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ソフトバンクの経営(その7)(闇株新聞の見方:スプリントとTモバイルが合併合意、ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由、孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、昨年12月14日に取上げた。今日は、(その7)(闇株新聞の見方:スプリントとTモバイルが合併合意、ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由、孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…)である。

先ずは、闇株新聞が5月2日付けで掲載した「スプリントとTモバイルが合併合意」を紹介しよう。
・ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)が83.02%を保有する米携帯電話第4位のスプリントと、ドイツテレコムが62.28%を保有する同3位のTモバイルUSが4月30日、2019年前半をめどに合併することに合意したようです。
・米携帯電話は、ベライゾンとAT&Tの2強がトップを争い、次世代通信規格「5G」を巡る巨額投資負担も必要となるため、Tモバイルもスプリントもそれぞれ単独での生き残りが難しいと考えられており、ここ数年は何度か合併交渉を行っていました。
・ソフトバンクは2013年7月に、当時は米携帯電話第3位だったスプリント(当時はスプリント・ネクステル)の78%を216億ドル(当時の為替で約2兆円)で買収すると、翌2014年夏には同4位のTモバイルを買収しようとしましたが、FCC(連邦通信委員会)に自由な価格競争が阻害されると反対され、引き下がりました。
・ところが2015年6月にTモバイルが契約者数でスプリントを抜いて第3位に浮上し、その後もスプリントは引き離されていくばかりでした。それでも強気のソフトバンク・孫社長は、トランプが大統領に当選するとすぐに会いに行き、トランプもFCC委員長に規制緩和派のアジット・パイ氏を指名し、再び合併の機運が高まりました。
・ところが2017年6月に開始された2度目の合併交渉では、すでに業績や時価総額でTモバイルに大きく差をつけられていたにもかかわらず、スプリントが(ソフトバンクが)経営主導権の確保にこだわったため、これも当然のように破談になってしまいました。
・そして今回は3度目の合併交渉が始まったばかりでしたが、スプリントが(ソフトバンクが)あっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導の合併を呑み今回の合意に至りました。
・報道されている合併案とは、Tモバイルとスプリントは完全に合併して新会社を設立し、Tモバイルの親会社であるドイツテレコムが新会社の議決権の41.7%、スプリントの親会社であるソフトバンクが同27.4%を保有し、残る30.9%が両者の少数株主が保有することになります。
・また新会社の取締役14名のうちTモバイル側がCEOのレジャー氏(元・TモバイルCEO)を含む9名を選び、スプリント側は孫社長とクラウレ・スプリントCEOを含む4名だけとなるようです(残る1名は不明です)。またクラウレ氏は「ちゃっかりと」85億円相当のゴールデン・パラシュート(早期にクビになったら支払われる)もせしめたようです。
・また合併比率はTモバイル1株に対してスプリント9.75株の割合で新会社の株式が交付されますが、発表後となる4月30日の終値で見るとスプリントは14%も下落して1株=5.61ドル、Tモバイルも6.2%下落して1株=60.51ドルとなっています。
・両方とも株価が下がってしまった理由は、株式市場では今回の合併もFCCの承認が得られないだろうと懸念しているからのようです。また今回は合併する両社とも親会社が米国外の企業であるため、対米外国投資委員会(CFIUS)の承認も必要となります。
・以前よりも規制緩和的になっているはずのFCCですが、2017年11月にはAT&Tによる850億ドルのタイム・ワーナー買収を、同業買収ではないにも関わらず差し止めてしまい(タイム・ワーナー傘下にトランプ批判の急先鋒であるCNNがあるからだと思いますが)、本当に規制緩和的なのかどうかもわかりません。 つまり承認されるかどうかは、全くの五分五分と考えられています。
・ソフトバンクはスプリントの経営主導権を実質放棄した代わりに、4兆円をこえるスプリントの有利子負債(年間の利払いが2700億円だそうです)を新会社に押し付け、今後も膨大に必要となる「5G」関連の投資も直接は負担する必要がなくなり、直近で14兆円もある連結有利子負債もかなり軽減することができるはずです。
・またソフトバンクといえば本年初めに国内携帯電話事業を別会社にして新規上場させ、その3割程度を売り出して2兆円ほど資金化する計画を発表していました。1月16日付け「ソフトバンクが傘下の携帯事業会社を上場させる?」に書いてあります。
・この辺から考えられることは、孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っており、せっせと投資資金を回収してAIやEVなど世界の新規事業への投資に軸足を移していることになります。また昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようです。
・今回のスプリントは、完全株式交換なのでその「投資収益」を弾くことは難しくなりますが、スプリント買収時はドルを80円台で事前に調達していたはずで、少なくともプラスであることは間違いありません。
・ただソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきた「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」まで投資資金の回収対象と考え、その膨大な利益を提供してくれた国内の利用者に十分な還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む現在の孫社長の姿は、見ていてやや不安になります
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2215.html

次に、6月11日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・週刊ダイヤモンド』6月16日号の第一特集は「成長するならカネ借りろ!借金経営のススメ」です。ショッキングなタイトルに思われるかもしれませんが、実は日本では借金に対する誤解が蔓延しています。特集では良い借金、悪い借金とは何かを解説しています。同時に借金に必須な貸借対照表(BS)読解術も超易しく伝授。また、無担保・無保証でも銀行から融資を引き出す方法など、低金利で借り時の今、うまい借金の仕方も紹介しています。
▽武田薬品3兆円強、 SB15兆円の「借金」の是非
・借金──。この言葉を聞いて、あなたはどんな印象を抱くだろうか。日本では、前向きに捉える人は少数派のはずだ。 昨今、日本企業で巨額の借金をするケースが増加している。 武田薬品工業は6兆8000億円という日本企業では過去最大の買収を実施。その買収資金の半分程度を当面はブリッジローンという借金で賄うという。 また、2016年にはソフトバンクグループが英国の半導体設計企業のアームを3兆3000億円で買収。他にも大きな買収を続けていて、今や借金を示す有利子負債は15兆円に膨れ上がっている。
・それらのケースでは借金の金額の大きさが、メディアなどの批判にさらされることが少なくない。 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も批判を意識してか、決算会見では苦笑しながら「借金王だと思われている」と発言している。
・ところが、企業の資金調達を研究するコーポレートファイナンスの分野を専門とする松田千恵子・首都大学東京大学院教授は「借金を活用して会社を拡大させるソフトバンクの手法はコーポレートファイナンスの教科書通り」と明かす。同趣旨の発言をする専門家は多い。
・なぜ、このような認識の乖離が生まれるのか。 長らく日本では、企業の経営陣もメディアも「無借金経営はいい経営」「借金は悪」というのが常識と考えられてきた。借金の少なさを示す自己資本比率の高さを誇るような経営者も多い。
・背景には、日本では銀行が企業のおカネの面倒を見るメーンバンク制が長く続いてきたことがある。 その銀行は、バブル崩壊後に苦境に陥ると、とにかく企業に対して、返済を進めて筋肉質になることを求めた。また、当時は成長のための借金ではなく、生き残るために銀行に泣き付いて借金をすることもあった。そして、幾つかの企業は借金で首が回らず破綻に追い込まれた。
・そんな期間があまりに長かったため、「借金=悪」という図式が意識に植え付けられているのだ。要は、「バブル崩壊後に銀行が主導した財務リストラ期の感覚のままでいる」(松田教授)わけだ。
・しかし、ファイナンスの専門家や企業で財務を担当するCFO(最高財務責任者)の一部は、「日本では借金に対する誤解が強過ぎる。借金には良い借金と悪い借金があって、きちんと見極めるべき」と力説する。
・詳細は特集の中で述べるが、悪い借金とは経営危機にある会社が生き延びるためにダラダラと続ける借金。良い借金とは、成長の機会を逃さないための借金だ。 借金をしても、それをきっかけに成長し、返済能力も上がる。そんな借金は良い借金といえる。
・実際、日本企業の借金の中身は変化しつつある。財務省の「法人企業統計」によれば、企業の借金の額はリーマンショック後に減少したものの再び増加している。 しかし、中身を見ると、単純に増加しているのではない。金額だけでいえば、リーマンショック前と同水準だが、それを稼ぐ能力(経常利益)で割った値は低下を続けている。 つまり、金額は増えたが、返す能力の裏付けも増しているという意味で、借金の性質が違うのだ。本来なら、借金の良しあしはそのように稼ぐ能力や他に持っている資産なども考慮して、総合的に判断すべきなのだ。
▽ない方が正しい企業経営!? 借金への誤解蔓延する日本
・もう一つ大きな誤解が、株主が出してくれたおカネに対する認識だ。特集で詳細を述べるが、「株主が出してくれたおカネは返さなくていい楽チンなおカネだ」と誤解している経営者がいる。 企業の資金調達では「調達コスト」という概念があり、そのコストはいかなる場合でも「借金<株主からのおカネ」なのである。言い換えれば、借金が少な過ぎるのは高コストであり、効率が悪い。
・最後の誤解は「借金をしている企業は手元におカネがない」というもの。こちらもそうは言い切れず、借金をしつつも手元に現金を置き、有事に備える企業もある。
・というわけで、「うちは無借金経営」と胸を張る経営者がいても、それは必ずしも誇れることではない。成長していて、かつ無借金ならまだしも、座して死を待つような停滞状態で、リスクを取って新事業をやらないのなら、企業の存在意義にも関わる。
・それは中小企業でも同じだ。中小企業への融資の際、銀行は自己資本比率の高さをあまり重視していない。それよりも、その企業の稼ぐ能力であるキャッシュフローに重きを置いている(特集で解説)。
・現在は、未曽有の低金利だが、多くの専門家は長期では金利が上昇するとみている。企業にとっては今が借り時ともいえそうだ。 もちろん、際限なく借金をすることを勧めるわけではない。  成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか。
(これ以降は週刊ダイヤモンドのPRなので省略)
https://diamond.jp/articles/-/172005

第三に、6月19日付け現代ビジネス「孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…」を紹介しよう。
・ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏が、みずからの半生を赤裸々に明かしながら、2時間以上にわたって語り続けた貴重な講演録。
・前回は、孫氏が大学生時代に目にした1枚の写真で人生が大きく変わったという知られざるエピソードや、創業初期に大病を患ったことで「何のために働くのか」「何のために生きるのか」を考えざるをえなくなったという話などを紹介した。 今回はそんな孫氏が、数々の経営の修羅場をいかに生き延びてきたかが明かされる。いまや日本を代表する経営者となった孫氏が、ここまで赤裸々に過去を語るのは珍しい。その言葉を、皆さんはどう受け止めるだろうか――。
▽資産1兆円を手にするとどうなるか
・病気から復活した孫氏を待ち受けていたのがインターネットの夜明け。 2000年直前、ドットコムバブルが到来し、ソフトバンクの株価は絶頂に達するのだが……。 ちょうどアメリカではヤフーが生まれたばかりでした。 まだ社員が6〜7名の頃に、我々が資本を100億円投入し、アメリカのヤフーの筆頭株主になりました。そしてYahoo! JAPANをジョイントベンチャーで作りました。
・さらにこのとき、日本のインターネットのインフラは先進国のなかでも、高くて遅い状況だった。そして社会正義にかられて我々はNTTに挑戦しました。これがブロードバンド革命です。  実はこの時ですね、ソフトバンクはその直前の2000年の頃、株価が絶頂期でした。
・僕の個人資産が、ビル・ゲイツを超えたこともあります。世界一の大金持ちはビル・ゲイツでしたが、3日間だけ僕が彼を抜いたことがあります。あまりにも短すぎて記録にもならなかったけど。その時、僕の個人資産は1週間に1兆円ずつ増えていってたんです。
・みなさん、1兆円を手にしたことのある人、手を上げてください? ないでしょ〜。言っとくけど、そんなに簡単に手に入らないからね。それが、1週間に1兆円ずつ増えていくわけですよ。 そうするとね、なんかおかしくなりますよ。もはやお金が記号になるんです。毎週1兆円ずつ増えていくといろんな人が寄ってきます。それこそ満面の笑みで寄ってきます。さっき僕が言っていた人々の笑顔とは違う笑顔でやってくる。ニタ〜って笑って寄ってくる。
・ちょっと人間不信にもなったりして、お金が嫌いにもなりました。そういう贅沢な気持ちもあまり味わったことないでしょ? だから、お金はいろんなところに寄付したいと思っていた。でもどこに寄付するんだろうって考えてたら、神様が答えを出してくれました。ネットバブル崩壊です。
▽どん底を楽しめ
・数ヵ月で株価が真っ逆さまに落ちていった。 99%下がったんですよ。ソフトバンクの全体の時価総額が20兆円だったのが、2000億円まで下がりました。100分の1にまで下がったどん底のところで、僕は「よし!」と思った。
・神様がワシに試練を与えてくれたと思って、これはこれでおもしろい人生じゃないかと。 ついこの間まで、人生が記号のような、銭金が勝手に押し寄せてくるような、そんな状況になっていたのが、どん底に陥ったわけです。逆に闘争心が掻き立てられ、ガァーっとアドレナリンが湧いてきたんです。
・俺はネットバブルで実力以上に評価されたりしたけど、本当の俺の底力を見せてやるぞと思いました。「いよいよ戦うぞ!」というような強烈なやる気が沸き起こってきた。死にかけた男が生き返ったわけですから。なんぼのもんじゃい、会社が潰れてでも戦うぞと。
・どうせ戦うなら日本で1番大きい会社と戦おうと思ったんです。 普通の会社と戦ったら弱者いじめをしているみたいで、なんとなく気がひける。一切の手加減をせずに、全力をあげてぶち当たってやるぞと。 相手は日本一大きな会社。NTTですね。
▽大きい相手に挑め
・日本国政府が筆頭株主の会社で、100年間独占していた会社です。法律で独占のポジションを守られた会社。よし、あいつらのせいで日本のインターネットが遅くて高いなら、これを変えてやると挑戦を決めたわけです。やつらの料金の3分の1……実は4分の1の価格で、通信速度は100倍のサービスに挑戦しました。 3日間で100万件の申し込みがきました。
▽徹底的にやる
・今でこそCMをたくさんやっていますが、当時は宣伝も一切なし。ニュース報道だけで100万件の申し込みが3日間できたんです。革命的な価格と性能だったからきたわけです。 ただ、これをつなぐためにはNTTの局舎に入って、その中で我々の通信機器とNTTの接続ポイントとを繋がなければいけません。こいつらがですね、繋がせないわけですよ。
・技術的にはできるんだけど、先に書類で手続きをしないと繋いでくれない。この書類がまた役所仕事のように遅いわけです。書き間違いがあると全部がやり直し。まあひどいということでブチ切れました。 それで総務省に行って、総務省の課長に何とかしてくれと頼んだんです。あいつらはひどいと。何とかしてくれないなら記者会見をしてやる。 いかにNTTがひどいか、それを管理監督している総務省もいかに無能かということを、全部ぶちまける。そして、記者会見した直後に、俺はここで灯油をかぶって逝きます、と言ったわけです。
・そしたらその課長が「え、ここでですか?」と言うんです。貴様、ここじゃないならいいのか、って腹が立ちましたね。私が机をバンバン叩くので、しまいには課長が泣きだしてしまったんです。冗談抜きで、100万人の人々を待たせていることに責任感と罪悪感を感じていたわけです。
▽挑戦を繰り返せ
・当時は4年間で1000億円の赤字を出しました。しかも、このときは株価が暴落して時価総額が2000億円まで下がっていた。 2000億円しかないのに4年連続で1000億円ずつ赤字を出したら足りないじゃないですか。算数が合わないわけです。なのに、なぜか生き残った。しぶといよね。
・生き残る術は色々と身についているんですけど、とにかくラッキーも含めて生き残りました。どうせ病院で死ぬはずだった俺だから、死ぬ気になって戦って、結果として日本のインターネットはどうなったか。日本は先進国のなかで、世界一安くて、世界一速いブロードバンド大国に生まれかわった。
・みなさんね、日本に住んでいて、インターネットが速いのが当たり前のように思ってるでしょう。当たり前のように、ヤフー、グーグル、楽天が速いと言って使ってるでしょう。誰のおかげだと思います? ちっとは感謝せなあかんよ! ワシが命がけで病院から出てきて戦わなかったら日本は世界一高いままだったかもしれない。
・(聞き手コメント)ブロードバンドへの挑戦に勝った孫氏は、勢いそのままに「次の勝負」に打って出た。あまりに無謀な挑戦に周囲は反対の嵐だったが、じつは孫氏には「秘策」があった。
・(孫氏講演に戻る)ソフトバンクも生き残って、4年経った後にやっと黒字になった。黒字になったと思った瞬間に次の戦いがあった。インターネットはパソコン中心の時代からモバイル中心の時代に変わるぞ、と私が言い出した。 社員や幹部は大慌てですよね。銀行も大慌てでした。やっと4年の赤字から脱したのに、もう1度挑戦すると。病院から復活してね、もう挑戦したくてしょうがなかった。
▽借金は怖くない
・どうせ取り戻した命なんだから、生きているという証が欲しい。生きているという快感を得たい。 だったらもういっちょ勝負するぞということで、ボーダフォンジャパンの買収を行いました。1兆8000億円。当時、うちの会社の時価総額が6000億ぐらいでした。それなのに1兆8000億円の会社を買うわけです。みなさん、この算数できますか? 普通だったら買えないよ。
・ソフトバンクは借金だらけで大丈夫か、と言われてました。みなさん、うちの会社に来るとなると、「ご両親はソフトバンクは大丈夫か? ソフトパンクじゃないのか?」とか言うかもしれません。あそこは借金だらけだと聞いているぞと。
・大丈夫です、借金、慣れてるんです! もうね、借金が多いなんていまに始まったことじゃないから。もうずーっとなんです。しかもはるかに小さい時に、はるかに身の丈を超えた借金を経験している。それでも生き残っているんだから、それなりのノウハウが身についているわけです。買収時にお金は2000億円しかありませんでしたが、1兆8000億円の買い物をしました。どうやって残りの1兆6000億円を手にしたのかというのは、まあいろんな工夫の結果です。
・とにかくやっちまったということです。 そしたら、すぐに週刊誌で「孫正義は1兆円をドブに捨てた」と大々的に書かれて、さらに株価が下がった。1週間で6割株価が下がった。やっと赤字から黒字に戻って、1週間でまた6割株価が下がってしまった。もうめちゃくちゃなジェットコースターですね。株主は怒るは、銀行は怒るわ、幹部も怒るわという状態でした。
・ただ、私には秘策があったんです。当時は誰にも言っていませんでした。ソフトバンクの中でも知っていたのは2〜3人。私には1.8兆円の勝負をする自信があった。 その秘策が、この男であります。 スティーブ・ジョブズ。彼がまだiPhoneを発表する前です。彼に会いに行きました。
▽「男の約束を守れるかい?」
・「スティーブ、これを見てくれ!」と言って、私は手書きの図面を見せたんです。「これを作ってくれ、あんたにしかできないだ。なぜなら、あんたはアイポッドを持っていて、MacのOSを持っているだろ? このアイポッドにMacのOSをくっつけて、アイポッドのディプレイをもう少し大きくする。それに通信機能を入れたら、これはモバイルインターネットマシーンになる。インターネットがPCからモバイルに切り替わるタイミングであんたがこれを作るんだ」と言いました。
・図面を見てくれと渡そうとしたら、「マサ、そんな汚らしいものは引っこめろ」と見てくれないわけです。 俺の書いた図面が気にくわないのはわかった。でも、お前のニタっとしたその笑顔の裏にはきっとこれに相当するものを作っているに違いない。「そうだろ?」と言ったら、「俺は喋らない」と答えたわけです。超秘密主義の男ですからね。
・喋らなくていいから、お前さんが作っているそれが完成したら、日本での独占権は俺にくれ。俺をパートナーとして選んでくれと言ったら「マサ、それじゃあ俺の家に来い」となった。 彼の家の行って続きの話をしました。「わかった。お前に独占権をやる」と言ってくれた。それじゃあスティーブ、ちょっと一筆書いてくれと頼みました。
・スティーブは笑いだして「そんなものは書けない。だいたいお前は携帯会社として日本のライセンスすら持っていないじゃないか。携帯会社にもなっていないのに、独占的によこせ、一筆書けなんて要求しすぎだよ。まず出直して、携帯の電波の許認可をとって、それから戻ってこい。そしたら続きの話をしよう」と言われた。
・よし分かった、あんたの言うことは理にかなっている。だけど、忘れないでくれよ。俺が電波の許認可をもらい、その会社を始めて戻ってきた時には、あんたが俺に独占権をくれると言った約束を果たしてくれよ、と言ったわけです。それから2週間後に1.8兆円でボーダフォンジャパンを買うという契約に調印をして、スティーブのところへ戻っていったわけです。
・「スティーブ覚えているかい? 男の約束を守れるかい?」と言ったら、彼はまたニタっと笑った。「覚えている。俺は約束を守る」と言った。 彼との口約束一つで1.8兆円の賭けにでたわけです。巡り合いというのは面白いですね。彼との巡り会いがなければ1.8兆円の勝負にも出なかったし、今のソフトバンクもないということになります。
・彼がすごいのは、単にアイポッドを電話にしたわけではなくて、ありとあらゆる機能を一つの製品に入れてしまったことです。それがiPhoneだった。おそらく300年後の世界で、名前が残っているとしたらスティーブだと思います。
・レオナルド・ダヴィンチはテクノロジーとアートをクロスオーバーさせた。当時最強のテクノロジーだった医学、物理、化学を操る頭脳をもち、モナリザのようなアートまで書いた。アートとテクノロジーをクロスオーバーさせた最強の1人目がダヴィンチだとすると、2人目はスティーブ・ジョブズだと思います。
・単なる電化製品は世の中にたくさんありますが、アートと呼んでいい初めての製品がiPhoneだったと、私は思いますね。まさに人々のライフスタイルを変えた、尊敬に値する男だと思います。  どんな困難に直面しても、いくら周囲から批判されても、みずからの志を信じて挑戦をやめない――。こんな経営者が1人でも2人でも増えてくれれば、日本経済の未来はもっと明るくなるだろう。(『ソフトバンクキャリアLIVE』の講演にて)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56035

第一の記事で、 『今回は3度目の合併交渉が始まったばかりでしたが、スプリントが(ソフトバンクが)あっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導の合併を呑み今回の合意に至りました』、 『孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っており、せっせと投資資金を回収してAIやEVなど世界の新規事業への投資に軸足を移していることになります。また昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようです』、『両方とも株価が下がってしまった理由は、株式市場では今回の合併もFCCの承認が得られないだろうと懸念しているからのようです。また今回は合併する両社とも親会社が米国外の企業であるため、対米外国投資委員会(CFIUS)の承認も必要となります・・・承認されるかどうかは、全くの五分五分と考えられています』、説得力のある見方だ。 『ソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきた「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」まで投資資金の回収対象と考え、その膨大な利益を提供してくれた国内の利用者に十分な還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む現在の孫社長の姿は、見ていてやや不安になります』、というのもその通りなのかも知れない。
第二の記事で、『「借金を活用して会社を拡大させるソフトバンクの手法はコーポレートファイナンスの教科書通り」』、というのは正論だ。日本では、コーポレートファイナンスの基本的事柄に関する誤解がまかり通っているのは、嘆かわしいことだ。 『本来なら、借金の良しあしはそのように稼ぐ能力や他に持っている資産なども考慮して、総合的に判断すべきなのだ』、『成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか』、などはその通りだ。
第三の記事の、孫正義の講演録はさすが読ませる。どん底まで追い込まれても、フェニックスのように立ち上がっていくねばり強さは、というのは到底、凡人の及ぶところではない。 『ブロードバンド革命』を光回線普及前に、電話回線を利用するADSL方式で、Yahoo-BBとして大々的に売り出した。 『僕の個人資産は1週間に1兆円ずつ増えていってたんです』、というのは、当時のネットバブルの激しさを物語っている。 『総務省の課長に・・・何とかしてくれないなら記者会見をしてやる。いかにNTTがひどいか、それを管理監督している総務省もいかに無能かということを、全部ぶちまける。そして、記者会見した直後に、俺はここで灯油をかぶって逝きます、と言ったわけです・・・しまいには課長が泣きだしてしまったんです』、総務省の課長もさぞかし困ったことだろう。 『ボーダフォンジャパンの買収・・・1兆8000億円』に際して、スティーブ・ジョブズと直談判して、iPhoneの製品化前から日本での独占販売権を手に入れたという、優れた行動力や商売センスはさすがだ。確かに、当初はソフトバンクだけがiPhoneを販売し、ドル箱になっていた。 ジョブズに対し、『アートと呼んでいい初めての製品がiPhoneだったと、私は思いますね。まさに人々のライフスタイルを変えた、尊敬に値する男だと思います』、との賛辞は、身びいきな面を割り引いたとしても、同意できる。
タグ:ソフトバンクキャリアLIVE』の講演 アートと呼んでいい初めての製品がiPhoneだったと、私は思いますね。まさに人々のライフスタイルを変えた、尊敬に値する男だと思います ソフトバンク の経営 (その7)(闇株新聞の見方:スプリントとTモバイルが合併合意、ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由、孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…) 闇株新聞 単にアイポッドを電話にしたわけではなくて、ありとあらゆる機能を一つの製品に入れてしまったことです。それがiPhoneだった 彼との口約束一つで1.8兆円の賭けにでたわけです 「わかった。お前に独占権をやる」と言ってくれた スティーブ・ジョブズ 1兆8000億円 ボーダフォンジャパンの買収 総務省の課長 数ヵ月で株価が真っ逆さまに落ちていった。 99%下がったんですよ その時、僕の個人資産は1週間に1兆円ずつ増えていってたんです NTTに挑戦しました。これがブロードバンド革命 Yahoo! JAPAN 「孫正義が初めて明かす「僕は経営の修羅場をこうして生き延びてきた」 1兆円をドブに捨てた男と呼ばれて…」 現代ビジネス 成長の原動力として、従業員、株主、銀行、経営者の全員が幸せになる借金。そんな良い借金の概念が今の日本には必要なのではないだろうか 株主が出してくれたおカネに対する認識だ。特集で詳細を述べるが、「株主が出してくれたおカネは返さなくていい楽チンなおカネだ」と誤解している経営者がいる 、「日本では借金に対する誤解が強過ぎる。借金には良い借金と悪い借金があって、きちんと見極めるべき」と力説 松田千恵子・首都大学東京大学院教授は「借金を活用して会社を拡大させるソフトバンクの手法はコーポレートファイナンスの教科書通り」と明かす。同趣旨の発言をする専門家は多い ソフトバンクの借金15兆円が「ファイナンスの教科書通り」な理由」 ダイヤモンド・オンライン ソフトバンクの収益や財務体質の拡大を支えてきた「規制に守られて大儲けが約束された官製寡占事業」まで投資資金の回収対象と考え、その膨大な利益を提供してくれた国内の利用者に十分な還元をすることもなく、世界中の「まだまだこれから」という新規事業ばかりに巨額資金をつぎ込む現在の孫社長の姿は、見ていてやや不安になります また昨年スタートした10兆円の「ビジョン・ファンド」の投資先選定も急いでいるようです 孫社長はすでに内外の携帯電話事業に対する情熱を失っており、せっせと投資資金を回収してAIやEVなど世界の新規事業への投資に軸足を移していることになります 承認されるかどうかは、全くの五分五分と考えられています 両方とも株価が下がってしまった理由は、株式市場では今回の合併もFCCの承認が得られないだろうと懸念しているからのようです 今回は3度目の合併交渉が始まったばかりでしたが、スプリントが(ソフトバンクが)あっさりと経営主導権を諦め、Tモバイル主導の合併を呑み今回の合意に至りました ドイツテレコムが62.28%を保有する同3位のTモバイルUS 「スプリントとTモバイルが合併合意」
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