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ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略(その9)(もう日本人の出る幕なし?外国人だらけのニセコに見る日本の未来 このままでは「観光大国」は遠い夢…、「ニセコ」が国際リゾートに変貌した真相 立役者のロス・フィンドレー氏に観光戦略を直撃、外国人観光客が日本を「面倒」だと感じる瞬間 観光立国フランスに比べて足りないものは?) [経済政策]

ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略については、2月28日に取上げた。今日は、(その9)(もう日本人の出る幕なし?外国人だらけのニセコに見る日本の未来 このままでは「観光大国」は遠い夢…、「ニセコ」が国際リゾートに変貌した真相 立役者のロス・フィンドレー氏に観光戦略を直撃、外国人観光客が日本を「面倒」だと感じる瞬間 観光立国フランスに比べて足りないものは?)である。

先ずは、金融アナリストの高橋 克英氏が4月21日付け現代ビジネスに寄稿した「もう日本人の出る幕なし?外国人だらけのニセコに見る日本の未来 このままでは「観光大国」は遠い夢…」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・いまや「日本で最も国際的なリゾート」といわれる北海道ニセコ。街は外国人で溢れ、看板や物価も完全に富裕層向けにシフトしている。高級ホテルの建設ラッシュに沸く同地区は、地価の上昇でも3年連続国内トップを記録した。ところが、当然ウハウハだと思われた地元経済の実態は……? 毎年同地をスキーで訪れている金融コンサルタント、マリブジャパン代表の高橋克英さんが、最新事情から「インバウンド」という言葉にすがる日本の未来を読み解く。
▽日本人客にも「まずは英語で話しかける」ニセコ事情
・パウダースノーで世界的に有名な北海道のニセコリゾート。オーストラリア人やフランス人に華僑を中心に、今年も世界中から多くのスキーヤー、スノーボーダ―が同地を訪れ、温泉とともにスノーシーズンを満喫した。 地元の倶知安町が、スイスのサンモリッツと姉妹都市の提携を結んでから54年、いまやニセコは「東洋のサンモリッツ」から「世界のニセコ」として、その名を世界のスキーヤーや富裕層に知られる存在となっている。
・私事ながらスキーが趣味で、ここ数年、毎年ニセコを訪れているが、その変貌には目を見張るばかりだ。例えば、ニセコ地区にある4つのスキー場の一つ、東山エリアの中核ホテルである「ヒルトンニセコビレッジ」の館内表記は、日本語よりも英語が先にあり、ホテル従業員も基本、外国人。当然「公用語」は英語である。
・館内の寿司屋では板前が、私のように、どこから見ても日本人にしか見えない相手に対してでも、まずは英語で話かけてくる。宿泊客や利用客の大半が外国人なのだから、見かけは日本人でも、ひょっとしたら外国人かもしれないと考えて接するのは合理的だろう。 こうしたサービスは、なにも外資系のホテルだから行われているというわけではない。
・ニセコで最も栄えている「ひらふ」エリアは、まるでスイスやイタリアの高級スキーリゾートのようだ。ショップの看板や広告も英語表記オンリーで、日本語が一切ない店も珍しくない。ショップの客も従業員も外国人。ひらふ十字路を中心に、スキー場のリフトに乗る地点までのひらふ坂の両側には、欧風デザインのホテルや近代的なコンドミニアムが並んでおり、そのほとんどが外国資本による外国人相手のものだ。
・現在も、ひらふ地区では、あちこちでクレーン車と英語表記の建設看板が立ち並び、さらなる開発が進められている。たとえば今年、私が訪れた際もシンガポールの大手デベロッパーであるSCグローバルが、外国人富裕層向け高級ホテルを建設中だった。
▽日本であって、日本ではない
・冬のニセコは、日本でもっとも外国人率が高い街であり、もはやここは日本であって日本ではない。 京都や金沢など、近年日本の多くの観光地には外国人観光客が訪れている。だが、それらとニセコには決定的な違いがある。それは、ビジネスの対象を外国人、それも富裕層に特化していることだ。しかも、その戦略は大成功を収めている。
・欧米などのスキーリゾートを対象とした「ワールド・スキー・アワード」における、50室未満のブティックホテル部門で、ひらふ地区にある高級デザイナーズ・ホテル「ザ・ヴェール・ニセコ」が世界一に輝いている。カテゴリーが限定されているとはいえ、日本にあるホテルが世界的にこれだけ高く評価された例は過去にもほとんどないはずだ。
・「ザ・ヴェール・ニセコ」の最上階に位置するペントハウスは、ニセコでも最高級とされる部屋の一つで、187㎡の広々とした室内には最高のプレミアム暖炉、バスルーム3つを備え、天井まで届く大きな窓からは北海道の名峰・羊蹄山の壮大な眺めを一望できる。スキーのあとは開放感あふれる57㎡を誇るバルコニーの露天風呂でゆっくりと星空を眺めながらリラックス。まさに至福のひとときに違いない。 このペントハウスは、トップシーズンでは1泊50万円を超えるのだが、なんと、すでに来年2019年のシーズンまで予約で満室状態だという。
・ちなみに、ホテル予約検索サイト「エクスペディア」などで、今年12月から来年3月のスキーシーズンにて宿泊予約しようとしても、「ザ・ヴェール・ニセコ」はじめ、ニセコ地区の高級ブティックホテルは、軒並み既に満室や売り切れとなっている。繰り返すが、今年ではなく、まだ1年近く先の来シーズンの話だ。まるで、バブル期の東京湾岸エリアや都心のクリスマス時期のホテル予約のような狂乱ぶりではないか。
・ニセコが世界的に注目されはじめたのは2000年頃からだ。最初はオーストラリア人から人気に火がつき、その後、SNSなどを通じて評判が広がると、フランスを中心に、イギリス、ドイツ、北欧など、ヨーロッパ各国からもスキーヤーが訪れるようになった。
・理由はズバリ、雪質にある。ご存知の方も多いと思うが、ヨーロッパのアルプスなどの雪質は固く締まっており、初心者には荷が重いところが少なくない。それに対し、ニセコはサラサラのパウダースノーで、しかも毎日のように雪が降るから常に新雪。一度これを体験すると、その違いに病みつきになる人が続出するのも頷ける。しかも、ナイター施設なども充実しているのに加えて、温泉や北海道の食と魅力に溢れている。
▽物価も「世界の高級リゾート水準」
・さらに、ここ数年は、香港やシンガポール、マレーシア、台湾などの華僑を中心とした富裕層や、フィリピン、ベトナム、タイなど、雪が降らない国からの観光客も急増した。大げさではなくニセコでは日本人を探すのが困難になるほど、外国人で賑わっている。
・リッチな外国人客を相手にしているため、物価も世界の高級リゾート相場になっている。ゲレンデ周辺では、ランチの海鮮丼でさえ5000円というのが、ごく標準的な料金だ。すし盛り合わせになると松竹梅で、それぞれ1万円、2万円、3万円も珍しくない。価格に、5000円、1万円といったキリのいい数字がやたらと多いのは、両替や換算を意識してのことだという。
・これだけお金持ちが集まれば当然、地元経済にも恩恵が大きいだろうと思われそうだが、残念ながらそうでもないようだ。 まずショップやレストランだが、いまでは客はもちろん、従業員までも外国人が目立つようになり、日本人の姿がめっきり減っている。私が毎年訪れているレストランでも、昨年までは地元の日本人女性2人が「May I help you?」と慣れない英語で接客のアルバイトをしていたが、今回は、夏場はロンドンで働き、冬はニセコでスキーを楽しみながらアルバイトしているというフランス人青年と、職を求めて中国本土からやってきた20代女性の2名にとって代わられていた。これだけ多くの国から観光客がやってくると、接客にも英語だけでなく、フランス語や広東語までが求められる。これでは、普通の日本人が出る幕はないかもしれない。
・「99.9%お客さんは外国人。今日もフランス人の団体と、香港やマレーシアからのグループの予約で満席です。彼らが満足する接客は、日本人では難しいですね」と英語でアルバイトに指示を出しながら、日本人の料理長は話していた。
・ニセコ地区では、外国資本による別荘やコンドミニアムの開発も進んでおり、外国人スキーヤーや観光客だけでなく、外国人居住者も年々増加している。こうした外国人のために働く外国人従業員の増加もまた、続いている。地元の学校には外国人の子供が増え、新たにインターナショナルスクールも作られているという。
▽なぜか地元も国内資本も儲けられていない
・流入人口が増えれば、当然地価は上昇する。3月末、国土交通省から発表された公示地価では、地元の倶知安町の住宅地の公示地価は前年比33.3%と3年連続全国トップ。しかもトップ3をニセコ地区が独占した。さらに、商業地でも35.6%と全国トップとなり、まさにニセコが日本全国を圧倒している。
・そうなれば、少なくとも不動産開発の分野では、日本のデベロッパーや金融機関が荒稼ぎしているのだろうと思ったのだが、どうやら、それもないようだとわかって驚いた。 私が調べた限り、ニセコでの海外富裕層向けを中心としたコンドミニアムや別荘への不動産投資ニーズに、国内の不動産業者・銀行は、ほとんど応えられていない。海外不動産業者やプライベートバンクと海外富裕層との間には、独自のネットワークが形成され、日系企業が入り込む余地がほとんどない状態であるという。
・ニセコは、まさに「外国人の、外国人による、外国人のためのリゾート」と化していると言っていいだろう。地元ニセコ町の分析でも、民間消費や観光業の生産額のほとんどが、町外に流出超過だとされている。観光客や投資の増加は、もはや地域の収入には十分つながっていないというわけだ。
・もちろん、ニセコ興隆は悪いことではない。ただ、観光客やスキーヤーたちがこれほどお金を落としてくれているのに、地元や日本経済に恩恵がないというのは、もったいなさすぎる。「おもてなしの心」などという美学を奉じて、細やかな気配りを観光産業の中心にすえるのもよいが、奥ゆかしいばかりでハングリー精神に欠けては、世界を相手に、いただけるものもいただけないことになってしまう。
・折しも、来年のG20大阪開催にあわせ、G20観光相会議がニセコで開催されることが決まっている。それに合わせてパークハイアットやリッツ・カールトンといった外資系超高級ホテルやコンドミニアムの開業も予定されており、北海道新幹線の札幌までの延伸にあわせ、ニセコ地区にも新駅ができる予定だ。共存共栄の世界を目指して、出遅れている国内資本による投資の増加に期待したい。
・そこでの成否が、「観光大国」を目指す日本の未来をうらなう試金石になる、と言っても、あながち大げさにすぎるということはないだろう。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55346

次に、ジャーナリストの磯山 友幸氏が6月8日付け日経ビジネスオンラインに掲載したインタビュー記事「「ニセコ」が国際リゾートに変貌した真相 立役者のロス・フィンドレー氏に観光戦略を直撃」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは磯山氏の質問、+は回答内の段落)。
・北海道倶知安町。2018年の公示地価で、住宅地、商業地ともに上昇率全国トップに躍り出た。理由は外国人にスキーリゾートとして「ニセコ」が人気を博していること。外国人自身が別荘などとして不動産を取得しているほか、リゾートとしての発展を見込んだ投資も増えている。いわゆるインバウンド(訪日外国人)に沸いている町だ。2018年1月時点の町の人口は1万6492人だが、うち1648人が外国人。何と1割が外国人という日本の地方としては有数の“国際化”が進んだ地域でもある。そんな倶知安町に30年近くにわたって住み、ニセコの魅力を発信してきたNAC(ニセコアドベンチャーセンター)のロス・フィンドレー社長に話を聞いた。
▽世界中のスキーヤーに高い人気
(ロス・フィンドレー氏:1964年オーストラリア・メルボルン生まれ。キャンベラ大学卒業。米国やスイスでスキーのインストラクターを経験。1989年来日、札幌でスキー学校のインストラクターなどを務める。1992年倶知安町に移住。建設会社で働きながら、スキーのインストラクターを続ける。1994年ニセコアドベンチャーセンター(NAC)設立。社長に就任して今に至る。冬のスキーによる観光しかなかったニセコ地域に、ラフティングなど夏の体験観光を付加、広く国内外から観光客を集めることに成功した立役者。日本人の妻との間に4人の子どもがいる)。
・Q:日本は政府をあげて訪日外国人の受け入れ増加を目指しています。2017年は2869万人が訪れました。ニセコ地域はオーストラリアや欧米からの観光客が多く、観光地として成功していますね。
・ロス・フィンドレー氏(以下、フィンドレー):「ニセコ」ブランドが世界で通用するようになってきました。スキーヤーの間では、スイスのサンモリッツやカナダのウィスラーに引けをとらない知名度になっています。2000年頃にオーストラリアの旅行会社がニセコのスキーを商品にして200人くらい来ました。それをきっかけに、雪質が最高だということで、評判が評判を呼びました。ここは、シーズン中ずっとパウダースノーで、アイスバーンになりません。ただ、リゾート地としての整備はまだまだです。
・Q:何が問題なのでしょうか。
・フィンドレー:通年雇用が多くないので、なかなか優秀な人材が腰を落ち着けて住んでくれません。通年雇用を生む観光業やビジネスを広げなければいけません。私の会社NACでは夏にラフティングを始め、今では夏の間にラフティング目当てのお客さんが3万人近く来るようになりました。
+冬のスキー、夏のラフティングと目玉ができましたが、それでも5、6、10、11の4カ月はお客さんがほとんど来ません。ホテルも営業を休み、海外の人もいなくなります。別荘などもガラガラです。稼働率が極端に落ちる中で従業員を雇い続けることが難しいわけです。
▽観光開発の「グランドデザイン」が不可欠
・Q:1年中お客さんに来てもらう仕掛けづくりが重要だ、と。
・フィンドレー:ええ。1週間は滞在して欲しいので、1週間分の「遊び」を用意しなければいけません。尻別川での川遊びも、ラフティングだけでなく、カヤックや小型のボート「ダッキー」、立って乗る「サップ(スタンドアップパドル)」などに広げています。林道や山道、川原、草原などを走るマウンテンバイク・ツーリングも始めました。
+今年11月にオープンを目指しているのが「NACアドベンチャーパーク」です。町有林を借りて高さ4メートルから13メートルくらいの高さに様々な足場を付け、木から木へと移動していくスリリングな遊びです。難易度の異なるコースを作りますが、小学校高学年ぐらいから楽しめます。
・Q:春から秋までお客さんを引き寄せられる目玉を作っているわけですね。地域の行政や民間が一体になって取り組んでいるのですか。
・フィンドレー:そこが問題なんです。町、北海道、国がバラバラで統一したビジョンがないのです。国も観光庁や国土交通省、農林水産省、経済産業省など縦割りです。
・Q:グランドデザインが描けていない、と。
・フィンドレー:観光開発にはこの地域をどんなエリアにしてブランドを磨いていくのか、グランドデザインが不可欠です。私はアジアのアウトドアの中心地にできると思っています。気候が良く、空気も水も綺麗なニセコに、アジアの都市住民が喧騒を逃れてやってくる。「アウトドアはニセコ」というブランドを距離の近いアジアでプロモーションしていくべきだと考えています。
・Q:ところが省庁は縦割りでまとまらない。
・フィンドレー:私たち民間が何かやろうとして認可を求めても、お役所仕事ですぐに1年2年かかってしまいます。役所の職員は時間がかかってもその間給料がもらえますが、民間は収入なしで従業員を食べさせていかなければなりません。 町長はいろいろな意見をもった人の調整役で、大変だと思います。しかし、町としてのビジョンを掲げるべきだと思いますね。例えば、将来の人口を何人にするかをもっと高く掲げてもいい。
・Q:倶知安町の不動産価格が全国トップの上昇率になっています。
・フィンドレー:投資で新しいおカネが入って来ることはとても大切です。一方で、不動産価格が上がると、住宅の賃料も上がり、スキー場で働こうとする若い人たちの大きな負担になります。町営アパートを活用するなど対策が必要です。
▽英語ができないと仕事にならない
・Q:NACなどフィンドレーさんの会社では何人ぐらい雇っているのですか。
・フィンドレー:社員は20数人ですが、夏になるとアルバイトなどで90人くらいになります。ニセコも人手不足です。ここでは英語ができないと仕事になりません。英語ができないと、雪下ろしのような仕事しかできない。町民教育、グローバル教育に力を入れていく必要があります。
+今は、優秀な人材ほど町から出ていきます。高校進学や大学進学のために出て行って戻ってきません。この町で教育を受けて国際的な大学受験資格であるインターナショナル・バカロレア(IB)を取れるようにする。「グローバル教育研究会」というのが立ち上がって、IBについて研究しています。英会話を学ぶ機会を増やすなど、少しずつ前に進んでいます。
・Q:ニセコに住みたいという外国人は多いのですか。
・フィンドレー:冬だけやってくる外国人も多いのですが、今、定住していて夏もいるのは500世帯くらいでしょうか。日本で暮らしたいと考えている外国人の中には、子どもを東京ではなく自然の多いところで育てたいという人が少なくありません。そうした人たちにニセコは魅力的です。だからこそ、通年で働ける仕事が重要なのです。通年で働ける仕事でないと、スタッフの質も上がりません。
・Q:フィンドレーさんはなぜニセコに定住したのですか。
・フィンドレー:1989年に日本に来ました。札幌・手稲の三浦雄一郎さんのスキースクールでインストラクターをしていましたが、ニセコに遊びに来た時に、若い人たちがたくさん集まっていて非常に楽しかった。もちろん雪質が良いことにもひかれました。それでニセコで働くことにしたのですが、なかなか仕事がありません。ようやく建設会社に採用されて3年間働きました。
+オーストラリアの大学時代、スポーツ科学を学んでいたこともあり、自分でスポーツビジネスがやりたかったのです。それでNACを立ち上げました。1994年に設立して24年が過ぎましたが、札幌でクライミングジムを作るなど順調に拡大しています。
・Q:最近では観光庁の「観光カリスマ」に選ばれるなど、政府の会議のメンバーとして、日本の観光行政に意見を述べています。
・フィンドレー:繰り返しになりますが、明確なビジョンを示してブランドを磨くこと。そして国際的なプロモーションをきちんと行うことです。これはニセコに限ったことではありません。その町その町の特色を打ち出し、魅力を発信することが何より重要だと思います。まだまだ日本の観光はチャンスがあると思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/238117/060700078/?P=1

第三に、『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏が5月2日付け東洋経済オンラインに寄稿した「外国人観光客が日本を「面倒」だと感じる瞬間 観光立国フランスに比べて足りないものは?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・3月29日、日本政府観光局(JNTO)理事長の松山良一氏はフランスのル・フィガロ紙のインタビューに応じ、意外な発言をした。インタビューの中で、松山氏はフランスの人々がなぜもっと日本を訪れないのかについて不思議がったのである。
・同氏は日本政府による過ちや、誤解に言及しなかった。それどころか、フランス人は基本的に今でも1980年代のタイムカプセル内で生きているようなものだと説明した。日本は1980年代当時のまま「物価が高く、フランスから遠く、人々が英語を話さない国」だとフランス人は信じている、というのだ。
▽観光客増加は単なる「巻き返し」にすぎない
・同氏の発言にはいくつか勘違いがある。まず、フランス人はかつてよりずっと日本を訪れるようになっている。実際、筆者の家族や親戚、友人誰もが日本に来たがっている。また、実際に日本はほかのアジア諸国に比べて物価が高く、明らかにフランスから遠く、また、日本人の英語があまり上手ではないのは周知の事実だ。日本はすばらしい国だが、安くもなければ欧州に近くもなく、そこまで国際化されてもいない。これが事実である。
・確かに日本を訪れる観光客が爆発的に増えていることを考えると、日本の観光政策は成功しているように思える。2012年の訪日外国人数は840万人だったが、2017年には2840万人に膨らんだ。2018年はこれを超える数になるだろう。日本政府は、2020年に訪日外国人数を4000万人に増やす考えだが、これは達成可能な数字だ。
・しかし、観光産業に関するかぎり、日本の実態は、いまだ発展途上国だと言わざるをえない。近年の訪日外国人の増加は、すばらしいマーケティングの成果ではなく、単なる「巻き返し」の側面が大きい。 観光産業の発展は長年にわたって日本の厳格な入国管理政策によって阻まれてきた。が、安倍晋三首相が、中国人のビザ要件を緩和したことなどによって、それまで日本に来たがっていたアジアの人々が、容易に日本を訪れられるようになったのである。円安効果も大きかった。
・しかし、実際に訪れている外国人の声を拾うと、日本は「観光インフラ」という点で大いに改善の余地があることがわかる。そこで、ここでは観光立国であるフランスと比べながら、どういう点を改善すべきかを具体的に挙げたいと思う。
・そもそも、なぜフランスから学ぶべきか。それは、フランスが世界屈指の観光立国だからだ。2016年時点での外国人観光客数世界トップはフランスで年間8260万人と、2位の米国(7561万人)に700万人もの差をつけているほか、日本(2400万人)の約3.4倍にも上る。 今後、日本が観光立国を目指すうえで、フランスの取り組みは少なからず参考になるのではないか。
▽いつ誰が乗ろうが変わらない鉄道料金
・さて、フランスと比べた場合、日本の観光政策やインフラに足りないのは、「柔軟性」「シンプルさ」「わかりやすさ」の3つではないだろうか。 まずは、柔軟性。今日、日本には世界各国からあらゆる人が訪れるようになっており、その目的やニーズは多様化している。日本もこれにあわせて、交通、宿泊、体験においてより多面的なサービスを展開すべきである。「日本の観光業は、団体で決まったところをまわるバスツアー的なマインドに基づいてサービスを提供している」と、日本の観光政策に詳しい小西美術工藝社長のデービッド・アトキンソン氏は語る。
・たとえば、柔軟性に足りないという点で最も先に思い浮かぶのが鉄道である。日本全国に張り巡らされている鉄道は、時間に正確で便利だという反面、多くの観光客は高すぎるし、融通が利かないと感じている。たとえば、新幹線の料金は、使う人や使う時期、時間帯などにかかわらず、一定料金である。
・一方、フランス国鉄(SNCF)は、料金体系こそ複雑だが、非常に柔軟なシステムを採用しており、旅行需要の多いハイシーズンの場合、早めに予約すればかなり安く抑えられる仕組みとなっている。実際、お盆に旅行するとして、今予約した場合、JRに比べてどれくらい「お得」になるか比較してみよう。
・たとえば、8月11日に筆者と妻、3人の子どもを連れてパリからボルドーに行く場合、合計料金は170ユーロ、約2万2500円である。対して、東京から距離的に同じくらいの京都に行く場合の料金は、5人合計で11万3120円。なんと5倍である。 JR6社も外国人観光客に対しては、「ジャパン・レール・パス(JRパス)」を発効(正しくは「行」)しており、「のぞみ」などを使わなければ、日本人よりはだいぶ料金を抑えることができるが、なんせこれの予約などが面倒くさい。
・観光客は国内外の代理店などで予約をしてから、日本の引換所でチケットを受け取り、さらに実際の鉄道を予約するには「みどりの窓口」を訪ねなければならない。みどりの窓口にありえないほどの行列ができているのはこのためだ。
・なぜこのすべてをネットでできないのか。たとえば、欧州におけるJRパスである「ユーロ・レール・パス」は、ネットで予約可能だ。この点、「シンプルさ」に欠けている。
▽レンタカーを借りるのも大変
・さらに、面倒なのはロードトリップである。日本政府は地方の活性化に力を入れているが、たとえば九州や東北、四国などですばらしい場所をめぐるにはレンタカーが必要だ。にもかかわらず、外国人観光客が日本で国際免許をとるのはとんでもない労力がかかる。
・日本は、1968年に調印されたウィーン条約の加盟国でないため、たとえばフランス人の運転免許をそのまま利用することはできない(ちなみに、筆者が先日米国で行った際は、事前にネットでレンタカーを予約し、空港で免許すら提示せずに車を借りることができた)。 なので、フランス人が日本で運転したい場合は、日本自動車連盟かフランス大使館から運転免許証の証明書を得る必要がある(料金は3000円)。そして、これもネットでは手配できないし、国外から手配することもできない。「日本のお偉いさんたちは、たった数日しか日本を訪れないような外国人にとって、これがどれだけ非効率的なことかがわかっているのだろうか?」と、あるフランス人外交官は不満を漏らす。
・宿泊についても融通が利かない。日本は家族で行くとなると非常におカネがかかる場所だが、その理由の1つは、たいていのホテルや旅館が「1部屋」ではなく、「1人」に対して料金を課すからだ。このため、1人客を受け付けない宿も少なくなく、私の友人も先頃、旅館を予約しようとしたところ、「2人以上でないと受け付けない」と断わられたばかりだ。
・また、日本の宿には「3泊すればもう1泊ぶんの宿泊料金は無料といったプロモーションもない」と、日本で外国人向けの旅行代理店ジャパン・エクスペリエンスを展開するティエリー・マンサン氏は言う。
・一方、民泊については、日本政府は来年6月に規制緩和を実施する方針だが、自治体が設けている条約がえげつない。たとえば、銀座や日本橋、築地市場など観光名所がある中央区(住宅専用地域)では月曜正午~土曜正午まで営業禁止のほか、若い観光客に人気の渋谷区(住宅専用地域・文教地区)も月曜日午後~金曜日午前まで営業ができない(区立小中学校の夏休みや冬休みなどを除く)。外国人観光客のメッカ、京都市(住居専用地域)では、原則、1月15日正午~3月16日正午に限り営業可能となっている。
・最後に、日本の観光政策には「わかりやすさ」が欠けている。たとえば、「フランスはキャッチフレーズをつけるのがうまい。『花の都』とか、『身体障害者フレンドリー観光』『ワイン畑の探索』など、フランス政府やNGOは、観光客のニーズや嗜好に合わせた旅先や旅の仕方を提案するのに長けている」と、前出のマゼンク氏は言う。
▽ピンチをチャンスに変えてほしい
・日本ではまだこうした取り組みは始まっていない。どころか、日本の旅館・ホテル業界は欧州では当たり前の星による「等級システム」を採用していない「日本政府は呪文のように、『2020年までには外国人観光客を迎える体制を整える』と繰り返しているが、それまでにホテルに等級制を導入しようという考えすらない」と、あるフランス外交官は話す。仮に導入された場合、旅館側から大きな反発が起きることは容易に予想できる。
・が、これには対策がある。「フランスでホテルに星による等級制が導入されたとき、銀行はホテルが設備を刷新できるように積極的に融資を行った」と前出の外交官は語る。旅館は日本を体験できるすばらしい場所だが、一部は設備が古びていたり、最新のサービスを提供できなかったりと、絶滅危惧種になっている。そうであれば、たとえば等級制の導入を、自らのコストを見直したり、顧客のニーズを分析するなどに力を入れる契機だととらえたらどうだろうか。
・日本は本気で外国人観光客にアピールしようとしている。こうした中で必要なのは、日本がその歴史や文化に誇りを持っているというメッセージを海外に流すことよりも、より科学的な分析に基づいたマーケティングである。
・たとえば、欧州の人々は日本の文化や歴史より、自然に関心を持っているという調査もある。そうであれば、そうした人たちに向けて、日本の自然やそれを体験できる場所がどこなのかをアピールすべきだろう。JNTOはかつて、すでに日本を訪れている観光客に対してアンケートを行っていたが、本来は来たことのない人たちに、日本に何を求めているのか聞くべきではないか。
・アトキンソン氏は言う。「日本はまだ、訪日外国人向けの観光対策を始めたばかりだが、過去5年でかなり改善を図ってきた。今後、海外からの観光客がさらに増え、さらにいろいろなところを訪れるようになれば、規模の経済が起きてコストが下がり、さまざまな料金も下がるだろう。私はこの点について非常に楽観的だ」。
https://toyokeizai.net/articles/-/218589

第一の記事で、『日本人客にも「まずは英語で話しかける」ニセコ事情・・・東山エリアの中核ホテルである「ヒルトンニセコビレッジ」の館内表記は、日本語よりも英語が先にあり、ホテル従業員も基本、外国人。当然「公用語」は英語である・・・宿泊客や利用客の大半が外国人なのだから、見かけは日本人でも、ひょっとしたら外国人かもしれないと考えて接するのは合理的だろう』、『このペントハウスは、トップシーズンでは1泊50万円を超えるのだが、なんと、すでに来年2019年のシーズンまで予約で満室状態』、などはここまで進んだのかといささか驚かされた。 『なぜか地元も国内資本も儲けられていない・・・奥ゆかしいばかりでハングリー精神に欠けては、世界を相手に、いただけるものもいただけないことになってしまう』、ただ外国資本とはいっても、ホテルの地方税や外国人従業員の所得税などは地元や日本に入る筈だから、それを無視したいささかオーバーな表現という気もする。
第二の記事で、『「ニセコ」が国際リゾートに変貌・・・立役者のロス・フィンドレー氏』、へのインタビューだけあって、なかなか興味深い。『冬のスキー、夏のラフティングと目玉ができましたが、それでも5、6、10、11の4カ月はお客さんがほとんど来ません。ホテルも営業を休み、海外の人もいなくなります。別荘などもガラガラです。稼働率が極端に落ちる中で従業員を雇い続けることが難しいわけです』、『1週間は滞在して欲しいので、1週間分の「遊び」を用意しなければいけません。尻別川での川遊びも、ラフティングだけでなく、カヤックや小型のボート「ダッキー」、立って乗る「サップ(スタンドアップパドル)」などに広げています。林道や山道、川原、草原などを走るマウンテンバイク・ツーリングも始めました』、来客の平準化に向けての努力は大したものだ。ただ、『観光開発の「グランドデザイン」が不可欠』、というのは現実には難しい課題だろう。
第三の記事で、『日本政府観光局(JNTO)理事長の松山良一氏は・・・意外な発言』、どうみても、「思いあがっている」としか考えられない発言だ。インバウンド客が増えたのでいい気になっているのかも知れないが、『観光客増加は単なる「巻き返し」にすぎない』、ことを考慮すれば、もっと謙虚になるべきだろう。『「ジャパン・レール・パス(JRパス)」を発行・・・観光客は国内外の代理店などで予約をしてから、日本の引換所でチケットを受け取り、さらに実際の鉄道を予約するには「みどりの窓口」を訪ねなければならない・・・なぜこのすべてをネットでできないのか』、というのはその通りだ。ただ、『旅館は日本を体験できるすばらしい場所だが、一部は設備が古びていたり、最新のサービスを提供できなかったりと、絶滅危惧種になっている。そうであれば、たとえば等級制の導入を、自らのコストを見直したり、顧客のニーズを分析するなどに力を入れる契機だととらえたらどうだろう』、というのは現実には難しそうだ。 『アトキンソン氏は言う。「日本はまだ、訪日外国人向けの観光対策を始めたばかりだが、過去5年でかなり改善を図ってきた。今後、海外からの観光客がさらに増え、さらにいろいろなところを訪れるようになれば、規模の経済が起きてコストが下がり、さまざまな料金も下がるだろう。私はこの点について非常に楽観的だ」』、との見立てに期待したい。
タグ:尻別川での川遊びも、ラフティングだけでなく、カヤックや小型のボート「ダッキー」、立って乗る「サップ(スタンドアップパドル)」などに広げています。林道や山道、川原、草原などを走るマウンテンバイク・ツーリングも始めました 高橋 克英 地価の上昇でも3年連続国内トップを記録 (その9)(もう日本人の出る幕なし?外国人だらけのニセコに見る日本の未来 このままでは「観光大国」は遠い夢…、「ニセコ」が国際リゾートに変貌した真相 立役者のロス・フィンドレー氏に観光戦略を直撃、外国人観光客が日本を「面倒」だと感じる瞬間 観光立国フランスに比べて足りないものは?) ニセコ。街は外国人で溢れ、看板や物価も完全に富裕層向けにシフトしている 日本人客にも「まずは英語で話しかける」ニセコ事情 1週間は滞在して欲しいので、1週間分の「遊び」を用意しなければいけません 「もう日本人の出る幕なし?外国人だらけのニセコに見る日本の未来 このままでは「観光大国」は遠い夢…」 ニセコは、まさに「外国人の、外国人による、外国人のためのリゾート」 レジス・アルノー 現代ビジネス ゲレンデ周辺では、ランチの海鮮丼でさえ5000円というのが、ごく標準的な料金だ 海外不動産業者やプライベートバンクと海外富裕層との間には、独自のネットワークが形成され、日系企業が入り込む余地がほとんどない状態 日本が観光立国を目指すうえで、フランスの取り組みは少なからず参考になるのではないか 5、6、10、11の4カ月はお客さんがほとんど来ません。ホテルも営業を休み、海外の人もいなくなります。別荘などもガラガラです。稼働率が極端に落ちる中で従業員を雇い続けることが難しいわけです 東洋経済オンライン (インバウンド)戦略 ジャパン・レール・パス(JRパス) 光客は国内外の代理店などで予約をしてから、日本の引換所でチケットを受け取り、さらに実際の鉄道を予約するには「みどりの窓口」を訪ねなければならない 理由はズバリ、雪質にある 意外な発言 「外国人観光客が日本を「面倒」だと感じる瞬間 観光立国フランスに比べて足りないものは?」 外国人の声を拾うと、日本は「観光インフラ」という点で大いに改善の余地があることがわかる なぜこのすべてをネットでできないのか 磯山 友幸 ペントハウスは、トップシーズンでは1泊50万円を超えるのだが、なんと、すでに来年2019年のシーズンまで予約で満室状態 なぜか地元も国内資本も儲けられていない 町、北海道、国がバラバラで統一したビジョンがないのです 99.9%お客さんは外国人 夏にラフティングを始め、今では夏の間にラフティング目当てのお客さんが3万人近く来るようになりました ビジット・ジャパン 通年雇用が多くないので、なかなか優秀な人材が腰を落ち着けて住んでくれません 日本政府観光局(JNTO)理事長の松山良一氏 NAC(ニセコアドベンチャーセンター)のロス・フィンドレー社長 日本で国際免許をとるのはとんでもない労力がかかる 近年の訪日外国人の増加は、すばらしいマーケティングの成果ではなく、単なる「巻き返し」の側面が大きい 「「ニセコ」が国際リゾートに変貌した真相 立役者のロス・フィンドレー氏に観光戦略を直撃」 日経ビジネスオンライン 旅館は日本を体験できるすばらしい場所だが、一部は設備が古びていたり、最新のサービスを提供できなかったりと、絶滅危惧種になっている。そうであれば、たとえば等級制の導入を、自らのコストを見直したり、顧客のニーズを分析するなどに力を入れる契機だととらえたらどうだろうか 日本の旅館・ホテル業界は欧州では当たり前の星による「等級システム」を採用していない
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