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通商問題(その2)(トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立 試される日本の外交力、対中制裁では解消しない 中国・知財強国の怖さ、トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策) [世界情勢]

通商問題については、4月14日に取上げた。いよいよ貿易戦争の様相を強めてきた今日は、(その2)(トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立 試される日本の外交力、対中制裁では解消しない 中国・知財強国の怖さ、トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策)である。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が6月5日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立、試される日本の外交力」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・貿易戦争に勝者はいない。しかし、はっきりしているのは、世界中を相手にトランプ発の貿易戦争を仕掛けた米国が「最大の敗者」になることだ。トランプ政権は、鉄鋼・アルミニウムに高関税を課す輸入制限を一時猶予していた欧州連合(EU)、カナダ、メキシコにも拡大した。高関税を自動車にまで課すことも検討している。これに対して、主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議は6カ国がトランプ政権の保護主義に集中砲火を浴びせ、米国は孤立に追い込まれた。
・世界最大の経済大国の保護主義による貿易戦争は、世界経済に大きな打撃を及ぼす。それは米国経済を直撃するだけでなく、超大国の信認を失墜させる。貿易赤字を2国間で解消しようする誤った思考は、トランプ政権の反経済学の姿勢を世界に露呈している。
▽G7で米に集中砲火
・カナダ西部のウィスラーで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議は、異例づくめの会合になった。本来、世界経済や金融・通貨情勢について話し合う会議だが、議論は貿易問題に絞られた。アルゼンチンの通貨安、イタリアやスペインの政治混乱による南欧リスクなど緊急課題は素通りし、トランプ政権の保護主義に批判が集中した。
・トランプ政権が鉄鋼・アルミの輸入制限をEUと北米自由貿易協定(NAFTA)を構成するカナダ、メキシコに拡大し、これらの国・地域が報復措置を打ち出すことになったばかりだ。このトランプ発の貿易戦争の拡大は、世界経済に影響するだけに、G7財務相・中央銀行総裁会議でも最重要の討議テーマにせざるをえなかった。共同声明は出されなかったものの、議長声明で米国を名指しで批判したのも異例である。
・最も強く反発したのは、NAFTA再交渉中のカナダだった。モルノー財務相は「米国の考え方はばかげている」とまで述べた。鉄鋼生産の4割強が対米輸出だけに、直接的影響が大きい。対米批判の先鋒役を担ったのは当然である。フランスのルメール経済・財政相が「世界経済に危険な結果をもたらす」と警告すれば、ドイツのショルツ財務相は「国際法違反だ」と批判した。
・安倍・トランプの蜜月関係からトランプ政権には遠慮がちの日本もさすがにこの国際潮流に乗り遅れるわけにはいかなかった。麻生財務相も「一方的な保護主義的措置はどの国の利益にもならない」と警告の列に加わった。
・これに対して、ムニューシン米財務長官は「これ以上、巨額の貿易赤字を許容できない」という立場を崩さず、G6の主張に耳を貸さなかった。G7の主要同盟国との関係より、11月の中間選挙を優先するトランプ政権の「米国第一主義」を鮮明にしている。
▽深刻な米欧同盟の亀裂
・トランプ政権の鉄鋼・アルミ輸入制限は、米国の「安全保障」のためというのが名目だ。しかし、肝心の米欧同盟に亀裂が深まったのだから、米国の安全保障には逆効果ということになるだろう。 EUは1日、世界貿易機関(WTO)に提訴した。トランプ大統領が輸入制限を打ち上げると、EUはすかさず報復関税を打ち出す構えを示していた。20日には、ハーレー・ダビッドソンのオートバイなど代表的な米国製品の28億ユーロ規模の輸入に高関税を課す。
・EUは土壇場まで妥協を模索していた。通商担当のマルムストローム欧州委員がロス米商務長官やライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と会談して、発動回避をめぐり折衝してきた。トランプ大統領が関心のある米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大を調整の念頭に置いてきただけに、トランプ政権の強硬措置に怒りを隠さない。
・とくに、地球温暖化防止のためのパリ協定やイラン核合意からの離脱など、トランプ大統領による国際合意からの離反が相次いでいるだけに、今回の強硬措置で米欧同盟の亀裂は深刻になる恐れがある。
・米欧同盟の亀裂は、その核心である北大西洋条約機構(NATO)の運営に響くことも考えておかなければならない。もともとトランプ大統領はNATO軽視の言動が目立っていただけになおさらだ。米欧関係が揺らげば、中東に進出するロシアの台頭を許す結果になり、混迷する中東情勢をさらに泥沼化させかねない。
▽米朝首脳会談にらみの米中ハイテク覇権争い
・貿易赤字の解消で、トランプ政権が照準を合わせているのは中国である。米中間で調整は続いているが、貿易赤字解消を超えてハイテク分野の覇権争いがからむだけに、調整は難航必至である。トランプ政権が知的財産権侵害への制裁として、6月中旬にも追加関税を発動すると表明したことで、米中貿易摩擦が再燃する気配である。
・とくに追加関税の対象品目に「中国製造2025に関連する分野を含む」と明示していることに中国は反発する。習近平政権は、ロボットなど先端技術を、巨額の補助金をてこに2025年までに国産化する目標を打ち出している。米国による補助金廃止の要求を中国は受け入れない。米中間のハイテク覇権争いは激化する様相をみせている。
・中国をめぐる知的財産権問題は、米国だけでなく、日欧も共通の問題を抱えているが、トランプ発の貿易戦争が世界に広がったことで、知財問題をめぐる「対中国包囲網」は形成しにくくなっている。
・米中貿易戦争がどう展開するかは、6月12日の米朝首脳会談にらみの面がある。北朝鮮には中国が最も大きな影響力をもっている。トランプ政権内にも、国際政治の季節に「米中貿易休戦論」もある。これからの朝鮮半島情勢を決める米中首脳会談と、米中のハイテク覇権争いは複雑にからみ合っている。
▽自動車に波及なら日欧に打撃
・世界経済が大きな打撃をこうむるとすれば、トランプ流保護主義が自動車に及ぶときだろう。トランプ政権は、自動車にも高関税を課すことを検討している。それは、日本とドイツなど欧州の自動車産業を直撃することになる。仮に高関税が課せられることになれば、裾野の広い日欧の自動車関連産業への影響は計り知れない。
・安倍首相は国会での党首討論で、トランプ流保護主義が鉄鋼、アルミから自動車にまで拡大しようとしていることについて「全ての貿易行為はWTOと整合的でないといけない」と述べ、批判した。
・日本としては、この批判を7日のトランプ大統領との首脳会談で直接、ぶつけるしかない。首脳会談は米朝首脳会談の準備のためにだけあるのではない。同盟国の首脳としての「友情ある説得」が求められる場面だ。G7各国首脳も日本の経済界も安倍首相がトランプ大統領に直言できるかどうか注視している。
▽地に落ちる超大国の信認
・トランプ発の貿易戦争で最大の敗者になるのは、中国でも欧州でも日本でもない。保護主義を世界にまき散らした当の米国である。世界が報復合戦による貿易戦争に陥れば、世界経済全体の足を引っ張ることになる。とりわけサプライ・チェーンなどグローバル・ネットワークが高関税で分断されてしまう危険がある。
・その打撃を最も大きくこうむるのは、グローバル経済の核にある米国経済そのものだ。それは米国の消費者と雇用を直撃することになる。世界の先頭を切って出口戦略に動いている米連邦準備理事会(FRB)の政策運営を難しくする。対応を誤れば、リーマンショック10年後の世界の市場を再び揺さぶることにもなりかねない。
・米国にとって経済への打撃以上に大きいのは、信認の失墜である。保護主義の張本人という汚名は永遠に消えることはない。保護主義を防ぎ、自由貿易の先頭に立つべき超大国・米国が保護主義の先頭に立つのは、異常としか言いようがない。
・超大国・米国が信認を喪失する一方で、第2の経済大国・中国の台頭を許すことにもなる。事実、習近平政権は保護主義を防ぎ、自由貿易を推進すると声高に主張し始めている。国家資本主義の中国に、米国が自由貿易の盟主の座を取って代わられるとすれば、大いなる歴史の皮肉というべきだろう。
▽多国間主義の連携でトランプ封じを
・トランプ発の貿易戦争を防ぐには、多国間主義の連携によって、トランプ封じをめざすしかないだろう。超大国の暴走は単独では防げない。世界経済に影響力をもつ日欧中の連携が欠かせない。
・まず「米国第一主義」の矛盾を突くことである。トランプ大統領が主張する「米国第一主義」は、グローバル経済の現実から大きくかけ離れている。「米国第一」と考えて打ち出す保護主義は結局、米国経済を痛めつけることになる。
・「貿易赤字は損失」という考え方で保護措置を取るのは大きな誤りである。グローバル経済の相互依存が深まるなかで、2国間の貿易赤字を対象にするのは意味がない。こうした経済学の基礎的知識すら持ち合わせない政権がいまなお存続しているのは驚きである。
・何事も2国間主義で解決しようとするのは、結局、米国のごり押しを許すことになる。トランプ流2国間主義を多国間主義に引き戻すうえで、日欧中の連携が決定的に重要になる。まず、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合し、米国に参加を呼び掛ける。そして日EU経済連携協定をできるだけ早く実効あるものにする。多国間主義の複層的連携がいかに世界経済を活性化させるかを実証することである。
・多国間主義の連携で、要の役割を担っているのは日本である。日本の多角的な外交力が試されている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/060400066/?P=1

次に、元経産省米州課長で中部大学特任教授の細川 昌彦氏が6月19日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「対中制裁では解消しない、中国・知財強国の怖さ トランプ政権、約500億ドルの対中制裁関税を7月6日から順次発動」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国は中国に対して約500億ドルの制裁関税を来月6日から順次発動すると発表した。中国の米国企業に対する知的財産権の侵害がその理由だが、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある。
・米国は中国に対して通商法301条に基づく一方的制裁を来月6日から順次発動すると発表した。約500億ドルの制裁関税である。中国の米国企業に対する知的財産権の侵害がその理由だ。そして中国もこれに対して大豆などの関税引き上げで報復することを表明した。
・トランプ氏が仕掛けた「米中貿易戦争」として、米中間の報復合戦に目が注がれている。トランプ氏は中国との貿易赤字削減の交渉を有利に進めるために、制裁関税という交渉カードを得ることにしか関心がない。極端に言えば、制裁理由などは何でもいい。
・しかし、それだけに目を奪われていてはいけない。 制裁理由とされている中国の知的財産権を巡る不公正さこそ、深刻で本質的な問題だ。それは多くの日本企業も直面している大問題である。しかも、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある。
▽伝統的な模倣品問題と先端技術取得の二層構造
・従来、中国の知財問題といえば、ブランド製品の模倣品やゲーム、意匠のコピーなどが話題になってきた。これらが中国の地方経済の一端を担っていることもあって、その取り締まりの実効性に疑問が投げかけられてきたのも事実だ。これらの模倣品は、未だに横行しており、モグラ叩きが続いている。
・これに対して中国政府が取り締まりの執行を強化することは歓迎すべきことだ。 しかし、今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない。 米国の制裁理由に挙げられているように、例えば、外国企業が中国に進出する際、中国企業との合弁が求められ、中国政府によって中国企業への技術移転が強要される。また、中国企業が外国企業から技術のライセンスを受けた場合、その改良技術は中国企業のものとなってしまう。つまり、外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ。
・そして、それが製造強国を目指す国家戦略である「中国製造2025」のための手段の一つとなっているから根が深い。海外からの批判は高まっており、中国政府は「知財保護の強化」を打ち出して批判をかわそうと躍起だ。
・ただ、この謳い文句を額面通り受け取っては危険である。米国の制裁理由に挙げられているような問題どころか、むしろ「知財保護の強化」の掛け声の下で、もっと深刻な問題が進行しているからだ。中国で事業活動する企業は、その実態を注意深く見る必要がある。
▽表向きの美名「知財保護の強化」に危険が潜む
・中国は今や“プロパテント”に大きく舵を切っている。本年4月ボアオ・フォーラムでの習近平国家主席の演説でも、市場開放とともに知的財産権の保護の強化を打ち出している。改正法案も出されており、損害賠償額を最大3倍まで引き上げるなどの強化も含まれている。
・かつて2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟する際には、WTOの知財ルール(TRIPS)の遵守を渋々コミットさせられたものだ。ところが今や、技術大国として自信を持ち、逆に自分たちのために知財保護を強化しようとしている。「知財大国」さらには「知財強国」を目指しているのだ。
・それは中国政府だけではない。中国企業もそれに呼応して、知財強化ための人材獲得に抜かりがない。例えば、通信機器会社のファーウェイは今や5Gの領域における特許のポートフォリオで他社を凌駕している。そのための人材獲得にも熱心で、競合他社のクアルコムから知財トップを引き抜いている。まさに資金力をもって世界で活躍する人材を引き寄せているのだ。 こうした中国の「知財強国」化をどうみるべきか。「知的財産権保護の強化」という表向きの美名だけで評価していては危険だ。
▽特許件数が異常に多い背景は何か
・中国の特許出願件数を見ると、驚異的に増加している。 中国国家知識産権局によると、2016年に受理した特許出願件数は133.9万件、対前年比21.5%増で6年連続世界一となった。そしてそのほとんどが中国居住者による国内出願だ。ちなみに、世界の特許出願件数1位がZTE、2位がファーウェイで、ともに今、注目されている中国巨大IT企業だ。
・もちろんその背景には、中国の目覚ましい科学技術の躍進がある。研究開発費の総額は日本の17兆円に対して42兆円、研究者数も日本の68万人に対して162万人だ(2015年)。この豊富なヒトとカネを使って、量で圧倒している。その結果、引用される重要論文も分野によっては米国を凌ぐまでになっている。従って、特許出願件数も急増するのも当然ではある。
・しかし、その異常なほどの急増に、不自然さを感じざるを得ない。例えば、中国企業への特許出願を政府が大いに奨励している。そのこと自体は大いに結構だが、問題は中国人・中国企業による特許出願には補助金が出されているのだ。企業の出願料の負担を考えると、こうした内外の差別的扱いは許されるものではない。
・しかも、そもそも特許として認められるためには「新規性」の要件が必要なのは当然なのだが、その点の審査が中国・中国企業が出願した案件については甘いとの声もある。外国人・外国企業との間で二重基準(ダブル・スタンダード)になっているのではないかとの指摘も企業の間ではささやかれている。その結果、中国に進出している日本企業は「公知の事実」だと思っていたら、ある日突然、中国企業から特許侵害として訴えられるという事態もあり得るので要注意だ。
・商標権でも中国は出願を補助金で支援して大量出願させ、日本企業で痛い目にあっているのは「今治タオル」など枚挙にいとまがない。これと類似のことが特許でも起こり得るのだ。 しかも中国企業にライセンス供与して、その中国企業が他の中国企業から特許侵害で訴えられた場合、技術を供与した外国企業がその補償責任を引き受ける義務を負うという、外国企業だけに不利なとんでもない制度(したがって明らかにWTO違反)になっているから厄介だ。
・このように、中国企業が知財の保有量を増やしていることで、競合の中国企業から特許侵害で訴えられるリスクが急激に高まっている。そのリスクを回避するために外国企業は中国語文献の事前調査に膨大なコストを支払わざるを得ない。
▽特許審査で技術情報の流出リスクも
・こうして特許申請は急増しているが、これをさばくために、大量の特許審査官が必要になる。中国ではその数、1万数千人というから、日本の数十倍だ。今、中国の各地では特許審査のための組織が急速に拡充されている。人員不足を補うため、審査官の中には中国企業からの出向者も多く採用されている。そうすると、審査中の未公開案件の技術情報も駄々漏れになっているのではないかと疑いたくもなる。
・外国企業が中国で事業を展開する際に、中国当局に営業ライセンスを申請すると、さまざまな技術情報を提出させられる。例えば、化粧品では使用する原料の使用比率などの情報を開示させられる。それが中国の競合他社に流れているのではないか、とのうわさは絶えない。 同様の技術情報の横流しは様々な審査の場面において懸念されるが、特に深刻なのが未公開の特許出願の技術情報だ。
▽知財の訴訟大国で恣意的裁判も
・さらに中国では知財紛争も増大して、知財の訴訟大国にもなっている。そしてその知財裁判の公平性も問題なのだ。近年、知財紛争を専門とする裁判所を3カ所設立した。表向きの制度は整備されているが、特許違反で訴えた場合、中国企業に有利に土俵が傾くことは覚悟しなければならない。
・中国に進出している外資企業の間では「中国企業の有利さはかつて60対40だったが、最近でも55対45に改善された程度」といった類の会話が交わされている。さすがに上級審に行けば、司法人材の質も高く、恣意的判断も少ないが、下級審ではある意味あきらめに似た覚悟が必要だ。
▽日本政府も早急にWTO提訴すべき
・こうした中国の知財を巡る動きは中国に進出する日本企業にも深刻な問題を投げかけている。決して米中貿易問題という他人事ではない。中国政府が官民一体となって戦略的に取り組んでいる根深い問題であるだけに、我々も本腰を入れた対応が必要だ。
・日本政府も日中の関係改善という政治的配慮からこうしたことに目をつぶることがあってはならない。米国は通商法301条に基づく一方的制裁だけでなく、同時にWTOに提訴してWTOの枠組みも利用しようという、いわば「両にらみの姿勢」をとる。EUも米国に続いて、中国に対してWTO提訴を行った。日本も米国、EUとともに協調対応することが重要で、早急にWTO提訴すべきだろう。
・また、WTOではカバーされない根深い問題については、例えば、多国間、二国間の特許庁会合などでも、中国を是正に向けてどう誘導していくかも合わせ技で考えて、硬軟織り交ぜていく必要があるだろう。
・同時に日本企業の経営幹部も昔ながらの中国の知財問題のイメージを払拭して、最近の知財を巡る中国の動きに目を向けるべきだろう。痛い目に合う前に、危機感を持って社内の知財部門の問題意識と体制を早急にチェックする必要がある。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/061800835/

第三に、双日総研チーフエコノミストの吉崎達彦氏が6月17日付けFNN Primeに寄稿した「トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽要旨
 +トランプ大統領がシャルルボアG7サミットで“ちゃぶ台返し”
 +不評のシンガポール会談の目先を変えるために対中制裁関税発動
 +さらに「輸入自動車に25%の関税」検討を商務省に指示
▽「やんちゃ外交」が止まらない シャルルボアG7サミット
・今月はトランプ大統領の「やんちゃ外交」が止まらない。 トランプ劇場の第1幕は、シャルルボアG7サミット(6月8~9日)だった。年に1度、先進民主主義国の結束を確認する場のはずのサミットが、「G6対1」に分裂してしまった。
・無理もない。よりによって開催の1週間前、6月1日からアメリカはEUやカナダからの鉄鋼・アルミ輸出に対する追加関税を実施した。議長国カナダのトルードー首相は、これではNAFTA再交渉もつぶれてしまうと怒り心頭。そしてEUから見れば、トランプ大統領は「パリ協定離脱」「イラク核合意離脱」に続く3度目のちゃぶ台返しである。
・トランプ大統領は「貿易赤字が問題だ」という。しかし関税を上げれば貿易赤字が減るというものではない。 論より証拠、日本からのアメリカ向け鉄鋼輸出は、一足先に25%の関税が課されている。しかし4月の貿易統計を見ると、対米輸出は前年同期比13%増(数量ベース)であった。  本当に必要な製品であれば、需要家は泣く泣く関税を上乗せして買わなければならないのだ。
▽新たな騒ぎを起こして目先を変える
・トランプ劇場の第2幕は、6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談だった。日本でもいろんな批判が飛び出しているが、アメリカ国内でも評判はよろしくない。こういうとき、トランプ大統領は新たな騒ぎを起こして目先を変えてしまう。
・6月15日、今度は対中制裁関税を発動すると発表した。中国の知的財産権侵害への制裁措置として、500億ドル分の中国製品に25%の関税を課すという。中国側は即座に報復関税を課して対抗する構え。 今月のトランプ劇場第3幕は、米中対立というわけだ。
・中国の貿易慣行には確かに問題がある。本来ならば、他国と協調して是正を迫るべきであろう。ところがトランプ政権は同盟国を敵に回したうえで、関税を武器に二国間で解決を迫っている。 しかしこれはもったいない話である。関税を支払うのは中国の企業ではない。アメリカの消費者が支払って、アメリカ政府が受け取る。つまりは増税である。しかも輸入物価が上昇して家計を直撃することになる。高関税政策は自傷行為のようなものであり、アメリカ経済にとって確実にマイナスになるだろう。
▽トランプの「トンデモ経済学」がアメリカ経済を台無しに?
・さらにトランプ大統領は、「輸入自動車に25%の関税をかける」ことを検討せよと商務省に指示している。これが実現すれば、年間170万台(4.6兆円)も自動車を対米輸出しているわが国にとっては一大事だ。しかしご安心を。商務省の調査には270日もかかる。結論が出る頃には、秋の中間選挙も終わっているはずだ。
・それ以上に、2017年の米国の自動車輸入は3590億ドルであるから、25%の関税は実に900億ドル(約10兆円!)の増税ということになる。これはさすがに無茶だ。景気を冷やしてしまうだろう。
・トランプ大統領には根本的な誤解があるとしか思えない。 メキシコ国境に壁を作っても、不法移民が減るという保証はない。そして関税を上げたところで、貿易赤字が減るわけではない。今のところアメリカ経済は絶好調が続いているけれども、大統領の「トンデモ経済学」が台無しにしてしまうかもしれない。 ご用心を。
https://www.fnn.jp/posts/00325630HDK

第一の記事で、『ムニューシン米財務長官は「これ以上、巨額の貿易赤字を許容できない」という立場を崩さず、G6の主張に耳を貸さなかった。G7の主要同盟国との関係より、11月の中間選挙を優先するトランプ政権の「米国第一主義」を鮮明にしている』、ムニューシン氏は米国最大の投資銀行、ゴールドマンサックス出身で、少なくとも経済メカニズムに精通している筈である。いくらトランプ政権下にいるとはいえ、『トランプ政権の反経済学の姿勢』、を丸出しにして集中砲火を浴びるとはお粗末極まりない。『米中ハイテク覇権争い』、も米朝首脳会談終了後より鮮明になったようだ。 『中国をめぐる知的財産権問題は、米国だけでなく、日欧も共通の問題を抱えているが、トランプ発の貿易戦争が世界に広がったことで、知財問題をめぐる「対中国包囲網」は形成しにくくなっている』、『地に落ちる超大国の信認』、などは困ったことだ。 『多国間主義の連携で、要の役割を担っているのは日本である。日本の多角的な外交力が試されている』、というのはその通りだろうが、残念ながら余り期待できそうもなさそうだ。
第二の記事で、『制裁理由とされている中国の知的財産権を巡る不公正さこそ、深刻で本質的な問題だ。それは多くの日本企業も直面している大問題である。しかも、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある』、『今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない・・・外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ』、『表向きの美名「知財保護の強化」に危険が潜む』、『知財の訴訟大国で恣意的裁判も』、『特許審査で技術情報の流出リスクも』、などの指摘は、さすが元経産官僚らしく、かなり深い角度から捉えられ、大いに参考になった。やはり中国は、あなどり難い国のようなので、『日本政府も早急にWTO提訴すべき』、というのは大賛成だ。
第三の記事で、『「やんちゃ外交」』、『新たな騒ぎを起こして目先を変える』、などは言い得て妙な表現だ。 『中国の貿易慣行には確かに問題がある。本来ならば、他国と協調して是正を迫るべきであろう。ところがトランプ政権は同盟国を敵に回したうえで、関税を武器に二国間で解決を迫っている。しかしこれはもったいない話である』、『今のところアメリカ経済は絶好調が続いているけれども、大統領の「トンデモ経済学」が台無しにしてしまうかもしれない』、などはその通りだろう。
いずれにしろ、アメリカも困った人物を大統領に戴いたものだ。やれやれ・・・。
タグ:今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない 問題は中国人・中国企業による特許出願には補助金が出されているのだ 深刻な米欧同盟の亀裂 商標権でも中国は出願を補助金で支援して大量出願させ、日本企業で痛い目にあっているのは「今治タオル」など枚挙にいとまがない 新たな騒ぎを起こして目先を変える 吉崎達彦 今のところアメリカ経済は絶好調が続いているけれども、大統領の「トンデモ経済学」が台無しにしてしまうかもしれない (その2)(トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立 試される日本の外交力、対中制裁では解消しない 中国・知財強国の怖さ、トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策) 「トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立、試される日本の外交力」 通商問題 日経ビジネスオンライン 岡部 直明 やんちゃ外交 日本政府も早急にWTO提訴すべき 外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ 知財の訴訟大国で恣意的裁判も 特許件数が異常に多い背景は何か FNN PRIME 表向きの美名「知財保護の強化」に危険が潜む 世界中を相手にトランプ発の貿易戦争を仕掛けた米国が「最大の敗者」になることだ 新規性」の要件が必要なのは当然なのだが、その点の審査が中国・中国企業が出願した案件については甘いとの声も 制裁理由とされている中国の知的財産権を巡る不公正さこそ、深刻で本質的な問題だ。それは多くの日本企業も直面している大問題である。しかも、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある 「対中制裁では解消しない、中国・知財強国の怖さ トランプ政権、約500億ドルの対中制裁関税を7月6日から順次発動」 細川 昌彦 ムニューシン米財務長官は「これ以上、巨額の貿易赤字を許容できない」という立場を崩さず、G6の主張に耳を貸さなかった。G7の主要同盟国との関係より、11月の中間選挙を優先するトランプ政権の「米国第一主義」を鮮明にしている 多国間主義の連携でトランプ封じを 「トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策」 特許審査で技術情報の流出リスクも 地に落ちる超大国の信認 米中ハイテク覇権争い
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ソフトバンクの経営(その7)(闇株新聞の見方:スプリントとTモバイルが合併合意、ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由、孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、昨年12月14日に取上げた。今日は、(その7)(闇株新聞の見方:スプリントとTモバイルが合併合意、ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由、孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…)である。

先ずは、闇株新聞が5月2日付けで掲載した「スプリントとTモバイルが合併合意」を紹介しよう。
・ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)が83.02%を保有する米携帯電話第4位のスプリントと、ドイツテレコムが62.28%を保有する同3位のTモバイルUSが4月30日、2019年前半をめどに合併することに合意したようです。
・米携帯電話は、ベライゾンとAT&Tの2強がトップを争い、次世代通信規格「5G」を巡る巨額投資負担も必要となるため、Tモバイルもスプリントもそれぞれ単独での生き残りが難しいと考えられており、ここ数年は何度か合併交渉を行っていました。
・ソフトバンクは2013年7月に、当時は米携帯電話第3位だったスプリント(当時はスプリント・ネクステル)の78%を216億ドル(当時の為替で約2兆円)で買収すると、翌2014年夏には同4位のTモバイルを買収しようとしましたが、FCC(連邦通信委員会)に自由な価格競争が阻害されると反対され、引き下がりました。
・ところが2015年6月にTモバイルが契約者数でスプリントを抜いて第3位に浮上し、その後もスプリントは引き離されていくばかりでした。それでも強気のソフトバンク・孫社長は、トランプが大統領に当選するとすぐに会いに行き、トランプもFCC委員長に規制緩和派のアジット・パイ氏を指名し、再び合併の機運が高まりました。
・ところが2017年6月に開始された2度目の合併交渉では、すでに業績や時価総額でTモバイルに大きく差をつけられていたにもかかわらず、スプリントが(ソフトバンクが)経営主導権の確保にこだわったため、これも当然のように破談になってしまいました。
・そして今回は3度目の合併交渉が始まったばかりでしたが、スプリントが(ソフトバンクが)あっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導の合併を呑み今回の合意に至りました。
・報道されている合併案とは、Tモバイルとスプリントは完全に合併して新会社を設立し、Tモバイルの親会社であるドイツテレコムが新会社の議決権の41.7%、スプリントの親会社であるソフトバンクが同27.4%を保有し、残る30.9%が両者の少数株主が保有することになります。
・また新会社の取締役14名のうちTモバイル側がCEOのレジャー氏(元・TモバイルCEO)を含む9名を選び、スプリント側は孫社長とクラウレ・スプリントCEOを含む4名だけとなるようです(残る1名は不明です)。またクラウレ氏は「ちゃっかりと」85億円相当のゴールデン・パラシュート(早期にクビになったら支払われる)もせしめたようです。
・また合併比率はTモバイル1株に対してスプリント9.75株の割合で新会社の株式が交付されますが、発表後となる4月30日の終値で見るとスプリントは14%も下落して1株=5.61ドル、Tモバイルも6.2%下落して1株=60.51ドルとなっています。
・両方とも株価が下がってしまった理由は、株式市場では今回の合併もFCCの承認が得られないだろうと懸念しているからのようです。また今回は合併する両社とも親会社が米国外の企業であるため、対米外国投資委員会(CFIUS)の承認も必要となります。
・以前よりも規制緩和的になっているはずのFCCですが、2017年11月にはAT&Tによる850億ドルのタイム・ワーナー買収を、同業買収ではないにも関わらず差し止めてしまい(タイム・ワーナー傘下にトランプ批判の急先鋒であるCNNがあるからだと思いますが)、本当に規制緩和的なのかどうかもわかりません。 つまり承認されるかどうかは、全くの五分五分と考えられています。
・ソフトバンクはスプリントの経営主導権を実質放棄した代わりに、4兆円をこえるスプリントの有利子負債(年間の利払いが2700億円だそうです)を新会社に押し付け、今後も膨大に必要となる「5G」関連の投資も直接は負担する必要がなくなり、直近で14兆円もある連結有利子負債もかなり軽減することができるはずです。
・またソフトバンクといえば本年初めに国内携帯電話事業を別会社にして新規上場させ、その3割程度を売り出して2兆円ほど資金化する計画を発表していました。1月16日付け「ソフトバンクが傘下の携帯事業会社を上場させる?」に書いてあります。
・この辺から考えられることは、孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っており、せっせと投資資金を回収してAIやEVなど世界の新規事業への投資に軸足を移していることになります。また昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようです。
・今回のスプリントは、完全株式交換なのでその「投資収益」を弾くことは難しくなりますが、スプリント買収時はドルを80円台で事前に調達していたはずで、少なくともプラスであることは間違いありません。
・ただソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきた「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」まで投資資金の回収対象と考え、その膨大な利益を提供してくれた国内の利用者に十分な還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む現在の孫社長の姿は、見ていてやや不安になります
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2215.html

次に、6月11日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・週刊ダイヤモンド』6月16日号の第一特集は「成長するならカネ借りろ!借金経営のススメ」です。ショッキングなタイトルに思われるかもしれませんが、実は日本では借金に対する誤解が蔓延しています。特集では良い借金、悪い借金とは何かを解説しています。同時に借金に必須な貸借対照表(BS)読解術も超易しく伝授。また、無担保・無保証でも銀行から融資を引き出す方法など、低金利で借り時の今、うまい借金の仕方も紹介しています。
▽武田薬品3兆円強、 SB15兆円の「借金」の是非
・借金──。この言葉を聞いて、あなたはどんな印象を抱くだろうか。日本では、前向きに捉える人は少数派のはずだ。 昨今、日本企業で巨額の借金をするケースが増加している。 武田薬品工業は6兆8000億円という日本企業では過去最大の買収を実施。その買収資金の半分程度を当面はブリッジローンという借金で賄うという。 また、2016年にはソフトバンクグループが英国の半導体設計企業のアームを3兆3000億円で買収。他にも大きな買収を続けていて、今や借金を示す有利子負債は15兆円に膨れ上がっている。
・それらのケースでは借金の金額の大きさが、メディアなどの批判にさらされることが少なくない。 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も批判を意識してか、決算会見では苦笑しながら「借金王だと思われている」と発言している。
・ところが、企業の資金調達を研究するコーポレートファイナンスの分野を専門とする松田千恵子・首都大学東京大学院教授は「借金を活用して会社を拡大させるソフトバンクの手法はコーポレートファイナンスの教科書通り」と明かす。同趣旨の発言をする専門家は多い。
・なぜ、このような認識の乖離が生まれるのか。 長らく日本では、企業の経営陣もメディアも「無借金経営はいい経営」「借金は悪」というのが常識と考えられてきた。借金の少なさを示す自己資本比率の高さを誇るような経営者も多い。
・背景には、日本では銀行が企業のおカネの面倒を見るメーンバンク制が長く続いてきたことがある。 その銀行は、バブル崩壊後に苦境に陥ると、とにかく企業に対して、返済を進めて筋肉質になることを求めた。また、当時は成長のための借金ではなく、生き残るために銀行に泣き付いて借金をすることもあった。そして、幾つかの企業は借金で首が回らず破綻に追い込まれた。
・そんな期間があまりに長かったため、「借金=悪」という図式が意識に植え付けられているのだ。要は、「バブル崩壊後に銀行が主導した財務リストラ期の感覚のままでいる」(松田教授)わけだ。
・しかし、ファイナンスの専門家や企業で財務を担当するCFO(最高財務責任者)の一部は、「日本では借金に対する誤解が強過ぎる。借金には良い借金と悪い借金があって、きちんと見極めるべき」と力説する。
・詳細は特集の中で述べるが、悪い借金とは経営危機にある会社が生き延びるためにダラダラと続ける借金。良い借金とは、成長の機会を逃さないための借金だ。 借金をしても、それをきっかけに成長し、返済能力も上がる。そんな借金は良い借金といえる。
・実際、日本企業の借金の中身は変化しつつある。財務省の「法人企業統計」によれば、企業の借金の額はリーマンショック後に減少したものの再び増加している。 しかし、中身を見ると、単純に増加しているのではない。金額だけでいえば、リーマンショック前と同水準だが、それを稼ぐ能力(経常利益)で割った値は低下を続けている。 つまり、金額は増えたが、返す能力の裏付けも増しているという意味で、借金の性質が違うのだ。本来なら、借金の良しあしはそのように稼ぐ能力や他に持っている資産なども考慮して、総合的に判断すべきなのだ。
▽ない方が正しい企業経営!? 借金への誤解蔓延する日本
・もう一つ大きな誤解が、株主が出してくれたおカネに対する認識だ。特集で詳細を述べるが、「株主が出してくれたおカネは返さなくていい楽チンなおカネだ」と誤解している経営者がいる。 企業の資金調達では「調達コスト」という概念があり、そのコストはいかなる場合でも「借金<株主からのおカネ」なのである。言い換えれば、借金が少な過ぎるのは高コストであり、効率が悪い。
・最後の誤解は「借金をしている企業は手元におカネがない」というもの。こちらもそうは言い切れず、借金をしつつも手元に現金を置き、有事に備える企業もある。
・というわけで、「うちは無借金経営」と胸を張る経営者がいても、それは必ずしも誇れることではない。成長していて、かつ無借金ならまだしも、座して死を待つような停滞状態で、リスクを取って新事業をやらないのなら、企業の存在意義にも関わる。
・それは中小企業でも同じだ。中小企業への融資の際、銀行は自己資本比率の高さをあまり重視していない。それよりも、その企業の稼ぐ能力であるキャッシュフローに重きを置いている(特集で解説)。
・現在は、未曽有の低金利だが、多くの専門家は長期では金利が上昇するとみている。企業にとっては今が借り時ともいえそうだ。 もちろん、際限なく借金をすることを勧めるわけではない。  成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか。
(これ以降は週刊ダイヤモンドのPRなので省略)
https://diamond.jp/articles/-/172005

第三に、6月19日付け現代ビジネス「孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…」を紹介しよう。
・ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が、みずからの半生を赤裸々に明かしながら、2時間以上にわたって語り続けた貴重な講演録。
・前回は、孫氏が大学生時代に目にした1枚の写真で人生が大きく変わったという知られざるエピソードや、創業初期に大病を患ったことで「何のために働くのか」「何のために生きるのか」を考えざるをえなくなったという話などを紹介した。 今回はそんな孫氏が、数々の経営の修羅場をいかに生き延びてきたかが明かされる。いまや日本を代表する経営者となった孫氏が、ここまで赤裸々に過去を語るのは珍しい。その言葉を、皆さんはどう受け止めるだろうか――。
▽資産1兆円を手にするとどうなるか
・病気から復活した孫氏を待ち受けていたのがインターネットの夜明け。 2000年直前、ドットコムバブルが到来し、ソフトバンクの株価は絶頂に達するのだが……。 ちょうどアメリカではヤフーが生まれたばかりでした。 まだ社員が6〜7名の頃に、我々が資本を100億円投入し、アメリカのヤフーの筆頭株主になりました。そしてYahoo! JAPANをジョイントベンチャーで作りました。
・さらにこのとき、日本のインターネットのインフラは先進国のなかでも、高くて遅い状況だった。そして社会正義にかられて我々はNTTに挑戦しました。これがブロードバンド革命です。  実はこの時ですね、ソフトバンクはその直前の2000年の頃、株価が絶頂期でした。
・僕の個人資産が、ビル・ゲイツを超えたこともあります。世界一の大金持ちはビル・ゲイツでしたが、3日間だけ僕が彼を抜いたことがあります。あまりにも短すぎて記録にもならなかったけど。その時、僕の個人資産は1週間に1兆円ずつ増えていってたんです。
・みなさん、1兆円を手にしたことのある人、手を上げてください? ないでしょ〜。言っとくけど、そんなに簡単に手に入らないからね。それが、1週間に1兆円ずつ増えていくわけですよ。 そうするとね、なんかおかしくなりますよ。もはやお金が記号になるんです。毎週1兆円ずつ増えていくといろんな人が寄ってきます。それこそ満面の笑みで寄ってきます。さっき僕が言っていた人々の笑顔とは違う笑顔でやってくる。ニタ〜って笑って寄ってくる。
・ちょっと人間不信にもなったりして、お金が嫌いにもなりました。そういう贅沢な気持ちもあまり味わったことないでしょ? だから、お金はいろんなところに寄付したいと思っていた。でもどこに寄付するんだろうって考えてたら、神様が答えを出してくれました。ネットバブル崩壊です。
▽どん底を楽しめ
・数ヵ月で株価が真っ逆さまに落ちていった。 99%下がったんですよ。ソフトバンクの全体の時価総額が20兆円だったのが、2000億円まで下がりました。100分の1にまで下がったどん底のところで、僕は「よし!」と思った。
・神様がワシに試練を与えてくれたと思って、これはこれでおもしろい人生じゃないかと。 ついこの間まで、人生が記号のような、銭金が勝手に押し寄せてくるような、そんな状況になっていたのが、どん底に陥ったわけです。逆に闘争心が掻き立てられ、ガァーっとアドレナリンが湧いてきたんです。
・俺はネットバブルで実力以上に評価されたりしたけど、本当の俺の底力を見せてやるぞと思いました。「いよいよ戦うぞ!」というような強烈なやる気が沸き起こってきた。死にかけた男が生き返ったわけですから。なんぼのもんじゃい、会社が潰れてでも戦うぞと。
・どうせ戦うなら日本で1番大きい会社と戦おうと思ったんです。 普通の会社と戦ったら弱者いじめをしているみたいで、なんとなく気がひける。一切の手加減をせずに、全力をあげてぶち当たってやるぞと。 相手は日本一大きな会社。NTTですね。
▽大きい相手に挑め
・日本国政府が筆頭株主の会社で、100年間独占していた会社です。法律で独占のポジションを守られた会社。よし、あいつらのせいで日本のインターネットが遅くて高いなら、これを変えてやると挑戦を決めたわけです。やつらの料金の3分の1……実は4分の1の価格で、通信速度は100倍のサービスに挑戦しました。 3日間で100万件の申し込みがきました。
▽徹底的にやる
・今でこそCMをたくさんやっていますが、当時は宣伝も一切なし。ニュース報道だけで100万件の申し込みが3日間できたんです。革命的な価格と性能だったからきたわけです。 ただ、これをつなぐためにはNTTの局舎に入って、その中で我々の通信機器とNTTの接続ポイントとを繋がなければいけません。こいつらがですね、繋がせないわけですよ。
・技術的にはできるんだけど、先に書類で手続きをしないと繋いでくれない。この書類がまた役所仕事のように遅いわけです。書き間違いがあると全部がやり直し。まあひどいということでブチ切れました。 それで総務省に行って、総務省の課長に何とかしてくれと頼んだんです。あいつらはひどいと。何とかしてくれないなら記者会見をしてやる。 いかにNTTがひどいか、それを管理監督している総務省もいかに無能かということを、全部ぶちまける。そして、記者会見した直後に、俺はここで灯油をかぶって逝きます、と言ったわけです。
・そしたらその課長が「え、ここでですか?」と言うんです。貴様、ここじゃないならいいのか、って腹が立ちましたね。私が机をバンバン叩くので、しまいには課長が泣きだしてしまったんです。冗談抜きで、100万人の人々を待たせていることに責任感と罪悪感を感じていたわけです。
▽挑戦を繰り返せ
・当時は4年間で1000億円の赤字を出しました。しかも、このときは株価が暴落して時価総額が2000億円まで下がっていた。 2000億円しかないのに4年連続で1000億円ずつ赤字を出したら足りないじゃないですか。算数が合わないわけです。なのに、なぜか生き残った。しぶといよね。
・生き残る術は色々と身についているんですけど、とにかくラッキーも含めて生き残りました。どうせ病院で死ぬはずだった俺だから、死ぬ気になって戦って、結果として日本のインターネットはどうなったか。日本は先進国のなかで、世界一安くて、世界一速いブロードバンド大国に生まれかわった。
・みなさんね、日本に住んでいて、インターネットが速いのが当たり前のように思ってるでしょう。当たり前のように、ヤフー、グーグル、楽天が速いと言って使ってるでしょう。誰のおかげだと思います? ちっとは感謝せなあかんよ! ワシが命がけで病院から出てきて戦わなかったら日本は世界一高いままだったかもしれない。
・(聞き手コメント)ブロードバンドへの挑戦に勝った孫氏は、勢いそのままに「次の勝負」に打って出た。あまりに無謀な挑戦に周囲は反対の嵐だったが、じつは孫氏には「秘策」があった。
・(孫氏講演に戻る)ソフトバンクも生き残って、4年経った後にやっと黒字になった。黒字になったと思った瞬間に次の戦いがあった。インターネットはパソコン中心の時代からモバイル中心の時代に変わるぞ、と私が言い出した。 社員や幹部は大慌てですよね。銀行も大慌てでした。やっと4年の赤字から脱したのに、もう1度挑戦すると。病院から復活してね、もう挑戦したくてしょうがなかった。
▽借金は怖くない
・どうせ取り戻した命なんだから、生きているという証が欲しい。生きているという快感を得たい。 だったらもういっちょ勝負するぞということで、ボーダフォンジャパンの買収を行いました。1兆8000億円。当時、うちの会社の時価総額が6000億ぐらいでした。それなのに1兆8000億円の会社を買うわけです。みなさん、この算数できますか? 普通だったら買えないよ。
・ソフトバンクは借金だらけで大丈夫か、と言われてました。みなさん、うちの会社に来るとなると、「ご両親はソフトバンクは大丈夫か? ソフトパンクじゃないのか?」とか言うかもしれません。あそこは借金だらけだと聞いているぞと。
・大丈夫です、借金、慣れてるんです! もうね、借金が多いなんていまに始まったことじゃないから。もうずーっとなんです。しかもはるかに小さい時に、はるかに身の丈を超えた借金を経験している。それでも生き残っているんだから、それなりのノウハウが身についているわけです。買収時にお金は2000億円しかありませんでしたが、1兆8000億円の買い物をしました。どうやって残りの1兆6000億円を手にしたのかというのは、まあいろんな工夫の結果です。
・とにかくやっちまったということです。 そしたら、すぐに週刊誌で「孫正義は1兆円をドブに捨てた」と大々的に書かれて、さらに株価が下がった。1週間で6割株価が下がった。やっと赤字から黒字に戻って、1週間でまた6割株価が下がってしまった。もうめちゃくちゃなジェットコースターですね。株主は怒るは、銀行は怒るわ、幹部も怒るわという状態でした。
・ただ、私には秘策があったんです。当時は誰にも言っていませんでした。ソフトバンクの中でも知っていたのは2〜3人。私には1.8兆円の勝負をする自信があった。 その秘策が、この男であります。 スティーブ・ジョブズ。彼がまだiPhoneを発表する前です。彼に会いに行きました。
▽「男の約束を守れるかい?」
・「スティーブ、これを見てくれ!」と言って、私は手書きの図面を見せたんです。「これを作ってくれ、あんたにしかできないだ。なぜなら、あんたはアイポッドを持っていて、MacのOSを持っているだろ? このアイポッドにMacのOSをくっつけて、アイポッドのディプレイをもう少し大きくする。それに通信機能を入れたら、これはモバイルインターネットマシーンになる。インターネットがPCからモバイルに切り替わるタイミングであんたがこれを作るんだ」と言いました。
・図面を見てくれと渡そうとしたら、「マサ、そんな汚らしいものは引っこめろ」と見てくれないわけです。 俺の書いた図面が気にくわないのはわかった。でも、お前のニタっとしたその笑顔の裏にはきっとこれに相当するものを作っているに違いない。「そうだろ?」と言ったら、「俺は喋らない」と答えたわけです。超秘密主義の男ですからね。
・喋らなくていいから、お前さんが作っているそれが完成したら、日本での独占権は俺にくれ。俺をパートナーとして選んでくれと言ったら「マサ、それじゃあ俺の家に来い」となった。 彼の家の行って続きの話をしました。「わかった。お前に独占権をやる」と言ってくれた。それじゃあスティーブ、ちょっと一筆書いてくれと頼みました。
・スティーブは笑いだして「そんなものは書けない。だいたいお前は携帯会社として日本のライセンスすら持っていないじゃないか。携帯会社にもなっていないのに、独占的によこせ、一筆書けなんて要求しすぎだよ。まず出直して、携帯の電波の許認可をとって、それから戻ってこい。そしたら続きの話をしよう」と言われた。
・よし分かった、あんたの言うことは理にかなっている。だけど、忘れないでくれよ。俺が電波の許認可をもらい、その会社を始めて戻ってきた時には、あんたが俺に独占権をくれると言った約束を果たしてくれよ、と言ったわけです。それから2週間後に1.8兆円でボーダフォンジャパンを買うという契約に調印をして、スティーブのところへ戻っていったわけです。
・「スティーブ覚えているかい? 男の約束を守れるかい?」と言ったら、彼はまたニタっと笑った。「覚えている。俺は約束を守る」と言った。 彼との口約束一つで1.8兆円の賭けにでたわけです。巡り合いというのは面白いですね。彼との巡り会いがなければ1.8兆円の勝負にも出なかったし、今のソフトバンクもないということになります。
・彼がすごいのは、単にアイポッドを電話にしたわけではなくて、ありとあらゆる機能を一つの製品に入れてしまったことです。それがiPhoneだった。おそらく300年後の世界で、名前が残っているとしたらスティーブだと思います。
・レオナルド・ダヴィンチはテクノロジーとアートをクロスオーバーさせた。当時最強のテクノロジーだった医学、物理、化学を操る頭脳をもち、モナリザのようなアートまで書いた。アートとテクノロジーをクロスオーバーさせた最強の1人目がダヴィンチだとすると、2人目はスティーブ・ジョブズだと思います。
・単なる電化製品は世の中にたくさんありますが、アートと呼んでいい初めての製品がiPhoneだったと、私は思いますね。まさに人々のライフスタイルを変えた、尊敬に値する男だと思います。  どんな困難に直面しても、いくら周囲から批判されても、みずからの志を信じて挑戦をやめない――。こんな経営者が1人でも2人でも増えてくれれば、日本経済の未来はもっと明るくなるだろう。(『ソフトバンクキャリアLIVE』の講演にて)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56035

第一の記事で、 『今回は3度目の合併交渉が始まったばかりでしたが、スプリントが(ソフトバンクが)あっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導の合併を呑み今回の合意に至りました』、 『孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っており、せっせと投資資金を回収してAIやEVなど世界の新規事業への投資に軸足を移していることになります。また昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようです』、『両方とも株価が下がってしまった理由は、株式市場では今回の合併もFCCの承認が得られないだろうと懸念しているからのようです。また今回は合併する両社とも親会社が米国外の企業であるため、対米外国投資委員会(CFIUS)の承認も必要となります・・・承認されるかどうかは、全くの五分五分と考えられています』、説得力のある見方だ。 『ソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきた「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」まで投資資金の回収対象と考え、その膨大な利益を提供してくれた国内の利用者に十分な還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む現在の孫社長の姿は、見ていてやや不安になります』、というのもその通りなのかも知れない。
第二の記事で、『「借金を活用して会社を拡大させるソフトバンクの手法はコーポレートファイナンスの教科書通り」』、というのは正論だ。日本では、コーポレートファイナンスの基本的事柄に関する誤解がまかり通っているのは、嘆かわしいことだ。 『本来なら、借金の良しあしはそのように稼ぐ能力や他に持っている資産なども考慮して、総合的に判断すべきなのだ』、『成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか』、などはその通りだ。
第三の記事の、孫正義の講演録はさすが読ませる。どん底まで追い込まれても、フェニックスのように立ち上がっていくねばり強さは、というのは到底、凡人の及ぶところではない。 『ブロードバンド革命』を光回線普及前に、電話回線を利用するADSL方式で、Yahoo-BBとして大々的に売り出した。 『僕の個人資産は1週間に1兆円ずつ増えていってたんです』、というのは、当時のネットバブルの激しさを物語っている。 『総務省の課長に・・・何とかしてくれないなら記者会見をしてやる。いかにNTTがひどいか、それを管理監督している総務省もいかに無能かということを、全部ぶちまける。そして、記者会見した直後に、俺はここで灯油をかぶって逝きます、と言ったわけです・・・しまいには課長が泣きだしてしまったんです』、総務省の課長もさぞかし困ったことだろう。 『ボーダフォンジャパンの買収・・・1兆8000億円』に際して、スティーブ・ジョブズと直談判して、iPhoneの製品化前から日本での独占販売権を手に入れたという、優れた行動力や商売センスはさすがだ。確かに、当初はソフトバンクだけがiPhoneを販売し、ドル箱になっていた。 ジョブズに対し、『アートと呼んでいい初めての製品がiPhoneだったと、私は思いますね。まさに人々のライフスタイルを変えた、尊敬に値する男だと思います』、との賛辞は、身びいきな面を割り引いたとしても、同意できる。
タグ:ソフトバンクキャリアLIVE』の講演 アートと呼んでいい初めての製品がiPhoneだったと、私は思いますね。まさに人々のライフスタイルを変えた、尊敬に値する男だと思います ソフトバンク の経営 (その7)(闇株新聞の見方:スプリントとTモバイルが合併合意、ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由、孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…) 闇株新聞 単にアイポッドを電話にしたわけではなくて、ありとあらゆる機能を一つの製品に入れてしまったことです。それがiPhoneだった 彼との口約束一つで1.8兆円の賭けにでたわけです 「わかった。お前に独占権をやる」と言ってくれた スティーブ・ジョブズ 1兆8000億円 ボーダフォンジャパンの買収 総務省の課長 数ヵ月で株価が真っ逆さまに落ちていった。 99%下がったんですよ その時、僕の個人資産は1週間に1兆円ずつ増えていってたんです NTTに挑戦しました。これがブロードバンド革命 Yahoo! JAPAN 「孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…」 現代ビジネス 成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか 株主が出してくれたおカネに対する認識だ。特集で詳細を述べるが、「株主が出してくれたおカネは返さなくていい楽チンなおカネだ」と誤解している経営者がいる 、「日本では借金に対する誤解が強過ぎる。借金には良い借金と悪い借金があって、きちんと見極めるべき」と力説 松田千恵子・首都大学東京大学院教授は「借金を活用して会社を拡大させるソフトバンクの手法はコーポレートファイナンスの教科書通り」と明かす。同趣旨の発言をする専門家は多い ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由」 ダイヤモンド・オンライン ソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきた「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」まで投資資金の回収対象と考え、その膨大な利益を提供してくれた国内の利用者に十分な還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む現在の孫社長の姿は、見ていてやや不安になります また昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようです 孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っており、せっせと投資資金を回収してAIやEVなど世界の新規事業への投資に軸足を移していることになります 承認されるかどうかは、全くの五分五分と考えられています 両方とも株価が下がってしまった理由は、株式市場では今回の合併もFCCの承認が得られないだろうと懸念しているからのようです 今回は3度目の合併交渉が始まったばかりでしたが、スプリントが(ソフトバンクが)あっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導の合併を呑み今回の合意に至りました ドイツテレコムが62.28%を保有する同3位のTモバイルUS 「スプリントとTモバイルが合併合意」
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日本の政治情勢(その24)(尖閣周辺の領海侵犯が増えているかのように言うデマゴギー、これは深い病だ…文書やデータの改竄に社会が驚かない異常、あまりにも強引過ぎる安倍首相の森友 加計疑惑の幕引き その内幕を暴く) [国内政治]

日本の政治情勢についは、5月26日に取上げた。今日は、(その24)(尖閣周辺の領海侵犯が増えているかのように言うデマゴギー、これは深い病だ…文書やデータの改竄に社会が驚かない異常、あまりにも強引過ぎる安倍首相の森友 加計疑惑の幕引き その内幕を暴く)である。

先ずは、ジャーナリストの高野孟氏が5月24日付け日刊ゲンダイに寄稿した「尖閣周辺の領海侵犯が増えているかのように言うデマゴギー」を紹介しよう。
・北朝鮮の“脅威”がようやく低減してきたら、今度はまた中国の“脅威”に逆戻りである。 安倍晋三首相が20日、6年ぶりに東京湾で行われた海上保安庁の観閲式であいさつし、「我が国の周辺海域を取り巻く情勢は過去に例を見ないほど厳しさを増している」と、相も変わらぬ決まり文句を繰り返した。その証拠として「尖閣周辺では外国公船による領海侵犯が繰り返されている」ことを強調したのだが、本当か。
・海上保安庁のホームページ(HP)に「中国公船等による尖閣諸島周辺の接続水域内入域及び領海侵入隻数(日毎)」というグラフと統計が載っている。 領海は12カイリ、接続水域はそのさらに外側の12カイリで、公海ではあるが一定の管轄権が及ぶ範囲だ。そのそれぞれに中国海警局の巡視船が何月何日に何隻入って来たかを示している。
・ここでは繁雑さを避けて領海侵入分だけを見ると、それが始まったのは、言うまでもなく12年9月の野田政権による「尖閣国有化」からのことで、同10月に5回計19隻、翌年4月に7回25隻、同8月に7回28隻とピークに達した。しかし、それ以後は次第に鎮静し、14年8月以降はだいたいにおいて月3回、1回につき3~4隻のユニットなので計9~12隻ということで推移していた。
・私は3年ほど前に、中国公船の領海侵入が判で押したように月3回であることに疑問を持ち、海上保安庁に問い合わせたが返答がなく、中国人記者を通じて中国側から探ると、「東シナ海を担当する海警局東海分局は、上海、浙江、福建の3総隊を持ち、そのそれぞれが月に1回出ていくので月3回になる。しかも15年以降はその出動を日本海保に『事前通告』し、また領海内にとどまる時間も2時間以内と定め、余計なトラブルを避けるようにしている」とのことだった。
・さらに、改めて海保HPの統計を見ると、17年7月までは上述の月3回ペースが続いていたが、同8月以降、今年4月までは月2回にペースダウンし、5月は21日現在、1回である。明らかに尖閣周辺の情勢は、両国の海上保安当局のあうんの呼吸によるなれ合いで、事実上の「棚上げ」状態が続いている。
・おまけに先の李克強首相の来日で、懸案となっていた南・東シナ海での不測の軍事衝突回避のための日中海空連絡メカニズムの正式調印も決まった。したがって、周辺海域が過去に例のないほど緊迫していて尖閣領海への侵犯も増えているかに言うのは、国民を欺くデマゴギーである。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/229648/1

次に、慶応義塾大学経済学部教授の金子勝氏が5月30日付け日刊ゲンダイに寄稿した「これは深い病だ…文書やデータの改竄に社会が驚かない異常」を紹介しよう。
・いまの日本社会は、文書やデータの改竄が当たり前の社会になっている。 ここ最近だけでも、東洋ゴム、旭化成建材、東芝、神戸製鋼、日産、スバル、三菱マテリアル、東レ……と日本を代表する名だたる大企業が改竄に手を染めている。研究者の世界でも理化学研究所で研究データを改竄。金融機関ではスルガ銀行で貸し付けデータの改竄が行われた。社会に表層的な「成果主義」が蔓延したことと無縁ではないだろう。
・数字を操作して当面乗り切ればいい、どうせバレやしないという態度は、銀行の不良債権問題が深刻化していた25年前にさかのぼる。そうした粉飾が当たり前の社会が行き着いた先が、「官庁の中の官庁」である財務省の公文書改竄なのではないか。国民の血税を預かり、予算を管理する財務省までが数字や事実をごまかすようになったのだ。
・これは深い病だ。何より深刻なのは、企業がデータを改竄しても社会が驚かなくなり、役所が公文書を改竄しても国民がさして怒っていないことだ。公文書は民主主義の土台になるものだ。その公文書を役人が勝手に書き換えたのに、責任を問う声がさほど大きくなっていない。いつの間にか、国民も慣れてしまったのだろうか。
・恐ろしいことに、日大アメフト部の事件を見ていると、スポーツの社会まで事実をねじ曲げるという風潮が伝染しているように見える。どこまでアメフト部の監督とコーチが事実を語っているのか、多くの国民は疑問に感じている。
・モリカケ事件にしろ、企業のデータ改竄にしろ、このままファクトを無視する風潮が当たり前になると、この国は本当に壊れてしまうだろう。
・ただ、一筋の希望が見えるのは、組織の論理に染まらず、圧力にも屈せず、「事実はこうだ」と声を上げる個人が少しずつ出ていることだ。文科省の前事務次官の前川喜平氏、愛媛県の職員と県知事、日大アメフト部の宮川選手、さらにセクハラ被害者として実名で声を上げた狛江市役所の4人の女性職員などである。
・事実の隠蔽やねじ曲げに対して、意を決して「ノー」の意思表示をした勇気ある者たちが出てきている。モリカケ事件も簡単に終わらないだろう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/230050/1

第三に、6月4日付けAERAdotが週刊朝日の記事を転載した「あまりにも強引過ぎる安倍首相の森友、加計疑惑の幕引き その内幕を暴く〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
・愛媛県が告発した備忘録を加計学園の“嘘”として封印。国会でシラを切りとおした安倍晋三首相。検察の不起訴処分と財務省の調査結果の公表で森友文書改ざん問題も幕引きを図った。もはや安倍3選の流れは阻止できないのか。
・政治ジャーナリストの角谷浩一氏がこう指摘する。「財務省内では次の幹部人事とともに、19年10月からの消費増税が最大の関心事になっています。それに麻生(太郎)氏は自分が辞めたら安倍政権は持たないと自ら公言しています。政権維持と、来秋からの消費税アップに道筋をつけるために、大臣の椅子に居座り続けている。そうすれば、自然と安倍3選の流れになるという腹積もりなのでしょう」
・財務省は森友文書の廃棄や改ざんを指示したとして6月4日、佐川宣寿前国税庁長官や理財局の中村稔総務課長らを停職、20人前後の処分と最終報告書を発表する。その一方で、安倍首相は麻生氏を続投せる方針を早々に表明。1日の参院本会議で「麻生財務相には厳正な処分を行った上で、再発防止に全力で取り組んでもらいたい」と語った。
・麻生氏は改ざん問題について「組織的ではなかった」と開き直り、「文書は廃棄した」と虚偽答弁を続けた佐川氏を国税庁長官に栄転させた時には「適材適所」と強弁してきた。公文書管理法に詳しい右崎正博・獨協大名誉教授が言う。「麻生氏に任せていては自分の失敗を糊塗(こと)することばかり考えているので、きちんとした調査も再発防止策も期待できるはずがない。疑惑を受けてきた当人たちの調査結果や処分など、到底受け入れられるはずがありません」
・このまま逃げ得を許してしまうことになるのか。大阪地検特捜部は結局、疑惑に切り込めなかった。国有地を不当な低価格で売却した背任や、決済文書を改ざんした虚偽公文書作成容疑などで告発を受理していたが、佐川氏や財務省職員ら計38人を不起訴処分にした。文書の改ざんが、契約金額や会計処理など根幹部分に及んでいないことが起訴できなかった理由という。
・公用文書毀棄罪で告発状を提出していた神戸学院大学の上脇博之教授が怒る。「昭恵氏が口利きをして、夫人付き政府職員の谷査恵子氏が財務省に問い合わせを行ったことが赤裸々に書いてあったから、財務省は改竄したのです。その事実こそが国民にとっては重要で、昭恵氏が関わったから8億2千万円もの無理な値引きが行われたことが明らかになったわけです。それが罪に問われないなら、口利きする政治家の天国になってしまいます」
・また、検察は交渉記録などが、財務省の管理規則によって保存期間が過ぎた文書は廃棄されなければならないことから、公用文書を廃棄したと認めることは困難だったとの見解を示した。このため、不起訴の判断に至ったと説明した。
・「文書の保存期間が切れていても、交渉記録が職員の手控えや個人メモであっても、国会に提出された時点で公用文書になるはずです。公用文書の定義である『公務所に用に供する文書』ならば、公文書でも私文書でも構わないのです。検察まで忖度したと言われても仕方ありません」(上脇氏)
・元東京地検検事の郷原信郎弁護士はこう見る。「虚偽公文書作成については、検察自身もこれまで捜査報告書をはじめとして、大なり小なり事実に反する書面を作ってきた。だから、そのハードルを下げて摘発の対象にすることはできないだろうと見ていました。しかし、上脇教授が指摘する公用文書毀棄は別です。たとえ財務省にとっては用済みの文書でも、国会から求められて提出したのだから公用文書になるという理屈は十分通る。起訴していれば有罪になったはずです。なぜ起訴しなかったと言えば、最初から全面不起訴の結論ありきだったからです」
・実際に、大審院(最高裁)の判例にも、保存期間を過ぎた文書でも廃棄すれば、毀棄罪に該当することが示されているという。 上脇教授は近日中にも、検察審査会に申し立てを行う予定だ。告発状が受理されれば、検察審で「起訴相当」の議決が出る可能性も十分あるだろう。
・一方、国家戦略特区による、加計学園の獣医学部新設問題でも、安倍首相と加計学園の加計孝太郎理事長の「特別な関係」が愛媛県の備忘録によって暴露された。2015年2月に首相と理事長が面談して獣医大学新設について話し合い、「首相案件」として具体的なレクチャーを受けていたと、記されていたのである。
・だが、5月26日になって加計学園は、FAXで<当時の担当者が実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、県と市に誤った情報を与えてしまった> と愛媛県と今治市に「ウソ」の情報を伝えたと釈明。 5月31日には、加計学園の渡辺事務局長らが、愛媛県と今治市を訪問して、謝罪した。
・記者の質問に渡辺事務局長は、安倍首相と加計理事長の会談について、「(愛媛)県が何もなく書くことはない。たぶん自分が言った」と渡辺事務局長が愛媛県と今治市に「ウソ」を伝えた張本人であることを認めた。 さらに「その場の雰囲気でそう言った」「ウソで認可になったのではない。愛媛県と今治市、加計学園の職員で頑張ってやったから(獣医大学は)できた」と抗弁した。
・その一方で、愛媛県の備忘録に書かれてある内容についてこう強調した。「安倍首相と加計理事長の面談以外については、正しい内容です」
・だが、そもそも愛媛県の備忘録には、愛媛県と今治市に対して加計学園が会合の申し入れをした理由について<加計学園から、理事長と安倍首相との面談結果等について報告したいと申出>と記されていた。 会合も「ウソ」が前提だったのか。
・また、同年3月15日に再度、加計学園と愛媛県と今治市は会合。そこでも<学園理事長と総理との面会を受け、柳瀬秘書官から資料提出の指示あり>などと記されている。 この日の会合でも、渡辺事務局長は「ウソ」をつき続けていたのか。
・記者に問われた渡辺事務局長は、「3年前のことではっきりと覚えていない」としどろもどろ。  安倍首相と加計理事長が面談してないにもかかわらず、「面談したと愛媛県と今治市には伝えた」という要領を得ない回答を繰り返すばかりだった。
・加計学園の職員がこう打ち明ける。「愛媛県文書が出てから渡辺事務局長は血相を変えて対応に追われ会議ばかりやっていましたよ。渡辺事務局長は、加計理事長に忠実で側近中の側近。加計理事長に言われた、指示されたことしか、しない人です。それが、その場の雰囲気で加計理事長に責任が及ぶような安倍首相にかかわるウソを、愛媛県と今治市という役所に話すわけがない」
・渡辺事務局長が加計理事長に引き立てられたのは「酒」だという。「加計理事長が酒を飲みに行くときに連れて行くのが、渡辺事務局長。理事長は2軒、3軒はしごする酒豪。それに渡辺事務局長は文句ひとつ言わず、ずっと付き合うのです。以前は『酒ばっかり飲んでいては病気になるとまずい。運動しないと糖尿病になる』とよく早朝からマラソンしてました。そして、学園にはきちんと朝からきます。
・おまけに、渡辺事務局長は奥様を早く亡くされ、再婚。その相手が加計理事長の信頼が厚い弁護士の親族。渡辺事務局長の息子たちも加計学園系列の職員。身も心も、家族まで加計理事長に捧げるようなものです。だから、自分でウソを言ったことにして、泥をかぶり加計理事長を救ったんじゃないかと、学園ではもっぱらウワサになっている」(前出の職員)
・あまりにも強引過ぎる安倍政権によるもりかけ疑惑の幕引き――。国会での追及の継続も不可欠だが、前出・角谷氏は不安要素をこう語る。「最大の問題は、まだまだ国民の怒りが足りないこと。引き延ばし策で1年以上もやっていれば、国民も飽きてくるという官邸の作戦が奏功してしまっている形です。
・野党では、1年半ぶり行われた党首討論で、森友・加計問題を追及することを避けた国民民主党が、維新のように自民党の補完勢力となる方向に舵を切る可能性もある。公明党や維新がダメになったら、国民民主をアテにしているというシグナルが自民党からも出ています」 安倍独裁をとめる術はないのだろうか。
https://dot.asahi.com/wa/2018060400038.html?page=1

第一の記事で、『中国公船の領海侵入が判で押したように月3回であることに疑問を持ち、海上保安庁に問い合わせたが返答がなく、中国人記者を通じて中国側から探ると、「東シナ海を担当する海警局東海分局は、上海、浙江、福建の3総隊を持ち、そのそれぞれが月に1回出ていくので月3回になる。しかも15年以降はその出動を日本海保に『事前通告』し、また領海内にとどまる時間も2時間以内と定め、余計なトラブルを避けるようにしている」とのことだった・・・(17年)8月以降、今年4月までは月2回にペースダウンし、5月は21日現在、1回である。明らかに尖閣周辺の情勢は、両国の海上保安当局のあうんの呼吸によるなれ合いで、事実上の「棚上げ」状態が続いている』、というのは初めて知り、そうした事態の鎮静化を官邸の意向を忖度して伝えないマスコミにも腹が立った。確かに海上保安庁の当該ホームページでの図ではその通りだ。
http://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/senkaku.html
にも拘わらず、安倍首相が『周辺海域が過去に例のないほど緊迫していて尖閣領海への侵犯も増えているかに言うのは、国民を欺くデマゴギーである』、というのはその通りだ。
第二の記事で、 『いまの日本社会は、文書やデータの改竄が当たり前の社会になっている・・・何より深刻なのは、企業がデータを改竄しても社会が驚かなくなり、役所が公文書を改竄しても国民がさして怒っていないことだ。公文書は民主主義の土台になるものだ。その公文書を役人が勝手に書き換えたのに、責任を問う声がさほど大きくなっていない。いつの間にか、国民も慣れてしまったのだろうか』、という金子氏の強い危機感には深く同意する。『事実の隠蔽やねじ曲げに対して、意を決して「ノー」の意思表示をした勇気ある者たちが出てきている。モリカケ事件も簡単に終わらないだろう』、とかすかながら希望の光もあると指摘してくれたのは、大いなる救いだ。
第三の記事で、『麻生氏は改ざん問題について「組織的ではなかった」と開き直り』、よくぞこんなデタラメ発言を記者は許したものだ。財務局長が直々に大阪財務局に指示し、担当者の自殺まで引き起こしたのは、組織的不祥事の典型だ。『「昭恵氏が口利きをして、夫人付き政府職員の谷査恵子氏が財務省に問い合わせを行ったことが赤裸々に書いてあったから、財務省は改竄したのです。その事実こそが国民にとっては重要で、昭恵氏が関わったから8億2千万円もの無理な値引きが行われたことが明らかになったわけです。それが罪に問われないなら、口利きする政治家の天国になってしまいます」』、『上脇教授が指摘する公用文書毀棄は別です。たとえ財務省にとっては用済みの文書でも、国会から求められて提出したのだから公用文書になるという理屈は十分通る。起訴していれば有罪になったはずです。なぜ起訴しなかったと言えば、最初から全面不起訴の結論ありきだったからです」』などの指摘はその通りだ。 『渡辺事務局長は奥様を早く亡くされ、再婚。その相手が加計理事長の信頼が厚い弁護士の親族。渡辺事務局長の息子たちも加計学園系列の職員。身も心も、家族まで加計理事長に捧げるようなものです。だから、自分でウソを言ったことにして、泥をかぶり加計理事長を救ったんじゃないかと、学園ではもっぱらウワサになっている」』、なるほどである。千載一遇のチャンスで攻勢に出ようとしない国民民主党の姿勢は情けない限りだ。
タグ:国民民主をアテにしているというシグナルが自民党からも出ています 日本の政治情勢 渡辺事務局長は奥様を早く亡くされ、再婚。その相手が加計理事長の信頼が厚い弁護士の親族。渡辺事務局長の息子たちも加計学園系列の職員。身も心も、家族まで加計理事長に捧げるようなものです。だから、自分でウソを言ったことにして、泥をかぶり加計理事長を救ったんじゃないかと、学園ではもっぱらウワサになっている 。「虚偽公文書作成については、検察自身もこれまで捜査報告書をはじめとして、大なり小なり事実に反する書面を作ってきた。だから、そのハードルを下げて摘発の対象にすることはできないだろうと見ていました。しかし、上脇教授が指摘する公用文書毀棄は別です。たとえ財務省にとっては用済みの文書でも、国会から求められて提出したのだから公用文書になるという理屈は十分通る。起訴していれば有罪になったはずです。なぜ起訴しなかったと言えば、最初から全面不起訴の結論ありきだったからです」 「文書の保存期間が切れていても、交渉記録が職員の手控えや個人メモであっても、国会に提出された時点で公用文書になるはずです。公用文書の定義である『公務所に用に供する文書』ならば、公文書でも私文書でも構わないのです。検察まで忖度したと言われても仕方ありません」 (その24)(尖閣周辺の領海侵犯が増えているかのように言うデマゴギー、これは深い病だ…文書やデータの改竄に社会が驚かない異常、あまりにも強引過ぎる安倍首相の森友 加計疑惑の幕引き その内幕を暴く) 昭恵氏が口利きをして、夫人付き政府職員の谷査恵子氏が財務省に問い合わせを行ったことが赤裸々に書いてあったから、財務省は改竄したのです。その事実こそが国民にとっては重要で、昭恵氏が関わったから8億2千万円もの無理な値引きが行われたことが明らかになったわけです。それが罪に問われないなら、口利きする政治家の天国になってしまいます」 麻生氏は改ざん問題について「組織的ではなかった」と開き直り 「あまりにも強引過ぎる安倍首相の森友、加計疑惑の幕引き その内幕を暴く〈週刊朝日〉」 週刊朝日 AERAdot 日刊ゲンダイ 「尖閣周辺の領海侵犯が増えているかのように言うデマゴギー」 事実の隠蔽やねじ曲げに対して、意を決して「ノー」の意思表示をした勇気ある者たちが出てきている。モリカケ事件も簡単に終わらないだろう 一筋の希望が見えるのは 安倍晋三首相 海上保安庁の観閲式であいさつし ・モリカケ事件にしろ、企業のデータ改竄にしろ、このままファクトを無視する風潮が当たり前になると、この国は本当に壊れてしまうだろう 何より深刻なのは、企業がデータを改竄しても社会が驚かなくなり、役所が公文書を改竄しても国民がさして怒っていないことだ いまの日本社会は、文書やデータの改竄が当たり前の社会になっている 「これは深い病だ…文書やデータの改竄に社会が驚かない異常」 金子勝 今年4月までは月2回にペースダウンし、5月は21日現在、1回である。明らかに尖閣周辺の情勢は、両国の海上保安当局のあうんの呼吸によるなれ合いで、事実上の「棚上げ」状態が続いている 、「東シナ海を担当する海警局東海分局は、上海、浙江、福建の3総隊を持ち、そのそれぞれが月に1回出ていくので月3回になる。しかも15年以降はその出動を日本海保に『事前通告』し、また領海内にとどまる時間も2時間以内と定め、余計なトラブルを避けるようにしている」 「中国公船等による尖閣諸島周辺の接続水域内入域及び領海侵入隻数 海上保安庁 高野孟 「我が国の周辺海域を取り巻く情勢は過去に例を見ないほど厳しさを増している」
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誇大広告(その2)(消費者庁が初の措置命令「健康食品」のウソを見抜く方法 教えます コラーゲンで「お肌ぷるぷる」にはなりません、健康食品を信じ込んでいる人の大いなる誤解 青汁・酵素・グルコサミン…危害情報も急増、“最先端”がん治療トラブル) [生活]

誇大広告については、昨年7月17日に取上げた。今日は、(その2)(消費者庁が初の措置命令「健康食品」のウソを見抜く方法 教えます コラーゲンで「お肌ぷるぷる」にはなりません、健康食品を信じ込んでいる人の大いなる誤解 青汁・酵素・グルコサミン…危害情報も急増、“最先端”がん治療トラブル)である。なお、関連する機能性表示食品については、昨年4月10日に取上げた。

先ずは、教育学者・栄養学者で群馬大学名誉教授の髙橋 久仁子氏が昨年11月8日付け現代ビジネスに寄稿した「消費者庁が初の措置命令「健康食品」のウソを見抜く方法、教えます コラーゲンで「お肌ぷるぷる」にはなりません」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2017年11月7日、消費者庁は「飲むだけで痩せられる」などと誤った印象を与える宣伝を繰り返していたとして、大手を含め「機能性表示食品」を扱う16社に対して、再発防止などを求める措置命令を出しました。
・「運動や食事制限なしで痩せられる」とうたっていたにもかかわらず、実際には試験を行った人々が普段以上に運動をしていたなど、科学的な知見とは異なる宣伝を行っていたというのです。
・2015年4月の制度開始以来、機能性表示食品に対する措置命令は初のこと。こうした健康に関する機能をうたった食品に潜む大げさすぎる、まぎらわしい「ウソ」を見抜く方法を、『「健康食品」ウソ・ホント』を上梓した髙橋久仁子氏が明かします。
▽コラーゲンファンには、残念なお知らせです
・「年齢とともに減少する軟骨成分・グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲン。毎日上手に補うことが大切です。快適な毎日をサポートします」とか「高麗人参で健康の悩みがゴッソリ解消!」等々、それを利用しさえすれば若さも元気も取り戻せるかのような広告文言をあちこちで見かけます。
・確かな根拠がないにもかかわらず、多くの人々に信じられている事柄を比喩的に”神話”とよびます。健康に関連する食の情報にもたくさんの”神話”が紛れ込んでいますが、意図的に”神話”をつくって広め、それを広告に使っているのではないかと疑われる事例が、食品の世界には少なからず存在します。
・その代表例の一つが「コラーゲン」です。〈「健康食品」の安全性・有効性情報〉(https://hfnet.nih.go.jp/)というウェブサイト内に「話題の食品・成分」のページがあり、その中に「コラーゲンって本当に効果があるの?」と題する記事が掲載されています(http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail2204.html)。
・そこには「コラーゲンは『皮膚』『骨・軟骨』を構成する物質として、なくてはならないタンパク質なので、『それを食べれば、皮膚や関節によいに違いない』と思うかもしれませんが、残念なことに、現時点での科学的知見では、コラーゲンを食べても『美肌』『関節』に期待する効果が出るかどうかは不明です」とあり、詳しい理由が記されています。
・ところが、ちまたには”コラーゲン神話”が蔓延しており、「コラーゲンでお肌ぷるぷる、しっとりつやつや」など、あたかも美肌効果があるかのような文言をよく見かけます。 私は以前、コラーゲン摂取に美肌効果があるかのように広告する企業に「コラーゲンを食べると肌の状態が改善されるのか」などの質問状を送ったことがあります(2011年)。 回答のあった2社(K社とI社)への質問と返事をご紹介しましょう。
・まずK社には、同社の広告文言に関して「『飲むたびにうるおいを』というのは具体的にどういうことでしょうか」と訊ねました。この質問に対する答えは、「文字通り、飲んでいただいて喉をうるおしてほしいという意味です」でした。
・続いてI社にも、やはり同社の広告文言について、「『おいしくうるおう』とありますが、なにがうるおうのでしょうか」と質問したところ、「止渇作用によって喉をうるおします」との回答がありました。
・いずれの回答もうるおうのは「喉」であり、「肌」にはひと言も触れていません。「うるおい」「うるおう」などの文言を配して広告していながら、このような答えが返ってくるのです。  なるほど、「肌がうるおう」は消費者側の勝手な解釈なのでしょうが、”コラーゲン神話”に便乗して販売しているととられても、仕方がないのではないでしょうか?
▽「効く・効かない」より「安全か」が重要
・コラーゲンに限らず、食品に関する派手な広告や情報に出会って、心動かされそうになったときはどうしたらいいのでしょうか? なによりも大切なのは、「すぐに飛びつかない」ことです。まずは「○○って、何? そんないいことあるの?」と疑ってみましょう。一呼吸置いても、絶対に損はしないのですから
・華々しい効果を謳う「健康食品」やその広告が気になったら、まずは、先ほどもご紹介した国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の国立健康・栄養研究所が公開している〈「健康食品」の安全性・有効性情報〉というウェブサイトを確認するようにしましょう。 同研究所は、「国民の健康の保持・増進及び栄養・食生活に関する調査・研究を行うことにより、公衆衛生の向上及び増進を図る公的機関」であり、信頼度の高い責任ある情報を発信しています。
・上のサイト上で、たくさんの種類の「健康食品」に関する情報を確認することができます。そこで情報をチェックすると、たいていの食品・食品成分の「有効性」に関して、ヒトにおけるきちんとしたデータがないだけでなく、むしろかなりの「危険情報」があることなどがわかります。
・販売企業に電話をして、直接訊ねてみるのも一つの方法です。「これは何に効くのか?」「私の不調が解消されるのか?」などの質問を、しつこいくらいぶつけてみてください。 ほとんどの企業が、明確に「効きます」とは答えないはずです。「効果があったとおっしゃるお客様がたくさんいらっしゃいます」とか「個人差があります」のように、答えをはぐらかすことが多いでしょう。
・企業の対応姿勢から、商品の質を見極めることができるのは、「健康食品」も他の商品と同様です。ただし、場合によっては執拗に勧められることもありえますので、すぐに購入してしまうことのないよう、問い合わせはくれぐれも慎重に行ってください。
・健康食品に関しては、「効く/効かない」がよく話題になりますが、それを論じる前に、「摂取して安全なのか?」をまず問う必要があります。 商品Aを摂取して「影響がなかった場合」には、「摂っても意味がない」と単純に理解できると思います。 では、「影響があった場合」はどうでしょうか。それが「悪い影響」であれば、「有害作用」としてすぐにやめる気になることでしょう。
・問題は、「期待していた影響があった場合」です。 たとえば糖尿病の人が、「これを飲むと血糖値が下がる」といわれてそれを利用したところ、確かに血糖値が下がったような場合です。「血糖値が低下した。だから効いている」と、素直に喜びたくなるのが人情です。しかし、「効いた」と感じたからといって、無条件に継続利用していいわけではありません
・「なぜ血糖値が低下したのか? どんな作用によるのか?」「ひょっとして違法に医薬品が添加されているんじゃないか?」「あるいは、体のどこかの機能を障害したから血糖値が低下したのかもしれない」といった疑問をきちんと検討してみる必要があります。
・医薬品の世界では、「効果が害(副作用)を上回る」なら医薬品として認めるという合意が成り立っています。「健康食品」に関しても、「少々の害があっても、利益があればそれでいいじゃないか」というきわめて乱暴な意見を耳にすることがあります。
・しかし、明白な疾病に対して治療の一環として服用する医薬品とは異なり、「健康食品」は”さらなる健康”を求めて利用するものであるはずです。 そのような目的で利用する商品に、「ここまでの有害作用は目をつぶろう」という”境界線”が存在しうるとは思えません。
▽自分の身は自分で守る
・健康を維持増進する三要素は、あくまでも「栄養・運動・休養」です。これ以外の「何か」が健康維持に必須であるかのように煽りたてて、「健康食品」の消費を増やすことを意図して、2015年に「機能性表示食品」制度が始まりました。
・この制度が誕生する契機となった、2013年6月5日公表の「規制改革に関する答申」の副題が「経済再生への突破口」であることを忘れてはいけません。 世の中に蔓延する「食品成分の機能性幻想」につけ込み、無益どころか有害かもしれない”余計なモノ”を摂取させることで、経済を活性化させようとする人たちにとって、国民の健康は「どうでもいい」ものなのでしょうか?
・コラーゲンにとどまらず、世の中には「本当に効果があるのか疑問」と思わざるを得ない健康食品、商品が多数あります。それらについて、私は『「健康食品」ウソ・ホント』という本にまとめました。ご興味、ご関心のある方に、一読いただければ幸いです。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53446

次に、1月9日付け東洋経済オンライン「健康食品を信じ込んでいる人の大いなる誤解 青汁・酵素・グルコサミン…危害情報も急増」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・5600万人もの日本人が利用する健康食品・サプリメント。インテージの調べによれば、その市場規模は、年間で約1兆5600億円と巨大だ。2015年春に機能性表示食品制度が始まり、メーカーが科学的根拠を国に届ければ健康効果をパッケージに表示できるようになったことで、次々と新商品が登場。今後さらなる市場拡大が予想される。
・だが、その陰で有効性の根拠があやふやな商品が氾濫。さらには健康食品で体調を崩すなどした危害情報も急増している。1月9日発売の『週刊東洋経済』は「間違いだらけの健康常識」を特集。知らないと危ない健康ビジネスの裏側を徹底解剖した。
▽機能性表示食品は開始3年足らずで1200品目以上に
・一般的に健康食品は、「健康の保持・増進に資する食品として販売されるもの」を指す。その中で、「特定の成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の商品」をサプリメントと呼んでいる。 機能性表示食品の品目数は制度開始から3年足らずで1200を突破し、特定保健用食品(トクホ)を上回っている。「手元のピント調節力に」と表示したサプリや、「内臓脂肪を減らす」ヨーグルトなど健康機能をうたう商品が続々と登場している。
・日本通信販売協会の調べによると、健康食品のメーカーが取り扱う成分は青汁とコラーゲンが最も多く、それにグルコサミンが続く。ただ、こうした人気成分の大半は効果の根拠が不明だ。国立健康・栄養研究所のデータベースや、医療関係者も参照する『ナチュラルメディシン・データベース(NMCD)』(日本版の発売元は同文書院)によると、ほとんどの成分の有効性のデータが不十分となっている。
・たとえば、関節痛などの軽減効果をうたい、根強い人気のグルコサミン。同成分には2種類ある。このうちグルコサミン塩酸塩については「データが不十分」(NMCD)。グルコサミン硫酸塩は、「重篤で慢性的な骨関節炎の痛み緩和には効果がないことが示唆されている」(健康・栄養研)という。特集では約40種類の成分・素材を掲載しているが、コラーゲンや水素水、黒酢なども、データが十分でないようだ。
・実際に、健康食品の効果を明確に感じている人は利用者全体の1割程度にすぎない(インテージ調べ)。効果を感じたという人についても、「ほとんどの場合は、(効くと信じて摂取することによって得られる)プラセボ効果だろう」(東京都医師会の尾﨑治夫会長)という指摘がある。 それどころか、危害情報が相次ぐ健康食品もある。
▽青汁で下痢やじんましんなどの事故情報も
・消費者庁のデータバンクによると、便秘やダイエットによいとされる青汁は、下痢やじんましんなどの事故情報が2015年から3年間で300件以上報告されている。同庁消費者安全課の藤田佳代企画官は、「青汁の事故情報は注視しているが、何が原因か不明なため、現時点ではどのように注意喚起してよいかわからない」と頭を悩ませる。青汁の中には数十種類の原材料や成分を含む商品があり、「成分同士が相互作用して体調不良を引き起こす可能性もある」(尾﨑氏)。
・同じく多くの成分を含み、ダイエットや老化防止に効くとうたわれている酵素も、下痢などの危害情報が2015年度に190件あり、2016年度は534件に倍増した(国民生活センター調べ)。健康食品を摂取することで健康を害してしまっては元も子もない。
・こうした被害から身を守るためには、広告や表示の情報を見極めるリテラシーの向上が欠かせない。そもそも健康の大前提は規則正しい食生活と運動、そして睡眠の3要素であり、健康食品だけで健康になろうと考えるのは大間違いだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/203612

第三に、6月5日のNHKNHKクローズアップ現代+「“最先端”がん治療トラブル」を紹介しよう(▽は小見出し、──は聞き手の質問)。
・“最先端”を掲げ、高額な料金がかかるがん治療で、トラブルが起きている。ネット上には “樹状細胞”“遺伝子治療”“NK細胞”など話題の医療用語をちりばめ、患者に期待を抱かせたり、事実と異なるウソや大げさな表現の広告が少なくない。ところが、そうした治療は大半が、有効性や安全性が十分に確認されておらず、保険も使えないものだという。わらにもすがる思いの患者たちは、玉石混交の「情報の海」でおぼれかけている。トラブルにあわないためにはどうすればいいのか?納得のいく治療法を選択するために必要なことを模索する。
・出演者 大野智さん (医師・大阪大学大学院准教授) 竹原慎二さん (元プロボクサー・がんサバイバー)  武田真一・田中泉 (キャスター)
▽“最先端”高額がん治療 トラブルの実態
・働き盛りの夫をがんで亡くした女性です。夫が受けたのは、“最先端”を掲げたがん治療でした。 夫をがんで亡くした女性 「あのとき、命を縮めたのかなって。本当に時が巻き戻せるなら。たぶん一生(悔いが)残ると思います。」
・こちらの女性は、がんの高額な治療法に多額の金をつぎ込み、貯金を取り崩したといいます。 「総額ではどれくらい?」 がん患者 「1,000万円近くいってる。家もなくなるかもしれません。」
・なぜ患者は、最先端を掲げた高額ながん治療に向かうのか。原因は、話題の医療用語をちりばめ、効果を期待させるインターネットの広告や、事実と異なる医師の説明だといいます。 医師 “人に投与できる用の遺伝子治療として、日本で第1号です。”
・。 厚生労働相 担当者 「『治療効果が期待できます』とか『副作用はありません』とか、こういった広告をなくしていきたい。」 がんの治療法を巡る情報の海の中、トラブルをなくすために何が必要なのか?徹底取材します。
・田中:がん治療のうち、国や学会が有効性・安全性を認めたものは「標準治療」と呼ばれ、手術、抗がん剤、放射線などがこれにあたります。この標準治療は「エビデンス」、つまり「科学的根拠」があり、今の時点で最良とされる治療で保険が適用されています(リンク先の図参照)。
・最近では、この青色の部分、最先端の治療法の研究も進み、免疫療法の一部は標準治療になっています。しかし、有効性・安全性が認められていない青の部分でも、効果が高いと期待させるような広告を出して治療を行う医療機関もあり、トラブルが起きています。
・4年前、52歳の夫をがんで亡くした女性です。 52歳の夫を亡くした女性 「これが主人が使っていたサーフボードなんですけど。」 医師から舌がんと診断を受けたとき、夫はステージ3でした。直ちに手術を受けたものの、がんは転移。主治医からは余命半年と告げられました。
・52歳の夫を亡くした女性 「言葉が出なかった。子ども3人いますし、今(夫を)失うわけにはいかない。」 ほかに有効な治療はないのか。頼ったのは、インターネットでした。当時、中学生だった息子が見つけたのは、がん遺伝子治療を掲げるクリニックのホームページ。「最先端の治療」という響きに期待を抱いた女性は、すぐにクリニックを訪れました。説明されたのは、点滴でがん抑制遺伝子を投与するという治療法。費用は、およそ550万円。クリニックの医師から標準治療をやめるよう勧められ、この治療に懸けることにしたといいます。
・52歳の夫を亡くした女性 「『本当によくたどり着きました、もう助かりますよ』という言葉をいただき、(夫は)これで本当に助かるんだという思いで。」
・ところが、期待に反し、がんの進行は止まりませんでした。疑念を抱いた家族は、医師に治療について改めて尋ねました。そのときの音声です。 夫“自分の感触だと、(がんは)小さくなっていないんじゃないかと。” 医師“小さくなっていない?” 夫の姉“よくなるんですかね?” 医師“前回まで順調に増殖を抑えてきているから。思い当たることはないですか?寝不足があったとか、強烈なスポーツをやったとか。” 夫“ないですね。” 
・さらに、点滴で投与しているという遺伝子の効果について、疑問を投げかけると…。 医師 “人に投与できる用の遺伝子治療として、国が初めて認めたのがここね。日本で第1号です。” 夫の姉“そうなんですか、ここが。” 
・しかし実際には、このクリニックの遺伝子治療が国に認められているという事実はありませんでした。まもなく夫は、余命といわれた半年を待たずに亡くなりました。女性と息子は、ネットの情報に頼ったことを今も悔やみ続けています。
・52歳の夫を亡くした女性 「本当に時が巻き戻しできるなら、『何やってんの、何信じてんの』と言いたい。たぶん一生(悔いが)残ると思う。」 女性は、事実と異なる説明により高額な代金を払わされたとして、クリニックを提訴。対するクリニックは、医師の説明が「不適切なものであった」と認めました。当時の治療をどう考えているのか、クリニックに直接問いました。
・患者に対して、効果が十分に証明されていない治療だと伝えたのか?」 電話:クリニック理事長“初めから言っていますからね。我々は最新医療だから、エビデンス(科学的根拠)はないですよと。『必ず治ります』なんていうことは、ひと言も言わないです。” 
・ならば、なぜ認めたのか尋ねると…。 電話:クリニック理事長“(裁判が)長引くほど、彼らは材料にして我々の悪宣伝を流しまくるので。戦う必要はないんで、別にそういう人にはお金を払えばいいことなんで。” 
・国は、標準治療でない高額な治療を巡るトラブルなどが相次いでいる事態を重くみて、医療法を改正。今月(6月)1日から、未承認の医薬品による治療の広告や、ネット上で虚偽や誇大な表現の広告を出すことを禁止しました。
・ゲスト大野智さん(大阪大学大学院 准教授) ゲスト竹原慎二さん(元プロボクサー)
── がんの治療に詳しい、医師の大野さん。有効性が十分には確かめられていない治療を多額の費用で行う、これは違法ではない?
・大野さん:そういった治療を行うこと自体は、医師の裁量権として認められてしまっています。ですので、結論から言えば「違法ではない」ということになります。ですが、今回のケースでも焦点にもなっておりますのが、標準治療などの正確な情報の説明が十分に行われていないケース、そういった説明が不十分なケース、その場合には罪に問われるケースがあるというふうにご理解いただけたらと思います。
── 広告の規制は始まったということだが、その治療内容そのものも適切に規制するということはできないのか?
・大野さん:最近になりまして、「免疫細胞療法」につきましては、再生医療法で厚生労働省も実態の把握というものに今、取り組んでおります。ですが一方で、今回例にありますような遺伝子治療などにつきましては、厚生労働省も実態すら把握できていないのが現状かと思います。
・田中:では現在、最先端の治療法はどこまで有効性が確認されているのでしょうか。まず、遺伝子治療で標準治療とされているものはありません。一方、免疫療法ですが、「オプジーボ」で知られる「免疫チェックポイント阻害剤」などは標準治療として推奨されているものもありますが、それ以外、例えば「樹状細胞ワクチン」や「NK細胞」を使った治療法は、十分に有効性が確認されていません。
・国立がん研究センターの若尾文彦さんは、「有効性・安全性について科学的根拠があり、現在利用できる最良の治療法が標準治療。高いお金を払ったから、よい効果を期待できるわけではない。医療はその点でほかのサービスとは違う」と話しています。
── これだけ最先端の治療が次々と出てくる中で、私たちは何を目安に治療法を選択すればよい?
・大野さん:3つあるかと思います。1つ目は、エビデンス(科学的根拠)が十分にあるかどうか。これは今出てきました若尾先生が作られている、国立がん研究センターのページを確認して、エビデンスがあるかどうか、それを確認するということが1つ。ない場合には少し怪しいと。もう1つは、費用の問題ですね。高額な費用がやはりかかるという場合には少し疑ってかかったほうがいいかなということ。最後に重要なポイントなんですけれども、標準治療を否定しているような場合、これはかなり危険なケースがあるのではないかと思います。
── そしてもう一方、元プロボクサーで、みずからもがんサバイバーでもある竹原さん。ご自身は標準治療に加えて、さまざまな治療法を試された?
・竹原さん:NK細胞の治療もやっておりましたけど、インターネットで調べて、女房がセミナー聞きに行ったんですよ。すごいよかったと。本も出してるから見てって言って、読んだんですよ。「やったらもう絶対に治るんじゃないか」と思うんですよ。それでやっちゃったんですけど。それとあと海藻エキスですか、1本3万するんですけど、24本(買って)。それも飲めば絶対治るんだと、単純なんでしょうね、僕、たぶん。
── でも、それを信じてしまうのは、なぜ?
・竹原さん:やっぱりインターネットを見たり、一番は、不安でしかたないんですよ。「治る」とかそういうのが書いてあれば確かめたくて、飲めば治るんだと信じてしまうんですよね。
── 標準治療は受けたうえで?
・竹原さん:僕の場合は標準治療を受けたあとで、それを確かめましたね。予防のために。
── やっぱり不安だという…。
・竹原さん:不安です。
▽がん代替療法 ネットにあふれる情報
── がんの治療としては、このほかにも健康食品や運動療法など、さまざまな情報が氾濫しているが、これはどう考えたらよい?
・大野さん:保険診療以外のさまざまな施術や療法につきましては、「補完代替療法」と呼ばれております。これら補完代替療法につきましては、残念ながら「がんが治る」というようなことについてのエビデンスがないのが現状です。ただ一方で、患者さんのさまざまな症状を和らげるという点については、エビデンスが最近、出つつあります。ただ、気をつけないといけない点としては、これらの施術や療法、ともすると体に優しいと思いがちなんですが、やはり副作用の問題であったり、今、受けている治療に影響を及ぼす場合もありますので、その点はよく主治医の先生と相談して決めていただけたらというふうに思います。
・田中:実際にこうした情報の海の中で、翻弄されたというがん患者もいます。 血液のがんと診断され、抗がん剤治療を続けている幡野広志さんです。ブログに闘病生活をつづったところ、がんを治す効果があるとうたう健康食品やサプリメントなど、さまざまな勧誘がSNSで送られてきました。中には「闘病ブログに書いてくれれば謝礼8万円を払う」というものもあったといいます。
・がん患者・写真家 幡野広志さん「こういう人たちが、がん患者を苦しめている元凶なんだと思いました。ふだんだったら『そんなわけないじゃん』てはねつけられるんですけど、気分が落ちている時というのは心が揺れますよね。」
── 竹原さんも同じような経験をされたのでは?
・竹原さん:ジムにたくさん物が届きましたね。「宣伝してくれ」、あとは「買ってくれ」とか、たくさん届きましたね。広島から、おふくろが、闘病中なんですけれども、風水の先生連れてきて、悪い所を見てもらって体も触ってもらって、「よし、治った」って。「手術すんなよ」と「手術したら死ぬぞ」って言われて。でも、うそとは(思いつつ)手術はしましたけど、落ち着くんですね、「もう治った」という言葉が。今までもう最悪なことばっかり言われたのに、その先生は「もう大丈夫だ」って言ってくれたんで、それがちょっとほっとするんですよね。本当に心は弱ってるんで、そういうので助かりますね。
── 取材を進めていく中で、その患者が標準治療以外の高額な治療に向かう背景には、医師とのコミュニケーションの問題があることも分かってきました。
▽総額1,000万円! なぜ高額がん治療に?
・卵巣がんの治療を続ける女性です。51歳のとき、がんと診断され、手術・抗がん剤・放射線と、勧められた標準治療はすべて受けました。それでも、がんは転移。主治医から「もう治療法はありません」と告げられました。
・卵巣がんの治療を続ける女性 「もう自分の人生は終わったかなっていう。頭の中真っ白ですね。こっちはわらにもすがるつもりで先生と向き合っていこうと思っていたのに、そんなの言われたときにはショックだったです。」
・女性は医師が自分を見放したと感じ、保険がきかない免疫療法など、最先端を掲げる治療に望みを懸けました。「総額ではどれくらい?」 卵巣がんの治療を続ける女性 「1,000万円近くいってる。家もなくなるかもしれません。」 大切な老後資金ですが、進行を止めたいという思いから、頼るしかないと考えています。
▽“最先端”高額がん治療 トラブルの実態
── 竹原さんも、医師とのやり取りの中でいろいろな体験があると?
・竹原さん:そうですね。心が弱ってるんですよ。そのときに高圧的にこられるんですよ。そうしたらもう、本当に「この人に逆らったら殺されるんじゃないか」っていう気持ちになっちゃうんですよね。もうその先生に質問してもちゃんと返してくれないし、とにかく不信感でいっぱいでしたね。
── やっぱり怖い?
・竹原さん:怖いです。まず病気、がんになったことも怖いし、その先生に逆らったらどうなるんだろうという怖さでいっぱいでしたね。
── なぜこういうことに?
・大野さん:今、プロボクサーのチャンピオンである竹原さんですら「医師が怖い」っていう話を伺って、やはり今の医療現場の中では、例えば患者と医師の力関係というのは、これは無視してはいけない、非常に大きな問題ではないかなというふうに思います。
・さらに医師のほうも、「インフォームド・コンセント」ということで、必要以上に患者さんに詳しく説明をしてしまっている。ともすると、抗がん剤の治療であれば、副作用の説明であったり、場合によっては、命に関わるかもしれない。さらに、その医療の不確実性というところを踏まえると、治るのか治らないかというところについてもやってみないと分からないというような形の説明に、ちょっとならざるをえないという、そういった現状が、やはり医師と患者との間のコミュニケーションがちょっと不十分になってしまってる原因になってるのじゃないかなと思います。
── 患者としては「大丈夫」と言ってもらいたいと思うが…。
・大野さん:今、お話にもありましたけれども、「大丈夫」っていう言葉が、今の医療現場ではほとんど医療者から口にされていないという、それがやはり不安を抱えて病院に来ている患者さんは、よけい不安になってしまっているという、そういった現状があるのではないかなというふうにも思います。
── どうすれば患者が納得して治療を選択できるのか。あふれる情報の中で、思い悩む患者をサポートするための仕組みを取材しました。
▽あふれるがん治療情報 納得して選ぶために
・30年以上にわたりがんの治療に取り組んできた、医師の寺嶋吉保さんです。患者が標準治療以外の高額な治療に向かう理由の1つは、医師が忙しくて患者に寄り添いきれていないからではないかと考えています。
・徳島県立中央病院 寺嶋吉保医師 「やりとりの中で、(患者は)聞きたくても聞けない。すごい不全感をもって(患者が)診察を受けている状況。」 せめて患者が医師や看護師などに悩みを相談できるようにと、週に1度、がん患者サロンを開いています。患者の多くが、新たな治療法が次々と出てくる中で戸惑いを感じていました。
・患者 「何を選んだらいいのか困ってしまう。」 患者 「エビデンス(科学的根拠)のある情報を流してほしい。」
・徳島県立中央病院 寺嶋吉保医師 「(ネットで)検索したら、国立がんセンターのホームページが真ん中に出ますよね。できたらそっちを先に見てください。」 しかし、サロンに参加しない患者も多く、一人一人へのフォローが十分にできないことが課題だといいます。
・そんな中、注目を集めているのが、「キャンサー・ナビゲーション」という制度です。アメリカのがん拠点病院で義務づけられています。国際医療経済学者のアキよしかわさんが、日本で紹介しています。
・国際医療経済学者 アキよしかわさん「どういうふうな治療法があって、どれが適切なのか、医療費はいくらかかるのか、そういうことを相談に乗る人、一緒に話をしてくれる人がナビゲーターの仕事。」 アキさんは3年前、ステージ3の大腸がんと診断され、手術。ハワイで抗がん剤治療を受ける際、ナビゲーターに出会いました。
・これは、病院専属のナビゲーターが、アキさんが海外から来ると知り、受診の前にくれたメールです。 アキさんがベストな状態で医師から最適な治療を受けられるよう希望に合わせてサポートするので、頼ってほしいと書かれていました。
・国際医療経済学者 アキよしかわさん「最初の外来診察の前に連絡が来たのは、すごいと思いました。こういうふうに相手からアプローチしてくれたら、ものすごく行きやすい。敷居が低くなって、気が楽になりました。」
・ナビゲーターは、実際どんなサポートをするのか。アキさんが治療を受けたハワイの病院を訪ねました。この病院では、7人のナビゲーターが常勤で働いています。半数は看護師で、半数はナビゲーターの訓練を受けた一般の人たちです。1人の患者を主に2人で担当。治療に関する情報から生活全般まで、忙しい医師ではフォローしきれない不安や悩みに対処します。
・キャンサー・ナビゲーター「今日は調子どう?」
・がん患者 ドワイト・カガワさん「いいよ。」
・こちらの患者は、肺がんの末期のステージ4。すでに脳にも転移がみられます。看護師のナビゲーターは、患者が医師の説明を理解し治療に納得しているか、丁寧に確認します。
・キャンサー・ナビゲーター「医師は何て?」
・がん患者 ドワイト・カガワさん「明日から使う抗がん剤は私の脳の腫瘍には効かないから、もしかしたら放射線もやるかもと言ってたよ。」
・キャンサー・ナビゲーター「そのとおりね。医師の言ったことをよく理解しているわね。」 そして、患者が抗がん剤の副作用への不安を抱えていることに気づきました。
・キャンサー・ナビゲーター「以前は別の薬と併用したから吐き気や疲れが出やすかったけれど、今回は1種類だけだからずっと楽なはずよ。きっと大丈夫。」 さらに、治療の説明が詳しい学会のサイトも紹介。このサイトはアプリもあるため、家で家族と見てはどうかと勧めました。
・がん患者 ドワイト・カガワさん「ナビゲーターは常に患者の側に立ち、何が起きているのか理解するのを助け、あらゆる手助けをしてくれて、全ての不安を取り除いてくれる存在なんです。」
── 日本でも、がん拠点病院などにがん相談支援センターの設置が義務づけられ、看護師などが常駐し、患者の相談に対応することになっているということだが、患者が納得して治療に向かえるようにするには、何が必要?
・大野さん:今お話がありました、がん相談支援センター、この存在をぜひ知っていただきたいということ。それ以外にも、がん診療拠点病院には「緩和ケアチーム」がございます。そちらも、決して終末期だけではなくて、診断されてからのサポートを受けられます。そのほか民間でも、例えば日本がん治療学会などが「認定がんナビゲーター」などの取り組みもスタートしてきております。
── どんな支援が必要? 
・竹原さん:孤独なんで、やっぱり相談できる場所ですよね。この間、「マギーズ東京」というところに行ったんですけど、本当に相談して、親身にアドバイスもしてくれるんで、そういう場所を見つけてもらいたいと。
── そういうサロンみたいなものが、病院の外にもあるわけですね。
・竹原さん:もう本当に、ああ、病気になる前に行けばよかったなと思いましたね。
── 語り合うということですね。 情報の海に途方に暮れるがん患者の皆さん。あらゆる治療が必ず治るというものではない中で、自分自身で命に関わる選択をしなくてはなりませんよね。患者が適切な情報にアクセスでき、納得いく選択をするための支援が、求められていると思います。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4141/index.html

第一の記事で、 『2017年11月7日、消費者庁は「飲むだけで痩せられる」などと誤った印象を与える宣伝を繰り返していたとして、大手を含め「機能性表示食品」を扱う16社に対して、再発防止などを求める措置命令を出しました』、というのは遅きに失したきらいがある。その後も、相変わらず、テレビでの派手なCMも続いているようだ。 『コラーゲンを食べると肌の状態が改善されるのか」などの質問状を送ったことがあります・・・いずれの回答もうるおうのは「喉」であり、「肌」にはひと言も触れていません。「うるおい」「うるおう」などの文言を配して広告していながら、このような答えが返ってくるのです。 なるほど、「肌がうるおう」は消費者側の勝手な解釈なのでしょうが、”コラーゲン神話”に便乗して販売しているととられても、仕方がないのではないでしょうか?』、『たいていの食品・食品成分の「有効性」に関して、ヒトにおけるきちんとしたデータがないだけでなく、むしろかなりの「危険情報」があることなどがわかります』、全く腹が立つ便乗商法だ。 『この制度が誕生する契機となった、2013年6月5日公表の「規制改革に関する答申」の副題が「経済再生への突破口」であることを忘れてはいけません。 世の中に蔓延する「食品成分の機能性幻想」につけ込み、無益どころか有害かもしれない”余計なモノ”を摂取させることで、経済を活性化させようとする人たちにとって、国民の健康は「どうでもいい」ものなのでしょうか?』、そもそも、体のなかで作られる成分を、直接、口などから摂取したところで、分解されてしまい、成分がきちんと作られる保証はない筈だ。こんないい加減な制度は、速やかに廃止してもらいたいものだ・・・無理だろうけど。
第二の記事で、 『機能性表示食品は開始3年足らずで1200品目以上に』、『青汁は、下痢やじんましんなどの事故情報が2015年から3年間で300件以上報告されている』、というのには驚かされた。青汁はどうも自然食品ではなく、青汁の粉に様々な薬品を添加してあるためだろう。『健康の大前提は規則正しい食生活と運動、そして睡眠の3要素であり、健康食品だけで健康になろうと考えるのは大間違いだ』、というのには強く同意したい。
第三の記事で、 『国は・・・医療法を改正。今月(6月)1日から、未承認の医薬品による治療の広告や、ネット上で虚偽や誇大な表現の広告を出すことを禁止しました』、というのも遅きに失したきらいがあるが、放置するよりはましだ。 まともな医者も、『「インフォームド・コンセント」ということで、必要以上に患者さんに詳しく説明をしてしまっている。ともすると、抗がん剤の治療であれば、副作用の説明であったり、場合によっては、命に関わるかもしれない。さらに、その医療の不確実性というところを踏まえると、治るのか治らないかというところについてもやってみないと分からないというような形の説明に、ちょっとならざるをえないという、そういった現状が、やはり医師と患者との間のコミュニケーションがちょっと不十分になってしまってる原因になってるのじゃないかなと思います』、というのはやむを得ない面がある。『「キャンサー・ナビゲーション」という制度』、は医師では出来ないような患者への親身のアドバイスが出来るだけに、なかなかいい制度だ。自分がガンで世話になる頃までには(すぐかも知れないが)、こうした制度がなるべく整ってほしいものだ。
タグ:がん治療のうち、国や学会が有効性・安全性を認めたものは「標準治療」と呼ばれ、手術、抗がん剤、放射線などがこれにあたります。この標準治療は「エビデンス」、つまり「科学的根拠」があり、今の時点で最良とされる治療で保険が適用されています 医師のほうも、「インフォームド・コンセント」ということで、必要以上に患者さんに詳しく説明をしてしまっている 2017年11月7日、消費者庁は「飲むだけで痩せられる」などと誤った印象を与える宣伝を繰り返していたとして、大手を含め「機能性表示食品」を扱う16社に対して、再発防止などを求める措置命令を出しました 東洋経済オンライン 高いお金を払ったから、よい効果を期待できるわけではない。医療はその点でほかのサービスとは違う 『「健康食品」ウソ・ホント』 明白な疾病に対して治療の一環として服用する医薬品とは異なり、「健康食品」は”さらなる健康”を求めて利用するものであるはずです。 そのような目的で利用する商品に、「ここまでの有害作用は目をつぶろう」という”境界線”が存在しうるとは思えません いずれの回答もうるおうのは「喉」であり、「肌」にはひと言も触れていません。「うるおい」「うるおう」などの文言を配して広告していながら、このような答えが返ってくるのです。  なるほど、「肌がうるおう」は消費者側の勝手な解釈なのでしょうが、”コラーゲン神話”に便乗して販売しているととられても、仕方がないのではないでしょうか? 今月(6月)1日から、未承認の医薬品による治療の広告や、ネット上で虚偽や誇大な表現の広告を出すことを禁止 対するクリニックは、医師の説明が「不適切なものであった」と認めました ちまたには”コラーゲン神話”が蔓延しており、「コラーゲンでお肌ぷるぷる、しっとりつやつや」など、あたかも美肌効果があるかのような文言をよく見かけます 現代ビジネス 有効性・安全性について科学的根拠があり、現在利用できる最良の治療法が標準治療 女性は、事実と異なる説明により高額な代金を払わされたとして、クリニックを提訴 +「“最先端”がん治療トラブル」 髙橋 久仁子 日本でも、がん拠点病院などにがん相談支援センターの設置が義務づけられ、看護師などが常駐し、患者の相談に対応することになっているということだが 機能性表示食品は開始3年足らずで1200品目以上に 「健康食品を信じ込んでいる人の大いなる誤解 青汁・酵素・グルコサミン…危害情報も急増」 誇大広告 NHKNHKクローズアップ現代+ そもそも健康の大前提は規則正しい食生活と運動、そして睡眠の3要素であり、健康食品だけで健康になろうと考えるのは大間違いだ 「消費者庁が初の措置命令「健康食品」のウソを見抜く方法、教えます コラーゲンで「お肌ぷるぷる」にはなりません」 青汁で下痢やじんましんなどの事故情報も 効果を感じたという人についても、「ほとんどの場合は、(効くと信じて摂取することによって得られる)プラセボ効果だろう」(東京都医師会の尾﨑治夫会長) キャンサー・ナビゲーション ともすると、抗がん剤の治療であれば、副作用の説明であったり、場合によっては、命に関わるかもしれない。さらに、その医療の不確実性というところを踏まえると、治るのか治らないかというところについてもやってみないと分からないというような形の説明に、ちょっとならざるをえないという、そういった現状が、やはり医師と患者との間のコミュニケーションがちょっと不十分になってしまってる原因になってるのじゃないかなと思います (その2)(消費者庁が初の措置命令「健康食品」のウソを見抜く方法 教えます コラーゲンで「お肌ぷるぷる」にはなりません、健康食品を信じ込んでいる人の大いなる誤解 青汁・酵素・グルコサミン…危害情報も急増、“最先端”がん治療トラブル)
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外国人労働者問題(その4)(優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?、外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し 政府が政策を「大転換」、介護人材の外国人依存は 苦戦必至 待遇の悪い日本は不利) [経済政策]

外国人労働者問題については、3月26日に取上げた。今日は、(その4)(優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?、外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し 政府が政策を「大転換」、介護人材の外国人依存は 苦戦必至 待遇の悪い日本は不利)である。

先ずは、フリーランスライターの安楽 由紀子氏が5月18日付け東洋経済オンラインで日本で働く外国人3人の座談会をまとめた「 優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?」を紹介しよう’▽は小見出し、――は安楽氏の質問、+は回答内の段落)。
・外資系企業に勤めていなくても、上司や同僚、後輩が外国人、というのはさほど珍しくなくなってきました。人口減が叫ばれる中、優秀な外国人に働いてもらうことは、日本企業が世界で戦ううえでも重要なことだという認識も広がりつつあるようです。
・出身国も滞在期間も職種も異なる3人に、「日本で働くこと」について語ってもらうこの座談会。前回(「日本で働く外国人が苦労した言語じゃない壁」)は、日本で働くうえで大変な点などについて聞きましたが、今回は日本をより働きたい場所にするにはどういう改善が必要かについて意見を聞きました。
▽“外国人”はみんな同じではない
・引き続き、参加していただいたのは、この3人です。
 カルロス・ドンデリス氏 スペイン出身、日本在住歴7年。クラウド名刺管理サービスのSansanでシステムエンジニアとして働いている。
 イブラギモブ・ショハルフベック氏 ウズベキスタン出身、日本在住歴12年。通称ショーン。ヤンマーに入社8年目。マーケティング部の市場調査や競合他社分析の仕事をしている。
 マニッシュ・プラブネ氏 インド出身、日本在住歴20年。アドビシステムズで、ビジネス開発のコンサルティング責任者を務めている。
――日本で外国人が働くために、改善してほしい点はありますか?
・ショハルフベック:長期休暇を制度化してほしいですね。1カ月ほど休んで、故郷のウズベキスタンに帰省したいんです。これまで連休と有給休暇を組み合わせて最長24日間の休暇を取ったことがありますが、それを制度化してもらえたらな、と。
+難しいとは思うけれど、たとえば仕事を見える化したり、共通化したりして、「この人がいないとできない」というものをコントロールできるようになれば、と思うんです。僕だけでなく今後入ってくる後輩たちのためにも、年に1、2回、長期で休んで自国に帰りやすくしてほしい。
・ドンデリス:確かにそうですね。僕が「改善してほしい」というか、「もう少し理解してほしい」と思うのは、当たり前のことではあるんですが、“外国人”はみんな同じではなく、それぞれ違うということですね。
・ドンデリス:よく聞かれるんです、「日本はいつまでですか?」「いつスペインに帰るんですか?」と。僕は特に帰る予定はないのに、外国人はある一定期間だけ日本で仕事をして、そのあとは必ずみんな帰るというイメージがあるようです。でも、日本にずっと住みたい人もいますよ。
・ショハルフベック:わかります。外国人といっても必ずしも母国語は英語ではないのに、「ショーンはTOEIC取らなくてもいいよな」と言われます。やっぱり外国人は英語が話せるというイメージがあるんですね。それぞれ違うのに。
▽優秀なインド人が日本に来ない理由
・プラブネ:私が思うのは、まずどういう人材がほしいか明確にして、そのためにはどうすればいいのか日本人自身が気づいて社会づくりをすべき、ということですね。今、アドビシステムズ、マイクロソフト、グーグルという3社のCEOはインド人です。しかし、インド人は今、積極的に日本で働こうとは思っていない。理由は、外国人には「キャリアの壁」があるのではないか、と思われているから。
+本当にフェアに自分を扱ってくれるのかどうかわからないところに、わざわざ自分の人生を預けられないのです。今後日本が単に働く人数を増やしたいなら、困っている人たちを呼べばいいけれど、優秀な人材に来てほしいのであれば、成果主義に変える必要があるでしょう。ただ、それは外国人が「こう変えろ」というものではなくて、日本人が自ら気づいて、考えて社会づくりをしないといけない。
・ショハルフベック:そうですね。外国に人材を求めるのは、労働者が欲しいのか、プロフェッショナルの人材が欲しいのかということですよね。今後、日本の企業を元気にさせたい、グローバルに展開したいというのであれば、単なる労働ではないと思う。能力、知識、経験ですよね。であれば、それなりのものを提供しないといけない。外国人を雇用する意義、目的ですよね。
+よく聞く話なんですが、日本企業では、いい大学を出たスキルのある外国人社員に通訳をさせていることがある。しかも、違う部署の通訳をさせられることも少なくない。そこで本人のスキルが生かせるわけではないのでそういうのでちょっと嫌になってしまうんです。それはすごくもったいない。
+だから、マニッシュさんが言うように、外国人を雇用するのならばまず目的をハッキリさせなければならない。そして要求があるのであれば、きちんと提供もしないといけないということです。
・プラブネ:「自分のキャリアプランは何なのか」というのを、もっと会社と話せるようにしたいですね。自分を成長させて、それに見合った報酬を得て、一体感を持ってほかの社員と仕事をしていきたいのか、それとも、2、3年のショートタームで働くのか。それによって働き方は決定的に変わってくると思う。日本の会社でもこういう会話は始まってきています。そうじゃないと日本に残っていません(笑)。
+それともう1つ、変えられるのであれば、社内で日本人も英語で会話ができたら、と思う。完璧でなくていい。完璧を求めてしまうと、「自分の英語はまだまだだから」と、話せなくなりますよね。完璧でなくても、言いたいことが伝わればいいと思うくらいで積極的に英語を使うようにすれば、世界にどんどん出ていけるんじゃないかなと思いますね。
▽「グローバル化」の定義って何だ?
・ドンデリス:コミュニケーションさえ取れればいいんですよね。ベンチャーで働いている人やエンジニアは、新しいテクノロジーに関する資料は英語だから、みんな英語を読んで理解することはできる。ただ、しゃべれない。理由は恥ずかしいから。
+でも、たとえば楽天さんは、社内の公用語を英語にしました。そうすると海外の技術者は「日本語は話せないけど、こういう会社なら働きたい」と思うはず。大きい会社だといきなり変えることは難しいかもしれないけど、ベンチャーなど小規模であれば、変えることは比較的簡単だろうし、やったほうがいいと思う。
――言語だけでなく、異文化理解力の大切さに気づいていない企業も多そうです。
・プラブネ:そうですね。「グローバル化」とよく言うけれど、そもそもグローバル化の定義が必要ですね。なぜ「インターナショナル」ではないのか。海外でモノを売りたいということであれば、インターナショナル。グローバルは、世界では“共通認識”なんてありえないということを理解することだと、私は解釈しています。
+自分の言っていることが、いくらロジカルだと思っても、それは自分が今まで経験した、自分の文化をベースにしたものにしかすぎない話であって、真実はどこにもない。認識は、みんなそれぞれバラバラのはずです。 グローバル化にあたっては、それをそのまま受け入れる、何も変えようとしないというスキルが必要。そのスキルは、職場に入って「これからグローバルになります」と言ってできるものではなく、教育の現場から変わらないと難しいと思います。
・プラブネ:ちょっとおもしろいエピソードがあります。私には高校生の娘がいて、東京・江東区のインド系インターナショナルスクールに通っているんですが、この学校ができた2004年当時はインド人生徒だけだったんです。
+でも、2007年ごろインド式計算がブームになって、私自身も関連本を編集したり、本(晋遊舎『インド式計算パズルインドラ―遊びながら数字に強くなる魔法の計算パズル』)を書いたりしたのですが、その頃から日本人の子どもたちが入学するようになったんですよ。
+今、娘のクラスは、14人が日本人。インド人が5人。日本人のほうが多い。この子たちは日本人として日本にいながらインドの文化の中で暮らしているわけです。彼らが世の中に出ていく時にはグローバル人材になっているでしょう。
▽日本は「オンリーワン」になるべき
・プラブネ:そう考えると、海外から人を呼ぶより、自分の国でグローバル人材を育てたほうがいいんじゃないかと思うんです。必ずしも海外から人を呼べば社会がよくなるわけではないですから。異なる文化を我慢するのではなく、受け入れることは結構難しいですからね。
――しかし、今、日本人口が急激に減っています。海外からの雇用や、海外市場への進出は避けられないのでは。
・プラブネ:人口減はいいことじゃないですか。
――え!?いいことですか?
・プラブネ:私は理想、というか、必ずしも悪いことじゃないと思うし、ライフスタイルを見直す機会だと思う。世界で1位になりたいのであれば、それなりの経済パフォーマンスが必要だけれども、SMAPの歌にも「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」とあるでしょう?オンリーワンになれば、人口に頼る必要はありません。
+私は仕事でいろいろな社長さんに会うんですけど、必ず「日本でモノが売れないのは、人口減少が……」という話になります。そうじゃなくて「売れるモノを作ってないだけじゃないの?」と思う。特別なオンリーワンを見つけるといいと思います。
・ショハルフベック:僕は日本に来るまでまったく海外に出ていないんです。でも、日本の大学に来て、めっちゃ人生が変わった。物事をいろいろな立場から見られるようになりました。(出身校の)立命館アジア太平洋大学(APU)には、当時100カ国くらいから学生がきていた。ちょっとしたパーティや食事会でも少なくとも10カ国以上の人が集まるのです。
――国連みたいですね。
・ショハルフベック:いつも冗談で言うんですけど、「APUは十文字原という別府の山にある小さな地球」なんです。ここには日本の文化も入っていない。なので、みんなで一緒に日本の文化も含めていろいろな国の文化を学ぶんです。それを体で感じる。それと比べると、1週間の研修とかで「グローバル」を学ぶのは無理じゃないかと思う。
▽グローバルという言葉は危険?
・プラブネ:カルロスさんの母国スペインも多様性がありますよね。
・ドンデリス:あります。スペインの中でもそうだし、ヨーロッパにおいても周りの国はだいぶ違う。グローバルは、難しい、というか、危ない言葉かもしれない。 たとえば、僕はスペインのほぼ真ん中にあるマドリード出身だけれども、同じスペインでも北と南は文化も考え方もだいぶ違う。そして、もうちょっと北のほうに行くと、フランス、イタリア、南のほうに行くとアフリカがあって、これらの国々もそれぞれ全然違う。
+「グローバル」というと、スペインや周辺国のことだけじゃなくて、アメリカのことも、日本のことも理解していないといけない。外国に住むと、頭の中がいろいろと変わってくる。いろいろな視点が生まれます。今の日本の学生は、留学などをしてそういう体験をしていると思いますので、これから日本もだいぶ変わるのではないでしょうか。少しずつグローバルということも生まれるかもしれません。
・ショハルフベック:ちょっと気をつけてほしいのは、グローバルは大事だけれど、自分のアイデンティティを守ることも大事だということ。外国人を受け入れると同時に、日本らしさも残しておかないといけないですね。僕は日本語を話せるけど日本人じゃなくて、ウズベキスタン人だというアイデンティティを持っているのが大事なんだと思う。
+そのうえで、お互い「違う」ことを受け入れるのが大切です。「あいつは、考え方や文化が違うから合わない」と壁を作るのではなく、自分のアイデンティティを持ちながら、ほかの人も受け入れる。それが大事なんじゃないかと思います。
https://toyokeizai.net/articles/-/220703

次に、ジャーナリストの磯山 友幸氏が6月1日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し、政府が政策を「大転換」」を紹介しよう’▽は小見出し)。
▽建設、農業、宿泊、介護、造船が対象
・深刻な人手不足に対応して、政府が外国人受け入れ政策を「大転換」することが明らかになった。これまで「単純労働」とされる分野での外国人就労は原則禁止されてきたが、新たな在留資格を創設して、そうした分野でも「労働者」として正式に受け入れる。6月中にも閣議決定する「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」に盛り込む。
・新制度は、日本人の就労希望者が少なく、慢性的な人手不足に陥っている「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野を対象に、新設する「特定技能評価試験」(仮称)に合格すれば就労資格を得られるようにする。こうした分野ではこれまで便法として「技能実習制度」を使った事実上の就労が広がっていたが、真正面から「労働者」として受け入れる。今年秋の臨時国会で法律を改正し、2019年4月から実施したい考えだという。
・就労資格を得られるのは最長5年とするが、技能実習生として最長5年滞在した後、新たな就労資格を得れば、10年にわたって滞在できるようになる。企業からすれば長期雇用が実質的に可能になり、技術やノウハウの教育に力を入れられる。大学を卒業した「高度人材」の日本での就職も後押ししていく方針で、日本の職場に本格的に外国人が流入してくることになる。
・法務省がまとめた2017年末の在留外国人数は256万1848人。1年前に比べ7.5%、約18万人も増加した。5年連続で増え続けており、256万人は過去最多だ。厚生労働省に事業所が届け出た外国人労働者は約128万人で、これも過去最多を更新している。
・新制度によって政府は2025年までに5分野で「50万人超」の受け入れを目指すとしている。日本経済新聞の報道によると、「建設では2025年に78万~93万人程度の労働者が不足する見通しで、計30万人の確保を目標にする」という。農業では新資格で2万6000人~8万3000人程度を受け入れるとしている。すでに介護分野では外国人人材の受け入れ拡大を始めており、ここでも外国人労働者が増えることになりそうだ。
・問題は、就労を希望する外国人をどう選別し、受け入れていくか。今後、「特定技能評価試験」で就労に必要な日本語と技能の水準を決めることになるが、それをどの程度の難易度にするかによって流入してくる外国人の「質」は大きく変わる。
▽「なし崩し的な移民」が増える可能性
・素案段階では会話が何とか成り立つ日本語能力試験の「N4」レベルを基準とする方向だが、人手不足が深刻な建設と農業では「N4」まで求めないという声も聞かれる。また、試験の実施も各業界団体に任せる方向のため、人材確保を優先したい業界の意向が反映され、日本語や技能が不十分な人も労働者として入ってきてしまう懸念がある。
・5年あるいは10年にわたって日本で働く外国人が増えれば、日本社会に多くの外国人が入ってくることになる。人手不足の穴を埋める「労働力」としてだけ扱っていると、日本のコミュニティには溶け込まず、集住して外国人街を形成することになりかねない。
・どうせ期限が来れば出身国に帰るのだから構わないと思っていると、5年あるいは10年経つ間に日本で生活基盤が生まれ、なし崩しに定住していくことになりかねない。全員を追い返す、というのは現実にはかなり難しいのだ。また、人口減少が今後本格化する日本では、人手不足がさらに深刻化するのは明らかで、当初は「帰国前提」だった外国人も、5年、10年すれば、戦力として不可欠、ということになるだろう。
・そうした「なし崩し的な移民」が増えれば、かつてドイツなど欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を、日本で繰り返すことになりかねない。労働者として受け入れるだけでなく、「生活者」として受け入れていく必要があるのだ。日本のコミュニティを形成する一員として、権利だけでなく義務も果たしてもらう必要がある。
・それを考える上で重要なのは日本語能力と日本社会に溶け込むための知識を身に付けさせることだ。入国時点(就労時点)ではN4だとしても、その後も日本語教育を義務付けるなど「外国人政策」が不可欠だ。
・ドイツの場合、ドイツに居住し続けようとする外国人には600時間のドイツ語研修を義務付けているほか、ドイツ社会のルールや法律についてのオリエンテーションも義務付けている。このオリエンテーションは当初30時間でスタートしたが、その後60時間、100時間へと拡大される方向にある。つまり、言葉も大事だが、それ以上にコミュニティの一員として溶け込んでもらうことに重点を置いている。
・特に、労働者として入ってきた外国人が結婚して子どもが生まれた場合、その子どもの教育にも力を注ぐ必要が出てくる。国籍が外国人の場合、日本の義務教育の範疇から漏れてしまう。今は各自治体の判断と財政負担で外国人子弟の教育を行っているが、これを国としてどうしていくのか、予算措置を含めて早急に検討していく必要がある。
▽「外国人庁」の創設など体制整備が不可欠
・今回の制度改正によって、高度人材だけ受け入れていくという日本の外国人政策の基本方針が大転換することになる。今後、人口減少が本格化すれば、外国人なしには企業だけでなく社会も成り立たなくなっていくだろう。
・だからこそ、きちんとしたルールに則って外国人を受け入れていくことが重要で、「外国人政策」「移民政策」が不可欠になる。ところが、安倍晋三首相が「いわゆる移民政策は取らない」と言い続けてきたために、日本の外国人政策の議論は大きく立ち遅れている。
・観光や商用などで一時的に滞在するのが前提で、長期にわたって日本に住む外国人の扱いを真正面から議論してこなかったのだ。「移民」という言葉をタブー視したために、実質的な移民の存在に目をつぶってきたのである。
・国連の定義では1年以上にわたってその国に住む外国人は「移民」なのだが、日本では「移民」論議を封じたために、安倍首相が言う「移民」の定義すら曖昧だ。欧州に大量に流入している「難民」とないまぜにして議論しているケースすらある。
・単純労働者を受け入れる政策転換は、事実上「移民」として受け入れることも想定する必要がある。もちろん出稼ぎに来て5年で帰る人がいるのは当然だが、一方で、日本に根を下ろし10年を超えて住むことになる外国人も出てくる。日本企業や地域社会がそうした人たちを必要とする時代になっているのだ。
・1年前、2017年6月に閣議決定された成長戦略では、こう書かれている。「経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める」 その結果、打ち出されるのが、今回の単純労働者も受け入れるという「政策転換」である。
・実は今年2018年2月の国会で、安倍首相の発言に微妙な変化が出始めている。「受け入れた外国人材が、地域における生活者、社会の一員となることも踏まえ、(中略)幅広い観点から検討する必要があると考えています」 移民政策は取らないと言いつつも、日本にやってきた外国人が「生活者」として社会の一員になっていくことを前提とした政策をようやく日本政府も取り始めたということだろう。
・6月に閣議決定される骨太の方針や成長戦略で、外国人材の受け入れについてどこまで踏み込んだ方針が示されるのか。外国人政策は今、入国管理を行う法務省、外国人労働者の実態把握をする厚生労働省、企業の人手不足で外国人受け入れに積極的な経済産業省、外国人教育を考えなければならない文部科学省、国内の治安を預かる警察庁など多くの役所が関与するが、いずれも縦割りでバラバラの対応しかできていない。外国人政策を一元的に扱う「外国人庁」の創設など、欧米並みの体制整備が不可欠だが、そうした方向性を盛り込めるのかどうか。政策の転換に合わせて役所の体制も大きく転換していくことが課題になる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/053100068/?P=1

第三に、大和総研 政策調査部研究員の石橋 未来氏が6月15日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「介護人材の外国人依存は、苦戦必至 待遇の悪い日本は不利 」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・国内の介護人材不足を外国人労働力で補おうとする動きが加速している。だが、同様の取り組みを実施しているドイツは苦戦。まずは介護職の待遇改善が急務だ。 介護分野の人手不足が続いている。厚生労働省の社会保障審議会で2017年に示された資料によると、25年には約38万人の人材が不足する見込みだ。
・こうした状況の中、政府は介護人材不足を外国人労働力で補おうとしている。これまでインドネシア、フィリピンおよびベトナムとのEPA(経済連携協定)に基づき、約3500人の介護福祉士候補者を受け入れてきた。
・さらに17年には外国人技能実習制度に介護職種を追加するなど、受け入れ数を増やす施策を追加した。だが、外国人労働力は日本国内の介護人材不足を解消するのだろうか。先行するドイツの事例を基に考える。
▽ドイツは人材を集められず
・高齢化が進むドイツでも、介護人材の確保は大きな課題である。日本と同様、労働環境の悪さや賃金の低さが国内のなり手不足に直結している。 ドイツの介護現場では、欧州連合(EU)域内の東欧出身者を中心に外国人の就労が目立つ。ドイツの介護職を含むヘルスケア分野の賃金水準は、主な送り出し国であるポーランドやチェコと比較して3倍以上も高いためだ。
・ドイツでは、高齢者ケアの中核を専門介護士が担っており、この専門介護士の確保がとりわけ重要とされている。しかし東欧出身者に専門介護士などの高度人材は少なく、多くは介護アシスタント(1年程度の通常の職業訓練修了レベル)や、それ以下の熟練度の低い職種レベルで就労している。
・ドイツで専門介護士の資格を取得するには原則3年間の養成教育修了後、国家試験に合格する必要があるほか、十分なドイツ語能力も求められる。外国人にとって、そのハードルは高い。 最近では、専門介護士の資格を取得したとしても、EU域内の別の国へ移動する者も増加している。背景には、ドイツの所得の優位性が薄れていることがある。例えば、英国のヘルスケア分野の平均賃金は、ドイツよりやや高い(下のグラフ参照)。加えて、英語という汎用性の高い言語が話されているため、英国への人材の流出が増加している。
▽日本の賃金は他国に比べて低い
・●各国のヘルスケア分野における平均賃金(2014年)(リンク先参照) そこでドイツは近年、人口構成が若い中欧やアジアなどEU域外からの受け入れを増やしている。13年に始まった「トリプル・ウィン・プロジェクト」では、母国での就労が困難なセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどの看護師を、ドイツのヘルスケア分野に受け入れている。
・また、ドイツで就労する専門介護士の確保と定着を目指して、ベトナムや中国の看護養成学校と協定を結び、育成の段階からドイツ語習得だけでなく、文化プログラムなどを組み込んだ支援を制度化している。 さらに専門介護士の資格を取得してドイツの介護現場で一定期間就労するなどの条件をクリアすれば、EU域外出身者にもドイツの永住権が取得できる仕組みを用意する。
・ここまでの取り組みをしているにもかかわらず、現在のところ専門介護士以外の非熟練の介護士を合わせても、人材の流入・定着は十分ではない。ドイツ国内の介護職員数は緩やかに増加傾向にあるものの、介護職員1人当たりの要介護者数は、09年から15年にかけて2.6人のまま変わっていない。
・さらに、送り出し国である東欧諸国の高齢化も、長期的に見ればドイツへの人材流入を抑制する要因となる。東欧諸国でも、人材流出によって自国の高齢化への対応が遅れていることが問題視され始めている。世界保健機関(WHO)は、人材不足に直面する途上国からヘルスケア人材を多く受け入れている加盟国に対し、受け入れを抑制するように求めている。
▽日本は魅力的な職場ではない
・日本でも介護人材不足を補う外国人労働力に期待が高まっている。だが、ドイツの状況を見る限り、人材確保は容易にはいかないだろう。 まず、日本の賃金水準は他の先進国に比べて決して高いとは言えない。ドイツは賃金で優位性が薄れつつあると述べたが、日本の賃金はそのドイツよりもさらに1割以上低い。ドイツへの主な送り出し国は東欧諸国、日本への送り出し国はアジア各国ということを考えると単純な比較はできないが、日本の賃金の魅力は高いとは言えない。
・さらに、厚労省が15年に発表した調査報告書でも、外国の人材は、「待遇」や「言語の違い」を日本の介護分野で働く際のネックだと考えていることが明らかになっている。母国で専門的な看護教育を受けた人材も多く、スキルを生かしきれないストレスも抱えるようだ。
・こうした背景から、日本で介護福祉士の資格を取得しても、習得した日本語能力が自国の日系企業への就職に有利であるからと帰国する人材もいる。北米などのより条件の良い受け入れ国に行くまでの、資金と介護スキルの蓄積と捉えている人も少なくないとみられる。
・つまり、外国人労働者にとって日本の介護事業者で就労することは、母国の同分野で就労するよりは条件が良いものの、他分野や他国と比較すれば、決して大きな利点があるわけではない。人材の送り出し国として期待されるアジア各国にとっては、英語圏で、かつ永住権の取得も可能となる米国やオーストラリア、カナダの方が魅力的に映るだろう。
▽アジア各国も急速に高齢化
・●各国の高齢化率の推移(リンク先参照) さらに、今後はアジア各国も急速に高齢化するため、日本への送り出しが減少する可能性は高まる一方だ。 従って、まずは日本の介護分野への就労について、日本人にとってもマイナスと捉えられている部分から改善すべきだ。
・国内で人材が集まらないような環境であれば、外国人労働者にとっても魅力的ではなく、中長期的な定着など望むべくもない。雇用環境の改善なくして人材の確保は困難といえよう。外国人労働者にとっては、就労の先に永住権、さらにその先に家族や子孫の将来が保障されていることも、必要といえるだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/101700172/061200025/?P=1

第一の記事で、 『“外国人”はみんな同じではない・・・外国人はある一定期間だけ日本で仕事をして、そのあとは必ずみんな帰るというイメージがあるようです。でも、日本にずっと住みたい人もいますよ』、というのは日本人の悪いクセだ。 『インド人は今、積極的に日本で働こうとは思っていない。理由は、外国人には「キャリアの壁」があるのではないか、と思われているから』、『日本は「オンリーワン」になるべき』、『外国人を雇用するのならばまず目的をハッキリさせなければならない。そして要求があるのであれば、きちんと提供もしないといけないということです』、『お互い「違う」ことを受け入れるのが大切です。「あいつは、考え方や文化が違うから合わない」と壁を作るのではなく、自分のアイデンティティを持ちながら、ほかの人も受け入れる。それが大事なんじゃないかと思います』、などの指摘はその通りだ。
第二の記事で、 『どうせ期限が来れば出身国に帰るのだから構わないと思っていると、5年あるいは10年経つ間に日本で生活基盤が生まれ、なし崩しに定住していくことになりかねない。全員を追い返す、というのは現実にはかなり難しいのだ。また、人口減少が今後本格化する日本では、人手不足がさらに深刻化するのは明らかで、当初は「帰国前提」だった外国人も、5年、10年すれば、戦力として不可欠、ということになるだろう。 そうした「なし崩し的な移民」が増えれば、かつてドイツなど欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を、日本で繰り返すことになりかねない。労働者として受け入れるだけでなく、「生活者」として受け入れていく必要があるのだ』、というのは正論だが、政府は難しい問題は先送りして当面の弥縫策に走っているようだ。やがて、そのツケは回ってこざるを得ないだろう。
第三の記事で、『各国のヘルスケア分野における平均賃金(2014年)』、で日本がドイツより低いが、フランスを上回っているので、驚かされた。さらに注を見ると、『日本以外は「介護」に加え、一般診療や歯科などの「医療」も含むヘルスケア分野全体の平均』、となっているので、介護だけでみれば、日本の相対的地位はさらに上がる可能性がある。にわかには信じ難い統計だが、筆者は大和総研研究員なので、とりあえずこれを前提に考えるしかなさそうだ。 『世界保健機関(WHO)は、人材不足に直面する途上国からヘルスケア人材を多く受け入れている加盟国に対し、受け入れを抑制するように求めている』、『今後はアジア各国も急速に高齢化するため、日本への送り出しが減少する可能性は高まる一方だ。 従って、まずは日本の介護分野への就労について、日本人にとってもマイナスと捉えられている部分から改善すべきだ』、『外国人労働者にとっては、就労の先に永住権、さらにその先に家族や子孫の将来が保障されていることも、必要といえるだろ』、などは説得力がある。受け入れるのであれば、国民全体の覚悟が必要になる筈だ。そこを隠したままの政府の安易な考え方は、前述の通り弥縫策の最たるものだ。
タグ:石橋 未来 どうせ期限が来れば出身国に帰るのだから構わないと思っていると、5年あるいは10年経つ間に日本で生活基盤が生まれ、なし崩しに定住していくことになりかねない。全員を追い返す、というのは現実にはかなり難しいのだ。また、人口減少が今後本格化する日本では、人手不足がさらに深刻化するのは明らかで、当初は「帰国前提」だった外国人も、5年、10年すれば、戦力として不可欠、ということになるだろう 東洋経済オンライン 今後はアジア各国も急速に高齢化するため、日本への送り出しが減少する可能性は高まる一方だ 英国のヘルスケア分野の平均賃金は、ドイツよりやや高い(下のグラフ参照)。加えて、英語という汎用性の高い言語が話されているため、英国への人材の流出が増加している そうした「なし崩し的な移民」が増えれば、かつてドイツなど欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を、日本で繰り返すことになりかねない 「外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し、政府が政策を「大転換」」 外国人労働者にとっては、就労の先に永住権、さらにその先に家族や子孫の将来が保障されていることも、必要といえるだろう 日経ビジネスオンライン 「なし崩し的な移民」が増える可能性 「 優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?」 日本は魅力的な職場ではない 磯山 友幸 これまで便法として「技能実習制度」を使った事実上の就労が広がっていたが、真正面から「労働者」として受け入れる 政府が外国人受け入れ政策を「大転換」 外国人労働者問題 最近では、専門介護士の資格を取得したとしても、EU域内の別の国へ移動する者も増加 安楽 由紀子 各国のヘルスケア分野における平均賃金 高齢者ケアの中核を専門介護士が担っており、この専門介護士の確保がとりわけ重要とされている。しかし東欧出身者に専門介護士などの高度人材は少なく、多くは介護アシスタント(1年程度の通常の職業訓練修了レベル)や、それ以下の熟練度の低い職種レベルで就労 ドイツは人材を集められず 「介護人材の外国人依存は、苦戦必至 待遇の悪い日本は不利 」 まずは日本の介護分野への就労について、日本人にとってもマイナスと捉えられている部分から改善すべきだ 僕は特に帰る予定はないのに、外国人はある一定期間だけ日本で仕事をして、そのあとは必ずみんな帰るというイメージがあるようです。でも、日本にずっと住みたい人もいますよ 日本は「オンリーワン」になるべき 世界保健機関(WHO)は、人材不足に直面する途上国からヘルスケア人材を多く受け入れている加盟国に対し、受け入れを抑制するように求めている (その4)(優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?、外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し 政府が政策を「大転換」、介護人材の外国人依存は 苦戦必至 待遇の悪い日本は不利) 国人労働者にとって日本の介護事業者で就労することは、母国の同分野で就労するよりは条件が良いものの、他分野や他国と比較すれば、決して大きな利点があるわけではない インド人は今、積極的に日本で働こうとは思っていない。理由は、外国人には「キャリアの壁」があるのではないか、と思われているから “外国人”はみんな同じではない
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女性活躍(その7)(河合 薫氏の三題:職場に異変?「オス化」した女たちの逆襲、「女は大学行くな」で考える男の言い訳、「女性省」構想は男たちの悪巧み) [社会]

女性活躍については、昨年12月18日に取上げた。今日は、健康社会学者の河合 薫氏が日経ビジネスオンラインに寄稿した3本を、(その7)(河合 薫氏の三題:職場に異変?「オス化」した女たちの逆襲、「女は大学行くな」で考える男の言い訳、「女性省」構想は男たちの悪巧み)として取上げよう。

先ずは、2月6日付け「職場に異変?「オス化」した女たちの逆襲 出世に目覚めた女性は「両性」の良さを併せ持つわけでして…」を紹介しよう。
・「女性社員たちの“オス化”がすごくって、結構、驚いています」── 某大手企業で部長を務める男性はあきれ顔でこう話し始めた。 オス化──。 ふむ。微妙な言い回しである。 数年前なら躊躇なく使っていたけど、ナニかと過敏なこのご時世、不用意に使って大丈夫な言葉なんだろうか?
・実はつい先日も、私がインタビューした女性が、社内の役員会議で“過敏症候群”(←私が勝手に付けた名前です)とおぼしきやりとりがあったと教えてくれた。
 役員A:「“ジジイの壁”は確かにある。でも、“ババアの壁”もあるな」  役員B:「ある、ある」  役員C:「でも、“ババア”はまずいだろう」  役員D:「侮辱的な意味があるからな……」
 女性:「男性はジジイって言われても平気なんですか?」
 役員一同「別に、何も気にならない」  役員C:「比べるのが変だよ!」  役員一同「(大きくうなづく)」
・このやりとりを教えてくれた女性曰く、「女性差別の端っこが垣間見えた気がしました(苦笑)」と。「でも、男の子のいるお母さんは、ババアって言われていますよね。それでもうれしそうに世話を焼いてる」と、笑っていた。 これは拙著『他人をバカにしたがる男たち』の帯に書かれている「職場に社会にはびこるジジイの壁の正体」を見たときのやり取りだそうだ(この会社ではありがたいことに社員教育用にご購入いただいた)。
・ちなみに“ジジイ”とは、「変化を嫌い、自分の保身だけを考え、『会社のため』『キミのため』と言いながら、自分のために既得権益にしがみつき、属性で人を判断し、『下』の人には高圧的な態度をとる人びと」のこと。 ジジイは年配の男性とは限らず、女性にも若者にもジジイはいる。そして、おそらく誰もがジジイ的なものを心の奥底に秘めている(私も含め)。しかしながら、今の日本の職場ヒエラルキーの「上階」が男性で占められているので、“ババア”ではなく“ジジイ”と呼んでいるのだ。
・と、ちょっとばかり脱線してしまったが、要するに良い意味でも悪い意味でも、「女性」にはまるで腫れ物に触るがごとき過敏になっている昨今。“オス化”という表現はやっぱり微妙だ。それでもやはり使います!「メス化する男たち」なんて本もありましたし……。 というわけで、今回は「オス化する女たち」というテーマで、アレコレ考えてみようと思う。
・そもそも何が「オス化」なのか? 冒頭の男性の話をお聞きください。 「一昨年、女性で初の部長が出ました。当時の年齢は52歳です。社内でも女性活躍は進めているんですが、彼女に続く女性が出るか心配だった。 ところが……、それは男の浅はかな考えだったんですよね。 いやね、実はもうひとつ、部長のポストが空く予定なんです。そしたら、驚いたことに50前後の女性たちがいっせいにやる気を見せたんです。といっても、頑張るのはいわゆる裏工作です。出世願望の高い男たちがやってきたような、ゴマスリ、ヨイショ、密告、が始まったんです。
・先日も『相談したいことがある』と、51歳の女性部下に夕飯に誘われました。驚きましたよ。彼女の方から『飲みに行きましょう』なんて話は滅多にないことですから。そしたら、『僕の下でもっと頑張りたい』って言うじゃないですか。こんなこと今まで言われたことないですから、ダブルショックです。
・まぁ、こちらとしてはやる気を出すことも、それを上に訴えるのも大歓迎です。でもね……、密告がスゴい。同僚や後輩女性のことだけじゃなく、同じく次期ポストを狙っているであろう男性社員に関しても『アレがダメ、コレがダメ』とダメだしの連続です。 で、極めつけは『自分はこんなに頑張ってます!』の猛烈アピールです(苦笑)。
・これって、ある意味男社会の悪しき風習なんです。それを女性がやっている。しかも、ひとりじゃない。他の女性たちも雨後の筍のごとく、同じようにアプローチしてくる。いや~~、完全に女性の“オス化”です。
・上にべったりはりついてる粘土層のオヤジ社員は、ヤバいですよ。女性の方が、なんやかんやパワーがあるし、気が利くし、上の扱いも上手い。しかも、彼女たちの密告する内容は、どれもこれも正論。『アナタのおっしゃるとおり!』というばかりで否定のしようがない。粘土層社員が、一掃されるかもしれませんね(苦笑)」 ……以上です。
・補足しておくと、“オス化する女性”の話をしてくれた男性の会社は、日本を代表する大企業だ。他の大企業同様、管理職の女性比率を増やしてきた。ところが、「課長」にはなっても「部長」になりたがらない。「女性初の部長」は、いわば男社会に生き残ったと自他ともに認めるスーパーウーマン。下の世代は、「○○さんのようにはなれない」と事あるごとに昇進を嫌っていたそうだ。
・ところが、その女性たちが豹変した。我も我もと「出世したいです!」オーラを連発し、あまりの露骨さにおののいている、というわけ。 なぜ、今になって女性たちは豹変したのか?  私には、なんとなく彼女たちの気持ちが分かるような気がする。 いろいろな意味で、“狭間”なのだ。 50歳という年齢に加え、社内の女性の数という点でも“狭間”で。
・「自分たちの上の女性」が少ない一方で、「自分たちの下の女性」は多い。つまり、これまで「女性用」として用意されていた椅子に座る倍率が一気に跳ね上がり、下手すれば下に追い越される。「このままで生き残れるのか?」という漠然とした不安が、日増しに強まっているのだろう。
・とはいえ、上のスーパーウーマン世代ほどキャリア意識は高くない。私自身、社会人になったときには「今のような自分」になることなど微塵も想像していなかった。が、気がつけばこの年齢。自分がやってきたことにそれなりの自負もある。 社外には自分と同年代が要職に抜擢され活躍していたり、はたまた自分で新たな道を切り開き、パイオニアとしてがんばっている女性もいる。
・「今、踏んばらなくてどうする? 10年後、いやいやこのままでは5年後もないかも……」 などと自問し、結局のところ前に進むしか選択肢はなく、「うん。自分もがんばろう。もう一踏ん張りしよう」──。 そんな気持ちになっているのだと思う。
・うん、そう。“オス化”という言葉の妥当性は横に置いといても、今いる職場で、とことんやってみようと、腹を決めたのでは? と推察している。 方や男性たちは、これまで女性たちの言動にこれまで頭を悩ませてきた。「女性は自尊心が低い」「女性には男性のような攻撃性がない」「女性は昇進意欲が低い」「女性は不安傾向が強い」「女性はすぐに感情的になる」などなど、「やっぱり女は違うよね」という意見や、「だから女性は……」という嘆きを、これでもか!というくらい聞かされてきた。
・しかしながら、実際にはこういった性格傾向や言動に「男女差はない」。 古くから学者たちがこぞって明らかにしてきた、いくつもの「心理的特性や行動傾向の男女差」に関する研究で得られた統計量を、共通の効果サイズに変換し分布や平均値を算出すると(メタ分析)、男女差は有意でないばかりか、様々な調整要因によって男女差の方向性が逆転することが確かめられているのである。
・わずかに男女差が認められるものでも、男女間の差異は同性内の個人差に比べて小さい。 つまり、現実社会における男女差を説明するために社会心理学者たちが果たした貢献は、男女差がいかに社会的状況に左右されるかを明らかにしたことにある。一般に男女差とされる特性は、多様な要因の影響を受けて出現したもので、環境が変われば消滅する。
・であるからして、女性を取り巻く環境が変わった今。女性の“オス化”現象がおきたとしても不思議でないのである。 ただし、男と女はややこしきもの。「個人特性」ではなく、「ジェンダー・ステレオタイプ」という、いわば“社会のまなざし”からのぞいてみると、ちょっとばかり興味深いことがわかる。
・「ジェンダー・ステレオタイプ」は男性、女性という社会的カテゴリーのメンバーに関する知識構造で、具体的には 
 男性:自信、独立、冒険的、決断、支配、強さ、競争
 女性:配慮、相互依存、温かさ、繊細、養育、従属性、協力 などが含まれる。
・さらにこれらのイメージが、
 男性=「キャリア」「努力」「高権威」
 女性=「家庭」「温かさ」「低権威」 といった性役割的概念と結びつき、規範的性質を含んだものとして保持されていく。
・ジェンダー・ステレオタイプは社会の深部に根付いているので、長期に記憶される無自覚の価値観として刷り込まれる。そのため本人が意識することなく、ジェンダー・ステレオタイプに合致する言動を演じるようになる。
・女性が「子どもが好き」とアピールしたり、親切にふるまったり、外見に注意を払ったり、男性が「リーダーシップ能力」をアピールしたり、決断力を示したり、スポーツにコミットするのも、ジェンダー・ステレオタイプによるものである。 しかも、「異性」を意識すればするほど、自己ジェンダー・ステレオタイプは強化される。心が勝手に動いてしまうのだ。
・例えば、普段料理をしない女性が、彼氏にお弁当を作ったり、バリキャリの女性が「手料理を部下に振る舞う」なんてことも、異性を意識したことで長期記憶が規範的行動として掘り起こされた無意識の結果と考えることができる。
・実際に、男女の権力格差が小さい国(フランス、ベルギー、オランダ、米国)と、大きい国(マレーシア)の学生を対象に検討したところ、前者の女性の方が、自己ジェンダー・ステレオタイプが強い。 一見矛盾した結果に思われるかもしれないけど、男女平等が進めば進むほど、異性と接する機会が増える。自己ジェンダー・ステレオタイプは異性という要因で強化されるので、結果的に「女性はより女らしく」、「男性はより男らしく」、無意識に演じるようになってゆくのである。
・つまり、男女平等化が進み、女性が家庭を飛び出し外で働くようになったことで、女性の“オス化”傾向が認められるものの、それは女性が「女性らしく振る舞う」ことを止めたわけじゃない。ちょっとばかり古いネタだが、1980年代後半にニューヨークのキャリアウーマンがスニーカーで出勤し、オフィスでパンプス履き替えているといったこと話題になったが、まさしくコレ。
・そういえばフランスの女性は強いけど、色っぽい。内面的には男性に同化し、出世志向を強めながらも、オンナを演じる部分は残し続ける。日本にも、こういった女性たちが増えつつあるってこと。「私にはムリ」と尻込みしていた女性が立ち上がれば、保身だけに走り、ジジイの壁に張り付く粘土層社員はかなりヤバい。
・だって、ただの“オス化”ではないのだ。「配慮、相互依存、温かさ、繊細さ」といった女らしさも合わせ持つ。両性。そう“両性化”だ。 もちろんこういった頼もしい女性たちは、女性活躍が進み、女性が育児などで辞める必要のない一部の企業でしか誕生していないのだと思う。
・それでも、個人的には頼もしい女性が一人でも増えればいいなぁと願い、そして、お願いだから彼女たちにはジジイ化だけはしないで欲しいと思う。スカートを履いたオジさんではなく、スカート履いたデキるミドルになって欲しい。
・最後に、男性たちの背筋が凍る話をしておきます。 両生類のサラマンダーにはメスだけの集団がいて、何不自由なく、600万年以上繁栄している。 両生類のサラマンダーはメスだけの集団でも繁殖できる。その理由はオスが生息地に残していくDNAを「盗んでいる」という
・一般的には、メスが産卵を始めるとオスが精子を排出する体外受精で繁殖するのだが、この方法にうんざりしたメスたちが、”こっそりセックス”を試みているのだとか。 しかもその方法がすごい! なんと自分たちの集団に属さないオスが、生息地に残していくDNAを「盗んでいる」というのだ!メスたちはオスが放出した精包(精子が入ったカプセルのようなもの)からDNAを盗み、その後、精子を勝手に使って産卵。
・ただし、DNAの使い道は異なる。「DNAは卵の受精に使うわけではなく、自分自身のゲノムに単に加えている。したがって彼女たちの中には、たいていの動物のように染色体を2本1対ではなく、3本、あるいは4本を1組として持つ個体がいる。 その結果、身体の一部を失っても再生することが可能で、驚くことに、オスとメスがそろっているときよりも1.5倍も速く新しい尾を作り出せる」(「メスしかいないサラマンダー、驚きの利点判明」 ……メス集団、恐るべし!
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/020500142/?P=1

次に、4月17日付け「「女は大学行くな」で考える男の言い訳 6歳の少女が教えてくれた会社が変らない理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「ミドルたちのこれから」についてアレコレ考えてみる。 突然ですが、「あなたはあなたを知っているか?」 そして、 「あなたは変革を担っているだろうか?」
・「もう50年以上自分と付き合ってるんだから、知ってるも何もないだろ?」「少なくとも会社での自分のポジションは、よ~くわかっているぞ(苦笑)」「そうそう。オレたちの時代は終わったってことは知ってる(笑)」「あとは下の世代に迷惑かけないように、息を潜めるだけ」「こんな自分でもさ~、若いときは色々夢見たけどね」「かっこつけて起業とかしても、あんまり上手くいってるヤツいないしな~」「まぁ、給料減っても65歳までは一応いられるんで」 ……なんてことを思っているのであるまいか?
・実は冒頭のメッセージの発信者は、神戸女学院大学と津田塾大学。 言うまでもなくどちらも女子大である。つまり、これらは若い女性たちに送ったもの。が、私は「私たちの世代」へのメッセージとして受け止めるべきと感じた。 少なくとも私は自問した。「私は私をホントに知っているのか? 私は変革を担っているか?」と。
・例えば、こちらが神戸女学院大のメッセージの全文である。JRと阪急電車の車内広告に掲載されているので、ご覧になった方もいるかもしれない。 「女は大学に行くな、」とは、数年前に物議をかわした曽野綾子さんの「女は子どもができたらお辞めなさい」(忘れちゃった方はこちらをどうぞ)を彷彿させるコピーだが、全文を読めば全く真意が異なることがわかる。
・大学の広報担当者はWebニュースのインタビューに、次のように話している。「伝えたいのは『正解がない。その不確かさを、不安ではなく、自由として謳歌するために。』というところです。 大学時代だけではなくその後の人生においても学び続けていってほしいと願っています」
・確かに。自由と言いながらも、若い女性たちは「産めや、働けや」と戦時中並みにプレッシャーをかけられている。「女は大学に行くな、」「私はまだ、私を知らない」という刺激的かつ温かいメッセージは、若い女性たちの心を掴み、「泣いた」「勇気が出た」「かっこよすぎる」などとSNSでは大絶賛。車内で涙が止まらなくなったという女性もいたという。
・でもね、オジさんやオバさんたちだって、正解や当たり前に囚われすぎているように思えてならないのです。 “職場”という狭い世界の中の「自分」しか見えてないんじゃないのか? と。 正解のない時代だからこそ、学び続けなくてはならないのに、私たちオトナは学び続けているのだろうか? 情報過剰社会で「知っている」つもりになっているだけじゃないのか? と。 ………なんてことをついつい考えてしまったのである。
▽梅子氏が「変革の担い手」になれた理由
・奇しくも神戸女学院大がSNSでにぎわっている頃、朝日新聞の特集ページに掲載された「女性の力を信じることがこの国の未来を救う理由」という記事も話題となった。 こちらは津田塾大学が昨年公表した「TSUDA VISION 2030」で掲げた、「変革を担う、女性であること」というステートメントに関する津田塾大学の髙橋裕子学長へのインタビュー記事だ。
・津田塾大学と言えば、津田梅子氏。 いわずもがな津田塾大学の創立者であり、女性教育の先駆者。まさしく変革者である。1871年(明治4年)、梅子氏が6歳だったとき黒田清隆氏が企画した女子留学生に応募。見事、女性として初めての官費留学生5人のうちの1人に選ばれた(最年少)。
・高橋学長によれば「明治の新しい日本を築く人材を育てるには、『優秀な母親』を増やさなければならないという、時代の要請に後押しされた面もあった」とのこと。だが、わずか6歳というまだ母親に甘えたい年齢で渡米し、1882年(明治15年)までの11年間異国で過ごしたというのだから、すごすぎるとしか言いようがない。
・梅子氏は帰国から7年後の1889年(明治22年)7月に再び渡米するのだが、このとき尽力したのが、日本の商業教育に携わっていたウィリアム・コグスウェル・ホイットニー氏の娘クララさん。彼女はブリンマー・カレッジの学長に掛け合い、梅子の学費と寮費の免除という好条件を引き出し、留学が実現したのだ。
・梅子氏はこのときの経験から日本女性留学のための奨学金設立を発起。講演や募金活動などを行い8000ドルを集め、その利子だけで1人の日本人女性をブリンマーに留学させることに成功。「ジャパニーズ・スカラシップ(日本婦人米国奨学金)」と呼ばれたこの奨学金制度は、梅子氏が亡くなったあとも続き、1976年までに計25人の女性を米国に送りだした。
・のちに津田塾の学長を務めた星野あい氏、女性初の国連総会日本政府代表として活躍した藤田たき氏、恵泉女学園を創立した河井道氏、同志社女子専門学校の校長となった松田道氏など、いずれも“時代の当たり前”に囚われなかった女性たちである。
・一方、梅子氏は1899年にイギリスに3度目の留学をし、帰国した翌年の1900年に女子英学塾(のちの津田塾大学)を創立した。「わずか半年の滞在でしたが、その間に梅子はナイチンゲールと面会したり、オックスフォード大学の講義を聴講したりと、生涯忘れられないものになっただろう多くの体験をしています。こうしたすべての出来事が、彼女の背中を強く押した。日本の女性がリーダシップをとれるよう育成していくことに心血を注いだのです」(by 高橋学長)
・大学や政財界のトップが集まる会合で常に“紅一点”という高橋学長は 「男性たちは『女性たち自身が昇進を望まない。人材がいない。女性だからといって下駄を履かせるわけにはいかない』と決まり事のよう人材不足を嘆くが、どれほど十分な教育・訓練そしてインフォーマルなネットワークの機会を女性たちに与えているのか、将来トップになることをどれほど本気で期待されているか?」 と男性たちに問う。
・女性が海外体験をすることも、高等教育を受けることも今よりはるかに困難だった時代に、梅子氏は「人材不足」を言い訳にはしてはいない。「自分以外の誰かのために、広く社会のため」に動き続けたからこそ、不可能を可能にしたのだ。
・「変革を担う、女性であること」という津田塾大学のメッセージは、津田梅子の生き様そのものである。 ただし、これは“津田梅子氏の話”であって、“津田梅子氏だけの話”ではない。日本の女性の話であり、日本の女性だけの話でもない。「私」――。そう、「私」が主語。 先行きの見えない不安な時代だからこそ、オジさんもオバさんも「言い訳をしない自分」を目指すべきことが大切なんじゃないだろうか。
▽9歳のときに米国南部ですごした記憶から
・6歳の黒髪の少女が、親元を離れ、異国の地で暮らす状況をイメージしてほしい。サクセスストーリーは常に前向きなことばかりが語られがちだ。だが、実際には本人が語らなかったさまざまな苦難もあったはずだ。 まったくレベルは違うし、こんなところに自分のことを書くのはおこがましいのだが、9歳のときに米国のアラバマ州ハンツビルのエレメンタリースクールで、私は“初めての外国人”だった。
・初めての日本人ではない。初めての外国人。 米国南部の黒人差別のある土地で、自分の名前を英語で書くのがやっとだった黒髪の少女が、白人だけの、完全アウエーの小学校に転校した。 引っ越して間もない頃に、隣の家のひとつ上のお姉さんが遊びに来てくれたときの話は、ずいぶん前にコラムにも書いた。
・私はコミュニーションが双方向であることを伝えたくて書いたコラムだったが、読者の反応はまったく私の予想していないものだった。 「うちの娘も小3で海外に連れていったので……涙が止まらなくなった」「息子は小6だったけど、現地の学校で適応できずに、日本人学校に通いました。子どもなりにがんばっていたのに……親はそのがんばりがわからなかった」 etc etc――こういったメッセージをくれる人がたくさんいた。
・私は家族と一緒だったが、梅子は単身。私の経験と比べものにならないくらい大変なことがあったこはずだ。まだまだ親離れできない年齢。日本とはまったく違う言語、まったく違う文化の土地で、梅子は笑顔になった回数以上に涙した経験があったに違いない。
・ただ、子どもはしんどさを大人のように口にしない、というかできない。私自身がそうだったから。そして、それを乗り越える強さを人間は持っていて、乗り越えられた時に、「変革の担い手」になれるのだと、私は確信している。
▽ブルナー博士の「知覚とは習慣による解釈」
・「心(mind)は、人間の文化(culture)の使用によって構成され、文化の使用において現実化する。 人間は文化に影響をうけながら、意味づけを行う」(J. Bruner . The Culture of Education, Harvard University Press , 1996)。 これは1990年に文化心理学という新しい 学問を提唱した、米国の教育心理学者J.S.ブルナー博士の言葉である。ブルナーは認知心理学の産みの親であり、文化心理学の育ての親で、「人の知覚」に関する研究に生涯を捧げた。
・心理学における「知覚」とは、「外界からの刺激に意味付けをするまでの過程」のこと。例えば熱いお茶を飲んだ時に、皮膚が「温度が高い」という情報を受け取り、それに対して「熱い」という意味づけを行うまでの過程が知覚だ。
・しかしながら、同じ80度のお茶を飲んでも、その「熱さ」の感じ方は人それぞれ。猫舌なんて言葉があるのもそのためである。 そのときの状況によっても「知覚」は変わる。 いわゆる「慣れ」。人の適応する力が時に私たちの五感を狂わせる。ブルナー博士が「知覚とは習慣(=文化)による解釈」と指摘するように、どっぷりとそこでの“当たり前”に染まっていくのだ。
・集団(=企業)に属する年数が長ければ長いほど、年齢を重れば重ねるほど、自分のコンフォートゾーンから抜け出すのが億劫になる。 そして、自分の価値=所属する会社や肩書きと勘違いし、それが自分の可能性を狭めていることにも気づかない。
・もっと学び、もっと外に出て、もうひとふんばり汗をかき、涙し、自分さえ限界をひかなければ可能性は無限大に広がっていくのに、それができなってしまうのである。 そんな人たちが「自分以外の誰かのために、広く社会のために」など考えられるわけがない。
・私は私を知っているか? 私は変革を担っているか? あなたはどうですか?
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/041600155/?P=1

第三に、6月5日付け「「女性省」構想は男たちの悪巧み ショールームやアリバイ作りはいらない」を紹介しよう。
・今回は「手段と目的」について、アレコレ考えてみる。 先週、自民党の参院政策審議会が、女性に関する政策を総合的に推進する「女性省」の創設を検討していることがわかった。 報道によれば、女性や若者、高齢者の力を引き出す「活力持続型の健康長寿社会」を目標に設定。厚生労働省や内閣府にある女性施策関連部署を一省に再編するらしい。
・またか、というのが正直な感想である。 思い起こせば4年前の2014年12月。「女性活躍担当大臣」が創設され、有村治子氏が就任した。 それまでの「男女共同参画担当」との違いが全く分からないまま、“女性活躍担当大臣様”は、自称“トイレ大臣”となった。
・「トイレは毎日お世話になっているもの。暮らしの質を高めるには、トイレの空間を変えていくことが大切。トイレ大臣と呼ばれるくらいやります!」 と、奇想天外な政策を進めたのだ。 “トイレ大臣”の発案は「ジャパン・トイレ・チャレンジ」と銘打たれ、20年の東京五輪開催時に国内主要空港で高機能トイレの設置したり、政府開発援助(ODA)を通じた途上国でのトイレ整備を進めたりするほか、「日本トイレ大賞」を公募。
・16年3月24日に更新された首相官邸ホームページには、「『日本トイレ大賞』には、378件ものご応募をいただき、その中から28件の受賞者を決定いたしました! 国立新美術館において、「日本トイレ大賞」表彰式及びシンポジウムを開催し、受賞者の方々には有村治子女性活躍担当大臣から賞状が授与されました!」 と、意気揚々と記載されている(ここを参照)。
・なるほど。単なる“思いついたでショー(賞)”で盛り上がったわけだ。 きれいで使いやすいトイレを増やすのは多いに結構だが、「女性管理職30%」という数値目標を、なぜ、事実上断念した? 待機児童問題は? 女性の暮らしの質ってナニ?
・結局のところ、なにひとつ変わった感がないまま、“トイレ大臣”はフェードアウトした。有村氏自身もお子さんを持つワーキングマザーなのに。なぜ、こうなってしまうのか? 全くもって意味不明だ。
・今年の3月8日の「国際女性の日」、野田聖子総務大臣(女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣)は、「女性の就業者数はこの5年間で約200万人増加し、子育て期の女性の就業率も上昇するなど成果は着実にあがっています」 とのメッセージを出した。 が、その半数超は非正規である。
▽「ナニかやってます!」とアピールすることが目的
・大学進学率は「男子55.4%、女子は56.6%(内9.3%は短大)」でほぼ一緒。さらに、共働き世帯と専業主婦世帯の割合がこれだけ開いている状況下で、いったいなぜ? 「女性は世帯主としてじゃなく、家計をサポートするためのパート・アルバイトが多いから」と指摘もあるが、貧困世帯率は男性単独世帯38.6%、女性単独世帯にいたっては59.1%。18歳未満の子と1人親の世帯に限ると貧困率は54.6%と半分を超える(ここを参照、12年、OECD統計)。
・つまり、あれだ。「女性活躍」とは「ナニかやってます!」とアピールすることが目的であり、格差是正のための手段ではない。「女性の暮らしの質を向上させましょう!」と狼煙だけあげ、ホントに向上したかどうかなんてどうでもいい。 「女性」という言葉を使うこと自体に意味があるのだろうね、きっと。
・「ホラ、セクハラ問題とかで、女の人たちに嫌われちゃったし~」「そうそう。いろんな国にあるしさ~」「そうだよ、国連で言っちゃったし、世界のアピールにもなるぞ!」(関連情報はここ) 「年明けに『女性が輝く社会』の実現に向けて昼食会もやったしね」(関連情報はここ) 「よし、女性省だ!」「おう、女性省ね!」「とりあえずは参議院から意見書ってカタチで出したらどう?」「いいね」「うん、いいね」「女性省の考えは、いいね」ってことなのだろう。
・私は数年前までは、どんなカタチであれ“風”が吹くことは悪くないと、考えていた。「転換期だから変化はすべての人に平等にはこない。でも、必ず良い方向に向く」と。
・が、今は違う。偉い人たちの“ショールーム“信仰に、うんざりしている。「『女性』という言葉を都合よく使うのをやめてくれ」と。内閣支持率アップのための女性枠を設け、“ショーケース”に女性大臣を飾ったり、「女性」を持ち上げドヤ顔するジジイどもに辟易している。「女性活躍」の先頭に立つ“女性政治家”たちも例外ではない。
・だいたいなぜ、「女性」なんだ? 1999年6月に公布・施行された「男女共同参画社会基本法」では、男女共同参画社会をこう定義している。「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」 女性だけじゃない。男女。男女が均等、かつ共に責任を持つ社会だ。
▽ナショナル・マシーナリーの役割とは
・各国の「女性省」もすべて「ナショナル・マシーナリー」としての「女性省」である。ナショナル・マシーナリーは、ジェンダー平等に関する直接の政策立案・調整機関。形態は女性省や女性課題省などの省庁のほか、行政機関や議会内の委員会、オンブズマン、大統領付きのアドバイザーなど国によって異なるが、取り組むのはむしろ「男性問題」がメインだ。
・女性が仕事と家庭の両立をするために、男性の育児休暇の取得を増やす。単なる数字目標を設定するだけではなく、実効性をもたせるために義務化する。「ケア労働」に価値を置き、長時間労働をなくす(こちらに詳細に書いてあるのでお読みください。男だ女はもう「114」。埋まらぬ日本の格差問題)。「もう1人産もう」と思えるように、子育てや教育予算を徹底して増やす。「女性向けの仕事」とされてきた仕事の賃金を上げて、男性が「生涯の仕事」と思えるようにする。 etc……。
・男性と女性という性で何がしかの「差別」がないかどうかの「ファクト」を確実に捉えた上で、「女性省」に「権限」を与え、社会を変える。ナショナル・マシーナリーとはそのための機関だ。日本のように“ショールーム”的発想で設置されているワケじゃない……。あたり前だけど。
・例えば、
 +カナダには内閣の中に女性の地位担当大臣と、閣議に出席して発言する権限を有する専任の女性の地位副大臣がいる。その下に女性の地位庁(Status of Women Canada)が設置されている(1976年~)。
 +フィリピンでは、「フィリピン女性の役割国内委員会」が設置され(1975年~)、徹底的にジェンダー問題に関するモニタリングと、政策分析、調査研究を行っている。
 +韓国には、政務長官室というのがあり、これは官房長官が2人いて、その2人目が女性問題担当の専任大臣という位置づけである(1988年~)
・これはごく一部だが、世界中の国々が1970年代後半にナショナル・マシーナリーを設置し女性問題に取り組み、1990年代に入ってからは男・女の二分法から脱却し、ジェンダー平等という立場に徹している。 日本と逆。2000年初頭は「男女平等」という言葉を多用し、その後一瞬「ジェンダー平等」が使われたけど、気がつけば「女性」。女性、女性、女性。困ったことが起きる度に「女性」が持ち上げられる。
・そして、「女性」連呼→女vs男にうんざり→拒絶→解決すべき問題は置き去りにされる→女性の権利主張→「女性」連呼…… という完全なる悪循環が繰り返され、ますます女性問題の解決は遠のいていくのである。
・日本が「女性活躍」を掲げた組織の起源は、1975年まで遡ることができる。 75年の9月に、総理大臣を本部長にした「婦人問題企画推進本部」が作られ、「婦人問題企画推進会議」「婦人問題担当室」が設置された。が、これは1975 年を「国際婦人年」と定めた国連の外圧による部分が多く、いわばスタートも“ショールーム”だったのである。
▽日本以外の国々では「ジェンダー視点」が主流化
・たとえスタートがショールームであっても、その後もっと真摯に取り組めば良かった。でも、日本は、各国が並行して「女性」に権限を与え、クオーター制に代表される「女性政治家を増やす努力」をしているのを「見ないふり」をし続けた。 女性たちの努力が足りなかったのか? あるいは男性にやる気がなかったのか? 答えを出すのは難しい。
・ただひとつだけ明らかなのは、日本以外の国々ではもはや「女性」という利用価値の高い記号を使うのやめ「ジェンダー視点」を主流化させているのに対し、日本はいまだに記号としての「女性」を多用しているという事実である。
・奇しくも先日、候補者男女均等法が施行されたが、女性を当選しやすくする選挙制度(比例名簿に女性を上位に入れる)は、自民党を中心とした議員たちの猛反対で棚上げになった。 しかも努力義務。「とりあえず法律は作りましたよ~」とアリバイだけは作ったかっこうである。
・46年4月10日に行われた第22回衆議院選挙で、園田天光光さん(故人)を含む39人の日本史上初めての女性代議士が誕生したのは、一枚の投票用紙に「3人の候補者の名前を書ける」という手段を講じた影響が大きい。
・ところが翌年の衆議院選挙で、吉田茂内閣は1人の名前しか書けない形に変更。女性だけでなく男性からも「それでは女性が当選しずらくなる」と不満が出たのにもかかわらず、聞く耳を持たず結果的に15人しか女性議員は当選しなかった。 政府は「このままでは共産党の議員が増える」とGHQ(連合国軍総司令部)に訴え、選挙制度の変更を説得したとされている。  ……。ショールームやアリバイ作りは、もういらないのです。  男女が半分半分なのに、なぜ、政治家は男性が大半なのか? なぜ、女性政治家は活躍できないのか?)
▽「ケア労働」にもっと価値を見いだす
・男性も女性も住みやすい社会、ストレートもLGBTも区別しない社会を目的に、それを実行するには「ナニが必要なのか?」「政治とはナニか?」  これまでその都度、自分なりの意見は書いてきた。
・でも、やはり今いちばん必要なのは「ケア労働」にもっと価値を見いだすことだと考える。女性省より「ケア労働省」。子育て、介護など、生きるための「労働」に価値を見いだす。  というわけで、まだ提案段階ではあるが、「女性省」には反対です。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/060400162/

第三に、6月5日付け「「女性省」構想は男たちの悪巧み ショールームやアリバイ作りはいらない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は「手段と目的」について、アレコレ考えてみる。 先週、自民党の参院政策審議会が、女性に関する政策を総合的に推進する「女性省」の創設を検討していることがわかった。 報道によれば、女性や若者、高齢者の力を引き出す「活力持続型の健康長寿社会」を目標に設定。厚生労働省や内閣府にある女性施策関連部署を一省に再編するらしい。
・またか、というのが正直な感想である。 思い起こせば4年前の2014年12月。「女性活躍担当大臣」が創設され、有村治子氏が就任した。それまでの「男女共同参画担当」との違いが全く分からないまま、“女性活躍担当大臣様”は、自称“トイレ大臣”となった。
・「トイレは毎日お世話になっているもの。暮らしの質を高めるには、トイレの空間を変えていくことが大切。トイレ大臣と呼ばれるくらいやります!」と、奇想天外な政策を進めたのだ。 “トイレ大臣”の発案は「ジャパン・トイレ・チャレンジ」と銘打たれ、20年の東京五輪開催時に国内主要空港で高機能トイレの設置したり、政府開発援助(ODA)を通じた途上国でのトイレ整備を進めたりするほか、「日本トイレ大賞」を公募。
・16年3月24日に更新された首相官邸ホームページには、「『日本トイレ大賞』には、378件ものご応募をいただき、その中から28件の受賞者を決定いたしました! 国立新美術館において、「日本トイレ大賞」表彰式及びシンポジウムを開催し、受賞者の方々には有村治子女性活躍担当大臣から賞状が授与されました!」と、意気揚々と記載されている(ここを参照)。
・なるほど。単なる“思いついたでショー(賞)”で盛り上がったわけだ。 きれいで使いやすいトイレを増やすのは多いに結構だが、「女性管理職30%」という数値目標を、なぜ、事実上断念した? 待機児童問題は? 女性の暮らしの質ってナニ?
・結局のところ、なにひとつ変わった感がないまま、“トイレ大臣”はフェードアウトした。有村氏自身もお子さんを持つワーキングマザーなのに。なぜ、こうなってしまうのか? 全くもって意味不明だ。
・今年の3月8日の「国際女性の日」、野田聖子総務大臣(女性活躍担当大臣・内閣府特命担当大臣)は、「女性の就業者数はこの5年間で約200万人増加し、子育て期の女性の就業率も上昇するなど成果は着実にあがっています」 とのメッセージを出した。 が、その半数超は非正規である。
▽「ナニかやってます!」とアピールすることが目的
・大学進学率は「男子55.4%、女子は56.6%(内9.3%は短大)」でほぼ一緒。さらに、共働き世帯と専業主婦世帯の割合がこれだけ開いている状況下で、いったいなぜ? 「女性は世帯主としてじゃなく、家計をサポートするためのパート・アルバイトが多いから」と指摘もあるが、貧困世帯率は男性単独世帯38.6%、女性単独世帯にいたっては59.1%。18歳未満の子と1人親の世帯に限ると貧困率は54.6%と半分を超える(ここを参照、12年、OECD統計)。
・つまり、あれだ。「女性活躍」とは「ナニかやってます!」とアピールすることが目的であり、格差是正のための手段ではない。「女性の暮らしの質を向上させましょう!」と狼煙だけあげ、ホントに向上したかどうかなんてどうでもいい。「女性」という言葉を使うこと自体に意味があるのだろうね、きっと。
・「ホラ、セクハラ問題とかで、女の人たちに嫌われちゃったし~」「そうそう。いろんな国にあるしさ~」「そうだよ、国連で言っちゃったし、世界のアピールにもなるぞ!」(関連情報はここ) 「年明けに『女性が輝く社会』の実現に向けて昼食会もやったしね」(関連情報はここ) 「よし、女性省だ!」「おう、女性省ね!」「とりあえずは参議院から意見書ってカタチで出したらどう?」「いいね」「うん、いいね」「女性省の考えは、いいね」ってことなのだろう。
・私は数年前までは、どんなカタチであれ“風”が吹くことは悪くないと、考えていた。「転換期だから変化はすべての人に平等にはこない。でも、必ず良い方向に向く」と。
・が、今は違う。偉い人たちの“ショールーム“信仰に、うんざりしている。「『女性』という言葉を都合よく使うのをやめてくれ」と。内閣支持率アップのための女性枠を設け、“ショーケース”に女性大臣を飾ったり、「女性」を持ち上げドヤ顔するジジイどもに辟易している。「女性活躍」の先頭に立つ“女性政治家”たちも例外ではない。
・だいたいなぜ、「女性」なんだ? 1999年6月に公布・施行された「男女共同参画社会基本法」では、男女共同参画社会をこう定義している。「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」 女性だけじゃない。男女。男女が均等、かつ共に責任を持つ社会だ。
▽ナショナル・マシーナリーの役割とは
・各国の「女性省」もすべて「ナショナル・マシーナリー」としての「女性省」である。ナショナル・マシーナリーは、ジェンダー平等に関する直接の政策立案・調整機関。形態は女性省や女性課題省などの省庁のほか、行政機関や議会内の委員会、オンブズマン、大統領付きのアドバイザーなど国によって異なるが、取り組むのはむしろ「男性問題」がメインだ。
・女性が仕事と家庭の両立をするために、男性の育児休暇の取得を増やす。単なる数字目標を設定するだけではなく、実効性をもたせるために義務化する。「ケア労働」に価値を置き、長時間労働をなくす(こちらに詳細に書いてあるのでお読みください。男だ女はもう「114」。埋まらぬ日本の格差問題)。「もう1人産もう」と思えるように、子育てや教育予算を徹底して増やす。「女性向けの仕事」とされてきた仕事の賃金を上げて、男性が「生涯の仕事」と思えるようにする。 etc……。
・男性と女性という性で何がしかの「差別」がないかどうかの「ファクト」を確実に捉えた上で、「女性省」に「権限」を与え、社会を変える。ナショナル・マシーナリーとはそのための機関だ。日本のように“ショールーム”的発想で設置されているワケじゃない……。あたり前だけど。
・例えば、
 +カナダには内閣の中に女性の地位担当大臣と、閣議に出席して発言する権限を有する専任の女性の地位副大臣がいる。その下に女性の地位庁(Status of Women Canada)が設置されている(1976年~)。
 +フィリピンでは、「フィリピン女性の役割国内委員会」が設置され(1975年~)、徹底的にジェンダー問題に関するモニタリングと、政策分析、調査研究を行っている。
 +韓国には、政務長官室というのがあり、これは官房長官が2人いて、その2人目が女性問題担当の専任大臣という位置づけである(1988年~)
・これはごく一部だが、世界中の国々が1970年代後半にナショナル・マシーナリーを設置し女性問題に取り組み、1990年代に入ってからは男・女の二分法から脱却し、ジェンダー平等という立場に徹している。
・日本と逆。2000年初頭は「男女平等」という言葉を多用し、その後一瞬「ジェンダー平等」が使われたけど、気がつけば「女性」。女性、女性、女性。困ったことが起きる度に「女性」が持ち上げられる。 そして、「女性」連呼→女vs男にうんざり→拒絶→解決すべき問題は置き去りにされる→女性の権利主張→「女性」連呼…… という完全なる悪循環が繰り返され、ますます女性問題の解決は遠のいていくのである。
・日本が「女性活躍」を掲げた組織の起源は、1975年まで遡ることができる。 75年の9月に、総理大臣を本部長にした「婦人問題企画推進本部」が作られ、「婦人問題企画推進会議」「婦人問題担当室」が設置された。が、これは1975 年を「国際婦人年」と定めた国連の外圧による部分が多く、いわばスタートも“ショールーム”だったのである。
▽日本以外の国々では「ジェンダー視点」が主流化
・たとえスタートがショールームであっても、その後もっと真摯に取り組めば良かった。でも、日本は、各国が並行して「女性」に権限を与え、クオーター制に代表される「女性政治家を増やす努力」をしているのを「見ないふり」をし続けた。 女性たちの努力が足りなかったのか? あるいは男性にやる気がなかったのか? 答えを出すのは難しい。
・ただひとつだけ明らかなのは、日本以外の国々ではもはや「女性」という利用価値の高い記号を使うのやめ「ジェンダー視点」を主流化させているのに対し、日本はいまだに記号としての「女性」を多用しているという事実である。
・奇しくも先日、候補者男女均等法が施行されたが、女性を当選しやすくする選挙制度(比例名簿に女性を上位に入れる)は、自民党を中心とした議員たちの猛反対で棚上げになった。 しかも努力義務。「とりあえず法律は作りましたよ~」とアリバイだけは作ったかっこうである。
・46年4月10日に行われた第22回衆議院選挙で、園田天光光さん(故人)を含む39人の日本史上初めての女性代議士が誕生したのは、一枚の投票用紙に「3人の候補者の名前を書ける」という手段を講じた影響が大きい。
・ところが翌年の衆議院選挙で、吉田茂内閣は1人の名前しか書けない形に変更。女性だけでなく男性からも「それでは女性が当選しずらくなる」と不満が出たのにもかかわらず、聞く耳を持たず結果的に15人しか女性議員は当選しなかった。 政府は「このままでは共産党の議員が増える」とGHQ(連合国軍総司令部)に訴え、選挙制度の変更を説得したとされている。
・……。ショールームやアリバイ作りは、もういらないのです。 男女が半分半分なのに、なぜ、政治家は男性が大半なのか? なぜ、女性政治家は活躍できないのか?
▽「ケア労働」にもっと価値を見いだす
・男性も女性も住みやすい社会、ストレートもLGBTも区別しない社会を目的に、それを実行するには「ナニが必要なのか?」「政治とはナニか?」 これまでその都度、自分なりの意見は書いてきた。でも、やはり今いちばん必要なのは「ケア労働」にもっと価値を見いだすことだと考える。女性省より「ケア労働省」。子育て、介護など、生きるための「労働」に価値を見いだす。
・というわけで、まだ提案段階ではあるが、「女性省」には反対です。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/060400162/

第一の記事で、 『わずかに男女差が認められるものでも、男女間の差異は同性内の個人差に比べて小さい。 つまり、現実社会における男女差を説明するために社会心理学者たちが果たした貢献は、男女差がいかに社会的状況に左右されるかを明らかにしたことにある。一般に男女差とされる特性は、多様な要因の影響を受けて出現したもので、環境が変われば消滅する』、というのは初耳だが、確かにそうなのだろう。『男女平等が進めば進むほど、異性と接する機会が増える。自己ジェンダー・ステレオタイプは異性という要因で強化されるので、結果的に「女性はより女らしく」、「男性はより男らしく」、無意識に演じるようになってゆくのである』、というのは嬉しい話だ。 『男性たちの背筋が凍る話をしておきます。 両生類のサラマンダーにはメスだけの集団がいて、何不自由なく、600万年以上繁栄している』、というのは考えさせられた。
第二の記事で、 『「あなたはあなたを知っているか?」 そして、 「あなたは変革を担っているだろうか?」』、というのは男女を問わず、耳が痛い質問だ。 『9歳のときに米国南部ですごした記憶から』、という河合氏の体験は初めて知ったが、かつての米国南部であれば、さぞかし差別で苦しめられたのだろう。でも、それが同氏のたくましい精神的な強さのバネになったのかも知れない。
第三の記事で、 『偉い人たちの“ショールーム“信仰に、うんざりしている。「『女性』という言葉を都合よく使うのをやめてくれ」と。内閣支持率アップのための女性枠を設け、“ショーケース”に女性大臣を飾ったり、「女性」を持ち上げドヤ顔するジジイどもに辟易している。「女性活躍」の先頭に立つ“女性政治家”たちも例外ではない』、というのは鋭い指摘だ。 『世界中の国々が1970年代後半にナショナル・マシーナリーを設置し女性問題に取り組み、1990年代に入ってからは男・女の二分法から脱却し、ジェンダー平等という立場に徹している。 日本と逆。2000年初頭は「男女平等」という言葉を多用し、その後一瞬「ジェンダー平等」が使われたけど、気がつけば「女性」。女性、女性、女性。困ったことが起きる度に「女性」が持ち上げられる。 そして、「女性」連呼→女vs男にうんざり→拒絶→解決すべき問題は置き去りにされる→女性の権利主張→「女性」連呼…… という完全なる悪循環が繰り返され、ますます女性問題の解決は遠のいていくのである』、との指摘は説得力がある。 『翌年(1947年)の衆議院選挙で、吉田茂内閣は1人の名前しか書けない形に変更。女性だけでなく男性からも「それでは女性が当選しずらくなる」と不満が出たのにもかかわらず、聞く耳を持たず結果的に15人しか女性議員は当選しなかった』、との指摘は初耳だ。確かに3人まで選べるのであれば、女性も進出し易いだろう。「ジェンダー平等」を追求してゆく上では、『「ケア労働」にもっと価値を見いだす』、というのは確かに有効そうだ。
タグ:日本と逆。2000年初頭は「男女平等」という言葉を多用し、その後一瞬「ジェンダー平等」が使われたけど、気がつけば「女性」。女性、女性、女性。困ったことが起きる度に「女性」が持ち上げられる 1990年代に入ってからは男・女の二分法から脱却し、ジェンダー平等という立場に徹している ジェンダー・ステレオタイプは社会の深部に根付いているので、長期に記憶される無自覚の価値観として刷り込まれる。そのため本人が意識することなく、ジェンダー・ステレオタイプに合致する言動を演じるようになる 「女性」連呼→女vs男にうんざり→拒絶→解決すべき問題は置き去りにされる→女性の権利主張→「女性」連呼…… という完全なる悪循環が繰り返され、ますます女性問題の解決は遠のいていくのである 「「女性省」構想は男たちの悪巧み ショールームやアリバイ作りはいらない」 「職場に異変?「オス化」した女たちの逆襲 出世に目覚めた女性は「両性」の良さを併せ持つわけでして…」 “ジジイの壁” 9歳のときに米国南部ですごした記憶から わずかに男女差が認められるものでも、男女間の差異は同性内の個人差に比べて小さい。 つまり、現実社会における男女差を説明するために社会心理学者たちが果たした貢献は、男女差がいかに社会的状況に左右されるかを明らかにしたことにある。一般に男女差とされる特性は、多様な要因の影響を受けて出現したもので、環境が変われば消滅する 神戸女学院大のメッセージ (その7)(河合 薫氏の三題:職場に異変?「オス化」した女たちの逆襲、「女は大学行くな」で考える男の言い訳、「女性省」構想は男たちの悪巧み) 「女性活躍」とは「ナニかやってます!」とアピールすることが目的であり、格差是正のための手段ではない。「女性の暮らしの質を向上させましょう!」と狼煙だけあげ、ホントに向上したかどうかなんてどうでもいい。 「女性」という言葉を使うこと自体に意味があるのだろうね 古くから学者たちがこぞって明らかにしてきた、いくつもの「心理的特性や行動傾向の男女差」に関する研究で得られた統計量を、共通の効果サイズに変換し分布や平均値を算出すると(メタ分析)、男女差は有意でないばかりか、様々な調整要因によって男女差の方向性が逆転することが確かめられているのである 日本のように“ショールーム”的発想で設置されているワケじゃない…… 翌年の衆議院選挙で、吉田茂内閣は1人の名前しか書けない形に変更。女性だけでなく男性からも「それでは女性が当選しずらくなる」と不満が出たのにもかかわらず、聞く耳を持たず結果的に15人しか女性議員は当選しなかった 男性と女性という性で何がしかの「差別」がないかどうかの「ファクト」を確実に捉えた上で、「女性省」に「権限」を与え、社会を変える。ナショナル・マシーナリーとはそのための機関だ 11年間異国で過ごした 女性活躍 男女平等が進めば進むほど、異性と接する機会が増える。自己ジェンダー・ステレオタイプは異性という要因で強化されるので、結果的に「女性はより女らしく」、「男性はより男らしく」、無意識に演じるようになってゆくのである 梅子氏が6歳だったとき黒田清隆氏が企画した女子留学生に応募。見事、女性として初めての官費留学生5人のうちの1人に選ばれた(最年少) 津田梅子 “ババアの壁” 取り組むのはむしろ「男性問題」がメインだ 「あなたはあなたを知っているか?」 そして、 「あなたは変革を担っているだろうか?」 「「女は大学行くな」で考える男の言い訳 6歳の少女が教えてくれた会社が変らない理由」 ナショナル・マシーナリー 日本以外の国々では「ジェンダー視点」が主流化 第22回衆議院選挙で、園田天光光さん(故人)を含む39人の日本史上初めての女性代議士が誕生したのは、一枚の投票用紙に「3人の候補者の名前を書ける」という手段を講じた影響が大きい 「変革を担う、女性であること」 「TSUDA VISION 2030」 津田塾大学 両生類のサラマンダーにはメスだけの集団がいて、何不自由なく、600万年以上繁栄している 偉い人たちの“ショールーム“信仰に、うんざりしている。「『女性』という言葉を都合よく使うのをやめてくれ」と。内閣支持率アップのための女性枠を設け、“ショーケース”に女性大臣を飾ったり、「女性」を持ち上げドヤ顔するジジイどもに辟易している。「女性活躍」の先頭に立つ“女性政治家”たちも例外ではない 伝えたいのは『正解がない。その不確かさを、不安ではなく、自由として謳歌するために。』というところです。 大学時代だけではなくその後の人生においても学び続けていってほしいと願っています 女は大学に行くな、
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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非正規雇用問題(その1)(「日本郵政の手当廃止」が示す"正社員"の未来 「同一労働同一賃金」で既得権にメスが入った、“同一労働同一賃金” 最高裁が初判断 定年後再雇用の賃金引き下げは社会の不利益 最高裁判決から考える)  [経済政策]

今日は、非正規雇用問題(その1)(「日本郵政の手当廃止」が示す"正社員"の未来 「同一労働同一賃金」で既得権にメスが入った、“同一労働同一賃金” 最高裁が初判断 定年後再雇用の賃金引き下げは社会の不利益 最高裁判決から考える) を取上げよう。

先ずは、安西法律事務所 弁護士の倉重 公太朗氏が4月17日付け東洋経済オンラインに寄稿した「 「日本郵政の手当廃止」が示す"正社員"の未来 「同一労働同一賃金」で既得権にメスが入った」を紹介しよう(▽は小見出し)・
・安倍晋三政権が働き方改革の一環として推し進めてきた「同一労働同一賃金」政策。これは、正社員と非正規社員の処遇について、業務内容などを勘案して不合理なものは是正すべきとする考え方です。同一労働同一賃金の狙いは、処遇の低い非正規社員について改善を行うことにより、国内消費を増大させ、景気循環させるという点にありました。
▽正社員の処遇を下げ格差を是正する方針を打ち出した
・このテーマに関連して、先週、大きな反響を呼んだニュースがありました。 それは、日本郵政が正社員の住宅手当などを廃止し、非正規社員との待遇格差を是正する方針を打ち出したというものです。日本郵政が、このような方針を打ち出したことには理由があります。東京地裁と大阪地裁、二つの裁判所で、契約社員の処遇(一部手当)について正社員との差が違法である。という判断が下されていたのです。そこで、違法状態を解消するべく、早急な待遇差の是正に動いていました。
・待遇差の解消方法としては、政策の狙いどおり、①「非正規雇用の処遇を上げる」という方策が思いつくところですが、今回は②「正社員の処遇を下げる」という方策を採ったことで、大きな話題となりました。しかし、このニュースは単に「処遇を低い方に合わせるなんてけしからん。法の趣旨に反する」という単純な話ではありません。労働法的側面から、もう少し深く考察してみると、違った視点が浮かび上がってきます。
・そもそも日本において非正規が多い理由はなんでしょうか?主な理由としては、判例法理を受け継いだ労働契約法によって、正社員の解雇が厳しく規制されているという点が挙げられます。これは正社員の身分を強力に保障する一方で、景気変動に応じた人件費の調整を行う必要が出た際には、非正規雇用を行うことで対応せざるをえないという状況を生み出します。」
・契約社員については、2018年5月から、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期契約労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換するという制度が始まっています。しかし、実態としては正社員ほどの保護があるわけではありませんので、根本は変わりません。
・同一労働同一賃金の元祖であるヨーロッパでは、解雇の金銭解決が可能であり日本よりは正社員の雇用保障は弱いと言えるでしょう。しかし、日本においては解雇規制の検討はなされないまま、同一労働同一賃金政策という一部の制度のみを輸入しているので、全体に歪みが生じています。結局のところ、「人件費調整のバッファー」となるのは誰か、という話であり、現在はこれを非正規社員が一手に引き受けているのです。まるで企業がその気になれば、賃金を無限に払えるような感覚を抱いている人も少なくないように見受けられますが、「同一賃金」という言葉にそのような魔法はありません。
▽「世代間の不公平」という現実も浮かび上がる
・さらに、日本郵政の方針を分析すると、正社員と非正規社員という問題を超えて、「世代間の不公平」という現実も浮かび上がります。今回の制度変更は組合との合意によって、「10年」という非常に長期の経過措置を設けている、という点は注目に値します。つまり、現在50代の日本郵政の正社員の方は従来どおりの手当があるまま、定年を迎えることになるのです。その一方で、これから正社員として入社する人は「手当」の恩恵を享受できないことになります。
・では、「手当」を支払い続ければいいのでしょうか。そう単純な話ではありません。日本を取り巻く経済環境がめまぐるしく変わっていくグローバル経済の中、日本は少子化により人口が減少し続けています。国内市場は減少の一途を辿ることは確定した未来です。その中で日本企業としては、新規事業や新規設備投資、あるいはグローバル展開など、何らかの形で成長を模索しなければ現在の売り上げは維持できません。
・今回日本郵政が廃止することにした正社員の住居手当は、最大で1月あたり2万7000円の支給だそうです。日本郵政の場合、非正規社員数は19万7000人と言われますので、単純計算で19万7000人×2万7000円=53億1900万円という莫大な金額を「毎月」支払わなければなりません。ボーナスなどではないので、「利益が上がったら」ということもできません。「毎月」約53億円、年間636億円なのです。
▽処遇を改善せよ、と言うのは簡単だが…
・非正規雇用の処遇を改善せよ、と言うのは簡単です。しかし、その分何かを諦めなければならないということも忘れてはなりません。つまり、将来への投資や、グローバル展開のための費用や、今後の成長の柱を探すための新規事業への投資、これらを諦めて「手当」を支払うことは是か非か、という話なのです。新規事業が育たなければ、割りを食うのは結局「これから」働く人。つまり若い世代です。若い世代にとって本当にいいのはどちらでしょうか。
・こういう話をすると、「企業は内部留保を溜め込んでいるからそれで払えばいいではないか」という意見をよく目にします。しかし、年間600億円の投資ができれば今後の成長の柱となる新規事業を育てられるかもしれませんが、内部留保を取り崩してしまえば、先に述べた将来の投資ができません。また、取り崩して余裕があるのは一時的な話です。この手当改善は10年間で6000億円もの投資が必要な案件と同価値ということにあります。正社員に手当を出すことで、それほどの効果があるのなら良いのですが現実はどうでしょうか。
・当然ですが、法律に従わなくていいとか判決を無視していいとか言うつもりは毛頭ありません。しかし、「法律の趣旨がこうだから」、「判決がこうだから」、処遇を改善しなさいと言うだけなら簡単です。突然、企業の「財布」が増えるわけではありません。日本郵政の最大労組(組合員24万人)が手当削減提案に同意したというのは、会社の将来を見据えた深い洞察があってのことでしょう。単に「会社のいいなりになってけしからん」という話ではないはずです。
・もちろん、非正規の処遇改善は行うべきです。しかし、正社員をはじめとする全体の制度設計を考えない小手先の対応では、結局どこかに「しわ寄せ」が行くだけなのです。自分の会社の下請けや子会社に「しわ寄せ」が行く場合もあるでしょう。たとえ正社員だからといって、自分さえ逃げ切れれば良いという話ではないはずです。非正規社員と正社員の格差の「根源」である、身分保障や労働条件変更の考え方を含めたこれからの雇用社会のグランドデザインを再検討して、初めて本当の意味での格差是正が議論できると筆者は考えています。
https://toyokeizai.net/articles/-/216870

次に、6月1日付けNHK時論公論で竹田 忠 解説委員 と 清永 聡 解説委員が解説する「“同一労働同一賃金” 最高裁が初判断」を紹介しよう(▽は小見出し、+は解説内の段落)。
・日本のサラリーマン社会に大きな影響を及ぼす判決が出ました。契約社員や定年後の再雇用で、仕事が同じ場合正社員との待遇の差は許されるのか。
・最高裁の初めての判断は、契約社員の手当を幅広く認めた一方、定年後の再雇用の賃金は、原告に厳しい内容になりました。
・判決が雇用契約のあり方や政府の働き方改革の議論に与える影響を、経済・雇用担当の竹田委員と共にお伝えします。
▽定年後再雇用の賃金格差とは
・清永:まず、今回の判断、竹田さんはどう受け止めましたか。
・竹田:一言でいうと、非正規で働く人や、高齢になっても働く人が増えているのに、現場の処遇や実態が、それに対応できていない。 その矛盾や問題点に、最高裁が一定の判断基準を示した、ということだと思います。
・清永:裁判の内容を見ていきましょう。2つあるのですが、まずは定年後の再雇用のケースからです。 この裁判は、トラックの運転手をしていた男性らが起こしました。男性は、60歳の定年後も嘱託社員として、正社員とほぼ同じ仕事を続けました。ところが再雇用された男性の賃金は、2割ほど下がりました。
+ポイントは労働契約法20条の条文です。正社員かどうかで「労働条件の差が不合理であってはならない」などと書かれています。では、再雇用で賃金が下がったのは不合理かどうか。 1審は「仕事は正社員と同じなのに差があるのは違法だ」と男性らの訴えを認め、2審は逆に「定年後の引き下げは妥当だ」と逆転敗訴を言い渡していました。
▽最高裁判決
・清永:最高裁は、このケースで賃金に差が出ることを容認しています。 判決が重視した要素の1つは、定年後、再雇用された人の事情です。定年まで正社員として働き、退職金も受け取り、今後は年金を受ける予定です。こうした事情などを踏まえると、一部の手当に一定の格差があっても、不合理ではないと判断したのです。
▽賃金カーブの仕組み
・竹田:定年後の再雇用の賃下げというのは、実態としては多くの企業で行われていること。それが、最高裁の判断の背景になっているとみられます。 そもそも賃金の仕組みがどうなっているかというと、日本の多くの企業は、いわゆる年功序列型賃金、在職年数に応じて賃金が徐々に上がるという、こういうカーブを描いて賃金が上がる仕組みになっています。若い頃の給料は低く抑えられていて、それを年をとってから、取り戻すという感じです。
+ところが、社会の高齢化が進んだことで、国は5年前に法律で、希望者全員を65歳まで雇用することを義務づけました。そうすると、企業は、この高いところのまま、雇い続けることは負担が大きいので、多くの場合、賃金を平均で2~3割下げて再雇用するケースが多い。こうしたことが背景になっているわけですね。
・清永:ただし、再雇用された人にとっては、どうでしょうか。独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が平成26年に行ったアンケートでは、定年後も継続雇用された人で60歳から64歳の人のうち、賃金が下がった人の47、9%は、「雇用が確保されるから賃金の低下はやむを得ない」としている一方で、34、7%は「仕事がほとんど変わらないのに、賃金が下がるのはおかしい」と考えていて、意見が分かれています。
+ただ、格差が大きくなりすぎると、定年後の労働意欲が失われることにもなりかねません。また、今回の最高裁判決はあくまで個別のケースです。企業が自分に都合のいいように解釈し、際限なく賃金を下げてしまわないよう、注意が必要です。
・竹田:そこは大変重要なところです。実際、判決後の会見で、原告のドライバーの人たちがどうしても納得できない、と繰り返していたのが、仕事は同じなんだということです。たとえば大企業などでは、定年後は仕事の内容が変わったり、軽くなったり、ということがよくあるわけですが、原告の男性たちは「自分たちはドライバーで、全く仕事の内容が同じだ」と言っていました。“寸分たがわず”という表現もされていましたが、全く同じ仕事をしていて、賃金だけが下がるのはどうしても納得できない、という発言です。
+今、政府は、人口減少と、高齢化が進む中で、生涯現役社会を作ろうとしています。つまり、できるだけみんな意欲をもって長く働いてくださいと。 そういう中では、やはり、もう再雇用で賃金水準をどうするか、ではなくて、もう定年そのものをもっと延ばすとか、仕事の内容が同じかどうかで、もっと報酬体系のありかたを見直すとか、そういう大きな議論も必要になってくると思います。
▽契約社員の手当の格差とは
・清永:もう1つの裁判もドライバーで同じ仕事をしているケースです。ただしこちらは正社員と契約社員の手当の違いが争われました。 これが今回争われた手当の一部です。(リンク先の表参照)「通勤手当」は当時、契約社員は正社員よりも少ない額しかもらえませんでした。残りは正社員にしか支給されていない手当です。「無事故手当」は1か月無事故の場合に支給されます。「給食手当」は食事代の補助。ほかに「皆勤手当」「住宅手当」などもあります。
+1審が同じ金額を支給するよう命じたのは、通勤手当だけ。2審はこれに加えて、無事故手当、給食手当も契約社員に支給するよう命じました。 一方、最高裁は、これらに加えて皆勤手当まで、仕事の内容が同じである以上、契約社員に支給しないのは「不合理」だと判断しました。住宅手当が除外されたのは、正社員には転勤があり、住宅費が多くかかることが考慮されたためです。
・竹田さん、こちらは契約社員の主張を大幅に認めました。
▽非正規の現状と同一賃金ガイドライン案
・竹田:日本の雇用の大きな問題点の一つは、正規・非正規の賃金格差が大きいことです。 これはフルタイムで働いている人の賃金を100とした場合に、パートで働いている人がどれだけもらっているかというグラフです。(リンク先参照)フランスはほぼ9割。ほとんど変わりません。ドイツ8割、イギリス7割。日本は6割にも満たない。この大きな賃金格差を何とかしようということで、政府が取り組んでいるのが同一労働・同一賃金なんです。
+で、その裏付けとなる働き方改革法案が、今、まさに国会で審議中でして、さらに、今回、最高裁で、不合理な手当ての格差は認められない、という明確な判断が出たことで、これまで様子を見ていた企業も、もう待ったなしの対応を迫られることになると思います。
▽格差を減らす取り組みを
・清永:正規、非正規の待遇格差をめぐる訴訟が、全国で相次いでいます。今回の最高裁判決は、こうした訴訟や、企業の人事・労務に与える影響が極めて大きいと思います。定年後再雇用の人たちも、契約社員も、今や、全国のあらゆる働く現場で、なくてはならない存在です。 判決を通じて、トラブルを未然に防ぐことはもちろん、企業側は、働く人たちの意欲を奪うことがないよう、できる限り個別に事情を考慮し、格差の解消に取り組んでほしいと思います。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/298808.html

第三に、昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現在ビジネス研究所長の八代尚宏氏が6月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「定年後再雇用の賃金引き下げは社会の不利益、最高裁判決から考える」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽最高裁が判決を示した2賃金格差に関する2つの事件
・政府の働き方改革法案の柱の1つとして同一労働同一賃金がある。しかし、同一業務における正規と非正規社員との賃金格差については、すでに現労働契約法第20条でも禁じている。この具体的な事例として、非正規社員が不当な賃金格差を訴えた2つの事件についての最高裁判所の判決が6月1日に示された。ここでは国会ではほとんど審議されなかった、同一労働同一賃金の具体的な問題点が顕著に示されている。
・1つ目の事件は、「ハマキョウレックス」(浜松市の物流会社)に対し、有期雇用契約で勤務する契約社員が、同じ業務の正規社員の基本給や諸手当との差額の支給を求めたものだ。これに対して最高裁は通勤手当等、一定の範囲の諸手当の支払いを認めたものの、基本給や賞与等については、転勤等のキャリア形成の差を反映したものとして「不合理ではない」と格差を容認した。
・もう1つの「長澤運輸」(横浜市の運送会社)事件では、定年退職後に有期雇用で雇用された運転手が、定年前と全く同じ業務にもかかわらず賃金総額で2割強減額されたことを不当として訴えた。1審では東京地裁により、予想に反して原告の訴えが全面的に容認されたことで大きな話題となった。もっとも、2審の東京高裁では、定年退職後の再雇用時の賃金引き下げは一般的に行われており、「2割程度の賃金減額は社会的に許容」と否認した。これを受けた最高裁では、諸手当に関する格差は個別に判断するとしながらも、基本給や賞与についての非正規格差は容認するという基本方針を確立した。
・しかし、労働経済学の視点では、トラック運転手という全く同一の職種で働く正規と非正規社員との基本給や賞与の格差は、市場の均衡に反する制度的なゆがみ以外の何ものでもない。「日本型」ではない、真の同一労働同一賃金の実現のためには、どのような政策が必要とされるのだろうか。
▽長澤運輸事件から考える再雇用賃金引き下げの合理性
・本稿ではとりわけ、定年退職後の再雇用時の賃金引き下げの問題について考えよう。 最高裁は、60歳を超えた高年齢者の雇用確保の義務付けの下で、継続雇用者の賃金コストの無制限な増大を回避するための賃金引き下げは不合理ではないとした。確かに、同一労働同一賃金の原則の下でも、再雇用後の賃金引き下げが正当化できる場合もある。これは年功賃金体系の下では、同一職種の再雇用賃金と比較する対象として、定年直前の賃金水準では高過ぎるためである。
・もっとも長澤運輸のトラック運転手の賃金の年齢や勤続給の水準は低く、40年間勤務でも年間13万円弱に過ぎないフラットな職務給であり、無制限な賃金コスト増加にはほど遠い状況であった。 ここで再雇用された運転手の賃金総額が2割減になったことの主因は、基本給の5ヵ月分の賞与がなくなったことにある。これについて判決理由では、定年退職者には退職金が支給されたことや、厚生年金の支給を受けることが指摘されている。
・しかし、退職金とは労働者を企業内に囲いこむための「後払い賃金」の清算であり、再雇用されない場合にも同様に支払われる。また、厚生年金は65歳まで持続的に引き上げられる「逃げ水」である。本来、賃金は毎年の労働の対価であり、老後の生活保障の手段である退職金や厚生年金と相殺されるべきものではないだろう。
・もっとも会社側にも言い分はあろう。定年退職制はいわば公に認められた解雇の仕組みであり、その際の金銭補償が退職金である。退職後に新たな雇用契約を結ぶ以上、その際の賃金は市場水準であり、その提示額に労働者が不満であれば他の会社で働けばいい。一般のホワイトカラーとは異なり、専門的な技術を要するトラック運転手の市場は流動的であり、新人運転手より低い再雇用賃金を提示する企業と比べて、良い労働条件の申し出は少なくないはずである。
▽画一的な雇用義務を課す中途半端な高年齢者雇用安定法
・2004年改正の「高年齢者雇用安定法」では、企業に対して65歳までの雇用義務を課している。これが労働者にとって、労働条件の良い職場への移動を躊躇させる「機会費用」となっている可能性がある。他方、企業にとっては、安定法の再改正(2013年施行)で、再雇用者の範囲を労使協定で限定できる仕組みが廃止され、希望者全員の再雇用を義務付けられた。仕事能力のばらつきの大きな高年齢者の再雇用を、企業に画一的に義務付けることが、賃金の均等待遇を妨げる1つの要因となっているのではないだろうか。
・欧米諸国のように、年齢に関わりなく同一賃金で働き続けられる労働市場を実現するためには、企業にとって雇用維持が困難な労働者の解雇の金銭解決ルールが、やはり年齢に関わりなく必要とされる。同一労働同一賃金の原則は、あくまでも仕事能力に応じた実質的な公平性に基づくことが前提である。
・安定法での高齢者の65歳までの雇用継続義務付けは、厚生年金の支給開始年齢が2025年に65歳に引き上げられることに対応している。しかし、他の先進国の年金支給開始年齢は、すでに67~68歳になっている中で、世界で最も長寿国の日本では70歳支給を目指す必要がある。その際に政府は、再び70歳までの雇用義務を企業に課すのだろうか。今後の労働力不足社会では、企業が自ら仕事能力を持つ高年齢者を雇用し続ける環境の整備が必要である。
・長澤運輸事件の原告であるトラック運転手は、定年後も通常の運転手と同じ業務を遂行する十分な能力を有していた。そうした貴重な労働者を、なぜ企業はあえて解雇しなければならなかったのだろうか。本来、この裁判では再雇用後の賃金水準の妥当性よりも、60歳に達したことだけで解雇される定年退職制度の社会的妥当性を問うべきであった。これは多くの先進国では、仕事能力に差のない労働者を、一定の年齢に達しただけで解雇する定年退職制を、人種や性別による解雇と同様な「年齢による差別」として原則禁止しているためである。
▽年齢による差別に他ならない定年退職制の非合理性
・日本では、誰しもが平等に迎える定年退職制は、むしろ公平な仕組みとされている。これは職務を限定しない働き方の下で、個々の仕事能力に関わらない定年時までの雇用保障や、年齢とともに高まる賃金制度と一体的になっていたためである。
・しかし実際には、高齢者の仕事能力のばらつきは、他の年齢層よりも大きい。高齢者であっても、有能であれば会社内で責任あるポストに就かせるのが妥当であろう。にもかかわらず、画一的な1年契約の非正規社員としての再雇用では、それができない。つまり、急速な高齢化を迎える今後の日本で、高齢労働者の有効活用を妨げる最大の要因が、多くの企業が採用している60歳定年制といえる。また、こうした定年退職後の高齢者の増加が、非正規社員比率の持続的な上昇の大きな要因ともなっている。
・定年退職制は、単に法律で禁止すればいいというわけにはいかない。むしろ、企業が定年制を必要としない働き方のルールを、労使が自発的に形成する必要がある。具体的にいえば、一般的な企業の場合、少なくとも新卒採用時から40歳台までは多様な職務経験を蓄積し、それ以降では、特定の職務に限定した働き方とそれに見合う職務給を原則とすることである。そうすれば60歳といったように特定の年齢で解雇される必要性はなくなり、生涯現役の働き方が可能となる。こうした職務限定正社員の働き方の整備こそが政府の役割である。
・トラック運転手は、元々こうした働き方である。とくに長澤運輸事件のように、特殊なトラックを運転する専門的技術を持つ高年齢者を継続雇用することは、企業にとっても利益となるはずだ。それにもかかわらず、定年退職後再雇用の機会に、わずかの賞与分の人件費を節約しようとする機会主義的な意図が企業側にあったとすれば、残念なことである。
・同じ仕事をする労働者には同じ賃金を支払う──。これは諸手当だけでなく、基本給や賞与でも同様である。それができない特別な理由があるなら、その内容を具体的に説明する責任が企業側にある。この先進国の常識が日本では成り立たないのなら、それを明確に企業に義務付けることが政府の責任だ。日本の働き方の改革は、まだ始まったばかりである。
https://diamond.jp/articles/-/171608

第一の記事で、『今回日本郵政が廃止することにした正社員の住居手当は、最大で1月あたり2万7000円の支給だそうです。日本郵政の場合、非正規社員数は19万7000人と言われますので、単純計算で19万7000人×2万7000円=53億1900万円という莫大な金額を「毎月」支払わなければなりません。ボーナスなどではないので、「利益が上がったら」ということもできません。「毎月」約53億円、年間636億円なのです』、というのでは、『正社員の処遇を下げ格差を是正する方針』、『日本郵政の最大労組(組合員24万人)が手当削減提案に同意したというのは、会社の将来を見据えた深い洞察があってのことでしょう』、というのも無理からぬところなのかも知れない。
第二の記事で、『原告の男性たちは「自分たちはドライバーで、全く仕事の内容が同じだ」と言っていました。“寸分たがわず”という表現もされていましたが、全く同じ仕事をしていて、賃金だけが下がるのはどうしても納得できない』、というのは確かに理解できる。ただ、第三の記事によれば、『長澤運輸のトラック運転手の賃金の年齢や勤続給の水準は低く、40年間勤務でも年間13万円弱に過ぎないフラットな職務給であり、無制限な賃金コスト増加にはほど遠い状況であった。ここで再雇用された運転手の賃金総額が2割減になったことの主因は、基本給の5ヵ月分の賞与がなくなったことにある』、というように、賞与をケチったためのようだ。 一般的には運輸業界では、ドライバー不足に悩まされている筈なので、ドライバーになるべく再雇用を受け入れてもらえる条件で提示するのが筋だろう。
第三の記事の筆者の八代氏は、新自由主義経済学の信奉者の1人なので、私としては余り取上げないが、今回は比較的まともな主張なので、紹介した次第である。 『労働経済学の視点では、トラック運転手という全く同一の職種で働く正規と非正規社員との基本給や賞与の格差は、市場の均衡に反する制度的なゆがみ以外の何ものでもない』、『本来、賃金は毎年の労働の対価であり、老後の生活保障の手段である退職金や厚生年金と相殺されるべきものではないだろう』、『本来、この裁判では再雇用後の賃金水準の妥当性よりも、60歳に達したことだけで解雇される定年退職制度の社会的妥当性を問うべきであった。これは多くの先進国では、仕事能力に差のない労働者を、一定の年齢に達しただけで解雇する定年退職制を、人種や性別による解雇と同様な「年齢による差別」として原則禁止しているためである』、 『定年退職制は、単に法律で禁止すればいいというわけにはいかない。むしろ、企業が定年制を必要としない働き方のルールを、労使が自発的に形成する必要がある。具体的にいえば、一般的な企業の場合、少なくとも新卒採用時から40歳台までは多様な職務経験を蓄積し、それ以降では、特定の職務に限定した働き方とそれに見合う職務給を原則とすることである。そうすれば60歳といったように特定の年齢で解雇される必要性はなくなり、生涯現役の働き方が可能となる』、『長澤運輸事件のように、特殊なトラックを運転する専門的技術を持つ高年齢者を継続雇用することは、企業にとっても利益となるはずだ。それにもかかわらず、定年退職後再雇用の機会に、わずかの賞与分の人件費を節約しようとする機会主義的な意図が企業側にあったとすれば、残念なことである』、などの指摘は説得的で異論はない。
タグ:最高裁は、これらに加えて皆勤手当まで、仕事の内容が同じである以上、契約社員に支給しないのは「不合理」だと判断しました 今回日本郵政が廃止することにした正社員の住居手当は、最大で1月あたり2万7000円の支給だそうです。日本郵政の場合、非正規社員数は19万7000人と言われますので、単純計算で19万7000人×2万7000円=53億1900万円という莫大な金額を「毎月」支払わなければなりません。ボーナスなどではないので、「利益が上がったら」ということもできません。「毎月」約53億円、年間636億円なのです 「“同一労働同一賃金” 最高裁が初判断」 労働経済学の視点では、トラック運転手という全く同一の職種で働く正規と非正規社員との基本給や賞与の格差は、市場の均衡に反する制度的なゆがみ以外の何ものでもない もう1つの裁判もドライバーで同じ仕事をしているケースです。ただしこちらは正社員と契約社員の手当の違いが争われました 原告の男性たちは「自分たちはドライバーで、全く仕事の内容が同じだ」と言っていました。“寸分たがわず”という表現もされていましたが、全く同じ仕事をしていて、賃金だけが下がるのはどうしても納得できない、という発言 八代尚宏 賃金を平均で2~3割下げて再雇用するケースが多い 65歳まで雇用することを義務づけ 現在50代の日本郵政の正社員の方は従来どおりの手当があるまま、定年を迎えることになるのです。その一方で、これから正社員として入社する人は「手当」の恩恵を享受できないことになります 「世代間の不公平」という現実も浮かび上がる 最高裁は、このケースで賃金に差が出ることを容認 再雇用された男性の賃金は、2割ほど下がりました 東京地裁と大阪地裁、二つの裁判所で、契約社員の処遇(一部手当)について正社員との差が違法である。という判断が下されていたのです 正社員の住宅手当などを廃止し、非正規社員との待遇格差を是正する方針を打ち出した 日本郵政 年齢による差別に他ならない定年退職制の非合理性 「 「日本郵政の手当廃止」が示す"正社員"の未来 「同一労働同一賃金」で既得権にメスが入った」 東洋経済オンライン 倉重 公太朗 (その1)(「日本郵政の手当廃止」が示す"正社員"の未来 「同一労働同一賃金」で既得権にメスが入った、“同一労働同一賃金” 最高裁が初判断 定年後再雇用の賃金引き下げは社会の不利益 最高裁判決から考える) 定年退職後再雇用の機会に、わずかの賞与分の人件費を節約しようとする機会主義的な意図が企業側にあったとすれば、残念なことである 非正規雇用問題 「定年後再雇用の賃金引き下げは社会の不利益、最高裁判決から考える」 ダイヤモンド・オンライン 定年後の再雇用のケース NHK時論公論 本来、賃金は毎年の労働の対価であり、老後の生活保障の手段である退職金や厚生年金と相殺されるべきものではないだろう 長澤運輸のトラック運転手の賃金の年齢や勤続給の水準は低く、40年間勤務でも年間13万円弱に過ぎないフラットな職務給であり、無制限な賃金コスト増加にはほど遠い状況であった。 ここで再雇用された運転手の賃金総額が2割減になったことの主因は、基本給の5ヵ月分の賞与がなくなったことにある
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健康(その4)(トマト2個で肺機能を守る 前喫煙者でも効果あり、動きやすい部位の体操だけで満足してませんか?アンバランスなストレッチの習慣は逆効果の恐れも、「コレステロール=悪」は古い!控えるべきでない人もいる) [生活]

健康については、1月9日に取上げた。今日は、(その4)(トマト2個で肺機能を守る 前喫煙者でも効果あり、動きやすい部位の体操だけで満足してませんか?アンバランスなストレッチの習慣は逆効果の恐れも、「コレステロール=悪」は古い!控えるべきでない人もいる)である。

先ずは、フィットネスライターの松尾直俊氏が1月22日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「動きやすい部位の体操だけで満足してませんか?アンバランスなストレッチの習慣は逆効果の恐れも」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ 体を健康的に保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一氏が誤った健康常識を一刀両断。効果的で結果の出る、遠回りしないための健康術を紹介する。今回は、筋肉に張りやコリを感じた時に行うストレッチについて。仕事の合間などに行う人も多いだろうが、誤ったストレッチではかえって逆効果なこともあるようだ。
・仕事中は長時間のパソコン作業に、通勤途中の電車やバスの中ではスマートフォンの操作……。現代人は一日中同じ姿勢を続けることが多くなっている。さらに、歩くことや日常の家事で体を大きく動かすことも少なくなり、生活レベルでの活動量も減ってしまっている。
・筋肉は使わなければ、その能力が衰えていくと同時に、柔軟性も失われる。つまり体はどんどん硬くなってしまうのだ。「そこで多くの人は、柔軟性を回復させようとストレッチをしますよね。私はフィジカルトレーナーとして、そのこと自体は良いことだと思いますし、積極的にやってもらいたいと思っています。ただ、一般の方々が自己流で行っているストレッチには、いくつか見直してもらいたい点があるのです」と中野さんは語る。
▽可動域の限界を超えたストレッチは靭帯や腱を痛める
・一般の人がオフィスなどでよく手軽に行うのは、肩や首などの“静的ストレッチ”だ。長時間同じ姿勢を続け、凝り固まった筋肉を静的ストレッチで引き伸ばし、刺激を加えると、一時的だが気持ちがいいことは確かだ。定期的に行えば体の柔軟性が回復し、血行も良くなって、凝り固まりやすい体質が改善する。しかし、冬の気温が低い時期は注意が必要だ。
・「筋肉が冷えた状態で過剰な力で無理に引き伸ばすと、関節の可動域の限度を超えてしまい、筋肉だけでなく、靱帯や腱に大きな負担がかかります。すると、それらの組織を傷める可能性が高まります。運動後やお風呂から上がった後、まだ体が温かいうちに行うといいと思います」(中野さん)。
▽動かし難い部位こそ入念にストレッチ
・一般の人が行っているストレッチには、もう一つの問題点がある。多くの人が自分の知っている限られた部位のストレッチだけを繰り返す習慣があることだ。すると、柔らかい筋肉と硬いままの部位ができて、体の柔軟性のバランスが崩れてしまうのだ。「それが体の歪みにつながる場合があり、不快感を一層高める恐れがあります」(中野さん)
・筋肉は収縮することで力を発揮する。その際に、反対側の筋肉は引き伸ばされることになる。一方が収縮しているのに、反対側が硬いままだと、筋肉は無理に引っ張られて負担がかかる。その結果、前後・左右の筋肉の柔軟性のバランスがどんどん崩れていく可能性がある。それに、ほとんどの人が動かし難い筋肉を伸ばすことを避けてしまう傾向にある。本来であれば、硬くなって動きが鈍い部位こそストレッチをしなくてはいけない。
・「どこの筋肉が硬くなって、どの筋肉が緩んでいるかということを自覚できない人もいます。そういった人は、マッサージに行った時などに、どこが柔軟性が低く、硬くなっているかを、専門家に具体的な筋肉名を出して指摘してもらうといいですね。私自身もそうしてもらうことがあります。すると、自分では気がついていない部位が硬くなっていたり、逆に筋肉が、本来の良い意味での張りをなくしていたりすることがあるのです」(中野さん)
・伸びにくい箇所は、放っておくとさらに固縮が進んで動きが鈍くなってしまう。それを自覚して、積極的にストレッチすることが大切だ。 「こうした筋肉の柔軟性のアンバランスは、みなさんが知っているストレッチのバリエーションが少ないことも考えられます。今なら、「(筋肉名) ストレッチ」とネットの検索サービスで入力すれば、いろいろな方法が出てきます。一つの部位を伸ばすにしても、その人の筋肉の硬さやストレッチのやりやすさが異なりますから、いくつかの方法を試してみて自分に合ったものを取り入れてもらえればいいと思います」(中野さん)
・座ったままの姿勢で長時間の仕事をする人が硬くなりがちなのは、お尻の大殿筋と肩甲骨周辺の筋肉だが、この部分のストレッチを日常的に実践している人は多くないという。特にお尻の筋肉は、固縮しているのに気がつかない人も少なくない。今回は中野さんの実演動画で、大殿筋の静的ストレッチと肩甲骨周りの動的ストレッチを紹介する。ぜひとも生活の中に取り入れて、体の柔軟性をバランス良く確保し、快適な体を維持しよう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/110700081/011900019/?P=1

次に、医学ライターの井手ゆきえ氏が2月8日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トマト2個で肺機能を守る、前喫煙者でも効果あり」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・あまり意識しないが呼吸機能も30代から衰え始める。 たとえば、息を思いっ切りはき出した際の「瞬間最大風速:ピークフロー」は年齢とともに減速し、肺活量や換気能力もじわじわ低下する。中高年以降にランニングや登山などきつめの有酸素運動がしんどくなるのは、心機能の低下に加えて、肺機能の衰えが影響するからだ。
・心機能と食事の関係については多数の研究報告があるが、ここ数年、肺機能を改善する食事についての報告が増えてきた。総合すると、野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミン──ビタミンC、D、Eとβカロテン、そしてリコピンやフラボノイドなどの「フィトケミカル」が肺機能の衰えにブレーキをかける成分のようだ。
・昨年末に報告されたドイツ・英国・ノルウェー3カ国の住民を対象とした疫学調査では、果物(リンゴ、バナナ、オレンジ、ナシ、ベリー類)、そしてトマトは肺機能の低下を抑えることが示された。  同調査は、2002年に参加者680人(平均年齢43.8歳、男女比は1対1)について、食事の摂取状況と肺機能の検査値を調べ、10年後の数値と比較したもの。
・登録時、現役喫煙者は16.9%、過去1カ月間たばこを吸っていない前喫煙者が41%、非喫煙者は42.2%だった。 登録から10年後の検査では、肺機能は順調(?)に低下。しかし、果物類の総摂取量が多いほど衰えるスピードを抑えられることが判明したのだ。特に「生トマト」は、単独で有意に肺機能の低下を抑えた。生トマトの摂取量が1日1個未満の人は、1日2個以上を食べる人に比べ明らかに肺機能が衰えていたのである。
・研究者は「果物をたくさん含む食事は、加齢にともなう肺機能の衰えを抑える。たとえ喫煙歴があっても、肺のダメージを修復できるかもしれない」としている。 ただ、前喫煙者が食改善で利益を得るには、果物を毎日3人前ほど食べる必要があり、少々きつい。一方の生トマトは一年中出回っていることもあり、ハードルが低そうだ。朝昼のサラダと夜の冷やしトマトで肺機能を守ろう。
http://diamond.jp/articles/-/158943

第三に、管理栄養士の岡田明子氏が3月5日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「コレステロール=悪」は古い!控えるべきでない人もいる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽コレステロールは悪者か 2014年から目標量の基準は撤廃
・コレステロールと聞くと悪いイメージを持っている人が多いのではないでしょうか? しかし、コレステロールは私たちの体にとって大切なものなのです。 コレステロールは体内で合成できる脂質で、細胞やホルモンの材料になります。機能が正反対になっている2種類があり、LDLコレステロールは、肝臓から全身の細胞にコレステロールを運ぶ役割を担っています。それに対してHDLコレステロールは、余分なコレステロールを全身から集めて肝臓に戻す役割を担っています。
・かつてはコレステロールの摂取基準(目標量)が定められていました。しかし、厚生労働省が2014年3月に発表した日本人の食事摂取基準(2015年版)から、コレステロールの摂取基準はなくなりました。食事から摂取されるコレステロールは、体内で作られるコレステロールの3分の1~7分の1ほどしか占めていないため、影響は少ないということが分かってきたからです。
・ただ、いくら基準がなくなったとしても、「コレステロールを多く含む食品をどれだけ食べてもOK」ということではありません。体内でコレステロールが合成される量や使われる量は、個人差が大きいということを覚えておかなければなりません。遺伝的背景や代謝状態に影響されるからです。
・つまり、コレステロールをどれくらい摂ればよいか? どれくらい抑えればよいか? は人それぞれと言えます。しかし、健康診断で「高コレステロール」と診断された人や遺伝的にコレステロールが高めの人は、心筋梗塞や脳梗塞などの病気にもつながりかねないので、摂取量に注意した方がよいでしょう。 注意の仕方は体型や年齢などの条件によって変わってきます。順にご説明していきます。
▽肥満・遺伝・更年期のタイプ別対策法
(1)太っている人
・まず、体重がオーバーしている人は、体重を減らすだけでもLDLコレステロールの数値を下げることができます。まずは、体重を落とすことを目標にして食事習慣の改善や運動習慣を取り入れていくとよいでしょう。 食習慣では特に、揚げ物や油物の料理、脂が多い肉、バターやクリームなどの油脂を含むお菓子を控え、その代わりに赤身の肉、魚、食物繊維を多く含む食品を意識して摂ることがポイントです。
・食物繊維は、余分なコレステロールの排出を促してくれます。野菜やきのこ、海藻、豆などの食物繊維を多く含む食品を毎食摂ることも意識していきましょう。毎食、副菜の小鉢や汁物を2皿食べることを目標にするとよいですね。
(2)更年期の人
・次に、女性の場合、更年期からコレステロールが上がってしまったという人も多いかと思います。女性ホルモンの「エストロゲン」にはLDLコレステロールの増加を抑える働きがあるため、閉経後にコレステロールが高くなることが多いのです。このケースも食事の見直しをしていくことが大切です。
 +3食以外に油脂の多いケーキやクッキーなどの間食を摂っていないか?
 +クロワッサンやデニッシュ系のパンや菓子パン、クリームチーズのような油脂の多いチーズを摂り過ぎていないか?
・このように、知らず知らずのうちに脂を摂り過ぎていることがあります。更年期は心身ともに大変な時期ですが、食習慣を改善するきっかけにしていきましょう。
(3)遺伝
・若い頃から健康診断でコレステロールが高めに診断される人は遺伝的なものかもしれません。この場合は、食事や運動などの生活習慣の改善だけでは難しいので早めに病院を受診しましょう。
(4)高齢者
・75歳以上の高齢の人は、コレステロールを多く含む食品を控えないようにしてください。コレステロールを多く含む食品は、タンパク質を多く含む動物性のものが多いため、控え過ぎるとタンパク質が不足しがちになり、低栄養になってしまうことがあります。
・高齢の方は、コレステロール値を気にして食事制限するよりも、低栄養にならないようにすることの方が大切です。
・コレステロールを多く含む食品には以下のようなものがあります。(1)~(3)に当てはまる人はこうした食品は控えるようにしましょう。 牛脂/ラード/バター/脂身の多い肉/ベーコン/サラミ/レバー/コンビーフ/卵/マヨネーズ/イカ/タコ/エビ/うなぎ/いくら/タラコ/クリームチーズ など
▽3択で傾向を知るコレステロールクイズ
・コレステロールが多い食事をもう少し詳しくお知らせするため、クイズ形式でご紹介します。
・クイズ1:この中でコレステロールが一番多い丼ぶりは? 1.親子丼 2.うな丼 3.海鮮丼  答え 3.の海鮮丼です。いくらやウニなどの魚卵、イカ、タコ、エビが入っている海鮮丼は一番コレステロ―ルが多いメニューです。続いて、親子丼、うな丼の順番になります。
・クイズ2:この中でコレステロールが一番多い鍋は? 1.おでん 2.豚キムチ鍋 3.もつ鍋  答え 1.のおでんです。ヘルシーな印象があるおでんですが、つみれやちくわなどの練り製品には意外とコレステロールが多く含まれています。また、卵、タコもコレステロールが多い食品です。おでんを食べる時は大根やこんにゃく、昆布など具材を選べばOKです。おでんに続いて、もつ鍋、豚キムチ鍋の順にコレステロールが多いメニューとなります。
・クイズ3:この中でコレステロールが一番多い居酒屋メニューは? 1.鶏の唐揚げ(6個) 2.子持ちししゃも(5尾) 3.出し巻玉子(卵3個分)  答え 3.の出し巻玉子です。卵を3個も使用している出し巻玉子が一番コレステロールが多いメニューです。続いて子持ちししゃも、鶏の唐揚げの順になります。居酒屋では、野菜のメニューと組み合わせてみんなでシェアしながら自分のお皿に取り分けて食べるようにしましょう。
・いかがでしょうか。コレステロールを多く含む食品の傾向が掴めてきたでしょうか。
▽食生活の影響を調べる 改善ポイントのまとめ
・最後に復習にもなりますが、コレステロールが高めの人に向けた食習慣改善ポイントをまとめます。 +揚げ物の回数を減らす
 +バターやクリームを多く含む間食を減らす
 +油脂を多く使用している食品を減らす(クロワッサン、クリームチーズなど)
 +脂身の多い肉を避ける
 +バターや牛脂などの油の使用を減らす
 +野菜、きのこ、海藻を毎食摂る
・コレステロールの上昇が食事によって影響されるかどうかは個人差があるため、高めの人は上記のような食習慣改善に取り組んでみてください。改善前よりもコレステロール値が下がれば食事に影響されているということが分かると思います。ぜひ、次回の健康診断に向けて食習慣の見直しをしていきましょう。
http://diamond.jp/articles/-/162046

第一の記事で、 『可動域の限界を超えたストレッチは靭帯や腱を痛める』、『動かし難い部位こそ入念にストレッチ』、などの指摘はk、言われてみれば、確かにその通りだ。紹介された 『大殿筋の静的ストレッチと肩甲骨周りの動的ストレッチ』、も含めこれから気をつけてやるようにしたい。
第二の記事で、『「トマト2個で肺機能を守る、前喫煙者でも効果あり」』、というのは、喫煙者である私にとってはとりわけ大きな朗報だ。トマトやサラダを大いに食べるようにしたい。
第三の記事で、 人間ドックで、コレステロールを注意されるようになって、10年以上になる。『コレステロールの摂取基準はなくなりました・・・ただ、いくら基準がなくなったとしても、「コレステロールを多く含む食品をどれだけ食べてもOK」ということではありません』、前半では喜んだが、後半になってやはり駄目かと、いささかガッカリした。ただ、『75歳以上の高齢の人は、コレステロールを多く含む食品を控えないようにしてください』、まだ75歳にはなっていないが、近づいているので、コレステロール値で一喜一憂するのはやめ、食事をもっと楽しむことにしたい。
タグ:(その4)(トマト2個で肺機能を守る 前喫煙者でも効果あり、動きやすい部位の体操だけで満足してませんか?アンバランスなストレッチの習慣は逆効果の恐れも、「コレステロール=悪」は古い!控えるべきでない人もいる) 高齢の方は、コレステロール値を気にして食事制限するよりも、低栄養にならないようにすることの方が大切です 健康 コレステロールをどれくらい摂ればよいか? どれくらい抑えればよいか? は人それぞれと言えます 体の柔軟性のバランス 食事から摂取されるコレステロールは、体内で作られるコレステロールの3分の1~7分の1ほどしか占めていない 「動きやすい部位の体操だけで満足してませんか?アンバランスなストレッチの習慣は逆効果の恐れも」 肩甲骨周りの動的ストレッチ 厚生労働省が2014年3月に発表した日本人の食事摂取基準(2015年版)から、コレステロールの摂取基準はなくなりました 日経ビジネスオンライン 大殿筋の静的ストレッチ 「「コレステロール=悪」は古い!控えるべきでない人もいる」 岡田明子 動かし難い部位こそ入念にストレッチ たとえ喫煙歴があっても、肺のダメージを修復できるかもしれない 果物類の総摂取量が多いほど衰えるスピードを抑えられることが判明したのだ。特に「生トマト」は、単独で有意に肺機能の低下を抑えた 10年後の数値と比較 野菜や果物に含まれる抗酸化ビタミン──ビタミンC、D、Eとβカロテン、そしてリコピンやフラボノイドなどの「フィトケミカル」が肺機能の衰えにブレーキをかける成分のようだ 肺機能を改善する食事 「トマト2個で肺機能を守る、前喫煙者でも効果あり」 ダイヤモンド・オンライン 井手ゆきえ 松尾直俊 可動域の限界を超えたストレッチは靭帯や腱を痛める
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欧州(その4)(イタリア:「イタリア式狂騒曲」しかしEU離脱はない BREXITが反面教師に、イタリアは「ユーロ離脱」を問うべきでない 国債金利急騰という市場の審判に耐えられず、高まる懸念、イタリアが弾くユーロ離脱ドミノ 当面は残留も 長期的には離脱に向かう可能性) [世界情勢]

欧州についは、1月1日に取上げた。今日は、(その4)(イタリア:「イタリア式狂騒曲」しかしEU離脱はない BREXITが反面教師に、イタリアは「ユーロ離脱」を問うべきでない 国債金利急騰という市場の審判に耐えられず、高まる懸念、イタリアが弾くユーロ離脱ドミノ 当面は残留も 長期的には離脱に向かう可能性)である。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が5月29日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「「イタリア式狂騒曲」しかしEU離脱はない BREXITが反面教師に」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ユーロ圏第3位の経済規模であるイタリアで政治混迷が収まらない。いったんポピュリスト(大衆迎合主義)政党の「五つ星運動」と極右「同盟」による連立で合意した。しかし首相に指名されたジュゼッペ・コンテ氏の閣僚名簿のなかでユーロ離脱派の財務相候補に、マッタレッラ大統領が拒否権を発動した。
・このためコンテ氏は組閣を断念、イタリアは実務者内閣への組み換えか再選挙に追い込まれることになった。イタリア政治の混迷は英国のEU離脱(BREXIT)や旧東欧圏のEU批判など難題を抱えるEUにとって、新たな火種である。しかし、2019年3月の離脱期限を前に、BREXITをめぐる混乱はEU諸国の反面教師になっている。どんなイタリア政権であれ、EU離脱は選択できないだろう。
▽政治混迷の戦後史
・戦後のイタリア政治といえば、混迷と短期政権が付き物だった。長期の安定政権は到底、期待できず、アングラ経済がはびこる要因とされてきた。今回の政治混乱もそんな「イタリア式狂騒曲」の一形態といえるだろう。
・もともと、ポピュリストの五つ星と極右の同盟は水と油で、連立はありえないとみられてきた。五つ星はコメディアンのグリッロ氏が立ち上げた草の根の政治運動で、初の女性ローマ市長を誕生させて注目された。環境保護を掲げるとともに、EU統合に懐疑的だ。
・一方で、同盟は北部同盟として出発した。フランスの「国民戦線」と組む極右政党である。ユーロ圏からの離脱や反移民、難民を掲げてきた。互いに批判し合ってきたが、中道の既成政党がいっせいに没落するなかで、極右・ポピュリスト連立が浮上した。
・極右ポピュリズムといえば、その元祖はイタリアが生んだ独裁者、ムッソリーニがあげられる。ヒトラーがその政治手法をお手本にした。戦後のイタリア政治は、独裁者・ムッソリーニの轍を踏まないよう、元老院や地方政府に権力を分散する政治制度を採用した。それが政治の「イタリア式狂騒曲」を生む結果になったのは歴史の皮肉である。
・そうしたイタリア政治の混迷を打開しようと、若きレンツィ首相は2016年12月、憲法改正の国民投票に打って出た。しかしそれは裏目に出る。国民投票は否決され、改革派のレンツィ首相は退陣に追い込まれる。それがいまのイタリア政治の混迷につながっている。「イタリア式狂騒曲」はなお続くと考えておかなければならないだろう。
▽「学者首相」の組閣断念
・極右・ポピュリスト連立政権構想で首相に指名されたのは、五つ星のディ・マイオ党首でも同盟のサルビーニ党首でもなかった。政治経験のまったくない民法学者のコンテ氏だった。もちろん混迷のイタリア政治では、学者が首相になるのは珍しくない。最近では2011年、財政危機打開のため、経済学者のマリオ・モンティ氏が首相に担ぎ出されている。モンティ氏はブリュッセルのシンクタンク、ブリューゲルの所長をつとめるなど、熱心な欧州統合論者として知られていた。イタリア再生とEU再生にとって期待の星だったのである。
・モンティ首相の経済政策は改革と成長の両立をめざすもので、ユーロ危機後のEU改革のモデルになったほどだ。事実、メルケル独首相は、影の薄かったオランド仏大統領よりもモンティ首相を頼みにしていた。EU首脳会議の取材でこんな光景を見たことがある。メルケル首相が会議場の片隅で最も長く話し込んでいたのはモンティ首相だった。まるでモンティ教授に教えを乞うように見えた。
・これに対して、無名のコンテ氏は組閣断念に追い込まれる。ユーロ離脱を主張してきたエコノミストのサボナ氏を財務相に起用することに、EUの原加盟国でユーロの創設メンバーであるイタリアの将来を揺るがすとマッタレッラ大統領が強い危機感を示し、拒否したからだ。コンテ氏の挫折が最初にあったことは、イタリアの将来にとっては不幸中の幸いというべきかもしれない。
▽財政バラマキなら危機増幅の恐れ
・なにしろ極右・ポピュリスト連合が打ち出したのは、最低所得保障制度の導入や大幅減税など、無責任な財政バラマキ策である。失業者一人当たり月780ユーロ(約10万円)の最低所得保障を実施する。合わせて、法人・所得税を20%、15%の2段階に簡素化し、減税する。これらの財政負担は少なくとも年650億ユーロかかる計算だ。
・いったんは、欧州中央銀行(ECB)が保有するイタリア国債の債務免除(2500億ユーロ)まで検討したが、批判が集中すると、今度は、このイタリア国債を財政赤字とみなさないよう求める構えだった。イタリア財務省出身のドラギECB総裁のメンツをつぶすような無理難題だといえる。
・極右・ポピュリスト連立合意では、EUの基本である財政基準の緩和も求めていた。財政赤字の国内総生産(GDP)比を3%以内にする基準である。イタリアの財政赤字のGDP比は2017年に2・3%と基準内にあるが、財政バラマキが実施されば、基準を突破しかねない状況だ。政府債務残高のGDP比は130%とギリシャの180%に次ぐ高水準にある。ユーロ基準の60%の倍以上にあたる。
・イタリアの放漫財政懸念からイタリア国債は売られ、30年物国債の利回りは3%台に上昇している。EU内では、フランスのメール財務相が連立政権の放漫財政に警告を発している。マクロン仏大統領が主導しようとしているユーロ改革に冷水を浴びせる恐れがあるからだ。
・このまま、放漫路線を突き進めば、イタリアがEU内で孤立する可能性が強い。それどころか、イタリア国債の利回り急騰など市場の反乱から、ただでさえ停滞するイタリア経済が危機に逆戻りする危険がある。
▽英国との類似点と相違点
・政治混迷を経てイタリアは、EU離脱で英国の後を追うことになるのか。世界の市場はそこを注視している。たしかに英国とイタリアには、類似点がある。その一方で相違点も多い。
・1992年、欧州通貨危機で英ポンドとイタリア・リラはともにユーロの前身である欧州通貨制度(EMS)の為替相場メカニズム(ERM)から離脱を余儀なくされる。ヘッジ・ファンドの帝王であるジョージ・ソロス氏から売り投機を浴びせられたからだった。ERM離脱は同じだったが、その後が違った。英国はそのままERMには復帰せず、ユーロにも加盟しないまま現在に至っている。そしてBREXITである。その一方で、イタリアは1996年にはERMに復帰する。そしてユーロの創設メンバーになる。
・EUの原加盟国のなかで「イタリアはずし」を進めようという構想である。これに怒ったイタリア政府はドイツが求める国連安全保障理事会の常任理事国入りに反対する方針を示したほどだ。そんな経緯を経て、イタリアはやっとユーロの創設メンバーになれたのである。
・そのイタリアが、ギリシャに端を発するユーロ危機ではPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)と呼ばれる弱い輪の一角になってしまう。さらに、イタリアが放漫財政に傾斜する事態になれば、イタリアの危機がユーロ圏の危機、さらにはEUの危機に連鎖する危険も出かねない。
▽EUの新たな波乱要因に
・EUはただでさえ難題に直面している。英国のEU離脱だけではない。EU主要国のなかでもフランスの「国民戦線」、ドイツの「ドイツ人のための選択肢」、オランダの自由党など極右勢力が政権を脅かす存在になり、オーストリアでは2017年12月に右派連立政権が発足している。 さらにポーランド、ハンガリーなど旧東欧圏には、EU批判が公然化している。EU離脱論は聞かれないが、難民受け入れなどをめぐって、ドイツなど主要国との食い違いは大きくなっている。
・それだけに、ユーロ圏経済第3位のイタリアの政治混乱の衝撃は大きい。ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領の独仏連携がEU再生にどこまで指導力を発揮できるかが試されることになる。
▽BREXITの混乱で離脱ドミノ起きず
・しかし、どんなイタリア政権であれ、EU批判の声を高めても、EU離脱やユーロ離脱に動く可能性はないだろう。五つ星運動が3月の総選挙で第1党になったのは、当初主張していたユーロ離脱を引っ込めて有権者に安心感が広がったことも大きかった。EUからイタリアが受ける大きな恩恵を考えれば、EU批判とEU離脱は別物であるのはすぐわかる。
・なにより、BREXITをめぐる混乱が反面教師になるだろう。2019年3月の離脱期限に向けてBREXITは難交渉が続く。北アイルランドとアイルランドの国境問題はまだ解決していない。離脱後のEUとの自由貿易協定(FTA)も金融を含めるかどうかなど不透明な要素が大きい。
・イタリアの極右・ポピュリズム政権の誕生で、EUは英国に対してますます「いいとこ取りは許さない」(メルケル独首相)という強い態度を取るしかなくなる。離脱交渉はこれまで以上に難航すると考えておかなければならない。
・すでに、金融機関を中心に英国から欧州大陸への機能分散が相次いでいる。このままでは金融センターとしてのロンドン・シティーの座も危うくなりかねない。EUと外資に依存してきた英国にとって、離脱に伴う外資流出は致命的である。ポンド安を超えてポンド危機に陥り、新「英国病」を招きかねない。
・EUのなかでインサイダーとして生きてきたイタリアにとって、EU離脱・ユーロ離脱への道はない。もし、誤った道を歩もうとすれば、その政権は崩壊するしかないだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/052800065/

次に、ニッセイ基礎研究所 主席研究員の伊藤 さゆり 氏が6月1日付け東洋経済オンラインに寄稿した「イタリアは「ユーロ離脱」を問うべきでない 国債金利急騰という市場の審判に耐えられず」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・5月28~29日(欧州時間)に加速した政局不安に端を発するイタリア売りは30日にいったん落ち着いた。セルジョ・マッタレッラ大統領が反対したユーロ懐疑派の財務相候補の人事を見直すことで、「五つ星運動」と「同盟」による連立政権樹立の可能性が再浮上したことが背景だ。
・五つ星運動と同盟の連立は、欧州連合(EU)懐疑主義政権として、さまざまな連立の組み合わせの中で、イタリアの信用力にとって「最悪」とされてきたはずだ。ところが、その両党による政権樹立の動きを、市場はマッタレッラ大統領により首相に指名されたカルロ・コッタレリ元国際通貨基金(IMF)財政局長による実務家内閣よりも好感した形だ。
▽薄氷踏む、「同盟」と「五つ星」の連携
・なぜ、市場は五つ星運動・同盟の連立政権の方がマシと判断したのか。 おそらく、実務家内閣が発足した場合は、以下の3段階の展開が起きることが強く意識されたからだろう。 第1段階は、上下両院で五つ星運動と同盟が過半数を占める状況では、実務家内閣が信認を得ることは困難なため、早ければ7月にも再選挙になるという展開だ。第2段階は、再選挙でも、五つ星運動・同盟が合計で過半数の議席を獲得、さらに議席を上積みするという展開だ。第3段階は、再選挙は、事実上「ユーロ離脱」の是非を問う国民投票の様相を呈し、五つ星運動と同盟の勝利が、ユーロ離脱への布石となるという展開だ。
・本稿執筆時点では、このまま五つ星運動と同盟の連立政権樹立に至るのか、実務家内閣の暫定政権を経て再選挙に至るのかなど、なお流動的な情勢だ。
・直近の世論調査は、五つ星運動が第1位の座を守りつつも、やや支持を低下させる一方、同盟の支持率はうなぎのぼりで五つ星運動との差がつまりつつある。マッタレッラ大統領の弾劾を安易に口にするなど、時に政治家としての未熟さを露呈する五つ星運動のルイジ・ディマイオ党首に対し、同盟のマッテオ・サルヴィーニ書記長は信頼できる政治家としてのイメージの定着に成功しつつある。同盟は、再選挙ではいっそうの票の上積みを期待でき、中道右派連合の中核政党としての政権掌握というシナリオも思い描ける。このまま五つ星運動と歩調を合わせ続けるとは限らない。
・市場は、しばらくイタリアの政治情勢に一喜一憂させられそうだ。 現在のイタリアでは、国際条約の是非を問う国民投票の制度はないが、仮に、「ユーロ離脱」の是非を問うた場合、イタリア国民は離脱を選ぶのだろうか。
・イタリアは、EU(欧州連合)の創設メンバーであり、ユーロにも発足当初から参加している国だが、ユーロの人気は低い。EUの欧州委員会の世論調査「ユーロバロメーター」でも、イタリアのユーロへの支持はユーロを導入する19カ国で最も低い。
・2017年時点でも、家計の1人当たり実質可処分所得は、1999年のユーロ導入時の水準を下回っている。「物価水準が上がった」、「通貨切り下げという競争力回復のルートを奪われた」という不満は根強い。政治家が長年にわたって不人気な緊縮財政や労働市場などの改革の受け入れを「ユーロ導入国の義務」として国民に求めてきた結果ともいえるかもしれない。
・イタリアのユーロへの支持は、圏内で最も低いとはいえ、59%あり、国民投票があれば残留という結果が予想されるのだが、僅差となる可能性はある。フランス大統領選挙の決選投票で、親EUのマクロン大統領が、EU懐疑主義のルペン候補に勝利した決め手の1つは、ルペン候補が示唆するユーロ離脱は資産価値の低下を招き、フランスは貧しくなると、呼びかけたことだった。
・イタリアでも、人口のおよそ45%を占める豊かな北部では同様の訴えが響くだろう。しかし、人口のおよそ35%を占める南部は所得水準が低く、失業率が高止まる。繁栄から取り残されたという思いを抱く人々には、「ユーロから離脱すれば貧しくなる」という呼びかけは響きにくい。既存の体制に不満を持つ人々の意思表明として離脱票が多数を占める可能性は十分にある。
▽EUやユーロを標的にすれば市場から撃たれる
・英国のEU離脱の是非を問う国民投票で、移民にスポットがあたり、離脱の意味が十分に吟味されなかったように、ユーロ離脱のコストとベネフィットが十分検証されないまま離脱を選ぶリスクも、国民投票にはつきまとう。
・そもそも、国民投票の結果以前に、逆戻りできない通貨として導入されたユーロ離脱の是非を国民投票で問おうとする試み自体が、EU、ユーロばかりでなく、イタリアの信用を大きく傷つける。
・巨額の政府債務残高を抱えるイタリアの場合、5月28~29日に見られたように信用低下で利回りが上昇すれば、財政の余裕度は乏しくなる。五つ星運動と同盟が「政権協議」に盛り込んだ大規模な財政拡張は、EUの財政ルールに抵触することでEUとの対立が先鋭化する以前に、市場によって阻止されるだろう。
・EUでは、6月28~29日にEU首脳会議を控え、ユーロ制度改革の議論が大詰めを迎える。イタリアが強い不満を持つEUの財政ルールの見直しも課題の1つだ。イタリアの新政権は、どのような経緯で成立し、どのような組み合わせになるにせよ、EUやユーロを、有権者の不満のはけ口や支持獲得の材料とするのではなく、よりよい制度への改革に貢献し、イタリア経済の活性化に生かすことに力を注いで欲しい。
https://toyokeizai.net/articles/-/223222

第三に、ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授のノリエル・ルービニ氏が6月6日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「高まる懸念、イタリアが弾くユーロ離脱ドミノ 当面は残留も、長期的には離脱に向かう可能性」を紹介しよう(▽は小見出し)なお、同氏は経済分析を専門とするRGEモニターの会長も務める。米住宅バブルの崩壊や金融危機の到来を数年前から予測したことで知られる。
・イタリアで欧州懐疑派の政権が誕生した。イタリア国民は現在の経済的苦境の原因がユーロにあると考えている。経済学者ノリエル・ルービニ氏は、イタリアがただちにユーロ圏から離脱することはないだろうが、長期的には離脱に傾いていくだろうと予想する。
・イタリアの株式市場も、リスクの指標となる国内銀行株を中心に株価を下げた。国債デフォルトに対する保証料率も上昇した。 さらに、イタリアが新たな国際金融危機の引き金を引くのではとの懸念さえ浮上する。特に、再び総選挙が行われ、それが事実上、通貨ユーロに対する信任投票となった場合が危険だ。
・イタリアでは今年3月に総選挙が行われ、ポピュリズム政党の「五つ星運動」と極右 の「同盟」が合わせて議会の過半数となる議席を獲得した。我々は総選挙前から既に、市場がこの国の危機にあまりにも無頓着だと警告していた。現在のイタリアの政治危機は一時的なものではない。この国はこれから、抜き差しならないジレンマに国を挙げて直面せざるを得ないのだ。それは、ユーロに縛られ続けるか、それとも経済的、政治的、制度的主権を取り戻すべく努力を始めるか、というジレンマである。
・我々は、短期的には、イタリアは妥協しユーロ圏に留まる道を選ぶと見ている。完全な離脱がもたらすであろう損害を避けるためだ。しかし、長期的には、単一通貨を捨てる誘惑に取りつかれる可能性がある。
▽責任を外圧に転嫁
・イタリアは1992年に欧州為替相場メカニズム(ERM)をいちど脱退し、96年に復帰した。それ以降、イタリアの通貨政策を決定する権限は欧州中央銀行(ECB)に委ねている。それと引き換えにイタリアは、非常に低いインフレ率と低金利の恩恵に浴してきた。巨額の公的債務に対する利払いは、GDP(国内総生産)の12%から5%へと劇的に縮小した。
・それでもイタリア国民は長く、独自の通貨政策を行使できないことに不満を抱き続けてきた。その不満がしだいに、ユーロの加盟国であることの利点を覆い隠すまでに膨らんできた。 ユーロの採用はイタリアの数多くの中小企業にとり重大な意味合いを持った。中小企業はかつて、イタリアが定期的に行う通貨切り下げに頼っていた。それにより経済システムの効率の悪さが打ち消され、競争力が維持できたのである。
・イタリア経済が非効率であることはよく知られている。硬直した労働市場、官民共に研究開発への投資が少ないこと、蔓延する腐敗、広がる脱税や課税逃れ、法制度や役所に無駄が多いこと、などだ。
・それでも、イタリアの歴代政権は、ユーロ加盟国であるために求められる構造改革を推進するにあたり、その必要性を国内状況から説くのではなく、「外的制約」を理由に挙げてきた。それがまた、改革を強要されているという感覚を強める結果となった。
▽イタリアに存在する2つの指揮系統
・通貨政策の決定権を失った結果、イタリアには実質的に2つの政治的指揮系統が出来上がった。1つはドイツ政府を起点に、欧州委員会とECBを経由してイタリアの大統領、財務省、中央銀行へと至る系統だ。この「制度的」指揮系統は、イタリアが、国内の政局とは無関係に国際的に必要な責任を果たし、EUの財政規則を遵守し続けるよう働く。
・もう1つはイタリア首相を起点に、国内問題を担当する各省庁に向かう指揮系統だ。たいていの場合、両者の足並みは揃う。 しかし、両者が相容れないときには衝突せざるを得ない。現在の危機はその一例だ。指名を受けた首相候補者が、もう一方の指揮系統に諮ることなく、新内閣の経済相に欧州懐疑派のエコノミスト、パオロ・サボナ氏を起用しようとしたことで矛盾が表面化した。大統領は当然、サボナ氏の経済相起用を拒否した。
▽差しあたりは残留、だが……
・イタリアは果たしてユーロのくびきから逃れる道を選ぶのか、という問題に戻ろう。ユーロは、利点があったとはいえ、イタリア経済に期待通りの結果をもたらさなかった。現在の1人当たりの実質(インフレ調整後)GDPは、ユーロの実験が始まった1998年当時よりも低い。ギリシャでさえ、2009年以後、不況に見舞われているにもかかわらずなんとか経済を成長に転じているのだが。
・イタリア経済が伸び悩む理由として、ユーロ圏が通貨同盟として不完全で、ドイツなど「中核」国がイタリアのような「周辺国」から雇用と資本を吸い上げていることを挙げる議論がある。これに対して、イタリアが規則や基準を守れず、通貨同盟が成功するための前提となる国内改革を実施しないことを指摘する意見もあるだろう。
・しかし今となっては本当の理由などもはや関係がない。イタリア国内には、この不況はユーロのせいであるとする説明が流布している。議会では現在、ユーロ圏からの離脱をあからさまに、あるいは密かに求めてきた政党が過半数を握る。今年または19年早々に再び総選挙を行ったとしても、ユーロ離脱派が過半数を維持する可能性が高い。
・世論調査から推測する限り、単一通貨を維持するか放棄するかの選択を迫られた場合、イタリア国民は差しあたりユーロ圏への残留を選ぶものと思われる。ギリシャが12~15年に経験した、銀行への取り付け騒ぎや公的債務の負担を恐れてのことだ。
・しかし、残留がもたらす長期的な負担を考えると、国民は離脱に傾いていくかもしれない。ユーロ圏は、ドイツが定めた必然的にデフレ圧力がかかる規則が支配しているからだ。その決断は、新たな国際金融危機か景気後退、あるいは非対称的なショックに襲われている中で下される可能性がある。そうなると、脆弱な数カ国がユーロ圏から同時に離脱することになる。
・イタリア国民は、英国のEU離脱派と同じく、世界経済の中で独力で成功を収めるために必要なものを自分たちは持ち合わせていると確信しているかもしれない。何にせよ、イタリアには世界に輸出する能力を持つ大きな産業がある。輸出業者にとって、通貨は弱いほうが利益になる。「これらの産業が潰れたり外国の手に渡ったりする前にユーロ圏から離脱しよう。既にその徴候が見られるではないか」と考えたくなっても不思議はない。
▽通貨リラの復活で貯蓄の価値は激減
・イタリアが最終的に離脱の道を選んだ場合、差し当たって負担を担うのは国内に貯蓄を持つ人々だ。その蓄えは価値の下がったリラに置き換わる。離脱により新たな金融危機が生じて銀行が業務を停止したり、資本規制が行われたりすれば、その負担は一層重くのしかかる。そうした可能性を目前にすれば、イタリア国民も15年のギリシャ国民と同じようにたじろいで残留を選ぶかもしれない。その一方で、目をつむり、思い切って離脱に踏み切ることも考えられる。
・イタリアはユーロ圏に残り、相応の改革を進めるほうがよい結果が得られるだろう。しかし、長期的には離脱する可能性のほうが高くなるのではないかと我々は懸念する。イタリアは、機関車が脱線した列車のようなものだ。つながった客車が脱線していくのは時間の問題だろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/226422/060500001/?P=1

第一の記事で、 『戦後のイタリア政治といえば、混迷と短期政権が付き物だった。長期の安定政権は到底、期待できず、アングラ経済がはびこる要因とされてきた。今回の政治混乱もそんな「イタリア式狂騒曲」の一形態といえるだろう』、『極右ポピュリズムといえば、その元祖はイタリアが生んだ独裁者、ムッソリーニがあげられる。ヒトラーがその政治手法をお手本にした。戦後のイタリア政治は、独裁者・ムッソリーニの轍を踏まないよう、元老院や地方政府に権力を分散する政治制度を採用した。それが政治の「イタリア式狂騒曲」を生む結果になったのは歴史の皮肉である』、『このまま、放漫路線を突き進めば、イタリアがEU内で孤立する可能性が強い。それどころか、イタリア国債の利回り急騰など市場の反乱から、ただでさえ停滞するイタリア経済が危機に逆戻りする危険がある』、などというのはさすがに的確な指摘だ。ただ、『EUのなかでインサイダーとして生きてきたイタリアにとって、EU離脱・ユーロ離脱への道はない。もし、誤った道を歩もうとすれば、その政権は崩壊するしかないだろう』、との指摘は第三の記事と比較すると、楽観的過ぎるのかも知れない。
第二の記事で、『本稿執筆時点では、このまま五つ星運動と同盟の連立政権樹立に至るのか、実務家内閣の暫定政権を経て再選挙に至るのかなど、なお流動的な情勢だ』、については、6月2日付け日経新聞は、経済・財務相に研究者出身のジョバンニ・トリア氏を就かせることで、内閣はかろうじて成立したようだ。『人口のおよそ35%を占める南部は所得水準が低く、失業率が高止まる。繁栄から取り残されたという思いを抱く人々には、「ユーロから離脱すれば貧しくなる」という呼びかけは響きにくい。既存の体制に不満を持つ人々の意思表明として離脱票が多数を占める可能性は十分にある』、『五つ星運動と同盟が「政権協議」に盛り込んだ大規模な財政拡張は、EUの財政ルールに抵触することでEUとの対立が先鋭化する以前に、市場によって阻止されるだろう』、というのは参考になる見方だ。
第三の記事で、 『現在のイタリアの政治危機は一時的なものではない。この国はこれから、抜き差しならないジレンマに国を挙げて直面せざるを得ないのだ。それは、ユーロに縛られ続けるか、それとも経済的、政治的、制度的主権を取り戻すべく努力を始めるか、というジレンマである。 我々は、短期的には、イタリアは妥協しユーロ圏に留まる道を選ぶと見ている。完全な離脱がもたらすであろう損害を避けるためだ。しかし、長期的には、単一通貨を捨てる誘惑に取りつかれる可能性がある』、という指摘は説得力がある。 『イタリアの歴代政権は、ユーロ加盟国であるために求められる構造改革を推進するにあたり、その必要性を国内状況から説くのではなく、「外的制約」を理由に挙げてきた。それがまた、改革を強要されているという感覚を強める結果となった』、つまり右派・ポピュリズム政権を誕生させた背景に、歴代政権の無責任な姿勢があるようだ。ただ、 『イタリアが最終的に離脱の道を選んだ場合、差し当たって負担を担うのは国内に貯蓄を持つ人々だ。その蓄えは価値の下がったリラに置き換わる。離脱により新たな金融危機が生じて銀行が業務を停止したり、資本規制が行われたりすれば、その負担は一層重くのしかかる。そうした可能性を目前にすれば、イタリア国民も15年のギリシャ国民と同じようにたじろいで残留を選ぶかもしれない』、というのは興味深い指摘だ。
いずれにしろ、欧州連合(EU)は、米国との貿易戦争、英国離脱と並んで難題を抱え込んだものだ。
タグ:欧州 残留がもたらす長期的な負担を考えると、国民は離脱に傾いていくかもしれない 英国との類似点と相違点 薄氷踏む、「同盟」と「五つ星」の連携 連立で合意 イタリアの歴代政権は、ユーロ加盟国であるために求められる構造改革を推進するにあたり、その必要性を国内状況から説くのではなく、「外的制約」を理由に挙げてきた。それがまた、改革を強要されているという感覚を強める結果となった 責任を外圧に転嫁 岡部 直明 「高まる懸念、イタリアが弾くユーロ離脱ドミノ 当面は残留も、長期的には離脱に向かう可能性」 伊藤 さゆり 極右「同盟」 EUのなかでインサイダーとして生きてきたイタリアにとって、EU離脱・ユーロ離脱への道はない。もし、誤った道を歩もうとすれば、その政権は崩壊するしかないだろう 人口のおよそ35%を占める南部は所得水準が低く、失業率が高止まる。繁栄から取り残されたという思いを抱く人々には、「ユーロから離脱すれば貧しくなる」という呼びかけは響きにくい。既存の体制に不満を持つ人々の意思表明として離脱票が多数を占める可能性は十分にある 「「イタリア式狂騒曲」しかしEU離脱はない BREXITが反面教師に」 しかし、長期的には、単一通貨を捨てる誘惑に取りつかれる可能性がある ポピュリスト(大衆迎合主義)政党の「五つ星運動」 政治混迷の戦後史 日経ビジネスオンライン BREXITの混乱で離脱ドミノ起きず ・イタリアは、EU(欧州連合)の創設メンバーであり、ユーロにも発足当初から参加している国だが、ユーロの人気は低い もともと、ポピュリストの五つ星と極右の同盟は水と油で、連立はありえないとみられてきた 短期的には、イタリアは妥協しユーロ圏に留まる道を選ぶと見ている。完全な離脱がもたらすであろう損害を避けるためだ このまま、放漫路線を突き進めば、イタリアがEU内で孤立する可能性が強い。それどころか、イタリア国債の利回り急騰など市場の反乱から、ただでさえ停滞するイタリア経済が危機に逆戻りする危険がある 「イタリアは「ユーロ離脱」を問うべきでない 国債金利急騰という市場の審判に耐えられず」 戦後のイタリア政治は、独裁者・ムッソリーニの轍を踏まないよう、元老院や地方政府に権力を分散する政治制度を採用した。それが政治の「イタリア式狂騒曲」を生む結果になったのは歴史の皮肉である 硬直した労働市場、官民共に研究開発への投資が少ないこと、蔓延する腐敗、広がる脱税や課税逃れ、法制度や役所に無駄が多いこと、などだ。 (その4)(イタリア:「イタリア式狂騒曲」しかしEU離脱はない BREXITが反面教師に、イタリアは「ユーロ離脱」を問うべきでない 国債金利急騰という市場の審判に耐えられず、高まる懸念、イタリアが弾くユーロ離脱ドミノ 当面は残留も 長期的には離脱に向かう可能性) 閣僚名簿のなかでユーロ離脱派の財務相候補に、マッタレッラ大統領が拒否権を発動 ノリエル・ルービニ EUはただでさえ難題に直面 東洋経済オンライン 通貨リラの復活で貯蓄の価値は激減 財政バラマキなら危機増幅の恐れ 極右ポピュリズムといえば、その元祖はイタリアが生んだ独裁者、ムッソリーニがあげられる。ヒトラーがその政治手法をお手本にした ・イタリア経済が非効率 EUやユーロを標的にすれば市場から撃たれる
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