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通商問題(その2)(トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立 試される日本の外交力、対中制裁では解消しない 中国・知財強国の怖さ、トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策) [世界情勢]

通商問題については、4月14日に取上げた。いよいよ貿易戦争の様相を強めてきた今日は、(その2)(トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立 試される日本の外交力、対中制裁では解消しない 中国・知財強国の怖さ、トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策)である。

先ずは、元日経新聞論説主幹の岡部 直明氏が6月5日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立、試される日本の外交力」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・貿易戦争に勝者はいない。しかし、はっきりしているのは、世界中を相手にトランプ発の貿易戦争を仕掛けた米国が「最大の敗者」になることだ。トランプ政権は、鉄鋼・アルミニウムに高関税を課す輸入制限を一時猶予していた欧州連合(EU)、カナダ、メキシコにも拡大した。高関税を自動車にまで課すことも検討している。これに対して、主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議は6カ国がトランプ政権の保護主義に集中砲火を浴びせ、米国は孤立に追い込まれた。
・世界最大の経済大国の保護主義による貿易戦争は、世界経済に大きな打撃を及ぼす。それは米国経済を直撃するだけでなく、超大国の信認を失墜させる。貿易赤字を2国間で解消しようする誤った思考は、トランプ政権の反経済学の姿勢を世界に露呈している。
▽G7で米に集中砲火
・カナダ西部のウィスラーで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議は、異例づくめの会合になった。本来、世界経済や金融・通貨情勢について話し合う会議だが、議論は貿易問題に絞られた。アルゼンチンの通貨安、イタリアやスペインの政治混乱による南欧リスクなど緊急課題は素通りし、トランプ政権の保護主義に批判が集中した。
・トランプ政権が鉄鋼・アルミの輸入制限をEUと北米自由貿易協定(NAFTA)を構成するカナダ、メキシコに拡大し、これらの国・地域が報復措置を打ち出すことになったばかりだ。このトランプ発の貿易戦争の拡大は、世界経済に影響するだけに、G7財務相・中央銀行総裁会議でも最重要の討議テーマにせざるをえなかった。共同声明は出されなかったものの、議長声明で米国を名指しで批判したのも異例である。
・最も強く反発したのは、NAFTA再交渉中のカナダだった。モルノー財務相は「米国の考え方はばかげている」とまで述べた。鉄鋼生産の4割強が対米輸出だけに、直接的影響が大きい。対米批判の先鋒役を担ったのは当然である。フランスのルメール経済・財政相が「世界経済に危険な結果をもたらす」と警告すれば、ドイツのショルツ財務相は「国際法違反だ」と批判した。
・安倍・トランプの蜜月関係からトランプ政権には遠慮がちの日本もさすがにこの国際潮流に乗り遅れるわけにはいかなかった。麻生財務相も「一方的な保護主義的措置はどの国の利益にもならない」と警告の列に加わった。
・これに対して、ムニューシン米財務長官は「これ以上、巨額の貿易赤字を許容できない」という立場を崩さず、G6の主張に耳を貸さなかった。G7の主要同盟国との関係より、11月の中間選挙を優先するトランプ政権の「米国第一主義」を鮮明にしている。
▽深刻な米欧同盟の亀裂
・トランプ政権の鉄鋼・アルミ輸入制限は、米国の「安全保障」のためというのが名目だ。しかし、肝心の米欧同盟に亀裂が深まったのだから、米国の安全保障には逆効果ということになるだろう。 EUは1日、世界貿易機関(WTO)に提訴した。トランプ大統領が輸入制限を打ち上げると、EUはすかさず報復関税を打ち出す構えを示していた。20日には、ハーレー・ダビッドソンのオートバイなど代表的な米国製品の28億ユーロ規模の輸入に高関税を課す。
・EUは土壇場まで妥協を模索していた。通商担当のマルムストローム欧州委員がロス米商務長官やライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と会談して、発動回避をめぐり折衝してきた。トランプ大統領が関心のある米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大を調整の念頭に置いてきただけに、トランプ政権の強硬措置に怒りを隠さない。
・とくに、地球温暖化防止のためのパリ協定やイラン核合意からの離脱など、トランプ大統領による国際合意からの離反が相次いでいるだけに、今回の強硬措置で米欧同盟の亀裂は深刻になる恐れがある。
・米欧同盟の亀裂は、その核心である北大西洋条約機構(NATO)の運営に響くことも考えておかなければならない。もともとトランプ大統領はNATO軽視の言動が目立っていただけになおさらだ。米欧関係が揺らげば、中東に進出するロシアの台頭を許す結果になり、混迷する中東情勢をさらに泥沼化させかねない。
▽米朝首脳会談にらみの米中ハイテク覇権争い
・貿易赤字の解消で、トランプ政権が照準を合わせているのは中国である。米中間で調整は続いているが、貿易赤字解消を超えてハイテク分野の覇権争いがからむだけに、調整は難航必至である。トランプ政権が知的財産権侵害への制裁として、6月中旬にも追加関税を発動すると表明したことで、米中貿易摩擦が再燃する気配である。
・とくに追加関税の対象品目に「中国製造2025に関連する分野を含む」と明示していることに中国は反発する。習近平政権は、ロボットなど先端技術を、巨額の補助金をてこに2025年までに国産化する目標を打ち出している。米国による補助金廃止の要求を中国は受け入れない。米中間のハイテク覇権争いは激化する様相をみせている。
・中国をめぐる知的財産権問題は、米国だけでなく、日欧も共通の問題を抱えているが、トランプ発の貿易戦争が世界に広がったことで、知財問題をめぐる「対中国包囲網」は形成しにくくなっている。
・米中貿易戦争がどう展開するかは、6月12日の米朝首脳会談にらみの面がある。北朝鮮には中国が最も大きな影響力をもっている。トランプ政権内にも、国際政治の季節に「米中貿易休戦論」もある。これからの朝鮮半島情勢を決める米中首脳会談と、米中のハイテク覇権争いは複雑にからみ合っている。
▽自動車に波及なら日欧に打撃
・世界経済が大きな打撃をこうむるとすれば、トランプ流保護主義が自動車に及ぶときだろう。トランプ政権は、自動車にも高関税を課すことを検討している。それは、日本とドイツなど欧州の自動車産業を直撃することになる。仮に高関税が課せられることになれば、裾野の広い日欧の自動車関連産業への影響は計り知れない。
・安倍首相は国会での党首討論で、トランプ流保護主義が鉄鋼、アルミから自動車にまで拡大しようとしていることについて「全ての貿易行為はWTOと整合的でないといけない」と述べ、批判した。
・日本としては、この批判を7日のトランプ大統領との首脳会談で直接、ぶつけるしかない。首脳会談は米朝首脳会談の準備のためにだけあるのではない。同盟国の首脳としての「友情ある説得」が求められる場面だ。G7各国首脳も日本の経済界も安倍首相がトランプ大統領に直言できるかどうか注視している。
▽地に落ちる超大国の信認
・トランプ発の貿易戦争で最大の敗者になるのは、中国でも欧州でも日本でもない。保護主義を世界にまき散らした当の米国である。世界が報復合戦による貿易戦争に陥れば、世界経済全体の足を引っ張ることになる。とりわけサプライ・チェーンなどグローバル・ネットワークが高関税で分断されてしまう危険がある。
・その打撃を最も大きくこうむるのは、グローバル経済の核にある米国経済そのものだ。それは米国の消費者と雇用を直撃することになる。世界の先頭を切って出口戦略に動いている米連邦準備理事会(FRB)の政策運営を難しくする。対応を誤れば、リーマンショック10年後の世界の市場を再び揺さぶることにもなりかねない。
・米国にとって経済への打撃以上に大きいのは、信認の失墜である。保護主義の張本人という汚名は永遠に消えることはない。保護主義を防ぎ、自由貿易の先頭に立つべき超大国・米国が保護主義の先頭に立つのは、異常としか言いようがない。
・超大国・米国が信認を喪失する一方で、第2の経済大国・中国の台頭を許すことにもなる。事実、習近平政権は保護主義を防ぎ、自由貿易を推進すると声高に主張し始めている。国家資本主義の中国に、米国が自由貿易の盟主の座を取って代わられるとすれば、大いなる歴史の皮肉というべきだろう。
▽多国間主義の連携でトランプ封じを
・トランプ発の貿易戦争を防ぐには、多国間主義の連携によって、トランプ封じをめざすしかないだろう。超大国の暴走は単独では防げない。世界経済に影響力をもつ日欧中の連携が欠かせない。
・まず「米国第一主義」の矛盾を突くことである。トランプ大統領が主張する「米国第一主義」は、グローバル経済の現実から大きくかけ離れている。「米国第一」と考えて打ち出す保護主義は結局、米国経済を痛めつけることになる。
・「貿易赤字は損失」という考え方で保護措置を取るのは大きな誤りである。グローバル経済の相互依存が深まるなかで、2国間の貿易赤字を対象にするのは意味がない。こうした経済学の基礎的知識すら持ち合わせない政権がいまなお存続しているのは驚きである。
・何事も2国間主義で解決しようとするのは、結局、米国のごり押しを許すことになる。トランプ流2国間主義を多国間主義に引き戻すうえで、日欧中の連携が決定的に重要になる。まず、環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を結合し、米国に参加を呼び掛ける。そして日EU経済連携協定をできるだけ早く実効あるものにする。多国間主義の複層的連携がいかに世界経済を活性化させるかを実証することである。
・多国間主義の連携で、要の役割を担っているのは日本である。日本の多角的な外交力が試されている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/060400066/?P=1

次に、元経産省米州課長で中部大学特任教授の細川 昌彦氏が6月19日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「対中制裁では解消しない、中国・知財強国の怖さ トランプ政権、約500億ドルの対中制裁関税を7月6日から順次発動」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国は中国に対して約500億ドルの制裁関税を来月6日から順次発動すると発表した。中国の米国企業に対する知的財産権の侵害がその理由だが、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある。
・米国は中国に対して通商法301条に基づく一方的制裁を来月6日から順次発動すると発表した。約500億ドルの制裁関税である。中国の米国企業に対する知的財産権の侵害がその理由だ。そして中国もこれに対して大豆などの関税引き上げで報復することを表明した。
・トランプ氏が仕掛けた「米中貿易戦争」として、米中間の報復合戦に目が注がれている。トランプ氏は中国との貿易赤字削減の交渉を有利に進めるために、制裁関税という交渉カードを得ることにしか関心がない。極端に言えば、制裁理由などは何でもいい。
・しかし、それだけに目を奪われていてはいけない。 制裁理由とされている中国の知的財産権を巡る不公正さこそ、深刻で本質的な問題だ。それは多くの日本企業も直面している大問題である。しかも、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある。
▽伝統的な模倣品問題と先端技術取得の二層構造
・従来、中国の知財問題といえば、ブランド製品の模倣品やゲーム、意匠のコピーなどが話題になってきた。これらが中国の地方経済の一端を担っていることもあって、その取り締まりの実効性に疑問が投げかけられてきたのも事実だ。これらの模倣品は、未だに横行しており、モグラ叩きが続いている。
・これに対して中国政府が取り締まりの執行を強化することは歓迎すべきことだ。 しかし、今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない。 米国の制裁理由に挙げられているように、例えば、外国企業が中国に進出する際、中国企業との合弁が求められ、中国政府によって中国企業への技術移転が強要される。また、中国企業が外国企業から技術のライセンスを受けた場合、その改良技術は中国企業のものとなってしまう。つまり、外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ。
・そして、それが製造強国を目指す国家戦略である「中国製造2025」のための手段の一つとなっているから根が深い。海外からの批判は高まっており、中国政府は「知財保護の強化」を打ち出して批判をかわそうと躍起だ。
・ただ、この謳い文句を額面通り受け取っては危険である。米国の制裁理由に挙げられているような問題どころか、むしろ「知財保護の強化」の掛け声の下で、もっと深刻な問題が進行しているからだ。中国で事業活動する企業は、その実態を注意深く見る必要がある。
▽表向きの美名「知財保護の強化」に危険が潜む
・中国は今や“プロパテント”に大きく舵を切っている。本年4月ボアオ・フォーラムでの習近平国家主席の演説でも、市場開放とともに知的財産権の保護の強化を打ち出している。改正法案も出されており、損害賠償額を最大3倍まで引き上げるなどの強化も含まれている。
・かつて2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟する際には、WTOの知財ルール(TRIPS)の遵守を渋々コミットさせられたものだ。ところが今や、技術大国として自信を持ち、逆に自分たちのために知財保護を強化しようとしている。「知財大国」さらには「知財強国」を目指しているのだ。
・それは中国政府だけではない。中国企業もそれに呼応して、知財強化ための人材獲得に抜かりがない。例えば、通信機器会社のファーウェイは今や5Gの領域における特許のポートフォリオで他社を凌駕している。そのための人材獲得にも熱心で、競合他社のクアルコムから知財トップを引き抜いている。まさに資金力をもって世界で活躍する人材を引き寄せているのだ。 こうした中国の「知財強国」化をどうみるべきか。「知的財産権保護の強化」という表向きの美名だけで評価していては危険だ。
▽特許件数が異常に多い背景は何か
・中国の特許出願件数を見ると、驚異的に増加している。 中国国家知識産権局によると、2016年に受理した特許出願件数は133.9万件、対前年比21.5%増で6年連続世界一となった。そしてそのほとんどが中国居住者による国内出願だ。ちなみに、世界の特許出願件数1位がZTE、2位がファーウェイで、ともに今、注目されている中国巨大IT企業だ。
・もちろんその背景には、中国の目覚ましい科学技術の躍進がある。研究開発費の総額は日本の17兆円に対して42兆円、研究者数も日本の68万人に対して162万人だ(2015年)。この豊富なヒトとカネを使って、量で圧倒している。その結果、引用される重要論文も分野によっては米国を凌ぐまでになっている。従って、特許出願件数も急増するのも当然ではある。
・しかし、その異常なほどの急増に、不自然さを感じざるを得ない。例えば、中国企業への特許出願を政府が大いに奨励している。そのこと自体は大いに結構だが、問題は中国人・中国企業による特許出願には補助金が出されているのだ。企業の出願料の負担を考えると、こうした内外の差別的扱いは許されるものではない。
・しかも、そもそも特許として認められるためには「新規性」の要件が必要なのは当然なのだが、その点の審査が中国・中国企業が出願した案件については甘いとの声もある。外国人・外国企業との間で二重基準(ダブル・スタンダード)になっているのではないかとの指摘も企業の間ではささやかれている。その結果、中国に進出している日本企業は「公知の事実」だと思っていたら、ある日突然、中国企業から特許侵害として訴えられるという事態もあり得るので要注意だ。
・商標権でも中国は出願を補助金で支援して大量出願させ、日本企業で痛い目にあっているのは「今治タオル」など枚挙にいとまがない。これと類似のことが特許でも起こり得るのだ。 しかも中国企業にライセンス供与して、その中国企業が他の中国企業から特許侵害で訴えられた場合、技術を供与した外国企業がその補償責任を引き受ける義務を負うという、外国企業だけに不利なとんでもない制度(したがって明らかにWTO違反)になっているから厄介だ。
・このように、中国企業が知財の保有量を増やしていることで、競合の中国企業から特許侵害で訴えられるリスクが急激に高まっている。そのリスクを回避するために外国企業は中国語文献の事前調査に膨大なコストを支払わざるを得ない。
▽特許審査で技術情報の流出リスクも
・こうして特許申請は急増しているが、これをさばくために、大量の特許審査官が必要になる。中国ではその数、1万数千人というから、日本の数十倍だ。今、中国の各地では特許審査のための組織が急速に拡充されている。人員不足を補うため、審査官の中には中国企業からの出向者も多く採用されている。そうすると、審査中の未公開案件の技術情報も駄々漏れになっているのではないかと疑いたくもなる。
・外国企業が中国で事業を展開する際に、中国当局に営業ライセンスを申請すると、さまざまな技術情報を提出させられる。例えば、化粧品では使用する原料の使用比率などの情報を開示させられる。それが中国の競合他社に流れているのではないか、とのうわさは絶えない。 同様の技術情報の横流しは様々な審査の場面において懸念されるが、特に深刻なのが未公開の特許出願の技術情報だ。
▽知財の訴訟大国で恣意的裁判も
・さらに中国では知財紛争も増大して、知財の訴訟大国にもなっている。そしてその知財裁判の公平性も問題なのだ。近年、知財紛争を専門とする裁判所を3カ所設立した。表向きの制度は整備されているが、特許違反で訴えた場合、中国企業に有利に土俵が傾くことは覚悟しなければならない。
・中国に進出している外資企業の間では「中国企業の有利さはかつて60対40だったが、最近でも55対45に改善された程度」といった類の会話が交わされている。さすがに上級審に行けば、司法人材の質も高く、恣意的判断も少ないが、下級審ではある意味あきらめに似た覚悟が必要だ。
▽日本政府も早急にWTO提訴すべき
・こうした中国の知財を巡る動きは中国に進出する日本企業にも深刻な問題を投げかけている。決して米中貿易問題という他人事ではない。中国政府が官民一体となって戦略的に取り組んでいる根深い問題であるだけに、我々も本腰を入れた対応が必要だ。
・日本政府も日中の関係改善という政治的配慮からこうしたことに目をつぶることがあってはならない。米国は通商法301条に基づく一方的制裁だけでなく、同時にWTOに提訴してWTOの枠組みも利用しようという、いわば「両にらみの姿勢」をとる。EUも米国に続いて、中国に対してWTO提訴を行った。日本も米国、EUとともに協調対応することが重要で、早急にWTO提訴すべきだろう。
・また、WTOではカバーされない根深い問題については、例えば、多国間、二国間の特許庁会合などでも、中国を是正に向けてどう誘導していくかも合わせ技で考えて、硬軟織り交ぜていく必要があるだろう。
・同時に日本企業の経営幹部も昔ながらの中国の知財問題のイメージを払拭して、最近の知財を巡る中国の動きに目を向けるべきだろう。痛い目に合う前に、危機感を持って社内の知財部門の問題意識と体制を早急にチェックする必要がある。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/061800835/

第三に、双日総研チーフエコノミストの吉崎達彦氏が6月17日付けFNN Primeに寄稿した「トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽要旨
 +トランプ大統領がシャルルボアG7サミットで“ちゃぶ台返し”
 +不評のシンガポール会談の目先を変えるために対中制裁関税発動
 +さらに「輸入自動車に25%の関税」検討を商務省に指示
▽「やんちゃ外交」が止まらない シャルルボアG7サミット
・今月はトランプ大統領の「やんちゃ外交」が止まらない。 トランプ劇場の第1幕は、シャルルボアG7サミット(6月8~9日)だった。年に1度、先進民主主義国の結束を確認する場のはずのサミットが、「G6対1」に分裂してしまった。
・無理もない。よりによって開催の1週間前、6月1日からアメリカはEUやカナダからの鉄鋼・アルミ輸出に対する追加関税を実施した。議長国カナダのトルードー首相は、これではNAFTA再交渉もつぶれてしまうと怒り心頭。そしてEUから見れば、トランプ大統領は「パリ協定離脱」「イラク核合意離脱」に続く3度目のちゃぶ台返しである。
・トランプ大統領は「貿易赤字が問題だ」という。しかし関税を上げれば貿易赤字が減るというものではない。 論より証拠、日本からのアメリカ向け鉄鋼輸出は、一足先に25%の関税が課されている。しかし4月の貿易統計を見ると、対米輸出は前年同期比13%増(数量ベース)であった。  本当に必要な製品であれば、需要家は泣く泣く関税を上乗せして買わなければならないのだ。
▽新たな騒ぎを起こして目先を変える
・トランプ劇場の第2幕は、6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談だった。日本でもいろんな批判が飛び出しているが、アメリカ国内でも評判はよろしくない。こういうとき、トランプ大統領は新たな騒ぎを起こして目先を変えてしまう。
・6月15日、今度は対中制裁関税を発動すると発表した。中国の知的財産権侵害への制裁措置として、500億ドル分の中国製品に25%の関税を課すという。中国側は即座に報復関税を課して対抗する構え。 今月のトランプ劇場第3幕は、米中対立というわけだ。
・中国の貿易慣行には確かに問題がある。本来ならば、他国と協調して是正を迫るべきであろう。ところがトランプ政権は同盟国を敵に回したうえで、関税を武器に二国間で解決を迫っている。 しかしこれはもったいない話である。関税を支払うのは中国の企業ではない。アメリカの消費者が支払って、アメリカ政府が受け取る。つまりは増税である。しかも輸入物価が上昇して家計を直撃することになる。高関税政策は自傷行為のようなものであり、アメリカ経済にとって確実にマイナスになるだろう。
▽トランプの「トンデモ経済学」がアメリカ経済を台無しに?
・さらにトランプ大統領は、「輸入自動車に25%の関税をかける」ことを検討せよと商務省に指示している。これが実現すれば、年間170万台(4.6兆円)も自動車を対米輸出しているわが国にとっては一大事だ。しかしご安心を。商務省の調査には270日もかかる。結論が出る頃には、秋の中間選挙も終わっているはずだ。
・それ以上に、2017年の米国の自動車輸入は3590億ドルであるから、25%の関税は実に900億ドル(約10兆円!)の増税ということになる。これはさすがに無茶だ。景気を冷やしてしまうだろう。
・トランプ大統領には根本的な誤解があるとしか思えない。 メキシコ国境に壁を作っても、不法移民が減るという保証はない。そして関税を上げたところで、貿易赤字が減るわけではない。今のところアメリカ経済は絶好調が続いているけれども、大統領の「トンデモ経済学」が台無しにしてしまうかもしれない。 ご用心を。
https://www.fnn.jp/posts/00325630HDK

第一の記事で、『ムニューシン米財務長官は「これ以上、巨額の貿易赤字を許容できない」という立場を崩さず、G6の主張に耳を貸さなかった。G7の主要同盟国との関係より、11月の中間選挙を優先するトランプ政権の「米国第一主義」を鮮明にしている』、ムニューシン氏は米国最大の投資銀行、ゴールドマンサックス出身で、少なくとも経済メカニズムに精通している筈である。いくらトランプ政権下にいるとはいえ、『トランプ政権の反経済学の姿勢』、を丸出しにして集中砲火を浴びるとはお粗末極まりない。『米中ハイテク覇権争い』、も米朝首脳会談終了後より鮮明になったようだ。 『中国をめぐる知的財産権問題は、米国だけでなく、日欧も共通の問題を抱えているが、トランプ発の貿易戦争が世界に広がったことで、知財問題をめぐる「対中国包囲網」は形成しにくくなっている』、『地に落ちる超大国の信認』、などは困ったことだ。 『多国間主義の連携で、要の役割を担っているのは日本である。日本の多角的な外交力が試されている』、というのはその通りだろうが、残念ながら余り期待できそうもなさそうだ。
第二の記事で、『制裁理由とされている中国の知的財産権を巡る不公正さこそ、深刻で本質的な問題だ。それは多くの日本企業も直面している大問題である。しかも、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある』、『今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない・・・外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ』、『表向きの美名「知財保護の強化」に危険が潜む』、『知財の訴訟大国で恣意的裁判も』、『特許審査で技術情報の流出リスクも』、などの指摘は、さすが元経産官僚らしく、かなり深い角度から捉えられ、大いに参考になった。やはり中国は、あなどり難い国のようなので、『日本政府も早急にWTO提訴すべき』、というのは大賛成だ。
第三の記事で、『「やんちゃ外交」』、『新たな騒ぎを起こして目先を変える』、などは言い得て妙な表現だ。 『中国の貿易慣行には確かに問題がある。本来ならば、他国と協調して是正を迫るべきであろう。ところがトランプ政権は同盟国を敵に回したうえで、関税を武器に二国間で解決を迫っている。しかしこれはもったいない話である』、『今のところアメリカ経済は絶好調が続いているけれども、大統領の「トンデモ経済学」が台無しにしてしまうかもしれない』、などはその通りだろう。
いずれにしろ、アメリカも困った人物を大統領に戴いたものだ。やれやれ・・・。
タグ:今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない 問題は中国人・中国企業による特許出願には補助金が出されているのだ 深刻な米欧同盟の亀裂 商標権でも中国は出願を補助金で支援して大量出願させ、日本企業で痛い目にあっているのは「今治タオル」など枚挙にいとまがない 新たな騒ぎを起こして目先を変える 吉崎達彦 今のところアメリカ経済は絶好調が続いているけれども、大統領の「トンデモ経済学」が台無しにしてしまうかもしれない (その2)(トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立 試される日本の外交力、対中制裁では解消しない 中国・知財強国の怖さ、トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策) 「トランプ発の貿易戦争、最大の敗者は米国 信認失い世界で孤立、試される日本の外交力」 通商問題 日経ビジネスオンライン 岡部 直明 やんちゃ外交 日本政府も早急にWTO提訴すべき 外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ 知財の訴訟大国で恣意的裁判も 特許件数が異常に多い背景は何か FNN PRIME 表向きの美名「知財保護の強化」に危険が潜む 世界中を相手にトランプ発の貿易戦争を仕掛けた米国が「最大の敗者」になることだ 新規性」の要件が必要なのは当然なのだが、その点の審査が中国・中国企業が出願した案件については甘いとの声も 制裁理由とされている中国の知的財産権を巡る不公正さこそ、深刻で本質的な問題だ。それは多くの日本企業も直面している大問題である。しかも、そこには米国の制裁だけでは決して解決しない根深さがある 「対中制裁では解消しない、中国・知財強国の怖さ トランプ政権、約500億ドルの対中制裁関税を7月6日から順次発動」 細川 昌彦 ムニューシン米財務長官は「これ以上、巨額の貿易赤字を許容できない」という立場を崩さず、G6の主張に耳を貸さなかった。G7の主要同盟国との関係より、11月の中間選挙を優先するトランプ政権の「米国第一主義」を鮮明にしている 多国間主義の連携でトランプ封じを 「トランプ大統領の「関税好き」は天下の愚策」 特許審査で技術情報の流出リスクも 地に落ちる超大国の信認 米中ハイテク覇権争い
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