス感染症とされるが、細菌に効き感染症の治療にかかせない薬である抗生物質はウイルスにはそもそも効かない。
・だが、風邪で通院すると、今でも「フロモックス」や「クラビット」などの抗生物質が処方されることが少なくない。「抗生物質が風邪の特効薬だと誤解している患者はまだ多い。『なぜよく効く薬をだしてくれないのか?』といぶかしげな表情で迫られると、つい経営のことも考えて希望どおりに処方してしまう」とある医師は打ち明ける。
▽抗生物質を多用しないよう厚労省も動いた
・『週刊東洋経済』は5月21日発売号(5月26日号)で「医療費のムダ」を特集。命や健康を脅かす過剰な検査・検診、あふれる残薬、人工透析、整骨院、終末期医療といった、「聖域」だらけとなっている医療の現実を描いている。
・抗生物質の多用が続くと、薬が効かない耐性菌の広がりにつながりかねない。厚生労働省は昨年、重い腰を上げ、抗生物質の適正使用の手引を作成。細菌感染が疑われる重症のときに使用を限り、軽い風邪や下痢には用いないよう勧めている。今年4月の診療報酬改定では、乳幼児の風邪や下痢に際し、適切な説明により抗生物質の処方を避ければ、医師に報酬が支払われる仕組みが新設された。
・風邪に抗生物質を処方するような「過剰診療」「効果の薄い医療」が医療現場では蔓延している。過去の慣習や医療関係者の既得権益、世間の無理解などが背景として複合的に絡み合う。日本の医療費が膨張の一途をたどる中、このままでよいのだろうか。
・過剰な医療を見直す動きは、今や世界的な潮流だ。代表的なのは、北米の医師が中心となり治療や検査が過剰になってないかを検証する「チュージングワイズリー(賢い選択)」運動である。2012年に米国内科専門医認定機構(ABIM)財団が、賛同した専門学会からそれぞれ提示されたムダな医療の「五つのリスト」を公表し、本格的にスタートした。
・運動はカナダや北欧、豪州などにも広がり、70超の学会が約500項目のムダな医療のリストを打ち出している。2016年10月には佐賀大学名誉教授の小泉俊三医師(特集内でインタビュー)を代表に日本支部も立ち上がった。『週刊東洋経済』の特集「医療費のムダ」では医療経済ジャーナリストの室井一辰氏の協力を得て、同リストの中から、日本の医療現場でもよく行われている60項目をピックアップし解説している。
・米国で始まったキャンペーンに呼応し、日本でも総合診療指導医コンソーシアムが日本におけるムダな医療の「五つのリスト」を公表した。「通常の腹痛で腹部CT(コンピュータ断層撮影)検査を勧めない」「無症状で健康な人にMRI(磁気共鳴断層撮影)検査による脳ドックを勧めない」など5つのうち4つが検査・検診に関する提言となっている。
・「過剰医療は先進国の共通課題だが、中でも日本では検査や検診の過剰が深刻だ」。コンソーシアムの世話人を務める、群星沖縄研修センターの徳田安春センター長は語る。 実際、日本医学放射線学会が指針で推奨していない「通常の頭痛を訴える人への頭部CT、MRI検査」を頻繁に行っている病院は、調査対象の半数を占めた――。昨年1月、順天堂大学の隈丸加奈子准教授がそんな調査を行った。隈丸准教授は「CTのような被曝を伴う検査のデメリットへの認識が、現場に浸透していない」と危惧する。経済協力開発機構(OECD)加盟各国中でも、日本のCT、MRIの台数は圧倒的だ。人口100万人当たりの機器台数は両者とも加盟国中トップに立つ。
▽検査するだけ収入が増す出来高払い
・日本の外来診療は検査をするだけ収入が増す出来高払いとなっており、病院経営者からすれば、こうした高額な機器を入れた以上、稼働率を上げようとなりがちだ。過剰検査の弊害は患者本人の不利益にとどまらない。検査が重なると、本当に必要な検査が後回しになったり、重要な指摘を見落としたりしかねないためだ。それは特定の病気の有無を調べるための検診でも同様で、典型的なのが胃がん検診だ。
・胃がん検診は1982年に開始され、2015年に内視鏡検査が選択肢に加わるまで、40歳以上を対象に年1回、胃部X線検査(バリウム検査)で行うものとされてきた。胃がん死亡者数は年約5万人と50年近くほぼ変わらず高止まりする中、国が一貫して推奨してきたバリウム検査だが、患者からも医師からも評判は芳しくない。
・患者にとっては発泡剤を飲み検査台上で無理な体位を求められる身体的苦痛に加え、バリウムによる排便障害もある。何より「胸部X線検査の数十倍から100倍近くの被曝量」(複数の医師)のデメリットは無視できない。
・医師にとっても現在、消化器内科の臨床現場で活躍するのはもっぱら内視鏡検査であり、バリウム検査はそれこそがん検診の場でしか扱うことはない。特に若手医師はほとんどが、学生時代にも臨床現場でもバリウム検査を学んでいない。 そのため「経験がないから不安で、つい内視鏡での再検査に回してしまう。結果はほとんどが異常なし」(若手医師)。患者にとっては二度手間のうえ、医療保険財政にも負担をかけることになる。「内視鏡が未発達だった時代は、外からでも工夫して見ようとするバリウム検査の意義は確かにあった。だが内視鏡技術が著しく進歩した今もバリウム検査に頼っているのはおかしい」。NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構事務局長の笹島雅彦医師は話す。
・実は内視鏡検査を新たに推奨した現行の「胃がん検診ガイドライン2014年版」(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)の当初案では、推奨するのは引き続きバリウム検査のみで、内視鏡検査は推奨しないとなっていた。だが、臨床医たちからの猛反発を受けて、ようやく盛り込まれた経緯がある。数千万円するX線装置を積んだ検診車や検診センター、放射線技師など、バリウム検査にかかわる利害関係者への配慮が働いていたといわれている。
・ただ胃がん検診で内視鏡検査を行っている自治体は今も少数だ。内視鏡医の人手不足の問題が大きく、医師不足の地域ではより厳しい。そもそも全国民が一律に毎年胃がん検診を受ける必要性があるのか、という根本的な疑問の声も専門家からは上がっている。「胃がんは生活習慣病ではなく、99%がピロリ菌による感染症だと判明している。危険度が診断できるようになった以上、一律の検診は合理的ではない」。北海道医療大学の浅香正博学長は力を込める。
▽ピロリ菌と胃粘膜委縮双方が陰性なら?
・そのため一部の先進的な自治体や健康保険組合は「胃がんリスク層別化検査」(胃がんリスク検診)を導入している。ピロリ菌感染の有無と、胃粘膜萎縮の程度を血液検査で確認して、胃がん発症の危険度をグループ分けする。ピロリ菌と胃粘膜萎縮双方が陰性なら、胃がんのリスクはほぼゼロで内視鏡検査は基本必要ない。
・いずれかが陽性ならば内視鏡検査を受け、胃炎があれば保険適用で除菌治療を行う。ピロリ菌陽性率は4割弱とみられ、「検査が必要な人を絞り込むことで、確かな診断力を持った内視鏡医による対応が可能になる」(国立国際医療研究センター国府台病院の上村直実名誉院長)。
・「もし、もっと早い時期に胃がんリスク検診を経て、内視鏡検査を受けていたら、夫は助かったかもしれない」。スキルス胃がんの患者・家族の会「NPO法人希望の会」理事長の轟浩美さんは話す。轟さんの夫は毎年自治体の実施する住民検診でバリウム検査を受けていたが、見つかった時はすでに末期のスキルス胃がんだった。「全員検査でリスク分けもされず、流れ作業のようになっているバリウム検査では救える命も救えない」(轟さん)。
・大手企業の健康保険組合では、胃がんリスク検診への切り替えが続々進むが、市区町村の住民検診ではまだ限定的だ。厚生労働省が「死亡率減少効果が明らかになっていない」(健康局がん・疾病対策課)などとして、住民検診などでは胃がんリスク検診を「推奨しない」としているためだ。自主判断できる企業健保とは異なり、行政の実施する住民検診では「国の推奨と異なる選択には相当の覚悟がいる」(複数の医師)のが現実だ。
・厚労省が推奨しないとする根拠となっているのが、先の国立がん研究センターの胃がん検診ガイドラインだ。内視鏡検査こそようやく推奨に転じたが、胃がんリスク検診をほぼ名指しする形で「科学的根拠不明な検診」などと強い調子で批判している。
▽胃がんリスク検診導入を働きかけた医師の末路
・『バリウム検査は危ない』(小学館)著者でジャーナリストの岩澤倫彦氏によれば、関西のある市では基幹病院の検診担当部長だった消化器内科医が、胃がんリスク検診の導入を自治体に働きかけて実現手前までこぎつけた。だが突然理由も告げられず、検診担当部長の職を解かれ閑職に追いやられた。結果、同市でのリスク検診導入は白紙に戻った。この直前に、「国立がん研究センター検診研究センターの幹部が市を訪れていた」という複数の証言があるという。
・ただ、胃がんリスク検診を強く批判していた当時のガイドライン作成の担当者2人は、今春そろって退任。後任となった国立がん研究センターの中山富雄検診研究部長は「検診というかは別にして、リスク分類することの有用性は高い。どう検査としてシステム化するのか、運用面での支援を含め、対話を深めていきたい」と話す。
・旧来のシステムやしがらみに固執することなく、国民の命や健康を守るためにできることは何なのか。広く医療者に問われている。
https://toyokeizai.net/articles/-/221458

第一の記事で、 『これらを全て学んで初めて受験資格が得られるのですが、このハードルが高いのです。私も若手のころは、心臓の手術を学びに他の病院に3カ月泊まり込みで行ったり、外傷(おおけがのことです)の手術を経験するために救命センターに3カ月学びに言った(注:「行った」のミス)記憶があります』、というのは、確かに大変そうだ。 『この資格をなぜか取得せず、しかし第一人者としてバリバリ手術をしている医師も稀にいます。ですから、専門医とは、「その資格を持っていれば、ある一定以上の知識と技術があることが保証されている」くらいの資格として認識していただければ良いでしょう』、 消化器外科専門医については、『試験を受けるためには論文を3本以上自分で書いていなければならないなど、外科専門医とは比較にならない高いレベルが要求されます。ですので、こちらをもっている医者は「かなり高いレベルで消化器外科について専門性を有している」と言えると思います。一般的な「専門医」というイメージでは、こちらの消化器外科専門医がそのイメージに合うでしょう』、なるほどと納得したところで、 『専門医制度は変わりつつあります』というので若干、ズッコケたが、これは次の記事で問題含みの制度のようだ。
第二の記事で、 『新専門医研修で約500人が東京都に流入 地方は相当怒っている』、とあるが、枠組みの変更を何故、厚労省(文科省?)が行ったのかの説明がないのが残念だ。 『(国立大学の)の格に応じて文部科学省の役人も配置されている。下克上なんてないんですよ』、というのには驚いた。日本は「階層社会」だが、こんなところにまで現れていたとは・・・。
第三の記事で、 『ほとんどの風邪には抗菌薬(抗生物質)が効かないことは、医者の間では常識だ』、というのはうろ覚えの記憶を改めてはっきりさせてくれた。 『厚生労働省は昨年、重い腰を上げ、抗生物質の適正使用の手引を作成。細菌感染が疑われる重症のときに使用を限り、軽い風邪や下痢には用いないよう勧めている』、というのは遅すぎたきらいはあるが、患者が受け入れるにはまだ時間がかかるのだろう。 『「過剰医療は先進国の共通課題だが、中でも日本では検査や検診の過剰が深刻だ」・・・日本医学放射線学会が指針で推奨していない「通常の頭痛を訴える人への頭部CT、MRI検査」を頻繁に行っている病院は、調査対象の半数を占めた』、『経済協力開発機構(OECD)加盟各国中でも、日本のCT、MRIの台数は圧倒的だ。人口100万人当たりの機器台数は両者とも加盟国中トップ』、という無駄も腹立たしい限りだ。 『「胃がん検診ガイドライン2014年版」(国立がん研究センターがん予防・検診研究センター)の当初案では、推奨するのは引き続きバリウム検査のみで、内視鏡検査は推奨しないとなっていた・・・数千万円するX線装置を積んだ検診車や検診センター、放射線技師など、バリウム検査にかかわる利害関係者への配慮が働いていたといわれている』、『胃がんリスク検診導入を働きかけた医師の末路』、なども腹が立つ。既得権の壁にメスを入れない限り、無駄な検診・医療が医療財政をますます圧迫し、健康保険制度を破綻の道に追いやってゆくだろう。
タグ:ピロリ菌と胃粘膜萎縮双方が陰性なら、胃がんのリスクはほぼゼロで内視鏡検査は基本必要ない 胃がんリスク層別化検査 経済協力開発機構(OECD)加盟各国中でも、日本のCT、MRIの台数は圧倒的だ。人口100万人当たりの機器台数は両者とも加盟国中トップに立つ 「通常の頭痛を訴える人への頭部CT、MRI検査」を頻繁に行っている病院は、調査対象の半数を占めた 厚生労働省は昨年、重い腰を上げ、抗生物質の適正使用の手引を作成。細菌感染が疑われる重症のときに使用を限り、軽い風邪や下痢には用いないよう勧めている 「過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実 いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎」 東洋経済オンライン 立大学には全部格があるんですよ。その格に応じて文部科学省の役人も配置されている 新専門医研修で約500人が東京都に流入 地方は相当怒っている 「今春スタートした研修医の新制度は「地域医療崩壊」の序曲だ 島田眞路・山梨大学学長に聞く」 ダイヤモンド・オンライン 般的な「専門医」というイメージでは、こちらの消化器外科専門医がそのイメージに合うでしょう 試験を受けるためには論文を3本以上自分で書いていなければならないなど、外科専門医とは比較にならない高いレベルが要求 消化器外科専門医 「その資格を持っていれば、ある一定以上の知識と技術があることが保証されている」くらいの資格として認識していただければ良いでしょう 私も若手のころは、心臓の手術を学びに他の病院に3カ月泊まり込みで行ったり、外傷(おおけがのことです)の手術を経験するために救命センターに3カ月学びに言った まんべんなく色んな手術に参加する必要があり、このような縛りがあります 120例以上の手術を執刀していること +350例以上の手術に参加 試験を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要 専門医は「2階建て」構造 「医者選び、「専門医」はどれほど重視すべき? 第26回 分かりにくい資格の仕組みを解説」 日経ビジネスオンライン 中山 祐次郎 (その15)(医者選び 「専門医」はどれほど重視すべき?、今春スタートした研修医の新制度は「地域医療崩壊」の序曲だ、過剰医療大国ニッポンの不都合すぎる真実 いまだバリウム検査に偏る胃がん検診の謎) 医療問題
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