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外国人労働者問題(その4)(優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?、外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し 政府が政策を「大転換」、介護人材の外国人依存は 苦戦必至 待遇の悪い日本は不利) [経済政策]

外国人労働者問題については、3月26日に取上げた。今日は、(その4)(優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?、外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し 政府が政策を「大転換」、介護人材の外国人依存は 苦戦必至 待遇の悪い日本は不利)である。

先ずは、フリーランスライターの安楽 由紀子氏が5月18日付け東洋経済オンラインで日本で働く外国人3人の座談会をまとめた「 優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?」を紹介しよう’▽は小見出し、――は安楽氏の質問、+は回答内の段落)。
・外資系企業に勤めていなくても、上司や同僚、後輩が外国人、というのはさほど珍しくなくなってきました。人口減が叫ばれる中、優秀な外国人に働いてもらうことは、日本企業が世界で戦ううえでも重要なことだという認識も広がりつつあるようです。
・出身国も滞在期間も職種も異なる3人に、「日本で働くこと」について語ってもらうこの座談会。前回(「日本で働く外国人が苦労した言語じゃない壁」)は、日本で働くうえで大変な点などについて聞きましたが、今回は日本をより働きたい場所にするにはどういう改善が必要かについて意見を聞きました。
▽“外国人”はみんな同じではない
・引き続き、参加していただいたのは、この3人です。
 カルロス・ドンデリス氏 スペイン出身、日本在住歴7年。クラウド名刺管理サービスのSansanでシステムエンジニアとして働いている。
 イブラギモブ・ショハルフベック氏 ウズベキスタン出身、日本在住歴12年。通称ショーン。ヤンマーに入社8年目。マーケティング部の市場調査や競合他社分析の仕事をしている。
 マニッシュ・プラブネ氏 インド出身、日本在住歴20年。アドビシステムズで、ビジネス開発のコンサルティング責任者を務めている。
――日本で外国人が働くために、改善してほしい点はありますか?
・ショハルフベック:長期休暇を制度化してほしいですね。1カ月ほど休んで、故郷のウズベキスタンに帰省したいんです。これまで連休と有給休暇を組み合わせて最長24日間の休暇を取ったことがありますが、それを制度化してもらえたらな、と。
+難しいとは思うけれど、たとえば仕事を見える化したり、共通化したりして、「この人がいないとできない」というものをコントロールできるようになれば、と思うんです。僕だけでなく今後入ってくる後輩たちのためにも、年に1、2回、長期で休んで自国に帰りやすくしてほしい。
・ドンデリス:確かにそうですね。僕が「改善してほしい」というか、「もう少し理解してほしい」と思うのは、当たり前のことではあるんですが、“外国人”はみんな同じではなく、それぞれ違うということですね。
・ドンデリス:よく聞かれるんです、「日本はいつまでですか?」「いつスペインに帰るんですか?」と。僕は特に帰る予定はないのに、外国人はある一定期間だけ日本で仕事をして、そのあとは必ずみんな帰るというイメージがあるようです。でも、日本にずっと住みたい人もいますよ。
・ショハルフベック:わかります。外国人といっても必ずしも母国語は英語ではないのに、「ショーンはTOEIC取らなくてもいいよな」と言われます。やっぱり外国人は英語が話せるというイメージがあるんですね。それぞれ違うのに。
▽優秀なインド人が日本に来ない理由
・プラブネ:私が思うのは、まずどういう人材がほしいか明確にして、そのためにはどうすればいいのか日本人自身が気づいて社会づくりをすべき、ということですね。今、アドビシステムズ、マイクロソフト、グーグルという3社のCEOはインド人です。しかし、インド人は今、積極的に日本で働こうとは思っていない。理由は、外国人には「キャリアの壁」があるのではないか、と思われているから。
+本当にフェアに自分を扱ってくれるのかどうかわからないところに、わざわざ自分の人生を預けられないのです。今後日本が単に働く人数を増やしたいなら、困っている人たちを呼べばいいけれど、優秀な人材に来てほしいのであれば、成果主義に変える必要があるでしょう。ただ、それは外国人が「こう変えろ」というものではなくて、日本人が自ら気づいて、考えて社会づくりをしないといけない。
・ショハルフベック:そうですね。外国に人材を求めるのは、労働者が欲しいのか、プロフェッショナルの人材が欲しいのかということですよね。今後、日本の企業を元気にさせたい、グローバルに展開したいというのであれば、単なる労働ではないと思う。能力、知識、経験ですよね。であれば、それなりのものを提供しないといけない。外国人を雇用する意義、目的ですよね。
+よく聞く話なんですが、日本企業では、いい大学を出たスキルのある外国人社員に通訳をさせていることがある。しかも、違う部署の通訳をさせられることも少なくない。そこで本人のスキルが生かせるわけではないのでそういうのでちょっと嫌になってしまうんです。それはすごくもったいない。
+だから、マニッシュさんが言うように、外国人を雇用するのならばまず目的をハッキリさせなければならない。そして要求があるのであれば、きちんと提供もしないといけないということです。
・プラブネ:「自分のキャリアプランは何なのか」というのを、もっと会社と話せるようにしたいですね。自分を成長させて、それに見合った報酬を得て、一体感を持ってほかの社員と仕事をしていきたいのか、それとも、2、3年のショートタームで働くのか。それによって働き方は決定的に変わってくると思う。日本の会社でもこういう会話は始まってきています。そうじゃないと日本に残っていません(笑)。
+それともう1つ、変えられるのであれば、社内で日本人も英語で会話ができたら、と思う。完璧でなくていい。完璧を求めてしまうと、「自分の英語はまだまだだから」と、話せなくなりますよね。完璧でなくても、言いたいことが伝わればいいと思うくらいで積極的に英語を使うようにすれば、世界にどんどん出ていけるんじゃないかなと思いますね。
▽「グローバル化」の定義って何だ?
・ドンデリス:コミュニケーションさえ取れればいいんですよね。ベンチャーで働いている人やエンジニアは、新しいテクノロジーに関する資料は英語だから、みんな英語を読んで理解することはできる。ただ、しゃべれない。理由は恥ずかしいから。
+でも、たとえば楽天さんは、社内の公用語を英語にしました。そうすると海外の技術者は「日本語は話せないけど、こういう会社なら働きたい」と思うはず。大きい会社だといきなり変えることは難しいかもしれないけど、ベンチャーなど小規模であれば、変えることは比較的簡単だろうし、やったほうがいいと思う。
――言語だけでなく、異文化理解力の大切さに気づいていない企業も多そうです。
・プラブネ:そうですね。「グローバル化」とよく言うけれど、そもそもグローバル化の定義が必要ですね。なぜ「インターナショナル」ではないのか。海外でモノを売りたいということであれば、インターナショナル。グローバルは、世界では“共通認識”なんてありえないということを理解することだと、私は解釈しています。
+自分の言っていることが、いくらロジカルだと思っても、それは自分が今まで経験した、自分の文化をベースにしたものにしかすぎない話であって、真実はどこにもない。認識は、みんなそれぞれバラバラのはずです。 グローバル化にあたっては、それをそのまま受け入れる、何も変えようとしないというスキルが必要。そのスキルは、職場に入って「これからグローバルになります」と言ってできるものではなく、教育の現場から変わらないと難しいと思います。
・プラブネ:ちょっとおもしろいエピソードがあります。私には高校生の娘がいて、東京・江東区のインド系インターナショナルスクールに通っているんですが、この学校ができた2004年当時はインド人生徒だけだったんです。
+でも、2007年ごろインド式計算がブームになって、私自身も関連本を編集したり、本(晋遊舎『インド式計算パズルインドラ―遊びながら数字に強くなる魔法の計算パズル』)を書いたりしたのですが、その頃から日本人の子どもたちが入学するようになったんですよ。
+今、娘のクラスは、14人が日本人。インド人が5人。日本人のほうが多い。この子たちは日本人として日本にいながらインドの文化の中で暮らしているわけです。彼らが世の中に出ていく時にはグローバル人材になっているでしょう。
▽日本は「オンリーワン」になるべき
・プラブネ:そう考えると、海外から人を呼ぶより、自分の国でグローバル人材を育てたほうがいいんじゃないかと思うんです。必ずしも海外から人を呼べば社会がよくなるわけではないですから。異なる文化を我慢するのではなく、受け入れることは結構難しいですからね。
――しかし、今、日本人口が急激に減っています。海外からの雇用や、海外市場への進出は避けられないのでは。
・プラブネ:人口減はいいことじゃないですか。
――え!?いいことですか?
・プラブネ:私は理想、というか、必ずしも悪いことじゃないと思うし、ライフスタイルを見直す機会だと思う。世界で1位になりたいのであれば、それなりの経済パフォーマンスが必要だけれども、SMAPの歌にも「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」とあるでしょう?オンリーワンになれば、人口に頼る必要はありません。
+私は仕事でいろいろな社長さんに会うんですけど、必ず「日本でモノが売れないのは、人口減少が……」という話になります。そうじゃなくて「売れるモノを作ってないだけじゃないの?」と思う。特別なオンリーワンを見つけるといいと思います。
・ショハルフベック:僕は日本に来るまでまったく海外に出ていないんです。でも、日本の大学に来て、めっちゃ人生が変わった。物事をいろいろな立場から見られるようになりました。(出身校の)立命館アジア太平洋大学(APU)には、当時100カ国くらいから学生がきていた。ちょっとしたパーティや食事会でも少なくとも10カ国以上の人が集まるのです。
――国連みたいですね。
・ショハルフベック:いつも冗談で言うんですけど、「APUは十文字原という別府の山にある小さな地球」なんです。ここには日本の文化も入っていない。なので、みんなで一緒に日本の文化も含めていろいろな国の文化を学ぶんです。それを体で感じる。それと比べると、1週間の研修とかで「グローバル」を学ぶのは無理じゃないかと思う。
▽グローバルという言葉は危険?
・プラブネ:カルロスさんの母国スペインも多様性がありますよね。
・ドンデリス:あります。スペインの中でもそうだし、ヨーロッパにおいても周りの国はだいぶ違う。グローバルは、難しい、というか、危ない言葉かもしれない。 たとえば、僕はスペインのほぼ真ん中にあるマドリード出身だけれども、同じスペインでも北と南は文化も考え方もだいぶ違う。そして、もうちょっと北のほうに行くと、フランス、イタリア、南のほうに行くとアフリカがあって、これらの国々もそれぞれ全然違う。
+「グローバル」というと、スペインや周辺国のことだけじゃなくて、アメリカのことも、日本のことも理解していないといけない。外国に住むと、頭の中がいろいろと変わってくる。いろいろな視点が生まれます。今の日本の学生は、留学などをしてそういう体験をしていると思いますので、これから日本もだいぶ変わるのではないでしょうか。少しずつグローバルということも生まれるかもしれません。
・ショハルフベック:ちょっと気をつけてほしいのは、グローバルは大事だけれど、自分のアイデンティティを守ることも大事だということ。外国人を受け入れると同時に、日本らしさも残しておかないといけないですね。僕は日本語を話せるけど日本人じゃなくて、ウズベキスタン人だというアイデンティティを持っているのが大事なんだと思う。
+そのうえで、お互い「違う」ことを受け入れるのが大切です。「あいつは、考え方や文化が違うから合わない」と壁を作るのではなく、自分のアイデンティティを持ちながら、ほかの人も受け入れる。それが大事なんじゃないかと思います。
https://toyokeizai.net/articles/-/220703

次に、ジャーナリストの磯山 友幸氏が6月1日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し、政府が政策を「大転換」」を紹介しよう’▽は小見出し)。
▽建設、農業、宿泊、介護、造船が対象
・深刻な人手不足に対応して、政府が外国人受け入れ政策を「大転換」することが明らかになった。これまで「単純労働」とされる分野での外国人就労は原則禁止されてきたが、新たな在留資格を創設して、そうした分野でも「労働者」として正式に受け入れる。6月中にも閣議決定する「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」に盛り込む。
・新制度は、日本人の就労希望者が少なく、慢性的な人手不足に陥っている「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野を対象に、新設する「特定技能評価試験」(仮称)に合格すれば就労資格を得られるようにする。こうした分野ではこれまで便法として「技能実習制度」を使った事実上の就労が広がっていたが、真正面から「労働者」として受け入れる。今年秋の臨時国会で法律を改正し、2019年4月から実施したい考えだという。
・就労資格を得られるのは最長5年とするが、技能実習生として最長5年滞在した後、新たな就労資格を得れば、10年にわたって滞在できるようになる。企業からすれば長期雇用が実質的に可能になり、技術やノウハウの教育に力を入れられる。大学を卒業した「高度人材」の日本での就職も後押ししていく方針で、日本の職場に本格的に外国人が流入してくることになる。
・法務省がまとめた2017年末の在留外国人数は256万1848人。1年前に比べ7.5%、約18万人も増加した。5年連続で増え続けており、256万人は過去最多だ。厚生労働省に事業所が届け出た外国人労働者は約128万人で、これも過去最多を更新している。
・新制度によって政府は2025年までに5分野で「50万人超」の受け入れを目指すとしている。日本経済新聞の報道によると、「建設では2025年に78万~93万人程度の労働者が不足する見通しで、計30万人の確保を目標にする」という。農業では新資格で2万6000人~8万3000人程度を受け入れるとしている。すでに介護分野では外国人人材の受け入れ拡大を始めており、ここでも外国人労働者が増えることになりそうだ。
・問題は、就労を希望する外国人をどう選別し、受け入れていくか。今後、「特定技能評価試験」で就労に必要な日本語と技能の水準を決めることになるが、それをどの程度の難易度にするかによって流入してくる外国人の「質」は大きく変わる。
▽「なし崩し的な移民」が増える可能性
・素案段階では会話が何とか成り立つ日本語能力試験の「N4」レベルを基準とする方向だが、人手不足が深刻な建設と農業では「N4」まで求めないという声も聞かれる。また、試験の実施も各業界団体に任せる方向のため、人材確保を優先したい業界の意向が反映され、日本語や技能が不十分な人も労働者として入ってきてしまう懸念がある。
・5年あるいは10年にわたって日本で働く外国人が増えれば、日本社会に多くの外国人が入ってくることになる。人手不足の穴を埋める「労働力」としてだけ扱っていると、日本のコミュニティには溶け込まず、集住して外国人街を形成することになりかねない。
・どうせ期限が来れば出身国に帰るのだから構わないと思っていると、5年あるいは10年経つ間に日本で生活基盤が生まれ、なし崩しに定住していくことになりかねない。全員を追い返す、というのは現実にはかなり難しいのだ。また、人口減少が今後本格化する日本では、人手不足がさらに深刻化するのは明らかで、当初は「帰国前提」だった外国人も、5年、10年すれば、戦力として不可欠、ということになるだろう。
・そうした「なし崩し的な移民」が増えれば、かつてドイツなど欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を、日本で繰り返すことになりかねない。労働者として受け入れるだけでなく、「生活者」として受け入れていく必要があるのだ。日本のコミュニティを形成する一員として、権利だけでなく義務も果たしてもらう必要がある。
・それを考える上で重要なのは日本語能力と日本社会に溶け込むための知識を身に付けさせることだ。入国時点(就労時点)ではN4だとしても、その後も日本語教育を義務付けるなど「外国人政策」が不可欠だ。
・ドイツの場合、ドイツに居住し続けようとする外国人には600時間のドイツ語研修を義務付けているほか、ドイツ社会のルールや法律についてのオリエンテーションも義務付けている。このオリエンテーションは当初30時間でスタートしたが、その後60時間、100時間へと拡大される方向にある。つまり、言葉も大事だが、それ以上にコミュニティの一員として溶け込んでもらうことに重点を置いている。
・特に、労働者として入ってきた外国人が結婚して子どもが生まれた場合、その子どもの教育にも力を注ぐ必要が出てくる。国籍が外国人の場合、日本の義務教育の範疇から漏れてしまう。今は各自治体の判断と財政負担で外国人子弟の教育を行っているが、これを国としてどうしていくのか、予算措置を含めて早急に検討していく必要がある。
▽「外国人庁」の創設など体制整備が不可欠
・今回の制度改正によって、高度人材だけ受け入れていくという日本の外国人政策の基本方針が大転換することになる。今後、人口減少が本格化すれば、外国人なしには企業だけでなく社会も成り立たなくなっていくだろう。
・だからこそ、きちんとしたルールに則って外国人を受け入れていくことが重要で、「外国人政策」「移民政策」が不可欠になる。ところが、安倍晋三首相が「いわゆる移民政策は取らない」と言い続けてきたために、日本の外国人政策の議論は大きく立ち遅れている。
・観光や商用などで一時的に滞在するのが前提で、長期にわたって日本に住む外国人の扱いを真正面から議論してこなかったのだ。「移民」という言葉をタブー視したために、実質的な移民の存在に目をつぶってきたのである。
・国連の定義では1年以上にわたってその国に住む外国人は「移民」なのだが、日本では「移民」論議を封じたために、安倍首相が言う「移民」の定義すら曖昧だ。欧州に大量に流入している「難民」とないまぜにして議論しているケースすらある。
・単純労働者を受け入れる政策転換は、事実上「移民」として受け入れることも想定する必要がある。もちろん出稼ぎに来て5年で帰る人がいるのは当然だが、一方で、日本に根を下ろし10年を超えて住むことになる外国人も出てくる。日本企業や地域社会がそうした人たちを必要とする時代になっているのだ。
・1年前、2017年6月に閣議決定された成長戦略では、こう書かれている。「経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める」 その結果、打ち出されるのが、今回の単純労働者も受け入れるという「政策転換」である。
・実は今年2018年2月の国会で、安倍首相の発言に微妙な変化が出始めている。「受け入れた外国人材が、地域における生活者、社会の一員となることも踏まえ、(中略)幅広い観点から検討する必要があると考えています」 移民政策は取らないと言いつつも、日本にやってきた外国人が「生活者」として社会の一員になっていくことを前提とした政策をようやく日本政府も取り始めたということだろう。
・6月に閣議決定される骨太の方針や成長戦略で、外国人材の受け入れについてどこまで踏み込んだ方針が示されるのか。外国人政策は今、入国管理を行う法務省、外国人労働者の実態把握をする厚生労働省、企業の人手不足で外国人受け入れに積極的な経済産業省、外国人教育を考えなければならない文部科学省、国内の治安を預かる警察庁など多くの役所が関与するが、いずれも縦割りでバラバラの対応しかできていない。外国人政策を一元的に扱う「外国人庁」の創設など、欧米並みの体制整備が不可欠だが、そうした方向性を盛り込めるのかどうか。政策の転換に合わせて役所の体制も大きく転換していくことが課題になる。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/053100068/?P=1

第三に、大和総研 政策調査部研究員の石橋 未来氏が6月15日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「介護人材の外国人依存は、苦戦必至 待遇の悪い日本は不利 」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・国内の介護人材不足を外国人労働力で補おうとする動きが加速している。だが、同様の取り組みを実施しているドイツは苦戦。まずは介護職の待遇改善が急務だ。 介護分野の人手不足が続いている。厚生労働省の社会保障審議会で2017年に示された資料によると、25年には約38万人の人材が不足する見込みだ。
・こうした状況の中、政府は介護人材不足を外国人労働力で補おうとしている。これまでインドネシア、フィリピンおよびベトナムとのEPA(経済連携協定)に基づき、約3500人の介護福祉士候補者を受け入れてきた。
・さらに17年には外国人技能実習制度に介護職種を追加するなど、受け入れ数を増やす施策を追加した。だが、外国人労働力は日本国内の介護人材不足を解消するのだろうか。先行するドイツの事例を基に考える。
▽ドイツは人材を集められず
・高齢化が進むドイツでも、介護人材の確保は大きな課題である。日本と同様、労働環境の悪さや賃金の低さが国内のなり手不足に直結している。 ドイツの介護現場では、欧州連合(EU)域内の東欧出身者を中心に外国人の就労が目立つ。ドイツの介護職を含むヘルスケア分野の賃金水準は、主な送り出し国であるポーランドやチェコと比較して3倍以上も高いためだ。
・ドイツでは、高齢者ケアの中核を専門介護士が担っており、この専門介護士の確保がとりわけ重要とされている。しかし東欧出身者に専門介護士などの高度人材は少なく、多くは介護アシスタント(1年程度の通常の職業訓練修了レベル)や、それ以下の熟練度の低い職種レベルで就労している。
・ドイツで専門介護士の資格を取得するには原則3年間の養成教育修了後、国家試験に合格する必要があるほか、十分なドイツ語能力も求められる。外国人にとって、そのハードルは高い。 最近では、専門介護士の資格を取得したとしても、EU域内の別の国へ移動する者も増加している。背景には、ドイツの所得の優位性が薄れていることがある。例えば、英国のヘルスケア分野の平均賃金は、ドイツよりやや高い(下のグラフ参照)。加えて、英語という汎用性の高い言語が話されているため、英国への人材の流出が増加している。
▽日本の賃金は他国に比べて低い
・●各国のヘルスケア分野における平均賃金(2014年)(リンク先参照) そこでドイツは近年、人口構成が若い中欧やアジアなどEU域外からの受け入れを増やしている。13年に始まった「トリプル・ウィン・プロジェクト」では、母国での就労が困難なセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどの看護師を、ドイツのヘルスケア分野に受け入れている。
・また、ドイツで就労する専門介護士の確保と定着を目指して、ベトナムや中国の看護養成学校と協定を結び、育成の段階からドイツ語習得だけでなく、文化プログラムなどを組み込んだ支援を制度化している。 さらに専門介護士の資格を取得してドイツの介護現場で一定期間就労するなどの条件をクリアすれば、EU域外出身者にもドイツの永住権が取得できる仕組みを用意する。
・ここまでの取り組みをしているにもかかわらず、現在のところ専門介護士以外の非熟練の介護士を合わせても、人材の流入・定着は十分ではない。ドイツ国内の介護職員数は緩やかに増加傾向にあるものの、介護職員1人当たりの要介護者数は、09年から15年にかけて2.6人のまま変わっていない。
・さらに、送り出し国である東欧諸国の高齢化も、長期的に見ればドイツへの人材流入を抑制する要因となる。東欧諸国でも、人材流出によって自国の高齢化への対応が遅れていることが問題視され始めている。世界保健機関(WHO)は、人材不足に直面する途上国からヘルスケア人材を多く受け入れている加盟国に対し、受け入れを抑制するように求めている。
▽日本は魅力的な職場ではない
・日本でも介護人材不足を補う外国人労働力に期待が高まっている。だが、ドイツの状況を見る限り、人材確保は容易にはいかないだろう。 まず、日本の賃金水準は他の先進国に比べて決して高いとは言えない。ドイツは賃金で優位性が薄れつつあると述べたが、日本の賃金はそのドイツよりもさらに1割以上低い。ドイツへの主な送り出し国は東欧諸国、日本への送り出し国はアジア各国ということを考えると単純な比較はできないが、日本の賃金の魅力は高いとは言えない。
・さらに、厚労省が15年に発表した調査報告書でも、外国の人材は、「待遇」や「言語の違い」を日本の介護分野で働く際のネックだと考えていることが明らかになっている。母国で専門的な看護教育を受けた人材も多く、スキルを生かしきれないストレスも抱えるようだ。
・こうした背景から、日本で介護福祉士の資格を取得しても、習得した日本語能力が自国の日系企業への就職に有利であるからと帰国する人材もいる。北米などのより条件の良い受け入れ国に行くまでの、資金と介護スキルの蓄積と捉えている人も少なくないとみられる。
・つまり、外国人労働者にとって日本の介護事業者で就労することは、母国の同分野で就労するよりは条件が良いものの、他分野や他国と比較すれば、決して大きな利点があるわけではない。人材の送り出し国として期待されるアジア各国にとっては、英語圏で、かつ永住権の取得も可能となる米国やオーストラリア、カナダの方が魅力的に映るだろう。
▽アジア各国も急速に高齢化
・●各国の高齢化率の推移(リンク先参照) さらに、今後はアジア各国も急速に高齢化するため、日本への送り出しが減少する可能性は高まる一方だ。 従って、まずは日本の介護分野への就労について、日本人にとってもマイナスと捉えられている部分から改善すべきだ。
・国内で人材が集まらないような環境であれば、外国人労働者にとっても魅力的ではなく、中長期的な定着など望むべくもない。雇用環境の改善なくして人材の確保は困難といえよう。外国人労働者にとっては、就労の先に永住権、さらにその先に家族や子孫の将来が保障されていることも、必要といえるだろう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/101700172/061200025/?P=1

第一の記事で、 『“外国人”はみんな同じではない・・・外国人はある一定期間だけ日本で仕事をして、そのあとは必ずみんな帰るというイメージがあるようです。でも、日本にずっと住みたい人もいますよ』、というのは日本人の悪いクセだ。 『インド人は今、積極的に日本で働こうとは思っていない。理由は、外国人には「キャリアの壁」があるのではないか、と思われているから』、『日本は「オンリーワン」になるべき』、『外国人を雇用するのならばまず目的をハッキリさせなければならない。そして要求があるのであれば、きちんと提供もしないといけないということです』、『お互い「違う」ことを受け入れるのが大切です。「あいつは、考え方や文化が違うから合わない」と壁を作るのではなく、自分のアイデンティティを持ちながら、ほかの人も受け入れる。それが大事なんじゃないかと思います』、などの指摘はその通りだ。
第二の記事で、 『どうせ期限が来れば出身国に帰るのだから構わないと思っていると、5年あるいは10年経つ間に日本で生活基盤が生まれ、なし崩しに定住していくことになりかねない。全員を追い返す、というのは現実にはかなり難しいのだ。また、人口減少が今後本格化する日本では、人手不足がさらに深刻化するのは明らかで、当初は「帰国前提」だった外国人も、5年、10年すれば、戦力として不可欠、ということになるだろう。 そうした「なし崩し的な移民」が増えれば、かつてドイツなど欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を、日本で繰り返すことになりかねない。労働者として受け入れるだけでなく、「生活者」として受け入れていく必要があるのだ』、というのは正論だが、政府は難しい問題は先送りして当面の弥縫策に走っているようだ。やがて、そのツケは回ってこざるを得ないだろう。
第三の記事で、『各国のヘルスケア分野における平均賃金(2014年)』、で日本がドイツより低いが、フランスを上回っているので、驚かされた。さらに注を見ると、『日本以外は「介護」に加え、一般診療や歯科などの「医療」も含むヘルスケア分野全体の平均』、となっているので、介護だけでみれば、日本の相対的地位はさらに上がる可能性がある。にわかには信じ難い統計だが、筆者は大和総研研究員なので、とりあえずこれを前提に考えるしかなさそうだ。 『世界保健機関(WHO)は、人材不足に直面する途上国からヘルスケア人材を多く受け入れている加盟国に対し、受け入れを抑制するように求めている』、『今後はアジア各国も急速に高齢化するため、日本への送り出しが減少する可能性は高まる一方だ。 従って、まずは日本の介護分野への就労について、日本人にとってもマイナスと捉えられている部分から改善すべきだ』、『外国人労働者にとっては、就労の先に永住権、さらにその先に家族や子孫の将来が保障されていることも、必要といえるだろ』、などは説得力がある。受け入れるのであれば、国民全体の覚悟が必要になる筈だ。そこを隠したままの政府の安易な考え方は、前述の通り弥縫策の最たるものだ。
タグ:石橋 未来 どうせ期限が来れば出身国に帰るのだから構わないと思っていると、5年あるいは10年経つ間に日本で生活基盤が生まれ、なし崩しに定住していくことになりかねない。全員を追い返す、というのは現実にはかなり難しいのだ。また、人口減少が今後本格化する日本では、人手不足がさらに深刻化するのは明らかで、当初は「帰国前提」だった外国人も、5年、10年すれば、戦力として不可欠、ということになるだろう 東洋経済オンライン 今後はアジア各国も急速に高齢化するため、日本への送り出しが減少する可能性は高まる一方だ 英国のヘルスケア分野の平均賃金は、ドイツよりやや高い(下のグラフ参照)。加えて、英語という汎用性の高い言語が話されているため、英国への人材の流出が増加している そうした「なし崩し的な移民」が増えれば、かつてドイツなど欧州諸国で大きな社会問題になった移民問題の失敗を、日本で繰り返すことになりかねない 「外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し、政府が政策を「大転換」」 外国人労働者にとっては、就労の先に永住権、さらにその先に家族や子孫の将来が保障されていることも、必要といえるだろう 日経ビジネスオンライン 「なし崩し的な移民」が増える可能性 「 優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?」 日本は魅力的な職場ではない 磯山 友幸 これまで便法として「技能実習制度」を使った事実上の就労が広がっていたが、真正面から「労働者」として受け入れる 政府が外国人受け入れ政策を「大転換」 外国人労働者問題 最近では、専門介護士の資格を取得したとしても、EU域内の別の国へ移動する者も増加 安楽 由紀子 各国のヘルスケア分野における平均賃金 高齢者ケアの中核を専門介護士が担っており、この専門介護士の確保がとりわけ重要とされている。しかし東欧出身者に専門介護士などの高度人材は少なく、多くは介護アシスタント(1年程度の通常の職業訓練修了レベル)や、それ以下の熟練度の低い職種レベルで就労 ドイツは人材を集められず 「介護人材の外国人依存は、苦戦必至 待遇の悪い日本は不利 」 まずは日本の介護分野への就労について、日本人にとってもマイナスと捉えられている部分から改善すべきだ 僕は特に帰る予定はないのに、外国人はある一定期間だけ日本で仕事をして、そのあとは必ずみんな帰るというイメージがあるようです。でも、日本にずっと住みたい人もいますよ 日本は「オンリーワン」になるべき 世界保健機関(WHO)は、人材不足に直面する途上国からヘルスケア人材を多く受け入れている加盟国に対し、受け入れを抑制するように求めている (その4)(優秀なインド人が日本を微妙に避ける事情 プロフェッショナル人材が求めているのは?、外国人の「単純労働者」を受け入れへ 人手不足に直面し 政府が政策を「大転換」、介護人材の外国人依存は 苦戦必至 待遇の悪い日本は不利) 国人労働者にとって日本の介護事業者で就労することは、母国の同分野で就労するよりは条件が良いものの、他分野や他国と比較すれば、決して大きな利点があるわけではない インド人は今、積極的に日本で働こうとは思っていない。理由は、外国人には「キャリアの壁」があるのではないか、と思われているから “外国人”はみんな同じではない
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